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未来のエンジン燃料とは? 神戸大学 大学院海事科学研究科 内燃機関工学研究室 ジメチルエーテルを利用した噴霧燃焼改善 水エマルジョン化によるバイオ燃料の燃焼改善 直接混合法によるバイオ燃料の有効利用 エンジンにおける燃焼解析結果 Jatropha (A) 10[%] (B) 10[%] (A) 15[%] (B) 15[%] 0 2 4 6 8 10 8.5[25%] 16.8[50%] 25.1[75%] 33.5[100%] Nitrogen oxide (g/kWh) Engine load (kW) 0 5 10 15 20 25 30 35 8.5[25%] 16.8[50%] 25.1[75%] 33.5[100%] Break thermal efficiency (%) Engine load (kW) 水エマルジョン化で窒素酸化物の排出量低減が 可能で、削減率は大粒径水粒子を含むエマル ジョン燃料の方が大きい(局所的な温度低下) 熱効率は水エマルジョン化によって多少高くなり、 粒子径が均一に近いほど熱効率は小さくなる(ミ クロ爆発による微粒化効果が抑制される) 水の混合率が増加すると燃焼圧力の立ち上がり時期が遅延する(この傾向は負荷が小さいほど顕著) 4 5 6 7 Crank angle (deg.CA) Combustion pressure (MPa) T.D.C -10 10 20 Jatropha100% Jatropha95%+water5% Jatropha90%+water10% Jatropha85%+water15% Jatropha80%+water20% Gas oil Load 25% 4 5 6 7 Crank angle (deg.CA) T.D.C -10 10 20 Combustion pressure (MPa) Jatropha100% Jatropha95%+water5% Jatropha90%+water10% Jatropha85%+water15% Jatropha80%+water20% Gas oil Load 75% 4 5 6 7 Crank angle (deg.CA) Combustion pressure [MPa] T.D.C -10 10 20 Jatropha100% Jatropha95%+water5% Jatropha90%+water10% Jatropha85%+water15% Jatropha80%+water20% Gas oil Load 50% 4 5 6 7 Crank angle (deg.CA) T.D.C -10 10 20 Combustion pressure (MPa) Jatropha100% Jatropha95%+water5% Jatropha90%+water10% Jatropha85%+water15% Gas oil Load 100% 燃料の顕微鏡写真 100mm/div 水10% 水20% 水10% 調製方法A 調製方法B 水20% 調製方法Aは大粒径の水粒子が多く存在し、調 製方法Bは比較的粒径がそろっている ザウタ平均粒径 17m(A10%) 8m(B10%) 水の平均粒径は調製方法Bの方が小さくなる (小粒径・多数粒子数) 算術平均粒径 8m(A10%) 4m(B10%) エマルジョン燃料の調製方法 回転ブレードによる撹拌で調製 (調製方法A) スタティックミキサーで調製 (調製方法B) オイルポンプ 燃料 スタティック ミキサー 攪拌装置 オイルポンプ 冷却装置 燃料 ジャトロファ油水エマル ジョン燃料の外観写真 3種類の乳化剤を混合して使用。 乳化剤は水分質量の10%の割合で 添加。 使用乳化剤 レオドールSP-L10(花王ケミカル) エマルゲン103(花王ケミカル) レオドール440V(花王ケミカル) エンジンにおける燃焼解析結果 ジャトロファ油は室温では非常に動粘度が高い A重油をジャトロファ油に混合することで、動粘度 を低くすることが可能 Brake thermal efficiency (%) Engine load (kW) 0 10 20 30 40 8.3[25%] 16.5[50%] 24.8[75%] 33.1[100%] Jatropha100% Jatropha75%+MDO25% Jatropha50%+MDO50% Jatropha25%+MDO75% MDO100% ジャトロファ油や混合燃料の熱効率は、A重油 100%とほぼ同等 負荷による熱効率の違いはほとんど見られない Blend Fuel Jatropha MDO ジャトロファ油はカーボンデポジットの生成が 顕著 A重油をジャトロファ油に混合することで、カー ボンデポジットを低減可能 Kinematic viscosity (mm 2 /s) 0 20 40 60 80 100 120 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 Jatropha100% Jatropha50%+MDO50% Jatropha75%+MDO25% Temperature () MDO100% バイオ燃料のメリット 二酸化炭素の排出源とカウントさ れない(カーボンニュートラル) 生産可能な、化石燃料に依存し ないエネルギー体系を確立 非食用の油(ジャトロファなど)を 利用することで、食糧作物と競合 しないバイオ燃料 光合成による 炭素同化 バイオ燃料で エンジン運転 バイオ燃料の原料 CO 2 二酸化炭素排出 カーボンニュートラル ジャトロファ(Jatropha curcas)の種子 エンジン試験の装置系統図 3気筒4サイクル予燃焼室式ディーゼルエンジンで燃焼試験 を実施 動力計側の気筒の主燃焼室、ノズルホルダ入口部に圧力セ ンサを設置 エンジン負荷を変化させて、燃焼圧力、燃料噴射圧力、排ガ ス成分の濃度を計測して解析 Nozzle Combustion analyzer Exhaust gas Surge tank Air intake Fuel tank of gas oil Fuel pump Orifice Rotary encoder Water Combustion analyzer Smoke meter Gas analyzer Exhaust gas Surge tank Air intake Test engine Water brake dynamometer Fuel tank of test oil Pressure transducer ジメチルエーテルの特性 酸素原子に2つのメチル基が結合した 最も単純な構造のエーテル 常温・常圧では気体の物質で、LPガス に似た特性をもっている 酸素を含有する、ススを生成せずに燃 焼、自着火特性に優れている等、ディー ゼルエンジンの燃料として適した側面を 持つ O C H H H C H H H 燃料に液化状態のジメチルエーテルを 混合し、大気状態に解放すると、急速 なジメチルエーテルの蒸発が見られる (右写真) エンジンにおける燃料の燃焼改善 に有効ではないか? DME混合燃料の実験結果 A重油100%A重油にDME30%混合した燃料を 大気圧場に噴射して微粒化状態を確認 噴霧の進行方向に対して垂直方向への拡散は混 合燃料の場合に顕著に見られる(広域拡散) 0.1ms 0.2ms 0.3ms 0.4ms 0.5ms 0.6ms 0.7ms 0.1ms 0.2ms 0.3ms 0.4ms 0.5ms 0.6ms 0.7ms MDO100% MDO70%+DME30% 100 75 50 25 0 mm 100 75 50 25 0 mm 0 5 10 15 20 25 Smoke (%) M100 M70D30 M60D40 71% 38% M100 M70D30 M60D40 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 Carbon dioxide (vol.%) 19% 5% エンジンにおける燃焼解析の結果、 スモークを大幅に低減可能(混合率 以上の削減率) 二酸化炭素の排出量も低減可能(燃 焼の活性化、炭素含有率の低さ) 実験装置概略図 液化DMEを燃料に混合するために、加圧型の燃料タンクを使用 Nitrogen Gas Marine Diesel Oil DME Engine 燃料噴霧を観測するために、単発燃料噴射装置を作製 S ①インバーター ②モーター ③ロータリーエンコーダ ④燃料ポンプ ⑤ノズル ⑥電磁弁 ⑦圧力調整弁 ⑧燃料回収容器 ⑨加圧型燃料タンク ⑩高圧窒素ボンベ ⑪データーロガー ⑫高速度ビデオカメラ 燃焼室内部での燃料燃焼 研究用に改造したエンジンで燃焼室内部の様子を高速 度撮影した結果が下記写真。レーザー光で照明をする ことで,燃料噴霧と噴霧火炎が同時に可視化される 各画像上側の数字は,燃料を噴射開始した後のクラン ク角度(上死点前5度に噴射開始) 各画像の中央から放射状に伸びているのが燃料で,幅 が広がりながら成長している(=燃料噴霧) 噴射開始後5度時に,燃料噴霧の外縁部に黄色の火炎 が発生し(=燃料着火),その後,燃料噴霧全体に火炎 が広がる(=噴霧火炎) 生成される排出成分(エミッション) 【窒素酸化物(NOx)】 一般的なエンジンの燃料は炭化 水素(炭素と水素の化合物)である。完全燃焼すれば, 水(水蒸気)と二酸化炭素が生成されるが,エンジンで は大気を吸い込んで燃焼を行うため,窒素の酸化物が 生成される 大気中で水分と反応して酸性物質へ(酸性雨の要因) 【粒子状物質(PM)】 燃焼(燃料の熱分解過程)時に酸 素が不足すると,低級炭化水素や活性基が重合してス スを形成する。また燃料粒子などが未燃のまま排出さ れると,灰とともに粒子状物質を形成する。精製状態が 悪い燃料の場合には,燃料中の残炭素成分が燃焼後 に残る 大気中を浮遊する。粒子直径の小さなもの(PM2.5など)は、人体に取り 込まれて疾病の要因となる 他に【硫黄酸化物(SOx)】,【未燃炭化水素(HC)】,【一 酸化炭素(CO)】, 【二酸化炭素(CO2)】など 燃焼室圧力の履歴 燃焼室内の圧力変化を,横軸にクランク角度,縦軸に 圧力をとって図にすると下のようになる 燃料を噴射しない場合(=モータなど外部動力で駆動し た場合),上死点を中心にほぼ左右対称の圧力履歴に なる(図中の破線) 吸入した空気(大気圧(1bar),温度(20))を急速に圧 縮した場合,ディーゼルエンジン(圧縮比18 程度)では 高圧(約52bar)・高温(約560)の状態になる この高圧・高温の空気中に燃料を噴射すると,燃料が 蒸発して空気と混合し着火する。このとき,燃焼室内の 圧力が上昇して仕事の原動力となる(図中の赤線) エンジンの作動原理(圧縮と膨張による仕事) クランク機構と往復動式エンジン ディーゼルエンジンの基礎知識(作動原理と燃料燃焼、エミッション) Wikimedia Commons (by CCoil)

未来のエンジン燃料とは? - Kobe University...Surge tank Test engine Water brake dynamometer Fuel tank of test oil Pressure transducer ジメチルエーテルの特性

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  • 未来のエンジン燃料とは?神戸大学 大学院海事科学研究科 内燃機関工学研究室

    ジメチルエーテルを利用した噴霧燃焼改善

    水エマルジョン化によるバイオ燃料の燃焼改善

    直接混合法によるバイオ燃料の有効利用

    エンジンにおける燃焼解析結果

    Jatropha

    (A) 10[%]

    (B) 10[%]

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    水エマルジョン化で窒素酸化物の排出量低減が可能で、削減率は大粒径水粒子を含むエマルジョン燃料の方が大きい(局所的な温度低下)

    熱効率は水エマルジョン化によって多少高くなり、粒子径が均一に近いほど熱効率は小さくなる(ミクロ爆発による微粒化効果が抑制される)

    水の混合率が増加すると燃焼圧力の立ち上がり時期が遅延する(この傾向は負荷が小さいほど顕著)

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    燃料の顕微鏡写真

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    調製方法A

    調製方法B

    水20%

    調製方法Aは大粒径の水粒子が多く存在し、調製方法Bは比較的粒径がそろっているザウタ平均粒径 17m(A10%) 8m(B10%)

    水の平均粒径は調製方法Bの方が小さくなる(小粒径・多数粒子数)算術平均粒径 8m(A10%) 4m(B10%)

    エマルジョン燃料の調製方法

    回転ブレードによる撹拌で調製(調製方法A)

    スタティックミキサーで調製(調製方法B)

    オイルポンプ

    燃料スタティックミキサー

    攪拌装置

    オイルポンプ

    冷却装置

    燃料

    ジャトロファ油水エマルジョン燃料の外観写真

    3種類の乳化剤を混合して使用。乳化剤は水分質量の10%の割合で添加。

    使用乳化剤• レオドールSP-L10(花王ケミカル)• エマルゲン103(花王ケミカル)• レオドール440V(花王ケミカル)

    エンジンにおける燃焼解析結果

    ジャトロファ油は室温では非常に動粘度が高い

    A重油をジャトロファ油に混合することで、動粘度を低くすることが可能

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    8.3[25%] 16.5[50%] 24.8[75%] 33.1[100%]

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    ジャトロファ油や混合燃料の熱効率は、A重油100%とほぼ同等

    負荷による熱効率の違いはほとんど見られない

    Blend FuelJatropha MDO

    ジャトロファ油はカーボンデポジットの生成が顕著

    A重油をジャトロファ油に混合することで、カーボンデポジットを低減可能

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    MDO100%

    バイオ燃料のメリット

    二酸化炭素の排出源とカウントされない(カーボンニュートラル)

    生産可能な、化石燃料に依存しないエネルギー体系を確立

    非食用の油(ジャトロファなど)を利用することで、食糧作物と競合しないバイオ燃料

    光合成による炭素同化

    バイオ燃料でエンジン運転

    バイオ燃料の原料

    CO2

    二酸化炭素排出

    カーボンニュートラル

    ジャトロファ(Jatropha curcas)の種子

    エンジン試験の装置系統図

    3気筒4サイクル予燃焼室式ディーゼルエンジンで燃焼試験を実施

    動力計側の気筒の主燃焼室、ノズルホルダ入口部に圧力センサを設置

    エンジン負荷を変化させて、燃焼圧力、燃料噴射圧力、排ガス成分の濃度を計測して解析

    Nozzle

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    Exhaust gas

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    Test engineWater brakedynamometer

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    test oil

    Pressuretransducer

    ジメチルエーテルの特性

    酸素原子に2つのメチル基が結合した最も単純な構造のエーテル

    常温・常圧では気体の物質で、LPガスに似た特性をもっている

    酸素を含有する、ススを生成せずに燃焼、自着火特性に優れている等、ディーゼルエンジンの燃料として適した側面を持つ

    OCHH

    HC HH

    H

    燃料に液化状態のジメチルエーテルを混合し、大気状態に解放すると、急速なジメチルエーテルの蒸発が見られる(右写真)

    エンジンにおける燃料の燃焼改善に有効ではないか?

    DME混合燃料の実験結果

    A重油100%とA重油にDMEを30%混合した燃料を大気圧場に噴射して微粒化状態を確認

    噴霧の進行方向に対して垂直方向への拡散は混合燃料の場合に顕著に見られる(広域拡散)

    0.1ms 0.2ms 0.3ms 0.4ms 0.5ms 0.6ms 0.7ms

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    ▲71%

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    ▲19%▲5%

    エンジンにおける燃焼解析の結果、スモークを大幅に低減可能(混合率以上の削減率)

    二酸化炭素の排出量も低減可能(燃焼の活性化、炭素含有率の低さ)

    実験装置概略図 液化DMEを燃料に混合するために、加圧型の燃料タンクを使用

    Nitrogen Gas

    Marine Diesel Oil

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    Engine

    燃料噴霧を観測するために、単発燃料噴射装置を作製

    ① ②

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    ⑥ ⑦

    ①インバーター②モーター③ロータリーエンコーダ④燃料ポンプ⑤ノズル⑥電磁弁⑦圧力調整弁⑧燃料回収容器⑨加圧型燃料タンク⑩高圧窒素ボンベ⑪データーロガー⑫高速度ビデオカメラ

    燃焼室内部での燃料燃焼

    研究用に改造したエンジンで燃焼室内部の様子を高速度撮影した結果が下記写真。レーザー光で照明をすることで,燃料噴霧と噴霧火炎が同時に可視化される

    各画像上側の数字は,燃料を噴射開始した後のクランク角度(上死点前5度に噴射開始)

    各画像の中央から放射状に伸びているのが燃料で,幅が広がりながら成長している(=燃料噴霧)

    噴射開始後5度時に,燃料噴霧の外縁部に黄色の火炎が発生し(=燃料着火),その後,燃料噴霧全体に火炎が広がる(=噴霧火炎)

    生成される排出成分(エミッション) 【窒素酸化物(NOx)】 一般的なエンジンの燃料は炭化

    水素(炭素と水素の化合物)である。完全燃焼すれば,水(水蒸気)と二酸化炭素が生成されるが,エンジンでは大気を吸い込んで燃焼を行うため,窒素の酸化物が生成される

    ⇒大気中で水分と反応して酸性物質へ(酸性雨の要因)

    【粒子状物質(PM)】 燃焼(燃料の熱分解過程)時に酸素が不足すると,低級炭化水素や活性基が重合してススを形成する。また燃料粒子などが未燃のまま排出されると,灰とともに粒子状物質を形成する。精製状態が悪い燃料の場合には,燃料中の残炭素成分が燃焼後に残る

    ⇒大気中を浮遊する。粒子直径の小さなもの(PM2.5など)は、人体に取り込まれて疾病の要因となる

    他に【硫黄酸化物(SOx)】,【未燃炭化水素(HC)】,【一酸化炭素(CO)】, 【二酸化炭素(CO2)】など

    燃焼室圧力の履歴

    燃焼室内の圧力変化を,横軸にクランク角度,縦軸に圧力をとって図にすると下のようになる

    燃料を噴射しない場合(=モータなど外部動力で駆動した場合),上死点を中心にほぼ左右対称の圧力履歴になる(図中の破線)

    吸入した空気(大気圧(1bar),温度(20℃))を急速に圧縮した場合,ディーゼルエンジン(圧縮比18程度)では高圧(約52bar)・高温(約560℃)の状態になる

    この高圧・高温の空気中に燃料を噴射すると,燃料が蒸発して空気と混合し着火する。このとき,燃焼室内の圧力が上昇して仕事の原動力となる(図中の赤線)

    エンジンの作動原理(圧縮と膨張による仕事)

    クランク機構と往復動式エンジン

    ディーゼルエンジンの基礎知識(作動原理と燃料燃焼、エミッション)

    Wikimedia Commons (by CCoil)