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これからのストリング現象論: 弦理論的アクシオン
檜垣徹太郎 (KEK)
橋本研とのかかわり
• 2012年1月 – 2013年3月: 協力研究員 (橋本・初田両氏のポスドク)
– 当時のメンバー(順不同・敬称略) 橋本、日高、瀧、小川、南、矢崎、藤川、 木村、村田、Schmude、飯塚(当時CERN所属)
ストリング現象論の目標
量子重力を含んだ統一理論による世界の記述
ストリング現象論の最近の注目・発展
4次元低エネルギー理論の制御 標準模型以外の対称性: U(1), 離散対称性
• フラックスコンパクト化
– 弦理論のモジュライ(余剰次元・パラメータ)の固定 – インスタントン・ゲージーノ凝縮の計算・条件
• 観測に応じた技術の発展 • F理論GUTs
アクシオンのシフト対称性で制御
*ゲージ対称性含む
a: アクシオン(4次元擬スカラー)
• 弦理論の近似的グローバル対称性 • 離散的ゲージ対称性
• 弦理論の「ある程度」普遍的な性質・模型へ?
弦理論ゲージ場 = アクシオン
コンパクト化を通じて偏在!
• 閉弦: テンソル場(RR, NSNS)の余剰次元成分
– 例
• 開弦: ブレインのゲージ場の余剰次元成分 *文献では「閉弦起源で軽いもの」がよく呼ばれる
– 例
このお話の内容
• 弦理論的アクシオンの素粒子論への応用:
– 標準模型
– 暗黒物質
– インレーション
大河内さんの逆:弦理論のアイデア → 素粒子論
離散的ゲージ対称性: 標準模型への応用
標準模型はできるかも;結合は?
• 交差した/磁場のあるDブレイン模型
JHEP 0307:038,2003., Phys.Rev.D77:125023,2008.
SU(3)C×SU(2)L×U(1)Y ×…
世代数= 3 =交差点数 = インデックス
偏在する離散ゲージ対称性に注目
G: ゲージ対称性 Γ: 離散対称性 = 離散ゲージ対称性 ゲージ群起源なので大域的なものよりrobustと期待
偏在する離散ゲージ対称性の応用
• 応用1: 陽子崩壊を抑制、暗黒物質(WIMP): – Z2 Matter parity (R-parity in SUSY)
– Z3 Baryon triality in SUSY:
• 応用2: 湯川結合の対称性:フレーバー構造
弦理論の離散的ゲージ対称性
• 4D チャーン・サイモン項: U(1)対称性
弦理論の離散的ゲージ対称性
• 4D チャーン・サイモン項: U(1)対称性
q : 巻き付き or 磁場 <F2> の寄与. 波動関数の一価性から量子化 cf: インデックス定理
Stuckelberg 項: 重いゲージ場
• 4D チャーン・サイモン項: U(1)対称性
• B2運動項、双対な擬スカラー a:
a: 非線形な表現(NG-like mode)
• U(1)ゲージ変換(ξ:変換パラメータ):
注:線形表現ではU(1)の自発的破れ:
U(1)ゲージ変換:
双対性から得られるアクシオンの例
実際にテンソル場の余剰次元成分
• 高次元の観点から (以下符号無視)
準備:ゲージ・アクシオン結合
• 動的なゲージ結合+ θ項 = 余剰次元体積+ a
Cf: アクシオン結合:
SUSY の正則ゲージ結合; 計算のため以下SUSY
の時、q の量子異常。
インスタントンとU(1)不変性
• インスタントン ~ ブレインの余剰次元体積
(p-3)サイクル上の DpブレインとED(p-4)ブレイン
Cf. ゲージインスタントンの時:黒のブレインに平行、 q = フレーバー数 =インデックス数 D7
ED3
インスタントンと離散的対称性
有限コンパクト化でVEV = U(1)の破れ!
フレーバー対称性への応用: Δ(27)
• Z3 ×Z3 × Z3(T6 の幾何起源) = ブレイン同士の交差点(物質)の入れ替え+位相変換
群の要素:
左図:トーラスT6 に何度も巻きついたD6ブレイン: T2 上のD6ブレインの余剰な1次元部分 (D6ブレインは余剰3次元空間がある)
湯川結合: 弦のインスタントンの寄与
|
フレーバー対称性への応用: Δ(27)
• 湯川結合:
– ヒッグス1個(i=1):トップだけ質量をもつ。軽い世代の質量?
フレーバー対称性への応用: Δ(27)
• 湯川結合:
– ヒッグス1個(i=1):トップだけ質量をもつ。軽い世代の質量?
– ヒッグス3個(k=0,1,2): 現実的なCKMが出ない。
フレーバー対称性への応用: Δ(27)
• 湯川結合:
– ヒッグス1個(i=1):トップだけ質量をもつ。軽い世代の質量?
– ヒッグス3個(k=0,1,2): 現実的なCKMが出ない。
– ヒッグス6個(k=0,1,…,5): 現実的なもの出そう! (+ Z6 μ-term)
フレーバー対称性への応用: Δ(27)
• 湯川結合:
– ヒッグス1個(i=1):トップだけ質量をもつ。軽い世代の質量?
– ヒッグス3個(k=0,1,2): 現実的なCKMが出ない。
– ヒッグス6個(k=0,1,…,5): 現実的なもの出そう! (+ Z6 μ-term)
数より構造が重要!?
暗黒物質、インフレーションへの応用
暗黒物質: 銀河団構造形成(我々)に必要 宇宙背景輻射(CMB):
我々全ての源
「軽い」アクシオンの出現
• アクシオンのグローバルシフト対称性を課す
この時、V(a)=0: 「軽い」アクシオン → 低エネルギー観測へ影響!
前まではU(1)ゲージ対称性だったことに注意: あるいはこれを踏まえての手順。
シフト = ゲージ対称性のなごり
• RR場の高次元ゲージ変換とアクシオンシフト
摂動論的4次元有効理論ではうまく行っている Generalized global symmetry?
シフト = ゲージ対称性のなごり
• RR場の高次元ゲージ変換とアクシオンシフト
摂動論的4次元有効理論ではうまく行っている
• 4次元的な非摂動効果でシフトは破れる – コンパクト化: – フラックスの量子化: – インスタントン・ゲージーノ凝縮:
R: 余剰次元半径 λ: ゲージーノ
弦理論のアクシオンとシフトの破れ IIB on Calabi-Yau with フラックス (O3/O7) の場合 インスタントン・ゲージーノ凝縮は以下すべてに寄与
• 1個 : フラックス質量 • h1,1
-(CY) : SUSYの破れ(~フラックス質量) • h1,1
-(CY) : インスタントン・ゲージーノ凝縮 • h1,1
+(CY) : インスタントン・ゲージーノ凝縮
D7ブレイン起源: Wilson line: A, ブレインの位置:Φ • h1,0
-(S) : SUSYの破れ • h2,0
-(S) : フラックス質量、SUSYの破れ S: D7ブレインが巻き付いている4サイクル on CY (divisor)
* h2,1-(CY)個の複素構造モジュライはΦ, C0 と同様
軽いとき:アクシオン暗黒物質
はSUSY・フラックスによらず、軽くなり得る: Λdyn: 非摂動のスケール
≧ TeV
アクシオン暗黒物質の質量
• QCD アクシオン: QCD 効果から質量をもらう ◎中性子の電気双極子モーメントの小ささを説明:
• Axion-Like-Particles (ALPs) の例: 任意!?
アクシオン暗黒物質の質量
• QCD アクシオン: QCD 効果から質量をもらう ◎中性子の電気双極子モーメントの小ささを説明:
• Axion-Like-Particles (ALPs) の例: 任意!?
QCD のみから受ける?: シフト(PQ)対称性 の確かさ;
量子重力的効果?
崩壊定数 f ?: ~ 1016GeV
アクシオンの余剰次元上の波動関数で決まる
• 局在化: 余剰次元
アクシオン波動関数 (~特異点上)
半径: R
崩壊定数 f ?: ~ 1016GeV
アクシオンの余剰次元上の波動関数で決まる
• 局在化: • バルクにいる:
余剰次元
半径: R
崩壊定数 f ?: ~ 1016GeV
アクシオンの余剰次元上の波動関数で決まる
• 局在化: • バルクにいる: • 離れて局在化?:
相互作用するときに巻き付きモードを介す?
余剰次元
半径: R
線形結合した サイクル上
暗黒物質 = コヒーレント振動
• ma, f, a0 で暗黒物質量が決まる
暗黒物質 = コヒーレント振動
• ma, f, a0 で暗黒物質量が決まる
本当に正しいのか?:インスタントンガス近似. 液体、ストレンジクォークの寄与で変化する.
アクシオン質量と光子結合への制限
1306.6088
寿命:
例: (最近の3.5keV X線 から厳しいが)
arXiv: 1306.6088 ざっくりと
CERN Axion Solar Telescope: CAST
後継:International Axion Observatory (IAXO) 装置を増やす
T ~ 6000K
Axion-Like Particle Search: ALPS at DESY
アクシオン生成→透過→光子変換
Axion Dark Matter eXperiment: ADMX at ワシントン大
アクシオン 暗黒物質の流入
(その辺に沢山ある: <P>=0)
空洞の固有振動数 ~ ma にして、結合への制限
計画されている実験
• Cosmic Axion Spin Precession Experiment: CASPEr
– 中性子の電気双極子モーメントの時間変化 (電磁場中の中性子の歳差運動の変化)
: 振動する暗黒物質
重い時:インフレーションへの動機
• 平坦な宇宙: • 宇宙の広い範囲で因果関係: • CMBの温度(密度)ゆらぎ:
重い時:インフレーションを引き起こす
• 平坦な宇宙: • 宇宙の広い範囲で因果関係がつく: • CMBの温度(密度)ゆらぎ:
宇宙の変化:
インフレーション ゆらぎ
重い時:ナチュラルインフレーション
• 離散シフトの制御:平坦な cos(θ) ポテンシャル Slow roll
真空のエネルギー: 宇宙の加速度膨張へ
インフラトン揺らぎ: 密度揺らぎへ
インフレーション終了: インフラトン崩壊→宇宙の再加熱
ゆらぎはポテンシャルで決まる
高橋氏のトラペより
ns-r 平面 (Planck 2015)
ns: スカラー揺らぎのスケール不変さ (ns=1 で不変) r: 重力波の寄与 (インフレーションのエネルギー : )
ポテンシャルは平坦!: R2- or Higgs-inflationの勝利?
ナチュラルインフレーションは?
ns: スカラー揺らぎのスケール不変さ (ns=1 で不変) r: 重力波の寄与 (インフレーションのエネルギー : )
Small f
Large f
BICEP2までは比較的良かった。一方、大きな f のために工夫が必要。
もっと r を小さく、非摂動効果の制御?
ヤコビθ関数でインフレーション!
*Specific
F < MPl OK!
Large f
Small f
ヤコビθ関数でインフレーション!
起源:ゲージ結合(ブレイン - ブレイン相互作用)、湯川結合
– φ: ブレインモジュライ: 位置、Wilson line – τ: トーラス上の複素構造モジュライ (IIB)
*Specific
ヤコビθ関数でインフレーション!
– φ: ブレインモジュライ: 位置、Wilson line – τ: トーラス上の複素構造モジュライ (IIB)
トーラス周期性が制御 (モジュラー不変性)
Dブレイン (交差していてもOK)
スローロール
*Specific
ヤコビθ関数でインフレーション!
– φ: ブレインモジュライ: 位置、Wilson line – τ: トーラス上の複素構造モジュライ (IIB)
トーラス周期性が制御 (モジュラー不変性)
Dブレイン (交差していてもOK)
スローロール
*Specific
弦理論で 小さな τ が
許されるか?
ストリングの変な関数教えてください
将来観測で小さな r 確かめ?
(羽澄氏のトラペ:r ~ 10-3 、あと15年くらいでいける?)
まとめ
まとめ
• アクシオンは現象論的に面白い:偏在する
– 離散的ゲージ対称性: 標準模型、暗黒物質へ – 暗黒物質の候補 – インフラトンの候補
– 将来実験・観測でその兆候がみえるかも?
まとめ:疑問点
• 標準模型?:対称性と結合?ヒッグスは?
• アクシオンの残存量の計算? (初期宇宙のQCDインスタントン相互作用)
• アクシオン質量は何が決めている? (シフト対称性の破れ = 質量、量子重力効果?)
アクシオン質量とブレインの安定性?
高次元ゲージ対称性(シフト)の破れと Dブレインの寿命の関係はあるの?
(保存電荷の存在: tuniverse >> tstring)
: ナイーブには空間方向だから関係ない? Generalized global symmetry?
関係があるのならば、
Dブレイン(宇宙)の寿命をどのように計算?
最後に
異分野交流
特に現象論、弦理論と分けずに研究会を
もともと昔はストリング現象論からはじまったはず
Appendix
4次元の双対な作用
• Original action with B2 and A1:
• Action with H3, A1 and a:
• Action after integrating out H3: H3 = *(da+qA1)/g
インフレーション
ns-r 平面 (Planck 2015)
大きな f: 複数アクシオンの質量固有状態
巻き付き方(傾き)が少し違う2セットのDブレイン上の非摂動効果を用意:
D-brane1: サイクル1 に1回、サイクル2 にn回 D-brane2: サイクル1 に1回、サイクル2 に(n+1)回
T2 上のブレイン1とブレイン2 (n=2)
1
2
大きな f: 複数アクシオンの質量固有状態
巻き付き方(傾き)が少し違う2セットのDブレイン上の非摂動効果を用意:
アクシオン空間
大きな f: 複数アクシオンの質量固有状態
巻き付き方(傾き)が少し違う2セットのDブレイン上の非摂動効果を用意:
アクシオン空間
スローロール
ヤコビθ関数でインフレーション!
*Specific
F < MPl OK!
暗黒物質とCMBゆらぎ:
暗黒輻射、等曲率揺らぎ
アクシオン暗黒輻射はある?
• 余剰次元の振動から生成: P >> ma
あきらめる?
or
H0 次第?
(ニュートリノ0.1個分のエネルギー程度)
アクシオン暗黒物質の等曲率揺らぎ
• 独立な揺らぎがCMB揺らぎを変えてしまう:
• シフト(PQ)対称性が ZN: インフレーション中に重くなって制限を回避!
真空ではこの項は小さくないといけない
インフレーション
δa ~ Hinf
軽いアクシオン の揺らぎ
アクシオン暗黒物質の等曲率揺らぎ
• 独立な揺らぎがCMB揺らぎを変えてしまう:
– 揺らぎの比から:
PRR: (断熱揺らぎ)2, PII: (等曲率揺らぎ)2
インフレーション
δa ~ Hinf
軽いアクシオン の揺らぎ