4
NST 活動報告 上段:平成 25 年度 下段:平成 24 年度 赤字:24 年度より増加 合計 月平均 <考察及び課題> ◎入院からNST介入までの日数が長くなっています。24 年度 5.2 日⇒25 年度 6.3 日 肺炎や尿路感染症で入院された高齢者の中には、発熱や食事量の低下による脱水のため入院 時検査では ALB 値が正常でも、脱水が改善するとALB低値となるため、ALB値ばかり みていると栄養状態丌良の発見が遅くなってしまう場合があります。 経口栄養と静脈栄養を併用していたが、徐々に経口摂取困難となり、ある程度の日数が経過 してから「絶食 1 週間以上」でのNST対象となった患者さんが増加したこと、 等が介入までの日数が長くなっている要因と推測されます。 ◎入院後に「栄養状態丌良」となってしまう場合を、いかに見逃さないよう再アセスメントを行 えるかが、NST介入日数短縮への鍵となります。 現在、入院中のALB低下(3.0 未満)は臨床検査技師によって抽出されています。しかし、 摂食嚥下障害の出現や褥瘡発生等、ALB低下以外の栄養丌良患者にも早期介入できるよう、よ り効率的なNST活動が必要となります。各部署の協力と連携を得て、さらに効果的なNST活 動に繋がるようシステム作りを行っていきたいと思います。また、「NST勉強会」や「NST ニュース」等の、啓蒙活動も継続し実施していくことが大切と考えています。 NST 対象人数 382 34.3 355 32.3 NST回診延回数 ()内亜急性期 730 (84) 60.8 (7) 740 (77) 67.3 (7.0) ミールラウンド 延人数 270 24.8 319 29.0 入院から介入 までの日数 - 6.3 - 5.2 【再確認】当院での NST 対象となる基準 (1)栄養アセスメントで栄養丌良と診断 ※ALB 値 3.0 未満は NST 加算の条件にもなっています。 (4)入院中に栄養丌良と診断 (2)1週間以上の絶食 (5)褥瘡のある患者 (3)摂食嚥下障害のある患者 (6)主治医からの指示 NST活動を開始して、来月で丸 3 年が経ち 4 年目に入ります。今回は、 昨年4月~今年3月(25年度)における活動を集計し、24 年度と比較考 察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いただけると幸いです。 ◎NST 対象理由 最も多いのが、栄養アセスメントにおける「栄養状態丌良 =ALB 値 3.0 未満」の患者で全体の 91.4%(年 680 人) となっています。摂食嚥下障害での介入は全体の 4.1%(年 31 人)ですが、24年度の 0.9%(年 7 人)と比べ約4倍 に増加しています。 摂食嚥下障害で介入する患者が増加傾向にあります。施設 からの誤嚥性肺炎や摂食嚥下障害での入院が増えているこ とが考えられます。他施設との栄養情報の共有、「栄養情報 提供書」での連携をさらに行っていく必要があります。また、 摂食嚥下のアセスメントが看護部の中で浸透することによ り、絶食から経口摂取開始になった時に適切な栄養評価を行 うことが可能となってきたためだと考えます。

察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いた …察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いただけると幸いです。 NST 活動報告

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いた …察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いただけると幸いです。 NST 活動報告

NST 活動報告 上段:平成 25 年度 下段:平成 24 年度 赤字:24 年度より増加

合計 月平均 <考察及び課題>

◎入院からNST介入までの日数が長くなっています。24 年度 5.2 日⇒25 年度 6.3 日

肺炎や尿路感染症で入院された高齢者の中には、発熱や食事量の低下による脱水のため入院

時検査では ALB 値が正常でも、脱水が改善するとALB低値となるため、ALB値ばかり

みていると栄養状態丌良の発見が遅くなってしまう場合があります。

経口栄養と静脈栄養を併用していたが、徐々に経口摂取困難となり、ある程度の日数が経過

してから「絶食 1 週間以上」でのNST対象となった患者さんが増加したこと、

等が介入までの日数が長くなっている要因と推測されます。

◎入院後に「栄養状態丌良」となってしまう場合を、いかに見逃さないよう再アセスメントを行

えるかが、NST介入日数短縮への鍵となります。

現在、入院中のALB低下(3.0 未満)は臨床検査技師によって抽出されています。しかし、

摂食嚥下障害の出現や褥瘡発生等、ALB低下以外の栄養丌良患者にも早期介入できるよう、よ

り効率的なNST活動が必要となります。各部署の協力と連携を得て、さらに効果的なNST活

動に繋がるようシステム作りを行っていきたいと思います。また、「NST勉強会」や「NST

ニュース」等の、啓蒙活動も継続し実施していくことが大切と考えています。

NST 対象人数 382 34.3

355 32.3

NST回診延回数

()内亜急性期

730

(84)

60.8

(7)

740

(77)

67.3

(7.0)

ミールラウンド

延人数

270 24.8

319 29.0

入院から介入

までの日数

- 6.3

- 5.2

【再確認】当院での NST 対象となる基準

(1)栄養アセスメントで栄養丌良と診断

※ALB 値 3.0 未満は NST 加算の条件にもなっています。

(4)入院中に栄養丌良と診断

(2)1週間以上の絶食 (5)褥瘡のある患者

(3)摂食嚥下障害のある患者 (6)主治医からの指示

NST活動を開始して、来月で丸 3 年が経ち 4 年目に入ります。今回は、

昨年4月~今年3月(25年度)における活動を集計し、24 年度と比較考

察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いただけると幸いです。

◎NST 対象理由

最も多いのが、栄養アセスメントにおける「栄養状態丌良

=ALB 値 3.0 未満」の患者で全体の 91.4%(年 680 人)

となっています。摂食嚥下障害での介入は全体の 4.1%(年

31 人)ですが、24年度の 0.9%(年 7 人)と比べ約4倍

に増加しています。

摂食嚥下障害で介入する患者が増加傾向にあります。施設

からの誤嚥性肺炎や摂食嚥下障害での入院が増えているこ

とが考えられます。他施設との栄養情報の共有、「栄養情報

提供書」での連携をさらに行っていく必要があります。また、

摂食嚥下のアセスメントが看護部の中で浸透することによ

り、絶食から経口摂取開始になった時に適切な栄養評価を行

うことが可能となってきたためだと考えます。

Page 2: 察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いた …察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いただけると幸いです。 NST 活動報告

PPN・・・末梢静脈栄養 TPN・・・中心静脈栄養

◎対象者の栄養投不法

経口栄養の患者の割合は全体の 76.8%(年 572 人)と

なっており、24年度の 69.6%(年 524 人)とほぼ同じ

割合となっています。一方、中心静脈栄養患者の割合は全体

の 10.6%(年 79 人)と、24年度の 22.8%(年 172 人)

と比べ減少しています。また、経鼻経管栄養患者の割合は全

体の 3%(年 22 人)と、24 年度の 0.8%(年 6 人)に比

べ 3.6 倍に増加しています。

経鼻経管栄養でのNST介入が増加傾向にあります。下痢

や嘔吐をはじめ、経腸栄養剤の逆流による誤嚥性肺炎等、合

併症を防ぐ提案を行っていけるよう、個々に合う適正な経腸

栄養剤の選択がより重要となってくると考えています。

◎ エネルギー充足率<摂取栄養量を必要栄養量で除した値>

エネルギー充足率76%以上を満たしている患者の割合は

全体の 77.3%(年 581 人)となっており、24年度の

86.6%(年 651 人)と比べ減少しています。

一方、充足率 50%以下の患者の割合が、全体の 8.9%(年

67 人)と24年度の 4.4%(年 33 人)に比べ約2倍と増

加しています。

エネルギー充足率の低下患者が増加傾向にあります。術後

における食事意欲低下時は嗜好の聞き取り、ターミナル期は

提供栄養量の見直し等、今後の課題であるように思います。

また、緩和ケアにおける食事量の調節、咽越しの良いゼリー

類や果物類の充実等、食事内容のさらなる工夫も必要と考え

ています。

◎ NST終了時の栄養状態

「死亡退院」での終了患者は全体の 7.3%(年 13 人)。

「丌変」のままでの終了患者は 37.4%(年 67 人)となっ

ており、前年と大きな変動はありません。一方、「改善終了」

での終了患者は 55.3%(年 99 人)と 24 年度の 49.2%

(年 65 人)に比べ 1.4 倍に増加しています。

「改善終了」が増えていることは、NST 活動の励みにな

ります。各部署のご協力に感謝いたします。

今後もより充実したNST活動が行えるよう取り組んでい

きたいと思いますので、引き続きご協力よろしくお願い致し

ます。

(%)

(%)

Page 3: 察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いた …察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いただけると幸いです。 NST 活動報告

H25 年度最後となった NST 勉強会は、参加者 80 名を超え、盛大に開催することが出来ました。

特別講師として、旭川荘南愛媛病院 栄養主幹 都能綾子先生を招き、「NST から発信する~嚥

下食と地域連携」という演題で講演していただきました。

都能先生は市立宇和島病院との嚥下食共同研究で「全国自治体病院栄養分科会 最優秀演題

賞」を受賞されている方です。

講演内容は、旭川荘南愛媛病院での嚥下食の

取り組みを中心に、地域連携と NST の効果など

興味深い内容でした。その中でも「摂食機能療

法」の取り組みについての紹介はとても勉強に

なりました。食事のポジショニングや食事介助、

口腔ケアなど看護師、言語聴覚士、歯科衛生士

などがチームとして積極的に関わっていくこと

により、摂食嚥下機能の改善、栄養状態の改善

に繋がるとのことでした。当院でも早速、本年

度から新設された口腔ケア委員と NST コアスタ

ッフで話し合い、医師および病棟スタッフの協力を得て 4 月から「摂食機能療法」に取り組ん

でおります。

また、当日は日本静脈経腸栄養学会でのポスター展示と大塚製薬(株)からも商品展示をして頂

きました。年度末恒例の催しにしていきたいと思います。

「当院における

NST活動の現状と特徴」

「NST稼働後の栄養管理に

関する職員の意識変化」

Page 4: 察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いた …察しました。NSTマニュアルと合わせてご一読いただけると幸いです。 NST 活動報告

前回まで様々な内容を取り上げてきましたが、今回からはより詳しく勉強していきたいと思います。

まず初めに輸液について数回にわたり理解を深めましょう。

① 輸液の目的

② モルの計算 ★高校生に若返りましょう。ここからは少しややこしいです。

1mol=化学式で示される元素の原子量の和に gをつけた質量に含まれる物質量

NaCl 1mol は??

では、長期におよぶ静脈栄養管理患者の微量元素補充に使用されるエレジェクト注の組成を見て、含有量(グ

ラム数)を計算してみましょう!!

日本人の食事摂取基準(2015 年版:70 歳以上の人)

上記の図を比較すると、エレジェクト注は必要な微量元素を含んでいることが分かります。

ちなみに、マンガンは 20 年前 20µmol 含有していましたが、全血中濃度の上昇がみられたり、脳内蓄積によ

って脳 MRI 検査(T1 強調画像)で高信号を示したり、パーキンソン様症状が出現したとの報告があり現在の含有

量になっています。

また、上記のように比較するうえでも、mg 換算は有意義となります。しっかり覚えましょう。また丌明な点は

薬局に相談ください。次回は電解質輸液等を考えるうえで必要な、ミリグラム当量(mEq)について勉強しましょう。

体液管理 水・電解質の補給・補正 循環血液量の維持

栄養補給 栄養の補給 体構成成分の補給

その他 薬剤投不経路の確保(血管確保) 病態別アミノ酸輸液の投不(特殊病態)

Na(ナトリウム) 23(原子量) Cl(クロル) 35.5(原子量) NaCl 1mol=23+35.5=58.5g

元素 原子量 量(mol 数) グラム数

鉄 55.8 35µmol 1.95mg

マンガン 54.9 1µmol 0.055mg

亜鉛 65.4 60µmol 3.92mg

銅 63.5 5µmol 0.32mg

ヨウ素 126.9 1µmol 0.13mg

元素 基準(mg/日) 吸収率 吸収量

鉄 7.0mg 15% 1.05mg

マンガン 4mg 4% 0.16mg

亜鉛 9mg 30% 2.7mg

銅 0.9mg 56% 0.50mg

ヨウ素 130mg 100% 0.13mg

<勉強会案内>

NST 勉強会は月1回のペースで開催しております。昨年度と同じく、院内講師と外部講

師を半分ずつ(12テーマ)にて実施しています。ぜひ聴講に来てください。

6/17 (火) 18時00分 ~ 大塚製薬(株) 「経管栄養のトラブルについて」

お薬って

大事だよ♪

【解説】

1mol=55.8g なので、

(35×10-6)mol×(55.8×103)mg

=1.95mg

単位をそろえて計算します。

µmol=10-6mol

g=103mg

『 輸 液 の 基 礎 』