80
日本語版 Oracle SAP for ® ® T E C H N O L O G Y U P D A T E No. 25 Oracle for SAP, May 2016 www.oracle.com/sap

Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

  • Upload
    vudang

  • View
    233

  • Download
    6

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

日本語版

Oracle SAPfor® ®

T E C H N O L O G Y U P D A T E

No. 25 Oracle for SAP, May 2016www.oracle.com/sap

Page 2: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

2

S A P 顧 客 の 皆 様 へ

 オラクルは、データベース、ビジネス・ソフトウェア、オペレーティング・システム、サーバー、ストレージなど、世界で最も完全でオープンな、統合されたテクノロジ・スタックを提供します。オラクルのテクノロジがSAPアプリケーションの動作を向上させます。

 オラクルとSAP SEの関係は、共通の顧客の利益を共通の課題とし、長年にわたり受け継がれてきた共同開発と明るい未来の上に築き上げられています。

 SAPがSAP Business SuiteとSAP BWのサポートを続ける限り、オラクルも支援し続けます。SAPは、SAP NetWeaver 7.4 SP08でCore Data ServicesなどのOracle Databaseプラットフォームの新しい技術(SAP Note 1951491)やOracle Database In-Memory(SAP Note 2178980)、SAP BWで最適化されたInfoCubes/Flat Cubesといった、オラクルの強みを生かした技術革新を導入し始めています。

 両社は、28年以上にわたり多くの共通の顧客サービスへの取り組みを続け、長年のリセラーおよびサポート契約を締結しています。この契約は、Oracle Databaseテクノロジへのアクセス機能を拡張し、グローバル・レベルの顧客サービスを提供します。オラクルの製品戦略は、ITインフラストラクチャ全体に柔軟性と選択肢を提供します。中規模から大規模のSAPシステムを運用する、あらゆる業種のSAP企業顧客の大多数が、自社のアプリケーションをOracle Databaseに委ねています。

 私たちのたゆまぬ技術革新に対する取り組みは、Oracle Databaseとデータベース・オプションを選択するSAP顧客にとって計り知れないメリットです。そこには、なぜOracle DatabaseがSAPアプリケーションの実行で最も採用されるか説明できる差別化要因のうち、明確な8つの要因を見つけることができます。最高のパフォーマンスとスケーラビリティ、配置柔軟性、可用性、信頼性、障害時リカバリ、セキュリティ、管理性、自己管理機能。この8つの要因が、大規模データベースのサポート、データベース統合のサポート、ハードウェアとソフトウェアの統合を実現しています。これによりSAP顧客のすべてが、Oracle Databaseの特性および機能の利点を活用し、SAPを導入するコストの最適化ができるようになりました。

次のOracle Database 12cオプションは、SAPに認定され、入手可能です。

 - Oracle Database In-Memory

 - Information Lifecycle Management(ILM: 情報ライフサイクル管理) / Automatic Data Optimization (ADO: 自動データ最適化)

 - Hybrid Columnar Compression(HCC) for Oracle ExadataおよびOracle SuperCluster(ILMとの併用)

 - Oracle Multitenant オプション

 Oracle Exadata Database Machineは、すべてのSAPデータベースおよびSAP以外のデータベースをプライベート・データベース・クラウド環境に統合し、SAP ECC 6.0でのオンライン・トランザクション処理やSAP BW 7.0以降のデータ・ウェアハウスなどのあらゆるデータベース・ワークロードのために、プライベート環境のOracle Database Cloudを実行できる最高のパフォーマンスと高可用性のプラットフォームを提供します。Exadata Database Machineは、最大規模の最重要データベース・ワークロードに即座に対応し、通常の運用ではアプリケーションを10倍以上の速度で実行します。そのため、多くのSAP顧客がこのマシンを利用しています。

 Oracle SuperClusterは、新しいSPARCプロセッサの演算能力、Oracle Solaris 11のパフォーマンスとスケーラビリティ、Oracle Exadataストレージの最適化されたデータベース・パフォーマンス、さらに6.40以降のSAPカーネルの最適化された実行時間で統合する最初の汎用エンジニアド・システムです。

 Oracle MiniClusterは、妥協のないセキュリティとエンタープライズなデータベースおよびアプリケーションを実行するように設計された非常にシンプルかつ効率的なエンジニアド・システムです。

 オラクルは、SPARC M7、T7およびS7サーバーのポートフォリオの完全リフレッシュと拡張により、エンタープライズ・コンピューティングの経済性を再定義し、最高の価格とパフォーマンスで業界最大の価値を提供します。

Page 3: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

3

 Oracle Exalogic Elastic Cloudは、Oracle Exadata Databaseマシンと組み合せることで、実質的に無限のスケーラビリティ、卓越したパフォーマンスを提供し、さらにSAPとSAP以外のアプリケーションの双方の管理を簡素化します。管理の簡素化は、これまで長い間想像もできなかったことです。

 Oracle Private Cloud Applianceは、データベースおよびアプリケーションの仮想プラットフォームとして使用する一体化されたインフラのイントール、デプロイ、管理方法を画期的に簡素化するエンジニアド・システムです。

 Oracle Database Applianceは、単一システムで活用し、配置および管理が簡単な、世界で最も利用されているOracle Databaseを活用する新しい方法です。これはソフトウェア、サーバー、ストレージ、高可用性、ネットワークの完全なパッケージで、簡素化を目的に設計されています。つまり、配置、メンテナンス、およびデータベース・ワークロードのサポートを簡素化することにより、時間と費用を節約します。

 Oracle Linux 7は、SAPインフラ・コンピューティング・ニーズに応えるOracleの最新のLinuxバージョンです。高速で信頼性が高い上、SAP環境のOracle Databaseに最適化されています。SAPに対する最高のパフォーマンスの実現、顧客への最新技術の提供、データ整合性、より強固なセキュリティ、アプリケーション稼働時間を改善します。

 Oracle VM Server for x86は、無償のサーバー仮想化ソリューションで、SAPおよび他のエンタープライズを容易に配置、管理、サポートします。

 ドイツ、ワルドルフのSAP SEのOracle開発チームは、継続してSAP開発者と連携し、SAP顧客が常に最新の最適化されたOracleテクノロジ、確実なパフォーマンス、信頼性および技術革新にアクセスできるようにしています。

 Oracle for SAP Service & Supportチームが提供するAdvanced Customer Services(ACS)には、Assisted Services Engagements(ITインフラの分析/拡張およびSAP Readiness Service)を含め、ヘルス・チェック、ワークショップ、データベース移行、パフォーマンス、

チューニングおよびACS Oracle Solaris Services for SAP Environmentsなどがあります。

詳細、この冊子およびバックナンバーについては、次のサイトを参照してください。www.oracle.com/sap

ご意見、ご質問は、次のアドレス宛にお寄せください。 [email protected]

Sincerely,

ゲルハルト・カップラー

SAPアプライアンス担当副社長 Oracle Corporation

Oracle Corporationには、世界中で420,000以上のお客様がいます。その中にはFortune 100 Best Companiesの100社が含まれ、広く全世界の145か国以上の様々な産業でOracleが使用されています。世界各地の25,000におよぶパートナー企業、37,000人の開発者と技術者を含む130,000人以上の従業員、18,000人のサポート担当者、17,000人のコンサルティング専門家に支えられたオラクルのサポートにより、クラウド・アプリケーション、プラットフォーム・サービス、およびエンジニアド・サービスの完全に統合された包括的なスタックを提供しています。

オラクルが提供するSAPアプリケーションの実行に必要な完全なITデータベースとインフラ・スタック

Page 4: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

4

C O N T E N T S

2-3 ご挨拶 SAP顧客の皆様へ

5 Oracle Database 12c for SAP:アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

17 SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

36 Oracle DatabaseとEngineered Systemsの「for SAP」の意味を探る

41 CERTIFICATION SAP®の標準アプリケーション・ベンチマーク

42 Oracle Database In-MemoryとSAP CRMの併用による、Bosch GmbHの大幅な改善

44 ビレロイ&ボッホ社のOracle Database In-Memory

47 DB Masters Austr iaのSAP BI Oracle Database In-Memory

49 Goodman FielderのOracle Advanced Compression

52 ElectraNet – Oracleプレス・リリース

53 Solvi Group Brazi lのOracle Exadata Database Machine

54 Wumart StoresのOracleオンライン・システムの移行

57 CELSA GROUPのOracle SuperCluster

59 LentaのOracle Exadata - Oracleプレス・リリース

62 SAP顧客向けのサポート・サービス

65 SAP顧客向けのOracle SuperCluster M7

68 Exadataテクノロジからメリットを得るSAP顧客

70 SAPCTL使用によるSAPリソースの高可用性

72 Oracle Engineered Systems for SAP

76 S/4HANAへの移行のコストについて

77 Oracle DB related Notes for SAP

Page 5: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

5

Oracle Database 12c for SAP:アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

ただし、「HANAの優れた機能」は、「HANAだけの機能」ではありません。HANAにできることは、Oracle Databaseにとって当たり前の機能です。このような経緯から、SAPアプリケーションの機能とOracle Databaseとの統合の必要性は、最近一層明白となり、HANAを考慮して設計されたSAPアプリケーションの最適化をOracle Databaseと統合する、またはOracle DatabaseによりSAPアプリケーションの最適化をサポートことが必要だと、認識されています。

現在、Oracle Databaseで稼働するSAP戦略を支える2本柱は、はっきりとしています。オラクルが主要な新しいデータベース機能をリリースするたびに、SAPが提供するインストール、管理および監視ツールに加えて、新しい機能をSAPのアーキテクチャに組み入れる開発努力が必要になります。SAPが新しいアプリケーションの最適化をリリースするたびに、Oracle Databaseテクノロジと統合する同様の開発努力が必要になります。

認定のロードマップOracle Database 11g(11.2.0.4)の標準的なメンテナンスは2015年1月31日に終了し、延長サポート・フェーズは、3年間限定で2015年2月現在、開始されています。オラクルは、Oracle Databaseバージョン11.2.0.4について、2017年5月31日まで追加費用なしで延長サポートを提供します。詳細は、SAP Note 2098258を参照してください。

オラクルとSAPは、共通の顧客が不利益にならないように、認定プロセスを複数のフェーズに分割することにしました。フェーズ分けすることによって、Oracle Database 12cをできる限り早く顧客に提供し、Oracle Database 11gとの十分な重複を保証することが可能になります。オラクルとSAPは、10年以上続けてきた

「最終リリース」の慣行(リリースx.2のみを認定、リリースx.1の認定はなし)を、初めて破りました。

• フェーズ1はベーシック認定と呼ばれ、2015年3月に終了しています。以前、Oracle Database 11gで使用可能だったすべての機能とオプションに加えて、完全に透過的、または最小限の統合作業のみで完了する複数のOracle Database 12cの機能が含まれています。

Oracle Database 12c for SAP: アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

戦略とロードマップ

統合戦略当初から、Oracle Databas for SAP、つまりOracle Databaseで稼働するSAPの戦略は、2本の柱を基本としていました。最初の柱は、Oracle Databaseの機能とSAP環境の統合、2番目の柱は、SAPアプリケーションの機能とOracleデータベースの統合です。

Oracle Databaseの機能とSAP環境の統合が必要なことは、これまでも常に言われ続けてきたことでした。特に、オラクルがSAPアーキテクチャが対応していない新しいデータベースの機能をリリースするたびに、その必要性は明白になりました。多くの顧客が今も覚えているのは、Real Application Clusters(RAC)をSAPアーキテクチャに統合するプロジェクトです。多数のSAP Ap-plication Serverインスタンスが存在するという仮定に基づいていましたが、Database Serverインスタンスは1つでした。

これは、過去の事ではありません。SAPの顧客にOracle Mul-titenantを提供する現在の計画は、RAC同様の論理構造の大改革で、RACの認定に劣らず相当の努力が必要でしょう。

一方で、SAPアプリケーションの機能をOracle Databaseと統合する必要性は、ほとんど認識されていませんでした。R/3やBWなどの標準的なSAPアプリケーションは、Oracle Database上で開発されてきましたが、SAPは、IBM DB2およびMicrosoft SQL Serverもサポートするようになったときに、最小公倍数的な戦略、すなわちサポートされるすべてのデータベースで使用できるデータベース機能のみに絞ってしまったのです。そのために、Oracle Databaseへの対応も他のデータベースと同じで、特殊な機能はほとんど認められませんでした。

この戦略を変化させたのは、SAPの独自のデータベースHANAでした。SAPはすぐに、最小公倍数的な戦略を中断し、アプリケーションを変更する必要があることに気が付きました。SAPアプリケーションが、HANAも他のすべてのデータベースと何ら変わらないとして処理する限り、HANAの実装が顧客の利点になるという説得の根拠が弱すぎたからです。そこでSAPは、SAPアプリケーションでHANAの優れた機能を使用できるように、アプリケーションの最適化プロジェクトに着手しました。

Page 6: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

6

• 2015年の6月に完了したフェーズ2で、主要なOracle Data-base 12cの新しいオプション、Oracle Database In-Memoryが初めて紹介されました。これは、Oracle Database 12cの新しい画期的なオプションです。

• 2015年12月に完了したフェーズ3では、Oracle Database 12c Advanced Compressionに含まれた新しい情報ライフサイクル管理機能(ILM)とOracle ExadataおよびOracle Super-Cluster上でのロー(行)レベルのロック機能を持つHy-brid Columnar Compression(HCC)が追加されました。

• 2016年に完了したフェーズ4では、Oracle Multitenantが認定され、SAP顧客もOracle Multitenantを使用できるようになりました。このオプションでは、多数のデータベースを1つのコンテナ・データベースに統合できます。このデータベース・アーキテクチャはこれまでにない発想で、相当数のOracle/SAP統合作業が必要です。

理論的には、SAPアプリケーションの最適化に対するオラクルのサポートの実装は、Oracle Database 12cの認定プロセスとはまったく別のプロジェクトとして進行しています。とは言え、一部のケースで、Oracle Database 12cの特定の機能が必要になる場合もあります。

• 当初、SAP NetWeaver 7.40(SP05)とともにリリースされたSAP Core Data Servicesは、Oracle Database 11gおよびOr-acle Database 12cでサポートされていますが、この場合は特別な機能もオプションも必要ありません。SAP Note 1951491を参照してください。

• データ・モデルの最適化では、一般的に大きなディスク領域が必要になります。このような場合、表圧縮は必須ではありませんが推奨されています。データベースでは、255以上の列を含む表は珍しくありません。Oracle Database 12cは、これらの表をすべて圧縮できる唯一のバージョンです。

• Flat Cubeは、Oracle Database 12cおよびOracle Database In-Memoryで使用できます。

ベーシック認定の機能

Advanced CompressionOracle Database 11gでSAPアプリケーションを実行している顧客は、複数の圧縮機能の中から選択することができます。索引キーの圧縮および圧縮型索引の構成表(IOTs)は標準的なデー

タベース機能です。構造化データのOLTP圧縮、および非構造化データのSecureFiles圧縮は、Oracle Database 11g Advanced Compressionにより提供されます。

Page 7: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

7Oracle Database 12c for SAP: アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

Oracle Database 12c Advanced Compressionには、多数の新機能が搭載されています。機能の一部は情報ライフサイクル管理に関連し、認定の第2フェーズでSAP顧客に提供されますが、フェーズ1で公開されたAdvanced Compression Option機能の一部は、現在のSAP環境で使用できます。

Advanced Index Compressionは、新しい形の索引圧縮です。Advanced Index Compressionを使用して索引を作成または再構築すると、これまでと同様に索引への効率的なアクセスが提供される一方で、一意の索引および一意でない索引のサイズが縮小します。その利点を次に説明します。

• Advanced Index Compressionは、既存のIndex Key Com-pressionに適さない索引も含め、サポートされるすべての索引で効果的に機能します。

• Advanced Index Compressionは、ブロック・レベルで機能し、各ブロックに最高の圧縮を提供します。Advanced Index Compressionでは、自動的にブロックごとに適切な圧縮が選択され、データ特性の知識は必要ありません。

Advanced Network Compressionは、送信元で圧縮したデータを受信側で解凍し、ネットワーク・トラフィックの削減に使用することができます。Advanced Network Compressionは、ネットワーク接続で送信されるデータのサイズを削減します。利点は、次のとおりです。

• ネットワークの実効スループットの向上:圧縮により、大規模データを送信する時間を短縮し、SQL問合せの応答をより高速にします。

• 帯域幅使用率の抑制:圧縮による送信データの削減は帯域幅を節約します。空いた帯域幅は他のアプリケーションが使用できます。これにより、ネットワーク帯域幅に必要なコストの削減にも役立ちます。

Advanced Network Compressionは、Database/Instant ClientとDatabase Serverの両方が12.1.0.2にアップグレードされている場合にのみ使用できます。

SAPシステム向けのOracle Database 12c Advanced Compres-sionの詳細は、SAP Note 2138262を参照してください。

Active Data Guardスタンバイ・データベースの設定に必要な機能であるData Guardは、Oracle Database Enterprise Editionに含まれていま

す。Active Data Guardは、追加のオプションです。このオプションはOracle Database 11gで、自動ブロック修復、高速増分バックアップなどの追加機能を提供しています。Oracle Database 12cの主要な新機能、Active Data Guard Far Syncにより、顧客は大規模な遠距離WAN全体で高パフォーマンス(非同期データ・シッピングの特徴)とデータ消失ゼロ(同期データ・シッピングの特徴)を組み合せることができます。

詳細は、25ページの「Oracle Databaseオプションとパック製品によるSAP向けデータ管理インフラストラクチャの実装」のData GuardとActive Data Guardのセクションを参照してください。

バックアップとリカバリOracle Recovery Manager(RMAN)は、Oracle Databaseの効率的なバックアップとリカバリのために包括的な基礎を提供します。バックアップおよびリカバリの実行中に、サーバーと密接に連動し、ブロック・レベルで破損を検出します。RMANは、バックアップ中にファイル多重化とバックアップ・セット圧縮を使用して、パフォーマンスおよび領域の使用量を最適化します。 またRMANは、サード・パーティ製のメディア管理製品のみでなく、Oracle Secure Backupとも一体化してテープ・バックアップを管理します。Cross Platform Backup and Restoreにより、全体バックアップ・セットおよび増分バックアップ・セットを使用して、プラットフォーム間でデータを転送できます。

Oracle Database 12cにより、イメージ・コピーまたはバックアップ・セットを使用した全体バックアップまたは増分バックアップで、プラットフォーム間のデータを転送できます。バックアップ・セットを使用してクロス・プラットフォーム・バックアップを実行する場合、移動先データベースは、Oracle 12cまたはそれ以降であることが必要です。新たに追加された機能は、プラットフォーム移行を簡素化し、ソース・データベースの読取り専用による停止時間を最小限にします。

RMANは現在、Oracle Databaseのバックアップを実行する最も一般的なツールですが、他の一般的なバックアップとして、データベース内の全ファイルのストレージ・スナップショットを作成する方法があります。スナップショットを別のサーバー(本番データべースを実行するサーバー以外)にマウントし、データをテープなどの3番目のストレージにコピーします。この方法で、バックアップ処理を本番サーバーからオフロードします。Storage Snapshot Optimizationを使用すると、データベースのストレージ・スナップショットの取得にサードパーティのテクノロジが使用できます。この場合、データベースをBACKUPノードに置く必要はありません。

Page 8: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

8

ストレージ製品が、Oracleのドキュメントで説明された特定のガイドラインに準拠している場合、取得されたスナップショットは、

「crash-consistent」とみなされます。Crash-consistentのバックアップは、完全なクラッシュ・リカバリを実行した後、開いて使用することができますが、point-in-time recoveryには使用できません。それは、REDOログにデータ・ファイルの非一貫性を排除できる十分な情報が含まれていないためです。また、ALTER DATABASE [BEGIN|END] BACKUPなどのバックアップ・モードで取得したスナップショットには、point-in-timeリカバリの制限がありませんが、スナップショットを取得する前に各データベースをバックアップ・モードに設定し、完了後はバックアップ・モードを解除する必要があります。数十、数百、数千のデータベースを処理する場合には、この複雑さは増幅します。さらに、このモード中にブロック・イメージ全体が変更されると、REDOログに書き込まれます。これには追加的なI/Oアクティビティが含まれます。

Oracle Database 12cでは、RECOVER ... SNAPSHOT TIMEコマンドを使用すると、データベースをバックアップ・モードに設定せずに取得したストレージ・スナップショットを1つの手順でリカバリできます。スナップショットをいつ取得したかにかかわらず追加の手順はありません。スナップショットによるあらゆるタイプのリカバリ・オプションをサポートするこの最適化の方法は、バックアップ・モードへの切替えやそれに伴う複雑さとオーバーヘッドが不要なため、DBAは自分の時間をより重要な本番タスクに集中させることができます。

ACFSのサポートこれまでExadataでは、ACFSがサポートされていませんでした。ACFSは、グリッド・インフラストラクチャ・バージョン12.1.0.2以降、Exadataでもサポートされるようになりました。SAP環境では、これをSAP共有ファイル・システム(/sapmntなど)に使用できます。

ただし、これは、ASMでデータベースを実行する代替手段ではありません。Oracle Databaseは、Exadata Storageノードを使用するASM上に構成されている必要があり、この構成でのみサポートされます。

Oracle Grid Infrastructureの高可用性ネットワーク・ファイル・ストレージ(HANFS)は、NFS V2/V3の共有パスの中断しないサービスを提供します。これは、高可用性仮想IP(HAVIP)上に共有するNFSを公開し、Oracle ClusterwareエージェントによりHAVIPとNFSエクスポートを常時オンラインにすることで実現します。クラスタ・ノードに障害が発生すると、HAVIPおよびNFSエクスポートが、存続しているノードに自動的に移行されます。

HANFS機能により、Oracle ACFSクラスタを使用して高可用性NFSサーバーを構成できます。HANFSクラスタ構成は、既存のインフラストラクチャや汎用サーバーおよびストレージで構築することが可能です。これにより、「ネットワーク・ファイラ」と同様のネットワーク・サービスがわずかなコストで実現します。

パフォーマンスSQL文のUNIONおよびUNION ALL演算子は、<branch1> UNION <branch2>のように2つ以上の分岐(たとえば、サブクエリー)を接続します。従来、このタイプのクエリーでは、分岐は順番に実行されます。つまり、一定の時点で1つの分岐のみが実行され、その後に次の分岐が継続します。Oracle Database 12cには、UnionおよびUnion All分岐の同時実行が導入され、1組のパラレル・サーバーで1つの分岐を実行し、他のパラレル・サーバーのセットで別の分岐を同時に実行することができます。

分岐を並列化する機能は、文の実行を高速にし、SAP BWのパフォーマンスが向上します。

管理性と可用性データベース管理者は、BR*Toolsを使用して、様々な再編成の追加操作をオンラインで実行できるようになりました。

Online Move Partition: Oracle Database 12c以降、ALTER TABLE ... MOVE PARTITION操作は、非ブロック化オンラインDDLコマンドとして機能し、DML操作は、移動されたパーティションで引き続き操作が続行されます。また、パーティションの移動と同時にグローバル検索も保持されるため、手動で索引を再構築する必要がなくなりました。

Page 9: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

9Oracle Database 12c for SAP: アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

Move Datafile Online: Oracle Database 12c以前のデータファイルの移動は、常にオフラインで実行する必要があり、停止時間を最小限にするテクニックはあったものの、停止時間を完全になくすことはできませんでした。Oracle Database 12cでは、機能強化されたALTER DATABASEコマンドにより、データファイルの移動をオンラインで実行することができます。

索引構成表の再構築: 索引構成表は、Bツリー索引として保存されるため、挿入、更新、削除の結果、断片化する場合があります。ただし、ALTER TABLE ... MOVE ONLINE文を使用して索引構成表を再構築すると、断片化を最小限に抑えることができます。

詳細は、SAP Note 1856270および2087004を参照してください。

Microsoft WindowsOracle Database 12cでは、Oracleホーム・ユーザーの使用がサポートされ、インストール時に指定できます。Oracleホーム・ユーザーは、管理者以外の権限の低いアカウントを使用したOracle Serviceのホストでのセキュリティ強化を目的に導入されています。Oracleホーム・ユーザーには、Windows組込みアカウントまたは標準のWindowsユーザー・アカウント(管理者アカウント以外)を指定できます。このアカウントは、OracleホームのWin-dowsサービスの実行に使用されます。セキュリティ強化のため、

(Windows組込みアカウントではなく)標準のWindowsユーザー・アカウントを使用することをお薦めします。

詳細は、SAP Note 1915302を参照してください。

ベーシック認定とアプリケーションの最適化Oracle Database 11gでは、列数が255以上の表の場合、構造化表データの圧縮(OLTP圧縮)はサポートされません。Oracle Database 12c Advanced Compressionでは、255列の制限がなくなり、ベーシック認定後SAP顧客は、制限のない表圧縮を利用できます。

これは微々たる改善に過ぎないように見えますが、ほとんどのSAPシステムでは、255列以上の表はごく一般的です。

特に興味深い例が、SAP Note 1835008および1892354で取り上げられています。SAPにより実装した複数のアプリケーショ

ンの最適化は、クラスタ表として従来通りに実装されている表が非クラスタ化された場合以外に実行できません。これらのクラスタ表のデータは、通常SAPの圧縮方式で保存されますが、この表を透過的な表に変換すると、かなり大きなサイズになります。さらに、非クラスタ化された表の中には、列数が255を超えるものがあります。Oracle Database 11g Advanced Compressionでは、それらの表のサイズを削減することができませんでした。Oracle Database 12c Advanced Compression Optionを使用すると、大きな表のデータを圧縮し管理することができます。

Page 10: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

10

Core Data Services 最小公倍数的な戦略を断念し、HANAを念頭に置いてアプリケーションを最適化するというSAPの決定に、多くの人はオラクルにとっての脅威だと感じたかもしれません。確かにSAPの世界では、HANAはOracle Databaseにとってライバルです。しかし、SAPの新しいアプリケーションの最適化は、オラクルの顧客だけでなく、オラクルの従業員からも好意的に受け止められています。その理由をSAP Core Data Services(CDS)を例に説明しましょう。

Core Data Services導入の背景には、次のような疑問が渦巻いています。データベースとは何か。データベースに何ができるのか。データベースでは何ができないのか。

この質問に対し、昔から次のように言われてきました。「データベースは単なるデータの入れ物だ。」「恒久的にデータを保存するだけのコンテナにすぎない。」データを使用する場合は、データをアプリケーション・サーバーに転送しなければなりません。なぜならば、「頭脳」はアプリケーション・サーバーにあるからです。

従来からこの概念に基づく、SAPアプリケーションの短所は明白です。それぞれ異なった通貨で表示された100万の値を合計する場合、100万個の値は、データベース・サーバーからアプリケーション・サーバーに転送されますが、計算が終わると破棄されます。この方法によって発生するネットワーク・トラフィックは、パフォーマンスの低下の原因になります。

25年以上前に、Oracle Databaseの開発者はふと次のようなことを考えました。合計をデータベース・サーバーで計算できないだろうか、そうなればこの上なく便利な上、パフォーマンスが大

幅に改善されるのではないか。そして、彼らは、「データベースとは何ぞや」という質問にまったく違う答えを出しました。「データベースは単なるデータ保管箱ではない。」データベースは、データを保存できるだけでなく、プロシージャを保存して、データを使用したプロシージャも実行できるはずです。元はと言えば、プロシージャはアプリケーション・サーバーで実行されるアプリケーションの一部のコードの断片にすぎず、それが現在の処理でデータベース・サーバーに移動されています。アプリケーションは、アプリケーション・サーバーで稼働する層とデータベース・サーバーで稼働する2つの層に分割されています。つまり、データベース・サーバーもアプリケーション層であるのです。

ここで、オラクルの開発者達はそう考えただけでなく、実際にデータベース・プロシージャの保存と実行ができる新しいデータベースを構築しました。それが、1992年にリリースされたOracle 7です。その当時、Oracle Databaseは、アプリケーション層として使用できる唯一のデータベースで、ストアド・プロシージャは、最小公倍数的な機能のサブセットの一部ではありませんでした。そのため、SAPはその使用を認めませんでした。

しかし、SAPは20年後にHANAのプロモーションを開始したときに、自分達のアプリケーションが、新しいHANAのインメモリー・データベース・アーキテクチャの最大の敵であることに気が付きました。データベースが単なるデータ・ストアであり、アプリケーションのみができる効率的な計算結果をネットワーク経由で転送する必要があると考える限り、インメモリー・データベースのすべての潜在的な利点を積極的に破壊します。この時点で、SAPは最小公倍数的な戦略とこれに対応する、「データ・ストアには処理能力がない」という従来の概念を捨てなければならないことを悟りました。

Page 11: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

11Oracle Database 12c for SAP: アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

このインサイトの結果として、SAPは、「プッシュダウン」戦略を導入します。この戦略では、データ処理集中型算出を必要とするコードをアプリケーション層からデータベース層にプッシュダウンします。これを実現するために、データベースに保存されたプロシージャをABAPコードで(暗黙的または明示的に)呼び出すことができる、まったく新しいプログラミング・モデルが開発されました。さらにSAPは、Core Data Services(CDS)と呼ばれる標準的なプロシージャのライブラリも定義し、新しい戦略による混乱にも対処しています。SAPは、このライブラリをHANA以外のス

トアド・プロシージャをサポートできるデータベースで使用することにも同意しました。

Oracle 7のリリースからSAP Core Data Servicesのリリースまでの20年間は、オラクルの顧客と従業員のため息の歴史そのものです。SAPのプッシュダウン戦略によって得られるパフォーマンス向上は、SAPのかたくなな戦略がなければ20年前にも実現可能でしたが、20年経ってしまったとは言え、機を逸してはいません。

Oracle Database In-MemoryOracle Database 12cにはDatabase In-Memoryオプションが含まれていますが、これは、インメモリー・データベースではありません。インメモリー・データベースのサポーターは、データベースはディスクではなく、完全にメモリーに保存する必要があり、すべてのデータはカラム(列型)フォーマットで保存する必要があると思い込んでいますが、データの永続化やOLTPアプリケーションによるデータ操作など様々な理由で、サポーターが考える純粋なインメモリー・データベースは不可能です。そのため、当初の概念に対応しないコンポーネントと機能が、HANAのようなインメモリー・データベースに黙々と追加されていきました。オラクルの戦略は、これとは対照的です。整合性がある場合、データはインメモリー・カラム・ストアに入力できます。それ以外の場合、データは以前と同じ方法で保存され処理されます。Oracle Database In-Memoryの概念に関する詳細は、記事「Oracle Databaseオプションとパック製品によるSAP向けデータ管理インフラストラクチャの実装」、特に22ページの「Oracle Database In-Memory」および34ページの「まとめ」の各項を参照してください。

2015年6月にOracle Database In-Memoryは、SAPに認定されています。競合他社が提供する類似のオプションとは異なり、Or-acle Database In-Memoryの使用は、SAP Business Warehouse

(SAP BW)に制限されません。代表的なOLTPアプリケーションなど、SAP NetWeaverをベースとするすべてのSAPアプリケーションでサポートされます。ただし、Oracle Database In-Mem-oryを使用することは、常に最善ではありません。このオプションは、特定の問題または一定の問題のセットに対するソリューションで、すべての問題に対して万能であるわけではありません。パフォーマンスの改善が期待できない場合もあります。そればかりか使用方法を間違うと、純粋なインメモリー・データベースでさえも、システム・パフォーマンスを低下させる可能性があります。したがって、カラム(列型)ストアにロードされているデータからメリットを得ることができるSAPアプリケーションは、慎重に選択する必要があります。

Page 12: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

12

アプリケーションの慎重な選別や表への配慮を考えると、SAP環境でのOracle Database In-Memoryの実装は難しいと思われるかもしれませんが、ベータ版の顧客や早期に導入した顧客からは一貫して、Oracle Database In-Memory for SAPはすばやく簡単に実装できるという意見が聞かれます。これは、直感に反しているようですが、簡単に説明できます。

第1に、顧客の多くは、完了に時間を必要とする問合せやジョブをすでに認識し、関連する表がどれであるかを知っています。このようなケースでは、適切なSAPアプリケーションおよび表の選択は、特別難しくありません。

第2に、Oracle Database In-Memoryの実装を特定の問題に対するソリューションとしてではなく、全体的なアプローチとして選ぶ顧客に対して、オラクルは、In-Memory Advisorを提供しています。これは、特定のシステムのワークロードを分析し、使用可能なメモリー量に応じて、表をカラム・ストアに入力すること

を推奨するウィザードです。(この方法では、「Oracle Database In-Memoryを使用するには、どれぐらいのメモリーが必要ですか」という質問をする必要はありません。逆に、メモリー量をOra-cleに示すと、Advisorが最も効率的な方法で使用できるメモリー量をアドバイスします。)

第3に、いったん関連する表を確定すると、すべてが簡単にすばやく処理されます。ALTER TABLE XXX INMEMORY文は、カラム・ストアで使用する必要がある表データを宣言します。この文を発行すると、それ以外の処理はすべてバックグラウンドで自動的に行われます。最後に、HANAなどのインメモリー・データベースへの移行と異なり、Oracle Database In-Memoryの実装に大改革は必要ありません。ハードウェア、オペレーティング・システム、データベースの何もかもが新しくなくてはいけないということはありません。顧客は引き続き、既存のインフラストラクチャを使用できます。Oracle Database In-Memoryについて管理者が知る必要のあることは、数時間で学ぶことができます。

Flat Cubes2015年6月にOracle Database In-Memory for SAPの認定が発表されたとき、発表文には、2、3の制限事項が含まれていました。特に、標準の索引または集約を削除しないことが強く推奨されています。

この記事で説明する他のすべてのケースと同様に、このケースでもSAPおよびオラクルのテクノロジの統合を担当するOracle/

SAP開発チームは、SAPの学習曲線に従うことが必要であるとしました。Oracle Database In-Memory for SAP(このケースではSAP BW)が認定された直後の状況は、SAP BWのHANAへの導入プロジェクトの初期段階とほとんど同じです。制限事項に対する失望は、従来のSAP BWデータ・モデルは、インメモリー・データベースの新しい概念に対応しないというSAPの経験に重なります。この項で説明するFlat Cubesは、SAPがHANAのために設計した新しいデータ・モデルを反映しています。

Page 13: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

13

複雑なアーキテクチャは、従来のディスク・ベースのリレーショナル・データベースの要件を満たすために、データ・モデルを最適化する目的で設計されました。ただし、メモリーが主役になる新しいデータベースでは、要件がまったく異なります。メモリーに焦点を合せるという点では、SAP HANAとOracle Database In-Memoryの間に違いはありません。そのため、SAPは、HANA Optimized InfoCubesと呼ばれる、HANAで稼働するSAP BWのために新しいデータ・モデルを設計しました。

次に示すHANA-Optimized InfoCubesの説明は、シンプルですが、いささか突飛です。ディスクが主体のデータベース用にSAP BWのデータ・モデルを最適化するプロセスが、フラットで大きいレコードから拡張スター・スキーマを導き出したとしたならば、メモリー主体のデータベースのデータ・モデルを最適化するプロセスは、拡張スター・スキーマからフラットで大きなレコードに戻すことです。

ただし、完全に戻すのではありません。HANA-Optimized Info-Cubesでは、ファクト表(実際は、EおよびFファクト表)とディメンション表(詳細の第1レベル)が1つの表に結合されます。一方、レベル2および3の小さい表(特性、属性および階層)は残ります。この変更は、パフォーマンスと管理性を大きく改善するために十分です。

通常、Business Warehouseにロードするデータは大きなレコードがほとんどです。たとえば、会社名、郵便番号、市、番地は、1つのレコードの中で、輸送業者の詳細、注文番号、発注日、送り状番号などの少なくとも数十の他のデータ項目と結合されます。データ・ウェアハウスが普及し始めたころは、データベースはディスク・ベースのみで、ディスクは高価な商品でした。そのため、特定の会社が1000の注文を送信する場合は1000回、特定の輸送会社が100,000回出荷した場合は100,000回発生する会社または輸送会社の詳細のような冗長なデータでディスク領域を浪費することは、受け入れがたいことでした。そこでデータベース設計者は、スター・スキーマという設計を提案しました。スター・スキーマでは、同じグループに属するデータのサブセット

(すべての顧客の詳細、すべての輸送業者の詳細など)を、ディメンション表と呼ばれる独立した表に移動させます。残りのデータ、およびディメンション表の関連するエントリをポイントするIDはファクト表に保存されます。

このように分割しても、すべてのケースにとって十分な対応ができませんでした。たとえば、郵便番号、都市名、通りの一定の組合せは、CARRIER表だけではなく、CUSTOMERS表でも複数回発生する可能性があります。同じ分割操作を再び適用すると、追加的な表が作成され、ファクト表ではなくディメンション表に結合されます。これが、スノーフレーク・スキーマと呼ばれる、より複雑である反面、(ディスク領域の観点から)より効率的な設計につながりました。SAP BWのようなハイエンド・データ・ウェアハウスは、ディテール表にもう1つのレベルが追加されるため、拡張スノーフレーク・スキーマに依存します。

従来の「スター」 (=拡張スノーフレーク)スキーマ

Oracle Database 12c for SAP: アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

Page 14: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

14

新しいデータ・モデルでは、以前のデータ・モデルの主な短所が取り除かれますが、長所は残ります。多数の表に分散するために、受信する大きなレコードを分割する必要がなくなり、データのロードが高速化します。従来の索引も不要になるため、ここでもデータのロードが高速化します。表を結合する後処理もないため、問合せの処理も高速化します。拡張スノーフレーク・スキーマ誕生のきっかけは、フラット・データ・モデルの短所である冗長データが占有するディスク要領とメモリー要件でしたが、メモリー内のデータやディスクのデータに使用できる高度な圧縮機能の提供で、今ではまったく問題ではありません。

この新しいデータ・モデルがHANA以外のデータベースで使用できるようになると、「HANA-Optimized InfoCubes」は、適切な名前とは言えません。「SAP BW Flat InfoCubes for Oracle」または「SAP BW Flat Cubes for Oracle」は名前が異なるだけで、まったく同じデータ・モデルです。カラム・ストア外部のフラット・キューブは、整合性に乏しいため、Oracle Database 12cおよびOracle Database In-Memoryが必要です。

Oracle Database向けのFlat Cubeは、2016年2月以降、パイロット・カスタマーに提供され、2016年6月に、広く使用できるようになりました。

新しいフラット・キューブの設計

遅延圧縮と情報ライフサイクル管理Oracle Database 12c Advanced Compressionの新機能の一部については、「ベーシック認定の機能」および「ベーシック認定とアプリケーションの最適化」の項で説明しています。ただし、ベーシック認定に含まれなかったために、次の2つの主要な新機能が欠落しています。2015年12月には、これらの新機能もSAP環境向けに認定されました。ヒート・マップと自動データ最

適化(ADO)。この2つの機能の背景となる基本的な概念は、記事「Oracle Databaseオプションとパック製品によるSAP向けデータ管理インフラストラクチャの実装」で説明しています。特に、20ページのAdvanced Compression(Oracle Database 12c)」を参照してください。したがって、ここでは、SAP固有の実装の詳細について簡単に説明します。

Page 15: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

15

ALTER TABLESPACE TSX DEFAULT ILM ADD POLICY

ROW STORE COMPRESS ADVANCED ROW

AFTER 40 DAYS OF NO MODIFICATION;

この例では、各表に特別なポリシーを定義しませんが、表領域レベルでデフォルトのポリシーを定義します。表に個別のポリシーが伴わない限り、デフォルトのポリシーは、この表領域で作成されるすべての表に適用されます。

ExadataやSuperClusterなど、Oracle Engineered SystemでOr-acle Database 12cを実行している顧客は、アーカイブ化の代替として、履歴データのために設計された圧縮アルゴリズムのセットであるHybrid Columnar Compressionからメリットを得ることができます。Hybrid Columnar Compressionは、Advanced Compressionが2~3倍のデータを圧縮するのに対し10~15倍のデータを容易に圧縮できます。

この状況で、私たちは40日間変更されていないデータを「ウォーム」と呼び、「コールド」という用語は、より長い期間(たとえば、6か月または12か月)変更されていないデータの定義に使用します。以前のポリシーは、圧縮層1(ウォーム・データ用)のために保持し、圧縮層2(コールド・データ用)として追加のポリシーを加えます。Hybrid Columnar Compressionは、各ブロックではなく、完全なパーティションを圧縮するため、パーティション化されていない表とパーティション化されている表を別の表領域に分離します。

ALTER TABLESPACE TSY DEFAULT ILM ADD POLICY

ROW STORE COMPRESS ADVANCED ROW AFTER 40 DAYS

OF NO MODIFICATION;

ALTER TABLESPACE TSY DEFAULT ILM ADD POLICY

COLUMN STORE COMPRESS FOR QUERY LOW ROW LEVEL

LOCKING SEGMENT AFTER 6 MONTHS OF NO MODIFICA-

TION;

Oracle Database 12c Advanced Compressionにより、顧客は現在の(ホット)データと履歴(コールド)データを区別できます。ただし、「ホット」と「コールド」という用語の意味が明確ではありません。したがって、定義する必要があります。

ALTER TABLE <table_name> ILM ADD POLICY

<action>

AFTER <n> DAYS OF NO MODIFICATION;

このSQLの3行目が質問に答えます。新しいデータは「ホット」であると見なされています。データは、一定の期間(30、60、90日)変更されていない場合、「コールド」と見なされ、顧客が「ウォーム」のような中間のレベルを定義していないものと仮定されます。しかし考えてみると、これまでに回答が得られたのは、「データは、いつコールドになりますか」の質問のみで、次のことは分かっていません。「データがクールダウンすると、どうなりますか。」一体何が起こるのでしょうか。これは、2番目の行で定義します。

ALTER TABLE <table_name> ILM ADD POLICY

ROW STORE COMPRESS ADVANCED ROW

AFTER 40 DAYS OF NO MODIFICATION;

この例では、(特にこの表では)ホット・データはまったく圧縮されないと仮定されています。(a)40日間変更されないデータをコールドであると見なし、(b)Oracle Database 12c Advanced Com-pressionが提供する表圧縮アルゴリズムを使用して、コールド・データを圧縮する必要があるとシステムに知らせます。

データが40日間変更されていないことを、私たち、そしてシステムはどうやって知るのでしょう。この情報を提供するのは、ヒート・マップの仕事ですヒート・マップは、変更とクエリーのタイムスタンプを行レベルおよびセグメント・レベルで自動的に追跡し、データのアクセス状況から詳細な見通しを提供します。自動データ最適化(ADO)は、ヒート・マップで収集された情報に基づいたユーザー定義のポリシー(例としてここで使用しているようなポリシー)に従い、データを自動的に移動および圧縮します。

今までは、ILMポリシーの定義にALTER TABLE文が使用されていました。ただし、何万もの表を処理する必要のあるSAPシステムでは、このアプローチは不便です。そのため、SWPM(SAPinst)では、Oracle Databaseが提供する異なったオプションが使用されます。

Oracle Database 12c for SAP: アプリケーションを最適化する最新のデータベース・テクノロジおよびサポート

Page 16: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

16

Oracle MultitenantOracle Multitenantに関する一般的な事前に許可された情報は、記事「Oracle Databaseオプションとパック製品によるSAP向けデータ管理インフラストラクチャの実装」、特に26ページの

「Oracle Multitenant」の項を参照してください。

SAP固有の情報は、Oracle Multitenant for SAPの認定の後に追加されています。

DB: 機能概要

105047, Support for Oracle Functions in the SAP Environment

1914631, Central Technical Note for Oracle Database 12c Release 1 (12.1)

2133079, Oracle Database 12c: Integration in SAP Environment

DB: オプションAdvanced Compression

2138262, Oracle Database 12c Advanced Compression for SAP Systems

2157904, Oracle 12c: Conversion of Compressed Tables

2166836, Oracle 12c: Problem during SAP Upgrade with Compressed Tables

2254836, BR*Tools Support for Oracle ADO/ILM

2254866, Using Oracle Database 12c Automatic Data Optimization

2255992, R3load and R3szchk: New Oracle Feature for Database ILM Policy

2258061, Enhancements for ADO/ILM for Table Conversions or System Copy

DB: オプションIn-Memory

2137032, DBA Cockpit: Monitor for In-Memory Feature

2178980, Using Oracle Database In-Memory with SAP NetWeaver based Products

2189163, Oracle Database In-Memory Advisor for SAP

DB: オプションDatabase Vault2218115, Oracle Database Vault 12c

DB: Installation and Upgrade

1915299, Troubleshooting Software Installation for 12.1.0.2

1915301, Database Software 12.1.0.2 Installation on Unix

1915302, Database Software 12.1.0.2 Installation on Windows

1915315, Database Upgrade Scripts for 12.1.0.2

1915317, Migrating to Software Owner ‚oracle‘

1915323, OS User Concept for Oracle Database 12c Release 1

2064206, Database Upgrade to 12.1.0.2 with Grid Infrastructure

DB: Patches

1915313, Current Patch Set for Oracle Database 12c Release 1 (12.1)

1915316, Database: Patches for 12.1.0.2

2145572, Grid Infrastructure: Patches for 12.1.0.2

DB: Instance Configuration1888485, Database Parameters 12.1.0.2

DB: Admin:BR*Tools

2087004, BR*Tools Support for Oracle Database 12c

Engineered Systems

2145628, Exadata/SuperCluster: Patches for 12.1.0.2

2290084, SAP Software and Oracle Database Appliance Version 12.1

Oracle Database 12cに関連するSAP Note

Page 17: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

17SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

Oracle Databaseオプションとパック製品によるSAP向けデータ管理インフラストラクチャの実装

SAP環境のオプションとパック製品ここでは、SAP顧客向けのデータベースのオプションと管理パック製品を紹介します。純粋なOracle DatabaseとSAP用のOracle Databaseは、いくつかの相違点があります。

• 認定されたオプションでも、一部の機能の使用が許可されていない場合があります。ここでは概要のみを説明しています。詳細は、SAP Note 105047を参照してください。

• SAPのデータ・モデルまたはアプリケーションの独特な設計により、Oracle Databaseオプションまたは管理パック製品が必要な場合があります。たとえば、Oracle Databaseで稼働するSAP Business Warehouse(BW)にはOracle Partitioningが必要です。

• オラクルの基本方針では、オプションまたはパック製品のライセンスは個別に供与されていますが、SAP(ASFU)より購入されたOracle Database Enterprise Editionライセンスの場合、付属するオプションとパック製品(しかし、すべてがサポートされているわけではありません)は個別ライセンスではなくEditionのライセンスに含まれています。詳細は、SAP Note 740897を参照してください。

概要

データベースのエディションOracle Databaseには、様々な開発と配置のシナリオに適した5つのエディションがありますが、SAP環境で認定およびサポートされているのは、Oracle Database Enterprise Editionのみです。SAPアプリケーションの要求は非常に厳しく、Oracle Da-tabase Enterprise Editionが提供するエンタープライズ・コンピューティング機能なしに、アプリケーションを効果的に実行することはできません。

データベースのオプションと管理また、オラクルは複数のデータベース・オプション、管理パック製品、特定の目的に特化したOracle Databaseの機能を拡張する他の製品も提供します。それらは、ディスク領域の効率的な使用、パフォーマンスとスケーラビリティ、高可用性、セキュリティとコンプライアンス、データウェアハウス、ビッグ・データ、管理性の分野で、Oracle Database Enterprise Editionの性能を拡張し、顧客固有またはアプリケーション固有の要件を満たしています。

図1: Oracle Database Enterprise Edition、Databaseオプション(認定済み、必須、または認定済み、オプション)およびEnterprise Managerパック製品(認定済み、必須、または認定済み、オプション)。

Page 18: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

18

前述したすべての問題の共通点は、データベース内の表はデフォルト(および定義上)で、順序付けされていないレコードのセットであるという事実です。物理的な順序は保証されません。これに対し、ユーザー、アプリケーション、またはDBAの観点から見ると、このようなデータのセットには特定のサブセットを含む可能性があり、これらのサブセットは他のサブセットから分離される必要があります。Oracle Partitioningは、できる限り関連するデータを物理的にまとめたサブセットの実装を可能にします。

構造とインフラストラクチャ

前述したように、データベース・オプションは、ディスク領域の効率的な使用、パフォーマンスとスケーラビリティ、高可用性、セキュリティとコンプライアンス、データウェアハウス、ビッグ・データ、管理性の分野で、Oracle Database Enterprise Editionの性能を拡張しますが、ここでは、構造の実装に役立つデータベース・オプションという点を中心に説明します。1つの単一なデータベースのデータ量が増大する場合、また様々なソースからのデータの統合やOracle Multitenantなどによる独立した複数のデータベースをデータ管理インフラストラクチャに統合する場合などで、必ず大量の非構造化データを管理できなくなるときが訪れます。そのために、統合の差別化が必要です。またはインフラストラクチャに構造が必要です。

表および索引のパーティション化

課題: 現在、ディスク上のデータの量や配布が問題になる状況が増加しています。

(a)表データの特定のサブセットにアクセスする単一問合せや複雑なバッチ・ジョブの完了に長時間必要です。

(b)多数の索引を更新しなければならないため、データのロード(SAP BW)が遅い、またはロード時間を短縮するために索引が削除され再構築されます。これにより、ユーザーの問合せの速度が遅くなります。

(c)データのアーカイブ化の結果、データベースが極度に断片化されます。

(d)顧客は、情報ファイルサイクル管理を実装することを望んでいます(このプレゼンテーションのOracle DB 12cのセクションを参照してください)。

価値提案: Oracle Partitioningでは、表と索引をより小さいユニット(パーティションと呼ばれる)に分割し、すべてのデータを適切なユニットに強制的に保存します。パーティションは、個別に、独立してアクセスおよび管理ができます。したがって

(a)問合せが、関連するすべてのデータを1つの単一パーティションで見つけることができ、他のすべてのパーティションを無視(「パーティション・プルーニング」)できることが理

想です。これにより、実行時間を大幅に短縮できます。

(b)パーティション表に定義されている索引もパーティション化されている場合、各索引のパーティションを削除および再構築することができても、索引以外のすべてのパーティションは、そのまま残ります。

(c)データのアーカイブ戦略は、パーティション構造をベースにすることができます。これにより、ディスク領域の断片化を回避できます。

(d)パーティション化は、情報ライフサイクル管理の基盤技術の1つです。

認定/サポート: Oracle Partitioningは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。

バージョン: Oracle Database 11g、Oracle Database 12c

実装: パーティション化(レンジ・パーティション化)は、Oracle上のSAP BWではデフォルトで構成され使用されます。SAP OLTPシステムでは、SAP Partitioning Engine(データのアーカイブ化の問題を処理)を使用して、またはSAP向けOracle ACSにより実装できます。

Page 19: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

19

取る必要があります。メモリーの観点 - すべてのユーザーが1つの色のレコードを使用する場合も、8つのブロックすべてをデータベース・メモリーに完全にキャッシュする必要があります。さらにパフォーマンスの観点 - 過剰なI/Oは、確実にパフォーマンスを低下させます。データベース管理の観点 - 同色のレコードのサブセットを個別に管理できません。ILMの観点 - ホット・データとコールド・データを分離できません。など様々な場面で問題があります。

対照的に右側に示す状況は最適と言えるでしょう。同じ色のすべてのレコードが1つのデータベース・ブロックに保存されています。左の状況と同じようにデータベースのあらゆる観点からの評価はどうなるでしょうか。I/Oの観点 - 1つの色のレコードすべてに対する問合せに、読み取る必要があるのは1つのブロックのみです。メモリーの観点 - すべてのユーザーが1つの色のレコードを使用する場合も、データベース・メモリーへのキャッシュが必要なのは1つのブロックのみです。さらにパフォーマンスの観点 - I/Oの減少は、パフォーマンスを著しく向上させます。データベース管理の観点 - 同色のレコードのサブセットを個別に管理できません。ILMの観点 - ホット・データとコールド・データを分離できるなど、良いことずくめです。

このスライドで表示したレコード数とブロック数を掛けましょう。パーティションは、同色のレコードを含むすべてのブロックのサブセットです。

図2は、関連するデータをできる限り一緒にまとめて保存にすることがなぜ良いのか、その理由をわかりやすく説明しています。ここでは、レコードで満たされたデータベース・ブロックを示しています。異なった色は、月や場所などの条件を表しています。データにアクセスするアプリケーションは、同じ色のレコードすべての取得を試みようとします。

このような場合、左側に示す状況が想像できる最悪のケースです。各データベース・ブロックに、各色のレコードが必ず1つ含まれています。つまり、同じ色のレコードのサブセットが、すべてのブロックに分散されている状態です。これはデータベースのあらゆる観点から最悪の状況と言えるでしょう。I/Oの観点 - 1つの色のレコードすべてに対する問合せは、8つのブロック全部を読み

図2: 表パーティション - 関連するデータのサブセットをできる限り一緒に物理的に保存

Advanced Compression(Oracle Database 11g)

課題: 今日、データベースのサイズと将来の肥大化が問題になるケースが増えています。この問題には、次の側面が含まれます。ストレージのコスト、性能保証(SLA)、合理的な期間内のデータベースのクローニングとバックアップ。

価値提案: Oracle Advanced Compressionは、表データの保存に異なる形式を使用し、Oracle Database Enter-prise Editionに付属する他の圧縮テクノロジ(索引キーの圧縮)とともに、データベースのサイズを50%以上縮小します。Advanced Compressionは、それだけのために開発されました。その意味で、これがAdvanced Compressionの利点の本質です。ソース・データベースが小さい場合、バックアップやコピーなどの時間が短縮されます。

Advanced Compressionを使用するユーザーの付加的な利点として、パフォーマンスが向上する可能性があります。パフォーマンスの向上がAdvanced Compressionの本質的な目的ではないことから「付加的」としました。したがって現実にあり得ますが、実現の保証はされていません。

認定/サポート: Oracle Advanced Compressionは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認証され、実装はSAPによりサポートされています。

実装: SAP固有の要件を認識するツールBRSPACEがSAPにより提供され、SAP環境へのAdvanced Compressionの実装は簡単です。詳細は、SAP Note 1431296を参照してください。

SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

Page 20: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

20

図3の左側に、SAP(この場合、SAP ERP)システムの不可欠な部分を形成する代表的なOracle Databaseを示しています。割り当てられたディスク領域の約3分の1は索引(赤)に使用され、3分の2は表データ(青)が含まれています。表データは、構造化データ(表形式)と非構造化データ(PDFファイルまたはイメージ・ファイルなど)に分類できます。Oracle Database 11gは、3種類のデータすべてを圧縮できます。• 索引キーの圧縮は、索引に使用できます。索引構成表(IOTs)

も圧縮できます。両方の機能は、Oracle Database Enterprise Editionに含まれ、Advanced Compressionは必要ありません。

• Advanced Compressionの主要な機能、OLTP圧縮は、構造化データの圧縮に使用できます。OLTPシステムのみでなく、SAP BWシステムにも実装できます。

• SecureFiles圧縮(Advanced Compression機能)は、非構造化データの圧縮に使用できます。

すべての機能が実装され、すべての適切なデータベース・オブジェクトが圧縮されている場合、顧客は平均55%のディスク領域を節約できます。(データベースが完全に再編成されているとした場合。データベースが断片化したままの状態でも、再構成と圧縮の効果がより力を発揮し、顧客のディスク領域は最大80%の節約になります。)

節約できるディスクの最大領域はデータの特性により異なります。使用するSAPアプリケーションによってデータ特性が異なり、

SAP BW(BI)のデータは、SAP ERP(ECC)のデータよりも効率的に圧縮できます。さらに効果的な圧縮が期待できるのは、SAP CRMのデータで大幅なディスク領域の節約を可能にします。

Oracle Database 11g Advanced Compressionは、OLTP圧縮とSecureFiles圧縮以上の力を発揮します。RMANにより作成されたバックアップ・ファイル、およびData Pumpにより作成されたエクスポート・ファイルは、本番データベースの表と索引がすでに圧縮されていてもまだ圧縮できます。また、REDOログ・ファイルも、本番データベースからスタンバイ・データベースに転送される前に圧縮できます(この記事のData Guardのセクションを参照してください)。

課題: (a)Oracle Database 11gのデータ圧縮には、いくつかの制約があります。特に、列数が255を超える表は圧縮できません。

(b)ターゲット表が圧縮されている場合、データをロードする速度が遅くなります。

(c)自動化された情報ライフサイクル管理はサポートされていません。

価値提案: Oracle Database 12c Advanced Compressionでは、255列の制限がなくなり、より多くの表を圧縮できます。まったく新しい機能(ヒート・マップ、自動データ最適化)により、顧客はDeferred Data Compressionおよび高度な情報ライフサイクル(ILM)戦略を実装できます。

認定/サポート: Oracle Database 12c Advanced Com-pressionの新機能の一部は、2015年3月に認定されました。ILM機能の認定は、2015年の第4四半期に終了しています。

実装: 詳細は、認定後に提供されます。

関連する機能: Oracle Database 12c Hybrid Columnar Compression(Advanced Compressionには含まれていませんが、OracleのEngineered Systemsで使用できる機能です)は、特に「コールド」(履歴)データに適した強力な圧縮を提供します。Oracle Engineered SystemsのHCCは、2015年12月に認定されました。

図3: Oracle Database 11gの索引キーの圧縮とAdvanced Compression(OLTP圧縮、SecureFiles圧縮)

Advanced Compression(Oracle Database 12c)

Page 21: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

21

情報ライフサイクル管理(ILM)Oracle Database 12c Advanced Compressionの新機能により、さらに多くのパラメータを導入できます。このうちの1つは、場所です。データベースの中にホット(現在の)データとコールド

(履歴)データがあり、2種類のストレージがある場合は、次の質問をしてください。Where? 「どこに」どのデータを保存しますか?

Advanced Compressionとともにパーティション化を使用すると、データが「クールダウン」したときに、データを1つの表領域

(=ストレージ層)から他の表領域に移動(厳密に言えば、システムにデータを移動させることが)できます。このようにして、高価なストレージ層の領域を重要な(「ホット」)データに開放します。これは、(自動)ストレージ階層化と呼ばれます。

Hybrid Columnar Compression(HCC)最後に、Oracle ExadataまたはOracle SuperCluster上でOracle Database 12cを実行する前に、次の質問をしてください。How?どのように、つまりどのアルゴリズムを使用して、データを圧縮しますか?

このエンジニアド・システムは、OLTP圧縮およびSecureFiles圧縮に加えて、Hybrid Columnar Compressionをサポートします。名前が示すように、このテクノロジは、データを保存するために行メソッドと列メソッドを組み合せて使用します。ハイブリッド・アプローチは、カラム・ストレージの圧縮の利点を実現し、同時に、純粋なカラム(列)型フォーマットの性能不足を回避します。HCCを使用すると、「通常の」圧縮による圧縮率よりもはるかに高い圧縮率を達成できます。したがって、HCCは、特に「コールド」データに適しています。

行レベルのロック機能がないため、Oracle Database 11g Hy-brid Columnar CompressionのSAP環境での使用認定は、これまで実現させることができませんでした。しかし、Oracle Data-base 12cでは、この機能をOracle ExadataとOracle SuperClu-sterで使用でき、これらのマシン上に、(自動)圧縮階層化を実装できます。つまり、「ホット」データは未圧縮のままで、「ウォーム」データを標準の圧縮アルゴリズム(Advanced Compression)を使用して圧縮し、「コールド」データをHybrid Columnar Com-pressionを使用して圧縮することができます。

ベーシック認定の機能Oracle Database 11gでは、索引と表の圧縮機能にいくつかの制約がありました。これを解決するのが、Oracle Database 12c Advanced Compressionの新しい、より効率的な索引圧縮アルゴリズム(Advanced Index Compression)で、圧縮する表の列制限も解消されています。詳細は、記事「Oracle Database 12c for SAP - ロードマップ、ベーシック認定の機能」を参照してください。

ヒート・マップと自動データ最適化これらの改善点に加えて、Oracle Database 12c Advanced Compressionには、2つのまったく新しい機能が搭載されています。ヒート・マップは、変更とクエリーのタイムスタンプを行レベルおよびセグメント・レベルで自動的に追跡し、データのアクセス状況から詳細な見通しを提供します。自動データ最適化

(ADO)は、ヒート・マップで収集された情報に従い、データを自動的に移動および圧縮します。

遅延圧縮Advanced Compression(Oracle Database 11g)のセクションの情報だけでは、圧縮の役割は単に必要なディスク領域の削減のみで、データベース構造とは関係ないように思えるかもしれませんが、それは錯覚です。Oracle Database 11gを使用する場合でも、圧縮によりメリットがある表とメリットがない表、つまり圧縮が必要な表と圧縮してはいけない表を区別する必要があります(そうでない場合には、圧縮がデフォルトになります)。

しかし、これは非常に初歩的で柔軟性のない区別です。データのロードに使用するSAP BW表がその一例です。このような表は、ほとんどの場合に読取り専用モードでアクセスされるため、圧縮することができますが、ロード操作が極端に遅くなるため、圧縮するべきではありません。Oracle Database 11gでは、このような表を圧縮しないことをお薦めします。

ヒート・マップと自動データ最適化により、新しいパラメータを導入できます。表またはパーティションを圧縮する必要がある場合、いつ圧縮しますか? Oracle Database 11gの場合、圧縮の実行を指示しない限り圧縮は実行されません。反対に、Oracle Database 12cでは、今日ロードしたデータを翌日圧縮することができます。しかも自動的にです。

SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

Page 22: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

22

図4: Oracle Database 12c Advanced Compression - 情報ライフサイクル管理(ILM)のサポート

Oracle Database In-Memory

課題: 多くのシステムで、分析のパフォーマンス要件を満たすことが課題になっています。これは、実行時間の長いBWのクエリーに該当します。しかし、OLTPシステムでも起こり得ます。たとえば、非常に柔軟な業務計画/レポート作成の実装では、たくさんのわずかに異なるクエリーが作り出されています。

価値提案: Oracle Database 12c In-Memoryにより、管理者は一定量のデータベース・サーバーのメモリーを列ストアに配分できます。列ストアは、ロー(行)型フォーマットではなくカラム(列)型フォーマットでデータを保存するメモ

リー構造で、短時間で簡単に設定できます。カラム(列)型フォーマットを使用すると、問合せのパフォーマンスを大幅に改善することができます。

認定/サポート: Oracle Database In-Memoryは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。

バージョン: Oracle Database 12c

実装: 概要と指針についての詳細は、SAP Note 2178980を参照してください。

メモリー:新しいデュアルフォーマットのアーキテクチャこれまでのOracle Databaseは、データをロー(行)型フォーマットで保存していました。この形式は、レコード内のすべての列への迅速なアクセスを可能にするため、オンライン・トランザクション(OLTP)に最適です。列形式のデータベースでは、トランザクションやレコードに関するそれぞれの属性が個別の列構造に保存されます。わずかな列が選択されている一方で、問合せがデータ・セットの大部分にアクセスしているような場合に、より高速なデータ検索ができるため、この形式は分析に最適です。

しかし、システムが混合ワークロードを処理する場合は、どうなるでしょう?これまでは1つの形式を選択し、不十分なOLTPまたは不十分な分析のパフォーマンス、そのいずれかをトレードオフすることに甘んじるしかありませんでした。OLTPと分析をともに最適化する方法がなかったわけではありません。しかし、複雑なETLプロセスを使用して、OLTPシステムから分析システムにデータをコピーする、その方法は莫大な費用と待ち時間が必要でした。

Oracle Database 12c In-Memoryは、トランザクションに対する卓越したパフォーマンスを提供し、分析と複合ワークロードのOLTPの両方を最適化します。それと同時にリアルタイム分析、ビジネス・インテリジェンス、レポートをサポートします。この画期的な機能は、Oracle Database In-Memoryのデュアルフォーマット・アーキテクチャにより、使用可能になります。このアーキテクチャは、従来のロー(行)型フォーマットと新しいインメモリーのカラム(列)型フォーマットを同時に使用する表によって、何も犠牲にしません。Oracle SQL Optimizerは、分析系のクエリーをカラムフォーマットに、OLTPクエリーをローフォーマットに自動的にルーティングし、2つの形式の長所を組み合せたパフォーマンスを透過的に提供します。現在Oracle Database 12cは、表と索引間の整合性と同様に、ロー(行)型フォーマットとカラム(列)型フォーマットの間で完全なトランザクションの整合性を自動的に維持します。

Page 23: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

23

ディスク: 変更なし新しいカラム(列)フォーマットは、純粋なインメモリー・フォーマットです。表は、Oracle既存のロー(列)指向のフォーマット(または、エンジニアド・システムでは、ハイブリッドのロー(列)型)を使用して、ディスクに保存されます。カラム(列)型ストレージの永続的なフォーマットもないため、追加のストレージのコストやストレージ同期化の問題もありません。もちろん、データベースを変更する必要もありません。Oracle Database 12cのインメモリー・オプションは、データベースの移行または表の再構成なしで実装できます。

その結果、新しいOracle Database 12cのインメモリー機能は、表圧縮、表の暗号化、表のパーティション化など、既存の標準またはオプションのデータベース機能に完全に対応しています。また、Real Application Clusters(RAC)が提供するスケールアウト・アーキテクチャ、および既存のすべての高可用性テクノロジ

(Data Guardなど)にも対応しています。これらの機能は、Ora-cle Database In-Memoryの使用の有無にかかわらず、同じように動作します。

簡単な実装と管理データベース機能およびアプリケーション・レベルの互換性に加えて、Oracle Database In-Memoryは実装と管理が簡単です。Oracle Database In-Memoryの使用は、インメモリー列ストアのサイズ設定、メモリーに取り込む表やパーティションの識別と同じくらい簡単です。データベースが稼働中に、データはバックグラウンドでストレージからインメモリー列に追加処理されます。

精度の高い制御ごく日常的でインテリジェントに溢れた容易なスタート - Oracleの顧客は、まさにこれを求めています。また、Oracleの顧客は、精度の高い制御とチューニングが実現できるメカニズムも求めています。顧客が求めるこうしたメカニズムを、Oracle Database 12cのインメモリーが提供します。次にいくつかの例を挙げます。

簡単な実装とメッセージ• 表には「コールド」と呼ばれる(アクセス頻度の低い)データが

含まれています。これらのデータの中には、更新されることもなく、クエリーによるアクセスもないデータがあります。表が非常に大きい場合、インメモリー列ストアに完全に保存することはメモリーの浪費になります。管理者は、入力プロセスをDSSクエリーが本当に必要とするデータに制限したいと考えるでしょう。これは、表のパーティション化で実行できます。表が有効な方法(月別など)でパーティション化されている場合は、内部構造を使用して表データの水平サブセットを定義し、インメモリー列ストアに保持できます。

• 1つまたは複数の列に、DSSクエリーとは無関係のデータが含まれる場合があります。この場合にも、データベース管理者は、インメモリー列ストアに保存するデータを制限したいと考えるかもしれませんが、ここで必要なのは、表データの垂直サブセットを定義すること、つまり、複数の列を入力プロセスから除外することです。Oracle In-Memoryオプションにより異なる表の列に異なるインメモリーの特性を指定すると、除外することができます。

• Oracle Databaseは数十年にわたり、SMPサーバー上のスケールアップのために最適化され、チューニングされてきました。すべてのプロセッサが超高速バックプレーン上ですべてのメモリーにアクセスできるため、大規模なSMPサーバーは、インメモリー・ワークロードにも適しています。Oracle Database In-Memoryではスケールアップを可能にする他に、サーバーのクラスタ内(RAC)のすべてのメモリーとプロセッサを使用して、メモリー機能とCPU機能を非常に高いレベルにスケールアウトすることもできます。このような環境では、メモリーに入力されるすべてのオブジェクトは、デフォルトでクラスタ内のすべてのインメモリー列ストアに分散されます。Oracle Engi-neered Systemsでは、オブジェクトを複製することもできます。これは、インメモリー列ストアに入力されたオブジェクト(またはオブジェクトの一部、たとえばパーティション)のミラー・コピーが、RACクラスタ内の他のノードの1つに配置されることを意味します。データを複製すると、インメモリー・フォルト・トレランスが使用できます。ノードの障害またはメンテナンスで停止した場合でも、インメモリー行ストアによりデータにアクセスできることが保証されるためです。

図5: Oracle Database 12cインメモリー - デュアル・メモリー・フォーマット、シングル・ディスク・フォーマット

SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

Page 24: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

24

Real Application Clusters(RAC)

課題: アプリケーションのバージョンアップ、アプリケーションの追加、ユーザー数の増加などで、データベース・サーバーのワークロードが増加した場合、既存のサーバーをより大型のサーバーと交換(スケールアップ)するのが従来のソリューションです。しかし、大型のサーバーは非常に高価です。

従来の方法では、データベース・サーバーの高可用性を保証するために、フェイルオーバー・クラスタを実装しますが、この方法には少なくとも2つの短所があります。

(a)フェイルオーバー・クラスは、常に1台のマシンで実行されている1つのデータベース・インスタンスのみをアクティブにできるという概念に基づいています。もう1台のマシン

(おそらく、高価なサーバー)は常にアイドル状態です。(b)プライマリ・マシンの問題が検出されると、Oracle Da-tabase Serverインスタンスをセカンダリ・マシンで起動する必要があります。この状況では、起動には最大で30分必要です。これは、最大30分の計画外停止時間を意味します。

価値提案: Real Application Clusters(RAC)により、複数のインスタンスを立ち上げて稼働させ、同一のデータベースに同時にアクセスすることが可能になります。これらのインスタンスは異なるマシンで稼働できるため、顧客はスケールアウトの実装を選択できます。4、6、または8台の小型のサーバーは1台の大規模なサーバーと同じワークロードを処理できます。しかも、小型のサーバーは大型のサーバー

と比較して非常に安価で、必要に応じて簡単に追加することもできます。

このアーキテクチャでは、すべてのOracleインスタンスが同時に起動し、稼働します。したがって、再起動は不要です。RACサーバーのうち、1つに障害が発生しても、もう1つのインスタンスがそのタスクを引き継ぎます。影響を受けたユーザーは、わずか数秒で再接続できます。

一言で説明すると、ワークロード分散、スケーラビリティ、高可用性、より容易な管理性、コスト削減の組合せの実現が、Oracle Real Application Clustersの価値提案です。

認定/サポート: Oracle Real Application Clustersは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。

バージョン: Oracle Database 11g、Oracle Database 12c

実装: 顧客はSAPが認定した任意の汎用マシン(Unix、Li-nux、またはWindows)を使用して、RACシステムを構築できます。さらに、オラクルは実装を簡素化するエンジニアド・システム(Exadata、SuperCluster)を提供します。Oracle Grid Infrastructureは、実装の簡素化によりコスト削減を支援する、基本的な技術のセットを提供します。

ション・サーバー・インスタンス(5台の異なるマシンで実行中)が、4つのOracle Database Serverインスタンス(4台の異なるマシンで実行中)に接続されています。

図6では、前述のRACの長所を説明します。スケーラビリティ:RACを使用すると、SAPアプリケーション・サーバー・レベルで常にサポートされるスケールアウトをデータベース・レベルにも実装できます。この例では、5つのSAPアプリケー

図6: スケールアウトおよび即時(インスタンス)フェイルオーバーのためのReal Application Clusters(RAC)

Page 25: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

25

高可用性: Oracleインスタンスの1つが停止すると、影響を受けたSAPインスタンスは自動的に、使用可能なOracleインスタンスの1つに再接続されます。この操作の後、ユーザーは作業を続行することができます。フェイルオーバーは数秒以内に発生します。

Oracle Grid Infrastructureは、RACを有効にするために必要な基本的な技術を提供します。次の2つの主要コンポーネントで構成されます。• 同時に複数のOracleインスタンスがデータベース・ファイルに

アクセスするには、クラスタ・ファイル・システムが必要です。そのため、オラクルは、Oracle Automatic Storage Management

(ASM)を提供しています。他のサードパーティのクラスタ・ファイル・システムと異なり、このコンポーネントはOracle Da-tabaseファイルに最適化され、無償で提供されています。

• Oracle Clusterwareは、Oracle DatabaseでRACオプションを実行する場合に必要なクロス・プラットフォームのクラスタ・ソフトウェアです。これにより、ノードが相互に通信でき、単一の論理サーバーとして動作するノードのクラスタを形成できます。サードパーティのクラスタ・ファイル・システムが不要になるOracle ASMと同様に、Oracle Clusterwareはサードパーティのクラスタ管理ソフトウェアを不要にします。

Oracle Clusterwareは、Oracleリソースのみではなく、SAPリソースに対しても高可用性とリソース管理を提供します。そのためにOracle/SAP開発チームは、SAPの高可用性リソースの管理が簡単にできる、Oracle Clusterwareツール(SAP Control

(SAPCTL))を開発しました。

SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

Data GuardとActive Data Guard

課題: RACは、Oracleインスタンスの数を増加させることにより、高可用性を提供します。ただし、このような高可用性はインスタンス・レベルに制限されています。RACを基本としたシステムでも、データベースは今もってシングル・ポイント障害です。つまり、DBAエラー、データの破損、サーバーまたはデータ・センターの障害は、システム全体を使用できなくなる可能性があります。

価値提案: Data Guardはシングル・ポイント障害を排除します。このテクノロジにより、顧客は、プライマリ(本番)データベースのコピーとして、スタンバイ(シャドウ)データベースを設定し、2つのデータベースを同期させることができます。Data Guardは、Oracle Database Enterprise Editionの一部であることに注意してください。オプションではありません。

ただし、Active Data Guardは、オプションです。このオプションはOracle Database 11gで、自動ブロック修復、高速増分バックアップなどの追加機能を提供しています。

Oracle Database 12cの主要な新機能、Active Data Guard Far Syncにより、顧客は高パフォーマンス(非同期データ・シッピングの特徴)とデータ消失ゼロ(同期データ・シッピングの特徴)を組み合せることができます。

認定/サポート: Oracle Data Guardは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。ただし、フィジカル・スタンバイ・データベースのみのサポートで、ロジカル・スタンバイ・データベースはサポートされてません。

Oracle Active Data Guardは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。ただし、イベント・レポートの生成が読取り専用操作でないため、SAP環境ではリアルタイムの問合せができません。

バージョン: Oracle Database 11g、Oracle Database 12c

実装: 標準のOracle設定手順を適用。ホワイト・ペーパー『Oracle Standby Database』で、SAPはBR*Toolsのサポートについて説明しています。

何らかの原因で本番データベースが修復できなくなった場合、Data Guardはデータ損失ゼロの保護、およびサービスのほぼ即時のリストアを提供できます。これは、任意のスタンバイ・データベースで、Data GuardのREDO同期転送とレプリケーション認識適用プロセスの組合せを使用して達成されます。ただし、任意の同期レプリケーション方式がデータベースのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があるため、プライマリ・データベースとレ

プリカ・データベースが離れた場所に設置されている場合、データ消失ゼロ保護の実装は非実用的です。多くの企業では、実際にデータベースのパフォーマンスへの影響を考慮してというよりは、非同期化レプリケーションの実装によるデータ保護と修復不可能な停止によるデータ損失を黙って受け入れているというのが現状ではないでしょうか。

Page 26: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

26

Oracle Database 12cの新機能、Active Data Guard Far Syncは、データ損失ゼロの保護をプライマリ・データベースから任意の距離にあるレプリカ・データベースへと拡張することでデータ損失に対して妥協を許しません。Far Syncは、プライマリ・データベースの位置から任意の距離にあるスタンバイ・データベースの同期を維持し、本番データベースをデータ損失から保護します。パフォーマンスへの影響はなく、コストや複雑さも最小に抑えることができます。新しいData GuardではFar Syncと呼ばれるインスタンスが、プライマリ・データベースから変更を同期的に受信し、リモート・スタンバイへ非同期的に転送します。本番データベースのデータを損失することなく手動または自動で、即座にリモート・スタンバイ・データベースにフェイルオーバーできます。

Far Syncインスタンスは、制御ファイルとログ・ファイルのみを管理する軽量のエンティティで、使用するCPU、メモリーおよびスタンバイ・データベースのI/Oはごくわずかです。ユーザー・データ・ファイルを含まず、リカバリも実行しません。このインスタンスの唯一の目的は、リモート転送先にサービスを提供するプライマリ・データベースを透過的にオフロードすることです。また、Far Syncインスタンスは、Oracle Advanced Compressionによる転送圧縮でネットワーク帯域幅を節約できます。

ボストンにプライマリ・データベース、サンフランシスコにスタンバイ・データベースが設置された、既存の非同期Data Guard構成を例に説明しましょう。Active Data Guardを使用してデータ損失ゼロにアップグレードし、ボストンから同期レプリケーションが可能な距離の範囲(150マイル以下)にFar Syncインスタンスを配置します。既存の環境を停止する必要はありません。また、独自のストレージ、専用のネットワーク、データベース・ライセンスの追加も、まして複雑な管理もありません。

図7: Active Data Guard Far Sync - 高パフォーマンス、遠距離WAN全体にわたるデータ消失ゼロ

Oracle Multitenant

課題: 多くのSAPランドスケープは、わずかな大規模システムと多くの小規模または非常に小規模なシステムで構成されていますが、多くの小規模なSAPシステムにそれぞれ独立したデータベース・サーバーが設置された構造には、いくつかの短所があります。

• 多くの小規模システム(仮想化されたシステムも含む)は、使用するハードウェア・リソース(メモリー、CPU)も多い

• 小規模DBシステムが多ければ多いほど、管理に必要な時間が長い

価値提案: Oracle Multitenantは、コンテナとプラガブル・データベースを分離し、リソースの使用を抑制します。標準的な操作を「コンテナ・データベース」レベルに移動することにより、管理を簡素化します。

認定/サポート: Oracle Multitenantは認定されました。

バージョン: Oracle Database 12c

実装: 詳細は、認定後に提供されます。

Oracle Database 12c Multitenantに、複数のデータベースを簡単に統合できる新しいアーキテクチャが導入されました。もちろん既存のアプリケーションの変更はありません。この新しいアーキテクチャのメリットは、複数のデータベースを1つのデータベースとして管理する点です。その上、独立したデータベースの分離とリソースの優先順位付けが保持されています。

統合のアプローチ大企業の場合、使用するデータベースは数百または数千の数になります。これらのデータベースの多くは、複数の物理サーバー上の異なるプラットフォームで稼働していますが、このうちデータベースが占める容量の割合がサーバー・ソフトウェアのごく1部というのも珍しくありません。これは、費用のかかるアプローチです。ハードウェア・リソースおよび人的資源の両方を最大限に活用していません。

Page 27: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

27

バックグラウンド・プロセス、メモリー構造、システム全体にわたるメタデータ、およびデータベース・ファイルの共有の結果、リソース使用が大幅に減少しました。また、Oracle Database 12c Resource Managerは、CDB内のPDB間のリソースをめぐる競合を制御する特定の機能が拡張されています。

多数のデータベースを1つのデータベースとして管理既存のデータベースをプラガブル・データベースとして統合すると、管理者は多数のデータベースを1つのデータベースとして管理できます。利点は、次のとおりです。

• 1つのCDBにパッチを適用する時間と手間を惜しまないでください。効果は多数のPDBすべてへのパッチ適用として即座に現れます。CDBでホストされているすべてのPDBをアップグレードするには、CDBをアップグレードします。こうすると、ホストされているPDBすべてがインプレースでアップグレードされます。

• バックアップの場合もデータベースを個別にバックアップする代わりに、CDBレベルでバックアップします。つまり、1つのコンテナに統合されたすべてのPDBが一体でバックアップされ、管理者は必要に応じて、個別のPDBレベルでリカバリ処理を実行することができます。

• 他の(Data GuardまたはActive Data Guardを使用)データ・センターでスタンバイ・システムを維持する(Active Data Guardなどを使用)管理者は、CDBレベルでスタンバイ構成を設定するだけで、コンテナに統合されたすべてのプラガブル・データベースに反映できます。

管理の問題に対応する最も一般的な方法は、各サーバー(ダイレクト・インストール、または仮想マシンを使用)への複数のデータベースの配置です。問題は、複数のデータベース・インスタンスが共通のバックグラウンド・プロセス、システムおよびメモリー・プロセス、またはOracleメタデータを共有しないことです。もう1つの方法は、論理的にデータをスキーマ(スキーマ統合)に分割することです。問題は、これらの仮想エンティティは管理、保護および転送が困難であることです。

Oracle MultitenantのアーキテクチャOracle Database 12c Multitenantは、データベース統合と呼ばれるアプローチに基づいています。このアプローチにより、単一のコンテナ・データベース(CDB)は、多数のプラガブル・データベース(PDB)を格納できます。図8を参照してください。

既存のデータベースをCDBに簡単にプラグインできます。したがって、いつでもアンプラグして、別のCDBにプラグインすることができます。アンプラグ/プラグは、Oracle Databaseソフトウェアの12c以降のバージョンでサポートされています。

Oracle Net経由でデータベース・サーバーに接続しているクライアント・アプリケーションから見れば、PDBはデータベースです。PDBは完全に非CDBと対応します。このルールは、PDB/非CDB互換性保証とも呼ばれています。

リソース利用率とリソース管理単一のCDB内の多くのPDBは、メモリーとバックグラウンド・プロセスを共有します。これにより、古いアーキテクチャと比較してより多くのデータベースを統合でき、スキーマ・ベースの統合でも同様の利点がありますが、そのアプローチには大規模なアプリケーションの変更は必要ありません。

Oracleデータ・ディクショナリの水平分割(概念的なパーティション化で、物理的な表パーティションではありません)により、システム全体のメタデータをあらゆる単一のデータベースに保存して管理する必要がなくなります。下半分(CDBに実装)にはシステム全体のメタデータのみが保存され、上半分(PDBに実装)にはアプリケーション固有のメタデータのみが保存されます。

プラガブル・データベースの作成、コンテナ間でのプラガブル・データベースの移動、およびプラガブル・データベースのクローニングは、新しいSQLコマンドを使用して数秒で実行できます。基盤のファイル・システムが、シン・プロビジョニングをサポートする場合は、テラバイト単位のデータベースを瞬時にクローンできます。

SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

図8: Oracle Multitenant - データベースを統合し、操作を簡素化するための新しいアーキテクチャ

Page 28: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

28

Oracle Advanced Security

課題: SAPアプリケーションのデータ・ストアであるOracle Databaseでデータを読み取るまたは更新する場合、正規ユーザーの誰もがこのアプリケーションを選択します。しかし、犯罪者はネットワーク・スニッフィング・ツールやファイル・エディターを使用して、SAPのユーザー管理やアクセス制御をバイパスしようとします。ネットワーク・スニッフィング・ツールは転送中のデータを取得でき、ファイル・エディターはコピー中のデータベースの静止データを読み取ることができます。

価値提案: Oracle Advanced Securityはデータを暗号化して、犯罪者がデータ内容を容易に取得できないようにする機能のバンドル版です。Oracle Network Encryptionは転送中のデータを保護します。一方、Oracle Transparent

Data EncryptionおよびBackup Set Encryptionは本番データベース・ファイルとバックアップ・コピーのデータを保護します。

認定/サポート: Oracle Advanced Securityは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。実装はSAPによりサポートされています。

バージョン: Oracle Database 11g、Oracle Database 12c

実装: Advanced Securityの機能は、Oracle Net Configu-rationを介し、またはSAPのBR*Toolsを使用して設定します。詳細は、SAP Note 973450、974876、1324684を参照してください。

通信データ保護:Oracleネットワーク暗号化SAP環境では、ユーザーがOracle Databaseサーバーに直接接続することはありません。ユーザーがSAPのアプリケーション・サーバー・インスタンスに接続すると、SAPのアプリケーション・サーバーがOracle Databaseサーバーに接続します。したがって、アプリケーション・サーバー・インスタンスがOracleクライアントであり、オラクルのネットワーク暗号化は、アプリケーション・サーバーとデータベース・サーバーの間を移動するすべてのデータを暗号化します。

オラクルのネットワーク暗号化には、Oracleソフトウェアが必要ですが、エンド・ユーザーのデバイスにインストールされていないため、SAPユーザーとSAPアプリケーション・サーバー間の通信を保護するには、他のテクノロジまたは製品が必要です。

悪意のあるユーザーは、転送中のデータを読み取るだけでなく、データを傍受し改ざんしようとします。そのため、オラクルはネットワーク暗号化に加え、暗号化チェックサムによるデータの整合性をサポートしています。暗号化と暗号化チェックサムはともに、アプリケーションに対し完全に透過的です。システム管理者は両方の領域で複数のアルゴリズムから選択できます。1

格納データの保護:Oracleの透過的なデータ暗号化OracleのTransparent Data Encryption(TDE: 透過的なデータ暗号化)は、本番データベースを構成するファイル内のデータを透過的に暗号化します。(バックアップ・ファイルとは対照的です。それについては、次の項で説明します)。名前が示すように、TDEはアプリケーションに対して透過的であるため、アプリケーションを変更する必要がありません。SAP NetWeaverのバージョン7.20以降ではBRSPACEを使用して、表領域レベルで暗号化属性を設定できます。BRSPACEは、暗号化キーを保存するウォレットの管理にも使用できます。

透過的なデータ暗号化には2つの種類があります。1つ目の暗号化(Oracle Database 10g以降、使用可能)は、列暗号化と呼ばれます。この名称は、多数のSAP表のうち、2、3の表または機密データを含む表の各列を選択して暗号化することに由来します。その以外の部分は暗号化されません。2つ目(Oracle Database 11g以降、使用可能)は、表領域の暗号化と呼ばれます。この機能は表領域全体を暗号化します。データベースには100、1000、または数万の表が含まれている可能性がありますが、まったく問題になりません。

バックアップデータの保護:Oracleバックアップ暗号化データベース・バックアップで列暗号化を採用するに当たっては、一般的に本番データベース・ファイルよりバックアップ・ファイルの方が盗まれやすいことに注意してください。そのため、Oracle Advanced Securityの3つ目のテクノロジはバックアップ暗号化の機能です。

1 注意:2013年6月現在、ネットワーク暗号化および暗号化チェックサムは、Oracle Advanced Securityの一部ではありませんが、サポートされているOracleデータベースのすべてのリリースのライセンス・エディションに無償で含まれています。

Page 29: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

29SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

単にデータベース・ファイルをバックアップした場合、バックアップ・コピーで暗号化されるのは本番データベース・ファイルで暗号化された列のみですが、OracleのRecovery Manager(Oracle RMAN)とOracle Advanced Securityを併用すると、すべてのバックアップ・セット(つまりすべてのデータ)が暗号化されます。

図9: Oracle Advanced Security - 通信データまたは格納データの暗号化

Oracle Database Vault

課題: 犯罪者が、SAPアプリケーションのバイパスにサードパーティのツールではなく、Oracleのツールを使用した場合はどうなるでしょうか。データの暗号化は役に立ちません。もし犯罪者が特権データベース・ユーザー(データベース管理者の内部犯行)だった時には、非常に危険です。また、管理をアウトソーシングしているデータベースやクラウドに保存されたデータも特に注意が必要です。

価値提案: Oracle Database Vaultは、従来のデータベースの権限管理方法にかわる、新しいより柔軟で強力な権限管理方法です。これは、従来のユーザーと権限の相関関係やユーザーと

ロールの相関関係とはかなりの隔世感があります。Oracle Database Vaultにより、企業は職務分掌やダブルチェック方針などの概念を実装し適用できます。

認定/サポート: Oracle Database Vaultは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。実装はSAPによりサポートされています。

バージョン: Oracle Database 11g、Oracle Database 12c

実装: Database Vaultは、Oracle Database Vault Adminis-trator(DVA)を使用して、管理されます。

データベース管理者が、データベース内のすべてのデータを読取り(あるいは変更)できることは、本当に必要で望ましいことでしょうか。Oracle Database Vaultこの問題の解決するには、データベース内の新しい権限管理方法が必要です新しい管理方法では、システム権限とオブジェクト権限は継続して提供しますが、暗黙的に付与されるオブジェクト権限の使用を中止します。

Oracle Database Vaultを使用すると、従来の不完全な権限管理方法にかわる、この新しいより柔軟な権限管理方法が適用でき、すべての暗黙的な権限を解除し、代わりにアクセス権限を明示的に定義する方法と、アクセス権限を有効にする環境を提供します。これは、従来のユーザーと権限の相関関係やユーザーとロールの相関関係とはかなりの隔世感があります。

権限付与されたデータベース・ユーザーは、データベース管理者と同様にDBAツールを使用し、SAPのセキュリティ・チェックをバイパスして直接データベースに接続することができます(図10を参照してください)。暗号化はこのような脅威に効果がありません。適切な権限が付与されたアカウントを使用して接続して問合せを送信すると、Oracle Databaseはこのユーザーに結果セットを送信します。要求されたデータが暗号化されている場合、Oracleはそれを復号化します。このユーザーが送信した要求は、Oracle Databaseにとって完全に有効な要求であるからです。

これまで、明示的に適切なシステム権限のセットが付与されると、暗黙的にすべての表のオブジェクト権限も付与されるため、こうした危険が常に存在しました。しかも、これが何十年もの間許容されていたのです。最近になって、データベースを使用する企業が疑問を持ち始めています。データベース構造を管理する

Page 30: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

30

Oracle Database Vaultにより、企業は職務分掌やダブルチェック方針などの概念を実装し適用できます。

Oracle Database Vault for SAPオラクルが販売するOracle Database Vaultは、単なるツール・ボックスに過ぎません。このツールには、事前定義済のレルムとロールが用意されていますが、これらはシステム表とごく一般的

(基本的)なロールです。この事前定義済コンポーネントでOra-cle Database Vaultを動作させ使用することはできますが、アプリケーション固有のデータを保護することはできません。それはOracle DBが企業のアプリケーションやデータを認識できないためです。オラクルが提供できるのはツール・ボックスのみで、決定したセキュリティ要件で具体的なアクセス制御ポリシーを設計するのはユーザーです。

重要なのは、顧客が自社製アプリケーションを使用している場合、オラクルにとってできることは多くないかもしれません。ただし、多くの企業が特定の標準アプリケーションを使用しているならば、企業間のセキュリティ要件はある程度同じだと言っても間違いはないでしょう。アプリケーションの設計に起因する場合、基本的なセキュリティ・ポリシーにオラクルが分析した要件を実装する適用することも可能です。

オラクルは、このような事例をいくつも経験しています。オラクルはこの方法で、多くの顧客の事例でアプリケーション固有の基本的なセキュリティ・ポリシーの実装に費やす時間を節約してきました。また、基本的な実装の一部を忘れていた顧客を守ることもできました。現在、オラクルは事前定義されたアプリケーション固有のOracle Database Vaultのポリシー・グループを提供しています。Oracle Database Vault for SAPは、このポリシーの1つです。

課題 : データベース・ソフトウェアのパッチまたはアップグレード、変更されたデータベース・サーバーの構成、および新しいデータベース機能/オプションの実装により、データベース・サーバーとシステム全体のパフォーマンス、可用性およびセキュリティを改善することができます。特に、顧客固有またはアプリケーション固有の特性を考慮する必要がある場合、管理者は事前に、新しい機能または構成の本番システムでの動作を知る必要があります。

価値提案: 多くのテスト・システムでは、適用されるワークロードが本番システムのワークロードより小さい、またはワークロードと異なる、テスト・システムで効果的に動作する新しい機能または構成が本番システムでは動作しないなどの問題があります。そのため、Oracle Real Application Testingは、顧客が本番データベースのワークロードを取得

し、テスト・システムでリプレイすることを可能にします。この2つのステップを組み合せると、本番システムに実装する前に実際のワークロードを使用して、変更の正確な影響を把握することができます。

認定/サポート: Oracle Real Application Testingは、すべてのSAP NetWeaverアプリケーションに対して認定されています。実装はSAPによりサポートされています。

バージョン: Oracle Database 11g、Oracle Database 12c

実装: これは、データベース専用の機能であるため、SAPのツール・サポートは不要です。詳細は、SAP Note 1426980を参照してください。

図10: Oracle Database Vault - 権限付与されたユーザーのアクセス制御と分析

Oracle Real Application Testing(RAT)

Page 31: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

31

SQL Performance AnalyzerDatabase Replayは、オラクルがReal Application Testingと呼ぶ機能の半分にしか過ぎません。それでは残りの機能を提供するツールは何でしょうか。SQL Performance Analyzerです。これら2つのツールの主な違いは、適用する範囲です。Database Re-playは、データベース内のすべてのアクティビティの取得およびリプレイに適用されますが、SQL Performance Analyzerは、特定のSQL文の取得とリプレイに使用します。SQL Performance Analyzerの大きな利点はSQLのチューニングです。アプリケーションが発行したSQL文を微調整し、その影響を評価することができます。

SQL Performance Analyzer(SPA)は、環境の変化によるSQL実行のパフォーマンスを予想し、問題の発生を防止します。SPAは、環境の変更がSQL実行計画に与える影響と、変更前後に連続して実行されたSQL文の統計を細分化して表示します。

Oracle Real Application Testingにより、本番環境でのテストが実行できます。本番にデプロイする前に、本番データベースのワークロードを取得してシステム変更の影響を評価することにより、変更による不安定なリスクを最小限に抑制することができます。Oracle Real Application Testingは、次の2つのコンポーネントで構成されています。Database ReplayおよびSQL Perfor-mance Analyzerです。

データベース・リプレイ今日の一般的なロード・テストはツールを使用して、テスト・チームが予測するシステム上のユーザーの操作を模擬的なワークロードとして生成します。次にこれらのワークロードは、アプリケーションの仮想ユーザーによってリプレイされ、エンド・ユーザーがアプリケーションを送信するリクエストをシミュレートします。この方法は広く採用されていますが、データベース・レベルの変更をテストするには、いくつかの欠点があります。

・ 模擬的ワークロードの作成は非常に時間がかかり、プログラミングの専門家を必要とします。

・ ユーザーの動作をすべて把握できないため、模擬テストでは本当に必要なワークフローが欠落します。

・ 従来のツールでは、本番スケールのデータベースの同時実行性がシミュレーションできません。

・ エンド・ユーザーをシミュレーションするツールでは、テストのためにアプリケーション・スタックのすべてが必要です。

DBAやシステム管理者は、Oracle Real Application Testingに含まれるDatabase Replay機能を使用して、テスト環境でオンライン・ユーザーやバッチ・ワークロードなど、実際の本番システムのワークロードを正確に再現できます。データベース・リプレイを使用すると、取得した本番システムのワークロード全体をテスト・システムで、元のワークロードとまったく同じタイミング、同時実行性および依存関係に従ってリプレイできます。これによりシステムの変更を実際に検証できます。本番システムそのものの再現は、スクリプトのセットなどで実行できるわけではありません。Database Replayを使用すると、DBAやシステム管理者は次のテストを実行できます。

・ データベースのアップグレード、パッチ、パラメータ、スキーマ変更など

・ 単一インスタンスからRACやASMへの変換などの構成変更・ ストレージ、ネットワーク、インターコネクトの変更・ オペレーティング・システム、ハードウェア移行、パッチ、アップ

グレード、パラメータ変更

図11: Real Application Testing(RAT) - 実際のデータベース・ワークロードの取得とリプレイ

SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

Page 32: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

32

SAP DBA CockpitとEnterprise Manager Diagnostics PackOracle Diagnostic Packは、自動パフォーマンス診断と高度なシステム監視機能を提供します。Diagnostic Packには次の機能が含まれます。

• 自動ワークロード・リポジトリ(AWR):AWRは、すべてのOra-cle Databaseに組み込まれたリポジトリで、特定のデータベース、他の構成および使用状況などの操作情報が収録されています。Oracle Databaseは、定期的にパフォーマンス全体の統計情報とワークロード情報のスナップショットを取得し、AWRに保存します。AWRは、Oracle Databaseの自己管理機能すべての成り立ちとも言えます。Oracle Databaseが間違いなく実際のシステム環境に対応するように、利用可能な運用の履歴が蓄積されています。Oracle Databaseの自己管理機能の大半は、AWRで取得された情報に大きく依存します。AWRのデータは、永続または比較パフォーマンス分析など、すべてのパフォーマンス問題の分析にも有効です。

• 自動データベース診断モニター(ADDM):ADDMは、AWRで取得されたデータ上に構築されます。ADDMにより、Oracle Databaseは固有のパフォーマンスを分析し、問題が特定された場合は、解決する方法を決定できます。ADDMは、AWR統計情報が取得されるたびに、自動的に稼働し、即座にパフォーマン分析データを提供します。ADDMは、AWRで取得されたデータの検証と分析を通して、重要な問題のプロアクティブな特定、推奨ソリューション、予想されるメリットを数値で具体的に示します。

• アクティブ・セッション履歴(ASH):すべてのアクティブなデータベース・セッションは自動的に毎秒サンプリングされ、ASHに保存されます。このデータは、データベース・メモリーの循環バッファに格納されます。ASHのデータは、データベースの現在の位置を示し、パフォーマンスのボトルネックがあればハイライトします。ASHは、多数のパフォーマンス属性とともにセッション状態を取得するため、インメモリーのASHデータを非常に効果的に使用して、データベースのワークロード・プロファイルを理解し、持続時間が短いCPUスパイクやI/Oストームなどの一時的なパフォーマンス上の問題を事前に分析することができます。

Oracle Enterprise Managerパック製品

課題: いかなる場合でも完全なITインフラストラクチャの監視と管理は難しい課題です。管理者は、さまざまな目的で開発された多くのツールに翻弄されて終わってしまったということが往々にして起こります。

価値提案: ハードウェア、データベースからアプリケーションに至るまでITスタックの総合ベンダーであるオラクルは、エンタープライズ管理ツールの統合が必要であることを実感しています。しかし、無理な統合が複雑さを助長するようでは意味がありません。そのためにOracle Enterprise Man-ager Grid/Cloud Controlは、1つの基本製品と特殊機能専用の複数のパック製品に分割されています。パック製品の使用とは別に、Oracle Enterprise Managerは常にITランドスケープの完全なビューを提供します。

認定/サポート: 一般的に、Oracle上でSAPを稼働させる顧客には、管理ツールを選択できる自由があります。管理

ツールには、SAPに特化しているため使用が簡単なSAPのBR*Toolsファミリと強力なOracle Enterprise Managerとそのパック製品があります。しかし、BR*ToolsがサポートしないOracle Database機能(Database Vault)や強力に統合されたSAPとOracleの機能などのために、一部のケースではOracle Enterprise Managerまたはパック製品の1つが必ず必要になります。次のセクションで説明する、SAP DBA CockpitとEnterprise Manager Diagnostics Packは、まさしく強力な統合がゆえに必要とされるツールです。

バージョン: Oracle Database 11g、Oracle Database 12c

実装: SAP環境でのOracle Enterprise Managerの使用に関する一般的な情報は、SAP Note 355770および1028068を参照してください。追加のノートとホワイト・ペーパーで、特殊なユース・ケースについて説明しています。

Page 33: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

33SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

起動やディクショナリの変更などのパッチ適用前後で必要になる手順も、自動的に対応します。また、柔軟なデプロイメント・プロシージャ・フレームワークの活用で、ユーザーがパッチ適用プロセスで特定のアクションを実行するカスタム・ステップを追加できます。

Lifecycle Management Packには、out-of-boxのデプロイメント・プロシージャが含まれています。そのため、最大可用性のベスト・プラクティスに従ったゴールド・イメージを使用して、Oracle Database(シングル・インスタンス・データベースやRAC)、Oracle Clusterware、Oracle Automatic Storage Managementをプロビジョニングできます。ゴールド・イメージは、検証および承認されたソフトウェア・イメージで、デプロイを実行する前に任意でパッチが適用できます。

SAP環境では、MOPatchユーティリティがOracle Enterprise Managerのデプロイメント・プロシージャと統合され、Oracle Databaseに適用するパッチを自動的に編成します。Oracleホワイト・ペーパー『Patching Oracle Databases in SAP Environ-ments using Oracle Enterprise Manager』を参照してください。

ADDR、ASH、AWRなどのOracle Diagnostics Packの診断および分析機能は、SAPのDBA Cockpitと緊密に統合されています。したがって、DBA Cockpitは、Oracle Diagnostics Packに必須です。

データベースのライフサイクル管理パック製品Lifecycle Management Packは、ソフトウェア、アプリケーション、パッチを自動でデプロイします。容易で効率の良いスケーラブルなデータ・センターの処理には不可欠な機能で、運用リスクと所有コストの低減を実現します。Lifecycle Management Packは、オペレーション・システム、ミドルウェア、データベースを含むソフトウェア・スタック全体をプロビジョニングする機能と包括的なレポート作成ツールを提供することで、システム管理領域全体で重要な役割を果たします。

Lifecycle Management Packには、様々な製品と顧客環境にシームレスに対応するエンド・ツー・エンドのパッチ適用ソリューションが含まれています。このパッチ適用アプリケーションは、データベースとその基盤となるオペレーティング・システムに対するOracleパッチを自動でデプロイします。サービスの停止と

図12: Enterprise Manager Diagnostics PackとSAP DBA Cockpit

Page 34: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

34

まとめOracle Databaseはある意味で、以前からデータ管理のインフラストラクチャであったと言えます。そのためにまったく逆の目標をサポートする必要がありました。逆の目標とは、統合と分離、あるいは差別化です。またOracleは、「マルチ」が当たり前になる以前から、マルチユーザー、マルチ・スキーマ、マルチ・アプリケーションのデータベースであったと言えます。そのために、利用できるデータを個別の表に分割するだけでなく、アプリケーション固有のスキーマの分離も必要でした。さらに、ユーザー/アプリケーション・データに使用されるファイルをREDOログやUNDO情報が使用するファイルと分離し、パフォーマンスを向上させる必要がありました。しかし、完全なデータ管理システムであるOracle Databaseの強みは、常にアダプタ、ゲートウェイなどの外部のデータソースを使用できることです。これらのソースをOracle Database内のデータと結合し、インタラクティブ・ユーザーやバッチ・ジョブを処理することができます。

しかし、急速なデータ社会の成長に伴う、巨大化するデータ量、増加するワークロード、短縮が要求されるメンテナンス時間に対応するために、オラクルはさらに高度なソリューションを提供することが必要でした。それは、Oracle Database 10gの時代もOracle Database 11gの時代も同じでした。そしてOracle Data-base 12cでも同じ努力が続けられています。

データのサブセットの定義何年も前に初めてリリースされた表と索引のパーティション化は、現在もデータの差別化と強力なテクノロジであることに変わりはありません。その意味で、この記事でも最初に説明しています。表と索引のパーティション化は、個別にアクセスや管理ができる表データのサブセットの定義に使用されます。

サブセットとアクセス・パターンパーティション化の方針を決定する場合に重要なことは、データだけでなくアクセス・パターンについての検討です。問合せの多くがlocation(場所)で検索されている場合に、month(月)でパーティション化された表は役に立ちません。それどころかパフォーマンスに影響を与える可能性があります。

アクセス・パターンによるデータ・サブセットの識別は以前の技術では不可能でしたが、新しいリリースのOracle Database 12cではその機能とオプションの主要な目標になっています。

Advanced Compressionの機能の1つ、ヒート・マップは自動的に変更とクエリーのタイムスタンプを追跡し、データのアクセス状況を詳細なインサイトで提供します。自動データ最適化 は、ヒート・マップで収集された情報を活用し、データを自動的に移動および圧縮します。これは、ストレージと圧縮の階層化を実装できることを意味します。つまり、異なるアクセス特性で定義されたデータの異なるサブセットに、異なるストレージ・メディアへの移動と異なる圧縮アルゴリズムを選択できます。

管理者はOracle Database In-Memoryを使用して、トランザクションの異なる種類やメモリー内の異なるデータ形式をすぐに識別でき、トランザクションとアプリケーション処理に対し同時に異なるフォーマットを適用できます。1つのフォーマットしか選択できなかったこれまでのデータベースとは異なり、トレードオフに甘んじることはありません。新しいIn-Memoryオプションに基づき、Oracle Database 12cでは、OLTPトランザクション・データにロー(行)型フォーマットを提供し、同時に分析に使用するデータにカラム(列)型フォーマットを提供できます。

ワークロード分散Oracle Database 12cの他のオプションは主にワークロード分散に使用されます。中でも特筆すべきオプションは、Real Applica-tion Clusters(RAC)でしょう。このアプリケーションにより、顧客はシステムのワークロードを分割し、多数のサーバー(少なくとも同数のOracleインスタンスを実行する)にワークロードを処理させることができます。すべてのインスタンスで同じ種類(または混合)のワークロードを処理する、または異なるインスタンスで異なる種類のワークロード(インタラクティブ・トランザクションとバッチ・ジョブなど)を管理するなど、処理方法は任意で決定できます。

Page 35: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

35

図13: Oracleの多層データ管理インフラストラクチャ

SAP顧客向けのOracle Databaseのオプションとパック製品

Multitenantを簡単に説明すると、各単一データベースで個別に実行する単独のタスク、1回のみ実行するタスク、特定のデータベース・グループで実行する同じ種類のタスクというように、タスクの管理を種類で区別します。たとえば、特定のパッチを25個のデータベース・システムに適用することは、同じ処理を25回繰り返すことを意味しますが、Oracle Multitenantを使用すると処理は1回で済みます。これは、Oracle Multitenantが必要なデータベースをコンテナ・データベース・レイヤーに移動させ、コンテナ・レイヤーに格納されたすべてのプラガブル・データベースに対して処理を同時に適応するためです。一方、Point-in-timeリカバリの場合は他のデータベースと関連がないため、1つのPDBで実行します。

さらに、ProvisioningとPatch Automation Packにより、管理者は、あらゆるケースで類似操作を自動化できます。類似操作とは、Oracleパッチのデプロイまたは「ゴールド・イメージ」に基づいた新しいシステムのプロビジョニングなどがあります。

監視およびテストこれらの機能は、システムに有効でしょうか? 確信がありますか? これらの機能をどのような方法で実装すると効果的でしょうか? Real Application Testingにより、これらの疑問に対し即座に答えることができるようになりました。

RACにより、ワークロードの分散が実現すると同時に、システム可用性も向上します。これは、Data Guardでさらに効果を発揮します。と言っても、決してData Guardでスタンバイ・データベースがアイドル状態になることはありません。バックアップ、または

(特定の条件下では)レポート作成などの操作にData Guardを使用できます。つまり、Data Guardはワークロードの分散の実装にも役立ちます。

データ・アクセス・ポリシー少し見方を変えると、Oracleのセキュリティ・オプションもアクセス・パターンに関連していると言えます。特に、Database Vault を使用すると、セキュリティの管理者は、アクセス・ポリシーを定義し実効できます。アクセス・ポリシーは、特権ユーザーによるアクセス禁止のデータの読込みや操作を防止しています。「職務分掌」という言葉が表すように、ここでも分離と組合せの原理が使用されています。

データベース管理Oracle Database 12c Multitenantは、データ管理インフラストラクチャの基本を完全に新しいステージに移行させます。ここで言うインフラストラクチャとは、多数の表や多数のユーザーの意味ではなく、多数のデータベースのインフラを指しています。矛盾するようですが、「統合」には「分離」が必要です。

Page 36: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

36

中堅・中小企業から大企業に至るまで世界中の顧客が、Oracle Database for SAPからメリットを得ています。これには正当な理由があります。SAP顧客の多くが選択する、Oracle Database for SAPの差別化要因を詳しく見てみましょう。

28年以上に渡りOracleとSAPは、SAPの顧客向けのOracle Da-tabaseを最適化するために協働してきました。コミットメントや契約の更新は、長い歴史を持つ業務関係とパートナーシップを物語っています。特に、ビジネス・ニーズと必要要件を満たす柔軟なソリューションを提供するオラクルの技術革新は、SAP顧客にとって計り知れないメリットです。また他にもSAP顧客は、優れた持続可能性、およびSAPアプリケーション向けのOracle Data-baseの使用による投資の保護を価値あるものと考えています。

さらに詳細に見ていくと、Oracle Database for SAPが、SAPアプリケーションを実行する業界トップのしかも最高のRDBMSである理由が明らかになります。ここでは、SAPアプリケーションで使用できる他のデータベースと比較して、Oracle Database for SAPの主な差別化要因を詳しく見ていきます。Oracle Database for SAP 11g、12cおよびOracle Exadata Database MachineのそれぞれのOracle Engineered Systems(重要な機能/オプションを持つ)について、少なくとも8つの差別化要因があります。

1) 最高のパフォーマンスとスケーラビリティオラクルは、UnixとLinux上のSAP SDおよびBI-D(BI-Data Mart)で、SMPとクラスタ環境間の拡張性およびパフォーマンスのベンチマーク・テストの結果、世界記録を達成しています。

Oracle Real Application Clusters(RAC)はSAPアプリケーションに対して、ほぼリニアなスケーラビリティを達成するための柔軟な方法を提供します。RACの使用により、顧客はデータベース・サーバー・レイヤーの拡張または縮小を自由に選択できるようになりました。すべてのRACノードはアクティブです。これは、SAP顧客の本番システムのワークロード要件を満たす上で非常に役立ちます。多くの顧客が採用するOracle RACは、すべてのSAP製品向けに認証され、簡単に入手できるクラスタ化されたデータベース・ソリューションです。RACは、Oracle Clusterwareに基づいた機能で、SAPリソースの可用性を向上し、サードパーティのソフトウェアの使用を不要にします。

Oracle Automatic Storage Management(ASM)は、Oracle Databaseファイルのボリューム・マネージャ兼ファイル・システムとして機能し、単一インスタンスのOracle DatabaseとOracle Real Application Clusters(Oracle RAC)構成をサポートします。ASMは従来のボリューム・マネージャ、ファイル・システムおよびRAWデバイスに代わる機能で、ストレージ管理ソリューションとしてオラクルが推奨しています。

Oracle Database In-Memoryオプションは、分析、データウェアハウス、レポート作成、OLTPパフォーマンスを加速します。Ora-cle Database 12c用のIn-Memoryオプションは、既存のアプリケーションに完全に対応し、既存のOracle Database機能をすべて活用できます。Oracle Database 12cで稼働するすべてのアプリケーションは、自動で透過的にOracle Database In-Memoryオプションを利用でき、無理なく高速化しながら、完全な機能性を保持します。これによって、これまでの性能制限のために実用化されなかった新しいアプリケーションの開発が可能になります。

Oracle Database In/Memoryを使用したSAP BW Flat Cubesでは、データ・モデリング技術であるFlat Cubes(SAPがHA-NA-Optimized InfoCubes」と呼ぶ)により、顧客はSAP BWデー

最高のパフォーマンスから、最高の可用性、DB統合に対する最高のサポートまで、SAPアプリケーションにOracle Databaseを使用する、多くの理由と差別化要因があります。

Oracle DatabaseとEngineered Systemsの「for SAP」の意味を探る

Oracle Database for SAP Differentiators

Page 37: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

37

ITコストを削減します。このオプションをサポートする新しいアーキテクチャにより、マルチテナント*・コンテナ・データベースは、多数のプラガブル・データベースを格納できます。既存のデータベースを変更せずにプラガブル・データベースとして導入できます。他のアプリケーション層での変更は必要ありません。

以前からOracleは、サードパーティ製のハードウェアとオペレーティング・システムで構成されたシステム用のOracle Database Serverソフトウェアを提供していました。このアプローチは今も継続されていますが、現在オラクルでは「エンジニアド・システム」をお薦めしています。システムのマシン、オペレーティング・システム、データベースはすべてOracle製です。Oracle Databaseを実行するすべての組込みコンポーネントは、Oracleエキスパートによる事前の構成、調整およびテストが行われ、高性能システムの場合の平均的なデプロイで使用する数週間または数か月の作業時間が不要になります。

3) 最高の可用性と信頼性Real Application Clusters (RAC) for SAPは、データベース・サーバーのシングル・ポイント障害を防止します。1つ以上のデータベース・インスタンスが稼働している限り、データベースはオンラインの状態を維持します。障害が発生した場合には、Oracle RACを補完するOracle Data Guardが障害リカバリのソリューションを提供します。このソリューションはSAPを停止させません。Data Guardは、Flashback(リストアせずにデータベースの変更を元に戻すテクノロジ。停止時間を大幅に短縮)と併用して使用されます。オンラインのパッチ適用を使用すると、パッチまたはバンドル・パッチを完全にオンラインでインストールできます。この方法では、データベース・インスタンスのシャットダウンは必要ありません。

SAP顧客は、Oracle Database 12c Release 1(12.1.0.2)の一部であるOracle Cloud File System(ACFS)を使用して、ACFS上にOracle以外のファイルを保存できます。Oracle Automatic Storage Management(ASM)を補完するACFSは、Exadata X5でも使用できるようになります。これにより、外部のNFSファイル・システムを使用せずに/sapmntや/usr/sap/transのようなSAP関連のファイルを保存することができます。

タ・モデルを簡素化できます。Oracleで稼働するSAP顧客の利点は、パフォーマンスの向上、SAP BWとOracle Database 12cの統合の最適化、索引および集計が不要になること、そして応答時間の短縮とデータ・ロードの加速です。

Oracle Exadata Database Machineは、要件に応じた拡張や縮小に柔軟に対応できます。初期導入では、適切なサイズ

(Eighth、Quarter、HalfまたはFull Rack)のExadataを選択することができます。Exadataは、スピードや容量の追加が必要になる前に、より大きなサイズにアップグレードできます。大がかりなアップグレードの必要はありません。既存のシステムを拡大/縮小するだけです。

Exadataには、データ集中型のSQL操作をOracle Exadata Stor-age Serversにオフロードする独自のテクノロジがあります。問合せに直接必要なロー(列)とカラム(行)のみがデータベース・サーバーに送信されます。

その結果、トランザクション処理およびデータ・ウェアハウスのパフォーマンスが画期的に改善されます。データを要求するSAPトランザクションは、超高速検索のためにフラッシュ・メモリーから実行される場合がありますが、レポート作成やバッチ処理が、SAPトランザクション処理を邪魔することはありません。SAP BW/BIデータウェアハウスは、超高速でユーザーにクエリーを返します。

2) OSに対する高い柔軟性最も広範にプラットフォームをサポートします。Unix - Linux - Windows - 「Oracle is Oracle is Oracle」。すべてのオペレーティング・システムでコード・ベースが同じです。これは、すべてのハードウェア・プラットフォームとオペレーティング・システムでOracleの機能やツールが同じであることを意味します。顧客は、自社の環境で最もコスト効率の良いプラットフォームを選択できます。

オペレーティング・システムの変更が必要な場合、オラクルは高速で効率のよいOracle-to-Oracle(O2O)移行サービスを提供します。多くの顧客は、オフライン移行に伴う停止時間を許容できません。このような状況にはTriple-Oサービスをお薦めします。このサービスは、オンラインのO2Oオンライン移行で停止時間がほぼゼロです。データベースのサイズにかかわらず、停止時間は数時間から数分に短縮されます。

Oracle Database 12cの新しいオプション、Oracle Multitenant*は、統合、プロビジョニング、アップグレードを簡素化し、顧客の

Oracle Database 12c Business Benefits for SAP Customers (1)

Oracle DatabaseとEngineered Systemsの「for SAP」の意味を探る

Page 38: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

38

SAP顧客向けのOracle Exadata Database Machineは、高度な設計と事前検証が持ち味です。高可用性が組み込まれ、すぐに使用できます。Exadataの冗長アーキテクチャでは、すべてのシングル・ポイント障害が排除されます。Exadata Database Ma-chineには、ミラーリング、障害の分離、ドライブとセルの障害に対する保護など、よく知られた機能が組み込まれ、継続的なデータの可用性と保護が確保されています。

事前構築されたExadataで、デプロイ、インストール、構成(HW、OS、DB、RAC、Clusterwareなど)の時間とコストが削減できます。

4) 大規模データベースに最適なサポートOracleデータベースのディスク領域の使用効率の良さは誰もが認めるところです。SAP顧客にとって、飛躍的に増大し続けるデータベース・サイズは非常に重要な問題です。

SAP環境のデータベースに割り当てられたディスク領域の3分の1を占めるB Tree索引の圧縮は、より多くの索引情報をメモリー・キャッシュに保存することにより、I/Oの削減とパフォーマンス全体を改善します。

オラクルのAdvanced Compressionに実装された表圧縮は、独自の圧縮アルゴリズムを使用して、データベース・ブロック内の複数のカラム(列)間で重複した値をポインタに変換します。このアプローチは、ディスク領域の削減、パフォーマンス上のメリットおよび管理の容易さを兼ね備えています。

Oracle Database 12c Advanced Index Compressionは、独自のアルゴリズムを使用して、ブロック・レベルの索引エントリ用の領域を最適化します。これは、必要なディスク領域を削減し、データへのアクセスを加速します。結果として、SAPシステムのスループットが向上します。

機能が拡張された非構造化データ(SecureFiles)圧縮、クライアント-サーバー・ネットワーク圧縮、Data Guard Compression、Expdp Compression、RMANバックアップ圧縮は、SAP顧客にとって計り知れないメリットがあります。

UNICODEによる移行で、データの完全なアンロードとロード(すべての新しいSAPリリースに必要)はOracleによって最適化されます。最適化後には、データが1テラバイト/時間のレートで転送され完全にSAP製品に統合されます。最大規模のマルチ・テラバイトのデータベースでも、1回の週末作業で移行が完了します。

Oracle Databaseを使用するSAP顧客は、表パーティショニングのバリエーションを使用して、I/Oの削減とパフォーマンスの改善を実現できます。Oracle Database 11g Release 2では、このリストはサブパーティション化とインターバル・パーティション化で強化され、設計の柔軟性とアプリケーションのパフォーマンスが向上しています。

Oracle Database 12cでは、Oracle Databaseのストレージ管理機能を向上させるAdvanced Compression Option(ACO)に複数の新機能が追加されています。ヒート・マップは自動的に変更とクエリーのタイムスタンプを追跡し、データのアクセス状況を詳細なインサイトで提供します。

Oracle Engineered Systems(Exadataプラットフォーム)で使用可能なHybrid Columnar Compressionは、最高レベルのデータ圧縮を可能にします。圧縮によりI/Oが軽減され、大幅なコスト削減とパフォーマンスの改善が実現します。平均的な領域の節約は、実装されているHybrid Columnar Compressionのレベルにより、10倍から15倍にもなります。

システム環境の多くは、長年使い続けたレガシー・システムです。レガシーなシステムの維持には多大な費用が必要です。Exada-taとExalogicは環境の管理を極限まで簡素化したシステムで、プライベート・クラウドで使用することができます。

SAP Business Warehouse:- 大規模で複雑なInfoCube、クエリー、またはデータベース時間

が長いトランザクション- 時間が制限された、毎日の大量の抽出- ネットワークをハングアップさせる可能性がある大量の抽出

Oracle Database 12c Business Benefits for SAP Customers (2)

Page 39: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

39

5) 最高のデータベース・セキュリティ 法令遵守(コンプライアンス)とセキュリティの重要性は、かつてないほど高まっています。

Oracle Advanced Securityオプション機能のひとつTransparent Data Encryption(TDE)は、ディスクへの書込み時にデータを透過的に暗号化することで、機密データを暗号化します。Oracle Databaseは、表領域の暗号化(1つの表領域内のデータすべてを暗号化)、RMANバックアップ暗号化、Data Guardセキュア・ネットワーク、Expdp、およびSecureFile暗号化を提供しています。

Oracle Database Vaultを使用すると、SAPアプリケーション・データベース・オブジェクト周辺に保護レルムを確立し、権限付与されたデータベース・ユーザーによる機密データへのアクセスの防止や職務の分離ができます。

Oracle Database Vaultは、顧客が職務分掌によって法令順守の要件を満たす上で役立ちます。Database Vault 12cの権限分析は、最も少ない付与されたロールで実行されます。

すべてのOracleセキュリティ機能は、すべてのデータベース構成(シングル・インスタンスとRAC)、およびExadata Database Machineを含むすべてのハードウェア/OSプラットフォームで使用できます。

Exadata for SAPは、最も厳しいセキュリティと高可用性の要件に対応しています。Exadata for SAPは、事前開発された安定したセキュアなクラウド・ベースの完全なマシンです。ミッション・クリティカルなデータベースに対応した、Oracle VaultなどのOra-cleで使用できる高度なセキュリティ機能を備えています。

6) 最高の管理性と自己管理機能Oracle Enterprise Manager Grid Control(EM)、SAP DBA Cockpit、およびSAP BR Toolsは、ワークロードとパフォーマンスの統計情報を自動的に保存するOracle Automatic Workload Repository(AWR)を使用します。そのため、管理者やサポート担当者は、根本的な原因がいつ発生してもパフォーマンスの問題を分析し短時間で解決することができます。

Real Application Testing(RAT)は、オペレーティング・システム、ハードウェアの移行、パッチ、アップグレードの変更など、顧客のデータ・センターのインフラストラクチャの変更を評価し実装します。Database Replay(RATの一部)を使用すると、顧客はテスト・システムで本番ワークロードを再現して、本番システムと同じ状態でテスト・システムの変更をテストすることができます。

Oracle Database 12cには、SAP顧客向けの非常に興味深い新機能、情報ライフサイクル管理(ILM)/自動データ最適化(ADO)が含まれています。これらの機能をヒート・マップと組み合せると、堅牢なILM方針を構築することができます。定義する方針に応じてデータの自動階層化および圧縮が組み込まれます。

バンドル・パッチはSAPとの連携で作成され、インストールが簡単です。Exadata Bundle PatchesとSAP Database Bundle Patchesの適用のみが必要です。BR Toolsが拡張され、ASMとExadataをサポートできるようになりました。

Exadata for SAP:- 複雑な統合作業や手動チューニング(データベース、ストレー

ジ、ネットワークおよびサーバー)が不要- 実装、移行および統合を最適にサポートし、プロジェクトの実

行時間を短縮、コストも削減- 複数のシステム・データベースを特徴とする非常に効率の良

い一元管理型データ・プールが実装可能

7) データベースの統合に最適なサポートOracleは、仮想マシンやスキーマ統合などの伝統的なDB統合方法を長年にわたりサポートしています。SAP顧客がコストの削減や効果的なインフラストラクチャの最適化から得るメリットは計り知れません。

複雑さを排除したExadata Database MachineのようなOracle Engineered Systemsは、顧客にデータベース統合とインフラストラクチャのコスト削減の新しい機会を提供しています。多数の

「SAPデータベース」の統合という目的のためにExadataを使用するSAP顧客が増えています。

SAPは、Oracle Exadata Database Machine上に企業全体のデータベースを統合することができます。すべてのデータベースを最新のデータベース・プラットフォームで統合し、全体的なデータベースのコストを削減します。複数の分散したOracle Da-tabaseを1つのExadata環境に統合することは大きなメリットがあります。管理者は、固有で特異な構成の管理ではなく、Exadataだけの管理に集中できます。

Oracle DatabaseとEngineered Systemsの「for SAP」の意味を探る

Page 40: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

40 Oracle DatabaseとEngineered Systemsの「for SAP」の意味を探る

Oracle Database 12c Multitenant*は、データベース統合プロジェクトにとって大きなメリットがあります。Multitenantオプションは、データベース統合プロジェクトを実現する顧客に対して、大幅な簡素化により高い生産性とリソースやコストの削減を提供できます。Oracle Multitenantに新しいアーキテクチャが導入されました。顧客はアプリケーションの変更なしで容易に複数のデータベースを統合できます。その一方で最小のメモリー・リソースで1つのグループ化されたリソースとしても管理できます。このアーキテクチャにより、SAP顧客も多数のデータベースを1つのデータベースとして管理でき(パッチ処理、バックアップなど)、より効率的なシステム・リソースの利用/リソース管理を簡単で非常に効率的な方法で実現できます。

8) ハードウェアとソフトウェアの最高の統合以前から、Oracle Databaseサーバー・ソフトウェアは関連するハードウェア・コンポーネントの機能を活用して、フラッシュや暗号化などを使用してきました。Oracle Database In-Memoryオプションのスキャンでは、CPUのサポートによって超高速の「単一命令複数データ」(SIMD)ベクターの処理命令を使用します。ハードウェアとソフトウェアの整理または統合は、Oracle Database 12cの使用で実現し、品質と有効性の新しい一歩となります。

Exadataは、事前構築されたOracle Engineered Systemです。工場出荷時には事前設定され、デプロイ、インストール、構成

(HW、OS、DB、RAC、Clusterwareなど)の時間とコストが削減できます。SAP顧客向けのExadataは、プラットフォームとデータベースの統合、導入時点でのハードウェアとソフトウェアの最適な統合により、SAP環境の消費電力と冷却を抑制します。

Oracle Database 12c Multitenant:フェーズ1はベーシック認定と呼ばれ、2015年3月に完了しています。以前、Oracle Database 11gで使用可能だったすべての機能とオプションに加えて、完全に透過的、または最小限の統合作業のみで完了する複数のOracle Database 12cの機能が含まれています。

2015年の6月に完了したフェーズ2で、主要なOracle Database 12cの新しいオプション、Oracle Database In-Memoryが初めて紹介されました。これは、Oracle Database 12cの新しい画期的なオプションです。

2015年12月に完了したフェーズ3では、Oracle Database 12c Advanced Compressionに含まれた新しい情報ライフサイクル管理機能(ILM)とOracle ExadataおよびOracle SuperCluster上でのロー(行)レベルのロック機能を持つHybrid Columnar Compression(HCC)が追加されています。

2016年の7月に完了したフェーズ4では、SAP顧客もOracle Mul-titenantを使用できるようになりました。このオプションは、多数のデータベースを1つのコンテナ・データベースに統合することができます。このデータベース・アーキテクチャはこれまでにない発想で、相当数のOracle/SAP統合作業が必要です。

Oracle Database for SAP Differentiators

Page 41: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

41

NEW! ORACLE SPARC M7-8サーバーを使用した130,000人のSAP SDベンチマーク・ユーザーがSAPに認定されました

CERTIFICATION SAP®の標準アプリケーション・ベンチマーク

For More InformationSAP standard application benchmarks: http://www.sap.com/benchmark

Trademark NoticeSAP and other SAP products and services mentioned herein as well as their respective logos are trademarks or registered trademarks of SAP SE (or an SAP affiliate company) in Germany and other countries. See http://www.sap.com/corporate-en/legal/copyright/index.epx for additional trademark information and notices.

Oracle and Java are trademarks or registered trademarks of Oracle Corporation, its subsidiaries, and related companies in the US and elsewhere.All SPARC trademarks are used under license, and are trademarks of SPARC International, Inc. in the USA and elsewhere. The SPARC64 trademark is a trademark of SPARC International, Inc. in the US and elsewhere, and is used under license.

UNIX is a registered trademark of the Open Group in the US and elsewhere.SPEC (The Standard Performance Evaluation Corporation), SPECint and SPECfp are registered trademarks of Standard Performance Evaluation Corporation (SPEC) in the US and other countries.  Details and the latest information of this benchmark can be found at www.spec.org.

All other product names and company names mentioned herein are the trademarks or registered trademarks of their respective firms.

Page 42: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

42

ボッシュ・グループは、テクノロジとサービス分野で世界をリードするグローバル・サプライヤです。2015年12月31日時点で、雇用する従業員は全世界でおよそ375,000人になります。2015年の売上高は706億ユーロを計上しています。同社の事業は、モビリティ・ソリューション、産業技術、消費財、エネルギーおよび建築技術の4つの事業部門に分類されます。ボッシュ・グループは、世界60か国以上に展開されるRobert Bosch GmbHおよび約440の子会社と関連会社で構成され、販売およびサービス代理店を加えると、ボッシュの世界的な製造、販売のネットワークは約150か国に及びます。この会社の成長の基盤は、その革新力にあります。ボッシュの世界中の118拠点では、55,8000人の従業員が研究開発に携わっています。ボッシュ・グループは、コネクテッドライフに向けたイノベーションの提供を戦略的目標に定め、革新的で人々を夢中にさせる製品とサービスで、世界中の人々の生活を向上させます。手短に言うと、ボッシュが作り出すのは、Invented for life(生活を豊かにするテクノロジー)です。

Bosch GmbHは、マーケットのリーダーとしても、革新的な企業としてもよく知られた存在で、「Invented for life」をキャッチフレーズにしています。この言葉は、生活の向上、コネクテッドライフのイノベーションを提供するという経営目標の本質を明確に示しています。

ボッシュは、SAPを稼働するデータベースのベンダーとしてのオラクルに10年来の信頼を寄せています。Oracleデータベースは、ボッシュのインフラストラクチャの中核的な要素で、重要な基盤です。Oracleデータベースは、併用された様々なSAPのアプリケーションの中にあっても独立して運用され、事業の多角化に成功を収めたこのグループの多様なニーズに最適な対応をしています。

ボッシュのIT部門は、1,500人以上のIT専門家とプロセス・エキスパートで構成され、新しいOracle Database 12cの機能とオプションも早い時期から、IT部門の手によって存分に検証されています。2015年半ばは、Oracle Databse In-Memoryの機能と利点が中心でした。

「SAPを使用する上で、最適化を実行する際に、Oracle Database In-Memoryがどれほど役に立つか知りたかったのです。これは、OLAPとOLTPのアプリケーションの両方に当てはまりました。すぐに私たちは、特にSAP CRMの使用で、自分たちが利益を得る立場にあることを認識しました。」とIT運用組織のプロジェクトマネージャ兼データベース・エキスパートは説明しています。

ボッシュのITチームは、社内およびオラクルによるソリューションのシナリオとユース・ケースを検討しました。その結果、SAP An-alyticsと併用した場合にOracle Database In-Memoryが大きな利点を提供することが分かりました。

しかし、ボッシュにとって一層重要だったことは、特にSAP CRMの場合、OLTPシステムで達成される計画的で優先度の高い最適化が、Oracle 12cのOracle Database In-Memoryでも可能であるという事実でした。実際、これが最も差し迫った問題でした。ボッシュのITチームは、SAP CRM / OLTPを使用する際に、レベルが若干落ちるパフォーマンスを容易に排除できる、手ごろな価格のソリューションを必要としていました。まさにそのための正しい選択が、Oracle 12cのOrale Database In-Memoryでした。

2次インデックスの課題 このCRMのユース・ケースでは、確実に問題視される、2次インデックスと定期的な作成が必要な特別なオーダーメイドのインデックスが課題でした。ボッシュによると、「ユーザーがSAP CRM機能を特化させて集中して使用した場合、特定のCRMオブジェクトおよび表に、追加のインデックスを継続して作成する必要があります。これが、私たちの各仕様要件に従ってシステムを使用する唯一の方法でした。ただし、この方法では特にCRMの検索オプションや検索の可用性を100%活用することは不可能でした。このような検索オプションが、必ずしも追加のインデックスでサポートされているとは限らないからです。そのために、一部のアプリケーションの機能は、タイムアウトすることしかできません。」

時間の経過に伴い、約80の追加的なインデックスが作成され蓄積されていました。これは、メンテナンスの必要性、パフォーマンス関連のチューニング、コストのかかるリソースの使用という結果になりました。また、これらのインデックスがラージ・オブジェクトであったため、十分なストレージ容量の確保も必要でした。

SAPアプリケーションを既存のままで、Oracle Database In-Memoryによりビジネス・プロセスの加速、コスト削減を実現したBosch GmbH

Oracle Database In-MemoryとSAP CRMの併用で大幅な改善

Page 43: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

43

S A P C R Mシステムは、ボッシュ・グル ープの至る拠 点で約3,5000人のユーザーに使用されています。ここでは、ボッシュが運用する複数のCRMシステムの1つを例に説明します。最大のシステムは、データ量が1TB以上になります。

PoCと複数のテストの結果、Oracle Database In-Memoryは、パフォーマンス・エンハンサーとして効果があるだけではなく、問題視される2次インデックスに対応する手段としても効果的であることが確認できました。Oracle Database In-Memoryを使用すると、多くの2次インデックスを削除することができます。このため、ボッシュは、Oracle Database In-Memoryを含むOracle 12cを、SAP CRMシステムと組み合せて本番システムで使用し、In-Memoryに適した表について、詳細な分析を実行しました。その結果、ITチームは確認された表の中から、重要な表を交換することができました。この方法の大きな強みは、SAPのアプリケーションを変更せずに、既存のハードウェア(仮想化されたサーバーやUnixベースのサーバー)を使用し、Oracle Database In-Memoryテクノロジの利点を得ることができます。しかも、データの移行は必要ありません。通常の必要要件は、In-Memory処理に関連する表専用の、In-MemoryサーバーとRAMハードウェア・リソース(仮想または非仮想)のみです。

Oracle Database In-Memoryに対する高い満足度 Oracle Database In-Memoryを使用してSAP CRMシステムで達成された改善は、計画通りでした。ユーザーの満足度が大幅に向上し、IT支援型のビジネス・プロセスは、遅延なしに円滑に実行され、標準として十分に使用できます。インデックスの作成と維持の大幅な軽減により、ITの管理が著しく低減しました。それはとりもなおさずコストの削減でもあります。

説明したユース・ケースでは、Oracle Database In-Memoryにより、多くの2次インデックスと大きな表のオーダーメイドによるインデックスが不要になり、同時にOLAPの使用が高速化されました。INSERT、UPDATSEおよびDELETE文は、正常に処理されます。システム・パフォーマンスへの深刻な影響は確認されませんでした。

インメモリ・ストアのキャッシュを増加して、領域を占有するように特定の表を割り当てることで、追加的なチューニングを容易に実行できます。Oracle 12cに搭載されたンポーネントのOracle In-Memory Advisorも、In-Memoryの使用に適した表の識別を可能にします。

問題 / 課題 • ボッシュは、SAP CRMの最適な使用方法を模索していました。

多数の2次インデックスを持つ特定の表が問題の原因で、これらの問題により、ユーザーの不満、管理とメンテナンスのコスト、ストレージなどの追加ITリソースの供給など、派生的な問題も発生していました。

ソリューション • Oracle Database In-Memoryを使用すると、追加的なオー

ダーメイドのインデックスを置き換えることができます。Oracle 12cのOracle In-Memoryは、これらのインデックスを必要とする表に使用できます。

利点• SAP CRMの余すところのない効果的な使用が実現

• システム / データベース管理のコスト削減

• 選択された表に対してのみIn-Memoryを有効化

• 2次インデックスが不要になることで、節約されたストレージ・リソース

• インデックスの減少が意味するのは、ビジネス・プロセスの加速

• SAP CRMのレスポンス時間の短縮、システム・パフォーマンスの向上

• Oracle Database In-Memoryの使用では、SAPのアプリケーションの変更なし

• 供給が必要なのはIn-Memory / RAMのみ、既存のハードウェアをそのまま利用

Oracle Database In-MemoryとSAP CRMの併用による、Bosch GmbHの大幅な改善

Page 44: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

44

ビレロイ&ボッホは、陶器製造業の大手メーカーの1つです。年間収益は約8億ユーロ、7,300名を超える従業員を雇用しています。ドイツのメトラッハに本社置く、1748年創業のファミリー・ビジネスは、イノベーション、伝統、並はずれたスタイルを象徴しています。有名なライフスタイル・ブランドとして、ビレロイ&ボッホは、バスルーム&ウェルネスおよびテーブルウェアの分野で製品を提供し、事業は125か国に及びます。

ビレロイ&ボッホでは、バスルーム&ウェルネス事業とテーブルウェアの事業で、SAP ERPとSAP BWシステムの他に、SAPのソリューションも使用し、オラクルの約20年間に渡る実証に裏付けられた、信頼性の高いデータベースを有効に活用しています。年月を積み重ねるにつれ、BW/BIの使用と重要性が確実に増加しています。この会社では、世界各地にSAP BW環境の約1,700人をはじめとする、約2,500人のSAPユーザーがいます。認定されたSAPホスティング・パートナーのRödl IT Operation GmbH

(メットラッハ、ゼルプおよびフランクフルトに事務所を置く)は、ビレロイ&ボッホの代理として、すべてのSAPシステムを含む、一連のシステムを運用し、管理しています。

ビレロイ&ボッホのCIOおよびITディレクタのThomas Ochs氏は次のように説明しています。「SAPのドイツ国内のユーザー・グループDSAGが主催したイベントで、私たちは、弊社のSAP NetWeaver BWシステムの潜在的なパフォーマンスを改善できる、新しいOracle Database 12c for SAPとOracle Database In-Memoryのテクノロジについて知りました。その後、ホスティン

グ・パートナーのRödl IT Operation GmbHが、透過的な概念実証(PoC)の一環として、Oracle 12cテクノロジの共同テストの実行を提案し、私たちは同意しました。私たちは次のことが知りたかったのです。Oracle Database In-Memory for SAP BWを使用すると、潜在的なパフォーマンスにどんな向上があるのだろうか?必要な実装作業はどれだけの負担があるのだろうか?

SAP BWサンドボックスでのテストOracle Database In-Memoryを使用するテストでは、ビレロイ&ボッホの最大のCOPAキューブのファクト表(EおよびF表)が約9400万行も使用されました。「言うまでもなく、我々は、In-Memoryを使用した場合と使用しなかった場合の実際の比較と結果が見たかったのです。そのために、現在使用している本番データでのテストを望んでいました。このような種類のテストでは、データベースの統合の有無にかかわらず、主にデータと問合せの読出し時間が確認されます。私たちは、Oracle 12cのテクノロジが、同一のハードウェア構成、およびメモリの追加と、どのように連動するか評価することも希望していました。」と、企業のITチームに参加していた、ビレロイ&ボッホのビジネス・インテリジェンス担当、上級顧問Harald Wolf氏は述べています。同氏は、Rödl IT Operation GmbHで、SAPベースのテクノロジ向けコンピテンス・センターの責任者であるKlaus Lehnen氏と協力して、PoCを実行しました。

世界有数の陶磁器メーカー、ビレロイ&ボッホ社およびホスティング・パートナーRödl IT Operation GmbHが実行した、SAP NetWeaver BWでのOracle Database In-Memoryのテスト

大幅なパフォーマンス向上の確認、さらに最小限の実装作業のサプライズ

Page 45: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

45

テスト結果のサマリー: ビレロイ&ボッホのOracle 12c In-Memoryオプション

Copyright  ©  2014  Oracle  and/or  its  affiliates.  All  rights  reserved.    |  

Customer  Results  :  Oracle  Database  In-­‐Memory    Example  SAP  BW  COPA  PoC    

0  

10  

20  

30  

40  

50  

60  

70  

80  

90  

100  

Test1   Test2   Test3  

Run3

me  in  Secon

ds  

Prod.  (no  In-­‐Memory)   PoC  (In-­‐Memory)  

SAP  TransacNon  LISTCUBE  

•  Test  1:  –  1  Mio  records  w/o  aggregaNon  –  RunNme  reducNon  factor:  150x  …  4.800x  

•  Test  2:  –  1  Mio  records  with  aggregaNon  –  RunNme  reducNon  factor:  4x  

•  Test  3:  –  94  Mio  records  with  aggregaNon  –  Impossible  without  In-­‐Memory  

Timeout  

Public                          [email protected]    Copyright  ©  2014  Oracle  and/or  its  affiliates.  All  rights  reserved.    |  

0  

10  

20  

30  

40  

50  

60  

70  

80  

Query1   Query2  

Run2

me  in  Secon

ds  

Prod.  (no  In-­‐Memory)   PoC  (In-­‐Memory)  

Queries  

•  SAP  COPA  Query  1  –  RunCme  reducCon  factor:  33x  

•  SAP  COPA  Query  2  –  RunCme  reducCon  factor:  30x  

Public                          [email protected]    

Customer  Results  :  Oracle  Database  In-­‐Memory    Example  SAP  BW  COPA  PoC    

PoCを実行するために、SAP BWの本番システムを完全に再現した、SAP BWサンドボックスが作成されました。ここでは、64GBのIn-Memoryストレージがデータベースに割り当られました。次に、SAP BWシステム用のOracleデータベースが、11gから12cにアップグレードされました。Lehnen氏は次のように説明しています。「目的は、標準的なハードウェアでOracle Database In-Memoryをテストし、比較を明確にすることでした。VMwareで仮想化したX86 RedHat Linuxベースのシステム環境を使用して、BWサンドボックスには128GBのRAMとBW PRODシステムに96GBのRAMを搭載し、合計16コアの2つのCPUを採用しました。」

さらに同氏はOracle 12cへのアップグレード、およびOracle Database In-Memoryのアクティブ化が、約5時間で完了した様子も説明してくれました。リソースを合理的に使用した、PoC全体の実行はわずか1.5日でした。最初の簡単なテストの後、推奨のチューニング・メジャーとして、2つのデータベース・パラメータが調整されました。

実行されたすべてのテストにLISTCUBEトランザクションが使用されました。データベースのレスポンス時間は、SAPトランザクションST05(パフォーマンス分析)を使用して、SQLトレースで計算されました。すべてのデータは事前に、Oracle Advanced Compressionを使用し圧縮されています。

予想を上回る成果ビレロイ&ボッホとRödl IT Operation GmbHは、Oracle Data-base In-Memoryを使用して、SAP BWサンドボックスで合計4つの異なるテスト・シナリオを実行しました。各テスト・シナリオは、テスト後にSAPのアプリケーションの結果が評価されます。

最初のテストでは、100万のレコードがデータベース統合を使用せずに選択され、In-Memoryを使用して複数回処理されました。データベースの処理時間は準備段階から測定され、転送時間は個別に測定されました。PRODシステムでは、処理全体に24秒必要であったことがデータで示されています。Oracle Database In-Memoryを使用して、SAP BWサンドボックスで実行した同じ処理では、処理時間の大幅な短縮が実現しました。処理時間は16ミリ秒に短縮され、一部の例では、処理時間がわずか5ミリ秒でした。

2番目のテストでは、条件的に最初のテストと類似していましたが、選択された100万のレコードの集計がテストされ、その結果は実行時が44秒から11秒になり、データベース時間を75%も短縮していることが実証されました。各リクエストの処理時間は33秒も短縮されたのです。

3番目のテストでは、ロードされた表の全データ量(9,400万のレコード)がメモリーから読み込まれ、わずか22秒で集計されました。SAP BW PRODシステムでの同等のテストは、タイムアウトが原因で完了しませんでした。

ビレロイ&ボッホ社のOracle Database In-Memory

Page 46: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

46

最後に、ビレロイ&ボッホは、既存のCOPAクエリーの処理、およびウェブ・テンプレートを使用した結果の準備に全力をそそぎました。調査対象として選択された、頻繁に処理される2つのSQLのクエリー結果は、Oracle Database In-Memoryを使用した場合、データベース時間が1.5秒であったのに対し、SAP BW PRODシステムでは同じSQLに対し実に50秒必要だったのです。2番目のクエリー・テストも同様の結果でした。SAP BW PRODシステムで72秒必要な処理を、Oracle In-Mem-oryでは2.5秒で完了しています。

Harald Wolf氏は次のように述べています。「Oracle 12cとOra-cle Database In-Memoryに基づくテストで、PoCは、パフォーマンスの向上という点で、驚く結果を出しました。また、BIでは、1度作成したSAPアプリケーションを一切変更せずに、Oracle Data-base In-Memoryで使用できるという事実が特にすばらしいですね。さらに、In-Memoryで処理するSAP BW表と処理しないSAP BW表を簡単に選別できます。」

少ない資源要件で多くの利点 Thomas Ochs氏は、結果を次のように要約しています。「もちろん、私たちはOracle Database In-Memoryのテクノロジが一定のパフォーマンスを向上してくれることに期待をしていました。最終の結果は目を見張る改善で、このテクノロジが持つ潜在能力のすばらしさは明らかです。実装作業が非常に少ないこと、テストを迅速に実行できることは、ビレロイ&ボッホのITチームにとって、うれしい驚きでした。」

また、Rödl IT Operation GmbHのKlaus Lehnens氏は、次のように述べています。「Oracleデータベースを使用する既存のSAP顧客は、Oracle Database In-Memoryの使用によって、大きな利点を手にすることができます。しかもコストは手頃なうえ、わずかな作業で実装が完了します。この実装では、既存のハードウェア・インフラストラクチャをそのまま使用し、アプリケーション側での変更は必要ありません。」

同氏は次のように要約しました。「仮に命名するとすれば『Oracle Database In-Memoryの使用によるOracle 12cへの移行プロジェクト』とでも言いましょうか。このプロジェクトは、非常にリスクが低いことに加えて、管理しやすく計算も簡単です。さらに、プロセス全体がオラクルに基づいています。オラクルは、長い年月じっくりと築き上げられたSAP環境データベースの安定要素です。」 Rödl IT Operation GmbHは、多数のSAP顧客にホスティング・サービスを提供しています。顧客の多くは、十分にテストされたSAPとOracle Databaseの組合せを信頼しています。

ビレロイ&ボッホのテストは成功裏に終了しました。現在、ビレロイ&ボッホでは、SAPインストールBWおよびCRMのために、Oracle Database In-Memoryを導入しています。

ビレロイ&ボッホ社のOracle Database In-Memory

Page 47: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

47DB Masters AustriaのSAP BI Oracle Database In-Memory

インメモリーというデーベース・テクノロジは、すでに1990年代から存在していました。この長い歳月の中で、多くのデータベース・ベンダーがこのニッチな世界に現れては消えていきました。2011年には、SAPのHANA In-Memoryの概念が産声をあげます。最初の発想は、カラム型フォーマットで保存されたデータ構造を使用して、分析のクエリーを効率的に処理することでした。BWAに代わるものとして計画されたこのテクノロジは上々の結果で、SAPは次に、この概念をOLTPにまで拡大しました。この構想は厳密に言うと、自社が開発したテクノロジ、およびP*Time、TREX Search Engine、MaxDB(livecache)、Sybase ASEなどの買収したテクノロジをこの目的のために組み合せただけです。HANAのインメモリー・テクノロジを使用しようとする顧客は、システム稼働に必要な特殊なハードウェアや今ちょっとした物議をかもしだしているHANAへの現行システムの移行および変換が必要になります。

オラクルもほぼ同時期に、インメモリー・テクノロジをOracle 12cデータベースに完全に統合しました。Oracle Database In-Mem-oryは、高度な分析処理機能の優れたパフォーマンスとほぼ透過的な実装を提供します。特殊なハードウェアやデータの移行の必要はありません。システムが適切に動作する場合、顧客は追加された高パフォーマンスの分析機能とともに、現在使用可能なパフォーマンス、スケーラビリティ、可用性、および信頼性を使い続けることができます。

このホワイト・ペーパーでは、認定前のテスト、およびOracle Da-tabase In-Memoryに関する、ある顧客のエクスペリエンスの結果を紹介します。Oracle Database In-Memoryは2015年6月現在、SAPとの併用が認定されています。

オーストリアのDB Mastersでは、Oracle Databaseおよび関連するテクノロジを正しく実装することを通して、顧客のビジネス上の課題の解決に力を入れています。DB Mastersは、大規模なERPシステムを処理した豊富な経験があり、システムに対する特別なニーズもよく理解しています。その上で、システムで稼働するアプリケーションとは別に中枢のオラクルに注目しています。2000年に創業したDB Mastersは、ヨーロッパ全地域の多くの顧客にサービスを提供しています。オラクルが最初にOracle 12.1.0.2 In-Memoryをリリースしたとき、顧客の1社が、このテクノロジに興味を示し、テクノロジの概念試験に同意しました。この企業は、このテクノロジがSAP BWアプリケーションのパフォーマンスに与える影響を評価したかったのです。

DB Mastersは、彼らの本番SAP BIから上位の(実行時間が最も長い)SQL文を取得し、次のシナリオに従って測定値を捕捉しました。

• ベースラインとしての本番環境の現在のクエリーの実行時間。データベース内には他の多数のアクティビティがあるため、正確な数値ではありません。

• 元のバッファ・キャッシュのサイズおよび256GBのキャッシュの両方を使用した11gR2- キャッシュのウォームアップにSQL文を数回実行することで、実行のI/O時間を排除し、Oracle 11gR2とOracle 12cのパフォーマンスの差を測定しました。

• 元のバッファ・キャッシュのサイズおよび256GBのキャッシュの両方を使用した12cR1- キャッシュのウォームアップにSQL文を数回実行することで、実行のI/O時間を排除し、Oracle 11gR2とOracle 12cのパフォーマンスの差を測定しました。結果として、Oracle 11gと12cの実行時間の差はわずかでした。テスト用のSQL文では、パフォーマンスの差がなかったと仮定できます。

• Oracle Database In-Memoryを有効にし、関連するすべてのオブジェクトをインメモリー列ストアに格納。異なったインメモリー圧縮オプションなど、複数の構成設定をテストし、最終的に、FOR QUERY LOW圧縮を使用しました。

DB MastersのOracle Database In-Memoryを使用したSAP BI

Page 48: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

48 DB Masters AustriaのSAP BI Oracle Database In-Memory

次に、すべてのクエリーの結果を示します。Oracle Database In-Memoryテクノロジ向けに最適化されていない、古いSAP BIバージョンが使用されたことに注意してください。

数値は、ラリーがOracle Database In-Memoryを紹介したときほど印象的ではありませんが、ベースラインにより異なりはあっても最大25倍の高速化は悪い結果ではありません。

ここで依然として、次の質問が残ります。 「なぜ、データベース全体をバッファ・キャッシュに格納しないのですか」確かにそうすれば、システムは7~8倍高速になります。

なぜそうしないか、その答えは簡単です。多くの顧客は、必要なメモリーの量を搭載したサーバーにお金をかけたくないのです。SAP BIデータベースのサイズが5TB,10TB、またはそれ以上の場合、バッファ・キャッシュは最大でデータベースの50%のサイズが必要になります。現在、最大32TBまたはそれ以上のメモリーを搭載したサーバーがありますが、それらは非常に高価です。最新のインテル・ベースの2ソケット・サーバーは、3TBまでのメモリーに対応できます。手頃な価格の代表的なサーバーには、1.5TBのメモリーを搭載できます。

Oracle 12c Database In-Memoryの強みは、データ表のみがSGAに適合する必要があり、システムの種類によって、これは通常、データベース・サイズの1/3~1/2に相当します。インメモリー表のデータは圧縮形式で保存されアクセスされるため、フットプリントはさらに減少します。実際のテストでは、ほとんどのSAP BI表を、元の表サイズの1/2から1/4に圧縮できることが確認されました。つまり、インメモリー表のサイズは、元の表サイズの1/2から1/4になります。

1.5TBのメモリーを搭載した最新のインテル・ベースの2ソケット・サーバーは、10TBのSAP BIデータベースを完全にメモリーに置くことができます。さらに、検索の速度を上げるために使用される索引、特に問合せパフォーマンスに必要なビットマップ索引を排除できます。保持する索引が少なくなると、データのロードが大幅に加速し、同時にディスク領域およびバックアップのサイズが減少します。

Oracle Database In-Memoryのもう1つの強みは、実装の時間が短いことです。信じられないかもしれませんが、この顧客のPOCは、5時間以内に終了しました。これには、テスト・システム上でのデータベースのクローンの作成、およびテストのすべてが含まれています。これを任意のSAP機能の実装プロジェクトと比較してみてください。

Oracle Database In-Memoryを無効にするのも簡単です。1つの簡単なコマンドライン・ディレクティブで、機能を動的に有効化および無効化できます。このため、致命的な問題が発生した場合は、迅速で手際よいフォールバックが提供できます。

最後に、HA/DRを達成する方法はどうでしょうか。Oracle Data-base In-Memoryでは、Oracle RAC、Oracle Data Guard、およびオラクルや他のベンダーのフェイルオーバー・ソリューションを引き続いて使用できます。何も変更する必要はありません。リカバリ機能も残されています。この機能は、Oracle HAおよびDRすべての機能と完全に統合されています。

要約すると、新しいオラクルの機能でのエクスペリエンスは実にすばらしいものでした。実装の容易さ、およびパフォーマンス上のメリットについては、期待通りです。今では、認定されたオプションとして、ほとんど透過的に実装できます。顧客は業務を中断することなく、手頃な価格で、このテクノロジを検証できます。

執筆者について:DB MastersのCEOであるChristian Pfundtnerは、Oracle Data-baseとの付き合いは1992年(Oracle 6)以来と長く、ヨーロッパで最初に認定された4人のOCM(Oracle Certified Master)の1人です。DB Mastersでは、Oracle Databaseが中心的な存在ですが、競合他社とは異なり、ディスク(ストレージ)からユーザーまで、すべての関連する層に対応しています。また、ビジネス要件、最新のデータベースの要件、現在のライセンシングの状況、Oracle実装のベスト・プラクティスに関する推奨事項など、あらゆる側面から評価し、ROI、パフォーマンス・チューニングおよびトラブルシューティングの最大限の効果を期待する顧客のニーズに応えています。

DB Masters GmbHStammersdorfer Str.4632201 Gerasdorf, Austriawww.dbmasters.at

Type of test Result

Runtime on production system Always between 2500 and 2750 seconds depending on the current system load

11g / 12c Test system original buffer cache About 1455 seconds

11g / 12c Test system 256GB buffer cache About 382 seconds

Using Oracle Database In-Memory with About 118 Seconds QUERY LOW Compression

Page 49: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

49Goodman FielderのOracle Advanced Compression

概要企業が経験するデータ・ボリュームの急激な増加は大きな問題です。企業は、ボトム・ラインに影響を与えずに、変化するビジネス・ランドスケープに迅速に適応する必要があります。ITマネージャは、コスト削減の面から既存のインフラストラクチャを効率良く管理し、しかもアプリケーションのパフォーマンスを高く維持することが求められています。

Oracle Advanced CompressionオプションとOracle Databaseは、この複雑な環境でIT管理者を支援する圧縮機能、パフォーマンスおよびデータ・ストレージ最適化機能の強力なセットです。

Oracleデータベースがクラウド展開であろうと、オンプレミス展開であろうと、Oracle Advanced Compressionは、アプリケーションの変更なしに、異なった環境全体で強力な圧縮を提供できます。Oracle Advanced Compressionのメリットには、データベース・ストレージ・フットプリントの削減、バックアップの節減、システム・パフォーマンスの向上が含まれています。

このケース・スタディでは、ビジネス・クリティカルなSAPアプリケーション環境でOracle Advanced Compressionを使用したGoodman Fielderが手にしたメリットを紹介します。Goodman Fielderはパフォーマンスの改善はもとより、既存のストレージ容量を40%以上削減して新しいストレージの導入を見合せることができました。

Goodman Fielderがこれを達成した方法を知るには、この先をお読みください。

Goodman Fielder社についてGoodman Fielderは、オーストラリアの大手食品企業数社の有名ブランドを取り扱っています。代表的なブランドには、Meadow Lea、Praise、White Wings、Pampas、Mighty Soft、Helga’s, Wonder White、Vogel’s(ライセンス許諾)、Meadow Fresh、Irvinesなどがあります。

Goodman Fielderは、朝食、昼食、夕食および軽食などのあらゆる食卓で消費される、パン、牛乳、マーガリン、小麦粉、ドレッシング、調味料、ディップ、マヨネーズ、冷凍パン生地、ケーキ・ミックス、パイ、セイボリー、デザート、ソース、ビネガー、サラダ油の生産と販売をしています。

シドニ-に本部を置くGoodman Fielderでは、オーストラリアと太平洋諸島で約5,000人が就労し、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーおよびニューカレドニアの約50の工場で製品を生産しています。

データ肥大化の課題Goodman FielderのSAP ECCアプリケーションは、オーストラリアおよびニュージーランド全域の現場全体で使用されるビジネス・クリティカルなアプリケーションです。このOLTPアプリケーションは、Goodman Fielderの毎日のビジネス・トランザクションと業務処理の心臓部です。SAP ECCアプリケーションにシステム上の問題またはパフォーマンスの低下が発生した場合は、製品の製造やそれらの製品を消費者に届ける業務に深刻な影響があります。

「Oracle Advanced Compressionの実装を推し進めたのは、弊社のSAP ECC6のデータベース・サイズの肥大化でした。Oracle Advanced Compressionを使用すると、複数のSAP ECC6インスタンスで合計20TBが使用可能になりました。私たちは、肥大化する表のトップ20を対象に、停止時間ゼロで圧縮に成功しました。このプロセスは、弊社のユーザーに対し完全に透過的で、使いやすさと結果に非常に満足しています。」

― I A N L O F L E Y技術サービス責任者

Oracle Advanced Compressionにより、Goodman Filderのビジネス・クリティカルなSAPのデータ・ストレージ要件を40%削減

Page 50: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

50

Goodman FielderのSAP ECCデータベースは、毎月350~400GBのペースで増大しています。データベース全体のサイズは、過去2年間で2倍になり、10TBに達しました。このペースでデータが増大し続けると、同社はデータ・ストレージのコストを削減しなければなりません。しかも、コスト削減によるデータベースへのパフォーマンス低下があってはなりません。

概念実証(POC)から開始Goodman Fielderは、テスト環境のSAPで、Oracle Advanced Compressionを使用してPOCを実行しました。大きな表を圧縮することにより、テスト環境の領域を約50%解放することができました。また、POCの結果としてGoodman Fielder DBAチームは、各表の圧縮に必要なタイミングに関する知識も取得したのです。

ビジネス・ユーザーを対象に、パフォーマンスの検証を含む詳細なテストを実行した後、Goodman Fielderは、Advanced Com-pressionを本番環境に実装することを決定しました。Goodman Fielderは、1回につき1つの表の圧縮を有効にし、停止時間なしに3週間で実装を完了しました。

強力なパフォーマンス

Advanced Compressionの評価でGoodman Fielderが関心を持っていたのは、圧縮による節減とともに、データ圧縮後のシステム・パフォーマンスでした。本番環境でのテスト中、および実装後、圧縮に関連するパフォーマンスの低下は発生しませんでした。そればかりか、上の表に示すように、様々なSAPトランザクションでのパフォーマンスが向上したのです。

「Oracle Advanced Compressionは、私たちの想像以上でした。Goodman Fielderでは、パフォーマンスに影響を及ぼさずに、増大するデータを削減し、データ・ストレージ・フットプリントを40%縮小することができました。これは、私たちにとって全面的な勝利です。」

– TAPAN VADODARIA、Oracle DBA

説得力のあるストレージの節約Advanced Compressionは、Goodman Fielderの本番データべースを10TBから6TBに縮小しました。DBAチームはこの圧縮により、データベース・レベルで4TB以上の領域を自由に割り当てることができるようになりました。これは、将来のトランザクションおよびストレージに再利用できる領域です。また、本番環境を予備の環境にコピーするため、ディスク領域の節約の総計は20TBまで増加します。

Goodman FielderのDBAチームは、50GB以上のデータを使用する、合計20のSAP表の圧縮を計画し、目標としました。計画段階でOracle Compression Advisorが使用されました。関連するデータベース表に対して、平均4.79の圧縮率が予測されましたが、圧縮の最終結果は、予測と一致、またはそれ以上でした。

またDBAチームは、SAP BRSPACEツールの推奨に従って、データベースのLOBオブジェクトを最新の最適なSecureFilesアーキテクチャに変換し、次にSecureFiles LOB圧縮(LOW率)で圧縮しました。その結果として、パフォーマンスに影響をおよぼすことなく、LOBオブジェクトための領域が大幅に節約されました。

Goodman FielderのOracle Advanced Compression

Page 51: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

51

Goodman FielderのDBAチームは、圧縮を有効にするSAP BRSPACEツールを使用しました。その結果、最も大きい、頻繁に使用されるSAP表の1つであるGLPCAのサイズが、700GBから144GBに縮小されました。

OLTP表圧縮の実装後、DBAチームが気付いた他の利点は、データベースの全体的な月ごとの成長率が350GBから200GBに減少したことです。以前、Goodman Fielderは、追加のディスク領域を定期的に購入するために多額の投資をする必要がありましたが、既存のストレージを解放するだけで、追加のストレージの購入が見送られ、結果として目に見える節約を実現したのです。

Goodman FielderのDBAチームは、本番環境を圧縮する際に、営業時間中にAdvanced Compressionを有効にしました。パフォーマンスへの影響はなく、すべての表が圧縮され、停止時間は発生しませんでした。

結論Oracle Advanced Compressionを使用すると、企業はCapExおよびOpExコストを最小限にすることができます。このためのアプリケーション・パフォーマンスの犠牲も停止時間もありません。Advanced Copressionは、構造化データと非構造化データの管理を軽減でき、異なった環境全体で、データベース・ストレージ・フットプリントを1/2から1/4に縮小できます。アプリケーションの変更はまったく必要ありません。

環境

• AIX 7.1を搭載したIBM P7

• SAP ECC 6.0

• Oracle Database Enterprise Edition

• Advanced Compressionオプション

主なポイント

• SAP ECC OLTPデータベースの月ごとに350~400 GBの増大

• データベースの増加率による、ストレージのコストの増加

• 圧縮をビジネス・ユーザーに対して透過的に、また停止時間なしに有効化

• 圧縮可能な領域に関するテスト環境でのPOCの驚異

• 本番環境、ステージング(UAT)環境およびテスト環境全体の圧縮実装

使用したAdvanced Compression機能

• OLTP表の圧縮

• SecureFiles LOB圧縮

詳細は、お客様担当のOracle Account Managerにお問い合せください。

ベスト・プラクティス:

オラクルが無償で提供するCompression Advisorは、圧縮率の推定に使用する非常に便利なツールです。Advisorに関する情報は、次のOTNからダウンロードできます。

http://www.oracle.com/technetwork/database/options/compression/down-loads/index.html

Oracle顧客:Goodman Fielder

所在地:オーストラリア、シドニー

業種:食品会社

従業員:5,000名

Goodman FielderのOracle Advanced Compression

Page 52: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

52 ElectraNet – Oracleプレス・リリース

ElectraNetは、南オーストラリア州の主要な伝送ネットワーク・サービス・プロバイダで、システム・コントロール・センターを運営しています。選択したOracle Engineered Systemからの電力市場のより実践的なインサイトを利用して、意思決定を改善することができるようになりました。

この組織では、SAPおよび他のレポート作成アプリケーションのサポートにOracle Exadata Database Machineを使用して、わずか15秒で会計報告書を作成できるようになりました。新しいシステムは、毎日の電力の価格決定および顧客の電力消費量に関するレポート作成を大幅に高速化し、電力市場のデータを即座に使用可能にします。以前は、レポートの作成に4分以上必要でした。

「公益事業は、いつもデータ駆動型です。私たちの課題は、十分なデータを持つことではなく、品質情報をタイムリーに引き出すことで、Oracle Exadataは、これを達成するうえで不可欠でした。1つのプラットフォーム上にハードウェアとソフトウェアを統合したことで、パフォーマンス上のメリットを手にしました。私が知る限り、これほど効果的にソフトウェアとハードウェアを統合できるシステムはありません。」とElectraNet Pty, Ltd.のデータベース管理者Mark Jones氏は述べています。

この新しいインフラストラクチャは、高性能で費用対効果の高いデータベース・プラットフォームによるビジネス・パフォーマンスの向上に加え、総所有コスト(TCO)の削減も実現しました。37台のサーバーと10台の仮想マシンを2台のOracle Exadataユニット(1台は本番用、1台は障害リカバリ用)に統合した結果、年間のITメンテナンス・コストが660,000米ドルから330,000米ドルに半減し、ライセンス・コストも削減されました。またElec-traNetは、より速い問題の解決を保証するOracle Platinum Serviceを利用し、データベースおよびサーバーのパッチ処理といったシステム・メンテナンスのタスクを1か月につき15時間も短縮しています。

「最高のサービスを可能な限り低価格で顧客に提供することは、私たちにとってきわめて重要です。ただし、広大な農村地域全体の物流と伝送に必要なインフラストラクチャは、なかなかそのゴールの達成を許してくれません。

自社のビジネス情報にほぼリアルタイムでアクセスできることで、業務を合理化し、当面のニーズおよび将来のニーズに対する正しい決断が必要な機会を特定することができるようになりました。」とJones氏は続けます。

ビジネス回復力も向上しています。ElectraNetは、6時間ではなく、その3倍の速さの2時間でデータのバックアップを完了する機能を取得し、事前に構成、調整およびテスト済みのエンジニアド・システムを使用することで、システムの高可用性を保証できます。

「現在の公益事業は、機動的な経営で、顧客に最高の価値が提供できなければ意味がありません。ElectraNetは、Oracle Exa-dataの選択によって、自社の企業データからより多くの価値を引き出し、より迅速に意思決定ができるようになりました。その結果、ビジネス全体の効率と効果が改善され、競争力を高めることに成功しています。」とOracle Australia and New Zealand、Exadataおよび戦略的ソリューションの責任者、Carlos Cien-fuegos氏は述べています。

ElectraNetは、Oracle PartnerNetwlrk(OPN)のゴールド・レベルのメンバー、Blue Crystal Solutionsに初期設定を依頼し、Oracle Advanced Customer Supportと連携してSAPアンダーで稼動するデータベースを移行しました。移行はすばやく円滑に実行することが必要でしたが、実際にOracle ExadataへのSAPアプリケーションおよび他のレポート作成ソリューションの移行は、Oracle Advanced Customer Support Servicesのベスト・プラクティスおよび専門知識を使用して、1日という驚異的な時間で完了したのです。

これについてJones氏は次のように述べています。「移行にOracle Advanced Custoner Support Servicesを使用したことで、リスクが軽減されました。Blue Crystal SolutionsはSAPに認定されているため、私たちが直面するであろう問題のほとんどをすでに知っています。そのため、彼らは問題の回避策と解決策に迷うことはありませんでした。結果として、停止時間は予想していた約75パーセントを下回りました。これは驚くべき時間短縮です。」

ElectraNetにおける会計報告書の16倍高速な作成と年間のメンテナンス・コストの$330,000米ドル削減

Oracle Engineered Systemによりビジネスの優れた洞察力を手にしたElectraNet

Page 53: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

53Solvi Group BrazilのOracle Exadata Database Machine

環境工学の分野で活動する60以上の企業で構成されるSolvi Groupは、その能力に定評があり、都市から排出される廃棄物、産業廃棄物、公衆衛生、建設およびエネルギー回収の分野で広くビジネスを展開しています。

環境整備事業の目的は、ブラジル国内または海外の企業に対し、パートナーまたは株主として投資することです。

ここでは、Oracle ExadataがSolviの追加された環境管理コストの削減、可用性、パフォーマンス、ストレージをどのように改善したか紹介します。Exadata上のSAPシステムおよび他のシステムの可用性とレスポンスの向上は、エンド・ユーザーにとっても大きなメリットになりました。ブラジル、サンパウロのSolvi Solu-tions、IT情報管理者Henrique Fassi Lobao氏のビデオ・インタビューをお読みください。

Solviには、データベース管理に関連した問題がありました。インフラストラクチャが一元管理されていなかったのです。システムごとに異なったサーバーが使用され、管理作業は膨大でした。多数の独立したサーバーがあっただけではなく、可用性がほとんどありませんでした。各サーバーが1つのシステムをサポートしていたため、サーバーがダウンすると、システムもダウンしました。パフォーマンスにも問題がありました。Exadataの実装で、Solviが直面していた複数の重要な課題が解決されました。最初に取り組んだ分野は、環境管理でした。私たちは、すべてのデータベースを1つのエンジニアド・システムに一元化し、データベースの管理時間を大幅に短縮することができ、少人数で編成された管理部門の残業も大幅に削減されたのです。今では弊社のDBAは、週末完全にフリーです。現在、スタッフは週5日、1日に8時間以内の通常の勤務時間で週末は休むことができますが、以前は週末も休むことができませんでした。また、環境有効性のメリットも確認できます。これは、私たちにとって深刻な問題でした。

サーバーがダウンすると、システムもダウンします。現在、顧客に対するExadataの冗長性により、可用性を低下させずに、パッチ処理やアップグレードなどのメンテナンス・タスクが実行できます。メンテナンスの実行中は、データベース・ホストもストレージ・マシンもない状態で、アプリケーション・システムは問題なく完璧に動作しています。

これらの3つ目の改善点は、パフォーマンスにありました。バックアップも大きな問題でした。使用できる時間は相対的に短くなるため、バックアップもスタートが遅くなり、翌日の午前8時になって

も終わらない状態でした。Exadataを使用すると、バックアップは始業時間のずっと前に簡単に終わっています。現在、圧縮バックアップを使用しているため、バックアップ・ストレージも節約されています。以前は、高い処理能力が要求されていたため、このようなことは決してできませんでした。今では、非常に効率的な方法でこれらを実行し、他のタスクに十分な時間を使うことができます。

エンド・ユーザーはExadataを直接使用することはありませんが、Exadataから直接的なメリットを受け取っていることになります。Exadataで稼働するSAPシステムおよび他のシステムの可用性が向上すると、ユーザーのニーズへの応答も早くなります。Exadataは、システムの利便性、応答時間、および全体的な可用性、ユーザーが常に依存できる安定性を向上させてくれます。Solviは、Exadataを使用することで、コストを削減しました。環境管理、およびシステム可用性低下による追加のコストが必要なくなったためです。これらは間接的なコストですが、電子インボイスを送信する必要があるエンド・ユーザーにとってはかなり影響があります。システムがダウンすると、エンド・ユーザーおよび彼らの業務に甚大な影響を与えます。

これまで弊社の可用性は、単一サーバーに依存し、ひとたびサーバーがダウンすると、システムを使用することができませんでした。これは、1つの例にすぎません。現在は、Oracle ExadataとOracle Databaseによって、以前のように悩まされることがありません。

Exadataの実装環境では、可用性の低下は、データベースが原因ではなく、アプリケーション・システム自体が原因です。弊社のデータベースはダウンすることなく、完璧に動作し応答も早くなっています。Solviでは、メリットを実感できるオラクルの他のソリューションの導入も検討しています。

アプリケーション用にExalogicの検討、そして最終的には他のシステム用に特殊な製品も検討しています。弊社のSAP BW環境にはSuperClusterを考えていて、以前の製品や経験に基づいて、提案をしっかり見極めたいと思っています。Solviはそれらの製品が生産性の向上と事業の成功の鍵を握っていると信じているからです。

出典: http://medianetwork.oracle.com/video/player/4120342309001

Oracle Exadataで環境管理コストを削減したブラジルのSolvi Group

Page 54: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

54

概要Wumart Stores, Inc.は、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンス・ストアを展開する大手の小売グループです。主に、北京、杭州、天津、浙江、河北、および上海の各地に700の店舗があり、年間総収益は400億人民元以上です。

• Wumartでは、収益と小売店数の急速な成長で、既存のインフラストラクチャがビジネス上の要求に対応しきれなくなっていました。

• 既存のITランドスケープが、従来型の単体システムのサイロであったため、Wumartはこれをリフレッシュして、最新のプライベートクラウド・ベースのインフラストラクチャにしたいと思っていました。

• Wumartは、ハードウェア・コストと運用コストを削減し、SAPシステムの全体的なパフォーマンスを改善するために、X86アーキテクチャへの移行を希望していました。

既存のシステムの問題• 中核的なSAPシステムでは、CPUおよびメモリー使用率は一

貫して90パーセント以上、ピーク時は100パーセントでした。その結果、応答時間は長く、顧客のエクスペリエンスは最悪でした。

• システムのサイロを動的に調整して、異なったワークロード・パターンにできないためリソースが必要なシステムに、リソースを容易に移動できませんでした。

• 既存のインフラストラクチャの入手と維持のコストは、急速に増加し続けました。

• ビジネスの成長とインフラストラクチャの製品ライフサイクルのバランスが取れず、インフラストラクチャへの投資の保護が困難でした。

• 既存のインフラストラクチャは大きく、複雑で、維持が難しいため、ITの運用コストが増加していました。

課題• 停止時間20分未満での8TBのSAP ECCデータベースのUNIX

からExadataへの移行

• ECCシステム周辺の約100のRFCインタフェース

• テスト用システムの周囲に十分なハードウェア・リソースがない

• IPアドレス、ホスト名、およびDNSの移行中の変更

• プロジェクトのスケジュールが厳しい。試験期間が極端に短い。

• 3か月以内に3つの大規模な本番システムを移行

• 各システムの多数のカスタム開発されたABAPプログラム

Oracle Golden Gateによる大規模なSAPクロス・プラットフォームのオンライン・システム移行

実装パートナー

Beijing Giantower Technology Co Ltdは、Oracle Goldパートナーで、Oracle Engineered SystemsとOracle Databaseの特別な専門知識を持つ、有能で経験豊かな技術チームが在籍しています。彼らは、システム統合サービス、およびOracle Engineered SystemsへのERPアプリケーションの導入を提供します。中国で初めてのExadata Database Machineを支援したのも、ExadataにSAPを導入したのもBeijing Giantower Technologyでした。サービスの範囲は次のとおりです。

• Oracle Engineered Systemsの導入とメンテナンス

• Oracle Engineered Systemsで動作するSAPのエンドツーエンドのソリューションおよびサービス

• SAPの移行、アップグレード、最適化、メンテナンス

• Oracle Databaseの設計、導入、メンテナンス

Page 55: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

55Wumart StoresのOracleオンライン・システムの移行

移行の稼働計画(平行して進行、段階的稼働)

タベースを中間的な環境で複製し、次にOracle Transportable Tablespace(TTS)を使用して、目標のExadataマシンへの最初のデータベース移行(エンディアン変換を含む)を完了しました。その後、Oracle Golden Gateを使用してExadata上のターゲット・データベースをIBM P750で稼働するソース・システムと同期させることで、データ整合性およびデータ完全性の総合的な検査機構を作り上げ、オンライン・データベース移行の稼働を開始することができました。

主要な移行プロセス既存のシステム環境を詳しく分析した結果を元に、プロジェクトの詳細をSAPおよびオラクルの両社と何度も話し合った後、段階的な稼働と平行同期試験が決定されました。移行に当たって、本番運用に影響がないこと、データ整合性の保証、事業運営へのリスクがゼロであることを確実にするために、顧客の具体的なリクエストが考慮されています。Gaintowerは、Oracle Golden Gateソフトウェアの特殊な機能に基づく技術的ソリューションを開発しました。最初に、彼らはRMANを使用して、完全なSAPデー

ラットフォームから、高信頼性、高パフォーマンスのクラウド・コンピューティング・アーキテクチャへの完全な変換が完了しました。

最終結果と得られたメリット• 移行後、4つの中核的な本番データべースはOracle Exadata

上に統合され、アプリケーション・インスタンスはX86のプールで仮想化されています。これにより、従来のIBM POWERプ

Page 56: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

56 Wumart StoresのOracleオンライン回線システムの移行

移行前と移行後のパフォーマンス改善の比較

使用率は、わすか15パーセントです。ECCシステムのパフォーマンスは、平均で6倍以上向上しています。

• 移行前と後のAWRレポートの比較により、パフォーマンスが8倍から15倍に改善されていることが明らかになりました。4つの本番データベースを統合したExadataマシンの平均のCPU

プロジェクトは、システムの統合を実現し、リソースを最大限に活用するプライベート・クラウド・コンピュータ環境を提供することができました。この結果、高性能の先進アーキテクチャが実現し、Wumartには成長著しい業務の処理に期待以上の対応が約束されました。

移行前と移行後のAWRの比較

Page 57: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

57CELSA GROUPのOracle SuperCluster

5大陸の法人顧客にサービスを提供し、その傘下に50社以上の企業を持つ、CELSA GROUPは、スペイン最大のヨーロッパで有数な鉄鋼メーカーです。CELSA GROUPは、鍛鉄、積層鋼、および処理鋼など、高度に多様化された製品を製造しています。

課題 • Enterprise Resource Planning(ERP)システムの停止時間を

なくす。停止時間は、鋼製品の納品遅延により、遅延の罰金やビジネスの信頼を失う原因になります。

• ITパフォーマンスの改善。CELSA GROUPの50以上の事業体全体のリソース計画と会計報告の効率アップを強化します。

• バックアップ処理の最適化。緊急時のデータ喪失という企業としてあってはならない要件を満たすと同時に、時間と費用を節約します。

ソリューション • Oracle SuperClusterおよびOracle Exadata Database

Machineを使用し、SAP ERPシステムの停止時間の排除、およびCELSA GROUPと顧客のサプライ・チェーンの最適化により、1年当たり数百万トンの鋼鉄の納期厳守を確実にしました。

• 会計報告を最適化し、50以上の事業体に分散する2,000以上のユーザーからのデータを統合することにより、人件費を年間656,000米ドル削減しました。

• ERPシステムの速度を3倍に加速しました。これにより、ロジスティクスを最適化することができ、次の4年間はITリソースを追加せずに、計画的成長を支えることが可能になりました。

• Oracle Data Guardにより、地理的に離れたデータ・センターのバックアップと問合せが3倍高速になりました。その結果、バックアップの管理に使用されていたITリソースと時間が最適化されました。

• CELSA GROUPのデータ・ストレージ容量を強化し、データの分析、傾向の把握、製鋼作業全体の効率の改善を求める厳しい要件を満たしました。

• Oracle SuperClusterの導入に当たりオラクル・パートナのBTと契約をしました。これにより、カスタム導入準備計画、即日の移行および導入後のサポートが確保されました。

「Oracle SuperClusterは、ロジスティクス計画およびディスパッチング処理の命取りになる停止時間をなくし、私たちにどれだけの安心感を与えたか分かりません。サプライ・チェーンを最適化できるようになった顧客の弊社への信頼は、弊社の製品が予定通りの時刻に確実に納品されることで日増しに強くなっています。」

― J E S U S M A Y O R D O M O ,CIO, CELSA GROUP

SAPのエンタープライズ・アプリケーションのパフォーマンスを3倍向上させ、人件費を656,000米ドル削減して継続的な成長を支えるITストラクチャを導入したCELSA GROUP

Page 58: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

58 CELSA GROUPのOracle SuperCluster

Oracleが選択される理由 「SAP ERPシステムのITインフラストラクチャを改善するために、いくつかの可能性を検討しました。テストの結果、堅牢性、効果、価格、および品質のすべてを満たすのは、Oracle SuperClusterのみであることが判明しました。」とCELSA GROUPのCIO、Jesús Mayordomo氏は述べています。

実装プロセス CELSA GROUPはOracle SuperClusterへのシームレスな移行をわずか1日足らずで実現しました。これは、オラクルとオラクル・パートナBTによる導入前の綿密な分析と準備の賜物です。BTは、Oracle SuperClusterへの移行の他に、CELSA GROUPのSAPシステムにホスティング・サービスを提供しています。このサービスは、CELSA GROUPにデータ・センターとOracle Super-Clusterのインフラストクチャを提供すると同時に、プラットフォームの年中無休の管理と操作も保証しています。

パートナー BTは、CELSA GROUPのIT要件とビジネス・ニーズを分析しました。BTの分析とテストによると、CELSA GROUP環境に最も適切なのはOracle SuperCluster以外にないことが証明されています。CELSA GROUPに負担を強いることなく、BTは導入の準備を進め、移行をわずか1日足らずで完了しました。BTは導入後も、トレーニングなどを通じてサポートを継続し、問題の発生時には彼らの知識と技術を惜しみなく提供しています。

https://www.bt.es

http://www.celsagroup.com

Oracle顧客:CELSA GROUP

所在地:スペイン、バルセロナ

業種:工業生産

従業員:7,000名

年間収益:10億~50億米ドル

オラクル社の製品およびサービス:• Oracle SuperCluster

• Oracle Exadata Database Machine

• Oracle Active Data Guard

Page 59: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

59LentaのOracle Exadata - Oracleプレス・リリース

Oracle Exadataを使用して、ITインフラストラクチャの最適化プロジェクトを実施したLentaモスクワ、サンクト・ペテルブルク2015年4月24日

ロシア最大のリテール・チェーンの1つであるLenta(LSE, MO-EX:LNTA)は、Oracle Exadata Database Machineを使用して、ITインフラストラクチャを最適化しました。Exadata Machineによって、ERPシステムのデータ処理速度は4倍になりました、

一方、Oracle Platinum Partnerである国有企業KORUS Con-sultingは、ロシアのオラクル代理店、FORS Distributionのソフトウェアおよびハードウェアの専門家によりサポートされたプロジェクトのリード・パートナーです。

LentaのITランドスケープは、20以上の企業情報システム、店舗および流通センターを本社と接続する300のデータ・リンク、およびデータ・センターに統合された複数のサーバー・ルームで構成され、ITチームは全国の様々な地域に配置された6,000以上のワークステーションをサポートしています。

Lentaは、新しい店舗と流通センターをオープンするなど急速な成長に伴い、多数のビジネス・プロセスを変更しました。それによって、ユーザーとデータが増加し、既存の情報システムの負荷が増大しました。Lentaはこれをきっかけに、現在のITランドスケープの見直し、新しいハイテク・ソリューションの開拓、データ処理速度の改善、戦略的なレポートの生成を柱とする大きな取組みを進めました。

ロシアの小売り業が、成熟し競争の激しい産業にまで成長し発展したことは、新しいビジネス・ニーズの認識や情報技術による将来性への期待と言った意識を変化させました。最新のソリューションは、ビジネスの不可欠な要素になりつつあり、リアルタイムで大きな負荷を処理できる効果的な情報システムは、ビジネスの優位性を保つ上で非常に重要です。LentaのITランドスケープ開発の次の段階は、スケールアップ、ITシステムのパフォーマンスの両方の問題を効率よく解決するソフトウェアとハードウェアを手に入れることでした。」とLentaのCIO、Vsevolod Kuzmichは述べています。

プロジェクトが開始された2013年には、クラスタで構成された最新の企業レベルのRISCマシンが、すべてのビジネス・システムを稼働し、ロード・バランシングを使用してリソースを効率的に活用していました。ITインフラストラクチャの開発準備を進めていくうちに、このアーキテクチャにはいくつかの制約があり、製品化された最新技術のソリューションの方がはるかに優れていることに気が付きました。

LentaのITチームは、世界的な分析機関のレポートを詳しく調べ、実データでテストされた、可能性がある複数のソリューションを選択しました。フォールト・トレランスの保証、大量のデータを処理する能力、資格を持つロシア国内のシステム統合パートナー、同様のシステム導入の経験豊富なパートナーなどのベースラインの選択条件とともに、システムのスケーラビリティとパフォーマンスは、選択の重要なパラメータでした。

最終段階で、異なるベンダーの2つのシステムが残りました。この2つのシステムを最終的に評価するには、実データを使用したテスト・ベンチで、同一の生産負荷を付加するテストが必要です。様々な負荷条件を設定し、最もリソースが集約されるレポートの作成速度、および最も複雑なトランザクションの実行に必要な時間を基準に、パフォーマンスが評価されました。また、既存のインフラストラクチャとの同一のメトリックによる比較も実行されました。準備段階のプロジェクトで確認された累積的効果は、テクノロジによってパフォーマンスの4倍の向上とデータ・ストレージの削減でした。これは圧縮とオラクルの技術的な機能の結果です。

Page 60: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

60

数回のテストを通して判明したのは、Oracle ExadataがLentaの課題に対処できる最高のソリューションだったことです。オラクルのソリューションが、Oracle Databaseを使用するビジネス・クリティカルなシステムの統合を可能にするという事実だけではなく、フォールト・トレランス、スケーラビリティ、パフォーマンスなどの技術基準に基づき選択されたのです。現在では、企業リソース計画システム(SAP ERP)およびその他の複数のビジネス・アプリケーションがOracle Exadataに移行済みです。SAPアプリケーションに対するOracle Exadataの生産的な使用により、Lentaの希望するパフォーマンス向上が現実のものとなりました。オラクルは、365日中断することなく、アプリケーションの動作を保証しています。

コメント「ソリューションの最終選択の重要な要素は、そのソリューション上で稼働するERPシステムの安定性でした。どの小売企業にとっても、ERPは送信と処理が必要な膨大な量のデータを持つ中枢神経です、現在、弊社のERPシステムには約20TBのデータが保存され、毎日3000~4000人の従業員が使用しています。ですから、システムは年中無休で稼働できる必要があるのです。」とVsevolod Kuzmich氏は述べています。「Oracle Exadataを1年間使用して分かったのは、その信頼性の高さです。Oracle Exa-dataによって我々の希望が現実のものになったと言っても過言ではないでしょう。また、システム導入の速さにも感心しました。SAP ERPの本番システムが、わずか3日でExadataに移行できたなんて信じられますか。」

「弊社のTCO(総所有コスト)を最適化する方法を見つけたことにも触れたいと思います。」とLentaのインフラストラクチャおよびサービス担当のIT副部長、Nikolay Vyatkin氏は続けて述べています。「最初にソリューションとして大容量のディスクを選択しました。第2に、操作中に、ディスク領域とメモリーが処理能力よりも速い速度で使用されていることがわかりました。そのため、2015年の拡張では、システムの線形なスケールアップをしませんでした。その代わりに、メモリーとディスク領域を追加しました。この追加費用は、従来のスケールアップで支払われる金額に比べ本当に微々たる金額です。このような柔軟性は、私たちが検討した他のソリューションにはありませんでした。これはOracleシステムの絶賛に値する強みです。」

「パフォーマンスの数倍の向上、およびITリソースの統合は、私たちの最適化されたシステムの最も重要な長所であり、現代の顧客が求めているものでもあります。

Oracle Exadataによるパフォーマンスの改善は、オラクルのアプリケーションに限ったことではありません。他のベンダーのソリューションのパフォーマンスでさえ大幅に改善してくれます。そんなOracle Exadataが、ロシアの小売業のリーダーとしてのLentaの急速な成長を支え、IT総所有コストの削減を実現してくれたことに非常に満足しています。我々にとって重要なことは、世界有数のDBMSであるOracle Databaseでソリューションが稼働していることです。」とOracle CIS、Advanced Technologies for Pre-Project Consultingの責任者、Andrey Pivovarov氏は述べています。「ロシアでは、ビジネスのイノベーションの加速にオラクルの統合システムを選択する企業が増えています。私たちは最も高度なソリューションを武器に、これからも顧客をサポートし続けていきます。」

パートナーKORUS Consulting Groupは、ロシアのシステム・インテグレータで、ビジネス・プロセスの作成、最適化、自動化に関するITコンサルティング・サービスを提供しています。Oracle Platinum PartnerのKORUS Consultingは、ITアウトソーシングおよびシステム統合に特化し、ITインフラストラクチャの作成、監査、および維持のあらゆるサービス、IT機器の選択と購入もサポートしています。同社が専門とする主要業務の1つが、小売企業のエンドツーエンドの自動化です。Metro Cash & Car-ry、Azbuka Vkusa、Korablik、ZAO Tander(Magnit chain)、Lenta、Monex Trading、O’KEY, SPAR Retail、TsUM、Trading House TsentrObuv、Tyumenskiy TsUMなどがKORUS Con-sultingの顧客です。

ロシアとモンゴルのオラクル代理店、FORS Distribution(www.partner.fors.ru)は、FORSパートナーとの連携を目的にセンターの支援を受けて、2011年に設立されました。ロシアの市場では、オラクル・テクノロジのエキスパートとして広く認められた存在です。FORS Distributionの現在の主な業務は、オラクルのソフトウェアとハードウェアの販売、技術援助、パートナーに対するオラクル・テクノロジのトレーニング、および多目的で革新的なFORSソリューション・センターの一部として、複雑なソリューションのテストと移行サービスです。販売の専門家のチーム、関連会社のネットワーク・マネージャおよびマーケティング・マネジャー、物流部門、技術コンサルト部門がFORS Distribu-tionを支えています。

Page 61: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

61LentaのOracle Exadata - Oracleプレス・リリース

オラクルについてオラクルは、クラウドとコーポレート・データ・センターの両方で機能する、最適化されたハードウェアとソフトウェアを提供しています。

オラクル(NYSE:ORCL)の詳細は、 www.oracle.comを参照してください。

商標Oracleはオラクル社またはオラクル社の関連会社(あるいはその両方)の登録商標です。その他の名称は、それぞれの所有者の商標です。

詳細は、FORS Diatributionのシニア・マーケティング・マネージャAnna Komyagina、にお問い合せください。

LentaについてLentaは、ロシア最大級のリテール・チェーンで、国内で2番目に大きいハイパーマーケットです(2014年の売上実績)。1993年に、サンクト・ペテルスブルクで創立されたLentaは、ロシアの63都市で123のハイパーマーケット、およびモスクワで27のスーパーマーケットを経営しています。売り場の総面積は実に約793,804平方メートルにおよび、ハイパーマーケットの店舗の売り場面積の平均は約6,200平方メートルです。Lentaは、自社の6つのハイパーマーケット流通センターを運営しています。

Lentaの価格主導のハイパーマーケット形式は、特産品の品揃えだけではなく、販売促進および価格設定の戦略で同業種との差別化をしています。2015年6月30日現在、約30,655人を雇用し、そのうちの管理チームは、地方固有の知識、およびロシアにおける広範な運用経験とともに国際的な専門知識も兼ね備えています。Lentaの筆頭株主には、TPG CapitalとEuropean Bank for Reconstruction and Developmentが含まれ、高い水準のコーポレート・ガバナンスを強く印象付けています。Lentaは、ロンドン証券取引所、およびモスクワ証券取引所に上場され、

「LNTA」という略称で取引きされています。

Page 62: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

62

重要な業務にSAPを使用している組織にとって、シームレスなデータの可用性、最適なパフォーマンス、およびITリスクの軽減は、事業成功に不可欠です。Oracle ACSサービスは、Oracleシステムのパフォーマンスの維持と最大化を支援するために、ミッション・クリティカルなサポート・サービスを提供します。顧客のITチームとの長期的な相互関係、Oracleのサポート・チームおよびエンジニアリング・チーム内部の協働的なサポートの構築に重点を置いた独自のサービス・アプローチで、Oracle ACSは高度に統合された徹底したサービスを提供します。オラクルとSAPのすべての問題に対応する単一の連絡先、およびオラクルとSAPの専門知識へのアクセスにより、迅速かつ効率的に問題を解決できます。積極的で予防的なサポート・サービスでは、システム可用性の向上、パフォーマンスの最適化、リスクの削減、オラクルおよびSAPスタックにおける投資回収率(ROI)の加速を支援するために診断ツールを使用します。計画、移行、構成、インストールの各サービスにより、高度な機能および新しいテクノロジを迅速にかつ効率的に利用できます。さらに、カスタマイズされたワークショップでは、最高のパフォーマンスと可用性のために、SAP環境を操作し維持するベスト・プラクティスを学習します。これらで構成するサービスにより、顧客は日常のITサポートから離れ、ビジネス価値を実現することに集中できます。

Oracleには、顧客がSAP環境を最大限に活用するために必要なSAPに関する深い専門知識があります。28年以上にわたるSAPと協力関係にあるオラクルは、SAP向けのデータベースの最大のプロバイダで、SAP R/3とSAP NetWeaverに関する豊富な経験があります。両社の献身的なエンジニアリングおよびサポートの人材がともに、包括的な開発、統合および最適化に取り組み、顧客がSAPとOracleの環境に自信を持って容易に操作できるように、迅速な問題の解決を保証します。Oracle HAおよびDRの開発、統合、最適化によるSAPランドスケープの最大の可用性は、顧客の問題解決を確実に加速します。

Oracle Database向けのOracle ACS Lifecycle Support ServicesOracle ACS Lifecycle Support Servicesは、最新のテクノロジでデータベースを最新の状態に保つことが必要か、レガシー・システムを新しいハードウェアに統合することが必要か、またはSAPのワークロードのパフォーマンスを改善することが必要か、といったあらゆる問題でOracle Database for SAPの最適化を支援します。

SAPの移行向けのOracle ACS Lifecycle Migration Service自動化、高度なサポート・ツール、10年以上のOracle Database移行の経験を活用して、Oracle ACS Lifecycle Migration Ser-viceは、移行の計画、検証および実行サービスを提供します。これらのサービスによりSAPデータベースを迅速に移行できるため、コストの削減、停止時間の短縮が実現します。オラクルのエキスパートは、SAP環境の評価、移行方法の選択の支援、潜在的な移行問題の解決、テスト・ランの実行によるリスクの軽減を通して、セキュアなオンライン・ゲートウェイを使用してデータベースを移行します。業界の最新のベスト・プラクティスに基づくオラクルの効率的なプロセスにより、通常数週間または数か月必要なSAPの移行をわずか数日で実行できます。

Oracle Consolidation Planning Serviceレガシー・システムを最新のハードウェアに統合することで、コストの削減、パフォーマンスの向上、操作の簡素化が実現します。Oracle Consolidation Planning Serviceは、オラクルのハードウェア・プラットフォームおよびエンジニアド・システムに統合するための最適な統合のシナリオと移行のシナリオの迅速に識別する上で役立ちます。オラクルのエキスパートは、現在の構成、ワークロード、パッチ・レベル、およびSAP環境のセキュリティ要件を評価して、詳細な予想、移行と操作上のリスクを低減するための実用的な推奨事項を含む、総合的な統合プランを作成します。

Oracle Performance Tuning and Benchmarking Service実行中の監視および年4回の評価により、Oracle Performance Tuning and Benchmarking Serviceは、重要なSAPデータベースの着実で最適なパフォーマンスを維持します。操作に影響を与える前に問題を特定し、主要なパフォーマンス基準を監視します。年4回のパフォーマンス評価には、業界標準に基づく推奨事項、オラクルのベスト・プラクティス、および同様のSAPデータベース構成と使用シナリオを持つ顧客によるエクスペリエンスが含まれています。

Oracle Load Testing and Analysis Serviceを追加すると、稼働時間の増加、コストの削減、包括的なデータベースのテストによるリスク減少ができます。Oracle Databaseのロード・テストのエキスパートが、計画されたテクノロジ変更がパフォーマンスに与える影響の評価、およびパフォーマンスの最適化に推奨する構成を通して稼働前の問題を特定し対処します。

SAP顧客向けのミッション・クリティカルなサポート・サービス

Page 63: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

63SAP顧客向けのサポート・サービス

Oracle Servers、StorageおよびEngineering System向けのOracle ACS Services OracleのハードウェアをベースとしたSAP環境のためにOracle ACSは、計画、デプロイ、最適化、サーバー、ストレージおよびエンジニアド・システムの深い専門知識に基づくサポート・サービスを提供します。これらのサービスにより、パフォーマンスと可用性が改善し、SAP環境に新しいハードウェアを実装する回数を削減します。

サーバー向けのOracle ACS ServicesOracle ACSは、顧客がOracleサーバーのパフォーマンスと可用性を改善し、新しいシステムの配置に必要な時間を短縮する上で役立ちます。インストールおよび構成の支援には、新しいOracleシステムの配置を促進し、結果としてSAP環境が安定しサポート可能であることを保証するための本番前の作動可能状態調査が含まれます。サーバーのパフォーマンス・チューニングおよび可用性の構成のためにカスタマイズされたサービスは、SAP環境を最適化します。また、カスタマイズされたワークショップから得ることができるベスト・プラクティスと知識の伝播で、自信を持ってサーバーを操作できます。

ストレージ向けのOracle ACS Servicesサーバーと同様、Oracle ACSは、新しいOracleのストレージ・システムの配置を加速するために、インストールおよび構成の支援を提供します。ストレージの最適化サービスには、構成とパフォーマンスの確認、SAP環境のストレージ・システムの可用性とパフォーマンスを最大にするための高度な監視と解決サービスが含まれます。

サーバーおよびストレージ向けのOracle ACS Servicesの詳細は、次のサイトを参照してください。http://www.oracle.com/us/support/advanced-customer-services/servers-storage/over-view/index.html

エンジニアド・システム向けのOracle ACS Servicesライフサイクル全体に取り組むことにより、Oracle ACSは、Ora-cle ExadataなどのOracleエンジニアド・システムにミッション・クリティカルなサポートを提供し、エンジニアド・システムの投資利益を最大化する上で役立ちます。

助言と計画、設計と構築、およびデプロイ・サービスが、Oracleのエンジニアド・システムへの円滑な移行とSAP環境内の操作の準備を保証します。進行中の本番サポートは、リスクを軽減し、OracleとSAPの問題解決のための単一の連絡先を提供します。また、Oracle Exadata Start-Up Pack for SAPは、サポート全体に対する総合的なサービス・パッケージを提供します。これには、次のサービスが含まれます。• Oracle Exadata Start-Up Advisory Service• Oracle Exadata Installation and Configuration Service• Oracle Exadata Production Support Readiness Service• データ移行サービス• Oracle Exadata Quarterly Patch Deployment Service(Ora-

cleおよびSAPのパッチ処理を含む)

エンジニアド・システム向けのOracle ACSサービスの詳細は、次のサイトを参照してください。http://www.oracle.com/us/support/advanced-customer-services/engineered-systems/ overview/index.html

Oracle Business Critical Service for SystemsOracle Business Critical Serviceは、予防的なサポートの強化とレスポンス時間の短縮をミッション・クリティカルなSAPシステムに提供します。レスポンス時間に対応するサービス・レベル合意(SLA)に基づくPriority Response、重要度の高いインシデントに対応するTime-To-Replace(TTR)とOn-Site Assistanceが、迅速な問題解決を保証します。自動サービス・リクエスト生成機能を備えた継続的なシステム監視は、業務が影響を受ける前に障害を検出し、解決プロセスを開始します。定例のシステム・レビューとプロアクティブ・パッチ適用を含む予防的なサービスは、SAP環境の重要なシステムのパフォーマンスと可用性を最適化します。Oracle Business Critical Servicesの詳細は、次のサイトを参照してください。http://www.oracle.com/us/sup-port/premier/business-criticalservice/overview/index.html.

Oracle ACS Lifecycle Support Servicesは、データベースの迅速な移行、移行および統合によるリスクとコスト削減を実現し、データベースのパフォーマンスと可用性の最適化を支援します。SAP環境向けのOracle ACS Lifecycle Support Servicesの詳細は、次のサイトをご覧ください。

http://www.oracle.com/us/support/advanced-customer-services/database/overview/index.html and http://www.oracle.com/us/support/advanced-customer-services/lifecycle-support-services/overview/index.html

Page 64: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

64

SAP環境向けのOracle Platinum Services標準的なOracle Premier Supportプログラムの特別な資格により、Oracle Platinum Servicesは追加の強化されたサポート機能をSAP環境に提供します。セキュアなOracle Advanced Support Gatewayを使用して、OracleおよびSAP環境全体(ハードウェア、データベース、オペレーティング・システム、ネットワーキング)に対する継続的なリモート障害監視により、レスポンス時間を短縮できます。障害の通知は発生から5分以内に配信され、リストアまたはエスカレーションを15分以内に実行し、深刻化した障害のジョイント・デバッグは、発生から30分以内に開始されます。重大な問題の防止と迅速な問題の解決は、結果として停止時間を減少させます。実際、Oracle Platinum Servicesの顧客の経験から平均して、重要度の高い問題が50パーセント減少し、レスポンス時間が31パーセント短縮されています。それにより組織内のサポートに関連するワークロードが軽減されています。さらに、年に4回のパッチ配置サービス(OracleおよびSAPのパッチを含む)は、SAP環境が常に最新の状態であることを保証します。

Oracle Platinum Servicesには、Oracle ExadataのPlatinum認定された構成、Oracle Exalogic、およびOracle Premier Sup-port契約が付属したOracle SuperClusterが含まれています。SAP環境向けのOracle Platinum Servicesの詳細は、次のサイトを参照してください。http://www.oracle.com/us/support/premier/engineered-systems-solutions/platinum-services/overview/index.html.

SAP顧客向けのOracleワークショップオラクルでは、SAPの顧客に特化したワークショップを提供し、OracleおよびSAP環境の維持と操作を支援しています。顧客のニーズに合せたオンサイト・ワークショップを担当するのは、SAP用のOracle Database配置の最適化に必要な専門知識を持つOracleの専門家です。実践中心のライブなデモンストレーションと実践者向けのドキュメントでは、OracleおよびSAP環境を最大限に活用する様々なトピックを取り上げます。

SAP顧客向けのサポート・サービス

Page 65: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

65SAP顧客向けのOracle SuperCluster M7

Oracle SuperCluster M7は、Oracle Databaseの画期的な効率とパフォーマンス、およびゼロ・オーバーヘッドのセキュアなマルチテナント機能とプライベート・クラウド管理ツールを組み合せ、データベースとアプリケーションのための完全でセキュアなクラウド・インフラストラクチャを作り出します。エラスティック構成により、小規模システムから開始し、その後、需要に応じて柔軟に、また容易に拡張できます。Oracle M7の高性能プロセッサ・アーキテクチャは、競合するx86のどのプロセッサと比較しても、コアあたりで優れたパフォーマンスをエンタープライズJAVAアプリケーションおよびOracle Databaseで実現します。Oracle VM Server for SPARCおよびOracle Solarisのゼロ・オーバーヘッド仮想化機能は、超高速InfiniBandファブリックと連携し、領域、電力、演算、メモリー、人材またはソフトウェア・リソースを無駄に消費せず、最大のパフォーマンスとスケーラビリティを提供します。

現在のSAPのランドスケープは、アプリケーション、データベース、オペレーティング・システム、クラスタ・ソフトウェア、サーバー、ネットワーキング、およびストレージが統合され、専門的な管理とビジネス・クリティカルな高可用性の保証が要求される、複雑なデータ・センターのランドスケープであると言えるでしょう。

Oracle SuperCluster M7は、オラクル独自のセキュアなプライベート・クラウド・インフラストラクチャを提供する、SAP顧客向けの唯一のアーキテクチャです。プライベート・クラウド・インフラストラクチャは、仮想化、OS、管理の他に統合された演算リソース、ストレージ・リソース、ネットワーク・リソースがデータベースおよびアプリケーション用に最適化され、SAPランドスケープにとって理想的なインフラストラクチャになります。

Oracle SuperCluster M7は、SAPのすべての層に最適なプラットフォームです。オラクルのSPARC M7プロセッサのパフォーマンス、業界最強のセキュリティ、高可用性のためのOracle Solaris Clusterとのエンドツーエンドの統合、およびOracle Solaris向けの最適化を含む、Oracle SuperCluster M7の工学的な最適化に対抗できるソリューションは、市場に存在しません。

オラクルは、迅速な導入やSAPアーキテクチャのライフサイクル全体の運用コスト削減を実現する革新的な手段を提供します。

SAPはこの手段を検証しサポートしています。数十年にわたる、オラクルとSAPのデータベースの共同開発は、Oracle Super-ClusterとOracle Database for SAPのより強固なエンジニアリングと統合に寄与しています。Oracle SuperCluster M7は、SAPのコンプライアンス・フレームワークの一部として、SAPセキュリティ・コンプライアンスの拡張を統合します。

完全なSAPランドスケープ統合の実装と導入に成功したOracle SuperClusterは、実装の簡素化および高速化、インフラストラクチャの統合、パフォーマンスの高速化を実現し、可用性の高いミッション・クリティカルなOracleクラウド・プラットフォームを提供します。Oracle SuperCluster顧客のSAP使用のユース・ケースは、このソリューションの幅広さを示しています。

SAP顧客向けのOracle SuperCluster M7の主なメリットOracle SuperCluster M7は、オラクルのセキュアなクラウド・インフラストラクチャとして設計されました。業界で最も高度なセキュリティ機能が装備され、最高のパフォーマンス、コストと複雑性の劇的な削減に向けて連携する、効率の強化、ツールおよび自動化を完備した製品です。Oracle SuperCluster M7では、セキュリティ、パフォーマンス、効率の分野でSPARC M7プロセッサ、Oracle Solaris、Oracle Solaris Cluster、Oracle Database、およびSAPを含む特殊なテクノロジが、統合および最適化されています。

SAPのランドスケープは、インフラストラクチャの層が幾重にも重なり複雑な構造ですが、総所有コストを削減し、SAPのアプリケーション、パフォーマンス、管理性および可用性を改善するための統合で、大きなメリットを得ることができます。従来のSAPのランドスケープは、本番、開発、および品質保証がそれぞれ分離され、徐々にそのインフラストラクチャが複雑になりました。

Oracle SuperClusterは、SAPのランドスケープにアーキテクチャの基礎の部分から簡素化し統合されたクラウド・インフラストラクチャを提供します。Oracle SuperClusterは、演算、ネットワーク、およびストレージのハードウェアを、仮想化、オペレーティング・システムおよび管理ソフトウェアと組み合せて、導入、管理および維持が容易でセキュアな高パフォーマンスのインフラストラクチャを作り上げます。

SAP顧客向けのOracle SuperCluster M7

Page 66: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

66

Oracle SuperCluster M7は、オラクルとSAPのスタック(図1)のすべての層全体のパフォーマンスと最適化を目的に設計されています。SAPとの共同開発は、オラクルの製品戦略およびパフォーマンスの最適化プロセスの一部です。

Oracle SuperCluster M7テクノロジの概要Oracle SuperClusterでは、Oracle Database 12c、Oracle Database 11gおよびOracle Real Application Clusters(Oracle

RAC)のような可用性の高い、スケーラブルなテクノロジが業界標準のハードウェアと結合されます。オラクルのSPARC M7サーバー、Oracle Exadata Storage Servers、およびOracle ZFS Storage ZS3アプライアンスを含む、統合および最適化されたハードウェアは、InfiniBand統合ネットワークを通して統合されます。すべてのコンポーネントは、事前構成、テスト、統合、チューニング、パフォーマンスが最適化され、ハードウェアのシングル・ポイント障害なしに設計されています(図2)。

Page 67: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

67

Oracle SuperCluster M7の機能:次のリストで、Oracle SuperCluster M7の最も突出した機能の一部を説明します。

• 比類のないパフォーマンス:Oracle SuperCluster M7の特徴は、世界最速の汎用演算向けプロセッサ、SPARC M7です。暗号化アクセラレーションおよびOracle Database 12cの問合せアクセラレーションの機能が強化され、プロセッサの設計に直接組み込まれています。SPARC M7 In-Line DecompressionをOracle Database In-Memory向けのSPARC M7 SQLアクセラレーションと組み合せると、リソース集約型のSAPアプリケーションのパフォーマンスが向上します。

• 高度なセキュリティ:Oracle SuperCluster M7の特色は、業界で最も高度なセキュリティです。多数のランタイム・セキュリティ・テクノロジ、記録およびテストされたシステム全体にわたるセキュリティ管理とベスト・プラクティス、一体型の自動化適合性検証ツールが組み込まれています。独自のテクノロジには、SPARC M7 Silicon Secured Memory、SPARC M7暗号化アクセラレーション、読取り専用の仮想マシン、エンドツーエンドの追跡記録が含まれます。

• スケーラビリティ:Oracle SuperCluster M7は、SAP環境に比類のないスケーラビリティも提供します。非常に効率的でセキュアなマルチテナント機能のために設計されたOracle SuperClusterは、スケールアップ仮想化とスケールアウトInfiniBandファブリックが統合され、テナント・データべースおよびアプリケーションのシステム・リソースのプロビジョニングで最大の柔軟性を提供できます。これは、他のテナントのワークロードから最大限に分離され、最適な機能で実行されます。そのため、計算リソース、メモリー・リソース、またはソフトウェア・リソースを浪費しません。

• セキュアなマルチテナント機能:セキュアなマルチテナント機能を使用すると、単一の物理的なOracle SuperClusterで、自身のサービスを運営および管理することが許可されている複数のコンカレント・エンティティ間の高レベルの分離が可能になります。アプリケーションには、多様なセキュリティ、信頼性、およびパフォーマンスの要件があります。ワークロードはOracle Solaris Zonesで分離され、リソース管理およびユーザー・アカウント管理は集中管理されます。Oracle SuperClusterは、ノード内の可用性を高めるために、CPU、メモリー、およびI/Oのグループ間のハードウェアの分離を集中管理します。

結論Oracle SuperCluster M7は、オラクル独自のセキュアなプライベート・クラウド・インフラストラクチャを提供する、SAP向けの唯一のアーキテクチャです。プライベート・クラウド・インフラストラクチャは、仮想化、OS、管理の他に統合された演算リソース、ストレージ・リソース、ネットワーク・リソースがデータベースおよびアプリケーション用に最適化され、SAPランドスケープにとって理想的なインフラストラクチャになります。

オラクルのSPARC M7プロセッサのパフォーマンス、業界最強のセキュリティ、高可用性のためのOracle Solaris Clusterとのエンドツーエンドの統合、およびOracle Solaris向けの最適化を含む、Oracle SuperCluster M7の工学的な最適化に対抗できるソリューションは、市場に存在しません。

オラクルは、幅広く総合的なテクノロジおよびサービスを提供します。このテクノロジとサービスは、可用性の高い、ミッション・クリティカルなオラクル・クラウド・プラットフォームをSAPに提供することができます。

詳細情報:http://www.oracle.com/us/solutions/sap/engineered-systems/supercluster/index.html

SAP顧客向けのOracle SuperCluster M7

Page 68: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

68

パフォーマンスの改善も他の重要なメリットもすぐに実現、しかも変更が不要Oracle Exadata Database Machineは、SAP Business Suite

(SAP ECC 6.0、SAP CRM 7.xなど)やSAP BW 7.xなど、顧客のすべてのワークロードで最高のパフォーマンスを実現します。また、Oracle Exadataの顧客は、Oracle DatabaseをSAPおよびSAP以外の複数のワークロードとともに単一のExadata Data-base Machineで実行できます。次のような特徴があります。簡単に短時間で実装できるExadata Database Machineは、最大規模で重要度の高いデータベース・アプリケーションをすぐに処理でき、10倍以上の速さで実行します。その鍵は、Sunの業界標準のハードウェア、およびOracleのインテリジェント・データベースとストレージ・ソフトウェアを使用するシステム・エンジニアリングです。

Oracle Exadata Database Machineは、2011年7月SAPに認定されました。そのため、SAP顧客はSAPアプリケーションをOra-cle Exadata Database Machineで稼働できます。Exadataは、Oracle Databaseのホスティングに使用する、簡単に配置できるソリューションです。デフォルト設定のままで使用できる優れたパフォーマンスにより、即座にSAPを実行してSAP NetWeaverアプリケーションを統合します。しかもベンダーはSAPとOracleの2社のみです。Oracle Exadataには、より強力なサポート、高速なオンラインの移行、DBaaS配置プラットフォーム、インフラを迅速に配置するEnterprise Database Cloud Solutionのメリットが提供され、統合によりコストも削減されます。

Exadata Database Machineを購入しデプロイするSAP顧客が、世界中で日に日に広がりを見せています。世界各国でOracle Exadata Database Machineを実装した各種業界の顧客の導入事例を次に紹介し、多様な環境で彼らが直面した課題とソリューションを明らかにします。

拡張が必要な「未来のデータ・センター」収益が約5億米ドルのインドの化学肥料メーカーには、次の課題がありました。APAC地域への計画的な展開を推進する、新しい未来志向のスケーラブルなソリューションの実装。成長に対応していない、レガシーなハードウェア。さらに、増大するストレージ要件。

この会社にとって、従来のシステムとエンジニアド・システムを比較することが必要でした。Exadata Database Machine上で稼働するSAP ECCおよびBWに焦点を絞ったPoCが、すべての疑問を解決しました。このメリットは計り知れません。担当者は次のように述べています。「Oracle Exadata Database Machineは、未来のデータ・センターを作り上げる私たちの中心です。成長を支えるパフォーマンス・プラットフォームにより、当社は計画を予定通りに遂行できます。」他のメリットとして、効率的なデータベース統合、ストレージ削減、大幅なパフォーマンス向上などがあります。

次の例は、Exadata Database Machineの導入によって業績を伸ばした日本の主要な消費者金融会社です。このケースでの経営者の目標は、データベースの統合とUnixからLinux for SAP ECCへの統合によるコスト削減です。HP UXシステムからOracle Exadataへのスムーズな移行プロセス(R/3ロード)が実行されました。新しいプラットフォームの使用により、この金融会社がSAPのさらなる活用と統合を継続でき、プロセスのパフォーマンスを増加させ、より複雑なデータのクエリーが可能になることは明らかです。

Exadataテクノロジからメリットを得るSAP顧客

Page 69: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

69

Oracle Exadata Databaseを導入するSAP顧客が世界中に広がっている理由日本のもう1つの顧客例は、日本の化学製品、プラスチック、電子材料、化粧品、ヘルス・フードの輸出入販売を業務とする会社です。導入の当初、SAP以外の環境で使用されていたOracle Exadata Database Machineは、現在SAP環境でも使用されています。「SAP以外の環境での結果が良かったため、SAP ECCとExadata Database Machine X3Half Rackを選択することにしました。」と担当者は述べています。主な目標は、すべてのデータベースの統合、およびコスト削減とWindowsプラットフォームの置換えによる投資収益からの利益です。要約すると、ECCシステムは、パフォーマンスの向上、停止時間の短縮、確実なビジネスでの成長に求められる様々な要求に直面していました。

リアルタイム・ビジネスを求める顧客また、北米では、アメリカのメディアおよびエンターテインメント会社の難しい課題をOracle Exadata Database Machineが完全に解決しました。第1に、顧客にはある種のリアルタイム・ビジネスが必要でした。第2に、I/Oの問題、または現在のインフラストラクチャの問題、および特に要求が厳しいSLAの問題があります。顧客は、将来の成長経路を持つ適切なITアーキテクチャ、チャージバックと迅速なプロビジョニングが使用可能なDBaaSを提供する、包括的なプライベート・クラウド製品を探していました。「最終決定をする前に、私たちはSAPのHANAをチェックしました。そこではっきりしたのは、Oracle Exadata Database Machineこそが、私たちの山積したすべての要求を実現してくれるということでした。」と担当者は述べています。

米国のヘルスケア関連の別の顧客は、同じソリューションを選択しました。この例では、SAP BWのテクノロジのリフレッシュが必要でした。ITスタッフは、国際的なロールアウトのために拡張できる非常に密度の高いデータベース統合プラットフォームを確実に所有したいと思っていました。この会社は、Oracle Exadataの実装を選択したことに非常に満足しています。アプリケーションのパフォーマンスが並はずれていただけではなく、Exadataは戦略的な企業の目標に適合し、統合と標準化に最適なプラットフォームを提供しました。

米国の次の例では、世界的な消費者向けの包装用品の会社がSAP BWのためにExadataを選択しました。x86およびMicrosoft WindowsでBWを実行することに、大きなパフォーマンス上の問題がありました。Fortune 500社の1社であるこの会社のITチームは、Oracle AWRレポートを評価し、Exadata for SAP BWを推奨しました。この会社の広報担当者は次のように述べていま

す。「これで、当社は成長を約束されたようなものです。SAPワークロードの統合、ビジネス・プロセスのパフォーマンスの改善、プラットフォーム全体のコスト削減、それがすべて実現できます。」

南北アメリカ大陸の他の地域でも、SAP顧客は、他の課題や要件を解決するためにOracle Exadata Database Machineを導入しています。たとえば、ブラジルのエネルギー関連の会社はExada-taを使用してパフォーマンスの向上を実現し、SAP環境を円滑に統合しています。以前のハードウェアで実行した同じアクティビティと比較して、クエリー時間が25倍改善し、ロード時間は10分の1に短縮されました。

市場投入までの時間の短縮ヨーロッパの大手の保険/金融サービス会社は、新製品を市場に投入するまでの時間を短縮したいと考えています。ITの観点から見れば、この会社は、複数のオペレーティング・システム(IBM AIX、Linux、MS Windows、Solaris)で稼働する数十のデータベースの複雑な構造を変える必要があります。この顧客はExa-data Database Machineにより、SAPシステムとSAP以外のシステムのデータベースを統合できるようになりました。作業が軽減され、ライセンスの数も減少しました。Oracle Exadataは、市場投入までの時間を短縮しITの複雑さを軽減することによって、この会社がより大きい成功を手にすることを支援します。

ヨーロッパのもう1つの例は、10,000人の従業員を雇用するB2Bの小売業者です。この業者には、ITコストを削減し、ビジネス上の問題を解決するという課題があります。この会社は、46のデータベースを2台のExadata Machineに統合することで、コストを最小限に抑えることに成功しました。ユーザーI/Oは、大きな待機イベントではなくなり、バッチ・ジョブは3分の1の時間で実行されるようになりました。もちろん、アプリケーションの変更は不要でした。広報担当者が言うように、この小売業者は

「チューニングなしで使用できる優れたパフォーマンス」を手に入れたのです。

SAP顧客の最後の例は、フランスの電力関連の大手企業です。主要なポイントは、ECCバッチ・ジョブの実行中にパフォーマンスの問題が発生することでした。この問題を解決するために、Oracle Exadataと他の2つの代替手段が評価され、Exadataを検証するPoCが顧客を納得させました。明らかに、このSAP顧客は、新しいOracleのITインフラストラクチャからメリットを得ています。「Exadata for SAPのおかげで、ITランドスケープが高度に統合・最適化され、私たちの将来の要求に対応できるようになりました。」と担当者は述べています。

Exadataテクノロジからメリットを得るSAP顧客

Page 70: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

70

クラスタ内のアプリケーション、プロセス、またはサーバーが機能しなくなった場合、ユーザーにまったく知られなかったとしても、中断をできる限り、短くする必要があります。たとえば、サーバー上でアプリケーションが機能しなくなった場合、クラスタ内の他のサーバーで、そのアプリケーションを再起動し、使用の中断を最小限に抑えることができます。同様に、クラスタ内のサーバーが機能しなくなった場合は、サーバーで動作しているすべてのアプリケーションとプロセスを別のサーバーにフェイル・オーバーして、ユーザーへのサービスを継続する必要があります。通常、顧客は、組込みの汎用のアプリケーション・リソース・タイプまたはカスタマイズ可能なスクリプトおよびアプリケーション・エージェント・プログラムを使用します。このスクリプトとプログラムには、アプリケーションとプロセスに割り当てられたリソース属性があります。Oracle Clusterwareではこれらのエンティティをすべて管理でき、確実な高可用性を実現します。

通常SAP顧客は、可用性の高いインフラストラクチャを稼働させ、SAPのエンド・ユーザーに無停止のサービスを提供することを強く望んでいますが、1つまたは多数の組織で異なるベンダーのコンポーネントが混在して運用されている現状では、これらの製品のインフラストラクチャやエコシステムを制御するのは、難しいタスクです。多くSAP顧客は、ExadataやSuperClusterのようなOracle Engineered Systemに移行して複雑性を軽減し、効率を向上させていますが、一方では現状の環境をできるだけ変更せずに、可能な範囲の高可用性で甘んじている顧客もいます。SAP環境では、とりわけSAP Enqueue Serviceを含め、高可用性は誰でも経験する課題です。SAP Enqueue Serviceは自身のサービスに障害が発生すると、SAPシステム全体を再起動します。

SAP Enqueue Serviceは、SAPアプリケーション・サーバー・インスタンスの分散ロックの管理を提供します。SAPの2つ以上のインスタンスをSAPシステムで使用する場合、SAP Enqueue Serviceを使用可能にする必要があります。SAPアプリケーションの高可用性をサポートするために、Enqueue ServiceとMessage Serviceを組み合せて、SAP WebAS ABAPの「Standalone En-queue Service」(ASCS)を構築します。SAP WebAS JAVAの場合、Enqueue ServiceとMessage Serviceを組み合せると、「Cen-

tral Services Instance」(SCS)が形成されます。このSCSインスタンスは、必ずSAPのJAVAスタックに必要です。SAPでは、アクティブ/パッシブ方式を使用して、それぞれのEnqueue Serviceの高可用性を実現しています。アプリケーション・タイプがABAPのEnqueue Serviceは1つのみで、もう1つはSAPシステム内で実行されるJAVA専用です。SAPシステムは、異なるノード上の複数のアプリケーション・インスタンスで構成されます。障害が発生した場合または計画停止の場合は、ABAPまたはJAVAのアクティブなEnqueue Serviceが実行されるノードで、1つ以上のSAP Replication Serviceが実行されます。「サービス」という用語は、EnqueueまたはReplicationを提供するSAPプロセスを指し、これらのサービスをホスティングするノードは、「Enqueue Server」と「Replication Server」と呼ばれます。

Oracle Databaseで稼働するSAPの顧客は、優先するベンダーおよびOSプラットフォームによっては、任意のSAPに認定されたフェイルオーバー・ソフトウェアを選択できます。Oracle Cluster-wareを使用するとさらに良いのは、ソフトウェア・ベンダーの数、複雑性、管理作業およびソフトウェア・ライセンスの費用を削減できることです。Oracle Clusterwareはポータブル・クラスタ・ソフトウェアで、複数の個別サーバーをクラスタ化して、あたかも1つの単一のシステムのように機能させることができます。Oracle Clusterwareは、Oracle Real Application Clusters(RAC)に必要なインフラストラクチャも提供します。さらに、Oracle Cluster-wareは、任意のOracleアプリケーションまたはSAPなど、その他のアプリケーションの保護をクラスタ内で有効にします。

Oracle Clusterwareは、Oracleリソースに対して高可用性を提供するだけでなく、SAPリソースに対しても高可用性を提供します。オラクルでは、SAPの高可用性リソースを簡単に管理できる、Oracle Clusterwareツール(SAP Control(SAPCTL))を開発しました。SAPCTLでは、Oracle ClusterwareとSAPの高可用性コンポーネントのリソース、スクリプト、依存性の管理に使用する容易なインタフェースを提供します。SAPCTLにより、SAP Enqueue Service、SAP Replication Service、ABAPおよびJavaのSAP Enqueue Serviceで使用する追加の仮想IPアドレスを簡単に管理することができ、Oracleのコマンドライン・ツールの機能も統合できます。

SAPCTL使用によるSAPリソースの高可用性

Page 71: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

71

SAPCTLバージョン8では、SAPのクリティカルな高可用性コンポーネント、SAP EnqueueやSAP Replication Serviceの他に、SAPアプリケーションの不定数のインスタンスを保護するインタフェースが用意されています。SAP Central Instance(CI)またはSAPアプリケーション・インスタンス(DV)は、SAPCTL管理下で実行する候補になります。SAPCTLツールは、SAP Standalone Gateway(GW)およびSAP WebDispatcher(W)をSAPインスタンスとしてもサポートします。

さらにSAPCTLは、常に同一場所にあるCRSリソースを使用して、サポートされるSAPインスタンスのすべてのタイプに対し、関連するSAP Start Service(sapstartsrvdaemonプロセス)を監視します。SAPインスタンスをクラスタ・ノードで起動する場合またはクラスタの別のノードに再配置する場合、SAP Start Serviceプロセスは、SAPCTLにより自動的に開始されます。このタスクは、Oracle Clusterwareの起動後にSAPCTLにより実行されるため、システム起動時にsapinitプロシージャを使用して、すべてのSAP Start Processを起動する必要はありません。

SAPCTLツールは、SAP Standalone Gateway(GW)およびSAP WebDispatcher(W)をSAPインスタンスとしてもサポートします。

実装ガイドおよびSAPCTLに必要なソフトウェアは、SAP Note「1496927 – Protection of SAP instances through Oracle Clusterware」を参照してください。

Oracle Exadata、Oracle SuperClusterおよびOracle Database Applianceは、SAP Central Services(SCSおよびASCSインスタンス、ERインスタンス)の実行に認定され、エンジニアド・システムで実行されるSAPCTLで、これらのサービスがサポートされています。バージョン7.00以降のSAPカーネルは、LINUX、SolarisおよびAIXオペレーティング・システムで、SAPCTLによりサポートされます。SAPCTLは、SAPの統合シナリオNW-HA-CLU 7.40でSAP NetWeaverとの統合が認定されています。

Oracle ClusterwareおよびRACに加え、SAPCTLを実装すると、IBM PowerHAやHP Service Guardなど、サード・パーティの高可用性ソフトウェアが不要になります。しかもSAPCTLは無償で提供されるため、管理作業を大幅に削減できるだけでなく、さらに費用の節約にもなります。Oracle Real Application Clusters

(RAC)が、Oracle Databaseインスタンスをシングル・ポイント障害(SPOF)として削除すると同時に、Oracle SAPCTLは、もう1つのSPOF(Enqueue Service)を削除します。これはSAPアプリケーション・レベルで実行されます。SAPのインフラストラクチャに対する基本は、はるかに高いレベルの可用性や限定的なSLAへのより良いレスポンスを提供することです。Oracleテクノロジはフィジカル・スタンバイ・データベースも提供します。このようなソリューションは、ストレージのミラー化にとって代わり、インフラストラクチャのコストを削減します。

SAPCTL使用によるSAPリソースの高可用性

Page 72: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

72

企業は、魅力的なコストで最高のパフォーマンスを実現するために、ITインフラを最適化する必要があります。生産性とパフォーマンスを改善しながら、ITインフラのコストと複雑性を軽減するエンジニアド・システムを設計するために、オラクルはスタックの各層を刷新します。

オラクルのエンジニアド・システムは、すでにテクノロジ・スタック全体が統合され、統合作業を必要としません。ITの複雑性の軽減で生み出された時間と費用は、技術革新とチャンスに費やすことができます。

Oracle Exadata Database Machine、Exalogic Elastic Cloud、Oracle Database Appliance、Private Cloud ApplianceおよびOracle SuperClusterは、業界で類まれなエンタープライズ・パフォーマンス・レベルを実現するために設計されています。

オラクルのエンジニアド・システムは、最善のハードウェアおよびソフトウェアのコンポーネントと、運用を簡素化し、総所有コスト

(TCO)を削減する革新的な技術革新を結合します。Oracle En-gineered Systems for SAPの卓越したパフォーマンスは、SAPアプリケーションのために最適化されます。

競合他社は「ultra」や「highly」、「xy」コンバ-ジド・システムで止まっていますが、オラクルはそこでも止まりません。すべての層を設計し、すべての層を1つのソリューション(独自のIPおよび業界の標準に基づいて設計、テスト、構築および納入される)に統合することで他社を一歩も二歩もリードします。

オラクルは、データベース、ビジネス・ソフトウェア、オペレーティング・システム、サーバー、ストレージなど、世界で最も完全でオープンな、統合されたテクノロジ・スタックから開始します。

Oracle Engineered Systems• それぞれのITインフラの層が先進的なテクノロジを提供する

一方で、オラクルはさらに一歩進んで、エンジニアド・システムを設計しました。このシステムは、生産性とパフォーマンスを改善しながら、ITインフラのコストと複雑さを軽減するために事前統合されます。

• データ・センター業務の簡素化、コスト削減、ビジネス革新のために、スタックのあらゆる層で刷新と最適化を実現できるのは、オラクルだけです。

• 各システムがオラクルのアプリケーションからディスクまでのスタック(サーバーとストレージ、オペレーティング・システム、データベース・ソフトウェア、ミドルウェア、ネットワーキング、および組込みの仮想化機能)を統合し、購入、プロビジョニング、SAPインフラストラクチャの配置に関連する時間とコストを削減します。

• オラクルとSAPは合同でSAP向けのオラクルのエンジニアド・システムのテストと認定を行い、エンジニアド・システムをファミリとして提供しています。エンジニアド・システムは、データ・センターの業務を簡素化し、SAP環境の迅速で簡単な配置を通して、ビジネス革新を加速するために、事前に統合、テスト、構成されています。

• Oracle DatabaseとSAPアプリケーションに最適化されたオラクルのSAP向けのエンジニアド・システムは、SAPランドスケープを稼働させるために必要な時間を短縮します。

データセンターのOracle Engineered Systems• 配置後、オラクルのエンジニアド・システムでSAPランドス

ケープを統合すると、データ・センター管理の複雑さが軽減されます。

技術革新、効率および簡素性:オラクルのSAP向けエンジニアド・システム:

テクノロジ・スタックの各層での卓越したパフォーマンス • 卓越したパフォーマンスとは、以前よりも速く、首尾よ

く、より効率的に仕事を終わらせることを意味します。これは、オラクルのエンジニアド・システムの顕著な特徴であり、ITを簡素化するというオラクルの原動力の究極の具現化です。

Page 73: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

73Oracle Engineered Systems for SAP

• 管理者はSAPのBR*ToolsとOracle Enterprise Manager Ops Centerを使用して、SAPランドスケープとSAPインフラストラクチャを管理できます。組込みの自動化機能が管理タスクを簡素化し、日常管理の必要性を削減します。

Oracle Exadata Database Machine、Oracle Database Ap-pliance、Exalogic Elastic Cloud、Oracle SuperClusterおよびPrivate Cloud Applianceは、業界で類まれなエンタープライズ・パフォーマンス・レベルを実現するために設計されています。

デ ータ・ウェアハウス、オンライン・トラン ザクション 処 理(OLTP)、および負荷が混在するデータベース・アプリケーションで最高のパフォーマンスを実現するために設計されたOracle Exadata Database Machineは、SAPのパフォーマンスと管理性を改善するようにカスタマイズされています。

「コンテナ型データ・センター」であるExadata Database Ma-chineは、簡単に配置できるシステムで、Oracle Databaseの実行に必要なすべてのハードウェアを含んでいます。そこから、Oracle Real Application Clusters(RAC)、Oracle Grid Infra-structure、ストレージ管理ツール、および管理ソフトウェアを追加し、最高のパフォーマンス、ミッション・クリティカルな可用性、および信頼性のためにシステム全体を最適化します。

SAP環境でのExadataの使用Oracle Exadata Database Machineは、複数レベルのSAP環境に対する理想的な選択肢です。

• オンライン・トランザクション処理(SAP ERP)、ビジネス・ウェアハウス(SAP BW)および複雑なワークロード統合のために優れたI/OおよびSQL処理パフォーマンスを実現します。

• RACとExadataを使用する大規模なパラレル・グリッド・アーキテクチャが、リニアなI/Oスケーラビリティを持つ最高のパフォーマンスを実現し、データベースとストレージ間のデータの帯域幅を大幅に拡張します。集中型の問合せ処理およびデータ・マイニング・スコアリングはストレージ・サーバーにオフロードされ、処理をSAPデータに近づけて、問合せのパフォーマンスと同時実効性を改善します。

• すべてのサーバー、ストレージ、およびネットワーク・コンポネ

ントは、あらかじめラックに固定されています。完全なパッケージが事前統合され、テスト済みであるため、配置スケジュールは数週間または数か月短縮されます。このため、単一ベンダーがバンドルしたパッチ・セットによるパッチ適用など、タスクを簡素化して、デフォルトで使用可能な高可用性と障害時リカバリを提供します。

• SAP顧客は、SAPアプリケーションを変更なしで実行するExa-dataにデータベースを簡単に移行できます。ソース・プラットフォームによっては、移行はオペレーション・システム・プラットフォームのアップグレードのようにスムーズです。

プライベート・クラウドのために設計されたOracle Exalogic Elastic Cloudは、実質的に無制限のスケーラビリティ、卓越したパフォーマンス、今まで想像もできなかった管理の簡素化をSAPアプリケーションに提供します。

ミドルウェア・アプリケーションおよびパッケージ・アプリケーションの演算集中型のワークロード用に設計/調整され、組込み/構成済みの各システムには、完全に統合されたホットスワップ可能なx86演算ノード、高性能のOracle ZFS Storage Appliance、広帯域幅の通信ファブリックとスイッチが含まれています。

Oracle Engineered Systems for SAP

Page 74: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

74

SAP向けのOracle Exalogic Elastic CloudExalogicは、アプリケーションの管理を簡素化し、運用上の効率を改善するために設計されています。

• 設計、統合、テスト、出荷、インストール、構成および操作をすべて包括する、モジュール型のビルディング・ブロックでの提供で、ExalogicはSAP環境の複雑さを大幅に低減します。SAP顧客は、SAPランドスケープに対しインフラストクチャを迅速、効率的かつ簡単にデプロイできます。

• すべてのExalogic構成は、すべてのレベルで完全冗長であり、シングル・ポイント障害なしに設計されています。SAPおよびOracle固有の高可用性技術とともに、SAPインフラストラクチャのデプロイに対するきわめて高い信頼性が提供されます。

• Exalogicのコンポーネントは高度に標準化され、工場で統合、テストおよび認証されているため、すべてのストレージ、サーバー、OSおよびシステム管理サービスのニーズが、一カ所の拠点でサポートされます。このため、設定と配置、エラーのリスクの大幅な低減、運用の標準化が簡素化されます。

Oracle Linux 6のプラットフォームで使用可能なSAP NetWeaver 7.xをベースとするすべてのSAP製品は、Exalogicの仮想構成で使用できるようになりました。

Oracle SuperCluster次世代のSPARC T5/M7サーバー、Oracle Solaris 10とSolaris 11、Oracle Database 11gと12c、およびExadataストレージのようなオラクルの技術革新は、エンタープライズSAPアプリケーションの統合のために最適化され、調整されたスケーラブルなエンジニアド・システムに一体化されています。

Oracle SuperClusterをベースとするオラクルのOptimized Solution for SAPは、最高レベルのパフォーマンスとミッション・クリティカルな信頼性を持つ、幅広い補完的なエンタープライズ・アプリケーションと連携して、SAPアプリケーションを実行するために設計されています。ユーザーは、Oracle SuperCluster M7システムでSAPアプリケーション・インスタンス、セントラル・サービス、およびデータベース・ソフトウェアを統合することにより、SAPランドスケープを大幅に簡素化できます。

Oracle SuperClusterでSAPランドスケープを実行Oracle SuperClusterは、SAPによりサポートされています。オラクルのパラレル・データベース、SAPセントラル・インスタンス、アプリケーションまたはWebサーバー、Oracle Enterprise Man-ager管理ソフトウェア、すべてのSAPアプリケーションを実行で

きます。このソリューションは特に、インストールされたSAPと他のエンタープライス・アプリケーションの同時使用やデータ・センターの統合、仮想化による複数層アプリケーションのための多目的システムが必要なSAP顧客に適しています。

• Oracle Optimized Solution for SAPを使用したOracle Op-timized Solutionが提供する効率的な方法により、企業は、インフラストラクチャの最新化、SAPランドスケープの統合、削減されたデータセンター・フットプリントでより多くのワークロードを管理でき、リスクの軽減、所有コストの低減とともに、パフォーマンスと生産性の大幅な改善を実現できます。

• Oracle Optimized Solution for SAPは、ミッション・クリティカルな企業のSAPアプリケーション環境の要求に対応した設計、テスト、調整された完全なアーキテクチャを提供します。

• 顧客は、開発、テスト、および本番を含むランドスケープを、可用性とスケーラビリティが高いプラットフォームに統合し、SAPアプリケーションのパフォーマンスと可用性を改善できます。

• 組込みの仮想化テクノロジは、SAPワークロードを分離し、単一のプラットフォームにSAPをセキュアに統合するために必要なきめ細かいリソース管理を提供します。演算リソース、メモリー・リソースおよびI/Oリソースを管理し、アプリケーションが適切な量のリソースにアクセスし、ワークロードがプラットフォーム全体を占有しないことを保証できます。組込みの管理が業務を合理化し、異なるスキルの必要性を排除します。

Private Cloud Applianceは、Oracle LinuxまたはOracle So-larisアプリケーション向けの集中型インフラストラクチャをインストールする方法を大幅に簡素化するエンジニアド・システムです。

それは、可用性の高い、完全に冗長な集中型インフラ・システムであり、ネットワーク、演算、管理、およびストレージの各要素を組み合せています。システムのすべてのハードウェアおよびすべての必要なソフトウェアは、均一料金で提供され、バーチャルCPU単位でのOracleソフトウェアの使用を許可する柔軟性を提供するOracle Trusted Partitionsをサポートします。また、既存または新規のOracleストレージやサードパーティ製のストレージにも接続できます。ソフトウェアで定義されたネットワーク・インフラストラクチャをOracle Fabric InterconnectおよびOracle SDNとともに提供します。オラクルのハードウェアとソフトウェアを含む、スタック全体に対するサポートの一元管理された窓口は、顧客にとって大きなメリットです。

Page 75: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

75Oracle Engineered Systems for SAP

SAPに認定されたPrivate Cloud ApplianceOracle Linux 5および6で使用可能なSAP NetWeaver 7.xをベースとするすべてのSAP製品は、仮想化のために設計されたオラクルのエンジニアド・システム、Private Cloud Applianceで使用できるようになりました。

3層および2層のインストール(Oracle DatabaseおよびSAPアプリケーション)は、Oracle Private Cloud Applianceで稼働するようにサポートされています。

Private Cloud Applianceは、次の条件が満たされている場合、SAP環境で使用できます。

• Private Cloud Appliance Release 1.1.3以上

• Oracle VMをベースにしたPrivate Cloud Appliance。SAP Note: 1808268の関連するOracle VM情報を参照してください。

• VMの次のオペレーティング・システムは、SAP環境での使用がサポートされています。

• UEKが搭載されたOracle Linux Release 5.x• UEKが搭載されたOracle Linux Release 6.x• Oracle Solaris

Oracle Database Applianceは、完全なターンキー、高可用性のクラスタ・データベース・システムです。SAPの認定を取得しています。Oracle Database 11g Release 2で認定されたSAP NetWeaver 7.xをベースとするすべてのSAP製品は、Oracle Da-tabase Applianceと併用できます。

Oracle Database Applianceは、Oracle Database Enterprise Editionの実行に特化した4Uラック・マウント型システムです。冗長化されたホットスワップ可能なコンポーネント、3重にミラーリングされた共有ディスクおよびフラッシュ・ストレージで、高可用性およびデータベース・パフォーマンスの加速の要件に対応します。このアプライアンスには、Oracle LinuxおよびOracleアプライアンス・マネージャ・ソフトウェアがともにプリインストールされ、デプロイ、メンテナンス、高可用性データベース・ソリューションのサポートが簡素化されます。貴重な時間と費用を節約できます。

SAP環境でのOracle Database Applianceの使用Oracle Database Applianceは、SAP環境に次の機能を提供します。

• SAPアプリケーション用の高可用性のアクティブ-アクティブなクラスタ・データベース・サーバー

• SAP必須共有ファイル・システム用の高可用性ファイル・サーバー

• ABAPスタックおよびJAVAスタック用のCentral Servicesなど、SAP高可用性リソース用の完全なクラスタ化ソリューション

Page 76: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

76

S/4HANAへの移行のコストについて

S/4HANAはまったく新しい製品でしょうか?

IG SAP CHは、既存のSAP顧客を対象としたS/4HANAへの移行は、単なるバージョン変更として無償にするべきだとして、その説明を求めています。

IG SAP CHは、ドイツのソフトウェア大手を厳しく批評する存在として知られる、SAPユーザーの権利擁護団体です。約80社が参加するこの団体は、ソフトウェアのメンテナンス価格を通貨動向に応じて調整するように、SAPに強く要求しましたが、スイスのSAPで2年間実権を握っていたBernd Brandl氏は、この訴えに耳を傾けようとはしませんでした。IG SAP CHは、最近発行したニュースレターで「これからも継続して、あらゆる手段を尽くし、SAPを揺さぶり続けていく。」と述べています。またニュースレターでは、SAPシステムのメンテナンス費用のユーロの為替レートが1.17スイスフラン~1.60スイスフランに固定され、そのためにスイスのSAPユーザーは、他の国の顧客より50%も多く支払わされている現状を曝露しています。

SAPは、S/4HANAを「まったく新しい製品」と明確に位置付け、そのため対価を支払うのは当然であるとしています。ホワイト・ペーパー『Simplification List for SAP S/4HANA』の概要に記載された、「S/4HANA(...)は、いずれのSAP Business Suite製品の後継製品でもない」の1文は、まさにSAPのいつわらざる表明と言えるでしょう。

IG SAP CHは、既存の顧客にS/4HANAのライセンス料として二重に支払わせるべきではないと要求しています。ニュースレターでは最後に、「S/4HANAへの移行は、通常のメンテナンスの一 部としてバージョン変 更の単なるアップグレードでなければならない。我々は断固反対する」と結ばれています。http://www.inside-it.ch/articles/42944

IG SAP CHは、同じニュースレターでまったく別の、しかも非常に重要な疑問を投げかけています。最 新 バ ージョンの S A P の ビジネス・ソフトウェアの位置付けは、どちらなのでしょう。まったく新しい製品 - したがって既存の顧客は新規ソフトウェアとして購入しなければならない。それともS/4HANAは既存ソフトウェアの単なる新規バージョン - したがって現行のメンテナンス料で支払い済み。SAPが、S/4HANAを選択する顧客に対して手 頃な価 格で提 供していることは周 知の事実です。IG SAP CHは、SAPがサブスクリプション値 引き価 格を利 用して、S / 4 H A N Aライセンスの「早 期 購 入」を促していると述べ

ています。しかし、このような概念の移行に関わる範囲と費用を正確な数値で提示するのは不可能に近いと、IG SAP CHは主張しています。

S/4HANAへの移行のコストについて

Page 77: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

77

S/4HANAへの移行のコストについて

S/4HANAはまったく新しい製品でしょうか?

IG SAP CHは、既存のSAP顧客を対象としたS/4HANAへの移行は、単なるバージョン変更として無償にするべきだとして、その説明を求めています。

IG SAP CHは、ドイツのソフトウェア大手を厳しく批評する存在として知られる、SAPユーザーの権利擁護団体です。約80社が参加するこの団体は、ソフトウェアのメンテナンス価格を通貨動向に応じて調整するように、SAPに強く要求しましたが、スイスのSAPで2年間実権を握っていたBernd Brandl氏は、この訴えに耳を傾けようとはしませんでした。IG SAP CHは、最近発行したニュースレターで「これからも継続して、あらゆる手段を尽くし、SAPを揺さぶり続けていく。」と述べています。またニュースレターでは、SAPシステムのメンテナンス費用のユーロの為替レートが1.17スイスフラン~1.60スイスフランに固定され、そのためにスイスのSAPユーザーは、他の国の顧客より50%も多く支払わされている現状を曝露しています。

SAPは、S/4HANAを「まったく新しい製品」と明確に位置付け、そのため対価を支払うのは当然であるとしています。ホワイト・ペーパー『Simplification List for SAP S/4HANA』の概要に記載された、「S/4HANA(...)は、いずれのSAP Business Suite製品の後継製品でもない」の1文は、まさにSAPのいつわらざる表明と言えるでしょう。

IG SAP CHは、既存の顧客にS/4HANAのライセンス料として二重に支払わせるべきではないと要求しています。ニュースレターでは最後に、「S/4HANAへの移行は、通常のメンテナンスの一 部としてバージョン変 更の単なるアップグレードでなければならない。我々は断固反対する」と結ばれています。http://www.inside-it.ch/articles/42944

IG SAP CHは、同じニュースレターでまったく別の、しかも非常に重要な疑問を投げかけています。最 新 バ ージョンの S A P の ビジネス・ソフトウェアの位置付けは、どちらなのでしょう。まったく新しい製品 - したがって既存の顧客は新規ソフトウェアとして購入しなければならない。それともS/4HANAは既存ソフトウェアの単なる新規バージョン - したがって現行のメンテナンス料で支払い済み。SAPが、S/4HANAを選択する顧客に対して手 頃な価 格で提 供していることは周 知の事実です。IG SAP CHは、SAPがサブスクリプション値 引き価 格を利 用して、S / 4 H A N Aライセンスの「早 期 購 入」を促していると述べ

ています。しかし、このような概念の移行に関わる範囲と費用を正確な数値で提示するのは不可能に近いと、IG SAP CHは主張しています。

Oracle DB related Notes for SAP

1289494

2138262

1431296

1436352

For Oracle Solaris and latest DB Notes please see: service.sap.com

  ノート番号             ノートタイトル              DBバージョン

DB : General : Licensing Information

DB : General : Oracle Support for HANA-Related SAP Application

DB : General : File System Support

DB : General : Tool Support

DB : Features : Data Storage & Compression

581312

740897

1028068

1174136

2098258

Oracle Database Licensing Restrictions

Oracle License Scope & Required Oracle Options

Required Oracle Options for DBA Cockpit

Oracle: End of Support Dates

Oracle 11.2 Extended Support Free of Charge until May 31, 2017

Support for Oracle Functions in the SAP Environment

Central Technical Note for Oracle Database 12c Release 1 (12.1)

Oracle Database 12c: Integration in SAP Environment

Oracle Database 11g Integration in SAP Environment

BR*Tools support for Oracle 11g

Oracle 11.2 Central Technical Note

Oracle Database 11.2 for older SAP versions

Activate Database Performance Optimizations for SAP ERP

Minimal DB Platform Requirements for SAP NetWeaver 7.4 SP08

Oracle Direct NFS

Automatic Storage Management (ASM)

BR*Tools Configuration for Oracle Installation under „oracle“ User

BR*Tools Support for Oracle ASM and Exadata

SAPinst for Oracle ASM Installation

Oracle ASM and SAP NetWeaver Master Data Management (MDM)

Oracle Enterprise Manager Database Control

Oracle Enterprise Manager (OEM) in the SAP Environment

Use of Index Key Compression for Oracle Databases

Support for Index Compression in BRSPACE 7.20

SecureFiles – The New Way to Store LOB Data

Deferred Segment Creation

Dataload Without Dropping Bitmap Indexes

Performance Improvements for Tables with Single Unique Index

FAQ Oracle Compression

Oracle Database 12c Advanced Compression for SAP Systems

LOB Conversion and Table Compression with BRSPACE 7.20

Advanced Compression for SAP Systems

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

Oracle DB 11g

All DB Versions

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

All DB Versions

Oracle DB 12c

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

DB : General : Version Support

DB : General : Feature Support

105047

1914631

2133079

1398634

1430669

1431800

1434131

1835008

1951491

1416773

1550133

1598594

1627541

1738053

1825328

355770

386413

1109743

1464156

1426979

1583303

1842044

1856270

DB : Options : Advanced Compression

Page 78: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

78

  ノート番号             ノートタイトル              DBバージョン

DB Option: Advanced Security

742243

1859841

1333328

General Table Partitioning

Deinstallation of Oracle Partitioning Option (SAP BW)

Partitioning Engine for Oracle

Oracle RAC Support in the SAP Environment

RAC with TAF

Protecting SAP instances through Oracle Clusterware (SAPCTL)

Using Shared or Local Oracle Homes with RAC

Database Upgrade to Release 11.2.0.4 on Unix with RAC or ASM

The Real Application Testing Option

OPS$ Connect and Security Aspects

Secure Connection of AS ABAP to Oracle via SSFS

Connect to Oracle Database

Using Personalized Database Administrator Accounts

Database Administrators Segregation

Support for Secure Storage in BR*Tools

Overview: Oracle Security SAP Notes

Advanced Security – Network Encryption

Advanced Security – Transparent Data Encryption

Advanced Security – Backup Encryption

Using Oracle Database Vault in an SAP Environment

Installing Oracle Database Vault in an SAP Environment

Database Vault for SAP Policy Scripts

SAP System Copies with Database Vault

Troubleshooting Software Installation for 12.1.0.2

Database Software 12.1.0.2 Installation on Unix

Database Software 12.1.0.2 Installation on Windows

Database Upgrade Scripts for 12.1.0.2

Migrating to Software Owner ‚oracle‘

Database Upgrade to 12.1.0.2 with Grid Infrastructure

Upgrade Scripts

Instant Client

Database Upgrade to Release 11.2.0.4 on Unix (Quick Reference)

Troubleshooting the Software Installation

Troubleshooting the Database Upgrade

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

Oracle DB 11g

All DB Versions

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 11g

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

All DB Versions

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

DB Option: Real Application Clusters (RAC)

DB Option: Real Application Testing (RAT)

527843

1431241

1496927

1977463

2059515

1426980

157499

1622837

1623922

1710997

1755636

1764043

1868094

1355140

1597194

1502374

1716939

DB Option: Database Vault

DB Features: Security

973450

974876

1324684

Deployment: Software: Installation & Upgrade 1915299

1915301

1915302

1915315

1915317

2064206

1431793

1431794

1949451

1431796

1431797

DB Option: Partitioning

Page 79: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

79

  ノート番号             ノートタイトル              DBバージョン

Deployment : Instance Configuration

MOPatch – Install Multiple Oracle Patches in One Run

SAP Bundle Patches – Structure Changes Starting June 2014

Current Patch Set for Oracle Database 12c Release 1 (12.1)

Database: Patches for 12.1.0.2

Grid Infrastructure: Patches for 12.1.0.2

Patching of Oracle Homes with Minimal Downtime

Oracle 11.2.0: Current Patch Set

Database Patches/Patch Collections (11.2.0.4)

Grid Infrastructure Patches/Patch Collections (11.2.0.4)

Database Parameters 12.1.0.2

Quick Reference for ADRCI and ADR

Database Parameter Settings 11.2.0.x

SAP Workload Management via Oracle Resource Manager

All DB Versions

All DB Versions

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 12c

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Deployment: Software: Patches

1027012

2011199

1915313

1915316

2145572

1696869

1431799

1949250

1968502

1428529

1838850

1844380

2086966

1882182

Deployment : Software : BR*Tools

1888485

1431751

1431798

646681

937492

966117

Corrections in BR*Tools Version 7.20

Corrections in BR*Tools Version 7.40

Minor Functional Enhancements in BR*Tools (5)

Minor Functional Enhancements in BR*Tools (6)

Functional Enhancements in BRARCHIVE 7.40

Oracle Lifecycle Migration Service (formerly O2O/Triple-O)

Deployment : Data

Reorganizing Tables with BRSPACE

Oracle Flashback FAQ

Oracle Flashback Database Technology

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

Database: Services

1508271 All DB Versions

Oracle DB 12c

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

Oracle DB 11g

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

All DB Versions

For Oracle Solaris and latest DB Notes please see: service.sap.com

Oracle DB related Notes for SAP

Page 80: Oracle for SAP TECHNOLOGY UPDATE No.25

本冊子は、2016年Oracle Corporation, Oracle for SAP Global Technology Center発行「Oracle for SAP Technology Update No.25」を一部翻訳、再構成したものです。

本カタログの情報は、2016年9月現在のものです。実際の製品とは内容が異なる場合があります。*OracleとJavaは、Oracle Corporationおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標である場合があります。 Copyright © 2016, Oracle. All rights reserved.

代理店名

お問い合わせ窓口0120-155-096oracle.com/jp/contact-usURL

TE L

〒107-0061 東京都港区北青山2-5-8オラクル青山センターoracle.com/jp

日本オラクル株式会社