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大月市森林資源有効活用再生可能 エネルギー導入計画作成事業委託 報 告 書 【概要版】 平成 29 年 3 月 大 月 市

大月市森林資源有効活用再生可能 エネルギー導入計画作成事業委 … · 作業道のみを搬出可能な路網とした。 3.2 解析結果 (1)林道・作業道の作成

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大月市森林資源有効活用再生可能エネルギー導入計画作成事業委託

報 告 書

【概要版】

平成 29 年 3 月

大 月 市

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目次

第1章 業務概要 .............................................................. 1

1. 業務目的 ............................................................... 1

2. 実施内容 ............................................................... 1

第2章 賦存量調査 ............................................................ 2

1. 林相区分 ............................................................... 2

1.1 対象範囲 ............................................................ 2

1.2 解析の手順 .......................................................... 2

1.4 解析結果 ............................................................ 2

2. 賦存量の推定 ........................................................... 3

2.1 解析手順 ............................................................ 3

(1)地形解析 ............................................................ 3

(2)樹高の計測........................................................... 3

(3)樹頂点の抽出......................................................... 3

(4)現地調査 ............................................................ 4

(5)賦存量の推定......................................................... 4

2.2 解析結果 ............................................................ 4

(1)地形解析 ............................................................ 4

(2)賦存量の推定......................................................... 4

3. 利用可能量の推定........................................................ 4

3.1 解析手順 ............................................................ 4

3.2 解析結果 ............................................................ 5

(1)林道・作業道の作成 ................................................... 5

(2)利用可能量の推定 ..................................................... 5

第3章 採算性等の調査 .................................................................................................... 7

1.大月バイオマス発電の計画と燃料要件 ....................................................................... 7

2.加工能力調査 ............................................................................................................... 7

3.木質チップ工場事業採算性評価 .................................................................................. 8

3.1 木質チップ工場の建設に必要な設備等および費用 ............................................. 8

3.2 木質チップ工場の運営にかかる費用 ................................................................... 9

3.3 木質チップ工場の事業収支 ................................................................................ 10

(1)事業収支の試算 .................................................................................................. 10

(2)事業収支の改善策(年間生産量 3 万 t での採算のとり方) ............................. 10

(3)採算の取れる木質チップ工場(年間生産量 5 万 t での事業)........................... 11

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第4章 再生可能エネルギー導入計画(案)の策定 .......................................................... 13

1.大月市再生可能エネルギー導入計画(案)の策定 ................................................... 13

1.1 大月市における木質チップ工場建設 ................................................................. 13

(1)大月バイオマス発電所への販売に特化した木質チップ工場 ............................. 13

(2)大月バイオマス発電所への販売価格の検討 ...................................................... 15

1.2 木質チップ原材料の供給について ..................................................................... 16

(1)利用可能量の現状 ............................................................................................... 16

(2)燃料供給の可能性 ............................................................................................... 16

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第1章 業務概要

1. 業務目的

大月市においては、平成 22 年に大月バイオマス発電所の計画が立ち上がり、平成 30

年度からの稼働が予定されており、新たな雇用創出や木質バイオマスの供給による林業

再生、さらには地域の低炭素化といった新たな環境への取り組みとしても期待が高まっ

ているところである。しかし一方で、急峻な地形のため、利用可能な森林資源量や、間

伐-搬出-加工にかかるコスト、伐採後の森林保全方法が明確ではないため、木質バイオ

マス発電に地元未利用材を長期安定供給するための具体的な数量や協定締結のための検

討材料が乏しい状況にある。

本事業は、本市の森林資源を木質バイオマス発電所へ長期安定供給することで、林業

再生による持続的な森林整備と保全、さらには地域の低炭素化を実現することを目的と

し、森林資源賦存量や長期安定利用可能量の詳細な調査を行い、再生可能エネルギー導

入計画を策定した。

2. 実施内容

本業務の実施項目、業務全体の業務

フローは、以下の通りである。

① 計画準備

② 賦存量調査

③ 森林等の保全管理方法

④ 採算性等の調査

⑤ 再生可能エネルギー導入計画

(案)の策定

⑥ 協議会の実施運営

⑦ 打合せ

基礎データの作成 木材需要調査

地形解析

森林資源量解析

・林相区分

・樹高の計測

・現地調査

・賦存量の推定

・林道・作業道データ作成

・利用可能量の推定

・作業コスト調査

加工能力調査

事業採算性の評価

資源の循環利用や利用拡

大のための調査

森林の保全管理方法

賦存量調査 採算性等の調査

取りまとめ

計画準備

再生可能エネルギー導入

計画(案)の策定

図1.1 業務全体フロー

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第2章 賦存量調査

1. 林相区分

1.1 対象範囲

対象範囲は民有林(県有林を除く)であるた

め山梨県より提供を受けた森林計画図から対

象範囲を特定した。以降の賦存量調査、利用可

能量調査においても同様である。

1.2 解析の手順

航空写真を用いて領域分割という画像解析

手法で領域を自動的に分割し、領域毎に判読し

た。次に、対象地内に 20mメッシュの点を作

成し、領域分割の判読結果をこの点に反映し、

点ごとに目視判読し林相区分図を作成した。

1.4 解析結果

本業務の対象範囲である民有林(県有林を

除く)の 20mメッシュ点データの判読結果の

全体図を図2.1-3に示す。

表2.1-1に判読による林相別の面積を

示す。人工林であるスギとヒノキは約

2,300ha、構成比が約 17%と同程度であった。

広葉樹が最も広く約 7,350ha、構成比では約

54%を占めた。

図2.1-1 対象範囲

図2.1-2 点判読の例

判読項目 面積(ha) 構成比(%)スギ 2,334.2 17ヒノキ 2,272.8 16.6マツ 910.5 6.6その他針葉樹 202.4 1.5広葉樹 7,346.30 53.5竹林・ササ 89.3 0.7伐採跡地 56.7 0.4草地 76.3 0.6その他 436.7 3.2

合計 13,725.2 100

表2.1-1 林相別の面積

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図2.1-3 点判読による林相区分結果

2. 賦存量の推定

2.1 解析手順

(1)地形解析

レーザ計測成果(解像度 1m)から地形解析データを実施した。ここで作成した地

形解析データは、傾斜区分図、微地形強調図、斜面方位区分図である。

(2)樹高の計測

レーザ計測成果から作成した表層面データ(DSM)と地表面データ(DTM)の差分を

計算し樹冠高(DCHM)を算出した。作成した樹冠高(DCHM)と後述する樹頂点を重ね

合わせ、樹頂点直下の DCHMの値を樹高とし、単木単位で算出した。

(3)樹頂点の抽出

前項で作成した DCHMでは、局所的に高さが突出している箇所がある。これが、森

林内の立木それぞれの樹頂点であると想定し、局所最大値法という統計手法を用い樹

頂点を抽出した。なお、民有林(県有林を除く)内かつ林相区分がスギ・ヒノキに重

なる樹頂点を解析対象となる樹頂点とした。

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傾斜区分 面積(ha) 割合(%) 累積割合(%)15°未満 955.5 7.0 7.0

15°~20° 525.9 3.8 10.820°~30° 1,843.7 13.4 24.230°~40° 4,982.6 36.3 60.540°~50° 4,500.6 32.8 93.350°以上 917.2 6.7 100.0

合計 13,725.4 100.0 100.0

(4)現地調査

主要樹種であるスギ(25 箇所)、ヒノキ(19 箇所)、マツ(22 箇所)、広葉樹(22

箇所)について、立木調査を実施した。調査方法は、1地点につき 10m×10m(水平

距離)のプロットを設け、プロットに含まれる立木の本数、胸高直径、樹高を計測し

た。立木調査を実施した全立木の樹高、胸高直径から散布図を作成することにより、

樹高と胸高直径の回帰式を求めた。

(5)賦存量の推定

現地調査結果から求めた樹高と胸高直径の回帰式を用いて樹頂点ごとに胸高直径

を推定した。次に、樹頂点毎の樹高と胸高直径を用いて幹材積を算出した。幹材積の

算出には幹材積計算プログラム(独立行政法人森林総合研究所)を用いた。この樹頂

点毎の幹材積を集計することにより、人工林の賦存量を推定した。

2.2 解析結果

(1)地形解析

対象地内では、傾斜区分 30~

50°の急傾斜地が約 70%の割合

であった。

(2)賦存量の推定

重量は 1㎥=0.8tとして換算し、ha当たりの算出では表2.1-1の面積を適用し

賦存量を推定した。民有林内(県有林を除く)の賦存量は約 140万m3でありスギ、

ヒノキの内訳を見るとスギのほうがヒノキよりも多く、ヒノキの約約 1.7倍であった。

県全体の民有林における ha当たりの蓄積(平成 27年度版 山梨県林業統計書)は、

スギで 413.7m3/ha、ヒノキで 250.7m3/ha となっている。これと比較すると、スギ、

ヒノキ共に県全体の値よりも 10%程低い値である。

3. 利用可能量の推定

3.1 解析手順

山梨県から借用した既存の林道・作業道データ、国土地理院から購入した数値地図(国

土基本情報)の公道データ、微地形強調図、航空写真を用いて林道・作業道データを整備

した。このデータを搬出路網と位置付け、片側 100m、150m、200mの範囲に含まれるス

表2.2-1 傾斜区分別の面積(県有林を除く民有林)

表2.2-2 人工林の賦存量(総量) 表2.2-3 人工林の賦存量(ha 当たり)

樹種 幹材積(m3) 重量(t)

スギ 874,124 699,299

ヒノキ 517,259 413,807

合計 1,391,383 1,113,107

樹種 幹材積(m3/ha) 重量(t/ha)

スギ 374.5 299.6

ヒノキ 227.6 182.1

合計 302 241.6

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ギ、ヒノキを利用可能量とした。この時、高性能林業機械を利用できる最大傾斜が最大

35度を目安(林野庁)としていることと、林業事業体のヒアリングにおいて平均傾斜 30

度を目安にしているとのことから、平均傾斜 30度以下の小班を通っている公道、林道・

作業道のみを搬出可能な路網とした。

3.2 解析結果

(1)林道・作業道の作成

路網密度を見ると市街地を含む大月市全域で最も長い 26.1mで、次に本業務の解析範

囲である民有林(県有林)で 13.4mであった。公道を含まない純粋な林内のみの道路で

ある林道・作業道を見ると各区域に大きな違いはなかったが、全ての区域で公道を含んだ

ものより2m以上短かった。全国値の路網密度は19.5m/ha(平成27年度 森林林業白書)、

地域森林計画書(山梨県東部森林計画区)に示されている傾斜 30°未満の水準である

25m/haと比較して大月市の路網密度は低いものとなっている。

表2.3-1 林道・作業道の集計結果

(2)利用可能量の推定

重量は 1㎥=0.8t として換算し利用可能量を推定した。スギ、ヒノキ合計の片側 100m

での利用可能量を基準とすると、片側 150mでは約 1.6倍、片側 200mでは約 2倍に利用

可能量が増える結果となった。前述した人工林の賦存量を勘案すると、片側 100mでは全

体の約 15.6%、片側 150mでは全体の約 24.1%、片側 200mでは全体の約 32.7%が含ま

れていることが分かった。ha当たりの利用可能量を見ると、道路からの距離が長くなる

とその値も大きくなることから、道路から離れたほうが高蓄積の林分があると推測される。

表2.3-2 公道、林道・作業道からの人工林利用可能量(総量):重量(t)

表2.3-3 公道、林道・作業道からの人工林利用可能量(ha 当たり):重量(t)

対象範囲 集計種別 道路距離(m) 面積(ha) 路網密度(m/ha)公道、林道・作業道 730,870.4 26.1林道・作業道 304,899.1 10.9公道、林道・作業道 183,761.5 13.4林道・作業道 129,348.0 9.4公道、林道・作業道 290,912.5 11.8林道作業道 229,273.1 9.3

大月市全域

民有林(県有林除く)

民有林(県有林含む)

28,010.2

13,725.2

24,575.5

樹種 片側100m 片側150m 片側200mスギ 109,069 166,315 227,999ヒノキ 64,466 102,406 135,896

合計 173,535 268,722 363,895

樹種 片側100m 片側150m 片側200mスギ 292.3 297.9 301.9ヒノキ 187.5 192.8 194

合計 242.1 246.6 250

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図2.2-1 賦存量分布図

図2.3-1 利用可能量分布図(片側 150m)

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第3章 採算性等の調査

1.大月バイオマス発電の計画と燃料要件

現在大月市において、内陸部としては国内最大級の規模(出力 14.5MW)となる木質バ

イオマス発電所の建設が進められており、2018 年 8 月の営業運転開始に向けて建設会社

大手の大林組が 2016 年 8月 3日から建設を開始している。発電に利用される木材は、大

半が街路、公園などの樹木の剪定により発生した剪定枝が予定されているが、計画調達量

約 16万 tの内、約 2万 tは間伐材などの未利用材からの調達が計画されおり、大月市に

おける今後の森林振興に大きな役割を果たすことが期待されている。大月バイオマス発電

所で燃料として利用される木質チップに求められる要件を以下に示す。一般的な木質バイ

オマス発電所に比べ対応し易いものと考えられる。

表3.1-1 大月バイオマス発電事業概要及びチップ要件

出典:大月バイオマス発電株式会社 説明会資料より抜粋及びヒアリングにもとづく

2.加工能力調査

大月市およびその近隣で木質チップを生産している事業者 2 社にヒアリングしたとこ

ろ、両社の生産するチップの一部は既に県外の複数のバイオマス発電所に出荷されていた。

取引条件にもよるが、大月市にバイオマス発電所が建設された場合、チップを追加生産す

ることなく、現在生産しているチップの一部を同発電所に振り向けることも可能なようで

ある。また、チップの生産余力については両社合わせて年間 70,000t以上あり、今後大月

市における間伐により搬出される材を処理するには十分な余剰能力と言える。

表3.2-1 近隣チップ加工事業者のチップ生産

※ 事業者からの聞き取り結果を基に、原木の含水率を 55%wb、

チップ化後の含水率 50%wb に補正した値

事業者 大月バイオマス発電株式会社(大林組グループ)事業用地 山梨県大月市笹子町白野1158-1外(19,298㎡)発電容量 出力 14,500kW (送電端出力 12,500kW)

燃料種類未利用木材、剪定枝、バーク(樹皮)、PKS(緊急時対応用)

系統連系 特別高圧線:66kVチップ形状 切削チップ、破砕チップ ともに可

チップサイズ 50mm程度を想定(最大70mm)

含水率 43%以下(湿量基準(wb))

A社 B社

現状のチップ生産量※ 約55,000t/年 約54,000t/年

追加的に生産可能な量※ 約55,000t/年 約21,000t/年

チップの性状 チップの性状切削チップ

ピンチップ(15~50mm)含水率 約40% 約40%

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3.木質チップ工場事業採算性評価

本節では、大月バイオマス発電所への木質チップ供給を念頭に、大月市内に木質チップ

工場を建設、運営する事業の事業性について検討する。

3.1 木質チップ工場の建設に必要な設備等および費用

木質チップ工場において必要となる設備は主に次のようなものがある。①チッパー②グ

ラップル③ホイルローダ④チップ搬送用車両⑤チップ保管倉庫⑥原木貯木場⑦トラック

スケール、これらについて、木質チップの製造量を年間①5,000t、②10,000t、③30,000t

と仮置きした場合についての必要な設備、費用を想定し初期費用について検討した結果を

以下に示す。

表3.3-1 木質チップ年間生産量別初期費用一覧

チップ生産量が少ない場合はチッパーの購入費、生産量が多くなってくれば貯木場

の造成費の全体の費用に占める割合が多くなる。初期費用の削減をはかるには、生産

量が少ない場合はできるだけ安価なチッパーを選択すること、多い場合は貯木場の面

積を少なくしても作業が回るオペレーションを構築することなどが効果的であろう。

年間生産量

5,000(ton/年) 10,000(ton/年) 30,000(ton/年) 50,000(ton/年)

設備等 単価 単位 数量 金額 数量 金額 数量 金額

チッパー ¥56,000,000 円/台 1 ¥56,000,000 1 ¥56,000,000 0 ¥0

¥68,000,000 円/台 0 ¥0 0 ¥0 1 ¥68,000,000

グラップル ¥12,000,000 円/台 2 ¥24,000,000 2 ¥24,000,000 2 ¥24,000,000

ホイルローダ ¥15,000,000 円/台 1 ¥15,000,000 1 ¥15,000,000 1 ¥15,000,000

トラックスケール ¥7,000,000 円/台 1 ¥7,000,000 2 ¥14,000,000 4 ¥28,000,000

チップ保管庫 ¥37,000 円/㎡ 340 ¥12,580,000 340 ¥12,580,000 800 ¥29,600,000

貯木場造成費 ¥2,000 円/㎡ 4,250 ¥8,500,000 8,500 ¥17,000,000 25,500 ¥51,000,000

その他 ¥8,000,000 一式 1 ¥8,000,000 1 ¥8,000,000 1 ¥8,000,000

合計 ¥131,080,000 ¥146,580,000 ¥223,600,000

チッパー

43%

グラップル

18%

ホイルロー

ダ

11%

TS5%

保管庫

10%

造成費

7%

その他6%

5,000ton/年

チッパー

30%

グラップル

11%ホイルロー

ダ

7%TS12%

保管庫

13%

造成費

23%

その他

4%

30,000ton/年

チッパー

38%

グラップル

16%

ホイルロー

ダ

10%

TS10%

保管庫

9%

造成費

12%

その他5%

10,000ton/年

図3.3-1 初期費用の内訳

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3.2 木質チップ工場の運営にかかる費用

本節では、木質チップ工場の運営に必要な諸経費について検討する。木質チップ工場に

おいて必要となる諸経費には次のようなものがある。

①原木購入費②チップ運送費③人件費④その他(機器保守費、燃料費、借地料等)

上記のそれぞれについて、木質チップの製造量を年間①5,000t、②10,000t、③30,000t

と仮置きした場合について検討した。これら経費に定資産税、減価償却費等を加えた運用

費用を以下に示す。

表3.3-2木質チップ年間生産量別運用費用一覧

図3.3-2 運用費用の内訳

運用費用の大半は原木の購入費とチップの運送費が占めており、それら以外では機

器の購入や貯木場の造成などによる減価償却費の比率が高い。

年間生産量

5,000(ton/年) 10,000(ton/年) 30,000(ton/年) 50,000(ton/年)

費用項目 単価 単位 数量 金額 数量 金額 数量 金額

原木購入費 ¥5,000 円/㎥ 6,250 ¥31,250,000 12,500 ¥62,500,000 37,500 ¥187,500,000

チップ運送費 ¥1,000 円/ton 5,000 ¥5,000,000 10,000 ¥10,000,000 30,000 ¥30,000,000

人件費 ¥4,800,000 円/人 2 ¥9,600,000 3 ¥14,400,000 5 ¥24,000,000

機器保守費 - 一式 - ¥2,032,000 - ¥3,683,333 - ¥10,630,000

燃料費 - 一式 - ¥2,680,224 - ¥5,360,448 - ¥15,531,343

保険 0.20% % - ¥245,160 - ¥259,160 - ¥345,200

借地料 ¥300 円/㎡ 4,250 ¥1,275,000 8,500 ¥2,550,000 25,500 ¥7,650,000

小計 ¥52,082,384 ¥98,752,941 ¥275,656,543

固定資産税 初年度 - - ¥1,835,120 - ¥2,052,120 - ¥3,130,400

減価償却費 定額法 - - ¥14,688,667 - ¥16,130,333 - ¥22,781,667

合計 ¥68,606,171 ¥116,935,394 ¥301,568,610

原木購入費

46%

運送料

7%

人件費

14%

保守費

3%

燃料費

4%

借地料

2%

固定資産税

3%

減価償却

21%

5,000ton/年

原木購入費63%

運送料

10%

人件費

8%

保守費

4%

燃料費

5%

借地料

2%

固定資産税

1%減価償却

7% 30,000ton/年

原木購入費53%

運送料

9%

人件費12%

保守費

3%

燃料費

5%

借地料

2%

固定資産税

2%

減価償却

14%

10,000ton/年

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運送料

26%

人件費

21%

保守費

9%

燃料費

14%

借地料

7%

固定資産税

3%

減価償却20%

原木購入費以外の支出(30,000トンケース)

3.3 木質チップ工場の事業収支

(1)事業収支の試算

仕入 5,000 円/㎥、つまり 6,250 円/t(1 丸太㎥=0.8t で算出)に対し、チップ化

コストを 2,000円/t、輸送料を 1,000円/tを乗せた 9,250円/tでチップが販売でき

ると仮定した場合の事業収支を以下に示す。

年間生産量がいずれのケースにおいても収支はマイナスとなるが、その赤字額の

売上に対する比率は生産量が多くなるほど小さくなっていることがわかる。

(2)事業収支の改善策(年間生産量 3 万 t での採算のとり方)

先に見た通り、年間生産量いずれのケースにおいても事業収支は赤字である。チ

ップ販売単価を上げることが期待できないとすると、事業を成り立たせるためには

支出の削減が必要である。支出の削減においては、支出の大きな部分を占める原木

購入費の削減が最も効果が大きい。原木購入費の削減は地域の林業振興に反するも

のであるため、できる限り原木購入費を削減することなく収支を改善する方策を見

出すことが望まれる。

ここで、原木購入費以外の支出に占める赤字額の割合

を見ると、チップの年間生産量 5,000tの場合は原木購入

費以外の支出 37百万円に対して 22百万円の赤字となっ

ており、支出に対する割合は 6割を占める。つまり、こ

のケースで収支を黒字化するためには原木購入費以外の

支出を 3分の 1に抑える必要があり、現実的とは言えな

い。一方で、年間生産量 30,000tのケースでは、支出 114

百万円に対して赤字額 24百万円となり赤字額が占める

割合は 2割強であり、対策次第では黒字化できる可

能性がある。以下では年間チップ生産量 3万 tのケ

ースの黒字化の方策について検討する。

チップ販売

料金原木購入費

運送費

人件費

保守費借地料

減価償却

0

10

20

30

40

50

60

70

80

収入 支出

(百万円) 年間生産量5,000トン

46,250,000円

68,606,171円

差:22,356,171円

チップ販売

料金

原木購入費

運送費

人件費保守費借地料

減価償却

0

20

40

60

80

100

120

140

収入 支出

(百万円) 年間生産量 10,000トン

92,500,000円

116,935,394円

差:24,435,394円

チップ販売

料金

原木購入費

運送費

人件費保守費

借地料減価償却

0

50

100

150

200

250

300

350

収入 支出

(百万円) 年間生産量 30,000トン

277,500,000円297,866,010円

差:20,366,010円

図3.3-3 年間生産量別の事業収支

図3.3-4 年間チップ生産量 30,000t

のケースでの原木購入費以外の支出

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チップ販売

料金

原木購入費

運送費人件費保守費借地料

減価償却

0

50

100

150

200

250

300

350

収入 支出

(百万円) 年間生産量 30,000トン

277,500,000円 270,827,777円

差:+6,672,223円

支出の主な削減策としては、以下のような手段が考えられる。

以上の削減策を全て実施することができ

れば、おおよそ 31百万円の運用費削減につ

ながり、営業利益はプラス(+6.7百万円/

年(初期費用の 5%弱))に改善する。また、

設備の減価償却が進めば、固定資産税の減

少も含めさらに収支が改善する。一方で、

仮に人員の削減ができなかった場合たちま

ち営業利益は 2 百万円程度になり、また上

記では考慮していない事業資金借入にとも

なう支払利息等もあるため、全ての削減策

を実現できたとしても、まだなおぎりぎり

の採算である。

(3)採算の取れる木質チップ工場(年間生産量 5 万 t での事業)

以上の検証の通り、木質チップ工場の採算は年間 30,000t生産のケースで経費を切り詰

めてもなおぎりぎりの採算であった。ここでは前節で検討した経費削減策を取り入れた、

年間生産量 50,000tのケースの事業採算性を検証する。

まず、初期費用算出に当たっての前提を以下に示す。

<初期費用算出の前提>

補助金: 造成費を含むすべての初期投資に 2 分の 1 の補助が得られるものと

する。

チッパー: JENZ社自走式チッパー(MEGA540DL)2台を導入する。また、複数台

導入による 10%のディスカウントを想定する。

グラップル:チップ化作業用に 2台、貯木場作業用に 1台を導入する。

また、複数台導入による 10%のディスカウントを想定する。

ホイルローダ:1台導入する。

トラックスケール:貯木場が 2カ所になるとして、2台導入する。

チップ保管庫:2日分のチップが保管できる規模とする。また、保管庫の大型化に

項目 条件

ア.補助金の活用 補助率2分の1の補助金を得られた場合 減価償却費 :約11百万円削減

イ.貯木場の縮小 貯木場面積を半分に縮小できた場合 借地料 :約4百万円削減

減価償却費 :約2百万円(1/2補助適用の場合は約1百万円)削減

ウ.機器購入費の削減 トラックスケールの台数を半分にできた場合 減価償却費 :約2百万円(1/2補助適用の場合は約1百万円)削減

エ.運送費の削減 運送費を3割削減できた場合 運送費 :約9百万円削減

オ.人件費の削減 人員1を1名削減できた場合 人件費 :約5百万円削減

結果

図3.3-5 支出削減による事業収支

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費用項目 単価 単位 数量 金額

売上高 ¥462,500,000

チップ販売料金 ¥9,250 円/ton 50,000 ¥462,500,000

売上原価 ¥450,625,907

原木購入費 ¥5,000 円/㎥ 62,500 ¥312,500,000

チップ運送料 ¥700 円/ton 50,000 ¥35,000,000

人件費 ¥4,800,000 円/人 5 ¥24,000,000

機器保守費 - 一式 - ¥16,776,667

燃料費 - 一式 - ¥25,373,333

保険 0.20% % - ¥431,280

借地料 ¥300 円/㎡ 21,000 ¥6,300,000

固定資産税 初年度 - - ¥3,606,960

減価償却費 定額法 - - ¥26,637,667

営業利益 ¥11,874,093

より保管庫建設の平米単価が 20%下がると想定する。

貯木場: 3ヵ月分の原木が保管できる規模とする。

その他: 自走式チッパーの保管庫や管理棟が大きくなるため、建設費は 50%

上がるものとする。

以上の前提に基づき算出した初期費用の一覧を以下に示す。

表3.3-3 初期費用一覧

続いて運用費用の前提は以下の通り。

<運用費用算出の前提>

チップ運送料:チップの大量輸送により運送コストが 30%下がるものとする。

人件費: チップ化作業要員 2名を含め、5名で操業する。

以上の他、チップの販売価格や原

木の購入単価など、他の条件はこれ

までの試算と同じとした場合の事業

収支は以下の通りとなる。年間生産

量 50,000t のチップ工場の場合、年

間 12百万円(初期費用の 9%強)の営

業利益が出るようになる。仮に初期

費用の 3%の支払利息を支払ったとし

ても、8百万円程度の経常利益が残る

ことになり、ある程度余裕のある事

業運営が実現できるものと考えられ

る。

設備等 単価 割引率 単位 数量 金額 1/2補助適用後

チッパー ¥56,000,000 10% 円/台 2 ¥100,800,000 ¥50,400,000

グラップル ¥12,000,000 10% 円/台 3 ¥32,400,000 ¥16,200,000

ホイルローダ ¥15,000,000 0% 円/台 1 ¥15,000,000 ¥7,500,000

トラックスケール ¥7,000,000 0% 円/台 2 ¥14,000,000 ¥7,000,000

チップ保管庫 ¥37,000 20% 円/㎡ 1,400 ¥41,440,000 ¥20,720,000

貯木場造成費 ¥2,000 0% 円/㎡ 21,000 ¥42,000,000 ¥21,000,000

その他 ¥8,000,000 -50% 一式 1 ¥12,000,000 ¥6,000,000

合計 ¥257,640,000 ¥128,820,000

表3.3-4 年間生産量 50,000t の事業収支

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第4章 再生可能エネルギー導入計画(案)の策定

1.大月市再生可能エネルギー導入計画(案)の策定

1.1 大月市における木質チップ工場建設

第3章では様々な想定のもとでの木質チップ工場の採算性について検討した。その想定

は、大月バイオマス発電所以外の取引先への納入の可能性なども含んだ検討となっており、

また、チップの販売価格も、原木の購入費にチップ化コストおよび運送料として 3,000

円を加えた価格で販売できるものとしていた。しかしながら現時点で明らかになっている

チップの販売先は大月バイオマス発電所のみであり、チップの販売も想定通りの価格で販

売できるかはわからない。そこで以下では、生産したチップを大月バイオマス発電所に全

量販売することを大前提に最も効率化されたチップ工場について検討し、当該工場で採算

をとるための最低限の販売価格について考察する。

(1)大月バイオマス発電所への販売に特化した木質チップ工場

第3章で検討した通り、チップ工場は生産規模が大きくなるほど採算がとりやすく

なる。一方で、規模が大きくなれば、今度は原木の調達が難しくなってくる。そこで

以下では、第3章で採算が取れる可能性があるとした年間 30,000tのチップ生産規模

で、大月バイオマス発電所への販売に特化した必要最小限の木質チップ工場の構成に

ついて検討する。大月バイオマス発電所への販売に特化した場合には以下の前提が成

り立つと考えられる。

(大月バイオマス発電所に特化した場合の前提)

発電所に大規模なチップ乾燥施設がある

発電所側で十分な燃料チップのバッファーを持つ

チップ工場は発電所から 5km 以内に建設される

以上の前提に立つと、第3章で検討したよりもさらに踏み込んだ経費削減策を取り

うる。具体的には以下の追加的削減策が考えられる。

上記の経費削減策に従えば、①貯木場については、必要最小限の 2ヵ月分の原木が

保管できる広さにし、②チップ保管庫とホイルローダは所有せず、③運送費は 1t当

(大月バイオマス発電所に特化した場合の追加的経費削減策)

①     貯木場の更に大幅な削減 ⇒運ばれてきた原木を乾燥させることなく、即時に

チップ化することができるため、貯木場面積を最小限に抑えることができる。

②     チップ保管倉庫とホイル

  ローダの削減 ⇒

  安定供給が求められないため、チップ工場側で

チップを保管する必要はない。したがって、チップ保管倉庫や、保管されたチップを積み込むためのホイルローダも不要となる。

③     運送費用の更なる削減 ⇒供給先が1カ所で、さらに距離も近いことから、

最大限効率化された運送が可能となる。

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たり 500 円以下1とすることができる。これらの対策を施し、且つ、原木買取価格に

3,000 円を加えた価格でチップが販売できるとした場合の初期費用および事業収支

を記す。

表4.1-1 大月バイオマス発電所向けに特化した事業の初期費用

表4.1-2 大月バイオマス発電所向けに特化した事業収支

以上の通り、仮に原木購入価格プラス 3,000円で 30,000tのチップが販売できた場

合、1,200万円もの十分な営業利益(初期投資の 19%)が出る。ただし、本事業はか

なり切り詰めた計画となっており、以下のリスクがあることに留意する必要がある。

(留意事項)

稼働日を 250日とした場合、チップ製造、チップ運送ともに稼働時間が 1

日 8 時間となり全く余裕がない。交代制にするなどして稼働日を増やし

た場合、必要人員数が増え、人件費が増す。

1 荷台容積 25 ㎥の 4t トラック(約 850万円、普通免許で運転可能)2 台を購入し、2 名の運転手

(人件費 480 万円/年)で、1 往復 40 分でチップ納入ができると仮定した場合を試算すると、1t

当たりの運送費は約 450円となる。

設備等 単価 単位 数量 金額 補助率 補助適用後

チッパー ¥68,000,000 円/台 1 ¥68,000,000 50% ¥34,000,000

グラップル ¥12,000,000 円/台 2 ¥24,000,000 50% ¥12,000,000

ホイルローダ ¥15,000,000 円/台 0 ¥0 50% ¥0

トラックスケール ¥7,000,000 円/台 1 ¥7,000,000 50% ¥3,500,000

チップ保管庫 ¥37,000 円/㎡ 0 ¥0 50% ¥0

貯木場造成費 ¥2,000 円/㎡ 8,500 ¥17,000,000 50% ¥8,500,000

その他 ¥12,000,000 一式 1 ¥12,000,000 50% ¥6,000,000

合計 ¥128,000,000 ¥64,000,000

費用項目 単価 単位 数量 金額

売上高 ¥277,500,000

チップ販売料金 ¥9,250 円/ton 30,000 ¥277,500,000

売上原価 ¥265,362,333

原木購入費 ¥5,000 円/㎥ 37,500 ¥187,500,000

チップ運送料 ¥500 円/ton 30,000 ¥15,000,000

人件費 ¥4,800,000 円/人 5 ¥24,000,000

機器保守費 - 一式 - ¥9,790,000

燃料費 - 一式 - ¥10,200,000

保険 0.20% % - ¥222,000

借地料 ¥300 円/㎡ 8,500 ¥2,550,000

固定資産税 初年度 - - ¥1,792,000

減価償却費 定額法 - - ¥14,308,333

営業利益 ¥12,137,667

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チップ販売価格が原木購入費プラス 2,600 円/t まで下がると営業利益は

ほぼゼロ(支払利息等を踏まえれば実質的に赤字)になる。

年間チップ生産量が 25,000t まで下がると、営業利益はほぼゼロ(実質

的に赤字)になる。したがって、操業が止まらない安定的な原木の調達

が必要である(貯木場面積は 2ヵ月分としている)。

(2)大月バイオマス発電所への販売価格の検討

前節で検討した大月バイオマス発電所への納入に特化した木質チップ工場の営業

利益は最大で年間 1,200万円となり、採算が取れる可能性は十分にあることが分かっ

た。だだし、ただし、原木の調達が十分に行えなかったり、想定よりもチップ販売価

格が下がった場合はたちまち赤字となる可能性がある。

以下では、前節で検討したチップ工場とその操業を前提に、採算の取れるチップの

生産量およびチップ販売価格について検討する。

<チップの販売価格>

これまで、チップ販売価格は原木の調達価格に 3,000 円/t を上乗せした額を想定

していた(以下、この上乗せ価格を「チップ販売マージン」という)。年間 30,000t

のチップを生産した場合、チップ販売マージン 3,000 円/t であれば初期投資額に対

する利益率(以下、「ROI」という)は 19%であった。

初期費用を全て借入金で賄い、その支払利息が 2.5%とすると、ROIは最低でも 2.5%

は必要となる。年間 30,000tのチップが生産できる場合、ROIが 2.5%となるチップ販

売マージンはおおよそ 2,650円/tとなる。

30,000tのチップが生産できない場合、当然ながら想定した利益は得られない。こ

こで、上記のチップの販売価格の検討と同様に ROI が 2.5%となる生産量を試算する

と、年間 26,500tとなる(チップ販売マージンは 3,000円/tとする)。

以上から、採算の取れる事業(ROIが 2.5%以上となる事業)とするためには、以下

の点が必要であることが分かった。

30,000t/年を生産、チップ販売マージンは 2,650円/t以上として販売

チップ販売マージンを 3,000円/t とし、26,500t/年以上のチップを生産

大月市における森林振興のためには、原木をできる限り多く、そして高く買い取れ

ることが望ましいことから、本検討においては、「年間 30,000t以上のチップを生産

し、チップ販売マージンは 2,650 円/t 以上として販売する」ことを目標とすること

が適切と考える。仮にチップを原木調達価格+2,650円/tで販売することができない

のであれば、さらに多くの原木を調達し、チップ工場の規模を大きくしてチップ販売

マージンを削減していく必要がある。

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1.2 木質チップ原材料の供給について

大月市においては、大月バイオマス発電所への木質チップの納入を前提に、木質チップ

原材料(原木)供給可能性について検討する必要がある。

ここでは、上記前提のほか、地域の林業振興や生物多様性の保全等も考慮し、木質チッ

プ原材料の供給に関し検討する。

(1)利用可能量の現状

「第2章 利用可能量の推定」に記載のとおり、大月市内の民有林(県有林を除く)

のスギ・ヒノキ人工林における利用可能量は 173,535tである(既存の林道の両側

100mの範囲内を想定)。このうち、燃料チップとして利用可能な割合を 40%程度と想

定した場合(ヒアリングに基づく想定)、69,414tとなる。

山梨県における森林の年間成長量は 3.43m3/ha であり(山梨県林業統計書、平成

26年度の集計に基づく)、市内のスギ・ヒノキ(4,611ha)の年間成長量は約 12,640t

(15,800m3)である。伐採量が年間成長量を上回らないよう考慮すると、14 年間以

上で伐採する計画とする必要がある。これを踏まえ、20 年間で伐採することを想定

した場合の年間利用可能量は 3,470t/年、15年間で伐採することを想定した場合の

年間利用可能量は 4,627t/年となった。

チップ工場の採算を考慮した場合、30,000t/年以上のチップ生産が必要であり、

市内での利用可能量では、不足することがわかる。

これは、傾斜が 30度を超える地形が全体の約 75%程度であること、路網の整備が

不十分であり、路網密度が低いことなどに起因すると考えられる。

(2)燃料供給の可能性

利用可能量の現状調査の結果、市内の年間利用可能量を全て伐採した場合でも、チ

ップ工場の採算目標ラインである 30,000t/年には到達しないと考えられる。

採算目標ラインをクリアするために、現時点で考えられる方策としては、ア.市内

での増産、イ.周辺地域からの調達が考えられる。

ア.市内での増産

市内での増産を考える場合、路網の新規開設などにより伐採可能な場所を増やす

こと、伐採をするための体制を構築することが考えられる。

a. 路網の整備

市内の現在の林内路網密度(五条森林の範囲内の林道・作業道の密度)は

13.4m/ha である。これは、全国値(19.5m/ha(H27 年度版 森林林業白書))、地

域森林計画書(山梨東部森林計画区)に示される、30度未満の水準(25m/ha)に

比べて低い値となっている。集約的な施業を実施し、生産量を増やすためには、

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路網の整備を推進し、路網密度を全国平均程度にまで引き上げ、利用可能量を増

やすことが必要である。

傾斜が 30 度未満の場所を通過するよう路網を全国値水準にまで増設し、ha あ

たりの利用可能面積が約 1.5倍になるように想定した場合、利用可能量は 20年間

で伐採した場合、年間あたり 1,580t、15年間で伐採した場合、年間あたり約 2,106t

増えることが見込まれる。また、地域森林計画書(山梨東部森林計画区)に示さ

れる、30度未満の水準まで増設し、利用可能面積が約 1.8倍になるように想定し

た場合、利用可能量は 20 年間で伐採した場合、年間あたり 3,004t、15 年間で伐

採した場合、年間あたり約 4,005t増えることが見込まれる。

表4.1-3 路網の整備を進めた場合の利用可能量の推移

b. 増産体制の確保

大月バイオマス発電所への原木提供を考える場合、新規の需要の発生となるた

め、現状の取引先への提供に影響を与えないで増産をするためには作業体制の増

強等を検討する必要がある。

大月市内の主な林業事業体による年間の D 材の生産量は、1,200~1,500t程度

である(ヒアリングに基づく)。

現在の体制で生産可能な量を(1,500t)全て確保できると想定し、余剰分の生

産に必要となる体制を以下の条件で設定し、推定した。

【推定の条件】

年間就業日数 178日(林野庁「平成 25年度森林組合統計」による)

1班 3名

1ha あたりの間伐での伐採・造材・搬出日数 27人/日

1ha あたりの間伐量 180m3(150t)

これによれば、現状の利用可能量分を伐採・搬出するためには 20年間で想定す

る場合は 1班(3 名)、15年で想定するには 2班(6名)の増員、路網密度を 19.5、

25m/ha に増設した場合、20 年間で想定する場合は 2 班(6 名)、15 年で想定する

には 3班(9名)の増員が必要となる。

20年間 15年間 20年間 15年間現状 13.4 - 3,471 4,627 - -

目標① 19.5 1,540 5,051 6,733 1,580 2,106目標② 25.0 2,640 6,475 8,632 3,004 4,005

利用可能面積の増減(㎡/ha)

林内路網密度(m/ha)

利用可能量の増減(t/年)

利用可能量(t/年)

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表4.1-4 増産体制の検討

c. 森林経営計画の樹立

D 材を木質バイオマスの原材料として、安価に提供しつつ一定の収益をあげて

いくためには、森林経営計画など、施業に関する計画を策定し、集約的な施業を

実施していくことが重要である。現状では材価の上昇は期待できないため、生産

コストを如何に低減していくかがポイントとなる。

本業務においてより詳細な資源量の分布状態や詳細な地形条件が明らかになっ

たのを受け、路網の配置計画や団地の設定など集約化を進め、施業の効率化を進

めるものとする。また、今後整備が進められる林地台帳など、森林に関連する情

報の提供など、林業事業体の作業効率の向上施策の推進を図る。施業の集約化に

あたっては、市有林や県有林との連携など、市の大部分を占める公有林との連携

を考慮しながら推進を図る。

d. ゾーニングの再検討

大月市は地形が急峻であり、スギ・ヒノキなど人工林が分布する場所であって

も、生産に適していないところも多く存在する。つまり、経済林としての位置づ

けであっても、採算性の面で問題がある森林もあるといえる。地形や林道などイ

ンフラの整備状況を加味し、収益性の面から見た森林の価値を平面的に「見える

化」し、施業の集約化を積極的に進めていくべき地域、林道等のインフラ整備を

積極的に進めていくべき地域などを明確にし、持続的な森林経営へと繋げる。

再検討にあたっては、本業務で作

成した賦存量算出のためのデータ

(人工林の単木の位置情報など)や

地形解析のデータ(微地形図や傾斜

区分図など)を有効に活用し、資源

分布状況だけではなく、立木密度や

収量比数(Ry)など人工林の密度管

理状態を平面的に「見える化」した

20年間 15年間 20年間 15年間 20年間 15年間 20年間 15年間 20年間 15年間現状 3,471 4,627 1,971 3,127 118 188 0.66 1.05 3 6目標① 5,405 7,646 3,905 6,146 234 369 1.32 2.07 6 9目標② 7,112 9,803 5,612 8,303 337 498 1.89 2.80 6 9

※1:利用可能料から現在の体制で生産可能な量(1,500t)を引いた値※2:余剰分利用可能量を1haあたりの間伐量(150t)で割った値に必要な作業日数を掛けた値※3:必要日数を年間就業日数で割った値※4:必要日数を切り上げ、1班あたりの作業員数3名)を掛けた値

利用可能量(t)

余剰分利用

  可能量(t)※1 必要日数※2 必要班数※3必  要

  作業員数※4

図4.1-1 森林資源情報の見える化の事例

(立木密度分布図を 3 次元表示した事例)

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り、3 次元化した地形情報に重ね合わせ、施業の難易度や優先順位などを明らか

にし、広域でのゾーニングと森林整備に関する構想・計画等を立案することが望

ましい。

e. 地域通貨等を活用した個人林家やボランティア等の活動支援

間伐を実施した場合、搬出を実施すると収益的にマイナスとなる場合も多く、

切り捨て間伐が実施されるケースも多くある。発生した林地残材の多くは林道沿

いにはい積みされている。これらの林地残材を個人の林家や NPO 等が搬出し、

チップ工場に持ち込み、その対価を地域振興券などで受け取る仕組みを検討する。

これにより、林地残材の有効活用を図るとともに、個人の林家や NPO 等に対し

ては、副業・アルバイト相当の収益をもたらすほか、地域の活性化につなげる。

要求されている供給量に対しては、大きな割合を占めるものではないが、放置

されている林地残材を集めることによって、山をきれいにし、地球温暖化防止に

貢献するとともに地域振興に繋げるものとして、意義のあるものと考えられる。

イ.広域連携による増産

上記施策を実施した場合であっても、チップ工場の採算ラインである 30,000t/年

以上のチップ生産のための原木供給は難しいと考えられる。そのため、大月市に隣接

する市町村と連携を図り、広域での原木供給を検討することが望ましい。

表4.1-5は大月市と同様の条件で、周辺市町村(山梨東部森林計画区に属する

3市 2町 6村)について利用可能量を推定したものである。推定の条件は以下に示す

とおりである。

【推定条件】

推定は大月市、東部地域(都留市、上野原市、西桂町、道志村、小菅村、丹

波山村)、富士北麓地域(富士吉田市、富士河口湖町、忍野村、山中湖村、鳴

沢村)に分けて行った。

森林面積は県有林を除く民有林面積とした(地域森林計画書 (山梨東部森林

計画区)に基づく)※1

林内路網の延長は、林内路網密度(11.8、19.5、25.0m/ha)にそれぞれの森

林面積を掛けた数字で想定した(大月市は実績値)。※2

路網片側 100m の面積は林内路網延長に集材可能範囲として両側 100mを掛け

て算出した。※3

利用可能面積は現状の大月市の利用可能面積割合(路網の両側 100m に含まれ

るスギ・ヒノキ林のうち、傾斜が 30度未満の面積の割合: 717ha/2,587ha=

27.7%)を掛けて推定した。※4

大月市以外の推定蓄積は、現状の大月市の利用範囲内の単位面積あたりの蓄

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積(20 年間で伐採の場合 4.8t、15 年間で伐採の場合 6.5t)に、推定した利

用可能範囲を掛けて算出した。※5

これによれば、現状の路網密度の水準で考えると広域においても 20年間での伐採

を想定した場合で 17,315t/年、15年間での伐採を想定した場合で 23,082t/年であ

り、30,000t/年には満たないが、林内路網密度の水準を全国値(19.5m/ha)に引き

上げると 20年間での伐採を想定した場合で 35,994t/年、15年間での伐採を想定し

た場合で 47,982t/年となり、30,000t/年の供給が可能となると推定される。

なお、本推定は概略的な推定であるため、より詳細・精度の高い推定を行う場合は、

森林簿や統計資料等を用いた詳細な調査を行う必要がある。

いずれにしても、大月市単独での原木供給は不可能であると考えられ、広域での連

携と供給体制の整備(路網の整備、生産体制の確保など)が必要と考えられる。

表4.1-5 広域での利用可能量の推定

大月バイオマス発電所は国内でも有数の大規模な木質バイオマス発電であり、大量

のチップを必要とする。これに対し、持続可能な範囲で原木を供給していくことは地

域の林業振興につながるほか、健全な森林の育成と二酸化炭素吸収の促進を図ること

が可能である。今後は発電所の収益を確保することが前提となるが、地域との連携を

もって双方のインセンティブにつながるよう、協議を進めていくことが望ましい。

【現状】

20年間 15年間

大月市 13,725 129,348 2,587 717 3,471 4,627

東部地域(大月市以外) 43,242 406,475 8,129 2,253 10,908 14,540

富士北麓地域 11,642 109,435 2,189 607 2,937 3,915

合計 68,609 645,258 12,905 3,576 17,315 23,082

【目標①:林内路網密度19.5m/ha】 利用可能率 27.7%

20年間 15年間

大月市 13,725 267,641 5,353 1,483 7,182 9,574

東部地域(大月市以外) 43,242 846,678 16,934 4,693 22,720 30,287

富士北麓地域 11,642 227,019 4,540 1,258 6,092 8,121

68,609 1,341,339 26,827 7,434 35,994 47,982

【目標②:林内路網密度25.0m/ha】 利用可能率 27.7%

20年間 15年間

大月市 13,725 343,130 6,863 1,902 9,208 12,274

東部地域(大月市以外) 43,242 1,081,050 21,621 5,992 29,010 38,671

富士北麓地域 11,642 291,050 5,821 1,613 7,810 10,411

68,609 1,715,230 34,305 9,507 46,027 61,357

森林面積

(ha)※1

林内路線延長

(m)※2

路網片側100mの

面積(ha)※3

利用可能面積

(ha)※4

森林面積

(ha)※1

林内路線延長

(m)※2

路網片側100mの

面積(ha)※3

利用可能面積

(ha)※4

森林面積

(ha)※1

林内路線延長

(m)※2

路網片側100mの

面積(ha)※3

利用可能面積

(ha)※4推定利用可能量(t)※5

推定利用可能量(t)※5

推定利用可能量(t)※5