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平成14年度 卒業研究発表 北海道大学 工学部 情報工学科 複雑系工学講座 調和系工学分野 高橋直人 ヘアピン構造DNAを利用した アクエアスコンピューティング の実現に関する研究

takahashi b

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Page 1: takahashi b

平成14年度 卒業研究発表

北海道大学 工学部 情報工学科

複雑系工学講座 調和系工学分野

高橋直人

ヘアピン構造DNAを利用した

アクエアスコンピューティング

の実現に関する研究

Page 2: takahashi b

・同一の分布からなる複数の部分に分割可能

・部分同士を均一に混合可能

分子メモリ

アクエアスコンピューティング

DNA分子をメモリとして利用

水様: Aqueous(アクエアス) A

A

A

RAM

水様性を利用してRAMを 実現し,計算を行う

[山村,2000]

A

B

C

ROM

例 : NPMM

[柏村,2002]

メモリ素子であるDNA分子が溶液中にランダムに存在する

小スペースで大容量

のストレージを実現

生体分子の利用によって,小スペースで大容量,且つ超並列に処理の可能なメモリを実現

できるとして,近年,分子メモリに注目が集まっている.

Page 3: takahashi b

アクエアスコンピューティング

方舟問題

右図は,ロバ,ライオン,ウサギを頂点に持つグラフで,辺は競合する(食いあう)ことを示している.同じ檻に入れておいても食いあわない組み合わせのうち,動物の種類が最大になるものを求める.この問題はNP完全であり,動物の種類が増加すれば急速に困難となる.

3bitの分子メモリを用意し,各bitは,ロバ,ライオン,ウサギが檻に居る(1)か居ない(0)かを表す.

1

1

1

0

1

1

1

0

1

0

1

1

1

0

1

0

0

1

0

1

0

0

0

1

1

0

1

1

0

1

1

0

0

0

1

0

1

0

0

・線形回数(n)の実験操作で,指数的に増加する解領域( )を探索できる

[山村,2000]

n2

1回 2回

4個

Page 4: takahashi b

DNA分子によるbit表現

赤の制限酵素 ライゲーション

200 190

10

20 40

環状配列と制限酵素を利用した手法(CDL法)

5’-AAGCTT-3’ 3’-TTCGAA-5’

5’-A AGCTT-3’ 3’-TTCGA A-5’

bitの状態:111 bitの状態:011

が でbitを表現 有る:1

無い:0

・酵素反応を利用する為,温度調節が必要 ⇒ 温度調節は不要にできないか?

・「切断」→「再環状化」という2ステップでの操作 ⇒ 1ステップで状態変更できないか?

・短くなったメモリは復元不能 ⇒ メモリを復元(再利用)できないか?

[Head,1999]

「再環状化」 「切断」

3bitの例

別の手法による効率化の可能性

Page 5: takahashi b

本研究の目的

環状DNA利用よりも効率化を図れる,

ヘアピン構造DNAを利用した分子メモリを作成し,

アクエアスコンピューティングを実現する.

Page 6: takahashi b

ヘアピン構造DNAを利用した分子メモリ

ヘアピン

5’ 3’

+ 5’ 3’

ヘアピンが

閉じている:1

開いている:0

でbitを表現

bitの状態:1 bitの状態:0

opener hairpin

・室温で反応が進むので温度調節は不要

・openerを混合するという1ステップだけで状態変更が可能

・溶液を高温から急冷することでメモリを初期状態に戻せる(再利用可)

ヘアピン構造DNAを利用した分子メモリ

DNA-HRAM(DNA Hairpin-based RAM)

Page 7: takahashi b

多bitのDNA-HRAM

目標配列(4bit) 5’ 3’

5’ 3’

5’ 3’

5’ 3’

opener hairpin A

B

C

D

A B C D

3’ 5’

・各hairpinはそれぞれのopenerによってのみ特異的に,且つ独立に開かれる必要がある. [上嶋,2003]

設計

・100merを越える長い配列を直接生成するのは技術的に困難な為,短い部品に分解したもの

を生成し,それらを組み立てることで目標配列を得る必要がある.

作成

・部品を組み立てる際,接合(ライゲーション)する箇所が固定されるような工夫が必要である.

考慮すべき点

・(ゲル電気泳動を利用した)確認方法自体を考案する必要がある.

動作確認

Page 8: takahashi b

DNA-HRAMの作成 : 5’ リン酸基

hairpin A hairpin B hairpin C hairpin D

5’ 3’ 5’ 3’ 5’ 3’ 5’ 3’ comp A comp AB comp BC comp CD

hairpin A hairpin B hairpin C hairpin D

5’

3’

comp AB comp BC comp CD comp DE 5’

3’

5’

3’

5’

3’

hairpin E

hairpin A hairpin B hairpin C hairpin D last E

10

10 13

7 10 10

10 10

Page 9: takahashi b

ゲル電気泳動による作成状況の確認

配列長変化の利用

DNAは負の電荷を帯びており,電圧を掛けるとゲル中を正極へ向かって流れて行く.

一般的に長い配列ほど流れ難く,上の方にバンドが出るがヘアピン構造などの二次構造を

取る場合はその限りでない.

しかし,配列の長さや形状が変われば,泳動度には何かしらの変化が見られるはずである.

A B A+B

+ + + + + + + + + +

A+B+C+D+E

・・・

・・・

全部品を接合したときに他で見られないバンドが現れれば,それが目標配列であると判断できる.

Page 10: takahashi b

作成実験結果

A + B + C + D + E

B + C + D + E

A + B + C + D

C + D + E

B + C + D

A + B + C

D + E

C + D

B + C

A + B

E D C B A

目標配列

A

B

C

D

E

: 5’ リン酸基

Marker

Markerは直鎖状2本鎖の長さの目安であり、1本鎖で且つヘアピン構造を取る本配列の場合、Markerとの比較で直接長さを読み取ることはできない。

10% PAGE

200V 35min

全部品を接合した場合

にだけ見られるバンド

A B C D

Page 11: takahashi b

ゲル電気泳動による動作確認

形状変化の利用

配列の形状が変われば,泳動度に何かしらの変化が見られるはずである.

1111 0111 1011

+ + + + + + + + + +

0000

・・・

・・・

openerの作用によりメモリの形状が変化する.

これに伴い泳動度に差が生じることを利用して,全16状態の動作確認が可能であると考える.

A B C D

+ + + + +

Page 12: takahashi b

動作確認実験結果 opener A

opener B

opener C

opener D

1 1 1 1(template)

0 1 1 1

1 0

1 1

1 1

0 1

1 1 1

0

0 0 1 1

0 1 0 1

0 1 1 0

1 0

0 1

1 0

1 0

1 1

0 0

0 0 0 1

0 0 1 0

0 1 0 0

1 0

0 0

0 0 0 0

縦5倍拡大図⇒

10% PAGE

200V 45min

A B C D

全16状態

1 : 閉じている

0 : 開いている

A B C D

作成後に精製して目標配列のみにしたもの

opener を混合して hairpin を開くとメモリの形状が変化する.その形状

の違いによって生じる泳動度の差で,メモリの動作状況を確認する.

Page 13: takahashi b

動作確認実験結果(拡大)

hairpin A, B, D については,開くことで泳動度に変化が現れたので,正常に動作していると判断される.

但し,1111 のバンドと 1101 のバンドがほぼ同じ位置に見えることから,hairpin C の動作には疑問が残る結果となった.

考えられる状況は,

1. opener C が機能していない

2. 偶然バンドに差が出ていない

3. hairpin C が形成されていない

これらの検証実験が必要である.

今後の課題

・泳動時間を長くしてみる

・別の検出法を適用する

・etc…

opener A

opener B

opener C

opener D

1 1 1 1(template)

0 1 1 1

1 0 1 1

1 1

0 1

1 1 1

0

0 0 1 1

0 1 0

1

0 1 1 0

1 0

0 1

1 0 1 0

1 1

0 0

0 0 0

1

0 0 1

0

0 1 0

0

1 0

0 0

0 0 0

0

1011

1111,1101

1110

0111

A B C D

A B C D

1 : 閉じている

0 : 開いている

全16状態(縦5倍拡大)

Page 14: takahashi b

まとめ

・ DNA-HRAMの作成法を考案し,実際に4bitのDNA-HRAMを作成した

・ 動作確認を行ったところ hairpin A, B, D は正常に動作しているようだが

hairpin C については疑問の残る結果となった

現在進行中

・ゲル電気泳動による別の状態検出法の適用準備

・今後様々な実験を行う為,目標配列の増幅準備

今後

・hairpin C 動作確認の追実験,連続動作の実験

・DNA-HRAMによるアクエアスコンピューティングの実行(4bitの問題)

・更なる多bit化