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世界初 オランダTDCリニア搬送システムXTS eXtended Transport Systemアプリケーションを開発 包装業界の機械設計に革命をもたらすXTS タバコの加工および包装機械を専門としているオランダのTDC社(Technical Development Corporation)は、ベッコフオート メーションの無配線高速搬送システム、 eXtended Transport System XTS)の柔軟性を活かしたパイロットプロジェクトを実現さ せました。『Doysis』は、葉タバコ包装のスタンドアップパウチ(自立袋)を成形し、充填、シールする装置です。

Technical Development Corporation (TDC XTS · Doysis 包装ラインプロジェクトは、2012 年12 月に始動しました。そ れは、スタンドアップパウチ(ドイパックとも呼ばれる自立袋)へ葉タバコを

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Doysis 包装ラインプロジェクトは、2012 年 12月に始動しました。それは、スタンドアップパウチ(ドイパックとも呼ばれる自立袋)へ葉タバコを充填する工場設備の立ち上げを、ポーランドのタバコメーカからTDC社が受注した直後のことでした。天然素材の原料はサイズや形、密度やバルク重量がその時々で異なるため、葉タバコの包装は要件の厳しい工程です。

Doysisのドライブコントロールシステムは、全て標準的なベッコフのコンポーネントで構成されています。パワフルなデュアルコア・プロセッサ搭載の産業用 PC C6930-0040、コントロールパネル、EtherCAT I/O

ターミナル、制御ソフトウェア TwinCAT 3、そしてリニア搬送システムXTSという構成です。装置の通信には全て EtherCATが使用されています。

複雑な生産工程 最初の工程で、タバコは充填装置の外部で計量され、容器に入った状態で圧力室へ搬送されます。そこでは、袋に入る量が常に同じサイズと形状になるよう型押しされます。Doysisの生産工程では、まずU字型に成形されたプラスチックフィルムからスタンドアップパウチを製造し、開封後に再度封ができるようジッパーが付けられます。続いて、袋状にするため両サイドをシールします。次のステップでは、袋はラベル貼り機やテキストプリンタを通過し、V字切り込みが入れられ、サイズを揃えてカットされます。その後、2つの XTS可動子が袋の両端を持ち、袋の両側から吸盤で吸引しながら両端の可動子間の距離を少し近づけて袋を開口します。バッファステーションを経由し、4 つの袋が 1 つの圧力室の下に同時に置かれます。小さなパッケージに圧縮された一定量のタバコを、

TDC社が開発した一連の装置が袋に充填していきます。充填、バッファリングの後、袋を振動させて開口部についている葉タバコを落とし、イオン化空気を吹き付けて洗浄し、封をします。その後、売り場で吊り下げるための穴を袋にあけ、収入(税)印紙用の接着材層が塗布されます。収入印紙が正しい位置に貼られているかの検査は、画像処理システムによって行われます。不具合のある製品パッケージは除外され、問題なく製造された袋はコンベアベルトで搬送されます。

XTS:最適な高い柔軟性と最小限の設置スペース 一世代前の TDC社製装置では、充填工程はメカを活用してその動作を実現していました。その主なデメリットは、設定されたパターンと固定

にいくつかの TwinCAT パイロットプロジェクトを実行し、IEC 61131-3

プログラミングの経験を持つオランダのソフトウェアスペシャリスト Gain

Automation Technology 社によって、ソフトウェアは開発されました。TwinCAT 3 の重要なメリットは CPU のすべてのプロセッサコアを完全に利用できることであり、これは性能の高い装置を構築するために非常に重要なことです。

記録的な速さですべての課題を解決TDC はあらゆる点でその成果に満足しています。TDC、Gain、

Beckhoffの間の密接な協力によって、コンセプトから設置稼働まで、装置の立ち上げを迅速に行うことができました。装置開発、エンジニアリング、機械の製造、ソフトウェアの実装はわずか 8ヵ月で完了しました。

Doysisは、2013年 9月に 32の可動子でエンドユーザでの稼働を開始しました。機械は、1分間に 50袋を充填します。その生産性を1分間 60 袋に増やすことが計画されています。この目標は 2 台目の充填ラインで既に達成されており、そのラインはいつでも稼働できる状態で、オランダのカンペンにある、さらなる開発のための TDC イノベーションセンタに設置されています。TDC はその柔軟性とモジュール式構造のおかげで、この装置は他の産業や包装アプリケーションにも応用が可能だと期待をしています。

ベッコフオートメーション株式会社〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町1-1-8 日石横浜ビル18Fwww.beckhoff.co.jp Tel : 045-650-1612 Fax : 045-650-1613 Email : [email protected]

世界初:オランダTDC社リニア搬送システムXTS(eXtended Transport System)アプリケーションを開発

包装業界の機械設計に革命をもたらすXTSタバコの加工および包装機械を専門としているオランダのTDC社(Technical Development Corporation)は、ベッコフオートメーションの無配線高速搬送システム、eXtended Transport System(XTS)の柔軟性を活かしたパイロットプロジェクトを実現させました。『Doysis』は、葉タバコ包装のスタンドアップパウチ(自立袋)を成形し、充填、シールする装置です。

Beckhoff®、TwinCAT®、EtherCAT®および XFC®は、Beckhoff Automation GmbHによってライセンスされた登録商標です。

柔軟なシステム構築を可能にするXTSのモータモジュール。アプリケーションに合わせて、写真のストレートや、カーブなどの形状を選択できます。(© 写真:ベッコフ)

化されたサイクルタイムに従ってしか工程を進めることができない点でした。新しい充填ラインの開発は、それができるだけ柔軟でモジュール式であるべきというコンセプトに基づいて進められました。そしてスタンドアップパウチの包装コンセプトを実現できる適切な搬送システムを求めていたTDC は、リニア搬送システム XTS にたどり着きました。個別に制御可能で柔軟な可動子が周回軌道に作動するリニアモータ、XTSのコンセプトは、TDCが新しい装置に対して抱いていた考えと完全に一致しました。この XTSを使った方法で、生産量を増やすために、包装ラインに沿って複数の圧力室やプロセスモジュールを配置することが可能になります。

XTSの大きなメリットの 1つは、生産工程の厳密なクロッキングを省けることです。機械的ソリューションで高い生産量を達成するためには、多くのステーションが倍、またはそれ以上実装される必要がありました。XTSを使うことで、ステーションの数を大幅に減らすことができます。このことは、必要なハードウェアに関するコスト削減につながるだけではなく、メンテナンスを必要とする機械的要素がより少なく済むことを意味します。製品や袋の形状を変える際に、併せて装置も入れ替えるような必要

はありません。それどころか、可動子と工程順序の設定はソフトウェア上で簡単に変更することができ、極めて少ない工数しかかかりません。可動子を個々にプログラミングすることができるので、個々に袋の位置を合わせ、充填し、処理することが可能です。原理上、異なる順序、つまり1つずつ仕様が異なるようなタバコを様々な配合で製造することも重量充填もXTSにより可能になります。将来的には、『フライングソー』原理のように、充填機を可動子に追従させることで、製品の連続的な充填を可能にするでしょう。さらに、コンパクトなXTSドライブシステムは、劇的な省スペース化を実現します。Doysisと同等の機能を持つ従来型の装置を作るのであれば、ほぼ全てのステーションが数倍実装される必要があるため、Doysis

よりかなり大きな装置になるでしょう。XTSによって機械の設置スペースを削減でき、エンドユーザは明確なコストメリットを得られます。

TwinCATによる効率的なエンジニアリングソフトウェアの観点からも、Doysis は洗練されたプロジェクトです。アプリケーションソフトウェアは、TwinCAT 3.1 のエンジニアリング環境でオブジェクト指向プログラミングを使用して作成されました。XTS はソフトウェア側でオブジェクトとして構築されます。つまり、各可動子がそれぞれ1つのサーボモータと見なされます。TwinCATは、機械的、磁気的、電気的な実装ごとに、すべてのドライバとルーチンを内蔵しています。すで

Technical Development Corporation (TDC社 )は、世界で最初にXTSを使用した会社の一社です。(© 写真:ベッコフ)

250mm

38mm

Doysisの充填ラインは非常に複雑ですが、わずか 8ヵ月で完成しました。そのモジュール式で柔軟な設計のおかげで、Doysisはタバコ産業のみならず他の産業にも応用可能な装置になりました。(© 写真:ベッコフ)

 Doysis 包装ラインプロジェクトは、2012 年 12月に始動しました。それは、スタンドアップパウチ(ドイパックとも呼ばれる自立袋)へ葉タバコを充填する工場設備の立ち上げを、ポーランドのタバコメーカからTDC社が受注した直後のことでした。天然素材の原料はサイズや形、密度やバルク重量がその時々で異なるため、葉タバコの包装は要件の厳しい工程です。 Doysisのドライブコントロールシステムは、全て標準的なベッコフのコンポーネントで構成されています。パワフルなデュアルコア・プロセッサ搭載の産業用 PC C6930-0040、コントロールパネル、EtherCAT I/O

ターミナル、制御ソフトウェア TwinCAT 3、そしてリニア搬送システムXTSという構成です。装置の通信には全て EtherCATが使用されています。

複雑な生産工程 最初の工程で、タバコは充填装置の外部で計量され、容器に入った状態で圧力室へ搬送されます。そこでは、袋に入る量が常に同じサイズと形状になるよう型押しされます。Doysisの生産工程では、まずU字型に成形されたプラスチックフィルムからスタンドアップパウチを製造し、開封後に再度封ができるようジッパーが付けられます。続いて、袋状にするため両サイドをシールします。次のステップでは、袋はラベル貼り機やテキストプリンタを通過し、V字切り込みが入れられ、サイズを揃えてカットされます。その後、2つの XTS可動子が袋の両端を持ち、袋の両側から吸盤で吸引しながら両端の可動子間の距離を少し近づけて袋を開口します。バッファステーションを経由し、4 つの袋が 1 つの圧力室の下に同時に置かれます。小さなパッケージに圧縮された一定量のタバコを、

TDC社が開発した一連の装置が袋に充填していきます。充填、バッファリングの後、袋を振動させて開口部についている葉タバコを落とし、イオン化空気を吹き付けて洗浄し、封をします。その後、売り場で吊り下げるための穴を袋にあけ、収入(税)印紙用の接着材層が塗布されます。収入印紙が正しい位置に貼られているかの検査は、画像処理システムによって行われます。不具合のある製品パッケージは除外され、問題なく製造された袋はコンベアベルトで搬送されます。

XTS:最適な高い柔軟性と最小限の設置スペース 一世代前の TDC社製装置では、充填工程はメカを活用してその動作を実現していました。その主なデメリットは、設定されたパターンと固定

にいくつかの TwinCAT パイロットプロジェクトを実行し、IEC 61131-3

プログラミングの経験を持つオランダのソフトウェアスペシャリスト Gain

Automation Technology 社によって、ソフトウェアは開発されました。TwinCAT 3 の重要なメリットは CPU のすべてのプロセッサコアを完全に利用できることであり、これは性能の高い装置を構築するために非常に重要なことです。

記録的な速さですべての課題を解決TDC はあらゆる点でその成果に満足しています。TDC、Gain、

Beckhoffの間の密接な協力によって、コンセプトから設置稼働まで、装置の立ち上げを迅速に行うことができました。装置開発、エンジニアリング、機械の製造、ソフトウェアの実装はわずか 8ヵ月で完了しました。

Doysisは、2013年 9月に 32の可動子でエンドユーザでの稼働を開始しました。機械は、1分間に 50袋を充填します。その生産性を1分間 60 袋に増やすことが計画されています。この目標は 2 台目の充填ラインで既に達成されており、そのラインはいつでも稼働できる状態で、オランダのカンペンにある、さらなる開発のための TDC イノベーションセンタに設置されています。TDC はその柔軟性とモジュール式構造のおかげで、この装置は他の産業や包装アプリケーションにも応用が可能だと期待をしています。

2つの可動子が袋の両端をしっかり保持し、袋の両側から吸盤で吸引しながら両端の可動子間の距離を縮めて袋を開口します。(© 写真:ベッコフ)

Technical Development Corporation (TDC社)Technical Development Corporation(TDC社)は、当初スイスに拠点が置かれており、オランダの SCM社(Sluis Cigar Machinery)によって 1995

年に買収されました。 当時のこの会社の主な事業は、タバコ計量機器と充填ラインの製造でした。TDC本社がオランダのカンペンへ移転した際、『手巻きタバコ』分野のすべての事業はこのグループ会社に集約されました。 TDCの取扱製品は、個々の機械モジュールからタバコ産業用の生産ライン一式まで多岐に渡ります。

化されたサイクルタイムに従ってしか工程を進めることができない点でした。新しい充填ラインの開発は、それができるだけ柔軟でモジュール式であるべきというコンセプトに基づいて進められました。そしてスタンドアップパウチの包装コンセプトを実現できる適切な搬送システムを求めていたTDC は、リニア搬送システム XTS にたどり着きました。個別に制御可能で柔軟な可動子が周回軌道に作動するリニアモータ、XTSのコンセプトは、TDCが新しい装置に対して抱いていた考えと完全に一致しました。この XTSを使った方法で、生産量を増やすために、包装ラインに沿って複数の圧力室やプロセスモジュールを配置することが可能になります。

XTSの大きなメリットの 1つは、生産工程の厳密なクロッキングを省けることです。機械的ソリューションで高い生産量を達成するためには、多くのステーションが倍、またはそれ以上実装される必要がありました。XTSを使うことで、ステーションの数を大幅に減らすことができます。このことは、必要なハードウェアに関するコスト削減につながるだけではなく、メンテナンスを必要とする機械的要素がより少なく済むことを意味します。製品や袋の形状を変える際に、併せて装置も入れ替えるような必要

はありません。それどころか、可動子と工程順序の設定はソフトウェア上で簡単に変更することができ、極めて少ない工数しかかかりません。可動子を個々にプログラミングすることができるので、個々に袋の位置を合わせ、充填し、処理することが可能です。原理上、異なる順序、つまり1つずつ仕様が異なるようなタバコを様々な配合で製造することも重量充填もXTSにより可能になります。将来的には、『フライングソー』原理のように、充填機を可動子に追従させることで、製品の連続的な充填を可能にするでしょう。さらに、コンパクトなXTSドライブシステムは、劇的な省スペース化を実現します。Doysisと同等の機能を持つ従来型の装置を作るのであれば、ほぼ全てのステーションが数倍実装される必要があるため、Doysis

よりかなり大きな装置になるでしょう。XTSによって機械の設置スペースを削減でき、エンドユーザは明確なコストメリットを得られます。

TwinCATによる効率的なエンジニアリングソフトウェアの観点からも、Doysis は洗練されたプロジェクトです。アプリケーションソフトウェアは、TwinCAT 3.1 のエンジニアリング環境でオブジェクト指向プログラミングを使用して作成されました。XTS はソフトウェア側でオブジェクトとして構築されます。つまり、各可動子がそれぞれ1つのサーボモータと見なされます。TwinCATは、機械的、磁気的、電気的な実装ごとに、すべてのドライバとルーチンを内蔵しています。すで

 Doysis 包装ラインプロジェクトは、2012 年 12月に始動しました。それは、スタンドアップパウチ(ドイパックとも呼ばれる自立袋)へ葉タバコを充填する工場設備の立ち上げを、ポーランドのタバコメーカからTDC社が受注した直後のことでした。天然素材の原料はサイズや形、密度やバルク重量がその時々で異なるため、葉タバコの包装は要件の厳しい工程です。 Doysisのドライブコントロールシステムは、全て標準的なベッコフのコンポーネントで構成されています。パワフルなデュアルコア・プロセッサ搭載の産業用 PC C6930-0040、コントロールパネル、EtherCAT I/O

ターミナル、制御ソフトウェア TwinCAT 3、そしてリニア搬送システムXTSという構成です。装置の通信には全て EtherCATが使用されています。

複雑な生産工程 最初の工程で、タバコは充填装置の外部で計量され、容器に入った状態で圧力室へ搬送されます。そこでは、袋に入る量が常に同じサイズと形状になるよう型押しされます。Doysisの生産工程では、まずU字型に成形されたプラスチックフィルムからスタンドアップパウチを製造し、開封後に再度封ができるようジッパーが付けられます。続いて、袋状にするため両サイドをシールします。次のステップでは、袋はラベル貼り機やテキストプリンタを通過し、V字切り込みが入れられ、サイズを揃えてカットされます。その後、2つの XTS可動子が袋の両端を持ち、袋の両側から吸盤で吸引しながら両端の可動子間の距離を少し近づけて袋を開口します。バッファステーションを経由し、4 つの袋が 1 つの圧力室の下に同時に置かれます。小さなパッケージに圧縮された一定量のタバコを、

TDC社が開発した一連の装置が袋に充填していきます。充填、バッファリングの後、袋を振動させて開口部についている葉タバコを落とし、イオン化空気を吹き付けて洗浄し、封をします。その後、売り場で吊り下げるための穴を袋にあけ、収入(税)印紙用の接着材層が塗布されます。収入印紙が正しい位置に貼られているかの検査は、画像処理システムによって行われます。不具合のある製品パッケージは除外され、問題なく製造された袋はコンベアベルトで搬送されます。

XTS:最適な高い柔軟性と最小限の設置スペース 一世代前の TDC社製装置では、充填工程はメカを活用してその動作を実現していました。その主なデメリットは、設定されたパターンと固定

にいくつかの TwinCAT パイロットプロジェクトを実行し、IEC 61131-3

プログラミングの経験を持つオランダのソフトウェアスペシャリスト Gain

Automation Technology 社によって、ソフトウェアは開発されました。TwinCAT 3 の重要なメリットは CPU のすべてのプロセッサコアを完全に利用できることであり、これは性能の高い装置を構築するために非常に重要なことです。

記録的な速さですべての課題を解決 TDC はあらゆる点でその成果に満足しています。TDC、Gain、Beckhoffの間の密接な協力によって、コンセプトから設置稼働まで、装置の立ち上げを迅速に行うことができました。装置開発、エンジニアリング、機械の製造、ソフトウェアの実装はわずか 8ヵ月で完了しました。 Doysisは、2013年 9月に 32の可動子でエンドユーザでの稼働を開始しました。機械は、1分間に 50袋を充填します。その生産性を1分間 60 袋に増やすことが計画されています。この目標は 2 台目の充填ラインで既に達成されており、そのラインはいつでも稼働できる状態で、オランダのカンペンにある、さらなる開発のための TDC イノベーションセンタに設置されています。TDC はその柔軟性とモジュール式構造のおかげで、この装置は他の産業や包装アプリケーションにも応用が可能だと期待をしています。

2つの可動子が袋の両端をしっかり保持し、袋の両側から吸盤で吸引しながら両端の可動子間の距離を縮めて袋を開口します。(© 写真:ベッコフ)

Technical Development Corporation (TDC社)Technical Development Corporation(TDC社)は、当初スイスに拠点が置かれており、オランダの SCM社(Sluis Cigar Machinery)によって 1995

年に買収されました。 当時のこの会社の主な事業は、タバコ計量機器と充填ラインの製造でした。 TDC本社がオランダのカンペンへ移転した際、『手巻きタバコ』分野のすべての事業はこのグループ会社に集約されました。 TDCの取扱製品は、個々の機械モジュールからタバコ産業用の生産ライン一式まで多岐に渡ります。

化されたサイクルタイムに従ってしか工程を進めることができない点でした。新しい充填ラインの開発は、それができるだけ柔軟でモジュール式であるべきというコンセプトに基づいて進められました。そしてスタンドアップパウチの包装コンセプトを実現できる適切な搬送システムを求めていたTDC は、リニア搬送システム XTS にたどり着きました。個別に制御可能で柔軟な可動子が周回軌道に作動するリニアモータ、XTSのコンセプトは、TDCが新しい装置に対して抱いていた考えと完全に一致しました。この XTSを使った方法で、生産量を増やすために、包装ラインに沿って複数の圧力室やプロセスモジュールを配置することが可能になります。 XTSの大きなメリットの 1つは、生産工程の厳密なクロッキングを省けることです。機械的ソリューションで高い生産量を達成するためには、多くのステーションが倍、またはそれ以上実装される必要がありました。XTSを使うことで、ステーションの数を大幅に減らすことができます。このことは、必要なハードウェアに関するコスト削減につながるだけではなく、メンテナンスを必要とする機械的要素がより少なく済むことを意味します。 製品や袋の形状を変える際に、併せて装置も入れ替えるような必要はありません。それどころか、可動子と工程順序の設定はソフトウェア上で簡単に変更することができ、極めて少ない工数しかかかりません。可動子を個々にプログラミングすることができるので、個々に袋の位置を合わせ、充填し、処理することが可能です。原理上、異なる順序、つまり1つずつ仕様が異なるようなタバコを様々な配合で製造することも重量充填もXTSにより可能になります。将来的には、『フライングソー』原理のように、充填機を可動子に追従させることで、製品の連続的な充填を可能にするでしょう。 さらに、コンパクトなXTSドライブシステムは、劇的な省スペース化を実現します。Doysisと同等の機能を持つ従来型の装置を作るのであれば、ほぼ全てのステーションが数倍実装される必要があるため、Doysis

よりかなり大きな装置になるでしょう。XTSによって機械の設置スペースを削減でき、エンドユーザは明確なコストメリットを得られます。

TwinCATによる効率的なエンジニアリング ソフトウェアの観点からも、Doysis は洗練されたプロジェクトです。アプリケーションソフトウェアは、TwinCAT 3.1 のエンジニアリング環境でオブジェクト指向プログラミングを使用して作成されました。XTS はソフトウェア側でオブジェクトとして構築されます。つまり、各可動子がそれぞれ1つのサーボモータと見なされます。TwinCATは、機械的、磁気的、電気的な実装ごとに、すべてのドライバとルーチンを内蔵しています。すで

Doysis 包装ラインプロジェクトは、2012 年 12月に始動しました。それは、スタンドアップパウチ(ドイパックとも呼ばれる自立袋)へ葉タバコを充填する工場設備の立ち上げを、ポーランドのタバコメーカからTDC社が受注した直後のことでした。天然素材の原料はサイズや形、密度やバルク重量がその時々で異なるため、葉タバコの包装は要件の厳しい工程です。

Doysisのドライブコントロールシステムは、全て標準的なベッコフのコンポーネントで構成されています。パワフルなデュアルコア・プロセッサ搭載の産業用 PC C6930-0040、コントロールパネル、EtherCAT I/O

ターミナル、制御ソフトウェア TwinCAT 3、そしてリニア搬送システムXTSという構成です。装置の通信には全て EtherCATが使用されています。

複雑な生産工程 最初の工程で、タバコは充填装置の外部で計量され、容器に入った状態で圧力室へ搬送されます。そこでは、袋に入る量が常に同じサイズと形状になるよう型押しされます。Doysisの生産工程では、まずU字型に成形されたプラスチックフィルムからスタンドアップパウチを製造し、開封後に再度封ができるようジッパーが付けられます。続いて、袋状にするため両サイドをシールします。次のステップでは、袋はラベル貼り機やテキストプリンタを通過し、V字切り込みが入れられ、サイズを揃えてカットされます。その後、2つの XTS可動子が袋の両端を持ち、袋の両側から吸盤で吸引しながら両端の可動子間の距離を少し近づけて袋を開口します。バッファステーションを経由し、4 つの袋が 1 つの圧力室の下に同時に置かれます。小さなパッケージに圧縮された一定量のタバコを、

TDC社が開発した一連の装置が袋に充填していきます。充填、バッファリングの後、袋を振動させて開口部についている葉タバコを落とし、イオン化空気を吹き付けて洗浄し、封をします。その後、売り場で吊り下げるための穴を袋にあけ、収入(税)印紙用の接着材層が塗布されます。収入印紙が正しい位置に貼られているかの検査は、画像処理システムによって行われます。不具合のある製品パッケージは除外され、問題なく製造された袋はコンベアベルトで搬送されます。

XTS:最適な高い柔軟性と最小限の設置スペース 一世代前の TDC社製装置では、充填工程はメカを活用してその動作を実現していました。その主なデメリットは、設定されたパターンと固定

にいくつかの TwinCAT パイロットプロジェクトを実行し、IEC 61131-3

プログラミングの経験を持つオランダのソフトウェアスペシャリスト Gain

Automation Technology 社によって、ソフトウェアは開発されました。TwinCAT 3 の重要なメリットは CPU のすべてのプロセッサコアを完全に利用できることであり、これは性能の高い装置を構築するために非常に重要なことです。

記録的な速さですべての課題を解決 TDC はあらゆる点でその成果に満足しています。TDC、Gain、Beckhoffの間の密接な協力によって、コンセプトから設置稼働まで、装置の立ち上げを迅速に行うことができました。装置開発、エンジニアリング、機械の製造、ソフトウェアの実装はわずか 8ヵ月で完了しました。 Doysisは、2013年 9月に 32の可動子でエンドユーザでの稼働を開始しました。機械は、1分間に 50袋を充填します。その生産性を1分間 60 袋に増やすことが計画されています。この目標は 2 台目の充填ラインで既に達成されており、そのラインはいつでも稼働できる状態で、オランダのカンペンにある、さらなる開発のための TDC イノベーションセンタに設置されています。TDC はその柔軟性とモジュール式構造のおかげで、この装置は他の産業や包装アプリケーションにも応用が可能だと期待をしています。

ベッコフオートメーション株式会社〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町1-1-8 日石横浜ビル18Fwww.beckhoff.co.jp Tel : 045-650-1612 Fax : 045-650-1613 Email : [email protected]

世界初:オランダTDC社リニア搬送システムXTS(eXtended Transport System)アプリケーションを開発

包装業界の機械設計に革命をもたらすXTSタバコの加工および包装機械を専門としているオランダのTDC社(Technical Development Corporation)は、ベッコフオートメーションの無配線高速搬送システム、eXtended Transport System(XTS)の柔軟性を活かしたパイロットプロジェクトを実現させました。『Doysis』は、葉タバコ包装のスタンドアップパウチ(自立袋)を成形し、充填、シールする装置です。

Beckhoff®、TwinCAT®、EtherCAT® および XTS®は、Beckhoff Automation GmbHによってライセンスされた登録商標です。

柔軟なシステム構築を可能にするXTSのモータモジュール。アプリケーションに合わせて、写真のストレートや、カーブなどの形状を選択できます。(© 写真:ベッコフ)

化されたサイクルタイムに従ってしか工程を進めることができない点でした。新しい充填ラインの開発は、それができるだけ柔軟でモジュール式であるべきというコンセプトに基づいて進められました。そしてスタンドアップパウチの包装コンセプトを実現できる適切な搬送システムを求めていたTDC は、リニア搬送システム XTS にたどり着きました。個別に制御可能で柔軟な可動子が周回軌道に作動するリニアモータ、XTSのコンセプトは、TDCが新しい装置に対して抱いていた考えと完全に一致しました。この XTSを使った方法で、生産量を増やすために、包装ラインに沿って複数の圧力室やプロセスモジュールを配置することが可能になります。

XTSの大きなメリットの 1つは、生産工程の厳密なクロッキングを省けることです。機械的ソリューションで高い生産量を達成するためには、多くのステーションが倍、またはそれ以上実装される必要がありました。XTSを使うことで、ステーションの数を大幅に減らすことができます。このことは、必要なハードウェアに関するコスト削減につながるだけではなく、メンテナンスを必要とする機械的要素がより少なく済むことを意味します。製品や袋の形状を変える際に、併せて装置も入れ替えるような必要

はありません。それどころか、可動子と工程順序の設定はソフトウェア上で簡単に変更することができ、極めて少ない工数しかかかりません。可動子を個々にプログラミングすることができるので、個々に袋の位置を合わせ、充填し、処理することが可能です。原理上、異なる順序、つまり1つずつ仕様が異なるようなタバコを様々な配合で製造することも重量充填もXTSにより可能になります。将来的には、『フライングソー』原理のように、充填機を可動子に追従させることで、製品の連続的な充填を可能にするでしょう。さらに、コンパクトなXTSドライブシステムは、劇的な省スペース化を実現します。Doysisと同等の機能を持つ従来型の装置を作るのであれば、ほぼ全てのステーションが数倍実装される必要があるため、Doysis

よりかなり大きな装置になるでしょう。XTSによって機械の設置スペースを削減でき、エンドユーザは明確なコストメリットを得られます。

TwinCATによる効率的なエンジニアリングソフトウェアの観点からも、Doysis は洗練されたプロジェクトです。アプリケーションソフトウェアは、TwinCAT 3.1 のエンジニアリング環境でオブジェクト指向プログラミングを使用して作成されました。XTS はソフトウェア側でオブジェクトとして構築されます。つまり、各可動子がそれぞれ1つのサーボモータと見なされます。TwinCATは、機械的、磁気的、電気的な実装ごとに、すべてのドライバとルーチンを内蔵しています。すで

Technical Development Corporation (TDC社 )は、世界で最初にXTSを使用した会社の一社です。(© 写真:ベッコフ)

250mm

38mm

Doysisの充填ラインは非常に複雑ですが、わずか 8ヵ月で完成しました。そのモジュール式で柔軟な設計のおかげで、Doysisはタバコ産業のみならず他の産業にも応用可能な装置になりました。(© 写真:ベッコフ)