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1-1 本書の対象者と対象企業 1-2 間違いだらけのトラブル未然抽出法 1-3 従来の失敗事例集で設計力は向上しない 1-4 間違いだらけの設計フロー 1-5 悪い設変とは / 良い設変とは 1-6 悪い設変の要因とその解消法を4Mで切る 1-7 良い設変の賢い進め方 〈設計変更力・チェックポイント〉 【注意】 第1章に記載されるすべての事例は、本書のコンセプトである「若手技術者の育成」のため の「フィクション」として理解してください。 1 本書を理解するための基礎固め オイ、まさお!よく聞け! 一人前の設計職人になるにはよぉ、ま ず、「設変」を押さえろ、これが肝心だぁ職人とはなぁ、多くのコツがある。そい つを早く把握しろ。これは命令だ! 厳さん!わかりました。 コツを掴んで、一気に「即戦力」と なります!

P011-078 第1章 責了 4s...第1章 本書を理解するための基礎固め 13 本書は、99%の企業のために執筆しました。残念ながら、残り1%の大企業

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Page 1: P011-078 第1章 責了 4s...第1章 本書を理解するための基礎固め 13 本書は、99%の企業のために執筆しました。残念ながら、残り1%の大企業

1-1 本書の対象者と対象企業1-2 間違いだらけのトラブル未然抽出法1-3 従来の失敗事例集で設計力は向上しない1-4 間違いだらけの設計フロー1-5 悪い設変とは /良い設変とは1-6 悪い設変の要因とその解消法を4Mで切る1-7 良い設変の賢い進め方   〈設計変更力・チェックポイント〉

【注意】第1章に記載されるすべての事例は、本書のコンセプトである「若手技術者の育成」のための「フィクション」として理解してください。

第 1章本書を理解するための基礎固め

オイ、まさお!よく聞け!

一人前の設計職人になるにはよぉ、まず、「設変」を押さえろ、これが肝心だぁ!

職人とはなぁ、多くのコツがある。そいつを早く把握しろ。これは命令だ!

厳さん!わかりました。

コツを掴んで、一気に「即戦力」となります!

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 本書は、とくに若手設計者を対象にしています。具体的に言えば、以下の技術者です。

① 商品の設計者② 部品の設計者③ 生産ラインの設計者④ 上記③における組立て装置、組立て治工具の設計者⑤ 上記③における検査装置、検査治工具の設計者⑥ 商品企画者注、部品企画者注、システム企画者注、生産企画者注

  注:企画とは、本来、設計者の仕事である。

 ところで、日本国内には一体何社ぐらいの企業が存在するでしょうか?それは、100万社です。ここには工業界をはじめ、飲食や衣料関連などすべての業種を含んでいます。 次に100万社のうち、中小企業は何%でしょうか?それは、99%が中小企業です。詳細に言えば、なんと「99.6%」です。小数点以下の数値は、浮動性があるので「99%」と表現しました。

第 1章 本書を理解するための基礎固め

日本の企業数100万社

中小企業:99%

大企業:1%

おぉ……。確かによぉ、図表にするとインパクトがあるぜぃ!

厳さん!円グラフにすると、こんな感じですね。

1 - 1 本書の対象者と対象企業

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13第1章 本書を理解するための基礎固め

 本書は、99%の企業のために執筆しました。残念ながら、残り1%の大企業には、役に立たないかもしれません。

本書は、日本企業の 99%を占める中小企業のために執筆されている。残り1%の大企業には役に立たないかもしれない。

 近年、日本を代表する大手自動車企業が、社告・リコールの損失額で世界第1位、第2位、第3位を獲得しました。社告・リコールの金・銀・銅のメダル独占です。しかも、その社告・リコールは収束する気配がありません。 一方、社告・リコールを何度も隠し続ける、許しがたい自動車企業も存在しています。どちらも、かつては優良企業ですから、その失態を放置するはずがなく対策を講じます。

 しかし、その手段は、……① 重きFMEA注の導入② 重き設計審査(デザインレビュー、DR)の実施③ さらなる厳しい品質管理への改善活動注:トラブルを未然に抽出して対策を講じる開発ツール(道具、手法)。本来はシンプルなツールであるが、日本企業にだけ、複雑な「合体FMEA」や、古くて厳格なルールの「計算尺時代のFMEA」が存在する。

となっています。

 ①②は、開発現場の若手技術者に大きな負荷となっています。また、③ですが、設計不良品を厳しく管理するほど無駄な行為はありません。当然のことながら、社告・リコールを何度も繰り返し、前述の自動車企業だけでなく、大手電機企業も反面教師として手段の「効果なき」を実証してくれました。

 従って、これらの大企業を模範にしてきた他の大企業が、まず成すべきことは、モチベーションの向上をはじめ、「管理者の、管理者による、管理者のためのツール」を「設計者の、設計者による、設計者のためのツール」に戻すための仕組みづくりです。

 人間で言えば、何度も病院へ通うよりも、根本的な体質改善が必要です。従って、残り1%の大企業には、本書よりも大掛かりな体質改善が必要です。 優秀なコンサルタントを雇うのも、ひとつの手段でしょう。

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 「○○開発手法」や「○○防止法」などを開発ツールと言います。ツールは大工のカンナ、ノコギリ、ノミ、トンカチ同様の職人が必要とする「道具」で、世の中には、多くの開発ツールが存在しています。 効率と効果を追求する場合、この開発ツールには以下に示す日本企業特有の課題があります。

① 開発ツールを使わない。実は使えない。② 「管理者の、管理者による、管理者のためのツール」が氾濫③ 大企業の社員、またはそのOBに開発ツールオタクが出現

簡単に解説すると、……

① 開発ツール:開発ツールを使わない体制を長年に渡り継続したため、いつの間にか「使えない」にまでレベルが低下した企業が存在する。

  ツールを使えない企業は、例えば、ステーキをナイフとフォークというツール(道具)を使って食するのではなく、手で引き裂き、歯で食いちぎって食すのに相当する。道具がない分時間がかかり、食事後の清掃にも時間がかかる。

② 管理者用ツール:日本企業独特の複雑な開発ツールが数多く存在。それを実際に使用する現場の技術者が選択せず、管理側の者や管理職が選択するため、「重くて役立たず」と若手技術者が苦言を呈している。

  そして、この不具合を責任者がヒアリングしていない、気づいていない。

③ ツールのオタク:QCオタク、品質工学オタク、FMEAオタク、DRオタクなどが大企業の社員やOBに出現している。

  彼らの共通点は実直。実直すぎて、「担当するツールが開発のすべて」と教え込み、現場の若手技術者を混乱させている。

  また、ツールの普及を外から眺め、決して中に入ってこない。つまり、普及先の現場で活動せず、傍観者が多い。

1 - 2 間違いだらけのトラブル未然抽出法

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15第1章 本書を理解するための基礎固め

 最適なツール選び、最適なツールの指導者選びを怠ると、どんなにすばらしいツールでも、「豚に真珠」、「猫に小判」となってしまいます。

最適なツール選びや最適な指導者選びを怠ると、優れたツールも「豚に真珠」、「猫に小判」となってしまう。

 厳さんの言う通りかもしれません。 筆者は隣国大企業のコンサルテーションを受託して数年が経過しますが、QC、品質工学、FMEAなどの単語を一度も聞いたことがありません。開発ツールは重要ですが、開発ツールで商品ができるわけではありません。商品というのは、研究、企画、設計、製造、検査、品質管理、営業など、人と人とのコミュニケーションでできあがるものです。

1 - 2 - 1.3Hはマーケティング用語 日本を代表する大手自動車企業が、トラブル未然抽出の概念として「3H」を唱えています。その3Hとは、……

厳さん!そうなんです。うちの会社でも、ツールのオタク族が多いんです。とくに多いのが、QCオタクと品質工学オタクです。ツールがすべてという感じで困っています。

オイ、まさお!そんじゃよぉ、立派な QCや品質工学が、恨まれちまうじゃねぇかい。

オメェら、日本の技術者ってよぉ、ちょいと考えすぎじゃねぇかい、あん?

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① 初めて  (Hajimete)② 久しぶり (Hisashi - buri)③ 変化点  (Hennka - tenn)

 この自動車企業が、これら「3H」の要素を含む技術の採用に注意しなさいと、社内、および関連会社の技術者に呼びかけているそうです。残念ですが、設計工学から派生した「トラブル三兄弟注1」の内、「トレードオフ注2」が存在していません。「トレードオフ」は、設計工学の専門用語です。注1、注2:項目1 - 2 - 4で解説する。

 世界的な規模で発生したハイブリッド車の社告・リコールを例にとると、「トレードオフ」が存在しない前述の「3H」では、おそらく、低速で滑りやすい条件下の道路でも、油圧ブレーキよりも回生ブレーキを優先し、追突事故が発生しても仕方がありません。

 また、「変化点」とは、…… トラブル要因で捕らえるのではなく、顧客ニーズの「変化点」と捉えるべきです。 従って、変化点とは、マーケティングや経営上の用語です。顧客要望の変化、経済の変化、環境の変化など、技術よりも経営上の重要な単語(キーワード)です。 本書のコンセプトは、「はじめに」でも記載しましたが、「QCDPaを上手に設計変更してグローバルで戦える設計力を養う」です。これに関連したトラブル撲滅と品質向上をテーマにした書籍は、……

・ついてきなぁ!失われた『匠のワザ』で設計トラブルを撲滅する!・ついてきなぁ!設計トラブル潰しに『匠の道具』を使え!

以上の二書で自己研鑽してください。

日本の自動車企業などで使われている「3H」は、トラブル未然抽出よりも、マーケティングや経営用語である。

注意:本項に記載されるすべての事例は、本書のコンセプトである「技術者の育成」のための「フィクション」として理解してください。事実とは異なる部分があります。

   また筆者は、「3H」を否定はしません。トラブル未然抽出に3Hを有効活用している企業が存在します。