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セルの入出力観測に基づくセルオートマトンの定量的分析
北海道大学 工学部 情報工学科4年
複雑系工学講座 調和系工学研究室
高橋春樹
背景
系の挙動の定量的分析
•系の特徴の理解
•どのように指標を高めればよいかの示唆
「タスク達成率」や「利得和」といった指標による分析
• タスク遂行という意味で重要
• その系の現象の結果を評価
マルチエージェントシステム(MAS)の分析
複雑な現象を理解し構成に役立てるためにMASの挙動という側面についても定量的に分析する必要があると思われる
目的
MASの性質を定量的に評価する手法の提案と検証
• MASにおけるネットワークと相互作用の分析[西川 2004]• MASにおけるエントロピーと秩序形成の過程 [Guerin 2004]• エージェントと環境のエントロピーのやりとり [Parunak 2001]• 相互情報量による系の複雑さの定義 [Tononi 1994]• 相対エントロピーを用いた複雑さの定義[Shiner 1998]
関連研究(定量的分析の試み)
MASの挙動
互いの入力と出力が作用しあう
入力
出力環境
各エージェント環境からの入力を受け取る
出力により環境に影響を与える
環境
MAS 系の特徴
入出力の特徴を定量的に分析することでMASの性質の分析を行う
分析指標
x
xpxpXH )(log)()(
情報エントロピー相互情報量
事象Xの起こる不確実性 事象XとYの関係性
分析する手段として情報エントロピーと相互情報量を採用
ある事象X,Yが起こる確率を , としたとき)(xp )(yp
)|()()()(
),(log),();(
YXHXHypxp
yxpyxpYXIx y
定量化する性質
環境
入力(IN)
出力(OUT)
1エージェント(エージェント毎の分析)
環境
入力(IN)
出力(OUT)
全体としての傾向を分析するため,メタエージェントというものを想定
入力の確率を ,出力の確率を として情報エントロピーと相互情報量で定量化
)(INP )(OUTP
)(INH)(OUTH
)( OUTINH
値定義性質
入出力の不確実性環境と行動を組み合わせた複雑性
入力に対する出力の規則性
適応性
出力の不確実性行動の複雑性
入力の不確実性環境の複雑性
);( INOUTI
定量化する性質:同期性と相互作用性
値定義性質
2エージェントの出力の関係行動の同期性
エージェントの出力が他のエージェントの入力に及ぼす影響
2エージェントの入力の関係
相互作用性
環境の同期性
AB
AB
環境
相互作用性
行動の同期性
2エージェントの
入力と出力の関係
2エージェントの
出力の関係
);( BA OUTINI
);( BA OUTOUTI
);( BA ININI
検証モデルエージェントの入出力から性質を定量的に分析
•局所的な情報をもとに相互作用
•遷移規則により様々な振る舞い
利点 •振る舞いが特徴ごとに分類されており比較しやすい
•入出力が明確
欠点 学習などによる行動の変化が起こらない(エージェントの変化などが分析できない)
・・・・
・・・・1ステップ目
2ステップ目
入力 入力
出力
出力
出力
出力
出力
1次元セルオートマトンをMASとして検証
1次元セルオートマトン
セルの遷移規則から4種類の振る舞い(クラス)に分類されることが知られている
• クラスⅠ・・・全てのエージェントがすぐに同じ状態となる規則の集合
• クラスⅡ・・・局所的に同じ状態を取る,または周期的な変化をする規則の集合
• クラスⅢ・・・カオス的な非周期状態になる規則の集合
• クラスⅣ・・・上記3つのクラスに属さない複雑な挙動をする規則の集合
各クラスの典型的な挙動をする規則を分析し
特徴が値に現れているか検証する
エージェントの数 100
ステップ数 1000
両端のエージェントはつながっている(トーラス状)
5近傍2状態の遷移規則
1000ステップ終了時の確率から情報エントロピーと相互情報量を計算
実験設定
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
クラスI
space
tim
e初期生成したエージェントの影響が大きかったため,最初の5ステップの入出力は除いて計算
実験結果 クラスⅠ
1エージェント H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
メタエージェント H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
I(INA;INB)
I(OUTA;OUTB)I(IN;OUT)
I(INA;OUTB)I(IN;OUT)
複雑性,エージェント間の相互作用共にない
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
クラスⅡ
space
tim
e
実験結果 クラスⅡ
1エージェントメタエージェント
初期生成したエージェントの影響が大きかったため,最初の5ステップの入出力は除いて計算
H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
I(INA;INB)
I(OUTA;OUTB)I(IN;OUT)
I(INA;OUTB)I(IN;OUT)
エージェント毎に同じ出力を続けるため,行動と環境の複雑性,同期性,相互作用性がない
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
1世代ごとに交互に同じパターンを繰り返す遷移規則クラスⅡ
space
tim
e
実験結果 クラスⅡ
1エージェント メタエージェントH(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
I(INA;INB)
I(OUTA;OUTB)I(IN;OUT)
I(INA;OUTB)I(IN;OUT)
複雑性:
入出力において高い
1エージェントでは高いが,メタエージェントでは低くなっている
同期性:
各値から規則性が読み取れる
行動の複雑性
行動の複雑性
出力の同期性
入力の同期性
相互作用性: 高い
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
実験結果 クラスⅢ
クラスⅢ
space
tim
e
1エージェント メタエージェントH(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
I(INA;INB)
I(OUTA;OUTB)I(IN;OUT)
I(INA;OUTB)I(IN;OUT)
複雑性: 1エージェント,メタエージェントともに高い行動と環境を組み合わせた複雑性はメタエージェントでは高い
適応性: 最大値1.0
適応性が最大値(1.0)で入力に対して常に一定の出力を行う.複雑性は全体として高い値を示し,カオス的な性質を示している
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
実験結果 クラスⅣ
クラスⅣ
space
tim
e
1エージェント メタエージェント
-0.5
0
0.5
1H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
H(IN)
H(OUT)H(IN×OUT)
I(INA;INB)
I(OUTA;OUTB)I(IN;OUT)
I(INA;OUTB)I(IN;OUT)
複雑性:1エージェント,メタエージェントともに高いメタエージェントでは,行動と環境を組み合わせた複雑性は高く,環境の複雑性は若干下がっている
適応性: 高い
複雑性は高い値を示し適応性も高い値だが完全に入力に依存した行動を取るわけではない
-0.5
0
0.5
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
-0.5
0
0.5
1
実験結果まとめ:各クラス同士の比較
複雑性,相互作用性などが全くない
同期性が高い値を示し,周期的な特徴を示している
複雑性と適応性を示す値が高い
局所的には一定の出力を示すが,全体としては複雑
クラスⅡ
クラスⅠ
クラスⅢ
クラスⅣクラスⅢと似ているが,完全に入力に依存していないメタエージェントでは環境の複雑性が下がっている
まとめ
• MASの性質について入出力の観測に基づく定量的分析についての提案
• 1次元セルオートマトンについて適用し検証を行った
• 各クラスの遷移規則の性質が各値に現れていた
今後の課題
• 他のMASに適用し検証
• 得られた値から具体的にMASの設計に役立てる手段
相互情報量の推移クラスⅠ
0
0.2
0.4
0.6
1 10 19 28 37 46 55 64 73 82 91 100
I_OO I_II I_IO
相互情報量の推移(クラスⅡ)
0
0.2
0.4
0.6
1 10 19 28 37 46 55 64 73 82 91 100
I_II I_OO I_IO
相互情報量の推移(クラスⅡ_2)
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1 7 13 19 25 31 37 43 49 55 61 67 73 79 85 91 97
I_II I_OO I_IO
相互情報量の推移(クラスⅢ)
0
1
2
3
1 10 19 28 37 46 55 64 73 82 91 100
I_II I_OO I_IO
相互情報量の推移(クラスⅣ)
0
1
2
3
1 10 19 28 37 46 55 64 73 82 91 100
I_II I_OO I_IO