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Oracle ホワイト・ペーパー 2011 8 Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術...Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術 2 完全に構成・設定されたソフトウェア・スタックを、あらかじめインストールして設定済み

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Oracle ホワイト・ペーパー 2011 年 8 月

Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

はじめに .............................................................................................. 1

Oracle VM 3 の概念と構成要素の概要 ................................................ 3

主なデプロイ概念 ........................................................................... 4

Oracle VM Manager ............................................................................ 5

ネットワークとストレージの集中管理と設定 ................................ 5

動的リソース管理 ........................................................................... 7

Oracle VM Server for x86 .................................................................... 8

ハイパーバイザーと管理ドメイン .................................................. 8

クラスタ・ファイル・システム – OCFS2 ..................................... 9

Oracle VM Agent ............................................................................. 9

仮想マシンの種類 ......................................................................... 10

Oracle VM Templates と仮想アプリケーション・アセンブリ ......... 11

結論 ................................................................................................... 13

付録 1: 参考資料 ............................................................................... 14

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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はじめに

Oracle VM はエンタープライズ向けのサーバー仮想化ソリューションとして Oracle VM Server for x86および Oracle VM Manager によって構成されています。Oracle VM 3 はアプリケーション

主導の仮想化に対する Oracle の戦略的なコミットメントを反映しています。この仮想化によって、

エンタープライズ規模のソフトウェアおよびハードウェアのスタック全体をデプロイ、管理、サ

ポートするのが容易になり、その結果 IT もビジネスも俊敏に変化に対応できるようになります。

Oracle VM は優れた拡張性、管理のしやすさ、使いやすさを目指して基礎から設計されたもの

です。Oracle VM 3 のもたらす大幅な機能強化によって、Oracle ソフトウェアの環境だけでなく、

データ・センター全体にオペレーティング・システム、エンタープライズ・アプリケーション、

およびミドルウェアを導入する作業時間が短縮され容易になります。さらに、データ・セン

ターやクラウド環境の可用性とセキュリティを高水準で維持し、コストを削減します。

Oracle VM Server for x86は今日の市場で最も拡張性の高い x86 サーバー仮想化ソリューションで

あり、160 個の物理 CPU と 2TB のメモリをサポートして、ミッション・クリティカルな基幹

業務の負荷を処理できることがテストで確認されています。仮想マシンに対して、Oracle VM 3は最大 128 の仮想 CPU とゲスト VM ごとに最大 1TB のメモリをサポートできます。Oracle VMは業界標準の x86 オペレーティング・システムと Oracle その他の主要ベンダーのサーバーを

サポートするほか、広範にわたるネットワーク・デバイスやストレージ・デバイスをサポート

するので、既存の環境に容易に統合できます。

Oracle VM Managerは、Java クライアントを必要としないブラウザ・ベースのインタフェー

スからサーバー、ネットワーク、ストレージ・インフラなどを設定・操作するための使いやす

い集中管理環境を提供し、どこからでもアクセスできます。ユーザーは視覚化マネージャを利

用して管理ポリシーの作成、クローニング、共有、設定、ブート、および VM の移行ができま

す。Oracle VM は、コストの削減に役立つ一方で、利用者によるサーバーの使用率を向上し、

より高い可用性とパフォーマンスの達成を促進します。

仮想化レイヤーだけでなく、Oracle が提供するソリューションには、Oracle VM を活用して

アプリケーション主導の仮想化を提供するためのOracle Virtual Assembly Builder、Oracle VM Templates、Oracle Optimized Solution for Enterprise Cloud Infrastructureなどがあります。これ

らのツールが提供するのは次のような機能です。

多層エンタープライズ・アプリケーション全体を仮想環境とクラウド環境で迅速に設定し供

給する。

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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完全に構成・設定されたソフトウェア・スタックを、あらかじめインストールして設定済み

のソフトウェア・イメージを使ってフルにデプロイする。

アプリケーションのデプロイに要する時間を最大 98%節約する。

アプリケーションからディスクまでハードウェアとソフトウェア・スタック全体の総合的な管

理を提供するために、Oracle VM 3 はOracle Enterprise Managerと容易に統合できるようになっ

ています。仮想環境の管理は、Oracle VM Manager の持つ多数の自動機能によっても、Oracle VM Manager と Oracle Enterprise Manager の組み合わせによっても処理できます(図 1 を参照)。

Oracle VM Server for x86 は、全ソフトウェア・スタックに対する最良のサポートと最高の可

用性を可能にする、Oracle によって完全に認定されている唯一の x86 サーバー仮想化ソリュー

ションです。Oracle Database、Oracle Fusion Middleware、Oracle Applications などの Oracle製品は、実動環境での厳しいテストを経て、Oracle VM ベースの環境で実行するための正規の

認定を受けています。Oracle VM のサブスクリプション・サービスを受けるお客様には、

Unbreakable Linux Network (ULN)を通してパッチ、修正、および更新への年中無休のアクセ

スが提供されます。

図 1. Oracle の全スタック統合

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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Oracle VM 3 の概念と構成要素の概要

Oracle VM には Oracle VM Manager と Oracle VM Server for x86 が含まれ、x86 サーバーで実

行されます。

Oracle VM Manager は Oracle VM サーバーと仮想マシンの作成ならびに監視を行い、仮想

環境を制御します。管理サーバーとローカルのコマンドラインの両方から管理した旧世

代の Oracle VM とは異なり、Oracle VM Manager は Oracle VM サーバーを管理するための

唯一のインタフェースです。Oracle VM Manager 3 は Oracle Fusion Middleware アプリケー

ションの一つであり、Oracle Weblogic Server アプリケーション・サーバーと Oracle Database

に基づいています。Oracle VM Manager は 64 ビット版 Oracle Linux 5.5 OS またはそれ以

降のバージョンの上で実行されます。Oracle VM Manager は管理リポジトリとして、

Oracle Database を使用しますが、これは同じ管理サーバーまたは別のサーバーにインス

トールできます。Oracle Database 11g Express Edition (XE) が Oracle VM Manager 3 とバン

ドルされていますが、これはユーザー評価用であり、実際の業務サポートには管理リポ

ジトリとして Oracle Database Standard Edition (SE) または Enterprise Edition (EE) が必要

です。必要なライセンスは、Weblogic Server と Database(SE または EE)のライセンス

を含めてすべて追加料金なしで提供されています。

Oracle VM Server for x86 は、x86 の Intel または AMD プロセッサを持つサーバー・ハード

ウェアに直接インストールします。ホスト・オペレーティング・システムは必要ありま

せん。Oracle VM Server はハイパーバイザーと、複数のドメインまたは仮想マシン(Linux、

Solaris、Windows、その他)を一つの物理マシン上で実行できるようにする特権ドメイン

(Dom0) からなります。Dom0 は Oracle VM Agent と呼ばれるプロセスを実行します。

Oracle VM Agent は管理要求を受け取って処理し、イベント通知と設定データを

Oracle VM Manager に提供します。Oracle VM Server 3 には 64 ビットの x86 ハードウェア

が必要ですが、ゲスト仮想マシンは 64 ビット版も 32 ビット版もサポートされます。

図 2. Oracle VM の構成要素

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主なデプロイ概念

図 3 に見られるように、複数の Oracle VM Server がグループを形成します。1 つのサー

バー・プールは最大 32 個の物理サーバーを持つことができ、プール内のサーバーはすべ

て共有ストレージへアクセスできます。ストレージには NFS、Fibre Channel、iSCSI、また

はそれらの組み合わせを使用できます。これは、サーバー・プールに関連付けられている

VM を、そのプール内のどの物理サーバー上でも起動して実行できるようにします。注意:

ローカルのストレージも設定できますが、そうすると、サーバーの故障やライブ移行など

のイベントに対処するとき、VM をプール内のどこでも実行できるようにする能力が著し

く制限されるので、実動環境にはあまり適切ではありません。

VM が初めてサーバー・プール内で起動されたとき、その VM を配置する最適サーバーの

選択は、サーバーの CPU、メモリ、およびネットワーク使用状況を考慮したアルゴリズ

ムに基づいて行われます。通常 VM のホストになるサーバーは最も多くのリソースを備

えているサーバーです。それ以降、その VM はそのサーバーに関連付けられますが、管

理者の判断で、または負荷分散のための動的なリソース・スケジュール・ポリシーに基づ

いてサーバー・プール内の他のサーバーに移行できます。

図 3. Oracle VM のデプロイ

このアーキテクチャでは、個々のサーバーが故障しても複数のサーバーが故障しても、

サーバー・プール内にあるすべての VM の同時実行を支えるのに十分なリソースがある

限り、VM のオン、オフ、移行、再起動に支障はありません。

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Oracle VM Manager

Oracle VM Manager はバージョン 3 で大幅に改善され、管理作業の簡略化のためにネット

ワークとストレージの完全な集中管理化と仮想環境での動的リソース管理の改善が行われ

ました。

Oracle VM Manager 3 は Oracle Weblogic Server でビルドされているので、イベント履歴の追

跡、長期にわたって行われた作業を完全に破棄する能力など、エンタープライズ級のトラ

ンザクション管理能力を提供します。Oracle VM Manager の作業はすべてジョブとよばれ

る構造化されたタスクとして Oracle VM Manager 内で処理されます。ジョブはその作業の

完了に必要なすべてのステップからなります。各ジョブのステータス、進行状況(完了%

と完了したステップ)、残りのステップ数などの情報は GUI に表示して見ることができ

ます。ジョブはいつでも破棄できます。端末の故障が原因でシステムによるジョブの破棄

が行われることもあります。いずれの場合も、状態はロールバックによって元の状態に戻

されます。ジョブの使用によって、簡単にその環境内でだれが変更を行ったかを調べ、障

害をトレースできるようになっています。

Oracle VM Manager 3 は Java と XML を Oracle ADF 11g (Application Development Framework)

内で使用します。ADF は JavaScripts の生成によってさまざまのブラウザ・レンダリングに

対処します。非同期 JavaScript と XML (AJAX) の使用は、ユーザーがブラウザの表示更新

ボタンをクリックしなくても UI の一部を非同期的に更新する方法を提供することによっ

て UI に豊かな表現力を与えています。Oracle VM Manager のツリー・ビューは完全にイン

タラクティブなだけでなく、物理環境と仮想環境の状態がリアルタイムで表示されるよう

に自動更新されます。

Java クライアントのインストールに頼る他のエンタープライズ・サーバー仮想化ベンダー

に比べて、Oracle VM Manager 3 は唯一本格的なブラウザ・ベースのユーザー・インタ

フェースを提供します。Oracle VM Manager のブラウザ・インタフェースは標準ブラウザ

をサポートする任意のデバイスを使って、ほとんどどこからでも手軽に Oracle VM Manager

にアクセスできます。

ネットワークとストレージの集中管理と設定

ネットワークとストレージはアプリケーションのデプロイにおける重要な部分です。

Oracle VM では Oracle VM Manager を介して集中管理することによって設定手順を単純化し、

プール・レベルのネットワーク設定と論理ストレージを作成することによって管理作業に

要する時間を短縮しています。

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ネットワークの設定と管理

VM に最も高い最も安定した性能、拡張性、および可用性を提供するために、Oracle VM

は高度なネットワーク設定をサポートするように設計されています。Oracle VM の環境では、

ネットワーク・インフラストラクチャがサポートしなければならない機能がいくつかあり

ます。例:

Oracle VM Server 群と外の世界との間の IP トラフィックをサポートするゲスト・ネット

ワーク

Oracle VM Server 群と Oracle VM Manager との間の管理ネットワーク

Oracle VM Server 群とそのストレージ・サブシステムとの間のストレージ・ネットワーク

Oracle VM はトラフィックを分離して安定した質のサービスを維持するためにネットワーク

を分離する能力を備えています。Oracle VM Manager からネットワークの種類を最高 5 つ

(サーバー管理ネットワーク、ライブ移行ネットワーク、クラスタ・ハートビート・ネッ

トワーク、仮想マシン IP ネットワーク、ストレージ・ネットワーク)定義できます。

Oracle VM ネットワークを作成するとき、使用可能なネットワーク・ポートを

Oracle VM Manager の GUI を使って論理イーサネット・ネットワーク群にマップで

きます。Oracle VM Server の論理ネットワークの設定と管理のタスク(ネットワー

クの作成、NIC ポートのボンディング、VLAN ネットワークの設定など)はすべて

Oracle VM Manager を使って行うようになりました。

ストレージの設定と管理

Oracle Storage Connect の枠組みは、Oracle VM Manager が Oracle VM 環境にある既存スト

レージ・システムのリソースと機能を直接利用できるにようにし、SAN や NFS でのスト

レージの作成、削除、および拡張など、ネイティブ・ストレージ・サービスをサポートし

ます。これによって、Oracle VM Manager は自動的に使用可能なストレージを検出して、

新しいストレージ・リポジトリを作成したり、生のストレージを仮想マシンに直接マップ

したりできます。詳細については、『Oracle Storage Connect white paper』を参照してくだ

さい。

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動的リソース管理

アプリケーションのサービスの質を向上するための仮想環境の自動化と電力消費の削減

は、効率よい運用の鍵となります。

図 4. ポリシー・ベースの動的リソース・スケジュール

Oracle VM 3 での機能強化

Distributed Resource Scheduling (DRS) による容量管理。DRS によって Oracle VM Server

の使用状況をリアルタイムで監視できます。これは、実行中の仮想マシンに一貫したリソー

ス提供が行われるようにサーバー・プールのバランスを補正する目的で行われます。

DRS は負荷の高い Oracle VM Server から負荷の軽いサーバーへ負荷を移します。

(図 4 を参照)

Dynamic Power Management (DPM) による消費電力削減のためのサーバー・プールの

最適化。DPM はリソースの使用率が低下している期間にプール内のサーバー数を削減

することによって DRS を補完します。リソースの使用率が高くなってくると、必要に

応じて自動的に容量を追加できます。(図 5 を参照)

サーバー プール1

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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図 5. ポリシー・ベースの動的電力管理

Oracle VM Server for x86

Oracle VM Server 3 は 64 ビット x86 サーバー・ハードウェアに直接インストールされ、32 ビッ

ト版および 64 ビット版のゲスト・オペレーティング・システム(Linux、Solaris、Windows

など)をサポートします。Oracle VM Server はオープン・ソースの Xen ハイパーバイザー・

コンポーネントを取り入れていますが、より大きい Oracle 製の仮想化サーバーに統合する

ために最適化されています。Oracle VM Server には、管理と設定のために Oracle VM Manager

とやり取りする Oracle VM Agent が含まれています。Oracle VM Server ソフトウェアはオープ

ン・ソース・コンポーネントをいくつか使用し、それ自身もオープン・ソースですが、

これは Oracle のために開発された Oracle 特有の製品です。

ハイパーバイザーと管理ドメイン

ハイパーバイザーは、CPU、I/O、およびディスク要求などのゲスト OS からのハードウェア

操作のために、抽象レイヤーとして使用されるハードウェア上で直接実行されます。ゲスト

VM をハードウェアから切り離すことによって、ハイパーバイザーは複数のオペレーティ

ング・システムをセキュアに独立して実行することができます。

ハイパーバイザー上で実行される特権管理ドメインがハードウェアへの直接アクセスとゲ

スト管理を行います。この管理ドメインは Domain0 (Dom0) として知られているもので

す。ハードウェア・サポート(ネットワークやストレージ・デバイスに対するサポートな

ど)は Dom0 にインストールされているデバイス・ドライバによって提供されます。

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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Dom0 にはハイパーバイザーにアクセスできる独特の特権があり、このアクセス権は他の

User Domain (DomU) として知られるゲスト・ドメインには割り当てられることのないも

のです。これらの特権によってゲスト・ドメインの開始、停止、I/O 要求、その他のすべ

てを管理できるようになっています。すべての管理作業を Oracle VM Manager 3 の使いや

すいユーザー・インタフェースから行うことができ、ゲスト管理やデバイス設定のために

Dom0 にログインする必要はありません。

Oracle VM Server 3 の Dom0 はエンタープライズ・クラスの作業負荷要件に対処できるよ

う特別にビルドされています。64 ビット版 Oracle Unbreakable Enterprise Kernel (UEK) を持

つ Oracle Linux に基づいていますが、カスタム化と最小化が施され、仮想環境でのセキュ

リティと拡張性が強化されています。Oracle の Unbreakable Enterprise Kernel は、エンター

プライズ・ソフトウェアとエンタープライズ・ハードウェア向けに最適化された、高速で

信頼性に優れた最新 Linux カーネルです。

ハイパーバイザーの最適化と Unbreakable Enterprise Kernel 付き Oracle Linux 特殊ビルドに

よって、Oracle VM Server は最も拡張性のある x86 サーバー仮想化ソリューションになっ

ています。たとえば、Oracle VM Server 3.0 は最大 160 個の物理 CPU と 2TB のメモリをサ

ポートし、個々のゲスト VM は最大 128 個の仮想 CPU(vCPU)と 1TB のメモリをサポー

トします。このような拡張性の限界は、Oraclen の Sun Fire X4800 M2 Server上でテストされ

ています。

クラスタ・ファイル・システム – OCFS2

OCFS2(Oracle Cluster File System 2)は、Oracle が Linux コミュニティのために開発した、

汎用の、エクステント・ベース・クラスタ・ファイル・システムですが、無料のオープン・

ソースとして提供されています。OCFS2 は、市販のクラスタ・ファイル・システムに代

わるオープン・ソースの高性能かつ高可用性のエンタープライズ・クラス・システムです。

OCFS2 1.8 はサーバー・プールの土台となるクラスタ・ファイル・システムとして、またスト

レージ・リポジトリとして、Oracle VM Server 3 に取り込まれています。さらに、シン・プ

ロビジョニングやインスタント・クローンなど、OCFS2 に含まれている高度な機能によっ

て、仮想マシンのプロビジョンとクローニングが大幅に高速化、効率化されています。

Oracle VM Agent

Oracle VM Agent は Dom0 上で実行され、Oracle VM Manager からの要求を処理します。要求の

処理は、Oracle VM ハイパーバイザー、Oracle VM Storage Connect プラグイン、Distributed Lock

Manager (DLM)、および OCFS2 が提供する高可用性の枠組みとエージェントとのインタラ

クションによって行われます。

Oracle Enterprise Manager との統合によって、アプリケーション・スタックを上から下まで完

全に管理する Oracle のシステム管理技術が提供され、Oracle VM 3 エージェントは Enterprise

Manager のプロキシ・エージェントとしても機能するので、追加の管理エージェントをデ

プロイする必要をなくしています。

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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仮想マシンの種類

Oracle VM Server 上で実行されるゲスト仮想マシンの仮想化モードは次のいずれかになります。

準仮想化モード (PVM: ParaVirtualized Mode)。準仮想化モードでは、ゲスト・オペレー

ティング・システムのカーネルが物理的なハードウェア上ではなくハイパーバイザー上

で実行されていることが明確になるように変更されます。その結果、I/O ハードウェア

とタイマーがオペレーティング・システムでエミュレーションされる必要のある準仮想

化されていないシステムに比べて、I/O アクション、特にシステム・クロックのタイ

マーが効率よく処理されます。Oracle VM は Oracle Linux および Red Hat Enterprise Linux

用の PV カーネルをサポートするので、より高度な性能と拡張性を提供します。

ハードウェア仮想化または完全仮想化モード (HVM: Hardware Virtualized Mode)。ホスト・

サーバーのハードウェアがハードウェアの仮想化をサポートする場合(Intel VT-x また

は AMD-V)、ゲストのオペレーティング・システムを変更なしで実行できます。これは

仮想環境での運用を適切に行うための機能がハードウェアに備わっていることが前提に

なります。ただし、HVM はバイナリ変換とデバイス・エミュレーションに頼っている

ので、追加のオーバーヘッドが発生する可能性があります。一方、互換性という利点が

あることも見逃せません。ほとんどの場合、仮想化用に変更されていない任意のオペ

レーティング・システム・イメージ(Linux、Solaris、Windows など)をそのまま HVM

ゲストとして実行できるので、既存の物理的なサーバー・イメージを基本的に変更なし

で一括管理することが容易になります。Intel および AMD プロセッサの最近の発展によ

り、ハードウェアによる仮想化補助も性能の向上に役立つ場合があります。

準仮想化ドライバ使用のハードウェア仮想化モード (PVHVM: ParaVirtualized Hardware

Virtualized Mode)。このモードはハードウェア仮想化モード (HVM) と同じですが、仮

想マシンの性能を向上させるために、ゲスト・オペレーティング・システムに追加の準

仮想化 I/O ドライバがインストールされます。これによって、ゲスト・オペレーティン

グ・システムは基本的に変更なしで実行できますが、PV ドライバには、オーバーヘッドを

削減して仮想環境で I/O コマンドを効率よく実行するように変更されたものが使用されま

す。Oracle は Microsoft Windows 用の PV ドライバを提供しています。Oracle Linux と Oracle

Solaris では、PV ドライバはオペレーティング・システムの一部として提供されています。

異なった仮想化モードの比較の詳細は、My Oracle Support Knowledge Note (Doc ID 757719.1) の

『Comparison of Guest Virtualization Modes, HVM, PVM and PVHVM』を参照してください。

Unbreakable Enterprise Kernel を含む Oracle Linux は、ベア・メタル上で(ハードディスクに

インストールして)そのまま直接実行することも、Oracle VM 上で仮想ゲストとして実行

することもできます。

ヒント: Unbreakable Enterprise Kernel バージョン kernel-uek-2.6.32-100.34.1 には、Oracle VM 上で実

行されるHVM ゲストの準仮想化ドライバに対するサポートが追加されています。これ以降の

カーネル・バージョンのデフォルトでは、ハードウェア仮想化モードで実行しているゲストに

は準仮想化ドライバのみが提供されます。完全なハードウェア仮想環境で kernel-uek(ドライバ

を含む)を実行するには、追加のカーネル起動パラメータ「xen_emul_unplug=never」を

/etc/grub.confの起動パラメータに追加する必要があります。

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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Oracle VM Templates と仮想アプリケーション・アセンブリ

Oracle VM は、既にビルド、設定、最適化、パッチ適用が終わっている単一の、場合によっ

ては複数のゲスト仮想マシンを迅速にデプロイする能力を提供します。ゲスト VM にはオ

ペレーティング・システムと共に完全な Oracle ソフトウェア・ソリューションと関連の

ソフトウェア・インフラストラクチャを含めることができます。これらのゲスト VM は、

Oracle VM Templates と呼ばれ、Oracle 社の E-Delivery ウェブサイトからダウンロードして

そのままデプロイできる形で用意されています。Oracle VM Templates は実動環境用に設定

されているので、Siebel CRM や Oracle Enterprise Manager Grid Control などの極めて複雑な

製品を使用する場合でも、それらをインストールして設定できるようになるまでに費やす

何日何週間もの習得時間を節約できます。そのような手間を掛けなくても、Oracle VM

Templates をダウンロードして VM を起動するだけでただちに使用を開始できます。

これらのテンプレート内で、Oracle ソフトウェアは、あたかも手動でインストールしてパッ

チを適用したかのように自動的に設定されます。ディレクトリも Oracle 製品の「home」

もまったく同じです。パッケージとパッチのインベントリも完全に標準化されていて最新

のものが使用されるので、将来にわたるインスタンスの保守に必要な作業手順も変わりま

せん。したがって、Oracle VM Templates を使用しても、インストール後に完全なカスタマ

イズが可能で、それを「黄金イメージ」テンプレートとして Oracle VM 内に再保存するこ

ともできます。そのようにして作成されたテンプレートを、エンタープライズ規模のデプ

ロイにおける標準として使用することによって、複数インスタンスをデプロイするときの

リスクと変動を抑えることができます。

Oracle VM server 2.x で認定された既存の Oracle VM Templates はすべて Oracle VM Server 3 で

も認定されています。テンプレートの最新リストは Oracle VM Templates のウェブサイト

(www.oracle.com/technetwork/server-storage/vm/templates-101937.html)に用意されています。

アプリケーションの「組み合わせ」は Oracle VM Template によく似ていますが、設定情報

と管理ポリシーが複数の仮想マシン、仮想ディスク、仮想マシン間の相互接続性に追加さ

れています。これらのアセンブリのパッケージ化には、設定とポリシーの情報に業界標準

の Open Virtualization Format (OVF) が使用されています。アセンブリのパッケージは一群

の Open Virtualization Format (.ovf) ファイルとディスク・イメージ (.img) ファイルとして、

または単一の Open Virtualization Format Archive (.ova) ファイルとして作成できます。

Oracle Virtual Assembly Builder は、現在のアプリケーション環境を総括して、VM の組み合

わせまたは集合を重要な設定パラメータと共にパッケージ化するための高度な開発ツール

であり、仮想環境への移動や既存環境内でのリプリケーションを簡単迅速にできるように

します。

Oracle VM Guest VM API は仮想マシンに対するキー/値のペアの設定/取得をゲストが

Oracle VM Manager を通してできるようにします。この API はゲスト・ソフトウェアと仮

想レイヤーを直接統合できるようにし、複雑な複数 VM のデプロイを助けます。

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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図 6. Oracle Virtual Assembly Builder

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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結論

ビジネスの成功は効率とスピードによって定義されます。資本を効率よくタイミングよく

使用する会社は、より高い収益を上げ将来のイニシアティブへの投資能力を高めることが

できます。IT は企業の競争力を左右する重要なコンポーネントです。基幹サービスを陰

で支える業務処理機能は、効率の最適化を図らずに硬直し寸断された組織に任せておくこ

とはできません。アプリケーション主導の仮想化は IT のスピード、効率、変化への対応

能力を向上する方法の一つです。

クラウド・コンピューティングのデプロイによって、IT は変化への対応能力を強化する

というビジネス要件に応えることができると共に、IT のバランス・シートからコストと

リスクを削減できます。IT はビジネス・ニーズへの対応能力を向上させることができ、

その協力態勢を通して IT は業務に統合されます。

Oracle VM Server for x86 による仮想化と、Oracle 独特の各種ツールを活用することによっ

て、データ・センターの総所有コストの削減、IT の柔軟性の向上、変化への対応能力の

向上を達成することができます。

Oracle VM 3 は Oracle のアプリケーション主導型サーバー仮想化ソリューションに対する

コミットメントの表明です。Oracle VM が紹介する新機能は、拡張性、管理性、使いやす

さのレベルを上げ、最も要求の厳しいエンタープライズ・アプリケーションのデプロイ、

管理、サポートを容易にします。

Oracle VM 3 のすべての利点を体験するための、一番良い方法は、Oracle の E-Delivery サイ

ト (http://edelivery.oracle.com/oraclevm) からソフトウェアをダウンロードして、自分の環

境で試してみることです。

Oracle の仮想化に関する詳細情報は、www.oracle.com/virtualizationをご覧ください。

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Oracle VM 3: 概要-アーキテクチャと技術

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付録 1: 参考資料

詳細については、表 1 に記載されている Web リソースをご覧ください。

表 1. WEB リソース

WEB リソースの内容 WEB リソースの URL

Oracle VM と仮想化 http://oracle.com/virtualization

Oracle VM Templates http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/vm/templates-101937.html

Oracle Solaris http://oracle.com/solaris

Oracle Linux http://oracle.com/linux

Sun サーバー http://www.oracle.com/servers

Sun ストレージ http://www.oracle.com/storage

Sun ネットワーク http://www.oracle.com/us/products/servers-storage/networking/

Oracle Enterprise Manager http://www.oracle.com/us/products/enterprise-manager/

Oracle Enterprise Manager Ops Center http://www.oracle.com/us/products/enterprise-manager/opscenter/

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Oracle VM 3: アーキテクチャと技術概要 2011 年 8 月 著者: Honglin Su 寄稿者: Adam Hawley、Susan Roberts、 Chris Kawalek

Oracle Corporation World Headquarters 500 Oracle Parkway Redwood Shores, CA 94065 U.S.A.

海外からのお問い合わせ窓口: 電話: +1.650.506.7000 ファックス: +1.650.506.7200

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