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医薬品副作用データベース(JADER)を用いた市販後の副作用発現状況の検討
加藤祐太1)2)、岸達生3)、高松昭司2)、白石正4)
1)山形大学医学部医薬品医療機器評価学講座2)医薬品医療機器総合機構 安全第二部3)医薬品医療機器総合機構 信頼性保証部4)山形大学医学部附属病院 薬剤部
演題発表に関連し、開示すべきCOI関連の企業などはありません。
日本医薬品安全性学会COI 開示
筆頭発表者:加藤 祐太
近年、病棟薬剤業務実施加算が設けられ、薬剤師における病棟での服薬管理の徹底が益々求められている。
患者が使用している薬剤について、添付文書に記載している副作用の「重篤性」と「頻度」を確認しながら状態をモニタリングする。
背景
高
低
高低
【重篤性】
【頻度】
①稀にしか起こらないが、起きた場合死に至るような重篤な副作用・・・「重大な副作用」
②比較的多く見られるが、①に比較して重篤性が低い副作用・・・「その他の副作用」
目的
新規薬剤の副作用に関して、添付文書に記載のある臨床試験での発現副作用や発生頻度だけでは市販後での幅広い年齢層や併用薬・合併症等の条件を踏まえた情報として不足している。
市販後に追記した副作用は、投与した患者の母数が不明のため頻度情報がない。( 「頻度不明」と記載される)
新規薬剤における市販後の副作用発現状況を解析することで、臨床での副作用モニタリングのツールとすべく検討した。(+現行の添付文書と比較)
●ナトリウム・グルコース共役輸送担体2(SGLT2)阻害薬
対象薬剤
効能・効果:2型糖尿病
成分名 商品名 販売開始年月
1 イプラグリフロジン L-プロリン
スーグラ錠25mg、同錠50mg 平成26年4月
2 ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物
フォシーガ錠5mg、同錠10mg 平成26年5月
3 トホグリフロジン水和物 アプルウェイ錠20mg 平成26年5月
4 トホグリフロジン水和物 デベルザ錠20mg 平成26年5月
5 ルセオグリフロジン水和物 ルセフィ錠2.5mg、同錠5mg 平成26年5月
6 カナグリフロジン水和物 カナグル錠100mg 平成26年9月
7 エンパグリフロジン ジャディアンス錠10mg、同錠25mg
平成27年2月
• 医薬品副作用データベース(JADER)を用いて、ナトリウム・グルコース共役輸送担体2(SGLT2)阻害薬を被擬薬とした全副作用報告を検索し、各薬剤における副作用報告件数を調査した。
方法
調査期間
2014年4月~2015年12月(2016年4月15日時点)
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
2014年 2015年
2755
135
0 9
402
457
17 2544
92
3150
アプルウェイ カナグル ジャディアンス スーグラ デベルザ フォシーガ ルセフィ
結果 (副作用発現症例数)
N=1245(例)
結果 (報告副作用TOP10)
0
20
40
60
80
100
120
140
160144 137
53 52 47 4339 30 27 25
N=1642
・・・・
(件)
結果 (報告副作用TOP10)
0
20
40
60
80
100
120
140
160144 137
53 52 47 4339 30 27 25
脱水/血栓・塞栓症関連は全副作用報告の約25%!
N=1642
・・・・
(件)
結果 (器官別大分類別集積状況)
0
50
100
150
200
250
300
350
N=1642(件)
アプルウェイ カナグル ジャディアンス スーグラ デベルザ フォシーガ ルセフィ
脳梗塞 ○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:0.1%
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:0.1%
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:0.1%
脱水 〇 頻度不明 〇 0.1% 〇 0.1% 〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 0.1%
全身性皮疹
○ 発疹の記載あり:1%未満
○ 湿疹、発疹の記載あり:0.1~1%未満
○ 発疹の記載あり:0.1~5%未満
○ 湿疹、発疹の記載あり:1%未満
○ 発疹の記載あり:1%未満
○ 発疹の記載あり:1~5%未満
○ 湿疹、発疹の記載あり:1%未満
薬疹 〇 1%未満 〇 0.1~1%未満 〇 0.1~5%未満 〇 1%未満 〇 1%未満 〇 1~5%未満 〇 1%未満
低血糖 〇 臨床成績の項に頻度情報あり
〇 臨床成績の項に頻度情報あり
〇 臨床成績の項に頻度情報あり
〇 臨床成績の項に頻度情報あり
〇 臨床成績の項に頻度情報あり
〇 臨床成績の項に頻度情報あり
〇 臨床成績の項に頻度情報あり
現行記載状況①〇:副作用の項に関連記載あり
2016年6月時点
アプルウェイ カナグル ジャディアンス スーグラ デベルザ フォシーガ ルセフィ
腎盂腎炎 〇 頻度不明 〇 0.1% 〇 頻度不明 〇 0.1% 〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 0.1%
急性心筋梗塞
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:0.1%
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:0.1%
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:頻度不明
○ 脱水の項に血栓・塞栓症の記載あり:0.1%
糖尿病性ケトアシドーシス
〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 頻度不明 〇 頻度不明
腎機能障害
△ 重要な基本的注意の項に血清クレアチニン上昇・eGFR低下の
記載あり:頻度不明
△ 重要な基本的注意の項に血清クレアチニン上昇・eGFR低下の
記載あり:頻度不明
△ 重要な基本的注意の項に血清クレアチニン上昇・eGFR低
下の記載あり:頻度不明
△ 重要な基本的注意の項に血清クレアチニン上昇・eGFR低
下の記載あり:頻度不明
△ 重要な基本的注意の項に血清クレアチニン上昇・eGFR低下の
記載あり:頻度不明
〇 1%未満
(重要な基本的注意の項に血清クレアチニン上昇・eGFR低下の記載あり)
△ 重要な基本的注意の項に血清クレアチニン上昇・eGFR
低下の記載あり:頻度不明
尿路感染 〇 1~5%未満
(重要な基本的注意の項に記載あり)
〇 0.1~1%未満
(重要な基本的注意の項に記載あり)
〇 0.1~5%未満
(重要な基本的注意の項に記載あり)
△ 重要な基本的注意の項に記載あり:頻度不明
〇 1~5%未満
(重要な基本的注意の項に記載あり)
〇 1~5%未満
(重要な基本的注意の項に記載あり)
〇 1%未満
(重要な基本的注意の項に記載あり)
現行記載状況②〇:副作用の項に関連記載あり、△:副作用の項以外に関連記載あり
2016年6月時点
結果 (転帰死亡の主な副作用)
012345678910
・・・・
N=75脱水/血栓・塞栓症関連は転帰死亡報告の約30%!
(件)
0
2
4
6
8
10
12
0 50 100 150 200
死亡
副作用報告数
〈報告副作用別〉
0
5
10
15
20
25
30
0 100 200 300 400
死亡
副作用報告数
〈器官別大分類別〉【報告20件以上又は死亡3件以上の副作用】 【全報告副作用】
神経系障害
代謝および栄養障害
皮膚および皮下組織障害
心臓障害
一般・全身障害および投与部位の状態
脳梗塞
脱水
死亡
急性心筋梗塞突然死
心筋梗塞
急性心不全
全身性皮疹
結果 (副作用件数と死亡件数の相関)
(件)
(件)
(件)
(件)
0
5
10
15
20
25
30
0 100 200 300 400
死亡
副作用報告数
〈器官別大分類別〉
0
2
4
6
8
10
12
0 50 100 150 200
死亡
副作用報告数
〈報告副作用別〉【報告20件以上又は死亡3件以上の副作用】 【全報告副作用】
神経系障害
代謝および栄養障害
皮膚および皮下組織障害
心臓障害
一般・全身障害および投与部位の状態
脳梗塞
脱水
死亡
急性心筋梗塞突然死
心筋梗塞
急性心不全
全身性皮疹
結果 (副作用件数と死亡件数の相関)
(件)
(件)
(件)
(件)
考察
「重篤性」及び「発現状況」を考慮した場合、SGLT2阻害薬を使用する際
は、脱水(血栓症)の発現に特に注意しながらモニタリングし、適度な水分補給をするように服薬指導を行う必要性が非常に高い。
同じ薬効群でも注意喚起の記載場所や頻度情報が異なるものがあることや副作用情報(使用経験)が多いもの・少ないものがあることから、薬効群で纏めて解析することでSGLT2阻害薬全体のリスク情報を得ることができた。
JADERのデータは毎月更新されることから、比較的最近までの副作用発現状況を把握し、服薬管理に活かすことができる。
全ての薬剤について同様の方法で重篤性及び発現状況を考慮した解析が可能
0
2
4
6
8
10
12
0 200 400 600 800 1000 1200死亡
副作用報告数
〈器官別大分類別〉
0
1
2
3
4
5
6
0 100 200 300 400
死亡
副作用報告数
〈報告副作用別〉
血小板数減少
【報告10件以上又は死亡2件以上の副作用】 【全報告副作用】
臨床検査
感染症および寄生虫症
一般・全身障害および投与部位の状態
多臓器機能不全症候群
DIC
敗血症
肝不全・腎不全等
白血球数減少
貧血
血中ビリルビン増加
肝胆道系障害
血液およびリンパ系障害
シメプレビルナトリウム(ソブリアード)
(件)
(件)
(件)
(件)
0
2
4
6
8
10
12
0 200 400 600 800 1000 1200死亡
副作用報告数
〈器官別大分類別〉
0
1
2
3
4
5
6
0 100 200 300 400
死亡
副作用報告数
〈報告副作用別〉
血小板数減少
0.2%
【報告10件以上又は死亡2件以上の副作用】 【全報告副作用】
臨床検査
感染症および寄生虫症
一般・全身障害および投与部位の状態
多臓器機能不全症候群
DIC
敗血症
肝不全・腎不全等
白血球数減少
貧血
血中ビリルビン増加
肝胆道系障害
血液およびリンパ系障害
(件)
(件)
(件)
(件)
10%以上
頻度不明が多数!
シメプレビルナトリウム(ソブリアード)
まとめ
市販後の調査(使用成績調査等)結果を待たずとも幅広い条件を踏まえた副作用情報を得ることができ、臨床試験での副作用情報を補足することが可能。
重篤性・発現状況(報告状況)を考慮した副作用モニタリングのツールとして有用。
新規薬剤における市販後の副作用報告を解析