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有機反応と電子の動き
極性反応
求電子剤と求核剤
1
有機反応での結合の切断・生成有機反応での「結合の切断・生成」はどのように起きるか
こんなイメージ持ってない?
… ぜんぜん違う!
例:エチレンへの HCl の付加
C CH
H
H
HH Cl+ C C
HH
HHH Cl
C CH
H
H
H
H Cl H Cl
C CH
H
H
H C CHH
HHH Cl
2
有機反応での「電子の動き」有機反応で「どの電子が」「どのように移動するか」は反応ごとに決まっている
C CH
H
H
H
H Cl H Cl
C CH
H
H
H C CHH
HHH Cl
C CH
H
H
H
H Cl
C CH
H
HHH
Cl
C CHH
HHH Cl
中間体A
中間体B中間体Bの方が中間体Aよりエネルギーが低い→中間体Bを通る
3
有機反応の一般的な傾向・電子は対を作ったまま動く(ことが多い)
・エネルギーの高い電子が優先的に動く
H Cl
C CH
H
H
HC C
H
H
HHH
Cl
不対電子がある 不対電子がない(より安定)
※ 例外もある→「ラジカル反応」(あとで学ぶ)
ローンペア>π電子>σ電子
4
エネルギーの高い電子はどう反応に関与する?
N
H
H H HO
Hδ+
δ–
C CH
H
H
HH Brδ+ δ–
ローンペア
π電子
電子不足の原子
電子不足の原子
+
+
極性反応
求核剤 求電子剤
エネルギーの高い電子対と
電子不足の原子の間の反応
nucleophile electrophile
5
電子の動きを巻き矢印で記述する
巻き矢印は何を表すか
巻き矢印の書き方
6
巻き矢印(曲がった矢印)
巻き矢印 (curved arrow, curly arrow)
有機化学反応で「どの電子対がどこに動いたか」を示す矢印
NH
H H HO
H+ N
H
H H
H
O H+
巻き矢印
7
電子対はどのように動くか?
① この電子対が ② ここに向かって動いて ③ この結合を作る
① この電子対が ② ここに向かって動いて ③ このローンペアを作る
NH
H H HO
H+ N
H
H H
H
O H+
NH
H H HO
H+ N
H
H H
H
O H+
【N のローンペアが電子不足の H と結合を作る】
【H が「結合2本」にならないように電子を押し出す】
8
電子の移動を巻き矢印で表す
NH
H H HO
H+
N
H
H H
H
O H+
① N のローンペアが H と結合を作る② H が「結合2本」にならないように電子を押し出す
①
②
9
C H + H+
巻き矢印に関する注意・巻き矢印は「電子対」の移動。「原子」の移動ではない!
NH
H H HO
H+ N
H
H H
H
O H+誤り
・結合が「切れる」ときの矢印の向きに注意。 結合電子がどちらに行くかをよく見ること。
C Cl Cl+
(結合電子は Cl が受け取る) (結合電子は C が受け取る)
10
手書きの巻き矢印
◯ × × ×
11
巻き矢印を正しく書く方法
反応式に巻き矢印をつける
12
反応式に巻き矢印をつける (1)
CH3Br + –OH CH3OH + Br–【例】
【手順①】
すべての価電子を明記したケクレ式を書く
CH
HH
Br + O H CH
HH
O + BrH
13
反応式に巻き矢印をつける (2)【手順②】左辺の「なくなる結合」「なくなるローンペア」と右辺の「新しい結合」「新しいローンペア」に印をつける
CH
HH
Br + O H CH
HH
O + BrH
なくなる結合 なくなるローンペア
新しい結合 新しいローンペア
14
反応式に巻き矢印をつける (3)【手順③】「なくなる結合・ローンペア」と「新しい結合・ローンペア」を対応づける
CH
HH
Br + O H CH
HH
O + BrH
[対応付けの条件]必ず電子対の一方は同じ原子上にあること
この対応付けはダメ(ローンペアが O から Br に飛んでいる)
15
反応式に巻き矢印をつける (4)【手順④】電子対の移動を巻き矢印で表現する
CH
HH
Br + O H CH
HH
O + BrH
CH
HH
Br + O H CH
HH
O + BrH
①
②
① C‒Br 結合が Br のローンペアになる
② O のローンペアが C‒O 結合になる
16
C
H
H
H
Br + O H
巻き矢印の始点と終点 (1)
始点:電子対の移動元を表す
ローンペアの場合:ローンペアが始点
単結合・多重結合の場合:結合線の真ん中が始点
17
巻き矢印の始点と終点 (2)終点:電子対の移動先を表す
ローンペアを作る:電子対を受け取る原子が終点単結合を作る:新しく結合を作る原子が終点多重結合を作る:すでにある結合の真ん中が終点
C
H
H
H
Br + O H CH
HH
O + BrH
C OH
H
HC O
H
H+ H+
18
【練習問題1・2】次の反応式に巻き矢印をつけなさい。
CH3CO
Cl+ O CH3 CH3 C
OCl
OCH3
CH3 CO
ClO
CH3
CH3CO
O+ Cl
CH3
19
【練習問題3・4】次の反応式に巻き矢印をつけなさい。
C
CH3CH2
CH3
CH3 C
CH3CH2CH3CH3
CH
HCHH
H+
HO
H CH
HCH
H+
HO
H
H
20
巻き矢印から反応を組み立てる
21
巻き矢印を書いて生成物を推測する
C CCH3
H
H
CH3+ O
HH
HC C
CH3
H
H
CH3H + O H
H
① π電子が電子不足の H 原子と結合を作る
①
②
② ①だけだと H の手が2本になるから、O‒H 結合の電子を押し出す
③
③ 右辺の生成物が得られる(反応を知らなくても書ける!)※ こうやって推測した反応経路が必ず正しいとは限らないが、少なくとも「有力な反応経路の一つ」にはなる
22
巻き矢印から生成物を導く (1)
ローンペアから原子:新しく結合を作る
BClCl
Cl
Cl+ B
Cl
Cl Cl
Cl
新しい B‒Cl 結合
形式電荷に注意! B の形式電荷は1減り、Cl の形式電荷は1増える(B は価電子を1個もらい、Cl は価電子を1個渡しているため)
23
巻き矢印から生成物を導く (2)ローンペアから結合:結合の多重度が増える
・この場合の「結合」は必ず元のローンペア原子を含む(電子が「他の原子に飛んでいく」ことはない)
(単結合→二重結合、二重結合→三重結合)
CCH3
CH3
NCH3
CH3C
CH3
CH3
NCH3
CH3
・形式電荷に注意!(C の形式電荷は1減り、N の形式電荷は1増える)
単結合から二重結合になった
24
巻き矢印から生成物を導く (3)結合 (A‒B) から原子 (A):A‒B 結合が切れて A 上にローンペアができる
C‒Cl 結合が切れた
ローンペアができた
C Cl
CH3CH3
CH3
CCH3
CH3
CH3
Cl+
・A‒B が多重結合の場合は、多重度が一つ減った結合が残る・形式電荷に注意!(Cl の形式電荷は1減り、C の形式電荷は1増える)
25
巻き矢印から生成物を導く (4)結合 (A‒B) から原子 (X):A‒B 結合が切れて A‒X 結合または B‒X 結合ができる
・A, B のどちらに X が結合するかは、通常は生成物の安定性で決まる(有機化学全般の重要なトピック)・形式電荷に注意!(これまでと同様)
C CCH3
H
H
H+ H+
C‒C 結合が切れた
C‒H 結合ができた
C CCH3
H
H
HH C C
CH3
H
H
HHまたは
26
巻き矢印から生成物を導く (5)結合 (A‒B) から結合 (A‒X):A‒B 結合が切れて、A‒X 結合の多重度が1増える
C CCH3
H
H
HH C C
CH3
H
H
H+ H+
C‒H 結合が切れた
C‒C 結合が二重結合になった
・形式電荷に注意!(これまでと同様)
27
ルイス酸とルイス塩基
B
F
F F+
CH3O
CH3BF
FF
OCH3
CH3
6電子sp2 混成p 軌道が空軌道
配位結合(一方の原子が価電子を2個出して作る共有結合)
ルイス酸:電子対を受け取って共有結合を作るものルイス塩基:電子対を与えて共有結合を作るもの
28
【練習問題5・6】次の反応の生成物を書きなさい。
CH3CO
O
O
CH3H
C OH
H
HH
HC O
H
HH
H+
29
【練習問題7・8】次の反応の生成物を書きなさい。
C CCH3
H
H
HH Cl+
CCH
HH
O
H + O H
30