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Sports Japal1 2013川3 ある日曜日の午後'総合型地 域スポーツクラブのプログラム でサッカーに興じていた小学校 低学年の子どもの顔を'相手の 蹴ったボールが直撃。うずくま る子どもの肩に手をやり'ピッ チの外で泣きやむまで寄り添っ ていたのは'大学生のサポート スタッフだった - 。 総合型地域スポーツクラブ (以 下'総合型クラブと略記する場 合あり) が地域におけるスポー ツコミュニティづくりを進める 上で、中学・高校の運動部活動 や大学の運動部・サークル活動 との連携は大きな課題のひとつ。 〝平成24年度総合型地域スポーツ クラブに関する実態調査″ (文部 科学省) によると'小学生の会 員が全体の18・4%'60歳以上の 会員27・7%を占めるのに対し' 中学・高校生年代と20代の会員 はそれぞれ8・8%'8・l%に とどまっている。 この点'本誌2012年7-8 月号'総合型クラブ訪問のコー ナーで紹介した岐阜県垂井町の 〝たるいチャレンジクラブL e -・S″ (以下t Let-S) では' 地元の大学生を運営スタッフと して迎え入れ、クラブの活性化 を図っている。 地域に根差したサークル クかっばの会ク 岐阜県岐阜市にキャンパスを 構える岐阜聖徳学園大学は' 1972年の創設。教育系の単 科大学としてスタートし'現在 に至るまで教員養成において確 かな実績を残している。2011 年3月卒業生の教員就職率は86・ 6%と'国立大学の平均70・6% を大きく上回る。 岐阜聖徳学園大の特徴として' 徹底した地域との密着があげら れる。文部科学省の教員養成G p (推進プログラム) に採択さ れたこの大学の 〝地域と密着し た体験型教員養成プロジェクト ー実践的指導力を育成するクリ スタルプランー〞には'教育実習 とは別途に1年次から学校へ赴 き実際の教育現場を体験するプ ログラムや'子どもたちと農作 業や工作などを体験するクフレ ンドシップ〞 プログラムなど' 地域の子どもと触れ合う場が豊 富に盛り込まれている。 そんな校風を反映してか'学 内のサークルもまた'地域への 積極的な貢献活動が目立つ。そ のひとつ 〝かっばの会〞 は教員 を志す学生の教育研究サークル。 約280名の学生が所属Lt 阜市内の子ども会や小学校で活 動している。部長の片自友樹さ ん (2年) によると'土・日曜 を中心に平均月10回以上の派遣 依頼があるそうだ。 「部員の多くは他のクラブ活動と 掛け持ちで所属し、都合のつ- 学生が参加する形。あまりに忙 しくて'地域の期待に応えられ ない場合があるのが課題です」 かっばの会が手掛けるのはレ クリエーションやクラフト'キャ ンプなどの活動。数年前から ニュースポーツのキンボール (右 写真) 指導を取り入れたが'い わゆるスポーツに関連した依頼 が中心というわけではない。 総合型クラブとの連携 その活動に目をつけたのが'

地域に根差したサークル -・S″ (以下t Let-S) では'll Sports Japan 2013 /03-04 いました (笑)」と。『しめた!』 と思たところ 『OKです』頼って協力をお願いし

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Page 1: 地域に根差したサークル -・S″ (以下t Let-S) では'll Sports Japan 2013 /03-04 いました (笑)」と。『しめた!』 と思たところ 『OKです』頼って協力をお願いし

Sports Japal1 2013川3-04 10

ある日曜日の午後'総合型地

域スポーツクラブのプログラム

でサッカーに興じていた小学校

低学年の子どもの顔を'相手の

蹴ったボールが直撃。うずくま

る子どもの肩に手をやり'ピッ

チの外で泣きやむまで寄り添っ

ていたのは'大学生のサポート

 

-

 

総合型地域スポーツクラブ (以

下'総合型クラブと略記する場

合あり) が地域におけるスポー

ツコミュニティづくりを進める

上で、中学・高校の運動部活動

や大学の運動部・サークル活動

との連携は大きな課題のひとつ。

〝平成24年度総合型地域スポーツ

クラブに関する実態調査″ (文部

科学省) によると'小学生の会

員が全体の18・4%'60歳以上の

会員27・7%を占めるのに対し'

中学・高校生年代と20代の会員

はそれぞれ8・8%'8・l%に

とどまっている。

この点'本誌2012年7-8

月号'総合型クラブ訪問のコー

ナーで紹介した岐阜県垂井町の

〝たるいチャレンジクラブL e

-・S″ (以下t Let-S) では'

地元の大学生を運営スタッフと

して迎え入れ、クラブの活性化

を図っている。

地域に根差したサークル

クかっばの会ク

岐阜県岐阜市にキャンパスを

構える岐阜聖徳学園大学は'

1972年の創設。教育系の単

科大学としてスタートし'現在

に至るまで教員養成において確

かな実績を残している。2011

年3月卒業生の教員就職率は86・

6%と'国立大学の平均70・6%

を大きく上回る。

岐阜聖徳学園大の特徴として'

徹底した地域との密着があげら

れる。文部科学省の教員養成G

p (推進プログラム) に採択さ

れたこの大学の 〝地域と密着し

た体験型教員養成プロジェクト

ー実践的指導力を育成するクリ

スタルプランー〟には'教育実習

とは別途に1年次から学校へ赴

き実際の教育現場を体験するプ

ログラムや'子どもたちと農作

業や工作などを体験するクフレ

ンドシップ〟 プログラムなど'

地域の子どもと触れ合う場が豊

富に盛り込まれている。

そんな校風を反映してか'学

内のサークルもまた'地域への

積極的な貢献活動が目立つ。そ

のひとつ 〝かっばの会〟 は教員

を志す学生の教育研究サークル。

約280名の学生が所属Lt 岐

阜市内の子ども会や小学校で活

動している。部長の片自友樹さ

ん (2年) によると'土・日曜

を中心に平均月10回以上の派遣

依頼があるそうだ。

「部員の多くは他のクラブ活動と

掛け持ちで所属し、都合のつ-

学生が参加する形。あまりに忙

しくて'地域の期待に応えられ

ない場合があるのが課題です」

かっばの会が手掛けるのはレ

クリエーションやクラフト'キャ

ンプなどの活動。数年前から

ニュースポーツのキンボール (右

写真) 指導を取り入れたが'い

わゆるスポーツに関連した依頼

が中心というわけではない。

総合型クラブとの連携

その活動に目をつけたのが'

Page 2: 地域に根差したサークル -・S″ (以下t Let-S) では'll Sports Japan 2013 /03-04 いました (笑)」と。『しめた!』 と思たところ 『OKです』頼って協力をお願いし

ll Sports Japan 2013 /03-04

頼って協力をお願いし

たところ 『OKです』

と。『しめた!』 と思

いました (笑)」

2011年の連携当

初'学生の役割はキャ

ンプ等のイベントにお

けるサポート的な役割

にとどまっていた。し

かしその連携はクフ

リースポーツ″プログ

ラムに見られるよう

に'徐々に深まりつつ

ある。小学生ならばだ

れでも参加できるこの

1

度'3種目程度の運動・

スポーツを用意し'子

どもたちに好きな運動

を楽しんでもらおうと

いうもの。「いろいろ

な種目に触れてもらい

L

e

-

I

s

波賀野里美さん (日体協公認ク

ラブマネジャー)。

「以前からサークルの存在は知っ

ていて'いつか連携できたらい

いな'と考えていました。ただ

クラブから大学まで少し遠い (※

車で約30分) こともあって'連

携する糸口がなかなか見つから

なかったんです。そんなとき'

クラブ指導者のひと-がサーク

ルのOBだと知り'そのつてを

たい」 とのクラブの思いから'

実施する種目は毎回入れ替えら

れるが'参加者に人気のキンボー

ルは必ず行われる。キンボール

の運営・指導は、かっばの会の

メンバーが引き受け、その他の

プログラムに関してはメイン指

導者のサポートに回る。

1年生の大山真奈美さんは「あ

'

導者のステップについていけな

い子がいたので'声を掛けて一

緒に踊-ました。私もサッカー

をやっていたので分かりますが'

上手くできないことでスポーツ

を嫌いになっていく子は少なく

ありません。そんな子へ手を差

し伸べられる存在になれるよう

気をつけています」と意気込み

を語ってくれた。

「片白くんをはじめ'学生の皆さ

んから 『やるからにはより主体

的に運営にかかわっていきたい』

との思いを聞かされ'昨年から

はフリースポーツ以外の企画会

議にも参加してもらい'意見を

交換しています。学生ならでは

の柔軟なアイディアに驚かされ

ることもしばしばです」 (波鴛野

さん)

お互いの成長を考える

Le-・Sでの活動に限らず'

かっばの会が行う地域貢献活動

は'基本的にすべてボランティ

ア。部費のほか'遠征助成とし

て交通費の30%が大学から支払

われるが'活動のほとんどは学

生自身の持ち出しでまかなわれ

ている。かっばの会への依頼の

窓口を務める学生課課長補佐の

越野倫生さんは'「活動が彼ら自

身の程になることは間違いあり

ませんが'その熱意や行動力に

は頭が下がる思いです。あ-ま

で自主サークルですから'彼ら

だけに特別な扱いをするわけに

はいきません。それでも備品や

設備の融通など'大学としてで

きる限りのサポートをしていま

す」と学生たちの活躍を見守る。

かっばの会とLe-.Sとの良

好な連携を支える要因は何か。

第一に'学生自身の意欲が必要

なことはもちろんだろう。1年

生の梶浦敏弘さんは「実は僕'

子どもが好きかどうか自分でも

はっきり分からなかったんです。

教員志望なんですけど (笑)。実

際に地域で活動してみて、最初

は抵抗もありましたが、徐々に

愛着が湧いてきて'子どもが大

好きになりました」 と'活動を

通じて自身の目標を再確認でき

た様子。片自さんも「最初は大

きなキンボールを価がって近づ

けなかった子が、回を重ねるご

とに積極的になり'なじんでい

く姿を見るのが嬉しくて。成長

が目に見えやすいスポーツなら

ではの楽しみです」 とやりがい

を口にする。

それと同時に'「どうすれば学

生たちのためになるか'常に考

えています」 (波賀野さん) とい

うコメントに象徴される'受け

入れ側の姿勢もまた見逃せない

ポイントと思われる。

「クラブには会員の皆さんの安全

を確保する責任があるので'時

には厳しく学生に接することも

あります。かっばの会にすべて

丸投げするのではな-'お互い

に意見をたたかわせ'高め合う

関係が理想的。無償で活動して

くれる彼らにクラブから渡せる

のはお弁当ぐらい。せめてクラ

ブに参加したことによる達成感

を得て帰ってほしい」

Le-・Sでの経験を得て'片

目さんは「今後はスポーツのサ

ポート活動にもできる限り応え

ていきたい」と意欲的。学生課・

越野さんは学生たちの頑張り過

ぎを心配しながらも'「スポーツ

を通じて得るものは大きいはず」

と期待を込める。実は越野さん

は'昨年までソフトボール日本

リーグの岐阜エコデンsCで監

督を務めていた日体協公認ソフ

トボールコーチ。「特にこれまで

スポーツに親しんだ経験がない

学生には'ぜひ参加してほしい

ですね。スポーツで学ぶフェア

プレイ精神やチームワークと

いった価値は'将来教員となっ

たとき'きっと役に立つでしょ

う」と語る。

学生によって地域のスポーツ

環境が豊かになり'地域スポー

ツによって学生の感性が磨かれ

ていく。そんな関係づくりが連

携成功のカギとなりそうだ。