58
2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 1

東日本大地震後の電力危機と危機対応-将来に備えた電力システム改革

Page 2: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/2322

注意事項(1) このスライドは私のHPからダウンロードできますので、スライドの内容をメモする必要はありません。10月29日までは公開しています。アドレスは

https://www.iss.u-tokyo.ac.jp/~matsumur/HPJA.html

ですが、メモしなくても「社会科学研究所 松村」で検索すれば到達できると思います。

(2) 質問があれば途中で講義止めて下さい。議論の結果、スライドの最後まで到達しなくても問題無いように、スライド構成されています。

(3) 講義終了後、アンケートに記入し、提出して下さい。

Page 3: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/2333

今日の話のポイント(1) 電力の安定供給のためにも市場メカニズムをうま

く使う必要がある。市場メカニズムをうまく使わないと安定供給のための費用がどこまでも高くなる可能性がある。

(2) 電力の安定供給のためにはインフラ整備やルールの整備が重要だが、危機が起こるたびにインフラ整備等を積み増すだけでは常に間に合わない危機対応になる。インフラ整備の決定やルールの設計を利害関係者に丸投げしない仕組みの構築が重要。

(3) 中立者のふりをした利害関係者の代理人に事前の危機対策を任せないためには、電力・エネルギーシステム改革に、国民・消費者が関心を持ち続けることが重要。

Page 4: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 4

東日本大震災

Page 5: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 5

The Great East Japan Earthquake

On March 11, 2011 The Great East Japan

Earthquake (magnitude 9, the strongest

earthquake ever recorded in Japan and the fourth

strongest earthquake in the world) and the

subsequent Great Tsunami stuck North East and

East of the main island of Japan.

North East Japan, the Tohoku region, Iwate, Miyagi,

and Fukushima Prefectures, were affected by the

tsunami, the largest tsunami to strike the area in

the past thousand years.

Page 6: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

Direct Damage by The EarthquakeDead or missing persons 18,432

Destroyed buildings 402,742

Evacuees +400,000

Households with power

outages

+8,000,000

Lost fishing boats 29,000

Damaged farmland 23,600ha

Flooded area 561km2

Direct material damage ¥25 trillion

($300 billion).

Page 7: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 7

Severe Accidents at the

Fukushima I Nuclear Power Station

On March 11, 2011, three of six reactors were in

operation. The earthquake triggered the

emergency shut-down of the operating

reactors(1–3).

Emergency power supplies were triggered, starting

fuel cooling operations for reactors 1-6.

The tsunami flooded the emergency power supplies

including batteries, which lead to a loss of power

for reactors 1-5.

Page 8: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 8

Severe Accidents at the

Fukushima I Nuclear Power Station Fuel melted in reactors 1-3 and radioactive substances

were released into the air.

Hydrogen explosions caused damage to the buildings

housing reactors.

~Worst Nuclear Power Plant Disaster since the

Chernobyl disaster in 1986, far more serious than

Three Mile Island accident in 1979.

TEPCO, the largest electric power company in Japan

that ruled the Japanese electric power market,

completely lost the trust of the nation.

Page 9: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 9

震災直後の電力不足2011年3月11日(金曜日)、東京電力は 20GW

(=20,000MW = 2000万kW) の供給力を失う。

鉄道が止まり、多くのオフィスや商店も活動を縮小・停止。その結果電力需要も減少。

⇒震災直後の停電は小規模かつ局所的で、停電による大きな混乱は起きなかった。週末は通常でも電力需要は小さく、12、13日も混乱は起きなかった。

2011年3月14日(月曜日)、東京電力エリアの電力需要は

ほぼ通常に戻ることが予想された。一方供給力は十分には回復せず、一定の節電を見込んでも電力不足が予想された。⇒ 輪番停電の実施

Page 10: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/231010

交流電力の特性(一定周波数での)電力消費量<供給量⇒周波数上昇

(一定周波数での)電力消費量>供給量⇒周波数低下

周波数は通常でも常に変動している。この変動が一定範囲を超えると発電機が機能しなくなる。

電力消費量の大幅な超過⇒周波数の大幅な低下⇒発電機の脱落(脱調)⇒電力不足の深刻化⇒更なる発電機の脱落⇒…⇒系統全体の停電(系統崩壊:ブラックアウト)

これを防ぐために、常に電力消費量と供給量を合わせる必要がある。電気の消費量は時間帯や季節等の外部要因で大きく変動。一方電気を貯めるにはかなりの費用がかかるので、在庫調整は限定的。また変動に対応するため一定の予備力・調整力が必要。

Page 11: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 11

輪番停電供給力が不足して周波数維持が困難となることが予想

される。

⇒ブラックアウト(エリア全体の停電)を防ぐために、

計画的に停電を起こして需要量を供給力に見合う量まで減らす。

地域を決めてその地域を順番に一定時間強制的に停電させる~輪番停電

終戦直後の日本で、あるいは電力投資が間に合わない新興国・途上国で起こったことが、現代の日本でも起こってしまった。

Page 12: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 12

2011年3月の輪番停電

変電所単位でエリアの電気が止まる。

⇒信号、鉄道なども停電。都市機能が麻痺状態に。

需給を見て停電しないこともあり得た~しかし停電の可能性がある限り、安心して事業などができない。

⇒実際の停電の有無によらず企業活動等に大きな打撃

国土交通省等の外部の指摘により、混乱をより小さくする改善が続く←電気のプロと思われていた東京電力のお粗末な能力が関係者に知れ渡った。

Page 13: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 13

2011年夏東京電力エリアの電力不足

2011年春の輪番停電は、供給力の一部回復、消費者の大きな節電努力と気温の上昇により一旦解消。

日本では北海道を除いて電力需要のピークは夏。しかし夏に向けて供給力の回復は限定的で、再び電力不足の懸念。

⇒輪番停電を避けるため、平日昼間の電力消費量を15%削減することを要請。

それでもやむを得ない場合の輪番停電の計画。

Page 14: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 14

2011年夏の東京電力エリアの対策

企業は生産を他エリアの工場にシフト

東京エリアの工場では平日から休日にシフト

エアコン、エレベータなどの使用の抑制

各種行事の6月への前倒し、秋への延期、他エリアへのシフト

結果的に節電は目標を上回る19%に。

猛暑にはならなかった幸運も相まって、結果的に輪番停電は回避された。

⇒しかし企業部門の負担は大きく、不満は高まった。

Page 15: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 15

電力供給力不足の他エリアへの波及当時の菅首相の要請により浜岡原発の停止

⇒中部電力エリアでの2011年夏の供給力不足の懸念

~東京電力と中部電力で電力を取り合う事態にも

その後、浜岡にとどまらず日本中の原発が定期点検で止まった後再稼働できない状態に

⇒2012年夏には原発比率の高かった関西・九州電力エリアで供給力不足懸念。

両エリアでは2011年の東京電力管内と類似の対策がとられた。

Page 16: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 16

西・北日本での電力不足

大飯原発の再稼働、発電設備の定期点検の繰り延べ、消費者の多大な節電努力などの結果、猛暑に見舞われなかった幸運も相まって輪番停電は回避。

しかし、特に企業部門での需要家の不満は高まる

冬ピークの北海道電力管内での電力不足懸念⇒節電対策、緊急設置電源の設置、定期点検の繰り延べなどの対策で乗り切る。

以降数年間、夏は関西、九州、冬は北海道で電力不足の懸念と対策が続く

Page 17: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 17

電力供給不足と連系線震災直後の3月においても、その年の夏も、翌年以降

も日本全体での電力供給力は需要に見合うだけの量はあった。

にもかかわらず各エリアで電力危機が起こったのは、各地域を結ぶ送電線(連系線)の容量が足りなかったから。

東京電力管内6000万kWと言われていた系統容量(中部以西の西日本全体ならこれより大きい)に比して、東西を結ぶ連系線の容量は震災前僅か120万kW。

しかも中部電力の送電投資の遅れにより、これすらフルに使えない状態だった。

Even just after the earthquake, the national-wide

Page 18: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 18

連系線の機能緊急時(電力不足時)に電力の相互融通を可能にする

⇒安定供給確保には絶大な威力

平時には地域間の電力の経済的取引を可能にする

⇒地域の大手電力会社間の競争を可能にする

~潜在的な競争圧力が高まるので、結果的に使われなくても競争を促進し経済効率性を改善←しかしこ

れは消費者余剰を増やすが、既存電力会社の利潤を減らす。

⇒一般電気事業者は送電投資を、特に連系線の投資を怠る強い経済的な誘因を持つ

Page 19: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 19

東西の連系線の強化震災前に30万kW東西を結ぶ連系線の増強提案があった

⇒一部の経済学者の支持にも拘わらず、このささやかな提案は旧一般電気事業者の強い反対で葬り去られた。費用に見合う程の効果が無いとの理由で。

震災後連系線の必要性を再検証。一般電気事業者の抵抗を押し切って180万kWの増強を決定。

安定供給を何よりも重視するはずの一般電気事業者が安定供給に絶大な威力を発揮する連系線投資に反対し、経済効率性を重視する経済学者が賛成するという奇妙な構図。⇒利害関係者にインフラ投資を任せると必要な投資もなされなくなる典型例。

Page 20: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 20

歪んだインフラ整備スマートメータ。30分ごとの電力消費量を計測し、通

信機能を備えてそのデータを送配電部門に送信。送配電部門からの通信で、開閉や最大電力消費量(アンペア契約)の変更も可能。

電力価格を30分コマごとに変えられる。→電力の需給の厳しい(電気が余っている)局面での価格を高く(低く)出来る。需給が厳しいときに電力消費量を抑

制する代わりに平時の電気代を安くする、等の価格による需要のコントロールも可能になる。

→電力の供給安定性の向上。電力投資の効率化。

Page 21: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 21

スマートメータと輪番停電

輪番停電~基本的に一定のエリアの電気が全て止まる

スマートメータを使った電力使用制限~使用アンペアを制限。

スマートメータを使った電力使用制限のメリット

・そもそも価格メカニズムを使って基準となる消費量を減らせる

・命の危機のある機器を備えている家庭の消費制限を事情に応じて緩められる。

・各消費者が優先順位をつけて消費パターンを選べる。

⇒より合理的で効果的な節電が可能になる

Page 22: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 22

輪番停電と分散型電源

停電すると、家庭の貴重な分散型電源から系統への電力供給も止まる⇒PV(太陽光発電)の電気もコンセ

ントを切り替えて自家消費して使い切らない限り貴重な電気が無駄になる。ブラックスタート機能のない家庭用燃料電池は止まるし、あってもPVと同じ状況。

スマートメータを使った節電ならこのような無駄がなくなる。

Page 23: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 23

スマートメータの普及と電力事業者世界に先駆けて2値・4値メータを導入(スマートでな

い電子メータ)

世界に先駆けてスマートメータを研究・開発

しかし関電を除いてスマートメータの普及には消極的

「スマートメータを使った需要管理など検討するにも値しない」「スマートメータを使った需要管理など学者の道楽。電気事業者の投資行動がスマートメータによって変わることなど断じてない」

ここでも効率性を重視する経済学者が推進し、安定供給を何より重視するはずの電力事業者が、安定供給に絶大な威力を発揮するスマートメータの普及を阻害

Page 24: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 24

電力自由化と30分同時同量

電力小売り事業者は、顧客の電力消費量と調達した発電量を30分単位で合わせる。

超過した分を余剰インバランス、不足した分を不足インバランスといい、それぞれ送配電部門をもつ一般電気事業者が引き取るあるいは補給する。

⇒自由化した市場では顧客の電力消費量を30分単位で計量する必要がある。

Page 25: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 25

スマートメータと電力自由化自由化した市場では顧客の電力消費量を30分単位で計

量する必要がある

~スマートメータがあれば家庭用の電力消費量も計量できるが、無ければ一定の算式で消費量を見なして配分する必要がある~プロファイリング

複雑な制度設計と準備の時間がかかる

⇒スマートメータがないと家庭用市場の自由化を遅らせることが出来る。~電力会社がスマートメータ普及に消極的だった理由。

Page 26: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 26

かつてのインバランス制度・料金

3%を超える余剰インバランス⇒一般電気事業者がただでもらう。

3%を超える不足インバランス⇒懲罰的な料金で一般電気事業者が不足分の電気を供給

大きなインバランスを出すと大きな損失が生まれる

規模が大きいほどインバランスは出にくい

⇒人為的に作られた規模の経済性、参入障壁

Page 27: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 27

不合理なインバランス制度需要家Aの工場1は電気事業者αから、工場2は電気事

業者βから電力を購入。工場1のトラブルがあり生産を工場2に瞬時にシフト。事業者αは自社の発電を絞り、事業者βは発電を増やす調整を強いられる。

地震により工場1と事業者βの一つの発電所が停止。⇒全体の需給は一致していても、事業者αは自社の発電を絞り、事業者βは停止していない発電所の発電を増やす調整を強いられる。

⇒どちらも社会的には全く無駄な調整。

Page 28: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 28

東日本大地震直後に停止されたインバランス制度

東日本大震災直後、東京電力は多くの電源を失い電力不足に。需要家の節電協力。需要家は新電力の顧客も含まれる。新電力は自社の需要家が予想以上に節電したら自社の発電を絞る誘因を持つ。

輪番停電が必要なほど電気が不足している状態で、安定供給のためには新電力も目一杯発電すべき。

⇒安定供給を損なう愚かな制度。

~震災直後の東京エリアではインバランス制度停止。

このような、安定供給が最も重要となる災害時に安定供給を損なう愚かな制度が、「安定供給」を口実に作られていた。

Page 29: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 29

なぜこんな愚かな制度がこの愚かな制度は一般電気事業者と工学系の研究者の

「安定供給上必要」との主張により作られ、2人の

経済学者が強硬に反対を続けたのにもかかわらず震災時まで維持された。

この制度のもとでは小規模事業者が著しく不利に~需要の変動や発電機の突然の停止は規模が大きければならされるが規模が小さいと甚大な影響⇒人為的な規模の経済性、強力な参入障壁

安定供給は経済的目的を隠す口実として使われる典型例。

Page 30: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 30

危機対策としてのインフラ投資と制度設計

危機が起こる度にインフラ投資を積み増す、制度を再設計する⇒この対応は重要だが、これだけでは常に間に合わない対策になる

利害関係者や中立者の振りをした利害関係者の代理人に投資の意思決定や制度設計を任せないことが本質的な危機対策。

Page 31: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 31

電力危機と多様性

電源種の多様性、電源立地の多様性⇒供給安定性向上

震災前のエネルギー基本計画~2030年時点で原子力比率50%、再エネ比率20%としていた。

震災時はこれより遙かに低い原発比率(30%未満)だっ

たが、それでも全電発が止まると電力危機となった。

←原発のような社会的受容性が低い電源への依存度を高くしすぎるのは安定供給の観点からも問題。

⇒基本計画は改定され、原発比率は20%に改定

Page 32: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 32

再エネ電源の多様性

PVへの依存度が高すぎる

⇒発電予想を誤ると電力不足に

特に冬期は天候予想を外して需要が増える(例えば予想外の気温低下、降雪)時にはPVの発電量も低下

~再エネの中でも多様性が重要

この愚かな制度は旧一般電気事業者と工学系の研究者

Page 33: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 33

電源立地の多様性

発電機が一カ所の発電所に集中⇒災害で一挙に供給力を失う~脆弱な供給体制

沿岸部に大規模発電所が集中立地←東日本大震災で一挙に供給力を喪失

北海道エリアでは泊発電所と苫東厚真発電所に供給力を集中←震源近くの苫東厚真の3電力の停止(+4回線の送電事故)により、初のブラックアウトが発生

~発電費用は節約できるが災害に脆弱な電源立地

Page 34: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 34

系統電力と分散電源のバランス

歴史的に旧一般電気事業者は大規模発電所を遠隔地に作り、これを大送電線で需要地まで運んでくるビジネスモデル

分散型電源~需要地近傍で発電できる。

⇒大規模系統電力と分散電源の組み合わせが望ましい

しかし旧一般電気事業者は分散電源に比較優位を持っていない。⇒分散型電源を抑圧する強い誘因

Page 35: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 35

分散電源PV等の小型再エネ電源

燃料電池などのコジェネ

自動車

電気自動車~動く揚水発電所

燃料電池車~動く火力発電所

プラグイン・ハイブリッド~両方の機能をもつ

電力系統網と次世代自動車を結びつける(VtoH、VtoG)

→太陽光などの不安定電源が大量に入る社会で、安定性確保と系統費用増加を抑制する切り札にも。

Page 36: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 36

送配電部門の中立性

2001年以降電力市場が段階的に自由化(家庭用まで自由化されたのは2016年)

新規参入者は旧一般電気事業者の送配電ネットワークに接続して電気を顧客まで送る。←ネットワークは不可欠施設。

旧一般電気事業者は新規参入者と競争する小売り・発電部門と送配電部門を持つ。

⇒分散型電源を抑圧する強い誘因

送配電部門の中立性が重要

Page 37: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 37

送配電部門の中立性確保策

所有権分離:会社を分けて所有関係も断つ

⇒新規参入者への嫌がらせをする誘因をなくす

機能分離:送配電部門の機能を独立機関へ以降

⇒新規参入者への嫌がらせをする手段をなくす

法的分離:会社を分けるが所有関係は規制しない

⇒取引監視・規制で中立性を確保

~法人格を分けると社内取引が契約関係に←これがないと監視が困難。

震災後の改革は法的分離+一部の機能分離

一部の機能分離は2015年から、法的分離は2020年から

Page 38: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 38

電力システム改革

Page 39: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/233939

電力システム改革スケジュール第一段階 広域機関の設立(2015年4月)

電力取引監視等委員会発足(2015年9月)

第二段階 家庭用も含めた小売全面自由化(2016年4月)

第三段階 発送電の法的分離(2020年4月)

それぞれの局面で下記対策を講じる。

(a) 安定供給のための対策

(b) 競争基盤の整備・強化

(c) 競争条件の公平化、イコールフッティングの確保

⇒イコールフッティングを口実として、総括原価と地域独占と公益事業特権に守られて築いた旧一般電気事業者の競争優位を安易に温存しないよう配慮する必要がある。

Page 40: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234040

電力システム改革のこれまでの進展

料金審査

7社の料金値上げ→2社の再値上げ→託送料金審査

・一般電気事業者の常識が一般社会の非常識であること

・(全てではないが)安定供給にまつわる多くの議論が単なる口実に過ぎなかった疑いがあること

・相互に矛盾する主張がもっともらしく語られていたこと

が明らかに

⇒旧一般電気事業者が支配する世界の終わりの始まり

一方で託送料金の体系の不合理性も明らかに→まだ大きな問題が残っている。

Page 41: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234141

広域機関の役割

(1)緊急時にスムーズに電力の広域流通ができるようにする~普段から把握できていなければ緊急時にも対応できない。⇒連系線・基幹送電線の計画・建設でも大きな役割を果たす(べき)。

FC、東北・東京間連系線、新々北本増強~問題はあるものの、現時点では順調に機能。

旧一般電気事業者は、競争を抑制するために投資を抑制するような、安定供給を犠牲にして利益を優先する行動がとりにくくなる。~旧一般電気事業者が市場を支配する構造を変える役割も。

容量市場の設計・運営主体になるなど当初の想定以上に大きな役割を果たす→ますます重要な機関に

Page 42: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23

4242

基幹送電線整備と競争連系線を始めとする基幹送電線投資の強化

・限界費用格差を縮小~発電コストの削減

・供給安定性の向上、需給逼迫の可能性を減らす

・不安定な再エネが接続しやすくなる

・地域間(電力間)競争、参入者との競争を激化させる

一般電気事業者は従来連系線の強化より地域内での電源確保を優先~震災前にはFCを僅か30万kW増強するというささやかな提案さえ葬ってきた

自らのビジネスモデルに反する分散型電源・再生可能電源の導入を可能にする基幹送電線の増強も怠ってきた

広域機関ができ、これが機能すると、このようなことはできなくなる⇒競争圧力は高まる

Page 43: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234343

電力・ガス取引監視等委員会委員長に改革派の経済学者~およそ考えうる限り最適任の人選

→改革が後退していないことの証左

取引監視機能に加えて

・ルール策定・託送料金審査・競争評価

の機能をエネ庁から移管

しかし発電(卸売市場)の競争基盤強化策の議論は停滞。自主的な取り組みの限界がこれだけ明らかになってるのにまだ具体的な動きが鈍かった。

→2重予備力問題の解消、グロスビディング、ベースロード電源市場、内外無差別規制→重要な一歩になり得る。

Page 44: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234444

電力全面自由化

300社を超える登録

多様な事業者

~しかし多様なビジネスモデルとはなっていない

電力間競争(旧一般電気事業者の域外進出)

~電事連というカルテルと疑われる組織が温存されていることには注視が必要

⇒本当にactiveで効率的な事業者が生き残る市場になるかを見守る必要がある。

Page 45: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234545

料金競争新規参入者の料金体系の大半は、現在の規制料金を基準に若干の値下げをするというもの。使用量が大きいほど割引率が高いことは自然。

セット販売・ポイントサービス~これも予想の範囲

本来は単なるセット販売ではなく多様なサービスの供給が期待されたが残念ながら道まだ半ば。

(1)エネルギーマネージメント~省エネ、DR

(2)単なるセット割引でなく、異なるサービスの融合などを伴う高付加価値化

(3)環境価値・地産地消などの付加価値→エネルギーミックスの主体的な選択

Page 46: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234646

電力システム改革の推進・JEPX市場の改革

~グロスビディング、2重予備力問題解消

・インバランス料金改革

・ベースロード市場創設

・調整力市場改革

・間接的送電権、系統接続・利用の合理化

⇒マスタープランに基づく系統整備計画の策定

・容量市場

Page 47: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234747

電化社会長期的な低炭素社会(たとえば2050年以降)を目指すとき、

バイオ社会、水素社会というシナリオもあるが、現時点で最有力なシナリオが「電化社会」⇒発電をゼロエミッションにして、エネルギー消費の大部分を電気に変える。

家庭用のエネルギーから都市ガスを駆逐するといった姑息で志の低いオール電化ではなく、産業用・業務用も含めて社会のあらゆる分野を電化する。

同時に電源をゼロエミッション化する。

Page 48: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 48

調整力費用

最も価値の高い電源

~必要なときに必要な量を安定的に発電できる電源

次に価値の高い電源

~安定的に一定量の発電の出来る電源

最も価値の低い電源

~安定的に供給できない電源

価値の高い電源の普及が調整力費用を下げる

バイオマスは潜在的に最も価値の高い電源になり得る。しかし現在の制度では調整力を上げる誘因がない。

Page 49: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/234949

電気の特徴

実同時同量~消費量に合わせて発電する必要

電気の価値は条件(季節・時間・気象条件等)によって

100,000倍のオーダーで価値が違う。

⇒消費するタイミングを替えるだけで費用を劇的に下げられる可能性がある。このポテンシャルを実現するには制度改革が重要。

Page 50: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/235050

電力のエネルギーマネージメント

エネルギーマネージメント~省エネ、DR

これが現時点で脇役なのは、消費者の認知度が低いから、小売事業者が安易だから、だけとは必ずしも言えない。これらの価値が十分に生かせる体制整備がまだ追いついていないことも原因の一つ

←ネガワット取引などが、そのポテンシャルを十分に生かせるほどには制度が整備されていない

~容量市場、調整力市場の創設・効率化、インバランス料金制度の改革、託送料金制度改革、FIT制度改革などはDRの発展を後押しするものになる(はず)。

Page 51: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 51

ネガワット取引

・電力システム改革での重要な視点:供給と需要の等価性~供給力を増やすのと需要を減らすのは等価との思想を貫徹する

⇒需要を適切に制御することがお金になるシステムへ

需要側も主役になるシステム

・様々な形でネガワット取引、需要管理がシステムの中で組み込まれてくる⇒巨大な市場、ビジネスチャンスの出現

・十分な量の大規模発電所を遠隔地に作りこれを大送電線で消費地まで運んで売る単純なビジネスモデルに替わる新たなビジネスモデルの出現

Page 52: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 52

需要側の対応実同時同量→ピークにあわせた設備が必要→ピークの(社会的)費用はとてつもなく高い

⇒負荷平準化の社会的利益は非常に大きい

夏昼間の需要を夜にシフトさせられれば大きな利益

~深夜割引料金、需要開拓(エコキュート、電気自動車)

今後はこんな単純な仕組みだけでは持たない

・太陽光発電が普及すると夏の昼間むしろ電気が余ってしまう。同じ昼間でも雨が降ると電力が不足する。

・3時間日本中の風力発電が止まることすらあり得る。

⇒従来より遙かにきめ細かなコントロールが必要

Page 53: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 53

需要側の対応とスマートメータスマートメータ:単なる計量器ではなく、ほぼ全戸に付く通信機器でもある

・30分単位の計量→データ解析による省エネ事業、合

理的な価格体系による需要のコントロール~本命は自動制御。IoTの世界。NTT東西の光卸は潜在的にはこの追い風だが現時点ではまだ活かせていない。

・双方向通信機能~自動検針(需要家→事業者)、需要制御(事業者→需要家):非常時にも輪番停電を回避

昼間でも晴天時と雨天時では電気の価値が全く異なる。スマートメータはこの区別を可能にする。

これを使いこなして参入する道が自由化で開かれる

Page 54: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 54

次世代自動車電気自動車~動く揚水発電所

燃料電池車~動く火力発電所

プラグイン・ハイブリッド~両方の機能をもつ

電力系統網と次世代自動車を結びつける(VtoH、VtoG)

→太陽光などの不安定電源が大量に入る社会で、安定性

確保と系統費用増加を抑制する切り札。自動車メーカーは潜在的にはエネルギー事業者となりうるし、次世代自動車とPVも相性が良いはず。HEMSなども同様。

しかし適切な価格incentiveと自由な接続環境がなければ、技術力を成長に結びつけられない。

更なる電力システム改革によってこの道が開かれる。

Page 55: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 55

電力システム改革と費用抑制

従来の発想:需要家が使う電気の量に合わせて信頼できる供給力(発電能力)を備える⇒殆ど使わない発電機の固定費も結果的に消費者が負担

不安定な再生可能電源が増えると、需要の変動だけでなく変動電源の発電量の減少にも備える必要が出る

⇒更にコストが増える

電力システム改革後の発想:需要と供給は等価

供給力を備えるのか、需要をコントロールするのか、費用の安い対策を事業者の創意工夫の中から生み出す

⇒電力の消費者が主役となる可能性も

Page 56: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 56

新技術が収益化できない

再エネ電源の出力抑制が必要となる程春夏の好天時の昼間に、周波数調整をしながら蓄電、水素に変える

夜間などの電気が不足する時間帯に、周波数を調整しながら放電・発電

(a) 社会的限界費用がゼロの局面で電気代が下がっていない→支配的事業者の問題、系統部門・広域機関の問題、不合理な託送料、賦課金、不合理な小売価格体系

(b) 一次調整力の機能を果たせるのに、この能力を適切に買い取ってくれる市場がない→調整力市場の問題

Page 57: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 57

新技術が収益化できない

・EV, FCV, Plug-in-Hybrid等を使って、電力の極端な不足時に電力を供給し、余剰時に上げDRの機能を果たす

・エアコンの稼働を周波数に合わせて自動調整する

・エコキュートで需給調整する

インバランス料金が合理化され、合理的な容量、調整力市場が形成されれば、収益の機会が大きく増すはず。発電機しか頭にない古い発想しかできない人に制度設計を任せず、合理的な市場が形成されれば、巨大なマーケットが生まれる可能性もある。

⇒これができれば低コストで電力供給の安定性を高められる。

Page 58: Product Diversification, Entry-Deterring Strategies …matsumur/20191023project.pdf2019/10/23 1 東日本大地震後の電力危機と危機対応 -将来に備えた電力システム改革

2019/10/23 58

電力システムと安定供給

電力システム改革前:電力危機の対応~発電投資を増やす、需要を強制的に減らす

電力システム改革が進展した後~市場メカニズムを用いた節電⇒安定供給対応力がより高まる。

より低コストで安定供給を確保