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経済産業省 北海道経済産業局 地域経済部 情報・サービス政策課 平成30年5月22日 (本発表資料のお問い合わせ先) 経済産業省北海道経済産業局 地域経済部 情報・サービス政策課 担当者:髙橋、岡﨑、山﨑 電話:011-709-2311(内線2558,2559) E-mail: [email protected] 日本初、アドベンチャーツーリズムマーケティング戦略策定! ~道東エリアをモデルとした地域AT戦略~ <全体版>

日本初、アドベンチャーツーリズムマーケティング …2018/05/22  · アドベンチャーツーリズムは、自然や異文化といった軸ではエコツーリズムやグリーンツーリズ

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Page 1: 日本初、アドベンチャーツーリズムマーケティング …2018/05/22  · アドベンチャーツーリズムは、自然や異文化といった軸ではエコツーリズムやグリーンツーリズ

経済産業省 北海道経済産業局

地域経済部 情報・サービス政策課

平成30年5月22日

(本発表資料のお問い合わせ先)

経済産業省北海道経済産業局

地域経済部 情報・サービス政策課 担当者:髙橋、岡﨑、山﨑

電話:011-709-2311(内線2558,2559)

E-mail:[email protected]

日本初、アドベンチャーツーリズムマーケティング戦略策定!~道東エリアをモデルとした地域AT戦略~

<全体版>

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2016年3月、日本政府は『明日の日本を支える観光ビジョン』を策定し、2020年までに訪日外国人旅行者数4,000万人・訪日外国人旅行消費額8兆円、2030年までに訪日外国人旅行者数6,000万人・訪日外国人旅行消費額15兆円という数値目標を設定。

また、北海道においては、「北海道インバウンド加速化プロジェクト」にて2020年の外国人観光客の目標を300万人から500万人に上方修正。

訪日外国人旅行者数は、2012年の836万人から2017年には2,869万人と5年間で約3.4倍に増加し、訪日外国人消費額も2012年の1兆8,460億円から2017年の4兆4,161億円の5年間で約2.4倍に拡大。

アドベンチャーツーリズム(以下、AT)は、北米・欧州を中心とした巨大市場であり、AT旅行者は一般の旅行者に比べて消費単価が高いというデータより、特に訪日外国人旅行消費額の日本政府の目標達成に貢献する魅力的なマーケットであると推測。

このため北海道経済産業局では、AT市場の獲得を目指し、道内で先導的に取り組んでいる鶴雅リゾート株式会社を中核企業に据え、阿寒を中心とした道東エリアにおけるATマーケティング戦略を策定。

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はじめに

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戦略骨子

市場成長性、市場規模、顧客単価、顧客の質、ラグジュアリー市場との関わり、アクティビティトレンドを調査・分析。

AT市場概観

I. 既存のコンテンツ・リソースをストーリーで紡ぐ、コンテンツを組成するII. ATサービスの品質を世界水準に引き上げる(人材育成)III. 世界に向けた発信、優良顧客とのネットワークを構築するIV. 産業界・官公庁が連携し、エリア一体となる取組を実施する

AT顧客獲得に向けた方策

道東エリアATデスティネーション実現による地域への効果イメージ

コンテンツ、顧客、関連消費、イベントごとの想定経済効果

北米・欧州を中心としたソフトAT顧客の獲得を目指す。

ターゲットとなる地域とAT顧客層の設定

長期・継続的投資を可能とする好循環形成

持続可能な観光デスティネーション実現イメージ

癒やしの自然×アイヌ文化、自然資源・食・アクティビティの多様性及び利便性

道東エリアの優位点と改善点から見る道東のポジショニングに係る方向性

宿泊事業者と地域が連携したAT市場獲得による経済効果最大化イメージ

宿泊事業者と地域関連事業者との連携によるタイムマネジメントでのエリア収益最大化

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アドベンチャーツーリズムとは

• 「アクティビティ、自然、異文化体験の3要素の内、2つ以上で構成される旅行」

• 元々、“アドベンチャーツーリズム”は1980年代にニュージーランドで急速に発達した観光分野。シーカヤック、ラフティング、トレッキング、山登りといった、海、山、川を生かした様々なアウトドアのアクティビティの総称。

定義

アクティビティ

自然 異文化

上記の4つが、アドベンチャーツーリズムと呼ばれる旅の形態

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アドベンチャーツーリズムは、自然や異文化といった軸ではエコツーリズムやグリーンツーリズ

ムと共通項を持つものの、レジャーとしての「楽しみ」の要素が中核にあるため、観光客が自らより積極的にお金を費やす傾向があり、市場も拡大していると考えられる。

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エコツーリズムやグリーンツーリズムとの違い

アクティビティ

自然 異文化

歴史

自然 文化

農林水産業

自然 文化体験

アドベンチャーツーリズム エコツーリズム グリーンツーリズム

アクティビティ・異文化と自然における「楽しみ」と直結しており、レジャーとしての観光の側面を核に持ち合わせている。

資源の保護+観光業の成立+地域振興の融合をめざす観光の考え方であり、社会貢献・サスティナビリティを重視。

職業体験の要素が中核にあり、それを通して自然や異文化にも触れ合うといった観光の側面も持った活動。

ATにおいても重要な要素だが、事業機会創出や消費拡大へのインパクトは限定的。そのため地域産業や観光事業者への

経済振興への寄与はATほどは大きくない

アクティビティにおける各種ギアや、異文化(“エンターテイメント・食の地産地消”等も含まれる)など消費拡大に貢献する要素が包含されており、経済振興に期待大

概要

構成要素

経済効果

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2016年の三極別の市場規模では欧州が約30兆円(約2800億ドル)と最も大きく、北米と南米が続く。

欧州・北米・南米におけるAT市場規模は約49兆円(約4500億ドル)であり、年率11.4%で成長。(欧州・北米・南米における観光関連産業全体の成長率は6.2%)

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■AT市場概観①【AT市場規模】

出典:ATTA資料、Euro-Monitor、各種データよりJTB総研作成

100万

USD

北/南米・欧州におけるアドベンチャーツーリズム市場規模

100万

USD

北/南米・欧州三極別アドベンチャーツーリズム市場規模

260,000

475,637 445,427

641,159

-

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

AT三地域合計 観光全体三地域合計

2012 2013 2014 2015 2016 2017

195,000

283,542

24,700

45,973

40,300

65,832

-

100,000

200,000

300,000

400,000

2012 2013 2014 2015 2016

欧州 南米 北米

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AT市場(2017年)において、現地支出が最も大きい北米は一人あたり36万円(3,290ドル)。

3極全てのエリアにおいて、AT市場顧客の単価は全体の1.7倍~2.5倍程度。

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■AT市場概観②【北米・南米・欧州のAT旅行者一人あたりの消費額】

出典:ATTA資料、Euro-Monitor、各種データよりJTB総研作成

1,722

2,198

3,290

1,033 1,257 1,331

-

1,000

2,000

3,000

4,000

Europe Latin America North America Europe Latin America North America

全体

1U

SD

北/南米・欧州AT市場一人当たり消費額 北/南米・欧州全市場一人当たり消費額

出典:ATTA資料、Euro-Monitor、各種データよりJTB総研作成

約2.5倍

約1.7倍

約1.7倍

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■AT市場概観③【AT顧客の質】

ATTAの調査によると、北米AT旅行者のうち80%以上は四年生大学卒業以上の学歴をもち、約6割が年収800万円(75千ドル)以上の年収水準(中央値は600万円(56千ドル)程度)となっており、高学歴かつ所得水準の高い層がAT顧客像といえる。

出典:ATTA North American Adventure Travelers

Under$35000,

9.4%

$35,000–

$49,999,

10.9%

$50,000–

$74,999,

19.7%

$75,000–

$99,999,

19.5%

$100,000–

$149,999,

23.3%

$150,000–

$199,999,

7.2%

$200,000–

$249,999,

4.2%

$250000 or

more, 5.6%

北米AT旅行者 所得水準(2014年)

米国

中央値

1.0%

1.7%

9.3%

6.6%

42.8%

39.5%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

その他

高等学校

専門学校等

二年生・単科大学

四年生大学

大学院・ビジネススクール等

北米AT旅行者 学歴

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■AT市場概観④【ラグジュアリーマーケットのトレンド】

The Boston Consulting Groupによると、2015年は富裕層市場の3分の1程度を“Experiential luxury”が占めているが、2022年には3分の2を占めるとされており、体験旅行への消費シフトは益々期待できる。

出典:BCG “Metroluxe: Countering Complexity in the Business of Luxury,”

2022年までに富裕層消費額の2/3を占めるまでに拡大すると推測

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過去10年間でAT市場における顧客のアクティビティニーズは変化しており、よりソフトなものが主流になってきている。

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■AT市場概観⑤【アクティビティ・ニーズのトレンド】

2006 2016

出典:ATTA – “Consumer Research Perspectives: Tomorrow’s Adventure Traveler” ATWS 2017

1st

2nd

3rd

4th

5th

6th

7th

8th

9th

10th

Climbing / 山登り・クライミング(ハード)

Rafting / ラフティング

Trekking / トレッキング

Kayaking / カヤック

Canoeing / カヌー

Hiking/ ハイキング

Backpacking / バックパッキング

Scuba diving / スキューバダイビング

Camping / キャンピング

Safaris / サファリ

Hiking/ ハイキング

Backpacking / バックパッキング

Trekking / トレッキング

Kayaking / カヤック

Rafting / ラフティング

Climbing / 山登り・クライミング(ハード)

Mountain Biking / マウンテンバイク

Scuba diving / スキューバダイビング

Camping / キャンピング

Caving / ケイビング(洞窟探検)

New

New

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価格競合を避け、目的地が主導権を持って価値開発・提供をしていける旅行市場領域として、AT市場は有望。

道東エリアの場合、AT市場にフォーカスする場合でも、ややソフトよりのAT市場と体験型にシフトしつつあるLuxury市場との重なる領域の取込が理想。

AT市場

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■AT市場概観⑥【旅行市場におけるAT市場と富裕層市場の位置づけ及び動向】

目的重視/価格競合少

製品的開発型

ポピュリズム既製品

(Having)

体験的独自資源ユニーク

アトリエメイド(Being)

価格重視/価格競合大

今後のLuxury

汎用品市場

従来型Luxury

団体旅行 FIT価格訴求型

FIT富裕層富裕層向けパッケージ

顧客の旅行形態

ハード/ストイック/スポーツ競技

ソフト/楽しみ/レジャー

体験(Being)

商品(Having)

Luxury市場はHavingから

Beingへシフト

ハードAT・ロッククライミング

・ラフティングetc…

ソフトAT×

Luxury

地方が狙うべき市場

AT顧客の中でも、適度なインフラ・快適性を求め、かつ現地の文化を楽しみながらアドベンチャーを実施する層の取り込みが重要と想定

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■ターゲットとなる地域とAT顧客層の設定

【顧客単価】

北米は一人あたりの消費単価が高い。また、欧州は世界最大の市場規模。

【波及効果】

北米はATTAなどの組織の発祥の地であり、アドベンチャー・ツーリズムの本拠地というべきエリアである。この北米が認めるデスティネーションとなることは、世界が認めるというブランディングに繋がる。

【顧客の質】

所得水準に加え教育水準も高く、人や文化を大切にする考えを持っている。

北米・

欧州を中心とした

ソフトAT顧客の獲得

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■道東エリアの優位点と改善点から見る道東のポジショニングに係る方向性

【2017年9月の道東招聘を踏まえたATTAからのアドバイス】

道東はその優しい自然がもたらす癒し・静けさに加え、日本文化の独自性・魅力をさらに高めるアイヌ文化による重層性が、海外競合地域に比べて際立った差別化要素。

自然と文化が融合することで自然のリソースの差別化に繋がっている

文化体験が二層ある:日本文化+アイヌ文化

インフラ(設備・環境等)が素晴らしい

食事体験が素晴らしい

他地域(欧米・アフリカ・その他アジア)とは違った優しく包み込むような癒しの自然のリソースがある

知識豊富なガイドがいる

道東エリアのAT市場に向けた優位点

欧米の荒々しい自然に対し、優しく包み込むような癒しの自然×アイヌ文化

自然資源の豊富さとそれを活かした食、ATに最適な四季折々の気候と四季を通じた

アクティビティの多様性、それらを体験できる利便性

アイヌの方々が生活している最大級コタン静けさ・落ち着きを伴う世界水準のAT資源

道東のポジショニングに係る方向性

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AT市場を獲得し、単価を上げ、滞在期間を長くし、満足度を向上させるには、エリア全体を語るストーリーにより各リソースを統合し、AT旅行者が楽しめるフルパッケージを作る必要がある。

ATWS期間中に実施されるエクスカーション(体験ツアー)では、受入エリアは30程度のメニューを用意することが求められる。

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I. 既存のコンテンツ・リソースをストーリーで紡ぐ、コンテンツを組成する

■AT顧客獲得に向けた方策

鶴雅リゾート(株)は、平成30年4月にAT専門事業部を設置。本事業部が中心となり、AT顧客が楽しめるフルパッケージツアーのパイロット版を造成、テスト販売を行う。

NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構が、阿寒エリアに独立して存在するリソースを多様なストーリー性の高い滞在プログラムに合わせて戦略的に面として融合させていくとともに、釧路、弟子屈をはじめとする道東近隣エリアと緊密に連携していく。

阿寒アドベンチャーツーリズム(株)が、アイヌ民族の文化・神話をモチーフとしたストーリーに沿い、阿寒の夜の森を舞台に自然や植物との共生の世界をデジタルアートにより演出。また、国の天然記念物であるマリモの生息地を訪れる特別ツアーや、白湯山(はくとうさん)のトレッキングなどのAT滞在プログラムの開発及び運営、ガイド養成の支援を行う。

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■AT顧客獲得に向けた方策

(株)JTB総合研究所が、ATTAと連携し、日本のAT提供事業者向けのサービス基準策定を検討する。基準策定にあたっては、鶴雅リゾート(株)をはじめとする阿寒エリア関連事業者の

協力を得ながら阿寒エリアをモデルケース的に実施する。具体的な項目は以下の通り。

・ AT顧客を楽しませるためのユニーク要素・ AT顧客をより楽しませるための演出方法やコミュニケーション方法・ AT顧客により伝わる立体的ストーリーのまとめ方

AT顧客に対して地域の魅力・価値を最大化するエンターテイナー、グローバル市場に対応できるアクティビティの専門家、自然の専門家などを育てる必要があり、地域に合ったアドベンチャーツーリズムの標準化の枠組みを定める必要がある。

Ⅱ. ATサービスの品質を世界水準に引き上げる(人材育成)

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北海道経済産業局が、日本における北海道・道東地域をPRするとともに、海外関係機関とのネットワーク構築、ATWS開催状況の把握を目的として、トスカーナ(イタリア)で開催されるATWSに参加(10月)。また、ATWSの北海道誘致や大型FAMツアー(Adventure Week)実施を見据え、北海道運輸局をはじめとした関係機関との連携を強化。※FAMツアー(Familiarization Tour):誘致・誘客促進等を目的とし、関連事業者等を対象に現地視察を行うツアー

鶴雅リゾート(株)が、ATWSに参加し、優良顧客とのネットワークを構築するとともに自社が提供するサービスをはじめ、道東・阿寒エリアのPRを実施。

ATWSへ参加しエリア及び自社等をPRするとともに、ATTAや強い影響力を持つAT会員とのネットワークを構築する。

道内AT関係機関が連携して大型FAMツアーの実施やATWS誘致について検討する。

Ⅲ. 世界に向けた発信、優良顧客とのネットワークを構築する

■AT顧客獲得に向けた方策

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■AT顧客獲得に向けた方策

IV. 産業界・官公庁が連携し、エリア一体となる取組を実施する

AT市場獲得のためには地域一体となって取り組む必要があるため、目指すべき方向性を定め関係機関のATに対する理解を深めることが必要。

優秀なサプライヤーが他者の模範となって地域全体を高めていくような取組をする必要がある。

ローカルの事業者や地域文化の代表者など中核となるエリアのコミュニティリーダーを巻き込んで進めていく必要がある。

北海道経済産業局が、道東エリアにある豊富なATリソースを整理・分析し、道内におけるAT事業者の機運醸成・連携強化を目的としたアドベンチャーコネクトを開催(9月)。

鶴雅リゾート(株)のAT事業部が中心となり、AT顧客が楽しめるツアーを阿寒関係事業者と連携して造成、ATWSへの参加、阿寒エリアのAT拠点の造成など、宿泊事業者としての取組だけではなく、阿寒エリア全体の経済好循環化を意識した取組を実施。

NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構が、阿寒アイヌ工芸組合と連携した商店街回遊性向上事業などを実施するとともに、持続可能な事業運営による「稼げる地域づくり」の基盤づくりを推進。

阿寒アドベンチャーツーリズム(株)が、阿寒エリアのハブとしてDMO・宿泊施設・関連事業者一体となったエリア全体での価値向上を推進する。また、白湯山(はくとうさん)のトレッキングをはじめとする、AT滞在プログラムの開発及び運営を行うとともにガイド養成支援を行う。

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■持続可能な観光デスティネーション実現イメージ

ATデスティネーション化・高付加価値ツアー実現により、長期・継続的投資を可能とする好循環形成

高付加価値 × 1日以上のツアーに参加する旅行者がくるこれまでは国内の1泊2日モデルの顧客が相手であったため、販売可能なのは数時間の体験ツアーコンテンツが上限であったが、AT顧客は1日以上の”深い“体験を求めてくると想定される。

1日以上の質の高いツアーコンテンツが作られるAT顧客のニーズに応えて、ツアーガイド等が時間をかけても深く道東エリアを楽しめる世界レベルのATツアーコンテンツを造成するようになる。

深い体験を通じて、観光地としての満足度・魅了度が向上するそれなりの単価・時間を必要とするツアーが造成できることにより、ツアーを通じてこれまでより深く本質的な道東の魅力を伝えられるようになり、観光地としての満足度・魅力度が向上する。

宿泊施設への長期滞在顧客が増加する道東の魅力度があがり、ツアーが長時間化したことにより、道東エリアがより長期間楽しめる場所となり、滞在期間が長期化する。

周辺施設へも好ましい経済効果が波及する道東来訪者の宿泊期間が長期化することにより、宿泊施設はもちろん、周辺エリアの施設にも来場者・来訪者が増加し経済効果が波及する。

地域が長期的・戦略的に投資可能な資金を得る

好循環形成により、継続的価値上を実現

好循環形成により、継続的価値上を実現

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■道東エリアATデスティネーション実現による地域への効果イメージ

アジアで随一、世界でも有数のATデスティネーションとして認知され、北海道ATのハブとして機能。

・訪日外国人観光客を占める欧米豪の富裕層を中心としたAT顧客の割合が、現状より増加している。※2015年阿寒エリア欧米豪比率2%・上質なATエリアのイメージの構築によりAT顧客に触れ、最先端のAT関連産業に従事したいと望む内外の若者が集い、学ぶエリアとなっている。

・訪日外国人観光客の平均滞在日数が今より延び、道内で有数の長期滞在エリアとなっている。※2015年北海道全体の平均滞在日数1.01日・宿泊業、飲食業、ガイド業、運輸業等に従事するスタッフがAT顧客向けサービス水準を向上させ、世界水準のホスピタリティを提供。

・高付加価値ツアーの造成により、高品質高単価サービスを実現。・AT顧客の高い消費金額により、関連事業者の利益率が向上・道内における他地域の同業他社よりも高い給与水準を実現。

・ATツアーを楽しむためのATギア関連企業が道東エリアに出店し、地元産品の売り上げが拡大している。・欧米豪のAT顧客や、アジアの先進的富裕層にアプローチしたいギア・飲食等関連産業のアンテナショップや、企業や省庁、大学等の関連IoT実証実験等のハブとなっている。

顧客

コンテンツ

関連消費

イベント

・2018年第二回Adventure Connect(当局事業)の実施。・2019年Adventure WeekまたはAdventure NEXTの実施。・2020年ATWS準備としてのATTA関連イベントを通じ2021年のアジア初ATWSを北海道で開催、キーエリアに。・名実ともにアジア・日本におけるAT先進地として、AT関連のイベント・セミナーが開催され地域経済に波及効果を及ぼす。

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地元の食を重視するAT顧客による消費単価拡大

ATTAのコンサルティングに基づく高単価ツアー増加による収益性向上アイヌ文化・地元の食材を多用した差別化型商品・地産地消商品実現

宿泊

食事

買い物

阿寒湖エリア鶴雅グループ関連施設鶴雅グループ館内

外出・体験

湖岸エリア活性化策に基づく簡易店舗

湖岸エリア活性化策に基づく簡易店舗

空き店舗活用含む商店街

阿寒湖エリアの他グループホテル群

高単価・長期滞在型AT顧客増加欧米顧客割合増加によるイメージ効果

従来のお土産以外にも、AT関連ギアやアイヌ関連商品等の売上拡大

“阿寒湖の前~からアイヌ文様でアレンジしたスタンディングアップパドルボートを乗れるようにしたい”

“アイヌ伝統のお酒は飲めないのでしょうか。日本のお酒は本当においいからアイヌのお酒も飲めたらいい”

鶴雅従業員や地元の方、海外からの観光客も集い・交流し・楽しめるバー等

ATTA CEOシャノンからの提案※一部抜粋

高消費単価高所得高学歴

欧米主体 朝‐9:00

午前‐12:00

午後‐16:00

夕方‐18:00

夜‐21:00

早朝‐6:00

深夜21:00-

構築されたストーリーに沿ったアクティビティ、食や館外エンターテイメント等の

タイムマネジメントによるエリア収益機会最大化

フィッシング

フィッシング後に温泉

昼食後白湯山トレッキング

スポーツギアショッピング

イコロアイヌ舞踊

スキー

足湯で休憩

スノーアクティビティ

商店街めぐり

バーで大人の夜

木彫り体験

体験時の食事

館外での昼食・夕食の選択肢多様化

阿寒のテーマに沿った夜のエンターテイメント

阿寒湖商店街・アイヌコタン・FG等の統合ストーリーに沿った拡充と導線構築

顧客にニーズに沿った鄙の座、花ゆう香、トゥラノとの顧客情報共有・配分グランピング施設 夏季 冬季

フォレスタルミナ

食・エンタメ

世界1300のメディア、富裕層・ATエージェントへのPRに

よる認知度向上による優良顧客増

鶴雅AT事業部と阿寒DMCによるAT顧客ニーズ把握と受付・アレンジ機能 阿寒DMC

■宿泊事業者と地域が連携したAT市場獲得による経済効果最大化イメージ阿寒エリアの宿泊事業者である鶴雅リゾート(株)は、AT顧客にとって阿寒エリアのゲートウェイであり、エリアを積極的に世界にPRし、北米・欧州のソフトAT

顧客をエリアに呼び込む一役を担う。また、宿泊事業者という枠だけにとどまらず、AT顧客を楽しませ、旅行満足度を向上させ、より稼げる観光地となるために、ガイド事業者やアイヌ工芸品を扱うお

土産屋、地元ならではの料理を提供する飲食店と連携し、AT顧客目線で阿寒エリアでの滞在時間を意識したツアー商品・コンテンツを組成、整理する。

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【参考①】平成30年度の主な取組(組織別)

① 道東エリアにある豊富なATリソースを整理・分析。

② 道内におけるAT事業に関する機運を醸成し、関係者を巻き込むため、ATTA幹部と道内関係者とのディスカッションを行うアドベンチャーコネクトを実施(9月)。

③ AT市場獲得に向け、日本における北海道・道東地域をPRするとともに、海外関係機関とのネットワーク構築、ATWS開催状況を把握するため、トスカーナ(イタリア)で開催されるATWSに参加(10月)。

④ 北海道へのATWS誘致や大型FAMツアー実施を見据え、北海道運輸局をはじめとした関係機関との連携を強化。

・北海道経済産業局

① 鶴雅リゾート(株)内にAT専門事業部を設置するとともに、阿寒地域におけるAT拠点として、ホテル内に「鶴雅アドベンチャーベース <SIRI(シリ)>」を開設。 【平成30年4月開設済】

② AT専門事業部が中心となって、AT顧客が楽しめるフルパッケージツアーのパイロット版を造成、テスト販売を行う。

③ ATWSに参加し、優良顧客とのネットワークを構築するとともに、鶴雅リゾート(株)や道東・阿寒エリアのPRを実施。

・鶴雅リゾート株式会社

ATマーケティング戦略における地域におけるAT顧客獲得に向けた4つの方策から、北海道経済産業局、鶴雅リゾート(株)、NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構、阿寒アドベンチャーツーリズム(株)、(株)JTB総合研究所は、平成30年度について以下の取り組みを中心に実施。(一部実施済みも含む)

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・阿寒アドベンチャーツーリズム株式会社(平成30年4月2日設立)

① 阿寒エリアのハブとしてDMO・宿泊施設・関連事業者一体となったエリア全体での価値向上推進と持続可能な事業運営。

② アイヌ民族の文化・神話をモチーフとしたストーリーに沿い、阿寒の夜の森を舞台に自然や動植物との共生の世界をデジタルアートにより演出。

③ 原始林に囲まれた阿寒湖を一望できる白湯山(はくとうさん)周辺トレッキングコース整備をはじめとする、AT滞在プログラムの開発及び運営。

・NPO法人 阿寒観光協会まちづくり推進機構

① 阿寒エリアに独立して存在するリソースを多様なストーリー性の高い滞在プログラムに合わせて戦略的に面として融合させていくとともに、釧路、弟子屈をはじめとする道東近隣エリアと緊密に連携していく。

② 阿寒アイヌ工芸協同組合と連携した商店街回遊性向上事業の実施。

アイヌシアター「イコロ」におけるアイヌ舞踊と融合したデジタルコンテンツ創出による阿寒湖温泉商店街回遊性向上事業により、アイヌ文化を基調としたデジタルコンテンツの制作・上映による「アイヌコタン」の魅力強化、商店街回遊性向上を目指す。

【平成29年度補正予算「地域文化資源活用空間創出事業(商店街支援事業)」を活用】

・株式会社JTB総合研究所

① ATTAと連携し、日本のATサービス提供事業者向けのサービス標準化を検討。本年度は阿寒地域において検証実施。

【参考①】平成30年度の主な取組(組織別)

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北海道経済産業局は平成29年度、(株)JTB総合研究所に委託し、鶴雅リゾート(株)を中核企業として、道東地域をモデルとしたATマーケティング戦略を策定。

事業者

◆JTBグループ◆域内観光関連事業者◆航空会社

◆ATTAが主催する、世界最大のアドベンチャー・トラベル・サミット。◆世界の富裕層やメディア等1000人近くが参加◆「エクスカーション」によるアクティビティ等の観光体験◆ 「プレゼンテーション」「ネットワーキングスペース」による情報発信◆ 「マーケットプレイス」での商談会等

◆北海道運輸局◆北海道環境事務所◆北海道アドベンチャートラベル協議会※3

◆阿寒観光協会まちづくり推進機構◆関係自治体

関係機関等

◆管理法人 (株)JTB総合研究所

地域中核企業 鶴雅リゾート(株)

◆阿寒湖温泉を中心に8つ、グループ全体で13の宿泊施設、飲食店を運営。

Adventure Travel World Summit(ATWS)

※3 北海道アドベンチャートラベル協議会:Hokkaido Adventure Travel Association(HATA)産学官が連携し、ATという旅のスタイルを、外国人旅行者の新たな来道目的として定着させることを目的に、北海道運輸局が平成29年6月21日に設立予定。

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連携

主要空港

鶴雅関連施設

需要の集中する道央圏からの訪日外客の地域拡散に貢献

参加

各国・地域のメディア、政府観光局、観光協会、DMO、アウトドアメーカー等で構成され、およそ100ヵ国1300会員数を擁する世界で最も権威のあるといわれるアドベンチャーツーリズム組織団体。本拠地はシアトル。

Adventure Travel Trade Association(ATTA)

北海道経済産業局

委託

・アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミットの誘致(アジア初!)・アドベンチャーツーリズム市場における富裕層顧客需要の獲得

最終目標

(地域中核企業創出・支援事業)

【参考②】地域中核企業創出・支援事業について

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・ATTAのボードメンバーを2017年9月に北海道に招聘し、アイヌ文化や知床世界遺産等の多様なコンテンツを紹介。また、AT関係者とのネットワーク形成の場であるアドベンチャーコネクトを開催。

・二層の文化体験(日本文化とアイヌ文化)、「癒やし」の自然、食事体験、インフラ等が高く評価され北海道がAT市場の有望なエリアであるということを強く印象づけることに成功。

・一方で「各コンテンツが独立して存在しており、これらを一本のストーリーでパッケージ化することでより付加価値が高まる」「サービスの品質を高めるにはエンターテイナー等人材の育成が重要」などとの指摘があった。

・北海道運輸局等と連携し、AT市場獲得のため、関係機関とのネットワーク構築、顧客誘致・認知度向上に向けた世界最大のATイベントであるATWS(2017年10月、アルゼンチン/サルタ)へ参加。

(1)ATTAボードメンバーの招聘

(2)ATWSへ参加

• 現地PRやヒアリングにより、北海道のAT目的地としての可能性を確認• 主催者側とホスト地域側双方との関係構築や、会場規模、運営スタッフ、エクスカーションメニューなどのオペレーションを確認。

(3)地域関係者とのWG開催・釧路・阿寒エリア等の関係者に対し、上記取組内容をフィードバックしながら取組の方向性を検討。

【参考③】平成29年度の取組

ATマーケティング戦略の取りまとめATの市場分析や平成29年度の取組を活かし、鶴雅リゾート(株)やNPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構等からなるメンバーにより、AT市場創出に向けた課題を可視化、その方向性の検討を行い、以下の方策を軸とした地域のマーケティング戦略を策定。

AT顧客獲得に向けたポイントⅠ.既存のコンテンツ・リソースをストーリーで紡ぐ、コンテンツを組成するⅡ. ATサービスの品質を世界水準に引き上げる(人材育成)Ⅲ. 世界に向けた発信、優良顧客とのネットワークを構築するⅣ. 産業界・官公庁が連携し、エリア一体となる取組を実施する

ターゲット:北米・欧州のソフトAT顧客※ソフトAT顧客:アドベンチャーツーリズムに取り入れるアクティビティが、より手軽な傾向にある旅行者