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「公明党ICT社会推進本部2017提言」 平成29年5月19日 公明党ICT社会推進本部 少子高齢化の進展と同時に都市部への人口集中が進むわが国において、物理 的な距離や時間等の制約を克服し、地域の創意工夫を活かした様々なサービス の展開や新産業の創出を可能とする情報通信技術(ICT)に大きな期待が寄 せられている。 公明党ICT社会推進本部は、“情報”の価値は人間が責任を持って最終判断 を下し、国民の幸福のために活用しなければならない――すなわち「人間中心 のICT社会」を根本理念とすべきという考えに基づき、人間によるサービス・ 付加価値に対価が支払われる社会を展望している。 当本部では、ICTの社会実装と官民データの利活用によって、わが国の経 済成長、地方創生を牽引するとともに、人々が住み慣れた地域で健康を維持し、 いくつになっても社会で活躍できる暮らしを支援し、すべての国民にとって安 心・安全で持続可能な社会を実現することを目指して調査研究を進めてきた。 具体的には、いくつになっても元気に働き、地域でも活躍できる活動寿命の 延伸に寄与するものとして、高齢者の移動を支援するための自動運転システム の実用化や、住み慣れた地域で質の高い医療・介護サービスを享受できるよう にすること、在宅雇用など就労機会拡大に向けた支援。また、経済成長、地方 創生に資するものとして、国民の利便性の基盤としてのマイナンバー制度の利 活用の推進、オープンイノベーションの促進による新産業の創出、自治体のI CT化。さらに、情報の安全な運用のためのサイバーセキュリティ対策等につ いて、議論を深めてきた。 ICTによる日本のあらたな発展と繁栄をめざし、「公明党ICT社会推進本 部2017提言」を提示する。

「公明党ICT社会推進本部2017提言」「公明党ICT社会推進本部2017提言」 平成29年5月19日 公明党ICT社会推進本部 少子高齢化の進展と同時に都市部への人口集中が進むわが国において、物理

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「公明党ICT社会推進本部2017提言」

平成29年5月19日

公明党ICT社会推進本部

少子高齢化の進展と同時に都市部への人口集中が進むわが国において、物理

的な距離や時間等の制約を克服し、地域の創意工夫を活かした様々なサービス

の展開や新産業の創出を可能とする情報通信技術(ICT)に大きな期待が寄

せられている。

公明党ICT社会推進本部は、“情報”の価値は人間が責任を持って最終判断

を下し、国民の幸福のために活用しなければならない――すなわち「人間中心

のICT社会」を根本理念とすべきという考えに基づき、人間によるサービス・

付加価値に対価が支払われる社会を展望している。

当本部では、ICTの社会実装と官民データの利活用によって、わが国の経

済成長、地方創生を牽引するとともに、人々が住み慣れた地域で健康を維持し、

いくつになっても社会で活躍できる暮らしを支援し、すべての国民にとって安

心・安全で持続可能な社会を実現することを目指して調査研究を進めてきた。

具体的には、いくつになっても元気に働き、地域でも活躍できる活動寿命の

延伸に寄与するものとして、高齢者の移動を支援するための自動運転システム

の実用化や、住み慣れた地域で質の高い医療・介護サービスを享受できるよう

にすること、在宅雇用など就労機会拡大に向けた支援。また、経済成長、地方

創生に資するものとして、国民の利便性の基盤としてのマイナンバー制度の利

活用の推進、オープンイノベーションの促進による新産業の創出、自治体のI

CT化。さらに、情報の安全な運用のためのサイバーセキュリティ対策等につ

いて、議論を深めてきた。

ICTによる日本のあらたな発展と繁栄をめざし、「公明党ICT社会推進本

部2017提言」を提示する。

- 1 -

目 次

Ⅰ.国と地方の行政改革 .................................................................................................... - 3 -

出生から死亡まで、行政手続きのワンストップ化の実現(電子政府の推進) ............. - 3 -

自治体クラウドの戦略的推進 ....................................................................................... - 3 -

自治体クラウド導入に必要な特別の支出に対する財政措置 ......................................... - 3 -

地域情報プラットフォームの普及 ................................................................................ - 4 -

公的データのデジタル化推進とデータ利活用 ............................................................... - 4 -

Ⅱ.科学技術イノベーション・生産性向上 ......................................................................... - 5 -

AIの基礎研究・社会実装の推進 ................................................................................ - 5 -

データセンターの整備促進 ........................................................................................... - 5 -

医療等ID制度の導入 .................................................................................................. - 5 -

がんの個別化医療の確立への情報活用基盤整備(ゲノム情報の利活用) .................... - 5 -

8K画像を活用した病理診断システム等の展開(8Kの利活用促進) ........................ - 6 -

医療データの利活用の推進 ........................................................................................... - 6 -

AIロボットを活用した負担軽減 ................................................................................ - 6 -

地域の医療や介護を支えるICTの導入促進 ............................................................... - 6 -

未病の認知や予防のための情報還元 ............................................................................. - 6 -

FinTech の活性化 ......................................................................................................... - 6 -

中小企業のICT化による生産性向上支援 .................................................................. - 7 -

ITSの社会実装の促進(自動走行システムの実用化) ............................................. - 7 -

倉庫のAI化による物流の効率化(物流改革) ........................................................... - 7 -

ICT社会の法的インフラ・組織の整備(法的インフラの整備) ............................... - 7 -

Ⅲ.経済の活性化・働き方改革 .......................................................................................... - 8 -

地方における IoT サービスの創出・展開 ..................................................................... - 8 -

- 2 -

マイナンバーカードの利活用の促進(マイナンバーカードの普及) ........................... - 8 -

政府系APIの整備と観光イベントポータルサイトの開設 ......................................... - 8 -

ICT企業の働き手をまもる ....................................................................................... - 8 -

テレワークのためのサテライト・オフィスの整備促進 .................................................. - 9 -

ふるさとテレワークの推進の強化 ................................................................................ - 9 -

保育園等の業務ICT化(保育士の負担軽減) ........................................................... - 9 -

離島等の条件不利地域における超高速ブロードバンド整備 ......................................... - 9 -

Ⅳ.国民生活の安全・安心の確保 ...................................................................................... - 10 -

「人間中心のICT社会」構築に向けた人材育成の在り方と倫理 ............................. - 10 -

ICT人材を育成するための教育環境の整備 ............................................................. - 10 -

ICT人材の育成強化 ................................................................................................ - 10 -

サイバーセキュリティ人材の育成強化 ....................................................................... - 10 -

重要インフラ等の情報連携ができる仕組みの構築・運用 ........................................... - 11 -

IoT サイバーセキュリティ安全安心基準認定 ............................................................. - 11 -

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた体制整備 ............... - 11 -

社会弱者のICT利用支援(デジタルディバイド対策) ........................................... - 11 -

高齢者など避難困難者の災害対策支援(大規模災害対策) ....................................... - 12 -

災害時の通信手段の確保 ............................................................................................ - 12 -

個人データの円滑な越境移転のための環境整備(国際協力の推進) ......................... - 12 -

個人情報保護委員会の体制整備 .................................................................................. - 12 -

- 3 -

Ⅰ.国と地方の行政改革

出生から死亡まで、行政手続きのワンストップ化の実現(電子政府の推進)

超少子高齢化が進む中、国民負担を軽減するため、出生届から介護や相続手続

き、死亡届などの煩雑な申請・届出等の手続きを1箇所で完結できるワンストッ

プ化を実現する。

そのため、ワンストップ化に向けた行政手続全体の棚卸しを実施するともに、

その結果を踏まえて、バックオフィス連携による必要書類の省略化など自治体の

取組みを支援する制度・事業を創設する。

例えば、多忙な子育て世代支援に係る「子育てワンストップサービス」で対応

するメニューを拡充するとともに、今後特に手続き件数の増加が見込まれる介護

等の高齢者福祉に係る手続きや死亡に伴う相続手続きなどの各種手続きについ

て、マイナポータルを活用したオンライン手続きを可能とすること。

また、相続手続きなどの簡素化を推進するため、マイナポータルと民間のオン

ラインサービスとのAPI連携やマイナポータルの利便性向上を早期に実現す

ること。併せて、戸籍のマイナンバーへの紐付けについて早急に検討し結論を得

ること。

【参考】児童手当対象受給者数:約 1,043万人(2015年度)

保育所等利用児童数:約 237万人(2015年度)

要介護(要支援)者数:約 606万人(2014年度末時点)

死亡者数:約 130万人(2015年度)

自治体クラウドの戦略的推進

地方自治体の情報システムに係る運用経費を削減することに加え、セキュリテ

ィ水準の向上や災害時における業務継続性を確保するため、自治体クラウドの導

入を推進する。

行政手続きの簡素化やICT化などを一体的かつ戦略的に進めるための自治

体の体制強化を図る。そのため、自治体にCIO(最高情報責任者)の設置を進め

るとともに、対象とするべき重点分野の幅広い選定と規制・行政手続きコストの

削減目標(3割削減)達成にむけて取組みを推進する。

自治体クラウド導入に必要な特別の支出に対する財政措置

自治体において、クラウド導入する場合、例えばデータ移行に要する経費が負

担となる等、クラウド化が進まないケースがある。こうした特別の支出について

必要な財政支援をさらに充実すること。

【参考】現行の特別交付税措置(データ移行経費について措置)

総務大臣が調査した額×0.5×財政力補正

- 4 -

地域情報プラットフォームの普及

業務・システムの効率化による行政コストの削減を推進するため、様々な行政

システム間の連携(電子情報のやりとり等)を可能にする地域情報プラットフォ

ームの普及を図る。その際、各システムが準拠すべき業務面や技術面のルールの

標準化を進めること。

地域情報プラットフォームの普及については、住民基本台帳や税関係の分野で

は普及が進んでいる一方、福祉分野などにおいて十分に普及していない。今後、

地方自治体向けの説明会、専門家の派遣等による取組みを推進し、特に住民生活

に近い障がい者福祉や児童手当等福祉分野での普及を促進すること。

公的データのデジタル化推進とデータ利活用

農林水産業、インフラ管理など様々な分野における公的データのデジタル化と

オープンデータ化を進めるとともに、API連携による利用環境の整備を促進す

ること。

自治体が保有する個人データの活用を推進するためには、個人情報保護条例に

おいて非識別加工情報を提供するための仕組みを導入することが必要であり、モ

デル条例を提示するとともに、自治体共通の提案受付窓口や非識別加工情報の作

成を委託する仕組みを検討すること。また、整合的なルールの下で、非識別加工

情報が提供されるよう、法整備を含め検討を進めること。

- 5 -

Ⅱ.科学技術イノベーション・生産性向上

AIの基礎研究・社会実装の推進

AI(人工知能)研究については、脳科学の知見を活かした次世代AIの開発

などの基礎研究から、社会実装に向けた応用研究まで、産官学一体となって推進

するため、情報通信研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所の3つの人工

知能研究センターを中心に、民間企業と大学の研究機関と積極的な連携を図るこ

と。

また、企業・研究機関においては、若手研究者がリーダーとして活躍できるよ

うな体制の整備を促進すること。

政府においては、関係機関と連携し、国際会議に積極的に参画し、最先端の技

術動向の国内へのフィードバック、国際標準化に向けた議論をリードすること。

【補足】現在研究開発が著しい特化型(非自立型)AIの社会実装を促進するため、

AI開発ガイドラインの策定に向けては、汎用型(自立型)AIと立て分

けた議論を行うこと。

データセンターの整備促進

情報安全保障等の観点から日本国内においても、データセンター整備を促進す

ること。併せてサーバー、ネットワーク、セキュリティ等のインフラの運用を支

える人材の確保に向けた取組みを推進する。

医療等ID制度の導入

医療等ID制度の導入により、全国の医療機関間で必要に応じて患者情報を共

有可能とし、医療の質の向上、効率的な医療の提供を目指すととともに、長期に

わたる患者の医療情報を収集・分析し、ビッグデータとして活用することで国民

の健康増進の医療の質の向上を実現すること。

オンラインによる資格確認の他、保険者間の検診データの連携、医療機関・介

護事業者等の連携、健康・医療の研究分野、健康医療分野のポータルサービス、

全国がん登録等を円滑に進めるための医療等IDの活用環境を整備すること。

がんの個別化医療の確立への情報活用基盤整備(ゲノム情報の利活用)

日本人の死因の第1位であるがんの克服をめざし、免疫療法やゲノム医療など、

最先端の治療方法を確立するため、臨床研究の拠点化を図りゲノム情報に基づい

た個別化医療を確立するためのゲノムデータを蓄積し人工知能等を用いて解析

する情報基盤の整備と強化を促進すること。また、集約した情報を活用し革新的

な医薬品・治療法等の開発を推進すること。

- 6 -

8K画像を活用した病理診断システム等の展開(8Kの利活用促進)

8Kカメラで撮影した皮膚や細胞の超高精細画像を基に、AIが分析する仕組

みによる、病気や病理の診断システムの実用化の加速。また、8K技術の応用に

よる遠隔診療ネットワークの構築を進めること。

AIによる診察支援や8K技術の応用による遠隔診療、ウェアラブル機器、セ

ンサー等の活用による在宅の患者情報のモニタリングなど、医療分野における

IoTの活用を推進する。

医療データの利活用の推進

AIを活用する基盤整備のためのデータ整備を推進するとともに、画像データ

やCT等による医療被爆の管理等、医療検査体制の質の向上を図ること。

AIロボットを活用した負担軽減

AI、IoT、ビッグデータ等の技術が進展する中、高齢者福祉施設等で利用さ

れているコミュニケーションロボットを高度化するための対話型AIシステム

の実現に取り組むとともに、例えば、AI搭載ロボットにより、疾病の早期発見、

介護予防の支援、介護負担の軽減、高齢者や女性の体力サポート、障がい者サポ

ート等に資するサービス展開を促す総合的な支援制度を創設すること。

地域の医療や介護を支えるICTの導入促進

日々の脈拍や体温、血中酸素濃度、さらにはトイレでの尿検査などを自動計測

し異変を察知する健康管理システム等の普及促進や、自宅の近くで専門医の診断

や、保健師の保健指導等を受けることができる、遠隔診断や遠隔保健指導など、

地域の医療や介護を支えるICTの導入のための、総合的な制度設計を進めるこ

と。

未病の認知や予防のための情報還元

医療個人情報のビッグデータを活用した効率的な治療方法の研究などに役立

てられることが期待される中、医療情報を提供した各個人にも、生活習慣の改善

を含めて疾病予防のためのアドバイス等有益な情報が還元される仕組みを構築

すること。さらに、生活習慣病の合併症予防を含む重症化予防や感染症を原因と

するがんの予防など、先進的なデータヘルス事業の全国展開を加速させること。

FinTechの活性化

FinTechに関わる革新的なサービス・技術群(スマート認証、API連携、ブ

ロックチェーン等)を金融分野のみならず広く実用化され活用されるよう促進す

るため、日本版レギュラトリー・サンドボックスや IoT推進ラボ、FinTechサポ

ート・デスクなどの環境整備を行うこと。また、金融データ・ポータビリティに

- 7 -

関するルール整備、FinTech人材の確保に資する兼業副業等のルール整備を行い

更なる市場の活性化を促進すること。

中小企業のICT化による生産性向上支援

中小企業のICT導入を支援・促進するため、クラウドシステムを始めとする

ICTツールの導入に関して中長期的に安定して適切なサービスを提案でき、安

心して相談出来る代理店を「優良クラウド代理店(仮称)」として認定する制度

の創設を検討すること。

その際、中小企業経営者の目から見て、自社製品・サービスの付加価値向上や

バックオフィス業務の合理化に資するICTシステムとはどのようなものなの

か、業務・業態ごとに具体的にイメージできる成功事例を積み上げ広く周知する

こと。

また、クラウド導入やセキュリティ強化への投資を拡大するため、サービス等

生産性向上ICT導入支援事業の対象を拡大すること。

ITSの社会実装の促進(自動走行システムの実用化)

情報通信技術を用いて「人」「道路」「車両」を結び、一体のシステムとして構

築することにより、交通事故削減や渋滞解消、環境効率の向上といった道路交通

問題の解決を図るITS[Intelligent Transport Systems](自動走行システム )

の実用化に向けた取り組みを加速すること。

自動走行・安全運転支援の実現に必要となるダイナミックマップのうち協調領

域部分に関して、全国自動車専用道路並びに一般道での実運用に向けたデータ仕

様やメンテナンス手法等に関する立案、関係各位との調整及び実証を行うととも

に、永続的な維持整備を行うことを前提とした事業性に関する企画検討も進める

こと。

倉庫のAI化による物流の効率化(物流改革)

宅配需要が大きく伸びる一方で、配達員の人員不足が大きな課題となっている

現場において、倉庫内管理をAIロボットに代替させることで、人員の負担軽減

を図り、物流効率化を図るシステムの導入を支援する制度や事業を創設すること。

ICT社会の法的インフラ・組織の整備(法的インフラの整備)

自動走行や物流ロボットシステムの実現が加速する中、その運航や運用の責任

の在り方を早急に検討し、損害保険等の整備などを並行して推進すること。

さらに、新規・既存のICTを活用したサービスや製品・商品等が適法である

ことを、社会の変化やニーズに即応性を持って判断し、事業者が安心して事業活

動を行える法的インフラを整備すること。また、そのための体制を整備すること。

- 8 -

Ⅲ.経済の活性化・働き方改革

地方における IoTサービスの創出・展開

IoTサービスの創出・展開のため、様々な資産のシェアリングエコノミー等に

ついて、導入を推進すべき事業分野と具体的な利活用事例を発掘するとともに、

社会実装にむけて必要な場合には速やかにルール整備を進めること。また、個人

の関与の下でデータの流通・活用をすすめる、いわゆる情報銀行について、ルー

ル整備を検討すること。

IoTを活用した地域ブランドの創出、ビッグデータを活用した農林水産業のス

マート化など、様々な分野で IoTの活用を促すための支援事業を拡充すること。

マイナンバーカードの利活用の促進(マイナンバーカードの普及)

マイナンバーカードのICチップ部分を活用し、登録されたマイキーIDに、

様々なID(図書館カードID、地域ポイントカードID等)を紐づけるマイキ

ープラットホームの利用拡大による、マイナンバーカードの多機能化を推進する

こと。

また、マイナンバーカードを活用した、電子委任状、チケットレス化、子育て

ワンストップ、身分証としての活用などの公的個人認証機能の利活用拡大及び個

人番号カードアプリケーション搭載システムの運用拡大や、スマートフォン、テ

レビといったマイナンバーカードを活用できるアクセス手段の拡大を図ること。

政府系APIの整備と観光イベントポータルサイトの開設

民間企業が利活用できる政府系APIプラットフォームの整備を推進すると

ともに、外国人観光客への対応を強化するための多言語対応音声翻訳の制度向上、

社会実装を推進すること。

また、API機能を活用して外国人観光客の需要に応え、地域振興を図るため

にも、全国で行われる文化・芸術等の行事を収集し、一元的に紹介するポータル

サイトを開設すること。

多言語に対応し、チケット予約を同時に行えるシステムの併用も含め、ゴール

デンルート以外の観光地にも、多くの観光客を呼び込む施策を展開すること。

ICT企業の働き手をまもる

ユーザ企業からの要件定義が曖昧なため、ユーザ企業からの要求が変更に変更

を重ねたにも関わらず、納期を厳守するために長時間労働で対応する、というこ

とが常態化している。

ICT企業における労働者の長時間労働を抑制するために、ユーザ企業とベン

ダーとの契約の内容にまで踏み込み、要件定義に関わる変更があった場合には、

追加費用や納期の延長、機能の見直し等の規定を設ける「要件定義の精度向上」

- 9 -

を推進すること。さらに、下請けガイドラインの周知徹底を図るとともに、要件

変更に伴う費用や納期等の在り方についてガイドラインの見直しを含めた検討

を行うこと。

テレワークのためのサテライト・オフィスの整備促進

地方都市や居住地域でのテレワークを可能にする安全なネットワーク環境を

備えたオフィス等(サテライト・オフィス、テレワーク・センター)の普及促進を

図ること。

【補足】まず、各省庁から、①はじめに個人の専有物をパソコン等の端末に限定

し、作業机等は自由に選択できるオフィスのフリーアドレス化を進め、

②次に自宅付近のサテライト・オフィス、テレワーク・センターでの業

務の実施に取り組みながら、2020年の夏までには首都圏の民間企業も

含め、テレワークの定着を図ること。

ふるさとテレワークの推進の強化

都市部から地方への人や仕事の流れの創出を促進し、柔軟な働き方や地方創生

を実現するとともに、高齢者や障がい者等の働く場の確保を進めるため、ふるさ

とテレワークの推進を強化するために、地域実証の成果を検証の上、地域の実情

に応じた形で全国展開を図ること。

保育園等の業務ICT化(保育士の負担軽減)

保育士は児童ひとりひとりの保護者への連絡帳や保育日誌を毎日手書きで作

成するなど、書類作成業務に多くの時間を費やしている現状がある。保育士の確

保と負担軽減を図るため、連絡帳等の業務をクラウド化し、効率化を図るととも

に、タイムリーに情報を共有できる利便性と保護者の安心につながるシステムの

導入支援の制度や事業を進めること。

離島等の条件不利地域における超高速ブロードバンド整備

地域の活性化を図る上で必要不可欠な超高速ブロードバンド基盤の整備を推

進するため、離島等の条件不利地域を有する自治体が、光ファイバ等の超高速ブ

ロードバンド基盤を整備・確保するための支援を引き続き行うこと。

- 10 -

Ⅳ.国民生活の安全・安心の確保

「人間中心のICT社会」構築に向けた人材育成の在り方と倫理

将来、単純労務作業はロボットで代替され、人間は創造の分野にまつわること

が予想されるが、そうしたAIが広く社会実装された社会の到来を見据えて、情

報を取扱う者の倫理を規定するガイドライン等の作成を検討するとともに、いま

の子どもたちに対する新しい能力開発や技術の利用を念頭に置いた学校教育の

在り方について検討を進めること。

【補足】AIはあくまで道具にすぎず、人間が責任をもって使いこなすことが大

前提と考える。誤った使い道に走らないよう、適切な教育の推進や開発

や利用における倫理を規定することが必要と考える。

ICT人材を育成するための教育環境の整備

あらゆる分野において、新たなイノベーションを生み出すために、必要不可欠

な道具とも言えるICTやAI等を自在に活用できる人材を育成するため、初等

中等教育から研究者レベルまで包括的に、情報活用能力等を開発する教育と、そ

れに必要な環境整備を行うこと。

ICT人材の育成強化

サイバーセキュリティ等の研究開発を促進し、インフラ防護やセキュリティ、

ネットワークの運用・管理に従事する担い手人材の育成するためには、産官学一

体となって取り組む必要がある。そのため、大学における寄附講座開設やリカレ

ント教育を含めた取組みを推進・強化するとともに、「専門職大学」を制度化す

ること等により、高い職業意識と技能・技術を身につけた人材を育成すること。

大学や企業と連携しデータサイエンティストなどの高度な研究開発人材の育成

を進めること。

ICTやAI技術の積極的な活用に向けて、幅広い世代へのICT教育の推進

とともに、日本におけるCIO(最高情報責任者)の地位向上と活躍の場を拡げ

るために、地域の優れたCIO等を認定・表彰するなどCIO育成の取組みを推

進すること。

サイバーセキュリティ人材の育成強化

「サイバーセキュリティは全員参加」の観点から、ナショナルサイバートレー

ニングセンターや産業サイバーセキュリティセンターにおける専門家養成事業

の強化をはじめ、各企業・各省庁において、セキュリティ担当以外の一般社員・

職員におけるリテラシー向上のための取り組みを推進すること。

特に、行政機関等を標的にしたサイバー攻撃に対処するため、省庁において有

為な人材を確保することが不可欠であり、民間企業との人材流動性を高めること

- 11 -

ができるルール整備を推進すること。

経営層が考えるビジネス戦略を理解した上でサイバーセキュリティの企画・立

案を行うことができ、実務者層に指示を出せる「橋渡し人材」の育成に取り組む

こと。

【補足】これまでの人材育成の取組みは継続しつつも、さらに必要な部分につい

て強化を行うことが必要である。また、各省庁においては、有為な人材

を確保するために、処遇や勤務時間等の条件面で民間企業との人材獲得

競争ができる環境を整備する必要もあると考える。

重要インフラ等の情報連携ができる仕組みの構築・運用

重要インフラ事業者やセキュリティ企業とNISC等の官・民が、インシデン

ト情報やその脅威情報、ヒヤリハット事案を集約・分析しながら連携ができる仕

組み「セキュリティリスク情報連携プラットフォーム(仮称)」を構築し運用す

るための体制の整備を早急に進めること。また、情報連携が効果的に行われるた

めに、必要な権限や法整備について整理を行うこと。

IoTサイバーセキュリティ安全安心基準認定

様々なセンサーや電化製品等がインターネットにつながり自動的に動き働く

IoT社会において、IoT製品等を安心して購入し、安全に利用するためには、サ

イバー空間の衛生を確保する国民的取組みと、セキュリティ・バイ・デザインの

考え方が重要であることから、IoT製品等に対するセキュリティ規格の確立と規

格基準を認定する体制を早期に整備すること。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた体制整備

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、AI基盤技

術を活用した自動翻訳、高速無線LAN、4K・8Kやマイナンバーカードを利

用したチケットレス入場システムなど先端技術を実装したデジタルスタジアム

の整備等を推進し、世界最先端のショーケースを構築すること。

また、これまで重要サービス分野における事業者のリスク評価の実施を行って

きたところであるが、さらに専門家による助言を踏まえて戦略的リスク評価を行

い、必要な情報の特定や評価手法を検討する必要がある。その上で、それを検証

できる体制を整えること。

社会弱者のICT利用支援(デジタルディバイド対策)

ICT機器やサービスの高度化の一方で、それらを使いこなせずに取り残され

る高齢者、障がい者、主婦などもICTによる利便性を享受できるよう、相談窓

口の整備や、相談員(メンター)が利用方法の相談に応じたり、説明したりする

仕組みを構築すること。

- 12 -

高齢者など避難困難者の災害対策支援(大規模災害対策)

災害発生時において、社会弱者である高齢者や障害者等の避難活動や避難所で

の救援活動を円滑かつ確実に行うことも想定し、自治体を含め、適切で確実な避

難指示や避難所開設情報の発信、並びにデータに基づく迅速で的確な救援活動を

展開するための被害状況や避難状況等の情報の収集や共有のためのシステムを

構築すること。

災害時の通信手段の確保

災害時、携帯電話の途絶を想定した非常用通信手段の確保に向けて、公衆無線

LAN環境の整備やドローン等を活用した通信エリアの確保に向けた取組み等

を推進すること。

個人データの円滑な越境移転のための環境整備(国際協力の推進)

個人データの円滑な越境移転のための環境を整備するため、個人情報保護委員

会を中心に政府全体で取り組む必要がある。英国のEU離脱の影響について注視

しつつ、日・EU間の相互の円滑な個人データ移転を図る枠組みの構築や、AP

ECの越境プライバシールール(CBPR)システムの普及推進等について、引

き続き戦略的に取り組むこと。

個人情報保護委員会の体制整備

改正個人情報保護法の円滑な施行、特定個人情報の更なる適正な取扱いの確保

などを図るため、引き続き個人情報保護委員会の体制整備に取り組むこと。

以上

公明党ICT社会推進本部

総合本部長 斉藤 鉄夫

副総合本部長 石田 祝稔

本部長 高木美智代

兼・個人情報保護及びマイナンバー制度推進委員会委員長

事務局長 輿水 恵一

サイバーセキュリティ戦略委員会委員長 遠山 清彦

地方自治体ICT推進委員会委員長 山本 博司

新産業委員会委員長 濱村 進