29
第1節  日ごろの生活 1. 生活時間(起床・就寝・睡眠) 2. 食事の様子 3. 放課後の遊び場 4. 小さいころからの経験 5. 部活動・アルバイト 6. ふだんすること 7. TV視聴・ゲームの時間 第2節 メディアとの接触 1. パソコンの利用(1) 2. パソコンの利用(2) 3. パソコンの利用(3) 4. 携帯電話の利用(1) 5. 携帯電話の利用(2) 6. 携帯電話の利用(3) 毎日の生活の様子 第1節 1~4 首都大学東京准教授 長沼 葉月 5~7 Benesse教育研究開発センター研究員 佐藤 昭宏 第2節 新潟大学特任准教授 浜島 幸司 2009 2004 ●第 2 回子ども生活実態基本調査

P048 091第2章...50 第2章 毎日の生活の様子 第2回子ども生活実態基本調査 早起きの子どもたちが増えてきた? 子どもたちの生活の様子として、最初に基本

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第1節  日ごろの生活 1. 生活時間(起床・就寝・睡眠)

2. 食事の様子

3. 放課後の遊び場

4. 小さいころからの経験

5. 部活動・アルバイト

6. ふだんすること

7. TV視聴・ゲームの時間

第2節 メディアとの接触   1. パソコンの利用(1)

  2. パソコンの利用(2)

3. パソコンの利用(3)

4. 携帯電話の利用(1)

5. 携帯電話の利用(2)

6. 携帯電話の利用(3)

毎日の生活の様子第2章

第1節 1~4 首都大学東京准教授 長沼 葉月

5~7 Benesse教育研究開発センター研究員 佐藤 昭宏

第2節 新潟大学特任准教授 浜島 幸司

20092004▶

序 

第1章

第2章

第3章

第4章

資料編

●第2回子ども生活実態基本調査

─ 50 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

─ 50 ─

◆早起きの子どもたちが増えてきた? 子どもたちの生活の様子として、最初に基本的生活習慣に注目したい。睡眠は、生活のリズムだけではなく心身の健康のリズムを表す指標としても重要なものである。文部科学省は平成18年(2006年)より「早寝早起き朝ごはん」の国民運動の推進を訴えたが、この間にその成果はみられたのであろうか。 子どもたちの起床時刻を、2004年と2009年で学校段階別に示したものが図2-1-1である。通学先への距離が長くなる高校生では、小・中学生より全体に早起きであるが、注目すべきはこの5年間の変化であろう。いずれの学校段階においても、「6時より前」や「6時ごろ+6時30分ごろ」の回答割合が増え、それ以降に起きるという回答が減っている。 図2-1-2は、子どもたちの就寝時刻を2004年と2009年で学校段階別に示したものである。 2004年と比べて2009年では「22時より前」に就寝する小学生が増えており、「早起き」に加えて「早寝」も浸透しているようである。中学生になると全般的に就寝時刻は遅くなり、23時以

降の就寝が大半を占めるものの、2004年と比べると「0時ごろ+0時30分ごろ」や「1時ごろ+1時30分ごろ」が減少しており、少し就寝時刻が早くなっているようにみえる。高校生については、就寝時刻の大半を2004年同様に、「0時ごろ+0時30分ごろ」が占めている。しかし「23時ごろ+23時30分ごろ」が増え、1時以降に就寝する高校生は2004年と比べて減っている。 すなわち、どの学校段階についても起床時刻は早くなり、就寝時刻はやや早くなったようにみえる。そこで起床時刻については「6時より前」を5時30分、「8時よりあと」を8時30分とし、就寝時刻についても同様に「22時より前」を21時30分、「2時よりあと」を2時30分とし、平均就寝時刻、平均起床時刻、平均睡眠時間を算出してみた(図2-1-3)。その結果、小学生の平均就寝時刻は2004年に22時20分であったが、2009年には22時13分、平均起床時刻は6時40分から6時28分に、平均睡眠時間は2004年では8時間20分、2009年には8時間15分となっており、ほとんど違いはないものの、2004年から2009年にかけて、わずかながら睡眠時間帯が早

 2004年と比べ、すべての学校段階で「起床時刻」「就寝時刻」がやや早くなり、睡眠時間帯がやや早い時間帯に移行しているものの平均睡眠時間に大きな変化はない。また食習慣との関連では「早寝早起き型」<「早寝朝寝坊型」<「夜更かし早起き型」<「夜更かし朝寝坊型」の順で朝食をとらない比率が高くなる結果が得られ、早起き以上に早寝がよい食習慣に影響している可能性がある。

日ごろの生活第1節

1. 生活時間(起床・就寝・睡眠)

─ 51 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

─ 51 ─

2004年

2009年

小学生

2004年

2009年

中学生

2004年

2009年

高校生

2004年

2009年

小学生

2004年

2009年

中学生

2004年

2009年

高校生

小学生

中学生

高校生

図2-1-1 朝、起きる時間(学校段階別、経年比較)

図2-1-2 夜、寝る時間(学校段階別、経年比較)

図2-1-3 睡眠時間の推移(学校段階別、経年比較)

6時より前 6時ごろ+6時 30分ごろ 7時ごろ+7時 30分ごろ8時ごろ+8時よりあと 1.3 無回答

・不明

(%)

5.8

9.5

4.6

7.2

15.6

22.9 55.7 20.2 0.60.6

54.2 28.31.4

0.5

41.8 47.13.0

1.0

35.3 54.8 4.1 1.2

60.6 28.40.9

0.6

47.5 44.6 0.8

2004年

2009年

2004年

2009年

2004年

2009年

22時より前 22時ごろ+22時 30分ごろ 23時ごろ+23時 30分ごろ0時ごろ+0時 30分ごろ

1時ごろ+1時 30分ごろ 1.32時ごろ+2時よりあと 0.8

無回答・不明

(%)

31.5

35.6

16.4

20.9

42.0 6.85.9

6.3 42.4 5.4

21.5 4.1

28.1 5.5

42.3 3.1

41.2 4.9

16.4

4.7 20.9

23.0 42.0 20.6 0.66.85.9

6.3 28.0 42.4 16.1 0.85.40.9

1.039.4 21.5 8.4 1.14.1

33.4 28.1 11.8 1.35.53.5

42.3 16.7 0.70.5

3.1

41.2 19.3 1.14.9

22時20分 8時間20分

8時間15分

7時間09分

7時間16分

6時間15分

6時間13分

22時13分

23時41分

23時26分

0時10分

0時03分

6時40分

6時28分

6時50分

6時42分

6時25分

6時16分

21時 22時 23時 0時 1時 2時 3時 4時 5時 6時 7時

注)起床・就寝の平均時刻は「22時より前」を「21時 30分」、「2時よりあと」を「2時 30分」のように置き換えて算出した。  無回答・不明は除外。

1.1

い時間帯へ移行したことがうかがえる。中学生になると、小学生より大きく平均睡眠時間が減少するのは2004年から変わらなかったが、2004年と比べて2009年には平均睡眠時間が7時間09分から7時間16分とわずかながら増えた。平均起床時刻は2004年で6時50分、2009年で6時42分とほぼ変わらないが、平均就寝時刻が2004年の23時41分から2009年では23時26分へと早

くなっている。高校生になると、中学生よりも平均睡眠時間は1時間減少しているが、2004年は6時間15分、2009年は6時間13分と調査時点による違いはみられない。とはいえ、平均就寝時刻は0時10分から0時03分に、平均起床時刻は6時25分から6時16分へと、いずれも早い時間になっている。つまり睡眠時間帯が早い時間帯へ移行した傾向が全体的にみられている。

─ 52 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

◆睡眠習慣と食習慣 睡眠習慣は、基本的な生活習慣の一部をなしており、基本的な生活リズムの安定がその他の生活習慣の質を向上させるとも考えられる。そこで睡眠パターンにより「早寝早起き型」「夜更かし早起き型」「早寝朝寝坊型」「夜更かし朝寝坊型」に分けて、もう1つの基本的な生活習慣である食事に関する項目と組み合わせた分析を行った。紙幅の関係で結果は小学生の回答のみを提示する。睡眠パターンを単純化するため、小学生の場合は「6時30分ごろ」以前の起床を「早起き」、「7時ごろ」以降の起床を「朝寝坊」とし、「22時ごろ」までの就寝を「早寝」、「22時30分ごろ」以降の就寝を「夜更かし」として分類を行った。また食事に関する項目では「よくある」「ときどきある」の回答割合を集計した。結果を図2-1-4に示す。 「早寝早起き型」では「食事の時間を楽しいと思う」が夜更かしの子どもたちより多く、「テレビを見ながら食事をする」や「好きなものだけを食べ、嫌いなものを残す」「朝食をとらないで学校に行く」がもっとも少ない。食事のよい習

慣が根づいている様子がうかがえる。「早寝朝寝坊型」でも同じような傾向がみられた。一方で、夜更かしの子どもたちについては、早起きか朝寝坊かにかかわらず「テレビを見ながら食事をする」「スーパーやコンビニのお弁当を食べる」「夕食を一人だけで食べる」「朝食をとらないで学校に行く」と答えたものが多く、食習慣の乱れがみられる。「早寝朝寝坊型」より「夜更かし早起き型」のほうが朝食をとらないものの割合が高く、朝食の有無は単に朝の登校までの時間の長短によるわけではないといえよう。早起きは生活習慣の規則性を整えるうえで重要ではあるが、本調査の結果から、夜更かしで早起きを続けると、食習慣など他の生活習慣に乱れが生じる可能性があると考えられた。子どもが小さいうちには早起きだけでなく、早寝の習慣をしつけることがより重要であるといえよう。なお、同様の結果は中・高校生でもみられたが(図表省略)、学校段階が上がるにつれてその差は小さくなっていった。成長に伴い、生活習慣に影響する要因が多様化するためであろう。

─ 53 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

食事の時間を楽しいと思う

テレビを見ながら食事をする

好きなものだけを食べ、嫌いなものを残す

スーパーやコンビニのお弁当を食べる

おなかがすいていなくても無理に食べてしまう

栄養ドリンクやサプリメント(栄養をつけるための薬)を飲む

夕食を一人だけで食べる

ダイエットのために食べる量を減らす

朝食をとらないで学校に行く

図2-1-4 睡眠習慣と食習慣(小学生)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90(%)

81.0

76.181.9

76.6

82.0

31.4

24.2

17.5

13.5

9.3

15.9

18.2

73.1

27.8

21.0

13.1

16.1

7.7

5.9

7.7

80.8

29.3

26.4

14.7

15.6

14.9

8.9

11.0

68.7

23.8

19.1

13.6

13.5

8.8

6.5

5.3

早寝早起き型(1,782名)

夜更かし早起き型(707名)

早寝朝寝坊型(442名)

夜更かし朝寝坊型(599名)

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

─ 54 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

◆食習慣は向上している すでに触れた「早寝早起き朝ごはん」運動では、朝食の欠食児童を減らすことを目標の1つに掲げていた。食育の試みも企業を中心に広がっている。食事の様子には、2004年と2009年でどの

ような変化がみられたであろうか。学校段階別に、2004年と2009年の食事に関する項目の回答結果を図にまとめた(図2-1-5~図2-1-7)。

 「朝食をとらないで学校に行く」「好きなものだけを食べ、嫌いなものを残す」などの項目が2004年と比べて減少。文部科学省の「早寝早起き朝ごはん」運動の影響があるのかもしれない。ただし「ダイエットのために食べる量を減らす」は全学校段階で増加しており、とくに高校生女子で増加幅が大きい。過剰なやせ志向の広まりに注意が必要である。

2. 食事の様子

食事の時間を楽しいと思う

テレビを見ながら食事をする

好きなものだけを食べ、嫌いなものを残す

スーパーやコンビニのお弁当を食べる

栄養ドリンクやサプリメント(栄養をつけるための薬)を飲む

おなかがすいていなくても無理に食べてしまう

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

ダイエットのために食べる量を減らす

図2-1-5 食事の様子(小学生、経年比較)

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

75.4

26.8

21.7

15.1

14.4

7.6

10.8

8.4

73.8

79.2

32.1

22.5

19.6

15.4

13.3

10.9

5.5

77.5

2004年 2009年

(%)0 20 40 60 80 100

─ 55 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

食事の時間を楽しいと思う

テレビを見ながら食事をする

好きなものだけを食べ、嫌いなものを残す

スーパーやコンビニのお弁当を食べる

栄養ドリンクやサプリメント(栄養をつけるための薬)を飲む

おなかがすいていなくても無理に食べてしまう

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

ダイエットのために食べる量を減らす

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

72.4

82.3

18.5

15.1

24.3

10.6

17.5

26.1

28.7

75.2

84.6

33.2

26.8

22.3

21.9

7.5

25.5

20.1

食事の時間を楽しいと思う

テレビを見ながら食事をする

好きなものだけを食べ、嫌いなものを残す

スーパーやコンビニのお弁当を食べる

栄養ドリンクやサプリメント(栄養をつけるための薬)を飲む

おなかがすいていなくても無理に食べてしまう

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

ダイエットのために食べる量を減らす

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

80.6

84.5

26.5

35.2

27.2

16.6

37.1

15.7

26.3

82.9

87.3

29.5

36.4

30.3

34.6

11.2

19.9

32.3

2004年 2009年

2004年 2009年

(%)0 20 40 60 80 100

(%)0 20 40 60 80 100

図2-1-6 食事の様子(中学生、経年比較)

図2-1-7 食事の様子(高校生、経年比較)

─ 56 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

 その結果、すべての学校段階において、「好きなものだけを食べ、嫌いなものを残す」「栄養ドリンクやサプリメントを飲む」「朝食をとらないで学校に行く」といった質問項目に対し「よくある」「ときどきある」と答えた子どもの割合は、いずれも2004年と比べて2009年には減少している。三食をきちんと食べることや、好き嫌いを減らして食事を通じて栄養を考える食育の発想が広がっていることの表れであろうか。とはいえ、「スーパーやコンビニのお弁当を食べる」の割合は2004年も2009年にも変化がなく、三食きちんと食べるようになったということがすなわち手づくりご飯が増えたわけではないことに留意は必要である。「テレビを見ながら食事をする」の回答割合が減少し、「食事の時間を楽しいと思

う」の回答割合が増加していることから、食事の中身は市販品を活用することはあるものの、食事のしつけを心がけ、テレビなどを見ず、楽しく会話するような団らんの時間にしようと工夫している家庭が増えているのではないだろうか。なお、2004年から2009年にかけて、「ダイエットのために食べる量を減らす」では「よくある」「ときどきある」の回答が全学校段階で増加しており、図2-1-8に示すようにとくに中・高校生の女子で増加が目立つ。早い年代からダイエット志向が広まり、高校生の女子に至っては4分の1が食事量の調整をしているという状況である。過剰なやせ志向の広まりには注意が必要である。

図2-1-8 ダイエットのために食べる量を減らす(学校段階別・性別、経年比較)

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

2004年

2009年

2004年

2009年

2004年

2009年

2004年

2009年

2004年

2009年

2004年

2009年

0 5 10 15 20 25 30(%)

4.7

6.7

6.2

8.5

19.1

27.8

17.2

11.8

4.3

4.2

4.7

3.2

小学生

中学生

高校生

男子

女子

男子

女子

男子

女子

─ 57 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

◆家族の雰囲気と食事の様子 2004年調査でも明らかにしたとおり、食事の様子は、とくに年齢が低いほど家族の影響が大きいと考えられる。そこで今回の調査では、まず親との会話と食事に関する項目の関連性を検討した。ここでは父親や母親との会話に関する質問項目について、「よく話をする」または「ときどき話をする」と回答した項目数を合計し、会話の量の指標とした。つまり「学校でのできごと」や「勉強や成績のこと」「友だちのこと」などについて「よく話をする」または「ときどき話をする」と答えた数が多いほど、親との会話が多いことを表すと仮定した。なお親がいない場合にはその項目をとばすように指示してい

るため、無回答があった場合には検討からは除外した。母親との会話の量の多寡で2群に分け、食事に関する項目について比較した結果を図2-1-9に示す(なお、父親と母親の会話量別で傾向に違いがみられなかったため、ここでは母親との会話量別のみ掲載する)。母親との会話が少ない子どもは、朝食をとらないで学校に行く傾向がより高く、夕食を一人で食べる傾向が高く、食事の時間を楽しいと思いにくい傾向がみられた。なお相関分析を行ったところ、とくに夕食の孤食化や食事の時間を楽しむかについては、中・高校生で比較的高い相関がみられた。思春期以降、親子関係が変化することで会話の量と食事の様子との関連が強まるのかもしれない。

図2-1-9 食事の様子(学校段階別・母親との会話量別)

①朝食をとらないで学校に行く 母親との会話量多い群 母親との会話量少ない群

小学生 中学生 高校生

15.724.418.9

32.0 29.5 25.9

②夕食を一人だけで食べる

小学生 中学生 高校生

22.1

44.925.8

52.371.7

59.2

③食事の時間を楽しいと思う

小学生 中学生 高校生

95.0 92.2 91.8 95.5 95.8 98.1 (%)

0

20

40

60

80

100

(%)

0

20

40

60

80

100

(%)

0

20

40

60

80

100

注1)「よくある」+「ときどきある」の%。注2)母親との会話の項目について「よく話をする」「ときどき話をする」と回答した項目を合計し(0~ 5点)、0~ 3点を会話量少な

い群、4~ 5点を会話量多い群としている。注3)サンプル数は、小学生(会話量多い群1,651名、少ない群1,724名)、中学生(会話量多い群1,887名、少ない群1,888名)、

高校生(会話量多い群3,195名、少ない群2,955名)。

─ 58 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

 では、どのような親子関係がよりよい食事の質と関連するのであろうか。ここでは、前ページの分析で一定の関連がみられた「朝食をとらないで学校に行く」「夕食を一人だけで食べる」「食事の時間を楽しいと思う」の3項目についてより詳細に検討を加えてみよう。上記3項目について、「よくある」または「ときどきある」と回答したものを「ある」とし、親の関与によって食事の様子に違いがみられた主な項目について図に示したものが図2-1-10である。 「勉強を教えてくれる」「いいことをしたときにほめてくれる」「悪いことをしたときにしかってくれる」「困ったときに相談にのってくれる」については、朝食の欠食や1人での夕食、食事の時間の楽しみに関連がみられた。

 どの学校段階においても、勉強を教えてくれ、よいことをしたときにほめ、悪いことをしたときにしかってくれること、また困ったときに相談にのってくれると子どもが感じている親のもとでは、そうでない場合と比べて朝食をきちんと食べ、夕食を家族と食べ、食事時間を楽しんでいる割合が高い。とくに親の関与を否定的に評価している場合では、小学生から「食事の時間を楽しいと思う」と回答するものが7割にとどまっている。また、高校生では夕食の孤食の割合が約4割に達している。食事は単なる栄養補給の時間ではなく家族のありようを映し出す時間でもあることが、改めて示唆されているのではないだろうか。

図2-1-10 親の関与別にみる食事の様子(学校段階別)

いいえ はい

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

(%)

小学生

中学生

高校生

14.76.5

9.3

82.2

10.9

18.5

84.7

11.8

30.2

90.0

15.7

69.6

18.1

28.5

68.4

17.6

38.3

81.5

①勉強を教えてくれる(%)0 20 40 60 80 100

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

─ 59 ─

第2章

●第2回子ども生活実態基本調査

②いいことをしたときにほめてくれる いいえ はい

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

小学生

中学生

高校生

12.6

9.2

82.3

11.7

20.3

82.8

13.2

31.4

90.0

7.416.9

67.2

20.8

31.0

62.3

19.5

41.8

76.8

③悪いことをしたときにしかってくれる

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

小学生

中学生

高校生

13.77.6

9.7

81.0

13.2

21.4

79.7

14.3

32.7

87.7

17.9

66.7

20.6

33.4

61.8

20.4

43.8

75.4

④困ったときに相談にのってくれる

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

朝食をとらないで学校に行く

夕食を一人だけで食べる

食事の時間を楽しいと思う

小学生

中学生

高校生

12.26.9

8.6

83.0

11.3

19.6

84.2

13.5

29.9

90.3

16.0

70.2

18.5

28.7

66.8

19.0

42.2

77.5

(%)0 20 40 60 80 100

(%)0 20 40 60 80 100

(%)0 20 40 60 80 100

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

第1節 

日ごろの生活

─ 60 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

◆中学生以降は地域による差が大きい 子どもたちは、放課後の時間をどこで過ごしているのだろうか。学校段階別に、地域別・性別にグラフに示した。グラフは放課後過ごす場所として、「よく遊ぶ」または「ときどき遊ぶ」と回答した割合を示している。 小学生が放課後を過ごす場所として主にあげられたのは、「自分の家」「友だちの家」「公園や広場など」で、どの地域、性別でも多かった。とはいえ、大都市では、その他の地域より「自分の家」や「友だちの家」の割合が減り、「公園や広場など」「学校の教室」「学校の運動場」や「児童館や図書館などの公共施設」といった公共の場所が増える。大都市の場合、住居が狭い、子ども部屋が持ちにくいといった背景があるのだろう。また親の共働き等が多いと学童保育などの関連で学校内、または児童館などで過ごす子どもが増えるのかもしれない。性別では「学校の運動場」「公園や広場など」「自然のあるところ」で男子の割合がより高く、「児童館や図書館などの公共施設」は女子の割合がより高かった。男子のほうが外で体を動かして遊べる場所を好

む子どもが多いのだろう(図2-1-11)。  中学生になると、生活範囲に広がりがみられる。「自分の家」「友だちの家」「児童館や図書館などの公共施設」の割合は小学生より低下し、「本屋やビデオ屋」「コンビニやスーパーなどの近所のお店」「ゲームセンターやカラオケ」などの割合が高くなっている。「自分の家」や「友だちの家」については、地域差はそれほどみられないが、大都市では「公園や広場など」や「ゲームセンターやカラオケ」「ファーストフード店やファミリーレストラン」といった街中の施設で過ごす子どもの割合が増える。性差もみられ、「自分の家」「友だちの家」「学校の運動場」「公園や広場など」では男子のほうが多いが、女子では「コンビニやスーパーなどの近所のお店」「ゲームセンターやカラオケ」「ファーストフード店やファミリーレストラン」「デパートなどがある繁華街」の割合が高い。男子は小学生のころと変わらず身近な場所で遊ぶのが多いのに対し、女子の中には早熟で繁華街や街中で遊ぶ子どもも増えてきているのであろうか(図2-1-12)。

 小学生は「自分の家」「友だちの家」「公園や広場など」がどの地域、性別でも多い。ただし大都市で「学校の教室」や「学校の運動場」「児童館や図書館などの公共施設」が多い。中学生は生活範囲に広がりがみられ、「自分の家」「友だちの家」「公園や広場など」の比率が低下し、「本屋やビデオ屋」「コンビニやスーパーなどの近所のお店」「ゲームセンターやカラオケ」の比率が高まる。高校生は中学生の傾向に加え、「ファーストフード店やファミリーレストラン」の比率が高まり、大都市では4割近くに達している。

3. 放課後の遊び場

─ 61 ─

第2章

●第2回子ども生活実態基本調査

第1節 

日ごろの生活

図2-1-11 放課後の遊び場(小学生、地域別・性別)

男子

女子

大都市

中都市

郡部

自分の家

友だちの家

学校の教室

学校の運動場

公園や広場など

自然のあるところ

児童館や図書館などの公共施設

本屋やビデオ屋

コンビニやスーパーなどの近所のお店

ゲームセンターやカラオケ

ファーストフード店やファミリーレストラン

デパートなどがある繁華街

図2-1-12 放課後の遊び場(中学生、地域別・性別)

注)「よく遊ぶ」+「ときどき遊ぶ」の%。

0 20 40 60 80(%)

0 20 40 60 80(%)

56.367.869.3

67.8

16.0

42.5

41.0

18.5

11.9

7.7

8.4

4.7

3.0

7.3

63.3

10.5

26.8

62.9

13.5

16.1

9.3

12.6

5.5

3.6

4.9

58.8

20.4

41.8

71.8

14.2

40.1

12.1

11.2

8.7

4.8

9.5

65.2

12.1

24.2

10.0

3.6

5.6

12.1

55.2

29.6

17.2

61.1

64.5

65.4

13.1

42.0

62.4

18.2

19.6

9.4

9.7

8.2

3.9

6.2 6.2

男子

女子

大都市

中都市

郡部

自分の家

友だちの家

学校の教室

学校の運動場

公園や広場など

自然のあるところ

児童館や図書館などの公共施設

本屋やビデオ屋

コンビニやスーパーなどの近所のお店

ゲームセンターやカラオケ

ファーストフード店やファミリーレストラン

デパートなどがある繁華街

注)「よく遊ぶ」+「ときどき遊ぶ」の%。

53.055.962.3

44.7

19.5

8.2

6.4

4.3

19.3

14.3

9.1

12.1

13.9

8.9

46.3

13.6

12.3

29.5

9.6

7.6

13.7

21.5

24.0

27.0

21.3

51.9

22.1

15.0

38.8

10.5

18.2

36.0

25.9

24.0

32.8

30.4

62.950.1

21.1

19.7

27.0

29.6

23.5

10.2

5.7

23.1

8.2

19.8

41.354.1

17.1

16.3

33.8

15.3

13.6

22.0

24.5

21.3

11.8

15.3

0 20 40 60 80(%)

0 20 40 60 80(%)

─ 62 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

 高校生でも「自分の家」がもっとも多いのは変わらないが、「友だちの家」は中学生より半減する。そして中都市、大都市では「本屋やビデオ屋」「コンビニやスーパーなどの近所のお店」「ゲームセンターやカラオケ」「ファーストフード店やファミリーレストラン」「デパートなどがある繁華街」で過ごす子どもが増える。とくに大都市では「ファーストフード店やファミリーレストラン」で過ごす子どもの割合が4割近くに達し、身近な過ごし場所として定着しているようにみられる。生活範囲が拡大し通学や学習塾などで電車移動が増える大都市では、自宅以外に気楽に過ごせる場所として比較的安価で長時間利用できるファーストフード店やファミリーレストランを選びやすいのだろうか。性差については「自分の家」「友だちの家」で女子より男子が多く、「ファーストフード店やファミリーレストラン」で女子の割合が高い。生活の広がりを楽しむ女子が多いのであろうが、金銭的な負担は高まりそうである(図2-1-13)。

◆地域社会に対する満足度と放課後の遊び場 次に、地域社会に対する満足度が高い子どもが、放課後どのような場所で過ごしているのかについて検討してみた。 全体のデータを用いて放課後に過ごす場所に関する質問項目を因子分析(主因子法、バリマックス回転)した結果、放課後の過ごし場所は「街中」(ファーストフード店やファミリーレストラン/ゲームセンターやカラオケ/デパートなどがある繁華街/コンビニやスーパーなどの近所のお店)、「学校周辺等」(学校の運動場/学校

の教室/自然のあるところ)、「家や公園」(自分の家/友だちの家/公園や広場など)、「文教施設」(児童館や図書館などの公共施設/本屋やビデオ屋)に分けられた。そこで、それぞれの場所について「よく遊ぶ」または「ときどき遊ぶ」と答えた箇所の数の和を得点化した。「街中」を例とすると、「ファーストフード店やファミリーレストラン」「ゲームセンターやカラオケ」「デパートなどがある繁華街」「コンビニやスーパーなどの近所のお店」のすべての設問に対して「よく遊ぶ」または「ときどき遊ぶ」と回答している子どもは4点とした。ついで、小・中・高校生について、それぞれ「自分が住んでいる地域」への満足度をたずねた質問に対して「あまり満足していない」「ぜんぜん満足していない」と回答したものを不満群、「とても満足している」「まあ満足している」と回答したものを満足群とし、上記の放課後の過ごし場所得点を比較した。その結果、小学生や高校生では満足群と不満群との間で、放課後の過ごし場所得点に違いはみられなかった。中学生については一定の差がみられたため、図2-1-14で示す。「文教施設」や「学校周辺等」については差がないが、地域社会へ満足しているものは「家や公園」よりも「街中」で過ごす機会が多いようにみられる。この傾向は郡部よりも大都市や中都市で明白にみられた(図表省略)。関連する要因をさらに検討していく必要はあるが、都市圏では生活範囲の広がる中学生年代の子どもにとって比較的安全にかつ自由に過ごせる場所が幅広くあるなら、子どもの地域への満足度を高め、地域への関心へとつながるかもしれない。

─ 63 ─

第2章

●第2回子ども生活実態基本調査

第1節 

日ごろの生活

図2-1-13 放課後の遊び場(高校生、地域別・性別)

男子

女子

大都市

中都市

郡部

自分の家

友だちの家

学校の教室

学校の運動場

公園や広場など

自然のあるところ

児童館や図書館などの公共施設

本屋やビデオ屋

コンビニやスーパーなどの近所のお店

ゲームセンターやカラオケ

ファーストフード店やファミリーレストラン

デパートなどがある繁華街

街中 学校周辺等 家や公園 文教施設

図2-1-14 放課後の過ごし場所【平均得点】(中学生、住んでいる地域に対する満足度別)

注)「よく遊ぶ」+「ときどき遊ぶ」の%。

注)それぞれの場所で遊んでいるかどうかを得点化し、「満足群」「不満群」の平均値を算出した。

42.2 46.033.1

22.8

30.6

22.7

24.3

23.5

9.5

3.8

9.5

4.9

23.9

14.824.3

21.2

12.9

14.1

21.6

18.7

24.0

25.4

9.1

7.8

12.7

42.735.9

16.0

21.9

7.5

21.8

10.2

7.6

11.0

18.9

8.9

5.8

6.511.6

22.7

30.0

26.0

24.9

25.6

7.5

6.2

8.3

23.3

25.0

16.0

39.3

24.5

30.7

26.2

29.8

11.1

5.8

11.4

22.5

20.2

(%)0 10 20 30 40 50

(%)0 10 20 30 40 50

0

1

2

3

4(点)

2.993.15

2.55

1.62 1.63

2.56

1.75 1.64

満足群(2,962名) 不満群(880名)

─ 64 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

◆ 「小さいころからの経験」に大きな変化はなし ここでは、小さいころからの生活体験を概観する。それぞれの設問に対して「たくさんあった」または「ときどきあった」と回答したものの和を、学校段階別に示している。全体的な傾向は2004年と同様であったため、ここでは2009年の数値のみを示している。かくれんぼやおにごっこと

いった遊びの経験や地域のお祭り、海遊びや山遊びなど、全体的には多くの子どもが経験している。また、果物の皮を包丁でむく、のこぎりを使って物を作るといった項目は、小学生はやや低いものの中・高校生で6割を超えている(図2-1-15)。

 かくれんぼやおにごっこなどの遊びの経験、地域のお祭り、海遊びや山遊びなど全体的な小さいころからの経験は2004年から大きく変化していないものの、小学生で「親が働いている姿を見たこと」が減少していたり(親の働いている姿を見せる余裕が家庭になくなっているのかもしれない)、中・高校生で「本やテレビで感動して泣いたこと」が減少していたり(情緒的な体験が減少している可能性がある)といった変化もみられる。

4. 小さいころからの経験

図2-1-15 小さいころからの生活体験(学校段階別)

かくれんぼやおにごっこをして遊んだこと

地域のお祭りやイベントに参加したこと

海や山で遊んだこと

果物の皮を包丁でむいたこと

のこぎりを使って物を作ったこと

親が働いている姿を見たこと

赤ちゃんをだっこしたこと

虫をつかまえて遊んだこと

親に本を読んでもらったこと

本やテレビで感動して泣いたこと

友だちと本気でけんかしたこと

親に美術館や博物館に連れて行ってもらったこと

注)「たくさんあった」+「ときどきあった」の%。

(%)小学生 中学生 高校生

0 20 40 60 80 100

87.1

47.1

50.1

54.6

53.7

51.1

58.1

59.0

63.3

68.6

70.7

86.3

88.792.1

47.0

53.8

64.7

60.0

63.1

56.4

59.0

69.8

68.7

74.0

84.6

83.7

54.4

46.5

47.6

56.0

57.8

59.2

62.3

55.5

52.3

69.2

─ 65 ─

第2章

●第2回子ども生活実態基本調査

第1節 

日ごろの生活

◆学校段階別にみた2004年調査からの変化 全体的な傾向は2004年と変わらないとはいえ、子どもの生活体験にこの5年間でまったく変化がなかったわけではない。学校段階別に変化のみられた項目を以下に示す。数字はいずれも「たくさんあった」と「ときどきあった」の回答の和である。 小学生では「果物の皮を包丁でむいたこと」「親が働いている姿を見たこと」でわずかながら減少している。家庭の中で、小さいうちから家事を手伝わせたり、親の働いている姿を見せたりすることのできるゆとりがもてない家庭が少し増えたのだろうか(図2-1-16)。

 中学生では、「本やテレビで感動して泣いたこと」が減少し、「親に美術館や博物館に連れて行ってもらったこと」「地域のお祭りやイベントに参加したこと」「かくれんぼやおにごっこをして遊んだこと」が増えている。本やテレビを見て感動するという情緒を揺さぶられる体験が減少している反面、美術館や博物館へ行ったり、地域の行事へ参加したりすることが増えている。小さいころの生活体験が、子どもの成績や学業達成に関連することを指摘する研究が近年増加しており、その影響が表れたのであろうか(図2-1-17)。

図2-1-16 生活体験の変化(小学生、経年比較)

果物の皮を包丁でむいたこと

親が働いている姿を見たこと

注1)「たくさんあった」+「ときどきあった」の%。注2)変化のみられた2項目のみ示している。

(%)

2004年 2009年

0 20 40 60 80 100

56.1

67.1

52.3

62.3

(%)

2004年 2009年

図2-1-17 生活体験の変化(中学生、経年比較)

かくれんぼやおにごっこをして遊んだこと

地域のお祭りやイベントに参加したこと

本やテレビで感動して泣いたこと

親に美術館や博物館に連れて行ってもらったこと

注1)「たくさんあった」+「ときどきあった」の%。注2)変化のみられた4項目のみ示している。

0 20 40 60 80 100

58.9

88.7

86.3

47.1

54.6

42.7

83.8

85.8

─ 66 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

 高校生では、「本やテレビで感動して泣いたこと」や「虫をつかまえて遊んだこと」が5ポイント程度減少し、情緒的な体験・経験が乏しくなっていると考えられる。地域の行事への参加や親に美術館や博物館に連れて行ってもらった体験は増加しており、社会体験は増加しているといえよう(図2-1-18)。

◆小さいころの体験と将来展望の関係 2004年調査の際には、小さいころの体験が豊かであるほど、現在の親との関係や自己評価などが良好であるとの分析結果が得られた。これらの小さいころの体験は、現在の評価だけではなく、将来展望の基盤となりうると考えられる。今回の調査では、将来展望に関する項目を充実させ、40歳の自分に関する項目を設定している。そこで、40歳の自分についての設問とこれら小さいころの体験との関連を以下の手法で検討した。まず小さいころの体験については因子分析

(主因子法、バリマックス回転)を行い、その結果に基づき「情緒体験」(本やテレビで感動して泣いたこと/果物の皮を包丁でむいたこと/赤ちゃんをだっこしたこと/友だちと本気でけんかしたこと/親が働いている姿を見たこと)、「自然体験」(虫をつかまえて遊んだこと/海や山で遊んだこと/のこぎりを使って物を作ったこと/かくれんぼやおにごっこをして遊んだこと)、「文化体験」(親に本を読んでもらったこと/親に美術館や博物館に連れて行ってもらったこと)に分け、それぞれ「たくさんあった」または「ときどきあった」の和に基づき、上位3割に入る場合を「体験が多い群」、下位3割に入る場合を「体験が少ない群」、両群の中央を「体験が中間の群」とした。文化体験、情緒体験、自然体験の多い群および少ない群ごとに高校生の将来展望についての回答を示したものが図2-1-19である。

本やテレビで感動して泣いたこと

虫をつかまえて遊んだこと

親が働いている姿を見たこと

果物の皮を包丁でむいたこと

友だちと本気でけんかしたこと

地域のお祭りやイベントに参加したこと

親に美術館や博物館に連れて行ってもらったこと

注1)「たくさんあった」+「ときどきあった」の%。注2)変化のみられた7項目のみ示している。

図2-1-18 生活体験の変化(高校生、経年比較)

2004年 2009年

(%)0 20 40 60 80 100

70.5

61.3

70.7

55.6

82.4

43.1

64.7

59.0

47.0

84.6

53.8

68.7

63.168.0

─ 67 ─

第2章

●第2回子ども生活実態基本調査

第1節 

日ごろの生活

 この結果、文化体験の多い高校生は「親を大切にしている」や「幸せになっている」で86%を超えており、「多くの人の役に立っている」「世界で活躍している」も相対的に高めであるが、「自由にのんびり暮らしている」では、文化体験が少ない高校生よりも低くなっている。情緒体験や自然体験については、それぞれ多い群が少ない群より全設問に対して「そう思う」(「とてもそう思う」+「まあそう思う」)が多くなっているが、とくに差が大きいのが情緒体験では「多くの人の役に立っている」(16.1ポイント)、「子どもを育てている」(15.5ポイント)、「親を大切にしている」(11.1ポイント)、「幸せになっている」(10.9ポイント)、自然体験では「多くの人の役に立っている」(15.8ポイント)、「子どもを育てている」(11.9ポイント)となっている。すなわち、文化体験については子どもの知的な関心の成長につながり、かくあるべきといった理想論的未来展望の獲得へつながると考えられる。そのため、「幸せになりたい」「家族を持ち

たい」「活躍したい」といった目標志向性の高い未来のイメージを想像しやすくなる半面、やや自由にのんびり、といったイメージは描きにくくなる子もいるのだろう。一方、情緒体験や自然体験については、子どもの生活感覚や他者との関係性における成長につながり、人とのかかわりの中で自分がどうありたいか、といった将来展望につながるのではないだろうか。さらに、情緒体験や自然体験が乏しい子どもたちは、「お金持ちになる」「有名になる」といった野心的な未来のイメージを抱くことが難しいようである。これらの体験を十分に得られないような生活環境(たとえば経済的な不利や、ひとり親が就業のため子どもと過ごせない、体験を充実させるような施設やサービスへアクセスしづらい、といった社会的不利な状況)におかれている子どもに対しては、子どもたちの意欲を支えるためにも、小さいころからの体験を豊かにできるような社会的な取り組みが求められているのはいうまでもあるまい。

幸せになっている

親を大切にしている

子どもを育てている

自由にのんびり暮らしている

多くの人の役に立っている

お金持ちになっている

世界で活躍している

有名になっている

図2-1-19 小さいころの体験量別にみた将来展望(高校生)

75.986.8

47.0

14.5

15.2

28.4

61.4

83.6

84.8

60.9

10.5

11.9

26.4

30.9

68.1

73.7

情緒体験(%)

0 20 40 60 80 100

少ない群 多い群 少ない群 多い群 少ない群 多い群

注)「とてもそう思う」+「まあそう思う」の%。

75.8

81.2

30.5

15.1

16.8

46.4

61.5

83.6

85.4

30.6

10.1

10.2

23.7

61.0

69.3

74.2

自然体験(%)

0 20 40 60 80 100

76.1

80.3

47.2

14.3

17.1

29.6

58.7

86.4

86.2

70.9

11.9

10.5

24.8

30.0

64.8

71.6

文化体験(%)

0 20 40 60 80 100

─ 68 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

─ 68 ─

◆部活動に所属している中・高校生は忙しい 子どもたちの部活動の参加状況を調べたところ、中学生の85.9%(2004年85.6%)、高校生の83.4%(2004年76.9%)が「運動部に入っている」+「文化部に入っている」と答えており、多くの中・高校生が部活動に参加している状況に変化はない(基礎集計表参照)。 中・高校生の部活動への参加状況を性別にみたのが図2-1-20である。全体的に運動部に参加している生徒が多いが、中学生に比べて高校生で、また男子に比べて女子で文化部に参加している生徒の比率が高い。 次に部活動に参加している中・高校生の活動日数や活動時間について調べたのが表2-1-1である。中・高校生ともに運動部と文化部では活動状況が大きく違っており、運動部に入っている生徒は週の大半を部活動に費やしている(5日~7日活動している生徒が中学生で8割、高校生で9割)。一方、文化部の活動は、「ほとんど活動していない」~「7日(毎日)」まで回答にばらつきがあり、部活動の内容によって頻度に違いがあるようだ。また、1回あたりの活動時間は中・高校生ともにやや運動部で長くなっているが、文化部の活動時間と大きな差はなく、全体的に1時間半~3時間の間でまとまって活動している。

◆「部活動をやめて、勉強する!」は難しい? 次に、部活動への参加状況と家庭学習時間の関係についてみてみよう。中・高校生にとって

部活動と勉強の両立は大きな問題である。生徒の中には「部活動を最後まで続けるか」「受験勉強のために部活動をやめるか」で悩む生徒も少なくないのではないか。 ここでは現在も部活動に参加している生徒と途中でやめた生徒の学習状況の違いをみてみよう。なお、中学生のサンプルは中1生と中2生のみを使用している(中3生は引退による「部活動に入っていたがやめた」を含む可能性があるため)。 中学生で家庭学習を「ほとんどしない」と回答した生徒の比率は、部活動に参加している生徒で20.0%、部活動に参加していたがやめた生徒で44.4%、部活動に参加していない生徒で16.1%であった。部活動に参加していたがやめた生徒で比率が高くなっている(図2-1-21)。一方、家庭学習時間が「1時間+1時間30分」「2時間+2時間30分」「3時間+3時間以上」と回答した層の合計比率は、部活動に参加していたがやめた、部活動に参加していない生徒よりも部活動に参加している生徒で高くなっている。 高校生も、中学生と比率に差はあるものの、部活動に参加している生徒で家庭学習を「ほとんどしない」の比率がもっとも低く(23.9%)、部活動に参加していたがやめた生徒でもっとも高い(32.2%)。家庭学習が「1時間+1時間30分」「2時間+2時間30分」「3時間+3時間以上」と回答した層の合計比率も部活動に参加している生徒でもっとも高く、部活動に参加していた

 中・高校生ともに部活動に所属している生徒は、ほぼ毎日部活動に参加している。1回の活動時間は1時間半~3時間程度が多く、活発な活動状況は2004年調査から変わらない。 高校生のみが回答したアルバイト経験は約8割が未経験であり、経験者は少数派である。ただし、大都市や進路多様校ではアルバイト経験者の比率がやや高くなる。

5. 部活動・アルバイト

─ 69 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

─ 69 ─

中学生

高校生

運動部に入っている 文化部に入っている

文化部に入っていたがやめた 0.5部活動に入ったことはない 3.3

無回答・不明

3.2

運動部に入っていたがやめた

男子(2,012名)

女子(1,896名)

男子(3,306名)

女子(3,005名)

76.1 8.3

13.5

28.6

37.7

8.3 8.6

58.9

70.2 13.5 8.1 5.6

28.6 6.3

6.645.4 37.7 5.3

2.7

2.3

1.41.2

1.5

2.12.6

図2-1-20 部活動への参加状況(中・高校生、性別)(%)

活動日数 (%)

ほとんど活動していない 1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日

(毎日)無回答・不明

中学生運動部(2,945名) 1.5 0.5 1.6 3.8 8.8 22.2 44.8 15.6 1.2

文化部(761名) 7.0 4.3 15.5 11.3 11.4 16.4 21.4 11.6 1.1

高校生運動部(4,116名) 1.0 0.4 1.1 2.5 2.8 14.2 44.3 32.3 1.5

文化部(1,701名) 7.2 11.2 11.8 8.0 6.2 17.3 16.9 20.5 0.8

表2-1-1 部活動参加者の活動日数と活動時間(中・高校生、運動・文化部別)

活動時間 (%)

1時間未満

1時間くらい

1時間30分くらい

2時間くらい

2時間30分くらい

3時間くらい

3時間30分くらい

4時間くらい

4時間以上

無回答・不明

中学生運動部(2,945名) 0.7 0.7 3.9 20.6 29.4 26.1 9.5 5.2 2.2 1.5

文化部(761名) 2.6 7.6 14.8 28.5 22.5 15.2 3.0 1.2 2.9 1.6

高校生運動部(4,116名) 0.3 0.9 8.8 22.7 26.5 25.8 7.1 3.4 2.8 1.6

文化部(1,701名) 4.0 8.0 19.3 29.2 19.3 13.6 2.8 1.2 1.0 1.5

中学生(中3生除く)

部活動に参加している(2,440名)

部活動に参加していたがやめた(81名)

部活動に参加していない(56名)

高校生

部活動に参加している(5,271名)

部活動に参加していたがやめた(546名)

部活動に参加していない(384名)

ほとんどしない15分+30分+45分

1時間+1時間 30分2時間+2時間 30分3時間+3時間以上 2.0

無回答・不明

20.0

44.4

16.1

23.9

32.2

27.3 16.9 21.1

17.2 15.9

19.8 19.4

50.0

25.9 6.2

33.6 8.8

16.9 25.3 21.1 9.4

17.2 27.8 15.9 6.6

19.8 32.6 19.44.2

50.0 28.63.6 1.8

25.9 17.3 6.23.7

33.6 34.0 8.8 1.5

2.5

0.0

0.1

0.2

0.0

図2-1-21 部活動への参加状況と平日の家庭学習時間(中・高校生)

(%)

注) 「運動部」は「運動部に入っている」+「運動部に入っていたがやめた」、「文化部」は「文化部に入っている」+「文化部に入っていたがやめた」。

⎫⎬⎭

8割 ⎫⎬⎭

9割

─ 70 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

がやめた生徒でもっとも低くなっている。よって中学生と同様の家庭学習時間の傾向が確認された。ただし、どれだけ長時間学習をしても、その学習への取り組みの質が低ければ意味がない。そこで次に部活動への参加状況と学習意欲の関係についてみてみよう。

◆部活動をやめても勉強する意欲はわかない

 ここでは学習意欲をはかる質問項目として「勉強しようという気持ちがわかない」を使用する。部活動の参加状況と学習意欲の関係を示したものが図2-1-22である。 まず中学生の学習意欲であるが、部活動に参加している生徒の「とてもそう」「まあそう」の合計比率は56.6%、部活動に参加していたがやめた生徒は66.6%と、10ポイントの差が確認された。部活動に参加している生徒に比べ、部活動に参加していたがやめた生徒で学習意欲が低い者の比率が高い。 一方、高校生についても同様に「勉強しようという気持ちがわかない」の「とてもそう」「まあそう」の合計比率を調べたところ、部活動に参加している生徒は63.0%、部活動に参加していたがやめた生徒は65.4%であった。よって高校生では、中学生のような部活動の参加状況と学習意欲の間に大きな差は確認されなかった。 以上の結果から、少なくとも部活動に参加していることが中・高校生の家庭学習時間の減少や、学習意欲の低下につながるような状況はみられない。むしろ、部活動に参加している生徒のほうが、部活動に参加していない生徒よりも家庭学習に積極的に取り組み、意欲高く(学習意欲については中学生のみ)勉強に取り組む傾向が確認された。 もちろん部活動に参加していない生徒は学習塾や予備校など、学校外教育に積極的に取り組んでいることが考えられるため、今回の結果から一概に部活動と学習状況の関係を判断するこ

とはできない。しかし近年、学校現場で重要視されている「自学自習」の観点から生徒の学習状況をみたときに、少なくとも部活動への参加が生徒の学習の妨げになっているような現状はみられないようだ。

◆アルバイト経験は少数派

 次に高校生のアルバイト経験をみてみよう。アルバイトを「現在、している」と回答した高校生が5.1%、「したことはあるが、現在はしていない」が6.2%で、アルバイトを経験しているものは全体の1割強である。学年別にみると、高1生から高2生にかけてアルバイト経験者が増加しており、また高校偏差値層別では、進学校、中堅校に比べ、進路多様校でアルバイト経験者の比率が際立って高くなっていることがわかった(図2-1-23)。ただし解釈の際に、これらの差には本人の希望や意思のほかに、学校の規則など外部条件が影響している可能性があることは考慮しておく必要がある。 最後に地域別であるが、郡部<中都市<大都市の順で、「現在、している」の比率が高くなっており、とくに大都市が突出して高い。 また1か月に働いている日数をみたところ、大都市に比べ中都市でやや多くなっている(図2-1-24)。比較的日数の少ないアルバイトを経験している生徒は大都市で高く、平日ほぼ毎日(17~31日)アルバイトをしているような生徒の比率は中都市で高い。郡部についてはややサンプル数が少ないため、ここでは中都市と大都市だけの比較にとどめる。具体的にどのようなアルバイトをしているのかその職種はわからないが、1か月あたりの回数が少ないアルバイト経験をしている高校生が大都市で高くなっている。大都市の高校生のほうが中都市の高校生より、より自分や家庭の状況に合わせてアルバイトを経験しやすい環境にいるといえる。

─ 71 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

中学生(中3生除く)

部活動に参加している(2,440名)

部活動に参加していたがやめた(81名)

部活動に参加していない(56名)

高校生

部活動に参加している(5,271名)

部活動に参加していたがやめた(546名)

部活動に参加していない(384名)

とてもそう まあそう あまりそうでない

ぜんぜんそうでない(%)

無回答・不明

16.4

29.6

17.9

21.6

26.2

22.9 40.1 28.6 8.1

39.2 26.7 7.1

41.4 30.2 6.7

39.3 30.4 8.9

37.0 23.5 9.9

40.2 33.3 8.9 1.1

0.0

3.6

0.2

0.7

0.3

図2-1-22 部活動への参加状況と「勉強しようという気持ちがわかない」(中・高校生)

学年

高1生(3,270名)

高2生(3,049名)

進学校(2,976名)

中堅校(2,156名)

進路多様校(1,187名)

大都市(2,248名)

中都市(1,615名)

郡部(2,456名)

大都市(250名)

中都市(57名)

郡部(17名)

偏差値層

地域

図2-1-23 高校生のアルバイト経験(学年別・高校偏差値層別・地域別)

図2-1-24 高校生の1か月のアルバイト日数(地域別)

現在、しているしたことはあるが、現在はしていない

したことがない 無回答・不明

89.0

7.6

2.2

2.4

3.5

6.5 88.5 4.40.7

4.0

4.8

17.4

11.1 7.3

4.1 85.8 6.6

77.4 4.1

13.9 60.3 8.4

88.9 3.9

89.7 4.1

9.4 78.4 4.6

5.1

1~5日未満 5~9日未満 9~13日未満 13~17日未満無回答・不明

2.4

17~21日未満21~25日未満 1.2

25~31日 3.2

注)アルバイトを「現在、している」と回答した生徒のみ対象。

(%)

(%)

21.6

14.0

17.6 41.2 11.8

15.8 24.6 3.5

16.4 20.8

41.2 17.6 11.8 11.8

15.8 22.8 24.6 15.8 3.53.5

16.4 26.8 20.8 7.6

0.0

0.0

0.0 0.00.0 0.0

2.8 3.1

─ 72 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

◆紙媒体との接触が減少 ふだんの生活の中ですること(読書や家の手伝い、スポーツなど)をたずねたのが、図2-1-25である。小・中・高校生ともに7~8割していることは「マンガや雑誌を読む」「テレビのニュース番組を見る」である。小学生で多く、学校段階が上がるにつれて減少していくのは「本(マンガや雑誌以外)を読む」と「家の手伝いをする」「体を使って遊ぶ(スポーツなど)」の3項目で、逆に学校段階が上がるにつれて上昇しているのは「テレビのニュース番組を見る」である。一方、2004年との比較では高校生で「日記をつける」が増加しているが、これは携帯(ケータイ)の機能がこの5年でさらに拡充し、携帯からブログを更新しているような生徒が増えていることが影響しているかもしれない。 全体としては依然高い比率を保っているものの、すべての学校段階で「マンガや雑誌を読む」「新聞の記事を読む」など紙媒体との接触が減少している点が目につく。紙媒体からWEBへ、子どものメディアへのかかわり方が変化してきているのかもしれない。

◆ 学校段階が上がるにつれて性差が拡大 次に学校段階別・性別に比較したものが表2-1-2である。 小学生で、女子に比べて男子で多いのは「体を使って遊ぶ(スポーツなど)」(男子80.5%>女子66.8%)、「新聞の記事を読む」(男子36.2%>女子29.7%)である。一方、女子で多く、男子で少ないものは「本(マンガや雑誌以外)を読む」(女子68.3%>男子54.2%)、「家の手伝いをする」(女子79.8%>男子67.4%)である。 中学生で、女子に比べて男子で多いのは「テレビでニュース番組を見る」(男子75.9%>女子73.0%)、「体を使って遊ぶ(スポーツなど)」(男子70.9%>女子52.2%)、逆に男子に比べて女子で多いのが「マンガや雑誌を読む」(女子86.0%>男子80.4%)、「本(マンガや雑誌以外)を読む」(女子61.3%>男子51.7%)、「日記をつける」(女子24.7%>男子10.6%)、「家の手伝いをする」(女子63.9%>男子53.8%)である。 高校生で、女子に比べて男子で多いのは、「新聞の記事を読む」(男子37.4%>女子28.2%)、「体を使って遊ぶ(スポーツなど)」(男子69.0%>女子39.8%)である。反対に、男子に比べて女子で多いのは「日記をつける(女子27.1%>男子10.3%)、「家の手伝いをする」(女子57.8%>男子43.1%)である。全体的に学校段階が上がるにつれて性差が大きくなる。

 「マンガや雑誌を読む」「テレビのニュース番組を見る」は小・中・高校生ともに7~8割。ただし、2004年と比べ「マンガや雑誌を読む」「新聞の記事を読む」など紙媒体との接触が全体的に減少している。また「家の手伝いをする」「体を使って遊ぶ(スポーツなど)」は学校段階が上がるにつれて減少している。また性別による「ふだんすること」の違いは、学校段階が上がるにつれて大きくなる。

6. ふだんすること

─ 73 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

(3,561名)

図2-1-25 ふだんすること(学校段階別、経年比較)

(%)

(%)

(%)

小学生

(3,917名)

中学生

(6,319名)

高校生

ボランティア活動をする

体を使って遊ぶ

(スポーツなど)

家の手伝いをする

日記をつける

テレビのニュース番組を

見る

新聞の記事を読む

本(マンガや雑誌以外)

を読む

マンガや雑誌を読む

0

20

40

60

80

100

0

20

40

60

80

100

0

20

40

60

80

100

77.9

87.2

87.780.2

52.2 47.2 44.833.0

79.2 77.0

12.518.3

47.150.1 54.955.1

6.1 6.2

83.1

57.356.338.131.2

74.574.5

17.017.5

54.158.7 60.561.9

11.711.2

73.458.461.1

39.933.0

74.8 71.7

23.621.5

71.673.5 73.273.8

12.511.3

2004年 2009年

注)「よくある」 + 「ときどきある」の%。

小学生 中学生 高校生男子 女子 男子 女子 男子 女子

(1,814名) (1,745名)(2,012名) (1,896名)(3,306名) (3,005名)

マンガや雑誌を読む 73.6 73.0 80.4 < 86.0 80.2 80.2

本(マンガや雑誌以外)を読む 54.2 ≪ 68.3 51.7 < 61.3 46.3 48.2

新聞の記事を読む 36.2 > 29.7 35.8 > 26.4 37.4 > 28.2

テレビのニュース番組を見る 71.5 72.1 75.9 73.0 76.9 77.0

日記をつける 18.0 < 25.2 10.6 ≪ 24.7 10.3 ≪ 27.1

家の手伝いをする 67.4 ≪ 79.8 53.8 ≪ 63.9 43.1 ≪ 57.8

体を使って遊ぶ(スポーツなど) 80.5 ≫ 66.8 70.9 ≫ 52.2 69.0 ≫ 39.8

ボランティア活動をする 10.8 11.9 11.1 11.2 6.3 6.0

注1)「よくある」+「ときどきある」の%。注2) < >は5ポイント以上、≪ ≫は10ポイント以上差があることを示す。

(%)

表2-1-2 ふだんすること(学校段階別・性別)

─ 74 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

◆ 成績によって「ふだんすること」に差がある 最後に成績・高校偏差値層別にみたのが、表2-1-3である。どの学校段階でも成績上位層で「本(マンガや雑誌以外)を読む」「テレビのニュース番組を見る」「新聞の記事を読む」の比率が高くなっており、成績によって子どもたちの「ふだんすること」には差があることがわかる。とくに経年比較で減少していた「紙媒体」との接触は、成績、偏差値に

よる差が大きい。 また全体的な傾向として、成績上位層や進学校の生徒のほうが成績下位層や進路多様校の生徒に比べてふだんの生活の中で多くのことをしているようだ。 ただし、今回たずねた項目は子どもたちの生活が多様化するなかでごく一部の活動をとりあげたものであり、断定はできない。

表2-1-3 ふだんすること(学校段階別・成績/高校偏差値層別)

小学生

上位(1,139名)

中位(1,227名)

下位(972名)

マンガや雑誌を読む 73.7 73.5 71.9

本(マンガや雑誌以外)を読む 70.4 58.5 53.1

新聞の記事を読む 41.4 31.5 25.0

テレビのニュース番組を見る 77.6 72.2 63.8

日記をつける 25.2 21.3 18.4

家の手伝いをする 77.0 73.5 69.7

体を使って遊ぶ(スポーツなど) 77.9 74.9 68.0

ボランティア活動をする 14.6 10.5 08.7

中学生

上位(1,121名)

中位(1,214名)

下位(1,448名)

マンガや雑誌を読む 83.3 85.2 80.8

本(マンガや雑誌以外)を読む 63.2 57.3 48.3

新聞の記事を読む 39.3 29.4 24.8

テレビのニュース番組を見る 80.8 75.2 67.5

日記をつける 19.8 16.8 15.4

家の手伝いをする 58.6 61.0 57.0

体を使って遊ぶ(スポーツなど) 64.8 63.1 58.2

ボランティア活動をする 12.0 11.7 09.7

高校生

進学校(2,976名)

中堅校(2,156名)

進路多様校(1,187名)

マンガや雑誌を読む 78.9 80.5 82.7

本(マンガや雑誌以外)を読む 53.3 43.4 38.9

新聞の記事を読む 40.0 28.5 23.7

テレビのニュース番組を見る 81.6 73.9 70.9

日記をつける 17.6 17.3 21.9

家の手伝いをする 47.9 52.0 52.0

体を使って遊ぶ(スポーツなど) 55.2 55.9 53.5

ボランティア活動をする 04.6 06.4 09.8

注)「よくある」+「ときどきある」の%。

(%)

─ 75 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

◆ テレビ・ビデオの視聴時間は中学生で最長に 最近は携帯からインターネットで情報を入手するなど、人々のメディアとのかかわり方は変化してきているが、それでもテレビ・ビデオ(DVD)は依然、子どもたちの生活の中で欠かせないツールの1つであることに変わりはない。最近の子どもたちはどのくらいテレビ・ビデオの視聴に時間を費やしているのだろうか。ふだんのテレビ・ビデオの視聴時間(平均時間)を示したのが図2-1-26である。 子どもたちは1日に平均2時間テレビ・ビデオを見ている。小4生(104.2分)から学年が上

がるにつれて視聴時間は増加し、中2生(138.4分)で最大になり、高校生で大きく減少している。高校生になり部活動やアルバイト、勉強など、ふだんの生活の中で活動の幅が広がることが影響しているのかもしれない。2004年との比較では、2009年で小6生と高校生でテレビの視聴時間が減少しているが、大きな傾向に変化はない(図表省略)。 また性別にみた図2-1-27でも視聴時間に大きな差はなかったが、中学生で男女差がもっとも大きくなっている。

 テレビの視聴時間は平均2時間。小4生から次第に増加し、中2生でもっとも長くなっている。また、テレビゲームで遊ぶ時間は男女ともに2004年から増加しており、中2生でもっとも長くなる(1日平均80分)。2009年は、とくに女子でゲームの時間が増加しており、中学生の女子は2004年から平均で約20分増加した。

7. TV視聴・ゲームの時間

図2-1-26  テレビ・ビデオ(DVD)の視聴時間【平均時間】(学年別)

図2-1-27 テレビ・ビデオ(DVD)の視聴時間【平均時間】(学校段階別・性別)

小4生注)平均時間は「ほとんどしない」を0分、「3時間以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。

注)平均時間は「ほとんどしない」を0分、「3時間以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。

小5生 小6生 中1生 中2生 中3生 高1生 高2生

104.2 117.7 126.6 134.4 138.4 132.2

101.9 102.5

117.0

115.7

131.1

139.1

100.7

103.8

男子

女子

男子

女子

男子

女子

小学生

中学生

高校生

0

40

80

120

160(分)

0 30 60 90 120 150(分)

─ 76 ─

第2章 毎日の生活の様子

●第2回子ども生活実態基本調査

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

図2-1-28 テレビゲームで遊ぶ時間【平均時間】(学年別、経年比較)

図2-1-29 テレビゲームで遊ぶ時間【平均時間】(学校段階別・性別、経年比較)

2004年

2004年 2009年

注)平均時間は「ほとんどしない」を0分、「3時間以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。

注)平均時間は「ほとんどしない」を0分、「3時間以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。

小4生 小5生 小6生 中1生 中2生 中3生 高1生 高2生

64.2 69.6 73.1 72.5

80.3 75.5

46.5 47.0

30.8 35.3

50.5

66.363.867.5

63.8 56.9

83.088.8

41.048.5

80.392.6

39.1 58.6

49.159.9

15.032.3

男子

女子

男子

女子

男子

女子

小学生

中学生

高校生

(分)

0 20 40 60 80 100 (分)

2009年

◆ 中学生、女子でテレビゲームの時間が 大きく増加 次に、テレビゲームで遊ぶ時間(平均時間)をみる。2004年と比べ小・中・高校生すべての学校段階で、テレビゲームで遊ぶ時間が増加している(図2-1-28)。とくに中2生(2004年66.3分→2009年80.3分)、中3生(2004年50.5分→2009年75.5分)のテレビゲームで遊ぶ時間が長くなっており、2004年と比べて20分程度増加している。 この背景には、携帯型のゲーム機や携帯電話を用いたゲームが台頭し、場所を選ばず遊ぶことができるようになったことや、年齢や性別にかかわらず、家族で楽しむことができるソフトが開発されてきたことが影響してい

るかもしれない。今回の調査に合わせて行ったグループインタビューにおいても「隙間時間はすべてゲーム」といった発言がみられており(実際にすべての学校段階でインタビューの待ち時間にゲームに熱中する子どもたちの姿が確認された)、子どもたちの生活時間に占めるゲーム時間の割合は大きくなっているようである。 また性別にみたところ、すべての学校段階において、女子に比べ男子で長い時間テレビゲームで遊ぶ傾向が確認された(図2-1-29)。しかし、その増加幅は男子よりも女子で大きくなっており、中・高校生の女子においては約20分もテレビゲームの時間が増加している。

─ 77 ─

第2章

第1節 

日ごろの生活

●第2回子ども生活実態基本調査

図2-1-30 テレビゲームで遊ぶ時間【平均時間】(学校段階別・成績/高校偏差値層別)

63.0

68.1

73.8

61.7

72.7

90.5

37.0

50.5

64.2

上位

中位

下位

上位

中位

下位

進学校

中堅校

進路多様校

小学生

中学生

高校生

0 20 40 60 80 100 (分)

注)平均時間は「ほとんどしない」を0分、「3時間以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。

◆ テレビゲームの時間は成績・高校偏差値によって差がある

 最後に成績・高校偏差値層別にテレビゲームで遊ぶ時間をみてみよう。まず、すべての学校段階において共通するのは成績上位層でテレビゲームの時間が短く、中位層、下位層の順に長くなっていくということである(図2-1-30)。この傾向は高校偏差値層別でみても同様の傾向が確認された。

 また学校段階ごとにみていくと、小学生では成績上位層と下位層のテレビゲーム時間の差は10分程度(成績上位層63.0分、成績下位層73.8分)にすぎないが、中学生ではその差が28.8分(成績上位層61.7分、成績下位層90.5分)に、高校生も27.2分(進学校37.0分、進路多様校64.2分)に広がっている。 テレビゲームで遊ぶ時間は成績や高校偏差値によって差があることがわかる。