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低圧環境研究共同システム(LINCS)における熱真空試験に向けた取組み○今村 宰 南 友孝 (日大生産工) 山田 和彦( JAXA-ISAS ) 鈴木 宏二郎 (東大新領域)
第51回日本大学生産工学部 学術講演会 2018年12月1日
背景
柔軟エアロシェルを用いた大気圏突入システム
Contact : [email protected]
熱真空試験に必要な要件
まとめ
超小型衛星の熱真空試験を念頭に、40号館に設置されているLINCSの改良を進めている。メカニカルブースターポンプの増設により, 120Pa程度であった到達圧力が約10Pa以下を達成することができた。これに加えて熱収支の見積もりを行い、冷却箱の懸垂および断熱壁の設置を実施している。
謝辞
本研究の一部は、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 平成28年度宇宙工学委員会戦略的開発研究費の支援により実施されたものであり、ここに記して謝意を表す。
P40
http://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c1706_2.html
主なメリット 低弾道係数飛行による 空力加熱の
低減
展開型のため折り畳み可能、搭載の自由度大
終端速度が遅いためパラシュートが不要
海上浮遊装置が不要 輸送するものの形状に依存しない。
開発にあたり宇宙空間での実証試験が必要2017 EGG に続いて2020(?) BEAK 2025(?) SPUR などを企画。宇宙における熱環境の予測が問題点の一つである。
再突入超小型衛星EGGとその熱環境
2017年1月から5月にかけて、4カ月に渡り、再突入超小型衛星EGGを軌道上で運用。
展開型の柔軟エアロシェルを用いた超小型衛星として様々な知見が得られた
↑ 展開前は、3Uサイズ(11cm x 11cm x 34cm)
↑ エアロシェルの展開後は、対辺が80cm EGG放出時の様子
宇宙では背景輻射が3Kであり、日陰では放射冷却によって衛星は冷却される。
機器の安全な運用の観点からも熱環境の予測は不可欠。
衛星の熱モデルを構築して、事前にシミュレーションしているものの、実際には地上にて熱真空試験によって合わせこむパラメーターも存在する。
特に3Uサイズ程度であれば、国内に試験できる設備はあるものの1mオーダーとなると、熱真空試験を容易に行える環境は少ない。
↓ EGGの熱環境予測の例
日大生産工学部40号館に設置されているLINCSは、大型なのが特徴。その特徴を生かして、1mサイズの衛星の熱真空環境試験を行える設備を整え、今後の衛星開発に資する。
合わせて太陽光もしくは再突入時における加熱環境を模擬できる設備も構築する。
目的
衛星
1.2m の立方体内壁は黒体を仮定
衛星の周りに壁があると、真空中だとしても輻射で熱のやりとりを行う。
3U衛星の温度が300Kとして、壁面
が変化した場合の衛星の放熱量を、壁温が宇宙の背景放射と同じ場合(3K)の衛星の放熱量(Q(Tw=3K))に対する比を求めた。
液体窒素(77K)での冷却を想定。5%error で 142K (-131℃)、3%errorで 125K(-148℃)が必要
壁温136K程度、4.2%error を一次目標として設定。
Q
壁
0 50 100 150 2000.75
0.80
0.85
0.90
0.95
1.00
1.05
Rad
iatio
n he
at t
rans
fer
norm
aliz
ed
by
tha
t at
3K
atm
osph
ere
Wall temperature, K
Q(Tw=3K) = 19.3 W ( sat = 0.3)
1% error at 95K
3% error at 125K
5% error at 142K
10% error at 168K
0.01 0.1 1 10 100 10000.1
1
10
100
1000
Hea
t flu
x, W
/m2
Mea
n F
ree
Pat
h, m
m
Pressure, Pa
⊿T=10K, Air (heat conduction )
5mm gap
Mean Free Path
3mm gap
1mm gap
Heat flux
冷却壁温度の影響 圧力の影響
機器間の空気の存在による熱伝導の効果について検討。温度差⊿T=10Kとして機器間の距離を変化させて検討。
圧力が高い(平均自由行程が十分に短い)と空気の熱伝導率は圧力に依らない。対流を無視すれば、熱流束に対する圧力の影響はない。
圧力が低下し、機器間の距離が平均自由行程程度になると、自由分子流に近くなり、熱伝導率が低下。これに伴い熱流束も低下していく。
樹脂の熱伝導率を0.3Wm/Kと見積もると、大気圧空気はその1桁下のオーダー(0.024W/mK @0℃)。よって、熱流束が大気圧に比べて1桁下がれば、空気による熱伝導に依存する誤差は1%未満と推定。
圧力10Pa以下を一次目標として設定。
プレテストの結果とそれに基づく改良
冷却試験
真空容器内に1.2mの銅箱を設置。周囲に配管を通し、液体窒素にて冷却 50分程度、液体窒素150Lを流しても-50℃程度までしか、達成できず。 平均では-10℃程度
熱電対の設置位置
-50℃ at 0.8h
以下のように、QR, QN, QCを定義して、熱収支を見積もる。
⊿Q= QR + QC - QN と定義 ⊿Q<0であれば、十分な冷却な能力があると
言える。 この見積もりでは、-10℃程度までしか冷却で
きない。プレテストをよく再現している。
QR : 真空容器内壁からの熱放射による入熱量
QN : 液体窒素によって持ち去られる熱量
QC : 接触面からの熱伝導による入熱量
QR
Qc
QN
-10℃
150 200 250 300-40
-20
0
20
40
Hea
t tr
ansf
er,
W
Wall temperature, K
<< QR >> Outer wall 2.5m Cylindrical SUS T=300K, =0.9 Inner wall 1.2m cubic Copper, =0.0072<< QN >> Flow rate 2.5 LPM<< QC >> Contact area 1.22 m2
QR
⊿Q=0 at 263K
QC QN
⊿Q
冷却性能の改良 壁温(銅板壁)の温度低下とともに、QCの
値が大きくなる。 できる限り接触面積を少なくするため、天
井フランジを改良し、天井から冷却箱を吊り下げるように改良
←天井フランジからの吊り下げ (振れ止めも追加)
従前の下方からのスポンジによる支持を改良←
真空容器内壁からの輻射伝熱の低減のため、輻射遮壁の設置を検討
遮壁の効果は2枚まで特に有効と判断。ここでは3枚までの設置を目指す。
0 2 4 6 8 100
1
2
3
4
Rad
iativ
e he
at t
rans
fer
QR (
n),
W
Number of shroud wall
Outer wall : SUS, T=300K, =0.9Shorud : Aluminum, =0.06Inner wall : Copper, T=100K =0.0072
↑ 遮壁の概要と構成部材 ↑(風圧に耐えれるようにリブ構造に改良中)
以上のような改良を前提として、熱収支を見直し。 冷却系の強化(液体窒素の流量増など)はなくて
も、計算上は壁温124Kを達成可能であり、目標達成の見通しがついた。
遮壁の完成後、冷却試験を実施予定。100 150 200 250 300
-40
-20
0
20
40
Hea
t tr
ansf
er,
W
Wall temperature, K
QR
⊿Q=0 at 124K
QC
QN
⊿Q
低圧化の取り組み
現状のポンプ、配管構成では120Pa程度までの真空度が限界。
リークレートは、200Pa/day 程度であり、10μm程度のピンホールがある程度と見積もれる。
排気速度向上による真空度の向上を狙い、配管のインピーダンスを見直し、配管を100Aから150Aに変更。配管長も短絡。
これに加えて、メカニカルブースターポンプを新設。
これに伴い、10Pa程度(9Pa)までの真空度を達成。
今後、冷却試験を合わせて実施することで、密度上昇による更なる低圧化を期待
新設したメカニカルブースターポンプ →
加熱試験へ向けた取組
太陽光もしくは再突入時における加熱環境を模擬できる設備も構築中 ヒーター、温調器などを設置工事中 ヒーター配置について検討。 ヒーター温度300℃ ε=0.8 で 太陽定数程度の領域が30cm四方に構築可能 ヒータ温度 500℃,非加熱物15℃ で 6kW/m2 程度の加熱まで対応可能
F12
↑ 500℃まで対応可能な温調器
セラミッククリーンヒータ ↑(30cm x 40cm) の配置の様子
← ↑セラミッククリーンヒータの配置の検討
↑ 真空チャンバーまわりの冷却設備
↑ 冷却配管の取り回し