48
1 「インパルス応答計測の基礎」 東京電機大学 金田 [email protected] http://www.asp.c.dendai.ac.jp/ 2014. 8. 22 1 2 目次 1.インパルス信号とインパルス応答 1.1 インパルス信号 1.2 インパルス応答と線形系 1.3 離散時間系のインパルス応答 2.インパルス応答の測定原理 2.1 DFT の性質 2.2 測定信号を用いた測定 3.代表的測定信号 3.1 測定信号と測定誤差 3.2 測定信号の分類 3.3 TSP 3.3.1 TSPの定義 3.3.2 TSPの時間-周波数特性 3.3.3 TSPの高調波歪 3.4 Log-SS 3.4.1 Log-SSの定義 3.4.2 Log-SSの高調波歪 3.5 M系列信号 3.6 適応形スペクトルを持った信号 3.6.1 雑音白色化信号 3.6.2 雑音最小化信号 3.6.3 SN比を一定とする信号 3.7 所望スペクトル信号の合成 3.8 同期加算 4.測定の誤差要因 4.1 定常雑音 4.2 非定常雑音 4.3 非線形性 4.4 測定誤差のトレードオフ関係 4.5 時変性(風・スピーカ) 5.測定信号による雑音抑圧効果 5.1 雑音抑圧効果 5.2 インパルス応答の切り出し 6.測定時の注意点 6.1 録音時の雑音 6.2 AD・DA などの注意点 6.3 測定結果の評価 7.測定信号が利用できない場合の測定 (最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル) 8.むすび 3 信号処理の基礎 いろいろな測定信号 誤差要因 雑音抑圧効果 測定の注意点 4 インパルス応答 0 50 100 150 200 250 300 -4 -2 0 2 4 Time (ms) HRTF by MIT Media Lab., in 1996 5 0 0.05 0.1 0.15 -0.05 -0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 Amplitude インパルス応答測定の研究の目標 by TDU in 2013 様々な測定環境において ・ SN比がより高く (=短時間) ・ 不自然な測定誤差の少ない インパルス応答測定の実現 目次 1.インパルス信号とインパルス応答 1.1 インパルス信号 1.2 インパルス応答と線形系 1.3 離散時間系のインパルス応答 2.インパルス応答の測定原理 2.1 DFT の性質 2.2 測定信号を用いた測定 3.代表的測定信号 3.1 測定信号と測定誤差 3.2 測定信号の分類 3.3 TSP 3.3.1 TSPの定義 3.3.2 TSPの時間-周波数特性 3.3.3 TSPの高調波歪 3.4 Log-SS 3.4.1 Log-SSの定義 3.4.2 Log-SSの高調波歪 3.5 M系列信号 3.6 適応形スペクトルを持った信号 3.6.1 雑音白色化信号 3.6.2 雑音最小化信号 3.6.3 SN比を一定とする信号 3.7 所望スペクトル信号の合成 3.8 同期加算 4.測定の誤差要因 4.1 定常雑音 4.2 非定常雑音 4.3 非線形性 4.4 測定誤差のトレードオフ関係 4.5 時変性(風・スピーカ) 5.測定信号による雑音抑圧効果 5.1 雑音抑圧効果 5.2 インパルス応答の切り出し 6.測定時の注意点 6.1 録音時の雑音 6.2 AD・DA などの注意点 6.3 測定結果の評価 7.測定信号が利用できない場合の測定 (最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル) 8.むすび 6

「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

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1

「インパルス応答計測の基礎」

東京電機大学

金田 豊

[email protected]

http://www.asp.c.dendai.ac.jp/

2014. 8. 22

1

① ②

③ ④

⑤ ⑥

2

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび3

信号処理の基礎

いろいろな測定信号

誤差要因

雑音抑圧効果

測定の注意点

4

インパルス応答

0 50 100 150 200 250 300-4

-2

0

2

4

Time (ms)

HRTF by MIT Media Lab., in 1996

5

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5-0.05

-0.04

-0.03

-0.02

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

Time (s)

Am

plitud

e

インパルス応答測定の研究の目標

by TDU in 2013

様々な測定環境において

・ SN比がより高く

(=短時間)

・ 不自然な測定誤差の少ない

インパルス応答測定の実現

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび6

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2

インパルス信号 δ(t) の定性的イメージ

幅が 0で高さが∞積分値が1のパルス

0t

0

面積 1(一定)

1/τ

τ→ 0

τ

δ(t) =∞ (t=0)

0 (t≠0)

面積を 1 に保ちながら、パルス幅τをゼロとする

(アナログ)

7

インパルス信号(デルタ関数) δ(t) の数学的定義 [1.1]

デルタ関数は、ある関数 f(t) に掛けて積分するとその関数の t=0 の値 を与える「汎関数(超関数)」

)0()()( fdttft

定義

8

参考文献番号(巻末)

δ(t) の性質

)0()()( fdttft

1)( tf

1)0()(1)(

fdttdtt

tjetf )(

1)( 0

jtj edtet

→ 面積は 1

→ δ(t)のフーリエ変換は 1 (白色スペクトル)

定義

9

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび10

1.2 インパルス応答

線形時不変系

δ(t) h(t)

0 t

インパルス信号δ(t)を入力したときの出力 h(t)で、

線形時不変系(スピーカや室内音響系など)においては、

系の特性の全情報を含む、重要な物理量

11

線形系とは

系x1(t)

x2(t)

y1(t)

y2(t)

系c・x1(t) c・y1(t)

系x1(t)+x2(t) y1(t)+y2(t)

定数倍

の時、

定数倍

以下が成立

12

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3

時不変系とは

系x (t) y (t)

系x (t -τ) y (t -τ)

時間τの後に、同じ入力を入れれば、同じ出力が出てくる系

時間が経っても特性が変化しない系

13

線形・時不変系の性質 (1)

線形時不変系

x (t)

正弦波を入力した時には、同じ周波数の正弦波を出力する。

t

t

y (t)

t

その振幅と位相の変化を表したものが

系の周波数特性 H(ω)

14

→ 証明は付録 1.2-1

周波数特性 H(ω) の定義

線形時不変系

入力

x(t)

X(ω)

y(t)

Y(ω)

出力

H(ω)

)(

)()(

X

YH

X(ω): 入力信号のスペクトル(フーリエ変換)Y(ω): 出力信号の 〃 ( 〃 )

線形系では、H(ω)は、X(ω)に依存しない15

周波数特性 H(ω) の効果

線形時不変系

入力

x(t)

X(ω)

y(t)

Y(ω)

出力

H(ω)

)(

)()(

X

YH

入力の周波数成分X(ω)は、H(ω)倍される

)()()( XHY

16

インパルス応答と周波数特性

線形時不変系

x(t)=δ(t)

X(ω)=1

y(t)

Y(ω)

H(ω)

インパルス応答 y(t) のフーリエ変換Y(ω)は周波数特性 H(ω) である

)()()()( HXHY

(入力がインパルス) (インパルス応答)

17

インパルス応答と周波数特性の測定例

スピーカ マイク

2 .65 2 .7 2 .7

x 104

スピーカのインパルス応答

スピーカの伝達関数(周波数特性)h(t)

|H(f)|

フーリエ変換

インパルス応答測定1k 10k

10

20

30

40

50

60

70

80

周波数[Hz]

相対

音響

出力

[dB

]

90°

1000

18

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4

線形・時不変系の性質 (2)

線形時不変系

h(t)x(t) y(t)

dtxhty )()()(

19

系の出力 y(t) は、

入力 x(t) とインパルス応答 h(t) との

(直線)たたみ込み演算の関係にある

)()()( XHY

たたみ込みの詳しい説明は省略

周波数領域の方が簡潔

インパルス応答の有用性

① 周波数特性(スピーカ、室内伝達特性、・・・)

② 室内音響評価量 [1.3, 1.4]

残響時間、初期反射音評価量(D50, C80,・・・)

③ シミュレーション(建築音響、立体音響、・・・)

④ 制御系設計 [1.2]

HRTF、音場制御、逆フィルタリング

20

非線形な系と時変系

・ 時変系

特性を測定しても、

時間がたつと変化してしまう。

21

・ 非線形系

入力の大きさによって

出力が異なる。

インパルス応答の利用が困難

代表的な音響系

室内音響系、スピーカなどの音響機器は、

ほぼ線形時不変系

しかし、

若干の非線形特性や

時変性が含まれており、

後述するように測定誤差が発生

22

時不変な非線形系の性質

時不変な非線形系

x (t)

正弦波を入力した時には、同じ周波数およびその整数倍周波数の成分(高調波歪)を出力する

*) 整数倍以外の周波数は発生しない

t

y (t)

t

周波数kf1

振幅

周波数kf1 2f1 3f1

振幅

基本波応答

2次歪

3次歪高調波歪

0 0・・・

出力は周期

23証明: 時不変系に周期入力 → 出力も周期 → フーリエ級数

周期性の証明

時不変系x(t) y (t)

時不変系 y (t-T)

時不変性

T が入力信号の周期とすると、x(t-T)= x(t)⇒ 同一入力の出力は等しいので y (t-T)=y (t)⇒ y(t) は周期Tの周期信号

時不変系に周期信号を入力したら、出力も周期信号

x(t-T)

24

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5

線形・時不変系が前提

・ 以下では、理論的な説明は

「線形・時不変系」を前提

・ 以下、「線形系」と略称

・ 非線形特性は、線形時不変系の

微小誤差要因と考える

25

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび26

離散時間系のインパルス信号

(インパルス信号) δ(t)

アナログ

幅が 0で高さが∞積分値が1のパルス

(単位サンプル信号) δ(n)

離散時間

時間 0 で値1、その他の点では

値 0 の信号

0n

0t

n: 離散時間

t: 連続時間

(ディジタル)

27

離散時間信号とディジタル信号

離散時間信号とは、

・ アナログ信号を標本化した実数値列

・ 量子化する前のディジタル信号

→ 測定時の雑音が、量子化雑音レベル以上

であれば、両者は等しいとみなせる

→ 以下では、

離散時間信号=ディジタル信号

として説明する。(大半の教科書が同様)

28

δ(t) と δ(n)

δ(t)

0t

δ(n)

0n

◇δ(n) はδ(t) の物まねではない。

◇ δ(n) とδ(t) は等価で

ある。

29

δ(t) と δ(n) の等価性 (1)

理想LPF

A/D

アナログ

ディジタル

0~fs/2

fs: サンプリング周波数

30

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6

δ(t) と δ(n) の等価性 (2)

理想LPF

A/D

δ(t)

sinc 関数

単位サンプル信号δ(n)

アナログ

ディジタルδ(n)

時間

0

sin(πfst)πfst

1t が の間隔で0

fs

31

0~fs/2

fs

δ(t) と δ(n) の等価性 (3)

理想LPF

A/D

δ(t)

sinc 関数

単位サンプル信号δ(n)

δ(t)を帯域制限して標本化したものが、単位サンプル信号δ(n)

アナログ

ディジタルδ(n)

δ(n) は、インパルス信号δ(t)と等価

時間

032

0~fs/2

fs

ディジタル系におけるインパルス応答

系δ(n) h(n)

0 k k

D/A A/D

DA,AD や付属するフィルタなどの特性も含まれる

PC

33

「1章 インパルス信号とインパルス応答」 のまとめ

34

)0()()( fdttft

・ インパルス信号(デルタ関数)

・ インパルス応答

インパルス信号を、線形・時不変系に入力した

ときの出力

・ 周波数特性 H(ω)は、インパルス応答h(t)の

フーリエ変換 ⇒ 等価量

・ 離散時間系(ディジタル系)のインパルス信号δ(n)は

単位サンプル信号 [・・・ ,0,0,0,1,0,0,0, ・・・]

・ ディジタル系のインパルス応答には、ADやDA などの

特性が含まれる

⇒ 白色性

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび35

)32sin(

)22sin()2sin()(

303

2021010

tfa

tfatfaatf

一般に、フーリエ変換(級数)とは

周波数 f0

振幅は a1

周波数 2・f0

振幅は a2

周波数 3・f0

振幅は a3

+ +

すべての信号は、さまざまな周波数の正弦波の和で出来ている

36

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7

信号の「分析」と「合成」

信号 正弦波

500Hz の正弦波 1

1000Hzの正弦波 0.5

1500Hzの正弦波 0.3

2000Hzの正弦波 0.25

分析(分解)

合成

)(tf 振幅

周波数k

f1 2f1 3f1

振幅

0・・・

スペクトル

正弦波の成分表

フーリエ変換

フーリエ逆変換

dtetfF tj )()(37

時間

代表的な時間-周波数変換の分類

DFT:Discrete Fourier Transform

(離散フーリエ変換)

38

時間信号周波数スペクトル

フーリエ変換 連続 連続

フーリエ級数 連続 離散

z変換 離散 連続

DFT 離散 離散

離散時間信号の2つの周波数領域表現

(1) z 変換

x(n) ←→ X(z) z:複素周波数

・ x(n) は無限長を仮定 → 理論検討に使用

(2) DFT (Discrete Fourier Transform)

(離散フーリエ変換 = FFT )

x(n) ←→ X(k) k:周波数番号

・ N点の時間信号 x(n) から

N点の離散周波数でのスペクトルX(k)を計算

・ コンピュータで計算できる実用的フーリエ変換

⇔ z変換は周波数が連続なのでコンピュータでは計算できない

39

以下、「周波数」と略称

DFTの周波数

0 1 2 3 4 N時間

nN-1

0 1 2 3 4 N

時間nN-1

0 1 2 3 4 N

時間nN-1

0 1 2 3 4 N

時間nN-1

N点 DFTで求められる離散周波数の正弦波

T=N

周期

NT=

2

NT=

3

T= 2

周波数

3N

1 (N/2)=

2 N

1N

2N

・・・

・・・

・・・

kN k=0,1,2,・・・,N/2 k は厳密には周波数番号DFTの周波数は( )

fs/2 に対応

40

DFT の重要な性質

性質1:DFT は、信号の周期性を(暗黙に)仮定

周期 離散 (フーリエ級数)

離散 周期 (z変換)

離散+周期 離散+周期 (DFT)

周波数スペクトル時間信号

DFT は、

長さNの離散時間信号に対する変換だが、

長さNの離散時間信号を周期化した信号の

スペクトルと考えるのが適当

41

入出力関係

H(z)h(n)

X(z)

・ z 変換Y(z)=H(z)・X(z)

x(n)

y(n)=h(n)*x(n)

(直線)たたみ込み

H(k)h(n)

X(k)

・ DFTY(k)=H(k)・X(k)

x(n)

y(n)=h(n)*x(n)円状たたみ込み

x(n) を周期化した信号との直線たたみ込み

42

性質2:DFT の積は、信号

の円状たたみ込みに対応

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8

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび43

定義どおりの測定(パルス法)の問題点

問題点:・ パルス信号のエネルギーが小さいのでSN比が悪い・ 信号の振幅を大きくすると非線形誤差が発生

解決策:

継続時間を長くしてエネルギーを大きくした「測定信号」の利用が有効

被測定系

インパルス信号 インパルス応答

δ(n) h(n)

44

インパルス応答測定系の周波数表現

H(z)1

・ H(z) はインパルス応答 h(n)と等価量・ H(z) を得れば、その逆z変換で h(n)は計算できる・ 以下、H(z)を求める問題として説明する

被測定系H(z)

インパルス信号 インパルス応答

δ(n) h(n)時間表現

周波数表現

45

測定信号発生フィルタを用いた測定

逆フィルタ1/S(z)

被測定系H(z)

測定信号発生フィルタ

S(z)1 S(z) H(z)・S(z) H(z)

測定出力インパルス信号

δ(n)

インパルス応答

h(n)s(n)

・ 被測定系の前後に2つのフィルタ

直列特性は、S(z)・H(z)・1/S(z)=H(z)

46

・ フィルタを入れても結果は同じ

測定信号発生フィルタを用いた測定

逆フィルタ1/S(z)

被測定系H(z)

測定信号発生フィルタ

S(z)1 S(z) H(z)・S(z) H(z)

測定出力インパルス信号

δ(n)

インパルス応答

h(n)s(n)測定信号

47

毎回同じ計算

測定信号を用いた測定

逆フィルタ1/S(z)

被測定系H(z)

S(z) H(z)・S(z) H(z)

測定出力インパルス応答

h(n)s(n)

あらかじめ合成した

測定信号 S(z)

問題点:一般に、逆フィルタ特性 1/S(z) は無限時間応答で、正確な逆フィルタ計算には無限時間が必要(また、z変換上の除算はコンピュータではできない)

解決策:

DFT逆フィルタの利用

測定信号

48

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9

DFT周波数領域で考える

逆フィルタ1/S(k)

被測定系h(n)H(k)

S(k) Y(k)=H(k)・S(k) H(k)

h(n)s(n)

N≧ h(n) の長さH(k): h(n) の N点DFTk:周波数

測定信号(長さ N)

y(n)

逆DFT

物理系

1/S(k)

コンピュータ

測定出力インパルス応答

49

N点DFT

(長さ N)

DFT周波数演算の注意点

逆フィルタ1/S(k)

被測定系h(n)H(k)

S(k) Y(k)=H(k)・S(k) H(k)

測定出力(長さ2N) インパルス応答

h(n)s(n)

N≧ h(n) の長さH(k): h(n) の N点DFTk:周波数

測定信号(長さ N)

y(n)

逆DFT

DFT 周波数領域の積は時間領域の円状たたみ込みに対応

物理系(直線たたみ込み)

1/S(k)

コンピュータ

しかし物理系では直線たたみ込み50

N点DFT

(長さ N)

不一致

(直線)たたみ込みと円状たたみ込み

N

* =

◇ (直線)たたみ込み 音のひびきのようなもの (物理系)

N N N

N

* =

N N

◇ 円状たたみ込み(巡回たたみ込み)直線たたみ込みで N 点からはみ出た部分を、

時間前方から回り込んで加算

s(n) h(n) y(n)

s(n) h(n) y(n)

n時間

n n

n n n

円状たたみ込み

直線たたみ込み

長さ2N

長さN

51

厳密には2N-1

DFT周波数演算の解決策

逆フィルタ1/S(k)

被測定系h(n)H(k)

S(k) Y(k)=H(k)・S(k) H(k)

測定出力(長さ2N) インパルス応答

h(n)s(n)

N≧ h(n) の長さH(k): h(n) の N点DFTk:周波数

測定信号(長さ N)

y(n)

逆DFT

DFT 周波数領域の積は時間領域の円状たたみ込みに対応

物理系(直線たたみ込み)

1/S(k)

コンピュータ

しかし物理系では直線たたみ込み52

N点DFT

(長さ N)

不一致

解決策:物理系で円状たたみ込みを実行

物理系での円状たたみ込みの実現

N

* =

◇ 円状たたみ込みは入力信号を周期化することで実現できる

N

s(n) h(n)

y(n)

n時間

N

s(n)

直線たたみ込み

n

2周期目を切り出したものが円状たたみ込みになっている

1周期目 2周期目 3周期目

2周期目からはみ出たものと同じ信号が1周期目からはみ出て加算される

53

DFT逆フィルタを用いた測定

逆フィルタ1/S(k)

被測定系h(k)H(k)

S(k)Y(k)

=H(k)・S(k) H(k)

測定出力インパルス応答

h(n)

N≧ h(n) の長さH(k): h(n) の N点DFT

測定信号

逆DFTN点DFT

2周期再生して2周期目を切り出してDFT

物理系(直線たたみ込み)

1/S(k)

コンピュータN

s(n)

N

s(n)

2周期目

y(n)

54

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10

測定手順

信号長 N の決定

測定信号 s(n) の合成

s(n) を2周期再生し録音信号の2周期目を切り出す

逆フィルタと逆DFTの計算

インパルス応答の切出し

・ インパルス応答の長さ Lh より長く定める必要

・ Lh の 1.5~2倍以上にしておく

のが無難

・ Lh は予備測定や予測で得る

・ N は大きいほどSN比が向上

するが、長すぎると、系の時変性が無視できなくなる場合がある(数分を越えるような測定)

55

測定手順

信号長 N の決定

測定信号 s(n) の合成

s(n) を2周期再生し録音信号の2周期目を切り出す

逆フィルタと逆DFTの計算

インパルス応答の切出し

・ 各種測定信号の具体的合成方法は次章(3章)で述べる

・ 被測定系との円状たたみ込みの実行

注) 厳密には、2周期(2N)ではなく N+Lh 再生して、後部 N 点を切り出せばよい(次頁)

56

「2周期」に関する補足

n

1周期目 2周期目 3周期目

・ 厳密には、インパルス応答長 Lh (周期からはみ出る応答の長さ)がわかっていれば、N+Lh の長さ再生して、Lh~Lh+N-1を切り出して利用すればよい・ 特に、N >> Lh の場合

N N

N

LhLh Lh

57

測定手順

信号長 N の決定

測定信号 s(n) の合成

s(n) を2周期再生し録音信号の2周期目を切り出す

逆フィルタと逆DFTの計算

インパルス応答の切出し

・ 雑音のみの時間区間を切り捨てることでSN比を向上する(5章)

・ 切り出された N 点の信号をDFT したもの Y(k) に、s(n) を DFT したもの S(k)を除算し、それを逆DFT することで、インパルス応答 h(n) が得られる

58

1周期再生で円状たたみ込みを実現する方法

n

N

周囲環境への影響、などの理由で、1周期再生を行いたい場合

n

系の応答を含めた長さがNとなるように

信号を設計(SSのみ)。直線たたみ込

みと円状たたみ込みの結果が一致す

るので、DFT逆フィルタが適用できる。

(留意)

・ 信号の両端の収束性などが必要

・1周期目から利用するので、信号の立

ち上がり部分に注意が必要(後述)

NN

1周期からはみ出た部分を切り出して、

1周期目に足し合わせることで、

円状たたみ込みを計算で実現

(欠点)

2周期目の雑音が加算されて雑音パ

ワーが2倍になる

もっと良い方法があるかもしれません。ご意見ください

方法1 方法2

59

例外:円状たたみ込みを必要としない場合

鈴木、浅野の提案した「(最適)TSP信号」 [3.4-6]

・ 長さNの良好な近似逆フィルタが存在

→ 逆フィルタが直線たたみ込みで実行できる

・ 測定信号を1周期だけ再生しても

インパルス応答が直線たたみ込みで得られる

ただし、

・ 再生は1周期でも録音は、

1周期+インパルス応答長が必要

・ 直線たたみ込みは演算量が多い

(円状たたみ込みは DFT 周波数成分の積で計算できる)

60

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11

「2章 インパルス応答の測定原理」 のまとめ

61

・ DFT(離散フーリエ変換)の積は、円状(巡回)たたみ

込みに対応

・ 測定信号S(k) を被測定系H(k)に入力し、円状たたみ

込みを行った出力 H(k)S(k) を、測定信号の逆特性

1/S(k) に通すことで、測定系の特性 H(k) は得られる。

・ 測定信号 S(k) とインパルス応答 H(k) の円状たたみ

込みを行うためには、測定信号s(n)を2周期入力して、

2周期目を切り出して、DFTする

・ 測定信号の1周期、または、1周期+αの再生で測定

できる場合もある

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび62

理想的測定環境

逆フィルタ1/S(k)

被測定系H(k)S(k) H(k)・S(k)

観測信号インパルス応答

h(n)s(n)

測定信号

H(k)

どのような測定信号 S(k) (S(k)≠0) を用いても、正確に H(k) を求めることができる

63

実環境での測定

逆フィルタ1/S(k)

被測定系H(k)S(k) H(k)・S(k)

+D(k)+N(k)

観測信号s(n)

測定信号

D(k)非線形

雑音

++

N(k)

H(k)・S(k)+D(k)

H(k)

+D(k)S(k)

N(k)S(k)

インパルス応答

h(n)

測定誤差

D(k)/ S(k): 非線形誤差

N(k)/ S(k): 雑音性誤差と呼ぶことにする

64

測定信号の周波数特性

測定信号の周波数特性 S(k)

S(k)= |S(k)| ・ e jφ(k)

複素数

振幅特性 位相特性

65

雑音性誤差

逆フィルタ1/S(k)

被測定系H(k)S(k) H(k)・S(k)

+D(k)+N(k)

観測信号s(n)

測定信号

D(k)非線形

雑音

++

N(k)

H(k)・S(k)+D(k)

H(k)

+D(k)S(k)

N(k)S(k)

インパルス応答

h(n)

測定誤差

|N(k)|

|S(k)|=

◇ 雑音性誤差の大きさ

N(k)S(k) 測定信号の

振幅特性に依存

測定信号が大きいほど雑音性誤差は小さい66

位相特性には依存しない

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12

非線形誤差

逆フィルタ1/S(k)

被測定系H(k)S(k) H(k)・S(k)

+D(k)+N(k)

観測信号s(n)

測定信号

D(k)非線形

雑音

++

N(k)

H(k)・S(k)+D(k)

H(k)

+D(k)S(k)

N(k)S(k)

インパルス応答

h(n)

測定誤差・ D(k)の大きさは入力信号の大きさに依存正しくは、 D(S(k)) と表すべき

・ 非線形誤差の時間-周波数特性は特徴的でありS(k) の位相特性(群遅延特性)の影響が重要

一般に、測定信号波形の振幅を大きくすると非線形誤差は増加

67

測定信号と測定誤差

・ 非線形誤差の現れ方は、

測定信号 S(k) の位相特性に依存

・ 雑音性誤差の大きさは、S(k) の振幅特性に依存

測定誤差の性質や大きさは、測定信号の性質と密接に関連

68

適切な測定誤差の選択が重要

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび69

測定信号の分類 (1)

◇ 波形(位相特性)による分類

・ 掃引正弦波 (SS:Swept Sine、チャープ信号)

時間とともに周波数が上昇(下降)する正弦波信号。

周波数の時間的変化特性により、いくつかの種類。4

例) TSP、 Log-SS (ピンクTSP) など

70

・ 疑似雑音 (PN:Pseud Noise、PR:Pseud Random)

ランダム雑音のような波形を持った周期信号。

例) M系列信号、 有色疑似雑音 など

SS: 掃引正弦波PN: 疑似雑音

測定信号の分類 (2)

パワースペクトル|S(k)|2

固定形

白色 C1 TSP、M系列

1/f(ピンク)

C2・1/kLog-SS

(ピンクTSP)

適応形

雑音白色化(NW)Noise Whitening

C3・PN(k)MN-SSMN-PNCSN-SSなど

雑音最小化 (MN)Minimum Noise

C4・√PN(k)

SN比一定(CSN)Constant SN

C5・|H(k)|2/PN(k)

◇ パワースペクトル(振幅特性)による分類

71C1, C2, C3,・・: 定数, PN(k):雑音のパワースペクトル, |H(k)|:系の振幅応答

1) 大きなエネルギを持つ信号

→ SN比向上

2) ただし、ある特定の時間にエネルギが集中

すると、系の非線形が発生するので、

ほぼ一定の振幅で持続する信号

3) 測定対象となる周波数成分を、

欠落無く含んでいる信号

4) 扱いやすく、性質の良い信号

望ましい 測定用信号の条件

72

SSやPNはこれらの条件を満足

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13

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび73

0.5 1 1.5 2 2.5 30

0.5

1

1.5

2

x 104

TSP (Time Stretched Pulse)[3.3-6]

(up-TSP)

白色スペクトルの掃引正弦波信号

74時間 (秒)

周波

数(H

z)

時間引き伸ばし(Time Strech)のイメージ

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500-10

-5

0

5

10

時刻 0 に集中していたエネルギーを時間軸上に引き伸ばす(分散させる)

75

0 1 2 3 4 50

0.5

1

1.5

2

x 104

0 1 2 3 4 50

0.5

1

1.5

2

x 104

Up & Down TSP

(up-TSP)

(down-TSP)

時間 (秒)

周波

数(H

z)

時間 (秒)

周波

数(H

z)

76

TSP の 定義式 (DFTスペクトル)

・ N点のDFT周波数成分が次式で定義される

・ 時間波形は、これを逆DFTして得られるN点の信号

・ 離散周波数 (k/N) の二乗に比例した位相成分

77

up_TSP(k) =exp(- j 2πJ (k/N)2) k=0,1,・・・,N/2

up_TSP(N-k)* k=N/2+1, ・・・,N/2

J:実効長(偶数) *:複素共役

down_TSP(k)=exp(+ j 2πJ (k/N)2) k=0,1,・・・,N/2

down_TSP(N-k)* k=N/2+1, ・・・,N/2

TSP信号 の MATLAB プログラム

・ 振幅は白色

・ 時間波形振幅は √(2/J)⇒ 振幅を As とするには、スペクトルを As/√(2/J)倍

1,)exp( jj eej

N= 2^16; J= N/2; k= 0: N/2; up_TSP=zeros(1,N);up_TSP(1:N/2+1) = exp(-j*2*pi*J*(k/N).^2);up_TSP(N/2+2:N) = conj( up_TSP(N/2: -1 :2) );up_tsp = real( ifft(up_TSP) );

(証明→ 付録3.3-1) 78

up_TSP(k) =exp(- j 2πJ (k/N)2) k=0,1,・・・,N/2

up_TSP(N-k)* k=N/2+1, ・・・,N/2

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14

TSP の 逆関数

up_TSP(k) = exp(-j2πJ (k/N)2)と

down_TSP(k) = exp(+j2πJ (k/N)2 )を乗算すると 1 となる。

up-TSP と down-TSP は、お互いに逆関数の関係

◇ TSP の逆関数 は、逆TSP(ITSP: Inverse TSP)と呼ばれる

up_TSP(k)down_TSP(k)1

79

実効長 J

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

時間 (sample)0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

時間 (sample) N0 N0

実効長 J= N/2

J J

実効長 J= N

e-j2πJ (k/N)^2

80

実効長 の定め方

□ 雑音抑圧量はJに比例 (J ≦ N ) (詳細後述)□ ただし、J=Nとすると、

・ 最大、最小周波数の重なり・ 一周期の切り出し時の端点雑音の影響(後述)

⇒ J=(3/4)N~(1/2)N 程度とすることが多い

81

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

時間 (sample)0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

時間 (sample) N0 N0

実効長 J= N/2

J J

実効長 J= N

Jが偶数であることの必要性

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5(c) TSP 信号(Jが非偶数)

時間 (サンプル)

実効長を超えた成分が発生

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5(a) TSP 信号(Jが偶数)

時間 (サンプル)

実効長 J

e-j2πJ (k/N)^2

k=N/2(上限周波数)で、

e-jπJ /2

Jが偶数ならスペクトルは実数

Jが偶数でない場合スペクトルは複素数

→ 強制的実数化が必要

実効長 J

ほぼゼロ

82

TSP の立ち上がり

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5TSP 時間波形(実効長 J= N/2 )

時間 [サンプル]

N0

-100 0 100 200 300 400 500-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5TSP 時間波形(先頭部分)

時間 [サンプル]0

t=0 で不連続→ DA後は不自然な音・波形

(2周期目以降は連続だが)

83

6.46 6.47 6.48 6.49 6.5 6.51 6.52 6.53 6.54 6.55

x 104

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

円状シフト

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5TSP 時間波形

時間 [サンプル]

J (N-J)/2 (N-J)/2

N

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5TSP 時間波形(実効長 J= N/2 )

時間 [サンプル]

N0

N

J N-J

円状シフトの適正量は?

84

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15

TSP の短時間パワー分布 [3.4]

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5(a) TSP 信号(Jが偶数)

時間 (サンプル)

実効長 J

N0J

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

20

40(b) 図(a)の時間-パワー分布

時間 (サンプル)

短時

間パ

ワー

[dB

]

J N-J

-120

0

(N-J)/2付近でパワー最小

*) J=N/2 の場合85

円状シフト

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5TSP 時間波形

時間 [サンプル]

J (N-J)/2 (N-J)/2

N

2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5TSP 時間波形(実効長 J= N/2 )

時間 [サンプル]

N0

N

J N-J

円状シフトの適正量は(N-J)/2

86

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび87

信号の時間-周波数特性

・・・・

DFT

・・・・

時間t

周波数f

時間 →

周波数f

deftw

tF

j)()(

),(

時間 t と 周波数 ω の関数

時刻ごとの信号の周波数成分を表す。

実用的には左図のように、信号を短時間ごとに切り出して、DFTを行い、各時刻ごとの周波数成分(パワースペクトル)を2次元表示する

スペクトログラムと呼ばれる

)(tf

88インパルス応答測定の理解に大変有効

時間ー周波数特性を数式で求める

e-j2πJ (k/N)^2

◇ TSP の周波数特性

◇ 位相特性 φ(k)

φ(k)=- 2πJ(k/N)2

◇ 群遅延特性 τ(k)

τ(k)=-d

φ(k)dΩ Ω=2π(k/N)

89

TSP の群遅延

群遅延特性 τ(k)

τ(k)=-d

φ(k)dΩ

Ω=2π(k/N) dΩ=2π(d k/N)

=-d

φ(k)dk2π

N

=-d (- 2πJ(k/N)2 )d

k2πN

= k2JN

90

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16

TSP の時間ー周波数特性

群遅延特性 τ(k)

掃引正弦波の時間-周波数特性は、

群遅延特性に対して、周波数を時間の関数として表す

ことで求められる。

= k2JN

時間-周波数特性 =2J

Nk n

00 J N

時間 n

N/2

周波数k

信号長

→ 実効長が J

n=0 で k=0

n=J で k=N/2

最高周波数 →

τ → n

91

down-TSP

N2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000

-1

-0.5

0

0.5

1

時間 [サンプル]

0

00-J

時間 n

N/2周波数

e+j2πJ (k/N)^2

0

→ 位相が正 → 時間進み特性

DFT(離散)周波数⇔ 時間信号は周期性

周期はN

逆DFT結果

92

フィルタの群遅延特性による信号の時間-周波数特性の変化

信号の時間-周波数特性

フィルタの群遅延特性

フィルタ

時間n

周波数k

n

k

00

群遅延n

0

up-TSP

周波数 k

93

信号の各周波数成分に対して与える遅延量

時間-周波数特性で見た up-TSPとその逆フィルタ

時間n n n

時間n n

② up-TSP特性を持ったフィルタ

周波数 k k

④逆フィルタ(逆up-TSP)

①インパルス ③ up-TSP ⑤インパルス

n

k

0 00

信号の時間波形

時間-周波数特性

フィルタの群遅延特性

0

群遅延n

k

0 n

k

0

94

時間-周波数特性上の逆フィルタ効果

時間n

周波数k

n

k

00

n0

up-TSP

k

逆フィルタ

down-TSP

n

k

0

逆フィルタ

95

時間-周波数特性で見た TSP測定原理

時間n n n

時間n n

② 被測定系

周波数 k k

④逆フィルタ(逆up-TSP)

① up-TSP ③ TSP応答 ⑤インパルス応答

n

k

0 00

信号の時間波形

時間-周波数特性

各周波数成分に対する時間応答

逆フィルタの効果TSP応答からインパルス応答を得る

96

n

k

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17

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび97

被測定系の非線形による誤差

線形系 H(k)+

微小な時不変非線形特性S(k)

s(n)

TSP

D(k)非線形

H(k)・S(k)+D(k)

98

線形応答+非線形歪

高調波歪

被測定系

TSP応答と高調波歪

周波数k

0

f1 2f1 3f1

f2 2f2 3f2

振幅

周波数k

振幅

基本波応答

2次歪

3次歪

時間n

周波数 k

0

f1

f2

基本波応答

2次歪

3次歪

up-TSP 応答

*) 4次以上の歪は省略*) 応答・歪の時間方向の広がりは省略

非線形を含む系への正弦波入力に対する応答

99

up-TSP測定における非線形誤差

0

基本波応答

2次歪

3次歪

0n

k インパルス応答

2次歪による誤差

3次歪による誤差

逆フィルタ

up-TSP 応答 インパルス応答

時間n

周波数k

非因果性の誤差(負の時刻に誤差が発生)

100

k=c・pn k=c・(p/(1-p))・n

p:歪次数

down-TSP測定における非線形誤差

基本波応答

2次歪

3次歪

n

インパルス応答

2次歪による誤差

3次歪による誤差

k

逆フィルタ

down-TSP 応答 インパルス応答

時間n

周波数k

正の時刻に誤差が発生

0 0

101

up-TSP に現れる非線形誤差(実測例)

2次歪

Time (s)

Fre

quency

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Time (s)

Fre

quency

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

1000

2000

3000

4000

5000

6000

逆フィルタ

誤差(非因果な応答に見える)

3次歪基本波応答

インパルス応答

up-TSP応答

102

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18

インパルス応答波形に現れる誤差

100 150 200 250 300 350 400 450

-2

0

2

4

x 10-4

Time [ms]

インパルス応答波形 (up)

up-TSP

非因果な応答に見える

Time (s)0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0

103

インパルス応答波形に現れる誤差

100 150 200 250 300 350 400 450

-2

0

2

4

x 10-4

インパルス応答波形 (down)

down-TSP

100 150 200 250 300 350 400 450

-2

0

2

4

x 10-4

Time [ms]

インパルス応答波形 (up)

up-TSP

非因果な応答に見える

104

down-TSP に現れる非線形誤差(実測例)

3次歪

Time (s)

Fre

quency

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

1000

2000

3000

4000

5000

6000

Time (s)

Fre

quency

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

1000

2000

3000

4000

5000

6000

逆フィルタ

誤差

2次歪基本波応答

(インパルス応答に重なる)

インパルス応答

down-TSP応答

105

TSPを用いたインパルス応答測定結果に現れる非線形誤差 (時間-周波数特性)

up-TSP down-TSP

Time (s)

Fre

quency

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

1000

2000

3000

4000

5000

6000

誤差(非因果な応答に見える)

Fre

quency

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

1000

2000

3000

4000

5000

6000

誤差(インパルス応答に重なる)

Time (s)

106

TSPを用いたインパルス応答測定結果に現れる非線形誤差 (時間波形)

down-TSP 100 150 200 250 300 350 400 450

-2

0

2

4

x 10-4

インパルス応答波形 (down)

100 150 200 250 300 350 400 450

-2

0

2

4

x 10-4

Time [ms]

インパルス応答波形 (up)

up-TSP

非因果な応答に見える

誤差は応答に埋もれている(後半:応答のように見える。スイープ音。誤残響曲線)

107

TSPと非線形誤差

・ up-TSP

短所: インパルス応答の負の時間方向に非線形誤差

が出現するので、測定信号レベルを小さくして非線

形誤差を小さくしないと不自然

長所: インパルス応答本体には高調波歪の影響なし

・ down-TSP では、

短所: インパルス応答の中に高調波歪の影響が

含まれ、目立たないが、残響曲線などには悪影響

長所: インパルス応答の立ち上がり時間が明確

これらの誤差を許容するかどうかは、用途による。108

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19

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび109

0 1 2 3 4 5-1

-0 .5

0

0 .5

1

時間[秒]

相対

振幅

時間[秒]

周波

数[H

z]

0 1 2 3 4 50

0 .5

1

1 .5

2

x 1 04

Log-SS (ピンクTSP) [3.7-11]

・ 低周波域のSN比改善効果・ 高調波歪の分離測定・除去

・「対数周波数」が時間に比例

・「周波数」は時間の指数関数

f = eαt

log(f) = αt

時間

周波数

低周波域の掃引時間が長い→ エネルギ大

110

2大長所

Log-SS の定義

は自然対数    

複素共役整数

    

           

log

:*:

2log2

2/)(_

2/1)log(exp1

01

)(_

*

J

NN

Ja

NkNkNSSLog

Nkkjakk

k

kSSLog

・ 藤本の定義[3.8]に基づくが、up-SS (位相部分が負)である点

が異なる。up の方が高調波歪成分の分離が良い(後述)。

・ ピンク雑音と同様に、周波数成分が -3dB/oct で低下している

ので藤本はピンク-TSPと名づけた。Log-SS とも呼ばれる

Log-SS のDFT周波数は、次式で定義される

111

Log-SS 定義式の説明

-3dB/oct の

振幅特性

k=N/2 で位相項を

πのJ(整数)倍と

するための定数

e-j a k・log(k)1√k

パワーが

周波数の逆数に比例

いわゆる1/f 特性。

Jπa =

(N/2)・log(N/2)

微分したらlog(k)+1

群遅延がlog(k) 特性

(後述)

112

振幅 位相

逆Log-SS

2/0)log(exp

)(_

1)(_

Nkkjakk

kSSLogkSSLogI

・ TSP と違って、up-Log-SSの逆特性 ≠ down-Log-SS

時間軸を反転しても逆関数とはならない(振幅特性が違う)

逆Log-SS ( ILog-SS ) のDFT周波数は、

1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6

x 104

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5x 10

-3

逆Log-SS 波形

113

Log-SS

時間-周波数特性の計算

)log()()( kkad

dk

d

dk

dΩ=2π(d k/N)

1)log(2log

kN

J

1)log(2log22

)log(2

kNN

JNkk

dk

da

N

周波数 k 時間 n

0 -∞

1/e 0

1 J/log(N/2)

N/2 J +J/log(N/2)

114

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20

Log-SSの時間-周波数特性

0 10 20 30 40 50 600

5

10

15

20

25

30

35

k=N/2(上限

周波数)

k=1

n = J/log(N/2)

J

N

J+(J/log(N/2))

時間n

(N=64, J=32 の例)0

指数関数

周波数 k 時間 n

0 -∞

1/e 0

1 J/log(N/2)

N/2 J +J/log(N/2)

1)log(2log

)( kN

Jk

*J は k=1~N/2までの時間

* k=1/e 以下の周波数は時間軸上で多重に折り返しされる

1

)2/log(n

J

N

ek

115

超低周波成分の多重折り返し

Time

Fre

quen

cy

1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 80000

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

・ スピーカの帯域外なので通常測定時は影響は小さい (?)

116

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび117

Log-SS に現れる非線形誤差 (高調波歪)

時間[s]

周波

数[H

z]

3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.50

1000

2000

3000

4000

5000

6000

主応答

時間[s]

周波

数[H

z]

3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.50

1000

2000

3000

4000

5000

6000 主応答

3次歪 2次歪

p次歪の時間-周波数特性は、主応答と同一形状 ⇒ 次頁

*入力信号周波数と同じ周波数の応答

*または、基本波応答

(線形応答:不適切?)

118

指数関数の性質

0 10 20 30 40 50 600

5

10

15

20

25

30

35

ane

)2log

(

2log2

ana

anan

e

eee

時間 n

周波数

2次歪

主応答

指数関数を p倍した曲線は、左に log(p)/a 平行移動した信号

左にlog(2)/aシフト

119

高調波歪の時間周波数特性

)2/log(

)log()2/log(

11

N

pJn

J

N

p eekpk

主応答

主応答を 左に平行移動した信号

n

J

N

eek)2/log(

11

p次歪

)log

(a

pna

an epe

a

J・log(p)

log(N/2)

120

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21

高調波歪の時間-周波数特性

k1

時間

2k1

4k1

0

J・log(2)/log(N/2)

J・log(3)/log(N/2)

J・log(4)/log(N/2)周波数

2次歪3次歪

4次歪

主応答

121

Log-SSによる高調波歪の分離測定

時間0

周波数

k1時間

2k1

4k1

0

周波数

2次歪3次歪

4次歪

主応答

2次歪

3次歪

4次歪インパルス応答

逆特性

周波数

時間 0

log-SS の逆特性

J・log(4)/log(N/2)

J・log(3)/log(N/2)

J・log(2)/log(N/2)

122

高調波歪も特定の時間に集中!

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5x 10

-3

時刻[秒]

振幅

測定例:高調波歪の分離測定

Log-SS を使うと、高調波歪成分を

分離できる高調波歪

☆高調波歪成分の除去

☆高調波歪成分の周波数特性計算

主応答(インパルス応答)

123

2次歪3次歪

測定信号長を系の応答より十分に長く取れば、各歪の間隔が空くので、各歪を個別に切り出すことができる。

高調波歪の周波数特性測定の例

主応答

2次歪

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5x 10

-3

時刻[秒]

振幅

124

主応答

2次歪

3次歪

高調波歪の周波数特性

5 10 15 20-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

周波数 (kHz)

主応答

2次歪3次歪

1/2

1/3

切り出した各高調波歪波形を DFT することで、歪の周波数特性が得られる。ただし、p次歪の横軸(周波数軸)は、1/p に圧縮して表示する必要がある。

24

・2次歪の24kHz成分は、主応答12kHzの2倍音である・3次歪の24kHz成分は、主応答8kHzの3倍音である

125

高調波歪の測定結果の評価

126

正弦波法との比較

2次歪 3次歪

黒線: 正弦波法赤線: Log-SS法

黒線: 正弦波法緑線: Log-SS法

・ おおむね一致・ 低域でやや差・ スピーカの時変性も要考慮

・ 切り出しの際の誤差に注意(長さ、端点)

・ 高調波以外の歪に注意

Page 22: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

22

高調波歪の分離に必要な信号長の例

127

100

101

100

101

102

103

高調波次数

歪応

答の

間隔

(m

s)

標本化周波数 fs=48kHz, 信号長 N, 実効長 J=N/2,歪応答長が20msの場合、10次の高調波歪まで分離するためには、信号長が218以上必要 (約5.5秒)

214

216

218

220

20ms

信号長NN

p 次歪の位置=J・log(p)/log(N/2)より計算

(藤本の)標準型 Log-SSの課題

Time

Fre

quenc

y

1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 80000

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

測定対象外の周波数成分の掃引時間が長い

(特にNが大きい場合)

開始-終了周波数を指定した掃引

128

J は、k=1 すなわち、fs/N [Hz]

から fs/2 [Hz] までの長さ。

fs= 48kHz、N= 216 の場合、

0.7Hz~24000Hzまでの掃引。

全長の約 1/2 が 100Hz以下

若干の補足 (詳細は今回省略)

129

)log()(log

2/)(

2/11)log(12

exp1

01

)(

11

12

*

1

kbkka

NkNforkNLogSS

NkforCkbkaNk

kfor

kLogSS

J

              

                

◇ k1 から k2 まで、実効長 J での掃引正弦波

C1 は k=N/2 でπの整数倍とするための定数

k1 k2

k

| LogSS(k) |Lw1 Lw2

*) 両端の処理が必要

◇ 時間軸での設計もできる

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび130

3.5 M系列信号

M系列信号 (通常、略して「M系列」と呼ぶ)M系列の 0 と 1 を 0 → 1 に 1 → -1 にそれぞれ対応づけた信号

70 75 80 85 90 95-2

-1

0

1

2

131

M系列 (MLS:Maximum length sequence)周期 2M-1 の 0 と 1 のランダム系列 (M:整数)

例: {0, 1, 0, 1, 1, 0, 1, 0, 1, 1, 1, 0, … }

M系列 の作り方

z-1

排他的論理和

M 次のM系列 mi : N=2M-1 の周期を持つ 0 と 1 のランダム系列

mi+M-1z-1

mi+2z-1

mi+1z-1

mi

a0a1a2aM-1

mi+M

M

j

jj xaxf

0

)(

aM

mi = 1 or 0i:時間

aj = 1 or 0 (a0 = 1, aM = 1)

aj :M 次の原始多項式 の係数132

1 1 =01 0 =10 1 =10 0 =0

(mod2の和)mi+M = aq・mi+q

M-1

q=0

生成式

Page 23: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

23

原始多項式

原始多項式は、1とその式でしか割り切れない多項式

13413 xxxx213 の場合

を含む630種類

133

→ 代表例はサンプルプログラムや、ネットで

見てください。

M系列 作成の具体例

z-1 z-1 z-1 z-1

例) 4次の原始多項式 1)( 4 xxxf1,1,0,0,1 01234 aaaaa

1 000

0

発生する系列は

0001001101011110001001・・・・

周期は 15 = 24-1134

M系列 作成の具体例

z-1 z-1 z-1 z-11 000

0

発生する系列は

0001001101011110001001・・・・135

z-1 z-1 z-1 z-10 001

0

z-1 z-1 z-1 z-10 010

1

M系列信号の性質

1/(2M-1) の直流成分を付加すれば、インパルス信号

⇒ 1周期分をDFTすれば、(直流を除いて)白色信号直流成分はほぼゼロ

周期化 M系列信号 mp(n) の

自己相関の1周期分は、

0)12(1

01

)()(12

1)(

22

0

n

n

nimimn

M

ippM

M

-1/(2M-1)0

1

136

M系列信号を用いた測定

M系列変換(逆フィルタ)

被測定系h(k)

測定出力 インパルス応答

h(n)

N=2M-1 ≧ h(n) の長さ

M系列信号2周期 物理系

(直線たたみ込み)コンピュータ

N

m(n)

N

m(n)

2周期目

y(n)

y(n) と 周期化M系列信号 mp(n) との 相関関数= 〃 mp(-n) との たたみ込み

= 〃 m(-n) との 円状たたみ込み

の高速演算(アダマール変換などを利用)[3.12-16]

m(n) と m(-n) とは、円状たたみ込みにおいて(直流を除いて)逆関数137

DFTで逆フィルタを行う時には直流成分に注意

M系列信号の特徴

・ DFTスペクトルが(直流を除き)白色・ ハードウェア(シフトレジスタ)での発生が容易*1)

・ 逆フィルタが加減算のみで行える低演算量のアルゴリズム*1) がある(アダマール変換)

・ 2M-1 点DFTでも逆フィルタ実行可能→ DFT の方が早い?

・ 低波高率(クレストファクタ)*2)

*1 コンピュータの能力が低かった時代の利点*2 現在のDA(ΣΔ方式)では成立しない (次頁)

138

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24

帯域制限されたM系列信号

480 485 490 495 500 505 510-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

ディジタル値では ±1 のM系列信号であっても、DAして(低域通過フィルタを通して)アナログ信号にすると、振幅は±2を超える

⇒ 低波高率信号ではない、⇒ ディジタル値を小さくしておかないと、DA時にクリップ(後述)

139

M系列の時間-周波数特性

・ 時間-周波数成分の関係はランダム・ 全時間帯に多数の周波数成分がランダムに生起

140

時間 (s)

周波

数 (

Hz)

M系列

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

0.5

1

1.5

2

x 104

-40

-20

0

20

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび141

102

103

10

20

30

40

50

60

70

周波数[Hz]

パワ

ー[d

B]

正解の伝達関数推定した伝達関数推定値に含まれる雑音成分

一般的な室内騒音

低周波成分が大きいため、TSPやM系列による測定では、低周波でのSN比が劣化

低周波のパワーが大きい測定信号を使えば良い

雑音正解

推定結果

142

0 1 2 3 4 5-1

-0 .5

0

0 .5

1

時間[秒]

相対

振幅

時間[秒]

周波

数[H

z]

0 1 2 3 4 50

0 .5

1

1 .5

2

x 1 04

Log -SS信号

・高周波のパワーが小さく、高周波成分のSN比が低下・低周波以外にも大きな雑音成分を持つ雑音には不適

・低周波のパワーが大きい

・低周波のSN比を改善

いろいろな種類の雑音に対して理論的な裏付けのある測定信号が望ましい

143

適応形スペクトルを持つ測定信号

測定環境に存在する雑音のスペクトルを事前測定し、それに適応したスペクトルを持つ測定信号の利用

低域の強い雑音、高域の強い雑音、など、雑音のスペクトルに応じた、適切な雑音低減効果

144

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25

適応形スペクトルの例

測定信号のパワースペクトル

|S(k)|2測定信号の例

雑音白色化NW: Noise Whitening

C3・PN(k)

MN-SSMN-PNCSN-SS、など

雑音最小化MN: Minimum Noise

C4・√PN(k)

SN比一定CSN: Constant SN

C5・|H(k)|2/PN(k)

C1, C2, ・・・: 定数・ 雑音は定常雑音を仮定

・ PN(k) は雑音のスペクトル(数秒程度のデータを事前測定)

・ |H(k)|は系の振幅応答の推定値

・ MN と CSN は筆者らの提案(宣伝活動になる?) 145

3.6.1 雑音白色化信号(NW: Noise Whitening )[3.19]

雑音の大きな周波数帯域は、測定信号のパワーを大きくして雑音成分を低減

雑音のパワースペクトル PN(k) に比例したパワースペクトルを持つ測定信号

=|S(k)|2 C1・PN(k)

測定信号のパワースペクトル

雑音のパワースペクトル

C1:定数

146

雑音性誤差のパワースペクトル

逆フィルタ1/S(k)

被測定系H(k)S(k) H(k)・S(k)

+N(k)

観測信号s(n)

測定信号雑音

++

N(k)

H(k)・S(k) H(k)N(k)S(k)

インパルス応答

h(n)

雑音性誤差

|N(k)|

|S(k)|=

◇ 雑音性誤差のパワースペクトル PN1(k)

N(k)S(k)

E2

=E 2

2=PN1(k)|S(k)|

E ・

2

PN(k)

:期待値 PN(k) :観測時の雑音のパワースペクトル

147

雑音白色化信号の効果

◇ 雑音性誤差のパワースペクトル PN1(k)

=PN1(k)|S(k)|2PN(k)

=|S(k)|2

C3・PN(k)

=C3・PN(k)

PN(k)=

1

誤差のスペクトルは周波数 k によらない→ 白色化

C3

148

シミュレーションの例

◇ 騒音環境での周波数特性測定

TSP(白色) 雑音白色化信号

雑音が低下

雑音が増加

実は、雑音の合計は減っていない

測定結果

雑音正解

周波数 (Hz)

Pow

er

(dB

)

雑音

PN1(k)Σk=0

N-1

149

3.6.2 雑音最小化信号(MN: Minimum Noise)[3.21]

<拘束条件>

=|S(k)|2 C4・ √PN(k)

=PN1(k)|S(k)|2PN(k)

=EN1 Σk=0

N-1Σk=0

N-1

雑音性誤差のエネルギー EN1 (各周波数のパワーの総和)

C4:定数

信号エネルギー(各周波数成分のパワーの総和) ES

|S(k)| 2ES = Σk=0

N-1

= 一定

< 評価量 >

を最小化する測定信号のパワー を求める。|S(k)|2

< 最小化信号 >

直感ではなく定量的最適化

(証明は文献[3.21]) 150

波形の実効値と継続時間が一定

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26

151

雑音最小化信号の時間-周波数特性の例

時間 (s)

周波

数 (Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 10

2000

4000

6000

8000

10000

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

100

101

102

103

104

-100

-80

-60

-40

-20

0

20

周波数[Hz]

パワ

ー[d

B]

雑音スペクトルの推定結果

0 500 1000 1

-10

0

10

パワ

500Hz付近の掃引時間が長い

雑音スペクトル

線形周波数軸

雑音最小化信号の効果

TSP(白色) 雑音最小化信号測定結果

雑音

正解

雑音が低下

雑音

152

雑音抑圧量の計算例 [4.2]

Hoth 騒音A 騒音B 騒音C

白色 (TSP) 0 [dB] 0 0 0

雑音白色化 -0.1 0.8 -2.2 0.4

1/f (log-SS) 8.8 17.8 18.1 9.2

雑音最小化 10.9 19.7 20.3 15.0

白色の結果を基準(0dB)

雑音白色化(WN)は白色(TSP)と同じ

騒音スペクトルが PN(k) =1/k2 の時、雑音最小化信号のパワースペクトルは

=|S(k)| 2 C4・√PN(k) = C4・1/k

振幅スペクトルは

=|S(k)| √C4/√k

と、log-SS と一致する

log-SSは、雑音最小化に近い場合もある

(理由)

Log-SS はパワーが 1/k2 特性の雑音を最小化

1/k2

153

室内騒音には、1/k2

特性の騒音も多い

雑音最小化信号

雑音最小化の効果と課題

周波数

ゲイン

SN改善

TSP信号

00 NS

N

H

系の周波数特性

低SN

=|S(k)|2 C1 =|S(k)|2 C4・√PN(k)

雑音性誤差 雑音性誤差

周波数

ゲイン

低SN

雑音が大きい部分は低減されるが、系の周波数応答が小さい部分の低SN比は改善されない

154

雑音最小化信号

SN比を一定とした測定

周波数

SN改善

=|S(k)|2 C4・√PN(k)

雑音性誤差

低SN

・ SN比を一定とすれば、広い帯域で一定品質の測定結果・ 過剰な高SN比を避けることで測定時間を短縮

周波数

ゲイン

ゲイン

SN改善

SN改善SN改善

雑音性誤差

155

3.6.3 SN比を一定とする測定信号(CSN: Constant SN) [3.22]

H(k)N(k)S(k)

+測定結果

SN比 =|H(k)|2

|N(k)|E 2 |S(k)|2=

/ PN(k)

|H(k)|2|S(k)|2

これより、

=PN(k)

|H(k)|2|S(k)|2 C4・

とすれば、

SN比 = C4 周波数 k によらない 一定値

ただし、H(k) は未知なので、繰り返し測定による推定値を利用

156

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27

SN比を一定とするための測定手順

信号合成

H

逆フィルタ未知系

H

雑音推定初期値

1ˆ H

SN比の一定性評価最終測定結果

不良

雑音

測定

未知系の特性推定値 H(k) は、測定値をフィードバック

PN(k)

PN(k)

|H(k)| 2C4

157

スピーカ+室内 応答の測定例

SN比一定(20dB)による結果

102

103

104

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

Frequency (Hz)

Pow

er

(dB

)

102

103

104

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

Frequency (Hz)

Po

we

r (d

B)

102

103

104

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

Frequency (Hz)

Pow

er

(dB

)

TSP 雑音白色化

CSN

158

残響時間測定に対するCSN信号のメリット [3.24]

159

インパルス応答に基づく残響時間測定

45dB以上

インパルス応答の帯域別瞬時パワー

最大値

雑音レベル

瞬時

パワ

時間

各周波数帯域において雑音レベルがインパルス応答の最大値に対して-45dB以上小さくなくてはならない( 測定時,ISO3382)

測定信号とオクターブバンド雑音レベル

160

0 0.5 1 1.5 2

-40

-30

-20

-10

0

相対

パワ

ー(dB)

時間(s)

0 0.5 1 1.5 2

-40

-30

-20

-10

0

相対

パワ

ー(dB)

時間(s)

0 0.5 1 1.5 2

-40

-30

-20

-10

0

相対

パワ

ー(dB)

時間(s)

125Hz500Hz

2000Hz

TSP Log-SS

CSN-SS

TSPやLog-SSでは、帯域ごとに雑音レベルが大きく異なる

従って、全帯域で雑音レベルを-45dB以下にするために、さらに信号長を増大する必要がある

CSN信号による測定信号の短縮

161

102

103

104-80

-75

-70

-65

-60

-55

-50

-45

-40

周波数(Hz)

雑音

レベ

ル(d

B)

TSPLog-SSCSN-SS

測定信号 必要信号長 信号長比

CSN-SS 2.7s 1 (基準)

TSP 61s 22Log-SS 11.6s 4.2

CSN-SS信号は従来信号に比べて

短時間での測定が可能・ CSNでは帯域によらず雑音レベルが一定・ CSN以外で-45dB以下を確保しようとす

ると、不必要な雑音レベルの低下=信号長の増大

対象とする帯域で所望雑音レベル以下としたときの帯域別雑音レベル

125 4k

所望雑音レベルを満足する必要信号長

所望雑音レベル

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび162

Page 28: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

28

所望のパワースペクトルを持った信号の合成方法

測定信号のパワースペクトル

|S(k)|2

雑音白色化NW: Noise Whitening

C3・PN(k)

雑音最小化MN: Minimum Noise

C4・√PN(k)

SN比一定CSN: Constant SN

C5・|H(k)|2/PN(k)

これらのパワースペクトルを持つ

SS信号、PN信号 の合成方法

163

一定振幅 SS信号のエネルギー分布

時間n

周波数f

0

up-TSP

時間n

周波数f

0

Log-SS

どの周波数も一定時間出力される

どの周波数もエネルギー均一

低い周波数が長時間出力される

低周波数成分のエネルギーが大きい

各周波数の持つエネルギーは各周波数の出力持続時間に比例

n, f は連続量で表示

164

パワースペクトルと群遅延

τ(f)

時間

周波数

Δf

群遅延 (=時間ー周波数特性の逆転表示)

Δτ

各周波数あたりのエネルギー(=パワースペクトル P(f) ) は、傾きを表す、微分に比例

)()( ffd

dfP

一定振幅掃引正弦波の場合165

単位周波数あたりの出力持続時間Δτ/Δf は群遅延特性τ(f) の傾き

一定振幅 掃引正弦波におけるパワースペクトル、群遅延、位相特性の関係

パワースペクトル

fP

群遅延 )( f

位相特性 )( f

微分 (に比例)積分

微分(ωで)積分

)( fPfA

パワースペクトルP(k)を持った掃引正弦波 SS(k)の周波数特性は、

SS(k)=√P(k)・e jφ(k)

振幅特性 位相特性

振幅特性

166

DFT 周波数における合成 [3.22]

20

1 )()( CiPCkk

i

)0()(2/

01 PiPJC

N

i

k

i

iN

Ck0

3 )(2

)(

◇ 群遅延 τ はパワースペクトル P の積分に比例するので、(積分は離散量としてはΣに対応)

ただし、C1は比例定数、C2は積分定数である。

τ(0)=0 の条件より、 C2=-P(0)

τ(N/2)=J (実効長) の条件より、

◇位相特性 φ は群遅延τの Ω(=2πk/N)に関する積分なので

ただし、C3 は、φ(N/2)をπの整数倍とするための、1に近い数

2/

0

2/

03 )(2)(2

N

i

N

i

iNiNroundC

167

所望のパワースペクトルを持ったPN信号

PN信号 (疑似雑音)は、φ(k)を、[-π, π] の一様乱数で与えれば良い

PN(k)=√P(k)・e jφ(k)

振幅特性 位相特性

☆ PN信号の問題点波高率(Crest Factor)が大きい

168

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29

波高率(Crest Factor)

振幅最大値波高率=

実効値(=√パワー)

機器やDA変換器の入出力の許容レベルにより、最大値が制限される場合がある。

許容最大値

実効値

実効値

0

波高率 小 波高率 大実効値が大きい 実効値が小さい

振幅最大値が制限される場合、波高率が小さいほうが、パワーが大きい ⇒ より高いSN比の測定ができる 169

代表的な波高率

480 485 490 495 500 505 510-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

注:M系列の波高率は 1 と記された文献もあるが、DA出力されたM系列の波高率は約 2.5波高率はディジタル値ではなく、アナログで評価すべき

実効値

0

正弦波: √2≒ 1.4 M系列: 約 2.5

170

波高率の低減処理 [3.2]

疑似雑音の波高率は高い(3とか 4とか)場合が多いが、これを低減することができる

171

波高率低減処理の例

100

101

102

103

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

繰り返し回数

波高

Hoth (1.32)雑音A (1.27)雑音B (1.19)雑音C (1.16)

0.4 0.45 0.5 0.55 0.6

-1

0

1

時間 (s)

振幅

0.4 0.45 0.5 0.55 0.6

-1

0

1

時間 (s)

振幅

100回程度の繰り返し演算で、正弦波よりも小さい波高率を実現できる

172

波高率=1.3

波高率=3.0

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび173

3.8 同期加算 (もう一つの雑音低減方法)

・・・

h(n) + n1(n)

h(n) + n2(n)

h(n) + nN(n)

N・h(n) +Σni(n)N

i=1

複数回の測定結果を、時間同期して平均

時間同期

N1

N1

=N

h(n) + Σni(n)N1

i=1

雑音成分

雑音成分が毎回無相関なら、

雑音パワーは、1/N になる。

174

Σ

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30

証明

と仮定すると、雑音成分のパワー PN は、

01

021

2

2

1

2

2

2

1

11)()(2)(

1

)()(2)(1

)(1

N

N

iN

jiji

N

ii

jiji

N

ii

N

iiN

PN

PN

nnnnEnnEN

nnnnnnEN

nnN

EP

jinnnnE ji 0)()(

iallforPnnE Ni 02 )(

雑音成分は毎回無相関

各回の雑音パワーは同じ値 PN0

ただし、E[・] は期待値

1回測定の雑音パワー PN0 の 1/N に減少

175

同期加算のSN比改善効果

N回の平均で、SN比を 10log10(N) [dB] 改善

例)N=10 → 10log10(10)= 10 dB 改善

N=100 → 10log10(100)= 20 dB 改善

N=1000 → 10log10(100)= 30 dB 改善

176

同期加算の注意事項

・ 時変性のある系に対して、多数回(長時間)の平均は誤差

要因となる(雑音低減効果とのトレードオフ)

・ スピーカはウォームアップをしたほうがベター(時変性回避)

・ 短い測定信号を使って多数回の同期加算することと、

長い測定信号で1回測定することとの、是非 (?)

・ 時不変な非線形誤差の低減には効果がない

(PN信号で位相を変化させて行う場合を除く)

・ ADとDAの同期が確保されない場合は、N回の測定を1回のデータで行うことが必要(下図)

ではなく、

測定結果を分割して同期加算

177

「3章 代表的測定信号」 のまとめ

178

・ 主な測定誤差として非線形誤差と雑音性誤差・ 測定信号は、

位相特性で、掃引正弦波(SS)と疑似雑音(PN)に分類でき、

信号のパワースペクトルで、白色、1/f、適応形などに分類できる

・ 信号の位相特性は、非線形誤差の現れ方に、パワースペクトルは雑音抑圧量に影響する

・ 主な信号として、TSP、Log-SS(ピンクTSP)、M系列雑音白色化、雑音最小化、SN比を一定とする信号

・ スペクトル固定形ではLog-SSが、適応形では雑音最小化やSN比一定信号が望ましく思える。

・ 後2者は、整備中である

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび179

4.測定の誤差要因

① 定常雑音

暗騒音、電気的雑音、など

② 非定常雑音

ドアの開閉音、音声、など

③ 非線形性(時不変)

スピーカや音響機器への過大入力による非線形歪

④ 時変性

室温の変化、風の影響、機器の温度特性など

180

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31

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび181

4.1 定常雑音

・ 一般的に、定常雑音は定常誤差となる

・ 誤差レベル、誤差スペクトルは、測定信号の振幅スペクトル |S(k)| に依存する

定量的検討は5章

(1) 円状たたみ込みのための切り出しへの影響

(2) 直線たたみ込みによる雑音性誤差の非定常化

182

(1) 円状たたみ込みのための切り出しへの影響

2周期目系の応答

雑音

雑音の加わった系の応答

雑音が無ければ、2周期目の最初と最後は連続

2周期目の最初と最後の部分、雑音は不連続

雑音が加わった応答2周期目の最初と最後は不連続

1周期目

183

雑音の影響による切り出し部の誤差

時間n

周波数k

0

up-TSP応答

不連続誤差

時間n

周波数k

0

インパルス応答

不連続誤差

2周期目の切り出しの両端が不連続な場合、時間-周波数特性上にパルス性の誤差が発生

逆特性

逆特性をかけることで、斜めの時間-周波数特性の誤差が発生

184

単純な窓かけでは不十分

雑音の加わった系の応答

切り出しの両端を窓かけ

2周期目1周期目

時間n

周波数k

0

TSP応答

切り出し部分が消去

時間n

周波数k

0

インパルス応答

ゼロとなる部分逆特性

185

巡回的クロスフェード接続 [4.3]

雑音

・ a’ に含まれる信号成分と b に含まれる信号成分は同一→ b+a’ a+b’ で信号は一定値になる

・ 雑音はクロスフェードで連続的に接続される186

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32

シミュレーション例

Time (s)

Fre

que

ncy

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

0.5

1

1.5

2

x 104

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

Time (s)

Fre

quenc

y (H

z)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

0.5

1

1.5

2

x 104

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

Time (s)

Fre

quency

(Hz)

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.20

0.5

1

1.5

2

x 104

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0不連続誤差

両端窓かけ

クロスフェード

187

補足:主応答が周期の境にかからなければインパルス応答には影響しないが、雑音性誤差に非定常成分が含まれる

(2)直線たたみ込みによる雑音性誤差の非定常化

Time

Fre

que

ncy

0.5 1 1.5 2 2.5 3

x 104

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

20

Time

Fre

quen

cy

0.5 1 1.5 2 2.5 3

x 104

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0 1 2 3 4 5 6

x 104

-1

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1x 10

-3

0 1 2 3 4 5 6

x 104

-0.04

-0.03

-0.02

-0.01

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0 1 2 3 4 5 6

x 104

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

周波数

録音されたTSP応答

データのない部分

時間

非定常な雑音・振幅・周波数成分

逆特性を直線たたみ込み

帯域ごとに雑音の長さも異なる188

円状たたみ込みとの違い

Time

Fre

quen

cy

0.5 1 1.5 2 2.5 3

x 104

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

〇直線たたみ込みを利用する場合の対策:

(参考)円状たたみ込みの場合は、はみ出た部分は回り込むので、雑音性誤差の定常性が確保される

測定信号を長めに設定し、この部分を切り出して使用する

189

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび190

非定常(突発性)雑音の影響 (1)

Time

Fre

quency

1 2 3 4 5 6

x 104

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-110

-100

-90

-80

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

Time

Fre

quenc

y

0.5 1 1.5 2 2.50

0.5

1

1.5

2

x 104

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

測定中に突発音

逆特性

SS信号による測定

突発性雑音は、測定結果に致命傷

その他、ドアの開閉音や衝撃音191

Time

Fre

quenc

y

0.5 1 1.5 2 2.50

0.5

1

1.5

2

x 104

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

非定常(突発性)雑音の影響 (2)

PNの逆特性は位相を

ランダム化するので

時間集中した雑音は

全区間に分散されるその他、ドアの開閉音や衝撃音

Time

Fre

quen

cy

1 2 3 4 5 6

x 104

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-110

-100

-90

-80

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

192

PN(疑似雑音) による測定

逆特性

測定中に突発音

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33

非定常(突発性)雑音の影響 (まとめ)

Time

Fre

quen

cy

1 2 3 4 5 6

x 104

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-110

-100

-90

-80

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

Time

Fre

que

ncy

0.5 1 1.5 2 2.50

0.5

1

1.5

2

x 104

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

Time

Fre

que

ncy

0.5 1 1.5 2 2.50

0.5

1

1.5

2

x 104

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

Time

Fre

quen

cy

1 2 3 4 5 6

x 104

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

-110

-100

-90

-80

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10PN(疑似雑音)

SS

突発性雑音に対しては PNが有利(?)

193

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび194

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5x 10

-3

時刻[秒]

振幅

Log-SSによる高調波歪の分離除去

非線形誤差(高調波歪)

この線から左を切り捨てることで、高調波歪の成分を除去できる

しかし、非線形特性の影響による誤差は、主応答にも含まれる

195

注:高調波歪を分離できる信号は Log-TSP 以外にも合成可[4.9]→ 時間-周波数上で、高調波歪が時間方向に離れるように設計

非線形特性の影響

非線形系

x (t)

t

y (t)

t

周波数kf1

振幅

周波数kf1 2f1 3f1

振幅

基本波応答

2次歪

3次歪高調波歪

0 0・・・

196

高調波が発生するだけでなく、

基本波応答の大きさ(や位相)も変化する

非線形の影響は高調波歪だけではない!

測定例 [4.8]

50 55 60 65 70 75 80 85 90 95-60

-55

-50

-45

-40

-35

-30

-25

-20

-15

-10

音圧レベル(dB)

基本

波応

答誤

差と

高調

波歪

(dB

)

基本波応答の誤差第2次高調波歪第3次高調波歪

4 5 6 7 8 9 10 111290

92

94

96

98

100

102

104

106

周波数[kHz]

[dB

]

主応答誤差

3次歪

2次歪

正解

誤推定

③定格入力では、主応答誤差が -13dB。 周波数振幅特性に最大2dB程度の誤差があった

① 主応答の誤差(変化)は、高調波歪のような違和感はない② しかし、波形利用の場合には考慮が必要

197

定格入力45W

「線形応答」という呼び名

時間[s]

周波

数[H

z]

3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.50

1000

2000

3000

4000

5000

6000

主応答3次歪 2次歪基本波応答、(線形応答)

とも呼ばれる

198-0.4 -0.2 0 0.2 0.4

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5x 10

-3

時刻[秒]

振幅

主応答にも、

非線形誤差(成分)が含まれる

線形応答と呼びたくない理由

Page 34: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

34

混変調歪

非線形系

x (t) y (t)

周波数kf1

振幅

0

199

f2k

f1

振幅

0 f2 2f1 2f2

f2- f1 f2+ f1「混変調歪」複数の周波数成分(f1, f2)を持つ信号を非線形系に入力すると、高調波(倍周波)成分以外に、和と差の周波数成分

n・f1± m・f2 (n, m: 整数)が発生

インパルス応答の右側にも発生するのでLog-SS でも除去できない

SS信号が複数周波数となる場合の例→ DA変換器の非線形 (6章)→ 電源雑音の付加

例:電源雑音 [4.11]

200混変調歪は分離困難 → 対策:原因雑音の除去

低レベルの電源雑音でも歪が大きいと混変調を発生

4.5 5 5.5 6-0.4

-0.2

0.2

0.4

時間(s)

相対

振幅

4.5 5 5.5 6-0.4

-0.2

0.2

0.4

時間(s)

相対

振幅

主応答2次歪3次歪

(b)入力43W

時間(s)

周波

数(k

Hz)

4.5 5 5.5

5

10

15

20

-100

-80

-60

-40

-20

0 (dB)

誤差誤差

図 (b)のスぺクトログラム

(a)入力14W

PN信号に対する非線形誤差の例 (M系列)

雑音性の誤差成分が発生

同じ長さの異なったPN信号を用いた測定結果を、同期加算することで低減できる

201

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび202

雑音性誤差と非線形誤差

逆フィルタ1/S(k)

被測定系H(k)S(k) H(k)・S(k)

+D(k)+N(k)

観測信号s(n)

測定信号

D(k)非線形

雑音

++

N(k)

H(k)・S(k)+D(k)

H(k)

+D(k)S(k)

N(k)S(k)

インパルス応答

h(n)

◇ 雑音性誤差は、 が大きいほど小さい

雑音性誤差

非線形誤差

|S(k)|◇ 非線形誤差は、 が大きいと大きくなる(一般的に)(|S(k)| の増加より D(k) の増加が大きい)

|S(k)|

203

測定誤差のトレードオフ関係

小 測定信号レベル (dB) 大

測定誤差

雑音性誤差 非線形誤差

204

同一の測定信号で、信号レベルを変化させた場合

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35

各雑音の低減方法

小 測定信号レベル (dB) 大

測定誤差

雑音性誤差 非線形誤差

測定信号スペクトルの最適化

PN同期加算

同期加算

205

SS高調波歪除去

測定信号の大きさと測定誤差

小 測定信号レベル [dB] 大

大測

定誤

差小

雑音による誤差

非線形による誤差

誤差を低減したのち、

目的に応じた適切な信号レベルに設定206

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび207

短時間時変性(風)の影響

時間n

周波数k

0

up-TSP応答

時間n

周波数k

0

インパルス応答

風の影響

時間遅れは平均 0.3μs、標準偏差 0.7μs

誤差は5kHz以上で-30~-20dB程度

208

逆特性

(測定例 [4.13])

SS信号

風による誤差(実測例) [4.13]

時間 (s)

周波

数 (H

z)

0 0.05 0.1 0.150

0.5

1

1.5

2

x 104

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

時間 (s)

周波

数 (H

z)

0 0.05 0.1 0.150

0.5

1

1.5

2

x 104

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

誤差成分の時間-周波数特性

SS PN

・ SSの場合、インパルス応答自体に誤差が集中(波形誤差か、周波数特性の周波数方向の微小なずれ)

・ 疑似雑音では、誤差は全区間に分散→ どちらが良いかは用途による

209

スピーカの特性変化 (時変系)

1000 1500 2000 2500 3000-95

-90

-85

-80

-75

周波数[Hz]

振幅

[dB

]

初回最終回

0 5 10 15-88

-87

-86

-85

-84

-83

-82

測定回数[回]

振幅

[dB

]

時変特性は、スピーカの機種や再生音圧にもよるが、ある程度のウォーミングアップはしたほうが良い

10分間隔

定格入力

-84

-86dB

0 5 10

振幅平均値の変化

例えば、10-30分 理想は、一度、特性測定 210

(×10分)

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36

「4章 測定の誤差要因」 のまとめ

211

・ 定常雑音

定常な測定誤差

測定信号の周期切り出し端点の不連続対策

直線たたみ込みによる非定常化

・ 非定常(突発性)雑音

SS 信号は苦手、PN が better ?

・ 非線形性

高調波歪はLog-SSなどで除去可

PNでは異信号同期加算で低減化

高調波歪以外にも、主応答の歪なども存在

・ 雑音性誤差と非線形誤差の間のトレードオフ関係

・ 時変性誤差

スピーカなどのウォーミングアップ

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび212

インパルス応答波形における雑音抑圧効果

δ(n)

J

N

pS

s(n)

系 +

定常雑音n0(n)

pN0

pN1

N

系 +

定常雑音n0(n)

逆フィルタ

(測定結果)インパルス信号

測定信号

雑音性誤差

: 測定信号 s(n) のパワー(実効値の2乗)

雑音抑圧効果 NRP (Noise Reduction Performance):インパルス入力時と、測定信号 s(n) を用いた場合の

雑音性誤差のパワー比 pN0/pN1

pN0, pN1 は雑音性誤差のパワー

1パワー

pS

213

雑音抑圧効果の定式化

期待値:)()(2

00 EkNEkPN

ただし、P^N0(k)、|S^(k)|2は、PN0(k) および |S(k)|2 を、

それぞれの平均値(平均的大きさ)で正規化したものである。

⇒ PN0(k) および |S(k)|2 の(大きさを除いた)形状を反映

1

0

2

22

1

00

00

)(1

)()(ˆ

)(1

)()(ˆ N

k

N

kN

NN

kSN

kSkS

kPN

kPkP

1

02

01

0

)(ˆ

)(ˆN

k

N

SN

N

kS

kP

NpJ

p

pNRP

証明は付録5.1-1214

雑音抑圧効果の説明

1

02

0

)(ˆ

)(ˆN

k

N

S

kS

kP

NpJNRP

J

N

pS

s(n)

実効長に比例

振幅2に比例

大きさで正規化されており信号と雑音のパワースペクトル形状に依存する項

215

信号エネルギーを表す項

振幅と実効長の雑音抑圧効果の例

216

J

N

As(n)

(測定結果)(測定信号) 雑音性誤差

2J

A

注) N には依存しない

J

2A振幅2倍

実効長2倍

誤差パワーは1/4誤差振幅は1/2

誤差パワーは1/2誤差振幅は1/√2

雑音抑圧効果は測定信号のエネルギーに比例

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37

振幅と実効長の雑音抑圧効果の例(つづき)

217

J

N

As(n)

(測定結果)(測定信号) 雑音性誤差

2J

A

実効長2倍誤差パワーは1/2

2J

A

2N 誤差パワーは1/2

実効長と信号長2倍・ AとJ が同じ

(=測定信号エネルギーが同じ)なら

誤差パワーは同じ(雑音抑圧効果は同じ)

測定信号のスペクトルによる雑音抑圧効果(1)

雑音白色化信号の雑音抑圧効果は

白色信号の雑音抑圧効果に等しい

1

02

0

)(ˆ

)(ˆN

k

N

S

kS

kP

NpJNRP

① 白色信号 (TSP、M系列など)

1

2)( CkS

1

0

2

22

)(1

)()(ˆ N

k

kSN

kSkS

1)(ˆ2

kS

SpJNRP

② 雑音白色化信号

)()( 02

2kPCkS N )(ˆ)(ˆ 0

2

kPkS N

SpJNRP

1

00 )(ˆ

N

kN NkP注:

218

雑音の種類によらず

雑音抑圧効果は一定 J・pS

③ 雑音最小化信号 MN

)()( 03

2kPCkS N

21

00

1

00

)(1

)(1

N

kN

N

kN

S

kPN

kPN

pJNRP

の2乗平均)(0 kPN

の平均の2乗)(0 kPN

=平均の2乗

平均の2乗+分散

雑音スペクトルの分散が大きいほど雑音抑圧効果は大きい219

証明は付録5.1-2

エネルギの偏り

測定信号のスペクトルによる雑音抑圧効果(2) (再)雑音抑圧量の計算例

白色の結果を基準(0dB)

雑音白色化(WN)は白色(TSP)と同じ

騒音スペクトルが PN(k) =1/k2 の時、雑音最小化信号のパワースペクトルは

=|S(k)| 2 C4・√PN(k) = C4・1/k

振幅スペクトルは

=|S(k)| √C4/√k

と、log-SS と一致する

log-SSは、雑音最小化に近い場合もある

(理由)

Log-SS はパワーが 1/k2 特性の雑音を最小化

1/k2

220

室内騒音には、1/k2

特性の騒音も多い

Hoth 騒音A 騒音B 騒音C

白色 (TSP) 0 [dB] 0 0 0

雑音白色化 -0.1 0.8 -2.2 0.4

1/f (log-SS) 8.8 17.8 18.1 9.2

雑音最小化 10.9 19.7 20.3 15.0

不適切な測定信号

1

02

01

0

)(ˆ

)(ˆN

k

N

SN

N

kS

kP

NpJ

p

pNRP

221

・ 不適切な信号スペクトル |S^(k)|2は、NRPを減少させる

ある帯域の |S^(k)|2 が 小

⇒ P^N0(k) / |S^(k)|2 → 大

⇒ NRP < J・pS (= 白色のNRP)

・ 例えば、Log-SS で |S^(k)|2 の小さい高域で、

雑音成分 P^N0(k) が大きい場合に発生

・ NRPが雑音に依存しない TSP は、「大きな誤り」がない

・ 適応形測定信号は、常に最適(少し手間がかかるが)

測定信号のスペクトルと雑音抑圧効果(まとめ)

))(exp()()( kjkSkS

222

測定信号のスペクトル 振幅スペクトル 位相スペクトル

雑音性誤差に関与 非線形誤差に関与

・ エネルギー

雑音抑圧効果(誤差パワーの低減量)に比例

・ スペクトル形状

誤差パワーを増減が最適

,)2(,)1(,)0( SSS

)(kPN

NkSpJN

kS /)(1

0

2

Page 38: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

38

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび223

全時間長におけるSN比

J

N

As(n)

(測定結果)測定信号 雑音性誤差

2J

A

信号長を2倍にして、信号のエネルギーを2倍にしても、録音される雑音のエネルギーも2倍になるので、SN比は不変

信号長(JとN)

2倍2N

全区間でのSN比は同じ

雑音

雑音

誤差パワー大

誤差パワー小

224

N

2N

雑音誤差パワーが1/2になっても、区間が2倍なので、誤差エネルギーは不変 → SN比不変

注意事項: 誤差パワーと SN比

J

N

As(n)

(測定結果)測定信号 雑音性誤差

2J

A信号長(JとN)

2倍2N

全区間でのSN比は同じ

雑音

雑音

誤差パワー大

誤差パワー小

225

☆ インパルス応答をDFTして算出する周波数特性のSN比は、DFT区間でのSN比に依存!

N

2N「誤差パワー」の大小と、インパルス応答測定結果全区間の「SN比」の大小は、異なるので注意!

インパルス応答のSN比の改善

・ インパルス応答の切り出しを行うことでSN比が改善される

・ (再)切り出しを行わない状態だとSN比は改善していない!

・ 周波数応答計算前に切り出すことを忘れない!

インパルス応答の時間軸上での切り出し

・ 切り出し区間 Lh 内では、誤差パワー pN が小さいほど、SN比が大きくなる

N1

N2

Lh

pN1

pN2

226

周波数特性 H(k) の測定(重要)

逆フィルタ

1/S(k)

被測定系h(k)H(k)S(k)

Y(k)=H(k)・S(k) H(k)

測定出力

インパルス応答

h(n)

測定信号

逆DFTN点DFT

1/S(k)

N

s(n)

N

s(n)

2周期目

y(n)

h~(n)

H~(k)

周波数特性としてこれを使ってはいけない。SN比が改善されていない

切り出しによるSN比改善

SN比を改善した周波数特性

227

インパルス応答の切り出し

通常、インパルス応答は十分な長さをとって測定

IRの後半部分はほぼ雑音区間

時間

振幅

インパルス応答

雑音

切り出し時刻(インパルス応答と雑音の

パワーレベルが等しくなる付近)

228

Page 39: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

39

時間波形切り出しの問題点

低周波成分の大きな室内騒音下では、切り出し時刻が、低周波騒音の大きさで決まってしまい、SN比の高い高周波数成分が切り捨てられる

229

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6-0.01

0

0.01

Time

Fre

quency

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.60

1

2

x 104

切り出し時刻

切り捨てられるIRの部分

通常、雑音のパワー

信号のパワーとなる時刻で切り出す

検討中の手法 (帯域別切り出し)[5.1][5.2]

IR IRk

STFT

IR

IR

IR

IR(OK?)

切り出し

切り出し

切り出し

切り出し

STFT

0 100 200 300 400 500-2

-1

0

1

2

時間 (ms)

振幅

0 100 200 300 400 500-2

-1

0

1

2

時間 (ms)

振幅

STFT:短時間フーリエ変換

230

時間 (ms)

周波

数 (

kHz)

-50 0 100 200 300 4000

5

10

15

20

帯域別(サブバンド)切り出しの効果

時間 (ms)

-50 0 100 200 300 4000

5

10

15

20

-80

-60

-40

-20

0(dB)

帯域別切り出し

時間波形切り出しで切り捨てられていた部分が、帯域別切り出し法では保存されている

通常の波形切り出し

231

*) 測定信号長 N を決める際も、時間-周波数特性で帯域ごとにインパルス応答の長さを見て決める

(参考)古典的なSSによる周波数特性測定との比較

0

掃引正弦波応答

0n

k

アナログ周波数特性測定

時間n

周波数k

トラッキングフィルタ

インパルス応答測定

インパルス応答切り出し

逆特性f1f2

f1から f2 の成分がこの時間に出力されるその大きさをf1の振幅特性とする

掃引速度によらず、正確に振幅・位相特性が得られる点は、本質的な相違点であるが、切り出しがトラッキングフィルタに対応

232

(全帯域一定)

「5章 測定信号による雑音抑圧効果」のまとめ

233

◇ 測定信号と雑音抑圧効果を表す式

・ 白色信号(TSP、M系列)、雑音白色化信号の

雑音抑圧効果は、信号エネルギーに比例

・ 付加雑音の周波数スペクトルの偏りが大き

いほど、雑音最小化信号の効果は大きい(10~20dB)

◇ 測定結果(インパルス応答波形)のSN比は、

波形切り出しを行うことで、改善する。

・ 周波数特性を求めるときは、必ず切り出しを行う

・ 波形切り出しを時間軸上で行う場合は、高SN比の

帯域成分の切り捨てに注意

⇒ 時間-周波数特性でチェック

⇒ 帯域別切り出しが有効

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび234

Page 40: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

40

6.1 録音時の雑音

アナログ

音 A/D

ディジタル

コンピュータ

D/A

マイクロホン

スピーカ

騒音

235

気をつけたほうがよい雑音と注意

聞こえない雑音

・ 低周波騒音

・ 電気的雑音 (ハムなど) → 混変調歪の要因にも

・ 固体伝播音 (機材の振動など)

突発性雑音 (瞬間的な音、ガタッ、カチッ)

背景雑音を録音しておくこと

(再生音の最初または最後に数秒の無音再生を

行い、その時に背景騒音を録音する)

参考: 実験時の写真を撮っておく

(機器配置・ボリュームなど)236

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび237

6.2 AD・DA などの注意点

6.2.1 PC の設定

6.2.2 AD と DA のクリッピング

6.2.3 AD と DA の折り返し現象

6.2.4 AD と DA の直流除去HPF6.2.5 AD と DA の同期、サンプリング周波数

( PC、サウンドデバイス、OS、ドライバ、

などのソフト・ハードウェア環境に依存するので、

共通するものではありませんが・・・)

238

6.2.1 PC の設定

・ PC: 常駐ソフトはできるだけ外す(ウィルス対策ソフトなど)

できれば計測ソフトの優先度をあげる

・ AIF ドライバ:Windows XP のドライバは勧められない

(AD・DAの同期性に問題)

ASIOは良 (MATLAB → pa_wavplayrecord)

不案内なので、調査ください例えば、文献 [2.2]

239

・ AD データ損失

特に、多チャンネル、長時間録音時

(検出プログラムの利用)

6.2.2 AD と DA のクリッピング

◇ AD 入力オーバーによるクリッピング

・ 必ずしも最大値(±1、±2^15)ではないことがある。

・ マイクアンプでのクリッピング、WinXP ドライバ[6.5]

・ 波形表示、時間-周波数表示によるチェック

◇ DA 出力時のクリッピング

・ ΣΔ方式DAの場合

→ 次頁

240

大きな非線形誤差要因

クリッピングクリッピングレベル

t

Page 41: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

41

DAで発生するクリッピング (1)

合成した測定信号 s(k)

なるべく大きな振幅 = 量子化誤差、DA電気雑音の影響小

⇒ s(k)の最大値を、ディジタル最大値( ±1 or ±215 )

(DAできる最大値)に正規化

DA出力

この正規化は、クリッピングが発生する可能性あり

241

DAで発生するクリッピング (2)

242

クリッピングの原因

旧来型のDA

最近のオーバサンプリング型のDA

243

補間

防止方法

補間

最大値 2.5

補間後の最大値がディジタル最大値を越えないように正規化すればよい

詳細は、[6.3]

±1 の M系列信号

±0.4 の M系列信号

☆ 特にPN信号で注意

244

DA

6.2.3 AD と DA の折り返し現象

LPF: 折り返し歪防止

HPF:直流成分カット

LPFHPF

ADLPFHPF

out

in

AIF

PC

録音

再生

245

標本化定理 (サンプリング定理)

この条件を満たせば、原信号を再現できる。

信号の帯域幅 ( 0 ~ fmax )

標本化周波数 fs

fmax < fs/2

アナログ信号を 標本化してディジタル化 するとき、

246

Page 42: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

42

標本化定理が満たされないと

折り返し歪み(エリアシング)が発生

パワー

fs1― 2

ffs1

― 2

f

パワー

以上の周波数が含まれると、0~ の区間に折り返されるfs1― 2

fs1― 2

0 0

信号のパワースペクトル

周波数

不自然な雑音になる247

標本化定理が満たされない例

折り返し歪み(エリアシング)が発生

パワー

ff

パワー

34kHzのアナログ正弦波をADすると、ディジタル信号としては、

14kHzの正弦波と一致する

0 0

信号のパワースペクトル

周波数

例: fs=48kHz

24k 34k 14k

248

折り返し防止フィルタ

折り返し防止(低域通過)フィルタ A/D

周波数

ゲイン

入力

fs/20

1

A/D変換器の前に、

(fs/2) 以上の成分を除去する

「折り返し防止フィルタ」を設置

249

折り返し歪防止用 LPF の設計方針

fs/2

通過帯域

遷移帯域

遮断帯域

0

ゲイン

周波数

折り返し歪

fs/2 以上を遮断帯域→ 折り返しは発生しない

→ fs/2 付近は特性低下

ゲイン

通過帯域

fs/2周波数

遮断帯域

遷移帯域

fs/2 以下を通過帯域→ fs/2 まで特性は平坦

→ 折り返しが発生

従来の方針 最近のAIFの方針

250

オーディオインタフェースのAD付属の折り返し防止フィルタ特性の測定例 [6.1]

通過域平坦特性を

狙うため、fs/2 でも

減衰が小さく、

fs/2 の 10%程度で、

折り返しが発生

周波数 [fs/2]

251

折り返しを許容する理由

fs/2

通過帯域

遷移帯域

遮断帯域

0

ゲイン

周波数

折り返し歪

・ どちらも、上限10%くらいは使えないのは同じ・ 聴覚上は、24KHz付近の折り返し歪は影響しない

ゲイン

通過帯域

fs/2周波数

遮断帯域

遷移帯域

従来の方針 最近のAIFの方針

252

・ しかし、計測上は、「無い」 と 「汚れた」では大きな違い

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43

AD の折り返しによる誤差

時間0

周波数

時間0

周波数

2次歪3次歪

主応答

2次歪

3次歪インパルス応答

逆特性

253

・ 高調波間のすきまが埋まって

切り出しが難しくなる

・ インパルス応答の先頭が

あいまいになる

高調波歪の折り返し

Log-SS

・ 高調波歪は、

fs/2 以上の成分を

持つので、

折り返し歪が発生

fs/2

AD変換器による高調波歪の折り返しの例

時間[s]

周波

数[H

z]

3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.50

1000

2000

3000

4000

5000

6000

主応答

時間[s]

周波

数[H

z]

3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.50

1000

2000

3000

4000

5000

6000 主応答

3次歪 2次歪

254

オーディオインタフェースのDA付属のローパスフィルタ特性の測定例

ADのフィルタと同様

に、通過域平坦特性

を狙うため、fs/2 で

も減衰が小さく、

fs/2 の 10%程度で、

逆折り返し( fs/2 以

上の成分 )が発生

周波数 [fs/2]

255

UA-1EX の DA系のLPFの振幅特性

DA の逆折り返し

ディジタル

正弦波

AIF

(DA+LPF)

例) fs = 48kHz → fs/2 =24kHz

23kHz の正弦波をPCから出力

AIF出力は、23kHzの正弦波+25kHzの正弦波

周波数 [fs/2]

23k25k

離散信号のスペクトル→ 周期スペクトル

fs0

256

0dB

-20dB

時間t

周波数f

0

up-TSP

fs/2

逆折り返しの影響の例 [4.10]

fs/2 以上の成分が発生

時間t

周波数f

0

up-TSP

fs/2

混変調歪(差の周波数)が発生

雑音の平坦性に影響

257

AIF フィルタの影響回避策

258

・ DA の逆折り返し対策自作の逆折り返し防止フィルタを測定信号に適用

(例えば、fs/2 の90%をカットオフ、100%までを遷移域とするLPF)

ディジタルフィルタとするか、信号の設計段階で、振幅成分を減衰させておく

・ AD の折り返し対策別途、上記仕様のアナログLPFを ADの前段に設置

関連・ 測定信号の一周期目立ち上がりと最後部に

傾斜窓をかけて急激な変化を回避・ 録音信号に低周波騒音が強い場合は

低域除去フィルタ(HPF)の利用が有効

必須ではありませんが、折り返しの影響が無視できない場合は、

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44

DA

6.2.4 AD と DA の直流除去HPF

LPF:折り返し歪防止HPF:直流成分カット

PCLPFHPF

ADLPFHPF

out

in

AIF

259

HPF 時間応答特性 [6.1]

長時間継続する応答

・ 信号波形の立ち上がりが不連続だと、しばらく影響

⇒ 立ち上がりをゆるやかにする意味

0

260

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6Response

Time [s]

方形波が変形立ち上がりのレベルが変動

時間波形の立ち上がり等に影響

261

・ 一周期目を使いたくない理由

6.2.5 DAとADの同期性

DA:インパルス信号

AD:インパルス応答

同期

遅れ

進み

時間進みに見える

時間遅れに見える

② さらに、測定回ごとに時間軸が不一致だと同期加算ができない

① DAとADの同期がとれていない

262

DAとADの同期性が無いと

・ 同期加算・ 応答の絶対時間 が得られない・ 安定した群遅延

PCの状態やDA・ADデータ数によって遅れ時間は異なることがある

DA-AD を直結して、パルス音を発生させて遅延(進み)時間を測定・把握する

(見本プログラム: DA_AD_sync_01.m)

同期加算は、N回分の測定を単一データで行う

263

AD の遅れは問題となる

・ 3周期出力して2周期目を取り出す

・ 左図で失われた部分も回復される

入力(DA)

系の応答(AD)

AD の開始が遅れた場合、

この部分を失う

AD の遅延がほぼ一定の場合は、DAデータの先頭にゼロを付加して調整する事も可能

264

時間

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45

DA

2台のPCで測定する場合

・ 再生場所と録音場所が離れている場合・ PC1 の DA と、PC2 の AD との同期問題に加えて

サンプリング周波数が微妙に違う場合がある

AD

out

in

再生用PC1

録音

再生

録音用PC2

265

サンプリング周波数の違いの影響

時間n0

up-TSP応答

時間n0

インパルス応答

SSの場合の例

逆特性

fs/2

PNの場合の例 雑音の増加?

未検討

266

サンプリング周波数の違いへの対策

・ ズレの計測と補正?正弦波+うなり正弦波+位相特性正弦波+周波数測定

・ 補正はリサンプル?

未検討

267

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび268

6.3 測定結果の評価

・ 測定直後に、測定したインパルス応答の質の

評価(良・不良のチェック)を行うと良い

① SS の場合、系の応答(観測信号)と、時間-周波数特性

の表示が有効

・ 高調波歪、非定常雑音、などの不良現象が検出できる

Time

Fre

quency

0.5 1 1.5 2 2.5 30

1000

2000

3000

4000

5000

6000

-100

-80

-60

-40

-20

0

20スピーカにもよるが、

意外と低い再生レベル

で非線形が発生

低レベルの高調波は

あまり気にしなくても

良いかも269

測定結果の評価

② インパルス応答波形の観察。

聴覚的に気にならない低周波雑音が大きく含まれている場合(時間-周波数特性では見づらい)は、録音後にフィルタで低域カットするのが良い。

PN信号は、非線形誤差と雑音性誤差の区別がしづらい。M系列信号などでは、非線形が発生したら後半にパルス状の雑音

270

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46

その他の評価方法

③ 異なる測定信号での測定結果との比較

SS は次数を変え、PN は位相を変える

2つの測定結果の差が誤差成分

④ 測定したインパルス応答を測定信号とたたみ込んで

観測信号と比較 (波形精度が必要な場合)

逆フィルタ1/S(k)

被測定系H(k)

観測信号s(n)測定信号

+-

インパルス応答h(n)

たたみ込みh(n)

誤差

細かい評価は目的に依存271

「6章 測定時の注意点」 のまとめ

272

・ 聞こえない雑音に注意

・ ADのクリッピング、DAのクリッピングに注意

DAはPN信号の場合

・ ADの折り返し歪、DAの逆折り返し歪に注意

・ 特に、ΣΔ型のAD/DAでは、ほぼ発生するので、

自分の測定の目的に影響が小さいことを確認

・ 対策は、折り返し防止 LPFを自分で用意

・ DAとADの同期性の不良も誤差の原因となる

特にADの遅れ、サンプリング周波数の不一致

・ 測定結果の品質をチェックして、評価しておく

SS の場合、時間周-波数表示(スペクトログラム)

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび273

測定信号が利用できない場合

測定用入力信号を利用できる場合

被測定系

測定用入力信号

PC

出力信号

測定用入力信号を利用できない場合

被測定系

入力信号

PC

出力信号

SS、PN ・ 最小二乗法・ 適応フィルタ・ クロススペクトル

274

最小二乗法

被測定系g(n)

入力信号x(n)

FIR フィルタh(n)

出力信号y(n)

-+

誤差e(n)

・ 入力信号 x(n) と 出力 y(n) は観測できる・ この時、誤差 e(n) の二乗和を最小にするような

FIR フィルタを求める。・ FIR フィルタの係数が、被測定系のインパルス応答g(n)

の近似値となる。275

)(

)0(

0

000

)(00

)1()(0

)2()1()(

)0()1()2()3(

0)0()1()2(

0)0()1(

00)0(

Nx

x

Nx

NxNx

NxNxNx

xxxx

xxx

xx

x

行列算法 (たたみ込み行列 X)

信号[x(0), x(1), x(2), x(3), ・・・, x(N-1), x(N)] を縦ベクトルとして、1段ずつずらして並べた行列

X

N:信号長

276

Page 47: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

47

)(

)2(

)1(

)0(

)(0

)(0

)(0

)0()(

)0()1()2(

0)0()1(

000)0(

Lh

h

h

h

Nx

Nx

Nx

xNx

xxx

xx

x

たたみ込み行列演算

L+1

L+1

N+1+L

フィルタベクトル h =[h(0),h(1),h(2), ・・・, h(L) ] との積はたたみ込みになっている

例えば

3行目=x(2)h(0)+x(1)h(1)+x(0)h(2)

X

行列は、縦長行列

L:フィルタ長>予想されるインパルス応答長

277

)(

)2(

)1(

)0(

)(0

)(0

)(0

)0()(

)0()1()2(

0)0()1(

000)0(

)(

)2(

)1(

)0(

Lh

h

h

h

Nx

Nx

Nx

xNx

xxx

xx

x

LNy

y

y

y

たたみ込みを表す行列方程式

y(k)=x(k)*h(k)

y = X h

x と y が与えられた

時、方程式を満たすような未知数 h を求める。

278

L+1

(出力) (入力) (フィルタ)

最小2乗原理に基づく計算法

y = X hX が縦長行列なので、この方程式を満たす解 h は存在しないが、(y-Xh)の2乗誤差を最小にする h は、次式で求められる

yXXXh TT 1

・ (XTX)-1 の逆行列演算の悪条件を避けるために、対角成分に微小量を加算すると良い

・ 想定されるインパルス応答の長さ L が大きすぎる場合、逆行列演算が実行できない場合がある

(対策1) 共役勾配法などの逐次近似演算(対策2) 適応フィルタの利用 279

T: 転置

適応フィルタの利用 [7.1] [7.2]

被測定系g(n)

入力信号x(n)

出力信号y(n)

-+

誤差e(n)

・ 適応フィルタの係数が、被測定系のインパルス応答 g(n)の近似値となる。

適応 フィルタh(n)

280

適応アルゴリズム

α③ h(n+1)=h(n)+ e(n)・x(n)

x(k)Tx(k) +β学習同定法

① x(n) =[x(n), x(n-1), x(n-2), ... , x(n-L)]T

② e(n) = y(n) - h(n) Tx(n)

α:ステップサイズ (0<α≦1)、β:微少量

誤差が十分に小さくなるまで、同一入出力信号を利用してアルゴリズムを繰り返す。その際、αを少しずつ小さくするとよい。

281

クロススペクトル法 [7.3]

被測定系g(n)

入力信号x(n)

出力信号y(n)

N

iN

xx ixixN 0

)()(1

lim)( )()()(0

jgjnxnyj

)()()(0

jgjj

xxxy

入力自己相関関数

N

iN

xy iyixN 0

)()(1

lim)(

入出力相互相関関数

入出力関係

入出力相互相関(y代入)

φxy は φxx と g との畳み込み

282

Page 48: 「インパルス応答計測の基礎」3 時不変系とは x(t) 系 y(t) x(t -τ) 系 y(t -τ) 時間τの後に、同じ入力を入れれば、 同じ出力が出てくる系

48

クロススペクトル法

φxy は φxx と g との畳み込み

これをフーリエ変換して、

Φxy (k)= Φxx (k)・G(k)

これより、被測定系の周波数特性が、

Φxy (k)G(k)=

Φxx (k)

と、求まる。

Φxy (k) はx(n)とy(n)のクロススペクトルと呼ばれる。

Φxy (k)

Φxx (k)

有限長の相互相関のDFT で近似

有限長の自己相関のDFT で近似

ペリオドグラム(平均スペクトル)として求める方法もある 283

「7章 測定信号が利用できない場合の測定」のまとめ

284

・ 最小二乗法

正確だが、演算量が必要

・ 適応フィルタ

もっとも簡単

・ クロススペクトル法

目次

1.インパルス信号とインパルス応答1.1 インパルス信号1.2 インパルス応答と線形系1.3 離散時間系のインパルス応答

2.インパルス応答の測定原理2.1 DFT の性質2.2 測定信号を用いた測定

3.代表的測定信号3.1 測定信号と測定誤差3.2 測定信号の分類3.3 TSP

3.3.1 TSPの定義3.3.2 TSPの時間-周波数特性3.3.3 TSPの高調波歪

3.4 Log-SS3.4.1 Log-SSの定義3.4.2 Log-SSの高調波歪

3.5 M系列信号3.6 適応形スペクトルを持った信号

3.6.1 雑音白色化信号

3.6.2 雑音最小化信号3.6.3 SN比を一定とする信号

3.7 所望スペクトル信号の合成3.8 同期加算

4.測定の誤差要因4.1 定常雑音4.2 非定常雑音4.3 非線形性4.4 測定誤差のトレードオフ関係4.5 時変性(風・スピーカ)

5.測定信号による雑音抑圧効果5.1 雑音抑圧効果5.2 インパルス応答の切り出し

6.測定時の注意点6.1 録音時の雑音6.2 AD・DA などの注意点6.3 測定結果の評価

7.測定信号が利用できない場合の測定(最小二乗法、適応フィルタ、クロススペクトル)

8.むすび285

むすび (1)

・ 欲しいのはインパルス応答か、周波数特性か

・ エネルギ曲線がわかれば良い(残響時間など)

・ 波形を正確に測定したい (許容誤差)

・ 非線形特性が含まれても良い、困る

・ 雑音区間の情報を利用するか? (残響時間、雑音低減)

・ 測定に要する時間 はできるだけ短くか、こだわらないか

・ SN比は低い、比較的高い、高い

・ スピーカの非線形の大小

・ 非定常雑音 有無

・ 風の影響 有無

・ インパルス応答は長い、短い

測定信号の選択や評価は、目的や環境に依存する

286

目的

環境

むすび (2)

例えば、

非定常雑音が存在 → PN が適

風・時変の影響 → PNは雑音レベルが上昇

→ 残響時間には不適

→ 波形精度はSSよりPNが上

など、

詳細な指針は今後の課題

測定信号の選択や評価は、目的や環境に依存する

287

むすび (3)

◇ 一般的には Log-SS の利用が望ましいと思える

・ 平均的な室内騒音に対して、最適(雑音最小)に近い

・ 高調波歪の影響を取り除きやすい

◇ 測定結果は、時間-周波数特性(MATLAB= spectrogram )

で確認を! (解決困難な誤差はご相談ください)

◇ (私の)今後の課題

・ インパルス応答測定技術の情報の集積と整備

(原理、ノウハウ)

・ 要求に応じた、測定信号選択フローの作成

・ 要求条件、測定上の問題点、の収集

(ご協力依頼)(情報提供 Web ページ)288