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-1- Q9 起業家教育とは何ですか 起業家教育は,起業(会社づくり)のプロセスとして「会社の設立 「販売体験 「決算活動」など を擬似的に体験したりする中で,起業家精神といわれる 「チャレンジ精神」や「創造性」等を養うこ とや自分の将来の「生き方」を考えるきっかけとすることを主な目的としたもので 「生活の中から社 会への自立を目指す学び」とも言うことができます。教育改革国民会議(2000年)が起業家精神の涵 養を取り上げたことで注目されるようになり,全国的に展開されつつあります。 9.1 起業家教育の必要性 キャリア教育の中で生徒の「生き方,在り方」について取り上げる場合,児童生徒が自らの将来を 既存の職業に依拠する形での「生き方,在り方」もあれば,新しく別の形で生きていこうとする 「生 き方,在り方」も考えられます 「起業」は基本的には自分の力で自分の将来を切り開こうとするもの で,児童生徒が夢や希望をもった生き方を考える上で参考になる教育です。 9.2 起業家教育の特長 起業家教育の教育効果から以下の,3つにまとめられます。 (1) 一起業家として,社会に働きかける立場からの問題解決を図る目標のはっきりした,児童生徒主 体の学習です。 (2) 社会にかかわり,実際のビジネス活動に触れることで,児童生徒たちが実社会に必要な技能を習 得したり,その必要性を実感することができます。 (3) 成功や失敗の経験を通して,自己評価をすることが簡単で,自らの適性や能力を考え,生き方を 考えることができるようになります。 9.3 起業家教育と学習指導要領との関係について 現行の学習指導要領における,キャリア教育に関する事項は相当数に上っています。例えば 「総合 的な学習の時間」のねらいは 「自ら課題を見付け,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決 する資質や能力を育てること」や「学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探求活動に主体 的,創造的にとりくむ態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること」とされ,社 会体験や生産活動などの体験的な学習を重視しています。また「特別活動」についても職業観・勤労 観を育む啓発的体験の実施が重視されています。起業家教育はこの観点からすると,特別活動や総合 的な学習の時間において取り組むのにふさわしいものと考えられます。 さらに,学習指導要領では 「生き方」指導や体験活動,勤労観,職業観の育成などにかかわる内 容はかなり充実しています 「市場調査 「商品の試作 「広告宣伝 「商品デザイン 「決算」等の起 業家教育で展開される多様な場面は,各教科の学習を生かすことを可能とし,各教科の横断的支援の もとでの展開が行いやすいものになっています。これらの点から起業家教育は,現行の学習指導要領 の下でも積極的に取り組まれるべきと考えます。

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Page 1: Q9 起業家教育とは何ですか...-1-Q9 起業家教育とは何ですか 起業家教育は,起業(会社づくり)のプロセスとして「会社の設立「販売体験「決算活動」など」」

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Q9 起業家教育とは何ですか

起業家教育は,起業(会社づくり)のプロセスとして「会社の設立 「販売体験 「決算活動」など」 」

を擬似的に体験したりする中で,起業家精神といわれる 「チャレンジ精神」や「創造性」等を養うこ,

とや自分の将来の「生き方」を考えるきっかけとすることを主な目的としたもので 「生活の中から社,

会への自立を目指す学び」とも言うことができます。教育改革国民会議(2000年)が起業家精神の涵

養を取り上げたことで注目されるようになり,全国的に展開されつつあります。

9.1 起業家教育の必要性

キャリア教育の中で生徒の「生き方,在り方」について取り上げる場合,児童生徒が自らの将来を

既存の職業に依拠する形での「生き方,在り方」もあれば,新しく別の形で生きていこうとする 「生,

き方,在り方」も考えられます 「起業」は基本的には自分の力で自分の将来を切り開こうとするもの。

で,児童生徒が夢や希望をもった生き方を考える上で参考になる教育です。

9.2 起業家教育の特長

起業家教育の教育効果から以下の,3つにまとめられます。

(1) 一起業家として,社会に働きかける立場からの問題解決を図る目標のはっきりした,児童生徒主

体の学習です。

(2) 社会にかかわり,実際のビジネス活動に触れることで,児童生徒たちが実社会に必要な技能を習

得したり,その必要性を実感することができます。

(3) 成功や失敗の経験を通して,自己評価をすることが簡単で,自らの適性や能力を考え,生き方を

考えることができるようになります。

9.3 起業家教育と学習指導要領との関係について

現行の学習指導要領における,キャリア教育に関する事項は相当数に上っています。例えば 「総合,

的な学習の時間」のねらいは 「自ら課題を見付け,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決,

する資質や能力を育てること」や「学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探求活動に主体

的,創造的にとりくむ態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること」とされ,社

会体験や生産活動などの体験的な学習を重視しています。また「特別活動」についても職業観・勤労

観を育む啓発的体験の実施が重視されています。起業家教育はこの観点からすると,特別活動や総合

的な学習の時間において取り組むのにふさわしいものと考えられます。

さらに,学習指導要領では 「生き方」指導や体験活動,勤労観,職業観の育成などにかかわる内,

容はかなり充実しています 「市場調査 「商品の試作 「広告宣伝 「商品デザイン 「決算」等の起。 」 」 」 」

業家教育で展開される多様な場面は,各教科の学習を生かすことを可能とし,各教科の横断的支援の

もとでの展開が行いやすいものになっています。これらの点から起業家教育は,現行の学習指導要領

の下でも積極的に取り組まれるべきと考えます。

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学習指導要領と起業家教育との関係(イメージ)

9.4 起業家教育とキャリア教育の関係

「キャリア教育」とは「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し,それぞれにふさわしいキャリ

アを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」とされています。

現在,文部科学省では「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例 」を示しキャリア教)

育の指針としています。そこでは4領域の8能力を「職業的(進路)発達に関わる諸能力」として取

り上げ それらを発達させることをキャリア教育の重要な課題としています 以下に示す表1は 枠, 。 ,「

組み」をもとに,それらを育むために起業家教育では,どのような観点で取り組みがなされるのか,

また,それにかかわる学習場面の例を示しました。この表はあくまでも例ですが,起業家教育を進め

ていくと8つの能力を育てる場面が,無理なく展開されることが指摘できます。したがって起業家教

育がキャリア教育の題材として優れたものであると言えます。

さらに,起業家教育のキャリア教育の題材としての最大の特長は,前述した事に加えて,キャリア

教育で育みたい領域の1つである「意思決定能力」をはぐくむ点にあると考えます。実際の活動にお

いては,内容の決定に関しても様々な決定が求められ,それに伴う結果や責任の問題について考えた

り,反省したりする場面も自然と出てきます。それは「起業家教育」が「社会に働き掛ける」立場か

らの学習で,いわゆる「調べ学習」に止まらない,優れて実践的な学習であるところから,由来する

ものなのです。

生   き   る   力 を   育   む   教   育

・ 生 活 の 中 か ら 自 立 す る 力・ キ ャ リ ア に 関 す る 諸 能 力 の さ ら な る 発 達

・ 自 己 決 定 力 の 育 成・ キ ャ リ ア に 関 す る 諸 能 力 の 発 達

学 習 指 導 要 領 に 基 づ く基 礎 ・ 基 本

キ ャ リ ア 教 育 に よ る系 統 的 横 断 的 支 援

起 業 家 教 育 の 視 点

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「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例 」国立教育政策研究所(2004)をもとに作成)

領域 領域説明 能力説明 起業家教育における育成のための取り組み

活動中の価格の変更や売れ残り商品の始末の決定など意思決定に伴って生じた結果を受け止め反省させたり、新たな課題が生じたら解決に取り組ませる

 表 1 起業家教育とキャリア諸能力との関係

事前準備のための「講演会」「インタビュー」他活動全体を通して「起業家」以外にも様々な職業と出会い、また自分たちも「仕事」に取り組むことで職業観・勤労観を養わせる

事業全体の計画や販売計画の策定など起業活動に関する様々な計画を立てさせ実行させることにより「計画」の大切さに気付かせ。自分の将来の「計画」の必要性に気付かせる

役割分担やそのための計画決めや、実在の様々な立場の人々との出会いや「起業家」「社長」といった役割に注目させることから,学校・社会における様々な役割の存在について考えさせる

具体的な販売や宣伝の方法の決定や販売価格・数量の決定など起業活動を通じて,様々な意思決定場面を経験させ,主体的に選択し,決定する

【職業理解能力】様々な体験等を通して,学校で学ぶことと社会・職業生活との関連や,今しなければならないことなどを理解していく能力

起業のための様々な集団活動で各自が様々な役割分担を考える中で、つまり企業における「人事」活動を通じ自他の理解と各自の個性の生かし方について考えさせる

集団活動を取り入れ「企業」という集団で話し合いをしながら目的を果たすことの難しさを感じさせたり、顧客とのコミュニケーションの大切さ、様々なコミュニケーションスキルの有用性に気づかせる

起業活動として,身近な産業や職業について調べさせ,まとめたり自分たちの活動計画や反省などをまとめ発表させたりする

意思決定能力

自らの意志と責任でよりよい選択・決定を行うとともに,その過程での課題や葛藤に積極的に取り組み克服する。

【選択能力】様々な選択肢について比較検討したり,葛藤を克服したりして,主体的に判断し,自らにふさわしい選択・決定を行っていく能力

【課題解決能力】意思決定に伴う責任を受け入れ,選択結果に適応するとともに,希望する進路の実現に向け,自ら課題を設定してその解決に取り組む能力

将来設計能力

夢や希望を持って将釆の生き方や生活を考え.,社会の現実を踏まえながら,前向きに自己の将釆を設計する。

【役割把握・認識能力】生活・仕事上の多様な役割や意義及びその関連等を理解し,自己の果たすべき役割等についての認識を深めていく能力

【計画実行能力】目標とすべき将釆の生き方や進路を考え,それを実現するための進路計画を立て,実際の選択行動等で実行していく能力

情報活用能力

学ぶこと・働くことの意義や役割及びその多様性を理解し,幅広く情報を活用して,自己の進路や生き方の選択に生かす。

【情報収集・探索能力】進路や職業等に関する様々な情報を収集・探索するとともに,必要な情報を選択・活用し,自己の進路や生き方を考えていく能力

人間関係形成能力

他者の個性を尊重し,自己の個性を発揮しながら,様々な人々とコミュニケ一ションを図り,協力・共同してものごとに取り組む。

【自他の理解能力】自己理解を深め,他者の多様な個性を理解し,互いに認め合うことを大切にして行動していく能力

【コミュニケーション能力】多様な集団・組織の中で,コミュニケーションや豊かな人間関係を築きながら,自己の成長を果たしていく能力

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Q10 「総合的な学習の時間」への導入の仕方について教えてください

起業家教育は,教育課程上「総合的な学習の時間」の中に取入れるのが一番ふさわしいと考えら

れます。そこで起業家教育の学校への導入のモデルとして 「総合的な学習の時間」への導入につい,

て考えます。

10.1 起業家教育の導入の考え方について

よく「起業家教育」の導入について 「決算や会社の知識」が必要だとか,いろいろ心配するあま,

り,導入をためらうケースが多いようですが,起業家教育のポイントは 「起業家精神」を学ぶ事で,

あって 「起業のプロセス」を知識として学ぶことではありません。注意して欲しいのは,実際の起,

業活動は,全ての準備が完璧になされて初めて行われるものではなく,様々な理由で失敗することも

多く,そこから立ち直っていく過程の中で 「企業家精神」が生かされていくのです。,

ですから,総合的な学習の時間の導入については,全てが完璧に整って,必ず成功するという事に

こだわる必要はありません。確かに児童生徒に成功体験を積ませることは,大切だと考えますが,よ

り大切なことは,様々な問題や失敗を乗り越えようとする力を身に付けさせることです。これが,起

業家教育で大切なことです。あまり,失敗や準備不足を恐れす゛萎縮することなく,教師自身が「企

業家精神」を発揮して,取り入れることが求められます。

10.2 起業家教育の目標の設定

総合的な学習の時間の中に位置付ける以上 まずはじめに,学校の教育目標,学年・学科等の教育

目標との関連や,各教科・科目や特別活動との関連を踏まえて 「総合的な学習の時間」の目標と役,

割をその中の起業家教育の位置付けを,全教職員で共通理解することが大切です。そのことがこの時

。 , , ,間の成否のカギとなります 各学校には それぞれ独自の教育目標があり その目標の実現に向けて

各教科・科目や特別活動,総合的な学習の時間における学習活動が行われています。したがって,総

合的な学習の時間にも,その学校における目標があるはずです。その中にキャリア教育としてのねら

いや起業家教育のねらいが取入れられていることが大切になってきます。

例(高校の場合)

(1) 「総合的な学習の時間」学校全体目標の例

進路に関する調査・研究や,体験的な学習活動を通して,自己の職業生活の実現のための課題を見い

だす。併せて,自ら考えをもって表現したり,討論したりする過程を通して,人生観・勤労観・職業

観など自己の在り方生き方について主体的に考える力を育成する。

(2) 「総合的な学習の時間」学年目標の例 (起業家教育は3学年で実施)

1学年 自己の目標を見つけるとともに自己理解を深める。

2学年 自己の現在や将来について考え自己の確立を図る。

3学年 進路を主体的に選択しその実現のために体験的活動を通して具体的な努力をするなど自,己の在り方生き方について考えさせる

10.3 学習内容(単元)の決定について

目標が設定されたら内容について検討します。まずは総合的な学習の時間全体の中で内容を決定し

ます。総合的な学習の時間ですので,様々な内容が想定されますが,ここでは起業家教育の実施を明

確に示します。起業家教育は「進路」を内容とする総合学習の時間として考えられるべきでしょう。

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他の内容については,学校や児童生徒の実情に応じて検討されるべきだと考えます。起業家教育を行

うから,一年間「進路」をしなければならないというものではありません。

進路に関する内容の例 高等学校で(3年次に実施する場合)

1年 「将来のために何ができるか考えよう」 進路先の内容について調査理解発表する

2年 「インターンシップにチャレンジ」 体験活動を通して社会の在り方を理解する

3年 「会社作りにチャレンジ」 起業家活動を経験する

次に年間指導計画を策定します。

この年間指導計画は,決定された学習内容に基づき,各単元を設定していくのですが,この段階で

起業家教育にかかわる単元を設定していくことになります。

その際の,注意事項としては

(1) 他の単元も含めて,年間の学習内容を実現させること,各単元で全てを実現したり,逆に一年間

で全てを実現できなかったりということのないようにします。

(2) 単元の数は柔軟にしましょう。起業家教育で一年間という必要はありません

(3) 単元間のつながり方は多様であってよいでしょう。それぞれが独立していたり,一貫した流れの

中にあったり工夫がなされてもよいでしょう。

(4) 指導時数は柔軟に考えましょう。特にイベントなどを実施する場合にはそのためには,時間割編

成の見直しなども必要かもしれません。また児童生徒が意欲的になると時数が伸びてしまいがち

になりますが,計画通りに進めようとすることも大事な要素です。

10.4 単元指導計画について

標準的な枠組みを下記に例として挙げてまとめてみました。単元構想については次節でその例を示

します。

1 単元名 具体的にどのような活動が展開されるかわかりやすく表記することが望ましい。

例 「~会社」を設立して 「~」の販売を成功させよう 」, 。

2 単元の目標 起業家教育が行われること,指導内容のポイントそして期待される生徒像を

なるべく簡潔に表現します。細かいことは評価規準に反映させた方がわかり

やすくなると考えます。

例1 起業家教育を通して,現代社会における起業家の存在意義に気づくと共に,企業を経

営することの苦労や工夫を理解し,自己の適性や進路について考えさせる。

例2 起業活動を通して,集団で物事に取り組むことの大切さ,様々な問題に計画的に取り組

み解決する力を身に付けさせる。

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単元指導計画の枠組みの例

第○学年 総合的な学習の時間単元指導計画

1.単元「○○○○○ (全指導時数)」

2.単元の目標

3.単元の評価規準

○関心・意欲・態度

○思考・判断

○技能・表現

○知識・理解

4.学習過程と評価計画

段階 学習活動(時間) 【学習活動で重点的にはぐくむキャ 評価資料

リア諸能力 「キャリア諸能力」を】

はぐくむ活動に対応した評価規準

5.評価資料

Q11 起業家教育の系統的発展性の考え方を教えてください。

各学校段階の単元構想を示す前に,根拠となる系統的発展性について考えます。

キャリア教育における系統的発展性とは,児童生徒のキャリア発達に応じた学習が行われていくこ

とと考えられます 「総合的な学習の時間」の流れとして見ると,各学校段階でそれほど大きな違い。

があるわけではありません。したがって,系統的発展性を確保するためには,起業家教育本来の課題

に加えてキャリア発達課題にそった適切な課題を設定することが重要になります。以下ではその考え

方の例を示したいと思います。

「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例 」を見ると以下の点が発達課題の一部とさ)

れています。

小学校(高学年)

・自己及び他者への積極的関心の形成発展

・勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の形成

中学校

・興味関心等に基づく職業観・勤労観の形成

・生き方や進路に関する現実的模索

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高等学校

・自己理解の深化と自己受容

・選択基準としての職業観・勤労観の形成

・将来設計の立案と社会的移行の準備

そこで,これらを踏まえて

小学校段階では

「集団での活動を通して,仲間への思いやりの気持ちをもつと共に,自分の役割を考える」

中学校段階では

「起業活動における社会とのかかわりを通して,自分の将来の職業について考える」

高等学校段階ではでは

「企業の果たす社会的役割を考えることを通して,自分の将来の社会的役割,生きがい・やりが

いについて考える」

という,ねらいを単元構想の中に取り入れていくと,キャリア発達課題に沿った系統的発展性を確

保できると考えられます。

これは,あくまでも1つの考え方です。各学校で実情に応じて適切なねらいを設定してください。

ポイントは,キャリア発達課題をとらえて,各段階にふさわしいねらいを設定することです。

これらを踏まえて次節からは各段階における単元構想の例を示していきます。

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Q 12 起業家教育を位置付けた「総合的な学習の時間」での単元構想について教えて

ください

各学校段階での単元構想は,基本的に以下の図の流れで考えます。

まず起業家教育を「事業計画」づくり・ 企業活動」の実施・ 決算」という単純化した形で捉え「 「

ます。次に「総合的な学習の時間」の基本的な形を踏まえて「課題設定」を「会社づくり」や「事業

計画づくり」の場面と考え 「課題追究 ・ 課題解決」の段階を「準備」や「営業」の場面と考え,。 」「

最後に「まとめ」として「決算 「評価」を行うというように考えます。」

次に,各段階での具体的な単元構想ですがそれについは,次節で,系統性について論じてから示し

ます。

学習段階

課題設定

課題追究

課題解決

まとめ

学習活動

「会社」の作り方について学ぶ

自分たちの「会社」をつくる

「準備」活動を行う

「営業」活動を行う

決算について学ぶ

評価を行う

起業活動とし

ての流れ

事業計画

づくり

「企業」活

動の実施

「決算」と

反省

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Q13 小学校における起業家教育を位置付けた「総合的な学習の時間」での単元構想

について教えてください。

小学校段階での単元構想は,基本的に以下の図の流れで考えます。基本構想図に従いまず起業家教

育を 「事業計画」づくり・ 企業活動」の実施・ 決算」という単純化した形でとらえます。事業計, 「 「

画作りでは 「話し合い活動」に重点を置きます 「企業」活動では「集団での活動」に重点を置き, 。

ます。最後に「まとめ」として「決算 「評価」を行います。」

学習段階

課題設定

課題追究

課題解決

まとめ

学習活動

・自分たちが、どんな活動をして

いくか話し合う

・そのためには、どんな準備が、

必要か話し合い必要ならば調べ学

習を行う(課題設定)

・「準備」活動を行い、問題

が生じたら話し合いを行い解

決に取り組む

・課題追求のための「営業」

活動を行う

・決算について学ぶ

・体験を通して学んだことを整

理し、発表原稿にまとめる

・発表会や反省会を通して、自

分の役割への取り組みや仲間の

活動について振り返る。

起業活動とし

ての流れ

事業計画

づくり

「企業」活

動の実施

「決算」と

反省

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Q14 中学校における起業家教育を位置付けた「総合的な学習の時間」での単元構想

について教えてください。

中学校段階での単元構想は 「系統的発展性」の項で示したように小学校で取り組んだ学習活動に,

加え 「社会とのかかわり」をもたせ 「自分の将来」について考えさせる単元が設定されることが, ,

求められます。そのために各段階で生徒は小学校での内容に加えて以下の事を行います。

事業計画作りでは 「起業家インタビュー」や「企業訪問」を行います。,

「企業」活動では,準備段階での対外交渉や学校外に向けた宣伝・販売活動を行います。

最後に「まとめ」として「決算 「評価」を行い「自分の将来」について考えます。」

学習段階

課題設定

課題追究

課題解決

まとめ

学習活動

・自分たちが、どんな活動をしていくか話

し合うヒントとして「インタビュー」や訪

問活動を行う

・そのためには、どんな準備が、必要か話

し合い必要ならば調べ学習を行う(課題設

定)

・「準備」活動を行い、必要なら「対

外交渉」も行い問題が生じたら話し合

いを行い解決に取り組む

・課題追求のための「営業」活動とし

て対外的「宣伝・販売」を行う

・決算について学び、利益の処分につ

いて考える

・体験を通して学んだことを整理、

発表原稿にまとめる

・発表会や反省会を通して、自分の将

来についても考える。

・お世話になった人たちへのお礼も考

える

起業活動として

の流れ

事業計画づ

くり

「企業」活

動の実施

「決算」と

反省

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Q15 高等学校における起業家教育を位置付けた「総合的な学習の時間」での単元構

想について教えてください。

高等学校段階での単元構想は 「系統的発展性」の項で示したように小中学校で取り組んだ学習活,

動に加え 「企業の社会的役割」を考えさせたり 「生きがい」について考えさせる単元が設定され, ,

ることが求められます。そのために各段階で生徒は小中学校での内容に加えて以下の事を行います。

事業計画作りでは 「起業家インタビュー」や「企業訪問」を行いますが「社会貢献」取り組んで,

いる人たちや企業を探します。さらに自分たちの企業が何らかの形で地域社会に貢献できる形で営業

できないか検討します。

「企業」活動では,準備段階での対外交渉や学校外に向けた宣伝・販売活動を行います。また社会貢

献のために援助してくれる人たちも探します。

最後に「まとめ」として「決算 「評価」を行い「自分の将来」だけではなく「お金以外に得られ」

たもの」や「社会貢献 ・ 自己実現」といったことについて考えます。」「

学習段階

課題設定

課題追求

課題解決

まとめ

学習活動

・自分たちが、どんな営業・貢献活動をしてい

くか調査し話し合い活動を行う

・そのためには、どんな準備が、必要か話合い

事業計画を策定する

・「準備」活動を行い、協力団体を求める

など「対外交渉」も行い問題が生じたら自

力で解決に取り組む

・課題追求のための「営業・貢献」活動と

して対外的「宣伝・販売」等を行う

・決算について学び、利益の処分、社会還

元について考える

・体験を通して学んだことを整理、発表原

稿にまとめる

・「社会貢献」、「自己実現」「生きが

い」「自分の将来」についても考える。

・お世話になった人たちへのお礼も考える

起業活動とし

ての流れ

事業計画

づくり

「企業」活

動の実施

「決算」

と反省

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Q16 起業家教育の評価について教えてください。

起業家教育においても,評価が求められます。総合的な学習の時間で実施されたならなは゛,総合的

な学習の時間の評価に準じて行わなければならないでしょう。起業家教育だからといって,特別な評

価を行う必要はないと思います。

評価は,なるべく多くの資料を用いて多角的な観点から行われるように配慮しましょう。実際の

起業家教育は途中からどうしても,各自が別々の作業を行うことになるので,それにともなう不公平

が生じないようにすることが,大切になってきます。したがって,適切な評価規準を下に具体的な評

価基準を設定していくことは,もちろんのこと各自の「活動の記録」や「活動の自己評価表」のよう

な資料を作成し,ポートフォリオ評価法を取り入れるなどして,適切な評価がなされるように配慮し

なければなりません

Q17 事前の検討事項と各段階の展開について考え方を教えてください

ここでは,総合的な学習の時間の計画を立案する前に検討しておくべき事について述べます。

17.1 事前の検討事項について

(1) 販売活動について(売り場の確保)

まず最初に児童生徒が活躍する場としての販売活動について考えましょう。それを実施するための

売り場が確保できるかできないかで起業家教育の内容が大きく変わっていくので,最優先事項となり

ます。できるだけ,地域住民などの校外の方たちと触れあう形で販売活動が行えるように,地域の行

。 ,事や学校を開放する形で行われる行事の活用などを検討するとよいでしょう また地域によりますが

地元の商店街の空き店舗を活用して取り組んでいる事例もあります,地域の教育委員会や行政団体に

相談してみるのもよいと思います。

ただ,最初からあまり手を広げず,生徒も教員も楽しんでできるようにすることが大切です。店舗

が見つからないときや,また販売を行うことで現金を取り扱わせたり収益を上げさせる事に抵抗を感

じる場合は,会場で模擬紙幣などを使う方法も考えられます。また実際の販売活動はあきらめて,第

三者や相互に欲しいと思う商品に投票してもらうなどの企画の競争などにとどめておくのも1つの考

えです。それでも競争的要素が加われば児童生徒たちは楽しんでするものです。

(2) 予算の確保

予算については,児童生徒の保護者から,一定の金額を集めて予算化するという形が望ましいと考

えます。終了時には,決算を行うことで,利益の処分について考える学習場面も生じてきます。赤字

は出せないという責任感も生じてきます。そのことで,児童生徒の当事者意識が高まり,また 「資,

本 という概念や会社組織の成り立ちについて考えるよいきっかけとなります 起業活動における 決」 。 「

算」の大切さを知る,よい機会だと考えます。また小学生でも簡単な赤字か黒字かぐらいのものなら

取り組めます。

予算は教員だけで管理して使い。決算活動は行わずに純粋に「販売」活動にだけ取り組ませるのも

1つの考えでしょう。

もし,大規模に行うときには,管理職は当然のこと,地元の公共団体などに相談してみるのもよい

でしょう。場合によっては何らかのサポートが得られるかもしれません。

いずれにしても,保護者に対して,使途などを明確に説明できるようにすることが大切です。

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(3) 取扱商品の選定

中学高校段階では,選定する過程も大事な学習場面ですが,小学校は事前に検討しておくことが必

要です。商品については当然 「売れる」ということを意識した商品でなければなりません。さらに,

地元の産品を利用した商品などを使うと,地域の経済について考える学習場面を作り出すことが可能

になります。

17.2 具体的な準備について

ここからは,モデルに基づいて,さらに学習段階毎の具体的な構想・準備について考えます。

(1)課題設定

① 会社の作り方を考える

中学・高校段階では「起業家精神」を学ぶことが大切になってきます。したがって「会社」を起こ

す人がいるということには気付かせること,会社を立ち上げること,維持していくことの大変さ,お

もしろさを気づかせることが一番大切なことになりますし,起業家教育の1つの柱になります 「会。

社」組織の在り方についての学習は,各段階での社会科の授業の進度に応じて行う程度でよいと考え

ます。この段階での起業家の講師が確保できなかった場合は,視聴覚教材や起業家の伝記,会社設立

を報じる新聞記事などを準備して「起業」に関心をもたせるようにしてください。また高校段階では

会社案内やホームページなどを通して,各企業の社会貢献の在り方などに対する理念を調べる活動を

入れましょう。また小学校段階では 「会社」というグループを決めていくことが課題であり,企業。

家精神については,余裕があればということでよいと思います。

② どんな商品を扱うのか決める。

小学校段階では,あらかじめ具体的な商品を教師側が案としてもっているという前提で考えを進め

ます。当然,商品のサンプルの準備や商品の特徴,製造過程,流通過程に関する情報を集めるなどし

ておきます。教師が説明的な授業を展開してしまうことになります。中学段階では「取扱業者の話を

聞く ・ 児童・生徒が自分たちで調べる」といった展開が,より望ましい形になります。また高校」「

段階ではその商品を扱うことや販売方法が,社会的に意義のあることにするように考えさせることが

大きなポイントになります。

③ 商品を試作する(この部分は場合によっては省略です )。

具体的に試作してみるわけですが 「商品化」という観点を持つことが大切です。ただ商品を作っ,

てみるだけではなく,原価の問題やデザイン,包装の在り方など「商品としての魅力」を考えるとい

う視点が不可欠です。そのためには,児童生徒に「自分が好きな商品」ではなくて 「お客様に好ま,

れる商品」という観点を強調して試作するようにしてください。外部講師に入ってもらう展開も考え

られます。この段階で自分たちの企画が現実的であると判断できたら準備活動に入ります。

(2) 課題追究

① 具体的な活動の計画を立てさせる

児童生徒と,今回の販売の場所・期間などの基本的項目を決定した上で情報を与えたうえで,アイ

ディアを出させます。小学校・中学校段階では「価格 「広告・宣伝 「デザイン 「おまけ・サービ」 」 」

ス 「ディスプレイ」など項目を整理したワークシートを準備して生徒に書かせてから,意見を述べ」

させるとよいでしょう。ここでも,外部講師を取り入れてもおもしろいと思います。高校段階は,こ

こからは,極力自力で取り組ませましょう。

② どんな準備が必要か考え,準備させる

ここでは,実際の準備活動に入ります。特に小学校段階では,商品の準備,店舗の準備,当日の役

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割分担など集団の中で,協力的に準備できるかどうかがポイントになってきます。児童生徒に考えさ

せて,実行に移していきますが,特に低学年の場合は,教師が全体を把握して進めないと,混乱の原

因となります 「準備計画書」を作成し全員で確認していくことも,計画の大切さを知る,よい学習。

になると思います。保護者や企業の方の手助けが必要な部分も生じるでしょうから,あらかじめ見通

しをもって取り組むことが必要です。事前に保護者などに周知させておくことも忘れないようにしま

しょう。また,当日のスケジュールの確認を徹底させることは当然です。調度品などで,レンタルす

るものがあれは確実に手配しておくことも大切です。

(3) 課題解決

「会社」として営業活動を行う。

ここからは,実際の活動に入るわけですが,児童生徒たちが決められた役割分担を守っているか,挨

拶など接客がきちんとできているかなどを注意しながら進めましょう。また現金の管理や商品の売れ

行きなども当然きちんと管理をしましょう。またイベント終了後の後片付けなども徹底させてくださ

い。また最後に当日協力してくれた人たちや会場を提供してくれた人たちにもお礼の意味をこめて,

挨拶をさせることを忘れないでください。また,現金については必ず,その場で有り高だけは間違い

のないように確認の上なるべく早く会計処理を済ませるようにしてください。また,貸与された物品

の返却などは遺漏のないようにしてください。

(4) まとめ

各自がどのように取り組んだか反省させ,全体としてよかった点,よくなかった点などを考えさせ

ます。そして次回の活動に結びつく形に持って行きます,次に決算について考えさせます。黒字の時

は,利益をどのように処分するか考えさせることが大切です。先行事例では,自分たちのために使い

たがる傾向が強いようですが,何らかの形で地域のために還元するというのが望ましい方向と考えら

れます。また,様々な形でお世話になった人たちにお礼をすることも大事な学習活動となります。

また,まとめとしての,作文レポートについては,各段階の目標に応じた視点で作成されるよう

に指導することが重要となります。

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Q18 具体的な計画立案で考慮しなければならない点は何ですか

ここまでは総合的な学習の時間に導入するという前提で話を進めてきましたが,そのほかの形態

で実施するにしても,具体的な実施に当たっては,様々な事項について検討されなければならない

のですが具体的な事項としては以下の事柄が考えられます。前節の説明と重複するところもありま

すがこれらの問題について個別に考え方を示ししておきます。

a 学校の正課として導入するかしないか

b 参加生徒の数・能力

c 担当教員の数・専門性

d 起業家や地域住民を中心とした,外部講師が確保できるか否か

e 地元商店街の空き店舗など販売場所の確保が容易か否か

f 地元経済団体の協力が得られるか否か

g 地元の名産品があるなど,商品開発が容易か否か

h 資金の確保が容易か否か

i 学校の指導組織について

a 学校の正課として導入するかどうかで以下のように展開が変わると考えられます。

学校教育の正課に導入する 学校教育以外の活動に導入する(1) (2)( , )実施主体 学校 地域の団体 商工会議所 NPO等

実施時期 授業中(総合的な学習) 放課後,休日通常1回1時間半~2•

あらゆる長さでの実施が可能 時間程度で5~ 回程度• 10

指導者 教員 地域の企業人,地域住民(教員に限•

地域の人々( ゲストティーチ らない)• 「

ャー 「学校ボランティア」等) 大人に限らず,大学生・高校生等」,

*正課として導入する場合は,総合的な学習の時間が予想されますが,横断的なカリキュラムを

, 。構築し他教科との連携を行い その時間の活用も視野に入れて計画を立案するとよいでしょう

b 参加生徒について

参加生徒については,全員対象か希望者対象とするやり方が考えられま

。 , 。す 導入の初期段階としては 希望者対象の方がやりやすいと考えらます

全員対象とすると,参加意欲の弱い生徒についての配慮が必要となり。参

加人数が多い場合には,商品開発は,グループ間競争で行ったり,商品の

販売を当番制にしたりするなど,全員がかかわれるようにすることで活性

化を図るべきであると考えます。

c 教員の数・専門性について

アントレプレナーシップ教育は,活動が多岐にわたり当然教員の支援活

動も多岐にわたることが予想されるので,複数の教員により実施されるこ

とが望ましい。また商品開発,決算などについては専門的な知識を求めら

れることもあるので,できれば専門性のある教員の参加が求められます。

, 。横断的なカリキュラムを組むことで 他教員の援助も求められるでしょう

できることならば委員会組織を立ち上げたうえで実施に当たることが望ま

しいと考えられます。

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d 外部講師の活用について

外部講師は,積極的に活用した方ががよいです。外部講師を捜すことは

時には困難を生じますが,活用の仕方によっては,担当教員の負担軽減に

もつながります。また,様々な場面で外部講師を活用することが職業教育

, 。「 」「 」につながることは当然 念頭に置いてほしいものです PTA 卒業生

「地域住民」等探すと案外見つかるものです。

e 販売場所の確保

学校行事(文化祭)などを活用する考えもありますが,地域の商店街に

ある空き店舗の活用や地域行事(お祭り)などを利用することの方が望ま

しいと考えます。地域との連携や活性化に寄与するという視点が大切であ

る。もし確保できない場合はネット上で仮想店舗を建てるやり方もありま

す。

f 地元経済団体等との関わり

d.eで述べた問題を解決するためにも地元経済団体とのかかわりを持

つことが望ましいものです。起業家教育を,営業活動として行っている法

人も存在しますが,公共性の問題も鑑み地元の協力を得るよう努力するべ

きだと思います。当然PTAの有効活用も検討されるべきである。

g 商品開発について

なるべく地域に根ざしたものを開発すべきです。生徒のアイディアは生

かされるべきですが,小学校などでは教員が主導的に決定するのもやむを

得ないものです。地域性を生かす方向で開発すると,地元の行政機関・企

業の協力も得やすくなります。

h 資金計画について

公的な資金援助が得られれば,それにこしたことはないのですが,だめ

なとき,参加生徒から少しずつ徴収する手段が考えられる。それを資本金

として「株式会社」の仕組みを学ぶという,展開も考えられます。特に中

高段階では,企業活動においては,収益を上げることが重要視されるわけ

で,その感覚をつかませるためにも,資金の確保の段階からカリキュラム

に取り入れることが重要です。学校教育において 「銭もうけ」かという意,

見もあるが起業の1つ重要な要素であり,是非取り組ませたい単元です。

i 指導組織について

特定の教員だけで行うのではなくて,ノウハウの蓄積の問題もあるので

委員会などを組織して全体で取り組むことが望ましいと考えられます。

Q19 起業家教育の内容を工夫するポイントを教えてください。

19.1 内容の簡略化について

起業家教育に取り組んでみたいけれど,準備が大変そうだから,まずは一部だけ取り入れたいと

いう人もいるかと思います。

なるべく簡単に取り組むためには次の二つの考えをヒントに計画してみてください

1 実際の販売活動の実施期間の工夫で簡易化を図る

a 1日だけ設定して行う b 一定期間行う c 文化祭などの学校行事を利用

*どれを選択するかで準備の内容が変わってきます

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2 ある特定の部分だけを実施する( モデル」の販売実践の無い場合です )「 。

例 起業家の話を聞く

商品の企画のプレゼンのコンテストだけを行う

ある「商品」の広告のコンテストだけを行う

*大切なことは,販売活動を行うことではなくて,起業活動や起業家精神を学ぶ事です。

*実際の販売活動を行わない形にすると,準備がかなり楽になります。

19.2 内容の高度化について

一年間の総合的な学習の時間で取り組むには内容が物足りない。もっと高度な展開が考えられ

ないかと言う場合は 「職場体験学習」や「インターンシップ」と組み合わせることもできます。例,

えば下記のような流れを付け加えてみると,より高度なものになると考えられます。

例1 (1) 前年度の「職場体験学習」や「インターンシップ」を振り返り 「起業活動」につなが,

るような課題がなかったか考えさせる。

(2) 各グループやクラス全体で話し合い,取り組めそうな課題を取り上げて「起業活動」と

して課題解決に取り組む。

例2 (1) 起業活動のテーマを「広告 (広告会社をつくる)や「商品開発」に限定する。」

(2) 広告の対象となる企業の様子や商品の原材料の成り立ちを知るために生産者のところへ

行「職場体験」や「インターンシップ」をさせてもらう。

(3) そこで得た情報や知識をもとに,広告や商品開発に取り組む。

例3 (1) 事業内容を決める。

(2) 各自に役割分担を当てる。

「 ( )」 ,(3) その役割の仕事についている人のところに各自が 修行 インターンシップ にでて

技能、知識、心構えなどを身に付けてくる。

(4) 身に付けてきたものを生かして,事業計画を練り直す。

(5) 実際の事業に取り組む。

つまり「起業活動」のためのインターンシップを行い,より実践的な技能・知識を身に付けてか

, , 。ら行うと 活動がより高度になり インターンシップにも従来と違った意味を与えることができます

ただし,これらの活動を取り入れると,インターンシップの意味合いが,従来のものと違ってくる

ので注意が必要です。

19.3 他校との連携のあり方について

他校と連携して行う場合にはいくつかのパターンがありますが,1 同一校種の連携,2 異校種

間の連携の2つの観点で考える必要があります。

さらに児童生徒の関わり合いの形として a1つの会社を協働で興す場合 b各々が会社を興し競

争する場合があります 「協働」も「競争」も勤労観を考える上で大切な概念ですので,どちらの形。

がいいか状況に応じて判断してください。

なるべく規模を大きくした方が盛り上がるのでしょうが,あまり大人数になると。一人一人の児童

生徒が起業活動の一部だけしか体験できなくなってしまうので,注意が必要です。

主な参考文献

全般的な参考書

〔1〕渡辺忠彦: 創造性を高めるアントレプレナー教育」 仙台市立太白中学校 2004「

〔2〕魚住忠久編: 社会を生き抜く力を育てるお金と仕事の学習」教育開発研究所 2004「

〔3〕国立教育政策研究所: 総合的な学習の時間の授業と評価の工夫-評価規準及び評価基準を「

介した指導の改善,自己学習力の向上及び外部への説明責任に向けて(第二次報告書)-」

2004