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『土左日記』はどう写されたか―古典書写と仮名遣い― 1. はじめに 『土左日記』は、 15 世紀末まで伝存した紀貫之自筆本を、藤原定家、藤原為家、 松木宗綱、三条西実隆が直接書写したことが知られている(池田亀鑑『古典の批判 的処置に関する研究』)。その四系統のうち、文暦 2 年(1235 年)に藤原定家、嘉 2 年(1236 年)に藤原為家が書写した写本はそれぞれ現存しており、延徳 2 1490 年)書写の松木宗綱本、明応元年(1492 年)書写の三条西実隆本は、その 転写本が伝存している。ここでは、貫之自筆本がどのように書写されているのかを、 定家の仮名遣い、とくにアクセントに関わる「お」と「を」の表記に着目し探って みる。 (1) 四系統のうち、大阪青山歴史文学博物館蔵の為家筆本は、その全貌はいまだ公開 されていないけれども、青谿書屋本が同本を極めて忠実に書写しており、その巻末 部と、定家が貫之自筆本を臨模した部分との比較から、為家筆本は貫之自筆本を字 母まで忠実に写していると考えられる。以下、青谿書屋本と定家筆本、三条西実隆 筆本を書写した三条西家本、松木宗綱筆本を書写した陽明文庫本と日本大学本によ り、『土左日記』書写の在り方を考えたい。 使用したテキストは以下のとおりである。 青谿書屋本:『土佐日記』(東海大学蔵桃園文庫影印叢書第 9 )東海大学出版 会、1992 . 定家筆本:『定家本土佐日記』(尊經閣叢刊) 育徳財団、1928 日本大学本:鈴木知太郎『影印・解説・校註 土左日記』<日本大学図書館蔵 本>笠間書院、1970 (松木宗綱本の写本) 陽明文庫本:国文学研究資料館所蔵マイクロフィルム E314による。 紙焼写真(E3549)を参照した。(松木宗綱本の写本) 三条西家本:『土左日記』(古典保存会複製書第 5 )古典保存会、1934 . 定家の仮名使用 定家筆本の冒頭を、これまでの常識のとおり翻刻すれば、「をとこもすといふ日 記といふ物をゝむなもして心みむとてするなり」となる。この「をとこ(男)」は、 アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2) - 41 -

『土左日記』はどう写されたか - Waseda University『土左日記』はどう写されたか―古典書写と仮名遣い― 坂 本 清 恵 1.に はじめ 『土左日記』は、15世紀末まで伝存した紀貫之自筆本を、藤原定家、藤原為家、

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Page 1: 『土左日記』はどう写されたか - Waseda University『土左日記』はどう写されたか―古典書写と仮名遣い― 坂 本 清 恵 1.に はじめ 『土左日記』は、15世紀末まで伝存した紀貫之自筆本を、藤原定家、藤原為家、

『土左日記』はどう写されたか―古典書写と仮名遣い―

坂 本 清 恵

1. はじめに

『土左日記』は、15世紀末まで伝存した紀貫之自筆本を、藤原定家、藤原為家、

松木宗綱、三条西実隆が直接書写したことが知られている(池田亀鑑『古典の批判

的処置に関する研究』)。その四系統のうち、文暦 2 年(1235 年)に藤原定家、嘉

禎 2 年(1236 年)に藤原為家が書写した写本はそれぞれ現存しており、延徳 2 年

(1490 年)書写の松木宗綱本、明応元年(1492 年)書写の三条西実隆本は、その

転写本が伝存している。ここでは、貫之自筆本がどのように書写されているのかを、

定家の仮名遣い、とくにアクセントに関わる「お」と「を」の表記に着目し探って

みる。(1)

四系統のうち、大阪青山歴史文学博物館蔵の為家筆本は、その全貌はいまだ公開

されていないけれども、青谿書屋本が同本を極めて忠実に書写しており、その巻末

部と、定家が貫之自筆本を臨模した部分との比較から、為家筆本は貫之自筆本を字

母まで忠実に写していると考えられる。以下、青谿書屋本と定家筆本、三条西実隆

筆本を書写した三条西家本、松木宗綱筆本を書写した陽明文庫本と日本大学本によ

り、『土左日記』書写の在り方を考えたい。

使用したテキストは以下のとおりである。

青谿書屋本:『土佐日記』(東海大学蔵桃園文庫影印叢書第 9 巻)東海大学出版

会、1992年.

定家筆本:『定家本土佐日記』(尊經閣叢刊) 育徳財団、1928年

日本大学本:鈴木知太郎『影印・解説・校註 土左日記』<日本大学図書館蔵

本>笠間書院、1970年 (松木宗綱本の写本)

陽明文庫本:国文学研究資料館所蔵マイクロフィルム E314による。

紙焼写真(E3549)を参照した。(松木宗綱本の写本)

三条西家本:『土左日記』(古典保存会複製書第 5期)古典保存会、1934年

2. 定家の仮名使用

定家筆本の冒頭を、これまでの常識のとおり翻刻すれば、「をとこもすといふ日

記といふ物をゝむなもして心みむとてするなり」となる。この「をとこ(男)」は、

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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『図書寮本類聚名義抄』に〈平平平〉の声点が付されるように、古くLLLのアク

セントで、定家の仮名遣いでは「おとこ」と書かれるはずであり、定家仮名遣いの

原則から外れてしまう事例となる。最大の問題となる箇所である。ここの「男」の

使用字母は「乎止己」であるが、この「乎」を古典仮名遣いの「を」と捉えること

に問題があった。

定家のこの「乎とこ」について小松英雄氏は、「乎」は定家筆の他の諸文献に用

いられないこと、「乎」の出現は後半に偏っていることをあげ、「越」と同様「乎」

についても、隣接による目移り等を避けるため、「お」「を」のどちらにも使用する

中和の用法であるとする。(2)

また、依田泰氏は「お」と「乎」の両用について、「おとこ」は「夫」、「乎とこ」

は「男性」、「おさなし」は「幼少である」、「乎さなし」は「考えが未熟である」と

いう、語義の違いとする。(3)

しかし、『土左日記』におけるこの定家の「乎」は、「お」として使われている可

能性が高い。これに気が付いたのは、定家の著作である『僻案抄』の東山御文庫本

を閲覧する機会を得たことによる。東山御文庫本『僻案抄』は、定家自筆本を双鉤

填墨によってその字母にいたるまで精確忠実に模写した本であり、定家晩年におけ

る表記の姿勢をうかがう資料とすることができる。この『僻案抄』で「乎」は、定

家の仮名遣いにおいて、低いアクセントに当たる部分に、「お」の仮名として使用

されている。定家はまた、『僻案抄』中で、『土左日記』について次のように言及し

ている。

貫之日記にかくてさし〔河尻よりのほる也〕のほるに東の方に山のよこほれる

をみて人にとへはやはたの宮といふ古今撰者山のよこほれるをみてとかける

よこほりふせる といふ哥にかなふへくや

さらに、貫之自筆本を披見したことにもとづき、次のようにも記している。

物かきうつすとてあらぬ僻文字ともかきける物のことやうの手なる草子を貫

之か自筆といひて人すかしける物をもてなしていひいてたるいたつら事也そ

の本貫之か手にあらす

つまり、貫之が『土左日記』の冒頭で、「男」を「乎とこ」と書いていることに触

発され、定家は「お」の書き換え文字として「乎」を、『僻案抄』において使用し

たと考えられるのである。(4)

そこで、定家本系統では、この冒頭の「男」を「お」で書写するものはないのか

を調べてみた。しかし、定家本系統では、字母まで定家本を写すものばかりで、こ

の「乎」を「於」「遠」「越」で書写する事例を見出すことはできなかった。特に東

山御文庫本・早稲田大学図書館九曜文庫(文庫 30 E0001)は、字母、字の形、行

の字詰めまでもが同じで、完全な複写と言ってよい本である。(5)

為家は貫之自筆を字母に至るまで精確に写したと考えられ、その為家本をやはり

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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字母まで精確に書写したのが青谿書屋本であるが、定家本を写す場合も、同様に定

家筆の字母まで踏襲する方法がとられているのである。古典書写の一つのあり方と

して、字母まで写す方法が行われていることがここでも確認できる。

3. 四系統本の「お」「を」について

これまで稿者は、定家仮名遣いとアクセントに関し、以下を明らかにしてきた。

① 行阿の『仮名文字遣』は大野晋以来、アクセント体系変化を反映したものであ

り、低い拍が続くLL>HL、LLL>HHLのアクセント変化が早く、LL

H>HLLの変化は遅いと考えられていたが、『仮名文字遣』は行阿が自身のア

クセントによって仮名遣いを定めたのではない。また、『仮名文字遣』によって、

アクセント体系変化の遅速も証明ができない。(6)

② 定家仮名遣いの批判の書とされていた『仙源抄』は、アクセント体系変化後に

長慶天皇が自身のアクセントで書くと定家の残したものとは仮名遣いが異なっ

てしまうことに気づきながらも、本文については、自身のアクセントにより「お」

「を」の書き分けを行なったものである。長慶天皇の『仙源抄』は定家仮名遣

いの原理を実践したものである。(7)

③ 定家仮名遣いの原理に基づいて書かれたテキストは極めて稀であり、定家仮名

遣いで書かれたものの多くは『仮名文字遣』などの先行文献の仮名遣いを踏襲

したものである。

定家本

東山御文庫本

九曜文庫本

為家本

青谿書屋本

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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②については、『仙源抄』の長慶天皇自筆本は現存していないが、最古の書写本

である耕雲筆本ほか、写本の仮名遣いには揺れがほとんどみられず、字母まで写し

たかどうかは不明ではあるが、仮名遣いは変えることなく書写されていると考えら

れる。耕雲自身は、自らの著作では『仙源抄』の仮名遣いとは異なり、長慶天皇の

ように自身のアクセントに従い「お」と「を」のどちらで書くかを決めてはいない。

それは、③に掲げたように、定家の仮名遣い原理を実践したのではなく、文献にみ

られる定家仮名遣いによっているのである。

それぞれ「お」「を」を含む語について調査し、結果を以下の表にまとめた。

「古典」は、古典仮名遣いでの仮名遣いで、「お」149例、「を」58例である。

「表記」欄には、使用仮名についてまとめたが、字母が「乎」「越」については「お」

「を」のどちらで使っているのかを見るために字母のままで示した。当該部分がア

クセント体系変化前の低いアクセントのものをL、高いアクセントのものをHで示

し、アクセントのわからないものは「不明」とした。「無」はその語がないもの、

また「お」「を」を含む当該語が漢字表記されたものを「漢字」とした。

各資料の数字は延べ語数である。所属語については稿末に一覧にして示した。

古典 表記 青谿書屋本 定家本 日大本 陽明文庫 三条西本

お 149 おL 115 94 113 89 114

おH 32 2 24 14 32

を不明 2 1 1

お不明 2 1 1 2

をL 1 1

をH 27 8 14

乎L 2

越H 3

無 1 1

漢字 19 1 28

を 58 をL 2 1 11 10 24

をH 6 16 22 6 25

越L 4 4

越H 2 1 1

乎L 30 13

乎H 20 4

おL 16 17 15 4

おH 3 1

ほ 2

無 2

漢字 4 24

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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「無」、「漢字」を除き、アクセントの低、高によって分類しなおしたものが、下

記の表である。

古典 表記 青谿書屋本 定家本 日大本 陽明文庫 三条西本

お おL 115 94 113 89 114

をL 1 1

乎L 2

を をL 2 1 11 6 24

おL 16 17 15 4

越L 4 4

乎L 30 13

お おH 32 2 24 14 32

をH 27 8 14

越H 3

を をH 6 16 22 10 25

越H 2 1 1

乎H 20 4

おH 3 1

青谿書屋本・三条西本

青谿書屋本の「乎」は「を」であり、古典仮名遣いで書かれている。これに近い

のが三条西本で、「越」は「を」であり、例外となるのが古典仮名遣い「を」であ

るものが 4例「お」となっている。具体的にはアクセント体系変化前にLで始まる

2 類動詞「おしむ」の 7 例中 1 例、3 拍名詞4類「おとこ」の 9 例中 1 例、2 拍 4

類「おり(折)」の 1例中 1例、「おりふし」は『名義』にLHLLの例があり、

これも 1例中 1例で、定家仮名遣いと合致する。基本姿勢は、原本の仮名遣いを写

しているものの、実隆本から移す際に当時の一般的な定家仮名遣いが紛れ込んだの

であろう。

定家本

定家本では、「越」が使われるのは、古典仮名遣いが「を」の「越つ(小津)・越

のこ(男)」、古典仮名遣いが「お」の「越きのりわさ・越し(捺)・越ち(怖)」であ

る。「小津」は「小」が高起式であり、「をのこ」は 3拍 2類でHHL、「おきのる」

はHHHL『名義』、「捺す」「怖づ」はともに1類動詞ですべて高拍のアクセント

にあたり、定家の仮名遣いでは「を」であらわされるものである。定家本『土左日

記』では、「越」は「を」として使われている。

「乎」は今回対象にした四系統では、青谿書屋本と定家本のみの使用である。定

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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家本のみに使われていて、青谿書屋には「乎」が使われていない語に「乎きな(翁)・

乎とこもし(男文字)・乎むな(媼)」の 3例がある。

「乎きな」は青谿書屋本では「於むな於きな於しつへし」で、縦に「お」が並ん

でおり、定家本では「於むな乎きなに越しつへし」とこれを書き換えている。小松

英雄氏は「同一字体の隣接を避けて補助字体を使用するのも、また、縦の変化に気

を配るのも、すべて、目移りによるトバシや重複の可能性を封じるためにほかなら

ない。」とする。「翁」は『名義.神紀.巫私.丙私.謡曲.玉淵』にLHHであり、

アクセント仮名遣いでは「おきな」である。

「乎とこもし」は、青谿書屋本では「さま乎ゝとこもしに」と、助詞「乎」の踊

り字になっている部分である。「男」は定家の時代はLLLであるから、複合語で

ある「男文字」もアクセント仮名遣いでは「おとこもし」になる。

「乎むな」は青谿書屋本では「於んむな於きなひたひに」であるが、定家本はや

はり縦の変化に気を配ったとみえ、「乎むな於きな」としたものであろう。「媼」

も『和名.名義.巫私』にLHHで、アクセント仮名遣いでは「おむな」である。

以上の 3例は、貫之自筆本では「乎」で書かれていないが、定家の仮名遣いで「お」

で書くところを、「乎」で書いた例である。

青谿書屋本、定家本とも「乎」で書かれているうち、古典仮名遣いが「を」で、

アクセントはLの語に、「あ乎うなはら(青海原)・さ乎(棹)・乎かみ(拝)・乎さな

く(幼)・(く)ゝち乎しき(口惜)・くち乎し(口惜)・乎とこ(男)4例・乎とこたち(男

達)・乎とことち(男同士)・乎とことも(男共)」の 13例がある。これも上記 3例と

同様、定家が「乎」を「お」として使った例である。

また、青谿書屋本、定家本とも「乎」で書かれているうち、古典仮名遣いが「を」

でHに対応するのが「い乎(魚)2例・み乎つくし(澪標)・乎んなこ(女子)」の

4例である。語頭以外についてアクセントによる仮名遣いを採るかどうかは判然と

しないので、「い乎」「み乎つくし」については言及を避ける。「乎むなこ」は二月

十六日の条にあるが、小松氏は「定家は二月四日あたりから「乎」の使用について

方針を変更し、原本に「乎」があれば、それを踏襲するようになっている。」とし、

「乎むなこ」という例外が最後の二月十六日の条に出てくるのはそのためであろ

う。」と、アクセントによる仮名遣いになっていない理由が別途ありそうである。

以上のように、おおむね定家本の「乎」はアクセント仮名遣いの「お」として使

われている。

また、「お」のうちLは 110、Hは「おひかせ」の 2例である。「おひかぜ」が1

類動詞「追ふ」+2拍1類名詞「風」の複合名詞「追風」であるならば、同じ類別

の語構成の「焼金・刈菰」と同様HHHHのアクセントが推定される。陽明文庫本

は 2例とも「追風」、為相本は「をひかせ」で、『仮名文字遣』の諸本でも「をひか

ぜ(追風)」となっている。しかし、定家は 1類動詞「追ふ」について『土左日記』

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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では、助詞「を」からの踊り字 1例を含む 6例すべて「をひ」と表記しており、こ

こで「おひかせ」と表記しているのは、何かの理由がありそうである。

「おひかぜ」は、『土左日記』の 2 例とも和歌の例であるが、定家筆『後撰和歌

集』でも 778「今はとて行かへりぬるこゑならはおひ風にてもきこえましやは」と

「おひ風」であり、冷泉家時雨亭文庫本の『拾遺愚草』でも「かねのをとを松にふ

きしくおひ風につま木やをもきかへる山人」と「おひ風」とする。また、定家の女

民部卿局の筆と称される『惠慶集』にも 210「おひかせのこしけきむめのはらゆけ

はいもかたもとのうつりかそする」とある。これは「風を負ふ」と定家が理解して

いたためと考えるべきではないか。「負ふ」は2類動詞であり、定家の仮名遣いで

は「おひかぜ」となる。(8)

また、「を」のうちHは 43、Lは 1例「をさ(長)」である。この例外の「をさ」

については、青谿書屋本では「ふねをさ」とあり、為家本も「ふねをさ」としてい

ると考えられる(9)。定家本は「舟のをさ」とし、他本も「ふねのをさ」とする。

青谿書屋本では、「舟」の複合語はすべて「ふなうた・ふなきみ・ふなこども・ふ

なそこ・ふなひと・ふなゑひ」と被覆形をとり、「ふねをさ」が例外となる。諸本

では「ふね」の露出形を不審とし、「の」が欠如されたものと解釈して補ったので

あろうか。この部分、青谿書屋本に戻って解釈をすれば、「ふねをさしけるおきな」

とあり、「舟を指しける翁」と解釈するべきなのではないか。

「舟さす」については、『万葉集』4061「保里江欲里 水乎妣吉之都追 美布祢

左須(御舟さす)之津乎能登母波 加波能瀬麻宇勢」、『伊勢物語』三三「こもり

江に思ふ心をいかでかは舟さす棹のさしてしるべき」、『今昔物語集』七・五「六

人ノ天童子、船ヲ指テ海ノ渚ニ浮ベリ」などの例もある。現代の解釈は「舟の長」

になっているが、「長」の解釈が果たして適当なのであろうか。

池田亀鑑『古典の批判的処置に関する研究』第 3部には「ふねを」で諸本を比べ

ており、「舟の長」と解釈していないことがわかる。確かに定家本、日本大学本、

三条西本は「をさ」には連綿もなく、むしろ「船のを」としているようにみえる。

『土左日記』廿六日

『後撰和歌集』778

『拾遺愚草』下九七ウ

『惠慶集』210

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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定家の仮名遣いでは『下官集』にあるように「を」は「緒」で、「尾」は「お」で

あり、「舟のを」は「舟の緒」ということになる。「舟の緒」に棹のような意味を

持つことがあるのかはわからない。

「長」と解釈するのは、江戸中期に書写されたものに現れる。北村季吟『土佐日

記抄』出雲寺和泉掾, 寛文元(1661)年には「ふねのおさは舟長也。船中のつかさ

する心也。紀氏を云へし」とある。萩谷朴『土佐日記全注釈』(角川書店、1967

年)も「「ふねのをさ」は「ふなぎみ」に同じ。貫之のこと。」とし、現在の多く

の解釈はこれを踏襲している。

もし、定家が「舟の長」と解釈したとすれば、「ふねのをさ」を複合アクセント

でとらえ、2拍 4類+の+4類相当で、LLLHLのアクセントであったと考えら

れよう。

「おひ風」も「舟のをさ」も定家の仮名遣いには合致していると捉えることがで

きるのかもしれない。

日大本・陽明文庫本

松木宗綱本系統の二本を見ると、基本的には貫之自筆本の仮名遣いを踏襲しな

がら、書写したころの定家仮名遣いが紛れ込んでいるとみられる。

具体的には、古典仮名遣いが「お」で、定家の仮名遣いが「を」の例では、日大

本では「をか(置)2・をくれ(遅)2・をつ(捺)・をと(音)・みをくら(見送)・みを

くり(見送)」、陽明文庫本では「をか(置)3・をくれ(遅)2・をし(捺)・をしあゆ(押

鮎)・をのつから(自)・をのれ(己)2・をふ(追)・をる(織)・見をくら(見送)・見を

くり(見送)」である。また、古典仮名遣いが「を」で、定家の仮名遣いが「お」の

青谿書屋本

定家本

日大本

三条西本

『古典の批判的処置に関する研究』

九曜文庫本(文庫30 E000

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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例では、日大本「おかしき・おさなき(幼)2・おし(惜)・おしむ(惜)3・おとこ(男)5・

おとこたち(男達)・おとことち(男)・おとことも(男)・おとこもし(男文字) ・く

ちおしく(口惜)」、陽明文庫本「おとこ共(男)・おしむ(惜)3・おし(惜)・おさなく

(幼)2・おさなき(幼)2・おかしき・おかし・くちおしく(口惜)・口おしき(口惜)・

くちおし(口惜)」である。

定家の仮名遣いのうち、「男」を「おとこ」とするとともに、日大本、陽明文庫

本はアクセント体系変化にかかわらずHHLのアクセントである「をのこ」も「お

のこ」としているところから、定家の仮名遣いというより、書写当時に通行してい

た『仮名文字遣』に近い仮名遣いが紛れたと考えられる。

陽明文庫本の奥書には、宗綱の書写奥書のあとに

乍共 むの字にんを書 さの字に散を書 春の字に数をかき其外當世之假名

使ニ不相應之間 予書改てよみよくせんかため也

とあり、撥音を「ん」で書くとともに、あまり使用されなくなっていた字母「散」「数」を、「さ」

「す〈春〉」に書き改めていることが分かる。宗綱筆本では、字母レベルまで貫之自筆本

を写すということがあったのかもしれない。

5.まとめ

四系統の古典仮名遣いと、アクセント体系変化前の定家の仮名遣いとの合致率は以

下のとおりである。ここでは、先に検討した「おひ風」「をさ(長)」はアクセント仮名遣いに

合致しないものとした。

青谿書屋本 定家本 日大本 陽明文庫本 三条西本

古典 100.0% 73.3% 85.8% 79.3% 98.0%

定家 68.8% 94.4% 72.5% 75.3% 70.6%

これをみると、転写を重ねるうちに、書写された時代の定家仮名遣いの影響を受けてい

くことがうかがえる。定家筆本から写されたものは字母まで書写していることと写し方が異

なる。

一方、『土左日記』の貫之自筆本から直に書写したものは、定家筆本をのぞき、原本

の仮名遣いを活かしていた可能性がみられる。

(1) 『土左日記』の諸本による仮名遣いの研究には、桜井茂治(1964)「「土佐日記」

転写本の仮名遣について―「お」「を」の仮名遣とアクセントの関係―」『国学院雑

誌』65-05があるが、本稿では「乎」の扱いを見直して再考する。

(2) 小松英雄(1974)「藤原定家の文字づかい―「を」「お」の中和を中心として―」

『言語生活』272(『仮名文の原理』笠間書院 1988、『日本語書記史原論』笠間書院

1998に所収)

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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Page 10: 『土左日記』はどう写されたか - Waseda University『土左日記』はどう写されたか―古典書写と仮名遣い― 坂 本 清 恵 1.に はじめ 『土左日記』は、15世紀末まで伝存した紀貫之自筆本を、藤原定家、藤原為家、

(3) 依田泰(1988)「定家本『土左日記』における仮名遣について」『実践教育研究収

録』9(『藤原定家―古典書写と本歌取り』笠間書院 2005に所収)

(4) 坂本清恵(2008)「『僻案抄』の仮名遣い―定家の「乎」について」『論集』Ⅳアク

セント史資料研究会

(5) 他にも陽明文庫本(E3550)なども字母まで書写をしている。

(6) 大野晋(1950)「仮名遣いの起原について」(『国語と国文学』27-12)・(1968)「藤

原定家の仮名遣いについて」(『国語学』72)〔『仮名遣いと上代語』岩波書店 1982

に所収〕

坂本清恵(2009)「ゆれる〈をのこ〉とゆれない〈おとこ〉―『仮名文字遣』諸本

とアクセントの体系変化―」『古典語研究の焦点』武蔵野書院・(2009)「『仮名文字

遣』諸本とアクセント仮名遣い」『論集』Ⅴアクセント史資料研究会

(7) 坂本清恵(2010)「『仙源抄』とアクセント仮名遣い―長慶天皇はわかっていた―」

『国文目白』49・(2012)「定家仮名遣い再考― アクセント体系変化後の仮名遣いの

よりどころ」『国語国文』81-7

(8) 「おひかぜ」については、大野晋氏は「負風」としている。(『仮名遣いと上代語』

岩波書店 1982年)

(9) 萩谷朴(1988)「青谿書屋本『土佐日記』の極めて尠ない独自誤謬について」『中

古文学』41には「ふねをさ」が取り上げられていないことによる。

参考文献など

池田亀鑑『古典の批判的処置に関する研究』岩波書店 1941年

早稲田大学図書館古典籍総合データベース

文化遺産オンライン http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/212149

―日本女子大学文学部―

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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お149 おL 115 おきつしまもり(沖)・おきな(翁)3・おきなひと(翁人)・おこり(興)・おそり(恐)・おそろしけれ(恐)・おつ(落)2・おとら(劣)・おとれ(劣)・おとろかし(驚)・おとろき(驚)・おなし(同)14・おはす・おひ(生)2・おふせ(仰)・おへ(負)・おほいこ(大御)・おほかた・おほかり(多)2・おほかる(多)・おほかれ(多)2・おほかれ(多)・おほく(多)・おほこゑ(大声)・おほち(大路)・おほつ(大津)・おほつかな・おほみなと(大湊)4・おほんとも(御供)・おほろけ(朧気)・おんな(媼)3・おもしろかり・おもしろき・おもしろく・おもしろけれ・おもしろし3・おもて(面)・おもは(思)2・おもひ(思)16・おもひのほか(思外)2・おもふ(思)13・おもへ(思)7・おもほへ(思)おもほゆ(思)・おもほゆる(思)・おや(親)2・およひ(指)・おり(下)4・おりのり(降乗)

94 於きつしまもり(沖嶋守)・於きな(翁)2・於きなひと(翁人)・おこり(興)・於そり(恐)・於そろしけれ(恐)・於ち(落)2・於とら(劣)・おとれ(劣)・於とろかろかし(驚)・於とろき(驚)・於なし(同)14・於はす・於ひ(生)2・於ほせ(仰)・於へ(負)・おほいこ(御小)・於ほかた(大方)・於ほかり(多)・於(多)・於ほかる(多)・於ほかれ(多)2・於ほく(多)・於ほこゑ(大声)・おほち(大路)・於ほつ(大津)・於ほつかな(覚束)・於ほみなと(大湊)5・於ほんとも(御供)・於ほろけ(朧)・於んな(媼)2・於もしろかり(面白)・於もしろき(面白)・於もしろく(面白)・於もしろけれ(面白)・於もしろし(面白)3・於もて(表)・おもは(思)2・於もひ(思)9・於もふ(思)11・於もほえ(思)2・於もほゆ(思)・於ほゆる(思)・於や(親)2・於よひ(指)・於り(折)4・於りのり(下乗)

おH 32 おか(置)3・おきのりわさ・おくれ(遅)2・おこなひ(行)・おし(捺)・おしあゆ(押鮎)2・おそふ(圧)・おち(怖)・おと(音)・おのつから(自)・おのれ(己)2・おのれ(己)・おは(追)・おひ(追)6・おひかせ(追風)2・おふ(追)4・おる(織)・みおくら(見送)・みおくり(見送)

2 於ひかせ(追風)・於ひ風(追風)

を不明 2 をこせ(遣)2

お不明 2 おこせ(遣)2

をH

27 をか(置)3・をくれ(遅)2・をこなひ(行)・をしあゆ(押鮎)2・をそふ(襲)・をと(音)・をのつから(自)・をのれ(己)2・(を)ゝは(追)・をひ(追)7・をふ(追)4・をる(織)・見をくら(送)・見をくり(送)

をL乎L 2 乎きな(翁)・乎んな(媼)

越H 3 越きのりわさ・越し(捺)・越ち(怖)

漢字 19

を58

をH 6 あをやきの(青柳)・をのわらは(男童)・をへ(終)・をむな(女)・をんな(女)・をんなこ(女子)

16 あをやき(青柳)・を(緒)・をか(丘)・をつ(小津)・をのわらは(男童)・をへ(終)・をんな(女)6・をんなこ(女子)2・をり(居)・(を)ゝんな(女)1

をL 2 ふねをさ(長)・をし(惜) 1 をさ(長)

越H 2 越つ(小津)・越のこ(男)

越L

乎H 20 い乎(魚)2・み乎つくし(澪標)・乎(緒)・乎か(岡)・乎つ(小津)2・乎のこ(男)・乎んな(女)7・乎んなこ(女子)3・乎んなわらは(女童)・乎り(居)

4 い乎(魚)2・み乎つくし(澪標)・乎んなこ(女子)

乎L 30 あ乎うなはら(青海原)・あ乎く(青)・あ乎んま(白馬)・乎しむ(惜)・乎しみ(惜)2・さ乎(棹)3・乎かし・乎かしき・乎かみ(拝)・乎さなき(幼)2・乎さなく(幼)2・くち乎しく(口惜)・くち乎しき(口惜)・くち乎し(口惜)・乎とこ(男)5・乎とこたち(男達)2・乎とことも(男)・乎り(折)・乎りふし(折節)・(乎)ゝとこもし(男文字)

13 あ乎うなはら(青海原)・さ乎(棹)・乎かみ(拝)・乎さなく(幼)・(く)ゝち乎しき(口惜)・くち乎し(口惜)・乎とこ(男)4・乎とこたち(男達)・乎とことち(男同士)・乎とことも(男共)・乎とこもし(男文字)

おL 16 あ於く(青)・あ於むま(白馬)・於し(惜)・於しむ(惜)・於しみ(惜)2・於かしき3・於さなく(幼)・於とこ(男)・於り(折)・於りふし(折節)・くち於しく(口惜)・さ於(棹)2

おH

無 2

漢字 4

青谿書屋本 定家本

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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お149

おL 113 お き つ し ま も り ( 沖 ) ・ 於 き な(翁)3・於きなひと(翁人)・おこり(興)・おそり(恐)・於そろしけれ(恐)・於ち(落)2・於とら(劣)・おとれ(劣)・於とろかし(驚)・於とろき(驚)・おなし(同)14・おはす ・ お ひ (生 )2・ お本 (ふ )せ(仰)・おへ(負 )・ 於ほ いこ (大御)・おほかた・於ほかり(多)2・於ほかる(多)・於ほかれ(多)2・於ほく(多)・於ほこゑ(大声)・おほち(大路)・おほつ(大津)・於ほつかな・おほみなと(大湊)4・おほんとも(御供)・於ほろけ(朧気)・おん(も)な(媼)・おんな(媼)・於もしろかり・於もしろき・おもしろく・おもしろけれ・於もしろし・於もしろし・おも」しろし・於もて(面)・おもは(思)2・於もひ(思)14N・於もひのほか(思外)2・於もふ(思)13・おもへ(思)8・於もほえ(思)・おもほへ(思)・於もほゆ(思)・おもほゆる(思)・おや(親)2・およひ(指)・於り(下)4・おりのり(降乗)

88 於きな(翁)2・於きなひと(翁人)・於こり(興)・おそろしけれ(恐)・おち(落)2・於(本)とれり(劣)・於とろかし(驚)・おとろき(驚)・於なし(同)9・於はす・於ひ(生)・於へ(負)・於ほいこ(大御)・於ほ方・於ほかり(多)・於ほかり(多)・於ほかる(多)・於ほかれ(多)2・於ほこゑ(大声)・於ほち(大路)・於ほつかな・於ほみなと(大湊)4・於ほろけ(朧気)・おほんとも(御供)・おもな(媼)・おもしろかり・於もしろく・おもしろけれ・於もしろし3・於もて(面)・於もは(思)2・おもひ(思)8・おもひの外(思外)2・おもふ(思)10・おもへ(思)8・於もほえ(思)・おもほし(思)・於もほゆ(思)・於もほゆる(思)・於や(親)2・およひ(指)・於り(下)4・於りのり(降乗)

114 於きつしまもり(沖)・於きな(翁)3・おきなひと(翁人)・おこり(興)・於そり(恐)・おそろしけれ(恐)・おち(落)2・おとら(劣)・おとれ(劣)・於とろかし(驚)・おとろき(驚)・おなし(同)14・おはす・おひ(生)・おふせ・おへ(負)・おほいこ(大御)・おほかた・おほかり(多)2・おほかる(多)・おほかれ(多)2・おほく(多)・おほこゑ(大声)・おほち(大路)・おほつ(大津)・おほつかな・おほみなと(大湊)4・おほんとも(御供)・おほろけ・おんな(女)3・おもしろかり・於もしろき・於もしろく・於もしろけれ・於もしろし3・於もは(思)2・於もひ(思)16・おもひのほか2・於もふ(思)13・於もへ(思)8・おもほへ2・おもほゆ・おもほゆる・おや(親)2・およひ(指)・おり(下)4・おりのり(降乗)

おH 24 お(本)か(置)・おきのりわさ・おこなひ(行)・於しあゆ(押鮎)2・おそふ(圧)・おち(怖)・おのつから(自)・おのれ(己)2・おは(追)・おひ(追)8・おひかせ(追風)2・おふ(追)4・おへ(追)・おる(織)

14 於 (を歟)きのりわさ・於こなひ(行)・於(本)しあゆ(押鮎)・於そふ(圧)・於ち(怖)・於は(追)1・於ひ(追)5・於ふ(追)3

32 於か(置)3・おきのりわさ・於くれ(遅)2・おこなひ(行)・おし(押)・於しあゆ(押鮎)2・おそふ(圧)・おち(怖)・おと(音)・おのつから(自)・おのれ(己)2・おは(追)・おひ(追)6・おひかせ(追風)2・於ふ(追)4・おる(織)・見おくら・見おくり

を不明 1 をこせ(遣) 1 をこせ(遣)お不明 1 おこせ(遣) 1 於こせ(遣) 2 おこせ(遣)2無 1をH 8 をか(置)2・をくれ(遅)2・をし

(捺)・をと(音)・みをくら(見送)・みをくり(見送) 14

をか(置)3・をくれ(遅)2・をし(捺)・をしあゆ(押鮎)・をのつから(自)・をのれ(己)2・をふ(追)・をる(織)・見をくら(見送)・見をくり(見送)

をL 1 をんな(媼) 1 をとら(劣)乎L越H漢字 1 27

を58

をH 22 あをやき(青柳)・いを(魚)2・を(緒)・をつ(小津)2・をへ(終)・をんな(女)8・をんなこ(女子)3・をんなわらは(女童)・をり(居)・(を)ゝんな(女)

10 あをやき(青柳)・いを(魚)2・みをつくし(澪標)・を(緒)・をつ(小津)2・をのわらは(男童)・をへ(終)・をり(居)

25 いを(魚)2・みをつくし(澪標)・を(緒)・をか(岡)・をつ(小津)2・をのこ(男)・をのわらは(男童)・をへ(終)・をんな(女)9・(を)ゝんな(女)・をんなこ(女子)3・をんなわらは(女童)・をり(居)

をL 11 あをうなはら(青海原)・あをく(青)・をかし・をかみ(拝)・をさ(長)・をさなく(幼)2・ゝちをしき(口 惜 )・ く ち を し (口 惜 )・ を(本)り(折)・を(本)りふしに(折節)

6 あをうなはら(青海原)・あをく(青)・あをむま(白馬)・さを(棹)・を(い)にかみ(拝)・をさ(長)

24 をしみ(惜)2・さを(棹)2・ふねのをさ(長)・をかし・をかしき・をかみ(拝)・をさなき(幼)2・をさなく(幼)2・をし(惜)・くちをしく(口惜)・くちをしき(口惜)・くちをし(口惜)・をとこ(男)4・をとこたち(男達)・をとことち(男同士)・をとことも(男)・をとこもじ(男文字)

越H 1 越のわらは(男童) 1 あ越やき(青柳)

越L 4 あ越むま(白馬)・さ越(棹)3 4 あ越うなはら(青海原)・あ越く(青)・あ越むま(白馬)・さ越(棹)

乎H

乎L 0

おL 17 おかしき・おさなき(幼)2・於し(惜)・お しむ (惜 )3・お とこ(男)5・於とこたち(男達)・おとことち(男)・於とことも(男)・おとこもし(男文字) ・くち於しく(口惜)

14 於とこ共(男)・於しむ(惜)3・於し(惜)・於さなく(幼)2・於さなき(幼)2・於かしき・於かし・くち於しく(口惜)・口於しき(口惜)・くち於し(口惜)

4 於しむ(惜)・於とこ(男)・おり(折)・於りふし(折節)

おH 3 みおつくし(澪標)・おか(岡)・おのこ(男)

1 おのこ(男)

ほ 2 さほ(棹)2無漢字 24

陽明文庫本日大本 三条西本

アクセント史資料研究会『論集』XIII(2018.2)

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