12
茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に影響する要因と侵入防止対策の評価 誌名 誌名 家畜衛生学雑誌 = The Japanese journal of animal hygiene ISSN ISSN 13476602 著者 著者 百瀬, 浩 吉田, 保志子 光永, 貴之 八木, 行雄 巻/号 巻/号 39巻3号 掲載ページ 掲載ページ p. 73-83 発行年月 発行年月 2013年11月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に ...茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に影響する要因と侵入防止対策の評価

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Page 1: 茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に ...茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に影響する要因と侵入防止対策の評価

茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入に影響する要因と侵入防止対策の評価

誌名誌名 家畜衛生学雑誌 = The Japanese journal of animal hygiene

ISSNISSN 13476602

著者著者

百瀬, 浩吉田, 保志子光永, 貴之八木, 行雄

巻/号巻/号 39巻3号

掲載ページ掲載ページ p. 73-83

発行年月発行年月 2013年11月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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直二望記

茨城県南部での調査による農場、畜舎への

野生鳥類の侵入に影響する要因と侵入防止対策の評価

百瀬 浩 1) ・吉田保志子1) ・光永貴之1) ・八木行雄2)

Factors affecting the number of wild birds observed in and around the farms and barns, and the evaluation of the biosecurity

measures taken against wild birds

Hiroshi MOMOSEl), Hoshiko YOSHIDAl), Takayuki MITSUNAGAl) and Yukio YAGI2)

(11 National Agricultural Research Center, National Agriculture and Food Research Organization,

3-1-1 Kannnondai, Tsukuba, Ibaraki 305-8666, Japan

2) National Institute of Animal Health, National Agriculture and Food Research Organization,

3-1-5 Kannnondai, Tsukuba, Ibaraki 305-0856, J apan)

(20l3. 8. 6受付/2013.10. 28受理)

Summary

73

We counted the number of wild birds in and around 142 farms in southern part of Ibaraki prefecture, Japan. We

also recorded the biosecurity measures taken at each farm such as the wire net set at barn windows to prevent wild

bird intrusion. Common species observed were Eurasian tree sparrow Passer montanus, Large-billed crow Corvus

mαcrorhynchos, Rock dove Columba livia, White-cheeked starling $ρodioρsar cineraceus, Barn swallow Hirundo

rustica, and Oriental turtle dove Streρroρelia orientalis. Sparrows were often observed inside cow, pig and chicken

barns, but crows and doves were observed only in cow barns, and only sparrows and starlings were observed in

chicken houses. We constructed multivariate models to explain the number of wild birds observed in and around

barns and farms with variables such as operating status of each farm, openness and biosecurity measures taken at

each farm, area and crowdedness of the farm and the barn and vegetation and land use around each farm. There

was a strong positive relationship between the number of wild birds and the operating status of the farm, the

easiness score for the wild birds to enter the barn and the visible area of observation. Other variables such as

vegetation and land use or area and crowdedness of the farms did not have strong relationships with the number of

birds. Therefore, we concluded that the main factors that attract wild birds to farms and barns are; the existence of

animals and animal feed that can be used as food resource for the wild birds, and the barns are either open or not

well protected against wild birds. Although many cow and pig farms did not employ any security measures against

wild birds, all chicken farms did employ some measures since it is legally obligated. However, most of the chicken

farms either em:ployed the wrong method such as the mesh size of the net was too coarse or the maintenance of the facility was not well enough so that there were holes in the net that allowed wild birds to enter the barn, indicating

the importance to use the right method for biosecurity and the maintenance of the facilities.

Key words : Farm biosecurity, Wild animals, Microbial pollution

家畜衛生学雑誌 39, 73--83 (2013)

1) (独)農研機構・中央農業総合研究センター 干305-8666 茨城県つくば市観音台 3-1ー 12) (独)農研機構・動物衛生研究所 干305-0856 茨城県つくば市観音台 3-1 -5

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74 家畜衛生学雑誌第39巻第3号 (2013)

序文

午、豚、鶏等の農場は、多様な微生物による汚染と、

それに由来する疾病発生の危険に晒されている。微生物

汚染をもたらす原因の一つは、農場周辺に生息する野生

動物であり、野生鳥類(以下「野鳥J)も例外ではない。

例えば、養鶏業における大きなリスクである H5N1

亜型ウイルスによる高病原性鳥インフルエンザ

(H5N1 Highly Pathogenic A vian Influenza、以下1H5N1

HPAIJ)は、家禽へのウイルス伝播経路として、鶏舎周

辺に生息する野鳥が鶏舎内へウイルスを媒介した可能性

が指摘されているl.12 へその他、野鳥から家畜へ媒介

されうる疾病としては、ニューカッスル病、ウエスト

ナイル熱ウイルス感染症、あひるウイルス性腸炎、

オウム病、サルモネラ症、カンピロパクター症などがある3,4, 9,制。

野鳥がもたらすこうしたリスクを低減するためには、

野鳥と農場で飼養される家畜との接触を可能な限り減ら

すことが必要となる。 2011年4月に改正された家畜伝染

病予防法16)に基づいて同年10月に改正された飼養衛生管

理基準mでは、家禽について、野鳥等の野生動物からの

病原体の感染防止を目的に、家禽舎への侵入を防止する

ことができる金網や防烏ネットの設置などの対策を、飼

養者に対して義務付けている。

農場の微生物汚染及び野生動物からの病原体の感染リ

スクを扱った研究はいくつか実施されている 6, 7. 11, 14 問。

しかしながら、農場やその周辺における野鳥の生息およ

び農場、畜舎への接近、侵入の実態を調査し、野鳥が農

場に誘引される要因を定量的に分析した事例はなく、

HPAIなどのリスク低減に向けた対策を進める上でも、

そうした客観的資料が必要とされている。従って、鶏舎

他の畜舎周辺に生息する野鳥種を同定し、その動態を解

析することは、養鶏場を始めとする農場に対する野鳥に

よる疾病媒介リスクの評価に役立つと考えられる。

本論文は、野外調査により、農場と家畜の飼育設備で

ある畜舎への野鳥の接近、侵入の実態を調べ、農場、畜

舎に接近、侵入した野烏の個体数に及ぼす要因について

分析すること、そして畜舎における野鳥の侵入防止対策

の実施状況を評価することで、野鳥がもたらす病原体の

感染リスク低減に向けた基礎資料を提供することを目的

としている。

材料および方法

1 .調査地と調査方法

野外調査は、 2012年4月10日から 6月13日までの計19

日間、茨城県南部の牛、豚、鶏の農場計142施設で各2

回実施した(図 Iおよび表 1)。自動車で対象となる農

場に可能な限り接近し、 1)畜舎内部、 2)畜舎近傍

( 5m以内)および屋根、 3)農場敷地内、 4)農場周

辺 (30m以内)の 4つのカテゴリーに分けて、野鳥の種

類と個体数を農場外から双眼鏡などで目視により記録し

た。各調査地点における観察時間は15分程度とし、同一

の調査回の中では、個体のダブルカウントを行わないよ

う注意した。また、同時に家畜の種類や畜舎の構造、畜

舎で実施されている野鳥の侵入防止対策についても記録

した。

2. 農場、畜舎に野鳥を誘引する要因

各農場で観察された野鳥の個体数を目的変数、以下に

述べる各種の要因群を説明変数とする一般化線形混合モ

デル(ポアソン回帰モデル)を構築した。混合モデルの

ランダム効果には、農場の地域的なまとまりを示すグ

ループを指定した(図 1参照)0 2回の調査結果はどち

らも独立したデータとして扱い、各回の調査を行った日

(4月1日からの経過日数)を説明変数「季節」として

分析した。

統計分析にはR3.0.l21)およびそのライブラリーである

glmmML2)を用いた。仮定したモデル構造は以下の通

りである。

λ =eβO+Random←β内 +β;2X2+…・・…+ε

ここで Aは平均値、んは切片、 Randomは地域によ

るぱらつき、 Fは各説明変数の係数、 E は誤差を表

す。また、リンク関数には対数を用いた。

モデル構築に当たっては、多重共線性を考慮し、説明

変数聞の相関係数が::tO.3を超える組み合わせを選び出

し、より重要と考えられる変数を残して他を棄却した。

次に、計算量の増加によるオーバーフローを避けるた

め、残った変数群からランダムに 5つの変数を選び出し

て、それら 5変数のすべての組み合わせからなるモデル

を構築した。その後、モデルのAIC値(赤池情報量基

準)を参考に、上位のモデルに採用された変数を残し

て、それ以外の変数を棄却した。この変数選択の手順を

繰り返して、最終的に 6変数からなるベストモデルを決

定した。

1 )畜舎等の面積

GISソフト (ESRI社のArcGIS10.l)を用いて、調査

対象とした各農場の高解像度衛星画像 (Microsoft社の

Bing Map Arial)を画面上に表示し、農場敷地および畜

舎の外郭をトレースして面積を計測した。また、農場敷

地の外郭カミら30m、畜舎の外郭から 5mのバッファーを

発生させ、同様に面積を計測した。さらに、農場、畜舎

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75 百瀬ら :農場 ・畜舎への野鳥侵入と防止対策

bL

凡伊l

畜種

C JII

G 牛

ム 豚。鶏{体鹿章]

ロ 牛(体1l#1)

ム 豚{体廃章}

植生・土地利用

- 樹林・その他樹林

仁コ制阜地

にコ氷田ι二ヨ 鳩 ・理性草地

仁2制 球 ・その他

30

図 1.野鳥の実態調査を行った農場の分布。図中の黒枠は、後の分析で農場の地域的なまとまりを

示す変数の ~I:J で同ーのグループとして扱っ た農場の範囲を示す。

20 10

2 )畜舎の構造および侵入防止対策の状況

畜舎の構造と侵入防止対策の実施状況は個別には扱わ

ず、両者を合わせて一つの変数「畜舎侵入容易度」とし

た。方法は、野鳥にとっての畜舎への侵入のし易さを以

下の 6段階でカテゴリー化した (図2)。

1 入れない。

2・スズメが潜り込める 3cm程度の開口部が 1つ以

上ある。

3 :ムク ドリ が潜り込める 5cm程度の開口部が lつ

以上ある。

4 :カラスが潜り込める15cm程度の開口部が lつ以

上ある。

5 カラスがギリギリ飛んで入れる 1m強の開口部が

Iつ以上ある。

6 :カラスが容易に飛んで入れる約 2m以上の開口音IS

が Iつ以上ある。

ここでいう「開口部Jは、 畜舎の窓などの構造物である

場合や、窓に設置された野鳥の侵入防止のための金網等

の目合いの大きさである場合、さらに金網等の一部が破

損してできた「穴」である場合などがあったが、いずれ

も同じ「開口部」として扱った。また、農場の可視領域

野鳥の実態調査を行った農場数

とそれらの近傍の内、目視で鳥を観察できた範囲 (以下

「可視領域J)を目測でトレースして、それらの面積も計

測した。

分析に当たっては、例えばカテゴリー 2の 「畜舎近傍

(5 mおよび畜舎の屋根)Jであればカテゴリー 1I畜舎

内部」の個体数も含めて集計し、対応する可視領域の面

積も同様に設定して計測した。カテゴリ ー3I農場敷地

内Jについても、カテゴリー l、2の個体数、面積を含

めた。カテゴリ ー4 I農場周辺」には、カテゴリー lか

ら3の個体数、面積を含めて分析した。また、野鳥の個

体数を、予め対応する可ー視領域の面積で、割って密度に変

換することはせず、可視領域の面積「観察範囲面積」を

説明変数として扱った。

42

142

29

言|

71

休廃業

14

8

9

31

営業中

57

34

20

111

表 1

組一牛豚鶏一計

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76 家畜衛生学雑誌第39巻第3号 (2013)

スコア 1入れない 2スズメが入れる 3ムクドリが入れる

4カラスが入れる 5カラスがギリギリ飛んで入れる 6カラスが楽に飛んで入れる

図2 野鳥にとっての畜舎への侵入のし易さのスコア例

内に 2つ以上の畜舎が存在する場合は、スコアが大きい

方の畜舎のス コア を、その農場のスコアと して評価し

た。

3 )営業中かどうか

農場が営業中で、ある、すなわち家畜が実際に飼われて

いて、内部に野鳥の餌となる家畜飼料等が存在すること

の効果を検討するため、表 1に示した様に、営業中の

111農場に加えて、休廃業状態にある 31の農場でも同じ

調査を行い、営業中を l、休廃業を Oとする説明変数

「営業中かどうかjを作成した。

4 )農場周辺の植生 ・土地利用および環境のモザイク度

野鳥の個体数に、農場周辺の植生 ・土地利用が影響し

ている可能性を検討するため、次の方法で言hWJして説明

変数とした。すなわち、各農場の中心 (敷地外郭を ト

レー ス した ポ リゴ ンの重心)から 500mの円形バ ッ

ファーを発生させて、 その内部の植生 ・土地利用の面積

を計算 した。植生・土地利用の計iJllJには環境省自然環境

局山の 2 万 5 千分の l 植生図(第 6~7 回自然環境保全

基礎調査の成果)を用いた。分析に当たっては、この植

生図の凡例を「樹林」、「その他樹林」、「草地」、「畑地」、

「水圧IJ、「湿性草地」、「水域」、「市街地」、「その他」の

9凡例に統合した上で、面積計測等を行った。

植生 ・土地利用の面積とは別に、 「環境のモザイ ク度Jの指標として上記の500mバッファー内の植生・ 土地利

用凡例聞の総隣接長(:境界線の長さの総計)を求めた。

5)農場の規模と配置

農場の規模に関わる説明変数として、各農場敷地内の

畜舎面積の総計を計測して「畜舎而積」と した。また、

農場の配置に関わる変数として、その農場の周辺に他の

農場が多く存在する、すなわち農場が密集 した状態であ

ることが寄与 している可能性を検討するため、前項と同

じバッファ ー内部における、営業中の(家畜が実際に飼

われている)畜舎の総面積「近隣畜舎面積」 および最も

近い|燐の農場までの距向性「農場開距l)JIU を計測して説明

変数とした。

結 果

1.農場で観察された野鳥の個体数

表2に、茨城県南部の農場142施設で観察された野鳥

の個体数を示した。農場周辺も含めて、観察個体数の多

かった上位6種を列挙する と、スズメ2,782羽、ハシブ ト

ガラス 1,414 ;:J~ 、 ドバト 465~~、ツ バメ 27n~、ムク ドリ

245羽、キジバ ト18VFJとなった。これ以外の種は、 21IT1

合計の総観察個体数がいずれも61羽以下であり、これら

6種が牛、JI家、鶏の農場で多 く見られる重要種と考えら

れた。畜種別に畜舎への侵入数を見ると、スズメは牛、

豚、鶏いずれの畜舎にも侵入したのに対し、ハシブトガ

ラス、 ドバトは牛舎に多く侵入していた。また、 鶏舎へ

の侵入が見られたのはスズメ93羽、ムクドリ 15;:);Jだけで

あり、 スズメの侵入が特に多いことが明らかになった。

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表2. 茨城県南部の142農場で実施した調査で観察された野鳥の個体数*1

種名

スズメ

ハシブトガラス

営業中 休廃業

畜舎内 畜舎近傍 農場敷地内 農場周辺 計

Bird species

Passer montanus

畜舎内 畜舎近傍

牛豚鶏牛豚鶏

440 44 93 340 186 197

Corvus macrorhynchos 266 8 0 99 90 7

ハシボソガラス Corvus corone 010 000

カラス sp

ドバト

キジ、パト

ムクドリ

ヒヨドリ

ハクセキレイ

ツノfメ

ツグミ

その他

Corvus s ρ000 100

Columba livia 214 1 0 155 0 0

Streρroρelia orientalis 4 0 0 32 11 2

sρodioρsar cineraceus 14 0 15 23 9 29

Hyps砂etesamaurotis 0 0 0 0 1 1

Motacilla alba

Hirundo rustica

300 498

200 003

000 200

000 003

農場敷地内

牛豚鶏

農場周辺

牛豚鶏 牛豚鶏牛豚鶏牛豚鶏牛豚鶏

22 3 4 26 12 37 60 8 33 40 9 11 2,782

44 0 0 3 0 4 8 0 1 7 2 25 1,414

Turdus naumanni

Other birds

437 212 232 173 83 80

259 224 126 111 101 29

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ホ l 数値は2回の調査の合計を表す。観察位置により、「畜舎内J、「畜舎近傍」、「農場敷地内J、「農場周辺」の 4カテゴリーに分類して集計した。種名「その他」は、観察数の少なかったカルガモAnas

zonorhyncha、 トピ Milv附聞包rans、キジ Phasianuscolchicus、ヒバリ Alaudaarvensis、タヒバリ Anthusrubescens、モズ Laniusbucφhalus、ウグイス Cetti・adiρhone、オオヨシキリ AcrocePhalus

orientalis、シジュウカラ Parusminor、アオジ Emberizaspodocφhala、ホオジロ Emberizacioides、カワラヒワ Chlorissinica、オナガ CyanoPicacyanaの個体数を合計したものである。野鳥の種名

と学名は日本烏学会同に準拠した。カラス spは、ハシブトガラスとハシボソガラスのいずれか識別できなかったもの。

副議。

融神都・醐命、/3場、駅南しf~H一割』「泣瀦

、司、司

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78 家畜衛生学雑誌第39巻第 3号 (2013)

2.農場、畜舎に野鳥を誘引する要因

表 3および図 3に、 142の農場で観察された野鳥の個

体数を目的変数、前に述べた各種の要因群を説明変数と

した一般化線形混合モデルの概要を示した。野鳥の観察

範囲 4カテゴリーのいずれかで有意となった説明変数

は、切片以外では「畜舎侵入容易度」、「営業中かどうか」

「環境のモザイク度」、「観察範囲面積」、「季節」、「農場

開距離」であった。植生・土地利用や「畜舎面積j、「近

隣畜舎面積」等の説明変数はすべて棄却され、農場、畜

舎に野鳥を誘引する重要な要因ではないことが明らかに

なった。

説明力の低かった「季節」や、観察される個体数との

相関が当然予想される「観察範囲面積」以外の変数では、

「環境のモザイク度」が、全カテゴリーで負の要因とし

て選択された。また、「営業中かどうか」も全カテゴリー

で強い正の関係があり、野鳥は農場の立地等よりも、農

場で飼育されている家畜や飼料などの存在に誘引されて

いることが明らかになった。また、「畜舎侵入容易度Jは、カテゴリー「畜舎内」で強い正の関係が見られただ

けでなく、「農場敷地内」ゃ「農場周辺」でも正の関係

が見られ、開放的な畜舎の構造や、畜舎への野鳥の侵入

防止対策の不備等の要因によって、畜舎内から農場周辺

まで広く野鳥が誘引されていることが示唆された。「農

場開距離」は「農場敷地内」以外のカテゴリーで野鳥の

個体数と弱い負の関係があり、近隣に他の農場が存在す

る場合、野鳥が集まりやすくなる傾向が確認された。

3.畜舎への野鳥の侵入と防止対策

畜舎における野鳥の接近、侵入と、侵入防止対策の実

施状況の関係を畜種別に検討するため、畜舎内で観察さ

れた野鳥の密度を、畜種および対‘策状況別に集計したの

が表4である。牛では関口部の全面に金網等(金網や防

烏ネット等)を設置した事例はなかったが、「金網等を

部分的に設置」した10事例では平均の密度は0.52で、「対

表 3. 農場で観察された野鳥の個体数を目的変数、各種の要因群を説明変数とした

一般化棟形混合モデルによる分析結果

畜舎内 畜舎近傍 *: p>O.05

変数名 係数 標準誤差 z p(>lzl) 変数名 係数 標準誤差 Z p(>lzl)

畜舎侵入容易度 0.4278 0.03837 11.1507 。畜舎侵入容易度 0.1498 0.02033 7.3674 1.74E-13

営業中かどうか 1.403 0.1254 11.1922 。営業中かどうか 1.339 0.08407 15.9246 。環境のモザイク度 1E-05 2.74E-05 -0.3776 0.706* 環境のモザイク度 -4.3E-05 1.66E-05 -2.5718 0.0101

観察範囲面積 0.000193 1.16E-05 16.6258 。観察範囲面積 0.000146 6.16E-06 23.6611 。季節 8E-05 0.001806 -0.0442 0.965* 季節 0.004218 0.001272 3.3158 0.000914

農場開距離 0.00043 0.000121 -3.5483 0.000388 農場開距離 0.00021 5.51E-05 -3.8033 0.000143

切片 -2.357 0.445 -5.297 1.18E-07 切片 0.1418 0.2627 0.5395 0.59*

逸脱度: 1688 自由度- 276 逸脱度: 1956 自由度 276

AIC: 1704 AIC: 1972

農場敷地内 農場周辺

変数名 係数 標準誤差 Z p(>lzl) 変数名 係数 標準誤差 Z p(>lzl)

畜舎侵入容易度 0.07845 0.01206 6.5039 7.83E-11 畜舎侵入容易度 0.07903 0.01092 7.2361 4.62E-13

営業中かどうか 1.095 0.0617 17.7409 。営業中かどうか 0.9159 0.05223 17.5382 。環境のモザイク度 -7E-05 1.11E-05 -6.2773 3.45E-10 環境のモザイク度 -6.6E-05 1E-05 -6.6081 3.89E-11

観察範囲面積 9.33E-05 2.71E-06 34.4848 。観察範囲面積 5.08E-05 1.56E-06 32.5776 。季節 0.000875 0.00094 0.9306 0.352* 季節 一0.00048 0.000857 -0.5554 0.579*

農場開距離 -5.9E-05 3.56E-05 -1.6521 0.0985* 農場開距離 -0.00011 3.19E-05 -3.6042 0.000313

切片 1.45 0.163 8.898 。切片 1.675 0.1464 11.4416 。逸脱度: 2437 自由度: 276 逸脱度: 2353 自由度: 275

AIC: 2453 AIC: 2371

Page 8: 茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に ...茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に影響する要因と侵入防止対策の評価

百瀬ら:農場・畜舎への野鳥侵入と防止対策 79

畜舎侵入営業中か 環境の 観察範囲季節

農場間切片

容易度 どうか モザイク度 面積 距離

40.0

11.2 16.6

畜舎内 20.0

* • * 0.0 -0.4 0.0 -3.5 -5.3

20.0 -1 23.7

畜舎近傍 3.3 * 0.5

40.0 -2.6 34.5 -3.8

20.0 * 8.9

農場敷地内 0.00.9

* -6.3 32.6 -1.7

-20.0 • 17.5 11.4

農場周辺 1---- * 一一τ一一山町、白血一一

ー0.6 -3.6 -6.6

本:有意で、はない要因

図3. 畜舎内、畜舎近傍、農場敷地内および農場周辺で観察された野鳥の個体数に対する各

要因の影響。縦軸は、各説明変数の寄与の大きさを示すZ値(変数に対応する係数の

予測値の分布がゼロからどれだけ講離しているかを標準化して示した値)を表す。

表 4. 農場で畜舎への侵入が確認された野鳥の密度と畜種、侵入防止対策実施状況の関係*1

畜種 対策などのカテゴリー 例数合計スズメムクドリハト*2 カラス*2 その他*3

対策なし 47 0.72 0.45 0.03 0.l2 0.l2 0.01 牛

金網等を部分的に設置 10 0.52 0.21 0.00 0.l4 0.l8 0.00

対策なし 15 0.27 0.23 0.00 0.03 0.02 0.00

金網等を部分的に設置 6 0.30 0.30 0.00 0.00 0.00 0.00

日本 金網等100%設置かつ目合い 5~15cm程度(ムクドリ~カラス侵入可) 7 0.02 0.02 0.00 0.00 0.00 0.00

金網等100%かつ目合い 3cm程度(スズメ侵入可) 5 。o。0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

金網等100%かつ目合い 2cm以下(スズメ侵入不可) 1 。o。0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

関口部なし(穴あり) 1 0.l3 0.l3 0.00 0.00 0.00 0.00

関口部なし(穴なし) I 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

鶏 金網等100%未満または目合い 5cm程度(ムクドリ侵入可) 8 0.43 0.34 0.08 0.00 0.00 0.00

金網等100%かっ目合い 3cm程度(スズメ侵入可) 8 0.05 0.05 0.00 0.00 0.00 0.00

金網等100%かっ目合い 2cm以下(スズメ侵入不可) 2 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

キ 1 該当する農場の2回の調査の合計値を、農場数、観察範囲面積および、調査回数で割って、 l農場、畜舎面積100m2、調査1回あたりの値で示した。

'2 表中の「ハトJはドバトとキジ、パトの、「カラス」はカラス類2種の合計数を表す。

叫 表中に示した烏種以外の種はすべて「その他」としてまとめである。

Page 9: 茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に ...茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に影響する要因と侵入防止対策の評価

80 家畜衛生学雑誌第39巻第 3号 (20l3)

策なし」の0.72よりも少なかった。豚においても、「金

網等100%設置かっ目合い 5~15cm程度(ムクドリ~カ

ラス侵入可)Jが0.02、「金網等100%かっ目合い 3cm程

度(スズメ侵入可)Jおよび「金網等100%かっ目合い

2cm以下(スズメ侵入不可)Jが0.00と、目の粗い金網

等であっても開口部全面に設置することで、「対策なし」

の0.27や「金網等を部分的に設置」の0.30より侵入する

野鳥の密度が低い傾向があった。

鶏においても、「金網等100%未満または目合い 5cm

程度(ムクドリ侵入可)Jでは0.43と密度が高かったが、

「金網等100%かっ目合い 3cm程度(スズメ侵入可)Jで

は0.05、「金網等100%かっ目合 2cm以下(スズメ侵入

表 5. 茨城県南部の20養鶏場で観察されたスズメ、ムク

ドリ他の個体数

スズメ ムクドリ その他 鳥類計

鶏舎内侵入 93 15 。 108

鶏舎付近 197 29 24 250

農場敷地内 232 46 220 498

農場周辺 80 12 59 151 ム口、 言十 602 102 303 1.007

侵入率*1 15.4% 14.7% 0.0% 10.7%

キ 1 侵入率は、鶏舎内侵入の個体数を合計で告iUった値。

不可)Jでは0.00と、対策によって侵入を確実に減らせ 表6. 茨城県南部の20養鶏場における、野鳥侵入防止対

ることが明らかになった。また、開口部がない構造の鶏 策上の問題点*1

舎2例では、 1事例「開口部なし(穴なし)Jでは0.00

と侵入は見られなかったが、壁に破損があり、野鳥が侵

入できる穴があいていた 1事例 (1開口部なし(穴あ

り)J) では0.13と多少の侵入が見られたことから、侵入

防止対策の実施と共に、対策実施後の点検、補修が重要

であることも確認された。

家畜伝染病予防法にもとづく飼養衛生管理基準で野鳥

等の侵入防止対策が義務付けられているのは鶏舎(正確

には鶏その他家禽を飼養するための家禽舎)のみであ

り、これは日本国内で過去に発生した高病原性鳥インフ

ルエンザを想定しての措置と考えられる。そこで、野鳥

調査データを、鶏舎のみについてまとめたのが表5であ

る。観察された野鳥の内、鶏舎に実際に侵入した種はス

ズメ(のべ93個体)とムクドリ(のベ15個体)のみであっ

たため、他種の野鳥はすべて「その他」として集計しで

ある。

これら 2種の内、体の小さいスズメの侵入を防ぐこと

が対策上重要で、あると考えられる。飼養衛生管理基準で

は、野鳥等の侵入防止対策として、網目の大きさが

2cm以下の金網等を家禽舎の開口部に設置するよう指

導している。また、定期的に設備を点検し、破損がある

場合には、遅滞なく修繕することとしている。これに対

応して、現場での対策実施状況を把握するため、野鳥調

査と同時に行った畜舎構造や野鳥侵入防止対策の実施状

況調査の結果から、養鶏場(鶏舎)に限定して、問題点

別に例数をまとめたのが表6である。

調査対象とした20農場中、鶏舎の構造および侵入防止

対策に問題がないと評価できたのは l事例のみであり、

他の事例では対策手法や施設の構造、維持管理の方法に

何らかの問題があった。具体的には、対策手法に問題の

ある事例「金網等の日合いが過大」が80%(16事例)、

維持管理上の問題「金網等や鶏舎外壁に野鳥が潜り込め

対策項目 具体的な問題点 該当該当ありなし

対策手法 金網等の目合いが過大 16 4

維持管理金網等や鶏舎外壁に野鳥が潜り込

15 5 める穴が聞いている

鶏舎の設計 鶏舎の構造に隙聞などがある 3 17

日常管理 人の出入り口が閉められていない 19

事 i 複数該当を含む

る穴が聞いている」が75%(15事例)、鶏舎の設計の問

題「鶏舎の構造に(屋根の下や金網の取付部分等、野鳥

が潜り込める)隙聞などがある」が15%(3事例)、日

常管理の問題「人の出入り口が閉められていない」が

5 % (1事例)で見られた。

考察

1 .農場で観察された野鳥種および個体数

本研究では、 142の農場で各 2回実施した調査で、 23

種、のべ5,603羽の野鳥が確認された。 ARTOISらは、養鶏

場等と接触する可能性のある野鳥としてカラス (Corvus

spp.)、カモ (Anasspp.)、サギ (Egrettaspp.)、 トビ

(Milvus spp.)、ハト (Columbaspp.)、スズメ (Passer

spp.)、ムクドリ (AcridotheresまたはSturnusspp. (表2

ではSρodio針。fと表記))を挙げている 1)が、本研究で

はこれらの内サギ以外のすべてのグループに属する種が

確認された。また、特に問題が大きいと考えられる畜舎

への侵入に限ると、牛舎ではハシブトガラス、ドバト、

スズメ、豚舎ではスズメ、そして鶏舎ではスズメ、ムク

ドリの侵入が多く見られた。ただし、今回の調査結果

は、 4月から 6月という、限られた時期における観察に

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百瀬ら:農場・畜舎への野鳥侵入と防止対策 81

基づくものであり、例えば冬期など、鳥類にとっての餌

量が減少する時期には、農場や畜舎に飛来する鳥類の個

体数も増える可能性がある。こうした季節変動の問題に

関しては、今後更に調査を行って明らかにする必要があ

る。

2.農場、畜舎に野鳥を誘引する要因

農場、畜舎に野鳥を誘引する要因を分析した一般化線

形混合モデルにおいて、変数として採択されたのは「畜

舎侵入容易度」、「営業中かどうか」、「環境のモザイク

度」、「観察範囲面積」、「季節」、「農場開距離」の 6変数

であった。これらの内、「畜舎侵入容易度j、「営業中か

どうか」、「観察範囲面積Jには野鳥の個体数と強い正の

関係が見られた。「季節」には「畜舎近傍」カテゴリー

のみ弱い正の関係が見られた。野外調査を行った時期は

野鳥の繁殖期であり、季節が進むにつれて幼鳥の数が増

加したため、季節と野鳥の個体数に正の関係が見られた

可能性がある。

また、「環境のモザイク度」には「畜舎内」以外のカ

テゴリーで弱い負の関係が見られた。このことの理由と

して、本研究を行った調査地では、比較的環境のモザイ

ク度が低い環境である河川の氾濫原や水田地帯に、複数

の酪農牧場が集合していたことが挙げられる。酪農牧場

は開放的な構造であることが多く烏が侵入しやすいた

め、結果として野鳥の個体数と「環境のモザイク度」の

聞に負の関係が見られたものと考えられる。また、「農

場開距離」と野鳥の個体数には「農場敷地内j以外のカ

テゴリーで弱い負の関係が見られたことから、他の農場

が近くに存在する込み合った農場には、野鳥が集まりや

すいという傾向が示された。

植生・土地利用に関わるこれ以外の変数や、農場の面

積等の変数はモデルに採択されなかったことから、畜舎

や農場に野鳥を誘引する主要因は農場の立地や規模より

もむしろ、「営業中かどうか」で示されたように農場に

家畜やその飼料など野鳥にとっての餌資源が存在するこ

と、そして、「畜舎侵入容易度」で示されたように、そ

れを得やすくする要因として、畜舎が開放的で、侵入しや

すい構造であること、あるいは畜舎への野鳥侵入防止対

策が充分に講じられていないことが、主たる要因である

ことが明らかになった。しかし、今回解析した一般化線

形混合モデルでは、変量効果を指定したにも関わらず過

分散が解消しきれなかった。従って、家畜に与える飼料

の種類や給餌方法等、今回考慮しなかった要因がさらに

存在する可能性は否定しきれず、今後の研究で解明する

必要がある。

3.畜舎への野鳥の侵入と防止対策

今回の調査で、対象となった農場における野鳥侵入防

止対策の導入割合は、午では18%(57事例中10事例)、

豚では56%(34事例中19事例)と低く、侵入防止対策の

導入はあまり進んでいないことが確認された。鶏に関し

ては、前述の飼養衛生管理基準で野鳥等の侵入防止対策

が義務付けられていること、また、本研究を実施した地

域(茨城県南部)の一部で、2005年にHPAI(H5N2亜型、弱毒タイプ)が発生したことなどからIペ野鳥の侵入防

止対策の導入割合は100%(20事例中20事例)であった。

しかし、その95%(19事例)で、鶏舎の開口部に設置し

た金網等の目合いが過大、金網等や鶏舎の外壁に穴があ

いているなど、対策手法や維持管理上の問題が見られた

(表 6)。そして、野鳥の侵入防止対策を適切に実施して

いる鶏舎ほど、スズメ等の野鳥の侵入数が少ない傾向が

あり、開口部が全くないか、開口部に適切な目合いの網

を張っている農場では野鳥の侵入が見られなかった(表

4)。以上のように養鶏場においても、スズメなどの野鳥侵

入防止対策は普及しているが、対策の実施方法や維持管

理に不十分な場合があり、実際には多くのスズメ、ムク

ドリが侵入していることが明らかになった。スズメ等の

野鳥ではHPAI、ニューカッスル等のウイルス23)やマイ

コプラズマ 8)等の感染が報告されており、これら病原体

が鶏舎内に持ち込まれる可能性を考えると、こうした状

況は危険である。国外では、スズメがH5N1亜型HPAIに自然感染した事例が報告されている 5 四 o YAMAMOTO

らは、飼育下の日本産スズメを用いた感染実験により、

H5N1 HPAIを接種したスズメから鶏に対して致死量の

ウイルスが排世されうることを報告した剖)。また、 2004

年日本でのハシブトガラスのH5N1HPAI感染は、ウイ

ルス感染鶏の艶死体を摂食したことが原因と推測されて

いる11mo これらの知見は、鶏舎周辺に生息するスズメ

やカラス等を介して、 H5N1HPAIが養鶏場内外や周辺

環境に媒介される可能性を提示している。特に、我々の

研究によって、スズメやムクドリなど特定の烏種が鶏舎

に頻繁に侵入しうることが明らかとなり、この 2烏種の

家禽へのH5N1HPAI媒介リスクは、他の烏種よりも高

いことが示唆された。

こうした観点からも、 H5N1HPAI等の疾病リスクを

可能な限り低減するため、養鶏場他の農場において、鶏

舎(畜舎)開口部全面に、スズメ等の野鳥の侵入を防ぐ

ことができる目合い 2cm以下の金網や防烏ネット等を

設置するなど、適切な野鳥侵入防止対-策を講じること、

さらに定期的な点検、補修により、野鳥が入り込める隙

聞などを確実にふさぐことが大切で、あると考えられる。

Page 11: 茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に ...茨城県南部での調査による農場、畜舎への野生鳥類の侵入 に影響する要因と侵入防止対策の評価

82 家畜衛生学雑誌第39巻第 3号 (2013)

今回の調査は茨城県南部で実施しており、侵入する野鳥 65-75.

の種類や季節的変化など地域によって必ずしも一致しな 8) GHARAIBEH, S., HAILA T, A. (2011) Mycoρlasma

い可能性がある。しかし、今回明らかになった問題点や galliseρticum experimental infection and tissue

対応に対する知見は我が国での対策を考える上で有用な distribution in chickens, sparrows and pigeons.

基礎資料となると考えられる。 Avian Pathology. 40, 349-354.

謝 辞

(独)農研機構・中央農業総合研究センターの山口恭

弘氏には、野外調査(予備調査)にご協力いただいた。

(独)農研機構・動物衛生研究所の山本佑氏、勝目賢

氏、犬丸茂樹氏には、本報告を作成するに当たり多くの

助言をいただいた。ここに記して深く感謝する。

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要 l:::. 目

茨城県南部の142農場で野鳥の個体数と畜舎への野鳥

侵入防止対策の実施状況を調べた。農場やその周囲で多

く見られたのはスズメ、ハシブトガラス、 ドバト、ツバ

メ、ムクドリ、キジ、パトの 6種だった。スズメは牛、

豚、鶏で畜舎、ハシブトガラス、 ドバトは主に牛舎、ス

ズメ、ムクドリは鶏舎への侵入が見られた。畜舎内部、

畜舎近傍、農場敷地内、農場周辺で観察された野鳥の個

体数と、農場の営業状態、農場や畜舎の面積や密集度、

農場周囲の植生・土地利用との関係を分析したところ、

野鳥の個体数と畜舎侵入容易度、営業中かどうか、観察

範囲面積の聞に強い正の関係が見られた。他の要因には

強い説明力がなく、農場に野鳥が誘引される主要因は、

農場内に家畜やその飼料など野鳥の餌資源が存在するこ

と、開放的な畜舎構造や侵入防止対策の不備により、野

鳥が畜舎内に容易に侵入できること、であると示され

た。畜舎への野鳥侵入防止対策については、牛、豚では

対策なしの事例が多かったが、法的な義務付けのある鶏

で、は全農場が対策を行っていた。しかし、大部分の鶏舎

で金網等の目合いが過大、金網等に穴があいている等の

問題が見られ、正しい対策の実施と、定期的な点検、補

修の必要性が明らかになった。

キーワード:農場衛生管理、野生動物、微生物汚染