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平成 25 年度家畜ふん尿処理利用研究会 平成 25 11 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と 畜舎汚水処理関連新技術の研究動向」 畜産草地研究所 平25-2 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター

「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と 畜舎汚水処理 ......平成25年度家畜ふん尿処理利用研究会 平成25 年11 月 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と

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平成 25 年度家畜ふん尿処理利用研究会

平成 25 年 11 月

「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と

畜舎汚水処理関連新技術の研究動向」

畜産草地研究所

平25-2

資 料

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構

畜   産   草   地   研   究   所

中 央 農 業 総 合 研 究 セ ン タ ー

平成二十五年度家畜ふん尿処理利用研究会

「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と畜舎汚水処理関連新技術の研究動向」

平成二十五年十一月

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平成 25 年度家畜ふん尿処理利用研究会

「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と畜舎汚水処理関連新技術の研究動向」

目 次

1.開催要領

2.基調講演

畜産環境の現状と行政の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

農林水産省生産局畜産部

畜産企画課畜産環境・経営安定対策室 和田 剛

3.強化される畜舎汚水排水基準への技術対応

(1)畜舎汚水の活性汚泥処理施設から排出される窒素の特性 ・・・・・・・・・・・ 11

(独)農研機構 畜産草地研究所 和木美代子

(2)既設汚水処理設備の簡易改修による畜舎汚水中窒素濃度の低減 ・・・・・・・・ 17

(財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所 小堤悠平

(3)各種農業資材を活用した畜舎排水窒素低減手法の検討 ・・・・・・・・・・・・ 33

(独)農研機構 畜産草地研究所 田中康男

(4)畜舎汚水中の硝酸性窒素等の低減に向けたマニュアルと簡易測定キット ・・・・ 43

(財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所 長峰孝文

(5)リン結晶化法による豚舎汚水からのリン除去回収システム ・・・・・・・・・・ 55

神奈川県農業技術センター 畜産技術所 川村英輔

4.畜舎汚水処理関連新技術の研究動向

(1)非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)を利用した畜舎汚水の高度処理技術 ・・・ 59

千葉県畜産総合研究センター 長谷川輝明

(2)活性汚泥処理した畜舎汚水を対象とした微細気泡オゾンによる脱色技術 ・・・・ 67

佐賀県畜産試験場 脇屋裕一郎

(3)搾乳関連排水の低コスト管理に向けた原水汚濁度合の低減技術 ・・・・・・・・ 73

酪農学園大学 農食環境学群 猫本健司

(4)電気化学反応を活用した畜舎汚水中動物用抗菌剤の分離・分解処理 ・・・・・・ 79

神戸大学 農学研究科 井原一高

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平成25年度家畜ふん尿処理利用研究会「 」強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と畜舎汚水処理関連新技術の研究動向

開催要領

1.開催趣旨水質汚濁防止法により畜産業に適用されている暫定排水基準値が見直され、全ての特定事業 に場

適用される硝酸性窒素等は本年7月に900mg/Lから700mg/Lに、閉鎖性海域に係る豚房を有する特定事業場のうち一定量以上の排水を排出する事業 に適用される窒素およびリンは、本年10月にそれ場ぞれ190mg/Lから170mg/Lおよび30mg/Lから25mg/Lに、引き下げられることになった。そこで、畜舎汚水中の窒素やリンを低減化する技術に関する調査や研究開発の成果について話題提供を行い、情報交換を行う。また、環境保全型畜産経営への寄与が期待される畜舎汚水処理関連新技術に関する研究開発の成果について紹介する。

平成25年11月7日(木)13:00~17:15、8日(金)9:00~12:002.開催日時畜産草地研究所(つくば)大会議室(茨城県つくば市池の台2)3.開催場所畜産草地研究所4.主 催中央農業総合研究センター共 催

5.内 容第1日目:11月7日(木)

挨 拶 13:00 - 13:10基調講演「畜産環境の現状と行政の動向」

農林水産省生産局畜産部畜産企画課 畜産環境・経営安定対策室課長補佐 和田 剛 13:10 - 13:40

【 】強化される畜舎汚水排水基準への技術対応(独)農研機構 畜産草地研究所 上席研究員 鈴木 一好座長

(1)畜舎汚水の活性汚泥処理施設から排出される窒素の特性(独)農研機構 畜産草地研究所 主任研究員 和木美代子 13:40 - 14:10

(2)既設汚水処理設備の簡易改修による畜舎汚水中窒素濃度の低減14:10 - 14:40(財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所 研究員 小堤 悠平

14:40 - 14:50休 憩

(3)各種農業資材を活用した畜舎排水窒素低減手法の検討(独)農研機構 畜産草地研究所 上席研究員 田中 康男 14:50 - 15:20

(4)畜舎汚水中の硝酸性窒素等の低減に向けたマニュアルと簡易測定キット(財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所 主任研究員 長峰 孝文 15:20 - 15:50

(5)リン結晶化法による豚舎汚水からのリン除去回収システム神奈川県農業技術センター 畜産技術所 主任研究員 川村 英輔 15:50 - 16:20

16:20 - 16:30休 憩

(6)総合討論 16:30 - 17:15

第2日目:11月8日(金)【畜舎汚水処理関連新技術の研究動向】

(独)農研機構 畜産草地研究所 領域長 澤村 篤座長(1)非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)を利用した畜舎汚水の高度処理技術

千葉県畜産総合研究センター 研究員 長谷川輝明 9:00 - 9:30(2)活性汚泥処理した畜舎汚水を対象とした微細気泡オゾンによる脱色技術

佐賀県畜産試験場 畜産環境・飼料研究担当係長 脇屋裕一郎 9:30 - 10:00(3)搾乳関連排水の低コスト管理に向けた原水汚濁度合の低減技術

酪農学園大学農食環境学群 准教授 猫本 健司 10:00 - 10:30(4)電気化学反応を活用した畜舎汚水中動物用抗菌剤の分離・分解処理

10:30 - 11:00神戸大学農学研究科 准教授 井原 一高

11:00 - 11:15休 憩

(5)総合討論 11:15 - 12:00

:農林水産省生産局、地方農政局、技術会議事務局、独立行政法人試験研究機関、6.参集範囲都道府県試験研究機関、普及指導機関、大学、民間団体、民間企業等

:畜産草地研究所企画管理部業務推進室 運営チーム7.事 務 局〒305-0901茨城県つくば市池の台2 Tel.029-838-8593、 Fax.029-838-8606

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2 水質汚濁防止対策

1 現状

(1)畜産経営から排出される汚水としては、家畜排せつ物、畜舎 (2)また、内湾に河川等を通じて排水が流入する地域に係る窒素・りん( 般排水基準 窒素 1 /l りん 1 /l)に ては 暫定洗浄水、パーラー排水等があるが、これらの汚水には窒素や

リン等が多く含まれ、地下水や公共用水域に流出した場合には、水質汚濁の原因ともなる。

(2)このため 水質汚濁防止法により 定規模以上の畜産事

ん(一般排水基準:窒素:120mg/l、りん:16mg/l)については、暫定排水基準(窒素:190mg/l、りん30mg/l)が設定されている。(平成25年9月末日まで)現在、当該暫定排水基準について見直しが行われており、平成

25年 10月1日以降、新たな暫定排水基準案(窒素:170mg/l、りん25 /l)が適用される見込みとな ている(2)このため、水質汚濁防止法により、一定規模以上の畜産事

業所から排出される汚水については、所定の水質を満たすよう処理を行うことが義務付けられている。

(3)また 畜産経営に起因する苦情のうち水質汚濁に関連する

25mg/l)が適用される見込みとなっている。

(3)なお、排出水について、1年に1回以上、特定施設の設置に係る届出事項(硝酸性窒素等については、日排水量に関わらず、特定施設の設置の届出の対象)について、公定法により測定し、その結果を記録・保存することが必要である

2 対策

(3)また、畜産経営に起因する苦情のうち水質汚濁に関連するものは全国で523件(平成24年)と、全苦情発生件数の約3割を占めており、悪臭に次いで多い(畜産企画課調査)。

果を記録 保存することが必要である。

畜産経営に起因する水質汚濁防止対策として、

① 畜産農家における家畜排せつ物法管理基準の遵守を基本とした、家畜排せつ物の適正な管理の徹底

② 堆肥化処理施設、浄化処理施設等の整備に対する支援(補助事業、制度資金、税制特例(汚水防止処理施設))

等の措置を講じている。

3 課題

(1)硝酸性窒素等(一般排水基準:100mg/l)については、平成25年7月1日以降、新たな暫定排水基準案(700mg/l)が適用されている

- 17 -

いる。

畜産経営に伴い発生する苦情の実態把握のため、昭和48年より苦情発生状況調査を毎

Ⅴ 畜産環境をめぐる規制

1 畜産経営に伴う苦情発生状況について

伴 、 和 年 状 毎年実施。

苦情発生件数は調査開始時から減少傾向(H24は調査開始時の約1/6)。

悪臭関連は約56%、水質汚濁関連は約25%で、過半を占める。

苦情発生件数の推移(S48~H24) H24年苦情内容の内訳(%)

12,000

11,676

水質汚

濁関連害虫発その他

11 7%8,000

10,000 その他

肉用牛

乳用牛

25.4%害虫発

7.4%

11.7%

4,000

6,000

豚6,006

4,591 悪臭関連

0

2,000

4,000 3,443

2,5202,719

2,6022,185

2,0041,862

55.5%

■ 畜種別悪臭苦情発生割合内訳 ■

- 16 -

0

※各年7月1日時点で集計

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図6 窒素代謝に関わる 微生物反応

図5 活性汚泥処理水の窒素

組成およびpHとアンモニアの

割合の関係

(引用文献1より作成)

図4 BOD/N比の変化

(引用文献1より作成)

活性汚泥槽の負荷が高い、曝気が不十分等の理由により硝化反応が進行していないと推測さ

れ、生物学的窒素除去を行うには運転条件の改善や施設の改良により硝化反応が起こるまで

にする必要があると言える。活性汚泥処理水の pH には硝化反応による酸の生成と脱窒反応

によるアルカリの生成(酸の消費)のバランスが大きく影響することから、硝化反応の一つ

の目安とされているpHと、全窒素に対するアンモニアの割合との関係を、硝酸性窒素類の一

律基準を満たせなかったサンプル(A, B, E, G, H, I)について示した(図5)

処理水中の窒素においてアンモニアが主体の場合(A,I)はpHが8以上であり、硝化反応が

不十分な理由でpHが低下していない状況が示されている。その他の農家 (農家 B, E, G, H) に

おいてはpHが8未満であり、アンモニアの割合が 18% 以上を占め、平均 40%であった 。

処理水のpHは硝化反応の進行を見る目安になると言える。

今回、活性汚泥処理後の換算窒素の平均値が水質汚濁防止法硝酸性窒素類の一律基準 100

mg/L (2013 年 11月現在ではこの値は畜産農業には適用されない)以下の値を示したのは9

軒の農家のうち3 件(農家 C, D, F)のみであった。窒素除去が良好に行われた 3 件の農家

の条件について、農家 D は元々の原水中窒素濃度がかなり低いこと、農家 C は一次処理に

よって窒素濃度が大幅に低下したこと、農家 F は活性汚泥処理槽の中で希釈水によって希釈

されていること、またこれらすべての汚水が一次処理水の状態で BOD/N 比が比較的高いこと

から硝化-脱窒による窒素除去の反応も良好に起こったためと考えられた。原水・一次処理水

の濃度は、餌、畜舎における糞尿分離状況、畜舎におけるアンモニア等の揮散状況、洗浄水

の利用状況、一次処理施設の形状、運転状況等に依存する。簡易な飼養環境・施設運転条件

の変更により、当該条件を満たすことが可能ならば、窒素除去能が上がる可能性がある一方

で、施設の抜本的な改善を必要とする場合は窒素除去を十分に行うことは難しく、高度処理

の付設が必要になる場合もあると考えられる。

図3 窒素濃度の変化 (引用文献1より作成)

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( )( )

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BODBOD SSSSBODBOD SSSSBODBOD

* 700mg/L H28 6* 700mg/L H28.6100mg/L

pH 5.8 8.65 8 8 6 /5.8 8.6

BOD or COD 160mg/L

SS 200mg/L

3 /L3mg/L

2mg/L

3,000 /cm3

120mg/L/16mg/L

120mg/L//170mg/L H30.9

16mg/L

25mg/L H30.9g

0.4

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*

BOD

BODBOD

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AAAA

A B C D

120 150 120 120

97m3 240m3 73m3 310m3

1) 3 3 3 31) 8m3/ 26m3/ 17m3/ 50m3/

BOD 21.3kg/ 60.0kg/ 49.6kg/ 83.7kg/

T-N 9.7kg/ 21.6kg/ 41.6kg/ 31.0kg/BODBOD

2) 0.22kg/m3 0.25kg/m3 0.68kg/m3 0.27kg/m3

T-N3) 0.10kg/m3 0.09kg/m3 0.57kg/m3 0.10kg/m3

BOD/N ORP

1) 2) BOD 3)

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BOD/NBOD/NBOD/NBOD/N11 331g1g 3g3g

BODBOD BOD/NBOD/N 33

BODBOD BOD/NBOD/NBODBOD BOD/NBOD/N

AAAA

BOD/NBOD/N

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BBBB

BOD/N 2

20094 7

2010 1BOD/N

2011 10 1

BOD 177 51mg/L

20107 20

gSS 92 119mg/L

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BOD/N 2

2009 2010 8 520093 19 2009 11 8

2010 8 5

BOD 307 50mg/LSS /

3101mg/L SS 251 22mg/L

BB

PRO PRO

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CC

CCCC

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CC120

73 0m373.0m3

17m3/ 3 5m3/17m / 3.5m /BOD 49.6kg/ 19kg/T-N 41.6kg/ 8kg/

BOD 0 68kg/m3 0 26kg/m3BOD 0.68kg/m3 0.26kg/m3

T-N 0.57kg/m3 0.11kg/m3

BOD/N 2

2009200911 16

20102010 33

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CCCC

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2013/1/7 2/8 2013/2/9/ 4/1m3 2

BOD mg/L 4,000 T N mg/L 2 000T-N mg/L 2,000

T-N mg/L 100kg 3.8

BOD/N 2.5 2.8BOD kg 9.5 10.64

BOD kg 8 0BOD kg 8.0 BOD kg 1.5 2.6 50 1) L/ 9.4 16.5

/ 2) 1,397 2,459 1) 1L BOD 0.16kg2) 50 1L 1492) 50 1L 149

BOD/N 2

20123 7

BOD/N50

BOD 57 36mg/LSS 139 270mg/L

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44 6060400L400L

6060

3C

120

BOD/N 2 8BOD/N 2.850 L/ 16.5

/ 2,459 / 73,770 /3 221,310

/ 61,5

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DD

DDDD

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―  ―3030 ―  ―31

改修費用と工事期間改修費用と工事期間改修費用と工事期間改修費用と工事期間

項 目 概 要項 目 概 要

��� A�� B�� C�� � D��

���� ��120頭 ��150頭 ��120頭 � ��120頭

改修���� � � � � �

改修費用 2,500�円 4,600�円 8,100�円 1,740�円 3,500�円

�� 18日間��工事期間

3日間 10日間間

���工事7日間����

1日間 7日間

����期間

�日 �日が2回 2日間 �日 �日��期間

�日 �日が2回 2日間 �日 �日

�����頭�

����費用3,067円/頭 2,083円/頭 6,750円/頭 1,420円/頭 1,061円/頭

����費用

果結修改 果結修改

008

0001

3

4

N-2ON

機無

004

006

濃度

(m

g/L)

2

3

BO

D/N比

N-3ON

N-4HN

水汚前離分集凝

機無素窒

002

004

窒素

1

B の水汚前離分集凝比N/DOB

水汚前離分集凝 のN/DOB 第(比 2 )軸

001

0

71/2171/0171/871/671/471/271/2171/0171/8

0

②① ④③

001

9002 年11 月9日

後修改

0102 年3 。たし生発が況状いなれ入に地現めたの響影の疫蹄口~月

)りよ前以修改(ルブラトの塞閉管配るよに結凍①

後修改始開転運

出流泥汚るよに剰過気っばで更変ーザーュフィデ②

)滅死泥汚(用使薬毒消の量大るよに生発気病ので舎豚③

積蓄の泥汚剰余るよに障故ーカムーュキバ④

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5 35 3

DOB DOB T--NDOB DOB T N

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pH

-

MAP

MAP

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MAP

MAP

MAP

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2011

48 1-9

2011 MAP

48 10-19

2011

48 58-67

E.Kawamura, M.Tanabe, A.Takada , Y.Murota, A.Shiroisi, N.Takayanagi, T.Turuhashi, K.Suzuki,

O.Nishimura 2012 Recovery of phosphorus from feces-and-urine separated swine wastewater

with struvite accumulation device, Jpn J. Swine Science, 49 1-11

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59 ―  ―59

非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)を利用した畜舎汚水の高度処理技術

千葉県畜産総合研究センター 企画環境研究室 長谷川輝明

1.はじめに

(1)排水の着色について

畜舎汚水処理施設の排水は、良好な浄化処理が行われていても黒褐色から黄色を呈する

ことが多い。排水の色は規制項目ではないものの、見かけ上汚濁感があり、地域住民から

の苦情の要因や放流時の地域住民の合意が得られないなど畜産農家にとって不利益が生じ

ている。着色低減技術としては活性炭吸着法やオゾン分解法が一般的な方法として確立さ

れているが、コストが高いことから畜産分野での導入は容易ではない。低コストで管理が

容易な技術として、黒ボク土吸着法があるが、通常の活性汚泥法で常時安定した処理がで

きないと土壌の目詰まりが発生し頻繁な土層交換が必要となる。

(2)排水中のリンについて

畜舎排水中にはリンが豊富に含まれており、水質汚濁防止法にて閉鎖性水域に排出する

畜産事業場では、平成25年にリンの暫定基準値は30から25mg/Lに引き下げられ、今後も一

層の排出量の規制強化が予想される。特に、近年のリン鉱石価格の急騰から資源としての

重要性が増しており、回収・再利用技術が求められている。排水からのリン除去技術では、

無機系凝集剤を使用した凝集沈殿法が一般的であるが、凝集汚泥はアルミニウム塩や鉄塩

を含むために肥料への再利用には適さない。そのため、畜産分野でのリンの除去・回収に

特化した技術として、最近ではMAP法が提唱され研究が進められている。

(3)排水の衛生について

水質汚濁防止法では排水の放流の際には大腸菌群3000個/mL未満であることが定められ

ており、必要に応じて塩素系消毒剤が添加されている。しかし、消毒効果については目視

で確認できない上に、消毒剤のコストもかさむことから、現場での管理が疎かになる可能

性がある。

2.開発の目的

畜舎排水からの着色低減(脱色)、リン除去・回収および資源としての再利用、消毒対

策についてはいずれも重要な課題であるが、既存の浄化処理施設ではこれらすべてに対応

することは難しい。また、特にコスト面では、単独処理でもコストが高いことから、複数

の高度処理技術を畜舎排水に適用させるのは困難である。そこで、複数の効果を同時に発

揮できる安価な技術開発を目指して、金属表面処理剤などに用いられるフッ化物を生産す

る過程で副産物として発生する非晶質シリカと消石灰を原料に合成した非晶質ケイ酸カル

シウム水和物(CSH)に着目した。CSH 資材は多孔質で比表面積が大きく、リン酸とカルシ

ウムの不溶性化合物であるヒドロキシアパタイトとしてリンを吸着する能力に優れた資材

で、高アルカリ性を示す。畜舎排水用に改良した CSH 資材は、排水の脱色、リン除去およ

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図 1 試験装置の概要

4.実証試験の結果

(1)CSH 資材の有効性

CSH 反応後の処理水の pH は、CSH 添加率が高いほど高アルカリ性を示した(図 2)。これ

は CSH の原料にカルシウムが配合されているためであり、CSH 添加率 0.15%以上では pH は

11~12.5 まで上昇することを確認した。

脱色性能では、CSH 添加率 0.15%程度で 40~80%の低減効果が示された(図 3)。この脱

色率にはややバラつきが見られるが、黒褐色から黄色を呈する原水は無色まではいかない

ものの外観はかなり向上したといえる(写真 1)。CSH 資材は多孔質構造を有していること

から、着色原因となるフミン質などの生物難分解性物質が吸着除去されたと考えられた。

PO4-P 除去性能では、CSH 添加率 0.03%で PO4-P 除去率は約 80%を示し、CSH 添加率 0.1%

以上ではほぼ完全な除去が可能であった(図 4)。この反応は、前述で記した資材のリン吸

着能力に加えて、高 pH によるリンとカルシウムの化学反応によるヒドロキシアパタイト

(HAP)形成も考えられた。

消毒効果として大腸菌群および E.Coli の除去性能を確認したところ、CSH 添加率 0.1%

以上でほぼ完全に除去されることが示された(図 5、6)。pH では概ね 10 以上で大腸菌群等

は除去されることが示された。また、大腸菌群除去率と色度除去率の関係では、色度が 30%

程度除去されると大腸菌群はほぼ完全に除去されることが示された(図 7)。このことは、

目視で処理水の衛生状態を確認できるといえ、現場管理の容易性があげられた。

び回収、消毒の効果を同時に発揮し、また処理に伴い回収される汚泥物(回収 CSH)はリ

ン酸質肥料としての利用可能性を有する。これらの多面的効果を安定かつ効率的に発揮さ

せるシステムの開発を目標とした。

なお、本研究は、畜産草地研究所、太平洋セメント株式会社、小野田化学工業株式会社、

および旭化成ジオテック株式会社との共同研究により実施した。

3.開発の内容

(1)実証試験

養豚農家の浄化処理施設で試験を実施した。この養豚農家の肥育豚換算飼養頭数は

1,500 頭で、豚舎構造はふん尿分離式である。また、浄化処理施設へ流入する汚水量は

16.5m3/日で、連続活性汚泥法により汚水処理を行っている。この施設の最終沈殿槽の流出

水を試験の原水とした。

(2)CSH 資材および試験装置

試験に用いた CSH 資材は、非晶質シリカと消石灰を配合し合成された粘度の高いスラリ

ー状である。

試験装置の概要を図 1 に示した。装置は、CSH を添加して脱色、リン除去、消毒を同時

に行う CSH 反応槽(150L 容量)と、リンが吸着した CSH を固液分離し肥料化する固液分離

槽を組み合わせた。

浄化処理施設の最終沈殿槽に滞留している水を原水として、CSH 反応槽に 0.7~1.7t/日

で流入させた。CSH はスラリー状態で CSH 貯留槽にて常時ブロワー撹拌により均一化して

おり、そこから薬注ポンプを用いて CSH 反応槽に 0.03~0.22%(排水 1 トンあたり資材乾

物重量で 0.3~2.2 ㎏添加)の添加割合で流入させた。CSH 反応槽の有効空塔容積あたりの

水理学的滞留時間(HRT)は 2.1~4.3 時間で上向流で連続投入し、リアクター上部から流

出させた。このとき、流出液は炭酸ガスで中和した後処理水として排出した。なお、炭酸

ガスが空になった場合に、未中和の水が流出するのを防ぐために、炭酸ガスボンベが圧力

低下した際は CSH の添加が自動的に止まるシステムとした。

CSH 反応槽に沈積した汚泥は、定期的にポンプで引き抜き、ポリエステルろ布に圧入し

固液分離した。脱水後の汚泥は回収 CSH として、乾燥後、く溶性リン酸(C-P2O5)、く溶性

カリウム(C-K2O)、全窒素(T-N)等の肥料成分、有害成分(重金属等)を測定することで

肥料性について検討した。また、回収 CSH を用いた植害試験を実施した。

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図 1 試験装置の概要

4.実証試験の結果

(1)CSH 資材の有効性

CSH 反応後の処理水の pH は、CSH 添加率が高いほど高アルカリ性を示した(図 2)。これ

は CSH の原料にカルシウムが配合されているためであり、CSH 添加率 0.15%以上では pH は

11~12.5 まで上昇することを確認した。

脱色性能では、CSH 添加率 0.15%程度で 40~80%の低減効果が示された(図 3)。この脱

色率にはややバラつきが見られるが、黒褐色から黄色を呈する原水は無色まではいかない

ものの外観はかなり向上したといえる(写真 1)。CSH 資材は多孔質構造を有していること

から、着色原因となるフミン質などの生物難分解性物質が吸着除去されたと考えられた。

PO4-P 除去性能では、CSH 添加率 0.03%で PO4-P 除去率は約 80%を示し、CSH 添加率 0.1%

以上ではほぼ完全な除去が可能であった(図 4)。この反応は、前述で記した資材のリン吸

着能力に加えて、高 pH によるリンとカルシウムの化学反応によるヒドロキシアパタイト

(HAP)形成も考えられた。

消毒効果として大腸菌群および E.Coli の除去性能を確認したところ、CSH 添加率 0.1%

以上でほぼ完全に除去されることが示された(図 5、6)。pH では概ね 10 以上で大腸菌群等

は除去されることが示された。また、大腸菌群除去率と色度除去率の関係では、色度が 30%

程度除去されると大腸菌群はほぼ完全に除去されることが示された(図 7)。このことは、

目視で処理水の衛生状態を確認できるといえ、現場管理の容易性があげられた。

び回収、消毒の効果を同時に発揮し、また処理に伴い回収される汚泥物(回収 CSH)はリ

ン酸質肥料としての利用可能性を有する。これらの多面的効果を安定かつ効率的に発揮さ

せるシステムの開発を目標とした。

なお、本研究は、畜産草地研究所、太平洋セメント株式会社、小野田化学工業株式会社、

および旭化成ジオテック株式会社との共同研究により実施した。

3.開発の内容

(1)実証試験

養豚農家の浄化処理施設で試験を実施した。この養豚農家の肥育豚換算飼養頭数は

1,500 頭で、豚舎構造はふん尿分離式である。また、浄化処理施設へ流入する汚水量は

16.5m3/日で、連続活性汚泥法により汚水処理を行っている。この施設の最終沈殿槽の流出

水を試験の原水とした。

(2)CSH 資材および試験装置

試験に用いた CSH 資材は、非晶質シリカと消石灰を配合し合成された粘度の高いスラリ

ー状である。

試験装置の概要を図 1 に示した。装置は、CSH を添加して脱色、リン除去、消毒を同時

に行う CSH 反応槽(150L 容量)と、リンが吸着した CSH を固液分離し肥料化する固液分離

槽を組み合わせた。

浄化処理施設の最終沈殿槽に滞留している水を原水として、CSH 反応槽に 0.7~1.7t/日

で流入させた。CSH はスラリー状態で CSH 貯留槽にて常時ブロワー撹拌により均一化して

おり、そこから薬注ポンプを用いて CSH 反応槽に 0.03~0.22%(排水 1 トンあたり資材乾

物重量で 0.3~2.2 ㎏添加)の添加割合で流入させた。CSH 反応槽の有効空塔容積あたりの

水理学的滞留時間(HRT)は 2.1~4.3 時間で上向流で連続投入し、リアクター上部から流

出させた。このとき、流出液は炭酸ガスで中和した後処理水として排出した。なお、炭酸

ガスが空になった場合に、未中和の水が流出するのを防ぐために、炭酸ガスボンベが圧力

低下した際は CSH の添加が自動的に止まるシステムとした。

CSH 反応槽に沈積した汚泥は、定期的にポンプで引き抜き、ポリエステルろ布に圧入し

固液分離した。脱水後の汚泥は回収 CSH として、乾燥後、く溶性リン酸(C-P2O5)、く溶性

カリウム(C-K2O)、全窒素(T-N)等の肥料成分、有害成分(重金属等)を測定することで

肥料性について検討した。また、回収 CSH を用いた植害試験を実施した。

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写真 1 脱色の状況

(2)回収 CSH の肥料としての評価

回収 CSH の肥料成分を分析した結果、く溶性リン酸の含有量は 21.3%で、普通肥料の一

種である副産リン酸肥料の公定規格である 15%を超えていたことから、副産リン酸肥料と

しての利用の可能性が考えられた。また、回収 CSH はリン酸以外にもカルシウム、マグネ

シウム、ケイ酸などの肥効成分も含んでいることから、これらを効果的に発揮できる利用

技術を確立することで、循環資源として回収 CSH の付加価値を高めることが期待できる。

なお、回収 CSH には有害成分はほぼ含まれておらず、植害試験でも有害性は見られなかっ

た(写真 2)。以上のことから、肥料利用に問題のないことが確認された。

写真 2 植害試験の状況

(3)回収 CSH を活用した高機能堆肥製造手法の開発

回収した CSH 汚泥を、堆肥に高機能性を付与する添加資材として活用する手法について

も検討を開始したところである。この高機能堆肥製造手法の開発に取り組む利点は以下の

とおりである。

① リン酸を主要肥料成分とした肥料成分調整堆肥の製造が可能となる。

図 2 pH と CSH 添加率の関係 図 3 脱色率と CSH 添加率の関係

図 4 PO4-P 除去率と CSH 添加率の関係 図 5 大腸菌群除去率と CSH 添加率の関係

図 6 E.Coli 除去率と CSH 添加率の関係 図 7 大腸菌群除去率と脱色率の関係

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写真 1 脱色の状況

(2)回収 CSH の肥料としての評価

回収 CSH の肥料成分を分析した結果、く溶性リン酸の含有量は 21.3%で、普通肥料の一

種である副産リン酸肥料の公定規格である 15%を超えていたことから、副産リン酸肥料と

しての利用の可能性が考えられた。また、回収 CSH はリン酸以外にもカルシウム、マグネ

シウム、ケイ酸などの肥効成分も含んでいることから、これらを効果的に発揮できる利用

技術を確立することで、循環資源として回収 CSH の付加価値を高めることが期待できる。

なお、回収 CSH には有害成分はほぼ含まれておらず、植害試験でも有害性は見られなかっ

た(写真 2)。以上のことから、肥料利用に問題のないことが確認された。

写真 2 植害試験の状況

(3)回収 CSH を活用した高機能堆肥製造手法の開発

回収した CSH 汚泥を、堆肥に高機能性を付与する添加資材として活用する手法について

も検討を開始したところである。この高機能堆肥製造手法の開発に取り組む利点は以下の

とおりである。

① リン酸を主要肥料成分とした肥料成分調整堆肥の製造が可能となる。

図 2 pH と CSH 添加率の関係 図 3 脱色率と CSH 添加率の関係

図 4 PO4-P 除去率と CSH 添加率の関係 図 5 大腸菌群除去率と CSH 添加率の関係

図 6 E.Coli 除去率と CSH 添加率の関係 図 7 大腸菌群除去率と脱色率の関係

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図 8 回収 CSH 添加量と Cs+、Sr2+低減率の関係

5.今後の展開

前述に記した結果が得られたことから、平成 25 年度に県内養豚農家に実規模プラント

を設置して、高度処理システムの検証を行う。この検証では、排水中の脱色、リン除去・

回収、消毒効果に加えて脱窒性能も付与したシステムとして、運転・管理技術やコスト面

を具体化してマニュアル化することで、早期の実用化・普及を目指す。

6.参考文献

1)美濃和信孝.2010.ヒドロキシアパタイトシリカ複合多孔質体吸着剤およびその製

造方法.特許第 4423645, 特許公報.

2)田中康男.2013.近隣の好感度と衛生的安全性の向上した畜舎排水を目指して.養

豚の友,2013 年 5 月号:20-23

3)田中康男.2013.汚水処理の最新技術-新技術の開発状況と実用に向けて-.畜産

コンサルタント,VOL.49(No.582):12-17

4)Yamashita T, Aketo T, Minowa N ,Sugimoto K, Yokoyama H, Ogino A, Tanaka Y. 2013.

Simultaneous removal of colour, phosphorus and disinfection from treated

wastewater using an agent synthesized from amorphous silica and hydrated lime.

Environmental Technology, 34:1017-1025.

5)山下恭広、田中康男.2011.畜舎汚水処理水の脱色・脱リン消毒技術の開発.畜産

技術, 2011 年 4 月号:26-30

0

2

4

6

8

10

12

� � �� �� �� �� �� ��

��

(��/L)

���CSH���(DW/V%)

セシウム

ストロンチウム

② 粘性を有し、しかも乾燥すると硬化する回収 CSH は、結着材として堆肥の造粒に利用

の可能性がある。造粒化した堆肥は、化学肥料用散布機で施肥できるため堆肥の需要

喚起につながる。

③ 回収 CSH に含まれるカルシウム成分が、堆肥に大腸菌が残存していた場合でも消毒効

果を発揮する可能性がある。

④ 回収 CSH はセシウム吸着性が発現するため、回収 CSH を含有する造粒堆肥を施用した

場合、土壌に遊離セシウムが含まれる場合には作物への移行抑制につながることが期

待される。

堆肥造粒用結着材としての利用については、予備試験として乳牛ふん堆肥を原料とし、

市販のコンクリートミキサーを造粒機に用いた試験を行ったところ、造粒堆肥が製造でき

た(写真 3)。製造した造粒堆肥を天日乾燥させ、圧力計を用いて硬度を測定したところ、

崩壊時の圧力で 0.40~0.43kg/cm2 であったことから、化学肥料用散布機による施肥も可能

と考えられた。

また、回収 CSH の特殊な性質として、セシウム(非放射性および放射性)およびストロ

ンチウム(非放射性)に対する吸着能が確認されている(非放射性の結果を図 8 に示す)。

この性質は未使用の CSH には見られないことから、化学的メカニズムは不明であるが、使

用により成分組成が変化し吸着能が発現するものと考えられる。この性質が、回収 CSH を

施肥した場合にセシウムの移行率にどう変化を及ぼすか解明することが今後の課題である。

写真 3 予備試験で製造した造粒堆肥の一例

(実用化では粒形 10mm 程度の造粒を目指す)

Page 68: 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と 畜舎汚水処理 ......平成25年度家畜ふん尿処理利用研究会 平成25 年11 月 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と

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図 8 回収 CSH 添加量と Cs+、Sr2+低減率の関係

5.今後の展開

前述に記した結果が得られたことから、平成 25 年度に県内養豚農家に実規模プラント

を設置して、高度処理システムの検証を行う。この検証では、排水中の脱色、リン除去・

回収、消毒効果に加えて脱窒性能も付与したシステムとして、運転・管理技術やコスト面

を具体化してマニュアル化することで、早期の実用化・普及を目指す。

6.参考文献

1)美濃和信孝.2010.ヒドロキシアパタイトシリカ複合多孔質体吸着剤およびその製

造方法.特許第 4423645, 特許公報.

2)田中康男.2013.近隣の好感度と衛生的安全性の向上した畜舎排水を目指して.養

豚の友,2013 年 5 月号:20-23

3)田中康男.2013.汚水処理の最新技術-新技術の開発状況と実用に向けて-.畜産

コンサルタント,VOL.49(No.582):12-17

4)Yamashita T, Aketo T, Minowa N ,Sugimoto K, Yokoyama H, Ogino A, Tanaka Y. 2013.

Simultaneous removal of colour, phosphorus and disinfection from treated

wastewater using an agent synthesized from amorphous silica and hydrated lime.

Environmental Technology, 34:1017-1025.

5)山下恭広、田中康男.2011.畜舎汚水処理水の脱色・脱リン消毒技術の開発.畜産

技術, 2011 年 4 月号:26-30

0

2

4

6

8

10

12

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��

(��/L)

���CSH���(DW/V%)

セシウム

ストロンチウム

② 粘性を有し、しかも乾燥すると硬化する回収 CSH は、結着材として堆肥の造粒に利用

の可能性がある。造粒化した堆肥は、化学肥料用散布機で施肥できるため堆肥の需要

喚起につながる。

③ 回収 CSH に含まれるカルシウム成分が、堆肥に大腸菌が残存していた場合でも消毒効

果を発揮する可能性がある。

④ 回収 CSH はセシウム吸着性が発現するため、回収 CSH を含有する造粒堆肥を施用した

場合、土壌に遊離セシウムが含まれる場合には作物への移行抑制につながることが期

待される。

堆肥造粒用結着材としての利用については、予備試験として乳牛ふん堆肥を原料とし、

市販のコンクリートミキサーを造粒機に用いた試験を行ったところ、造粒堆肥が製造でき

た(写真 3)。製造した造粒堆肥を天日乾燥させ、圧力計を用いて硬度を測定したところ、

崩壊時の圧力で 0.40~0.43kg/cm2 であったことから、化学肥料用散布機による施肥も可能

と考えられた。

また、回収 CSH の特殊な性質として、セシウム(非放射性および放射性)およびストロ

ンチウム(非放射性)に対する吸着能が確認されている(非放射性の結果を図 8 に示す)。

この性質は未使用の CSH には見られないことから、化学的メカニズムは不明であるが、使

用により成分組成が変化し吸着能が発現するものと考えられる。この性質が、回収 CSH を

施肥した場合にセシウムの移行率にどう変化を及ぼすか解明することが今後の課題である。

写真 3 予備試験で製造した造粒堆肥の一例

(実用化では粒形 10mm 程度の造粒を目指す)

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67 ―  ―67

活性汚泥処理した畜舎汚水を対象とした微細気泡オゾンによる脱色技術

佐賀県畜産試験場 脇屋裕一郎

1.はじめに

畜舎汚水における汚水処理システムは、活性汚泥微生物を利用した酸化処理

が主体であるため、生物化学的酸素要求量 (以下、 BOD)等の易分解性有機成分

の除去には有効であるが、色素成分等の難分解性有機成分の除去には必ずしも

十分な処理性能が得られていないのが現状であり、さらに、処理水は黄褐色を

呈しているために汚濁感をもたれやすく、環境苦情の一因になっている。

色 素 成 分 の 処 理 技 術 と し て 、 佐 賀 県 畜 産 試 験 場 で は 、 土 壌 濾 過 法 1 ) や 光 触

媒 反 応 2 ) 等 を 利 用 し た 取 組 を 行 っ て き た が 、 濾 材 の 交 換 や 脱 色 能 力 等 の 課 題

が残ったため、年間を通じて安定した脱色技術を確立する必要がある。

そこで、酸化能力の高いオゾンによる処理技術が注目を集めており、畜舎汚

水 を 利 用 し た 取 組 が 行 わ れ て い る が 3 ) 4 ) 5 ) 、 活 性 汚 泥 処 理 し た 畜 舎 汚 水 は

色度が高いため、実用化を図るためには、オゾン発生装置(オゾナイザー)で

発生させたオゾンを対象汚水へ効率的に溶解させて、脱色処理能力を高める必

要がある。

近年、マイクロバブル(微細気泡)による各産業分野への浄化等応用技術が

取り組まれている。微細気泡は旋回流方式等の微細気泡発生装置で 10~ 50μ m

の気泡になり、単孔ノズル等を利用した 1~ 10mm 程度のミリバブルと比べサイ

ズが小さいため気体の溶解効果が極めて優れている 6 ) 。

そこで、株式会社戸上電機製作所との共同研究で活性汚泥処理した畜舎汚水

を対象とした、微細気泡オゾンによる脱色技術の開発に取り組んだので紹介す

る。

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―  ―6868 ―  ―69

3.オゾン脱色を抑制する要因について

次 に 、 オ ゾ ン 処 理 の 抑 制 要 因 と さ れ て い る 亜 硝 酸 性 窒 素 ( 以 下 、 NO2-N) が

微細気泡オゾンを利用した脱色に及ぼす影響について試験した。試験装置は、

微 細 気 泡 の 有 無 に よ る 比 較 と 同 様 に 、 バ ッ チ 式 の 室 内 規 模 装 置 ( 30 ℓ処 理 規

模)を利用し、オゾン添加量は 280mg/ℓになるよう調整した(図1)。

色度 73.6 の処理水に

NO2-N を添加して、色度

が 10 以下になるまで処

理を行った結果、 NO2-N

無添加区では 12 分で色

度が 10 以下に達したが、

25mg/ℓ添加した場合には

21 分、 50mg/ℓ添加した場

合には 27 分を要し、

NO2-N 濃度が高くなると脱

色処理が抑制されること

が確認された(図3)。

また、色度、 NO2-N 濃度

が異なる活性汚泥処理した

養豚汚水に対してオゾン脱

色試験を行った結果、 NO2-N

濃度が 143mg/ℓ 及び 567mg/ℓ

の高濃度である場合に、開

始時の色度に関係なく、脱色速度が低下することが確認された(図4)。

以上の結果より、処理水に NO2-N を添加することで脱色が抑制されることが

0

20

40

60

80

0 10 20 30

NO2-N 25mg/l添加

反応時間(分)

色度

NO2-N 無添加

NO2-N 50mg/l添加

図 3 . NO2-N を 添 加 し た 場 合 の オ ゾ ン 脱 色 に 及 ぼ す 影 響

0

50

100

150

200

250

300

350

0 10 20 30 40反応時間(分)

色度

NO2-N 0mg/lNO2-N 47mg/lNO2-N 143mg/lNO2-N 567mg/l

図 4 . 色 度 、 NO2-N が 異 な る 処 理 水 の 脱 色 推 移

2.微細気泡にすることで脱色処理は向上するのか?

微細気泡の状態でオゾンを対象汚水に溶解させることで、脱色能力が向上す

るかを確認するために、バッチ式の室内規模装置( 250ℓ処理規模)で、微細気

泡と通常の気泡(ミリ

バブル)との比較を行

った。

微細気泡オゾン処理

装置は、オゾナイザー

、気液混合ポンプ、

オゾン加圧溶解タン

ク、微細気泡発生ノズ

ル及びオゾン循環槽から構

成され、活性汚泥処理水をオゾン循環槽に投入後、気液混合ポンプでオゾナイ

ザ ー か ら 発 生 し た オ ゾ ン と 混 合 し た 。 そ の 後 、 オ ゾ ン 加 圧 溶 解 タ ン ク で

3kgf/cm2 の 圧 力 で オ ゾ ン を 加 圧 溶 解 さ せ た 後 、 微 細 気 泡 発 生 ノ ズ ル で 旋 回 流

を発生させながら圧力を開放

して泡の直径 10~ 50μ m の微

細気泡を発生し、オゾン循環

槽でオゾン 120mg/ℓを溶解さ

せ脱色処理を行った(図1)。

試験は、色度 98.8 の活性汚

泥処理した養豚汚水を用いて、

色度が 10 以下になるまでオゾ

ン処理を行った。その結果、微細気泡にすることで脱色時間を短縮でき、オゾ

ンによる脱色能力が高くなることが確認された 7 ) (図2)。

図1.バッチ式の室内規模装置

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20

微細気泡(マイクロバブル)

通常の気泡

色度

反応時間(分)

図 2 . 微 細 気 泡 と 通 常 の 気 泡 と の 脱 色 能 力 比 較

オゾナイザー

オゾン添加

気液混合ポンプ

処理水とオゾンを混合

オゾン加圧溶解タンク

3kgf/cm2

で加圧溶解

オゾン循環槽

微細気泡発生ノズル

10~50μm程度の微細気泡を発生

タンクに貯留した処理水をバッチ式で循環処理

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3.オゾン脱色を抑制する要因について

次 に 、 オ ゾ ン 処 理 の 抑 制 要 因 と さ れ て い る 亜 硝 酸 性 窒 素 ( 以 下 、 NO2-N) が

微細気泡オゾンを利用した脱色に及ぼす影響について試験した。試験装置は、

微 細 気 泡 の 有 無 に よ る 比 較 と 同 様 に 、 バ ッ チ 式 の 室 内 規 模 装 置 ( 30 ℓ処 理 規

模)を利用し、オゾン添加量は 280mg/ℓになるよう調整した(図1)。

色度 73.6 の処理水に

NO2-N を添加して、色度

が 10 以下になるまで処

理を行った結果、 NO2-N

無添加区では 12 分で色

度が 10 以下に達したが、

25mg/ℓ添加した場合には

21 分、 50mg/ℓ添加した場

合には 27 分を要し、

NO2-N 濃度が高くなると脱

色処理が抑制されること

が確認された(図3)。

また、色度、 NO2-N 濃度

が異なる活性汚泥処理した

養豚汚水に対してオゾン脱

色試験を行った結果、 NO2-N

濃度が 143mg/ℓ 及び 567mg/ℓ

の高濃度である場合に、開

始時の色度に関係なく、脱色速度が低下することが確認された(図4)。

以上の結果より、処理水に NO2-N を添加することで脱色が抑制されることが

0

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0 10 20 30

NO2-N 25mg/l添加

反応時間(分)

色度

NO2-N 無添加

NO2-N 50mg/l添加

図 3 . NO2-N を 添 加 し た 場 合 の オ ゾ ン 脱 色 に 及 ぼ す 影 響

0

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200

250

300

350

0 10 20 30 40反応時間(分)

色度

NO2-N 0mg/lNO2-N 47mg/lNO2-N 143mg/lNO2-N 567mg/l

図 4 . 色 度 、 NO2-N が 異 な る 処 理 水 の 脱 色 推 移

2.微細気泡にすることで脱色処理は向上するのか?

微細気泡の状態でオゾンを対象汚水に溶解させることで、脱色能力が向上す

るかを確認するために、バッチ式の室内規模装置( 250ℓ処理規模)で、微細気

泡と通常の気泡(ミリ

バブル)との比較を行

った。

微細気泡オゾン処理

装置は、オゾナイザー

、気液混合ポンプ、

オゾン加圧溶解タン

ク、微細気泡発生ノズ

ル及びオゾン循環槽から構

成され、活性汚泥処理水をオゾン循環槽に投入後、気液混合ポンプでオゾナイ

ザ ー か ら 発 生 し た オ ゾ ン と 混 合 し た 。 そ の 後 、 オ ゾ ン 加 圧 溶 解 タ ン ク で

3kgf/cm2 の 圧 力 で オ ゾ ン を 加 圧 溶 解 さ せ た 後 、 微 細 気 泡 発 生 ノ ズ ル で 旋 回 流

を発生させながら圧力を開放

して泡の直径 10~ 50μ m の微

細気泡を発生し、オゾン循環

槽でオゾン 120mg/ℓを溶解さ

せ脱色処理を行った(図1)。

試験は、色度 98.8 の活性汚

泥処理した養豚汚水を用いて、

色度が 10 以下になるまでオゾ

ン処理を行った。その結果、微細気泡にすることで脱色時間を短縮でき、オゾ

ンによる脱色能力が高くなることが確認された 7 ) (図2)。

図1.バッチ式の室内規模装置

0

20

40

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80

100

0 5 10 15 20

微細気泡(マイクロバブル)

通常の気泡

色度

反応時間(分)

図 2 . 微 細 気 泡 と 通 常 の 気 泡 と の 脱 色 能 力 比 較

オゾナイザー

オゾン添加

気液混合ポンプ

処理水とオゾンを混合

オゾン加圧溶解タンク

3kgf/cm2

で加圧溶解

オゾン循環槽

微細気泡発生ノズル

10~50μm程度の微細気泡を発生

タンクに貯留した処理水をバッチ式で循環処理

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―  ―7070 ―  ―71

MF 膜処理後の汚水処理水中の色度は平均 80.9、 BOD 濃度は平均 3.0mg/ℓ、 T-N

(全窒素)濃度は平均 92.6mg/ℓ、 NO2-N 濃度は平均 29.5mg/ℓ で推移した。

脱色前の活性汚泥処理水の

性状であれば、オゾン脱色

後の色度は平均 5.8 を示

し、年間を通じて安定した

脱色が可能となることが確

認された(表1、図6)。

年間を通じて安定した脱

色が確認された要因として

は、オゾン脱色の阻害要因

となる BOD や NO2-N 濃度を

曝気処理の段階で低下でき

たことと併せて、 MF 膜処

理により SS(汚泥)のオ

ゾン脱色装置への流入を防

いだことで、色素成分を効

率的に除去できたことが推

察された。

以上の結果より、微細気

泡オゾンは連続式の実規模

装置においても曝気処理の

段階で BOD や NO2-N 等を低減することで、年間を通じて安定した脱色効果が得

られることが確認された 7 ) 。

80.9 ± 25.7 5.8 ± 5.4

( 34.6 ~ 124.7 ) ( 0.9 ~ 25.8 )

3.0 ± 2.0 5.6 ± 2.9

( 0.6 ~ 7.9 ) ( 0.3 ~ 14.0 )

0.5 ± 1.3 0.3 ± 0.9

( 0.0 ~ 6.0 ) ( 0.0 ~ 3.3 )

92.6 ± 28.9 89.5 ± 40.2

( 50.9 ~ 181.7 ) ( 27.3 ~ 174.1 )

20.4 ± 34.5 22.2 ± 36.6

( 0.0 ~ 141.3 ) ( 1.2 ~ 142.4 )

29.5 ± 17.9 28.7 ± 20.3

( 0.1 ~ 72.3 ) ( 0.0 ~ 77.1 )

24.3 ± 16.1 23.9 ± 17.1

( 0.0 ~ 66.5 ) ( 3.4 ~ 62.9 )

SSℓ(mg/ )

T-Nℓ(mg/ )

1)平均値±標準偏差 (最小値~最大値)

オゾン処理後

NO3-N

ℓ(mg/ )

オゾン処理前

色度

NH4-N

ℓ(mg/ )

NO2-N

ℓ(mg/ )

BODℓ(mg/ )

表 1 . 実 規 模 施 設 に お け る オ ゾ ン 脱 色 処 理 に よ る 処 理 水 成 分

色度

0

20

40

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80

100

120

140

4/11 7/20 10/28 2/5

オゾン処理前

オゾン処理後

月/日

図6.実規模施設におけるオゾン脱色の推移

確認され、さらに、色度が低い場合においても NO2-N 濃度が高いと脱色が抑制

されたことより、溶解効率を高めた微細気泡オゾンを使っても NO2-N の残留が

脱色の抑制の一要因になることが確認された 7 ) 。

4.実規模装置による実証試験

バッチ式の室内規模装置での要因調査を行った後に、豚舎及び乳牛舎汚水を

1 日当たり 12m3 処理する連続式の実規模装置を佐賀県畜産試験場内に設置し

て、年間を通じた脱色効果の試験を行った。

実規模施設は、連続式の実規模施設について、佐賀県畜産試験場内に設置し

て 、 年 間 を 通 じ た 試 験 を 行 っ た 。 循 環 槽 ( 4m3) は 既 存 の 貯 留 槽 を 改 造 し 、 循

環 槽 内 の 活 性 汚 泥 処 理 水 の 滞 留 時 間 は 40 分 と し た 。 オ ゾ ン 添 加 量 は 80~

120mg/ℓの範囲とし、廃オゾン臭が発生しない程度に調整した。

活性汚泥処理水は、豚舎及び乳牛舎汚水を対象とし、 0.7mm スクリーン及び

ベルトスクリーンによるふん尿分離処理後に、素焼き担体を利用した生物膜法

による活性汚泥処理を行い、さらに、精密ろ過膜( MF 膜:細孔 0.4μ m)によ

る 膜 分 離 処 理 を 行 っ た 処 理 水 を 利 用 し た 。 な お 、 曝 気 槽 に お い て は 、 90 分 サ

イクルの間欠曝気処理を行った(図5)。

曝気処理(間欠曝気を実施)

MF膜による固形分分離処理

オゾン循環槽4m3

オゾン加圧溶解タンク

気液混合ポンプ

オゾナイザー

オゾン処理前

オゾン処理後

図5.連続式の実規模装置

Page 73: 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と 畜舎汚水処理 ......平成25年度家畜ふん尿処理利用研究会 平成25 年11 月 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と

―  ―7070 ―  ―71

MF 膜処理後の汚水処理水中の色度は平均 80.9、 BOD 濃度は平均 3.0mg/ℓ、 T-N

(全窒素)濃度は平均 92.6mg/ℓ、 NO2-N 濃度は平均 29.5mg/ℓ で推移した。

脱色前の活性汚泥処理水の

性状であれば、オゾン脱色

後の色度は平均 5.8 を示

し、年間を通じて安定した

脱色が可能となることが確

認された(表1、図6)。

年間を通じて安定した脱

色が確認された要因として

は、オゾン脱色の阻害要因

となる BOD や NO2-N 濃度を

曝気処理の段階で低下でき

たことと併せて、 MF 膜処

理により SS(汚泥)のオ

ゾン脱色装置への流入を防

いだことで、色素成分を効

率的に除去できたことが推

察された。

以上の結果より、微細気

泡オゾンは連続式の実規模

装置においても曝気処理の

段階で BOD や NO2-N 等を低減することで、年間を通じて安定した脱色効果が得

られることが確認された 7 ) 。

80.9 ± 25.7 5.8 ± 5.4

( 34.6 ~ 124.7 ) ( 0.9 ~ 25.8 )

3.0 ± 2.0 5.6 ± 2.9

( 0.6 ~ 7.9 ) ( 0.3 ~ 14.0 )

0.5 ± 1.3 0.3 ± 0.9

( 0.0 ~ 6.0 ) ( 0.0 ~ 3.3 )

92.6 ± 28.9 89.5 ± 40.2

( 50.9 ~ 181.7 ) ( 27.3 ~ 174.1 )

20.4 ± 34.5 22.2 ± 36.6

( 0.0 ~ 141.3 ) ( 1.2 ~ 142.4 )

29.5 ± 17.9 28.7 ± 20.3

( 0.1 ~ 72.3 ) ( 0.0 ~ 77.1 )

24.3 ± 16.1 23.9 ± 17.1

( 0.0 ~ 66.5 ) ( 3.4 ~ 62.9 )

SSℓ(mg/ )

T-Nℓ(mg/ )

1)平均値±標準偏差 (最小値~最大値)

オゾン処理後

NO3-N

ℓ(mg/ )

オゾン処理前

色度

NH4-N

ℓ(mg/ )

NO2-N

ℓ(mg/ )

BODℓ(mg/ )

表 1 . 実 規 模 施 設 に お け る オ ゾ ン 脱 色 処 理 に よ る 処 理 水 成 分

色度

0

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140

4/11 7/20 10/28 2/5

オゾン処理前

オゾン処理後

月/日

図6.実規模施設におけるオゾン脱色の推移

確認され、さらに、色度が低い場合においても NO2-N 濃度が高いと脱色が抑制

されたことより、溶解効率を高めた微細気泡オゾンを使っても NO2-N の残留が

脱色の抑制の一要因になることが確認された 7 ) 。

4.実規模装置による実証試験

バッチ式の室内規模装置での要因調査を行った後に、豚舎及び乳牛舎汚水を

1 日当たり 12m3 処理する連続式の実規模装置を佐賀県畜産試験場内に設置し

て、年間を通じた脱色効果の試験を行った。

実規模施設は、連続式の実規模施設について、佐賀県畜産試験場内に設置し

て 、 年 間 を 通 じ た 試 験 を 行 っ た 。 循 環 槽 ( 4m3) は 既 存 の 貯 留 槽 を 改 造 し 、 循

環 槽 内 の 活 性 汚 泥 処 理 水 の 滞 留 時 間 は 40 分 と し た 。 オ ゾ ン 添 加 量 は 80~

120mg/ℓの範囲とし、廃オゾン臭が発生しない程度に調整した。

活性汚泥処理水は、豚舎及び乳牛舎汚水を対象とし、 0.7mm スクリーン及び

ベルトスクリーンによるふん尿分離処理後に、素焼き担体を利用した生物膜法

による活性汚泥処理を行い、さらに、精密ろ過膜( MF 膜:細孔 0.4μ m)によ

る 膜 分 離 処 理 を 行 っ た 処 理 水 を 利 用 し た 。 な お 、 曝 気 槽 に お い て は 、 90 分 サ

イクルの間欠曝気処理を行った(図5)。

曝気処理(間欠曝気を実施)

MF膜による固形分分離処理

オゾン循環槽4m3

オゾン加圧溶解タンク

気液混合ポンプ

オゾナイザー

オゾン処理前

オゾン処理後

図5.連続式の実規模装置

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―  ―7272 ―  ―73

搾乳関連排水の低コスト管理に向けた原水汚濁度合の低減技術

酪農学園大学農食環境学群 猫本 健司

酪農学園大学大学院酪農学研究科 河合 紗織

酪農学園大学農食環境学群 干場 信司

1 搾乳関連排水の低コスト管理に向けて

(1) 搾乳関連排水の汚濁度合とその要因

搾乳関連排水には、搾乳パイプライン・バケットミルカ・バルククーラー等に残った生

乳(以下、残乳と呼ぶ)や強アルカリ・強酸性の洗剤を含む殺菌・洗浄水が含まれている。

事例によっては搾乳中に排せつされる乳牛のふん尿を含む床洗浄水や廃棄乳(乳房炎等に

よる低品質乳や抗生剤等の使用により出荷できずに廃棄する生乳)などが排水に含まれる

こともあり、搾乳関連排水の汚濁度や排水量は農場によって大きく異なる。

パーラー搾乳などで、牛が入るエリアの床洗浄水が排水に混ざる場合は、表1のように

排水は茶色くにごり汚濁度合が著しく高い。このような排せつ物(ふん尿)が含まれる排

水は、適切に貯留・管理することが家畜排せつ物法により義務づけられている。

一方、排せつ物が混じらない排水であっても、廃棄乳を混入させると、排水の性状は著

しく悪化して排水基準を大きく上回る。また、廃棄乳を混ぜなくても、排水には搾乳機器

の残乳等が含まれるため、薄く白濁していて排水基準を満たしていない(表1)。

このように、搾乳関連排水の性状は多種多様であり、施設によってその汚濁度や排水量

は大きく異なっている。

(2) 汚濁度合の低減

既往の浄化処理の方法としては、活性汚泥法をベースにした各種処理方法や膜分離活性

汚泥法などが主に利用されている。大規模な経営ではこのような高価な施設を利用して浄

化・放流している場合もあるが、中小規模の酪農場では容易に導入できない金額のため、

普及が見込めない。そこで筆者らは、浄化コストを下げる一手法として、搾乳関連排水の

ふん尿が混じる ふん尿は混じらない

大量の廃棄乳が混じる 少量の廃棄乳が混じる 廃棄乳は混じらない

排水基準n=3 n=5 n=9 n=19

pH 5.9±0.9 5.2±0.7 5.7±0.6  6.5±0.9 5.8-8.6

BOD (mg/l) 730±500 3,600±3,000 460±250 260±210 160

COD (mg/l) 860±760 840±320 260±170 120±56 160

SS (mg/l) 48±39 1,700±2,000 120±81 53±110 200

T-N (mg/l) 52±43 260±210 63±77   12±9.0 120

T-P (mg/l) 73±93 82±45 30±23  9.1±10 16

平均値±SD 灰色は平均値が排水基準を満たしていないことを示す

表1 搾乳関連排水(未処理のまま貯留した状態)の化学的成分

5.今後の方向性について

畜産排水処理は、家畜管理とは異なり収益を生じないために、処理経費が畜

産経営を圧迫している場合が多い。活性汚泥処理水にオゾン処理を行うことで

脱 色 効 果 と 併 せ て 塩 素 よ り も 高 い 殺 菌 効 果 が あ り 3 ) 、 畜 舎 の 洗 浄 水 や 消 毒 薬

の代替利用が可能となることで、畜産経営内のコスト低減化につながるため、

今後は、畜舎内での循環利用システムの確立を行う。

6.参考文献

1)脇屋裕一郎、坂井隆宏(2002)セラミックスを担体とした生物膜法と

土壌濾過を組み合わせた汚水浄化処理法の開発、農業施設、 33: 1-10.

2)脇屋裕一郎、一ノ瀬弘道、日野暢也、楊健、瓜生喜章、坂井隆宏、岩永致

悦(2004)光触媒シリカゲルを利用した家畜尿汚水処理水脱色技術の開

発、西日本畜産学会報、 47: 41-45.

3)落合健吾、小林正樹、井上和男(1986)オゾンによる殺菌及び三次処

理試験、埼玉県畜産試験場研究報告、 24: 24-28.

4)稲葉 満(1991)オゾンによる養豚排水の三次処理試験、静岡県中小

家畜試験場研究報告、 4: 59-65.

5)脇屋裕一郎、松尾孝弘、坂井隆宏(2005)砂濾過槽とオゾンを利用し

た汚水処理水脱色技術の開発―処理水性状による脱色効果の比較―、農業施

設、 35( 4): 9-14.

6)柘植秀樹(2007)マイクロバブルの発生法、マイクロバブル・ナノバ

ブルの最新技術、柘植秀樹監修、シーエムシー出版、 15-30、東京.

7)脇屋裕一郎、松尾俊徳、高柳典弘、卜部大輔、河原弘文(2013)微細

気泡オゾンを利用した畜産排水処理水の脱色効果、日本養豚学会誌、50

(1):1-7.

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搾乳関連排水の低コスト管理に向けた原水汚濁度合の低減技術

酪農学園大学農食環境学群 猫本 健司

酪農学園大学大学院酪農学研究科 河合 紗織

酪農学園大学農食環境学群 干場 信司

1 搾乳関連排水の低コスト管理に向けて

(1) 搾乳関連排水の汚濁度合とその要因

搾乳関連排水には、搾乳パイプライン・バケットミルカ・バルククーラー等に残った生

乳(以下、残乳と呼ぶ)や強アルカリ・強酸性の洗剤を含む殺菌・洗浄水が含まれている。

事例によっては搾乳中に排せつされる乳牛のふん尿を含む床洗浄水や廃棄乳(乳房炎等に

よる低品質乳や抗生剤等の使用により出荷できずに廃棄する生乳)などが排水に含まれる

こともあり、搾乳関連排水の汚濁度や排水量は農場によって大きく異なる。

パーラー搾乳などで、牛が入るエリアの床洗浄水が排水に混ざる場合は、表1のように

排水は茶色くにごり汚濁度合が著しく高い。このような排せつ物(ふん尿)が含まれる排

水は、適切に貯留・管理することが家畜排せつ物法により義務づけられている。

一方、排せつ物が混じらない排水であっても、廃棄乳を混入させると、排水の性状は著

しく悪化して排水基準を大きく上回る。また、廃棄乳を混ぜなくても、排水には搾乳機器

の残乳等が含まれるため、薄く白濁していて排水基準を満たしていない(表1)。

このように、搾乳関連排水の性状は多種多様であり、施設によってその汚濁度や排水量

は大きく異なっている。

(2) 汚濁度合の低減

既往の浄化処理の方法としては、活性汚泥法をベースにした各種処理方法や膜分離活性

汚泥法などが主に利用されている。大規模な経営ではこのような高価な施設を利用して浄

化・放流している場合もあるが、中小規模の酪農場では容易に導入できない金額のため、

普及が見込めない。そこで筆者らは、浄化コストを下げる一手法として、搾乳関連排水の

ふん尿が混じる ふん尿は混じらない

大量の廃棄乳が混じる 少量の廃棄乳が混じる 廃棄乳は混じらない

排水基準n=3 n=5 n=9 n=19

pH 5.9±0.9 5.2±0.7 5.7±0.6  6.5±0.9 5.8-8.6

BOD (mg/l) 730±500 3,600±3,000 460±250 260±210 160

COD (mg/l) 860±760 840±320 260±170 120±56 160

SS (mg/l) 48±39 1,700±2,000 120±81 53±110 200

T-N (mg/l) 52±43 260±210 63±77   12±9.0 120

T-P (mg/l) 73±93 82±45 30±23  9.1±10 16

平均値±SD 灰色は平均値が排水基準を満たしていないことを示す

表1 搾乳関連排水(未処理のまま貯留した状態)の化学的成分

5.今後の方向性について

畜産排水処理は、家畜管理とは異なり収益を生じないために、処理経費が畜

産経営を圧迫している場合が多い。活性汚泥処理水にオゾン処理を行うことで

脱 色 効 果 と 併 せ て 塩 素 よ り も 高 い 殺 菌 効 果 が あ り 3 ) 、 畜 舎 の 洗 浄 水 や 消 毒 薬

の代替利用が可能となることで、畜産経営内のコスト低減化につながるため、

今後は、畜舎内での循環利用システムの確立を行う。

6.参考文献

1)脇屋裕一郎、坂井隆宏(2002)セラミックスを担体とした生物膜法と

土壌濾過を組み合わせた汚水浄化処理法の開発、農業施設、 33: 1-10.

2)脇屋裕一郎、一ノ瀬弘道、日野暢也、楊健、瓜生喜章、坂井隆宏、岩永致

悦(2004)光触媒シリカゲルを利用した家畜尿汚水処理水脱色技術の開

発、西日本畜産学会報、 47: 41-45.

3)落合健吾、小林正樹、井上和男(1986)オゾンによる殺菌及び三次処

理試験、埼玉県畜産試験場研究報告、 24: 24-28.

4)稲葉 満(1991)オゾンによる養豚排水の三次処理試験、静岡県中小

家畜試験場研究報告、 4: 59-65.

5)脇屋裕一郎、松尾孝弘、坂井隆宏(2005)砂濾過槽とオゾンを利用し

た汚水処理水脱色技術の開発―処理水性状による脱色効果の比較―、農業施

設、 35( 4): 9-14.

6)柘植秀樹(2007)マイクロバブルの発生法、マイクロバブル・ナノバ

ブルの最新技術、柘植秀樹監修、シーエムシー出版、 15-30、東京.

7)脇屋裕一郎、松尾俊徳、高柳典弘、卜部大輔、河原弘文(2013)微細

気泡オゾンを利用した畜産排水処理水の脱色効果、日本養豚学会誌、50

(1):1-7.

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(2) プラットフォーム洗浄排水の低コスト管理

14 戸の酪農場においてプラットフォ

ーム洗浄排水の調査を行ったところ、

洗浄には口径が 32 ~ 40A の太いホー

スを用いて水道圧で行う場合と、高圧

洗浄機を用いる場合があった。排水量

・水質分析結果は前者が 1,200 ± 760L/日・1,100± 490 mg/L(BOD)(n=10)、後 者 は 200 ± 88L/日 ・ 3,100 ±

1,100mg/L(BOD)(n=4)であり、水道

圧で洗浄する場合に比べて高圧洗浄機

を用いる場合の方が濃度は高いが排水

量は少ない傾向があった(図3)。

ふん尿が固形状の堆肥処理の場合な

ど、余裕のある液肥貯留施設を持たな

い事例においては、プラットフォーム

洗浄排水が貯留できず垂れ流し状態の

場合もあるが、高圧洗浄機の利用で排

水量を低減すれば、約半年貯留可能な

50t程度の小規模な貯留槽の設置や既存

の尿だめの利用で適切に貯留すること

も可能となる。年2回程度ほ場に還元

することにより、肥料としての循環利

用も実現できる(図4)。このような

対策により、プラットフォーム洗浄排水をミルクライン循環洗浄水に混ぜずに別系統で管

理すれば、搾乳関連排水の汚濁度合が低減できるため、同排水を浄化するための投資金額

を低く抑えることができる。ただし、ほ場還元の労力や貯留槽設置への投資は必要である。

3. ミルクライン内の残乳の管理

(1) 残乳回収の概要

搾乳パイプラインにはゆるい傾斜が

付けられており、搾乳時にはライン内

の陰圧と傾斜によって生乳がレシーバ

ーへと集められていく。搾乳後に真空

ポンプが停止すると、ミルクライン内

に残る残乳は、傾斜による自然流下(以

下、傾斜回収)や、ミルクライン内に

エアを送り込む回収(以下、エア回収)

(図5)によってミルクラインの外へ

取り除かれ、これら回収の後に循環洗浄が始まる。パイプライン傾斜の角度はおよそ 0.5°

図3 プラットフォーム洗浄の排水量と汚濁度合

図4 プラットフォーム洗浄排水の管理と利用

図5 ミルクライン内の残乳回収

汚濁度合を下げる技術を検討してきた。一般的に浄化施設は BOD 容積負荷から規模が算

定されるため、原水の BOD 負荷量を下げることが、処理施設のコスト低減につながるか

らである。

搾乳関連排水の BOD は、ふん尿が混入する場合はおよそ 1,000mg/L、混入しない場合

でも 500mg/L 程度と比較的高い。ふん尿が混ざらなければ BOD 濃度は半減するが、さら

に原水の汚濁度合を下げることができればより低コストな処理が可能になる。本項では、

パーラーの床洗浄で排水に混入するふん尿や、ミルクラインの循環洗浄排水に含まれる搾

乳機器内の残乳に着目し、排水への汚濁物質の混入量を低減させる技術を報告する。

なお、搾乳関連排水は、「パーラー排水」、「酪農雑排水」、「処理室排水」などと呼ばれ

ることが多いが、農水省の畜産環境整備技術調査検討委員会(社団法人日本草地畜産種子

協会、2009)に従い、本報告では牛乳処理室やパーラーからの排水を総称して「搾乳関連

排水」としている。

2. パーラー床洗浄排水の管理

(1) 床洗浄排水の概要

従来型のつなぎ飼い・パイプライン

搾乳方式では、搾乳は牛床で行われる

ため、搾乳中に牛がふん尿をした場合

でも搾乳関連排水に混入することはな

い。一方、フリーストール・ミルキン

グパーラー方式の酪農場では、搾乳時

に牛が立つ部分(以下、プラットフォ

ーム)にふん尿を排せつするため、搾

乳後にふん尿の除去・水洗が行われる

(図1)。この際にふん尿が混入する

排水が生じるが、汚濁度合が非常に高

く浄化するには数千万円の投資が必要

である。プラットフォームのふん尿を

洗浄した排水は、ミルクラインの洗浄

排水などと混ざって排出している場合

や、単独に別系統で排出されている場

合がある(図2)。搾乳関連排水の低

コスト処理を行うためには、原水の汚

濁負荷を高めないことが重要であり、

ふん尿が混入するプラットフォームの

洗浄水は浄化せずに別処理とするのが

望ましい。事例によってはプラットフォーム洗浄排水が垂れ流しになっていて対策が急務

なケースもあるが、詳しい性状などの実態はあまり報告例がない。本項では、プラットフ

ォーム洗浄排水の実態を把握し、適切な管理方法を検討した。

図2 プラットフォーム洗浄排水とミルクライン循環洗浄水

図1 プラットフォーム洗浄排水の概要

Page 77: 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と 畜舎汚水処理 ......平成25年度家畜ふん尿処理利用研究会 平成25 年11 月 「強化される畜舎汚水排水基準への技術対応と

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(2) プラットフォーム洗浄排水の低コスト管理

14 戸の酪農場においてプラットフォ

ーム洗浄排水の調査を行ったところ、

洗浄には口径が 32 ~ 40A の太いホー

スを用いて水道圧で行う場合と、高圧

洗浄機を用いる場合があった。排水量

・水質分析結果は前者が 1,200 ± 760L/日・1,100± 490 mg/L(BOD)(n=10)、後 者 は 200 ± 88L/日 ・ 3,100 ±

1,100mg/L(BOD)(n=4)であり、水道

圧で洗浄する場合に比べて高圧洗浄機

を用いる場合の方が濃度は高いが排水

量は少ない傾向があった(図3)。

ふん尿が固形状の堆肥処理の場合な

ど、余裕のある液肥貯留施設を持たな

い事例においては、プラットフォーム

洗浄排水が貯留できず垂れ流し状態の

場合もあるが、高圧洗浄機の利用で排

水量を低減すれば、約半年貯留可能な

50t程度の小規模な貯留槽の設置や既存

の尿だめの利用で適切に貯留すること

も可能となる。年2回程度ほ場に還元

することにより、肥料としての循環利

用も実現できる(図4)。このような

対策により、プラットフォーム洗浄排水をミルクライン循環洗浄水に混ぜずに別系統で管

理すれば、搾乳関連排水の汚濁度合が低減できるため、同排水を浄化するための投資金額

を低く抑えることができる。ただし、ほ場還元の労力や貯留槽設置への投資は必要である。

3. ミルクライン内の残乳の管理

(1) 残乳回収の概要

搾乳パイプラインにはゆるい傾斜が

付けられており、搾乳時にはライン内

の陰圧と傾斜によって生乳がレシーバ

ーへと集められていく。搾乳後に真空

ポンプが停止すると、ミルクライン内

に残る残乳は、傾斜による自然流下(以

下、傾斜回収)や、ミルクライン内に

エアを送り込む回収(以下、エア回収)

(図5)によってミルクラインの外へ

取り除かれ、これら回収の後に循環洗浄が始まる。パイプライン傾斜の角度はおよそ 0.5°

図3 プラットフォーム洗浄の排水量と汚濁度合

図4 プラットフォーム洗浄排水の管理と利用

図5 ミルクライン内の残乳回収

汚濁度合を下げる技術を検討してきた。一般的に浄化施設は BOD 容積負荷から規模が算

定されるため、原水の BOD 負荷量を下げることが、処理施設のコスト低減につながるか

らである。

搾乳関連排水の BOD は、ふん尿が混入する場合はおよそ 1,000mg/L、混入しない場合

でも 500mg/L 程度と比較的高い。ふん尿が混ざらなければ BOD 濃度は半減するが、さら

に原水の汚濁度合を下げることができればより低コストな処理が可能になる。本項では、

パーラーの床洗浄で排水に混入するふん尿や、ミルクラインの循環洗浄排水に含まれる搾

乳機器内の残乳に着目し、排水への汚濁物質の混入量を低減させる技術を報告する。

なお、搾乳関連排水は、「パーラー排水」、「酪農雑排水」、「処理室排水」などと呼ばれ

ることが多いが、農水省の畜産環境整備技術調査検討委員会(社団法人日本草地畜産種子

協会、2009)に従い、本報告では牛乳処理室やパーラーからの排水を総称して「搾乳関連

排水」としている。

2. パーラー床洗浄排水の管理

(1) 床洗浄排水の概要

従来型のつなぎ飼い・パイプライン

搾乳方式では、搾乳は牛床で行われる

ため、搾乳中に牛がふん尿をした場合

でも搾乳関連排水に混入することはな

い。一方、フリーストール・ミルキン

グパーラー方式の酪農場では、搾乳時

に牛が立つ部分(以下、プラットフォ

ーム)にふん尿を排せつするため、搾

乳後にふん尿の除去・水洗が行われる

(図1)。この際にふん尿が混入する

排水が生じるが、汚濁度合が非常に高

く浄化するには数千万円の投資が必要

である。プラットフォームのふん尿を

洗浄した排水は、ミルクラインの洗浄

排水などと混ざって排出している場合

や、単独に別系統で排出されている場

合がある(図2)。搾乳関連排水の低

コスト処理を行うためには、原水の汚

濁負荷を高めないことが重要であり、

ふん尿が混入するプラットフォームの

洗浄水は浄化せずに別処理とするのが

望ましい。事例によってはプラットフォーム洗浄排水が垂れ流しになっていて対策が急務

なケースもあるが、詳しい性状などの実態はあまり報告例がない。本項では、プラットフ

ォーム洗浄排水の実態を把握し、適切な管理方法を検討した。

図2 プラットフォーム洗浄排水とミルクライン循環洗浄水

図1 プラットフォーム洗浄排水の概要

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4. 低コスト浄化施設の普及に向けて

前述したように、ふん尿が混入するプラットフォーム洗浄排水を分離し、搾乳機器内の

残乳を効果的に回収することで、原水の汚濁度合は低下する。低コスト浄化施設を普及さ

せるためには、このような原水の汚濁負荷量を低減させるための日々の管理が必要である。

徹底した排水管理の啓蒙によって、地域として低コスト処理が実現した一事例が、図9

に示す北海道東部 H町の酪農場の 3/4(約 150戸)に導入された3槽越流式沈殿槽(1.6t/槽× 3 槽)である。導入した事例の約8割

で排水基準をクリアできている。しかし、ミ

ルクライン内の残乳回収が不十分である場合

は排水基準をクリアできない上、T-N 除去率

は平均3割程度であり、浄化性能は高いと

は言えない。しかし、広く普及することに

より、地域としての汚濁排出量は確実に低

減している。以前は、地形の特性上隣接す

る町の湖へ流入が問題視されていたが、越

流式沈殿槽の普及が進むに連れ「最近、近

所の川に魚が戻ってきた」などの声も聞か

れるようになった。地域農業者の環境保全

に対する意識向上にも貢献している。

低コスト施設では、一般的に定期的なメ

ンテナンスが効果の持続に重要であり、同

沈殿槽でも年1回程度の汚泥の汲み出しが

必要である。農家自身で行うことも可能だ

が、汲みだし・散布の機械を所持していな

い場合もあり、コントラクターや地元の建

設会社に作業を委託することも試みられて

いる。低コスト処理施設の普及・適切な運

用の継続には、地域組織の支えも必要であ

る。

浄化性能を追求した高価な施設は大規模

経営でなければ導入することができない。

畜産からの環境負荷を低減するためには、

たとえ浄化性能が劣っていても、まずは広

く普及させることが大事である。個々の酪

農場からの排出が低減することにより、地

域としての汚濁負荷量は確実に低減する。

ただし、筆者らは高価な施設を決して否定

しているわけではない。多少コストが高くても手間がかからず確実に浄化できる施設を望

む経営主も多いからである。経営規模や地域性に合わせて、適切な排水処理のコンサルテ

ーションを地域の研究者らが取り組むことが大切だと考える。

図9 越流式沈殿槽(低コスト浄化施設の一例)

図 10 地域としての汚濁負荷量低減の必要性

図 11 浄化施設のそれぞれの課題

以上が推奨されているが、事例によって角度は様々であり、回収の度合に影響していると

思われる。エア回収は自動化されて一定時間行われている事例もあれば手動で行う場合も

あり、傾斜回収と同様に、事例によって回収効果に差が生じていると考えられる。したが

って、日々行われている傾斜回収やエア回収を効率良く行うことができれば、排水への残

乳の混入量が少なくなり、BOD 負荷量の低減ならびに浄化施設のコストの削減につなが

る可能性が高い。そこで本項では、現地事例調査と室内による回収試験で得られたデータ

をもとに、現地事例で実施した、現行よりも排水の汚濁度合を下げる試みを報告する。

(2) 事例における残乳回収の現況調査

17 戸の酪農場における測定の結果、つなぎ飼

い・パイプライン搾乳方式における傾斜角度・傾

斜回収時間は 0.34 °± 0.14 °・14 分± 11 分

(n=7)、フリーストール・パーラー搾乳方式に

おいては 0.67°± 0.19°・12分± 5.2分(n=10)であり、事例によりばらつきが見られた。

図6に示すように、ミルクラインの傾斜角度が

大きい事例ほど排水に混じる残乳は少ない傾向と

なり、傾斜回収については時間の長さよりも角

度の大きさが回収度合に影響を及ぼして

いることが示唆された。他方、エア回収

の場合は、データには示していないが、

傾斜角度の大きさよりも回収時間の長さ

が残乳回収量に影響を及ぼしていた。し

たがって、排水の汚濁度合を低減するた

めには、ミルクラインの傾斜角度を強く

し、エア回収を長めにすることが効果的

であることがわかった(図7)。

(3) 現地におけるエアー回収時間の延長とその効果

ミルクラインの傾斜を変えるには大

規模な改修工事が必要であるが、他方、

エア回収時間の延長はすぐに実現でき

る点で現実的である。そこで、エア回

収を 5分程度行う現地事例 3戸それぞ

れにおいて、回収時間を 10 分間に延

長したところ、同排水の BOD 負荷量

は平均で 51 %低下した。現況のまま

でもエア回収時間を長くすれば残乳回

収の効率が上がり、原水の汚濁度合を

容易に低減させることが可能となる。

図6 ミルクライン傾斜角度と残乳量の関係

図7 傾斜回収とエア回収のそれぞれの特徴

図8 エア回収時間の延長による排水の汚濁度合低減効果

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―  ―7676 ―  ―77

4. 低コスト浄化施設の普及に向けて

前述したように、ふん尿が混入するプラットフォーム洗浄排水を分離し、搾乳機器内の

残乳を効果的に回収することで、原水の汚濁度合は低下する。低コスト浄化施設を普及さ

せるためには、このような原水の汚濁負荷量を低減させるための日々の管理が必要である。

徹底した排水管理の啓蒙によって、地域として低コスト処理が実現した一事例が、図9

に示す北海道東部 H町の酪農場の 3/4(約 150戸)に導入された3槽越流式沈殿槽(1.6t/槽× 3 槽)である。導入した事例の約8割

で排水基準をクリアできている。しかし、ミ

ルクライン内の残乳回収が不十分である場合

は排水基準をクリアできない上、T-N 除去率

は平均3割程度であり、浄化性能は高いと

は言えない。しかし、広く普及することに

より、地域としての汚濁排出量は確実に低

減している。以前は、地形の特性上隣接す

る町の湖へ流入が問題視されていたが、越

流式沈殿槽の普及が進むに連れ「最近、近

所の川に魚が戻ってきた」などの声も聞か

れるようになった。地域農業者の環境保全

に対する意識向上にも貢献している。

低コスト施設では、一般的に定期的なメ

ンテナンスが効果の持続に重要であり、同

沈殿槽でも年1回程度の汚泥の汲み出しが

必要である。農家自身で行うことも可能だ

が、汲みだし・散布の機械を所持していな

い場合もあり、コントラクターや地元の建

設会社に作業を委託することも試みられて

いる。低コスト処理施設の普及・適切な運

用の継続には、地域組織の支えも必要であ

る。

浄化性能を追求した高価な施設は大規模

経営でなければ導入することができない。

畜産からの環境負荷を低減するためには、

たとえ浄化性能が劣っていても、まずは広

く普及させることが大事である。個々の酪

農場からの排出が低減することにより、地

域としての汚濁負荷量は確実に低減する。

ただし、筆者らは高価な施設を決して否定

しているわけではない。多少コストが高くても手間がかからず確実に浄化できる施設を望

む経営主も多いからである。経営規模や地域性に合わせて、適切な排水処理のコンサルテ

ーションを地域の研究者らが取り組むことが大切だと考える。

図9 越流式沈殿槽(低コスト浄化施設の一例)

図 10 地域としての汚濁負荷量低減の必要性

図 11 浄化施設のそれぞれの課題

以上が推奨されているが、事例によって角度は様々であり、回収の度合に影響していると

思われる。エア回収は自動化されて一定時間行われている事例もあれば手動で行う場合も

あり、傾斜回収と同様に、事例によって回収効果に差が生じていると考えられる。したが

って、日々行われている傾斜回収やエア回収を効率良く行うことができれば、排水への残

乳の混入量が少なくなり、BOD 負荷量の低減ならびに浄化施設のコストの削減につなが

る可能性が高い。そこで本項では、現地事例調査と室内による回収試験で得られたデータ

をもとに、現地事例で実施した、現行よりも排水の汚濁度合を下げる試みを報告する。

(2) 事例における残乳回収の現況調査

17 戸の酪農場における測定の結果、つなぎ飼

い・パイプライン搾乳方式における傾斜角度・傾

斜回収時間は 0.34 °± 0.14 °・14 分± 11 分

(n=7)、フリーストール・パーラー搾乳方式に

おいては 0.67°± 0.19°・12分± 5.2分(n=10)であり、事例によりばらつきが見られた。

図6に示すように、ミルクラインの傾斜角度が

大きい事例ほど排水に混じる残乳は少ない傾向と

なり、傾斜回収については時間の長さよりも角

度の大きさが回収度合に影響を及ぼして

いることが示唆された。他方、エア回収

の場合は、データには示していないが、

傾斜角度の大きさよりも回収時間の長さ

が残乳回収量に影響を及ぼしていた。し

たがって、排水の汚濁度合を低減するた

めには、ミルクラインの傾斜角度を強く

し、エア回収を長めにすることが効果的

であることがわかった(図7)。

(3) 現地におけるエアー回収時間の延長とその効果

ミルクラインの傾斜を変えるには大

規模な改修工事が必要であるが、他方、

エア回収時間の延長はすぐに実現でき

る点で現実的である。そこで、エア回

収を 5分程度行う現地事例 3戸それぞ

れにおいて、回収時間を 10 分間に延

長したところ、同排水の BOD 負荷量

は平均で 51 %低下した。現況のまま

でもエア回収時間を長くすれば残乳回

収の効率が上がり、原水の汚濁度合を

容易に低減させることが可能となる。

図6 ミルクライン傾斜角度と残乳量の関係

図7 傾斜回収とエア回収のそれぞれの特徴

図8 エア回収時間の延長による排水の汚濁度合低減効果

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79 ―  ―79

電気化学反応を活用した畜舎汚水中動物用抗菌剤の分離・分解処理

神戸大学農学研究科 准教授 井原一高

はじめに

畜産業において動物用抗菌剤(抗生物質および合成抗菌薬)は,家畜の疾病治療だけで

はなく成長促進を目的としても使用されている。日本における動物用抗菌剤の使用量は,

家畜および養殖魚に対して年間約 1,000 t と推定され,ヒトに投与される量より多い 1)。動

物用抗菌剤の使用は,畜産物の安全性確保や安定的な供給に貢献していると考えられるが,

一方で薬剤耐性菌の発生と人体への影響が懸念されている 2)。近年,我が国において家畜に

使用されたと考えられる動物用抗菌剤が糞尿等を通じて排出され,河川等から検出された

例が報告されている 3), 4)。河川水の流量と畜産施設からの排出量を考慮すると,畜産施設廃

水には mg/L のオーダーで動物用抗菌剤が残留している可能性がある。畜産業において汚水

処理は大きな課題であり,医薬品関連リスク低減のためにもその処理過程において残留す

る動物用抗菌剤を分離・除去することが必要である。本稿では,動物用抗菌剤の分離・分

解処理法として,電気化学反応を活用した手法について紹介する。

電気化学凝集法による動物用抗菌剤の分離

水質浄化に応用できる電気化学反応は様々な種類があるが,陽極からの金属イオンの溶

出による水質浄化法は電気化学凝集法と呼ばれる。電気化学反応によって汚濁溶存成分を

懸濁化させた後,対象水から分離する方法であり,畜産廃水を含む各種の廃水に適用が報

告 5)されている。対象水からの金属酸化物を含む凝集物の分離を迅速に行うために,高勾配

磁界による磁気分離法 6)を付加することも可能である。

合成廃水に含有する抗生物質 100mg/L に対し,電気化学凝集および磁気分離法によるテ

トラサイクリン系およびセファロスポリン系抗生物質の分離試験の結果 7)をTable 1に示す。

4 種類のテトラサイクリン系抗生物質およびセフジニルの除去率は 78%以上を示した。テ

トラサイクリン系抗生物質は、金属キレートを生成しやすい性質を持つことが知られてい

る 8), 9)。また、セフジニルも同様の性質を持つ 10)。電気化学反応によって溶出された鉄イオ

Table 1 Removal of antibiotics by electrocoagulation and magnetic separation.

Class Substance Initial (mg/L)

After separation

(mg/L)

Removal(%)

pH (-) Iron-chelating

Tetracycline Oxytetracycline 99.7 10.6 89.3 3.9 +

Doxycycline 99.2 19.5 80.3 3.9 +

Chlortetracyclin 98.8 21.6 78.1 3.9 +

Tetracycline 98.5 6.7 93.2 3.9 +

Cephalosporin Cefdinir 99.4 12.0 88.0 6.4 +

Cefazolin 99.6 81.0 18.7 7.8

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―  ―8080 ―  ―81

を溶出させることなく陽極近傍に強力な酸

化剤を生成させ,対象物質を分解する方法で

ある。Fig. 2 は搾乳施設廃水に添加した抗生

物質の分解特性を示したものである。分解特

性は良好であり電気化学反応によって生成

された酸化剤が物質分解に寄与したものと

考えられる。しかし,分解には一定の反応時

間を必要とすることから,電気エネルギーの

投入に伴うコストが発生する。投入エネルギ

ーを削減するためには,専用の反応装置の設

計等の工夫が求められる。

まとめ

電気化学反応を活用した畜産廃水に含有する動物用抗菌剤の分離・分解手法を紹介した。

両者を比較すると電気化学凝集法は投入エネルギーが少なくて済むが,高い除去率を得る

ためには,対象となる抗菌性物質が金属イオン等と錯化合物を生成する性質を持つ必要が

ある。電解酸化法は,抗菌性物質の分解に広く適用できると考えられるが,分解処理にあ

る程度のエネルギーを必要とすることと,分解過程における中間生成物の発生に留意する

必要がある。

引用文献

[1] 田村豊,動薬研究,64(3), 12-17 (2007). [2] S.A. Anderson, R.W. Yeaton Woo and L.M. Crawford, Food Control, 12(1), 13-25 (2001). [3] Y. Matsui, T. Ozu, T. Inoue, and T. Matsushita, Desalination, 226, 215-221 (2008). [4] 清野敦子, 古荘早苗, 益永茂樹,水環境学会誌,27, 685-691 (2004). [5] İ. A. Şengila and M. özacarb, Journal of Hazardous Materials, 137(2), 1197–1205 (2006). [6] 武田真一,低温工学,37(7), 315-320 (2002). [7] I. Ihara, K. Toyoda, N. Beneragama and K. Umetsu, Journal of Physics: Conference Series,

156(1), 012034 (2009). [8] C.R. Stephens, K. Murai, K.J. Brunings and R.B. Woodward, J. Am. Chem. Soc. 78, 4155-4158

(1956). [9] S.S.M. Hassan, M.M. Amer and S.A. Ahmed, Mikrochimica Acta, 3, 165-175 (1984). [10] Y. Kawai, K. Matsubayashi and H. Hakusui, Chem. Pharm. Bull., 44 (8), 1425-1430 (1996). [11] 医薬品医療機器総合機構,フェロミア錠 添付文書,http://www.info.pmda.go.jp/ (2009). [12] 井原一高,北幹子,青柳圭祐,豊田淨彦,梅津一孝,用水と廃水,53(12),56-62 (2011). [13] M. Miyata, I. Ihara, G. Yoshida, K. Toyoda, K. Umetsu, Water Science & Technology, 63,

456-461, (2011).

Fig. 2 Electrochemical degradation of OTC in milking parlor wastewater using a Ti/IrO2 anode with the Na2SO4 electrolyte; OTC in milking parlor wastewater (△) and OTC in aqueous solution (□).

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 2 4 6 8time (h)

C/C

o

ンは抗菌性物質と選択的に結合し,上述の抗生物

質との錯化合物が生成されたと推定できる。鉄電

極を陽極に用いた電気化学反応は,鉄イオンと水

酸化物イオンを溶出させ,両者の化合物が生成す

る。この化合物は吸着性を有することから,抗生

物質-鉄錯体そして電気化学凝集後に添加された

強磁性物質(マグネタイト)と一体となって磁気

力で分離されたと推察される。これらの高い除去

率は,上述の抗生物質が鉄イオンと選択的に結合

するという性質の寄与が大きい。一般に,医薬品

は薬物相互作用について情報が開示されている。

特に鉄系物質は貧血治療薬の成分であることから,

その相互作用に関する情報は医薬品添付文書から入手可能である。例えば,クエン酸第一

鉄ナトリウムを主成分とする可溶性の非イオン型鉄剤(商品名フェロミア,販売元:エー

ザイ)の添付文書 11)には,相互作用すなわち併用に注意すべき医薬品として,テトラサイ

クリン系抗生物質等が挙げられており,これら医薬品との作用機序として高分子鉄キレー

トを形成することが明記されている。対照的に,牛乳房炎治療に広く使用されているセフ

ェム系抗生物質のセファゾリンは,鉄イオンとのキレート生成能は報告されておらず,

18.7%と低い除去率であった。

畜産廃水への可能性を検討するため,オキシテトラサイクリンを搾乳施設廃水に添加し,

電気化学凝集-磁気分離を試みた。その結果 12)を Fig. 1 に示す。合成廃水と比較すると除去

率が大幅に低下したことから,投入電気量を 12 C(電気化学反応時間 120 秒)から 60 C に

変更し実験を行った。pH 5.5 - 6.5 の範囲において 85%以上の除去率が得られた。合成廃水

試験と同条件の 12 C において除去率が低下した理由として,本実験で用いた搾乳施設廃水

には糞尿や酪農用洗剤が含有しているために,共存成分の影響を受けたことが考えられる。

本手法による抗菌性物質の分離処理において,金属イオンとの錯化合物形成が除去率を大

きく左右すると考えられる。今回はオキシテトラサイクリンのみを対象としたが,テトラ

サイクリン系抗生物質はカルボニル基とフェノール性水酸基を持つ構造は共通であるため,

本手法の適用が可能であると考えられる。なお,本処理後でも畜産廃水には数 mg/L の抗生

物質が溶存していることになり,食品等の残留基準と比較すると高い水準にある。しかし,

排出量削減の観点から,排出源で分離・除去を行うことの意義は大きいと考えられる。

電解酸化法による動物用抗菌剤の分解

電気化学反応によって,特に生物難分解性物質を分解する方法として,不溶性陽極を用

いた電解酸化法がある。電気化学凝集法は陽極から金属イオンを積極的に溶出させる方法

に対し,電解酸化法は貴金属酸化物電極やダイヤモンド電極等を用いることによって金属

0

20

40

60

80

100

2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0pH

Rem

oval

(%).

60 C12 C

Fig.1 Removal of oxytetracycline in milking

parlour wastewater 12).

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を溶出させることなく陽極近傍に強力な酸

化剤を生成させ,対象物質を分解する方法で

ある。Fig. 2 は搾乳施設廃水に添加した抗生

物質の分解特性を示したものである。分解特

性は良好であり電気化学反応によって生成

された酸化剤が物質分解に寄与したものと

考えられる。しかし,分解には一定の反応時

間を必要とすることから,電気エネルギーの

投入に伴うコストが発生する。投入エネルギ

ーを削減するためには,専用の反応装置の設

計等の工夫が求められる。

まとめ

電気化学反応を活用した畜産廃水に含有する動物用抗菌剤の分離・分解手法を紹介した。

両者を比較すると電気化学凝集法は投入エネルギーが少なくて済むが,高い除去率を得る

ためには,対象となる抗菌性物質が金属イオン等と錯化合物を生成する性質を持つ必要が

ある。電解酸化法は,抗菌性物質の分解に広く適用できると考えられるが,分解処理にあ

る程度のエネルギーを必要とすることと,分解過程における中間生成物の発生に留意する

必要がある。

引用文献

[1] 田村豊,動薬研究,64(3), 12-17 (2007). [2] S.A. Anderson, R.W. Yeaton Woo and L.M. Crawford, Food Control, 12(1), 13-25 (2001). [3] Y. Matsui, T. Ozu, T. Inoue, and T. Matsushita, Desalination, 226, 215-221 (2008). [4] 清野敦子, 古荘早苗, 益永茂樹,水環境学会誌,27, 685-691 (2004). [5] İ. A. Şengila and M. özacarb, Journal of Hazardous Materials, 137(2), 1197–1205 (2006). [6] 武田真一,低温工学,37(7), 315-320 (2002). [7] I. Ihara, K. Toyoda, N. Beneragama and K. Umetsu, Journal of Physics: Conference Series,

156(1), 012034 (2009). [8] C.R. Stephens, K. Murai, K.J. Brunings and R.B. Woodward, J. Am. Chem. Soc. 78, 4155-4158

(1956). [9] S.S.M. Hassan, M.M. Amer and S.A. Ahmed, Mikrochimica Acta, 3, 165-175 (1984). [10] Y. Kawai, K. Matsubayashi and H. Hakusui, Chem. Pharm. Bull., 44 (8), 1425-1430 (1996). [11] 医薬品医療機器総合機構,フェロミア錠 添付文書,http://www.info.pmda.go.jp/ (2009). [12] 井原一高,北幹子,青柳圭祐,豊田淨彦,梅津一孝,用水と廃水,53(12),56-62 (2011). [13] M. Miyata, I. Ihara, G. Yoshida, K. Toyoda, K. Umetsu, Water Science & Technology, 63,

456-461, (2011).

Fig. 2 Electrochemical degradation of OTC in milking parlor wastewater using a Ti/IrO2 anode with the Na2SO4 electrolyte; OTC in milking parlor wastewater (△) and OTC in aqueous solution (□).

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 2 4 6 8time (h)

C/C

o

ンは抗菌性物質と選択的に結合し,上述の抗生物

質との錯化合物が生成されたと推定できる。鉄電

極を陽極に用いた電気化学反応は,鉄イオンと水

酸化物イオンを溶出させ,両者の化合物が生成す

る。この化合物は吸着性を有することから,抗生

物質-鉄錯体そして電気化学凝集後に添加された

強磁性物質(マグネタイト)と一体となって磁気

力で分離されたと推察される。これらの高い除去

率は,上述の抗生物質が鉄イオンと選択的に結合

するという性質の寄与が大きい。一般に,医薬品

は薬物相互作用について情報が開示されている。

特に鉄系物質は貧血治療薬の成分であることから,

その相互作用に関する情報は医薬品添付文書から入手可能である。例えば,クエン酸第一

鉄ナトリウムを主成分とする可溶性の非イオン型鉄剤(商品名フェロミア,販売元:エー

ザイ)の添付文書 11)には,相互作用すなわち併用に注意すべき医薬品として,テトラサイ

クリン系抗生物質等が挙げられており,これら医薬品との作用機序として高分子鉄キレー

トを形成することが明記されている。対照的に,牛乳房炎治療に広く使用されているセフ

ェム系抗生物質のセファゾリンは,鉄イオンとのキレート生成能は報告されておらず,

18.7%と低い除去率であった。

畜産廃水への可能性を検討するため,オキシテトラサイクリンを搾乳施設廃水に添加し,

電気化学凝集-磁気分離を試みた。その結果 12)を Fig. 1 に示す。合成廃水と比較すると除去

率が大幅に低下したことから,投入電気量を 12 C(電気化学反応時間 120 秒)から 60 C に

変更し実験を行った。pH 5.5 - 6.5 の範囲において 85%以上の除去率が得られた。合成廃水

試験と同条件の 12 C において除去率が低下した理由として,本実験で用いた搾乳施設廃水

には糞尿や酪農用洗剤が含有しているために,共存成分の影響を受けたことが考えられる。

本手法による抗菌性物質の分離処理において,金属イオンとの錯化合物形成が除去率を大

きく左右すると考えられる。今回はオキシテトラサイクリンのみを対象としたが,テトラ

サイクリン系抗生物質はカルボニル基とフェノール性水酸基を持つ構造は共通であるため,

本手法の適用が可能であると考えられる。なお,本処理後でも畜産廃水には数 mg/L の抗生

物質が溶存していることになり,食品等の残留基準と比較すると高い水準にある。しかし,

排出量削減の観点から,排出源で分離・除去を行うことの意義は大きいと考えられる。

電解酸化法による動物用抗菌剤の分解

電気化学反応によって,特に生物難分解性物質を分解する方法として,不溶性陽極を用

いた電解酸化法がある。電気化学凝集法は陽極から金属イオンを積極的に溶出させる方法

に対し,電解酸化法は貴金属酸化物電極やダイヤモンド電極等を用いることによって金属

0

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2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0pH

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Fig.1 Removal of oxytetracycline in milking

parlour wastewater 12).

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得て下さい。

畜産草地研究所 平25-2 資料

平成25年度家畜ふん尿処理利用研究会資料

編集・発行 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所

企画管理部業務推進室

Tel 029-838-8593 FAX : 029-838-8606

〒305-0901 茨城県つくば市池の台2

発 行 日 平成25年11月7日

印 刷 所 中和印刷株式会社