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WING DAILY (毎週月−金曜発行、祝日休刊) 3680 2016 年(平成 28 年) 12 13 日(火曜日) (1) 発行所 航空新聞社:WING DAILY編集部 〒107-0052 東京都港区赤坂4-8-6 赤坂余湖ビル3階 TEL(03)3796-6647 FAX(03)3796-6643 URL=http://jwing.net [email protected] 購読料 半年34,560円 年間64,800円(消費税含む) Airline & Aviation E-mail News W ING D AILY 【HEADLINE NEWS】 ★バニラエア、成田ベースの新規 LCC として成功へ 供給乱立で苦戦もホーチミン、セブなど拡大 バニラエア(VNL)の五島勝也社長は 弊紙インタビューに応じ、2013年12月の 運航再開から3年が経った今、15年度の単 年度黒字化と、直近の16年度、そしてラ イバルがひしめくアジアLCCの動向、今 後の展望などについて語った。五島社長 は、需要を伸ばし続ける国際線に手応え を感じながらも、供給がふくれ上がる市 場の中で、同社も含め各社一様に苦戦し ている現状を説明。その上で、18機体制 になる2018年度までに、利益が確実に確 保できる土台をつくり上げ、その先の 中・長距離路線を見据えた新たな体制へ 向けた考えなどを述べた。 バニラは15年度、バニラブランドをス タートさせてから2年で単年度黒字を達成 した。この理由としては、もちろん原油安の影響で燃油費が 低下したことや、インバウンドの大幅な増加など、プラス要 因が強かったこともあって、実現に至った。五島社長は、そ うした要因があった中でも「事業の再スタートから3年目で、 成田をベースに国際・国内線を運航する新しいLCCとして結 果を出せたことが大きい」と、振り返った。バニラは当初、 エアアジアとANAグループによって、海外のLCC事業モデル を取り入れてスタートへ踏み切ったが、日本の風土とは合わ ず、一度は運航を停止。改めてANAの100%出資によって、 バニラブランドとして復活を果たし、日本の大手出資による モデルながら、LCCとしての確固たる地位を築くことができ た。 黒字化を達成した15年は、機材を限定し8機に絞って運航 していた。それは規模を拡大していくことで固定費を削って いく通常のLCCのモデルとは異なるが、コスト低減に努め、 限られた機材の中で利益を出すことができた。16年度からは ようやく拡張へ歩を進め、人員などリソースが整ったこと で、機材を増やし、国際線を中心にネットワークを拡張して いるところ。現在国際線は成田-台北(桃園)・高雄・香港・ ホーチミン、関西・那覇-桃園線を運航し、今年12月25日に は国内航空会社初のセブ線へ就航する。 しかし五島社長は「一方で、国際線は苦戦を強いられてい る」という。例えば、台湾線や香港線は、バニラの就航開始 当初は、LCC他社はほとんど運航していなかった路線だ。国 際線開始するに当たって、需要に先行することに成功した。 日本-台湾間の路線は訪日需要が非常に強いが、そのために既 存の大手会社は供給量を拡大し、LCCも台湾会社をはじめ、 相次いで新規に参入してきた。供給量が著しく拡大したその 一方で、訪日需要はいぜん拡大を続けているものの、需給バ ランスが崩れることとなった。 また、年明けごろから円高が始まった。バニラの国際線旅 客は、多いときで7割以上が外国人旅客で外貨建てとなるた め、為替などで大きく収入に影響する。旅客としては台湾線 を中心にボリュームが伸びているにもかか わらず、収益としては昨年を下回るかたち で推移しているのが現状だという。しかし バニラは、台湾をネットワーク上の拠点化 として位置付け、多くの便を台湾線として 運航している。台湾は地点として重要な位 置付けとなっていくことは間違いない。 また五島社長は、台湾の旅客が「東京だ けでなく、新しい地点へ行きたがってい る」として、今年は今年4月から関西-台北 線を開き、9月から那覇-台北線も開設し た。また新しいモデルとして、同じく9月 から台北からの以遠権としてホーチミン線 を開設した。台湾とベトナムの旅行者が日 本に訪れ、日本の旅客も台湾経由ながらベ トナムへ行くことができる。五島社長は 「新しい路線はダイヤで苦戦しているが、 以遠運航は実験的なチャレンジの要素が強い」と見解を述 べ、さらにマーケティングを重ねる必要があるという。その ため、国際線の状況は、15年よりも数字的に厳しい環境にあ る。 五島社長は、アジアのLCCの成長が著しく、特に東南アジ アではLCCの割合が60%以上にまで達していると説明した。 大手も欧米以上に需要が取られ、苦しんでいる状況だとい う。そこで航空会社がキャパシティを振り向けてくるのが、 日本をはじめとした北東アジアだ。ここは、LCCのシェアが まだ10数%に留まっている。日本だけで見れば10%ほど。各 航空会社が、同地域へ洪水のように流れ込んできている状 況。日本線へ飛ばすとなると、シェアがまだ低いため、アジ アの各社は一同に日本路線を狙っている。その影響があらわ れたのがVエアだ。北東アジアへ参入してからわずか1年で消 え、親会社のトランスアジアも清算に入り、急速に拡大して きたトランスアジアのシェアが消え、需要と供給のバランス 環境改善が見込まれる。 その中で日本ブランドは、安いだけでなく、安心して乗れ ることが選ばれる要因になる。バニラでは今後も安心できる ブランドイメージを強くしなくてはいけないという。五島社 長は、需給バランスの崩れた現状において「バニラとしては ガマンのしどころ」と述べた。 ユニットコスト6円台維持 成田3タミのバス運行など、コストカット可能 機材の調達は、11月に10号機が到着し、12月中には11号 機、2016年度中に12機体制に拡大する予定だ。8機体制時 に、ユニットコスト目標は6円台だとしていた。機材が増えて バニラエアの五島勝也社長

TEL(03)3796-6647 FAX(03)3796-6643 …wingnews.net/w-daily/w-pdf/2016/1612/dec13147/wd.pdfるため、LCCにとって常に追い求めていくべき課題の一つ。しかしコスト削減の体制には、まだ課題が残るという。1つは

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  WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊)  3680号   2016年(平成28年)12月13日(火曜日)   (1)

発 行 所   航 空 新 聞 社 : W I N G D A I L Y 編 集 部〒 1 0 7 - 0 0 5 2 東京都港区赤坂 4 - 8 - 6 赤坂余湖ビル3 階

TEL(03)3796-6647 FAX(03)3796-6643URL=http://jwing.net [email protected]購読料 半年34,560円 年間64,800円(消費税含む)

Airline & Aviation E-mail News

WING DAILY【HEADLINE NEWS】

★バニラエア、成田ベースの新規LCCとして成功へ 供給乱立で苦戦もホーチミン、セブなど拡大

 バニラエア(VNL)の五島勝也社長は

弊紙インタビューに応じ、2013年12月の

運航再開から3年が経った今、15年度の単

年度黒字化と、直近の16年度、そしてラ

イバルがひしめくアジアLCCの動向、今

後の展望などについて語った。五島社長

は、需要を伸ばし続ける国際線に手応え

を感じながらも、供給がふくれ上がる市

場の中で、同社も含め各社一様に苦戦し

ている現状を説明。その上で、18機体制

になる2018年度までに、利益が確実に確

保できる土台をつくり上げ、その先の

中・長距離路線を見据えた新たな体制へ

向けた考えなどを述べた。

 バニラは15年度、バニラブランドをス

タートさせてから2年で単年度黒字を達成

した。この理由としては、もちろん原油安の影響で燃油費が

低下したことや、インバウンドの大幅な増加など、プラス要

因が強かったこともあって、実現に至った。五島社長は、そ

うした要因があった中でも「事業の再スタートから3年目で、

成田をベースに国際・国内線を運航する新しいLCCとして結

果を出せたことが大きい」と、振り返った。バニラは当初、

エアアジアとANAグループによって、海外のLCC事業モデル

を取り入れてスタートへ踏み切ったが、日本の風土とは合わ

ず、一度は運航を停止。改めてANAの100%出資によって、

バニラブランドとして復活を果たし、日本の大手出資による

モデルながら、LCCとしての確固たる地位を築くことができ

た。

 黒字化を達成した15年は、機材を限定し8機に絞って運航

していた。それは規模を拡大していくことで固定費を削って

いく通常のLCCのモデルとは異なるが、コスト低減に努め、

限られた機材の中で利益を出すことができた。16年度からは

ようやく拡張へ歩を進め、人員などリソースが整ったこと

で、機材を増やし、国際線を中心にネットワークを拡張して

いるところ。現在国際線は成田-台北(桃園)・高雄・香港・

ホーチミン、関西・那覇-桃園線を運航し、今年12月25日に

は国内航空会社初のセブ線へ就航する。

 しかし五島社長は「一方で、国際線は苦戦を強いられてい

る」という。例えば、台湾線や香港線は、バニラの就航開始

当初は、LCC他社はほとんど運航していなかった路線だ。国

際線開始するに当たって、需要に先行することに成功した。

日本-台湾間の路線は訪日需要が非常に強いが、そのために既

存の大手会社は供給量を拡大し、LCCも台湾会社をはじめ、

相次いで新規に参入してきた。供給量が著しく拡大したその

一方で、訪日需要はいぜん拡大を続けているものの、需給バ

ランスが崩れることとなった。

 また、年明けごろから円高が始まった。バニラの国際線旅

客は、多いときで7割以上が外国人旅客で外貨建てとなるた

め、為替などで大きく収入に影響する。旅客としては台湾線

を中心にボリュームが伸びているにもかか

わらず、収益としては昨年を下回るかたち

で推移しているのが現状だという。しかし

バニラは、台湾をネットワーク上の拠点化

として位置付け、多くの便を台湾線として

運航している。台湾は地点として重要な位

置付けとなっていくことは間違いない。

 また五島社長は、台湾の旅客が「東京だ

けでなく、新しい地点へ行きたがってい

る」として、今年は今年4月から関西-台北

線を開き、9月から那覇-台北線も開設し

た。また新しいモデルとして、同じく9月

から台北からの以遠権としてホーチミン線

を開設した。台湾とベトナムの旅行者が日

本に訪れ、日本の旅客も台湾経由ながらベ

トナムへ行くことができる。五島社長は

「新しい路線はダイヤで苦戦しているが、

以遠運航は実験的なチャレンジの要素が強い」と見解を述

べ、さらにマーケティングを重ねる必要があるという。その

ため、国際線の状況は、15年よりも数字的に厳しい環境にあ

る。

 五島社長は、アジアのLCCの成長が著しく、特に東南アジ

アではLCCの割合が60%以上にまで達していると説明した。

大手も欧米以上に需要が取られ、苦しんでいる状況だとい

う。そこで航空会社がキャパシティを振り向けてくるのが、

日本をはじめとした北東アジアだ。ここは、LCCのシェアが

まだ10数%に留まっている。日本だけで見れば10%ほど。各

航空会社が、同地域へ洪水のように流れ込んできている状

況。日本線へ飛ばすとなると、シェアがまだ低いため、アジ

アの各社は一同に日本路線を狙っている。その影響があらわ

れたのがVエアだ。北東アジアへ参入してからわずか1年で消

え、親会社のトランスアジアも清算に入り、急速に拡大して

きたトランスアジアのシェアが消え、需要と供給のバランス

環境改善が見込まれる。

 その中で日本ブランドは、安いだけでなく、安心して乗れ

ることが選ばれる要因になる。バニラでは今後も安心できる

ブランドイメージを強くしなくてはいけないという。五島社

長は、需給バランスの崩れた現状において「バニラとしては

ガマンのしどころ」と述べた。

 ユニットコスト6円台維持 成田3タミのバス運行など、コストカット可能

 機材の調達は、11月に10号機が到着し、12月中には11号

機、2016年度中に12機体制に拡大する予定だ。8機体制時

に、ユニットコスト目標は6円台だとしていた。機材が増えて

バニラエアの五島勝也社長

Page 2: TEL(03)3796-6647 FAX(03)3796-6643 …wingnews.net/w-daily/w-pdf/2016/1612/dec13147/wd.pdfるため、LCCにとって常に追い求めていくべき課題の一つ。しかしコスト削減の体制には、まだ課題が残るという。1つは

  WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊)  3680号   2016年(平成28年)12月13日(火曜日)   (2)

行く中で、今年度6円を切ることもあったが、燃油・為替市況

に影響されるものの、今後も引き続き6円台を維持していく考

え。最近では、OPECの減算合意や、円安への動きも見ら

れ、追い風だった風向きが変わりつつあるが、こうした市況

はエアラインにとって常に懸念材料となる。

 コストの削減については、市況に影響されず利益に影響す

るため、LCCにとって常に追い求めていくべき課題の一つ。

しかしコスト削減の体制には、まだ課題が残るという。1つは

拠点としている成田空港で2015年4月から運用を開始した

LCC専用の第3ターミナルだ。これは成田で運航するLCCに

とって、非常に心強い応援となって、大きな転換点となっ

た。しかしバニラ運航便の多くが沖留めでバス運行を必要と

している。バスを使った便は、全運航便の約半分にも上り、

バスにかかる費用は大きなものとなっている。また、スポッ

トもサテライト北側の整備が始まったところで、将来的に解

消されつつあるものの、まだ使い勝手の面で課題が残るとい

う。

 また、公租公課という意味で、さらなる支援が望まれる。

LCCが新規に就航し、運航地点を一層増やすため、安い運賃

を提供できる措置を期待するという。LCCは、空港に多くの

旅客を呼び込み、空港へ非航空系収入をもたらすこと、地域

の活性化につなげることがモデルの一つであるため、それを

理解された上で一層の協力が必要になる。あとは、航空機の

規模の拡大によって、固定費を薄めていくこと、リソースを

増やし、効率化を進めていくことなど。これらは常に突き詰

めていかなければならないという。

 そのほか、直接コストには影響しないものの、ターミナル

の使い勝手の面で、最寄りの鉄道駅から遠いことがネック

で、お年寄りの利用者や、子ども連れの利用者も多いため、

不便を感じるところだ。最近では巡回バスの効率化も進んだ

として、成田会社の努力に謝意を示すも、アクセス面でさら

なる改善の必要性を訴えた。同じようにピーチが拠点とする

関西空港を引き合いに、ニーズをつかんだ設計ができている

と説明。成田とは大きく環境が異なるが、今後発着枠を増や

す中で、LCCが就航しやすい環境さえ整えば、さらなる発展

に貢献できると強調した。

 グループとしてレジャー層を獲得 関西線はインバウンドも視野に

 バニラは国際線を中心に、ネットワークを広げているとこ

ろ。12月は新たにセブ線へ就航する。五島社長は「先にミク

ロネシアへ行こうと思ったら、セブが先になった」と説明。

セブまでは5時間飛行で、機材として直行便はぎりぎりの距離

になる。道路線はアウトバウンドがメインで、フィリピンと

の割合としては、日本人7、8割を見込む。しかし、日本人に

とっては日系会社が飛んでいないため、“知る人ぞ知る”地

域。バニラが所属するバリューアライアンスではセブパシ

フィックが運航している。

 9月に就航したホーチミン線は、同じグループ会社の全日空

(ANA)が成田直行便を運航し、さらに最近では増便も行っ

ている。ANAグループでは、フルサービスキャリアのANAが

業務渡航を中心に、米国とのコネクションに重点を置くた

め、レジャー中心のバニラとは、客層が異なる。そういった

意味で、フルサービスとの住み分けができている。バニラの

路線は、どちらかといえば台北経由ということで、ベトナム-

台北間のほか、成田-台北間の流動取込みも期待している路線

となっている。

 国内線のネットワークでは、これまでの3路線体制から、成

田-函館、関西-成田、関西-函館と、ここへきて路線を倍増

した。これにはインバウンドを意識した狙いがある。バニラ

のネットワークは、国際線も含め新千歳以外は西側に集中し

ている。最近はグルメやスノーレジャーなど北海道の人気が

高い。北海道では、インバウンドを経済の活性化へ結びつけ

たいと考えていて、2020年までにインバウンド500万人を目

指している。これにバニラのネットワークが貢献していくと

いう。第一には、成田から乗る旅客を運ぶこと。しかしさら

に、海外からの成田乗継旅客を運ぶことも期待している。

 成田-関西線は、国内LCC4社がそろい踏みとなる路線。イ

ンバウンド乗継ぎや、東京と大阪の観光客の需要が見込め

る。関西到着のインバウンドでは、中国系旅客が多くを占め

ることになる。今後は、関空の中国系インバウンドは、リ

ピーターも含めボリュームがますます伸びる予想。中国系

LCCも就航が増えている。ちなみに、バニラの中期計画では

2017年度中に中国方面への就航を計画している。中国は各都

市で500万人規模のボリュームがある大きな市場であり、就

航地については「慎重に検討しているところ」というが、内

陸部は距離の問題もあるため、沿岸部の大都市を中心に新た

な中国路線を計画する。

 また、一度撤退した韓国線については、「ぜひやりたいと

思っている」と強調した。バニラは一時国際情勢の悪化で、

日本人の需要が著しく低下したことと、また機材にゆとりが

なかったことを踏まえ、撤退を余儀なくされた。いずれ戻り

たいとするものの、韓国にはLCCが6社もあるため、供給が

増えすぎるおそれがある。バリューアライアンスメンバーに

は、チェジュ航空も所属しているため、双方で協力し、韓国

路線を発展させたいという。

 台北拠点化は継続、新機材は���、787など検討

 世界を見れば、LCCを持つ大手航空会社は最適化を図って

いる。例えばシンガポール航空では、近距離のシルクエアー

と併せて、LCCとしてはタイガーエアシンガポールやスクー

トを運航している。それが来年にもグループのブランド統一

を宣言し、グループ内整理を急速に進める。ANAグループで

は、既存のANAが安い運賃で旅行したいセグメントに対し

て、需要に応えていなかったため、バニラが担い手となって

いる。グループ全体で役割が分担されている状況にあり、比

較的自由に路線を張っている。

 バニラでは、保有するA320の圏内で就航地を増やしていく

ことが、直近のビジネスモデルとなっている。新たな拠点化

への考えについては、これまで成田拠点を特化してきたた

め、しばらくは同様の方針を継続する構え。実際には、台湾

の訪日需要が太いことが分かり、台北線を太くすることを決

め、路線を増やすという意味で、台北の拠点化が進んでい

る。この台北拠点化については「継続していきたい」とい

う。今後はもっと流動が進めば、日本にとって、北東アジア

では台湾、香港、中国本土、韓国が四大インバウンドになり

「ここを押さえることが基本」と、次なる展開に期待感を示

した。さらにそれを越え、東南アジアをターゲットにする

と、ANAがビジネス需要を獲得している。そこで、将来的に

は東南アジアの観光セクター獲得を進めていきたいという。

Page 3: TEL(03)3796-6647 FAX(03)3796-6643 …wingnews.net/w-daily/w-pdf/2016/1612/dec13147/wd.pdfるため、LCCにとって常に追い求めていくべき課題の一つ。しかしコスト削減の体制には、まだ課題が残るという。1つは

  WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊)  3680号   2016年(平成28年)12月13日(火曜日)   (3)

 さらにもう一つの方法は、足の長い航空機を使って飛ぶこ

と。今LCCでも787やA330を運航する航空会社もある。しか

し、新機材を入れると、人員の教育や整備など、新しいリ

ソースが必要になるため、リスクもある。そのため、運営が

成り立つか、研究を進めているところだ。

 バニラは2018年度までに18機まで増やしていく計画。ここ

まではA320ceoを導入する。2013年から入れ始めて、更新の

時期に入る。今後更新する機材としては、A320neoが候補機

の一つとなっている。しかしneoは足の長さとしては大きく

伸びるものではない。そこでエアバスの提案の一つにあっ

た、A321に増槽を付けて長く飛べる機材があれば、バニラの

乗員・整備の資格、部品など、共通性を持った効率的な機材

更新も期待できると説明した。

 また、スクートのように、親会社も含め機材や整備委託な

どで、シナジーを求めていく方法もある。そうなれば、ANA

では787が主力となっているため、バニラの機材が787に変わ

れば、米国西海岸も見据えたネットワーク展開も想定に入

る。しかし、今のところはまだ研究段階であって、まずはceo

を2018年まで導入して、その中でネットワークを築く。そこ

で利益を出せる体制を整えて、同時に次のステージを見据え

た研究を行っていく。「この18機をしっかり使い切り、ネッ

トワークを築く、この土台をつくっていきたい」と述べた。

 バリューアライアンス、1年以内に全社統合へ

 大手LCCのネットワークに対抗するため、2016年5月、バ

ニラが所属するバリューアライアンスが設立された。これに

は、バニラのほか、セブパシフィック、チェジュ、ノックエ

ア、ノックスクート、スクート、タイガーエア、タイガーエ

ア・オーストラリアが所属する。11月29日には、バニラとス

クートでワンストップ予約が可能となった。すでに今年春に

ノックエア、ノックスクート、タイガーエアが提携を開始し

ていて、これに続く提携となる。想定する競合会社は、

ジェットスターグループ、エアアジアグループ、ライオング

ループといったLCCで「ジェットスターはオセアニアを中心

にアジアにもフランチャイズを構える。エアアジア、ライオ

ンはアジアを席巻するLCCグループであり、ぜひ対抗してい

きたい」と、アライアンス戦略に意欲的だ。

 五島社長によると、スクートとは秋口にも提携サービスを

開始したかったが、これまで2社間のサービス内容などでの調

整が難航。さらに接続したシステムの構築に難航し、テスト

を重ねたことで時間がかかってしまったという。しかしここ

で「システムをつくる方程式が分かってきたので、順次提携

の輪を広げていきたい」と早期のメンバー全社による提携を

めざすとして、1年以内での接続が目標だと説明した。

 バリューアライアンスはスクートやタイガーエアなどシン

ガポール航空傘下のLCCが所属する。これらは今後ブランド

統合を予定しているが、ネットワーク自体が縮小することは

ないという。保有する機材は787、A320で、これらを組み合

わせていくことになる。アライアンスとして有望な地域は、

北東アジアや中国など。東南アジアではインドなどはバニラ

から遠く、アライアンスのネットワークが活用できる有望な

地点であり、期待できるという。またオーストラリアなども

魅力的で、足が短い機材のみを持つLCCにとって、期待が膨

らむという。アライアンスパートナーとしては中国系LCCの

参加が望ましいが、動向を注視してメンバーの拡大も進めて

いくという。

【航空関連ニュース】

★航空局、ポーランドとオープンスカイに合意へ ICANで12ヵ国・地域と協議、香港と以遠権拡大も

 航空局は、12月5日から5日間にわたりバハマの首都ナッ

ソーで開催された国際民間航空機関(ICAO)主催の

「ICAN2016」に初めて参加。合計12ヵ国・地域の航空当局

と意見交換を行い、中でもポーランドとは2国間の航空自由化

(オープンスカイ)、さらには香港との中部国際空港での第

5の自由拡大、スリランカとのコードシェア拡大について、そ

れぞれ合意に至った。

 このたびの合意で日本とポーランドは、二国間輸送におけ

る航空自由化(オープンスカイ)を実現する。この合意には

発着枠が限られる羽田空港が含まれていないが、そのほかの

空港で、二国間の自由な路線で相互輸送が可能となった。さ

らに、国内の地方空港に限り第5運輸権の相互自由化も合意。

これは羽田・成田の首都圏空港以外が対象になる。以遠権と

して相手国あるいは自国空港で旅客または貨物の搭乗載を

行って、さらに第3国へ輸送することができる。またコード

シェアについては、第3国の航空会社を含め、自由化とする。

 両国間の航空協定は、1994年12月7日に署名し、1996年3

月4日から発行となった。両国間の運航状況は、2016年冬ス

ケジュール期初時点で日本側からは未就航だが、ポーランド

側からはスターアライアンス所属のLOTポーランド航空がワ

ルシャワ-成田線を週3便で運航している。今回合意となった

3つの事項は、直ちに実施可能となっている。現在、唯一運

航するLOTポーランド航空は、2016年1月13日から直行便を

開始した。JNTO統計によると、直行便のなかった2011-

2015年は相互に人的流動が増え続け、直行便の開設した2016

年にはさらなる流動の拡大が見込まれる。このたびの合意に

よって、今後さらなるネットワーク拡大が期待される。

 香港以遠、17年夏からシンガポール線週7便へ 香港側、中部以遠でグアム・サイパン

 香港との合意については、中部国際空港および香港空港で

の以遠権が拡大する。これは、就航可能な空港や、便数の制

限が拡大するもの。具体的には、香港側からの就航では、中

部空港からグアムもしくはサイパンへの運航が週7便まで可能

となる。これまで香港側からの以遠権路線は、国内の成田・

中部・関空・福岡から、ソウルへ週4便運航できることになっ

ている。これに、中部以遠のグアムかサイパンへの運航が加

わることになる。日本側については、香港-シンガポール間の

便を週4便から週7便へ拡大することになった。現在、同以遠

権路線は、全日空の貨物便が運航している。この香港との合

意は、事務手続きを残していて、2017年夏スケジュールの実

現を予定している。

 また、スリランカとのコードシェア拡大合意については、

羽田空港での日本側航空会社とのコードシェアを可能とし

た。こちらの実施時期はポーランド同様、直ちに実現が可能

となっている。

 そのほか日本が意見交換を行った国・地域は、オランダ領

アルバ、インド、イギリス、カナダ、サウジアラビア、バハ

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  WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊)  3680号   2016年(平成28年)12月13日(火曜日)   (4)

マ、マレーシア、UAE、ラオスといった国・地域。これらは

相互に理解を深め、共通認識を得るなどの成果が見られた。

 ICAO主催のイベントICANは、ICAO Air Services Nego-

tiation Eventの略で、2008年から年1回の頻度で実施され、

各国の航空交渉担当者による航空協議を集中的に行ってい

る。今年実施のICAN2016には、72の国・地域が参加し、日

本としては初めての参加となった。今後航空局は、ICANへ毎

年参加る方針で、これまでどおり二国間での交渉と併せて、

ICANでの交渉を行っていく。

★IATA、来年の航空業界利益は17%減予想 原油高などコスト上昇が利益圧迫、16年も下方修正

 国際航空運送協会(IATA)がこのほど発表した、2017年

における世界の航空業界の利益見通しが、298億ドルまで落

ち込む見通しを示した。また、収入は7360億ドルと予想して

おり、利益率は4.1%となる見通しだ。また、IATAは2016年

の業績見通しを下方修正。コスト上昇と世界のGDP成長率が

鈍化した影響で、利益見通しを356億ドルへと引き下げた。

ちなみに、6月時点の予想では394億ドルだった。さらに、純

利益および純利益率5.1%と過去最高を記録する見通し。

 IATAのアレクサンドル・ド・ジュニアックCEOは、「今

年は純利益で356億ドルと記録的な年となるが、来年は原油

価格の上昇によって、今年以上に難しい年となりそうだ」と

コメントした。

 IATAによれば、今年の原油の平均価格は1バレル44.6ドル

で推移したものの、2017年は1バレル当たり55ドルの水準に

まで上昇する見通しにあるとのこと。これにより、ジェット

燃料の価格は2016年の1バレル当たり52.1ドルから、64.9ド

ルまで上昇することが予想されているという。IATAでは、燃

油価格は2017年の業界コスト構造の18.7%を占めると予想し

ており、これは2012~2013年のピーク時の33.2%を大幅に下

回っているとの見方を示した。

 これまで燃油価格が低価格水準で推移したことから刺激さ

れてきた航空需要については、弱含みで推移する見通しで、

トラフィック成長率は2016年の5.9%増から5.1%増へと減速

する見通し。また、座席供給量についても今年の6.2%増から

ブレーキがかかる予想で、2017年の供給量の成長率は5.6%

と予測されている。平均ロードファクターは、今年の80.2%

からやや悪化して79.8%となる見通し。

 IATAでは、ロードファクターが低下する影響は、世界経済

の成長によってやや相殺されると予想。世界のGDPは2017年

に2.5%拡大する(2016年の2.2%増)と予測しており、業界

の構造変化に伴い、これは貨物および旅客事業の利回りを安

定させるのに役立つと期待されるとの見方を示した。

 ジュニアックCEOは、「我々は来年、40億人の旅行者と

5570万トンもの航空貨物需要があると予測している。また、

「世界のGDPの約1%が航空輸送に費やされており、その金

額は約769億ドルに達している」ことに言及しつつ、「航空

輸送はこれまで以上に世界にアクセスしやすくなり、世界経

済の重要な原動力となっている」と述べた。

 しかしながら一方で、各国政府が航空業界に高い税制を敷

いていることに言及しつつ、「世界の税法は、1230億ドルに

膨らんでいる。60%以上の国々がビザによる障壁を設けるこ

とで、旅の妨げとなっている」などと話したほか、「非効率

なインフラによって、数十億ドルが直接コストと生産性を浪

費している。これらは、航空会社に直面する障害のほんの一

部だ」との認識を示した。

★SNJ、羽田-仁川間で国際線チャーターフライト実施 1月に4往復8便、将来の国際線就航にらみ

 ソラシドエア(SNJ)は2017年1月に、羽田-仁川間で国際

線チャーターフライトの実施を予定している。1月26~31日

に4往復8便を運航する予定で、詳細については関係各署と調

整中という。機材は737-800型機を用いる。

 運航ダイヤは、26、27、29、30日に運航する羽田→仁川線

が、羽田発22時30分→仁川着01時10分。27、28、30、31日

に運航する仁川→羽田線が、仁川発02時10分→羽田着04時15

分。

 販売については、韓国のGSA(販売総代理店)と業務委託

契約を締結しており、日本と韓国双方での販売を委託してい

る。

 SNJが国際線チャーターフライトを運航するのは、2015年

10月に実施した宮崎-高雄線に続き2回目。今回の運航は、旺

盛なインバウンド需要を踏まえ、海外からの訪日客向けにフ

ライトを提供することに加え、国際線運航でのさらなる成長

を目指して実施するものだという。

★ANA、1月の国際貨物燃油サーチャージ引き下げげ

 ANAグループは、2017年1月から適用となる国際線貨物の

燃油サーチャージ額を引き下げる。

 長距離の北米・欧州・中東・オセアニアなどは1キログラム

当たり現行の43円から36円に、遠距離アジアのシンガポー

ル・タイ・ベトナム・インドネシアなどは40円から34円に、

近距離アジアの韓国・台湾・中国・香港・フィリピンなどで

は35円から29円に、それぞれ改定する。

 適用2ヵ月前の11月の航空燃料市場平均価格が1バレル当た

り56.47ドルとなったことから、基準表で定めた55ドル~60

ドル未満のレンジの価格を適用した。

★東急トランセと京急バス、大崎駅-羽田間の連絡バス運行

 東急バスの100%子会社である東急トランセは京浜急行バ

スとともに、12月17日から空港連絡バス「大崎駅西口~羽田

空港線」の運行を開始する。

 新路線は、昨年12月に運営開始した大崎駅西口バスターミ

ナルと羽田空港の間を約45分で結ぶ。従来、大崎駅から羽田

空港へは鉄道路線で乗り換えが必要だったが、新路線の開業

により、直接アクセスが可能になる。

 運航経路は、大崎駅西口-羽田空港第1ターミナル-羽田空

港第2ターミナル-羽田空港国際線ターミナル。運賃は片道

720円で、15枚つづりの回数券は1万円。

★海保、カンボジア、タイの海上保安当局と情報交換 金子参事官らがファルコン900型機で訪問

 海上保安庁は12月5日から9日までカンボジアおよびタイに

ファルコン900型航空機を派遣、金子英幸総務部参事官を団

長とする使節団が両国の海上保安当局と海賊対策や薬物密輸

対策等に関する意見交換、情報交換を実施した。金子参事官

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  WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊)  3680号   2016年(平成28年)12月13日(火曜日)   (5)

は「有意義な意見交換ができた。国境を越える犯罪について

は一国のみの努力では対処できないことから、今後、両国の

海上保安機関との間で広範な連携協力体制を強固に確立して

いくことを目指す」とコメントした。

 カンボジアでは6日に国家警察への表敬訪問と意見・情報交

換、タイでは8日に海上警察、海事局への表敬訪問と意見・情

報交換を実施している。

【航空工業/宇宙関連ニュース】

★NEDO、長時間滞空型マルチコプターを飛行試験へ ガソリンエンジンで発電、飛行時間1-2時間に

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、ヨコ

ヤマ・コーポレーションと石川エナジーリサーチと共同で、

群馬県内の尾島RCスカイポートにおいて、共同開発した長時

間飛行型マルチコプターの飛行試験を実施する。このマルチ

コプターはガソリンエンジンで発電することから、電力を

使用して1~2時間もの長時間飛行を行うことができる。ちな

みに、ガソリンエンジンを利用するドローンの研究開発は、

ドローンメーカー各社で研究が進められていて、バッテリー

容量に起因した飛行時間の制約という大きな課題解決に向け

た取り組みが進められているところ。

 NEDOによれば、今後飛行試験などを通じて試作機の評価

を重ねることで、機体の軽量化、信頼性向上などに向けた開

発を進めるほか、ペイロード向上に向けた研究開発も進め

る。これらにより、測量サービスをはじめ、農業や物流な

ど、様々な分野における用途展開を目指す方針だ。

 広大な土地や高層建築物を対象とする航空測量サービス

は、小型機やヘリコプター、大型ラジコンヘリコプターなど

によって実施されているが、機体の操縦や運搬、メンテナン

スなどでは多くの人手を必要とし、作業の自動化が求められ

ているところ。一方で、操縦性が良く、軽量でメンテナンス

も比較的容易なマルチコプターを測量に用いるケースも増え

ているものの、バッテリーが20分程度しかもたないため、長

時間の連続飛行ができないという問題を抱えていた。

 プロジェクトでは、石川エナジーリサーチの保有するコン

パクトな燃焼室構成により高圧縮比化された対向ピストン型

エンジンに関する特許技術を活用し、マルチコプターに登載

できる超低振動、小型、高効率な対向ピストン型エンジン開

発を同社が担当。また、ヨコヤマ・コーポレーションと共同

で機体設計を行い、ガソリンエンジンを動力源とした長時間

連続飛行が可能な測量用マルチコプターを試作した。機体質

量は27.6kg程度だという。

 なお、NEDOによれば、同プロジェクトは2019年3月まで

のプロジェクトで、研究開発が進められているという。

★IHI、今年度防衛航空エンジン36台納入予定 艦艇主機・主発は合計6台に

 IHIはこのほど、防衛エンジンの納入状況を明らかにし、

2016年度上期で航空エンジン13台、艦艇用主機・主発3台を

納入納入し、下期で航空エンジン23台、艦艇用主機・主発3

台を納入見込み、累計2016年度で航空エンジン36台、艦艇主

機・主発6台を納入予定としている。

 この中でP−1哨戒機用のF7-10ターボファンは上期に搭載

用7台、維持用2台を納入、下期に搭載用12台、維持用3台を

納入予定で、2016年度合計では24台の納入予定となる。

2016年度上期までの納入累計は48台となっている。

 陸海空自衛隊ヘリコプタ−に搭載されているT700ターボ

シャフトエンジンについては、2016年度は海自SH-60K哨戒

ヘリ搭載用のT700-401C2を上期に4台納入し、下期8台納入

予定で合計12台納入予定となっている。SH-60K搭載用は毎

年度調達があるが、その他の機種は搭載用、維持用が年度に

より散発的に納入されている。

 搭載機種別の2016年度上期までの納入台数は次の通り。

▼T700-401C(陸自UH-60JA/空自・海自UH-60J用)=累

計519台(うち2012年度~2016年度上期14台)

▼T700-401C2(海自SH-60K用)=累計133台(うち2012

年度~2016年度上期32台)

▼T700-701C(陸自AH-64D用)=累計35台(うち2012年

度~2016年度上期6台)

▼T700-701D(空自UH-60J改用)=累計14台(うち2012

年度~2016年度上期4台)

▼T700-701D(陸自UH-60JA用)=累計4台(うち2012年

度~2016年度上期4台)

 また、艦艇用主機ガスタービンはLM2500が2016年度上期

に搭載用2台納入、下期に維持用1台納入予定となっている。

艦艇用主発電機用ガスタービンはLM500が2016年度上期に維

持用1台納入、501Kが下期搭載用2台を納入予定となってい

る。

★経産省/NEDO、ロボットサミット競技種目を決定 愛知県空港島大規模展示場で2020年開催へ

 経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構

(NEDO)はこのほど、"World Robot Summit"(WRS)

の開催を、2020年10月に愛知県空港島の大規模展示場で開催

することを決定した。このなかで競技大会としてWorld Ro-

bot Challege(WRC)を開催し、ものづくり分野、サービス

分野、インフラ・災害対応分野、そしてジュニア競技(上限

19歳まで)の4分野で競技が行われ、大学、研究機関、企業

らが互いのロボット技術を競う。このうち、一部のインフ

ラ・災害対応分野の競技については、福島ロボットテスト

フィールで、8月中旬の3日間程度で開催する。大会は、ロボ

カップアジアパシフィック大会と同時開催することを計画中

だ。なお、2020年の本大会を前に、2018年10月17日から21

日までの5日間で、プレ大会を東京ビッグサイトで行う方針も

固めた。

 各分野の種目は、ものづくり分野は製品組立、サービス分

野では家庭内の各種作業支援、店舗における各種業務支援

に、インフラ・災害対応ではプラント災害予防、トンネル事

故災害対応・復旧、災害対応標準性能評価といった種目を行

う。ジュニア分野では、学校・家庭を想定した種目を行う。

 なお、競技大会に併設するかたちで、展示会も開催する方

針で、ロボット導入の事例を世界に発信する機会とする方針

だ。さらに、実用事例を通じて、世界規模で社会実装するこ

とを目指す。

▼ものづくり=製品組立:工業製品等の組立に必要な技術要

素を含んだモデル製品を早く正確に組立(評価方法:スピー

ド、正確さ、コスト、省エネ性など)

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  WING DAILY(毎週月−金曜発行、祝日休刊)  3680号   2016年(平成28年)12月13日(火曜日)   (6)

▼サービス=家庭内の各種作業支援:家庭における片付け

(整理整頓、収納)や留守番対応(評価方法:課題達成状

況、人の介在度合い、省エネ性など)、店舗における各種業

務支援:食品などの複数種類の商品の品出し・入れ替え、客

や従業員とのインタラクション、トイレの清掃(評価方法:

課題達成状況、所要時間、作業の質、省エネ性等)

▼インフラ・災害対応=プラント災害予防:十数種のインフ

ラ点検項目に基づく点検メンテナンス(バルブの開閉、消耗

品交換等)、災害を想定した要救助者捜索、トンネル事故災

害対応・復旧:トンネル災害を想定した情報収集および人命

救助、車両排除などの緊急対応(評価方法:課題達成状況、

作業の質、省エネ性など)、災害対応標準性能評価:災害予

防・対応で必要となる標準性能評価(移動能力、作業能力、

センシング能力、情報収集能力、無線通信能力、遠隔操作性

能、現場展開能力、耐久性)(評価方法:各性能の課題達成

状況、作業の質など)

▼ジュニア(上限19歳までのチーム):発行環境において

ニーズのありそうなタスクとそれを実現するロボット製作、

家庭ではサービス分野と同様のタスクを設定してロボットを

製作(評価方法:革新性、効果、創造性、チームワークな

ど)

【防衛関連ニュース】

★ハワイで日米拡大抑止協議開催 岡防衛政策局次長など出席

 日米両国は12月12日より13日まで米ハワイ州ホノルルで日

米拡大抑止協議を行っている。日本側からは岡防衛省防衛政

策局次長、小野外務省北米局参事官ほかが、米側からはバン

国防省核・ミサイル防衛政策担当国防次官補代理、ボーズ国

務省戦略的安定・抑止部長ほかが出席している。

 日米拡大抑止協議は、日米安保・防衛協力の一環として、

いかに日米同盟の抑止力を確保していくかについて率直な意

見交換を行う場であり、米国から抑止力の提供を受けている

日本が米国の抑止政策について理解を深め、日本の安全を確

保する上で必要な政策調整を行う場として機能している。

 日米間では拡大抑止についての協議をいろいろな形で行っ

ており、この協議は2010年以降定期的に開催されているも

の。

 先頃、アシュトン・カーター国防長官が来日時に、拡大抑

止についてのコミットメントを安倍晋三首相、稲田朋美防衛

大臣に明言している。

★奈良県の山林火災で陸自ヘリ空中消火 4機派遣、13回、約6.4トンの散水を実施

 陸上自衛隊は12月12日、奈良県知事の災害派遣要請を受

け、奈良県吉野郡上北山村辻堂山で同日発生した山林火災

に、ヘリコプタ−4機を派遣し、散水13回約6.4トンの空中消

火活動を行った。本日も継続の予定。

 午前9時54分に要請があり、午前10時58分に第3飛行隊の

UH-1Jヘリ1機が空中消火のため八尾駐屯地を離陸、午前11

時に中部方面航空隊のUH-1Jヘリ映像伝送機2機が情報収集

のため八尾を離陸、さらに午後1時35分に第3飛行隊のUH-1J

ヘリ1機が八尾を離陸した。UH-1Jヘリ2機で13回、約6.4ト

ンの空中散水を行ったが、12日には鎮火には至らなかった。

 なお、地上部隊としては奈良県の災害派遣要請先となって

いる京都府大久保駐屯地(宇治市)第4施設団から連絡員が奈

良県庁と上北山村に派遣され、車両5台、人員約30名の地上

消火部隊も派遣された。

【海外メーカーニュース】

★エアバス・ディフェンス&スペース、カナダより16機受注 C295Wを空軍の固定翼捜索救難機として選定

 カナダ政府は12月8日、エアバスC295Wを固定翼捜索救難

機として選定したと発表、カナダ空軍が救難捜索用に改造し

たC295Wを16機調達する。また、契約にはエアバス・ディ

フェンス&スペース社とカナダのPALエアロスペース社が合

弁で設立する会社が運用支援を担当することも含まれる。

 なお、C295Wにはカナダ製品が多数採用されている。エン

ジンはプラット&ホイットニー・カナダ社製であり、パイ

ロット訓練はCAE社が新しくカナダに開発する施設が使用さ

れ、前方監視捜索救難用電子・光学システムはL3ウエスカム

社が提供する予定。エアバスとPALの合弁会社AirProは

C295Wの生涯にわたる支援を提供し、カナダ在住のカナダ人

が管理する。

 カナダ向けのC295Wの納入は契約成立から3年後に膾炙さ

れ、既にカナダ軍に採用されているエアバスCC-150空中給

油・輸送機とともに運用される。

 なお、C295は25ヵ国で185機が運用されている。

【旅行関連ニュース】

★月末金曜日は15時退社、観光や買い物楽しんで 経産省と15団体、プレミアムフライデー展開へ

 経済産業省は、経済団体や旅行・小売など15団体とともに

「プレミアムフライデー推進協議会」を設立し、毎月月末の

金曜日を“プレミアムフライデー”と位置付け、15時退社を

推奨するとともに、旅行やショッピング、外食など、個人消

費の拡大につなげる社会運動をスタートさせる。

 最初のプレミアムフライデーは、来年2月24日(金)と

し、2回目以降も毎月月末の金曜日を“プレミアムフライ

カナダ向けC295W捜索救難機の想像図(提供:エアバス・ディフェンス&スペース)

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デー”として継続的に展開していく。財政出動なしに、冷え

込む個人消費を底上げするためには、働き方改革とセットに

した社会的なムーブメント作りが必要と判断した。

 経産省によると、消費回復策を検討する中で、米国で感謝

祭明けの金曜日からクリスマス・セールが始まる“ブラック

フライデー”にちなみ、日本でも同様のセールをやったらど

うかとの提案があったが、「セールは消費の先食いで、売上

総額は上がらない」との反対意見が多かったと指摘。このた

め、「消費の上乗せになり、楽しさや豊かさが感じられる機

会を作れないか」との考えから、プレミアムフライデー構想

が浮上した。

 このため、プレミアムフライデーでは、多くの人が豊か

さ、幸せ、楽しさを感じられる体験(買い物、家族との外

食、観光、ボランティアなど)や、そのための時間を創出す

る取り組みを進める。それによって、生活スタイルの変革、

地域等コミュニティの一体感醸成につなげ、単なる安売りで

はなく、デフレ的傾向を変えていくきっかけ作りをめざす。

 この取り組みの成否のカギを握るのは、月末の金曜日の15

時退社をどこまで拡大、浸透できるかだ。経産省によると、

経団連はこの取り組みの推進に強い意欲を示しているとし、

近く会員企業に対して協力を働きかける方針だという。働き

方改革も大きな社会問題となっているだけに、プレミアムフ

ライデーが一つのきっかけになることも期待される。

 プレミアムフライデー推進協議会に名を連ねる15団体は以

下の通り。

 ▼日本フランチャイズチェーン協会▼全国商工会連合会▼

日本チェーンストア協会▼日本経済団体連合会▼日本スー

パーマーケット協会▼日本旅行業協会▼日本商工会議所▼日

本百貨店協会▼新日本スーパーマーケット協会▼日本小売業

協会▼日本アパレル・ファッション産業協会▼ジャパン

ショッピングツーリズム協会▼日本ショッピングセンター協

会▼日本専門店協会▼全国商店街振興組合連合会

 統一ロゴマークを無償提供、専用サイトで申請 金〜日の2泊3日旅行スタイルも、各社検討開始

 プレミアムフライデーを推進するため、統一ロゴマークを

作成した。12月12日には専用ホームページもオープン、同サ

イトから申請すれば、企業等は統一ロゴマークを無料で使用

できる。

 対象地域や業種も問わず、全国各地で実施する。買い物、

観光、ボランティアなど、豊かさや幸せを感じられる商品、

サービス、イベントなどを行う地域、コミュニティ、企業等

が広く対象となる。

 また、毎月月末の金曜日を核として、金曜日から日曜日ま

での3日間とするなど、実施期間についてもそれぞれが柔軟に

定めてよいこととする。

 経産省によると、既に、初回となる来年2月24日のプレミ

アムフライデーに向けて、実施計画を練る商店街などが増え

ている。

 経産省によると、静岡県静岡市では、中心市街地の活性化

に取り組む「I Love しずおか協議会」が中心となり、“まち

バル”やイベントの開催を企画中。さらに、地元の商工会議

所では、会員企業に15時退社を働きかけるほか、静岡市役所

でも月末は早期退庁を呼びかける。2月24日にはオープニン

グイベントも計画中として、まさに街ぐるみでプレミアムフ

ライデーを推進しようと気運

が高まっている。

 また、長野県佐久市の岩村

田商店街、東京都世田谷区の

千歳船橋駅前商店街などで

も、まちバルの開催が計画さ

れている。

 旅行業界にとっても、金曜

日の15時退社が進めば、金曜

日から日曜日にかけての2泊3

日旅行など、新たな需要創出

につながる可能性があること

から、これに合わせた新たな旅行スタイルの提案が求められ

る。

 プレミアムフライデー推進協議会の委員を務める日本旅行

業協会(JATA)の越智良典理事・事務局長は、「プレミア

ムフライデーに合わせた商品企画を既に考え始めている旅行

会社もある。プレミアムフライデーが浸透すれば、新たな需

要創出が期待できるので盛り上げていきたい」と需要喚起へ

の効果を期待した。

 経産省では今後、プレミアムフライデーを活用した具体的

な取組事例について、情報を集約し、専用ホームページで紹

介するなど、取り組みの拡大を図る。

 経産省は、プレミアムフライデーの推進に係る事務局経費

として、平成28年度補正予算で2億円を確保しているが、PR

については民間主体で行っていくことになると説明してい

る。

※プレミアムフライデー公式ホームページ

https://premium-friday.go.jp/

プレミアムフライデーの統一ロゴマーク