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公益財団法人地球環境産業技術研究機構 [RITE] バイオ研究グループ □□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 研究機関向け コリネ型細菌 セルロース系 バイオマス 自動車部材 香料・化粧品原料 バイオ燃料 など RITE バイオプロセスによる事業化を目指すベンチャー企業等を2社設立。 (登録済) 技術シーズの解説高収率、時間短縮、システムの簡便性など、 高収率、時間短縮、システムの簡便性など、 優位性に富んだ技術 バイオマス資源を原料に、バイオ燃料や化学品を生産するバイオプ ロセス技術は、世界中で研究開発が進められている。 RITE では、高収量で、高い経済性が期待できる「RITE バイオプロ セス(増殖非依存型バイオプロセス)」という革新的なバイオプロセ スを確立し、多くの特許を取得している。 RITE バイオプロセスの特徴は、高度に代謝設計されたコリネ型細菌 を大量培養し、反応槽へ高密度に充填した後に、増殖を停止させた状態 で反応を行う点にあり、バイオ燃料や化学品の効率的な生産につなが る様々な効果が得られる。微生物の増殖を抑制した状態で化合物を生 産するため、増殖に必要な栄養やエネルギーも不要である。 また、コリネ型細菌の代謝系の改良により、C 6 糖類と C 5 糖類の混 合糖についても、同時にバイオ変換できることを達成し、効率的なセ ルロース系バイオマス利用を可能とした。さらに、 セルロース系バイオ マスの前処理過程において副次的に生成される発酵阻害物質への耐性 が高い点も、他の技術よりも優れた点の1つである。 周辺技術、その他の独自の取組 ラボレベルでは高効率生産が実証済。 RITE では、これまでに約 180 件の特許を出願し、様々な化学材料に ついて他のバイオプロセス技術と比べて高効率に生産できるという実証 データを蓄積してきた。また、バイオプロセスによる生産が難しいと考 えられる自動車部材などに用いられる高強度・高耐熱性プラスチック用モノ マー原料、香料・化粧品原料、医薬品原料など高付加価値な物質をター ゲットに、通常の化学プロセスと同等以上の生産効率を目指した技術開発 を進めている。 さらに、経済産業省「革新的なエネルギー技術の国際共同研究開発事 業」によるバイオ水素やバイオ燃料ブタノール等の開発、NEDO「スマ ートセルプロジェクト」による情報解析システムと融合した微生物によ る生産技術の開発など、世界レベルの先端研究も多数進めている高収率、時間短縮、システムの簡便性など優位性に富み、 セルロース系バイオマス特有の技術課題もクリアする技術 コリネ型細菌の電子顕微鏡上での画像。 コリネ型細菌はうま味調味料の主成分・ グルタミン酸の生産菌。工業用微生物と して広く使用されている RITE バイオプロセスの概念図。反応槽に 代謝改変を施した微生物を高密度に充填 し反応させる。微生物の増殖を停止させ た状態で反応を行うのが、従来法との大 きな違いである 従来法 RITE バイオプロセス ・巨大な 反応槽 ・反応速度 が遅い 事業化の歩み、今後の展開 Green Earth Institute(株)(GEI)は、RITE発のベンチャー企業で あり、非可食バイオマスを原料とするアミノ酸やバイオ燃料の事業化を 目指しており、 アミノ酸の一種である L-アラニンについては、既に商業生産 段階にきている。なお、L-アラニンは、厚生労働省・食品安全委員会によ る評価の結果、食品添加物としての安全性が確認され(2017 年8 月)、 食品添加物としても利用可能となった。 また、RITE は、住友ベークライト(株)と共に設立したグリーンフェノー ル開発(株)※で、同社と協力して培ってきたグリーンフェノール生産技術を 基盤に、各種バイオ化学品の事業化を目指している。 ※2018 年 4 月にグリーンケミカルズ(株)に社名変更 共同研究を通じて、製品のバリエーションを広げていきたい。 近年、バイオマス由来の化学品の製造に関心を持つ企業との共同開発 が増えており、特許の共同出願も多数行っている。また、「もっと私たちの 技術を知ってもらえれば」と、学会発表や論文発表も積極的に行っている共同研究をはじめとする研究開発の積み重ねを通じて、ベンチャー企 業設立など製品化までの道のりが見えてきた現在でも、「製品のバリエー ションを広げていくためにも、今後もいろんな方と共同研究に組んでみたいと、バイオ研究グループのリーダーを務める乾将行氏は意気込みを語る。 公益財団法人地球環境 産業技術研究機構[RITE] バイオ研究グループ 代表者 :グループリーダー/主席研究員 乾将行 所在地 :京都府木津川市木津川台 9-2 設立 :1990 年 活動内容:革新的バイオリファイナリー技術の研究 開発の推進による地球温暖化対策 TEL :0774-75-2308 URL :http://www.rite.or.jp/bio/ RITE が開発したアラニン生産株を利用 して生産された L-アラニンのサンプル。 食品添加物などに使用される 2008 年までは、微生物によるバイオ燃料生産の特許出 願が多くみられたが、 2000 年代の中ごろから、非可食バ イオマスを原料とした用いた RITE バイオプロセスによる有 用化学品生産や、セルロース由来の混合糖利用技術の出 願が増加し、現在まで技術開発を継続している。 さらに、2010 年頃から、バイオ生産は不可能と言われ ていた芳香族化合物を微生物で生産する研究開発を開始 し、関連する特許を多数出願している。これらの芳香族化 合物は、機能性ポリマーや医薬品、化粧品、香料などの原 料として工業的に重要であることから、RITE による特許 の出願及び取得の取組が注目されている。 Keyword セルロース系バイオマスを原料に、コリネ型細菌を用いて高効率に化学品などを生産する独自技術。 約 180 件の特許を出願済。自動車部材、香料・化粧品原料などの材料を狙い、技術開発に取り組む。 ベンチャー企業等を2社設立し、RITE バイオプロセスの事業化を目指した開発を実施中。 バイオプロセスによる生産が難しい高付加価値材料をター ゲットに技術開発。世界レベルの先端研究も多数実施。 乾将行さん(グループリーダー) 企業との信頼関係が深まり、長期間に渡 り連携する企業も増えてきたという 関連するキーワードマップ キーワード: RITE におけるこれまでの技術展開

事業化の歩み、今後の展開 自動車部材 公益財団法人地球環境 ......公益財団法人地球環境産業技術研究機構 [RITE] バイオ研究グループ

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Page 1: 事業化の歩み、今後の展開 自動車部材 公益財団法人地球環境 ......公益財団法人地球環境産業技術研究機構 [RITE] バイオ研究グループ

公益財団法人地球環境産業技術研究機構[RITE] バイオ研究グループ

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研究機関向け コリネ型細菌

+ セルロース系 バイオマス

自動車部材 香料・化粧品原料 バイオ燃料 など

RITE バイオプロセスによる事業化を目指すベンチャー企業等を2社設立。

(登録済)

技術シーズの解説高収率、時間短縮、システムの簡便性など、

高収率、時間短縮、システムの簡便性など、

優位性に富んだ技術

バイオマス資源を原料に、バイオ燃料や化学品を生産するバイオプ

ロセス技術は、世界中で研究開発が進められている。

RITE では、高収量で、高い経済性が期待できる「RITE バイオプロ

セス(増殖非依存型バイオプロセス)」という革新的なバイオプロセ

スを確立し、多くの特許を取得している。

RITE バイオプロセスの特徴は、高度に代謝設計されたコリネ型細菌

を大量培養し、反応槽へ高密度に充填した後に、増殖を停止させた状態

で反応を行う点にあり、バイオ燃料や化学品の効率的な生産につなが

る様々な効果が得られる。微生物の増殖を抑制した状態で化合物を生

産するため、増殖に必要な栄養やエネルギーも不要である。

また、コリネ型細菌の代謝系の改良により、C6糖類と C5糖類の混

合糖についても、同時にバイオ変換できることを達成し、効率的なセ

ルロース系バイオマス利用を可能とした。さらに、セルロース系バイオ

マスの前処理過程において副次的に生成される発酵阻害物質への耐性

が高い点も、他の技術よりも優れた点の1つである。

周辺技術、その他の独自の取組

ラボレベルでは高効率生産が実証済。

RITE では、これまでに約 180 件の特許を出願し、様々な化学材料に

ついて他のバイオプロセス技術と比べて高効率に生産できるという実証

データを蓄積してきた。また、バイオプロセスによる生産が難しいと考

えられる自動車部材などに用いられる高強度・高耐熱性プラスチック用モノ

マー原料、香料・化粧品原料、医薬品原料など高付加価値な物質をター

ゲットに、通常の化学プロセスと同等以上の生産効率を目指した技術開発

を進めている。

さらに、経済産業省「革新的なエネルギー技術の国際共同研究開発事

業」によるバイオ水素やバイオ燃料ブタノール等の開発、NEDO「スマ

ートセルプロジェクト」による情報解析システムと融合した微生物によ

る生産技術の開発など、世界レベルの先端研究も多数進めている。

高収率、時間短縮、システムの簡便性など優位性に富み、

セルロース系バイオマス特有の技術課題もクリアする技術

コリネ型細菌の電子顕微鏡上での画像。

コリネ型細菌はうま味調味料の主成分・

グルタミン酸の生産菌。工業用微生物と

して広く使用されている

RITE バイオプロセスの概念図。反応槽に

代謝改変を施した微生物を高密度に充填

し反応させる。微生物の増殖を停止させ

た状態で反応を行うのが、従来法との大

きな違いである

従来法

RITE バイオプロセス

・巨大な

反応槽

・反応速度が遅い

事業化の歩み、今後の展開

Green Earth Institute(株)(GEI)は、RITE 発のベンチャー企業で

あり、非可食バイオマスを原料とするアミノ酸やバイオ燃料の事業化を

目指しており、アミノ酸の一種である L-アラニンについては、既に商業生産

段階にきている。なお、L-アラニンは、厚生労働省・食品安全委員会によ

る評価の結果、食品添加物としての安全性が確認され(2017 年 8 月)、

食品添加物としても利用可能となった。

また、RITE は、住友ベークライト(株)と共に設立したグリーンフェノー

ル開発(株)※で、同社と協力して培ってきたグリーンフェノール生産技術を

基盤に、各種バイオ化学品の事業化を目指している。

※2018 年 4 月にグリーンケミカルズ(株)に社名変更

共同研究を通じて、製品のバリエーションを広げていきたい。

近年、バイオマス由来の化学品の製造に関心を持つ企業との共同開発

が増えており、特許の共同出願も多数行っている。また、「もっと私たちの

技術を知ってもらえれば」と、学会発表や論文発表も積極的に行っている。

共同研究をはじめとする研究開発の積み重ねを通じて、ベンチャー企

業設立など製品化までの道のりが見えてきた現在でも、「製品のバリエー

ションを広げていくためにも、今後もいろんな方と共同研究に組んでみたい」

と、バイオ研究グループのリーダーを務める乾将行氏は意気込みを語る。

公益財団法人地球環境

産業技術研究機構[RITE]

バイオ研究グループ 代表者 :グループリーダー/主席研究員 乾将行 所在地 :京都府木津川市木津川台 9-2 設立 :1990年 活動内容:革新的バイオリファイナリー技術の研究

開発の推進による地球温暖化対策 TEL :0774-75-2308 URL :http://www.rite.or.jp/bio/

RITE が開発したアラニン生産株を利用

して生産された L-アラニンのサンプル。

食品添加物などに使用される

2008年までは、微生物によるバイオ燃料生産の特許出

願が多くみられたが、2000年代の中ごろから、非可食バ

イオマスを原料とした用いた RITE バイオプロセスによる有

用化学品生産や、セルロース由来の混合糖利用技術の出

願が増加し、現在まで技術開発を継続している。

さらに、2010年頃から、バイオ生産は不可能と言われ

ていた芳香族化合物を微生物で生産する研究開発を開始

し、関連する特許を多数出願している。これらの芳香族化

合物は、機能性ポリマーや医薬品、化粧品、香料などの原

料として工業的に重要であることから、RITE による特許

の出願及び取得の取組が注目されている。

Keyword

● セルロース系バイオマスを原料に、コリネ型細菌を用いて高効率に化学品などを生産する独自技術。

● 約 180件の特許を出願済。自動車部材、香料・化粧品原料などの材料を狙い、技術開発に取り組む。

● ベンチャー企業等を2社設立し、RITEバイオプロセスの事業化を目指した開発を実施中。

バイオプロセスによる生産が難しい高付加価値材料をター

ゲットに技術開発。世界レベルの先端研究も多数実施。

乾将行さん(グループリーダー)

企業との信頼関係が深まり、長期間に渡

り連携する企業も増えてきたという

関連するキーワードマップ

キーワード: RITE におけるこれまでの技術展開