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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 1

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「SmaartLiveではじめよう!」基本的な測定の設定と手順Paul D. Henderson

Program in Architectural Acoustics, Rensselaer Polytechnic Institute

 本書はSmaartLiveを使った音響システムや機器の基本的な測定を学ぶ入門編だ。 ここではSmaartLiveの機能や測定に必要

な基本的なハードウェアを説明している。 一連のチュートリアルは、 システム測定の簡単な紹介にもなるだろう。

1.1.1.1.1.     SmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLive ののののの主主主主主ななななな測測測測測定定定定定機機機機機能能能能能 SmaartLiveはソフトウェアベースのデュアルチャンネル・オーディオアナライザで、プロオーディオに必要な多数の測定作業に

対応するものだ。しかし厳密なリスニングやプロの経験に取って代わろうというものではない。設定や問題解決、システムの最

適化などに使用する測定プラットフォームであり、 大きな利点をもたらすものだ。表1にSmaartLiveの基本測定モードを、一般

的な用途や機能の概要とあわせて紹介した。

測定モード

スペクトラム(Spectrum)

伝達関数(Transfer function)

インパルス(Impulse)

主な機能

・リアルタイム・スペクトラムアナライザー

・ナローバンド、 分数オクターブでの表示

・SPLメーター付きで実際の音圧レベルに合わ

せた調整が可能

・音圧ログやスペクトログラフ機能

・リアルタイムの伝達関数による分析

・音圧と位相は表示設定が可能

・ナローバンドと FPPO(オクターブごとの固定

点)での分析に対応

・リアルタイムでのコヒーレンス表示

・インパルス応答測定

・リニア、対数、ETC(Energy Time Curve)での表示

・通過遅延時間の自動見積機能

用途

・ライブソースのスペクトル監視

・ライブパフォーマンス中の音圧レベル監視

・ノイズレベルの分析

・フィードバックの検知

・スピーカー、イコライザー、音響システム

を伝達関数で測定

・システム(EQ、クロスオーバー、ディレイ

など)をリアルタイムで最適化

・システムなどのインパルス応答測定

・スピーカーディレイの設定など

表 1 SmaartLive の基本的な測定モード

 表1での機能に加え、SmaartLiveは、プロセスを簡略化するために測定に適したシグナルジェネレーターを内蔵している。 こ

のため他に専用のテスト信号発振器を使う必要はない。 またスピーカープロセッサー、イコライザーなどの外部機器制御という

重要な機能も持っている。 この有用な機能については残念だが本書では述べない。

SIA Sofetware Company, Inc.は本製品の取り扱いが適切でなかったために生じた損失には何ら責

任を負うことはありません。適切な入力と出力のレベル、インピーダンス、システム中の配線を理

解してから本書にある測定を行ってください。

2.2.2.2.2.     SmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLive ののののの基基基基基本本本本本セセセセセッッッッットトトトトアアアアアッッッッップププププににににに使使使使使ううううう機機機機機器器器器器 SmaartLiveを効果的に使うためには、測定用のポータブルタイプの機器が必要だ。下記のリストはSmaartLiveでの測定に使

う基本的な機器の概略を紹介したものだ。 測定に対応するシステムとの接続は後述する。

機器

測定マイク  簡単な電気機器より大きいシステムなどを測定する場合、音声信号を収音する測定マイク

が必要になる。マイクの基本的な仕事は、あるポイントでの音圧を可能な限り高い精度で

電圧に変換することだ。このためマイクは周波数特性がフラットで無指向性のものにする。

市販の測定マイクはエレクトレットコンデンサー型が多いので、 プリアンプからファンタム電

源を送るか乾電池を入れて電源を供給しなければならない。精密に特性を調整した上で音

圧を測定する場合は、 マイク調整器が必要になる場合もある。

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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 2

 マイクのインターフェースとしてプリアンプが必要だ。ノイズフロアが低く、ゲインが十分

にあって使いやすいものを選ぼう。ほとんどの測定マイクに対応するよう、ファンタム電源を

供給できるものがいい。

 小さいミキサーやルーター、ハウスミキサーをプリアンプ代わりに使うことがある。この場

合は使う前にチャンネルプロセシング(EQ、ダイナミックプロセッサーなど)をフラットにする。

SmaartLiveを完全に機能させるには、少なくとも2つのラインレベル入力チャンネル(たいて

いは 1 つのステレオ入力になっている)とラインレベル出力を装備したサウンドカードが必要

だ。ノートパソコンによってはモノラル入力しかない場合があるので確認しておこう。ステレ

オ入力がないとトランスファー・ファンクション・モードやインパルス・モードの機能を完全

には使えない。

 外付けのハードウェアを使ってもいいだろう。 高品質の A/D、D/A コンバーターと内蔵マ

イクプリアンプを組み合わせたものだ。現場では大変便利で、USB、PCMCIA、FireWire

といったインターフェースに対応したものがある。 入力機器はWindows互換のWAVEオー

ディオデバイスドライバが使えるものにする。SmaartLiveはASIOなど他のドライバをサポー

トしていないので注意されたい。

 パソコンはSmaartLiveの最小必要条件を満たしたものにする。この条件はSmaartLiveの

ユーザーガイドに表記されているし、SIAソフトウェアのウェブサイト(http://www.siasoft.com)

でも確認できる。 現場に持ち出す場合はもちろんノートパソコンが便利だ。

 測定システムと、測定される機器とを接続するケーブルも必要だ。業務用レベルのケー

ブルだけを使い、程度の低いアダプターや民生レベルのケーブルは使用しない。パソコン

のサウンドカードにφ 3mm の 3 極ステレオジャックしかない場合、 φ 6.3TRS や XLR3 相当

に変換するケーブルが必要になる場合もあるだろう。

マイクプリアンプ

3.3.3.3.3.     SmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLive ににににに信信信信信号号号号号ををををを送送送送送るるるるる これでSmaartLiveに必要な機器がそろったので、ハードウェアを認識させたり

システムの信号レベルを調整するなど、セットアップの手順を説明しよう。サウン

ドカードがオンラインになっている(外付けの場合は接続されている)ことを確認して

から SmaartLive を起動する。 外付けのサウンドデバイスを使っている場合は

SmaartLive の起動中に外さないようにする。 サウンドカードを選択するには、 メ

ニューの 「Options」メニューの 「Devices」をクリックするか Alt+A を押す。 こ

れで図 1 のウインドウが開く。 「Wave In」ドロップダウンボックスの中から入力

に使うサウンドカードを選び、「Wave Out」ボックスで同様に出力を選ぶ。入力

や出力の解像度が 16ビットより高ければ「Bits Per Sample」ボックスで適切な

数値を選択する。これでサウンドカードの出力や入力に機器を接続できるようにな

り、 SmaartLive は信号を正しく処理できるようになる。

 サウンドカードの多くは内部のミキシング回路で多くの音声をミックスしてマ

スター出力へ送っているか、あるいは入力の信号を選択したりミックスするよ

うになっている。 こうしたオプションを設定する場合は、 ラインレベル入力と

WAVE 出力が使えるように設定する。 この設定を Windows のミキサーソフト

から行える場合がある。 図 2 を参照されたい。 ミキサーを起動するには

SmaartLive で Alt+V を押す。

 レベルも注意しよう。シグナルジェネレーターにあるジェネレーター用のレ

ベル設定スピナーで制御する。デフォルトは機器を損傷しないよう低く設定さ

れている。サウンドカードの出力信号レベルは、サウンドデバイス用の出力レ

ベル設定とミキサーの設定によって変化する。ほとんどの測定でシグナルジェ

ネレーターを使うので、測定にノイズを混ぜないようジェネレーター全体のレ

ベルを十分高めにするが、損傷の原因になったり居心地が悪いほど高くはし

ないことだ。

サウンドカード

パソコン

ケーブル

コネクター

図 1 サウンドカードを入力と出力のデバイスとして選択する

図 2 必要に応じて入力(a)と出力(B)のミキサーをデバイスに合わせる

a b

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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 3

 とはいえ、入力レベルは慎重に調整しなければならない。サウンドカードのA/

Dコンバーターをクリップさせず、それでいて外部からのノイズを最小限にできる

だけのレベルを維持しなければならないのだ。 SmaartLive が起動しているとき

は常に図3の入力メーターが動いているので、A/Dコンバーターでのピーク入力

レベルを見られる。 レベルが低すぎる(図 3a 参照)と、サウンドカードや他のアナ

ログ機器からのノイズ測定に影響を与えることもあり得る。高すぎるとクリップイン

ジケーターが点灯(図3c参照)するので、有用な測定ができるように入力レベルを

下げる。 ほとんどの測定では入力レベルを -12 と -6dB の間に維持しておく。

4.4.4.4.4.     測測測測測定定定定定ののののの例例例例例 さて、それではSmaartLiveを使った基本的な測定の例をいくつか見てみよう。以降のページでスペクトルを見たり(RTA)、伝

達関数による測定(トランスファー・ファンクション・モード)やインパルス応答の測定(インパルス・モード)における基本を紹介し

ていく。使用例は順を追って複雑になるよう並べてある。先の例を元にした例もあるので順番にしたがってお読みになることをお

奨めする。使用例それぞれに基本的なハードウェアの接続と測定結果を紹介した。実際に測定されたデータが紹介したものと違っ

ていることもあるだろう。 ここでは参考のために測定結果を紹介していることをご承知おきいただきたい。

使用例使用例使用例使用例使用例 11111     SmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLiveSmaartLive をををををリリリリリアアアアアルルルルルタタタタタイイイイイムムムムム・・・・・スススススペペペペペクククククトトトトトラララララムムムムムアアアアアナナナナナララララライイイイイザザザザザーーーーー(RTA)(RTA)(RTA)(RTA)(RTA)とととととしししししててててて使使使使使ううううう SmaartLive の最も基本的な機能はスペクトラム・モードで、 2 チャンネルのリアルタイム・スペクトラムアナライザーとして機

能するものだ。ハードウェアの RTA によく似た機能で、 入ってきた信号を周波数帯に分けて動的に表示する。 デフォルトでは 2

つのチャンネルをエネルギー対周波数のバーグラフでリアルタイムに表示する。 バーは 1/12 オクターブ幅だが変更もできる。

シシシシシススススステテテテテムムムムムののののの接接接接接続続続続続

 このモードで使うとき、サウンドカードに音声信号が1つ入力さ

れていればいい。スペクトラム・モードでは2チャンネルを同時

に監視できるので、一方のチャンネルに測定マイクを、もう一方

にミキシングコンソールの出力など他の信号を接続することもで

きる。

 図 4 に使用するハードウェアを示した。 入力

ソースがラインレベルの場合もあるとは思うが、

入門編ともいえる測定なので練習のためにマイク

とプリアンプを使用する。ここでSmaartLiveを起

動してスペクトラム・モードのデフォルト状態に設定しよう。モー

ドボタンをクリックすれば測定モードを好きなときに切り替えられ

る。 をクリックすればリアルタイムの測定が始まる。

 この時点で図 5 のように入力信号が帯域ごとのスペクトルに

なって表示されているはずだ(デフォルトでは両チャンネルとも表

示されている)。マイクを使っている場合、 スペクトルは室内のノ

イズやマイクの近くで吹いた口笛などに反応し、 該当する帯域だ

けが目を引くように高く伸びる。

 スケール・スピナーを使えば入ってくる

データを違うスケールで見ることもできる。1/

1oct、1/3oct、1/6oct、1/12oct、1/24oct が

選択できるし、ブロードバンドのスペクトル表

示では周波数軸を対数とリニアのいずれかに

設定することもできる。

 また基本的な FFT(高速フーリエ変換)のパ

ラメーター、平均化、処理するサンプル数の設定も可能だ。スペ

クトルが動く時間を設定するときに平均化(Averaging)を使う。瞬間

的な信号の動きを見たり、長めの時間を設定して含まれるスペク

トルを見ることもできる。この機能にはSlow、Fastなど設定可能

なオプションがある。 ディケイをゆっくる表示する Exp、メモリー初期化後からの信号を均等に処理する Inf、均等に処理する測

a b c図 3 入力レベルは低すぎ(a)たり高すぎ(c)たり

しないよう基本的な測定では -12 から -6dB付近に合わせておく

測定マイク

ミキシングコンソール

マイクプリアンプ

ライン入力

L

R

図 4 RTA 測定のシステム例

図 5 デフォルトの RTA スペクトラムディスプレイ 1/12oct

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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 4

定回数を1から128の数字で選択できるオプションもある。キーボー

ドの V を押すと平均化バッファが初期化される。

 スペクトラム・モードには他にも役に立つ機能が数多く用意されてい

る。絶対的な調整機能、 SPL メーターやログ、リアルタイム・スペ

クトログラフ(図6)などだ。こうした機能はアクティブな入力チャンネル

の表示データだけに使える。チャンネルをアクティブにするには、対

応する入力レベルメーターをクリックすればいい。

 スペクトラム・モードにはハウリングの原因になる周波数を特定した

り、カバーエリアのノイズを探したり、音楽ソースに含まれるスペクト

ルを表示する、 など多くの用途がある。 昔からシステムの周波数特

性を測定したり、 イコライザーを調整するために RTA を使うことが多

かったが、私は推奨しない。SmaartLiveは、こうした目的により有用

で正確な伝達関数(トランスファー・ファンクション)による測定に対応し

ているからだ。スペクトラム・モードは本来、反射を含むエネルギー

から直接音を分離したり、信号と関連しないノイズを区別することがで

きない。音響システムの特性を最善にするところまでがこのモードの

限界なのだ。

使用例使用例使用例使用例使用例 22222     アアアアアナナナナナロロロロログググググのののののイイイイイコココココララララライイイイイザザザザザーーーーーををををを測測測測測定定定定定すすすすするるるるる この例では、 SmaartLive でリアルタイムの伝達関数(トランスファー・ファンクション)による測定機能を使ってアナログイコライ

ザーの周波数特性を測定してみよう。この例にはイコライザーやクロスオーバーなど、何らかのフィルターを持つプロセッサーが

必要だ。アナログ機器が良い。入力から出力へ到達するまでに遅延が発生するデジタル機器を使用する場合は、SmaartLiveの

内蔵シグナルディレイでその遅延を探し出して補正する(この部分については他の使用例で説明する)。

シシシシシススススステテテテテムムムムムののののの接接接接接続続続続続

 システムは図 7 のように接続し、サウンドカードの出力両チャンネルをサウ

ンドカード右ch入力(リファレンス入力と呼ぶ)とイコライザーに接続する。イコ

ライザーの出力は左 ch入力(測定入力と呼ぶ)に接続する。SmaartLiveの内

蔵シグナルジェネレーターからイコライザーに信号を送り、その特性を測定す

るのだ。この接続方法なら SmaartLive がジェネレーターの出力信号そのも

のとイコライザーから戻ってきた信号を比較することになり、サウンドカードに

よる不完全さは影響しない。

信信信信信号号号号号レレレレレベベベベベルルルルルののののの調調調調調整整整整整

 SmaartLiveのジェネレーターを起動するときはGenerator Onボタンをクリッ

クする。システムがランダムピンクノイズを発振し始め、サウンドカードから出

力される。デフォルトではジェネレーターのレベルが低い(-36dB)ので、ジェネレーターレベルスピナーで適当なレベルまで増大

する。システムのダイナミックレンジに合わせて、またイコライザーが実力を発揮できるだけのレベルにしよう。-6dB付近にする

のが黄金律で、 内蔵ジェネレーターの特性が最も良くなるレベルだ。

 アナライザーが機能していないときは をクリックする。それから入力を調整して入力信号を適切なレベル(図3参照)

に合わせる。イコライザーがバイパスになっているか調整部が0dBになっているとき、トランスファー・ファンクション・モードの

表示はおよそフラットな線になっているはずだ。フラットになっていない場合はシステムのゲイン構成に問題があるか、機器自体

にゲインを付加したり低減する要素があると思われる。 チャンネルゲインをそれぞれ補正するか、 dB +/-

スピナーでトランスファー・ファンクションの表示が 0 レベルになるように調整しよう。

トトトトトララララランンンンンスススススフフフフファァァァァーーーーー・・・・・フフフフファァァァァンンンンンクククククシシシシショョョョョンンンンン・・・・・モモモモモーーーーードドドドドでででででののののの測測測測測定定定定定

 SmaartLiveのトランスファー・ファンクション・モードでは、入力信号と出力信号を比較してシステムの周波数特性を測定する

ことができる。この測定は2つの信号の違いを音圧と位相の両方で表し、システムのプロセシングによる動作を周波数の作用で

表示する。 ゲインと損失は、 マグニチュード・トレスが中心 0dB のラインからどの程度離れているかで表す。

 イコライザーでフィルターを調整すると、周波数領域の表示に変化が見られるはずだ。誤って入力信号を逆に接続すると、イ

コライザーをアッテネート(カット)したときにピークが表示される。この場合は入力ケーブルを差し替えるか、 をクリックし

て信号を反転させ、 適切に表示されるようにする。

図 6 スペクトラム ・ モードでの測定例

a スペクトログラフ

b SPL の履歴

c リアルタイムでの SPL

イコライザー入力出力

ライン入力 ライン出力L

R

L

R

図 7 イコライザーを測定する場合の接続例

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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 5

 SmaartLive のトランスファー・ファンクション・モードは

FPPO(オクターブごとの固定点)がデフォルトだ。 つまり伝達

関数による測定のポイントが対数の周波数スケールに沿って等

間隔で並んでいるので、周波数によってFFT長が違う。幅が

均等なFFTのパラメーターやサンプリングレートの違いを試し

てみる場合は、 信号を入れてさまざまなパラメーターを変化

させるといい。 また をクリックすると伝達関数での位

相(さらに音圧)が周波数の作用として表示される。図8にパラ

メトリックイコライザーを測定した例を位相プロット付きで紹介

した。

 この測定で注意すべき点は、イコライザーを通過することに

伴う遅延を補正していないことだ。 これはアナログイコライ

ザーがもたらす遅延が計算に使う FFT長に比べて影響するほ

ど大きくないからだ。デジタル機器、スピーカー、あるいは

電気音響システムを測定する際は、まず通過遅延時間を測定してSmaartLiveの内蔵アライメントディレイで外部システムをサポー

トしなければならない。 この部分は次の例で紹介しよう。

使用例使用例使用例使用例使用例 33333     スススススピピピピピーーーーーカカカカカーーーーーシシシシシススススステテテテテムムムムムののののの測測測測測定定定定定 この例では、 インパルス・モードとトランスファー・ファンクション・モードを使って、 室内にあるスピーカーの動作を測定す

る。この例にはスピーカーとパワーアンプ(あるいはパワードスピーカー)が必要だ。

シシシシシススススステテテテテムムムムムののののの接接接接接続続続続続

 システムは図 9 のように接続する。 サウンド

カードの出力はアンプとスピーカーに接続する

が、 先の例と同様にパソコンの右 ch 入力(リ

ファレンス信号)にも接続する。今回は測定信号

をマイクで収音するので、 その信号をマイクプ

リアンプを通してサウンドカードの左ch入力に接

続する。

 測定マイクをスピーカーからある距離だけ、

たとえば 1m ほど離して設置したい場合がある

だろう。マイクがスピーカーから離れれば離れ

るほど、直接音と部屋の反射音による影響とを

区別することが難しくなるので注意しよう。

信信信信信号号号号号レレレレレベベベベベルルルルルををををを調調調調調整整整整整すすすすするるるるる

 次にシステム全体のゲイン構成が適切になるよう信号レベルを調整しなければならない。 をクリックしてスペ

クトラム・モードに切り替え、アナライザーを起動する。その前に内蔵シグナルジェネレーターを起動して、スピーカーからのサ

ウンドレベルが室内の環境騒音よりかなり高くなるよう設定する。最初はアンプのゲインを低くしておき、そこからゆっくり上げて

いって予期しない大音量が再生されないようにしよう。次にサウンドカードの入力レベルとマイクプリアンプのゲインで入力レベル

を調整するが、ガイドラインは図3の通りだ。最高の結果を出すためには、リファレンス入力と測定入力のレベルが限りなく近づ

くよう設定することだ。 そのためにプリアンプのゲインをきちんと調整しなければならない。

イイイイインンンンンパパパパパルルルルルススススス応応応応応答答答答答ののののの測測測測測定定定定定とととととデデデデデーーーーータタタタタののののの読読読読読みみみみみ方方方方方

 これで室内に設置したスピーカーの基本的なインパルス応答を測定してみよう。 ボタンをクリックしてイン

パルス・モードに切り替える。 SmaartLive は自動的にシステムのインパルス応答を測定しはじめ、 ウインドウにグラフを表示す

る。 Start をクリックするといつでも別のインパルス応答測定が開始される。 測定例を図 10 に紹介しよう。

 図10で示したインパルス応答は、無響室以外の場所(つまり反射する表面を持つ室内)でスピーカーを測定したときに見られる

典型的なものだ。インパルス応答はマイクに到達するエネルギーの履歴を表示するもので、 何を測定しているのか理解するた

めにとても有用だ。図10は対数(Log)タイプの画面でインパルス応答の音圧をdBで表示している。SmaartLiveではまた、イン

パルス応答をリニア・スケール(極性情報を維持している)や、インパルス応答のディケイ・エンベロープに忠実なETC(Energy-

Time Curve)でも表示可能であり、いずれも単位は dBだ。図10のプロット冒頭部分にある大きなピークはスピーカーからの直

接音によるもので、 この場合とても興味深い部分になる。 SmaartLive はこのピーク時間と絶対値を自動的に検知するが、 この

図 8 アナログパラメトリック ・ イコライザーの測定例

測定マイク

マイクプリアンプ

スピーカー

パワーアンプ

ライン出力ライン入力L

R

L

R

図 9 スピーカー測定システムの例

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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 6

測定では 2.29msec の遅延時間を伴って到達している。 この遅延はス

ピーカーからマイクまで、 およそ 2.5 フィート(約 75cm)の距離を空気を

伝わってくるために発生したのだ。トランスファー・ファンクション・モー

ドではこの考え方で通過遅延を補正する。インパルス応答に現れた他の

エネルギーは室内の反射と測定に割り込んだノイズのものだ。ノイズフ

ロアは一定の平均レベルを持っていることで見つけられる。測定の精度

は、直接音とこのノイズレベルとの S/N 比で決まるのだ。

スススススピピピピピーーーーーカカカカカーーーーーをををををトトトトトララララランンンンンスススススフフフフファァァァァーーーーー・・・・・フフフフファァァァァンンンンンクククククシシシシショョョョョンンンンン・・・・・モモモモモーーーーードドドドドででででで測測測測測定定定定定すすすすするるるるる

 次にSmaartLiveのトランスファー・ファンクション・モードで周波数特

性を測定してみよう。 をクリックしてトランスファー・ファ

ンクション・モードに切り替え、アナライザーが動作していることを確認

する。 ここでスピーカーとマイクの間の通過遅延を補正するため、

SmaartLive の内蔵ディレイを設定する。 このためには ボタンをクリックしよう。 SmaartLive

がバックグランドでインパルス応答を測定し、 自動的にディレイタイムを算出する。 「Delay Found」と

いうダイアログボックスが表示されたらディレイ時間の測定は完了だ。Insert Delayをクリックすれば表示

されたディレイタイムが挿入され、トランスファー・ファンクション・モードでの測定中は通過遅延が補正

される。

 表示されたディレイタイムが不自然なほど長い場合は、リファレンス入力と測定入力を差し替えてみる

といい。単純に入力ケーブルを差し替えて再度トライしてみよう。このプロセスはインパルス・モードでも使う場合がある。イン

パルス・モードでは をクリックするだけで、 ピークに到達するまでのトランスファー・ファンクションの

ディレイが設定される。

 ディレイプリセット機能を使えば、ディレイタイムをいくつか保存しておいてキーボード

から素早く呼び出すこともできる。位置の異なるマイクを切り替えたり、測定マイクとイコ

ライザーを切り替えるときなどに便利だ。 現在の数値をプリセットにアサインするには、

ディレイボックスの上にあるラベル をクリックして、オプションダイアロ

グボックスの上にある

ディレイタブの F 6 から

F10 をクリックすればい

い。これでキーボードの

対応するファンクション

キーを押せば、 ディレイ

を好きなときに呼び出せ

る。この例でF6とマーキ

ングされたボタンをクリックすると現在のディレイが最初のプリセッ

トとして保存される。あとはOKをクリックしてダイアログボックス

を閉じる。

 トランスファー・ファンクション・モードでアナライザーを使って

いるとき、スピーカーの周波数特性(エネルギー対周波数)がウイ

ンドウに表示されているはずだ。例を図11に示した。このトレス

はかなり不自然だ。伝達関数による測定を安定させたいときは、 Avgスピナーを使って平均化する数を増やせばいい。 16以上

に設定すると反応が良くなる。

測測測測測定定定定定しししししたたたたたトトトトトレレレレレスススススをををををリリリリリフフフフファァァァァレレレレレンンンンンスススススレレレレレジジジジジスススススタタタタターーーーーににににに保保保保保存存存存存すすすすするるるるる

 SmaartLiveのリファレンスレジスターは、アクティブのライブトレ

スを取り込んで保存する機能だ。リファレンスレジスターはプロット

エリアの下側にある。5つのグループに色分けされていて、Aから

E のラベルが付いた小さなボタンで表示されている。

 レジスターのA1(Aグループ最初のレジスターボタン)をクリックしてみよう。A1がすでに押されていても、こ

れでレジスターがアクティブになる。

 プロットエリアの下にある をクリックするとトレスが取り込まれ、現在のトレスに重ねて表示される。 をクリックする

と取り込まれたトレスは画面から消える。取り込まれたトレスをリファレンストレスと呼び、消去するか他のトレスで同じレジスター

を上書きするまで保存されている。

図 10 室内に設置した小型スピーカーの測定例

直接音

部屋の反射音ノイズ

図 11 小型スピーカーのトランスファー ・ ファンクション測定の例

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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 7

 リファレンストレスをパソコンのドライブに保存するときは、キャプチャーボタン

の右側にある をクリックしてリファレンスファイルを作る。これでリファレン

ストレス情報ダイアログが開く。このボックスには6つのタブ付きページがあり、

A というタブをクリックすると前面に表示されるようになる。

 取り込んだばかりのリファレンストレスが入っているレジスターを選択(左にある

4 つの色つきボタンの最初のものをクリック)して、それから Save ボタンをクリッ

クする。これでWindowsの「ファイルを保存」ダイアログボックスが開き、ファ

イル名を編集すれば拡張子 *.ref というファイルにして保存できる。 リファレンス

ファイルをレジスターと同じように呼び出したり表示するときも、 このダイアログ

ボックスで操作する。また40のリファレンスレジスターをリファレンスグループと

して保存したり読み込んだりすることもできる。そのためにはこのダイアログボッ

クスのGeneralタブのページにある「Save All」や「Load All」ボタンを操作す

ればいい。 リファレンストレスをファイルに保存したあと、 OK をクリックしてリファレンストレス情報ダイアログを閉じる。

 リファレンストレスを取り込むと、保存したトレスが優先的に表示される、つまりライブのトレスが描く軌跡よりも上に表示される

ということに注意しよう。 プロットの右側にある dB +/- スピナーのテキストがリファレンストレスと同じ色にな

り、マウスのトラッキングカーソルでライブトレスの代わりに取り込んだトレスを追いかけられるようになる。

ライブのトレスに戻りたいときは、 マウスで入力レベルメーターをクリックすればいい。

使用例使用例使用例使用例使用例 44444     スススススピピピピピーーーーーカカカカカーーーーーをををををイイイイイコココココララララライイイイイジジジジジンンンンングググググすすすすするるるるる この例では、例3で行ったトランスファー・ファンクション・モードでの測定を使って、スピーカーの特性を最適化するイコライ

ザーを設定する。 この例ではイコライザーと、 前例で使用したスピーカーやアンプが必要だ。

測定マイク

マイクプリアンプ

EQ

マイク

ライン入力 ライン出力

L

R

L

R

イコライザー

スピーカー

パワーアンプ

図 12 スピーカーをイコライジングするときのシステム例

シシシシシススススステテテテテムムムムムののののの接接接接接続続続続続

 システムは図12のように接続する。前例のシステムに、シグナルチェーンのサウンドカード出力とパワーアンプの間にイコライ

ザーが追加されただけだ。

 「戻り」のラインもあるが、これはイコライザーのあとにある信号を受けるだけのもので、 例2と同様にリアルタイムでのフィ

ルター調整できる。サウンドカードの左 ch入力にあるスイッチで測定マイクからの信号とイコライザーの出力から直接入ってくる

信号を切り替える。実際には小さなミキサーやスイッチを使ったり、あるいは単純に入力ケーブルを接続し直してもかまわない。

イイイイイコココココララララライイイイイザザザザザーーーーー設設設設設定定定定定ののののの測測測測測定定定定定

 スピーカーの測定は例3の要領で行う。今回はトランスファー・ファンクション・モードでの測定はすでにリファレンスレジスター

のA1に保存されており、通過遅延時間は最初のディレイプリセット(キーボードのF6を押すと呼び出せる)に入っているものとして

説明を続けよう。 データが保存されていない場合は例 3 の測定を行ってからこの例に着手してほしい。

 さて、入力を設定し直して左ch(は測定入力)をイコライザー出力へ接続する。入力と出力のレベルが適切で、どの機器でもク

リップしていないことを確認しておく。アナログイコライザーを使う場合はキーボードのF5を押して内蔵ディレイを0msecに戻す。

 デジタルイコライザー(やデジタルミキサー)を使う場合は、 をクリックして測定し、 適切なディレイをかける。

 システムをイコライジングするには、スピーカーの特性を反転したような周波数特性になるようイコライザーを調整する。言い

換えればスピーカーの特性のピークに一致させてイコライザーで無効にし、周波数特性カーブを平坦にするのだ。スピーカーの

特性はリファレンストレスに保存してあるので、 それをイコライザー調整時のテンプレートにしよう。

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Getting Start with SmaartLive: Basic Measurement Setup and Procedures 8

 リファレンストレスにスピーカー特性の測定が入っていることを確

認するには、リファレンストレス・ボタン(この例ではA1)を使って表

示させればいい。カーブの中心が縦軸上で0dB付近になるように

dB +/-スピナーで調整する。これで をクリックすれば測定

されたイコライザーの特性が反転する。 画面上ではカットフィル

ターがブーストに、ブーストがカットに見える。つまりイコライザー

の特性を反転した状態で見ながらイコライザーの設定を最適化で

きる。これで反転した特性がスピーカーの測定結果(図13)にベス

トフィットするように調整しよう。イコライザーの設定が完了したらも

う一度トランスファー・ファンクション・モードで測定し、最終的な

結果を見る(図14参照)。この測定を行うには測定マイクを測定入

力に選択し、 F6 を押してディレイプリセットを呼び出す。

 実践的な最善策は、サウンドシステムの周波数特性を最適化す

る場合、フィルターを極力ブーストしないことだ。極端にブースト

するとフィードバックまでのゲインやヘッドルームが減少してシステ

ムが不安定になるし、 全方向で大きなディップが測定されること

はないだろう(反射音、室内のモード、スピーカーの相互干渉など

から櫛形フィルターができるためだ)。多数のブーストやとても狭

い帯域のフィルターが必要なケースでは、イコライゼーションだけ

で問題を解決するのは難しい。音響的な状況を補正するには、ク

ロスオーバー設定の変更やスピーカーのアレンジが必要になる場

合もある。電気音響の一般的な基準では、周波数特性に帯域が

広い(Qが低い)ピークを作るのが最も効果的にイコライゼーション

だ。さらに正確なイコライゼーションのためにはパラメトリック・イ

コライザーを推奨する。帯域やその中心周波数を適切に選択でき

るからだ。

図 13 リアルタイムで、 反転させた EQ フィルター(黄色)を測定したスピーカーの特性に合わせる

図 14 図 12 のシステムでフィルターをかけてスピーカーの特性を測定した結果