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国際課税関係の改正 目    次 一 特定外国子会社等に係る所得の課税の 特例等の改正 ������������ 654 Ⅰ 特定外国子会社等に係る所得の課税 の特例(外国子会社合算税制)の改正 654 ㈠ 改正前の制度の概要������ 654 ㈡ 改正の背景・趣旨等������ 658 ㈢ 改正の内容���������� 659 1  外国関係会社の範囲����� 659 2 制度の適用を受ける内国法人 (納税義務者) ��������� 666 3 特定外国関係会社又は対象外国 関係会社の適用対象金額に係る合 算課税(外国関係会社単位の合算 課税) ������������ 672 4 特定外国関係会社又は対象外国 関係会社の適用対象金額に係る合 算課税の適用免除������� 689 5 部分適用対象金額に係る合算課 税(部分合算課税) ������ 690 6 金融子会社等部分適用対象金額 に係る合算課税(部分合算課税) ��������������� 715 7 部分適用対象金額等に係る合算 課税の適用免除�������� 721 8 一定の外国関係会社の財務諸表 等の確定申告書への添付���� 722 9 外国子会社合算税制の適用に係 る税額控除���������� 724 10 特定課税対象金額等を有する内 国法人が受ける剰余金の配当等の 益金不算入���������� 726 11 外国信託に対する本制度の適用 729 ㈣ 居住者の特定外国子会社等に係る 所得の課税の特例の改正 ����� 730 1 適用対象金額に係る合算課税 (外国関係会社単位の合算課税) における課税対象金額に係る雑所 得の金額の計算上必要経費に算入 すべき金額���������� 730 2 金融子会社等部分適用対象金額 に係る合算課税における異常な水 準の資本に係る所得の計算��� 731 ㈤ 適用関係����������� 731 Ⅱ 特殊関係株主等である内国法人等に 係る特定外国法人の課税の特例(コー ポレート・インバージョン対策合算税 制)の改正 ������������ 733 ㈠ 改正前の制度の概要������ 733 ㈡ 改正の内容���������� 734 1 適用対象金額に係る合算課税 (外国関係法人単位の合算課税) � 734 2 部分適用対象金額に係る合算課 税(部分合算課税) ������ 735 3 金融関係法人部分適用対象金額 に係る合算課税(部分合算課税) ��������������� 736 ㈢ 適用関係����������� 736 二 非永住者の課税所得の範囲の改正�� 736 三 外国金融機関等の債券現先取引等に係 る利子等の課税の特例の改正 ����� 741 四 100%子法人株式の現物分配に係る組 織再編税制の見直しへの対応 ����� 761 五 外国税額控除の申告要件������ 765 六 租税条約の相互協議手続の改正に伴う 国内法の整備 ������������ 766 七 国税犯則調査手続の見直しに伴う租税 条約等実施特例法の整備 ������� 769 八 その他の国際課税の改正������ 773 ─651─

p651-778 CS6 六 本文 11 · ます。また、企業の事務負担を軽減する観点から、 改正前の制度との継続性を踏まえつつ、租税負担 割合20%以上の外国子

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国際課税関係の改正目    次

一 特定外国子会社等に係る所得の課税の特例等の改正������������� 654 Ⅰ 特定外国子会社等に係る所得の課税

の特例(外国子会社合算税制)の改正�654  ㈠ 改正前の制度の概要������ 654  ㈡ 改正の背景・趣旨等������ 658  ㈢ 改正の内容���������� 659    1 外国関係会社の範囲����� 659    2 � 制度の適用を受ける内国法人

(納税義務者)���������� 666    3 � 特定外国関係会社又は対象外国

関係会社の適用対象金額に係る合算課税(外国関係会社単位の合算課税)������������� 672

    4 � 特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額に係る合算課税の適用免除�������� 689

    5 � 部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税)������� 690

    6 � 金融子会社等部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税)����������������� 715

    7 � 部分適用対象金額等に係る合算課税の適用免除��������� 721

    8 � 一定の外国関係会社の財務諸表等の確定申告書への添付����� 722

    9 � 外国子会社合算税制の適用に係る税額控除����������� 724

   10� 特定課税対象金額等を有する内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入����������� 726

   11� 外国信託に対する本制度の適用�729  ㈣ 居住者の特定外国子会社等に係る

所得の課税の特例の改正������ 730

    1 � 適用対象金額に係る合算課税(外国関係会社単位の合算課税)における課税対象金額に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額����������� 730

    2 � 金融子会社等部分適用対象金額に係る合算課税における異常な水準の資本に係る所得の計算���� 731

  ㈤ 適用関係����������� 731 Ⅱ 特殊関係株主等である内国法人等に

係る特定外国法人の課税の特例(コーポレート・インバージョン対策合算税制)の改正������������� 733

  ㈠ 改正前の制度の概要������ 733  ㈡ 改正の内容���������� 734    1 � 適用対象金額に係る合算課税

(外国関係法人単位の合算課税)�� 734    2 � 部分適用対象金額に係る合算課

税(部分合算課税)������� 735    3 � 金融関係法人部分適用対象金額

に係る合算課税(部分合算課税)����������������� 736

  ㈢ 適用関係����������� 736二 非永住者の課税所得の範囲の改正�� 736三 外国金融機関等の債券現先取引等に係る利子等の課税の特例の改正������ 741四 100%子法人株式の現物分配に係る組織再編税制の見直しへの対応������ 761五 外国税額控除の申告要件������ 765六 租税条約の相互協議手続の改正に伴う国内法の整備������������� 766七 国税犯則調査手続の見直しに伴う租税条約等実施特例法の整備�������� 769八 その他の国際課税の改正������ 773

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はじめに

 企業を取り巻くグローバルな環境が大きく変化する中、国際課税の諸制度は、日本企業の健全な海外展開や国際競争力を維持・強化しつつ、我が国の適切な課税が確保できるよう不断に見直していく必要があります。 近年、企業のビジネスモデルは大きく変化しています。グローバル化や情報通信技術の進展を背景に、多国籍企業の活動は複雑化の一途を辿っており、生産、雇用、販売、マーケティング等をグローバルなレベルで最適な国・地域に配分するようになっています。 このようなビジネスモデルの変化に伴い、グローバルな資本や資産の移動にも顕著な変化が見られ、例えば、増加傾向にあるクロスボーダーの直接投資については、工場設立を通じた海外進出や実体のある企業のM&Aだけでなく、投資先国での活動を前提としない実体の伴わないペーパー・カンパニー等への投資が増加しています。また、知的財産の開発の場所と、知的財産からの収益が受領される場所が一致しない傾向も見られます。 このような企業行動の変化や国際資本移動の変容に、国際課税制度を適合させていく際には、健全な企業活動が阻害されないようにすることはもとより、一部の行き過ぎたタックス・プランニングを行っている企業に対して競争上不利になることも避けなければなりません。また、公平な競争条件をグローバルに整えるためには、税制の隙間や抜け穴をふさぎ、国際課税ルールを再構築していく努力を各国が協調して継続していくことが欠かせません。 このような問題意識の下、多国間協調による国際課税ルールの再構築を通じて対応することを目指した OECD・G20「BEPS(Base�Erosion�and�Profit�Shifting:税源浸食・利益移転)プロジェクト」は、15の行動からなる最終報告書を平成27年(2015年)10月に提示しました。これら15の行動は、①�課税利益認識の場と、経済活動・価値創造の場を一致させる「実態性(substance)」、

②�各国政府・グローバル企業の活動に関する「透明性(transparency)」、及び、③�租税紛争の効果的解決と合意事項の一貫した実施(consis­tency)による「予測可能性」、の三つの柱のもとで整理することができます。その取りまとめに当たり主導的役割を果たしてきた我が国としては、今後国際課税制度の改革を進めていく上で、BEPS プロジェクトの最終報告書で示された内容を十分に踏まえていく必要があります。 また、平成28年 4 月及び 5 月には、いわゆる「パナマ文書」が一部明らかにされ、国際的な租税回避に対する関心は更に高まり、G 7 伊勢志摩サミットでは、BEPS プロジェクトにおける合意事項の着実な実施の重要性が確認されました。このほかG20等の国際会議や我が国の国会においても、国際的な租税回避等の実態解明と、これに対する効果的な対応が、改めて大きな課題として認識されるに至りました。 こうした背景の下、平成29年度税制改正においては、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 3「外国子会社合算税制の強化(Designing�Effec­tive�Controlled�Foreign�Company�Rules)」)に関して、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的な考え方に基づき、日本企業の健全な海外展開を阻害することなく、より効果的に国際的な租税回避に対応するため、外国子会社合算税制の改正を行っています。 具体的には、租税回避リスクを、改正前の外国子会社の租税負担割合により把握する制度から、所得や事業の内容によって把握する制度に改めています。これにより、従来は制度の対象外であった租税負担割合20%以上の外国子会社について、一見して明らかに、利子・配当・使用料等のいわゆる「受動的所得」しか得ておらず、租税回避リスクが高いと考えられるペーパー・カンパニー等である場合には、原則として、その外国子会社の全所得を親会社の所得とみなして合算できるようになり、他方で、経済活動の実体のある事業から得られた、いわゆる「能動的所得」は、外国子会社の租税負担割合にかかわらず合算対象外となり

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――国際課税関係の改正――

ます。また、企業の事務負担を軽減する観点から、改正前の制度との継続性を踏まえつつ、租税負担割合20%以上の外国子会社は、租税回避リスクの高いペーパー・カンパニー等を除き、合算課税を免除して申告不要とする制度適用免除等の措置を講じています。 平成29年度税制改正では、BEPS 関連以外についても、国際課税関係では主に次のような改正を行っています。 第一に、非永住者が入国前に取得した株式等を外国市場等で譲渡したような、国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得については、非永住者の課税所得の範囲から除外する措置が講じられました。 第二に、外国金融機関等の債券現先取引(いわゆるレポ取引)等に係る利子等の課税の特例について、外国の金融機関以外の一定の外国法人が受け取る債券現先取引の利子等について一定の要件の下、非課税とするとともに、特例の対象となる金融機関の範囲に国内の短資会社や清算機関を追加することで、特例の範囲を拡大する措置が講じられました。 第三に、100%子法人株式の現物分配に係る組織再編税制の見直しへの対応として、非居住者等株主が、内国法人から100%外国子会社株式の現物分配を受ける場合には、我が国の課税権の確保の観点から、非居住者等株主において、株式の交付を受けた時点で、旧株式(現物分配法人株式)の譲渡損益を認識することとされました。 第四に、外国税額控除の申告要件について、納税者の立証すべき事項を明確化し、要件を満たす場合には控除額を変更できることを明らかにするための所要の改正が行われました。 第五に、日本・ベルギー租税条約等における相互協議手続の改正により、納税者の居住地国にかかわらず、いずれかの締約国の権限ある当局に対して相互協議の申立てを行うことができることとされたことに伴い、国内法上の手続についても、改正前の居住者・内国法人に加え、条約相手国等の居住者も国税庁長官に対して相互協議の申立て

を行うことができる者に追加する等の整備が行われました。 第六に、今般の国税犯則調査手続等の見直しに伴い、租税条約等の相手国等から犯則事件の調査に関する情報の提供要請があった場合に、一定の要件の下、電磁的記録を保管する者等に命じて、必要な電磁的記録を記録媒体に記録又は印刷させた上で、その記録媒体を差し押さえること(記録命令付差押え)ができることとするなど、国税犯則調査手続の見直しと同様の調査手続の整備が行われました。 これら国際課税の改正は、次の法令により行われています。(法律)・ 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律(平成28.11.28法律第85号)・ 所得税法等の一部を改正する等の法律(平成29. 3 .31法律第 4号)(政令)・ 地方法人税法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令(平成28.11.28政令第357号)・ 所得税法施行令の一部を改正する政令(平成29. 3 .31政令第105号)・ 法人税法施行令等の一部を改正する政令(平成29. 3 .31政令第106号)・ 地方法人税法施行令等の一部を改正する政令(平成29. 3 .31政令第107号)・ 租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令(平成29. 3 .31政令第114号)(省令)・ 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令(平成29. 3 .31総務省・財務省令第 3号)・ 所得税法施行規則の一部を改正する省令(平成29. 3 .31財務省令第16号)・ 法人税法施行規則の一部を改正する省令(平成29. 3 .31財務省令第17号)

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――国際課税関係の改正――

・ 租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令(平成29. 3 .31財務省令第24号)・ 法人税法施行規則の一部を改正する省令(平

成29. 4 .14財務省令第36号)(申告書別表関係)・ 地方法人税法施行規則の一部を改正する省令(平成29. 4 .14財務省令第37号)(申告書別表関係)

一 特定外国子会社等に係る所得の課税の特例等の改正

Ⅰ 特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の改正

㈠ 改正前の制度の概要

1 特定外国子会社等の課税対象金額の益金算入制度(会社単位の合算課税制度)

 居住者、内国法人及び特殊関係非居住者がその発行済株式等の50%超を直接及び間接に有する外国法人でその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(以下「本店所在地国」といいます。)におけるその所得に対して課される税負担が我が国において課される税負担に比して著しく低いもの(以下「特定外国子会社等」といいます。)の所得に相当する金額(以下Ⅰにおいて「適用対象金額」といいます。)のうち、その特定外国子会社等の発行済株式等の10%以上を直接及び間接に有する内国法人のその有する株式等に対応する部分として計算した金額(以下㈠において「課税対象金額」といいます。)をその内国法人の収益の額とみなして、その所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(旧措法66の 6①)。 ただし、特定外国子会社等が次の全ての要件(以下Ⅰにおいて「適用除外基準」といいます。)を満たしている場合には、特定外国子会社等のその満たす事業年度については、本税制の適用はない(会社単位での合算課税は行われない)こととされています(旧措法66の 6 ③)。⑴ 事業基準 株式等・債券の保有、工業所有権・著作権等の提供又は船舶・航空機の貸付け(以下「特定事業」といいます。)を主たる事業とするものでないこと。

 ただし、特定外国子会社等が事業持株会社に該当する場合には、適用除外の対象とならない株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等から除外することとされています。⑵ 実体基準 本店所在地国において、その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること。⑶ 管理支配基準 本店所在地国において、事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること。⑷ 非関連者基準又は所在地国基準① 非関連者基準 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業を主として特定外国子会社等の関連者以外の者との間で行っていること。 この場合の「主として特定外国子会社等の関連者以外の者との間で行っている」かについては、特定外国子会社等の主たる事業の区分に応じて、各事業年度の収入金額等の50%超が非関連者との取引から成る場合等の判定基準が設けられています(旧措令39の17⑧)。ただし、卸売業を主たる事業とする特定外国子会社等が統括会社に該当する場合には、その特定外国子会社等に係る外国法人である被統括会社を関連者の範囲から除外して判定することとされています(旧措令39の17⑩)。② 所在地国基準 上記①の非関連者基準が適用される 7業種以外の事業を主として本店所在地国において行っていること。 適用対象金額に係る適用除外の規定は、確定申告書に適用除外に該当する旨を記載した書面を添付し、かつ、適用除外に該当するこ

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――国際課税関係の改正――

とを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り適用することとされています(旧措法66の 6 ⑦)。

2  特定外国子会社等の部分課税対象金額の益金算入制度(資産性所得の合算課税制度)

 特定外国子会社等が、上記 1⑴から⑷までの適用除外基準の全てを満たすことにより上記 1の会社単位の合算課税制度が適用されない適用対象金額を有する場合において、租税特別措置法第66条の 6第 4項各号に規定する特定所得の金額を有するときは、その特定所得の金額の合計額(以下Ⅰにおいて「部分適用対象金額」といいます。)のうち、その特定外国子会社等の発行済株式等の10%以上を直接及び間接に有する内国法人のその有する株式等に対応する部分として計算した金額(その金額が課税対象金額に相当する金額を超えるときは、その相当する金額。以下Ⅰにおいて「部分課税対象金額」といいます。)をその内国法人の収益の額とみなして、その所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(旧措法66の 6 ④)。 ただし、特定外国子会社等の部分適用対象金額に係る収入金額が1,000万円以下である場合又は決算に基づく所得の金額に相当する金額のうちに部分適用対象金額の占める割合が 5%以下である場合には、資産性所得の合算課税は行われません(旧措法66の 6 ⑤)。なお、 2に係る適用除外の規定は、確定申告書に適用除外に該当する旨を記載した書面を添付し、かつ、適用除外に該当することを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り適用することとされています(旧措法66の 6 ⑦)。 特定所得の金額とは、次の金額をいいます。なお、⑴から⑸までの金額については、特定外国子会社等が行う事業(特定事業を除きます。)の性質上重要で欠くことのできない業務から生じたものは除外することとされています(旧措法66の 6 ④)。⑴ 剰余金の配当等(持株割合10%未満の法人か

ら受けるものに限ります。)の額の合計額から直接費用等の額の合計額を控除した残額⑵ 債券の利子の額の合計額から直接費用等の額の合計額を控除した残額⑶ 債券の償還差益の額の合計額から直接費用等の額の合計額を控除した残額⑷ 株式等の譲渡益(持株割合10%未満の法人の株式等で、かつ、金融商品取引所の開設する市場において行う譲渡等に限ります。)の合計額から直接費用の額の合計額を控除した残額⑸ 債券の譲渡益(金融商品取引所の開設する市場において行う譲渡等に係るものに限ります。)の合計額から直接費用の額の合計額を控除した残額⑹ 特許権等の使用料(自らが主として行った研究開発の成果に係る特許権等の使用料等を除きます。)の合計額から直接費用の額の合計額を控除した残額⑺ 船舶又は航空機の貸付けによる対価の額の合計額から直接費用の額の合計額を控除した残額

3  外国子会社合算税制の適用に係る外国税額控除

 内国法人が本税制の適用を受ける場合に、その内国法人に係る特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税があるときは、その外国法人税の額のうち課税対象金額又は部分課税対象金額(以下Ⅰにおいて「課税対象金額等」といいます。)に対応する部分の金額をその内国法人が納付する控除対象外国法人税の額(注)とみなして、法人税法第69条(外国税額の控除)及び地方法人税法第12条(外国税額の控除)の規定を適用することとされています(旧措法66の 7 ①)。(注) 「控除対象外国法人税の額」とは、内国法人が

納付した外国法人税の額のうち外国税額控除の

対象とされるものをいいます。

 上記の課税対象金額等に対応する部分の金額として内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなされる金額は、次に掲げる場合の区分に応じた算式により計算した金額(その金額が課税対

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――国際課税関係の改正――

象金額等を超える場合には、その課税対象金額等に相当する金額)とされています。

⑴ 会社単位の合算課税の適用を受ける場合(旧措令39の18①)《算式》特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税の額

×課税対象金額

調整適用対象金額

 上記算式の「調整適用対象金額」とは、特定外国子会社等の適用対象金額を有する事業年度(以下「課税対象年度」といいます。)に係る適用対象金額に、その適用対象金額の計算上控除されるその特定外国子会社等が持株割合25%以上等の要件を満たす子会社から受ける配当等の額(上記算式の外国法人税の額の課税標準に含まれるものに限ります。)及びその特定外国子会社等が他の特定外国子会社等から受ける配当等の額のうち当該他の特定外国子会社等の合算対象とされた金額から充てられた部分の金額(上記算式の外国法人税の額の課税標準に含まれるものに限ります。)を加算する調整を加えた金額をいいます(⑵において同じです。)。

⑵ 部分合算課税の適用を受ける場合(旧措令39の18②)《算式》特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税の額

×部分課税対象金額調整適用対象金額

 なお、控除対象外国法人税の額とみなされた金額は、内国法人の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(旧措法66の 7 ③)。

4  特定課税対象金額等を有する内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入

⑴ 外国子会社合算税制の適用対象となった外国法人から配当等を受ける場合の二重課税調整 内国法人が外国子会社合算税制の適用を受け

た外国子会社から配当等を受けた場合、その受けた配当等に対する課税と、その配当等の原資である外国子会社の所得に対する合算課税とが二重に生じるため、次のとおり二重課税調整規定が措置されています。① 持株割合25%以上等の要件を満たさない外国法人から受ける剰余金の配当等がある場合 内国法人が外国法人(外国子会社配当益金不算入制度における外国子会社に該当するものを除きます。)から受ける剰余金の配当等の額がある場合には、その剰余金の配当等の額のうちその外国法人に係る特定課税対象金額に達するまでの金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととされています(旧措法66の8 ①)。

② 持株割合要件25%以上等の要件を満たす外国法人から受ける剰余金の配当等の額のうち、外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける剰余金の配当等の額がある場合 内国法人が外国法人から受ける剰余金の配当等の額(法人税法第23条の 2第 1項(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)の規定の適用を受ける部分の金額に限ります。)がある場合には、その剰余金の配当等の額のうちその外国法人に係る特定課税対象金額に達するまでの金額についての外国子会社配当益金不算入制度の適用については、剰余金の配当等の額に係る費用相当額(剰余金の配当等の額の 5 %相当額とされています。)の控除をしないで計算することとされています。また、この措置の適用を受ける剰余金の配当等の額に係る外国源泉税等の額については、法人税法第39条の 2(外国子会社から受ける配当等に係る外国源泉税等の損金不算入)の規定は、適用しないこととされ、損金の額に算入することとされています(旧措法66の 8②)。③ 持株割合要件25%以上等の要件を満たす外国法人から受ける剰余金の配当等の額のうち、

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――国際課税関係の改正――

外国子会社配当益金不算入制度の適用対象とならない剰余金の配当等の額がある場合 内国法人が外国法人から受ける剰余金の配当等の額(法人税法第23条の 2第 2項(益金不算入の対象から除外される剰余金の配当等の額)の規定の適用を受ける部分の金額に限ります。)がある場合には、その剰余金の配当等の額のうちその外国法人に係る特定課税対象金額に達するまでの金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととされています(旧措法66の 8 ③)。④ 特定課税対象金額の計算 上記①から③までの特定課税対象金額とは、次のイ及びロの金額の合計額とされています(旧措法66の 8 ④、旧措令39の19②③)。イ 外国法人に係る課税対象金額又は部分課税対象金額で、内国法人がその外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含む事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されるもののうち、内国法人の有するその外国法人の直接保有の株式等の数に対応する部分の金額ロ 外国法人に係る課税対象金額又は部分課税対象金額で、内国法人がその外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含む事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されたもののうち、内国法人の有するその外国法人の直接保有の株式等の数に対応する部分の金額

⑵ 外国子会社合算税制の適用対象となった外国孫会社から外国子会社を通じて配当等を受ける場合の二重課税調整 内国法人が、外国子会社合算税制の適用を受けた外国孫会社から外国子会社を経由して配当を受けた場合、その受けた配当に対する課税と、その配当の原資である外国孫会社の所得に対する合算課税とが二重に生じるため、その受ける

剰余金の配当等の額のうち間接特定課税対象金額に達するまでの金額については、上記⑴①から③までと同様の二重課税調整規定が措置されています(旧措法66の 8 ⑧~⑩)。この「間接特定課税対象金額」とは、次の①及び②のうちいずれか少ない金額とされています(旧措法66の 8 ⑪、旧措令39の19⑦~⑪)。① 内国法人が外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含む内国法人の事業年度(以下「配当事業年度」といいます。)開始の日前 2年以内に開始した各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日から配当事業年度終了の日までの期間において、その外国法人が他の外国法人から受けた剰余金の配当等の額のうち、内国法人の有するその外国法人の直接保有の株式等に対応する部分の金額② 次のイ及びロの合計額イ 上記イの他の外国法人に係る課税対象金額又は部分課税対象金額で、配当事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されるもののうち、内国法人の有する当該他の外国法人の間接保有の株式等に対応する部分の金額ロ 上記イの他の外国法人に係る課税対象金額又は部分課税対象金額で、配当事業年度開始の日前 2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されたもののうち、内国法人の有する当該他の外国法人の間接保有の株式等に対応する部分の金額

(注) 連結法人の各連結事業年度の連結所得に対す

る法人税についても上記 1から 4までと同様の

制度が設けられています(旧措法68の90~68の

92)が、これらの制度の基本的な仕組みは内国

法人に係る特定外国子会社等に係る所得の課税

の特例と同様ですので、説明は省略します。

 また、居住者の各年分の所得に対する所得税

についても上記 1、 2及び 4と同様の制度が設

けられています(旧措法40の 4 ~40の 6 )が、

これらの制度の基本的な仕組みは内国法人に係

─�657�─

――国際課税関係の改正――

る特定外国子会社等に係る所得の課税の特例と

同様とされています。

㈡ 改正の背景・趣旨等

 外国子会社合算税制は、外国子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です。 改正前の外国子会社合算税制には、外国子会社の租税負担割合が20%以上であれば、実体のない「ペーパー・カンパニー」等であっても、制度が適用されない一方、租税負担割合が20%未満であれば、実体のある事業を行っている場合であっても、その所得が、親会社の所得に合算されてしまう場合がある、といった問題があったところであり、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的な考え方に基づき、日本企業の健全な海外展開を阻害することなく、より効果的に国際的な租税回避に対応

する観点から、見直しが行われました。 具体的には、租税回避リスクを、改正前の外国子会社の租税負担割合により把握する制度から、所得や事業の内容によって把握する制度に改められました。 これにより、従来は制度の対象外であった租税負担割合20%以上の外国子会社について、一見して明らかに、利子・配当・使用料等の「受動的所得」しか得ておらず、租税回避リスクが高いと考えられるペーパー・カンパニー等である場合には、合算税制の対象とされました。 他方で、経済活動の実体のある事業から得られた、いわゆる「能動的所得」は、外国子会社の租税負担割合にかかわらず合算対象外とされました。 また、企業の事務負担を軽減する観点から、改正前の制度との継続性を踏まえつつ、ペーパー・カンパニー等に該当しない租税負担割合20%以上の外国子会社は制度の適用を免除する等の措置が講じられました。

外国子会社の税負担率

20%

能動的所得 受動的所得

改正前の制度のイメージ 見直し後のイメージ

能動的所得 受動的所得

実体を伴わない所得であっても合算されず、

申告も求められない部分

外国子会社の税負担率

実体ある事業からの所得であれば、

税負担率に関わらず合算対象外

税負担率が20%未満の会社の

受動的所得は合算

制度対象とするか否かを入口で決定する基準

所得を「能動/受動」に仕分ける事務作業を免除する基準

合算対象所得

20%

税負担率が20%以上の会社は制度の適用を免除

(所得を「能動/受動」に仕分ける事務作業は不要)

一見して明らかに受動的所得しか得ていない(経済実体のない)ペーパー・カンパニー等については、税負担率が30%未満の場合は、所得の全額を合算

実体ある事業からの所得も一部合算されてしまう部分(航空機リース等)

- 租税回避リスクを、外国子会社の外形(会社全体の税負担率(20%未満)や会社としての実体の有無等)により把握

- 租税回避リスクを、外国子会社の個々の活動内容(所得の種類等)により把握- 租税回避リスクの低い外国子会社に、所得を「能動/受動」に分類する事務作業が発生しないよう、一定の税負担をしている外国子会社は適用を免除

○ 「外国子会社合算税制」とは、外国子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度。

○ 改正前の制度では、外国子会社の税負担水準が20%(トリガー税率)以上であれば経済実体を伴わない所得であっても合算されず、申告も求められない一方で、実体ある事業から得た所得であっても合算されてしまう場合がある、という問題あり。

○ 平成29年度税制改正においては、「BEPSプロジェクト(行動 3)」の合意や「平成28年度与党税制改正大綱」で示された方向性を踏まえ、租税回避をより的確に抑制するとともに、日本企業の海外展開を阻害しないような制度とすべく、以下の方向性で制度を見直し。

外国子会社合算税制:見直しの方向性

─�658�─

――国際課税関係の改正――

㈢ 改正の内容

1 外国関係会社の範囲

⑴ 改正の概要 居住者・内国法人等が直接又は間接に50%を超える持分を有する外国法人を、「外国関係会社」と定義しています。間接の持株割合等は、改正前は、居住者・内国法人等が株式等を直接有する外国法人に対する持株割合等と、その外国法人が株式等を直接有する別の外国法人に対する持株割合等とを乗じることで、判定対象となる外国法人に対する居住者・内国法人等の持株割合等を算出する「掛け算方式」を採用しており、各段階での持株割合等を乗じて計算した割合が50%を超える場合には「外国関係会社」と判定していました。したがって、50%超の持

分による支配が連続していても間接支配はしていないと判定されることになっていましたが、今回の改正では、外国関係会社の判定においては、50%超の連鎖関係があれば支配関係が連続していると判定することとされました。よって、改正後は、居住者・内国法人等と外国法人との間、及びその外国法人と別の外国法人との間に、それぞれ50%を超える株式等の持株割合等の連鎖がある場合には、「外国関係会社」に該当することとなります(注)。(注) 外国関係会社の判定における間接保有割合

の計算方法が掛け算方式から連鎖方式に変更

されることに伴って、改正前の制度の問題点

として指摘されていた点が解決されます。す

なわち、内国法人と外国法人(上場会社)が

共同で、50%・50%を出資して外国子会社を

設立した時に、共同出資の相手方である外国

○ 日本企業の海外での事業展開を阻害することなく、効果的に租税回避リスクに対応できるよう、改正前の制度の骨格は維持しつつ、以下を 見直し。見直しに当たっては、租税回避に関与していない企業に過剰な事務負担がかからないよう配慮。

見直しの目的 内容

会社単位の租税負担割合が一定率(トリガー税率)以上である事のみを理由に、合算対象とされないことへの対応

租税回避リスクに効果的に対応しつつ、改正前の制度と比較して過剰な事務負担が企業にかからないようにする資本関係は無いが、契約関係等により子会社を支配しているケースや間接支配への対応実体ある事業を行っている航空機リース会社や製造子会社の所得が合算されないよう対応第三者を介在させることで、「非関連者基準」を形式的に満たすケースへの対応

経済実体のない、いわゆる受動的所得は合算対象とする

主たる事業が株式の保有、IP の提供、船舶・航空機リース等でないこと

本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること

本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること

主として所在地国で事業を行っていること

主として関連者以外の者と取引を行っていること⑥ 関連者取引の判定方法の整備

②ペーパー・カンパニー/事実上のキャッシュ・ボックス/ブラック・リスト国所在のもの

⑤ 製造子会社に係る判定方法の整備

⑤ 一定の要件を満たす航空機リース会社を除く居住者又は内国法人

(④実質支配基準の導入と持株割合の計算方法の見直し)

(① トリガー税率の廃止)

居住者・内国法人等が合計で50%超を直接及び間接に保有

居住者又は内国法人

同族株主グループ

特殊関係者

(個人・法人)

経済活動基準

トリガー税率を廃止し(①)、ペーパー・カンパニー等の所得は、原則、会社単位で合算(②)

事務負担軽減の措置として、会社単位の租税負担割合「20%」による制度適用免除基準を設定(③)(注)

(注:ただし、一定の保険委託者・資源投資法人については、事業実態に配慮した特例を措置)

(注:ただし、金融機関が本業から得る金融所得は合算対象から除外)

全てを満たす 20%未満

20%未満

30%未満

いずれかを満たさない

実質支配基準の導入と持株割合の計算方法の見直し(④)

事業基準・所在地国基準の判定方法の見直し(⑤)

非関連者基準の判定方法の見直し(⑥)受動的所得の対象範囲の設定(配当、利子、無形資産の使用料等)(⑦)

A 事業基準

B 実体基準

C 管理支配基準

D 所在地国基準(下記以外の業種)

非関連者基準(卸売業など 8 業種)

③会社単位の租税負担割合判定

(事務負担軽減の措置)

⑦対象所得の範囲設定

受動的所得の合算課税

会社単位の合算課税

③会社単位の租税負担割合判定

(事務負担軽減の措置)

(注) 適用免除の効果については、「 4 ⑵合算課税の適用免除の効果」をご参照ください。

外国子会社合算税制:見直しの主なポイント

─�659�─

――国際課税関係の改正――

法人の株式を日本の居住者が 1 株でも取得し

てしまうと、外国子会社について日本の居住

者による間接保有割合がほんの僅かながら発

生し、居住者・内国法人全体での直接及び間

接の保有比率が50%超になり、日本の共同出

資者が意図しないところで外国子会社合算税

制の課税が生ずる可能性がありました。

 改正後は、間接保有割合は居住者・内国法

人等との間に50%超の株式等の保有を通じた

連鎖関係がある外国法人が有する他の外国法

人の株式等の保有割合とされたため、少数株

主である居住者による間接保有割合は計算さ

れないこととなり、共同出資の相手方である

外国法人に少数の居住者株主が存在する場合

の問題が解消されることになりました。

 また、改正前は、外国関係会社は居住者・内国法人との間の資本関係に基づいて判定していたため、外国法人との資本関係を意図的に断絶しつつ、契約関係等によりその外国法人に対する支配を実質的に維持することで制度の適用を免れることが可能となっていましたが、今回の改正では、資本関係がなくとも、居住者・内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求することができるなど会社財産に対する支配関係がある場合には、その外国法人を外国関係会社とすることとされました。

(※)「直接・間接の持株割合等」は、株式等の数・金額、議決権の数、株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額に基づき計算される。

① ②

外国関係会社

50%超

外国関係会社

外国関係会社

50%超

特殊関係非居住者

外国関係会社

50%超

内国法人 居住者 内国法人

実質支配されている外国法人

外国関係会社

実質支配されている外国法人

外国関係会社

実質支配

50%超

50%超

実質支配されている外国法人

実質支配

外国関係会社

50%超

②により外国関係会社に該当

実質支配

①により外国関係会社に該当

50%超 外国関係会社

外国関係会社

50%超

50%超

内国法人

外国関係会社

実質支配

居住者・内国法人 居住者・内国法人

① 居住者等株主等(居住者・内国法人・特殊関係非居住者・実質支配されている外国法人)の外国法人(実質支配されている外国法人を除く。)に係る直接・間接の持株割合等(※)が50%を超える場合におけるその外国法人

② 居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある外国法人

外国関係会社の範囲(イメージ)

─�660�─

――国際課税関係の改正――

⑵ 改正後の外国関係会社の範囲 今回の改正後の外国関係会社は、具体的には、次の①又は②に掲げる外国法人とされています(措法66の 6 ②一)。① 居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(居住者又は内国法人と特殊の関係のある非居住者をいいます。)及び②に掲げる外国法人(①において「居住者等株主等」といいます。)の外国法人に係る次に掲げる割合のいずれかが50%を超える場合におけるその外国法人イ 居住者等株主等の外国法人(②に掲げる外国法人に該当するものを除きます。)に係る直接保有株式等保有割合(居住者等株主等の有するその外国法人の株式等の数又は金額がその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合をいいます。)及び居住者等株主等のその外国法人に係る間接保有株式等保有割合(居住者等株主等の他の外国法人を通じて間接に有するその外国法人の株式等の数又は金額がその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合(注)をいいます。)を合計した割合(注) 上記イの間接保有株式等保有割合は、

具体的には、次に掲げる場合の区分に応

じ次に定める割合(次に掲げる場合のい

ずれにも該当する場合には、次に定める

割合の合計割合)とされています(措令

39の14の 2 ②)。

イ� 外国関係会社への該当性を判定しよ

うとする外国法人(①において「判定

対象外国法人」といいます。)の株主等

である外国法人(②に掲げる外国法人

に該当するものを除きます。)の発行済

株式等の50%を超える数又は金額の株

式等が居住者等株主等によって保有さ

れている場合��その株主等である外

国法人の有するその判定対象外国法人

の株式等の数又は金額がその発行済株

式等のうちに占める割合(その株主等

である外国法人が二以上ある場合には、

その二以上の株主等である外国法人に

つきそれぞれ計算した割合の合計割合)

ロ� 判定対象外国法人の株主等である外

国法人(上記イに掲げる場合に該当す

る上記イの株主等である外国法人及び

②に掲げる外国法人に該当するものを

除きます。)と居住者等株主等との間に

これらの者と株式等の保有を通じて連

鎖関係にある一又は二以上の外国法人

(②に掲げる外国法人に該当するものを

除きます。ロにおいて「出資関連外国

法人」といいます。)が介在している場

合(出資関連外国法人及びその株主等

である外国法人がそれぞれその発行済

株式等の50%を超える数又は金額の株

式等を居住者等株主等又は出資関連外

国法人(その発行済株式等の50%を超

える数又は金額の株式等が居住者等株

主等又は他の出資関連外国法人によっ

て保有されているものに限ります。)に

よって保有されている場合に限りま

す。)��その株主等である外国法人の

有するその判定対象外国法人の株式等

の数又は金額がその発行済株式等のう

ちに占める割合(その株主等である外

国法人が二以上ある場合には、その二

以上の株主等である外国法人につきそ

れぞれ計算した割合の合計割合)

─�661�─

――国際課税関係の改正――

ロ 居住者等株主等の外国法人(②に掲げる外国法人に該当するものを除きます。)に係る直接保有議決権保有割合(居住者等株主等の有するその外国法人の議決権の数がその総数のうちに占める割合をいいます。)及び居住者等株主等のその外国法人に係る間接保有議決権保有割合(居住者等株主等の他の外国法人を通じて間接に有するその外国法人の議決権の数がその総数のうちに占める割合(注)をいいます。)を合計した割合(注) 上記ロの間接保有議決権保有割合は、

上記イの間接保有株式等保有割合に準じ

て計算することとされており(措令39の

14の 2 ③)、具体的には、次に掲げる場合

の区分に応じ次に定める割合(次に掲げ

る場合のいずれにも該当する場合には、

次に定める割合の合計割合)となります。

イ 判定対象外国法人の株主等である外

国法人(②に掲げる外国法人に該当す

るものを除きます。)の議決権(剰余金

の配当等に関する決議に係るものに限

ります。ロにおいて同じです。)の総数

の50%を超える数の議決権が居住者等

株主等によって保有されている場合

��その株主等である外国法人の有す

るその判定対象外国法人の議決権の数

がその総数のうちに占める割合(その

株主等である外国法人が二以上ある場

合には、その二以上の株主等である外

国法人につきそれぞれ計算した割合の

合計割合)

ロ 判定対象外国法人の株主等である外

国法人(上記イに掲げる場合に該当す

る上記イの株主等である外国法人及び

②に掲げる外国法人に該当するものを

除きます。)と居住者等株主等との間に

これらの者と議決権の保有を通じて連

内国法人 居住者

特殊関係非居住者

実質支配されている外国法人

内国法人

保有割合

実質支配

内国法人

株主等※(外国法人)

実質支配されている外国法人

居住者

実質支配

50%超

保有割合

株主等※(外国法人)

出資関連外国法人※

居住者

保有割合

出資関連外国法人※

50%超

50%超 50%超

※ 居住者・内国法人に実質支配されている外国法人に該当するものを除く。

居住者等株主等居住者等株主等居住者等株主等

内国法人

 外国関係会社の判定場面における持株割合は、居住者等株主等の外国法人(被支配外国法人に該当するものを除く。)に係る直接保有株式等保有割合(居住者等株主等の有する外国法人(被支配外国法人に該当するものを除く。)の株式等の数・金額がその発行済株式等の総数・総額のうちに占める割合)と間接保有株式等保有割合とを合計した割合とされている。【措法66の 6②一イ( 1)】

■ 間接保有株式等保有割合≪措令39の14の 2 ②≫  次の①及び②に定める割合① 判定対象外国法人の株主等である他の外国法人(被支配外国法人に該当するものを除く。)の発行済株式等の50%超の株式等が居住者等株主等に保有されている場合・・・その株主等である他の外国法人のその判定対象外国法人に係る持株割合② 判定対象外国法人の株主等である他の外国法人(被支配外国法人に該当するものを除く。)と居住者等株主等との間に株式等の保有を通じて発行済株式等の50%超の連鎖関係にある一又は二以上の出資関連外国法人(被支配外国法人に該当するものを除く。)が介在している場合・・・その株主等である他の外国法人のその判定対象外国法人に係る持株割合

(注)議決権の数、株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額に基づき計算する場合も同様《措令39の14の 2 ③④》

判定対象外国法人※判定対象外国法人※ 判定対象外国法人※

○直接保有株式等保有割合 ○間接保有株式等保有割合

外国関係会社の判定場面における「間接保有株式等保有割合」

─�662�─

――国際課税関係の改正――

鎖関係にある一又は二以上の外国法人

(②に掲げる外国法人に該当するものを

除きます。ロにおいて「出資関連外国

法人」といいます。)が介在している場

合(出資関連外国法人及びその株主等

である外国法人がそれぞれその議決権

の総数の50%を超える数の議決権を居

住者等株主等又は出資関連外国法人

(その議決権の総数の50%を超える数の

議決権が居住者等株主等又は他の出資

関連外国法人によって保有されている

ものに限ります。)によって保有されて

いる場合に限ります。)��その株主等

である外国法人の有するその判定対象

外国法人の議決権の数がその総数のう

ちに占める割合(その株主等である外

国法人が二以上ある場合には、その二

以上の株主等である外国法人につきそ

れぞれ計算した割合の合計割合)

ハ 居住者等株主等の外国法人(②に掲げる外国法人に該当するものを除きます。)に係る直接保有請求権保有割合(居住者等株主等の有するその外国法人の株式等の請求権(剰余金の配当等を請求する権利をいいます。以下同じです。)に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合をいいます。)及び居住者等株主等のその外国法人に係る間接保有請求権保有割合(居住者等株主等の他の外国法人を通じて間接に有するその外国法人の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合(注)をいいます。)を合計した割合(注) 上記ハの間接保有請求権保有割合は、

上記イの間接保有株式等保有割合に準じ

て計算することとされており(措令39の

14の 2 ④)、具体的には、次に掲げる場合

の区分に応じ次に定める割合(次に掲げ

る場合のいずれにも該当する場合には、

次に定める割合の合計割合)となります。

イ 判定対象外国法人の株主等である外

国法人(②に掲げる外国法人に該当す

るものを除きます。)の支払う剰余金の

配当等の額の総額の50%を超える金額

の剰余金の配当等の額を受けることが

できる株式等の請求権が居住者等株主

等によって保有されている場合��そ

の株主等である外国法人の有するその

判定対象外国法人の株式等の請求権に

基づき受けることができる剰余金の配

当等の額がその総額のうちに占める割

合(その株主等である外国法人が二以

上ある場合には、その二以上の株主等

である外国法人につきそれぞれ計算し

た割合の合計割合)

ロ 判定対象外国法人の株主等である外

国法人(上記イに掲げる場合に該当す

る上記イの株主等である外国法人及び

②に掲げる外国法人に該当するものを

除きます。)と居住者等株主等との間に

これらの者と株式等の請求権の保有を

通じて連鎖関係にある一又は二以上の

外国法人(②に掲げる外国法人に該当

するものを除きます。ロにおいて「出

資関連外国法人」といいます。)が介在

している場合(出資関連外国法人及び

その株主等である外国法人がそれぞれ

その支払う剰余金の配当等の額の総額

の50%を超える金額の剰余金の配当等

の額を受けることができる株式等の請

求権を居住者等株主等又は出資関連外

国法人(その支払う剰余金の配当等の

額の総額の50%を超える金額の剰余金

の配当等の額を受けることができる株

式等の請求権が居住者等株主等又は他

の出資関連外国法人によって保有され

ているものに限ります。)によって保有

されている場合に限ります。)��その

株主等である外国法人の有するその判

─�663�─

――国際課税関係の改正――

定対象外国法人の株式等の請求権に基

づき受けることができる剰余金の配当

等の額がその総額のうちに占める割合

(その株主等である外国法人が二以上あ

る場合には、その二以上の株主等であ

る外国法人につきそれぞれ計算した割

合の合計割合)

② 居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある外国法人

⑶ 実質支配関係① 実質支配関係の意義 実質支配関係とは、居住者又は内国法人(⑶において「居住者等」といいます。)と外国法人との間に次に掲げる事実その他これに類する事実が存在する場合におけるその居住者等とその外国法人との間の関係(注)とされています(措法66の 6 ②五、措令39の16①)。イ 居住者等が外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求する権利を有していること。ロ 居住者等が外国法人の財産の処分の方針のおおむね全部を決定することができる旨の契約その他の取決めが存在すること(その外国法人につき上記イに掲げる事実が存在する場合を除きます。)。

(注) 一の居住者又は内国法人と外国法人との

間に上記イ又はロに掲げる事実その他これ

に類する事実が存在する場合におけるその

一の居住者又は内国法人と外国法人との関

係をいいます。したがって、複数の居住者

又は内国法人が有する権利等を合計したと

ころではじめて外国法人の残余財産のおお

むね全部を請求する権利を有することとな

る場合や外国法人の財産の処分の方針のお

おむね全部を決定することができることと

なる場合は、実質支配関係がある場合に該

当しないことになります。

 上記イは、解散や清算など一定の状況の下での会社の財産に対する権利を通じた支配関

係に着目したものです。また、おおむね全部とは、全部ではないものの相当程度高い割合を有する場合が想定されています。第三者に僅かな残余財産の分配請求権を持たせることにより実質支配関係への該当を回避するループホールを防ぐために、おおむね全部とされているものです。これに対し上記ロは、財産は残余財産に限定されていないため、財産の処分は解散や清算といった場面に限定されておらず、例えば、会社の通常の事業活動における商品の販売等もこれに含まれます。上記ロは、こうした様々な場面における財産の処分に関する方針のおおむね全部について決定することができる旨の契約その他の取決めを通じた支配関係に着目したものです。 実質支配関係がある外国法人の所得を100%合算する効果を踏まえ、また、企業にとっての不確実性や事務負担を考慮して、実質支配関係の類型は上記イ及びロのような形で会社財産に対する支配関係があると認められる場合に限定したものとなっています。② 実質支配関係から除外される場合 実質支配関係とは、上記①のとおり、居住者等と外国法人との間に上記①イ又はロに掲げる事実その他これに類する事実が存在する場合におけるその居住者等とその外国法人との間の関係とされているところですが、居住者等が組成した外国法人をビークルとするファンドについて、居住者等がファンドの財産の処分に関する方針のおおむね全部を決定できる場合に該当する可能性があることから、「その外国法人の行う事業から生ずる利益のおおむね全部が剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配その他の経済的な利益の給付としてその居住者等(その居住者等と特殊の関係(注 1)のある者を含みます。)以外の者に対して金銭その他の資産により交付されることとなっている場合(注 2)」には、実質支配関係があることとされる場合から除外されています。

─�664�─

――国際課税関係の改正――

(注 1) 特殊の関係とは、次に掲げる関係をい

います(措令39の16②)。

イ 一方の者と他方の者との間にその他

方の者が次に掲げるものに該当する関

係がある場合におけるその関係

イ その一方の者の親族

ロ その一方の者と婚姻の届出をして

いないが事実上婚姻関係と同様の事

情にある者

ハ その一方の者の使用人又は雇主

ニ イからハまでに掲げる者以外の者

でその一方の者から受ける金銭その

他の資産によって生計を維持してい

るもの

ホ ロからニまでに掲げる者と生計を

一にするこれらの者の親族

ロ 一方の者と他方の者との間にその他

方の者が次に掲げる法人に該当する関

係がある場合におけるその関係(ハ及

びニに掲げる関係に該当するものを除

きます。)

イ その一方の者(その一方の者とイ

の関係のある者を含みます。ロにお

いて同じです。)が他の法人を支配し

ている場合における当該他の法人

ロ その一方の者及びその一方の者と

イに掲げる特殊の関係のある法人が

他の法人を支配している場合におけ

る当該他の法人

ハ その一方の者及びその一方の者と

イ及びロに掲げる特殊の関係のある

法人が他の法人を支配している場合

における当該他の法人

ハ 二の法人のいずれか一方の法人が他

方の法人の発行済株式等の50%を超え

る数又は金額の株式等を直接又は間接

に有する関係

ニ 二の法人が同一の者(その者が個人

である場合には、その個人及びこれと

法人税法第 2 条第10号(定義)に規定

する政令で定める特殊の関係のある個

人)によってそれぞれその発行済株式

等の50%を超える数又は金額の株式等

を直接又は間接に保有される場合にお

けるその二の法人の関係(ハに掲げる

関係に該当するものを除きます。)

 法人税法施行令第 4 条第 3 項(同族関

係者の範囲)の規定は、上記ロイからハ

までに掲げる他の法人を支配している場

合について準用することとされています

(措令39の16③)。

 租税特別措置法施行令第39条の12第 2

項及び第 3 項の規定(移転価格税制の国

外関連者の判定における間接保有割合の

計算の規定)は、上記ハ及びニに掲げる

関係を判定する場合について準用するこ

ととされています(措令39の16④)。この

場合において、租税特別措置法施行令第

39条の12第 2 項及び第 3 項中「百分の

五十以上の」とあるのは、「百分の五十を

超える」と読み替えるものとされています。(注 2) 本邦金融機関等が組成したファンドに

係る有価証券の募集や売出しを通常の方

法により行う場合に生じる有価証券の売

れ残りや買戻しによってその本邦金融機

関等が自己の都合によらず一時的に保有

することとなる持分に対して支払われる

剰余金の配当等については、本来他の者

に交付されることとなっているものであ

り、有価証券の募集や売出しを行う上で

生じ得るものであることから、特段の事

情がない限り、居住者等以外の者に対し

て交付されることとなっている場合に該

当することになると考えられます。

─�665�─

――国際課税関係の改正――

③ 実質支配関係の判定を行わない場合 上記①に掲げる関係がないものとして租税特別措置法第66条の 6第 2項第 1号(イに係る部分に限ります。)の規定を適用してその外国法人の外国関係会社の該当性を判定した場合に、居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(居住者の親族等)とその外国法人との間に直接及び間接の持株割合等が50%を超える関係がある場合におけるその居住者等とその外国法人との間の関係は、実質支配関係から除外されます(措令39の16①)。 つまり、実質支配関係を考慮しないところで、持株割合等に基づいてその外国法人が外国関係会社に該当する場合には、殊更に実質支配関係の判定は行わないこととされていま

す。

2  制度の適用を受ける内国法人(納税義務者)

⑴ 改正の概要 本税制の適用を受ける内国法人は、外国関係会社の持株割合等の10%以上を直接及び間接に有する内国法人を基本としており、改正前の制度と同様となっています。 今回の改正では、外国関係会社との間に実質支配関係のある内国法人が本税制の適用を受ける内国法人の範囲に追加されたほか、実質支配基準の導入に伴う持株割合等に係る計算に関する整備が行われました。

個人

法人

親族

事実上の婚姻関係にある

使用人雇主

生計を維持している者

生計を一にする親族

法人

同一の者

法人

法人

法人

50%超

50%超

支配

支配

措令39の16②一イ~ホ(個人-個人の関係)

措令39の16②二イ~ハ((個人+法人)-法人の関係)

措令39の16②四(法人-法人の関係)

 支配している場合とは、以下のいずれかに該当する場合をいう。① 発行済株式等の50%超を有する場合② 以下の議決権のいずれかにつき、50%超を有す る場合 ⑴ 事業の全部若しくは重要な部分の譲渡、解散  等に係る議決権 ⑵ 役員の選任及び解散に係る議決権 ⑶ 役員の報酬、賞与等に係る議決権 ⑷ 剰余金の配当又は利益の配当等に係る議決権③ 株主等の総数の半数を超える数を占める場合

法人

法人

50%超50%超

支配

法人

50%超

法人

措令39の16②三(法人-法人の関係)

50%超

実質支配関係の判定に係る特殊の関係

─�666�─

――国際課税関係の改正――

⑵ 改正後の制度の内容 改正後の制度において納税義務者となる内国法人は、具体的には、次に掲げる内国法人とされています(措法66の 6 ①一~四)。① 内国法人の外国関係会社に係る次に掲げる割合のいずれかが10%以上である場合におけるその内国法人イ その有する外国関係会社の株式等の数又は金額(その外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するその外国関係会社の株式等の数又は金額(注)の合計数又は合計額がその外国関係会社の発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合(注) 上記イの「間接に有する外国関係会社

の株式等の数又は金額」は、外国関係会

社の発行済株式等に、次に掲げる場合の

区分に応じ次に定める割合(次に掲げる

場合のいずれにも該当する場合には、次

に定める割合の合計割合)を乗じて計算

した株式等の数又は金額とされています

(措令39の14③)。

イ その外国関係会社の株主等である他

の外国法人(イにおいて「他の外国法

人」といいます。)の発行済株式等の全

部又は一部が内国法人等(内国法人又

はその内国法人との間に実質支配関係

がある外国法人をいいます。イ及びロ

において同じです。)により保有されて

いる場合��その内国法人等の当該他

の外国法人に係る持株割合(発行法人

と居住者又は内国法人との間に実質支

配関係がある場合には、零とします。)

に当該他の外国法人のその外国関係会

社に係る持株割合を乗じて計算した割

合(当該他の外国法人が二以上ある場

合には、二以上の当該他の外国法人に

つきそれぞれ計算した割合の合計割合)

ロ その外国関係会社と他の外国法人

(その発行済株式等の全部又は一部が内

国法人等により保有されているものに

限ります。ロにおいて「他の外国法

人」といいます。)との間に一又は二以

上の外国法人(ロにおいて「出資関連

外国法人」といいます。)が介在してい

る場合であって、その内国法人等、当

該他の外国法人、出資関連外国法人及

びその外国関係会社が株式等の保有を

通じて連鎖関係にある場合��その内

国法人等の他の外国法人に係る持株割

合、当該他の外国法人の出資関連外国

法人に係る持株割合、出資関連外国法

人の他の出資関連外国法人に係る持株

割合及び出資関連外国法人のその外国

関係会社に係る持株割合を順次乗じて

計算した割合(その連鎖関係が二以上

ある場合には、その二以上の連鎖関係

につきそれぞれ計算した割合の合計割

合)

ロ その有する外国関係会社の議決権(剰余金の配当等に関する決議に係るものに限ります。ロにおいて同じです。)の数(その外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するその外国関係会社の議決権の数(注)の合計数がその外国関係会社の議決権の総数のうちに占める割合(注) 上記ロの「間接に有する外国関係会社

の議決権の数」は、上記イの間接に有す

る外国関係会社の株式等の数又は金額に

準じて計算することとされています(措

令39の14④)。

 具体的には、間接に有する外国関係会

社の議決権の数は、外国関係会社の議決

権の総数に、次に掲げる場合の区分に応

じ次に定める割合(次に掲げる場合のい

ずれにも該当する場合には、次に定める

割合の合計割合)を乗じて計算した議決

─�667�─

――国際課税関係の改正――

権の数とされています。

イ その外国関係会社の株主等である他

の外国法人(イにおいて「他の外国法

人」といいます。)の議決権の全部又は

一部が内国法人等(内国法人又はその

内国法人との間に実質支配関係がある

外国法人をいいます。イ及びロにおい

て同じです。)により保有されている場

合��その内国法人等の当該他の外国

法人に係る議決権割合(その株主等の

有する議決権の数がその総数のうちに

占める割合をいい、その議決権に係る

法人と居住者又は内国法人との間に実

質支配関係がある場合には、零としま

す。)に当該他の外国法人のその外国関

係会社に係る議決権割合を乗じて計算

した割合(当該他の外国法人が二以上

ある場合には、二以上の当該他の外国

法人につきそれぞれ計算した割合の合

計割合)

ロ その外国関係会社と他の外国法人

(その議決権の全部又は一部が内国法人

等により保有されているものに限りま

す。ロにおいて「他の外国法人」とい

います。)との間に一又は二以上の外国

法人(ロにおいて「出資関連外国法

人」といいます。)が介在している場合

であって、その内国法人等、当該他の

外国法人、出資関連外国法人及びその

外国関係会社が議決権の保有を通じて

連鎖関係にある場合��その内国法人

等の当該他の外国法人に係る議決権割

合、当該他の外国法人の出資関連外国

法人に係る議決権割合、出資関連外国

法人の他の出資関連外国法人に係る議

決権割合及び出資関連外国法人のその

外国関係会社に係る議決権割合を順次

乗じて計算した割合(その連鎖関係が

二以上ある場合には、その二以上の連

鎖関係につきそれぞれ計算した割合の

合計割合)

ハ その有する外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額(その外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するその外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額(注)の合計額がその外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の総額のうちに占める割合(注) 上記ハの「間接に有する外国関係会社

の株式等の請求権に基づき受けることが

できる剰余金の配当等の額」は、上記イ

の間接に有する外国関係会社の株式等の

数又は金額に準じて計算することとされ

ています(措令39の14⑤)。

 具体的には、間接に有する外国関係会

社の株式等の請求権に基づき受けること

ができる剰余金の配当等の額は、外国関

係会社の株式等の請求権に基づき受ける

ことができる剰余金の配当等の総額に、

次に掲げる場合の区分に応じ次に定める

割合(次に掲げる場合のいずれにも該当

する場合には、次に定める割合の合計割

合)を乗じて計算した剰余金の配当等の

額とされています。

イ その外国関係会社の株主等である他

の外国法人(イにおいて「他の外国法

人」といいます。)の株式等の請求権の

全部又は一部が内国法人等(内国法人

又はその内国法人との間に実質支配関

係がある外国法人をいいます。イ及び

ロにおいて同じです。)により保有され

ている場合��その内国法人等の当該

他の外国法人に係る請求権割合(その

株主等の有する株式等の請求権に基づ

き受けることができる剰余金の配当等

の額がその総額のうちに占める割合を

─�668�─

――国際課税関係の改正――

いい、その請求権に係る株式等の発行

法人と居住者又は内国法人との間に実

質支配関係がある場合には、零としま

す。)に当該他の外国法人のその外国関

係会社に係る請求権割合を乗じて計算

した割合(当該他の外国法人が二以上

ある場合には、二以上の当該他の外国

法人につきそれぞれ計算した割合の合

計割合)

ロ その外国関係会社と他の外国法人

(その株式等の請求権の全部又は一部が

内国法人等により保有されているもの

に限ります。ロにおいて「他の外国法

人」といいます。)との間に一又は二以

上の外国法人(ロにおいて「出資関連

外国法人」といいます。)が介在してい

る場合であって、その内国法人等、当

該他の外国法人、出資関連外国法人及

びその外国関係会社が株式等の請求権

の保有を通じて連鎖関係にある場合

��その内国法人等の当該他の外国法

人に係る請求権割合、当該他の外国法

人の出資関連外国法人に係る請求権割

合、出資関連外国法人の他の出資関連

外国法人に係る請求権割合及び出資関

連外国法人のその外国関係会社に係る

請求権割合を順次乗じて計算した割合

(その連鎖関係が二以上ある場合には、

その二以上の連鎖関係につきそれぞれ

計算した割合の合計割合)

② 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人③ 内国法人との間に実質支配関係がある外国関係会社の他の外国関係会社に係る直接及び間接の持株割合等が10%以上である場合のその内国法人 具体的には、外国関係会社(内国法人との間に実質支配関係があるものに限ります。)の他の外国関係会社に係る上記①イからハまでに掲げる割合のいずれかが10%以上である

場合におけるその内国法人(上記①に掲げる内国法人を除きます。)とされています。④ 直接及び間接の持株割合等が10%以上である一の同族株主グループに属する内国法人 具体的には、外国関係会社に係る上記①イからハまでに掲げる割合のいずれかが10%以上である一の同族株主グループ(注)に属する内国法人(外国関係会社に係る上記①イからハまでに掲げる割合のいずれかが零を超えるものに限るものとし、上記①及び③に掲げる内国法人を除きます。)とされています。(注) 同族株主グループとは、外国関係会社の

株式等を直接又は間接に有する者及びその

株式等を直接又は間接に有する者との間に

実質支配関係がある者(その株式等を直接

又は間接に有する者を除きます。)のうち、

一の居住者又は内国法人、その一の居住者

又は内国法人との間に実質支配関係がある

者及びその一の居住者又は内国法人と特殊

の関係のある者(外国法人を除きます。)を

いいます(措法66の 6 ①四)。

 この場合の「一の居住者又は内国法人と

政令で定める特殊の関係のある者」は、次

に掲げる個人又は法人とされています(措

令39の14⑥)。

イ 次に掲げる個人

イ 居住者の親族

ロ 居住者と婚姻の届出をしていないが

事実上婚姻関係と同様の事情にある者

ハ 居住者の使用人

ニ イからハまでに掲げる者以外の者で

居住者から受ける金銭その他の資産に

よって生計を維持しているもの

ホ ロからニまでに掲げる者と生計を一

にするこれらの者の親族

ヘ 内国法人の役員及びその役員に係る

法人税法施行令第72条各号(特殊関係

使用人の範囲)に掲げる者

ロ 次に掲げる法人

イ 一の居住者又は内国法人(その居住

─�669�─

――国際課税関係の改正――

者又は内国法人とイに掲げる特殊の関

係のある個人を含みます。ロにおいて

「居住者等」といいます。)が他の法人

を支配している場合における他の法人

ロ 一の居住者等及びその一の居住者等

とイに規定する特殊の関係のある法人

が他の法人を支配している場合におけ

る他の法人

ハ 一の居住者等及びその一の居住者等

とイ及びロに規定する特殊の関係のあ

る法人が他の法人を支配している場合

における他の法人

ニ 同一の者とイからハまでに掲げる特

殊の関係のある二以上の法人のいずれ

かの法人が一の居住者等である場合に

おけるその二以上の法人のうちその一

の居住者等以外の法人

 なお、法人税法施行令第 4 条第 3 項の規

定は、上記ロイからハまでに掲げる他の法

人を支配している場合について準用するこ

ととされています(措令39の14⑦)。

① 内国法人の外国関係会社に対する直接・間接の株式等保有割合が10%以上である内国法人【措法66の 6 ①一】② 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人【措法66の 6 ①二】③ 内国法人との間に実質支配関係がある外国法人の外国関係会社に対する直接・間接の株式等保有割合が10%以上

である場合における当該内国法人(①に掲げる内国法人を除く。)【措法66の 6 ①三】④ 直接・間接の株式等保有割合が10%以上である一の同族株主グループに属する内国法人(直接・間接の株式等保

有割合が零を超えるものに限り、①及び③に掲げる内国法人を除く。)【措法66の 6 ①四】

≪納税義務者の範囲のイメージ≫ は「直接・間接の株式等保有割合」の判定の際に考慮する保有割合

① ② ③ ④内国法人

(納税義務者)内国法人

(納税義務者)

外国関係会社

10%以上

外国法人

外国関係会社

外国法人

a%保有

c%保有

b%保有

a%×b%×c% ≧10%

内国法人(納税義務者)

外国関係会社

実質支配

内国法人(納税義務者)

内国法人(納税義務者)

外国関係会社

外国法人(外国関係会社)

実質支配

10%以上

外国法人(外国関係会社)

外国関係会社

外国法人

実質支配

d%保有

e%保有

内国法人(納税義務者) 個人

外国法人外国法人(外国関係会社)

外国関係会社

実質支配 g%有

h%保有f%保有

f%+(g%×h%) ≧10%d%×e% ≧10%

同族株主グループ

特殊の関係

納税義務者の範囲(イメージ)

─�670�─

――国際課税関係の改正――

 納税義務者の判定場面における持株割合は、その有する外国関係会社の株式等の数・金額(※)と他の外国法人を通じて間接に有するその外国関係会社の株式等の数・金額の合計数・合計額がその外国関係会社の発行済株式等の総数・総額のうちに占める割合とされている。【措法66の 6 ①一イ】(※)居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合は、零とする。

(※)居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合は、零とする。

(注)議決権の数、株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額に基づき計算する場合も同様 《措令39の14④⑤》

内国法人被支配外国法人

外国関係会社A

持株割合 a%

① 直接保有の場合内国法人

被支配外国法人

外国関係会社C(100)

② 間接保有の場合

外国法人B(株主等)

持株割合 c%

持株割合 b%

Bと居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合には、

Cと居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合には、

Aと居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合には、

内国法人被支配外国法人

外国関係会社 F(100)

外国法人E( 出資関連外国法人 )

持株割合 f%

Dと居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合には、

Eと居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合には、

外国法人D(他の外国法人)

持株割合 d%

持株割合 e%

Fと居住者・内国法人との間に実質支配関係がある場合には、

⇒ 100×b%×c%⇒ a% ⇒ 100×d%×e%×f%

■ 間接に有する外国関係会社の株式等の数・金額 ≪措令39の14③≫  外国関係会社の発行済株式等に、次の①又は②に定める割合を乗じて計算した株式等の数・金額(掛け算方式)① 外国関係会社の株主等である他の外国法人の発行済株式等が内国法人等に保有されている場合・・・その内国法人等の当該他の外国法人に係る持株割合(※)に当該他の外国法人のその外国関係会社に係る持株割合(※)を乗じて計算した割合② 外国関係会社と他の外国法人(発行済株式等が内国法人等に保有されているものに限る。)との間に一又は二以上の出資関連外国法人が介在している場合であって、これらの者が株式等の保有を通じて連鎖関係にある場合・・・これらの者に係る持株割合(※)を順次乗じて計算した割合

納税義務者の判定場面における「間接保有の株式等の数・金額」

 「同族株主グループ」とは、次に掲げる者のうち、①一の居住者又は内国法人、②その一の居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある者、③その一の居住者又は内国法人と特殊の関係(※)のある者(外国法人を除く。)をいう。⑴ 外国関係会社の株式等を直接又は間接に有する者⑵ 外国関係会社の株式等を直接又は間接に有する外国法人との間に実質支配関係がある者(( 1)に掲げる者を除く。)

(※)居住者の親族、内国法人の役員、支配している法人等

一の内国法人

外国法人

外国関係会社

株式保有株式保有

特殊の関係のある者

株式保有実質支配

一の内国法人

特殊の関係   のある者(注)(内国法人A)

外国関係会社

株式保有

一の内国法人

特殊の関係のある者

外国関係会社

外国法人

外国法人

実質支配

株式保有

株式保有

同族株主グループ

実質支配

特殊の関係

同族株主グループ

実質支配

株式保有

特殊の関係

同族株主グループ

特殊の関係

(注)内国法人Aは同族株主グループに含まれるが「直接・間接の株式等保有割合」は零であるため、納税義務者の範囲から除外。

株式保有

① ① ① ③

外国法人②外国法人②

③③

同族株主グループの範囲及び同族株主グループに属する内国法人の納税義務

─�671�─

――国際課税関係の改正――

3  特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額に係る合算課税(外国関係会社単位の合算課税)

⑴ 改正の概要 租税回避リスクを租税負担割合ではなく、所得や事業の内容によって把握する仕組みに改める観点から、制度適用の有無を入口で判断していたトリガー税率(租税負担割合20%)を廃止し、租税回避リスクの高いペーパー・カンパニー等については、租税負担割合が20%以上であっても、会社単位で合算することとされました。また、実体のある事業を行っている航空機リース会社や製造子会社の所得が合算されないよう、事業基準・所在地国基準の判定方法の見直しが行われたほか、実態としては関連者取引であるにもかかわらず、第三者を介在させることで「非関連者基準」を形式的に満たすケースに対応するため、非関連者基準の判定方法の見直し等が行われました。

⑵ 改正後の制度の概要 外国関係会社の発行済株式等の10%以上を有する等の要件を満たす内国法人に係る外国関係会社のうち、特定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当するものの所得に相当する金額のうちその内国法人が直接及び間接に有するその特定外国関係会社又は対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額並びにその内国法人とその特定外国関係会社又は対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額に相当する金額は、その内国法人の収益の額とみなして各事業年度終了の日の翌日から 2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされます(措法66の 6 ①)。

⑶ 特定外国関係会社 特定外国関係会社は、租税回避リスクの高い

ペーパー・カンパニー等が該当し、租税負担割合が20%以上であっても、会社単位の合算課税の対象とされます。 特定外国関係会社とは、具体的には、次の①から③までに掲げる外国関係会社とされています(措法66の 6 ②二)。① 事務所等の実体がなく、かつ、事業の管理支配を自ら行っていない外国関係会社 いわゆるペーパー ・カンパニーが該当し、具体的には、次のイ及びロのいずれにも該当しない外国関係会社とされています(措法66の 6 ②二イ)。イ その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有している外国関係会社(注 1・ 2) 固定施設を有している外国関係会社に該当するかどうかの判定については、いくつかの点に留意する必要があります。 外国関係会社が主たる事業を行うために利用する固定施設を有するかどうかが問題とされ、固定施設が所有か賃貸かといった形式は問われないことになります。 また、外国関係会社の主たる事業を行うに必要な固定施設とされていますので、たとえ固定施設を有していても、その固定施設が主たる事業を行うに当たって必要なものと認められない場合には、上記イの要件を満たさないことになります。 なお、固定施設の所在地国・地域がどこかということについては要件とされていませんので、外国関係会社の本店所在地国以外にその主たる事業を行うに必要な固定施設を有している場合であっても、上記イの要件を満たすことになります。なお、外国関係会社が我が国にその主たる事業を行うに必要な固定施設を有する場合には、その外国関係会社はペーパー・カンパニーに該当しないことになりますが、我が国に有する固定施設が恒久的施設に該当する場合には、その恒久的施設の果たす機能及び事実

─�672�─

――国際課税関係の改正――

関係に基づき、その恒久的施設に帰せられるべき所得に対して法人税が課されることになります。(注 1) 次のイ及びロに掲げる外国関係会社

を含むものとされています(措法66の

6 ②二イ⑴、措令39の14の 3 ①)。

イ 一の内国法人によってその発行済

株式等の全部を直接又は間接に保有

されている外国関係会社で保険業法

第219条第 1 項(免許)に規定する引

受社員に該当するもの(以下「特定

保険外国子会社等」といいます。)に

係る特定保険協議者(特定保険外国

子会社等が行う保険の引受けについ

て保険契約の内容を確定するための

協議を行う者で次に掲げる要件を満

たすものをいいます。以下同じで

す。)がその本店所在地国においてそ

の主たる事業を行うに必要と認めら

れる事務所、店舗その他の固定施設

を有している場合におけるその特定

保険協議者に係るその特定保険外国

子会社等に該当する外国関係会社

ⅰ その一の内国法人によってその

発行済株式等の全部を直接又は間

接に保有されている外国関係会社

に該当すること。

ⅱ その特定保険外国子会社等の本

店所在地国と同一の国又は地域に

本店又は主たる事務所が所在する

こと。

ロ 一の内国法人(保険業を主たる事

業とするものに限ります。ⅰにおい

て同じです。)によってその発行済株

式等の全部を直接又は間接に保有さ

れている外国関係会社でその本店所

在地国の法令の規定によりその本店

所在地国において保険業の免許(免

許に類する許可、登録その他の行政

処分を含みます。ロにおいて同じで

す。)を受けているもの(以下「特定

保険委託者」といいます。)に係る特

定保険受託者(特定保険委託者がそ

の法令の規定によりその本店所在地

国において保険業の免許の申請をす

る際又はその法令の規定により保険

業を営むために必要な事項の届出を

する際にその保険業に関する業務を

委託するものとして申請又は届出を

された者で次に掲げる要件を満たす

ものをいいます。以下同じです。)が

その本店所在地国においてその主た

る事業を行うに必要と認められる事

務所、店舗その他の固定施設を有し

ている場合におけるその特定保険受

託者に係るその特定保険委託者に該

当する外国関係会社

ⅰ その一の内国法人によってその

発行済株式等の全部を直接又は間

接に保有されている外国関係会社

に該当すること。

ⅱ その特定保険委託者の本店所在

地国と同一の国又は地域に本店又

は主たる事務所が所在すること。(注 2) 上記(注 1)のイについては、英国

ロイズ法に従って設立された保険引受

子会社と管理運営子会社が一体となっ

て英国ロイズ市場において保険業を営

むという活動実態に着目し、その保険

引受子会社と管理運営子会社を一体と

して固定施設等の実体を有するかどう

かの判定を行うというものであり、改

正前の適用除外基準における実体基準

の判定において設けられていた措置

(旧措法66の 6 ③、旧措令39の17⑤)と

同様の措置となっています。また、上

記(注 1)のロについては、英国ロイ

ズ市場以外でも、保険引受子会社と管

理運営子会社を別会社とした上で、こ

れらを一体として保険業を営む場合が

─�673�─

――国際課税関係の改正――

あることから、現地の保険業法に基づく申請又は届出を行う際に保険業務を委託する子会社を申請し又は届出を行うこと等、つまり、別々の会社が一体として保険業を営む形態での活動が保険規制当局に認められていること等を要件にその保険引受子会社と管理運営子会社を一体として固定施設等の実体を有するかどうかの判定を行うこととしているものです。この措置は、今回の改正で新たに設けられたものです。

ロ 本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている外国関係会社(注 1・ 2)(注 1) 次のイ及びロに掲げる外国関係会社

を含むものとされています(措法66の6 ②二イ⑵、措令39の14の 3 ②)。イ 外国関係会社(特定保険外国子会社等に該当するものに限ります。イにおいて同じです。)に係る特定保険協議者がその本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている場合におけるその外国関係会社ロ 外国関係会社(特定保険委託者に該当するものに限ります。ロにおいて同じです。)に係る特定保険受託者がその本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている場合におけるその外国関係会社

(注 2) 上記(注 1)のイは、英国ロイズ市場において、保険引受子会社と管理運営子会社を別会社とした上でこれらが一体となって保険業を営む場合に、これらを一体として自ら管理支配を行っているかどうかの判定を行うというものであり、改正前の適用除外基準における管理支配基準の判定において設けられていた措置(旧措法66の 6 ③、旧措令39の17⑥)と同様の措置となっています。また、上記(注 1)のロは、

英国ロイズ市場以外でも保険引受子会社と管理運営子会社を別会社とした上でこれらを一体として保険業を営む場合があることへの対応として、今回の改正で新たに設けられたものです。

 なお、税務当局の当該職員は、内国法人に係る外国関係会社が上記イ又はロに該当するかどうかを判定するために必要があるとき(注)は、その内国法人に対し、期間を定めて、その外国関係会社が上記イ又ロに該当することを明らかにする書類その他の資料の提示又は提出を求めることができることとされています(措法66の 6 ③)。この場合において、その書類その他の資料の提示又は提出がないときは、その外国関係会社は上記イ又はロに該当しないものと推定することとされています(措法66の 6 ③)。 したがって、上記イに該当することを明らかにする書類その他の資料及び上記ロに該当することを明らかにする書類その他の資料のいずれも提示・提出がない場合には、その外国関係会社は、上記イ及びロのいずれにも該当しないものと推定され、その結果、特定外国関係会社に該当するものとして取り扱われることになります。(注) その外国関係会社の対象となる事業年度

の租税負担割合が30%以上である事実が客観的に確認される場合には、その外国関係会社のその対象となる事業年度の適用対象金額については、本税制の適用免除とされるため、その外国関係会社がその対象となる事業年度において上記イ又はロに該当するかどうかを判定する必要はないことになります。

② 受動的所得の割合が一定以上の外国関係会社(事実上のキャッシュ・ボックス) BEPS プロジェクトの最終報告書では、豊富な資本を持ちながら、能動的な事業遂行やリスク管理に必要な機能をほとんど果たしていない事業体を「キャッシュ・ボックス」と呼び、BEPS リスクが高い旨を指摘していま

─�674�─

――国際課税関係の改正――

す。そこで、本制度において、その総資産に比べて受動的所得の占める割合が高い外国関係会社については、事実上のキャッシュ・ボックスとして、ペーパー・カンパニー等と並んで、特定外国関係会社に分類することとされています。 事実上のキャッシュ・ボックスに分類される外国関係会社は、具体的には、その総資産額(注 1)に対する租税特別措置法第66条の6第 6項第 1号から第10号までに掲げる金額(注 2)の合計額、つまり、部分合算課税の対象となる各種所得の金額で異常所得の金額を除いた金額の合計額(注 3)に相当する金額の合計額の割合が30%を超える外国関係会社とされています。 ただし、セーフ・ハーバーとして、総資産額(注 1)に対する有価証券、貸付金、固定資産(無形資産等(租税特別措置法第66条の6第 6項第 9号に規定する無形資産等をいいます。②において同じです。)を除くものとし、貸付けの用に供しているものに限ります。)及び無形資産等の合計額(注 4)の割合が50%を超える外国関係会社に限られることになっています。(注 1) 総資産額は、外国関係会社のその事業

年度(その事業年度が残余財産の確定の日を含む事業年度である場合には、その事業年度の前事業年度)終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額とされています(措令39の14の3 ③)。また、ここでいう帳簿価額とは、外国関係会社がその会計帳簿に記載した金額を念頭に置いたものです。

(注 2) これらの金額の具体的な内容については、下記 5 ⑶①から⑩までをご参照ください。なお、ここでいう第 1 号から第10号までに掲げる金額とは、例えば、租税特別措置法第66条の 6 第 6 項第 1 号に掲げる金額の場合、剰余金の配当等の額そのものではなく、剰余金の配当等の額から除くこととされる持株割合25%以上の

株式に係る剰余金の配当等などを除外した後の剰余金の配当等の額の合計額から、剰余金の配当等の額を得るために直接要した費用の額及び剰余金の配当等に係る費用の額を控除した金額を意味します。

(注 3) 部分合算課税の計算の基礎となる部分適用対象金額の計算においては、損益通算する所得と損益通算しない所得とを区分する必要がありますが(措法66の 6 ⑦)、事実上のキャッシュ・ボックスの判定においては、このような区分は設けられていません。したがって、その事業年度の租税特別措置法第66条の 6 第 6 項第 1 号から第10号までに掲げる金額を単純に合計した金額となります。また、部分適用対象損失額の繰越控除も行わないところで計算します。

(注 4) 外国関係会社のその事業年度(その事業年度が残余財産の確定の日を含む事業年度である場合には、その事業年度の前事業年度)終了の時における貸借対照表に計上されているこれらの資産の帳簿価額の合計額とされています(措令39の14の 3④)。

 なお、事実上のキャッシュ・ボックスに分類される外国金融子会社等(注 1)は、その総資産額に対する租税特別措置法第66条の 6第 8項第 1号に掲げる金額に相当する金額又は同項第 2号から第 4号までに掲げる金額に相当する金額(注 2)の合計額のうちいずれか多い金額の割合が30%を超えるものとされています(措法66の 6 ②二ロ)。また、セーフ・ハーバーとしての総資産額に対する有価証券等の額の割合が50%を超えるかどうかの判定は、上記と同様となっています。(注 1) 外国金融子会社等は部分対象外国関係

会社のうち一定の要件を満たす金融子会社等と定義されており(措法66の 6 ②七)、部分対象外国関係会社は後述の経済活動基準の全てを満たす外国関係会社で特定外国関係会社に該当するものを除くこととされているので(措法66の 6 ②六)、外

─�675�─

――国際課税関係の改正――

国金融子会社等の定義上は、特定外国関

係会社に該当するものが除かれていると

ころです。しかし、特定外国関係会社の

一類型である事実上のキャッシュ・ボッ

クスの該当性を判定する上での金融子会

社等は、規定の循環を回避するために、

特定外国関係会社に該当するものを除外

しないところの金融子会社等とされてい

ます(措法66の 6 ②二ロ)。(注 2) これらの金額の具体的な内容について

は、下記 6 ⑶①から④までをご参照くだ

さい。

③ 情報交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域(ブラック・リスト国)に所在する外国関係会社 平成28年 4 月に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、税に関する透明性向上に向けた進捗が見られない国・地域に対しては、「防御的措置」が検討されることとなりました。我が国としても、こうした国

際的な取組を各国と協調して進める観点から、「外国子会社合算税制」において、情報交換に非協力的な国・地域に所在する外国子会社に対して合算課税を適用する仕組みを設けることを通じて、このような国・地域に対して、税に関する透明性向上に向けた取組を促すこととなりました。 具体的には、税に関する透明性向上に向けた進捗が見られない国・地域としてOECD・G20が公表を予定している、いわゆる「ブラック・リスト」の掲載国・地域を参考にしながら、租税に関する情報の交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域を財務大臣が指定し(注)、その国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社について、特定外国関係会社に該当することとされています(措法66の 6 ②二ハ)。(注) 財務大臣はその国又は地域を指定したと

きは、これを告示することとされています

(措法66の 6 ⑭)。

1  ペーパー・カンパニー  次のいずれにも該当しない外国関係会社⑴ 実体基準  主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有している外国関係会社(同様の状況にある外国関係会社を含む。(※))⑵ 管理支配基準  その本店所在地国においてその事業の管理・支配等を自ら行っている外国関係会社(同様の状況にある外国関係会社を含む。(※))(※)改正前の適用除外基準である事業基準・管理支配基準において措置されているロイズ市場で事業活動を行う保険会社を対象外とする特例。

平成29年度改正においては、新たに一定の要件を満たす保険会社を上記特例の対象に追加。

(注)税務当局が求めた場合に、上記⑴又は⑵に該当することを明らかにする書類等の提出がない場合には、上記⑴又は⑵に該当しないものと推定される。

2  事実上のキャッシュ・ボックス総資産の額に対する一定の受動的所得(※)の割合が30%を超える外国関係会社ただし、総資産の額に対する一定の資産の額の割合が50%を超えるものに限る。

(※)一定の受動的所得の範囲

受取配当等

受取利子等

有価証券貸付対価

有価証券譲渡損益

デリバティブ取引損益

外国為替差損益

その他の金融所得

固定資産貸付対価

無形資産等使用料

無形資産等譲渡損益

異常所得

事業会社 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×外国金融

子会社等相当○

(異常資本に係る所得)○ ○ ○ ×

3 ブラック・リスト国所在外国関係会社情報交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国・地域(※)に本店等を有する外国関係会社

(※)財務大臣による指定(告示)。

いずれか多い金額(注)各受動的所得の金額は、部分合算対象所得を計算するとした場合の部分合算対象所得。例えば、受取配当等については、持株割合25%以上の配当等を除外した金額。

その事業年度(残余財産の確定の日を含む事業年度は、前事業年度)終了の時における貸借対照表に計上されている有価証券、貸付金、固定資産、無形資産等の帳簿価額による。

その事業年度(残余財産の確定の日を含む事業年度は、前事業年度)終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の額の帳簿価額による。

特定外国関係会社

─�676�─

――国際課税関係の改正――

⑷ 対象外国関係会社 今回の改正では、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的な考え方に基づき、外国関係会社の経済活動の内容に着目して、外国関係会社が、会社全体として、いわゆる「能動的所得」を得るために必要な経済活動の実体を備えているかを判定する基準として、いわゆる「経済活動基準」が設定されました。

 経済活動基準は、改正前の適用除外基準と同様の四つの基準(事業基準、実体基準、管理支配基準、非関連者基準/所在地国基準)とされ、外国関係会社がこれらのうちいずれかを満たさない場合には、能動的所得を得る上で必要な経済活動の実体を備えていないと判断されることになります。このような外国関係会社を対象外国関係会社と定義しています。

 対象外国関係会社とは、次に掲げる要件のいずれかを満たさない外国関係会社をいい、特定外国関係会社[ペーパー・カンパニー等]に該当するものは除かれる。

経済活動基準(旧 適用除外基準)

① 事 業 基 準 ⇒� 主たる事業が株式等の保有、工業所有権・著作権等の提供又は船舶・航空機の貸付けでないこと(注)

(注)� 被統括会社の株式保有を行う一定の統括会社(事業持株会社)は、事業基準を満たすこととされる。

【改正事項】�一定の要件を満たす航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社は事業基準を満たすこととする。

② 実 体 基 準 ⇒ 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること(注)(注)� 特定保険外国子会社等は、その特定保険協議者が実体基準を満たす場合には自らも実体基準を

満たすこととされる。【改正事項】上記の保険特例の範囲を拡大

③ 管理支配基準 ⇒ 本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること(注)(注)� 特定保険外国子会社等は、その特定保険協議者が管理支配基準を満たす場合には自らも管理支

配基準を満たすこととされる。【改正事項】上記の保険特例の範囲を拡大

④a 非関連者基準�⇒ 主として関連者(50%超出資会社等)以外の者と取引を行っていること(注)※� 主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業である場合に適用(注)� 物流統括会社が被統括会社と行う取引、特定保険協議者が特定保険外国子会社等と行う取引は、

非関連者取引とされる。【改正事項】航空機の貸付けについては、非関連者基準を適用する。

一定の要件を満たす保険受託者が、一定の要件を満たす保険委託者との間で行う取引を非関連者取引とする。第三者介在取引に関する規定を整備

④b 所在地国基準 ⇒� 主として本店所在地国で主たる事業を行っていること※ 非関連者基準が適用される業種以外に適用

【改正事項】製造業に係る所在地国基準の適用方法を整備

対象外国関係会社

─�677�─

――国際課税関係の改正――

① 対象外国関係会社の意義 対象外国関係会社とは、具体的には、次のイからニまでに掲げる要件(経済活動基準)のいずれかに該当しない外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除きます。)とされています(措法66の 6 ②三)。イ 事業基準 株式等若しくは債券の保有、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含みます。)若しくは著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含みます。)の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを主たる事業とするものでないこと(措法66の 6 ②三イ)。 これらの事業を主たる事業とする外国関係会社であっても、次の外国関係会社は除かれます。イ 株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社のうちその外国関係会社が他の法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務(以下「統括業務」といいます。)を行う場合における他の法人の株式等の保有を行うもの(措法66の 6 ②三イ、措令39の14の 3 ⑤~⑩)(注) いわゆる地域統括会社が該当し、改

正前と同様とされているため、詳細の

説明は省略します。

ロ 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち次の要件を満たすもの(措法66の 6 ②三イ、措令39の14の 3 ⑪)ⅰ 外国関係会社の役員又は使用人がその本店所在地国において航空機の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること。ⅱ 外国関係会社のその事業年度における航空機の貸付けに係る業務の委託に

係る対価の支払額の合計額のその外国関係会社のその事業年度における航空機の貸付けに係る業務に従事する役員及び使用人に係る人件費の額の合計額に対する割合が30%を超えていないこと。ⅲ 外国関係会社のその事業年度における航空機の貸付けに係る業務に従事する役員及び使用人に係る人件費の額の合計額のその外国関係会社のその事業年度における航空機の貸付けによる収入金額からその事業年度における貸付けの用に供する航空機に係る償却費の額(注)の合計額を控除した残額(その残額がない場合には、人件費の額の合計額に相当する金額)に対する割合が 5%を超えていること。(注) 外国関係会社における会計上の償

却費の額を念頭に置いたものです。

 事業基準の対象となる事業は、その地に本店を置いて事業を行う積極的な経済合理性を見出すことが困難なものを限定列挙しており、改正後の経済活動基準においてもこの内容を維持しています。 ただし、一定の要件を満たす「航空機の貸付け」を行う外国関係会社については、事業基準の対象となる外国関係会社から除くこととしています。すなわち、従来「事業基準」に含まれていた「航空機の貸付け」について、近年、単に税負担を軽減するためではなく、外国におけるノウハウや高度な人材を活用して自ら航空機の調達及び貸付けを行う外国関係会社が見られることを踏まえ、今回の改正において、「航空機の貸付け」を行う外国関係会社のうち上記ロⅰからⅲまでの要件を満たすものについて、事業基準の対象となる外国関係会社から除くこととされました。ロ 実体基準 その本店所在地国においてその主たる事

─�678�─

――国際課税関係の改正――

業(事業持株会社にあっては、統括業務)を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること(注 1・ 2)(措法66の 6 ②三ロ)。 実体基準は、主たる事業を行うに必要な事務所、店舗、工場その他の固定施設をその本店所在地国に有していることとされ、改正後の経済活動基準においてもこの内容を維持しています。(注 1) 次の状況にあることを含むものとさ

れています(措法66の 6 ②三ロ、措令

39の14の 3 ⑫)。

イ 外国関係会社(特定保険外国子会

社等に該当するものに限ります。)に

係る特定保険協議者がその本店所在

地国においてその主たる事業を行う

に必要と認められる事務所、店舗そ

の他の固定施設を有している状況

ロ 外国関係会社(特定保険委託者に

該当するものに限ります。)に係る特

定保険受託者がその本店所在地国に

おいてその主たる事業を行うに必要

と認められる事務所、店舗その他の

固定施設を有している状況(注 2) 上記(注 1)のイは、英国ロイズ市

場において、保険引受子会社と管理運

営子会社を別会社とした上でこれらが

一体となって保険業を営む場合に、こ

れらを一体として主たる事業を行うに

必要な固定施設を有しているかどうか

の判定を行うというものであり、改正

前の適用除外基準における実体基準の

判定において設けられていた措置(旧

措法66の 6 ③、旧措令39の17⑤)と同

様の措置となっています。また、上記

(注 1)のロは、英国ロイズ市場以外で

も保険引受子会社と管理運営子会社を

別会社とした上でこれらを一体として

保険業を営む場合があることへの対応

として、今回の改正で新たに設けられ

たものです。

ハ 管理支配基準 その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること(注 1・ 2)(措法66の 6 ②三ロ)。 管理支配基準は、その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることとされ、改正後の経済活動基準においてもこの内容を維持しています。(注 1) 次の状況にあることを含むものとさ

れています(措法66の 6 ②三ロ、措令

39の14の 3 ⑬)。

イ 外国関係会社(特定保険外国子会

社等に該当するものに限ります。)に

係る特定保険協議者がその本店所在

地国においてその事業の管理、支配

及び運営を自ら行っている状況

ロ 外国関係会社(特定保険委託者に

該当するものに限ります。)に係る特

定保険受託者がその本店所在地国に

おいてその事業の管理、支配及び運

営を自ら行っている状況(注 2) 上記(注 1)のイは、英国ロイズ市

場において、保険引受子会社と管理運

営子会社を別会社とした上でこれらが

一体となって保険業を営む場合に、こ

れらを一体として自ら管理支配を行っ

ているかどうかの判定を行うというも

のであり、改正前の適用除外基準にお

ける管理支配基準の判定において設け

られていた措置(旧措法66の 6 ③、旧

措令39の17⑥)と同様の措置となって

います。また、上記(注 1)のロは、

英国ロイズ市場以外でも保険引受子会

社と管理運営子会社を別会社とした上

でこれらを一体として保険業を営む場

合があることへの対応として、今回の

改正で新たに設けられたものです。

ニ 非関連者基準又は所在地国基準 各事業年度においてその行う主たる事業

─�679�─

――国際課税関係の改正――

の区分に応じ次に定める場合に該当すること(措法66の 6 ②三ハ)。イ 非関連者基準 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は物品賃貸業(航空機の貸付けを主たる事業とするものに限ります。) その事業を主として外国関係会社に係る関連者以外の者との間で行っている場合(措法66の6 ②三ハ⑴) 非関連者基準は、卸売業等の一定の業種に適用される基準で、その事業を主として関連者以外の者と行っていることを要件とするものであり、改正後の経済活動基準においてもこの内容を維持しています。 また、今回の改正では、非関連者基準

について、次の改正が行われました。ⅰ 関連者の範囲 実質支配基準の導入に伴って、非関連者基準における関連者の範囲に次の者が追加されました。・ 居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある外国法人(以下i及び⑹において「被支配外国法人」といいます。)(措令39の14の 3 ⑭四)・ 被支配外国法人が外国関係会社に係る間接保有の株式等を有する場合におけるその株式等の保有に係る他の外国法人及び出資関連外国法人(措令39の14の 3 ⑭五)・ 被支配外国法人の同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ハ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ハ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ハ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ハ)

【改正後】

50%超の支配株主等(措令39の14の 3 ⑭三)

連結親法人(措令39の14の 3 ⑭三)

連結完全支配関係がある他の連結法人

(措令39の14の 3 ⑭一)

50%超の支配株主等(措令39の14の 3 ⑭二)

内国法人(措法66の 6 ②三ハ⑴)

居住者(措法66の 6 ②三ハ⑴)

連結法人(措法66の 6 ②三ハ⑴)

実質支配されている外国法人(被支配外国法人)(措令39の14の 3 ⑭四)

他の外国法人(措令39の14の 3 ⑭五)

出資関連外国法人(措令39の14の 3 ⑭五)

外国関係会社

①②

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ロ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ロ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ロ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ハ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ハ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六ハ)

同族関係者(措令39の14の 3 ⑭六イ)

 以下の者を非関連者基準における関連者に含める。① 実質支配されている外国法人(被支配外国 法人)② 被支配外国法人の同族関係者③ 被支配外国法人が外国関係会社に係る間接 保有の株式等を有する場合における当該間接 保有の株式等に係る他の外国法人及び出資関 連外国法人

非関連者基準における外国関係会社に係る「関連者」の範囲

─�680�─

――国際課税関係の改正――

ⅱ 非関連者基準の適用対象となる事業 非関連者基準の適用対象となる事業に航空機の貸付けの事業が追加されるとともに(措法66の 6 ②三ハ⑴)、各事業年度の航空機の貸付けによる収入金額の合計額のうちに関連者以外の者から収入するものの合計額の占める割合が50%を超える場合には非関連者基準を満たすこととされました(措令39の14の 3 ⑮七)。ⅲ 関連者取引とされる第三者介在取引 関連者取引とされる第三者介在取引の要件を次のとおり見直すこととされました。 すなわち、非関連者基準については、関連者との取引に非関連者が介在している場合について、「相当の理由があると認められる場合を除き、関連者との間で直接行われた取引とみなす」旨の規定が設けられていましたが(旧措令39の17⑪)、非関連者を介在させる「相当の理由」の範囲が必ずしも明確ではありませんでした。 そこで、今回の改正では、取引対象となる資産等が外国関係会社から非関連者を介して関連者に移転等をされ、又は関連者から非関連者を介して外国関係会社に移転等をされることがあらかじめ定まっている場合には、外国関係会社と非関連者との取引は関連者取

引とみなすこととし、関連者取引とみなされる第三者介在取引に関する整備が行われました。 具体的には、次に掲げる取引は、外国関係会社とその外国関係会社に係る関連者との間で行われた取引とみなして、非関連者基準を適用することとされました(措令39の14の 3 ⑯)。ⅰ 外国関係会社と非関連者との間で行う取引(ⅰにおいて「対象取引」といいます。)により非関連者に移転又は提供をされる資産、役務その他のものがその外国関係会社に係る関連者に移転又は提供をされることが対象取引を行った時において契約その他によりあらかじめ定まっている場合におけるその対象取引ⅱ 外国関係会社に係る関連者と非関連者との間で行う取引(ⅱにおいて「先行取引」といいます。)により非関連者に移転又は提供をされる資産、役務その他のものがその外国関係会社に係る非関連者と外国関係会社との間の取引(ⅱにおいて「対象取引」といいます。)により外国関係会社に移転又は提供をされることが先行取引を行った時において契約その他によりあらかじめ定まっている場合におけるその対象取引

─�681�─

――国際課税関係の改正――

ⅳ 一定の保険子会社の扱い 英国ロイズ市場において、保険引受子会社と管理運営子会社を別会社とした上でこれらが一体となって保険業を営む場合に、これらを一体として非関連者基準の判定を行うこととする措置が設けられており、改正後も同様の措置が維持されています。また、今回の改正では英国ロイズ市場以外でも保険引受子会社と管理運営子会社を別会社とした上でこれらを一体として保険業を営む場合があることへの対応として、一定の保険引受子会社と管理運営子会社との間の取引は関連者取引に該当しないものとして非関連者基準の判定を行うこととする措置が設けられました(措令39の14の 3 ⑱)。

ロ 所在地国基準 イの事業以外の事業 その事業を主と

してその本店所在地国(本店所在地国に係る一定の水域を含みます。)において行っている場合(措法66の 6 ②三ハ⑵) 所在地国基準は、非関連者基準が適用される業種以外の業種に適用され、主として外国関係会社の本店所在地国においてその事業を行っていることを要件とするものであり、改正後の経済活動基準においてもこの内容を維持しています。なお、今回の改正では、製造業に係る所在地国基準の整備が行われました。 すなわち、製造業については、本店所在地国において製造行為が行われている場合に所在地国基準を満たすとされてきたところであり、今回の改正では、この取扱いを踏まえ、製造業を主たる事業とする外国関係会社が「主として本店所在地国において製品の製造を行っている場合」に所在地国基準を満たす旨が明確化

 次の取引は外国関係会社Aと関連者との間において行われた取引とみなして、非関連者基準を適用する。① 外国関係会社Aと非関連者Bとの間で行う取引       により非関連者Bに移転・提供をされる資産・役務等が、

関連者Dに移転・提供をされることが外国関係会社Aと非関連者Bとの間の取引を行った時において契約等によりあらかじめ定まっている場合における外国関係会社Aと非関連者Bとの間の取引     

② 関連者Dと非関連者Cとの間で行う取引       により非関連者Cに移転・提供をされる資産・役務等が、非関連者(C・・・B)と外国関係会社Aとの間の取引       により外国関係会社Aに移転・提供をされることが関連者Dと非関連者Cとの間の取引       を行った時において契約等によりあらかじめ定まっている場合における外国関係会社Aと非関連者(C・・・B)との間の取引

《①のケース:外国関係会社が行う販売取引等》

《②のケース:外国関係会社が行う購入取引等》

【改正前】

【改正後】

外国関係会社A 非関連者B 非関連者C 関連者D資産等

関連者D 非関連者C 非関連者B資産等

外国関係会社A

資産等 資産等

資産等 資産等

資産等

関連者取引とみなす 関連者取引とみなす

関連者取引とみなす

(対象取引)

(対象取引)

(先行取引)

《先行取引》

《先行取引》

(対象取引)

《対象取引》

《対象取引》

《対象取引》

《対象取引》

 特定外国子会社等と関連者との間の取引が非関連者を介在させて間接的に行われている場合には、その非関連者を介在させることについて相当の理由があると認められる場合を除き、その特定外国子会社等とその非関連者との間の取引は、その特定外国子会社等とその関連者との間において直接行われたものとみなして、非関連者基準を適用する。

非関連者基準の判定における第三者介在取引に関する見直し

─�682�─

――国際課税関係の改正――

されました(措令39の14の 3 ⑳三)。 また、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的な考え方を踏まえ、新たに、本店所在地国において製造行為を行う場合に加えて、「本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与している場合」にも、所在地国基準を満たすこととされました(措令39の14の 3 ⑳三)。 具体的には、外国関係会社が本店所在地国において行う次に掲げる業務の状況を勘案して、外国関係会社がその本店所在地国においてこれらの業務を通じて製品の製造に主体的に関与していると認められる場合にも所在地国基準を満たすこととされています(措規22の11②)。・ 工場その他の製品の製造に係る施設又は製品の製造に係る設備の確保、整備及び管理・ 製品の製造に必要な原料又は材料の調達及び管理・ 製品の製造管理及び品質管理の実施又はこれらの業務に対する監督・ 製品の製造に必要な人員の確保、組織化、配置及び労務管理又はこれらの業務に対する監督・ 製品の製造に係る財務管理(損益管理、原価管理、資産管理、資金管理その他の管理を含みます。)・ 事業計画、製品の生産計画、製品の生産設備の投資計画その他製品の製造を行うために必要な計画の策定・ その他製品の製造における重要な業務 「本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与している場合」には、自社工場が本店所在地国以外の国又は地域に所在する場合のほか、本店所在地国以外の国又は地域

に製造委託先の工場が所在する場合も含まれます。したがって、これらの業務は自社製造の場合及び製造委託の場合のいずれの場合にも当てはめられることが想定されています。 また、これらの業務の全てを行っていなければ、主体的に関与していると認められないというものではなく、外国関係会社の規模、製品の種類等によって勘案すべき業務の内容は異なるものと考えられます。

② 経済活動基準を満たさないと推定する場合 従来の適用除外基準は、確定申告書に適用除外基準の適用がある旨を記載した書面を添付し、かつ、その適用があることを明らかにする書類その他の資料(資料等)を保存している場合に限り、適用することとされていました(旧措法66の 6 ⑦)。 また、株式の保有を主たる事業とする特定外国子会社等が統括会社(旧措令39の17④)に該当することによりその該当する事業年度に係る適用対象金額につき合算課税の適用を免除する規定(旧措法66の 6 ③)は、確定申告書にその適用がある旨を記載した書面(統括業務の内容その他の事項を記載した書類を含みます。)を添付し、かつ、その適用があることを明らかにする書類その他の資料(特定外国子会社等が行う統括業務(旧措令39の17①)に係る被統括会社(旧措令39の17②)との間の契約に係る書類の写しを含みます。)を保存している場合に限り、適用することとされていました(旧措法66の 6 ⑨、旧措規22の11⑤⑥)。 今回の改正において、本制度の適用を除外する適用除外基準から、会社単位の合算課税の対象とする外国関係会社を特定するための基準(経済活動基準)へと適用除外基準の位置付けが変更されたことを踏まえ、本制度の適用除外を受けるための要件として設けられていた確定申告書への書面添付要件及び資料

─�683�─

――国際課税関係の改正――

等の保存要件は廃止されました。 そして、これらの要件に代えて、引き続き本制度の実効性を確保する観点から、税務当局が求めた場合に、外国関係会社が経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提示又は提出がないときには、経済活動基準を満たさないものと推定することとされました。 具体的には、税務当局の当該職員は、内国法人に係る外国関係会社が上記①イからニまでに掲げる要件に該当するかどうかを判定するために必要があるとき(注 1)は、その内国法人に対し、期間を定めて、その外国関係会社が上記①イからニまでに掲げる要件に該当することを明らかにする書類その他の資料(注 2)の提示又は提出を求めることができることとされ、この場合に、その書類その他の資料の提示又は提出がないときは、その外国関係会社は上記①イからニまでに掲げる要件に該当しないものと推定することとされています(注 3)(措法66の 6 ④)。(注 1) その外国関係会社が特定外国関係会社

に該当しない事実が確認され、かつ、そ

の外国関係会社の対象となる事業年度の

租税負担割合が20%以上である事実が客

観的に確認される場合には、その外国関

係会社の対象となる事業年度の適用対象

金額については、本税制の適用免除とさ

れるため、その外国関係会社がその対象

となる事業年度において上記①イからニ

までに掲げる要件に該当するかどうかを

判定する必要はないことになります。な

お、その外国関係会社が特定外国関係会

社に該当するかどうかの判定については、

上記⑶のとおり、租税負担割合が20%以

上の場合であっても必要となる点に留意

する必要があります。(注 2) 改正前に適用免除規定の適用を受ける

ための要件として、確定申告書に添付し、

又は保存すべきこととされていた書類そ

の他の資料は、改正後の上記①イからニ

までに掲げる要件に該当することを明ら

かにする書類その他の資料に含まれるも

のと考えられます。(注 3) 上記①イからニまでに掲げる要件に該

当しないものと推定されることにより、

対象外国関係会社に該当するものとして

取り扱われることになります。ただし、

上記 3 ⑶①の実体基準及び管理支配基準

を満たすことを明らかにする書類その他

の資料の提示又は提出がないために、そ

の外国関係会社が特定外国関係会社に該

当すると推定される場合(措法66の 6 ③)

には、特定外国関係会社への該当が優先

されることになります(措法66の 6 ②三)。

⑸ 適用対象金額 適用対象金額は特定外国関係会社又は対象外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき本邦法令基準又は現地法令基準によって計算した金額に、繰越欠損金額及び納付法人所得税の額に関する調整を加えた金額とされており、基本的な計算の仕組みは改正前の適用対象金額と同様とされています。 今回の改正では、適用対象金額に算入しない受取配当等に関し、化石燃料の採取を行う一定の外国法人から受ける配当等について、持株割合要件を緩和する措置が講じられたほか、適用対象金額の計算上控除する繰越欠損金について、制度改正に伴う所要の規定の整備が行われました。① 適用対象金額に算入しない受取配当等 外国関係会社が持株割合25%以上等の要件を満たす法人から受ける配当等(いわゆる損金算入配当を除きます。)は、その外国関係会社に係る適用対象金額に算入しないこととされているところですが、化石燃料(原油・石油ガス・可燃性天然ガス・石炭をいいます。以下同じです。)の採取を行う一定の要件を満たす外国法人から受ける配当等については、化石燃料確保の重要性及びその経済活動実態

─�684�─

――国際課税関係の改正――

等に鑑みて、この持株割合要件(25%以上)を10%以上に緩和することとされました(措令39の15①四)。 一定の要件は、具体的には、次のとおりとされています。イ その主たる事業が化石燃料を採取する事業(自ら採取した化石燃料に密接に関連する事業を含みます。)であること。ロ 租税条約(注)の我が国以外の締約国又は締約者(その締約国又は締約者に係る内水及び領海並びに排他的経済水域又は大陸棚に相当する水域を含みます。)内に化石燃料を採取する場所を有していること。(注) ここでいう租税条約とは、法人税法第

139条第 1 項(租税条約に異なる定めがあ

る場合の国内源泉所得)に規定する租税

条約をいいます(措令39の12⑤)。同法第

139条第 1 項では、「日本国が締結した所

得に対する租税に関する二重課税の防止

のための条約」とされているため、いわ

ゆる情報交換協定(課税権の配分に関す

る規定を有しないものに限ります。)及び

いわゆる税務行政執行共助条約は、ここ

でいう租税条約に含まれないことになり

ます。

② 適用対象金額の計算上控除する欠損金額 特定外国関係会社又は対象外国関係会社の各事業年度開始の日前 7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(注)につい

て、適用対象金額の計算上控除することとされています(措法66の 6 ②四、措令39の15⑤一)。 ただし、特定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当しなかった事業年度及び合算課税の適用免除となる事業年度、つまり、特定外国関係会社については租税負担割合が30%以上、対象外国関係会社については租税負担割合が20%以上の事業年度において生じた欠損金額については、控除の対象から除くこととされています(措令39の15⑤一)。(注) 部分対象外国関係会社に該当する事業年

度に生じた部分適用対象損失額及び外国金

融子会社等に該当する事業年度に生じた金

融子会社等部分適用対象損失額については、

特定外国関係会社又は対象外国関係会社の

適用対象金額の計算上、控除の対象とされ

ていません。

 なお、改正前の制度において「特定外国子会社等」、つまり、租税負担割合20%未満(外国関係会社の平成27年 4 月 1 日前開始事業年度にあっては20%以下)の外国関係会社に該当していた事業年度(前 7年以内に開始した事業年度に限ります。)において生じた欠損金額については、引き続き、改正後の制度において、特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額の計算上控除されます。

─�685�─

――国際課税関係の改正――

特定外国子会社等(欠損金額)

欠損金額を生じた事業年度における外国関係会社の区分(欠損金額の種類)

〔H30. 4 . 1 前開始事業年度〕

当該事業年度における外国関係会社の区分(適用対象金額等の種類)

(適用対象金額)

控除不可

部分対象関係会社(注 2)※外国金融子会社等を除く。

(部分適用対象金額)

外国金融子会社等(注 2)

(金融子会社等部分適用対象金額)

特定外国子会社等※部分適用対象金額の計算において欠損金の繰越控除制度はない。

控除不可

〔H30. 4 . 1 以後開始事業年度〕

(注 1)租税負担割合30%未満に限る。(注 2)租税負担割合20%未満に限る。

全体合算

部分合算

特定外国関係会社(注 1)対象外国関係会社(注 2)

○ 改正前の制度において特定外国子会社等に該当していた事業年度(その事業年度開始の日前 7 年以内に開始した事業年度に限る。)に生じた欠損金額は、改正後の制度において特定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当する事業年度の適用対象金額の計算上控除される。

改正前(平成30年 4 月 1 日前開始事業年度)に生じた特定外国子会社等の欠損金額の繰越控除

○ ①特定外国関係会社・対象外国関係会社、②部分対象外国関係会社(外国金融子会社等を除く。)又は③外国金融 子会社等に該当する外国関係会社が、その事業年度の適用対象金額、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用 対象金額の計算上控除できる繰越欠損金額等は、それぞれ同じ区分の外国関係会社に該当していた事業年度に生じ た欠損金額等に限られる。

欠損金額等を生じた事業年度における外国関係会社の区分(欠損金額等の種類)

特定外国関係会社(注 1)対象外国関係会社(注 2)

全体合算

部分合算

〔H30. 4 . 1 以後開始事業年度〕

当該事業年度における外国関係会社の区分(適用対象金額等の種類)

(欠損金額)

特定外国関係会社(注 1)対象外国関係会社(注 2)

部分対象関係会社(注 2)※外国金融子会社等を除く。(部分適用対象金額のうち一定のものから控除)

部分対象関係会社(注 2)※外国金融子会社等を除く。(部分適用対象損失額)

③外国金融子会社等(注 2)

(金融子会社等部分適用対象損失額)

(注 1)租税負担割合30%未満に限る。(注 2)租税負担割合20%未満に限る。

外国金融子会社等(注 2)(金融子会社等部分適用対象金額のうち

一定のものから控除)

(適用対象金額)

別種類の欠損金額等は控除不可

別種類の欠損金額等は控除不可

別種類の欠損金額等は控除不可

改正後(平成30年 4 月 1 日以後開始事業年度)に生じた欠損金額等の繰越控除

─�686�─

――国際課税関係の改正――

⑹ 課税対象金額① 概要 内国法人においてその所得の金額の計算上益金の額に算入される金額は、特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額のうち、その内国法人が直接及び間接に有する特定外国関係会社又は対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額並びにその内国法人と特定外国関係会社又は対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額に相当する金額とされており(措法66の 6①)、具体的には、特定外国関係会社又は対象外国関係会社の各事業年度の適用対象金額に、各事業年度終了の時におけるその内国法人の特定外国関係会社又は対象外国関係会社に係る請求権等勘案合算割合を乗じて計算した金額とされています(措令39の14①)。② 請求権等勘案合算割合 上記①の「請求権等勘案合算割合」とは、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める割合とされています(措令39の14②一)。イ 内国法人が外国関係会社(被支配外国法人に該当するものを除きます。)の株式等を直接又は他の外国法人を通じて間接に有している場合��外国関係会社の発行済株式等のうちにその内国法人の有する外国関係会社の請求権等勘案保有株式等の占める割合ロ 外国関係会社が内国法人に係る被支配外国法人に該当する場合��100%ハ 内国法人に係る被支配外国法人が外国関係会社(被支配外国法人に該当するものを除きます。)の株式等を直接又は他の外国法人を通じて間接に有している場合��外国関係会社の発行済株式等のうちにその内国法人に係る被支配外国法人の有する外国関係会社の請求権等勘案保有株式等の占める割合ニ イ及びハに掲げる場合のいずれにも該当

する場合��イ及びハに定める割合を合計した割合

③ 請求権等勘案保有株式等 上記②の「請求権等勘案保有株式等」とは、内国法人又はその内国法人に係る被支配外国法人(⑹において「内国法人等」といいます。)が有する外国法人の株式等の数又は金額(請求権の内容考慮後のもの)と請求権等勘案間接保有株式等を合計した数又は金額をいいます。 具体的には、請求権等勘案保有株式等とは、内国法人等が有する外国法人の株式等の数又は金額(その外国法人が請求権の内容が異なる株式等を発行している場合には、その外国法人の発行済株式等に、その内国法人等が請求権の内容が異なる株式等に係る請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合を乗じて計算した数又は金額)及び請求権等勘案間接保有株式等を合計した数又は金額とされています(措令39の14②二)。④ 請求権等勘案間接保有株式等 上記③の「請求権等勘案間接保有株式等」とは、外国法人の発行済株式等に、各連鎖段階の持株割合(請求権の内容考慮後のもので、実質支配関係がある場合には零)を乗じて計算した株式等の数又は金額をいいます。 具体的には、請求権等勘案間接保有株式等とは、外国法人の発行済株式等に、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める割合(次に掲げる場合のいずれにも該当する場合には、それぞれ次に定める割合の合計割合)を乗じて計算した株式等の数又は金額とされています(措令39の14②三)。イ その外国法人の株主等である他の外国法人(イにおいて「他の外国法人」といいます。)の発行済株式等の全部又は一部が内国法人等により保有されている場合��内国法人等の他の外国法人に係る持株割合(その株主等の有する株式等の数又は金額

─�687�─

――国際課税関係の改正――

がその株式等の発行法人の発行済株式等のうちに占める割合(次に掲げる場合に該当する場合には、それぞれ次に定める割合)をいいます。④において同じです。)に当該他の外国法人のその外国法人に係る持株割合を乗じて計算した割合(当該他の外国法人が二以上ある場合には、二以上の当該他の外国法人につきそれぞれ計算した割合の合計割合)イ その発行法人が請求権の内容が異なる株式等を発行している場合(ロに掲げる場合に該当する場合を除きます。)��その株主等がその請求権の内容が異なる株式等に係る請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合ロ その発行法人と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合��零

ロ その外国法人と他の外国法人(その発行済株式等の全部又は一部が内国法人等により保有されているものに限ります。ロにおいて「他の外国法人」といいます。)との間に一又は二以上の外国法人(ロにおいて「出資関連外国法人」といいます。)が介在している場合であって、内国法人等、他の外国法人、出資関連外国法人及びその外国法人が株式等の保有を通じて連鎖関係にある場合��内国法人等の当該他の外国法人に係る持株割合、当該他の外国法人の出資関連外国法人に係る持株割合、出資関連外国法人の他の出資関連外国法人に係る持株割合及び出資関連外国法人のその外国法人に係る持株割合を順次乗じて計算した割合(その連鎖関係が二以上ある場合には、その二以上の連鎖関係につきそれぞれ計算した割合の合計割合)

① ② ③

請求権等勘案合算割合:a%×b%×c%

内国法人

外国法人

外国関係会社

外国法人

a%保有

b%保有

c%保有

外国関係会社

実質支配されている外国法人

実質支配

外国法人A

d%保有

請求権等勘案合算割合:d%×e%

内国法人内国法人

外国関係会社

実質支配

株式保有

実質支配

請求権等勘案合算割合:100%

株式保有

考慮しない

e%保有

実質支配されている外国法人

考慮しない

 合算対象金額である課税対象金額は、外国関係会社の適用対象金額に請求権等勘案合算割合(次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める割合)を乗じて計算する。① 内国法人が外国関係会社(居住者・内国法人に実質支配されている外国法人(「被支配外国法人」)に該当するものを除く。)の株式等を直接又は他の外国法人を通じて間接に有している場合…その外国関係会社の発行済株式等のうちにその内国法人の有するその外国関係会社の請求権等勘案保有株式等(※)の占める割合

② 外国関係会社が内国法人に係る被支配外国法人に該当する場合…100%③ 内国法人に係る被支配外国法人が外国関係会社(被支配外国法人に該当するものを除く。)の株式等を直接又は他の外国法人を通じて間接に有している場合…その外国関係会社の発行済株式等のうちにその内国法人に係る被支配外国法人の有するその外国関係会社の請求権等勘案保有株式等(※)の占める割合

④ ①及び③の場合のいずれにも該当する場合…①及び③の割合を合計した割合(※)「請求権等勘案保有株式等」とは、内国法人又は被支配外国法人が有する外国法人の株式等の数・金額(請求権の内容考慮後のもの)と

請求権等勘案間接保有株式等(外国法人の発行済株式等に、各連鎖段階の持株割合(請求権の内容考慮後のもので、実質支配関係がある場合には零)を乗じて計算した株式等の数・金額)を合計した数・金額をいう。

課税対象金額の計算

─�688�─

――国際課税関係の改正――

4  特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額に係る合算課税の適用免除

 今回の改正では、外国子会社合算税制について、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」とのBEPSプロジェクトの基本的な考え方に基づき、日本企業の海外展開を阻害することなく、より効果的に国際的な租税回避に対応する観点から、次の見直しが行われました。 具体的には、租税回避リスクを、改正前の外国子会社の租税負担割合により把握する制度から、所得や事業の内容によって把握する制度に改めることとされ、改正前の制度において制度適用の有無を入口で判定するための基準として設けられていた外国子会社の租税負担割合の基準(いわゆる「トリガー税率」)は廃止することとされました。 これにより、租税回避リスクが高いと考えられるペーパー・カンパニー等については、租税負担割合が20%以上であっても、合算課税制度の対象とされることとされました。 他方で、改正前の制度との継続性を踏まえつつ、企業の事務負担を軽減する観点から、ペーパー・カンパニー等に該当しない外国子会社で租税負担割合が20%以上のものについては、制度の適用を免除することとされました。 合算課税の適用免除に関する具体的な内容は、次のとおりです。

⑴ 合算課税の適用免除① 対象外国関係会社の適用対象金額に係る適用免除 対象外国関係会社については、上記のとおり、企業の事務負担軽減の観点から、改正前の制度との継続性を踏まえ、各事業年度の租税負担割合が20%以上の場合におけるその事業年度に係る適用対象金額について、合算課税の適用を免除することとされています(措法66の 6 ⑤二)。② 特定外国関係会社の適用対象金額に係る適

用免除 特定外国関係会社については、より租税回避リスクが高いことから、我が国の法人税の実効税率等を参考に、想定される租税回避リスクや企業の事務負担等を勘案して、各事業年度の租税負担割合が30%以上の場合におけるその事業年度に係る適用対象金額について、合算課税の適用を免除することとされています(措法66の 6 ⑤一)。

⑵ 合算課税の適用免除の効果 改正前の制度では、租税負担割合が20%以上の外国関係会社について、本制度の対象外とされていたため(旧措法66の 6 ①)、内国法人が確定申告書を提出する際、租税負担割合が20%以上の外国関係会社に関する明細を添付する必要はなく、また、その租税負担割合が20%以上である旨の明細についても確定申告書への添付は必要ないこととなっていました。 改正後の制度においても、租税負担割合が20%以上の対象外国関係会社については、本制度の適用が免除されるため(措法66の 6 ⑪一)、改正前と同様に、内国法人が確定申告書を提出する際、対象外国関係会社に関する明細を添付する必要はなく、また、その租税負担割合が20%以上である旨の明細についても確定申告書への添付は必要ないこととなります。 租税負担割合が30%以上の特定外国関係会社についても、本制度の適用が免除されるため(措法66の 6 ⑪二)、これと同様です。

⑶ 租税負担割合の計算① 租税負担割合の計算 租税負担割合の計算は、改正前のトリガー税率の計算方法が維持されています(措令39の17の 2 )。 なお、改正前は、外国関係会社が本店所在地国において軽減され、又は免除された外国法人税の額で、内国法人がその外国関係会社から受けた配当等について間接外国税額控除

─�689�─

――国際課税関係の改正――

の適用を受けるとした場合に、租税条約の規定によりその外国関係会社が納付したものとみなされるものを加算することとされていました(旧措令39の14②二ロ)。 しかし、平成21年度税制改正における外国

子会社配当益金不算入制度の導入に伴い、間接外国税額控除制度は 3年間の経過措置を経て廃止されているため(平成21年改正法附則12②)、今回の見直しを機に、この間接外国税額控除に関する取扱いが廃止されました。

(参考) 租税負担割合の計算式

本店所在地国において課される外国法人税 + 第三国において課される外国法人税 +

みなし納付外国法人税�

本店所在地国の法令に基づく所得

+本店所在地国の法令で非課税とされる所得

+ 損金算入支払配当 + 損金算入外

国法人税 + 損金算入されない保険準備金等 - 益金算入還付

外国法人税

② 無税国に本店がある場合の租税負担割合の計算 改正前の制度においては、法人の所得に対して課される税が存在しない国に外国関係会社の本店がある場合には、租税負担割合が著しく低い外国関係会社に該当することとされていました(旧措令39の14①一)。 他方で、第三国に所在する支店等も含めた外国関係会社全体としてみれば実体のある事業を営んでいる場合があることから、今回の改正では、外国子会社の本店がいわゆる無税国に所在する場合に、本店所在地国において課される税が存在しないという点で判定する仕組みを廃止し、上記①による租税負担割合の計算を行うこととされました。

5  部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税)

⑴ 改正の概要 今回の改正では、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的な考え方に基づき、租税回避リスクを外国子会社の所得や活動の内容により把握する

という方向性に沿って、いわゆる「受動的所得」として部分合算課税の対象となる所得の範囲及び合算対象所得の計算方法等の見直しが行われました。 また、外国関係会社の行う事業の性質上重要で欠くことができない業務から生じた一定の所得については、これまで特定所得の範囲から除外されていました。今回の改正において、部分合算課税の対象となる所得の範囲の見直しに伴い、租税回避リスクを所得類型ごとに判断し、外国関係会社にその所得を得るだけの実質を備えていると考えられるものを、事務負担も考慮して、個別に除外することとされました。 改正後の部分合算課税の対象となる金額は、部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものを除きます。)の特定所得の金額に係る部分適用対象金額のうち内国法人が有する部分対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額及びその内国法人と部分対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額とされました(措法66の 6 ⑥)。以下、その具体的な内容について説明します。

・�内国法人が間接外国税額控除の適用を受けるとした場合に、租税条約の規定により外国関係会社が納付したものとみなされるもの(今回の改正で廃止)

─�690�─

――国際課税関係の改正――

【改正前】(旧措法66の 6 ④等) 【改正後】(新措法66の 6 ⑥等)

持株割合10%未満の株式等に係る剰余金の配当等㈠ ※

剰余金の配当等㈠ ◎(持株割合25%以上(注)の株式等に係る配当等を除く。) (注)�� 一定の資源投資法人から受ける配当等にあっては、

10%以上

債券の利子㈡ ※ 受取利子等㈡ ◎(業務の通常の過程で生ずる預貯金利子、一定の貸金業者が行う金銭の貸付けに係る利子、一定の割賦販売等に係る利子、一定のグループファイナンスに係る利子を除く。)

債券の償還差益㈢ ※

持株割合10%未満の株式等の譲渡益㈣ ※ 有価証券の譲渡損益㈣ ◎(持株割合25%以上の株式等に係る譲渡損益を除く。)債券の譲渡益㈤ ※

- 有価証券の貸付けの対価㈢ ◎

デリバティブ取引に係る損益㈤ ◎(ヘッジ取引として行った一定のデリバティブ取引、一定の商品先物取引業者等が行う商品先物取引、先物外国為替契約等に相当する契約に基づくデリバティブ取引、一定の金利スワップ等に係る損益を除く。)

外国為替差損益㈥ ◎(事業(外国為替差損益を得ることを目的とする投機的取引を行う事業を除く。)に係る業務の通常の過程で生ずる損益を除く。)

- その他の金融所得㈦ ◎(ヘッジ取引として行った一定の取引に係る損益を除く。)

特許権等の使用料㈥(自己開発等一定のものに係る使用料を除く。)

無形資産等の使用料㈨(自己開発等一定のものに係る使用料を除く。) (注)� 無形資産等の範囲は、改正前の事業基準における無

形資産等の範囲と同様。

-無形資産等の譲渡損益㈩(自己開発等一定のものに係る損益を除く。) (注) 同上

船舶・航空機の貸付けの対価㈦ 固定資産の貸付けの対価㈧(本店所在地国で使用に供される等の固定資産の貸付けによる対価、一定の要件を満たす事業者が行う貸付けによる対価を除く。)

- 異常所得(十一) (注) 資産、人件費、減価償却費の裏付けの無い所得

上記※の所得については、事業(株式保有業等の特定事業を除く。)の性質上重要で欠くことのできない業務から生じたものは合算対象から除外。

上記◎の所得については、一定の要件を満たす金融機関は、合算対象から除外。ただし、異常な水準の資本に係る所得は合算対象。

部分合算課税の対象となる所得の範囲の比較

─�691�─

――国際課税関係の改正――

⑵ 部分対象外国関係会社 部分対象外国関係会社とは、経済活動基準を全て満たす外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除きます。)とされています(措法66の 6 ②六)。(注) 部分対象外国関係会社のうち、外国金融子

会社等に該当するものについての特定所得の

金額等については下記 6のとおりとされてい

ます。以下 5において、部分対象外国関係会

社とは外国金融子会社等以外の部分対象外国

関係会社をいうものとします。

⑶ 特定所得の金額 特定所得の金額は次に掲げる金額をいいます。① 剰余金の配当等イ 剰余金の配当等に係る所得の金額 剰余金の配当等(法人税法第23条第 1項第 1号に規定する剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいい、同項第 2号に規定する金銭の分配を含みます。)の額の合計額からその剰余金の配当等の額を得るために直接要した費用の額の合計額及びその剰余金の配当等の額に係る費用の額として次の算式により計算した金額を控除した残額(措法66の 6⑥一、措令39の17の 3 ③)《算式》

部分対象外国関係会社がその事業年度において支払う負債の利子の額の合計額

×

部分対象外国関係会社がその事業年度終了の時において有する株式等(剰余金の配当等の額に係るものに限ります。)の貸借対照表に計上されている帳簿価額の合計額

直接要した費用の額の合計額として剰余金の配当等に係る特定所得の金額の計算上控除される負債の利子の金額

部分対象外国関係会社のその事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額

(注) 上記の算式により計算した費用の金額

がマイナスとなる場合には、その費用の

額は零となります(措令39の17の 3 ③)。

 なお、剰余金の配当等の額からこれを得るために直接要した費用の額及び上記の算式により計算した金額の控除を行った結果がマイナスとなった場合にはその所得類型に係る特定所得の金額は零となり(措法66の 6 ⑥一)、他の所得類型に係る特定所得の金額との通算や翌事業年度以後への損失額の繰越しは認められません。 改正前は、持株割合10%未満の株式等に係る剰余金の配当等の額が部分合算課税の対象とされ、持株割合10%以上の株式等に係る剰余金の配当等の額が部分合算課税の対象から除外されていました(旧措法66の6 ④一)。今回の改正では租税回避リスクを外国関係会社の所得や活動の内容によって把握するという方向性に沿って部分合算課税の対象となる剰余金の配当等の範囲を見直し、剰余金の配当等という所得種類を部分合算課税の対象とした上で、一定の剰余金の配当等の額については、下記ロのとおり部分合算課税の対象から除外することとされました(措法66の 6 ⑥一)。ロ 除外される金額イ 部分対象外国関係会社の有する他の法人の株式等の数又は金額のその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合が25%以上であり、かつ、その状態が支払義務が確定する日(一定のみなし配当に該当する配当等の場合には同日の前日)以前 6月以上継続している等の場合における当該他の法人(ロに該当する場合を除きます。)から受ける剰余金の配当等の額(措法66の 6 ⑥一イ、措令39の17の 3 ④) 外国子会社配当益金不算入制度において、能動的な事業活動から生じたと考えられる剰余金の配当等に係る持株割合基

─�692�─

――国際課税関係の改正――

準が25%以上と整理されていることを踏まえ、持株割合25%以上の株式等に係る剰余金の配当等の額(注)について、部分合算課税の対象から除外することとされました。(注) 損金算入配当等(部分対象外国関係

会社が他の法人から受ける剰余金の配

当等の全部又は一部がその法人の本店

所在地国の法令においてその法人の所

得の金額の計算上損金の額に算入する

こととされている場合におけるその剰

余金の配当等をいいます。ロにおいて

同じです。)の額を除きます(措法66の

6 ⑥一、措令39の17の 3 ②)。

ロ 部分対象外国関係会社の有する他の外国法人(化石燃料を採取する事業(自ら採取した化石燃料に密接に関連する事業を含みます。)を主たる事業とする外国法人のうち、租税条約(注 1)の我が国以外の締約国等(注 2)内に化石燃料を採取する場所を有するものに限ります。)の株式等の数又は金額のその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合が10%以上である場合の当該他の外国法人から受ける剰余金の配当等の額(注 3)(措法66の 6 ⑥一ロ、措令39の17の 3 ⑤) 化石燃料の採取を行う一定の要件を満たす外国法人から受ける剰余金の配当等について、化石燃料確保の重要性及びその経済活動実態等に鑑みて部分合算課税の対象から除外される剰余金の配当等に係る持株割合要件25%以上が10%以上に緩和されています。(注 1) 租税条約の範囲については、上記

3 ⑸①ロをご参照ください。(注 2) 締約国等の範囲については、上記

3 ⑸①ロをご参照ください。(注 3) 損金算入配当等の額を除きます

(措法66の 6 ⑥一、措令39の17の 3 ②)。

② 受取利子等

イ 受取利子等に係る所得の金額 受取利子等(その支払を受ける利子(その経済的な性質が利子に準ずるものを含みます。)をいいます。)の額の合計額からその利子等を受け取るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額(措法66の 6⑥二) 改正前の資産性所得の合算課税制度においては、資産運用的な所得として債券の利子及びその償還差益が部分合算課税の対象とされていました(旧措法66の 6 ④二・三)。 今回の改正では、租税回避リスクを外国関係会社の所得や活動の内容によって把握するという方向性に沿って部分合算課税の対象となる利子等の範囲を見直し、支払を受ける利子(その経済的な性質が利子に準ずるものを含みます。)を部分合算課税の対象とした上で、一定の利子については、下記ロのとおり、部分合算課税の対象から除外することとされました(措法66の 6 ⑥二)。 経済的な性質が利子に準ずるものには、手形の割引料や償還有価証券の調整差益が含まれます(措令39の17の 3 ⑦)。ただし、法人税法第64条の 2第 3項(リース取引に係る所得の金額の計算)に規定するリース取引による同条第 1項に規定するリース資産の引渡しを行ったことにより受けるべき対価の額に含まれる利息に相当する金額については、別途下記⑧に掲げる固定資産の貸付けによる対価の額に含まれることから、受取利子等の範囲から除かれています(措令39の17の 3 ⑦)。 受取利子等の額からこれを得るために要した費用の額の控除を行った結果としてマイナスとなった場合にはその所得類型に係る特定所得の金額は零となり(措法66の 6⑥二)、他の所得類型に係る特定所得の金額との通算や翌事業年度以後への損失額の繰越しは認められません。

─�693�─

――国際課税関係の改正――

 受取利子等の額を得るために直接要した費用の額は、例えば、その受取利子等について課された源泉税や借入金を原資に金銭の貸付けを行う場合におけるその借入金に係る支払利子等のような、その受取利子等の額を得るために直接紐付きの関係が確認できる費用が想定されています。 なお、改正前の制度における債券利子及び償還差益に係る特定所得の金額の計算において認められていた負債利子配賦額の控除の規定(旧措法66の 6 ④二・三、旧措令39の17の 2 ④⑨)は、部分合算課税の対象となる利子等の範囲について、従来から合算対象とされていた債券利子及び償還差益だけでなく、受取利子等の全般を対象とする一方で、下記ロのとおり実体ある事業を通じて得た受取利子等については、部分合算課税の対象から除くこととされたため、こうした性格を持たない、いわゆる「受動的所得」とされた受取利子等に係る間接費用の控除は行わないこととされました。ロ 除外される金額 その本店所在地国において活動するための十分な経済合理性があると認められる一定の利子については、次のとおり、部分合算課税の対象から除外することとされました。イ 業務の通常の過程で生ずる預貯金利子の額 その行う事業に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金(所得税法第 2条第 1項第10号(定義)に規定する政令で定めるものを含みます。)の利子の額(措法66の 6 ⑥二) 業務の通常の過程で生ずる預貯金利子を利用した租税回避は想定し難いことから、部分合算課税の対象から除外することとされました。ロ 一定の貸金業者が行う金銭の貸付けに係る利子の額

 金銭の貸付けを主たる事業とする部分対象外国関係会社(金銭の貸付けを業として行うことにつきその本店所在地国の法令の規定によりその本店所在地国において免許又は登録その他これらに類する処分を受けているものに限ります。)で、その本店所在地国においてその役員又は使用人がその行う金銭の貸付けの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものが行う金銭の貸付けに係る利子(措法66の 6⑥二) 金銭の貸付けを主たる事業とし、その本店所在地国において金銭の貸付けを業として行うことにつき免許等を受け、実体のある事業活動を行っている貸金業者が行う金銭の貸付けに係る利子については、部分合算課税の対象から除外することとされました。ハ 一定の割賦販売等に係る利子の額 割賦販売等(割賦販売法第 2条第 1項から第 4項(定義)までに規定する割賦販売、ローン提携販売、包括信用購入あっせん又は個別信用購入あっせんに相当するものをいいます。ハにおいて同じです。)を行う部分対象外国関係会社でその本店所在地国においてその役員又は使用人が割賦販売等を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものが行う割賦販売等から生ずる利子(措令39の17の 3 ⑧一) 割賦販売等に係る支払対価に係る利息に相当する金額については、その経済的な性質が利子に準ずるものであることから受取利子等に該当することとなりますが、本店所在地国において実体のある活動を行っている部分対象外国関係会社が行う割賦販売等から生ずる受取利子等については、部分合算課税の対象から除外することとされました。

─�694�─

――国際課税関係の改正――

(参考) 割賦販売法(昭和36年法律第159号)(抄)

第 2 条 この法律において「割賦販売」とは、

次に掲げるものをいう。

一 購入者から商品若しくは権利の代金を、

又は役務の提供を受ける者から役務の対

価を 2 月以上の期間にわたり、かつ、 3

回以上に分割して受領すること(購入者

又は役務の提供を受ける者をして販売業

者又は役務の提供の事業を営む者(以下

「役務提供事業者」という。)の指定する

銀行その他預金の受入れを業とする者に

対し、 2 月以上の期間にわたり 3 回以上

預金させた後、その預金のうちから商品

若しくは権利の代金又は役務の対価を受

領することを含む。)を条件として指定商

品若しくは指定権利を販売し、又は指定

役務を提供すること。

二 それを提示し若しくは通知して、又は

それと引換えに、商品若しくは権利を購

入し、又は有償で役務の提供を受けるこ

とができるカードその他の物又は番号、

記号その他の符号(以下この項及び次項、

次条並びに第29条の 2 において「カード

等」という。)をこれにより商品若しくは

権利を購入しようとする者又は役務の提

供を受けようとする者(以下この項及び

次項、次条、第 4 条の 2(第29条の 4 第

1 項において準用する場合を含む。)、第

29条の 2並びに第38条において「利用者」

という。)に交付し又は付与し、あらかじ

め定められた時期ごとに、そのカード等

の提示若しくは通知を受けて、又はそれ

と引換えに当該利用者に販売した商品若

しくは権利の代金又は当該利用者に提供

する役務の対価の合計額を基礎としてあ

らかじめ定められた方法により算定して

得た金額を当該利用者から受領すること

を条件として、指定商品若しくは指定権

利を販売し又は指定役務を提供すること。

2 この法律において「ローン提携販売」とは、

次に掲げるものをいう。

一 カード等を利用者に交付し又は付与し、

当該利用者がそのカード等を提示し若し

くは通知して、又はそれと引換えに購入

した商品若しくは権利の代金又は提供を

受ける役務の対価に充てるためにする金

銭の借入れで、 2 月以上の期間にわたり、

かつ、 3 回以上に分割して返還すること

を条件とするものに係る購入者又は役務

の提供を受ける者の債務の保証(業とし

て保証を行う者に当該債務の保証を委託

することを含む。)をして、指定商品若し

くは指定権利を販売し、又は指定役務を

提供すること。

二 カード等を利用者に交付し又は付与し、

当該利用者がそのカード等を提示し若し

くは通知して、又はそれと引換えに購入

した商品若しくは権利の代金又は提供を

受ける役務の対価に充てるためにする金

銭の借入れで、あらかじめ定められた時

期ごとに、その借入金の合計額を基礎と

してあらかじめ定められた方法により算

定して得た金額を返済することを条件と

するものに係る当該利用者の債務の保証

(業として保証を行う者に当該債務の保証

を委託することを含む。)をして、そのカ

ード等の提示若しくは通知を受けて、又

はそれと引換えに指定商品若しくは指定

権利を販売し又は指定役務を提供するこ

と。

3  この法律において「包括信用購入あつせ

ん」とは、次に掲げるものをいう。

一 それを提示し若しくは通知して、又は

それと引換えに、特定の販売業者から商

品若しくは権利を購入し、又は特定の役

務提供事業者から有償で役務の提供を受

けることができるカードその他の物又は

番号、記号その他の符号(以下この項及

び次項、第30条から第30条の 2 の 3 まで、

第34条並びに第35条の16において「カー

─�695�─

――国際課税関係の改正――

ド等」という。)をこれにより商品若しく

は権利を購入しようとする者又は役務の

提供を受けようとする者(以下この項、

第30条から第30条の 2 の 3 まで、第30条

の 5 の 2、第30条の 5 の 3、第30条の 6

において準用する第 4 条の 2、第33条の

2(第33条の 3 第 2 項において準用する

場合を含む。)、第34条の 2、第35条の 3

の43、第35条の 3 の46、第35条の 3 の57、

第35条の 3 の59、第35条の16、第41条及

び第41条の 2 において「利用者」とい

う。)に交付し又は付与し、当該利用者が

そのカード等を提示し若しくは通知して、

又はそれと引換えに特定の販売業者から

商品若しくは権利を購入し、又は特定の

役務提供事業者から役務の提供を受ける

ときは、当該販売業者又は当該役務提供

事業者に当該商品若しくは当該権利の代

金又は当該役務の対価に相当する額の交

付(当該販売業者又は当該役務提供事業

者以外の者を通じた当該販売業者又は当

該役務提供事業者への交付を含む。)をす

るとともに、当該利用者から当該代金又

は当該対価に相当する額をあらかじめ定

められた時期までに受領すること(当該

利用者が当該販売業者から商品若しくは

権利を購入する契約を締結し、又は当該

役務提供事業者から役務の提供を受ける

契約を締結した時から 2 月を超えない範

囲内においてあらかじめ定められた時期

までに受領することを除く。)。

二 カード等を利用者に交付し又は付与し、

当該利用者がそのカード等を提示し若し

くは通知して、又はそれと引換えに特定

の販売業者から商品若しくは権利を購入

し、又は特定の役務提供事業者から役務

の提供を受けるときは、当該販売業者又

は当該役務提供事業者に当該商品若しく

は当該権利の代金又は当該役務の対価に

相当する額の交付(当該販売業者又は当

該役務提供事業者以外の者を通じた当該

販売業者又は当該役務提供事業者への交

付を含む。)をするとともに、当該利用者

からあらかじめ定められた時期ごとに当

該商品若しくは当該権利の代金又は当該

役務の対価の合計額を基礎としてあらか

じめ定められた方法により算定して得た

金額を受領すること。

4  この法律において「個別信用購入あつせ

ん」とは、カード等を利用することなく、

特定の販売業者が行う購入者への商品若し

くは指定権利の販売又は特定の役務提供事

業者が行う役務の提供を受ける者への役務

の提供を条件として、当該商品若しくは当

該指定権利の代金又は当該役務の対価の全

部又は一部に相当する金額の当該販売業者

又は当該役務提供事業者への交付(当該販

売業者又は当該役務提供事業者以外の者を

通じた当該販売業者又は当該役務提供事業

者への交付を含む。)をするとともに、当該

購入者又は当該役務の提供を受ける者から

あらかじめ定められた時期までに当該金額

を受領すること(当該購入者又は当該役務

の提供を受ける者が当該販売業者から商品

若しくは指定権利を購入する契約を締結し、

又は当該役務提供事業者から役務の提供を

受ける契約を締結した時から 2 月を超えな

い範囲内においてあらかじめ定められた時

期までに受領することを除く。)をいう。

5・ 6 省 略

ニ 一定のグループファイナンスに係る利子の額ⅰ 部分対象外国関係会社(その本店所在地国においてその行う金銭の貸付けに係る事務所、店舗その他の固定施設を有し、かつ、その本店所在地国においてその役員又は使用人がその行う金銭の貸付けの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものに限ります。)(注

─�696�─

――国際課税関係の改正――

1 )がその関連者等(注 2)に対して行う金銭の貸付けに係る利子の額(措令39の17の 3 ⑧二)(注 1) 部分対象外国関係会社が金銭の

貸付けを業として行うことにつき

その本店所在地国の法令の規定に

より免許又は登録その他これに類

する処分を受けているかどうかは

要件とされていません。(注 2) 関連者等とは、部分対象外国関

係会社にとっての非関連者基準に

おける関連者(その主たる事業が

非関連者基準の適用されない業種

である部分対象外国関係会社にあ

っては、非関連者基準が適用され

るものとして読み替えた場合の関

連者)及びその部分対象外国関係

会社が統括会社に該当する場合の

その統括会社に係る被統括会社を

いいます(措令39の17の 3 ⑧二イ

~ハ)。

 多数の外国子会社を構えて国際的に事業展開する企業グループにおいては、各事業会社の資金需給を調整し、グループ全体での資金効率の最適化を図るためにグループファイナンス機能を有する外国子会社を設立する場合があります。そこで、本店所在地国において実体のあるグループファイナンス事業を行っていると認められる部分対象外国関係会社が関連者等に対して行う金銭の貸付けによって得る利子については、部分合算課税の対象から除外することとされました。ⅱ 部分対象外国関係会社がその部分対象外国関係会社の関連者等である外国法人(上記ⅰに掲げる部分対象外国関係会社及び外国金融子会社等に限ります。)に対して行う金銭の貸付けに係る利子の額(措令39の17の 3 ⑧三)

 上記ⅰの措置と併せて、ⅰのグループファイナンス会社(グループファイナンスを行う部分対象外国関係会社が下記 6の外国金融子会社等に該当する場合を含みます。)がその関連者等から資金調達を行う場合、すなわち、その関連者等である部分対象外国関係会社がグループファイナンス会社に対して行う金銭の貸付けによって得る利子についても、部分合算課税の対象から除外することとされました。

③ 有価証券の貸付けの対価 有価証券(法人税法第 2条第21号に規定する有価証券をいいます。③及び④において同じです。)の貸付けによる対価の額の合計額からその対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額(措法66の 6⑥三) なお、有価証券の貸付けに係る対価の額からこれを得るために直接要した費用の額の控除を行った結果としてマイナスとなった場合には、その所得類型に係る特定所得の金額は零となり(措法66の 6 ⑥三)、他の所得類型に係る特定所得の金額との通算や翌事業年度以後への損失額の繰越しは認められません。④ 有価証券の譲渡損益イ 部分合算課税の対象となる有価証券の譲渡損益に係る所得の額 有価証券の譲渡に係る対価の額の合計額からその有価証券の譲渡に係る原価の額及びその対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を減算した金額(措法66の6 ⑥四) 改正前は、株式等(上場されているものに限ります。)の譲渡対価(譲渡の直前において持株割合が10%未満の株式等に係る対価に限ります。)及び債券の譲渡対価の額から譲渡原価の額及びその対価の額を得るために直接要した費用の額を控除した残額が部分合算課税の対象となる所得とされ

─�697�─

――国際課税関係の改正――

ていました(旧措法66の 6 ④四・五)。 今回の改正では、租税回避リスクを外国関係会社の所得や活動の内容によって把握するという方向性に沿って部分合算課税の対象となる範囲を見直し、有価証券の譲渡対価を部分合算課税の対象とした上で、一定の株式等の譲渡対価については、下記ロのとおり、部分合算課税の対象から除外されることとされました。 譲渡原価の計算は、改正前の制度における債券の譲渡対価における計算方法と同様に、法人税法施行令第119条(有価証券の取得価額)の規定の例によるものとした場合の有価証券の取得価額を基礎として移動平均法により算出した同一銘柄有価証券の一単位当たりの帳簿価額に、その譲渡をした同一銘柄有価証券の数を乗じて計算した金額とされています(措令39の17の 3 ⑨)。ただし、本制度の適用の対象となる内国法人は、上記の移動平均法に代えて、総平均法により算出した同一銘柄有価証券の一単位当たりの帳簿価額にその譲渡をした同一銘柄有価証券の数を乗じて計算した金額とすることができることとされています(措令39の17の 3 ⑩)。 なお、同一銘柄有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法は有価証券の種類ごとに選定することとされており(措令39の17の 3 ⑪)、その算出方法を変更しようとする場合には、あらかじめ納税地の所轄税務署長の承認を受けなければならないこととされています(措令39の17の 3 ⑫)。ロ 除外される金額 その譲渡の直前において部分対象外国関係会社の有する他の法人の株式等の数又は金額のその発行済株式等に占める割合が、その譲渡の直前において25%以上である場合における当該他の法人の株式等の譲渡に係る対価の額(措法66の 6 ⑥四) 株式等の譲渡対価については、その株式

等の保有が、ポートフォリオ投資か否かを判断する際の基準として「持株割合25%以上」を採用している現行の事業譲渡類似の株式の譲渡所得課税や本税制における被統括会社の判定の取扱いを踏まえ、「持株割合25%以上」の株式等の譲渡に係る対価については、部分合算課税の対象から除外することとされました。

⑤ デリバティブ取引に係る損益イ デリバティブ取引に係る損益に係る所得の金額 部分対象外国関係会社が行うデリバティブ取引(法人税法第61条の 5第 1項(デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)に規定するデリバティブ取引をいいます。)に係る利益の額又は損失の額(措法66の 6 ⑥五) 具体的には、デリバティブ取引に係る利益の額又は損失の額につき法人税法第61条の 5の規定その他法人税に関する法令の規定(法人税法第61条の 6(繰延ヘッジ処理による利益額又は損失額の繰延べ)を除きます。)の例に準じて計算した場合に算出される金額とされています(措規22の11⑥)。 租税回避リスクを外国関係会社の所得や活動の内容によって把握するという方向性に沿って、デリバティブ取引に係る損益が部分合算課税の対象に追加されるとともに、一定のデリバティブ取引に係る損益については、下記ロのとおり、部分合算課税の対象から除外することとされました。ロ 除外される金額イ ヘッジ取引として行った一定のデリバティブ取引に係る損益の額ⅰ 原則ⅰ ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったデリバティブ取引等に係る損益の額(繰延ヘッジ処理対応) ヘッジ対象資産等損失額(法人税

─�698�─

――国際課税関係の改正――

法第61条の 6第 1項各号に掲げる損失の額に相当する金額をいいます。)を減少させるために部分対象外国関係会社がデリバティブ取引等(注1)を行った場合(注 2)において、そのデリバティブ取引等がヘッジ対象資産等損失額を減少させる効果についてあらかじめ定めた評価方法(注 3)に従って定期的に確認が行われているときのそのデリバティブ取引等(下記ⅱに該当するデリバティブ取引等を除きます。)に係る損益の額(注 4)(措規22の11⑦一)(注 1) 「デリバティブ取引等」とは、

法人税法第61条の 5 第 1 項に規

定するデリバティブ取引のうち、

下記ニ及びホに該当する取引を

除いたものをいいます(措規22

の11⑦)。以下イにおいて同じ

です。(注 2) そのデリバティブ取引等を行

った日において、ヘッジ対象に

係る資産等の取得等又はそのデ

リバティブ取引等に係る契約の

締結等に関する帳簿書類(電磁

的記録によって作成されている

場合のその電磁的記録を含みま

す。ⅱにおいて同じです。)に

おいてそのデリバティブ取引等

につき次に掲げる事項が記載さ

れている場合に限られます(措

規22の11⑦一)。

① そのデリバティブ取引等が

ヘッジ対象資産等損失額を減

少させるために行ったもので

ある旨

② ヘッジ対象資産等損失額を

減少させようとする資産等

③ そのデリバティブ取引等の

種類、名称、金額及びヘッジ

対象資産等損失額を減少させ

ようとする期間

④ その他参考となるべき事項(注 3) 法人税法においては、事後に

行うデリバティブ取引等がその

ヘッジ対象資産等損失額を減少

させるために有効であるか否か

の判定(有効性判定)において

有効と認められる割合(有効性

割合)として80%から125%ま

でという基準が定められていま

す(法令121の 2 )が、ここで

は具体的な数値基準は定められ

ておらず、取引の内容等に応じ

た合理的な基準によることにな

ります。(注 4) 法人税法上の取扱いにおいて

は、複数の資産又は負債の集合

体(ポートフォリオ)を一の資

産又は負債として繰延ヘッジ処

理をしている場合において、そ

のポートフォリオを一の資産又

は負債として取り扱う旨を繰延

ヘッジ処理に関する帳簿書類に

記載し、かつ、そのポートフォ

リオ構成資産等の個々の資産又

は負債が共通のリスク要因によ

る共通の損失の発生の可能性に

さらされていることが明らかで

あるときに、そのポートフォリ

オを、一の資産又は負債として

繰延ヘッジ処理を行ういわゆる

「包括ヘッジ処理」が認められ

ています。外国子会社合算税制

において部分合算課税対象から

除外されるヘッジ取引として行

ったデリバティブ取引の範囲に

ついても、これと同様と考えら

れます。

ⅱ ヘッジ対象有価証券損失額を減少

─�699�─

――国際課税関係の改正――

させるために行ったデリバティブ取引等に係る損益の額(時価ヘッジ対応) ヘッジ対象有価証券損失額(売買目的外有価証券相当有価証券(法人税法第61条の 3第 1項第 2号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的外有価証券に相当する有価証券をいいます。)の価額の変動により生ずるおそれのある損失(期末時換算法により機能通貨換算額への換算をする売買目的外有価証券相当有価証券の価額の外国為替の売買相場の変動に基因する変動を除きます。)の額をいいます。)を減少させるために部分対象外国関係会社がデリバティブ取引等を行った場合(注 1)において、そのデリバティブ取引等がヘッジ対象有価証券損失額を減少させる効果についてあらかじめ定めた評価方法に従って定期的に確認が行われているときのそのデリバティブ取引等に係る損益の額(注 2)(措規22の11⑦二)(注 1) そのデリバティブ取引等を行

った日において、その売買目的

外有価証券相当有価証券の取得

又はそのデリバティブ取引等に

係る契約の締結等に関する帳簿

書類にそのデリバティブ取引等

につき次に掲げる事項が記載さ

れている場合に限られます(措

規22の11⑦二)。

① その売買目的外有価証券相

当有価証券を法人税法施行令

第121条の 6(時価ヘッジ処

理における売買目的外有価証

券の評価額と円換算額等)の

規定に準じて評価し、又は機

能通貨換算額に換算する旨

② ヘッジ対象有価証券損失額

を減少させようとする売買目

的外有価証券相当有価証券

③ そのデリバティブ取引等の

種類、名称、金額及びヘッジ

対象有価証券損失額を減少さ

せようとする期間

④ その他参考となるべき事項(注 2) 包括ヘッジ処理については、

上記ⅰの(注 4)と同様です。

ⅱ 事業者単位の特例 部分対象外国関係会社がその事業年度において行ったデリバティブ取引等のおおむね全部がヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったものである場合(次に掲げる要件を満たす場合に限ります。)には、その部分対象外国関係会社に係る内国法人は、上記ⅰにかかわらず、その部分対象外国関係会社がその事業年度に行った全てのデリバティブ取引等をもって「ヘッジ取引として行った一定のデリバティブ取引」とすることができることとされています(措規22の11⑧)。ⅰ ヘッジ対象資産等損失額を減少させようとする資産等の内容、ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行うデリバティブ取引等の方針及びその行うデリバティブ取引等がヘッジ対象資産等損失額を減少させる効果の評価方法に関する書類を作成していること。ⅱ 上記ⅰの書類において、その行うデリバティブ取引等のおおむね全部がヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行うことが明らかにされていること。ⅲ 上記ⅰの書類において定められた方針に従ってデリバティブ取引等を

─�700�─

――国際課税関係の改正――

行うために必要な組織及び業務管理体制が整備されていること。ⅳ ヘッジ対象資産等損失額を減少させる効果について、上記ⅰの書類において定められた方針に従って定期的に確認が行われていること。

ⅲ 事業者単位の特例の継続適用 部分対象外国関係会社がその事業年度の前事業年度以前の事業年度において上記ⅱの規定の適用を受けた場合には、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合を除き、継続的に適用があることとされています(措規22の11⑨)。ⅰ その事業年度において行ったデリバティブ取引等のおおむね全部がヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行ったものである場合に該当しないこととなった場合ⅱ 上記ⅱⅰからⅳまでに掲げる要件を満たさないこととなった場合

ロ 一定の商品先物取引業者等が行う一定の商品先物取引に係る損益の額 その本店所在地国の法令に準拠して商品先物取引法第 2条第22項各号(定義)に掲げる行為に相当する行為を業として行う部分対象外国関係会社(その本店所在地国においてその役員又は使用人がその行うその行為に係る事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものに限ります。)が行う同条第13項に規定する外国商品市場取引及び同条第14項に規定する店頭商品デリバティブ取引に相当する取引に係る損益の額(措規22の11⑩) 部分対象外国関係会社がその本店所在地国の法令に準拠して一定の商品先物取引を行い、かつ、その本店所在地国においてその役員又は従業員が通常必要と認められる業務の全てに従事している実体を備えている場合には、その一定の商品

先物取引に係る損益は部分合算課税の対象から除外することとされています。

(参考) 商品先物取引法(昭和25年法律第239号)

(抄)

第二条 この法律において「商品」とは、次

に掲げるものをいう。

一 農産物、林産物、畜産物及び水産物並

びにこれらを原料又は材料として製造し、

又は加工した物品のうち、飲食物である

もの及び政令で定めるその他のもの

二 鉱業法(昭和25年法律第289号)第 3 条

第 1 項に規定する鉱物その他政令で定め

る鉱物及びこれらを製錬し、又は精製す

ることにより得られる物品

三 前 2 号に掲げるもののほか、国民経済

上重要な原料又は材料であつて、その価

格の変動が著しいために先物取引に類似

する取引の対象とされる蓋然性が高いも

の(先物取引又は先物取引に類似する取

引の対象とされているものを含む。)とし

て政令で定める物品

四 電力(一定の期間における一定の電力

を単位とする取引の対象となる電力に限

る。以下同じ。)

2 省 略

3  この法律において「先物取引」とは、商

品取引所の定める基準及び方法に従つて、

商品市場において行われる次に掲げる取引

をいう。

一 当事者が将来の一定の時期において商

品及びその対価の授受を約する売買取引

であつて、当該売買の目的物となつてい

る商品の転売又は買戻しをしたときは差

金の授受によつて決済することができる

取引

二 約定価格(当事者が商品についてあら

かじめ約定する価格(一の商品の価格の

水準を表す数値その他の一の商品の価格

に基づいて算出される数値を含む。以下

この号において同じ。)をいう。以下同

─�701�─

――国際課税関係の改正――

じ。)と現実価格(将来の一定の時期にお

ける現実の当該商品の価格をいう。以下

同じ。)の差に基づいて算出される金銭の

授受を約する取引

三 当事者が商品指数についてあらかじめ

約定する数値(以下「約定数値」とい

う。)と将来の一定の時期における現実の

当該商品指数の数値(以下「現実数値」

という。)の差に基づいて算出される金銭

の授受を約する取引

四 当事者の一方の意思表示により当事者

間において次に掲げる取引を成立させる

ことができる権利(以下「オプション」

という。)を相手方が当事者の一方に付与

し、当事者の一方がこれに対して対価を

支払うことを約する取引

イ 第 1号に掲げる取引

ロ 第 2 号に掲げる取引(これに準ずる

取引で商品取引所の定めるものを含む。)

ハ 前号に掲げる取引(これに準ずる取

引で商品取引所の定めるものを含む。)

ニ 次号に掲げる取引(これに準ずる取

引で商品取引所の定めるものを含む。)

ホ 第 6 号に掲げる取引(これに準ずる

取引で商品取引所の定めるものを含む。)

五 当事者が数量を定めた商品について当

事者の一方が相手方と取り決めた当該商

品の価格の約定した期間における変化率

に基づいて金銭を支払い、相手方が当事

者の一方と取り決めた当該商品の価格の

約定した期間における変化率に基づいて

金銭を支払うことを相互に約する取引

六 当事者が数量を定めた商品について当

事者の一方が相手方と取り決めた当該商

品に係る商品指数の約定した期間におけ

る変化率に基づいて金銭を支払い、相手

方が当事者の一方と取り決めた当該商品

指数の約定した期間における変化率に基

づいて金銭を支払うことを相互に約する

取引

七 前各号に掲げる取引に類似する取引で

あつて政令で定めるもの

4~ 8 省 略

9  この法律において「商品市場」とは、一

種の上場商品又は上場商品指数ごとに、次

の各号に掲げる区分に応じて当該各号に定

める取引を行うために商品取引所が開設す

る市場をいう。

一 上場商品に係る商品市場 当該上場商

品に係る第 3 項第 1 号に掲げる取引、同

項第 2 号に掲げる取引若しくは同項第 5

号に掲げる取引又は同項第 7 号に掲げる

取引のうちこれらの取引に類似するもの

として政令で定めるもの

二 上場商品指数に係る商品市場 当該上

場商品指数に係る第 3 項第 3 号に掲げる

取引若しくは同項第 6 号に掲げる取引又

は同項第 7 号に掲げる取引のうちこれら

の取引に類似するものとして政令で定め

るもの

10 この法律において「商品市場における取

引」には、前項各号に定める取引のほか、

商品取引所が、定款又は業務規程で定める

ところにより、商品市場において次の各号

に掲げる区分に応じ当該各号に定める取引

をすることとしたものを含むものとする。

一 上場商品に係る商品市場 次に掲げる

取引

イ その対象となる物品若しくは電力が

当該上場商品であるか又はこれに含ま

れる商品指数に係る第 3 項第 3 号又は

第 6号に掲げる取引

ロ 当該上場商品に係る第 3 項第 4 号イ、

ロ又はニに掲げる取引に係る同号に掲

げる取引

ハ その対象となる物品若しくは電力が

当該上場商品であるか又はこれに含ま

れる商品指数に係る第 3 項第 4 号ハ又

はホに掲げる取引に係る同号に掲げる

取引

─�702�─

――国際課税関係の改正――

ニ 当該上場商品の売買取引(第 3 項第

1 号に掲げる取引に該当するものを除

く。以下この号において同じ。)

ホ 当事者の一方の意思表示により当事

者間において当該上場商品の売買取引

を成立させることができる権利(以下

「実物オプション」という。)を相手方

が当事者の一方に付与し、当事者の一

方がこれに対して対価を支払うことを

約する取引

ヘ 当該上場商品又はその対象となる物

品若しくは電力が当該上場商品である

か若しくはこれに含まれる商品指数に

係る次に掲げる取引

⑴ 当事者が数量を定めた商品につい

て当事者の一方が相手方と取り決め

た商品の価格の約定した期間におけ

る変化率に基づいて金銭を支払い、

相手方が当事者の一方と取り決めた

当該商品以外の商品の価格の約定し

た期間における変化率に基づいて金

銭を支払うことを相互に約する取引

⑵ 当事者が数量を定めた商品につい

て当事者の一方が相手方と取り決め

た商品の価格の約定した期間におけ

る変化率に基づいて金銭を支払い、

相手方が当事者の一方と取り決めた

商品指数の約定した期間における変

化率に基づいて金銭を支払うことを

相互に約する取引

⑶ 当事者が数量を定めた商品につい

て当事者の一方が相手方と取り決め

た商品指数の約定した期間における

変化率に基づいて金銭を支払い、相

手方が当事者の一方と取り決めた商

品指数の約定した期間における変化

率に基づいて金銭を支払うことを相

互に約する取引

ト 当事者の一方の意思表示により当事

者間においてヘに掲げる取引を成立さ

せることができる権利(以下「特定ス

ワップオプション」という。)を相手方

が当事者の一方に付与し、当事者の一

方がこれに対して対価を支払うことを

約する取引

チ イからトまでの取引に類似する取引

であつて政令で定めるもの

二 上場商品指数に係る商品市場 当該上

場商品指数に係る第 3 項第 4 号ハ又はホ

に掲げる取引に係る同号に掲げる取引そ

の他これらの取引に類似する取引であつ

て政令で定めるもの

11 省 略

12 この法律において「外国商品市場」とは、

商品市場に類似する市場で外国に所在する

ものをいう。

13 この法律において「外国商品市場取引」

とは、外国商品市場において行われる取引

であつて、商品市場における取引に類似す

るものをいう。

14 この法律において「店頭商品デリバティ

ブ取引」とは、商品市場、外国商品市場及

び取引所金融商品市場(金融商品取引法(昭

和23年法律第25号)第 2 条第17項に規定す

る取引所金融商品市場をいう。以下同じ。)

によらないで行われる次に掲げる取引(第

331条各号に掲げる施設における取引を除

く。)をいう。

一 当事者が将来の一定の時期において商

品及びその対価の授受を約する売買取引

であつて、当該売買の目的物となつてい

る商品の売戻し又は買戻しをしたときは

差金の授受によつて決済することができ

る取引

二 約定価格と現実価格の差に基づいて算

出される金銭の授受を約する取引又はこ

れに類似する取引

三 約定数値と現実数値の差に基づいて算

出される金銭の授受を約する取引又はこ

れに類似する取引

─�703�─

――国際課税関係の改正――

四 当事者の一方の意思表示により当事者

間において次に掲げる取引を成立させる

ことができる権利を相手方が当事者の一

方に付与し、当事者の一方がこれに対し

て対価を支払うことを約する取引又はこ

れに類似する取引

イ 第 1号に掲げる取引

ロ 第 2号に掲げる取引

ハ 前号に掲げる取引

ニ 第 6号に掲げる取引

五 当事者の一方の意思表示により当事者

間において当該意思表示を行う場合の商

品の価格としてあらかじめ約定する価格

(一の商品の価格の水準を表す数値その他

の一の商品の価格に基づいて算出される

数値を含む。以下この号において同じ。)

若しくは商品指数としてあらかじめ約定

する数値と現に当該意思表示を行つた時

期における現実の当該商品の価格若しく

は当該商品指数の数値の差に基づいて算

出される金銭を授受することとなる取引

を成立させることができる権利を相手方

が当事者の一方に付与し、当事者の一方

がこれに対して対価を支払うことを約す

る取引又はこれに類似する取引

六 当事者が数量を定めた商品について当

事者の一方が相手方と取り決めた商品の

価格若しくは商品指数の約定した期間に

おける変化率に基づいて金銭を支払い、

相手方が当事者の一方と取り決めた商品

の価格若しくは商品指数の約定した期間

における変化率に基づいて金銭を支払う

ことを相互に約する取引又はこれに類似

する取引

七 前各号に掲げるもののほか、これらと

同様の経済的性質を有する取引であつて、

公益又は取引の当事者の保護を確保する

ことが必要と認められるものとして政令

で定めるもの

15~21 省 略

22 この法律において「商品先物取引業」とは、

次に掲げる行為(その内容等を勘案し、委

託者又は店頭商品デリバティブ取引の相手

方(以下「委託者等」という。)の保護に欠

けるおそれがないものとして政令で定める

もの及び第15項の主務省令で定める者若し

くは資本金の額が同項の主務省令で定める

金額以上の株式会社を相手方として店頭商

品デリバティブ取引を行い、又はこれらの

者のために店頭商品デリバティブ取引の媒

介、取次ぎ若しくは代理を行う行為を除

く。)のいずれかを業として行うことをいう。

一 商品市場における取引(商品清算取引

を除く。)の委託を受け、又はその委託の

媒介、取次ぎ若しくは代理を行う行為

二 商品清算取引の委託の取次ぎの委託を

受け、又はその委託の媒介、取次ぎ若し

くは代理を行う行為

三 外国商品市場取引(商品清算取引に類

似する取引を除く。)の委託を受け、又は

その委託の媒介、取次ぎ若しくは代理を

行う行為

四 外国商品市場取引のうち、商品清算取

引に類似する取引の委託の取次ぎの委託

を受け、又はその委託の媒介、取次ぎ若

しくは代理を行う行為

五 店頭商品デリバティブ取引又はその媒

介、取次ぎ若しくは代理を行う行為

23~29 省 略

ハ 短期売買商品損失額を減少させるために行った一定のデリバティブ取引に係る損益 時価評価損益の計上が求められる短期売買商品の価額の変動に伴って生ずるおそれのある損失(短期売買商品損失額)を減少させるために、デリバティブ取引が行われる場合があることを踏まえ、上記イのヘッジ取引として行ったデリバティブ取引とされる条件と同様の条件を満たすことを要件として、そのデリバティ

─�704�─

――国際課税関係の改正――

ブ取引に係る損益についても部分合算課税の対象から除外することとされました(措規22の11⑪⑫)。ニ 先物外国為替契約等に相当する契約に基づくデリバティブ取引に係る損益 法人税法第61条の 8第 2項(外貨建取引の換算)に規定する先物外国為替契約等(いわゆる為替予約)はデリバティブ取引に該当しますが、外国為替の変動をヘッジするために広く一般的に行われており、また、租税回避の可能性も低いと考えられることから、先物外国為替契約等に基づくデリバティブ取引に係る損益については、部分合算課税の対象となるデリバティブ取引に係る損益から除外することとされました(措規22の11⑪)。 なお、法人税法第61条の 5第 1項では、同法第61条の 8第 2項に規定する一定の要件を満たす先物外国為替契約等に基づく取引に限りみなし決済の対象となる未決済デリバティブ取引から除外されていますが、ニにおいては、先物外国為替契約等について同項に規定する要件を満たすかどうかを問わず、その契約に基づく取引に係る損益はデリバティブ取引に係る損益から除外されます。ホ 一定の金利スワップ等に係る損益 法人税法施行規則第27条の 7 第 2 項(デリバティブ取引の範囲等)に規定する一定の金利スワップ及び金利オプション等に係る損益は法人税法第61条の 5第1項において未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益の対象から除外されていることを踏まえ、デリバティブ取引に係る損益から除外することとされました(措規22の11⑪)。

⑥ 外国為替差損益イ 外国為替差損益に係る所得の金額 部分対象外国関係会社が行う取引又はその有する資産若しくは負債につき外国為替

の売買相場の変動に伴って生ずる利益の額又は損失の額(措法66の 6 ⑥六) 具体的には、各事業年度において行う特定通貨建取引の金額又は各事業年度終了の時において有する特定通貨建資産等の金額に係る機能通貨換算額につき法人税法第61条の 8から第61条の10(為替予約差額の配分)までの規定その他法人税に関する法令の規定の例に準じて計算した場合に算出される金額とされています(措規22の11⑬)。 用語の意義は以下のとおりとされています(措規22の11⑭)。イ 機能通貨 部分対象外国関係会社がその会計帳簿の作成に当たり使用する通貨表示の通貨ロ 特定通貨 機能通貨以外の通貨(注)(注) 特定通貨は機能通貨以外の通貨とさ

れていることから、部分対象外国関係

会社が日本円以外の通貨表示の通貨に

より会計帳簿を作成している場合には、

日本円も特定通貨に該当することとな

ります。

ハ 特定通貨建取引 特定通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れ、剰余金の配当その他の取引ニ 特定通貨建資産等 次に掲げる資産及び負債をいいます。ⅰ 特定通貨建債権(特定通貨で支払を受けるべきこととされている金銭債権をいいます。)及び特定通貨建債務(特定通貨で支払を行うべきこととされている金銭債務をいいます。)ⅱ 特定通貨建有価証券(その償還が特定通貨で行われる債券、残余財産の分配が特定通貨で行われる株式及びこれらに準ずる有価証券をいいます。)ⅲ 特定通貨建の預金ⅳ 特定通貨ホ 機能通貨換算額 特定通貨で表示され

─�705�─

――国際課税関係の改正――

た金額を機能通貨で表示された金額に換算された金額 なお、デリバティブ取引に係る損益に係る特定所得の金額の計算においては、上記⑤ロニのとおり、法人税法第61条の 8第 2項に規定する先物外国為替契約等に基づくデリバティブ取引に係る損益が除外されているところですが、先物外国為替契約等につきいわゆる振当処理を行っている場合には、同法第61条の10の規定による為替予約差額配分額の計算の例に準じて外国為替差損益を計算することとなります(注)。(注) ただし、下記ロにより除外される場合

には、部分合算課税の対象となる外国為

替差損益はないことになります。

ロ 除外される金額 部分対象外国関係会社が行う事業(外国為替相場の変動に伴って生ずる利益を得ることを目的とする投機的な取引を行う事業を除きます。)に係る業務の通常の過程において生ずる利益の額又は損失の額(措法66の 6 ⑥六、措令39の17の 3 ⑬) 業務の通常の過程で生ずる外国為替差損益(外国為替差損益を得ることを目的とする投機的な事業を行う事業に係る業務の通常の過程において生ずるものを除きます。)を利用した租税回避の可能性は低いと考えられることから、部分合算課税の対象から除外することとされています。

⑦ その他の金融所得イ その他の金融所得に係る所得の金額 上記①から⑥までに掲げる金額に係る利益の額又は損失の額(これらに類する利益の額又は損失の額を含みます。)を生じさせる資産の運用、保有、譲渡、貸付けその他の行為により生ずる利益の額又は損失の

額(措法66の 6 ⑥七) これは、いわゆる「その他の金融所得」として、上記①から⑥までに掲げる所得(これらに類する所得を含みます。)を生じさせる資産(例えば株式や信託受益権など)の運用、保有、譲渡、貸付けその他の行為により生ずる上記①から⑥までに掲げ

合算対象となる外国為替差損益

合算対象となる外国為替差損益から除かれる損益

 部分対象外国関係会社の行う取引又はその有する資産若しくは負債につき外国為替の売買相場の変動に伴って生ずる損益

 部分対象外国関係会社の行う事業(外国為替相場の変動に伴って生ずる利益を得ることを目的とする投機的な取引を行う事業を除く。)に係る業務の通常の過程において生ずる損益

⇒法人税法第61条の 8から第61条の10までの規定その他法人税に関する法令の規定の例に準じて計算して算出(参考)法人税法第61条の 8:外貨建取引の換算

第61条の 9:外貨建資産等の期末換算差益又は期末換算差損の益金又は損金算入第61条の10:為替予約差額の配分

機能通貨以外の通貨部分対象外国関係会社がその会計帳簿の作成に当たり使用する通貨表示の通貨

外国為替差損益の計算イメージ

特定通貨(例:ユーロ、円等)

特定通貨建取引

機能通貨への換算

本邦通貨への換算

特定通貨建資産等外国為替差損益 部分課税対象金額

に算入

機能通貨(例:ドル)

本邦通貨

部分合算課税の対象となる外国為替差損益の範囲

─�706�─

――国際課税関係の改正――

る所得以外の所得を部分合算課税の対象とする、いわゆるバスケット・クローズとしての役割を有する所得とされています。 具体的には、以下の損益が「その他の金融所得」に含まれるものとして例示されています(措令39の17の 3 ⑭)。イ 所得税法第 2条第12号の 2に規定する投資信託の収益の分配の額の合計額からその収益の分配の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額(注) 受取利子等又は剰余金の配当等に係

る特定所得の金額の計算と同様に、上

記イの計算において、投資信託の収益

の分配の額からこれを得るために要し

た費用を控除した結果としてマイナス

となった場合には零となります。

ロ 法人税法第61条の 3第 1項第 1号に規定する売買目的有価証券に相当する有価証券(ロにおいて「売買目的有価証券相当有価証券」といいます。)に係る評価益(その売買目的有価証券相当有価証券の時価評価金額がその売買目的有価証券相当有価証券の期末帳簿価額を超える場合におけるその超える部分の金額をいいます。)又は評価損(その売買目的有価証券相当有価証券の期末帳簿価額がその売買目的有価証券相当有価証券の時価評価金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいいます。)ハ 法人税法第61条の 2第20項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)に規定する有価証券の空売りに相当する取引に係るみなし決済損益額(同法第61条の 4第 1項(有価証券の空売り等に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)に規定するみなし決済損益額に相当する金額をいいます。以下同じです。)ニ 法人税法第61条の 2第21項に規定する

信用取引に相当する取引に係るみなし決済損益額ホ 法人税法第61条の 2第21項に規定する発行日取引に相当する取引に係るみなし決済損益額ヘ 法人税法第61条の 4第 1項に規定する有価証券の引受けに相当する取引に係るみなし決済損益額 なお、法人税法第61条(短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益の益金又は損金算入)に規定する短期売買商品については期末に時価評価損益を認識することとされている点で上記ロの売買目的有価証券と類似しています。しかし、短期売買商品の取引は現物である棚卸商品の売買としての性格も有すると考えられることから、短期売買商品は上記①から⑥までに掲げる金額に係る利益の額又は損失の額(これらに類する利益の額又は損失の額を含みます。)を生じさせる資産に該当しないものと考えられ、法人税法第61条に規定する短期売買商品の期末時価評価損益は、その他の金融所得の類型に含まれないものと考えられます。ロ 除外される金額イ ①から⑥までに掲げる金額(措法66の6 ⑥七)

ロ ヘッジ取引として行った一定の取引に係る損益 有価証券の空売り、信用取引及び発行日取引については、法人税法第61条の 6第 4項第 2号において、ヘッジ手段として用いることができるデリバティブ取引等として掲げられています。そのため、本所得類型における所得の計算においても、上記⑤ロイに掲げる除外要件を準用し、読み替えられた後の要件を満たす場合に限りこれらに係る損益が除外されることとされています(措法66の 6 ⑥七、措規22の11⑮)。

─�707�─

――国際課税関係の改正――

⑧ 固定資産の貸付けの対価イ 固定資産の貸付けによる対価に係る所得の金額 固定資産(無形資産等(租税特別措置法第66条の 6第 6項第 9号に規定する無形資産等をいいます。⑧において同じです。)に該当するものを除きます。)の貸付けによる対価の額からその対価の額を得るために直接要した費用の額(その有する固定資産に係る償却費の額として計算した金額を含みます。)の合計額を控除した残額(措法66の 6 ⑥八、措令39の17の 3 ⑮) 上記②(受取利子等)でも述べたように、ファイナンス・リースにおいて受け取る対価に係る利息相当分については受取利子等の所得類型には含まれず、その利息相当分以外の対価の額と合わせて固定資産の貸付けの対価に含まれるものと考えられます。 上記の償却費の額は、部分対象外国関係会社が有する固定資産(対価の額に係るも

のに限ります。)に係るその事業年度の償却費の額のうち法人税法第31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)の規定の例に準じて計算した場合に算出される償却限度額に達するまでの金額とされています(措令39の17の 3 ⑰)。 また、上記の計算方法による償却費の額に代えて、部分対象外国関係会社が有する固定資産に係るその事業年度の償却費の額としてその本店所在地国の法令の規定によりその事業年度の損金の額に算入している金額をもって固定資産の償却費の額とすることができます(措令39の17の 3 ⑳)。ただし、償却費の額としてその事業年度の損金の額に算入している金額が、その固定資産の取得価額(既にした償却の額で各事業年度の損金の額に算入されたものがある場合には、その金額を控除した金額となります。)を各事業年度の損金の額に算入する金額の限度額として償却する方法を用いて

措法66の 6 ⑥一~六に掲げる金額に係る損益(これらに類する損益を含む。)を生じさせる資産(例:株式等、信託受益権等)

租税特別措置法第66条の 6 第 6 項七 前各号に掲げる金額に係る利益の額又は損失の額(これらに類する利益の額又は損失の額を含む。) を生じさせる資産の運用、保有、譲渡、貸付けその他の行為により生ずる利益の額又は損失の額(当該 各号に掲げる金額に係る利益の額又は損失の額及び法人税法第61条の 6 第 1 項各号に掲げる損失を減少させるた めに行つた取引として財務省令で定める取引に係る利益の額又は損失の額を除く。)

各種損益

その他の損益

一 剰余金の配当等二 受取利子等三 有価証券の貸付けの対価四 有価証券の譲渡損益五 デリバティブ取引に係る損益六 外国為替差損益

措法66の 6 ⑥一~六に掲げる金額に係る損益

七 その他の金融所得

措法66の 6 ⑥一~六に掲げる金額に係る損益に類する損益

〔措令39の17の 3 ⑭〕含まれるものの例 ・投資信託の収益の分配金

〔措令39の17の 3 ⑭〕含まれるものの例 a 売買目的有価証券の評価損益 b 有価証券の空売りに係るみなし決済

損益 c 信用取引に係るみなし決済損益 d 発行日取引に係るみなし決済損益 e 有価証券の引受けに係るみなし決済

損益(注)ヘッジ目的で行われる b ~ d に係 る取引に係る損益を除く

その他の金融所得及びこれに含まれる損益の例

─�708�─

――国際課税関係の改正――

計算されたものである場合には、法人税法第31条の規定の例によるものとした場合に損金の額に算入されることとなる金額に相当する金額をもって償却費の額とされます(措令39の17の 3 ⑳)。 部分対象外国関係会社が有する固定資産に係る償却費の額の計算方法を変更しようとする場合には、あらかじめ納税地の所轄税務署長の承認を受けなければなりません(措令39の17の 3 ㉑)。 なお、固定資産の貸付けによる対価の額からこれを得るために直接要した費用の額の控除を行った結果としてマイナスとなった場合には固定資産の貸付けの対価に係る特定所得の金額は零となり、他の所得類型に係る特定所得の金額との通算や翌事業年度以後への損失額の繰越しは認められません。ロ 除外される金額イ 主としてその本店所在地国において使用に供される固定資産(不動産及び不動産の上に存する権利を除きます。)の貸付けによる対価の額(措法66の 6 ⑥八) これは、経済活動基準の所在地国基準における物品賃貸業を主たる事業とする外国関係会社の取扱いと整合的なものとして設けられているものですが、部分対象外国関係会社の主たる事業が物品賃貸業か否かにかかわらず適用されます。ロ その本店所在地国にある不動産及び不動産の上に存する権利の貸付けによる対価の額(措法66の 6 ⑥八) 経済活動基準の所在地国基準における不動産業を主たる事業とする外国関係会社の取扱いと整合的なものとして設けられているものですが、部分対象外国関係会社の主たる事業が不動産業か否かにかかわらず適用されます。ハ 一定の要件を満たす部分対象外国関係会社が行う固定資産の貸付けによる対価の額(措法66の 6⑥八、措令39の17の 3⑯)

 次に掲げる要件に該当する部分対象外外国関係会社が行う固定資産の貸付けによる対価の額(措法66の 6 ⑥八、措令39の17の 3 ⑯)ⅰ 部分対象外国関係会社の役員又は使用人がその本店所在地国において固定資産(無形資産等に該当するものを除きます。以下ハにおいて同じです。)の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること。ⅱ 部分対象外国関係会社のその事業年度における固定資産の貸付けに係る業務の委託に係る対価の支払額の合計額のその部分対象外国関係会社のその事業年度における固定資産の貸付けに係る業務に従事する役員及び使用人に係る人件費の額の合計額に対する割合が30%を超えていないこと。ⅲ 部分対象外国関係会社のその事業年度における固定資産の貸付けに係る業務に従事する役員及び使用人に係る人件費の額の合計額のその部分対象外国関係会社のその事業年度における固定資産の貸付けによる収入金額からその事業年度における貸付けの用に供する固定資産に係る償却費の額の合計額を控除した残額(その残額がない場合には、その人件費の額の合計額に相当する金額)に対する割合が 5%を超えていること。ⅳ 部分対象外国関係会社がその本店所在地国において固定資産の貸付けを行うに必要と認められる事務所等を有していること。 その本店所在地国において実体のある固定資産の貸付け業務を行うと認められる部分対象外国関係会社が得る固定資産の貸付けの対価について部分合算課税の対象から除外することとされています。

─�709�─

――国際課税関係の改正――

なお、これらの基準は経済活動基準の事業基準における航空機リース業の取扱いに対応するものとして設けられているものですが、部分対象外国関係会社の主たる事業が航空機リース業を含むリース業であるか否かにかかわらず適用されます。

⑨ 無形資産等の使用料イ 無形資産等の使用料に係る所得の金額 無形資産等の使用料の合計額からその使用料を得るために直接要した費用の額(一定の償却費の額を含みます。)の合計額を控除した残額(措法66の 6 ⑥九) 無形資産等とは、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含みます。)又は著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含みます。)をいいます(措法66の 6 ⑥九)。 改正前の制度においては、特許権、著作権等の法定化された権利のみが対象とされていましたが(旧措法66の 6 ④六)、租税回避リスクを外国子会社の所得や活動の内容により把握するという方向性に沿って、対象となる範囲の見直しが行われました。 償却費の計算方法等については、上記⑧(固定資産の貸付けの対価)と同様の規定とされています。 なお、無形資産等の使用料からこれを得るために直接要した費用の額の控除を行った結果としてマイナスとなった場合にはその所得類型に係る特定所得の金額は零となり(措法66の 6 ⑥九)、他の所得類型に係る特定所得の金額との通算や翌事業年度以後への損失額の繰越しは認められません。ロ 除外される金額 以下の使用料は部分合算課税の対象から除外されています(措令39の17の 3 ⑱)。イ 部分対象外国関係会社が無形資産等の研究開発を主として行った場合のその無

形資産等の使用料ロ 部分対象外国関係会社が取得した無形資産等につき相当の対価を支払い、かつ、その無形資産等をその事業(株式等若しくは債券の保有、無形資産等の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを除きます。ハにおいて同じです。)の用に供している場合のその無形資産等の使用料ハ 部分対象外国関係会社が使用を許諾された無形資産等につき相当の対価を支払い、かつ、その無形資産等をその事業の用に供している場合のその無形資産等の使用料 改正前の制度における特許権等の使用料の部分合算課税においても上記と同様の除外規定が置かれていましたが(旧措令39の17の 2 ⑮)、今回の見直しにおいては、ロ及びハの適用について、「対価」ではなく「相当の対価」の支払が行われていることが要件とされました(措令39の17の 3 ⑱二・三)。相当の対価は独立企業間価格の算定を求めるものではありませんが、その無形資産等の種類や内容に応じた然るべき対価である必要があります。

⑩ 無形資産等の譲渡損益イ 無形資産等の譲渡損益に係る所得の金額 無形資産等の譲渡に係る対価の額の合計額からその無形資産等の譲渡に係る原価の額の合計額及びその対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を減算した金額(措法66の 6 ⑥十) 無形資産等の範囲は上記⑨(無形資産等の使用料)と同じです。 前述のとおり改正前の制度においては、特許権等の使用料のみが部分合算課税の対象とされてきました。しかしながら、無形資産等はその性質上、使用料と譲渡対価の転換が容易であり、使用料ではなく譲渡の形態を取ることにより本来合算課税されるべき所得を免れることができます。そのため、今回の見直しにおいて無形資産等の譲

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――国際課税関係の改正――

渡損益についても部分合算課税の対象とすることとされました。ロ 除外される金額 上記⑨ロ(無形資産等の使用料)の除外規定を読み替え、同様の除外規定が定められています。ただし、上記⑨ロハについては、使用許諾を受けている無形資産等につき譲渡を行うことは想定されないことから、その規定に対応する規定は設けられていません(措令39の17の 3 �)。

⑪ 異常所得イ 異常所得 BEPS プロジェクト(行動 3)の最終報告書では「合算対象となる所得と、配当、利子等の法的な分類によって限定列挙する方法だけでは、租税回避への十分な対応は困難」との認識に立ち、個々の外国子会社の経済実態に照らせば通常稼得困難と考えられる所得を合算課税の対象範囲に含めるアプローチについて言及されています。これを踏まえ、外国関係会社の資産規模や人員等の経済実態に照らせば、その事業から通常生じ得ず、発生する根拠のないと考えられる所得について、「異常所得」として部分合算課税の対象とすることとされました。ロ 異常所得に係る所得の金額 下記イからヌまでに掲げる金額がないものとした場合のその各事業年度の決算に基づく所得の金額(すなわち下記イからヌまでに掲げる金額がないものとした場合の会計上の税引後当期利益の額)から、その各事業年度に係るルに掲げる金額を控除した残額とされています(措法66の 6 ⑥十一、措令39の17の 3 �)。なお、控除を行った結果としてマイナスとなった場合には異常所得に係る特定所得の金額は零となります(措法66の 6 ⑥十一)。イ 支払を受ける剰余金の配当等の額ロ 受取利子等の額ハ 有価証券の貸付けによる対価の額

ニ 有価証券の譲渡に係る対価の額の合計額からその有価証券の譲渡に係る原価の額(注)の合計額を減算した金額(注) 上記④イの有価証券の譲渡に係る原

価の額の計算に準じて計算することと

されています(措令39の17の 3 �)。

ホ デリバティブ取引に係る利益の額又は損失の額(注)(注) 上記⑤イのデリバティブ取引に係る

利益の額又は損失の額の計算に準じて

計算することとされています(措規22

の11⑯)。

ヘ その行う取引又はその有する資産若しくは負債につき外国為替の売買相場の変動に伴って生ずる利益の額又は損失の額(注)(注) 上記⑥イの外国為替差損益の計算に

準じて計算することとされています

(措規22の11⑰)。

ト 上記①から⑥までに掲げる金額に係る利益の額又は損失の額(これらに類する利益の額又は損失の額を含みます。)を生じさせる資産の運用、保有、譲渡、貸付けその他の行為により生ずる利益の額又は損失の額(注)(上記①から⑥までに掲げる金額に係る利益の額又は損失の額を除きます。)(注) 対象となる利益の額又は損失の額に

含まれるものの具体例については、上

記⑦イイからヘまでに準ずることとさ

れています(措令39の17の 3 �)。

チ 固定資産の貸付けによる対価の額リ 支払を受ける無形資産等の使用料ヌ 無形資産等の譲渡に係る対価の額の合計額からその無形資産等の譲渡に係る原価の額を減算した金額ル 次の算式により計算した所得控除の金額《算式》総資産の額(注 1)

+ 人件費の額 +減価償却費の累計額(注 2)

× 50%

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――国際課税関係の改正――

(注 1) 部分対象外国関係会社のその事業

年度(その事業年度が残余財産の確

定の日を含む事業年度である場合に

は、その事業年度の前事業年度)終

了の時における貸借対照表に計上さ

れている総資産の帳簿価額(措令39

の17の 3 �)とされています。また、

ここでいう帳簿価額とは、外国関係

会社がその会計帳簿に記載した金額

を念頭に置いたものです。(注 2) 部分対象外国関係会社のその事業

年度(その事業年度が残余財産の確

定の日を含む事業年度である場合に

は、その事業年度の前事業年度)終

了の時における貸借対照表に計上さ

れている減価償却資産に係る償却費

の累計額(措令39の17の 3 �)とさ

れています。また、ここでいう償却

費とは、部分対象外国関係会社にお

ける会計上の償却費を念頭に置いた

ものです。

 なお、上記イからヌまでに掲げる金額は、上記①から⑩までの所得類型に対応したものですが、上記①から⑩までの基準によって部分合算課税の対象となるか否かの判定が行われる所得類型の所得が、改めて異常所得として合算対象となることがないよう、上記イからヌまでに掲げる金額には、上記①から⑩までの所得類型に係る特定所得の金額の計算の過程において除外される一定の金額が含まれることに留意する必要があります。したがって、例えば、部分対象外国関係会社がその発行済株式等の25%以上を有する外国子会社から受ける剰余金の配当等の額についても異常所得における所得計算においては、ないものとして計算されることになります。

【所得金額の計算方法】 外国金融子会社等以外の部分対象外国関係会社の場合(措法66の 6 ⑥十一)(外国金融子会社等の場合はこれに準じて計算(措法66の 6 ⑧五))

(すなわち会計上の税引後当期利益の額)

所得控除額

〔イメージ〕

ル(総資産の額    +人件費+減価償却費の累計額)

異常所得の金額上記イからヌまでの金額がないものとした場合の所得の金額

所得控除額の控除

上記イからヌまでの金額の合計額を控除(上記イからヌまでの金額の合計額がマイナスの場合は会計上の税引後当期利益の額に加算)

会計上の税引後当期利益の額

× 50/100

〔措法66の 6 ⑥十一〕〔措令39の17の 3㉓〕

〔措令39の17の 3㉗〕

〔措令39の17の 3㉖㉗〕

他の部分合算課税対象の所得類型に係る下記イからヌまでの金額がないものとした場合の各事業年度の決算に基づく所得の金額

 各金額は、その事業年度末(人件費の額を除き、残余財産が確定した日を含む事業年度の場合には、前事業年度末)の貸借対照表に計上されている帳簿価額による。

○外国関係会社の資産規模や人員等の経済実態に照らせば、その事業から通常生じ得ず、発生する根拠のないと考えられる所得については、「異常所得」として部分合算課税の対象とされる。

イ 支払を受ける剰余金の配当等の額ロ 受取利子等の額ハ 有価証券の貸付による対価の額ニ 有価証券の譲渡に係る対価の額-譲渡原価の額ホ デリバティブ取引に係る損益の額ヘ 外国為替差損益の額ト イ~ヘに類する所得を生じさせる資産等から生ずる上記所得以外の所得の金額

チ 固定資産の貸付けによる対価の額リ 支払を受ける無形資産等の使用料ヌ 無形資産等の譲渡に係る対価の額-譲渡原価の額

部分合算課税の対象となる「異常所得」について

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――国際課税関係の改正――

⑷ 部分適用対象金額 部分適用対象金額は、次に掲げる金額の合計額とされています(措法66の 6 ⑦)。① 部分対象外国関係会社の各事業年度の上記⑶①から③まで、⑧、⑨及び⑪に掲げる金額の合計額(⑷において「非損益通算グループ所得の金額」といいます。)② 各事業年度の上記⑶④から⑦まで及び⑩に掲げる金額の合計額(その合計額が零を下回る場合には零となります。)を基礎として各事業年度開始の日前 7年以内に開始した各事業年度において生じた上記⑶④から⑦まで及び⑩に掲げる金額の合計額(⑷において「損益通算グループ所得の金額」といいます。)が零を下回る部分の金額につき調整を加えた金額 この調整を加えた金額とは、具体的には、部分対象外国関係会社の各事業年度の損益通算グループ所得の金額(零を下回る場合には零となります。)から部分対象外国関係会社の各事業年度開始の日前 7年以内に開始した事業年度(平成30年 4 月 1 日前に開始した事業年度、部分対象外国関係会社に該当しなかった事業年度及び租税負担割合が20%以上であった事業年度を除きます。以下 5において「前 7年内事業年度」といいます。)において生じた部分適用対象損失額(損益通算グループ所得の金額が零を下回る場合のその下回る金額をいい、各事業年度前の事業年度において控除されたものを除きます。)の合計額に相当する金額を控除した残額とされています(措令39の17の 3 ㉘)。(注 1) 前 7 年内事業年度のうち後述の少額免

除基準を満たすことにより部分合算課税

の適用が免除となった事業年度において

生じた部分適用対象損失額も繰越控除の

対象となります。(注 2) その部分対象外国関係会社のその事業

年度における部分適用対象金額の計算に

おいては前 7 年内事業年度の部分適用対

象損失額の控除は行われることとなりま

す。したがって、結果として、部分対象

外国関係会社のその事業年度における部

分適用対象金額が後述の少額免除基準を

満たすことになり、部分合算課税が行わ

れない場合であっても、その事業年度に

おいて損益通算グループ所得の金額がプ

ラスとなっている場合にあっては、繰越

控除可能な前 7 年内事業年度の部分適用

対象損失額について、当期の損益通算グ

ループ所得が零に達するまでの全額を控

除する必要があります。(注 3) 部分対象外国関係会社のその事業年度

の部分適用対象金額の計算上、前 7 年内

事業年度において特定外国関係会社又は

対象外国関係会社に該当していた場合に

生じた欠損金額及び下記 6の外国金融子

会社等に該当していた場合に生じた金融

子会社等部分適用対象損失額を控除する

ことはできません。

 改正前の制度においては、各所得類型に係る特定所得の金額は全てプラスの概念で整理され、各事業年度の部分適用対象金額の計算において損失額の繰越控除制度は設けられていませんでした。今回の改正では、租税回避リスクを外国関係会社の所得や活動の内容によって把握するという方向性に沿って部分合算課税の対象となる所得の範囲及び合算対象所得の計算方法等の見直しが行われ、いわゆる所得種類別アプローチに基づく部分合算課税制度として整備され、通常、プラスもマイナスも生じ得る所得類型である損益通算グループ所得の金額がマイナスとなった場合には、翌事業年度以後に繰り越して、損益通算グループ所得の金額から控除する部分適用対象損失額の繰越控除制度が設けられました。

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――国際課税関係の改正――

⑸ 部分課税対象金額① 改正前の制度 改正前の制度においては、部分課税対象金額は、各事業年度の特定所得の金額の合計額(部分適用対象金額)のうちその内国法人の有する直接及び間接保有の株式等の数に対応するものとしてその株式等の請求権の内容を勘案して計算した金額とされ(旧措法66の 6④)、具体的には、次の算式により計算した金額とされていました(旧措令39の17の 2 ①)。《算式》

特定外国子会社等の各事業年度の部分適用対象金額

×

その各事業年度終了の時における内国法人の有する特定外国子会社等の請求権勘案保有株式等特定外国子会社等のその各事業年度終了の時における発行済株式等

 また、上記の算式により計算された部分課税対象金額がその事業年度の課税対象金額に

相当する金額を超える場合には、その相当する金額が部分課税対象金額とされ(旧措法66の 6 ④)、部分合算課税の金額は、会社単位の合算課税額を上限とすることとされていました。② 改正の内容イ 実質支配基準の導入に伴う合算割合の計算の整備 今回の改正においては、部分課税対象金額は、部分適用対象金額のうちその内国法人が直接及び間接に有するその部分対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額並びにその内国法人とその部分対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額とされました(措法66の 6 ⑥)。 具体的には、次の算式により計算した金額とされます(措令39の17の 3 ①)。

適用免除

(注)部分課税対象金額が課税対象金額(全体合算)に相当する金額を超える場合であっても、  その相当する金額が部分合算課税の上限とはならない。

非損益通算

グループ所得

部分適用対象金額が税引前当期利益の 5%以下又は2,000万円以下

損益通算グループ所得

合計額がマイナスの

場合には0

剰余金の配当等(一)

受取利子等(二)

異常所得(十一)

外国為替差損益(六)

有形固定資産の貸付けの対価(八)

無形資産等の使用料(九)

有価証券の貸付けの対価(三)

有価証券の譲渡損益(四)

デリバティブ取引に係る損益(五)

無形資産等の譲渡損益(十)

その他の金融所得(七) 部分適用対象損失額の繰越控除後の金額により判定される。

繰越控除後の部分適用対象損失額が翌期繰越額となる。  

(注)

前7年以内の

部分適用対象損失額

の繰越控除

部分適用対象金額

少額判定

部分課税対象金額

×

 持株割合等

マイナスとなった金額(部分適用対象損失額)は 7年繰越可

部分合算課税における部分課税対象金額の計算

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――国際課税関係の改正――

《算式》

部分対象外国関係会社の各事業年度の部分適用対象金額

×

その各事業年度終了の時におけるその内国法人のその部分対象外国関係会社に係る請求権等勘案合算割合(注)

(注) 請求権等勘案合算割合については、上

記 3 ⑸②をご参照ください。

ロ 部分課税対象金額の上限の廃止 改正前の制度においては、部分合算課税の金額は、会社単位の合算課税額を上限とすることとされていましたが(旧措法66の6 ④)、今回の改正では、租税回避リスクを外国関係会社の所得や活動の内容により把握するという方向性に沿って部分合算課税の対象となる所得の範囲及び合算対象所得の計算方法等の見直しが行われ、いわゆる所得種類別アプローチに基づく部分合算課税制度として整備され、部分課税対象金額の上限を外国関係会社の課税対象金額に相当する金額とする措置は廃止されました(措法66の 6 ⑥)。

6  金融子会社等部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税)

⑴ 概要 「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的な考え方を踏まえ、その本店所在地国の法令に準拠して銀行業を営む等の一定の要件を満たす部分対象外国関係会社(以下「外国金融子会社等」といいます。)が得る金融所得(上記 5 ⑶①から⑦までに対応する所得)については、部分合算課税の対象外とすることとされました。一方で、外国金融子会社等に対して異常な水準の資本が投下されている場合には、異常な水準の資本に係る所得について、部分合算課税の対象とすることとされました。 部分合算課税の対象となる金額は、外国金融子会社等の特定所得の金額に係る金融子会社等部分適用対象金額のうち内国法人が有する外国

金融子会社等の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額及びその内国法人と外国金融子会社等との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額とされます(措法66の 6 ⑧)。以下、その具体的な内容について説明します。

⑵ 外国金融子会社等 外国金融子会社等とは、次の部分対象外国関係会社をいいます(措法66の 6 ②七、措令39の17)。① 外国金融機関 本店所在地国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業(金融商品取引法第28条第 1項(通則)に規定する第一種金融商品取引業と同種類の業務に限ります。)又は保険業を行う部分対象外国関係会社でその本店所在地国においてその役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているもの② 外国金融持株会社等 部分対象外国関係会社のうち、次に掲げるもの(一の内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されているものに限ります。)イ 次に掲げる要件の全てに該当する部分対象外国関係会社イ その本店所在地国の法令に準拠して専ら上記①の外国金融機関の経営管理及びこれに附帯する業務(以下②において「経営管理等」といいます。)を行っていること。ロ その本店所在地国においてその役員又は使用人が外国金融機関の経営管理を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること。ハ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている次のⅰに掲げる金額のⅱに掲げる金額に対する割合が75%を超えること。

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――国際課税関係の改正――

ⅰ その有する外国金融機関の株式等の帳簿価額ⅱ その総資産の帳簿価額から外国金融機関に対する貸付金の帳簿価額を控除した残額

ロ 次に掲げる要件の全てに該当する部分対象外国関係会社( 1又は 2以上の外国金融機関の株式等を有するものに限るものとし、上記イに該当する部分対象外国関係会社を除きます。)イ その本店所在地国の法令に準拠して専ら外国金融機関の経営管理等及び上記イ又は下記ハのいずれかに該当する部分対象外国関係会社(その発行済株式等の50%を超える数又は金額の株式等を有するものに限ります。以下ロにおいて同じです。)の経営管理等を行っていること。ロ その本店所在地国においてその役員又は使用人が外国金融機関の経営管理及び上記イ又は下記ハのいずれかに該当する部分対象外国関係会社の経営管理を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること。ハ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている次のⅰに掲げる金額のⅱに掲げる金額に対する割合が75%を超えること。ⅰ その有する外国金融機関の株式等並びに上記イ及び下記ハに掲げる部分対象外国関係会社の株式等の帳簿価額の合計額ⅱ その総資産の帳簿価額から外国金融機関並びに上記イ及び下記ハに掲げる部分対象外国関係会社に対する貸付金の帳簿価額を控除した残額

ハ 次に掲げる要件の全てに該当する部分対象外国関係会社( 1又は 2以上の外国金融機関の株式等を有するものに限るものとし、上記イ又はロのいずれかに該当する部分対象外国関係会社を除きます。)

イ その本店所在地国の法令に準拠して専ら外国金融機関の経営管理等及び上記イ又はロのいずれかに該当する部分対象外国関係会社(その発行済株式等の50%を超える数又は金額の株式等を有するものに限ります。以下ハにおいて同じです。)の経営管理等を行っていること。ロ その本店所在地国においてその役員又は使用人が外国金融機関の経営管理及び上記イ又はロのいずれかに該当する部分対象外国関係会社の経営管理を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること。ハ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている次のⅰに掲げる金額のⅱに掲げる金額に対する割合が75%を超えること。ⅰ その有する外国金融機関の株式等並びに上記イ及びロに掲げる部分対象外国関係会社の株式等の帳簿価額の合計額ⅱ その総資産の帳簿価額から外国金融機関並びに上記イ及びロに掲げる部分対象外国関係会社に対する貸付金の帳簿価額を控除した残額

 金融持株会社は単体では一般の銀行業等を営む金融機関に該当しないものの、金融グループ全体で見ると金融機能の役割を果たしていると整理できることから、一定の要件を満たす金融持株会社について、外国金融子会社等に該当することとされています。 外国金融子会社等に該当することとされる金融持株会社は、外国金融機関の株式を保有している部分対象外国関係会社のほか、他の金融持株会社の株式を保有している部分対象外国関係会社も含まれます。ただし、外国金融機関の株式を保有せず、他の金融持株会社の株式のみを保有する部分対象外国関係会社は、外国金融子会社等に該当しないこととされています。

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――国際課税関係の改正――

⑶ 特定所得の金額① 異常な水準の資本に係る所得 一の内国法人が100%の持分を有する外国金融子会社等に対して、その事業規模に照らして通常必要とされる水準を大幅に超えた、異常な水準の資本を投下している場合には、その異常な水準の資本から生じた所得については、部分合算課税の対象とされます。具体的には次のとおりとされています。イ 対象となる外国金融子会社等の範囲 一の内国法人にその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている外国金融子会社等(その設立の日から同日以後 5年

を経過する日を含む事業年度終了の日までの期間を経過していないもの及びその解散の日から同日以後 3年を経過する日を含む事業年度終了の日までの期間を経過していないものを除きます。)が異常な水準の資本に係る所得に対する合算課税の対象となります(措法66の 6⑧一、措令39の17の 4②)。ロ 異常な水準の資本 その親会社等資本持分相当額の総資産の額に対する割合が70%を超える場合に異常な水準にあるものと判定されます(措法66の 6 ⑧一)。イ 親会社等資本持分相当額

⑴ 本店所在地国の法令に準拠して専ら外国金融機関(注)(※)又は他の金融持株会社(※)の経営管理及び附帯業務を行っていること(一又は二以上の外国金融機関の株式等を有するものに限る。)。

⑵ 本店所在地国において、その有する外国金融機関(※)及び他の金融持株会社(※)の経営管理を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること。

⑶ 当期末の貸借対照表に計上された帳簿価額について次の要件を満たすこと。

○ 次に掲げる要件の全てに該当する部分対象外国関係会社(一の内国法人によってその発行済株式等の 全部を直接又は間接に保有されているものに限る。)は外国金融子会社等に該当する。

(外国金融機関(※)の株式等の額 + 他の金融持株会社(※)の株式等の額)

① 外国金融機関のみを有し、他の金融持株会社を有していない場合

〔措令39の17①一〕(例)

内国法人

金融持株会社 ①

金融持株会社 ②

金融持株会社 ③

金融持株会社 ②′

外国金融機関

外国金融機関

外国金融機関

金融持株会社 ①

金融持株会社 ①

金融持株会社 ②

金融持株会社 ①

金融持株会社 ③

外国金融機関

外国金融機関

外国金融機関

外国金融機関

外国金融機関

外国金融機関

金融持株会社 ②

金融持株会社 ①

外国金融機関

外国金融機関

金融持株会社 ①

外国金融機関

内国法人 内国法人 内国法人

(例) (例) (例)

〔措令39の17①二〕 〔措令39の17①三〕

(参考) 外国金融機関及び③に該当する金融持株会社を有している場合(⇒②に該当)

② 外国金融機関及び①又は③に該当する金融持株会社を有している場合

③ 外国金融機関及び①又は②に該当する金融持株会社を有している場合(②に該当するものを除く。)

(総資産の額 - 外国金融機関(※)及び他の金融持株会社(※)への貸付金の額)>75%

※その発行済株式等の50%超を有するものに限る。

(注)外国金融機関: 本店所在地国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業(第一種金融商品取引業と同種類の業務に限る。)又は保険業を行っている等の要件を満たす部分対象外国関係会社

外国金融子会社等に該当する金融持株会社の範囲

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――国際課税関係の改正――

 親会社等資本持分相当額とは、外国金融子会社等の純資産の額につき剰余金その他に関する調整を加えた金額をいいます(措法66の 6 ⑧一)。 具体的には、外国金融子会社等のその事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除した残額から、次のⅰからⅲまでに掲げる金額の合計額(外国金融持株会社等に該当するものにあっては、次に掲げる金額の合計額)を控除した残額とされています(措令39の17の 4 ⑤、措規22の11⑱)。ⅰ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている利益剰余金の額(零を下回る場合には零とされます。)ⅱ その事業年度以前の各事業年度において利益剰余金の額を減少して資本金の額又は出資金の額を増加した場合のその増加した金額ⅲ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている利益剰余金の額が零を下回る場合におけるその零を下回る額ⅳ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されているその外国金融持株会社等に係る外国金融機関(その発行済株式等の50%超を有するものに限ります。)の株式等及び他の外国金融持株会社等(その発行済株式等の50%超を有するものに限ります。)の株式等の帳簿価額 上記ⅰからⅲまでの利益剰余金に関する調整は、外国金融子会社等自身の活動から生じた自己資本を除くために、また、上記ⅳの調整は外国金融持株会社等が果たす機能及び資産・資本構成を踏まえ、行うこととされているものです。ロ 総資産の額ⅰ 保険業を行う外国金融子会社等以外

のものの場合 外国金融子会社等のその事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額とされています(措令39の17の 4 ⑥)。ⅱ 保険業を行う外国金融子会社等の場合 次に掲げる金額の合計額とされています(措令39の17の 4 ⑥、措規22の11⑲)。ⅰ 外国金融子会社等のその事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額ⅱ 外国金融子会社等が保険契約を再保険に付した場合において、その再保険を付した部分につきその本店所在地国の保険業法に相当する法令の規定により積み立てないこととした同法第116条第 1 項(責任準備金)に規定する責任準備金に相当するものの額及び同法第117条第 1 項(支払備金)に規定する支払備金に相当するものの額の合計額 保険子会社については、保険契約を再保険に付した場合に積み立てないこととした責任準備金等に相当する金額を総資産の額に加算し、オフバランスを加味した実質のバランスシートに基づいて異常な水準の資本の判定を行うこととされています。

ハ 所得の計算方法 異常な水準の資本に係る所得の金額は、上記イの要件を満たす外国金融子会社等の親会社等資本持分相当額からその本店所在地国の法令に基づき下回ることのできない資本の額(注 1)の 2 倍に相当する金額を控除した残額に、その外国金融子会社等のその事業年度終了の日の翌日から 2月を経過する日を含む一の内国法人の事業年度(以下ハにおいて「親会社等事業年度」といいます。)に係る次のイに掲げる金額のロに掲げる金額に対する割合(その割合が

─�718�─

――国際課税関係の改正――

10%を下回る場合には10%)を乗じた金額とされています(措法66の 6 ⑧一、措令39の17の 4 ⑦⑧)。イ 一の内国法人の親会社等事業年度の決算に基づく所得の金額(注 2)ロ 一の内国法人の親会社等事業年度終了

の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除した残額 具体的には次の算式により計算した金額とされています。

《算式》

親会社等資本持分相当額

最低資本金額の 2倍に相当する金額

×

一の内国法人の親会社等事業年度の決算に基づく所得の金額

又は10%のいずれか高い割合

一の内国法人の親会社等事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除した残額

(注 1) ここでいう資本の額は、我が国の銀行法第 5 条(資本金の額)の規定による最低資本金に相

当するものが想定されています。(注 2) 決算に基づく所得の金額とは、会計上のいわゆる税引後当期利益を念頭に置いたものです。

② 固定資産の貸付けによる対価 上記 5 ⑶⑧に準じて計算した場合に算出される金額に相当する金額とされています。③ 無形資産等の使用料 上記 5 ⑶⑨に準じて計算した場合に算出さ

れる金額に相当する金額とされています。④ 無形資産等の譲渡損益 上記 5 ⑶⑩に準じて計算した場合に算出される金額に相当する金額とされています。⑤ 異常所得

資産 負債

剰余金等

親会社等資本持分相当額[B]

出再責任準備金等(オフバランス)出再責任準備金等(オフバランス)出再責任準備金等(オフバランス)

-親会社等資本持分相当額[B] ×本店所在地国の法令に基づく最低資本金を勘案した金額

親会社の資本に係る利益率

資産[A]

負債

純資産

純資産

[A]剰余金等

親会社等資本持分相当額[B]

外国関係会社(保険会社以外)B/S

親会社等資本持分相当額[B]

総資産の額[A]> 70%

【異常な水準の資本の状態に該当するかどうかの判定】

【異常な水準の資本に係る所得の金額の計算方法】

〔措令39の17の 4 ⑦〕本店所在地国の法令に基づき下回ることができない資本の額の 2倍に相当する金額

〔措令39の17の 4 ⑧〕親会社事業年度(注)に係る一の内国法人の  決算に基づく所得の金額(会計上の税引後当期利益)  終了の時における貸借対照表上の純資産の帳簿価額※10%を下回る場合には10%

外国関係会社(保険会社)B/S

出再取引に係る元受負債(オフバランス)

〔措令39の17の 4 ⑥、措規22の11⑲〕

(注)設立から 5年以内又は解散から 3年以内の部分対象外国関係会社は本制度の適用対象外〔措令39の17の 4 ②〕

〔措令39の17の 4 ⑥〕事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額

〔措令39の17の 4 ⑥〕〔事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている純資産の額〕-〔剰余金等の金額〕

○ 外国金融子会社等のうち、一の内国法人にその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている等の要件(注)を満たすものが、異常な水準の資本の状態にある場合には、異常な水準の資本に係る所得の金額は、部分合算課税の対象とされる。

〔措規22の11⑱〕①利益剰余金の額②利益剰余金の資本組入額③累積損失額④その有する他の外国金融機関等(持株割合50%超に限る。)の株式等の帳簿価額※④は金融持株会社の場合のみ

(注)部分対象外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含む一の内国法人の事業年度

外国金融子会社等の異常な水準の資本に係る所得について

─�719�─

――国際課税関係の改正――

 上記 5 ⑶⑪に準じて計算した場合に算出される金額に相当する金額とされています。

⑷ 金融子会社等部分適用対象金額 金融子会社等部分適用対象金額は、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額とされています(措法66の 6 ⑨)。異常な水準の資本に係る所得と、それ以外の所得の内容が実質的に重複する可能性があることから、二重に合算課税の対象となることを避けるため、このような調整が設けられているものです。① 上記⑶①に掲げる金額② 上記⑶②、③及び⑤に掲げる金額の合計額と、⑶④に掲げる金額(零を下回る場合には零とされます。)を基礎としてその各事業年度開始の日前 7年以内に開始した各事業年度において生じた⑶④に掲げる金額が零を下回る部分の金額につき調整を加えた金額とを合計した金額 上記②の調整を加えた金額は、具体的には、その外国金融子会社等の各事業年度の上記⑶④の金額(零を下回る場合には零となります。)からその外国金融子会社等の各事業年度開始の日前 7年以内に開始した事業年度(平成30年 4月 1 日前に開始した事業年度、外国金融子会社等に該当しなかった事業年度及び租税負担割合が20%以上であった事業年度を除きます。以下⑷において「前 7年内事業年度」といいます。)において生じた金融子会社等部分適用対象損失額(上記⑶④の金額が零を下回る場合のその下回る金額をいい、その各事業年度前の事業年度において控除されたものを除きます。)の合計額に相当する金額を控除した残額とされています(措令39の17の 4 ⑨)。(注 1) 前 7 年内事業年度のうち、後述の少額免

除基準を満たすことにより部分合算課税の

適用が免除となった場合の事業年度におい

て生じた金融子会社等部分適用対象損失額

も繰越控除の対象となります。(注 2) その外国金融子会社等のその事業年度に

おける金融子会社等部分適用対象金額の計

算においては前 7 年内事業年度の金融子会

社等部分適用対象損失額の控除は行われる

こととなります。したがって、結果として、

外国金融子会社等のその事業年度における

金融子会社等部分適用対象金額が後述の少

額免除基準を満たすことになり、部分合算

課税が行われない場合であっても、その事

業年度において上記⑶④に掲げる金額がプ

ラスとなっている場合にあっては、繰越控

除可能な前 7 年内事業年度の金融子会社等

部分適用対象損失額について、当期の上記

⑶④に掲げる金額が零に達するまでの全額

を控除する必要があります。(注 3) 外国金融子会社等のその事業年度の金融

子会社等部分適用対象金額の計算上、前 7

年内事業年度において外国関係会社に該当

していた場合に生じた欠損金額及び部分対

象外国関係会社(外国金融子会社等を除き

ます。)に該当していた場合に生じた部分適

用対象損失額を控除することはできません。

⑸ 金融子会社等部分課税対象金額 金融子会社等部分課税対象金額は、金融子会社等部分適用対象金額のうちその内国法人が直接及び間接に有するその部分対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額並びにその内国法人とその部分対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額とされており(措法66の 6 ⑧)、具体的には、次の算式により計算した金額とされています(措令39の17の 4①)。《算式》外国金融子会社等の各事業年度の金融子会社等部分適用対象金額

×

その各事業年度終了の時におけるその内国法人のその外国金融子会社等に係る請求権等勘案合算割合(注)

(注) 請求権等勘案合算割合については、上記 3

⑸②をご参照ください。

─�720�─

――国際課税関係の改正――

7  部分適用対象金額等に係る合算課税の適用免除

⑴ 改正前の制度 特定外国子会社等の部分適用対象金額に係る収入金額が1,000万円以下である場合(金額基準)又は決算に基づく所得の金額に相当する金額のうちに部分適用対象金額の占める割合が 5%以下である場合(割合基準)には、部分合算課税は行わないこととされています(旧措法66の 6 ⑤)。 また、部分適用対象金額に係る適用免除の措置は、確定申告書に適用免除に該当する旨を記載した書面を添付し、かつ、適用免除に該当することを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り適用されることとされています(旧措法66の 6 ⑦)。(注) ただし、一定の宥恕規定が設けられていま

す(旧措法66の 6 ⑧)。

⑵ 改正の内容① 部分合算課税に係る適用免除 従来の金額基準及び割合基準による少額免除基準に加えて、租税負担割合基準による適用免除基準が設けられたほか、金額基準による少額免除が拡大されました。具体的には、内国法人に係る部分対象外国関係会社につき次のいずれかに該当する事実がある場合には、部分対象外国関係会社のその該当する事業年度に係る部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額については、部分合算課税の適用を免除することとされます(措法66の6 ⑩)。イ 租税負担割合基準 各事業年度の租税負担割合が20%以上であること(措法66の 6 ⑩一)。 改正前の制度において制度適用の有無を入口で判定するための基準として設けられていた外国関係会社の租税負担割合の基準(いわゆる「トリガー税率」)が今回の改正で廃止されたことに伴い、企業の事務負担

適用免除

異常な水準の資本に係る所得(一)

異常所得(五)

固定資産の貸付けの対価(二)

無形資産等の使用料(三)

無形資産等の譲渡損益(四)  ※マイナスの場合は 0

金融子会社等部分適用対象金額が税引前当期利益の 5%以下又は2,000万円以下

いずれか多い金額

合計額

金融子会社等部分適用対象金額

少額判定

金融子会社等部分課税対象金額

×

 持株割合等

(一)の金額

(注)金融子会社等部分課税対象金額が課税対象金額(全体合算)に相当する金額を超える場合であっても、その相当する金額が部分合算課税の上限とはならない。

(注)

マイナスとなった金額(金融子会社等部分適用対象損失額)は7年繰越可

金融子会社等部分適用対象損失額の繰越控除後の金額により判定される。

繰越控除後の部分適用対象損失額が翌期繰越額となる。

前7年以内の金融

子会社等部分適用

対象損失額の繰越

控除

部分合算課税における金融子会社等部分課税対象金額の計算

─�721�─

――国際課税関係の改正――

軽減の観点から、改正前の制度との継続性を踏まえ、部分対象外国関係会社の租税負担割合が20%以上の事業年度に係る部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額については、部分合算課税の適用を免除することとされました。ロ 少額免除基準イ 各事業年度における部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額が2,000万円以下であること(措法66の 6⑩二)。 特定所得の範囲の見直しに伴い、また、企業の事務負担軽減の観点から、少額免除基準のうち金額基準の水準が従来の1,000万円から引き上げられ、金額基準による少額免除の範囲が拡大されました。ロ 各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額(注)のうちにその各事業年度における部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額の占める割合が 5%以下であること(措法66の 6 ⑩三)。 割合基準については、従来どおりとされています。なお、各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額とは、具体的には、部分対象外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額(各事業年度の所得を課税標準として課される法人所得税(法人税法施行令第141条第 2項第 3号(外国法人税の範囲)に掲げる税を除きます。)の額を含みます。)(注)とされています(措令39の17の 5 )。(注) 各事業年度の決算に基づく所得の金

額とは、会計上の当期利益を念頭に置

いたものですが、ここでは、法人所得

税の額を含むとしていることから、会

計上のいわゆる税引前当期利益となり

ます。なお法人所得税から除かれてい

る法人税法施行令第141条第 2項第 3号

に掲げる税は、我が国における源泉所

得税に相当する税が該当します。これ

は源泉所得税に相当する税については

費用処理したところの税引前当期利益

である旨を明らかにするために規定さ

れているものです。

② 部分合算課税の適用免除の適用要件としての書類添付要件等の廃止 改正前の制度では、部分適用対象金額に係る合算課税の適用免除は、イ 確定申告書に適用免除に関する規定の適用がある旨を記載した書面を添付し、かつ、ロ その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り、適用することとされていました(旧措法66の 6 ⑦)。 今回の改正では、部分合算課税の適用免除要件としての、これらの適用要件は廃止されました。 上記イの書面の添付要件については、対象所得の種類、金額等を記入した部分適用対象金額の計算に関する明細書(申告書別表)を確定申告書に添付することを求めるものでしたが、適用免除の趣旨に鑑み、事務負担の軽減の観点から、廃止されたものです。また、上記ロの資料等の保存要件については、その保存を求めている資料等が、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額の計算において当然に必要とされる資料であるため、適用免除の適用要件として殊更に保存要件を課す必要がないことから、廃止されたものです。(注) 租税負担割合が20%未満の外国関係会社

に該当する場合には、少額免除基準に該当

することとなったとしても、引き続き貸借

対照表等を添付する義務があることに留意

する必要があります(措法66の 6 ⑪一、措

規22の11⑳)。

8  一定の外国関係会社の財務諸表等の確定申告書への添付

 改正前は、特定外国子会社等(すなわち、租税

─�722�─

――国際課税関係の改正――

負担割合20%未満の外国関係会社)に対する持株割合が10%以上等である内国法人は、その特定外国子会社等につき合算課税の適用があるか否かにかかわらず、その特定外国子会社等の貸借対照表、損益計算書その他の書類をその内国法人の確定申告書に添付しなければならないこととされていました(旧措法66の 6 ⑥)。 改正後においても、この内容は基本的に維持されており、租税負担割合20%未満の外国関係会社(特定外国関係会社を除きます。)に対する持株割合が10%以上等である内国法人は、その外国関係会社につき合算課税の適用があるか否かにかかわらず、その外国関係会社の貸借対照表、損益計算書その他の書類について、その外国関係会社の各事業年度終了の日の翌日から 2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の確定申告書に添付しなければならないこととされています(措法66の 6 ⑪一)。 また、今回の改正で、新たに、租税負担割合30

%未満の特定外国関係会社(ペーパー・カンパニー等)の貸借対照表、損益計算書その他の書類が、確定申告書への添付の対象に追加されました(措法66の 6 ⑪二)。 確定申告書に添付すべき書類は外国関係会社に係る次の書類とされています(措規22の11⑳)。・ 貸借対照表及び損益計算書・ 株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書その他これらに類するもの・ 貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書・ 本店所在地国の法令により課される税に関する申告書の写し・ 株主等の氏名・住所等及びその有する株式等の数又は金額を記載した書類・ 出資関連外国法人等の株主等の氏名・住所等及びその有する株式等の数又は金額を記載した書類・ その他参考となるべき事項を記載した書類

≪改正前≫

租税負担割合が20%未満の外国関係会社(注)合算課税の対象となるか否かを問わない。

≪改正後≫① 租税負担割合が20%未満の外国関係会社(注)合算課税の対象となるか否かを問わない。

② 租税負担割合が30%未満の特定外国関係会社(注)合算課税の対象となるか否かを問わない。

外国関係会社 外国関係会社

租税負担割合20%未満

租税負担割合20%未満

○ P/L・B/S 等の添付義務の対象となる外国関係会社の範囲

租税負担割合30%未満のペーパーカンパニー等

外国関係会社に係るP/L・B/S等の添付義務

─�723�─

――国際課税関係の改正――

9  外国子会社合算税制の適用に係る税額控除

⑴ 外国税額の控除 部分合算課税制度の改正に伴って、部分合算課税の適用がある場合に内国法人が納付するものとみなされる控除対象外国法人税の額の計算について、整備が行われました。すなわち、内国法人が本税制の適用を受ける場合に、内国法人に係るその外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額があるときは、その外国法人税の額のうち、その外国関係会社の課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に対応する部分の金額をその内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなして、法人税法第69条及び地方法人税法第12条の規定を適用することとされています(措法66の 7 ①)。 このうち、部分合算課税の適用がある場合に内国法人が納付するものとみなされる控除対象外国法人税の額は、次の算式により計算した金額とされています(措令39の18②③)。《算式》外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額

×

部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額

調整適用対象金額

 また、今回の改正で、部分課税対象金額について、会社単位の合算課税における課税対象金額を上限とする扱いが廃止されたことに伴い、分母の調整適用対象金額(注)が分子の部分課税対象金額を下回る場合が生ずることから、このような場合の分母の金額は、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額を用いて、内国法人が納付したものとみなされる控除対象

外国法人税の額を計算することとされました(措令39の18②③)。(注) 調整適用対象金額とは、外国関係会社が特

定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当

するとした場合に計算される適用対象金額に、

その適用対象金額の計算上控除されるその外

国関係会社が持株割合25%以上等の要件を満

たす子会社から受ける配当等の額(その外国

関係会社の部分課税対象年度又は金融子会社

等部分課税対象年度の所得に対して課される

外国法人税の課税標準に含まれるものに限り

ます。)等の金額を加算する調整を加えた金額

をいいます(措令39の18④)。

⑵ 控除対象所得税額等相当額の控除① 控除対象所得税額等相当額の控除 改正前は、合算対象となる外国関係会社の所得に我が国の所得税や法人税が課されている場合には、実務上、その所得税や法人税の額を外国法人税の額として扱うことで、外国税額控除の仕組みにより、二重課税調整が行われてきました。 今回の改正では、外国関係会社の所得に対して課された我が国の所得税や法人税の額について、外国税額控除の仕組みではなく、新たな税額控除の仕組みにより、親会社である内国法人の法人税の額から控除することとされました。 具体的には、内国法人が、本税制の適用を受ける場合には、内国法人に係る外国関係会社に対して課される所得税等の額(所得税の額、復興特別所得税の額(注 1)及び法人税の額をいい、附帯税の額を除きます。⑵において同じです。)のうち、外国関係会社の課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に対応する部分の金額に相当する金額(⑵において「控除対象所得税額等相当額」といい、これらの金額の計算は次によるものとされています。)を、内国法人において本税制の適用を受ける事業年度

調整適用対象金額が部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額を下回る場合には、分母の金額は、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額とする。

─�724�─

――国際課税関係の改正――

におけるその内国法人の法人税の額から控除することとされました(措法66の 7 ④、措令39の18⑱)(注 2)。(注 1) 復興財確法第33条第 1 項(復興特別所

得税に係る所得税法の適用の特例等)に

おいて租税特別措置法第66条の 7 第 4 項

の規定を読み替えることにより、復興特

別所得税の額を対象としています。(注 2) 法人税の額から控除しきれなかった金

額について還付する制度は、設けられて

いません。

イ 所得税等の額のうち課税対象金額に対応する部分の金額 所得税等の額のうち課税対象金額に対応する部分の金額は、次の算式により計算した金額とされています(措令39の18⑮)。《算式》外国関係会社に課される所得税等の額 ×

課税対象金額調整適用対象金額(注)

(注) 上記算式の調整適用対象金額とは、外

国関係会社の適用対象金額に、その適用

対象金額の計算上控除されるその外国関

係会社が持株割合25%以上等の要件を満

たす子会社から受ける配当等の額等の金

額を加算する調整を加えた金額をいいま

す(措令39の18①⑮)。

ロ 所得税等の額のうち部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に対応する部分の金額 所得税等の額のうち部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に対応する部分の金額は、次の算式により計算した金額とされています(措令39の18⑯⑰)。

《算式》外国関係会社に課される所得税等の額

×

部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額調整適用対象金額(注)

(注) 上記算式の調整適用対象金額とは、外

国関係会社が特定外国関係会社又は対象

外国関係会社に該当するとした場合に計

算される適用対象金額に、その適用対象

金額の計算上控除されるその外国関係会

社が持株割合25%以上等の要件を満たす

子会社から受ける配当等の額等の金額を

加算する調整を加えた金額をいいます

(措令39の18④⑯)。

② 適用要件等 上記①による税額控除は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に控除の対象となる所得税等の額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用することとされています(措法66の 7 ⑤)。この場合において、上記①により控除される金額の計算の基礎となる所得税等の額は、その書類にその所得税等の額として記載された金額が限度とされています(措法66の 7 ⑤)。③ 控除対象所得税額等相当額の益金算入 上記①による税額控除の適用を受ける場合には、外国関係会社に係る控除対象所得税額等相当額は、内国法人においてその外国関係会社に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額につき本税制の適用を受ける事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(措法66の 7 ⑥、措令39の17⑱)。④ 法人税法との規定の調整 上記①による税額控除の適用がある場合に

調整適用対象金額が部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額を下回る場合には、分母の金額は、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額とする。

─�725�─

――国際課税関係の改正――

おける法人税法の規定の適用については、次によることとされています(措法66の 7 ⑦)。イ 法人税法第67条(特定同族会社の特別税率) 特定同族会社の特別税率の規定の適用については、その留保金額を計算する場合に控除される法人税の額から、上記①の税額控除により控除する金額を控除することとされています。ロ 法人税法第70条の 2(税額控除の順序) 法人税法の規定による税額控除は、法人税法において、まず仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除(法法70)による控除をした後に、所得税額の控除(法法68)及び外国税額の控除(法法69)による控除をすることとされていますが、上記①の税額控除は、これらの法人税法の規定による税額控除より先に控除をすることとされています。 すなわち、上記①の税額控除の適用を受ける事業年度においては、まず上記①の税額控除による控除をし、次に仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除(法法70)による控除をした後に、所得税額の控除(法法68)及び外国税額の控除(法法69)による控除をすることとされています。ハ 法人税法第72条(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等) 内国法人の仮決算をした場合の中間申告書に記載される法人税額は、法人税法第 2編第 1章第 2節の規定及び上記①の税額控除の適用後の法人税額とすることとされています。ニ 法人税法第74条(確定申告) 内国法人の確定申告書に記載される法人税額は、法人税法第 2編第 1章第 2節の規定及び上記①の税額控除の適用後の法人税額とすることとされています。

10 特定課税対象金額等を有する内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入

⑴ 特定目的会社等が外国関係会社から受ける剰余金の配当等に係る二重課税調整 特定目的会社等(特定目的会社、投資法人、特定目的信託に係る受託法人、特定投資信託に係る受託法人)については、外国子会社配当益金不算入制度の適用がないこととされています(措法67の14②、67の15②、68の 3 の 2 ②、68の 3 の 3 ②)。 また、特定目的会社等が合算課税の対象となった外国法人から配当を受けた場合、その受けた配当については、その配当課税と外国子会社合算税制との二重課税調整措置の適用がないこととされています(旧措法67の14③、67の15③、68の 3 の 2 ③、68の 3 の 3 ③)。 このため、特定目的会社等が合算課税の対象となった外国法人から配当等を受けた場合には、その受けた配当等に対する課税と、その配当等の原資である外国法人の所得に対する合算課税とが二重に生じることになっていました。そこで、今回の改正では、特定目的会社等が合算課税の対象となった外国法人から配当等を受けた場合、その外国法人に係る特定課税対象金額等に達するまでの金額は、益金の額に算入されないこととされました(措法67の14③、67の15③、68の 3 の 2 ③、68の 3 の 3 ③)。

⑵ 特定課税対象金額 外国子会社合算税制において実質支配基準が導入されたことに伴い、内国法人と外国法人との間に実質支配関係がある場合の特定課税対象金額の計算方法について整備が行われました。 改正後の特定課税対象金額は、次の①及び②に掲げる金額の合計額とされています(措法66の 8 ④)。① 外国法人に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額で、内国法人がその外国法人から剰余金の配当等

─�726�─

――国際課税関係の改正――

の額を受ける日を含む事業年度(配当事業年度)の所得の金額の計算上益金の額に算入されるもののうち、内国法人の有するその外国法人の直接保有の株式等の数及び内国法人とその外国法人との間の実質支配関係の状況を勘案して次の算式により計算した金額(措法66の 8 ④一、措令39の19②)《算式》

外国法人に係る適用対象金額、部分適用対象金額、金融子会社等部分適用対象金額

×

その事業年度終了の時における内国法人の有するその外国法人の請求権等勘案直接保有株式等(注)外国法人のその適用対象金額、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額に係る事業年度終了の時における発行済株式等

(注) 上記算式の請求権等勘案直接保有株式等

とは、内国法人が有する外国法人の株式等

の数又は金額をいいます。ただし、次に掲

げる場合に該当する場合には、次の数又は

金額とされます(措令39の19②)。

イ� その外国法人が請求権の内容が異なる

株式等を発行している場合(ロ又はハに

掲げる場合に該当する場合を除きます。)

��その外国法人の発行済株式等に、そ

の内国法人がその請求権の内容が異なる

株式等に係る請求権に基づき受けること

ができる剰余金の配当等の額がその総額

のうちに占める割合を乗じて計算した数

又は金額

ロ� その外国法人の事業年度終了の時にお

いてその外国法人とその内国法人との間

に実質支配関係がある場合��その外国

法人の発行済株式等

ハ� その外国法人の事業年度終了の時にお

いてその外国法人とその内国法人以外の

者との間に実質支配関係がある場合��

② 外国法人に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額で、

内国法人がその外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含む事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度(前10年以内の各事業年度)において前10年以内の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されたもののうち、内国法人の有するその外国法人の直接保有の株式等の数及び内国法人とその外国法人との間の実質支配関係の状況を勘案して次の算式により計算した金額(措法66の 8 ④二、措令39の19③)《算式》

前10年以内の各事業年度の外国法人に係る適用対象金額、部分適用対象金額、金融子会社等部分適用対象金額

×

その各事業年度終了の時における内国法人の有するその外国法人の請求権等勘案直接保有株式等(注)外国法人のその適用対象金額、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額に係る各事業年度終了の時における発行済株式等

(注) 上記算式の「請求権等勘案直接保有株式

等」については、上記①の算式の(注)を

ご参照ください。

⑶ 間接特定課税対象金額 外国子会社合算税制において実質支配基準が導入されたことに伴い、内国法人と外国法人との間に実質支配関係がある場合の間接特定課税対象金額の計算方法について整備が行われました。 改正後の間接特定課税対象金額は、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額とされています(措法66の 8 ⑪)。① 内国法人が外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含むその内国法人の事業年度(配当事業年度)開始の日前 2 年以内に開始した各事業年度(①において「前 2年以内の各事業年度等」といいます。)のうち最も古い事業年度開始の日から配当事業年度終了の日までの期間において、その外国法人が他の外国法人から受けた剰余金の配当等の額(注

─�727�─

――国際課税関係の改正――

1 )のうち、その内国法人の有するその外国法人の直接保有の株式等の数に対応する部分の金額として次の算式により計算した金額(間接配当等)(措法66の 8 ⑪一、措令39の19⑧)《算式》

上記①の期間においてその外国法人が他の外国法人から受けた剰余金の配当等の額

×

直近配当基準日(注 2)における内国法人の有するその外国法人の請求権勘案直接保有株式等直近配当基準日(注 2)におけるその外国法人の発行済株式等

(注 1) 前 2 年以内の各事業年度等のうち最も

古い事業年度開始の日から配当事業年度

終了の日までの期間において外国法人が

他の外国法人から受けた剰余金の配当等

の額であって次に掲げるものを除きます

(措令39の19⑦)。

イ 他の外国法人の課税対象金額、部分

課税対象金額若しくは金融子会社等部

分課税対象金額(内国法人の配当事業

年度又は前 2 年以内の各事業年度等の

所得の金額の計算上益金の額に算入さ

れたものに限ります。ロにおいて「課

税対象金額等」といいます。)の生ずる

事業年度がない場合における当該他の

外国法人から受けたもの

ロ 他の外国法人の課税対象金額等の生

ずる事業年度開始の日(その日が 2 以

上ある場合には、最も早い日)前に受

けたもの(注 2) 上記算式の「直近配当基準日」とは、

内国法人が外国法人から受けた剰余金の

配当等の額のうち配当事業年度の終了の

日に最も近い日に受けたものの支払に係

る基準日をいいます(措令39の19⑧)。

② 次に掲げる金額の合計額(措法66の 8 ⑪二)イ 上記①の他の外国法人に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部

分課税対象金額で、配当事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されるもののうち、上記①の内国法人の有する他の外国法人の間接保有の株式等の数(注 1)及びその内国法人と当該他の外国法人との間の実質支配関係の状況を勘案して次の算式により計算した金額(措法66の 8 ⑪二イ、措令39の19⑩)《算式》

他の外国法人に係る適用対象金額、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額

×

分母の事業年度終了の時において内国法人が上記イの外国法人を通じて間接に有する他の外国法人の請求権等勘案間接保有株式等(注 2)他の外国法人の適用対象金額、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額に係る事業年度終了の時における発行済株式等

(注 1) 「間接保有の株式等の数」とは、外国

法人の発行済株式等に、内国法人の出

資関連法人(その外国法人の株主等で

ある他の外国法人をいいます。)に係る

持株割合(その株主等の有する株式等

の数又は金額がその株式等の発行法人

の発行済株式等のうちに占める割合

(その発行法人が請求権の内容が異なる

株式等を発行している場合には、その

株主等がその請求権の内容が異なる株

式等に係る請求権に基づき受けること

ができる剰余金の配当等の額がその総

額のうちに占める割合)をいいます。)

及びその出資関連法人のその外国法人

に係る持株割合を乗じて計算した株式

等の数又は金額とされています(措令

39の19⑨)。(注 2) 上記算式の「請求権等勘案間接保有

株式等」とは、外国法人の発行済株式

等に、内国法人の出資関連法人に係る

請求権等勘案保有株式等保有割合及び

─�728�─

――国際課税関係の改正――

その出資関連法人のその外国法人に係

る請求権等勘案保有株式等保有割合を

乗じて計算した株式等の数又は金額を

いいます(措令39の19⑫一)。

 また、請求権等勘案保有株式等保有

割合とは、株式等の発行法人の株主等

の有する株式等の数又は金額がその発

行法人の発行済株式等のうちに占める

割合(次に掲げる場合に該当する場合

には、それぞれ次に定める割合)をい

います(措令39の19⑫二)

イ 発行法人が請求権の内容が異なる

株式等を発行している場合(ロ又は

ハに掲げる場合に該当する場合を除

きます。)��その株主等がその請求

権の内容が異なる株式等に係る請求

権に基づき受けることができる剰余

金の配当等の額がその総額のうちに

占める割合

ロ 他の外国法人の事業年度終了の時

においてその発行法人とその株主等

との間に実質支配関係がある場合

��100%

ハ 他の外国法人の事業年度終了の時

においてその発行法人とその株主等

以外の者との間に実質支配関係があ

る場合��零

ロ 上記①の他の外国法人に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額で、配当事業年度開始の日前 2年以内に開始した各事業年度(ロにおいて「前 2年以内の各事業年度」といいます。)において前 2 年以内の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されたもののうち、上記①の内国法人の有する他の外国法人の間接保有の株式等の数及びその内国法人と当該他の外国法人との間の実質支配関係の状況を勘案して次の算式により計算した金額(間接課税済金額)(措法66の 8 ⑪二ロ、措令39の19⑪)

《算式》

他の外国法人に係る前 2年以内の各事業年度の適用対象金額、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額

×

分母の各事業年度終了の時において内国法人が上記イの外国法人を通じて間接に有する他の外国法人の請求権等勘案間接保有株式等(注)他の外国法人に係る前 2年以内の各事業年度の適用対象金額、部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額に係る各事業年度終了の時における発行済株式等

(注) 上記算式の「請求権等勘案間接保有株

式等」については、上記イの算式に係る

(注 2)をご参照ください。

11 外国信託に対する本制度の適用

 内国法人が外国信託(投資信託及び投資法人に関する法律に規定する外国投資信託のうち租税特別措置法第68条の 3の 3に規定する特定投資信託に類するものをいいます。)の受益権を直接又は間接に保有する場合には、その外国信託の受託者を外国法人とみなして、本制度の適用対象とすることとされています(旧措法66の 6 ⑩)。 今回の改正では、実質支配基準の導入に伴い、本制度の適用対象になる場合として、内国法人がその内国法人との間に実質支配関係がある外国法人を通じて間接に外国信託の受益権を有する場合及び内国法人が外国信託との間に実質支配関係がある場合を追加する整備が行われました(措法66の 6 ⑫)。 なお、改正前の制度では、本制度において対象とされる外国信託は、投資を行うことを主たる事業とするものであり、こうした事業がその国又は地域に所在することの合理性を見いだすことができないとして、合算課税の適用除外に関する規定は設けられていませんでした。今回の改正では、「経済実態に即して課税すべき」との BEPS プロジェクトの基本的な考え方を踏まえ、外国信託について、通常の会社と同様、経済活動基準によるスクリーニングの対象とされています。また、外

─�729�─

――国際課税関係の改正――

国信託が、実体基準及び管理支配基準を満たさないペーパー・カンパニーや受動的所得の割合が高い事実上のキャッシュ・ボックス等に該当する場合には、特定外国関係会社として合算課税の対象に該当することになります。

㈣ 居住者の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例の改正

 居住者の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例についても、上記㈢の内国法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例の改正と同趣旨の改正を行うこととされました(措法40の 4 、40の5 、措令25の19~24、措規18の20)。(注) 改正後の制度についても、基本的な仕組みは

内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特

例(措法66の 6 、66の 8 、66の 9 )と同様とさ

れていることから、以下では、内国法人につい

ての特例と異なる事項について記載することと

します。

1  適用対象金額に係る合算課税(外国関係会社単位の合算課税)における課税対象金額に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額

 改正前は、課税対象金額に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、次に掲げる金額の合計額とされていました(旧措令25の21③)。⑴ 居住者がその有する特定外国子会社等の株式

等を取得するために要した負債の利子でその年中に支払うもののうち、その年においてその者がその特定外国子会社等の株式等を有していた期間に対応する部分の金額⑵ 特定外国子会社等から受ける剰余金の配当等の額を課税標準として課される外国所得税の額でその年中に納付するもの 今回の改正では、外国関係会社が居住者との間に実質支配関係がある外国法人に該当する場合には、その居住者において雑所得の金額として総収入金額に算入される金額は、その居住者の持株割合にかかわらず、その外国関係会社の各事業年度の適用対象金額に、各事業年度終了の時におけるその居住者のその外国関係会社に係る請求権等勘案合算割合(100%)を乗じて計算した金額とすることとされた(措法40の 4 ①、措令25の19①②一ロ)ことから、居住者との間に実質支配関係がある外国法人に該当する外国関係会社の株式等を取得するために要した負債の利子については、課税対象金額に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき外国関係会社の株式等を取得するために要した負債の利子の範囲から除外することとされました(措令25の19③一)。(注) 「実質支配関係」の意義については、内国法人

についての特例における「実質支配関係」の意

義と同様とされていますので(措法40の 4 ②五、

措令25の21)、上記㈢ 1⑶をご参照ください。

─�730�─

――国際課税関係の改正――

2  金融子会社等部分適用対象金額に係る合算課税における異常な水準の資本に係る所得の計算

 今回の改正では、上記㈢ 6の内国法人についての特例と同様に、外国金融子会社等が得る金融所得については部分合算課税の対象外とする一方、外国金融子会社等に対して異常な水準の資本が投下されている場合には、異常な水準の資本に係る所得については部分合算課税の対象とすることとされました(措法40の 4 ⑧)。(注) 「金融子会社等部分適用対象金額に係る合算課

税」については、内国法人についての特例と基

本的な仕組みは同様とされていますので(措法

40の 4 ⑧~⑩、措令25の22の 4 、25の22の 5 )、

上記㈢ 6をご参照ください。 この「異常な水準の資本に係る所得」は、次の算式により計算した金額とされています(措法40の 4 ⑧一、措令25の22の 4 ⑧)。

《算式》親会社等資本持分相当額 - 最低資本金額の 2倍に相当する金額 × 10%(注)

(注) 内国法人についての特例においては、上記

㈢ 6 ⑶①ハのとおり、原則として内国法人の

資本に係る利益率を用いることとされ、その

利益率が10%未満である場合に限って10%を

用いることとされていますが、居住者につい

ての特例においては、一律10%を用いること

とされています。

㈤ 適用関係

① 上記㈢( 8から10までを除きます。)の改正は、外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融子会社等部分適用対象金額及びその金融子会社等部分適用

【持株関係】合算割合:持株割合

外国関係会社の決算上の所得金額

他の外国関係会社から受ける配当等

基準所得金額措法40の 4 ②四措令25の20①~

④⑦

前 7年以内の繰越欠損金

課税対象金額措法40の 4 ①

措令25の19②一イ・ハ

納付法人所得税

適用対象金額措法40の 4 ②四措令25の20⑤⑥

調整金額

剰余金処分によるその他の社外流出

益金算入金額のうち社外流出分

(調整後の)適用対象金額措法40の 4 ②四措令25の19①

【実質支配関係】合算割合:100%

課税対象金額措法40の 4 ①

措令25の19②一ロ

いずれかを選択して継続適用

我が国の税法に基づく計算

外国関係会社の所在地国の税法に基づく計算

○ 課税対象金額は、雑所得に係る総収入金額とみなした上、雑所得の金額の計算上、下記を必要経費として控除【措令25の19③】① 外国関係会社の株式等の取得に要した負債の利子② 外国関係会社から受ける配当等に係る外国所得税

○ 課税対象金額は、雑所得に係る総収入金額とみなした上、雑所得の金額の計算上、外国関係会社から受ける配当等に係る外国所得税を必要経費として控除【措令25の19③二】※ 実質支配関係に基づき合算課税されることから、外国関係会社の株式等の取得に要した負債の利子は必要経費とならない。【措令25の19③一】

居住者に係る外国関係会社単位の合算課税における課税対象金額の計算(イメージ)

─�731�─

――国際課税関係の改正――

対象金額に係る金融子会社等部分課税対象金額について適用し、特定外国子会社等の同日前に開始した事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額並びに部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額については従前どおりとされています(改正法附則70①)。② 上記㈢ 8の改正は、外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に係る確定申告書に添付すべき書類について適用し、特定外国子会社等の同日前に開始した事業年度に係る確定申告書に添付すべき書類については従前どおりとされています(改正法附則70②)。③ 上記㈢ 9⑴の改正は、外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に係る外国法人税の額について適用し、特定外国子会社等の同日前に開始した事業年度に係る課税対象金額又は部分課税対象金額に係る外国法人税の額については従前どおりとされています(改正法附則70③)。 また、上記㈢ 9⑵の改正は、外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に係る所得税等の額について適用することとされています(改正法附則70④)。④ 上記㈢10の改正に係る適用関係については、

今回の外国子会社合算税制に関する改正の適用関係が外国関係会社の事業年度に基づいて整理されていることから、これと同様に、外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に係る特定課税対象金額又は間接特定課税対象金額について適用され、外国関係会社の同日前に開始した事業年度に係る特定課税対象金額又は間接特定課税対象金額については従前どおりになるものと解されます。(注) すなわち、外国関係会社の平成30年 4 月

1 日以後に開始する事業年度終了の日から

2 月を経過する日を含む内国法人の事業年

度においてその外国関係会社から受ける配

当等がある場合における、その外国関係会

社に係る特定課税対象金額(その外国関係

会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始する事

業年度に係る特定課税対象金額に限りま

す。)について適用されることになります。

間接特定課税対象金額についても同様です。

 なお、上記㈢10⑴の改正については、今回新たに調整が行われることになり従前どおりとされるものがないため、外国関係会社の平成30年 4 月 1 日前に開始した事業年度に係る合算課税額については、特定課税対象金額又は間接特定課税対象金額とされる金額はないものと解されます。⑤ 上記㈣の改正に係る適用関係については、内国法人についての特例に関する適用関係(上記①、②及び④)と同様とされています(改正法附則54①②)。

─�732�─

――国際課税関係の改正――

Ⅱ 特殊関係株主等である内国法人等に係る特定外国法人の課税の特例(コーポレート・インバージョン対策合算税制)の改正

㈠ 改正前の制度の概要

1 特殊関係株主等である内国法人に係る特定外国法人の課税対象金額の益金算入制度(会社単位の合算課税制度)

 特殊関係内国法人である内国法人の株主(以下「特殊関係株主等」といいます。)が、組織再編成等により、軽課税国に所在する外国法人(以下「特定外国法人」といいます。)を通じてその特殊関係内国法人の株式等の80%以上を間接保有することとなった場合には、特定外国法人の所得に相当する金額(以下㈠において「適用対象金額」といいます。)のうち、特殊関係株主等である内国法人のその有する株式等に対応する部分として計算した金額(以下㈠において「課税対象金額」といいます。)をその特殊関係株主等である内国法人の収益の額とみなして、その所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(旧措法66の 9 の 2 ①)。 ただし、特定外国法人が独立企業としての実体を備え、かつ、その本店所在地国において事業活動を行うことについて十分な経済合理性がある等の所定の基準(以下「適用除外基準」といいます。)の全てを満たす事業年度については、会社単位での合算課税は行われません(旧措法66の 9の 2 ③)。 特定外国法人の判定は、外国子会社合算税制における特定外国子会社等の判定と同様の方法により行われます(旧措法66の 9 の 2 ①、旧措令39の20の 2 ⑦⑧)ので、上記Ⅰ㈠ 1をご参照ください。また、適用対象金額の計算及び適用除外基準についても、外国子会社合算税制と同様の仕組みとなっています(適用除外基準については統括会社及び特定保険外国子会社等に係る部分を除きます。)(旧措法66の 9 の 2 ②三③、旧措令39の20の 3 、39の20の 5 )ので、上記Ⅰ㈠ 1をご参照ください。

(注) 特殊関係株主等の種類に応じて、特殊関係株

主等である居住者に係る各年分の所得に対する

所得税及び特殊関係株主等である連結法人に係

る各連結事業年度の連結所得に対する法人税に

ついても同様の制度が設けられています(旧措

法40の 7 ①③、68の93の 2 ①③)が、これらの

制度の基本的な仕組みは特殊関係株主等である

内国法人に係る特定外国法人の課税対象金額の

益金算入制度と同様ですので、説明は省略します。

2  特殊関係株主等である内国法人に係る特定外国法人の部分課税対象金額の益金算入制度(資産性所得の合算課税制度)

 特定外国法人が、上記 1の適用除外基準の全てを満たすことにより上記 1の会社単位の合算課税制度が適用されない適用対象金額を有する場合において、租税特別措置法第66条の 9の 2第 4項各号に規定する特定所得の金額を有するときは、その特定所得の金額の合計額(以下「部分適用対象金額」といいます。)のうち、特殊関係株主等である内国法人のその有する株式等に対応する部分として計算した金額(その金額が課税対象金額に相当する金額を超えるときは、その相当する金額。以下「部分課税対象金額」といいます。)をその特殊関係株主等である内国法人の収益の額とみなして、その所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(旧措法66の 9 の 2 ④)。 ただし、特定外国法人の部分適用対象金額に係る収入金額が1,000万円以下である場合又は決算に基づく所得の金額のうちに部分適用対象金額の占める割合が 5%以下である場合には、資産性所得の合算課税は行われません(旧措法66の 9 の 2⑤)。(注) 特殊関係株主等の種類に応じて、特殊関係株

主等である居住者に係る各年分の所得に対する

所得税及び特殊関係株主等である連結法人に係

る各連結事業年度の連結所得に対する法人税に

─�733�─

――国際課税関係の改正――

ついても同様の制度が設けられています(旧措

法40の 7 ④⑤、68の93の 2 ④⑤)が、これらの

制度の基本的な仕組みは特殊関係株主等である

内国法人に係る特定外国法人の部分課税対象金

額の益金算入制度と同様ですので、説明は省略

します。

3  適用除外基準の適用に関する手続要件

 適用除外基準に係る適用手続(統括会社に係る部分を除きます。)(旧措法66の 9 の 2 ⑦)は、外国子会社合算税制における適用除外基準に係る適用手続(旧措法66の 6 ⑦)と同様ですので、上記Ⅰ㈠ 1をご参照ください。

4  コーポレート・インバージョン対策合算税制に係る外国税額控除

 特殊関係株主等である内国法人が本税制の適用を受ける場合において、その内国法人に係る特定外国法人の所得に対して課される外国法人税についての外国税額控除の措置(旧措法66の 9 の 3 )は、外国子会社合算税制における内国法人に係る特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税についての外国税額控除の措置(旧措法66の7 )と同様の仕組みとなっていますので、上記Ⅰ㈠ 3をご参照ください。

5  特定課税対象金額等を有する特殊関係株主等である内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入

 特定課税対象金額を有する特殊関係株主等である内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入措置及び間接特定課税対象金額を有する特殊関係株主等である内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入措置(旧措法66の 9 の 4 、旧措令39の20の 8 )は、外国子会社合算税制における特定課税対象金額を有する内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入措置及び間接特定課税対象金額を有する内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入措置(旧措法66の 8 、旧措令39の19)と同様の仕組みとなっていますので、上記Ⅰ㈠ 4をご

参照ください。

㈡ 改正の内容

 コーポレート・インバージョン対策合算税制は、内国法人が、その経済実態や実質的な株主構成を変えずに、外国法人の子会社となるような事象をコーポレート・インバージョンとして捉え、このような外国法人の所得を合算課税の対象にする制度です。このコーポレート・インバージョン対策合算税制について、外国子会社合算税制と同様の改正が行われました。ただし、このコーポレート・インバージョン対策合算税制が、株式等の保有関係を通じて一定の形となった場合に、租税回避リスクが高いとして、合算課税の対象としている制度であることを踏まえ、外国関係法人の範囲や合算割合の計算において実質支配基準は導入されていないなど、いくつかの点で外国子会社合算税制とは異なっています。以下、今回の改正のうち外国子会社合算税制と異なる点を中心に説明することとします。

1  適用対象金額に係る合算課税(外国関係法人単位の合算課税)

⑴ 改正の概要 改正前は、特殊関係株主等と特殊関係内国法人との間に発行済株式等の保有を通じて介在する外国法人(以下「外国関係法人」といいます。)のうち、租税負担割合が著しく低いものを特定外国法人と定義し、その適用対象金額のうち特殊関係株主等である内国法人のその有する株式等に対応する部分が内国法人における益金算入額とされていました。 今回の改正では、外国関係法人のうち租税負担割合が著しく低いものを対象とするのではなく、外国関係法人のうちペーパー・カンパニー等に該当するもの(特定外国関係法人)や経済活動基準を満たさないもの(対象外国関係法人)が対象とされることになりました。

─�734�─

――国際課税関係の改正――

⑵ 特定外国関係法人 特定外国関係法人とは、外国関係法人のうち主たる事業を行うに必要な事務所等の固定施設を有しておらず、かつ、事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないもの等とされています(措法66の 9 の 2 ②三イ~ハ)。 なお、外国子会社合算税制においては、一定の保険子会社についてこれらの要件を満たしているものとする措置が設けられていますが、コーポレート・インバージョン対策合算税制においては同様の措置は設けられていません。

⑶ 対象外国関係法人 対象外国関係法人とは、外国関係法人のうち「事業基準」、「実体基準」、「管理支配基準」及び「非関連者基準 /所在地国基準」のいずれかを満たさないものとされています(措法66の 9の 2 ②四)。 なお、これらの基準について、今回の改正で外国子会社合算税制において設けられた次の措置については、コーポレート・インバージョン対策合算税制においては措置されていません。① 事業基準 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち一定の要件を満たすものについて、事業基準を満たすこととする措置② 実体基準・管理支配基準 一定の保険子会社についてこれらの要件を満たしているものとする措置③ 非関連者基準・ 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社を非関連者基準の対象とする措置・ 一定の保険子会社が一定の関連者と行う取引を非関連者取引とする措置

④ 所在地国基準 本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与していると認められる外国関係会社について所在地国基準を満たすものとする措置

⑷ 適用対象金額 適用対象金額は、外国関係法人(特定外国関係法人又は対象外国関係法人に限ります。⑷において同じです。)の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき、外国子会社合算税制における適用対象金額の計算の例により計算した金額とされています(措令39の20の 3 ⑨)。 なお、外国関係法人が持株割合25%以上等の要件を満たす法人から受ける配当等(いわゆる損金算入配当を除きます。)は、その外国関係法人に係る適用対象金額に算入しないこととされますが、コーポレート・インバージョン対策合算税制においては、化石燃料の採取を行う一定の要件を満たす外国法人から受ける配当等について、この持株割合要件(25%以上)を10%以上に緩和する措置は設けられていません(措令39の20の 3 ⑨)。

⑸ 課税対象金額 外国子会社合算税制においては、内国法人が直接又は間接に有する外国関係会社(特定外国関係会社又は対象外国関係会社に限ります。⑸において同じです。)の株式等の数又は金額につきその請求権の内容に加えてその内国法人とその外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算することとされていますが、コーポレート・インバージョン対策合算税制においては改正前と同様に、実質支配関係の状況を勘案せず、外国関係法人の株式等の請求権の内容を勘案して計算することとされています(措法66の 9 の 2 ①)。

2  部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税)

 特定所得の金額、部分適用対象金額及び部分課税対象金額の計算は、外国子会社合算税制におけるこれらの金額の計算と同様とされているため、上記Ⅰ㈢ 5の改正と同様の改正を行うこととされました(措法66の 9 の 2 ⑥⑦、措令39の20の 4 )。ただし、外国子会社合算税制において設けられて

─�735�─

――国際課税関係の改正――

いる次の措置については、コーポレート・インバージョン対策合算税制においては措置されていません。

⑴ 特定所得の金額 剰余金の配当等の額について、外国子会社合算税制においては、部分対象外国関係会社が有する他の外国法人のうち、化石燃料を採取する事業を主たる事業とする外国法人で、その外国法人の発行済株式等の10%以上を有する等の要件を満たす場合には、部分対象外国関係会社がその外国法人から受ける剰余金の配当等の額は部分合算対象から除外される措置が設けられていますが、コーポレート・インバージョン対策合算税制においては設けられていません(措法66の 9 の 2 ⑥一)。

⑵ 部分課税対象金額 外国子会社合算税制においては、内国法人が直接及び間接に有するその部分対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容に加えてその内国法人とその部分対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算することとされていますが、コーポレート・インバージョン対策合算税制においては改正前と同様に、実質支配関係の状況を勘案せず、部分対象外国関係法人の株式等の請求権の内容を勘案して計算することとされています(措法

66の 9 の 2 ⑥)。

3  金融関係法人部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税)

 特定所得の金額、金融関係法人部分適用対象金額及び金融関係法人部分課税対象金額の計算は、外国子会社合算税制におけるこれらの金額の計算と同様とされ、上記Ⅰ㈢ 6の改正と同様の制度が導入されました(措法66の 9 の 2 ⑧⑨、措令39の20の 5 )。 なお、金融関係法人部分課税対象金額の計算上は、上記 2 ⑵と同様に実質支配関係の状況を勘案せずに計算することとされています(措法66の 9の 2 ⑧)。

㈢ 適用関係

 上記㈡の改正は、外国関係法人の平成30年 4 月1 日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融関係法人部分適用対象金額及びその金融関係法人部分適用対象金額に係る金融関係法人部分課税対象金額について適用し、特定外国法人の同日前に開始した事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額並びに部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額については従前どおりとされています(改正法附則70⑤)。

二 非永住者の課税所得の範囲の改正

1  改正前の制度の概要

⑴ 非永住者の課税所得の範囲 我が国の所得税は、個人の納税者を居住者と非居住者に区分し、それぞれの課税所得の範囲を、居住者は無制限納税義務者として全ての所得とし(所法 7 ①一)、非居住者は制限納税義務者として国内源泉所得のみとしています(所法 7①三)。

 また、居住者であっても我が国における滞在期間が短いなどの者については、「非永住者」として区分され、居住者に対する全世界所得課税の原則の例外として、課税所得の範囲が、国外源泉所得以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたものに限定されています(旧所法 7 ①二)。したがって、非永住者の国外源泉所得については、原則として外国に課税を譲歩しつつ、そのうち

─�736�─

――国際課税関係の改正――

国内において支払われたもの及び国外から送金されたものについては、さらにその例外として我が国の課税の範囲とすることとされています。(注) 「国外源泉所得」とは、居住者の外国税額控

除に係る控除限度額の計算における「国外源

泉所得」と同義とされています(旧所法 7 ①

二)。

⑵ 非永住者であった期間を有する居住者に対する居住期間等を記載した書類の確定申告書への添付義務 その年において非永住者であった期間を有する居住者がその年の確定申告書を提出する場合には、次に掲げる事項を記載した書類を確定申告書に添付しなければならないこととされています(旧所法120⑤、旧所規47の 4 ①)。① 確定申告書を提出する者の氏名、国籍及び住所又は居所② その年の前年以前10年内の各年において、国内に住所又は居所を有することとなった日及び有しないこととなった日並びに国内に住所又は居所を有していた期間③ その年において非永住者、非永住者以外の居住者及び非居住者であったそれぞれの期間④ その年において非永住者であった期間内に生じた次に掲げる金額イ 国外源泉所得以外の所得の金額ロ 国外源泉所得の金額並びにその金額のうち、国内において支払われた金額及び国外から送金された金額

⑤ その他参考となるべき事項(注) なお、上記の書類は、還付を受けるための

申告書、確定損失申告書及び準確定申告書を

提出する場合にも添付しなければならないこ

ととされています(旧所規47の 4 ②)。

2  改正の内容

⑴ 非永住者の課税所得の範囲の改正① 改正の概要 上記 1のとおり、非永住者の株式等の譲渡

により生ずる所得は、国外源泉所得(所法95④三)に該当するものを除き、基本的に我が国の課税の範囲とされていました。(注) 国外源泉所得に該当する株式等の譲渡に

より生ずる所得は、具体的には、次に掲げ

る株式等の譲渡により生ずる所得をいいま

す(所法95④三、所令225の 4 ①四~六②)。

したがって、次に掲げる株式等以外の株式

等の譲渡により生ずる所得は、基本的には、

国外源泉所得以外の所得に該当し、非永住

者の課税所得を構成することとされていま

した。

イ 外国法人の発行する株式又は外国法人

の出資者の持分で、その外国法人の発行

済株式又は出資の総数又は総額の一定割

合以上に相当する数又は金額の株式又は

出資を所有する場合にその外国法人の本

店又は主たる事務所の所在する国又は地

域においてその譲渡による所得に対して

外国所得税が課されるもの

ロ 不動産関連法人の株式(出資及び投資

口を含みます。ハにおいて同じです。)

ハ 国外にあるゴルフ場の所有又は経営に

係る法人の株式を所有することがそのゴ

ルフ場を一般の利用者に比して有利な条

件で継続的に利用する権利を有する者と

なるための要件とされている場合におけ

るその株式

 平成29年度税制改正においては、例えば、非永住者が我が国に入国する前に取得した株式等を外国の金融商品市場等で譲渡したような、国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得については、国内において支払われ、又は国外から送金されたものを除き、非永住者の課税所得の範囲から除外することとされました(所法 7①二)。

② 非永住者の課税所得の範囲から除外される「国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得」 非永住者の課税所得の範囲から除外される

─�737�─

――国際課税関係の改正――

「国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得」とは、有価証券でその取得の日がその譲渡の日の10年前の日の翌日からその譲渡の日までの期間(その者が非永住者であった期間に限ります。)内にないもの(以下「特定有価証券」といいます。)のうち、次に掲げるものの譲渡により生ずる所得をいいます(所令17①)。イ 外国金融商品市場において譲渡がされるものロ 外国金融商品取引業者(国外において金融商品取引業者(第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業を行う者に限ります。)と同種類の業務を行う者をいいます。②において同じです。)への売委託(その外国金融商品取引業者がその業務として受けるものに限ります。)により譲渡が行われるものハ 外国金融商品取引業者又は国外において登録金融機関若しくは投資信託委託会社と同種類の業務を行う者の営業所、事務所その他これらに類するもの(国外にあるものに限ります。)に開設された口座に係る国外における振替口座簿に類するものに記載若しくは記録がされ、又はその口座に保管の委託がされているもの

(注 1) 「有価証券」とは、次に掲げるものをい

います(所法 2①十七、所令 4)。

イ 国債証券、地方債証券

ロ 特別の法律により法人の発行する債

券(金融債、政府保証債等)(下記ハ及

びヌに該当するものを除きます。)

ハ 資産の流動化に関する法律に規定す

る特定社債券

ニ 社債券(相互会社の社債券を含みま

す。)

ホ 特別の法律により設立された法人の

発行する出資証券(下記ヘ、ト及びヌ

に該当するものを除きます。)

ヘ 協同組織金融機関の優先出資に関す

る法律に規定する優先出資証券

ト 資産の流動化に関する法律に規定す

る優先出資証券又は新優先出資引受権

を表示する証券

チ 株券又は新株予約権証券

リ 投資信託及び投資法人に関する法律

に規定する投資信託又は外国投資信託

の受益証券

ヌ 投資信託及び投資法人に関する法律

に規定する投資証券、新投資口予約権

証券若しくは投資法人債券又は外国投

資証券

ル 貸付信託の受益証券

ヲ 資産の流動化に関する法律に規定す

る特定目的信託の受益証券

ワ 信託法に規定する受益証券発行信託

の受益証券

カ 法人が事業に必要な資金を調達する

ために発行する約束手形のうち一定の

もの(コマーシャル・ペーパー)

ヨ 抵当証券法に規定する抵当証券

タ 外国又は外国の者の発行する上記イ

からチまで及びルからヨまでの性質を

有する証券・証書

レ 外国の者の発行する証券・証書で銀

行業を営む者その他の金銭の貸付けを

業として行う者の貸付債権を信託する

信託の受益権又はこれに類する権利を

表示するもののうち、一定のもの(外

国信託受益証券・証書)

ソ 金融商品市場、外国金融商品市場、

店頭デリバティブ取引におけるオプシ

ョンを表示する証券・証書(カバード・

ワラント)

ツ 預託証券・証書

ネ 流通性その他の事情を勘案し、公益

又は投資者の保護を確保することが必

要と認められる一定の証券・証書(海

外CD、学校債等)

ナ 上記イからカまで及びタに掲げる有

─�738�─

――国際課税関係の改正――

価証券に表示されるべき権利で、券面

が発行されていないもの

ラ 合名会社、合資会社又は合同会社の

社員の持分、協同組合等の組合員又は

会員の持分その他法人の出資者の持分

ム 株主又は投資主となる権利、優先出

資者となる権利、特定社員又は優先出

資社員となる権利その他法人の出資者

となる権利(注 2) 「譲渡」の範囲には、有価証券の一般的

な譲渡のほかに、租税特別措置法第37条

の10第 2 項第 1 号から第 5 号までに掲げ

る株式等につき法人の合併、分割型分割、

株式分配、資本の払戻し、残余財産の分

配、出資の消却、法人からの退社・脱退

等の事由が生じたことによりこれらの株

式等の譲渡の対価とみなされる金額が生

ずる場合(措法37の10③④、37の11④)

におけるこれらの事由によるこれらの株

式等(投資信託の受益権にあっては、公

社債投資信託以外の証券投資信託の受益

権及び証券投資信託以外の投資信託で公

社債等運用投資信託に該当しないものの

受益権に限ります。)のその譲渡の対価の

額とみなされる金額に対応する部分の権

利の移転又は消滅も含まれます(所令17

①括弧書き)。(注 3) 「外国金融商品市場」、「金融商品取引業

者」、「第一種金融商品取引業」、「第二種

金融商品取引業」、「登録金融機関」、「投

資信託委託会社」及び「振替口座簿」と

は、それぞれ金融商品取引法第 2 条第 8

項第 3 号ロに規定する外国金融商品市場、

同条第 9項に規定する金融商品取引業者、

同法第28条第 1 項に規定する第一種金融

商品取引業、同条第 2 項に規定する第二

種金融商品取引業、同法第 2 条第11項に

規定する登録金融機関、投資信託及び投

資法人に関する法律第 2 条第11項に規定

する投資信託委託会社及び社債、株式等

の振替に関する法律に規定する振替口座

簿をいいます。(注 4) 「外国金融商品取引業者」には、国外に

おいて金融商品取引業者と同種類の業務

を行う外国の証券会社等(外国法人)の

ほか、外国の支店において金融商品取引

業者と同種類の業務を行う日本の証券会

社等(内国法人)も含まれます。なお、

「国外において登録金融機関又は投資信託

委託会社と同種類の業務を行う者」につ

いても同様です。

 また、「売委託」は、外国金融商品取引

業者が国外において行う業務として受け

るものに限定されています。したがって、

外国金融商品取引業者に該当する外国の

証券会社等の日本支店や外国金融商品取

引業者に該当する日本の証券会社等の国

内の営業所等への売委託により行われた

譲渡により生ずる所得については、「売委

託」がこれらの外国金融商品取引業者が

国内において行う業務として受けたもの

であることから、「国外にある有価証券の

譲渡により生ずる一定の所得」には該当

しないこととなり、基本的に我が国の課

税の範囲とされます。(注 5) 改正後の非永住者制度のスタート時の

経過措置として、平成29年 4 月 1 日以後

に、有価証券でその取得の日がその譲渡

の日の10年前の日の翌日からその譲渡の

日までの期間(その者が非永住者であつ

た期間に限ります。)内にあるものの譲渡

を行う場合において、その取得の日が平

成29年 4 月 1 日前であるときは、その有

価証券は、特定有価証券に該当するもの

とみなすこととされています(改正所令

附則 3)。したがって、この経過措置によ

り、平成29年 4 月 1 日前に取得した有価

証券のうち、上記イからハまでに掲げる

ものの譲渡により生ずる所得については、

国内で支払われたもの及び国外から送金

─�739�─

――国際課税関係の改正――

されたものを除き、我が国の所得税の課 税対象外となります。

③ 同一銘柄の有価証券の取得をした場合の判定方法 非永住者が譲渡をした有価証券(③において「譲渡有価証券」といいます。)がその譲渡の時において特定有価証券に該当するかどうかの判定は、その譲渡の前に取得をしたその譲渡有価証券と同一銘柄の有価証券のうち先に取得をしたものから順次譲渡をしたものとした場合(いわゆる先入先出法により判定した場合)にその譲渡をしたものとされるその同一銘柄の有価証券の取得の日により行うものとされています(所令17②)。④ 所有する有価証券を発行した法人の株式交換、株式移転、合併、分割等があった場合の取扱い 個人の有する有価証券(④において「従前の有価証券」といいます。)について次に掲げる事由が生じた場合には、その事由により取得した有価証券(④において「取得有価証券」といいます。)はその者が引き続き所有していたものと、その従前の有価証券のうちその取得有価証券の取得の基因となった部分

はその取得有価証券と同一銘柄の有価証券とそれぞれみなすこととされています(所令17③)。イ 株式(出資を含みます。)を発行した法人の行った株式交換又は株式移転(所得税法の規定により譲渡所得が課税繰延べとなるものに限ります。)ロ 取得請求権付株式、取得条項付株式、全部取得条項付種類株式、新株予約権付社債、取得条項付新株予約権又は取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債の請求権の行使、取得事由の発生、取得決議又は行使(所得税法の規定により譲渡所得が課税繰延べとなるものに限ります。)ハ 株式(出資及び投資口を含みます。④において同じです。)又は投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益権の分割又は併合ニ 株式を発行した法人の株式無償割当て(その株式無償割当てによりその株式と同一の種類の株式が割り当てられる場合のその株式無償割当てに限ります。)

譲渡日前10年以前に取得した有価証券

譲渡日以前10年内に取得した有価証券

右記以外 非永住者期間内に取得

①�外国金融商品市場において譲渡されるもの②�外国金融商品取引業者への売委託により譲渡されるもの③�外国金融商品取引業者等の国外営業所等に開設された口座に振替記載・保管の委託がされているもの

【改正前】課税

【改正後】課税対象外(注 1)

【改正前】課税

【改正後】課税対象外(注 1)

課税(注 2)

上記以外 課税 課税 課税

(注1) 国内において支払われ、又は国外から送金されたものは課税。(注2) 平成29年4月1日前に取得した有価証券の譲渡所得については、経過措置により課税対象外。ただし、

国内において支払われ、又は国外から送金されたものは課税。

非永住者の課税所得の範囲から除外される「国外にある有価証券の譲渡所得」(イメージ)

─�740�─

――国際課税関係の改正――

ホ 株式を発行した法人の合併(租税特別措置法の規定により譲渡所得課税の対象とならないものに限ります。)ヘ 投資信託又は特定受益証券発行信託(ヘにおいて「投資信託等」といいます。)の受益権に係る投資信託等の信託の併合(租税特別措置法の規定により譲渡所得課税の対象とならないものに限ります。)ト 株式を発行した法人の分割型分割(租税特別措置法の規定により譲渡所得課税の対象とならないものに限ります。)チ 特定受益証券発行信託の受益権に係る特定受益証券発行信託の信託の分割(租税特別措置法の規定により譲渡所得課税の対象とならないものに限ります。)リ 株式を発行した法人の株式分配(租税特別措置法の規定により譲渡所得課税の対象とならないものに限ります。)ヌ 株式を発行した法人の組織変更(租税特別措置法の規定により譲渡所得課税の対象とならないものに限ります。)ル 新株予約権(新投資口予約権を含みます。ヲにおいて同じです。)又は新株予約権付社債を発行した法人を被合併法人、分割法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人とする合併、分割、株式交換又は株式移転ヲ 新株予約権の行使

⑵ 非永住者であった期間を有する居住者の確定申告書に添付すべき居住期間等を記載した書類の記載事項 上記⑴の非永住者の課税所得の範囲の改正に伴い、非永住者であった期間を有する居住者の確定申告書に添付すべき居住期間等を記載した書類の記載事項とされる「国外源泉所得の金額」には、上記⑴②の非永住者の課税所得の範囲から除外される「国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得の金額」を含めることとされました。具体的には、上記 1 ⑵④に掲げる金額に代えて、その年において非永住者であった期間内に生じた次に掲げる金額を記載することとされました(所規47の 4 ①四)。① 国外源泉所得(国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得を含みます。②において同じです。)以外の所得の金額② 国外源泉所得の金額並びにその金額のうち、国内において支払われた金額及び国外から送金された金額

3  適用関係

⑴ 上記 2 ⑴の改正は、平成29年 4 月 1 日以後に行う有価証券の譲渡により生ずる所得について適用し、同日前に行った有価証券の譲渡により生ずる所得については、従前どおりとされています(改正法附則 2)。⑵ 上記 2 ⑵の改正は、平成29年 4 月 1 日に施行されます(改正所規附則 1)。

三� 外国金融機関等の債券現先取引等に係る利子等の課税の�特例の改正

1  改正前の制度の概要

⑴ 制度の概要 外国金融機関等が、一定の債券に係る債券現先取引又は一定の有価証券に係る証券貸借取引につき、特定金融機関等から支払を受ける利子(以下⑸までにおいて「特定利子」といいま

す。)及び貸借料等については、一定の要件の下、それぞれ所得税及び法人税を課さないこととされています(旧措法42の 2 ①、67の17⑦)。 ただし、恒久的施設を有する外国金融機関等が支払を受ける特定利子及び貸借料等で、恒久的施設帰属所得(法法141一イ)に該当するものについては、非課税とされません(旧措法42

─�741�─

――国際課税関係の改正――

の 2③、67の17⑩)。(注) 「特定金融機関等」とは、次に掲げる法人を

いいます(旧措法42の 2 ④二)。

① 租税特別措置法第 8 条第 1 項に規定する

金融機関及び同条第 2 項に規定する金融商

品取引業者等で金融機関等が行う特定金融

取引の一括清算に関する法律第 2 条第 2 項

に規定する金融機関等に該当する法人(国

内に営業所等を有するものに限ります。)

② 日本銀行

⑵ 非課税の対象となる者 非課税の対象となる者は、外国金融機関等とされており、具体的には、次に掲げる外国法人とされています(旧措法42の 2 ④一)。① 外国の法令に準拠してその国において銀行業、金融商品取引業又は保険業を営む外国法人② 外国の中央銀行③ 国際間の取極に基づき設立された国際機関

⑶ 非課税の対象となる取引① 非課税の対象となる債券現先取引 非課税の対象となる債券現先取引は、次に掲げる要件(特定金融機関等が日本銀行である場合には、イ及びハの要件)を満たすものに限られています(旧措法42の 2 ①、旧措令27の 2 ①)。イ 債券現先取引において債券の譲渡の日又は購入の日からその債券の買戻しの日又は売戻しの日までの期間が 6月を超えないこと。ロ 債券現先取引に関し、金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律第 3条に規定する一括清算の約定をしていること。ハ 債券現先取引に係る債券のその債券現先取引の約定をした日における価額がその債券現先取引につき約定をした価格以上であること。

② 非課税の対象となる証券貸借取引 非課税の対象となる証券貸借取引は、次に掲げる要件(特定金融機関等が日本銀行である場合には、イ及びハの要件)を満たすものに限られています(旧措法42の 2 ①、旧措令27の 2 ②)。イ 証券貸借取引において有価証券の貸付けの日又は借入れの日からその有価証券の返還を受けた日又は返還をした日までの期間が 6月を超えないこと。ロ 証券貸借取引に関し、金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律第 3条に規定する一括清算の約定をしていること。ハ 証券貸借取引における貸付け又は借入れに係る有価証券のその取引を約定した日における価額のうちにその取引において担保とされる現金の額及び有価証券の同日における価額の合計額の占める割合が50%から150%までの範囲内にあること。

⑷ 適用除外とされる外国金融機関等① 適用除外 本特例は、次に掲げる外国法人のいずれかに該当する外国金融機関等(上記⑵①に掲げる外国法人に限ります。⑷において同じです。)が支払を受ける特定利子及び貸借料等については、適用しないこととされています(旧措法42の 2 ②、67の17⑧、旧措令27の 2⑥)。イ 過少資本税制(措法66の 5 )上、特定利子又は貸借料等を支払う特定金融機関等の国外支配株主等に該当する外国法人。ただし、我が国が締結した租税条約その他の国際約束(租税の賦課及び徴収に関する情報を相互に提供することを定める規定を有するものに限ります。)の我が国以外の締約国又は締約者その他外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律第41条第 1項の規定により外

─�742�─

――国際課税関係の改正――

国の機関に対してその情報の提供を行うことができることとされている場合におけるその外国の法人(以下「条約相手国等の法人」といいます。)はこれに該当しないものとされています。ロ 外国子会社合算税制(旧措法40の 4 、66の 6 )上、特定外国子会社等に該当する外国法人(上記イに掲げる外国法人を除きます。)ハ 外国法人の本店所在地国において特定利子又は貸借料等について外国法人税が課されないこととされている場合におけるその外国法人(上記イ及びロに掲げる外国法人を除きます。)。なお、その特定利子又は貸借料等が本店所在地国以外の国又は地域に所在する営業所等において行う事業に帰せられる場合であって、その国又は地域においてその特定利子又は貸借料等について外国法人税が課される場合は、これに該当しないこととされています。

② 適用除外の判定時期 外国金融機関等が上記①イからハまでに掲げる外国法人に該当するかどうかの判定は、その外国金融機関等が非課税適用申告書の提出をしようとする日及びその非課税適用申告書の提出後特定利子の支払を受けるべき日の前日を含む事業年度の直前の事業年度終了の時の現況により、又は貸借料等の支払を受けるべき日の前日を含む事業年度の直前の事業年度終了の時の現況により、それぞれ行うものとされています(旧措令27の 2 ⑦、39の33の 3 ⑥)。

⑸ 非課税適用手続等① 非課税適用申告書の提出等イ 非課税適用申告書の提出 所得税の非課税の適用を受けようとする外国金融機関等は、非課税適用申告書を、最初に特定利子の支払を受けるべき日の前日までに、その特定利子の支払をする者を

経由してその支払をする者のその特定利子に係る所得税法第17条の規定による納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(旧措法42の 2 ⑤、旧措令27の 2 ⑧、旧措規19の15①②)。(注) 所得税の非課税の適用を受けていた外

国金融機関等が適用除外とされる外国法

人に該当することとなったことにより所

得税の非課税の適用を受けることができ

なくなった日後、再び所得税の非課税の

適用を受けようとする場合には、非課税

適用申告書を、所得税の非課税の適用を

受けようとする特定利子の支払を受ける

べき日の前日までに上記の税務署長に提

出しなければならないこととされていま

す(旧措令27の 2 ⑩)。

ロ 本人確認手続 非課税適用申告書の提出をする外国金融機関等は、その提出をする際、その経由する特定金融機関等の営業所等の長にその提出をする外国金融機関等の本人確認書類を提示しなければならないものとされ、その特定金融機関等の営業所等の長は、その非課税適用申告書に記載されている名称及び本店又は主たる事務所の所在地をその本人確認書類により確認しなければならないものとされています(旧措法42の 2 ⑦、旧措令27の 2 ⑪)。(注) 非課税適用申告書の提出をする外国金

融機関等は、法人番号を有する場合には、

その提出をする際、その経由する特定金

融機関等の事務所等の長にその提出をす

る外国金融機関等の番号確認書類を提示

しなければならないものとされ、その特

定金融機関等の事務所等の長は、その非

課税適用申告書に記載されている名称、

本店又は主たる事務所の所在地及び法人

番号をその番号確認書類により確認しな

ければならないものとされています(旧

措令27の 2 ⑫、旧措規19の15⑧⑨)。なお、

─�743�─

――国際課税関係の改正――

非課税適用申告書を受理した特定金融機

関等の事務所等の長は、その非課税適用

申告書に、その特定金融機関等の事務所

等に係る特定金融機関等の法人番号を付

記するものとされています(旧措規19の

15⑩)。

② 異動申告書の提出等イ 異動申告書の提出 非課税適用申告書を提出した外国金融機関等が、その非課税適用申告書を提出した後、その名称又は本店若しくは主たる事務所の所在地等の変更をした場合には、その外国金融機関等は、その変更をした日以後最初にその非課税適用申告書の提出をする際に経由した特定金融機関等から特定利子の支払を受けるべき日の前日までに、異動申告書をその特定金融機関等を経由して上記①イの税務署長に提出しなければならないこととされています(旧措法42の 2 ⑧前段、旧措規19の15⑥⑦)。この場合において、その異動申告書を提出しなかったときは、その該当することとなった日以後にその特定金融機関等から支払を受ける特定利子については、所得税の非課税の適用はありません(旧措法42の 2 ⑧後段)。ロ 本人確認手続 異動申告書の提出をする外国金融機関等は、その提出をする際、その経由する特定金融機関等の営業所等の長にその提出をする外国金融機関等の本人確認書類を提示しなければならないものとされ、その特定金融機関等の営業所等の長は、その異動申告書に記載されている変更後の名称及び本店又は主たる事務所の所在地をその本人確認書類により確認しなければならないものとされています(旧措法42の 2 ⑨)。(注) 異動申告書の提出をする場合について

も、上記①ロ(注)の非課税適用申告書

の提出をする場合の番号確認手続と同様

の番号確認手続が定められています(旧

措令27の 2 ⑫、旧措規19の15⑧~⑩)。

③ 非課税適用申告書等の写しの作成・保存等 特定金融機関等は、その事務所等において非課税適用申告書又は異動申告書を受理したときは、その受理した日の属する月の翌月末日までに、これらの申告書を上記①イの税務署長に提出しなければならないものとされ、かつ、これらの申告書の写し(これに準ずるものを含みます。)を作成し、これを、これらの申告書の提出をする外国金融機関等の名称ごとに整理し、その外国金融機関等に対し最後に特定利子の支払をした日を含む事業年度終了の日の翌日から 2月を経過した日から5年間保存しなければならないものとされています(旧措令27の 2 ⑬、旧措規19の15④⑤)。

⑹ 特定金融機関等による帳簿の作成・保存 特定金融機関等は、非課税適用申告書の提出をした外国金融機関等との間の債券現先取引又は証券貸借取引につき帳簿を備え、その提出をした外国金融機関等との間で債券現先取引若しくは証券貸借取引に係る契約が締結されたとき又はその提出をした外国金融機関等から異動申告書の提出があったときは、その都度、各人別に、所定の事項を帳簿に記載し、又は記録し、かつ、その帳簿を、その帳簿の閉鎖の日を含む事業年度終了の日の翌日から 2月を経過した日から 5年間保存しなければならないこととされています(旧措法42の 2 ⑩、旧措令27の 2 ⑮、旧措規19の15⑪⑫)。

2  改正の内容

⑴ 改正の背景及び趣旨 上記 1 ⑴のとおり、外国の金融機関が支払を受ける債券現先取引等の利子及び貸借料等については、我が国国債市場等の流動性の確保や国内の金融機関の短期資金の調達を円滑にする等の観点から、一定の要件の下、それぞれ所得税及び法人税が非課税とされているところです。 しかしながら、外国の金融機関が国内の金融

─�744�─

――国際課税関係の改正――

機関との間で行う債券現先取引については、バーゼルⅢにより、2018年 1 月以降、自己資本比率規制の強化が予定される中、資産規模を管理するため、外国の金融機関が債券現先取引を縮小する傾向にあり、また、イギリスにおいては、2014年の日本国債の格付の引下げにより、債券現先取引の残高が銀行税の課税対象となったことから、イギリスの金融機関が取引を縮小する傾向にあるといった環境の変化が生じています。 平成29年度税制改正においては、こうした事情を勘案し、引き続き、我が国国債市場の流動性の確保や国内の金融機関の短期資金の調達の円滑化を更に徹底する観点から、外国の金融機関以外の外国法人が行う債券現先取引の利子等について、一定の要件の下、非課税とする等の改正が行われました。

⑵ 特定外国法人が支払を受ける債券現先取引に係る利子等の非課税措置の創設① 改正の概要 本特例の対象となる所得の範囲に、特定外国法人が、平成29年 4 月 1 日から平成31年 3月31日までの間に開始する振替国債を用いて行う債券現先取引で一定の要件を満たすものにつき、特定金融機関等から支払を受ける利子及び差益を加えることとされ、一定の要件の下、それぞれ所得税及び法人税を課さないこととされました(措法42の 2 ③、67の17⑨)。ただし、特定外国法人が適用除外とされる特定金融機関等の国外関連者に該当する場合には、非課税とされません(措法42の 2④、67の17⑩)。また、適用除外とされない場合であっても、恒久的施設を有する特定外国法人が支払を受ける利子及び差益で、恒久的施設帰属所得に該当するものについては、非課税とされません(措法42の 2 ⑤、67の17⑫)。(注) なお、今般の改正において、特定金融機

関等の範囲の拡充が行われています。本改

正の詳細については、下記⑶②をご参照く

ださい。

② 非課税の対象となる者 非課税の対象となる者は、外国金融機関等以外の外国法人(条約相手国等の法人に限ります。以下「特定外国法人」といいます。)とされています(措法42の 2 ③)。(注) 「条約相手国等の法人」には、人格のない

社団等が含まれます(措法42の 2 ②一)。

③ 非課税の対象となる所得イ 所得税の非課税の対象となる利子 所得税の非課税の対象となる利子は、振替国債に係る特定債券現先取引につき、特定金融機関等から支払を受ける所得税法第161条第 1 項第10号に掲げる利子とされています(措法42の 2 ③)。ただし、恒久的施設を有する特定外国法人が支払を受ける利子で、恒久的施設帰属所得に該当するものについては、非課税とされません(措法42の 2 ⑤)。イ 「振替国債に係る特定債券現先取引」の意義 「振替国債に係る特定債券現先取引」とは、振替国債に係る債券現先取引(振替国債を用いて行う債券現先取引で一定の要件を満たすものをいいます。以下同じです。)で特定外国法人と特定金融機関等との間で行われるものをいいます。(注) 振替国債に係る債券現先取引が特定

外国法人と国内金融商品取引清算機関

との間で行われるものである場合には、

その振替国債に係る債券現先取引が、

その国内金融商品取引清算機関が金融

商品取引法第 2 条第28項に規定する金

融商品債務引受業(以下「金融商品債

務引受業」といいます。)としてその特

定外国法人と特定金融機関等(国内金

融商品取引清算機関を除きます。(注)

において同じです。)との間で行われた

振替国債に係る債券現先取引(原取

引)に基づく債務を引受け、更改その

─�745�─

――国際課税関係の改正――

他の方法(以下「引受け等」といいま

す。)により負担したことに係るもので

ある場合に限られます(措法42の 2 ③

括弧書き)。すなわち、国内金融商品取

引清算機関がその業務として債務の引

受け等をして取引当事者となる場合の

非課税の対象となる債券現先取引は、

その引受け等により債務を負担した原

取引も特定外国法人と特定金融機関等

との間で行われた振替国債に係る債券

現先取引に該当するものに限られ、債

券現先取引の取引当事者による国内金

融商品取引清算機関の利用の有無によ

って非課税の対象となる債券現先取引

の範囲が左右されないこととされてい

ます。

 なお、「国内金融商品取引清算機関」

の意義については、下記⑶②ロをご参

照ください。

ロ 非課税の対象となる債券現先取引の要件 今般の改正は、これまで金融機関間におけるクロスボーダーの債券現先取引に限定して非課税措置を講じていたものを、金融機関以外の一般の外国法人が行う債券現先取引にまで非課税の対象を拡大するものであることを踏まえ、本非課税措置が租税回避の手段として濫用されることを防止する等の観点から、非課税の対象となる債券現先取引は、次に掲げる全ての要件を満たすものに限定することとされています(措法42の 2 ③)。ⅰ 債券現先取引において債券の譲渡の日又は購入の日からその債券の買戻しの日又は売戻しの日までの期間が 3月を超えないこと(措令27の 2 ⑨一)。ⅱ 債券現先取引に関し、次に掲げる約定をしていること。ⅰ 金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律第 3条に規定

する一括清算の約定(措令27の 2 ⑨二)(注 1) クロスボーダーの債券現先取

引においては、リスク管理の一

環として取引の相手方が倒産し

た場合等の債権債務の一括清算

についての条項を設けることが

標準となっています。(注 2) 債券現先取引につき所得税法

第161条第 1 項第10号に掲げる

利子の支払をする特定金融機関

等が国内金融商品取引清算機関

である場合には、国内金融商品

取引清算機関が「金融機関等が

行う特定金融取引の一括清算に

関する法律」の適用対象外とさ

れていることから、同法第 3 条

に規定する一括清算の約定に代

えて、これに類する約定(国内

金融商品取引清算機関が金融商

品取引法第156条の11の 2 第 1

項の規定により従うものとされ

るその国内金融商品取引清算機

関に係る債券現先取引に係る業

務方法書の定めに係るものに限

ります。)とされています(措

令27の 2 ⑨二括弧書き、措規19

の15④)。

 なお、金融商品取引清算機関

の一つである株式会社日本証券

クリアリング機構の業務方法書

である「国債店頭取引清算業務

に関する業務方法書」において

は、破綻清算参加者のポジショ

ンの一括清算に関し、「清算参

加者について、破産手続開始、

再生手続開始、更生手続開始、

清算開始又は特別清算開始の申

立(以下「一括清算事由」とい

う。)があった場合には、その

─�746�─

――国際課税関係の改正――

清算参加者と当社(=株式会社

日本証券クリアリング機構)と

の間に存在するすべての金銭支

払返還債務�(中略)�及び国

債証券引渡返還債務�(中略)

�の一括清算事由発生時におけ

る債務不履行評価額を合算して

得られる純合計額が、その清算

参加者に対する当社の一の債務

又は当社に対するその清算参加

者の一の債務となるものとす

る。」旨が定められています(国

債店頭取引清算業務に関する業

務方法書79①)。

ⅱ 債券現先取引に係る債券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険を減少させるための次に掲げる約定(措令27の 2 ⑨二、措規19の15⑤)a ヘア・カットに関する約定 債券現先取引に係る債券のその債券現先取引の約定をする日における価額を基礎とし、その債券現先取引に係る約定価格等算定割合(債券現先取引に係る価格変動等リスク(債券現先取引に係る債券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険をいいます。bにおいて同じです。)その他を勘案して算出される割合をいいます。aにおいて同じです。)を用いてその債券現先取引につき約定をする価格を算定する旨又は債券現先取引につき約定をする価格を基礎とし、その債券現先取引に係る約定価格等算定割合を用いて算定した額に相当する価額の債券をその債券現先取引において譲渡し、若しくは購入する旨の約定b 次に掲げるいずれかの約定

⒜ マージン・コールに関する約定 債券現先取引の取引期間(債券現先取引において債券の譲渡の日又は購入の日からその債券の買戻しの日又は売戻しの日までの期間をいいます。⒝において同じです。)において、その債券現先取引の一方の当事者が他方の当事者に対し、当該他方の当事者との間の債券現先取引に係る債券の価格又は担保の額の変動に応じて当該他方の当事者との間の債券現先取引に係る価格変動等リスクを減少させるために必要な担保の提供を求めることができる旨の約定⒝ リプライシングに関する約定 債券現先取引の当事者の双方が、その合意によりその債券現先取引に係る再評価取引(債券現先取引に係る価格変動等リスクを減少させるために、その債券現先取引(⒝において「再評価対象債券現先取引」といいます。)の取引期間内のいずれかの時においてその再評価対象債券現先取引を終了し、新たな債券現先取引(その再評価対象債券現先取引に係る債券と同種及び同量の債券をその再評価対象債券現先取引の債券現先取引期日(債券現先取引についての債券の買戻しの日又は売戻しの日をいいます。以下同じです。)と同一の日にあらかじめ約定した価格で買い戻し、又は売り戻すことを約定して譲渡し、又は購入し、かつ、その約定に基づきその債券と同種及び同量の債

─�747�─

――国際課税関係の改正――

券を買い戻し、又は売り戻す取引に該当するものに限ります。)を約定する手法をいいます。)を行うことができる旨の約定

(注) クロスボーダーの債券現先取

引においては、リスク管理手法

として、①ヘア・カット、②マ

ージン・コールに加え、③リプ

ライシングに関する条項を設け

ることが標準となっています。

クロスボーダーの債券現先取引

に関する国際的な標準取引約款

であるICMA(International�Cap­

ital�Market�Association)と

SIFMA(Securities� Industry�

and�Financial�Markets�Asso­

ciation)が共同で定めたGlobal�

Master�Repurchase�Agreement、

また、これをベースに策定され

た日本証券業協会の「債券等の

現先取引に関する基本契約書」

においても、リスク管理手法と

してこれらに関する条項が設け

られています。

ⅲ 債券現先取引に係る債券のその債券現先取引の約定をした日における価額がその債券現先取引につき約定をした価格の75%以上であること(措令27の2 ⑨三)。

ⅳ 債券現先取引に係る利率が、次の算式により得た率以下であること(措令27の 2 ⑨四、措規19の15⑥)。《算式》債券現先取引の約定日の前日以前3月間の無担保コールO/N物レートの加重平均値

× 2 + 1%

(注) 「債券現先取引の約定日の前日以

前 3 月間の無担保コールO/N物レ

ートの加重平均値」とは、債券現

先取引の約定をした日の前日以前

3 月間において、銀行その他の金

融機関の間で行われるコール資金

の貸付け(担保を徴するものを除

くものとし、その貸付けにつき約

定をした日においてそのコール資

金の授受が行われ、かつ、同日の

翌営業日を返済期日とするものに

限ります。)に係る利率(無担保コ

ールO/N物レート)の加重平均値

として日本銀行が公表した利率の

うち、最も高い利率(その利率が

零を下回る場合には、零)をいい

ます。

 なお、平成29年 4 月 1 日現在、

日本銀行のインターネット・ホー

ムページにおいて、毎営業日、「無

担保コール市場における、当日約定、

当日資金受渡し、翌営業日を期日

とする条件で成立した取引のレー

ト」として、無担保コールO/N物

レート(最高値、最低値、加重平

均値)の確報値(前営業日分)が

公表されています。

ⅴ 特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。ⅴにおいて同じです。)の行った債券現先取引・債券貸借取引に係る総残高に占める特定外国法人との間の債券現先取引に係る残高の割合が50%以下であること。具体的には、次に掲げる債券現先取引の区分に応じそれぞれ次に定める要件をいいます。ⅰ 特定外国法人が支払を受ける対象利子(所得税法第161条第 1 項第10号に掲げる利子(非課税の適用を受けようとするものに限ります。)をいいます。ⅱにおいて同じです。)に係る債券現先取引で特定金融機関等との間で行われるもの(ⅰにおいて「判定対象債券現先取引」といい

─�748�─

――国際課税関係の改正――

ます。)��その特定金融機関等の次の算式により計算した割合が50%以下であること(措令27の 2 ⑨五イ)。《算式》

判定対象債券現先取引につき約定をした価格(注 1)

判定対象債券現先取引の約定日の前日において債券現先取引期日が到来していない特定外国法人との間の債券現先取引(注2)につき約定をした価格の合計額

判定対象債券現先取引の約定日の前日において債券現先取引期日が到来していない債券現先取引につき約定をした価格の合計額

判定対象債券現先取引の約定日の前日において債券貸借取引期日(注3)が到来していない債券貸借取引(注 4)につき約定をした価格の合計額

(注 1) 判定対象債券現先取引の約定

日において特定外国法人との間

で行われた他の債券現先取引が

ある場合には、その判定対象債

券現先取引につき約定をした価

格と当該他の債券現先取引につ

き約定をした価格の合計額との

合計額となります。(注 2) 「判定対象債券現先取引の約

定日の前日において債券現先取

引期日が到来していない特定外

国法人との間の債券現先取引」

には、次に掲げる債券現先取引

を含むこととされています。す

なわち、国内外の金融商品取引

清算機関がその業務として債務

の引受け等をして取引当事者と

なった債券現先取引のうち、そ

の引受け等により債務を負担し

た原取引が特定外国法人と特定

金融機関等との間で行われた振

替国債に係る債券現先取引であ

った場合には、上記算式中の分

子に含まれることとなり、債券

現先取引の取引当事者による国

内外の金融商品取引清算機関の

利用の有無により特定外国法人

との間の債券現先取引に係る残

高が左右されないこととされて

います。

a 判定対象債券現先取引に係

る特定金融機関等と外国金融

商品債務引受業者(外国にお

いて金融商品債務引受業と同

種類の業務を行う外国法人で

その業務を行うことにつきそ

の国の法令によりその国にお

いて金融商品取引法第156条

の 2 の免許と同種類の免許又

はこれに類する許可その他の

行政処分を受けているものを

いいます。ⅴにおいて同じで

す。)との間の債券現先取引

(判定対象債券現先取引の約

定日の前日において債券現先

取引期日が到来していないも

のに限ります。)が、その外

国金融商品債務引受業者が金

融商品債務引受業と同種類の

業務としてその特定金融機関

等と非課税の適用を受けよう

とする特定外国法人との間で

行われた債券現先取引(原取

引)に基づく債務を引受け等

により負担したことに係るも

のである場合におけるその特

定外国法人との間で行われた

債券現先取引

b 判定対象債券現先取引に係

る特定金融機関等と国内金融

商品取引清算機関との間の債

券現先取引(判定対象債券現

─�749�─

――国際課税関係の改正――

先取引の約定日の前日におい

て債券現先取引期日が到来し

ていないものに限ります。)が、

その国内金融商品取引清算機

関が金融商品債務引受業とし

てその特定金融機関等と非課

税の適用を受けようとする特

定外国法人との間で行われた

債券現先取引(原取引)に基

づく債務を引受け等により負

担したことに係るものである

場合におけるその特定外国法

人との間で行われた債券現先

取引(注 3) 「債券貸借取引期日」とは、

債券貸借取引についての債券の

返還を受ける日又は返還をする

日をいいます。(注 4) 「債券貸借取引」とは、債券

を貸し付け、又は借り入れ、あ

らかじめ約定した期日(あらか

じめ期日を約定することに代え

て、その開始以後期日の約定を

することができる場合には、そ

の開始以後約定した期日)にそ

の債券と同種及び同量の債券の

返還を受け、又は返還をする取

引をいいます。

ⅱ 特定外国法人が支払を受ける対象利子に係る債券現先取引で国内金融商品取引清算機関との間で行われるもの��その国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業としてその特定外国法人と特定金融機関等との間で行われた債券現先取引(その対象利子に係るものに限ります。ⅱにおいて「判定対象債券現先取引」といいます。)に基づく債務を引受け等により負担した場合におけるその特定金融機関等の次の算式により

計算した割合が50%以下であること(措令27の 2 ⑨五ロ)。《算式》

判定対象債券現先取引につき約定をした価格(注 1)

判定対象債券現先取引の約定日の前日において債券現先取引期日が到来していない特定外国法人との間の債券現先取引(注2)につき約定をした価格の合計額

判定対象債券現先取引の約定日の前日において債券現先取引期日が到来していない債券現先取引につき約定をした価格の合計額

判定対象債券現先取引の約定日の前日において債券貸借取引期日が到来していない債券貸借取引につき約定をした価格の合計額

(注 1) 判定対象債券現先取引の約定

日において特定外国法人との間

で行われた他の債券現先取引が

ある場合には、その判定対象債

券現先取引につき約定した価格

と当該他の債券現先取引につき

約定をした価格の合計額との合

計額となります。(注 2) 「判定対象債券現先取引の約

定日の前日において債券現先取

引期日が到来していない特定外

国法人との間の債券現先取引」

には、次に掲げる債券現先取引

を含むこととされています。

a 判定対象債券現先取引に係

る特定金融機関等と外国金融

商品債務引受業者との間の債

券現先取引(判定対象債券現

先取引の約定日の前日におい

て債券現先取引期日が到来し

ていないものに限ります。)が、

その外国金融商品債務引受業

者が金融商品債務引受業と同

─�750�─

――国際課税関係の改正――

種類の業務としてその特定金

融機関等と非課税の適用を受

けようとする特定外国法人と

の間で行われた債券現先取引

(原取引)に基づく債務を引

受け等により負担したことに

係るものである場合における

その特定外国法人との間で行

われた債券現先取引

b 判定対象債券現先取引に係

る特定金融機関等と国内金融

商品取引清算機関との間の債

券現先取引(判定対象債券現

先取引の約定日の前日におい

て債券現先取引期日が到来し

ていないものに限ります。)が、

その国内金融商品取引清算機

関が金融商品債務引受業とし

てその特定金融機関等と非課

税の適用を受けようとする特

定外国法人との間で行われた

債券現先取引(原取引)に基

づく債務を引受け等により負

担したことに係るものである

場合におけるその特定外国法

人との間で行われた債券現先

取引

ロ 法人税の非課税の対象となる差益 法人税の非課税の対象となる差益は、振替国債に係る特定債券現先取引につき、特定金融機関等から支払を受ける債券現先取引から生ずる差益とされています(措法67の17⑨)。ただし、恒久的施設を有する特定外国法人が支払を受ける差益で、恒久的施設帰属所得に該当するものについては、非課税とされません(措法67の17⑫)。(注) 「差益」とは、特定外国法人が特定金融

機関等との間で行う債券現先取引におい

て、債券を譲渡する際のその譲渡に係る

対価の額がその債券と同種・同量の債券

を買い戻す際のその買戻しに係る対価の

額を上回る場合におけるその譲渡に係る

対価の額からその買戻しに係る対価の額

を控除した金額に相当する差益をいいま

す(措法67の17⑨、措令39の33の 3 ⑦)。

④ 適用除外とされる特定外国法人 債券現先取引に係る利子等の支払をする特定金融機関等とその利子等の支払を受ける特定外国法人との間に親子会社関係などの支配・被支配関係がある場合には、所得を国外へ移転する誘因の存在、債券現先取引の取引条件の設定の自由度などから、本非課税措置を濫用した租税回避のおそれが一層高いと考えられます。そこで、本非課税制度においては、このような租税回避行為を防止する観点から、特定金融機関等の関連者である特定外国法人が債券現先取引につき支払を受ける利子及び差益については、非課税の対象外とされています。 具体的には、本非課税措置は、振替国債に係る特定債券現先取引に係る利子又は差益の支払を受ける特定外国法人が、その利子又は差益を支払う特定金融機関等の国外関連者に該当する場合には、適用しないこととされています(措法42の 2 ④、67の17⑩)。(注) 国内金融商品取引清算機関が金融商品債

務引受業として特定外国法人と特定金融機

関等(国内金融商品取引清算機関を除きま

す。(注)において同じです。)との間の振

替国債に係る特定債券現先取引(その国内

金融商品取引清算機関と特定外国法人との

間の振替国債に係る特定債券現先取引につ

き支払を受ける利子又は差益に係るものに

限ります。)に基づく債務を引受け等により

負担した場合には、その国内金融商品取引

清算機関の国外関連者に代えて、特定外国

法人がその特定金融機関等の国外関連者に

該当するか否かにより、本非課税措置の適

用の有無を判断することとされています。

すなわち、国内金融商品取引清算機関がそ

─�751�─

――国際課税関係の改正――

の業務として債務の引受け等をした場合に

は、その引受け等により債務を負担した原

取引の一方の取引当事者である特定金融機

関等との間の関係に着目して本非課税措置

の適用の有無を判定することとなり、債券

現先取引の取引当事者による国内金融商品

取引清算機関の利用の有無により特定外国

法人の国外関連者の範囲が左右されないこ

ととされています。

イ 国外関連者の範囲 「国外関連者」とは、外国法人で、振替国債に係る特定債券現先取引に係る利子又は差益を支払う特定金融機関等との間に次に掲げる特殊の関係のあるものをいいます(措法42の 2 ④、67の17⑩、措令27の 2 ⑪)。イ 二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除きます。)の総数又は総額(以下「発行済株式等」といいます。)の50%以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係ロ 二の法人が同一の者(その者が個人である場合には、その個人及びこれと法人税法第 2条第10号に規定する政令で定める特殊の関係のある個人。ホにおいて同じです。)によってそれぞれその発行済株式等の50%以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有される場合における当該二の法人の関係(上記イに掲げる関係に該当するものを除きます。)ハ 次に掲げる事実その他これに類する事実(ニ及びホにおいて「特定事実」といいます。)が存在することにより二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(上記イ又はロに掲げる関係に該当するものを除きます。)ⅰ 当該他方の法人の役員の 2分の 1以上又は代表する権限を有する役員が、

当該一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は当該一方の法人の役員若しくは使用人であった者であること。ⅱ 当該他方の法人がその事業活動の相当部分を当該一方の法人との取引に依存して行っていること。ⅲ 当該他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を当該一方の法人からの借入れにより、又は当該一方の法人の保証を受けて調達していること。

ニ 一の法人と次に掲げるいずれかの法人との関係(上記イからハまでに掲げる関係に該当するものを除きます。)ⅰ 当該一の法人が、その発行済株式等の50%以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人ⅱ ⅰ又はⅲに掲げる法人が、その発行済株式等の50%以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人ⅲ ⅱに掲げる法人が、その発行済株式等の50%以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人

ホ 二の法人がそれぞれ次に掲げるいずれかの法人に該当する場合における当該二の法人の関係(ⅰに規定する一の者が同一の者である場合に限るものとし、上記

─�752�─

――国際課税関係の改正――

イからニまでに掲げる関係に該当するものを除きます。)ⅰ 一の者が、その発行済株式等の50%以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人ⅱ ⅰ又はⅲに掲げる法人が、その発行済株式等の50%以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人ⅲ ⅱに掲げる法人が、その発行済株式等の50%以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人

ロ 株式等の保有割合の算定 上記イイに掲げる特殊の関係を株式等の保有関係で判定する場合には、一方の法人の他方の法人に係る直接保有の株式等の保有割合と一方の法人の他方の法人に係る間接保有の株式等の保有割合とを合計した割合により行うものとされています(措令27の 2 ⑫)。(注 1) 「直接保有の株式等の保有割合」とは、

一方の法人の有する他方の法人の株式

又は出資の数又は金額が当該他方の法

人の発行済株式等のうちに占める割合

をいいます(措令27の 2 ⑫)。(注 2) 「間接保有の株式等の保有割合」とは、

次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ

次に定める割合(次に掲げる場合のい

ずれにも該当する場合には、それぞれ

次に定める割合の合計割合)をいいま

す(措令27の 2 ⑬)。

イ 他方の法人の株主等である法人の

発行済株式等の50%以上の数又は金

額の株式又は出資が一方の法人によ

り所有されている場合(いわゆる親

子関係)��その株主等である法人

の有する当該他方の法人の株式又は

出資の数又は金額が当該他方の法人

の発行済株式等のうちに占める割合

(その株主等である法人が二以上ある

場合には、当該二以上の株主等であ

る法人につきそれぞれ計算した割合

の合計割合)

ロ 他方の法人の株主等である法人

(上記イに掲げる場合に該当する株主

等である法人を除きます。)と一方の

法人との間にこれらの者と発行済株

式等の所有を通じて連鎖関係にある

一又は二以上の法人(以下「出資関

連法人」といいます。)が介在してい

る場合(出資関連法人及びその株主

等である法人がそれぞれその発行済

株式等の50%以上の数又は金額の株

式又は出資を当該一方の法人又は出

資関連法人(その発行済株式等の50

%以上の数又は金額の株式又は出資

が当該一方の法人又は他の出資関連

法人によって所有されているものに

限ります。)によって所有されている

場合に限ります。)(いわゆる多段階

支配関係)��その株主等である法

人の有する当該他方の法人の株式又

は出資の数又は金額が当該他方の法

人の発行済株式等のうちに占める割

合(その株主等である法人が二以上

ある場合には、当該二以上の株主等

である法人につきそれぞれ計算した

割合の合計割合)(注 3) 株式等の保有割合の算定に関する規

定(措令27の 2 ⑫)は、上記イロ、ニ

─�753�─

――国際課税関係の改正――

及びホの直接又は間接に保有される関

係の判定について準用することとされ

ています(措令27の 2 ⑭)。

ハ 国外関連者の判定時期 特定外国法人と特定金融機関等との間に上記イイからホまでに掲げる特殊の関係が存在するかどうかの判定は、それぞれの取引が行われた時の現況によるものとされています(措令27の 2 ⑮、39の33の 3 ⑧)。

⑤ 非課税適用手続等 所得税の非課税の適用を受けようとする特定外国法人は、外国金融機関等と同様に、非課税適用申告書を、最初に振替国債に係る特定債券現先取引に係る利子の支払を受けるべき日の前日までに、その利子の支払をする者を経由してその支払をする者のその利子に係る所得税法第17条の規定による納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(措法42の 2 ⑦、措令27の 2 ⑰、措規19の15⑦⑧)。 なお、非課税適用申告書の提出のほか、非課税適用申告書提出の際の本人確認手続、異動申告書の提出、異動申告書提出の際の本人確認手続、特定金融機関等による非課税適用申告書等の写しの作成・保存など、外国金融機関等の債券現先取引等に係る利子の非課税措置と同様の非課税適用手続等が措置されています(措法42の 2 ⑦~⑪、措令27の 2 ⑰~�、措規19の15⑦~⑰)。(注) なお、今般の改正において、外国金融機

関等の債券現先取引等に係る利子の非課税

措置については、下記⑶④のとおり、非課

税適用申告書の 5 年ごとの更新手続を新た

に措置することとされましたが、特定外国

法人についても同様の趣旨により、非課税

適用申告書の 2 年ごとの更新手続が措置さ

れています(措法42の 2 ⑩二、措規19の15

⑭)。非課税適用申告書の更新手続の基本的

な仕組みは、外国金融機関等についての更

新手続と同様ですので、手続の詳細につい

ては、下記⑶④をご参照ください。

⑥ 特定金融機関等による帳簿の作成・保存イ 帳簿の作成・保存 特定金融機関等は、非課税適用申告書の提出をした特定外国法人がその特定金融機関等から支払を受ける利子に係る振替国債に係る特定債券現先取引につき帳簿を備え、次に掲げる特定金融機関等の区分に応じそれぞれ次に定めるときは、その都度、各人別に、所定の事項を帳簿に記載し、又は記録し、かつ、その帳簿を、その帳簿の閉鎖の日を含む事業年度終了の日の翌日から 2月を経過した日から 5年間保存しなければならないこととされています(措法42の 2⑫、措令27の 2 �、措規19の15⑲)。イ 特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。ロにおいて同じです。)��非課税適用申告書の提出をした特定外国法人との間で、振替国債に係る特定債券現先取引(国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業としてその振替国債に係る特定債券現先取引に基づく債務を引受け等により負担したものを除きます。)に係る契約が締結されたとき。ロ 国内金融商品取引清算機関��非課税適用申告書の提出をした特定外国法人との間で、振替国債に係る特定債券現先取引に係る契約が締結されたとき、又は非課税適用申告書を提出した特定外国法人との間で、その国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業として特定金融機関等とその提出した特定外国法人との間の振替国債に係る特定債券現先取引(原取引)に基づく債務を引受け等により負担した場合におけるその債務の引受け等に係る契約が締結されたとき。

ロ 帳簿の記載事項 上記イの振替国債に係る特定債券現先取引に係る利子に関する帳簿に記載すべき事

─�754�─

――国際課税関係の改正――

項は、次に掲げる事項とされています(措規19の15⑱一・二・四~七)。イ 非課税適用申告書の提出をした特定外国法人の名称及び所在地等又は営業所等の名称及び所在地(法人番号を有する特定外国法人にあっては、名称及び所在地等並びに法人番号又は営業所等の名称及び所在地)ロ 特定外国法人の提出する非課税適用申告書の受理がされた日ハ 振替国債に係る特定債券現先取引に関する次に掲げる事項ⅰ 次に掲げる特定金融機関等の区分に応じそれぞれ次に定める契約が締結された日ⅰ 特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。)��非課税適用申告書の提出をした特定外国法人との間の振替国債に係る特定債券現先取引(国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業としてその振替国債に係る特定債券現先取引に基づく債務を引受け等により負担したものを除きます。)に係る契約

ⅱ 国内金融商品取引清算機関��非課税適用申告書の提出をした特定外国法人との間の振替国債に係る特定債券現先取引に係る契約又は上記イロの債務の引受け等に係る契約

ⅱ 振替国債に係る特定債券現先取引に係る振替国債の銘柄、数量及びその振替国債に係る特定債券現先取引の約定をした日における価額並びにその振替国債に係る特定債券現先取引につき約定をした価格ⅲ 振替国債に係る特定債券現先取引に係る利率ⅳ 振替国債に係る特定債券現先取引の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める金額

ⅰ 特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。ⅰにおいて同じです。)との間で行われるもの��その特定金融機関等の上記③イロⅴⅰの算式中の分子及び分母の金額(分母の金額にあっては、債券現先取引に係る金額と債券貸借取引に係る金額の別。ⅱにおいて同じです。)ⅱ 国内金融商品取引清算機関との間で行われるもの��その国内金融商品取引清算機関に係る上記③イロⅴⅱの特定金融機関等の上記③イロⅴⅱの算式中の分子及び分母の金額

ⅴ 非課税の適用を受ける利子の支払年月日及びその適用を受ける金額ⅵ 振替国債に係る特定債券現先取引に係る振替国債の譲渡又は購入の日及びその振替国債の買戻し又は売戻しの日

ニ 上記イの特定外国法人が異動申告書又は更新申告書を提出した場合には、これらの申告書の受理がされた日ホ 非課税適用申告書を提出した特定外国法人が恒久的施設を有する外国法人である場合には、その外国法人の国外にある本店又は主たる事務所の所在地ヘ その他参考となるべき事項

⑶ 外国金融機関等が支払を受ける債券現先取引等に係る利子等の非課税措置の改正① 外国金融機関等の範囲の拡充 外国金融機関等の範囲に、外国金融商品取引清算機関が追加されました(措法42の 2 ⑥一ロ)。ここで「外国金融商品取引清算機関」とは、外国において金融商品債務引受業と同種類の業務を行う外国法人でその業務を行うことにつきその国の法令によりその国において金融商品取引法第156条の 2 の免許と同種類の免許又はこれに類する許可その他の行政処分を受けているものをいいます。ただ

─�755�─

――国際課税関係の改正――

し、その行う金融商品債務引受業と同種類の業務として他の外国法人(外国金融商品取引清算機関以外の外国金融機関等に限ります。)と特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。)との間の債券現先取引又は証券貸借取引に基づく債務を引受け等により負担する場合に限定されており、いわゆる自己勘定により取引を行う場合は、本特例の対象外とされています。② 特定金融機関等の範囲の拡充 特定金融機関等の範囲に、次に掲げる法人が追加されました(措法42の 2 ⑥二、措令27の 2 ⑯)。イ 短資会社。具体的には、金融商品取引法施行令第 1条の 9第 5号に掲げるもので、金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律第 2条第 2項に規定する金融機関等に該当する法人(国内に営業所等を有するものに限ります。)をいいます。(注) 「金融商品取引法施行令第 1条の 9第 5

号に掲げるもの」とは、主としてコール

資金の貸付け又はその貸借の媒介を業と

して行う者のうち金融庁長官の指定する

もの(金商令 1 の 9 五)をいい、平成29

年 4 月 1 日現在、上田八木短資株式会社、

東京短資株式会社及びセントラル短資株

式会社の 3 社が指定されています(平成

19年 8 月金融庁告示第52号)。

 なお、これらの短資会社は、金融機関

等が行う特定金融取引の一括清算に関す

る法律第 2 条第 2 項に規定する金融機関

等にも該当することとされています(一

括清算法 2 ②三、一括清算令七、貸金業

法施行令 1 の 2 三、昭和58年10月大蔵省

告示第124号)。

ロ 国内金融商品取引清算機関。具体的には、金融商品取引法第 2条第29項に規定する金融商品取引清算機関をいいます。ただし、その行う金融商品債務引受業として外国金融機関等(外国金融商品取引清算機関を除

きます。)又は特定外国法人と他の法人(国内金融商品取引清算機関以外の特定金融機関等に限ります。)との間の債券現先取引又は証券貸借取引に基づく債務を引受け等により負担する場合に限定されており、いわゆる自己勘定により取引を行う場合は、本特例の対象外とされています。

③ 非課税の対象となる債券現先取引の要件の見直し 上記⑵の特定外国法人が支払を受ける債券現先取引に係る利子等の非課税措置において、クロスボーダーの債券現先取引において設けることが標準とされるリスク管理手法(ヘア・カット、マージン・コール、リプライシング)が非課税の対象となる債券現先取引の要件として位置付けられたことを踏まえ、本非課税措置においても、同様に非課税の対象となる債券現先取引の要件として位置付けることとされました(措令27の 2 ①二、措規19の15②)。(注) 「リスク管理手法」の詳細については、上

記⑵③イロⅱⅱをご参照ください。④ 非課税適用申告書の提出手続の見直し 所得税の非課税の適用を受けようとする外国金融機関等による非課税適用手続は、非課税適用申告書の提出のみとされることから、最初に非課税適用申告書を提出した後の異動状況等を適切に把握できるようにするため、所得税の非課税の適用を受けようとする外国金融機関等は、非課税適用申告書に記載した事項に異動が生じた場合に異動申告書を提出することに加え、異動が生じない場合でも、非課税適用申告書を提出した後、 5年を経過するごとに、更新申告書を提出しなければならないこととされました。 具体的には、非課税適用申告書を提出した外国金融機関等は、非課税適用申告書を提出した日の翌日から 5年を経過した場合には、その 5年を経過した日以後最初に振替債等に係る特定債券現先取引等に係る利子の支払を

─�756�─

――国際課税関係の改正――

受けるべき日の前日までに、更新申告書を、非課税適用申告書を提出した特定金融機関等を経由して、上記 1 ⑸①イの税務署長に提出しなければならないこととされ(措法42の 2⑩前段・二)、更新申告書を提出しなかったときは、更新申告書を提出するまでの間に支払を受ける振替債等に係る特定債券現先取引等に係る利子については、本非課税措置の適用を受けることはできないこととされました(措法42の 2 ⑩後段)。(注) 更新申告書に記載すべき事項は、非課税

適用申告書に記載すべき事項と同様です(措

規19の15⑭)。

 なお、非課税適用申告書を提出した日の翌日から 5年を経過する日までの間に異動申告書を提出した場合には、異動申告書を提出した後 5年を経過したときに更新申告書を提出しなければならないこととされ、また、更新申告書を提出した後 5年を経過した場合にも、あらためて更新申告書を提出しなければならないこととされました。(注) 外国金融機関等のうち、上記 1 ⑵②に掲

げる外国の中央銀行(措法42の 2 ⑥一ハ)

及び上記 1 ⑵③に掲げる国際間の取極に基

づき設立された国際機関(措法42の 2 ⑥一

ニ)については、更新申告書の提出を要し

ないこととされています。

⑤ 外国金融機関等及び特定金融機関等の範囲の拡充に伴う非課税適用手続等の所要の整備イ 非課税の対象となる取引イ 「振替債等に係る特定債券現先取引等」の意義 外国金融商品取引清算機関及び国内金融商品取引清算機関が、それぞれ外国金融機関等及び特定金融機関等の範囲に追加されたことに伴い、非課税の対象となる債券現先取引又は証券貸借取引は、外国金融機関等と特定金融機関等との間で行われるものに法令上明確化されるとともに、国内外の金融商品取引清算機関が

その業務として債務の引受け等をして取引当事者となる場合の非課税の対象となる債券現先取引又は証券貸借取引は、その引受け等により債務を負担した原取引も外国金融機関等(外国金融商品取引清算機関を除きます。)と特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。)との間で行われた一定の債券に係る債券現先取引又は一定の有価証券に係る証券貸借取引に該当するものに限ることとされ、債券現先取引又は証券貸借取引の取引当事者による国内外の金融商品取引清算機関の利用の有無によって非課税の対象となる債券現先取引及び証券貸借取引の範囲が左右されないこととされました。 「振替債等に係る特定債券現先取引等」とは、振替債等に係る債券現先取引等で外国金融機関等と特定金融機関等との間で行われるもの(次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める場合に限ります。)をいいます(措法42の 2 ①)。ⅰ 振替債等に係る債券現先取引等が外国金融商品取引清算機関と特定金融機関等との間で行われるものである場合��その振替債等に係る債券現先取引等が、その外国金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業と同種類の業務として外国金融機関等(外国金融商品取引清算機関を除きます。ⅱにおいて同じです。)と特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。ⅱにおいて同じです。)との間で行われた振替債等に係る債券現先取引等(原取引)に基づく債務を引受け等により負担したことに係るものである場合ⅱ 振替債等に係る債券現先取引等が外国金融機関等と国内金融商品取引清算機関との間で行われるものである場合��その振替債等に係る債券現先取引

─�757�─

――国際課税関係の改正――

等が、その国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業として外国金融機関等と特定金融機関等との間で行われた振替債等に係る債券現先取引等(原取引)に基づく債務を引受け等により負担したことに係るものである場合

(注) 「振替債等に係る債券現先取引等」と

は、非課税の対象となる一定の債券に

係る債券現先取引で一定の要件を満た

すもの又は非課税の対象となる一定の

有価証券に係る証券貸借取引で一定の

要件を満たすものをいいます(措法42

の 2 ①、措令27の 2 ①~③、措規19の

15①~③)。なお、「一定の要件」の詳

細については、上記 1 ⑶①及び②並び

に下記ロ及びハをご参照ください。

ロ 非課税の対象となる債券現先取引の要件 非課税の対象となる債券現先取引は一括清算の約定があることが要件とされていますが、債券現先取引につき所得税法第161条第 1 項第10号に掲げる利子の支払をする特定金融機関等が国内金融商品取引清算機関である場合には、国内金融商品取引清算機関が「金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律」の適用対象外とされていることから、同法第 3条に規定する一括清算の約定に代えて、これに類する約定(その国内金融商品取引清算機関が金融商品取引法第156条の11の 2 第 1 項の規定により従うものとされるその国内金融商品取引清算機関に係る債券現先取引に係る業務方法書の定めに係るものに限ります。)があることを要件とすることとされました(措令27の 2 ①二括弧書き、措規19の15①)。ハ 非課税の対象となる証券貸借取引の要件

 非課税の対象となる証券貸借取引は一括清算の約定があることが要件とされていますが、証券貸借取引につき所得税法第161条第 1 項第10号に掲げる利子の支払をする特定金融機関等が国内金融商品取引清算機関である場合には、国内金融商品取引清算機関が「金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律」の適用対象外とされていることから、同法第 3条に規定する一括清算の約定に代えて、これに類する約定(その国内金融商品取引清算機関が金融商品取引法第156条の11の 2 第 1 項の規定により従うものとされるその国内金融商品取引清算機関に係る証券貸借取引に係る業務方法書の定めに係るものに限ります。)があることを要件とすることとされました(措令27の 2 ③二括弧書き、措規19の15③)。

ロ 適用除外イ 振替債等に係る特定債券現先取引等につき利子等の支払を受ける外国金融機関等が外国金融商品取引清算機関である場合 振替債等に係る特定債券現先取引等につき利子等の支払を受ける外国金融機関等が外国金融商品取引清算機関である場合には、適用除外の判定上、その業務として債券現先取引等に基づく債務を引受け等により負担した外国金融商品取引清算機関ではなく、その債券現先取引等の取引当事者たる外国金融商品取引清算機関以外の外国金融機関等が適用除外とされる外国法人に該当するか否かにより非課税の適用の有無を判定するのが適当です。 そこで、外国金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業と同種類の業務として外国金融機関等(上記 1 ⑵①に掲げる外国法人(措法42の 2 ⑥一イ)に限りま

─�758�─

――国際課税関係の改正――

す。ロにおいて同じです。)と特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。ロにおいて同じです。)との間の振替債等に係る特定債券現先取引等(その外国金融商品取引清算機関が支払を受ける利子又は貸借料等に係るものに限ります。)に基づく債務を引受け等により負担した場合におけるその外国金融機関等が、適用除外とされる外国法人のいずれかに該当する場合には、その外国金融商品取引清算機関が支払を受ける利子及び貸借料等については、非課税の適用対象外とすることとされました(措法42の 2 ②柱書、67の17⑧)。(注 1) 振替債等に係る特定債券現先取引

等につき利子等の支払を受ける外国

金融機関等が外国金融商品取引清算

機関である場合における上記の外国

金融機関等が適用除外とされる外国

法人に該当するか否かの判定は、非

課税の対象者である外国金融商品取

引清算機関が、非課税適用申告書の

提出をしようとする日及びその非課

税適用申告書の提出後振替債等に係

る特定債券現先取引等につき支払を

受ける利子の支払を受けるべき日の

前日を含む事業年度の直前の事業年

度終了の時の現況により、又は貸借

料等の支払を受けるべき日の前日を

含む事業年度の直前の事業年度終了

の時の現況により、それぞれ行うも

のとされています(措令27の 2 ⑧、

39の33の 3 ⑥)。(注 2) 非課税適用申告書を提出する者が

外国金融商品取引清算機関である場

合には、その非課税適用申告書に、

その外国金融商品取引清算機関に係

る外国金融機関等が適用除外とされ

る外国法人のいずれにも該当しない

旨を記載することとされています

(措規19の15⑧四イ)。

ロ 振替債等に係る特定債券現先取引等につき利子等を支払う特定金融機関等が国内金融商品取引清算機関である場合 振替債等に係る特定債券現先取引等につき利子等を支払う特定金融機関等が国内金融商品取引清算機関である場合についても、上記イと同様の趣旨により、国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業として外国金融機関等と特定金融機関等との間の振替債等に係る特定債券現先取引等(その外国金融機関等が支払を受ける利子又は貸借料等に係るものに限ります。)に基づく債務を引受け等により負担した場合におけるその特定金融機関等の国外支配株主等に該当する外国法人に該当するかどうかにより、適用除外の判定を行うこととされました(措法42の 2 ②一、67の17⑧)。

ハ 特定金融機関等による帳簿の作成・保存イ 帳簿の作成・保存 外国金融機関等及び特定金融機関等の範囲の拡充に伴い、特定金融機関等による帳簿の作成・保存について、次の整備が行われました。ⅰ 特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。ⅱⅱにおいて同じです。)は、次に掲げるときは、その都度、各人別に、所定の事項を帳簿に記載し、又は記録しなければならないこととされました(措令27の 2 �一)。ⅰ 非課税適用申告書の提出をした外国金融機関等との間で、振替債等に係る特定債券現先取引等(国内金融商品取引清算機関又は外国金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業又は金融商品債務引受業と同種類の業務としてその振替債等に係る特定債券現先取引等に基づく債務を引受け等により負担したものを除きま

─�759�─

――国際課税関係の改正――

す。)に係る契約が締結されたとき。ⅱ 非課税適用申告書の提出をした外国金融商品取引清算機関との間で、その外国金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業と同種類の業務として外国金融機関等(外国金融商品取引清算機関を除きます。)との間の振替債等に係る特定債券現先取引等に基づく債務を引受け等により負担した場合におけるその債務の引受け等に係る契約が締結されたとき。

ⅱ 国内金融商品取引清算機関は、次に掲げるときは、その都度、各人別に、所定の事項を帳簿に記載し、又は記録し、かつ、その帳簿を、その帳簿の閉鎖の日を含む事業年度終了の日の翌日から 2月を経過した日から 5年間保存しなければならないこととされました(措令27の 2 �二、措規19の15⑲)。ⅰ 非課税適用申告書の提出をした外国金融機関等との間で、振替債等に係る特定債券現先取引等に係る契約が締結されたとき。ⅱ 非課税適用申告書を提出した外国金融機関等との間で、その国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業として特定金融機関等とその非課税適用申告書を提出した外国金融機関等との間の振替債等に係る特定債券現先取引等に基づく債務を引受け等により負担した場合におけるその債務の引受け等に係る契約が締結されたとき。ⅲ 非課税適用申告書の提出をした外国金融機関等から異動申告書の提出があったとき。

ロ 帳簿の記載事項 外国金融機関等及び特定金融機関等の範囲の拡充に伴い、特定金融機関等により作成・保存される帳簿の記載事項につ

いて、次の整備が行われました。ⅰ 特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。)により作成・保存される帳簿の記載事項について、契約締結日を記載すべき非課税適用申告書の提出をした外国金融機関等との間の振替債等に係る特定債券現先取引等の範囲から、外国金融商品取引清算機関又は国内金融商品取引清算機関が金融商品債務引受業と同種類の業務又は金融商品債務引受業としてその振替債等に係る特定債券現先取引等に基づく債務を引受け等により負担したものが除外されるとともに、非課税適用申告書の提出をした外国金融商品取引清算機関との間の上記イⅰⅱの債務の引受け等に係る契約が締結された日が追加されました(措規19の15⑱三イ⑴)。ⅱ 国内金融商品取引清算機関により作成・保存される帳簿について、特定金融機関等により作成・保存される帳簿の記載事項(ⅰを除きます。)の他、非課税適用申告書の提出をした外国金融機関等との間の振替債等に係る特定債券現先取引等に係る契約又は上記イⅱⅱの債務の引受け等に係る契約が締結された日が記載事項とされました(措規19の15⑱三イ⑵)。

3  適用関係

⑴ 上記 2 ⑵の改正は、平成29年 4 月 1 日から平成31年 3 月31日までの間において開始した振替国債に係る特定債券現先取引について適用されます(措法42の 2 ③、67の17⑨、改正法附則 1)。⑵ 上記 2 ⑶の改正は、外国金融機関等が平成29年 4 月 1 日以後に開始する振替債等に係る特定債券現先取引等につき支払を受ける利子及び貸借料等について適用し、外国金融機関等が同日前に開始した債券現先取引又は証券貸借取引につき支払を受ける特定利子及び貸借料等につい

─�760�─

――国際課税関係の改正――

ては従前どおりとされています(改正法附則60①、72)。 なお、平成29年 4 月 1 日前に改正前の制度に基づき提出された非課税適用申告書(その非課税適用申告書又はその非課税適用申告書につき

提出された異動申告書の提出後に記載事項に異動が生じていないものに限ります。)は、同日において改正後の制度に基づき提出された非課税適用申告書とみなすこととされます(改正法附則60②)。

四� 100%子法人株式の現物分配に係る組織再編税制の見直しへの対応

1  合併等により外国親法人株式の交付を受ける場合の課税の特例の改正

⑴ 改正前の制度の概要① 合併等により外国親法人株式の交付を受けた場合の課税イ 非居住者株主 恒久的施設を有する非居住者が、旧株を発行した内国法人の特定合併、特定分割型分割又は特定株式交換により、外国合併親法人株式、外国分割承継親法人株式又は外国株式交換完全支配親法人株式(課税外国親法人株式及び恒久的施設管理親法人株式を除きます。)の交付を受ける場合には、特定合併若しくは特定分割型分割により交付を受ける外国合併親法人株式若しくは外国分割承継親法人株式の価額に相当する金額を株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして、又は特定株式交換により譲渡した旧株のうち外国株式交換完全支配親法人株式に対応する部分について株式交換等に係る譲渡所得等の特例(所法57の 4 )を適用せずに、課税することとされています(旧措法37の14の 3 ①~③)。 また、恒久的施設を有しない非居住者についても、旧株に係る特定合併、特定分割型分割又は特定株式交換により外国合併親法人株式、外国分割承継親法人株式又は外国株式交換完全支配親法人株式(課税外国親法人株式を除きます。)の交付を受ける場合で、申告の対象となるものであるとき

(所法164①二に該当するとき)は、上記と同様に課税することとされています(旧措法37の14の 3 ⑦)。ロ 外国法人株主 外国法人が、旧株を発行した内国法人の合併、分割型分割又は株式交換により、外国法人の株式(合併、分割型分割又は株式交換の直前に合併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある外国法人の株式に限ります。)の交付を受けた場合には、恒久的施設管理親法人株式が交付される場合を除き、旧株の譲渡については簿価譲渡(旧法法61の 2 ②④⑧)を認めず、譲渡損益を認識することとされています(旧法令184①二十、191)。

② 合併等により恒久的施設管理親法人株式の交付を受けた場合 恒久的施設を有する非居住者又は外国法人が、上記①イ又はロのとおり旧株を発行した内国法人の組織再編成により外国法人の株式の交付を受けた場合において、その交付を受けた株式が恒久的施設管理親法人株式であるときは、旧株の譲渡損益は認識されず、課税の繰延べが認められています(旧措法37の14の 3 ①~③、旧法令184①二十)。 ただし、恒久的施設を有する非居住者又は外国法人が、その有する恒久的施設管理親法人株式の全部又は一部をその交付の時に事業場等又は本店等に移管する行為その他恒久的施設において管理しなくなる行為を行った場

─�761�─

――国際課税関係の改正――

合には、その行為に係る恒久的施設管理親法人株式について、その交付の時に恒久的施設において管理した後、直ちにその非居住者又は外国法人の恒久的施設と事業場等又は本店等との間において資産の移転があったものとして、すなわち恒久的施設と事業場等又は本店等との間の内部取引があったものとして、課税することとされています(旧措法37の14の 3 ④、旧措令25の14①、旧法令184③)。③ 合併等により交付を受けた外国親法人株式の取得価額 非居住者又は外国法人が、上記①イ又はロのとおり旧株を発行した内国法人の組織再編成により外国法人の株式の交付を受けた場合には、その交付を受けた株式の取得価額は、その交付を受けた時における株式の取得のために通常要する価額とされています(旧措令25の14⑤~⑦、旧法令184⑤)。

⑵ 改正の内容 平成29年度税制改正において、組織再編税制の改正を行うこととされ、完全子法人の株式の全部の分配について、株式分配として組織再編成の一類型として位置付けた上、適格要件に該当するものについては現物分配法人における完全子法人株式の譲渡損益について課税しないこととするとともに(法法 2十二の十五の三、62の 5 ③)、株主において帳簿価額の付替えをすることとされました(法法61の 2 ⑧、措法37の10③三、37の11③)。(注) 上記の改正の趣旨及び改正の詳細について

は、前掲の「租税特別措置法等(金融・証券

税制関係)の改正」の「七 一般株式等に係

る譲渡所得等の課税の特例及び上場株式等に

係る譲渡所得等の課税の特例」及び「法人税

法の改正」の「三 組織再編税制」をご参照

ください。

 これにより、非居住者又は外国法人がその有する株式について株式分配により完全子法人の株式の交付を受けた場合も同様に課税の繰延べ

が認められることとなります。しかしながら、非居住者又は外国法人の有する株式が事業譲渡類似の株式であるときは、これに対して外国法人の株式が交付されると事後の課税の機会が失われることとなること、非居住者又は外国法人が有する外国法人の株式自体の保有・譲渡の状況把握が困難を伴うものであることにも配慮し、国際課税の適正化の観点から、非居住者株主又は外国法人株主に対して一定の株式分配により外国法人である完全子法人の株式が交付される場合には、課税の繰延べを認めずその交付の時点で課税することとするなど、合併等により外国親法人株式が交付された場合と同様の措置を講ずることとされました。① 株式分配により外国法人である完全子法人の株式の交付を受けた場合の課税イ 非居住者株主 恒久的施設を有する非居住者が、その有する株式(以下「所有株式」といいます。)を発行した内国法人の行った特定株式分配により外国完全子法人株式の交付を受ける場合には、恒久的施設管理完全子法人株式が交付される場合を除き、その交付を受ける外国完全子法人株式の価額に相当する金額を株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税することとされました(措法37の14の 3 ③)。(注 1) 「特定株式分配」とは、株式分配で、

現物分配法人の株主等に外国完全子法

人株式以外の資産が交付されなかった

もの(その外国完全子法人株式がその

現物分配法人の発行済株式等の総数又

は総額のうちに占めるその現物分配法

人の各株主等の有するその現物分配法

人の株式の数又は金額の割合に応じて

交付されたものに限ります。)をいいま

す(措法37の14の 3 ⑥五)。ここで「株

式分配」とは、現物分配(剰余金の配

当又は利益の配当に限ります。)のうち、

その現物分配の直前において現物分配

─�762�─

――国際課税関係の改正――

法人により発行済株式等の全部を保有

されていた法人((注 2)において「完

全子法人」といいます。)のその発行済

株式等の全部が移転するもの(その現

物分配によりその発行済株式等の移転

を受ける者がその現物分配の直前にお

いてその現物分配法人との間に完全支

配関係がある者のみである場合におけ

るその現物分配を除きます。)をいいま

す(法法 2十二の十五の二)。(注 2) 「外国完全子法人株式」とは、完全子

法人(外国法人に限ります。)の株式を

いいます(措法37の14の 3 ⑥六)。(注 3) 「恒久的施設管理完全子法人株式」と

は、恒久的施設を有する非居住者が恒

久的施設において管理する株式に対応

して交付を受ける外国完全子法人株式

をいいます(措法37の14の 3 ③)。

 また、恒久的施設を有しない非居住者についても、所有株式に係る特定株式分配により外国完全子法人株式の交付を受ける場合で、申告の対象となるものであるとき(所法164①二に該当するとき)は、上記と同様に課税することとされています(措法37の14の 3 ⑧)。ロ 外国法人株主 外国法人が、所有株式を発行した内国法人の株式分配(金銭等不交付株式分配に限ります。)により、外国法人の株式の交付を受けた場合には、恒久的施設管理外国株式が交付される場合を除き、所有株式の譲渡については簿価譲渡(法法61の 2 ⑧)を認めず、譲渡損益を認識することとされました(法令184①二十、191)。(注 1) 「金銭等不交付株式分配」とは、完全

子法人の株式以外の資産が交付されな

かった株式分配(その株式が現物分配

法人の発行済株式等の総数又は総額の

うちに占めるその現物分配法人の各株

主等の有するその現物分配法人の株式

の数又は金額の割合に応じて交付され

たものに限ります。)をいいます(法法

61の 2 ⑧)。(注 2) 「恒久的施設管理外国株式」とは、外

国法人の恒久的施設において管理する

株式に対応して、金銭等不交付株式分

配(内国法人が行うものに限ります。)

により交付を受けた完全子法人(外国

法人に限ります。)の株式をいいます

(法令184④)。

② 株式分配により恒久的施設管理完全子法人株式等の交付を受けた場合 恒久的施設を有する非居住者又は外国法人が、上記①イ又はロのとおり所有株式を発行した内国法人の行った株式分配により外国法人である完全子法人の株式の交付を受けた場合において、その交付を受けた株式が恒久的施設管理完全子法人株式(恒久的施設を有する外国法人にあっては、恒久的施設管理外国株式。②において同じです。)であるときは、その交付の時点において所有株式の譲渡損益は認識されず、課税の繰延べが認められています(措法37の14の 3 ③、法令184①二十)。 ただし、恒久的施設を有する非居住者又は外国法人が、その有する恒久的施設管理完全子法人株式の全部又は一部をその交付の時に事業場等又は本店等に移管する行為その他恒久的施設において管理しなくなる行為を行った場合には、その行為に係る恒久的施設管理完全子法人株式について、その交付の時に恒久的施設において管理した後、直ちにその非居住者又は外国法人の恒久的施設と事業場等又は本店等との間において資産の移転があったものとして、すなわち恒久的施設と事業場等又は本店等との間の内部取引があったものとして、課税することとされています(措法37の14の 3 ⑤、措令25の14①、法令184③)。③ 株式分配により交付を受けた外国法人である完全子法人の株式の取得価額 非居住者又は外国法人が、上記①イ又はロ

─�763�─

――国際課税関係の改正――

のとおり所有株式を発行した内国法人の行った株式分配により外国法人である完全子法人の株式の交付を受けた場合には、その交付を受けた株式の取得価額は、その交付を受けた時における株式の取得のために通常要する価額とされています(措令25の14⑦、法令184⑤)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成29年 4 月 1 日以後に行われる株式分配について適用されます(改正法附則53①、改正法令等附則 2①)。

2  事業譲渡類似の株式の譲渡益課税制度の改正

⑴ 改正前の制度の概要 非居住者又は外国法人が行う内国法人の株式の譲渡による所得については、恒久的施設帰属所得(所法161①一、法法138①一)に該当するものを除き、買集めにより取得した株式の譲渡による所得や事業譲渡類似の株式の譲渡による所得等一定のものに限って、課税対象とされています(所法164①一ロ・二、所令281①、法法141一ロ・二、法令178①)。 ここで「事業譲渡類似の株式の譲渡」とは、内国法人の特殊関係株主等である非居住者又は外国法人が行う次に掲げる要件を満たす株式の譲渡をいいます(所令281①四ロ④~⑥、法令178①四ロ④~⑥)。① 譲渡年又は譲渡事業年度終了の日以前 3年内のいずれかの時において、内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式等の総数又は総額の25%以上の株式を所有していたこと(所有株数要件)。② 譲渡年又は譲渡事業年度において、その譲渡を行った非居住者又は外国法人を含む内国法人の特殊関係株主等が最初にその内国法人の株式の譲渡をする直前のその内国法人の発行済株式等の総数又は総額の 5%以上の株式の譲渡をしたこと(譲渡株数要件)。

 なお、分割型分割や減資等が行われた場合には、上記②の譲渡株数要件が所有株式数の減少を捉えているものであることを踏まえ、分割型分割や減資等を行った内国法人の簿価純資産の移転割合にその内国法人の特殊関係株主等である非居住者又は外国法人のその内国法人の持株割合を乗じて計算した割合が 5%以上であるときは、上記②の譲渡株数要件を満たすものとして「事業譲渡類似の株式の譲渡」に該当するか否かの判定を行うこととされています(旧所令281⑦、旧法令178⑦)。

⑵ 改正の内容 上記 1 ⑵のとおり、株主が一定の株式分配により現物分配法人から金銭等の交付を受ける場合には、株主の所有株式数は減少しないものの、株主においてはその所有株式のうち完全子法人の株式に対応する部分の譲渡を行ったものとみなして株式の譲渡益を認識することとされました(法法61の 2 ⑧、措法37の10③三、37の11③)。 しかしながら、上記⑴②の譲渡株数要件が所有株式数の減少を捉えていることから、このような株式分配に伴う株式の譲渡益については、「発行済株式等の総数又は総額の 5 %以上の株式の譲渡をしたこと」という要件に該当せず、結果的に課税が行われないこととなります。 そこで、このような問題に対応するため、分割型分割や減資等が行われた場合と同様に、非居住者又は外国法人が内国法人の株主である場合において、株式分配により金銭等の交付を受け、上記⑴②の譲渡株数要件に相当する株式の譲渡と認識されるときは、事業譲渡類似の株式の譲渡益課税制度の対象とすることとされました。 具体的には、非居住者又は外国法人がその有する株式を発行した内国法人の行った株式分配により完全子法人の株式その他の資産の交付を受けた場合において、次の算式により計算した割合が 5%以上であるときは、非居住者又は外国法人を含む内国法人の特殊関係株主等が上記

─�764�─

――国際課税関係の改正――

⑴②の譲渡株数要件を満たす株式の譲渡を行ったものとして「事業譲渡類似の株式の譲渡」に該当するか否かの判定を行うこととされました(所令281⑦二、法令178⑦二)。《算式》

株式分配(注1)を行った内国法人の簿価純資産の移転割合(注 2)

×

非居住者又は外国法人を含む内国法人の特殊関係株主等が株式分配の直前に所有していたその内国法人の株式の数又は金額内国法人の株式分配の直前の発行済株式等の総数又は総額

(注 1) 対象となる株式分配は、次の①又は②に

該当するものに限られます(所令281⑦二イ

ロ、法法61の 2 ⑧)。

①� 完全子法人の株式以外の資産が交付さ

れるもの

②� 株式分配に係る完全子法人の株式が現

物分配法人の発行済株式等の総数又は総

額のうちに占めるその現物分配法人の各

株主等の有するその現物分配法人の株式

の数又は金額の割合に応じて交付されな

いもの(注 2) 「簿価純資産の移転割合」とは、株式分配

を行った場合に現物分配法人がその株主に

通知することとされている割合で(所令113

の 2 ④、法令119の 8 の 2 ②)、現物分配法

人が次の算式により計算したものをいいま

す(所令61②三、法令23①三)。

《算式》現物分配法人の株式分配の直前の完全子法人の株式の帳簿価額に相当する金額現物分配法人の株式分配の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成29年 4 月 1 日以後に行われる株式分配について適用されます(改正所令附則12①、改正法令等附則 2①)。

五 外国税額控除の申告要件

1  改正前の制度の概要

 外国税額控除制度(法法69、81の15、144の 2 、所法95、165の 6 )は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に、控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類並びに控除対象外国法人税の額(個人にあっては、控除対象外国所得税の額。以下同じです。)の計算に関する明細等を記載した書類の添付がある場合等に限り適用することとされ、また、控除をされるべき金額は、その書類に記載された金額を限度とすることとされています(旧法法69⑮、81の15⑨、144の 2 ⑩、旧所法95⑩、165の 6 ⑦)。(注) 地方法人税及び復興特別所得税における外国

税額控除制度(地法法12、復興財確法14)につ

いても、上記と同様の申告要件が設けられてい

ます(旧地法法12⑥、旧復興財確法14③)。

2  改正の内容

 外国税額控除の申告要件について、納税者の立証すべき事項を明確化し、要件を満たす場合には控除額を変更できることを明らかにするための所要の改正が行われました。 この改正により、更正の請求によらない更正による法人税額等の増加に伴い反射的に控除限度額が増加した場合には、その更正で控除額を増加させることができることとされました。 具体的には、外国税額控除制度は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に、控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類並びに控除対象外国法人税の額の計算に関する明細等を記載した書類(以下「明細書」といいます。)の添付がある場合等に限り、適用することとされ、また、控除をされるべき金額の計算の基礎となる控除対象外国法人税の額は、税務署長において特

─�765�─

――国際課税関係の改正――

別の事情があると認める場合を除くほか、その明細書に当該金額として記載された金額を限度とすることとされました(法法69⑮、81の15⑨、144の 2 ⑩、所法95⑩、165の 6 ⑦)。(注 1) 外国法人税又は外国所得税が減額された場

合の特例(法法69⑬、81の15⑧、144の 2 ⑧、

所法95⑨、165の 6 ⑥)の適用がある場合には、

「控除をされるべき金額の計算の基礎となる控

除対象外国法人税の額」は、その減額がされ

た金額を控除した後の金額とされています(法

規29の 3 ③、37の 6 ③、60の14、所規41②、

66の 9 )。(注 2) 「特別の事情」とは、税務調査において法人

の所得金額が増加したことに伴ってその法人

の所得率が上昇したことにより、利子の収入

金額を課税標準として源泉徴収の方法により

課税される外国法人税のうち外国税額控除の

対象から除外される「所得に対する負担が高

率な部分の金額」が減少した結果、控除対象

外国法人税の額が増加する場合などが該当す

るものと考えられます。(注 3) 控除限度額及び控除対象外国法人税の額の

繰越し(法法69②③、81の15②③、144の 2 ②

③、所法95②③、165の 6 ②③)についても、

上記と同趣旨の改正が行われています(法法

69⑯、81の15⑩、144の 2 ⑩、法規30③④、37

の 7 ③④、60の14、所法95⑪、165の 6 ⑦、所

規42③、66の 9 )。(注 4) 地方法人税及び復興特別所得税における外

国税額控除制度についても、上記と同趣旨の

改正が行われています(地法法12⑥、復興財

確法14③)。

3  適用関係

 上記 2の改正は、平成29年 4 月 1 日から施行され(改正法附則 1)、同日以後にされる更正に係る事業年度の所得に対する法人税又はその更正に係る年分の所得税について適用されます。

六 租税条約の相互協議手続の改正に伴う国内法の整備

1  改正前の制度の概要

⑴ 相互協議の申立て等の手続① 相互協議の申立手続 居住者又は内国法人で相手国等における居住者でないものは、租税条約のいずれかの締約国又は締約者の租税につきその租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至ると認める場合において、その課税を受けたこと又は受けるに至ることを明らかにするため相互協議の申立てをしようとするときは、所定の事項を記載した申立書を国税庁長官に提出しなければならないこととされています(旧実特規12①)。(注 1) 「相手国等における居住者」とは、租税

条約の規定により相手国等の居住者とさ

れる者をいいます(実特規 1の 3②十四)。(注 2) 租税条約上の国籍無差別に関する規定

に係る相互協議の申立手続についても、

上記の手続と同様とされています(旧実

特規12④)。

② 仲裁の要請手続 租税条約の規定に適合しない課税を受けたことにつき相互協議の申立てをした者は、その相互協議の対象となる事項のうち財務大臣とその租税条約の相手国等の権限ある当局との間でその租税条約に規定する期間を経過しても合意に至らないものにつきその租税条約の規定による仲裁の要請をしようとするときは、所定の事項を記載した要請書を国税庁長官に提出しなければならないこととされています(旧実特規12③)。(注) 租税条約上の国籍無差別に関する規定に

係る相互協議の申立てをした者が行う仲裁

の要請手続についても、上記の手続と同様

とされています(旧実特規12④)。

─�766�─

――国際課税関係の改正――

⑵ 国外関連者との取引に係る課税の特例(移転価格税制)等に係る納税猶予制度① 制度の概要 移転価格税制の更正又は決定を受けた者が、相互協議の申立てをした上で申請をしたときは、移転価格税制の更正又は決定に係る法人税及び地方法人税並びにこれらの加算税の額の納税を猶予することとされています(旧措法66の 4 の 2 ①)。(注) 連結法人の各連結事業年度の連結所得に

対する法人税についても同様の制度が設け

られているほか(措法68の88の 2 )、内部取

引に係る課税の特例(措法40の 3 の 3 、66

の 4 の 3 )や国外所得金額の計算の特例(措

法41の19の 5 、67の18、68の107の 2 )につ

いても同様の制度が設けられています(措

法40の 3 の 4 ①、41の19の 5 ⑩、66の 4 の

3 ⑭、67の18⑬、68の88の 2 ①、68の107の

2 ⑬)。これらの制度の基本的な仕組みは内

国法人に係る国外関連者との取引に係る課

税の特例に係る納税猶予制度と同様ですの

で、以下では内国法人に係る国外関連者と

の取引に係る課税の特例に係る納税猶予制

度について記載することとします。

② 適用対象者 納税の猶予を受けることができる者は、移転価格税制の更正又は決定を受けた内国法人のうち、租税条約の規定に基づき国税庁長官に対し相互協議の申立てをした者とされています(旧措法66の 4 の 2 ①)。 また、我が国において移転価格税制の更正又は決定を受けた外国法人が、その外国法人の本店所在地国と我が国との間の租税条約の規定に基づきその本店所在地国の権限ある当局に対し相互協議の申立てをした場合には、納税の猶予を受けることができることとされています(旧措法66の 4 の 2 ①括弧書き)。

2  改正の内容

 2015年10月に取りまとめられた BEPS プロジ

ェクトの最終報告書(行動14「相互協議の効果的実施(Making�Dispute�Resolution�Mechanisms�More�Effective)」)において、相互協議の申立ては、納税者の居住地国に限定せず、いずれかの締約国の権限ある当局に対して行うことも認めるべきとの勧告がなされました。(参考) BEPS行動計画14:相互協議の効果的実施

(仮訳)

3.各国は、第25条第 1 項の要件を満たす納

税者の相互協議へのアクセスを確保すべき

である。

3.1 両締約国の権限ある当局は、相互協議の

申立てがあった事実を認識し、当該申立て

を受理するか却下するかについて見解を示

すことができるようにすべきである。その

ためには、各国は、次のいずれかを行うべ

きである。

・ 第25条第 1 項を改正し、相互協議の申立

てをいずれか一方の締約国の権限ある当局

に対して行うことを認める。

・ 租税条約上、相互協議の申立てをいずれ

か一方の締約国に対して行うことが認めら

れない場合は、相互協議の申立てを受けた

権限ある当局が納税者の申立てが正当でな

いと考える事案については、二国間での通

知又は協議を実施する(当該協議は事案の

解決方法に関する協議として解釈してはな

らない)。

 上記の BEPS プロジェクトの最終報告書の内容を踏まえ、我が国においても、平成28年10月に署名された日本・ベルギー租税条約、平成29年 1月に署名された日本・ラトビア租税条約及び日本・オーストリア租税条約において、相互協議の申立ては、納税者の居住地国にかかわらず、いずれかの締約国の権限ある当局に対して行うことができることとされました。(注) これまでに我が国が締結した租税条約では、

相互協議の申立ては、納税者の居住地国の権限

ある当局のみに対して行うことができることと

されていました。

─�767�─

――国際課税関係の改正――

 そこで、今般の税制改正においては、租税条約の相互協議手続の改正に対応する観点から、以下のとおり、関連する国内法上の制度について所要の整備を行うこととされました。

⑴ 相互協議の申立て等の手続① 相互協議の申立手続 相互協議の申立手続について、非居住者及び外国法人についても、国税庁長官に対して相互協議の申立てを行うことができることとされました。 具体的には、居住者若しくは内国法人で相手国等における居住者でないもの又は非居住者若しくは外国法人で相手国等における居住者であるものは、租税条約のいずれかの締約国又は締約者の租税につきその租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至ると認める場合において、その課税を受けたこと又は受けるに至ることを明らかにするためその租税条約の規定に基づき国税庁長官に対し相互協議の申立てをしようとするときは、次に掲げる事項を記載した申立書を国税庁長官に提出しなければならないこととされました(実特規12①)。イ 申立書を提出する者の氏名、住所若しくは居所及び個人番号(個人番号を有しない個人にあっては、氏名及び住所又は居所)又は名称、本店若しくは主たる事務所の所在地、その事業が管理され、かつ、支配されている場所の所在地及び法人番号(法人番号を有しない法人にあっては、名称、本店又は主たる事務所の所在地及びその事業が管理され、かつ、支配されている場所の所在地)ロ 申立書を提出する者(非居住者又は外国法人で相手国等における居住者であるものに限ります。ロ及びホにおいて同じです。)の租税条約の相手国等における納税地及びその申立書を提出する者がその相手国等において納税者番号を有する場合には、その

納税者番号ハ 租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至る事実及びその理由ニ 租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至る年、事業年度又は年度ホ 申立書を提出する者が納税管理人の届出をしている場合には、その納税管理人の氏名及び住所又は居所ヘ その他参考となるべき事項(注) 租税条約の国籍無差別に関する規定に係

る相互協議の申立手続については、今般の

税制改正において、上記の相互協議の申立

手続に統合され、従前の規定は削除するこ

ととされました(旧実特規12④)。

② 仲裁の要請手続 仲裁の要請手続について、相手国等の権限ある当局に対して相互協議の申立てをした者についても、国税庁長官に対して仲裁の要請をすることができることとされました。 具体的には、租税条約の規定に適合しない課税を受けたことにつきその租税条約の規定に基づき国税庁長官又はその租税条約の相手国等の権限ある当局に対し相互協議の申立てをした者は、その相互協議の対象となる事項のうち財務大臣とその相手国等の権限ある当局との間でその租税条約に規定する期間を経過しても合意に至らないものにつきその租税条約の規定に基づき国税庁長官に対し仲裁を要請しようとするときは、次に掲げる事項を記載した要請書を国税庁長官に提出しなければならないこととされました(実特規12③)。イ 要請書を提出する者の氏名、住所若しくは居所及び個人番号(個人番号を有しない個人にあっては、氏名及び住所又は居所)又は名称、本店若しくは主たる事務所の所在地、その事業が管理され、かつ、支配されている場所の所在地及び法人番号(法人番号を有しない法人にあっては、名称、本店又は主たる事務所の所在地及びその事業が管理され、かつ、支配されている場所の

─�768�─

――国際課税関係の改正――

所在地)ロ 要請書を提出する者(非居住者又は外国法人で相手国等における居住者であるものに限ります。ロ及びヘにおいて同じです。)の租税条約の相手国等における納税地及びその要請書を提出する者がその相手国等において納税者番号を有する場合には、その納税者番号ハ 相互協議の申立てをした年月日ニ 仲裁の要請の対象とする事項及び年、事業年度又は年度ホ 仲裁の要請の対象とする事項につき、我が国及び租税条約の相手国等における裁決等(審査請求若しくは訴えについての裁決若しくは判決又はこれらに相当するものをいいます。)がない旨ヘ 要請書を提出する者が納税管理人の届出をしている場合には、その納税管理人の氏名及び住所又は居所ト その他参考となるべき事項(注) 租税条約の国籍無差別に関する規定に係

る相互協議の申立てをした者が行う仲裁の

要請手続については、今般の税制改正にお

いて、上記の仲裁の要請手続に統合され、

従前の規定は削除することとされました(旧

実特規12④)。

⑵ 国外関連者との取引に係る課税の特例(移転価格税制)等に係る納税猶予制度 納税の猶予を受けることができる者の範囲に、移転価格税制の更正又は決定を受けた者のうち、租税条約の規定に基づき相手国等の権限ある当局に対し相互協議の申立てをした内国法人及び租税条約の規定に基づき国税庁長官に対し相互協議の申立てをした外国法人を追加することとされました。 具体的には、移転価格税制の更正又は決定を受けた法人が、租税条約の規定に基づき国税庁長官又はその租税条約の相手国等の権限ある当局に対し相互協議の申立てをした上で申請をしたときは、移転価格税制の更正又は決定に係る法人税及び地方法人税並びにこれらの加算税の額の納税を猶予することとされました(措法66の 4 の 2 ①)。

3  適用関係

⑴ 上記 2 ⑴の改正は、平成29年 4 月 1 日から施行されます(改正実特規附則)。⑵ 上記 2 ⑵の改正は、平成29年 4 月 1 日から施行されます(改正法附則 1)。

七� 国税犯則調査手続の見直しに伴う租税条約等実施特例法の�整備

1  改正前の制度の概要

 租税条約等の情報交換規定に基づいて、租税条約等の相手国等からその相手国等の租税に関してその相手国等の租税に関する法令を執行する当局が行う犯則事件の調査に必要な情報(以下「必要犯則情報」といいます。)の提供の要請があった場合には、必要犯則情報の提供を行うために、収税官吏は、任意調査(質問・検査・領置)を行うことができることとされ(旧実特法10の 2 )、ま

た、司法審査を経た上で、強制調査(臨検・捜索・差押え)も行うことができることとされています(旧実特法10の 3 )。これら任意調査及び強制調査については、その性質に鑑み、国税犯則取締法の規定を準用することとされています(旧実特法10の 4 )。

⑴ 相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の任意調査 収税官吏は、租税条約等の規定に基づきその

─�769�─

――国際課税関係の改正――

租税条約等の相手国等から必要犯則情報の提供の要請があった場合には、租税条約等実施特例法第 8条の 2(相手国等への情報提供)の規定によりその必要犯則情報の提供を行うために、その要請において特定された者(以下「提供対象者」といいます。)に対する質問、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件の検査又はこれらの者が任意に提出した物の領置をすることができることとされています(旧実特法10の2 )。

⑵ 相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の強制調査 収税官吏は、上記⑴の質問、検査又は領置をすることができる場合で、かつ、必要犯則情報が相手国等の租税に関する法令を執行する当局が行う犯則事件の調査に欠くことのできないものであることを明らかにしたその相手国等の書面(以下「不可欠性の書面」といいます。)がある場合において、必要があると認めるときは、地方裁判所の裁判官が発する許可状により、臨検、捜索又は差押えをすることができることとされています(旧実特法10の 3 ①)。(注) 収税官吏は、許可状を請求する場合におい

ては、相手国等の犯則事件が存在すると認め

られる資料及び不可欠性の書面を提出しなけ

ればならないこととされています(旧実特法

10の 3 ③)。また、許可状の請求があった場合

においては、地方裁判所の裁判官は、次に掲

げる事項を記載し、自己の記名押印した許可

状を収税官吏に交付しなければならないこと

とされています(旧実特法10の 3 ④前段)。こ

の場合において、相手国等の犯則事件の犯則

嫌疑者の氏名又は犯則の事実が明らかである

ときは、これらの事項をも記載しなければな

らないこととされています(旧実特法10の 3

④後段)。

①� 臨検すべき場所、捜索すべき場所、身体

若しくは物件又は差し押さえるべき物件

② 請求者の官職及び氏名

③ 有効期間

④� 有効期間の期間経過後は執行に着手する

ことができずこれを返還しなければならな

い旨

⑤ 交付の年月日

⑥ 裁判所名

2  改正の内容

 今般の税制改正において、経済活動の ICT 化の進展等を踏まえて国税犯則調査手続の見直しを行うとともに、その規定を現代語化した上で国税通則法へ編入することとされました。(注) 国税犯則調査手続の見直しの詳細については、

後掲の「国税通則法等の改正」の「一 国税犯

則調査手続の見直し」をご参照ください。

 こうした国税犯則調査手続の見直しに伴い、相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の調査手続についても、今般の国税犯則調査手続の見直しの趣旨に加え、国税犯則調査手続において認められる範囲とその調査権限等を一致させている現行制度の趣旨や租税条約等の相手国等からの情報提供要請に応じて機動的に適時・的確な情報収集をする必要性に鑑み、国税犯則調査手続と同様の見直しを行うこととされました。 なお、租税条約等に基づく情報交換は相互主義が前提となっていることから、今般の改正は、租税条約等の相手国等からの情報提供要請の実効性がより確保されることを通じて、我が国からの情報提供要請の実効性の確保に資するものと考えられます。

⑴ 相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の任意調査手続の整備 国税犯則調査において、関税法第119条の規定にならい、犯則嫌疑者等に対して出頭を求めることができることとするとともに、犯則嫌疑者等が置き去った物件を検査し、又は領置することができるよう整備された(通法131①)こ

─�770�─

――国際課税関係の改正――

とに伴い、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、租税条約等の規定に基づきその租税条約等の相手国等から必要犯則情報の提供の要請があった場合には、租税条約等実施特例法第 8条の 2の規定によりその必要犯則情報の提供を行うために、提供対象者に対して出頭を求めることができることとするとともに、適時・的確な情報収集を可能とする観点から、提供対象者が置き去った物件を検査し、又は領置することができるよう整備することとされました(実特法10の 2 )。(注 1) 「国税庁、国税局又は税務署の当該職員」

とは、国税犯則事件の調査及び処分を行う

主体である「国税庁、国税局又は税務署の

当該職員」と同義であり、この範囲につい

ては、従前の規定(旧実特法10の 2 )にお

ける「収税官吏」から内容の変更はなく、

国税犯則調査手続の見直しに伴い、現代語

化が行われたものです。

(注 2) 相手国等から犯則事件に関する情報の提

供要請があった場合の調査を行う職員の身

分証明書の様式について、従前の「収税官

吏章」(旧国税犯則取締法第四条に依り収税

官吏の携帯すべき証票様式を定める件(明

治33年大蔵省令第 5 号))に代えて、国税に

関する犯則事件の調査を行う職員の身分証

明書の様式である「犯則事件調査職員証票」

(通規16、別紙第10号書式)に所要の調整を

加えた様式を用いることとされています(実

特規16②)。

⑵ 相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の強制調査手続の整備① 記録命令付差押えの整備 国税犯則調査において、刑事訴訟法第99条の 2 及び第218条第 1 項の規定にならい、記録命令付差押えに係る規定が整備された(通法132①)ことに伴い、適時・的確な情報収集を可能とする観点から、国税庁、国税局又

は税務署の当該職員は、任意調査をすることができる場合で、かつ、不可欠性の書面がある場合において、必要があると認めるときは、地方裁判所の裁判官が発する許可状により、電磁的記録を保管する者その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて、必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上で、その記録媒体を差し押さえること(記録命令付差押え)ができることとされました(実特法10の 3 ①)。② 捜索及び差押えの対象範囲の明確化 国税犯則調査において、刑事訴訟法第49条第 1項、第102条及び第222条第 1項の規定にならい、捜索及び差押えの対象範囲が法令上明確化された(通法132①)ことに伴い、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、任意調査をすることができる場合で、かつ、不可欠性の書面がある場合において、必要があると認めるときは、地方裁判所の裁判官が発する許可状により、臨検、提供対象者の身体、物件又は住居その他の場所の捜索、租税条約等実施特例法第 8条の 2の規定により必要犯則情報の提供を行うために必要な物件と思料するものの差押え又は記録命令付差押えをすることができる(提供対象者が相手国等の犯則事件の犯則嫌疑者以外の者である場合には、その提供対象者の身体、物件又は住居その他の場所の捜索にあっては、差し押さえるべき物件の存在を認めるに足りる状況のある場合に限られます。)こととされました(実特法10の 3 ①)。(注) 従前と同様に、許可状の交付については、

原則として、国税庁、国税局又は税務署の

当該職員の所属官署の地方裁判所の裁判官

が行い(実特法10の 3 ①本文)、急速を要す

るときは、捜索又は差押えをすべき物件等

の所在地を管轄する地方裁判所の裁判官が

行うこととされています(実特法10の 3 ②)。

③ 「許可状」の記載事項の整備

─�771�─

――国際課税関係の改正――

 国税犯則調査において、関税法第121条第3 項及び第 4 項並びに刑事訴訟法第219条第1項の規定にならい、許可状の記載事項が法令上明確化された(通法132⑤)ことに伴い、許可状について、臨検すべき物件をその記載事項として法令上明確化するとともに、犯則事実に代えて罪名を記載することとされました(実特規10の 3 ④)。

⑶ 相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の通信事務取扱者に対する差押えの整備 国税犯則調査において、関税法第122条の規定にならい、通信事務取扱者の保管する郵便物等の差押えに係る規定を整備するとともに、その差押えを行った場合には、その発信人等に通知すべき旨の規定が設けられた(通法133)ことに伴い、適時・的確な情報収集を可能とする観点から、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、任意調査をすることができる場合で、かつ、不可欠性の書面がある場合において、必要があると認めるときは、許可状の交付を受けて、郵便物、信書便物又は電信についての書類で通信事務取扱者が保管又は所持するもの(相手国等の犯則事件の犯則嫌疑者が発信人又は受信人でないものについては、その相手国等の犯則事件に関係があると認めるに足りる状況があるものに限ります。)を差し押さえることができることとされました(実特法10の 3 の 2 ①②)。また、その処分をした場合には、相手国等の犯則事件の調査が妨げられるおそれがある場合を除き、その旨を発信人又は受信人に通知しなければならないこととされました(実特法10の 3の 2 ③)。

⑷ 相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の鑑定、通訳又は翻訳の嘱託の整備 国税犯則調査において、関税法第132条の 2

第 1 項及び刑事訴訟法第223条第 1 項の規定にならい、鑑定、通訳又は翻訳を嘱託することができることとされた(通法147①)ことに伴い、相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の強制調査における具体的な手続を法令上明確化する観点から、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、租税条約等実施特例法第 8条の 2の規定により必要犯則情報の提供を行うため必要があると認めるときは、学識経験を有する者に領置物件、差押物件若しくは記録命令付差押物件についての鑑定を嘱託し、又は通訳若しくは翻訳を嘱託することができることとされました(実特法10の 3 の 3 )。(注) なお、上記の相手国等から犯則事件に関す

る情報の提供要請があった場合の鑑定の嘱託

については、国税犯則調査手続における鑑定

人による許可状に基づく破壊処分等に係る規

定(通法147②~⑤、通令50)を準用すること

とされています(実特法10の 4 、実特規16①)。

⑸ 国税通則法の犯則事件の調査に関する規定の準用 上記⑴から⑷までの改正以外にも、今般の国税犯則調査手続の見直しに伴い、相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の調査手続について同様の見直しが行われています。 具体的には、租税条約等実施特例法第10条の4 において、「第10条の 2 の質問、検査若しくは領置、第10条の 3の臨検、捜索、差押え若しくは記録命令付差押え、第10条の 3の 2の差押え又は前条の鑑定の嘱託については、この法律に特別の定めがあるもののほか、その性質に反しない限り、国税通則法第11章第 1節の規定を準用する。」と規定することとされるとともに、租税条約等実施特例省令第16条第 1項において、「法第10条の 2 の質問、検査若しくは領置、法第10条の 3の臨検、捜索、差押え若しくは記録命令付差押え、法第10条の 3の 2の差押え又は

─�772�─

――国際課税関係の改正――

法第10条の 3の 3の鑑定の嘱託については、その性質に反しない限り、国税通則法施行令第10章の規定を準用する。」と規定することとされました。これらの規定は、従前と同様、仮に国税犯則調査に関する規定を適用しても調査の趣旨・目的と矛盾しない、ないしは問題が生じないならば、国税犯則調査に関する規定を準用する趣旨であり、具体的には、次に掲げる国税犯則調査に関する規定を準用することとされています(実特法10の 4 、実特規16①)。① 接続サーバ保管の自己作成データ等の差押え(通法132②~⑥(③~⑤については接続サーバ保管の自己作成データ等の差押えに係る部分に限ります。))② 領置物件等の封印等(通令44)③ 許可状請求書の記載事項(通令45)④ 通信履歴の電磁的記録の保全要請(通法134)⑤ 電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法(通法136)⑥ 臨検、捜索又は差押え等に際しての必要な処分(通法137)⑦ 臨検等を受ける者への協力要請(通法138)⑧ 許可状の提示手続(通法139)⑨ 身分証明書の提示手続(通法140)⑩ 警察官の援助(通法141)⑪ 臨検等における立会い(通法142①②④)

⑫ 領置目録等の謄本交付等(通法143、通令47)⑬ 領置物件等の腐敗等がある場合の手続(通法144①、通令48①)⑭ 領置物件等を還付できない場合の手続(通法145、通令49)⑮ 電磁的記録を移転した場合の記録媒体の交付等(通法146)⑯ 鑑定人による許可状に基づく破壊処分等(通法147②~⑤、通令50)⑰ 臨検等の夜間執行(通法148(間接国税に係る部分を除きます。))⑱ 処分中の出入りの禁止(通法149)⑲ 執行を中止する場合の処分(通法150)⑳ 捜索証明書の交付(通法151)㉑ 調書の作成手続(通法152、通令52)� 管轄区域外における職務執行制限の緩和(通法154)� 国税の犯則事件の調査及び処分に関する書類の作成要領(通令56)

3  適用関係

 上記 2の改正は、平成30年 4 月 1 日から施行され(改正法附則 1 五ト)、同日以後に行う相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の調査手続について適用されることとなります。

八 その他の国際課税の改正

1  外国法人の法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例

⑴ 改正の内容 内国法人の法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例について、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から 3月以内にその事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況に

あると認められる場合には、確定申告書の提出期限について、その定めの内容を勘案して 4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間延長することができることとする改正が行われ(法法75の 2 )、外国法人の法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例についてもこれと同様の改正が行われました(法法144の 8 )。改正の趣旨及び改正の詳細については前掲の「法人税法等の改正」の「一 確定申告

─�773�─

――国際課税関係の改正――

書の提出期限の延長の特例」をご参照ください。

⑵ 適用関係① 平成29年 4 月 1 日前にされた申告書の提出期限の延長の特例の申請であって、改正法の施行の際、提出期限の延長又は却下の処分がされていないものについての処分については、従前どおりとされます(改正法附則28①)。② 平成29年 4 月 1 日前にされた改正前の申告書の提出期限の延長月数の指定(同日以後に上記①によりされた指定を含みます。)は、改正後の上記⑴の指定とみなされます(改正法附則28②)。

2  外国法人の法人税に係る災害に関する税制上の措置

⑴ 災害損失欠損金の繰戻しによる還付 外国法人の災害のあった日から同日以後 1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は災害のあった日から同日以後 6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額(欠損金額のうち、災害により棚卸資産等について生じた損失の額で一定のものに達するまでの金額)がある場合には、その各事業年度に係る確定申告書又はその中間期間に係る仮決算の中間申告書の提出と同時に、その災害損失欠損金額に係る事業年度又は中間期間開始の日前 2年(白色申告である場合には、1年)以内に開始した事業年度の法人税額のうちその災害損失欠損金額に対応する部分の金額の還付を請求することができることとされました(法法142の 2 の 2 、144の13⑪)。

⑵ 仮決算による中間申告における所得税額の還付 外国法人の災害のあった日から同日以後 6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失金額(災害により棚卸資産等について生じた損失の額で一定のもの)があ

る場合には、その中間期間に係る仮決算による中間申告において、その中間期間において課された所得税の額で法人税の額から控除しきれなかった金額について、その災害損失金額を限度に還付を受けることができることとされました(法法144、144の 4 、144の11、147の 3 )。

⑶ 外国法人の法人税の中間申告 外国法人の法人税の中間申告書の提出について、国税通則法第11条(災害等による期限の延長)の規定による申告期限の延長により、中間申告書の提出期限とその中間申告書に係る確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合は、その中間申告書の提出を要しないこととされました(法法144の 3 の 2 )。 なお、上記⑴から⑶までの改正の趣旨及び改正の詳細については前掲の「法人税法等の改正」の「四 災害に関する税制上の措置」をご参照ください。

⑷ 適用関係① 上記⑴の改正は、平成29年 4 月 1 日から施行されます(改正法附則 1)。したがって、同日から請求が可能です。なお、同日前 1年以内に終了した事業年度の確定申告書を同日前に提出した外国法人のその事業年度については、平成29年 4 月30日までに、還付の請求をすることができる経過措置が設けられています(改正法附則29)。② 上記⑵の改正は、平成29年 4 月 1 日から施行されます(改正法附則 1)。したがって、同日から還付申告が可能です。③ 上記⑶の改正は、平成29年 4 月 1 日から施行されます(改正法附則 1)。

3  外国普通法人となった旨の届出書

⑴ 改正前の制度の概要 恒久的施設を有しない外国法人である普通法人が恒久的施設を有することとなった場合又は

─�774�─

――国際課税関係の改正――

恒久的施設を有しない外国法人である普通法人が法人税法第138条第 1 項第 4 号(国内源泉所得)に規定する事業(国内において人的役務提供を主たる内容とする事業)を国内において開始し、若しくは同法第141条第 2 号(課税標準)に定める国内源泉所得で同項第 4号に掲げる対価(国内において行う人的役務提供の対価)以外のものを有することとなった場合には、その外国法人である普通法人は、その恒久的施設を有することとなった日等の以後 2月以内に、その納税地、国内源泉所得に係る事業等の経営又は管理の責任者の氏名、国内源泉所得に係る事業等の目的等及び国内源泉所得に係る事業を開始した日等を記載した届出書(外国普通法人となった旨の届出書)に、その恒久的施設を有することとなった時等における貸借対照表、定款等、国内にある事務所等の登記事項証明書、国内にある事務所等の名称等を記載した書類等の所定の書類を添付して、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(法法149①、法規64①)。(注) 恒久的施設を有することとなった外国法人

である普通法人の国内源泉所得に係る所得の

金額の全部につき租税条約等の規定により法

人税を課さないこととされる等の場合に該当

し、上記の届出書の提出を要しないこととさ

れた外国法人が、租税条約等の規定により法

人税を課さないこととされる国内源泉所得以

外の国内源泉所得を有することとなった場合

には、その国内源泉所得を有することとなっ

た日以後 2 月以内に、その届出書に上記の書

類を添付し、納税地の所轄税務署長に提出し

なければならないこととされています(法法

149②、法規64②)。

⑵ 改正の内容 上記⑴の届出書については、法務省と国税庁との間で登記事項に関する情報の共有がされる環境が整備されたことを踏まえ、行政手続の簡

素化により納税者の円滑・適正な納税のための環境整備を図る観点から、登記事項証明書の添付が不要とされました(旧法規64①三)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成29年 4 月 1 日以後に提出する上記⑴の届出書について適用し、同日前に提出した上記⑴の届出書については、従前どおりとされています(改正法規附則 5)。

4  納税地の異動の届出

⑴ 改正前の制度の概要 外国法人は、その法人税の納税地に異動があった場合(法人税法第18条第 1項(納税地の指定)の指定により納税地の異動があった場合を除きます。)には、その異動前及び異動後の納税地の所轄税務署長にその旨を届け出なければならないこととされています(法法20①、法令18①)。 非居住者についても同様に、その所得税の納税地に異動があった場合(所得税法第16条第 3項から第 5項まで(納税地の特例)に規定する書類の提出又は第18条第 1項(納税地の指定)の指定によりその納税地に異動があった場合を除きます。)には、その異動前及び異動後の納税地の所轄税務署長にその旨を届け出なければならないこととされています(所法20①、所令57)。

⑵ 改正の内容 上記⑴の届出について、その異動後の納税地の所轄税務署長への提出を要しないこととされました。 なお、上記の改正の趣旨及び改正の詳細については前掲の「法人税法等の改正」の「五 法人税の納税地の異動届出書等の提出先のワンストップ化」をご参照ください。

─�775�─

――国際課税関係の改正――

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、外国法人又は非居住者の平成29年 4 月 1 日以後の納税地の異動について適用し、外国法人又は非居住者の同日前の納税地の異動については、従前どおりとされています(改正法附則 4、13①)。

5  地方法人税法関係

 消費税率の引上げの実施時期の変更に合わせ、地方法人課税の偏在是正措置の実施時期についても、平成31年10月 1 日に変更されました。したがって、地方法人税の税率の10.3%(改正前:4.4%)への引上げ(地法法10①)の実施時期が、平成31年10月 1 日(改正前:平成29年 4 月 1 日)以後に開始する課税事業年度とされました(平成28年改正法附則 1、30①)。 これに伴い、次の改正の実施時期についても、平成31年10月 1 日(改正前:平成29年 4 月 1 日)とされました(平成28年改正法附則 1七の三イ、ロ)。

⑴ 欠損金の繰戻しによる法人税の還付があった場合の還付 欠損金の繰戻しによる法人税の還付があった場合に、確定地方法人税額のうち還付する金額の計算においてその法人税の還付金の額に乗ずる割合を10.3%(改正前:4.4%)に引き上げる改正(地法法23①本文)

⑵ 外国法人に係る還付金の益金不算入 地方法人税法第23条(欠損金の繰戻しによる法人税の還付があった場合の還付)の規定による還付金について、法人税の益金不算入額の計算においてその法人税法第144条の13第 1 項第1号(欠損金の繰戻しによる還付)に定める金額に乗ずる割合を10.3%(改正前:4.4%)に引き上げる改正(法法142の 2 ①四)(注) ⑵の改正に係る経過措置として、外国法人

の平成31年10月 1 日(改正前:平成29年 4 月

1 日)以後に開始する還付所得事業年度に係

る還付金の額について適用し、平成31年10月

1 日前に開始した還付所得事業年度に係る還

付金の額については従前どおりとすることと

されました(平成28年改正法附則28)。

6  非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度に係る報告金融機関等の範囲の整備

⑴ 改正前の制度の概要① 新規特定取引を行う者による新規届出書の提出及び報告金融機関等による新規届出書の記載事項の確認 平成29年 1 月 1 日以後に報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行う者は、特定対象者の居住地国等を記載した届出書を、その特定取引を行う際、その報告金融機関等の営業所等の長に提出しなければならないこととされ、報告金融機関等の営業所等の長は、その届出書に記載されている事項がその特定取引を行う際にその者から提出又は提示を受けた他の書類の内容と合致していることを確認しなければならないこととされています(実特法10の 5 ①、実特規16の 2 ③)。(注) 「報告金融機関等」とは、「銀行その他の

政令で定める者」とされており(実特法10

の 5 ⑦一)、具体的には、政令において、

「共通報告基準」上の「預金機関(例:銀

行)」、「特定保険会社(例:保険会社)」、

「保管機関(例:金融商品取引業者)」及び

「投資事業体(例:特定目的会社)」に相当

するものが定められています(実特令 6 の

6①②、実特規16の 7 )。

② 報告金融機関等による既存特定取引に係る特定対象者の住所等所在地国と認められる国又は地域の特定手続 報告金融機関等は、平成28年12月31日以前に特定取引を行った者で同日においてその特定取引に係る契約を締結しているものにつき、

─�776�─

――国際課税関係の改正――

平成30年12月31日(一定の特定取引に係る契約については平成29年12月31日)までに、所定の特定手続を実施した上、その報告金融機関等の保有する特定対象者に関する情報に基づきその特定対象者の住所等所在地国と認められる国又は地域を特定しなければならないこととされています(実特法10の 5 ②)。③ 報告金融機関等による所轄税務署長に対する報告事項の提供 報告金融機関等は、その年の12月31日において、その報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行った者が報告対象契約を締結している場合には、特定対象者の居住地国等及びその報告対象契約に係る資産の価額、その資産の運用、保有又は譲渡による収入金額を、その年の翌年 4月30日までに、その報告金融機関等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされています(実特法10の 6 ①)。

⑵ 改正の内容 農業協同組合の改革として、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律(平成27年法律第63号)第 5条による農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律(以下「再編強化法」といいます。)の改正(平成27年 9 月 4 日公布)により、農林中央金庫又は信用農業協同組合連合会への信用事業譲渡を円滑に進めることを可能とするため、農林中央金庫に代わる新たな受け皿となる「特定承継会社」を設け、最終的には農林中央金庫がその信用事業を引き継ぐ仕組みが設けられたところです(再編強化法附則26~34)。(注) 「特定承継会社」とは、具体的には、①農林

中央金庫が発行済株式の総数を保有する株式

会社であり、②信用事業を行う農業協同組合

及び信用農業協同組合連合会から信用事業を

譲り受け、その信用事業を最終的に農林中央

金庫に引き継がせることを目的として、③預

金の受入等の銀行業を営むものとして、平成

38年 3 月31日までの間に暫定的に措置される

ものをいいます。

 この特定承継会社は、再編強化法附則第33条において「銀行」とみなされる預貯金取扱金融機関とされています。また、この他、「銀行」に適用される税制上の措置を同様に特定承継会社にも適用をさせるため、農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律施行令等の一部を改正する政令(平成28年政令第101号)による農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律施行令の改正(平成28年 3 月31日公布)により、特定承継会社について銀行とみなして適用する法令が定められています(再編強化令附則14①)。 今般、本制度が平成29年 1 月 1 日から施行されることに伴い、農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成28年政令第367号。平成28年12月 2 日公布)により、報告金融機関等の範囲を具体的に定めている「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令」を、特定承継会社について銀行とみなして適用する法令に追加することとされました(再編強化令附則14①四十八の二)。 これにより、特定承継会社は、本制度上、銀行と同様に「報告金融機関等」として取り扱われることとなります。(参考 1) 農林中央金庫及び特定農水産業協同組

合等による信用事業の再編及び強化に関

する法律(平成 8 年法律第118号)附則

(抄)

(特定承継会社に係る銀行法等の適用関係)

第33条 前条に定めるもののほか、特定業

務を営む特定承継会社については、銀行

とみなして、銀行法(第 1 条から第 4 条

まで、第 6 条、第 8 条第 2 項から第 4 項

─�777�─

――国際課税関係の改正――

まで、第10条、第11条、第 7 章、第 7 章

の 3(第52条の11から第52条の14までを

除く。)並びに第53条第 2 項、第 3 項及び

第 5 項その他政令で定める規定を除く。)

の規定その他銀行に適用される法令のう

ち政令で定めるものの規定(他の法令に

おいて、これらの規定を引用し、準用し、

又はその例による場合を含む。)を適用す

る。

2 省 略

(参考 2) 農林中央金庫及び特定農水産業協同組

合等による信用事業の再編及び強化に関

する法律施行令(平成 9 年政令第 8 号)

附則(抄)

(銀行とみなされる特定承継会社に係る銀

行法以外の法令の適用関係)

第14条 法附則第33条第 1 項の政令で定め

る法令は、次のとおりとする。

一~四十八 省 略

四十八の二 租税条約等の実施に伴う所

得税法、法人税法及び地方税法の特例

等に関する法律施行令(昭和62年政令

第335号)

四十九~六十五 省 略

2 省 略

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成29年 1 月 1 日から施行されます(改正再編強化令附則)。

─�778�─

――国際課税関係の改正――