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卒業論文 土星のロッシュ限界およびその運動
14s1039 高田帆
はじめに 本論文はロッシュ限界についての理解を深めていく。太陽系の惑星の中でもかなり特異的な土星を取り上げることでフランスの物理学者エドゥアール=ロッシュが導き出したロッシュ限界について考察をしていく。国立天文台で公開されている画像を解析して、理科年表から既知の値と比べる。ケプラーの第3法則が成り立つことを確認したら出したらロッシュ限界の導出をする。これらを2章立てで画像を交えながら論じていく。1章では土星の物理量、また画像の解析を中心に、2章ではロッシュ限界の導出、また1章で求めた近似値が正しいかどうか確認する。それらを踏まえて考察をする。ロッシュ限界についての理解を深めることで土星の美しいリングの起源について論理的に考えていくことで土星の特徴をより深く知ることを目的とした。
目次 1章 1 土星の特徴 1.1 土星とは 1.2 土星の物理量 1.3 土星の衛星
2 解析 2.1 国立天文台の画像を用いて衛星の公転半径、および運動を求める 2.2 実寸距離を測る 2.3 近似値に補正をかける 2.4 ケプラーの第3法則 2.5 速度を求める
2章 3導出 2-1.1 土星のロッシュ限界を求める 2-1.2 ロッシュ限界を確認する
考察
参考文献
謝辞
1.1 土星とは
太陽からの距離が地球の 10 倍、直径も地球の 10 倍あり、太陽系では木星に次いで 2 番目に大きな惑星である。木星型惑星に属し、太陽に近いほうから 6 番目の惑星である。水素やヘリウムのガスを主成分としているガス惑星でもある。 土星の内部構造は木星と似ていて、中心に岩石質の核があり、その上に氷の層、そしてその上に液体金属水素とヘリウムの層といった形で階層ごとに異なる物質が存在している。また内部はとても高温であり、核では 12000(K) に達し太陽から受けるエネルギーよりも多くのエネルギーを外に放出している。
1.2 土星の物理量
1.3 土星の衛星
土星の特徴の一つとして衛星が多いことも挙げられる。それは数にして60を超える。その中でも代表的な4つを紹介する。
ミマス 土星の主要衛星の中で最も小さい。密度が低く、氷と岩石でできていると考えられている。 エンケラドス 氷で覆われている衛星。間欠泉のようなものがあり、地下には海があると考えられている。 テティス ほとんど氷でできていると考えられている。衛星の中で5番目に大きい。 ディオネ 酸素イオンが検出されたりしたので薄い大気があると考えられている。
太陽からの平均距離 9.55491 (AU)
平均公転半径 1,426,725,400 (km)
公転周期 29.46 (年)
赤道面での直径 120,536 (km)
表面積 4.38•10^10 (km^2)
質量 5.69•10^26 (kg)
体積 827兆 (km^3)
自転周期 (赤道面) 10時間13分59秒
自転周期 (極) 10時間39分25秒
平均密度 0.70 (g/cm^3)
2.1 国立天文台の画像を用いて衛星の公転半径、および運動を求める
https://www.nao.ac.jp/contents/astro/gallery /SolSys/Saturn/sat70822.jpg
この画像からは土星のリングと衛星が確認できる。
2.2 実寸距離を測る 実際に図るより細かくはかれると判断したため、各衛星までのpx数を解像度でかけてmm単位で出した。中心は土星の直径の2本を結んだ点とした。実際に測った数値と理科年表に乗っている数値を表にした。
理科年表より周期の引用
土星の半径とリングの実寸距離、また既知の値
土星からの実寸距離
S1 ミマス 60.07mm
S2 エンケラドス 78.04mm
S3 テティス 96.56mm
S4 ディオネ 90.40mm
半径(実寸) 半径(引用)
土星 19mm 60258km
リング(内側) 27mm 66900km
リング(外側) 44.09mm 175000km
2.3 近似値に補正をかける 既知の値と照らし合わせることで衛星の半径を導き出すことができる。またこの画像の土星は傾いていることから、オレンジ色の点で示した距離と、先ほど測った実寸距離と相似して各衛星の近似値を導き出す。また表には周期の値も記載した。(理科年表より引用)
既知の値と比べてもS4のディオネ以外は近い値が出た。これらがケプラー の第3法則に則っているかグラフにして表してみる。
実寸距離 軌道長半径(km) 軌道長半径(既知) 周期(日)(既知)
S1 ミマス 60.67mm 188073 185404 0.9424
S2 エンケラドス 78.04mm 234881 238020 1.3702
S3 テティス 96.56mm 299923 294619 1.8878
S4 ディオネ 90.40mm 327412 377400 2.7369
2.4 上記の表をグラフ化した。どれも数値的には調和が取れ、ケプラーの第3法則に則っていると言える。
ケプラー の第3法則軌道長半径
0E+00
1E+16
2E+16
3E+16
4E+16
周期0.888 1.877 3.564 7.491
6.652E+15
1.296E+16
2.698E+16
3.51E+16
2.5 速度を求める 軌道長半径が求められたので、周期で割って各衛星の速度を求める。 運動方程式を立てる。
左辺の加速度aは等速円運動の向心加速度v^2/r であり、 v^2/h である。
右辺のFは主星と衛星間の万有引力GMm/r^2 のことであり、すなわちGMm/h^2 である。
これを速度vを求めるために整理すると
となる。 Gに重力定数、Mに土星の質量、hに軌道長半径を代入する。各衛星の速度を表にした。
近い衛星ほど速度が速く、遠い衛星ほどおそいことが確認できた。
軌道長半径(km) 秒速(km/s)
S1 ミマス 188073 44.8
S2 エンケラドゥス 234881 40.2
S3 テティス 299923 35.6
S4 ディオネ 327412 34.0
2-1.1 土星のロッシュ限界を求める。 ロッシュ限界を求める前に潮汐力の導出をする
潮汐力とは 他の天体から受ける引力、すなわち重力場の影響によるものである。重力場の強さは重力の発生源の質量とその質量中心からの距離で決定されるため、距離が違うとそれぞれで引力の強さで差が出てくる。これが惑星や衛星を歪める原因となり、耐えきれなくなった時にそれらは破壊されてしまう。
潮汐力の導出 Gを万有引力定数として天体Aが天体Bの表面に及ぼす力をFaとすると
天体Bの中心に及ぼす引力をF0とすると
潮汐力の大きさはFa-F0なので
⑴を変形して
ここで
M mR
r
一般にx
主星の密度をρ1、主星の半径をr1、衛星の密度をρ2とすると
となる
ここで⑶、⑷式を⑵に代入し計算すると
エドゥアール=ロッシュが導き出した近似値を用いると
R ロッシュ限界 ρ1 主星(土星)の密度 ρ2 衛星の密度 r1 主星(土星)の半径
ロッシュ限界の算出
⑹式に値を代入していく 土星の密度 ρ1=0.70(g/cm^3) 氷の密度 ρ2=0.92(g/cm^3) 土星の半径 r1=6.03*10^4(km)
以上によりロッシュ限界は
R=1.4*10^5(km) となる
⑹
2-1.2 ロッシュ限界の近似値を導出できたので画像に1.4*10^5(km)の部分に赤線を引いてみる。
この画像からわかることは各衛星は土星のロッシュ限界の外側を回っており、リングは内側にきているということである。つまり、土星のリングはロッシュ限界の内側に入り込んだ衛星の残骸である可能性が高いと言える。
考察 国立天文台の画像から読み取れることは、ロッシュ限界が各衛星の内側に存在していることからそこの内側に入り込んだ衛星は潮汐力によって破壊されてしまうことがわかる。また土星のリングの主成分が氷の粒であることから、土星のロッシュ限界の内側に氷が主成分の衛星が入りこみ、砕かれて現在の土星のリングになったと考えられる。各衛星はロッシュ限界より外側にあり、遠心力と重力の釣り合いで公転をしている。また各衛星は近い順から周期が早く、それを確認することもできた。土星の現在の姿にまでなったプロセスは考察できたが、土星のリングには未だに不明な点が多い。これからの土星探査の結果に注目していきたい。
参考文献
国立天文台 ギャラリーページ https://www.nao.ac.jp/contents/astro/gallery /SolSys/Saturn/sat70822.jpg
謝辞 本論文の製作にあたってご協力してくださった天文学研究室の小野寺先生、日比野先生、井上先生には多大なるご迷惑をおかけいたしました。最後まで見守ってくださりありがとうございました。 特に井上先生には本論文の監督をしてくださったこともあり、形にすることができました。データの収集や、計算の添削ありがとうございました。