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新潟県 首都圏 IT 企業立地セミナー 地域×IT Innovation 「地域資源を活用した新たなビジネスの展開について」 セミナーレポート 人口減少、少子高齢化社会は地方の地域社会システムの維持・発展にさまざまな課題を投げかけて います。現在、こうした課題の解決に IT 技術の活用が大きく期待されており、またそれはあらたなビジネス チャンスが地方にあることを示唆しています。 2019 年9月、新潟の地域資源を活用したビジネス展開と IT 企業にとっての新潟県の立地環境をテ ーマにしたセミナーが東京、千代田区にて開催され、首都圏の IT 企業 92 社、約 100 人が出席。関心 の高い参加者を前に、新潟と首都圏を密接につなぎながらあらたな取り組みを進めている 3 人の登壇者 が語りました。 主催:新潟県産業労働部産業立地課 日時:2019 年 9 月 6 日(金)14:00~18:45 会場:都道府県会館 近 龍生 新潟県産業労働部 産業立地課 課長 新潟県の近(こん)産業立地課長は、新潟県が首都圏から新幹線で2 時間の距離にあり、太平洋側と同時被災しない BCP に適した地域であるこ と、多くの IT 系専門学校をはじめ優秀かつ勤勉な人材が豊富であることな ど、すでに進出している企業が新潟県を評価しているポイントを紹介しました。 また、2019 年 10 月に新潟駅直結のビルにオープンし、渋谷 QWS と連 携して創業支援を行うスタートアップ拠点(SN@P 新潟)について PR し、 最後に「講演会後の交流会では、県内自治体や専門学校の関係者も参加 するので、ぜひいろいろな情報交換をお願いします」とあいさつしました。 挨拶

地方でのイノベーション創出に向けた提案 · 2020. 8. 13. · 小の部品会社で、地域全体で完成品ができるような地域ぐるみのサプライチェーンともいえる。it化すれば

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Page 1: 地方でのイノベーション創出に向けた提案 · 2020. 8. 13. · 小の部品会社で、地域全体で完成品ができるような地域ぐるみのサプライチェーンともいえる。it化すれば

新潟県 首都圏 IT 企業立地セミナー 地域×IT Innovation

「地域資源を活用した新たなビジネスの展開について」 セミナーレポート

人口減少、少子高齢化社会は地方の地域社会システムの維持・発展にさまざまな課題を投げかけています。現在、こうした課題の解決に IT 技術の活用が大きく期待されており、またそれはあらたなビジネスチャンスが地方にあることを示唆しています。 2019 年9月、新潟の地域資源を活用したビジネス展開と IT 企業にとっての新潟県の立地環境をテーマにしたセミナーが東京、千代田区にて開催され、首都圏の IT 企業 92 社、約 100 人が出席。関心の高い参加者を前に、新潟と首都圏を密接につなぎながらあらたな取り組みを進めている 3 人の登壇者が語りました。

主催:新潟県産業労働部産業立地課 日時:2019 年 9 月 6 日(金)14:00~18:45 会場:都道府県会館

近 龍生 新潟県産業労働部 産業立地課 課長

新潟県の近(こん)産業立地課長は、新潟県が首都圏から新幹線で2時間の距離にあり、太平洋側と同時被災しない BCP に適した地域であること、多くの IT 系専門学校をはじめ優秀かつ勤勉な人材が豊富であることなど、すでに進出している企業が新潟県を評価しているポイントを紹介しました。

また、2019 年 10 月に新潟駅直結のビルにオープンし、渋谷 QWS と連携して創業支援を行うスタートアップ拠点(SN@P 新潟)について PR し、最後に「講演会後の交流会では、県内自治体や専門学校の関係者も参加するので、ぜひいろいろな情報交換をお願いします」とあいさつしました。

挨拶

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貴島 邦彦氏 渋谷スクランブルスクエア株式会社 営業一部部長

渋谷スクランブルスクエア株式会社営業一部部長の貴島邦彦氏は「渋谷QWS(キューズ=Question with Sensibility)」の取り組みを紹介しました。今後、渋谷 QWS と新潟県は連携し、IT 技術を活用した地方の課題解決に取り組んでいくこととしています。

2019 年 11 月 1 日オープンした渋谷スクランブルスクエア東棟は駅周辺最大級となるオフィスビルで、その中層階に位置するのが渋谷 QWS です。貴島部長は、これからの地方でのイノベーションのキーは「関係人口」(仕事などで定住はしないが地方と密に関わる人たち)と提案し、都市部の課題より地方の課題へのイノベーションが求められる時代、同じ場所にいなくても、移動しながら仕事をするグローバルフリーランスやノマドワーカーも増えていくだろうと語りました。渋谷 QWS は東大、慶応大などの首都圏大学とも連携し、企業家、学生、研究者など多種多様な人々のスクランブルから未来の社会的価値観が生まれることを目指しており、貴島氏は「新しい価値や流行を産みだしてきた渋谷のコミュニティと新潟のコミュニティが一緒にイノベーションを目指していきたい」と語りました。

基調講演

地方でのイノベーション創出に向けた提案

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川邉 正則氏 地域商社 株式会社ブリッジにいがた ゼネラルマネージャー

株式会社ブリッジにいがたは第四北越フィナンシャルグループが中心となって2019 年 4 月に設立した地域商社です。 ゼネラルマネージャーの川邊正則氏は、新潟県の強みを生かした需要、成長機会が見込めることが設立理由であるとし、新潟県の強みは、1、地域資源が豊富なこと 2、日本海側随一の交通の結節点であること 3、周辺県に比べて人口が多いこと であると紹介しました。

株式会社ブリッジにいがたは新潟に関する圧倒的な情報量や幅広いネットワークを活用して、物産展の開催、観光キャンペーンの企画、営業を行っており、日本橋の「ブリッジにいがた」を基点として、地域商材の魅力や地元企業の技術力も発信し、さらに生産性向上支援を通じて事業及び雇用拡大に寄与していきたいと語りました。また、第四北越フィナンシャルグループと野村グループが共催する『新潟イノベーション・プログラム(NIP)』の取組みや、新潟県内で実施される独創性の高い事業プランを表彰する「にいがたスタートアップコンテスト」などの事例を紹介し、「豊かな地域社会の発展に貢献し新潟県の未来への懸け橋となるべく挑戦し続けたい」と思いを述べました。

基調講演

地域商社株式会社ブリッジにいがたの取り組み

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長井 啓友氏 ウォーターセル株式会社 代表取締役

新潟県はお米をはじめおいしい農作物で有名です。ウォーターセル株式会社代表取締役の長井啓友氏は、IT による地域課題解決の事例として、新潟市などで取り組んでいる農業の IT 化を紹介しました。

長井社長は、「農業分野は情報化が非常に遅れており、まずは生産の部分を可視化しないと、その後の加工、流通までスムーズに連携できない。農業生産の向上はもちろん、科学的根拠による農業、食分野での持続的進化に貢献したい」と意欲を語りました。さらに、事業着手のきっかけとなった農家とのエピソードや、GPS とスマートフォンを連動させ、農地の位置、農薬や肥料の散布回数を管理するアプリケーションソフト「アグリノート」を紹介し、最近はドローンや人工衛星、コンバイン等と連動した自然環境の自動的なデータ収集、分析の時代になってきていると指摘し、土壌の肥沃度なども自動的に計測できる田植え機の事例を紹介しました。また、ベテランの職能をデジタルで再現することで若手がそのまま使え、ノウハウの継承の手間や、若手の学習コストを格段に減らすことが可能と語りました。最後に、「情報のハブとなることで、情報を活用し農業経営支援を包括的に行うことを目標にしている」と、決意を述べ、産業の根本である一次産業がよくなれば社会全体がもっとよくなると考えている、と語りました。

基調講演

ICT と IoT を活用した最先端農業のご紹介

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司会進行:新潟日報社 論説編集委員 相田晃氏

パネリスト:貴島邦彦氏 川邉正則氏 長井啓友氏

基調講演に続き、講師 3 人が登壇。新潟日報社論説編集委員の相田晃氏がコーディネーターを務め、IT を活用した地方の活性化や 新潟の可能性、魅力について話し合いました。

貴島氏は、「9 月 3 日に新潟市の SN@P 新潟で開催されたスタートアップイベントに出席したが、16歳の起業家がいて驚いた。新潟の方は真面目でコツコツという印象があるので、新しいことをやろうというチャレンジ精神を押してあげたい、という思いを抱いた。新潟は、実際に技術を持っている人にとって課題を解決したり、腕試しをしたり、掛け合わせるものがたくさんあるのではないか」と述べました。

川邊氏は、「広い新潟県の中で、金融機関、自治体の横連携ができれば大きなパワーになると思うのでそこに地域商社が力を発揮したい。新潟は、労働人口も多いし、課題もたくさんあるということは伸びしろがあるということ。新しい方を迎えることに行政も地域の人たちも積極的。燕三条などは、個々の会社は中小の部品会社で、地域全体で完成品ができるような地域ぐるみのサプライチェーンともいえる。IT 化すれば恩恵は大きい。」と話しました。

長井氏は、「地方で首都圏の即戦力クラスの人材を確保するにあたり、週末ワーカーや 3 年間限定のような働き方、合宿のような方法もあると考えている。また、IT 農業は論理的思考に慣れているエンジニアが向いていて、成功もしている。地方には課題がたくさんあるので IT 企業にぜひチャレンジしてほしい。農業はまさに理系の総合格闘技。ぜひ新潟に来て欲しい。」と訴えました。

パネルディスカッション

オープンイノベーションを活用した地方の活性化

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講演会終了後、会場を替えて交流会を開催。参加者は、新潟の美味しい食材や自慢の日本酒を味わいながら、県内の各市町村担当者や専門学校関係者らと地域の事情や学生の教育について話を交わしました。参加者からは「一次産業の IT 化の話がおもしろかった。漁業にも同じような問題があると思うので海へ出ていくこともできそう」「新潟の学校は即戦力で通用する教育をされていて、とてもまじめで優秀、向上心のある学生が多いと感じた」といった声が上がっていました。

情報交換会