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有機化合物の基礎 (2)
官能基
分子間相互作用
1
官能基官能基 化合物 接頭語 接尾語
炭素・水素以外の原子を含むもの
カルボン酸 カルボキシ ~酸
炭素・水素以外の原子を含むもの
アルデヒド ホルミル ~アール
炭素・水素以外の原子を含むもの
ニトリル シアノ ~ニトリル炭素・水素以外の原子を含むもの
ケトン オキソ ~オン炭素・水素以
外の原子を含むもの
アルコール ヒドロキシ ~オール
炭素・水素以外の原子を含むもの アミン アミノ ~アミン
炭素・水素以外の原子を含むもの
エーテル ~オキシ -
炭素・水素以外の原子を含むもの
ハロゲン化アルキル フルオロ・クロロ・ブロモ・ヨード -
炭素・水素原子のみを含むもの
アルケン - ~エン炭素・水素原子のみを含むもの
アルキン - ~イン炭素・水素原子のみを含むもの 共役ジエン - ~ジエン
炭素・水素原子のみを含むもの
芳香環 - -
CO
OH
CO
H
C N
CO
OH
NH2
O
X
C C
C C
C CC C
2
官能基の特徴:カルボキシ基
CO
OH
化合物の種類官能基の名称
カルボン酸カルボキシ基
命名法 カルボキシ~, carboxy-(接頭語)~酸, -ic acid(接尾語)
・(有機化合物の中では)強い酸性を持つ・-OH の部分を ハロゲン, -OR, -NH2, -NHR(R はアルキル基)などで置き換えたものは、それぞれ特徴ある性質を示す(「カルボン酸誘導体」として分類)
3
官能基の特徴:ホルミル基化合物の種類官能基の名称
アルデヒドホルミル基
命名法 ホルミル~, formyl-(接頭語)~ァール, -al(接尾語)・「アルデヒド基」とは呼ばない・C が正に強く分極しており、求核剤の攻撃を受けやすい
CO
H
・ケトンと共通する反応が多い
4
官能基の特徴:シアノ基化合物の種類官能基の名称
ニトリルシアノ基
命名法 シアノ~, cyano-(接頭語)~ニトリル, -nitrile(接尾語)
・「CN」というまとまりで、電気陰性度の高い置換基のように振る舞う(ハロゲンと似ている:「擬ハロゲン」)・実はカルボン酸誘導体でもある(加水分解するとカルボン酸になる)
C N
5
官能基の特徴:カルボニル基化合物の種類官能基の名称
ケトンカルボニル基
命名法 オキソ~, oxo-(接頭語)~ォン, -one(接尾語)・カルボン酸やアルデヒドの C=O も「カルボニル基」と呼ぶ(「カルボニル基」=ケトンではない)・炭素原子に電気陰性度の高い原子が結合している場合はカルボン酸誘導体になる
CO
・アルデヒドと共通する反応が多い
6
官能基の特徴:ヒドロキシ基化合物の種類官能基の名称
アルコールヒドロキシ基
命名法 ヒドロキシ~, hydroxy-(接頭語)~ォール, -ol(接尾語)
・水と同程度の酸性度・求核性を持つ・ベンゼン環に直結すると「フェノール」。アルコールより酸性度は強め、求核性は弱め
OH
7
官能基の特徴:アミノ基化合物の種類官能基の名称
アミンアミノ基
命名法 アミノ~, amino-(接頭語)~アミン, -amine(接尾語)
・アンモニアと同程度の塩基性・求核性を持つ・反応が多様で要注意
NH
H
NR'
R
NH
R
8
官能基の特徴:エーテル化合物の種類官能基の名称
エーテルアルコキシ基、アルキルオキシ基
命名法 **オキシ~, **oxy-(接頭語)・アルコールより少し弱い求核剤だが反応性には乏しい(主に O‒R が切れにくいため)
O R
【名前のつけ方】・アルキル基名称に「オキシ」をつける
CH3O–
プロピルオキシ基CH3CH2CH2O–・慣用名
メトキシ基CH3CH2O–エトキシ基
O
フェノキシ基9
官能基の特徴:ハロゲン化アルキル化合物の種類官能基の名称
ハロゲン化アルキルフルオロ/クロロ/ブロモ/ヨード
命名法
・C‒X が分極しているため、C に対して求核剤の攻撃を受ける(求核置換反応)
フルオロ/クロロ/ブロモ/ヨード
X
10
官能基を持つ化合物の命名法
(2) 主要な官能基を含む、炭素原子の最も長い並びを「主鎖」とする。(主要官能基が主鎖の途中にあってもいい)
(4) 主鎖の名称に接尾語をつける。
(5) 主要官能基以外の置換基を主鎖名の前に置く。 (分岐アルカンの置換基と同じ)
(1) 「主要な官能基」を1種類決める。 この官能基は「接尾語」、その他の官能基は「接頭語」を使って表す。
CH3CHCH2CH2OHCl
↓主鎖(ブタン)
←置換基(クロロ)
←主要な官能基(ヒドロキシ基)1234
ブタン+オール(接尾語)=「1-ブタノール」
「3-クロロ-1-ブタノール」
(3) 主要な官能基の番号がなるべく小さくなるように番号をつける。
11
接尾語を持つ官能基がない場合接尾語を持つ官能基がない場合は、アルカンと同様の命名法に従う
CH2CH2CH2 ClBr
OCH3
OCH2CH3
OCH2CH3
1-ブロモ-3-クロロプロパン
2-メトキシプロパン
1,1-ジエトキシシクロペンタン
(3-ブロモ-1-クロロプロパンではない)
12
【練習問題】次の化合物に系統的名称をつけなさい。
CH3CHCHCH3Cl
OH
OCH3
O
OHNH2
OHOH
13
有機化合物の分子間相互作用
14
有機化合物における分子間相互作用有機化合物の物理的性質(ex. 融点、沸点、溶解度 ...)=分子間相互作用によって支配される
有機化合物の分子間相互作用
双極子相互作用
水素結合
Londonの分散力
15
双極子相互作用 (dipole interaction)
CH3 CH2 CH3
CH3 CO
H
分子量 44.10, 沸点 ‒42.3℃
分子量 44.05, 沸点 20.2℃δ+
δ–
CH3 CO
Hδ+δ–
CH3CO
Hδ+
δ–
�����������
分極した共有結合が持つ正負の電荷による相互作用=双極子相互作用
16
水素結合 (hydrogen bond)
CH3 CH2 O H
CH3 CO
H 分子量 44.05, 沸点 20.2℃
分子量 46.07, 沸点 78.4℃
強く正に分極した水素原子と、ローンペアとの間の部分的な共有結合=水素結合
O H O
������������
����� ��O–H��
δ+ δ–
17
水素結合の供与体と受容体
※ 水素結合は「N, O, F を含む化合物」で特に強い
強く正に分極した水素原子 ローンペア
O H
N H
F H
�������
hydrogen bond donor
O O O
N N NF F
�������
hydrogen bond acceptor
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水素結合を作るかどうか?「水素結合供与体」「水素結合受容体」両方になる官能基の例
CO
OHOH NH2 N
H
「水素結合受容体」になる官能基(供与体にはならない)の例
CO
OO C
O
HN C NC
O
「水素結合供与体」と「水素結合受容体」が両方ある場合に水素結合を作る
19
【練習問題】次の分子の組は水素結合を作るか。
(1) CH3CN と CH3OH(2) CH3CN 同士(3) CH3OH 同士(4) 水と酢酸エチル CH3 C
O
O CH2CH3(5) 酢酸エチル同士(6) ヘキサンと CH3OH(7) ヘキサンと CH3CN(8) ヘキサン同士(9) 酢酸と CH3OH(10) 酢酸同士
20
Londonの分散力 (London dispersion force)CH3 CH2 CH3 分子量 44.10, 沸点 ‒42.3℃, 融点 ‒188℃非極性物質も、温度を下げると液体・固体になる→何らかの分子間相互作用がある
2つの原子
(ある瞬間)引力
(別の瞬間)引力
時間平均すると
分極は残らないが引力は残る
運動する電子/原子核ペア同士の引力による原子間相互作用=London の分散力
・どんな原子間でも働く・原子同士がごく近い場合のみ有意な大きさ・分子間の接触面積が大きいほど大きくなる
21
3つの分子間相互作用(まとめ)
van der Waals 相互作用
相互作用の強さ:水素結合>双極子相互作用>London分散力
Londonの分散力双極子相互作用
水素結合
分極した結合を持つ分子ローンペアと
正に分極した水素原子
※ ただし、London分散力は原子数が多くなると大きくなる
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【練習問題】先ほどの練習問題の分子の組について、次の条件を満たすものを選びなさい。
(A) 相互作用が London 分散力のみである組(B) 相互作用が London 分散力と双極子相互作用のみである組
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沸点・溶解度と分子間相互作用
24
沸点と分子間相互作用
熱エネルギー
液体 気体
物質の沸点:有機化学で重要な性質の一つ(多くの有機反応が溶液中で行われるため)
沸点=液体の蒸気圧が特定の外圧(普通は大気圧)と等しくなる温度
分子間相互作用が大きいほど沸点は高くなる
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物質の溶解度と有機化学物質の溶解度:有機化学で重要な性質の一つ(多くの有機反応が溶液中で行われるため)(反応だけでなく、有機化合物は溶液状態で取り扱うことが多いため)
[反応] [後処理] [単離]
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溶解度と分子間相互作用
Aの周り: Aのみ Sの周り: Sのみ Aの周り: SのみSの周り: AとS
「溶解する」とはどういう現象か?
溶質 溶媒 溶液
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溶解前後の相互作用エネルギーの変化
A
S
混合前 混合後
A-A
S-S
A-S
S-S
溶媒・溶媒相互作用が溶質・溶媒相互作用で置き換わる分
溶媒・溶媒相互作用がそのまま残る分
溶質・溶質相互作用が溶質・溶媒相互作用で置き換わる分
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A
S
混合前 混合後
A-A
S-S
A-S
S-S
A
S
混合前 混合後
A-A
S-S S-S
A-S
溶解度と分子間相互作用溶解する場合 溶解しない場合
相互作用エネルギーが小さくなる→混ざると損!→溶解しない
相互作用エネルギーはあまり変わらないまたは大きくなる→溶解する
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おまけ:エネルギーは「高・低」か「大・小」か
電子のエネルギー、分子のエネルギー:「高い」「低い」(理由:構成粒子[電子・原子核]が相互作用を持たない状態を基準とする絶対値だから)
分子間相互作用のエネルギー:「大きい」「小さい」
(理由:分子が相互作用している状態としていない状態のエネルギーの「差」だから)(この他にも、例えば「活性化エネルギー」も「大・小」で表す=始状態と遷移状態のエネルギー差だから)
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【練習問題】安息香酸がヘキサンに溶けない理由を述べなさい。
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