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1 1 平成25年度専門講義(政治過程論) 2 1利益団体の定義 2利益団体の種類 3多元主義とネオコーポラティズム 4利益団体の戦術と影響力 5日本の利益団体 1利益団体の定義 2利益団体の種類 3多元主義とネオコーポラティズム 4利益団体の戦術と影響力 5日本の利益団体

平成25年度専門講義(政治過程論) · 2 3 第1節利益団体の定義 利益集団・利益団体・圧力団体 共通の利益を持つ 人々の集合 共通の利益が存在するにも

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平成25年度専門講義(政治過程論)

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第1節 利益団体の定義第2節 利益団体の種類第3節 多元主義とネオコーポラティズム第4節 利益団体の戦術と影響力第5節 日本の利益団体

第1節 利益団体の定義第2節 利益団体の種類第3節 多元主義とネオコーポラティズム第4節 利益団体の戦術と影響力第5節 日本の利益団体

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第1節 利益団体の定義

利益集団・利益団体・圧力団体

共通の利益を持つ人々の集合

共通の利益が存在するにもかかわらず,それが明確に意識されていない場合,その利益集団を潜在的利益集団

利益団体(organized interestまたはassociationa1 interest group)とは,利益集団に属

する一部または全部によって,共通の利益を実現するために組織化

利益団体の行う圧カ行使

第1図

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❏フリーライダーの問題

たとえ人々が共通の利益を持っていることを明確に認識していても,それを実現するためだけに,彼らが組織化して利益団体をつくることはない

1.強制

集合的な利益とは別に,団体加入者だけに配分される利益を用意

2.選択的誘因防止法

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第4章第2節-2頁第2節 利益団体の種類

1.分類1.セクター団体と価値推進団体に分類する方法

2.利益団体が組織としてどのように形成され,維持されるかという観点から組織誘因に着目した分類法

3.福祉国家の進展にともなう政治経済的展開を分析することを目的とした分類

4.規制政策,分配政策,再分配政策,体制構成的政策

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◙増殖仮説

◙均衡化仮説

1.社会要因論

マクロな社会的変化

小集団ではお互いに目立つのでフリーライダーが難しい

2.メンバーの数が少ない集団の場合

団体は政治的企業家(組織者)とメンバーの間の便益の交換によって成立する3.交換が継続す

るかぎり存続し,交換が維持されなければ団体は衰退

2.利益団体発生論

公共利益団体 行政機関や財団などが,団体の形成を支援し,政治的企業家の組織化を容易=消費者団体,環境団体,あるいはNPO

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第4章第3,4節-3頁第3節 多元主義とネオコーポラティズム

70年代初め,ネオ・コーポラテイズムの概念

先進国でみられる自由民主主義を前提としたコーポラティズム

・構成する団体の数が限定・団体の構成員は1つの団体にのみ帰属・参加が義務的・利益領域間には競合がなく・領域内では集権化と階統化・団体の存在が国家によって認可・利益表出は一定の仕方に制約

・準公務的業務を引き受け,こうした制約などと引き換えに領域を代表する独占権を付与

オーストリア,オランダ,スウェーデン,ノルウェー

❏各領域を代表する頂上団体の代表と政府官僚機構とのエリート協調的な政策決定

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第4節 利益団体の戦術と影響力

1.団体のリソースと戦術

◙組織規模・財政規模・情報や専門知識

選挙における票

諸活動の基本的資源であると同時に政党や議員への政治資金

◙利益団体の戦術

◙問題が起きるごとに働きかける方法◙比較的恒常的な方法

前者には政策決定者や実施者に直接働きかける方法と,世論に広く訴えて当該団体に有利な状況をつくる間接的な方法

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第4章第4節-3頁2.利益団体の行動と政治システム

❏利益団体がその利益を実現するための戦術および有効なアクセス・ポイント

◙政治システムの特徴によって左右

多元主義システムの下

◙単一制の国・連邦制の国

◙議会と行政の間の権限配分

◙政党制の特徴 政党の数

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Exp: アメリカの全国規模の団体の具体的な戦術「表1」

第1表

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第4章第5節-4頁3.団体別の圧カ行動

(1)ビジネス団体

(1)ビジネス団体は豊富な資金を政党や議員に提供することによって有利な決定(2) 背景を共有していることから同様の見解をもちやすい(3)自由民主主義国には保守的バイアス

(2)労働組合 労働組合も資源動員の仕方によっては,十分な利益を確保

(3)農業団体 農民は多額の補助金

(4)市民運動団体など

通常単一争点団体でかつ価値推進団体

環境団体の戦術でとくに重要なのが,間接ロビイング

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第5節 日本の利益団体

1.団体の日本的特殊性

(1)保守与党系列の団体と革新野党系列の団体の固定化(2)自発性ではなく,「既存集団の丸

抱え」による組織の成立,「白紙委任的リーダーシップ」(3)行政機構がおもなアクセス・ポイントとなり,議員は補助的(4)団体政治を支配するものとしての政官財のパワーエリートの存在

2.1980年代の利益団体セクター団体政策受益団体価値推進団体

村松岐夫らによる『戦後日本の圧力団体』(1986)(1)政治活動の方向

(2)圧力活動の標的(3)認知影響力(4)政治的影響力

多くの団体は政策実現型

日本の利益団体はトータルでは行政(48%)にも政党(46%)にも同等に働き

かけるが,団体によって差異

「第2表 団体の影響力・リソース」次頁

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第4章第5節-5頁第2表

◙地方6団体と教育団体

が上位にあり,農業団体と福祉団体がこれに続くが,これらはいずれも政策受益団体

◙専門家団体も両方向型であるが影響力の点では地方6団体に並ぶ

◙ビジネス団体と労働団体は中位

◙民主・平和団体,消費者団体,環境団体の影響力は弱い

(3)認知影響力

(4)政治的影響力

(2)政府役職者との相互作用を通して

正統性を高めた団体の影響が大きいとする相互作用正統化仮脱

日本政治は,1980年前後からコーポラティズムの適用可能性も模索

日本を「労働なきコーポラティズム」

セクター

政策

価値推進

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むすび

利益団体は政治の実質であるという主張も理由のないことではない。利益団体に視点を合わせることによって,政治システムの特徴を広くかつ深くみることができる。利益団体は多様であり,また政治システムによっても団体の行動や影響力は異なる。利益団体研究は,様々な政治学の理論的発展を刺激する分野であることが理解されたであろう。