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要旨集 2019 . 11 .3 4 神戸大学 鶴甲第 2 キャンパス 神戸市灘区鶴甲3-11第2回環境 DNA 学会神戸大会 環境DNA技術 活用 社会実装 けて The 2nd Annual Meeting of The eDNA Society 一般社団法人 環境 DNA学会

The 2nd Annual Meeting of The eDNA Society 第2回 …ednasociety.org/eDNA2019_kobe_abstract.pdf要旨集 2019.11.3 [日]– 4 [月・休] 神戸大学 鶴甲第2キャンパス (神戸市灘区鶴甲3-11)

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要 旨 集

2019.11.3[日]–4[月・休]

神戸大学 鶴甲第2キャンパス(神戸市灘区鶴甲3-11)

第2回環境DNA学会神戸大会環境DNA技術の活用 ~社会実装に向けて~

The 2nd Annual Meeting of The eDNA Society

一般社団法人 環境DNA学会

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第2回環境 DNA 学会神戸大会

2019 年 11 月 3、4 日 神戸大学

ポスター発表・高校生ポスター発表要旨集

P01 会場:P01-P42

P02 会場:P43-P58, H01-H03

#はポスター審査対象ポスターです。無断転載を禁止します。

一般社団法人 環境 DNA 学会

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P01 #

魚類集団における遺伝的多様性の量的評価と集団遺伝学的解析への適用

辻冴月(京大院・理)、芝田直樹((株)環境総合リサーチ)、沢田隼(龍大院・理工)、潮雅

之(京大・白眉)

近年、環境 DNA 分析における新展開として、集団内におけるハプロタイプの網羅的な検出

が行われ、その有用性が示唆された。しかし、ハイスループットシーケンシング(HTS)で

得られるリード数は DNA コピー数を必ずしも反映しないため、これまで遺伝的多様性を量

的に評価することは困難であった。 そこで本研究では、試料に内部標準 DNA を加えるこ

とにより HTS を用いた網羅的な環境 DNA の定量を可能にする qMiSeq 法を用い、アユの

野外集団における遺伝的多様性の量的評価を試みた。結果、得られた各ハプロタイプのコピ

ー数は、捕獲調査におけるハプロタイプ頻度を非常によく反映することが示された。さら

に、各コピー数を個体数とみなし、ヌクレオチド多様度や有効集団サイズを推定したとこ

ろ、捕獲手法とほぼ同等の推定値が得られた。本研究により集団遺伝学や系統地理学への環

境 DNA 分析の適用が今後ますます加速することが期待される。

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P02

イケチョウガイとヒレイケチョウガイの環境 DNA 解析を用いた簡易判定の試み

藤井明美((株)日吉・ 龍谷大 REC)、近藤昭宏((株)日吉・ 龍谷大 REC)、中村昌文((株)

日吉)、山中裕樹(龍谷大・理工)

琵琶湖固有種であるイケチョウガイは、日本の淡水に生息する最大の二枚貝であるが、絶滅

危惧 I 類に指定されている。また、イケチョウガイは、淡水真珠養殖に利用されてきたが、

乱獲や環境悪化により個体数が減少し、成⾧不良や斃死が起きたため、1990 年代に中国の

固有種であるヒレイケチョウガイとの遺伝子交雑体が改良貝として真珠養殖場に導入され

た。その結果、琵琶湖のイケチョウガイ自然集団の遺伝子汚染が問題と考えられるようにな

った。本研究では、イケチョウガイ及びヒレイケチョウガイのそれぞれの飼育水槽水より環

境 DNA を抽出し、新たに設計した検出系を用いて、リアルタイム PCR による解析を試み

た。その結果、イケチョウガイ及びヒレイケチョウガイの母系の区別ができることが確認さ

れ、この手法は両種の簡易判別法として有効であると考えられた。

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P03 #

オオサンショウウオ生態調査に向けた環境 DNA 分析の応用

太田直樹(鳥取大院・工)・丸山智美(鳥取大院・工)・細田健太(鳥取大院・工)・岡田純

(NPO法人日本ハンザキ研究所)・星川淑子(鳥取大院・工)

環境DNA分析を用いることにより、希少種であるオオサンショウウオ(Andrias japonicus)

の生息地や繁殖期を推定可能であることが報告されている。一方で、環境 DNA 濃度の変動

と、自然環境下における生息地から繁殖地への移動、繁殖行動、幼生の巣離れなど、本種の

生態との関連については明らかにされていない。本研究では、鳥取県八頭郡にある本種の繁

殖巣穴周辺で採水を行い、ミトコンドリア DNA の定量的 PCR 法により、環境 DNA 濃度の

変動をモニタリングした。この結果、(1)繁殖期である 8 月末には巣穴周辺域で環境 DNA

濃度が著しく上昇し、9 月末には下降すること、(2)10 月末には、孵化を反映すると思わ

れる環境 DNA 濃度の一時的な上昇が観察されること、(3)4 月に検出されていた環境 DNA

濃度が 5 月には検出限界以下まで低下することが明らかになった。本研究の結果、環境 DNA

濃度の変動により、繁殖地における本種の活動を推測可能であることが示された。

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P04

神奈川県環境科学センターにおける環境 DNA 調査の取組

⾧谷部勇太(神奈川環境科学 C)・武田麻由子(神奈川環境科学 C)・菊池宏海(神奈川環境科

学 C)

当センターで実施している環境 DNA 調査の取組を紹介する。 ・相模川水系における魚類

の捕獲調査と環境 DNA 調査の比較 ・相模川水系におけるサンショウウオ類の捕獲調査と

環境 DNA 調査の比較 ・現在実施中の調査の概要紹介 ➢酒匂川水系における魚類、サ

ンショウウオ類の捕獲調査との比較 ➢サンショウウオ類の採水時間帯、採水季節によ

る環境 DNA 検出率の変動及び河川における流下過程における環境 DNA 減少量の調査

➢底生動物の種網羅的解析手法の検討

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P05 #

イノシシの食性解析―植物性及び動物性食物の推定方法の検討

斎藤梨絵(福島県環境創造センター)・根本唯(福島県環境創造センター)・熊田礼子(福島

県環境創造センター)・大町仁志(福島県環境創造センター)・中村匡聡(いであ株式会社)・

石井弓美子(国立環境研究所)・玉置雅紀(国立環境研究所)

本研究では、雑食性であるイノシシの胃内容物を用いて、DNA メタバーコーディングによ

る食性解析の方法を検討した。植物性食物の推定において、ターゲット領域による結果のバ

ラツキを評価するため、3 つの遺伝子領域(核の ITS-2 領域、葉緑体の rbcL 領域及び P6

loop 領域)を解析し、その結果を属単位で整理し、比較した。その結果、3領域いずれも

コナラ属が最優占属として検出されたが、それ以外の属については、解析した遺伝子領域に

より検出/不検出となる違いが認められた。動物性食物の推定においては、ホスト種である

イノシシ由来の DNA 増幅の抑制に効果的な方法を検討するため、無処理、オリゴヌクレオ

チドによるブロッキング(DPO 法)、ペプチド核酸によるブロッキング(PNA 法)を実施

し、その効果を比較した。その結果、PNA 法において、イノシシの DNA の増幅が最も抑制

され、ミミズ、セミなどの動物性食物が検出された。

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P06

河川における環境 DNA を用いた魚類調査手法の検討と水質による影響の解析

平川周作・中島淳・松木昌也・古賀敬興・秦弘一郎・柏原学・古閑豊和・石間妙子・宮脇崇・

金子洋平・黒川陽一・志水信弘・松本源生・石橋融子(福岡県保健環境研究所)

福岡県内の河川3地点において、夏季と冬季に環境 DNA 及び電気式漁具を用いた調査を実

施し、魚類相を比較した。全調査回で電気式漁具による採捕調査で確認された種数より環境

DNA で検出された種数が多かった。しかし、採捕調査でのみ確認された種も各調査回で1

~4種存在していた。また、本調査では瀬と淵を区別して環境 DNA 解析を実施したが、種

組成が完全に一致することはなかった。そのため、瀬と淵の水を混合することにより、環境

DNA により検出できる魚種の取りこぼしの低減につながると考えられた。一方、本調査で

は冬季2地点において、生息が想定できない海産種の DNA が検出された。周辺の住宅など

からの DNA の混入が考えられ、今後の検討が必要である。当該地点の水質分析の結果にお

いても、夏季より冬季で家庭の洗濯用洗剤に含まれる成分の濃度が高いことが確認された。

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P07 #

岩手県大槌湾におけるサケ稚魚の餌となるカイアシ類 DNA の時空間分布解析

中尾眞子・宮下和士(北大院環科)・Wong Marty K.S.・峰岸有紀・西部裕一郎・兵藤晋(東

大大海研)

冷水性カイアシ類はサケ稚魚の初期の主要な餌生物である。我々は岩手県大槌湾において、

環境 DNA の定量的解析手法を用い、降海後のサケ稚魚の湾内での時空間分布を明らかにし

てきた。本研究では、さらに餌生物の分布との関係を明らかにすることを目的として、サケ

稚魚の餌となるカイアシ類 Pseudocalanus newmani ならびに Eucalanus bungii の DNA

を特異的に検出する系を立ち上げた。2018 年 1 月から 6 月まで大槌湾内の最大 13 地点で

採水し、すでにサケ環境 DNA の解析を行ったサンプルに対して、上記 2 種のカイアシ類

DNA の解析を行ったところ、P. newmani は親潮が流入する 2 月後半に湾口ならびに湾内

で検出されはじめ、3 月以降 6 月まで湾全域で検出された。一方 E. bungii は 4 月から 5 月

にかけて湾内の一部で検出された。これらの時空間分布は、ネット採集によるこれまでの知

見とよく一致しており、同一サンプルを用いてサケ稚魚と餌生物の分布変化を調べること

に対して、環境 DNA 手法が有用であることを示している。

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P08

多地点・高頻度環境 DNA 観測に基づく魚類群集構造のモニタリング:房総半島 11 地点に

おける 50 回の隔週調査でわかったこと、わかりそうなこと

宮 正樹(千葉中央博)・潮 雅之(京大生態研)・福地毅彦・佐土哲也・後藤 亮(千葉中央

博)

海辺の沿岸魚類群集をモニタリングするのは簡単なようで難しい。捕獲や視覚に基づく既

存の調査方法では、時間も経費もかかる上に魚種の判定には高度に専門的な知識が必要と

なる。また、このような調査の実施の可否は天候や海況に大きく左右され、⾧期にわたって

定期的・継続的に調査を続けることは不可能に近い。我々は、房総半島南端の太平洋岸から

東京湾口にかけての海岸線およそ 100km に 11 測点を設け、2017 年 8 月から 2019 年 8

月までの 2 年間にわたって、上弦・下弦の月(小潮まわりの潮位差が少ない日)に合わせて

隔週で採水、現場ろ過、海水温・塩分濃度の測定を行ってきた。今回の発表では計 50 回の

隔週調査の概要に加え、40 回目までの調査で得られた計 440 サンプルに基づく MiFish プ

ライマーを用いた魚類環境 DNA メタバーコーディング法による予備的解析結果の一部を

報告する。

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P09 #

空中環境 DNA 検出に向けた DNA 採取・検出の技術開発

久保 貴大(兵庫県立大・院・シミュレーション)・渡部 健(パシフィックコンサルタンツ株

式会社)・西澤 尚文(株式会社ゴーフォトン)・土居 秀幸(兵庫県立大・院・シミュレーショ

ン)

環境 DNA(environmental DNA、eDNA)技術を用いて、海洋、河川などの水域生態系の

生物種構成、遺伝的多様性が解析できることが広く知られてきた。水中では、環境 DNA 技

術が発展し、生物群集の網羅的解析、種特異的解析が行えるようになった一方、空中に存在

する環境DNAからのこのような解析は試みがあまりなされていない。このような背景から、

本研究では、空中に浮遊する eDNA を高感度に検出する手法の確立を目指して研究を進め

た。空中に浮遊する eDNA の採取については、先行研究の手法や PM2.5 検出法を参考に行

った。本講演では、採取したサンプルを解析した結果と空中の eDNA 検出精度に対する考

察について報告を行う。今後は先述の手法を用いて、主に蚊などの昆虫の検知を試み、蚊以

外の病害虫検知にも汎用性が高められるように、改良を重ねていく予定である。

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P10

環境 DNA を用いたイタセンパラの季節的移動の解明とワンド環境特性との関係

永山滋也(岐阜大・流域研)・太田宗宏((株)建設環境研究所)・加藤雅之((株)建設環境研

究所)・源利文(神戸大院・発達)・森誠一(岐阜協立大)

イタセンパラの稚魚期から産卵期(5 月~10 月)にかけた季節的な移動を明らかにするた

めに、木曽川のワンド 14 箇所において概ね 1 ヶ月おきに採水し、リアルタイム PCR を用

いた種特異的解析を行った。5 月以降、河川の増水により全ワンドが連結(冠水)する機会

は度々あったが、8 月 13 日から 9 月 25 日にかけてのみイタセンパラの出現する(DNA が

検出される)ワンドが顕著に増加した。これは産卵期に移動が活発化したことを示唆する。

この産卵期の移動とワンド環境特性(冠水持続時間、ワンド面積、本川水際からの距離)と

の関係を検討した結果、本川水際からの距離が近いワンドに本種が移入する傾向が見られ

た。イタセンパラは産卵期に生じる河川の増水に乗じて、比較的本川寄りの氾濫域を移動

し、産卵に適したワンドへの移入機会を増やし、分布の拡大や維持を図っていることが示唆

される。

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P11 #

環境 DNA による湿原環境の小型両生類観測への試み

竹下大輝(神戸大・院・発達) 照井滋晴(PEG) 池田幸資(PCKK) 三塚多佳志(PCKK)

Maslin Osathanunkul(Chiang Mai Univ.) 源利文(神戸大・院・発達)

現在、世界中で多くの湿地が失われており、生息している動植物の保全が急がれている。こ

の様な状況の中、環境 DNA 分析は多くの湖沼や河川で適用されてきたが、湿原での適用例

は少なく、分析結果が反映する範囲もよく分かっていない。そこで本研究は釧路湿原に生息

するキタサンショウウオ(Salamandrella keyserlingii)を対象とし、水槽実験と野外調査

の組み合わせにより、湿原の小型両生類に対する環境 DNA 分析の適用可能性を検討した。

水槽実験の結果、卵嚢、幼生、成体いずれからも検出可能な量の環境 DNA が放出されてい

ることが示された。また、野外調査の結果、湿原で環境 DNA 分析が周囲 7m の個体生息情

報をよく反映する可能性が示された。本研究はキタサンショウウオのみならず、湿原の小型

両生類に環境 DNA 分析を適用する上で、重要な知見をもたらすといえる。

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P12

底生動物ユニバーサルプライマーgBenthos のためのデータベース整備

半田佳宏((株)生物技研)・関口俊((株)プラントビオ)・関将史((株)プラントビオ)・

阿部洋子((株)生物技研)・野口桂代子((株)生物技研)・小野美奈子((株)生物技研)・

内野英一((株)プラントビオ)・中野江一郎((株)生物技研)

底生動物は、河川環境の水質指標生物として広く利用されているが、生物種が多く、形態分

類の専門的な知識がない一般人には種同定が難しい。もし底生動物の生態調査に「環境 DNA

分析」が利用できれば、非常に強力なツールになる。しかしながら、環境 DNA 分析に必要

な DNA 配列データベースの整備が不十分なのが現状である。そこで、私たちは 3 河川から

217 種の底生動物を採取し、それぞれの生物種から gBenthos の DNA 増幅配列を MiSeq

により明らかにした。さらに、形態分類では区別ができなかったユスリカ科の種でも

gBenthos の DNA 増幅配列を解読することで、種を区別することが可能であった。環境

DNA 分析による種同定の精度向上のため、引き続き DNA 配列データベースの拡充を進め

たいと考えている。

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14

P13 #

検出誤差に頑健な環境 DNA メタバーコーディング:種分布・多様性の評価と研究デザイン

の最適化

深谷肇一(国環研)・今藤夏子(国環研)・角谷拓(国環研)

環境 DNA メタバーコーディングでは、次世代シーケンサーから出力されるリードデータに

基づいて種の在・不在が判断される。一般的に環境 DNA 分析は検出感度の高い手法ではあ

るが、生息している種の DNA が不検出となること(偽陰性)も生じ得る。一方、環境 DNA

による種分布・多様性評価では、野外での環境標本採取と室内実験が必要であり、一定の調

査予算をどのように振り分けるかを検討する必要がある。これらの問題に対して本研究で

は、リードデータの生成過程を表す階層モデルを用いた解決策を提案する。複数の調査サイ

トから得られたデータにこのモデルを当てはめることにより、不検出の種がサイトに存在

していた確率を見積もることができる。また、種の検出効率に優れた研究デザインを特定で

きる。霞ヶ浦流域から得られた淡水魚の環境 DNA データに提案手法を適用した結果、サイ

ト内で採水を反復することの重要性が示唆された。

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P14

瀬戸内海の島々に生息するアカネズミの食性と森と海の生態系の連環を探る

佐藤淳・大月優弥・吉本孝(福山大・生命工学)

瀬戸内海の島々に生息するアカネズミ(Apodemus speciosus)の糞を対象に、葉緑体 trnL

P6 loop イントロン領域、およびミトコンドリア COI 遺伝子を標的とした DNA メタバー

コーディング法による食性分析を行った。その結果、植物ではブナ科とバラ科が、動物では

ヤガ科の蛾が調査したほぼすべての島のアカネズミから検出された。このことで、アカネズ

ミがブナ科の森の更新に関与することや、島々の果樹園被害を抑制する効果を持つことが

示唆された。現在、因島椋浦町の森と沿岸域をモデルとして、森と海の生態系の連環を探っ

ている。上述の手法による分析の結果、アカネズミは落葉樹であるアベマキ(ブナ科)の森

の更新に関与することが示唆された。「アベマキの落ち葉が腐植土を形成し、養分が海まで

流れ、海の生物多様性を維持する」という仮説を検証するため、沿岸域で環境 DNA 分析を

行っているので報告したい。

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16

P15 #

OTU–リード数分布の比較分析アプローチによる微生物のマクロ生態学的パターンの記載:

全球の海洋微生物を一例として

中臺亮介(東大院・農)、岡崎友輔(産総研)、松岡俊将(兵庫県大・院・シミュ)

群集内の各種の個体数を記録し、優占種と希少種の出現パターンを評価することは生物多

様性を評価する基本的な方法の一つである。動植物においては、これらは種個体数分布

(SAD)として研究されてきた。近年の高出力シーケンサーの発展は微生物においても OTU

リード数分布(ORD)として、SAD に類似した概念の中で、優占種と希少種を評価するこ

とを可能にした。本研究では、SAD と ORD の類似性と相違性を評価し、環境勾配に沿って

ORD がどのように変化するのかを解析することで、生物多様性の全球パターンにおける普

遍的な法則の探索方法を検討することを目的とした。全球の海洋微生物を対象とした

TARAocean のデータを用いて、最近の SAD の比較分析手法を微生物の ORD に導入し、

本発表の中でその結果について議論する。

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17

P16

陸水域の MiFish 分析結果の解析ツールは何を使うのが良いのか

大井和之・貞末加織((一財)九州環境管理協会)

NGS のメタバーコーディング分析後のデータ処理では、PCR エラーや NGS 読み取りエラ

ーによって生成されるノイジー配列を除いて代表配列に集約する作業が行われる。代表配

列の推定に最もよく使われている方法は、リード数の多い配列に対して一定の一致率で集

約するクラスタリング法であるが、1 塩基違いの別種が共存している時の見落としや、数塩

基以上塩基置換が起きたノイジー配列が新たな OTU とされてしまうという問題点がある。

デノイジング法は、リード数の多い配列に対する置換数ごとにノイジー配列をリード数の

多い順に並べた分布型をみて、代表配列を 1 配列とした場合のモデル分布から外れる場合

には複数の配列を代表配列に残す方法で、1 塩基違いのハプロタイプでも代表配列とするこ

とができる。地理的な隔離が生じやすく、1 塩基違いの別種が存在する場合も少なくない淡

水魚類の生息域を対象として、複数の解析ツールの解析結果を比較する。

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P17 #

マンソン住血吸虫の環境 DNA 検出法の改善

大澤亮介(神戸大・院・発達)、中村梨沙(⾧崎大・熱研)、二見恭子(⾧崎大・熱研)、板

山朋聡(⾧崎大・院・工)、菊池三穂子(⾧崎大・熱研)、Collins Ouma(Maseno University)、

濱野真二郎(⾧崎大・熱研)、源利文(神戸大・院・発達)

住血吸虫症は淡水貝から水中に放出された住血吸虫属のセルカリアが経皮感染することに

よって引き起こされる感染症であり、78 カ国で感染が確認され、推定 2 億 2080 万人が治

療を必要としている。広域にわたる住血吸虫伝播をモニタリングすることは非常に重要で

あるが、従来の方法では難しい。環境 DNA(eDNA)分析手法は住血吸虫の分布域を把握す

るための有望なツールになりうる一方、熱帯の湿地帯のように夾雑物や濁質が多い淡水の

ろ過では eDNA 捕集用のフィルターが詰まり、十分量のろ過ができず、検出感度が不十分

になるという問題がある。そこで、本研究では熱帯湿地で伝播する住血吸虫の eDNA 検出

法の改善を目的とし、主に eDNA 捕集に最適なフィルター孔径を検討した。プレろ過の有

無や異なるフィルター孔径による eDNA 検出率やろ過量の比較を行った結果、熱帯湿地で

は GF/D によるろ過が適切であると結論づけられた。

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P18

プレフィルトレーションによる環境DNA分析精度の改善

相原 浩揮(㈱ファスマック)・今中 応亘(㈱ファスマック)・松平 崇弘(㈱ファスマック)・

塚原 啓太(㈱ファスマック)・高崎 一人(㈱ファスマック)・大崎 空(㈱ファスマック)・

土居 秀幸(兵県大・院・シミュレーション)

環境中にはフミンをはじめとした様々な PCR 阻害物質が含まれており、これら環境因子が

環境DNA分析の精度を下げる要因となることが問題となっている。また、水試料の濁度が

高い場合、環境 DNA の由来となる細胞や組織片等を集積するフィルターが目詰まりを起こ

し、うまく環境 DNA を採取できないことも懸念されている。そこで予めポアサイズの大き

いフィルターで水試料をろ過(プレフィルトレーション)することで上記の問題を改善でき

ないかと考え、検証を行った。 MiFish(12S)によるアンプリコン解析の結果、プレフィ

ルターにより魚類相のばらつきが低減する傾向が伺えた。また、qPCR による評価では、プ

レフィルターによる反応性が向上し(Ct 値の減少)、高い再現性が確認された。本結果から

プレフィルトレーションがデータの再現性や分析結果の改善に寄与することが示唆された。

将来的には標準的なサンプリング手法のひとつとして確立していきたい。

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20

P19 #

舞鶴湾におけるマアジ環境 DNA 濃度の日周変化

村上 弘章 (京都大・フィールド研)・益田 玲爾 (京都大・フィールド研)・山下 洋 (京都

大・フィールド研)

海産魚類の生態調査に環境 DNA (eDNA)を適用する際、海域における eDNA の挙動に関す

る基礎的知見を集積することは極めて重要である。これまで、天然海域における eDNA 濃

度の日周変化を詳細に調べた例はない。本研究では、マアジ (Trachurus japonicus)の

eDNA 濃度の日周変化を調べ、それらと水温・塩分との関係、さらに本種の生態的特性との

関連性を検討した。eDNA 分析では、京都府 舞鶴湾の沿岸を中心に沖合 1000 m までの計

13 定点において、表層水 1 l を採取した試料水を用いた。これらについて、マアジの eDNA

濃度を朝・昼・夕刻の時間帯に定量した結果、一般に摂餌行動が活発となる朝・夕刻のまず

め時に有意に高かった。また、夜間に沿岸の表層を遊泳し昼間に沖合の深場に移動する本種

の日周行動とも一致した。一方、eDNA 濃度と水温には相関はなかったが、塩分とは弱い正

の相関が認められた。よって、eDNA 濃度の日周変化を調べることで、生物の日周性や移動

をモニタリングできる可能性がある。

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21

P20

出水前後における魚類の環境DNA量の変化-止水域での追跡事例-

稲川崇史(応用地質(株))・沖津二朗(応用地質(株))・源利文(神戸大院・発達)・村岡敬子

(国研・土研)・中村圭吾(国研・土研)

河川や湖沼の魚類調査において環境DNA技術を活用するためには、流況、水温といった環

境条件の変化に対する環境DNA量の応答(変化)の理解も必要である。本研究では、止水

域における流入量の変化に対する環境DNA量の応答の基礎情報の把握を目的に、201

8年9~10月にかけて、三春ダム(福島県)の蛇石川前貯水池において、表層水(5地点)

を採水した。採水は、出水前後を含む計 5 回実施し、採水時には濁度、水温等の環境情報も

計測した。環境DNAの分析は、魚類のコイ、ドジョウ、オオクチバスを対象に、リアルタ

イムPCRによる種特異的検出法を用いて実施した。環境DNA量の分析の結果、コイ、ド

ジョウ、オオクチバスの 3 種ともに、流入量や濁度の増大に伴い、環境DNA量が増加す

る傾向が認められた。

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22

P21 #

陸水・海水中の環境 DNA と添加した細胞・DNA の時間経過による分解

齊藤達也(兵庫県立大・院・シミュレーション)・土居秀幸(兵庫県立大・院・シミュレー

ション )

環境 DNA(eDNA)分析は近年飛躍的に発展し、目視や捕獲による従来の調査方法に並ぶ、新

たな調査方法として注目されている。このように近年飛躍的に発展した e DNA 分析だが、

未解明なことが多く存在する。例えば、環境中での eDNA の状態や分解に作用する環境因

子などは、ほとんど分かっていない。eDNA の分解や環境中での eDNA の状態や挙動を明

らかにすることで、eDNA 分析による生物量の定量を行う際に、分解された DNA の量を考

慮して評価できる可能性がある。さらに、測定した DNA がいつ対象生物により放出された

ものなのかも含めて評価できる。そこで、本研究では海、河川の環境水と滅菌水に DNA と

細胞を加え、時間経過とともにそれぞれの DNA のコピー数がどのように減少していくかを

観察し、環境水中における eDNA および細胞・DNA の分解について議論する。

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23

P22

環境 DNA 中に対象 DNA が微量しか含まれていない際の、より厳密な在・不在判定のため

の検討

吉本昌弘(㈱沖縄環境保全研究所)、伊勢孝太郎(㈱沖縄環境保全研究所)

リアルタイム PCR を用いた種特異的な在・不在の検出において、環境 DNA 中に当該種の

DNA が微量しか含まれていない場合、PCR 増幅が起こらないケースがある。そのため一般

的には、同サンプルを複数個用意し、その内の一つ以上で PCR 増幅が認められた場合は、

「在」と判断する。 ただし、すべてのサンプルで PCR 増幅が認められなかった場合にお

いても、「不在」と判断できるかどうかについては検討の余地が残ると考える。 本発表で

は、より厳密な在・不在判定に向けた検討内容について報告する。

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24

P23 #

セミの脱皮殻を利用した非侵襲的な DNA 採取法

神戸 崇(北大院・農・昆虫体系学)

セミは日本人にとっては身近な昆虫であるが、幼虫は地中で、成虫は樹上で活動するために

直接的な観察は難しく、その生態や生活史には不明な点が多い。遺伝子情報を利用した集団

構造や多様性の評価は新たな知見をもたらすと期待できるが、生体の採取の困難さやそれ

による個体群への影響が課題である。そこで、採集が容易で、種の同定も可能なセミの脱皮

殻(羽化殻)から DNA を抽出することを試みた。羽化後 2 日以内のアブラゼミの脱皮殻を

採取し、種判別に用いられない部位のみを切り取ってエタノールで固定し、DNA を抽出し

た。ミトコンドリア COI 遺伝子を PCR 増幅したところ、全てのサンプルでアブラゼミの遺

伝子の増幅がみられ、2 つのハプロタイプが見つかった。他の 5 種のセミについても羽化

時期にサンプリングを行い、COI 遺伝子の PCR 増幅に成功した。大部分を証拠標本として

残しつつ、ミトコンドリア DNA を採取できることが示された。

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25

P24

環境 DNA を用いたサクラマス遡上のモニタリングに関する検討

赤塚真依子(大成建設(株))・高山百合子(大成建設(株))・伊藤一教(大成建設(株))

魚類の河川遡上をモニタリングする手法として環境 DNA 分析を実施した。サクラマスを

対象とし、上流の産 卵場付近とその 7km 下流の 2 地点で採水し(2018 年 6 月から 11

月)、サクラマスの qPCR 分析を行った。 下流付近の目視観察により 7/11~7/22 と 8/5

~9/25 に遡上が確認された。DNA 量は 6/18 に対し 7/23 に高 かったことから、6/18

以降に開始した 7/11~7/22 の遡上が 7/23 の採水に反映され、8/21 以降の DNA 量 は、

7/23 に対し高くなったことから 7/23 以降の遡上が反映された可能性がある。上流の

DNA は下流に対し 高い期間が見られた。これは上流域における産卵および産卵後のサク

ラマスの滞留や、受精に伴う排出物により DNA が高くなった可能性がある。また降海しな

いヤマメの DNA が検出された可能性がある。以上より環 境 DNA を活用した魚類遡上の

モニタリングについて可能性が推察された。

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P25 #

ダム湖における魚類環境 DNA の鉛直分布

速水花奈(神戸大・院・発達)・坂田雅之(神戸大・院・発達)・沖津二朗(応用地質(株))・

稲川崇史(応用地質(株))・源利文(神戸大・院・発達)

環境 DNA(eDNA)メタバーコーディング手法を用いることで、一度に多種の eDNA を検

出できる。しかし、メタバーコーディング手法による検出種数はサンプリングの季節や場所

によって変動することが明らかになっている。これまでの eDNA に関する研究では、多く

の場合表層から水を汲んで分析が行われているため、水平方向の eDNA 分布に比べて鉛直

方向の eDNA 分布は十分に調べられていない。そこで本研究では、ダム湖において季節ご

との鉛直方向における魚類 eDNA の分布を調べた。福島県の三春ダムで各季節6地点にお

いて採水を行い、各地点につき表層から底層まで約 5 m に 1 回採水を行った。採水した水

は、MiFish プライマーを用いて eDNA メタバーコーディング手法により分析した。発表で

は、魚類の生態と eDNA メタバーコーディング手法での結果を踏まえて、魚類 eDNA の鉛

直分布について議論したい。

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P26

イトウの環境 DNA はどこまで流れていくか?

木下えみ、鈴木祐太郎、高松慎吾 、山田芳樹 ((株)ドーコン)

環境DNA技術を用いた調査手法は、希少生物等の在・不在の調査において注目されている。

しかし、自然環境下での環境 DNA の動態は不明な点が多く、どれほどの範囲の生物を反映

しているかはよく分かっていない。河川において環境 DNA が放出地点からどれほど下流ま

で検出されるかを明らかにすることは、本手法を生物のモニタリングへ活用するために重

要な基礎情報となる。本研究ではイトウを用いて、小河川における環境 DNA の動態を調べ

た。イトウは環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧種に指定されており、一般的な調査手

法では確認が困難な種である。調査はイトウが飼育されている池の排水が流入する小河川

にて行った。なお、この小河川にはイトウは生息していない。排水が流入する場所から 3.3

km 下流までの 9 地点においてサンプリングを行い、DNA の定量と、流量・流速・水温を

記録した。DNA は 3.3 km 下流まで検出されたが、DNA 量は飼育池と比べ 400 分の 1 に

減少していた。

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P27 #

琵琶湖産スジエビの生活史の解明

鄔 倩倩(神戸大・院・発達)、源 利文(神戸大・院・発達)

琵琶湖産スジエビは、季節的深浅移動を行う個体と、一年中沿岸から非移動個体がいると報

告されたが、両者の研究例は極めて少ない。そこで、本種の生活史を究明すれば、両者の生

態的な理解にも繋がる。本研究では、まず、環境 DNA( eDNA )分析法を用いてスジエビの

動態を調べた。沿岸の eDNA 濃度変化から、移動個体が 8 月上旬から 10 月中旬まで底層

へ移動することを示した。冬の沖の底層からは沿岸や内湖より高濃度の eDNA が検出され

た。底層の高濃度の eDNA は移動個体由来のものであり、沿岸や内湖で検出した eDNA は

非移動個体由来のものだと考えられる。また、生態特徴や安定同位体比を用いて異なる移動

様式の理由について検討した。大型・成⾧良好なメスに比べ、小型・栄養不良なメスがより

移動していた。その理由は、底層では均一な餌源は小型・栄養不良なメスにとって魅力的な

物だと考えられる。これらの結果から、琵琶湖産スジエビの生態の一端を明らかにすること

ができた。

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P28

環境 DNA のフィールド作業で使用可能な簡易抽出法の開発

亀田勇一((株)ゴーフォトン)・大橋俊則((株)ゴーフォトン)・永田久雄((株)ゴーフォトン)・

西澤尚文((株)ゴーフォトン)

環境 DNA は生物の存在を簡便に検出する有効な方法とされ、フィールド(現場)で測定し

たいという需要も高まりを見せている。日本板硝子(株)のモバイル PCR 装置はフィールド

でのリアルタイム PCR を可能にする有用な機械であるが、測定の前段階となる DNA 抽出

については、野外で既存の手法をそのまま行うには困難な点も多い。環境 DNA 学会からリ

リースされた「環境 DNA 調査・実験マニュアル」記載の抽出方法(学会法)は、比較的確実

で収量も高いが、実験室での作業を前提とした方法であるため、一定以上の設備や時間、技

術を要し、現場作業向きとはいいがたい。そこで我々は、フィールドでの PCR による種の

検出を、抽出作業も含め全て行えるよう、「簡便さ」及び「抽出効率」の観点から各種抽出

方法を検討し、手順の最適化などを行った。本発表では学会法の結果と比較しながら、より

簡便で野外での実施も容易な抽出方法について提案する。

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P29 #

クロダイ受精卵および仔稚魚の個体あたり環境 DNA 放出量

笹野祥愛(京都大院・農)、益田玲爾(京都大・フィールド研)、山下洋(京都大・フィール

ド研)

クロダイの成⾧に伴う環境 DNA 放出量の変化を飼育下で明らかにし、環境 DNA による生

物量推定の基礎情報を得ることを目的とした。富山県栽培漁業センターから供与されたク

ロダイの受精卵を、500 L 水槽 3 面に収容した。孵化半日前から孵化半年後(全⾧約 12

cm)まで定期的に水槽の排水を採取し、クロダイの種特異的検出系を用いて環境 DNA 量

を定量した。並行して水槽内の個体密度を推定し、全⾧を測定した。排水中の環境 DNA 量

と個体密度から個体あたりの環境DNA放出量を算出し、全⾧との関係を求めた。その結果、

受精卵や仔魚からも個体あたり数百~数千コピーの環境 DNA が検出され、環境 DNA が卵

や仔魚のモニタリングに有用であることが示された。また、全⾧と個体あたりの環境 DNA

放出量の関係を累乗式で表すと、環境 DNA 量は全⾧の約 2 乗に比例していた。このこと

は、環境 DNA の放出が体表面積に依存することを示唆している。

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P30

前処理を含む環境 DNA 定量測定基準(ものさし)の提案

福澤隆、亀田勇一、大橋俊則、西澤尚文、永田久雄

環境 DNA は生物種の存在検出に非常に有効な方法である。これを標準化するために作成さ

れた「環境 DNA 調査・実験マニュアル」に記載の方法は、比較的確実で収量の高い方法と

考えられる。しかしながらこれには前処理に各種装置が必要であること、⾧時間を要するこ

と、またその取り扱いにスキルを必要とする等の理由から、環境 DNA がより広範に展開さ

れるためには、場面に合わせてフィルタリングや抽出等の方法が多様化することが望まし

い。この場合、手法が異なると抽出等の効率も異なることから、得られた結果を他の方法で

得られた結果と一義的に比較することは困難である。これを可能にする手段の一つとして、

「標準サンプル(内標)」を添加することで定量的な議論を行える方法を考案した。今回各種

抽出方法の比較を行った結果、一定の関係性を観察したので報告する。

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P31 #

Monitoring of odor material produced by cyanobacteria in North-Han River

watershed

Keonhee Kim (Human & Eco-Care Center Konkuk University ECO-LIX inc.),

Chaehong Park (ECO-LIX inc.), Younbo Sim (ECO-LIX inc.), Hyukjin Cho (K-water),

Sejin Lee (K-water), Kyunghwa Seo (K-water), Alongsaemi Noh (Konkuk University)

and Soon-jin Hwang (Konkuk University)

This study detected the odor material (Geosmin 2-MIB) producing potential and

expression of cyanobacteria at the gene level in in the North-Han River watershed.

Surface water and Biofilm samples were collected during the cyanobacterial bloom

period in 2019. The potential and expression of odor synthesis genes were analyzed

by using the real-time PCR. In the North-Han River watershed 2-MIB producing

(mibC) genes were found at most sites. mibC genes were observed not only in the

surface sample but also in the biofilm samples. The mibC gene copy number in the

surface water increased in August. However Geosmin synthesis genes were found

only at the Pal-dang lake watershed in July. The trend of odor producing genes

caused by cyanobacteria in North-Han River in this period was different from that

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of in 2015. This difference may be due to the change in the dominant cyanobacteria

group because of the short retention time by heavy rainfall and change of hydrologic

structures.

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P32

環境 DNA を活用した関空島周辺海域におけるキジハタの分布の推定について

辻村浩隆・山本義彦・山中智之(大阪環農水研)

大阪湾南東部沖に造成された関西国際空港島(関空島)は対岸から約 5km 離れており、そ

の周囲は砂泥底となっている。この孤立した関空島周辺海域において根魚であるキジハタ

の分布を環境 DNA により推定した。2018 年 7 月、11 月、2019 年 2 月に関空島周辺海域

の 10 地点で表層水を各 2L 採集、このうちの関空島近傍の 5 地点で中層水と底層水を各 2L

採集した。リアルタイム PCR を用いて DNA 濃度の測定を行った結果、濃度の高い地点は

2018 年 8~10 月に実施した籠網調査で捕獲数が多かった地点と重なっており、相対的な

密度分布を把握することができた。季節別・層別では、2 月の関空島近傍の表層で濃度が最

も高く、次いで 7 月の表層と底層で高かった。また、いずれの季節においても中層ではほ

とんど検出されなかった。これらの結果を活用し、キジハタの密度分布を正確に推定するた

め、最適な調査の季節や採水層を明らかにする必要がある。

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P33 #

環境 RNA と環境 DNA による魚類の検出感度の比較とその時間変化

中道友規(龍谷大院・理工)・釣建司(龍谷大院・理工)・寺園裕一郎(須磨海浜水族園)・

加茂耕太朗(須磨海浜水族園)・石原孝(須磨海浜水族園)・山中裕樹(龍谷大・理工)

環境 DNA は放出後も一定期間は環境中に残存するが、これはすでにいない種を誤検出する

危険性につながる。一方で、RNA は DNA と比べ残存時間が短いと予想されるため、検出地

点にいる生物をより正確に検出できる可能性がある。そこで、環境 RNA を対象としたメタ

バーコーディングを試みた。本研究では水族館の飼育水を用い、24 時間後までの分解依存

での検出種の構成の変化を環境 DNA と環境 RNA それぞれを対象としたメタバーコーディ

ングにより比較した。結果、大水槽展示種 75 種のうち、24 時間後までの濾過サンプルか

ら環境 DNA では 34-33 種と 11-8 属、環境 RNA では 31-17 種と 8-3 属が検出された。

環境 RNA の方が検出種数は少なかったが、検出種の組成については両者で大きな違いはな

かった。また、24 時間後でも環境 RNA による種の検出が可能であった。今後、環境 RNA

についてのさらなる研究が求められる。

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P34

樹冠通過雨からの DNA 検出による生物相の把握の試み

小林聡・鈴木準平・中野大助(電中研・生物)

温帯林の樹冠の生物相は研究例が少なく未知な部分が多い。そこで、樹冠を通過した雨水

(樹冠通過雨)から環境 DNA を検出することができれば、樹冠の生物相が把握できると考

え、樹幹通過雨のサンプリング及び処理方法の検討を行った。雨のサンプリングは、我孫子

市にある電中研構内の雑木林において、ロートと 2L ボトルを用いた簡易な採取装置を作成

し実施した。処理方法については、保存剤の有無、プランクトンネットによるプレフィルタ

リングの有無、PES フィルターの孔径(3μm、1μm、0.45μm)による違いを検討した。

COI のユニバーサルプライマーを用いてメタバーコーディング解析を実施し、97%OTU を

識別した結果、節足動物を約 20 種、鳥類 2 種等を検出した。処理条件に関しては、保存剤

無、プレフィルターあり、1μm孔径のフィルターの成績が最も良かった。

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P35 #

Ruegeria 属細菌の分布調査を目的とした環境 DNA 検出法の検討

北村 瑠璃子(阪府大院・生命環境)・三浦 夏子(阪府大院・生命環境)・岡田 圭以子(阪

府大院・生命環境)・元根 啓佑(京大院・農・応用生命、学振 DCI)・高木 俊幸(東大・

大気海洋研)・植田 充美(京大院・農・応用生命)・片岡 道彦(阪府大院・生命環境)

海洋細菌 Vibrio coralliilyticus はサンゴの細菌性白化を引き起こす日和見病原菌である。近

年我々は、V. coralliilyticus に対して生育阻止活性をもつ Ruegeria 属細菌をアザミサンゴ

から単離した。Ruegeria 属細菌は種内の多様性が大きく、いまだ詳細な分類がなされてい

ない。また、Ruegeria 属細菌は海洋に広く分布していることが知られているが、具体的な

分布状況は解明されていない。本研究では、環境 DNA を用いて Ruegeria 属細菌の分布を

調べることを目的とした。まず、in sillico PCR を行うことで Ruegeria 属細菌特異的プラ

イマーを設計した。設計したこれらのプライマーの機能性を確認するために、Escherichia

coli、V. coralliilyticus、 Ruegeria 属細菌それぞれ 1 株ずつに対して PCR およびリアルタ

イム PCR を行ったところ、Ruegeria 属細菌に特異的であることが示唆された。さらに、リ

アルタイム PCR を用いて設計した新規プライマーの検出限界を確認した。これらのプライ

マーを用いて、実際に採水した環境試料中に含まれる DNA の検出を試みたので、結果をま

とめて報告する。

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P36

環境 DNA 分析用ろ過サンプルの常温持ち運びに向けた検討

村岡敬子(国研土研)

河川事業で行う水質調査や生物調査と環境 DNA 調査を組み合わせるとき、サンプリングを

なるべく簡素な装備で簡便に実施できる方法が望まれる。本研究では、ステリべクス等によ

る現地ろ過サンプルを常温で持ち運ぶ方法として、Buffer ATL(以降①)もしくは Buffer

ATL + Proteinase K(以降②)添加の効果を検討した。いずれも常温での保管が可能な試

薬である。めだかの飼育水をろ過したろ紙にこれらを添加し、常温(20℃)で 24 時間経過

後、抽出キットのプロトコルに従い DNA を抽出した。得られた DNA は-80℃で保管し、1

週間ごとに DNA 濃度を計測して、凍結融解および保管期間中の減耗を評価した。①、②と

もに、ろ過直後に DNA を抽出したサンプル(以降③)に比べて減耗率が低く、4週間経過

後の DNA 濃度は③に対して 7 割前後であった。DNA の抽出をしようとするときの作業効

率の点では②がより簡便であることから、今後、②をベースに温度条件や持ち運び時間など

を検討していく予定である。

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P37 #

河川における環境 DNA 含有物質の動態シミュレーション

山口皓平(山口大院創成)・赤松良久(山口大院創成)・乾隆帝(福工大社環)・中尾遼平(山

口大院創成)・河野誉仁(山口大院創成)

河川などの流域において、環境 DNA を指標とした生物評価を行う場合、対象生物が放出し

た DNA の影響が流域内のどの程度の範囲にまで及ぶのかという情報はきわめて重要とな

る。環境DNAとして検出される水中の浮遊物質は、排泄物などの生物由来の物質に起因し、

流れや河床などの物理学的条件や、微生物による分解などの生物学的条件に影響を受ける

可能性が高いことが示唆されているが、その特性は明確にはなっていない。本研究では、流

水環境における環境 DNA 含有物質の物理学的・生物学的な傾向の双方に着目し、アユ

Plecoglossus altivelis altivelis を対象として、実河川における野外実験、時間経過に伴う

DNA の分解を把握する水槽実験、個体から採取したフン、粘液、体表組織の流下に伴う粒

径の変化を検証する水路実験および粒径解析を実施した。実験の結果をもとに、実河川を対

象に物質動態モデルを用いた数値シミュレーションを実施し、流水環境下での環境 DNA 含

有物質の動態を把握することを試みた。

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P38

DNA 抽出キットと PCR 反復数が陸水菌類メタバーコーディングの結果に与える影響

松岡俊将(兵庫県大院・シミュ)・杉山賢子(京大院・人環)・永野真理子(兵庫県大院・シミ

ュ)・土居秀幸(兵庫県大院・シミュ)

陸水(河川水や湖水)における環境 DNA を対象に、菌類 DNA メタバーコーディングを行う

際,DNA 抽出キットや PCR 反復数の違いが,検出される菌類 DNA 相にどのような影響を

与えるのかを調査した.河川と湖沼 3 か所ずつ計 6 か所でそれぞれ表層水 1L を採集し,ガ

ラスフィルターろ過後,(1)キアゲン社 DNeasy Blood and Tissue kit(動物を解析対象

とした環境 DNA で用いられる)と(2)キアゲン社 PowerSoil kit(微生物環境 DNA で用

いられる)によりそれぞれ全 DNA を抽出した.菌類 ITS 領域を PCR 増幅し MiSeq による

配列解読を行った.PCR は反復数を 1 回,4 回,8 回の 3 条件で行った.その結果,PCR

反復数が 1 回,4 回,8 回と増えるにつれてサンプル当たりの平均 OTU 数も 121,147,

159 と増加した.一方,DNA 抽出キットは,OTU 数と OTU 組成のいずれに対しても有意

な影響を与えていなかった.一方,本結果は,Blood and Tissue kit を用いることで動物

DNA だけではなく菌類 DNA も含めた多様な生物群の検出が行える可能性を示唆している.

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P39 #

Feeding behavior analyses of brackish calanoid copepods: focused on gut

content analysis using DNA technology

Hye-Ji Oh Yeon-Ji Chae Kwang-Hyeon Chang (Department of Environmental Science

and Engineering Kyung Hee Univ.) Joon-Woo Kim (Jeonbuk Regional Environment

Office Ministry of Environment) Ihn-Sil Kwak Hyunbin Jo (Fisheries Science Institute

Chonnam National Univ.)

Analyses of feeding behavior have been a major research field in ecology. Recently

although developed stable isotope techniques have accelerated the quantitative

approaches regarding prey selection behavior this process is limited particularly for

microorganisms. Copepods are important components in coastal and marine

ecosystems by providing main food sources for fish. However their distribution

patterns in brackish area are complicated due to the effects of both water quality

and food condition simultaneously. The Saemangeum Reservoir in Korea is a large

brackish reservoir. According to the effects of seawater and freshwater of this

reservoir the composition of Copepods show dynamic changes. In the present study

we collected predominant copepods and analyzed their gut contents using DNA

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technology to investigate the distribution pattern of dominant copepod species and

the relationships with prey distribution. The results will be discussed in the present

poster presentation.

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P40

環境 DNA 技術を用いた函館湾周辺の小河川における魚類の出現傾向の把握

北川哲郎(国研・土研)・村岡敬子(国研・土研)・中村圭吾(国研・土研)

環境 DNA 技術は、環境調査とりわけ魚類を中心とした水域調査における直接採捕に代わる

効率的な新手法として、河川とその環境を管理している河川管理者等から大きな期待を寄

せられている。しかし、環境 DNA 技術を用いた環境調査の実践に向けては、検出特性や有

効範囲、具体的な経済性など、更なる精査や事例の集積を必要とする課題が多く残されてい

る。そこで、本研究では、環境 DNA の活用に関する知見集積の一環として、2019 年 4 月

に北海道函館湾周辺に注ぐ 12 河川の河口付近で採水したサンプルを用いて、MiFish プラ

イマを用いたメタバーコーディング解析を実施し、周辺環境との照合による魚類の出現傾

向の把握を試みた。また、調査に要した経費を概算したうえで、同程度の成果を想定した採

捕調査との差について試算した。本発表では、検出された魚類相の出現傾向および環境調査

手法としての環境 DNA 技術の特性に関するいくつかの知見について報告したい。

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44

P41 #

Spatial distribution of aquatic organisms in a coastal ecosystem using eDNA

Hyunbin Jo, Dong-Kyun Kim, Kiyun Park (Fisheries Science Institute, Chonnam

National University) , Won-Soek Kim (Division of Fisheries and Ocean Science,

Chonnam National University) and Ihn-Sil Kwak (Fisheries Science Institute,

Chonnam National University, Division of Fisheries and Ocean Science, Chonnam

National University)

The nonlinearity and complexity of coastal ecosystems often cause difficulties when

analyzing spatial and temporal patterns of ecological traits. Environmental DNA

(eDNA) monitoring has provided an alternative to overcoming the aforementioned

issues associated with classical monitoring. We determined aquatic community

taxonomic composition using eDNA based on a meta-barcoding approach that

characterizes the general ecological features in Gwangyang Bay coastal ecosystem.

We selected the V9 region of the 18S rDNA gene (18S V9), primarily because of its

broad range among eukaryotes. Our results produced more detailed spatial patterns

in the study area previously categorized (inner Bay, main channel of the Bay and

outer Bay). Specifically, the outer Bay zone was clearly idetified by CCA using genus-

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level identification of aquatic organisms based on meta-barcoding data. We also

found significant relationships between environmental factors. Therefore, eDNA

monitoring based on meta-barcoding approach holds great potential as a

complemental monitoring tool to identify spatial taxonomic distribution patterns in

coastal areas.

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46

P42

DNA クロマトを利用した海水から直接白点虫を検出する試み

高崎 一人・松平 崇弘・塚原 啓太・森中りえか((株)ファスマック)・工樂 樹洋(理研 BDR)・

宮川 訓(ニフレル)・芳井 祐友・宮側 賀美・伊藤 このみ・伊東 隆臣(大阪海遊館)

海洋性白点病は繊毛虫の一種である白点虫(Crypocaryon irritans)が感染し、魚類の表面に

特徴的な白い斑点が出現する病気である。白点病は魚の免疫力が低下した際に感染するこ

とから”魚の風邪”とも言われているが、稀に重篤な症状を引き起こすとともに観賞魚として

の価値も低下するため、原因生物である白点虫を早期に発見することが重要である。今回

我々は、白点虫が魚類と海底とを行き来する生活環に注目し、環境DNAの手法を利用して、

海水から直接白点虫を検出する系の開発を行ったので紹介する。開発した検出系は 1)採水

2)フィルタリング 3)DNA 抽出 4)等温反応 5)検出の工程から成り、数百 mL を採水する

ことで水槽中に生息する白点虫の有無を判別することが可能であった。本手法により感染

前に白点虫の検査を行うことが可能となり、確定検査に加えて生物学的な水質管理にも役

立つことが期待された。

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P43

特定外来生物カワヒバリガイの環境 DNA を用いた分布調査の有効性

伊藤健二 ・芝池博幸 (農研機構 農業環境変動研究センター)

特定外来生物カワヒバリガイの侵入を早期に検知する手法として、従来の調査に対する環

境 DNA を用いた調査の有効性を検討した。茨城県つくば市内の貯水池を対象に、目視調査

とプランクトンネットを用いた幼生の採集を行った。また、貯水池の表層から水 1L を採水

し、実験室において環境 DNA を抽出した後、種特異的プライマーとプローブを用いてカワ

ヒバリガイ由来の DNA を定量した。その結果、目視観察および幼生の採集により、15 ヵ

所中 5 ヵ所の貯水池においてカワヒバリガイの生息が確認されたが、環境 DNA を用いた調

査では、15 ヵ所中 9 ヵ所の貯水池においてカワヒバリガイ由来の DNA が検出された。こ

れら 9 ヶ所の貯水地は、従来の手法によってカワヒバリガイの生息の確認された全ての貯

水池を含んでいた。講演では、環境 DNA によるカワヒバリガイの早期検知について、また

貯水池における環境 DNA の空間的異質性についても議論する。

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48

P44

我が国に生息する汽水・淡水魚類の環境 DNA 分析(MiFish 法)で識別に注意を要する種

大杉智美・大場巳佳子・大井和之(一般財団法人九州環境管理協会)・中村匡聡・白子智康

(いであ株式会社)・市塚友香・串田卓弥(環境省自然環境局生物多様性センター)

環境省では、我が国の生物多様性保全上重要な二次的自然に生息する魚類を対象に、環境

DNA 分析技術を用いた調査手法の標準化を進めている。しかし、MiFish 法による環境 DNA

の網羅的解析では、分析する 12SrRNA 遺伝子領域(MiFish 領域)の塩基配列が複数種で

同じなために識別が困難な種が存在する。また、塩基配列の一致率が 97%以上になる種の

組み合わせは、クラスタリングなどのデータ解析時に注意を要する。さらに、一致率が 97%

未満の複数の配列が同じ種に属する場合は、BLAST 検索結果を集約する際に注意を要する。

そこで、環境省レッドリスト全掲載種及び外来種を含む汽水・淡水魚類 366 種の MiFish 領

域の登録配列について、NCBI-Genbank で調査し、登録種について同サイト上で BLAST 検

索、樹形図作成を行った。この樹形図を基に MiFish 法で識別に注意を要する種を整理し、

リストにまとめた。

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P45

環境 DNA メタバーコーディングを用いた宍道湖-中海の魚類・鳥類群集の季節変遷解析

高原輝彦(島根大・生資)・山中裕樹(龍谷大・理工)・折戸みゆき(島根大・生資)・中道

友規(龍谷大・理工院)・立石 新(広島大・院・生物圏科学)・土居秀幸(兵庫県立大・院・

シミュレーション)・後藤 亮・佐土哲也・宮 正樹(千葉県博)

全国有数の鳥類の越冬地である島根県において、近年、宍道湖と中海の漁獲量の減少が問題

視されている。持続可能な水産資源の確保には生物群集の把握が必要であるが、従来の調査

には時間や人員などの膨大なコストがかかる。そこで、環境 DNA メタバーコーディング法

を用いて、宍道湖-中海を利用する魚類・鳥類の群集解析を実施した。2016 年 11 月―2017

年 9 月までの奇数月において、宍道湖・中海各 7 地点から採取した DNA サンプルを用意

し、プライマーは MiFish と MiBird を用いた。その結果、絶滅危惧種を含む魚類 150 種以

上、および、鳥類 20 種以上が検出された。魚類では、宍道湖西部は淡水魚が多く、大橋川

付近で汽水魚が多くなり、中海東部は海水魚が多くなる傾向があった。鳥類では、夏季より

も冬季に多くの種数が検出された。宍道湖-中海における魚類の分布は、湖水の塩分濃度勾

配が影響しており、また、鳥類は、各湖内において越冬場所として選好する環境の存在が示

唆された。

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P46

現場における環境 DNA 分析手法の開発

白子智康・中村匡聡・相馬理央(いであ株式会社)

昨年度の大会では、環境 DNA 分析によるトウカイナガレホトケドジョウ生息調査の結果に

ついて報告した。その際には、採水からろ過までを現場で実施し、DNA 抽出及び環境 DNA

の定量は、分析施設内で実施した。一方、遠隔地や離島、外洋等、サンプルの輸送が困難な

調査では、採水から環境 DNA の定量まで全工程を現場で完結する必要がある。そこで、採

水から環境 DNA の定量までを現場で実施可能な手法を開発した。大型の分析機材を必要と

しない DNA 抽出キットを使用し、持ち運び可能な高速リアルタイム PCR システムを用い

ることで、対象生物の在・不在だけでなく、環境 DNA の定量を現場で実施することが可能

となった。さらに、「環境 DNA 調査・実験マニュアル」の手法と本手法の検出コピー数の

比較により、本手法の検出精度を明らかにし、従来手法と同等の検出精度を目指して、現場

における環境 DNA 検出手法の改良を行った。

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P47

奈良県生駒市ため池群における環境 DNA 手法を用いたカワバタモロコ生息地の探索

相馬理央(いであ(株))・堀田侑暉(近畿大・農学) ・松沼瑞樹(近畿大・農学)・ジン・タナン

ゴナン(近畿大・農学)・淀真理(保護活動ボランティア)・宮本良太(保護活動ボランティア)・中村慎司

(保護活動ボランティア)・白子智康(いであ(株))・中村匡聡(いであ(株))

奈良県生駒市では、市内の一部のため池で生息が確認されているカワバタモロコ

(Hemigrammocypris neglectus)について、生駒市及び近畿大学、市民ボランティア協

働の保護活動が行われている。本研究では、本種の生息状況把握のため、環境 DNA による

生息地の探索を実施した。生駒市内のため池群 22 地点から各 1L を採水し、種特異的プラ

イマーセットを用いた定量 PCR 法にて検出を行った。また、得られた DNA サンプルにつ

いて、ゲノム DNA 精製試薬を用いた精製の有無により、環境 DNA の検出結果に違いが生

じるかについても検討を行った。その結果、計 7 地点からカワバタモロコの環境 DNA が検

出された。検出された地点には、過去にカワバタモロコが捕獲されている池も含まれてい

た。また、DNA 精製の有無に着目すると、精製を実施した分析のみで DNA が検出された

地点や、検出される DNA 量が増加した地点もみられ、ターゲット種の検出感度向上にゲノ

ム DNA 精製試薬が有効である可能性を示唆する結果となった。

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P48

臨海実験所における環境 DNA を用いた沿岸生態系の理解に向けて

吉田真明(島根大学・臨海)・濱田麻友子(岡山大学)・山本哲史(京都大学)・宮本教生

(JAMSTEC)・守野孔明(筑波大学)・小野廣記(島根大学・臨海)・川島武士(遺伝研)

我々は、日本の臨海実験所群を利用した教育の一環として、環境 DNA 研究を取り込んでお

り、その成果について報告する。これまでの試みとして、「臨海実験所で海水を採集し、DNA

抽出から配列解読、配列解析し、何が見えるのか?」と銘打ち、国内の学生・留学生を対象

に、MiFish 法による環境 DNA 解析の実技・講習を行った。また、浮遊性の生活史をしめす

海産無脊椎動物の幼生などを対象に、日本近海域における浮遊生物動態の一端を解明する

ことをめざし、隣接する複数地点の採水と環境 DNA 比較解析、および海流シュミレーショ

ンとの比較検討を行っている。これらの活動から、バクテリア、魚類が進んでいるのに比べ

て、真核単細胞や、動植物プランクトンをターゲットとした環境 DNA 解析の系がまだまだ

未整備であること、TARA のような大型プロジェクトでは近海の生態系の解析がまだ不十分

であること、などが課題として明らかになってきた。

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P49

生活排水対策の効果検証への環境 DNA メタバーコーディング法の導入 ―魚類相から見た

河川環境改善効果の評価―

木持謙、渡邊圭司、田中仁志(埼玉県環科国セ)、鈴木健太、田村和大(埼玉県水環境課)、

高橋唯、斉藤弥生、近藤貴志(中外テクノス(株))、水島康一郎(三洋テクノマリン(株))、

太田宗宏((株)建設環境研究所)、小出水規行((国研)農研機構)

本研究では、水環境保全・改善のための生活排水対策の効果検証にあたり、灌漑・非灌漑期

で流量変化が大きく、生活排水や浄化槽処理水が流入する埼玉県内の農業用水路で水質と

魚類相の両面から環境評価を行った。魚類調査は、環境 DNA メタバーコーディング法の導

入を検討した。解析では全検出 DNA 量(リード数)に占める当該魚種の検出割合をもとに、

生息の有無を判定した。その結果、採捕調査に比較して多くの魚種が検出され、生息数が少

ないあるいは採捕困難な魚種の存在が把握できることがわかった。解析結果には各魚種の

生息数(あるいはバイオマス)が反映され、優占種の推測等に適用可能なことが示唆される

とともに、地点ごとの生息魚種の違いや、季節による魚類の挙動も把握できた。また、人為

起源の汚染・汚濁とその程度の把握への適用可能性も示唆された。一方で、DNA が検出さ

れなかった生息魚種も存在し、採捕調査との併用は極めて重要である。

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P50

外来魚を対象とした環境 DNA チップの開発

中尾遼平(山口大院創成)・今村史子(日本工営株式会社)・赤松 良久(山口大院創成)

環境 DNA メタバーコーディングは対象の分類群を網羅的に検出できることから、生物モニ

タリングで非常に有用な手法である。その一方で、超並列シーケンサーの導入にコストがか

かること、データ解析において高い専門性を必要とするなどの課題もあげられる。そこで本

研究では、メタバーコーディングにおける課題を解決しつつ種の網羅的な解析を行える手

法として DNA チップに着目し、目的に応じた種群の網羅的な検出を行うための環境 DNA

チップの開発を行った。本研究では、特定外来種のオオクチバス、コクチバス、ブルーギル

を対象種として選定し、MiFish などのプライマー配列から DNA チップに最適なプライマ

ー配列を選定した。また、外来魚 3 種をそれぞれ種特異的に検出するためのプローブの探

索および開発を行った。本発表では、環境 DNA チップ開発の進捗状況についての報告を行

う。

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P51

環境 DNA メタバーコーディングによる魚類相情報の地域での活用-「対馬魚類図鑑」の制

清野聡子・會津光博(九州大学・院・工)・宮正樹・佐土哲也(千葉県博)・三原立也(対馬

市役所)

⾧崎県対馬市は、対馬暖流のただなかにあり、複雑な地形と⾧い海岸線も保有する島嶼で

ある。また漁業が盛んであり、海洋保護区政策も進んでいる。現在、磯焼けの渦中にあ

り、高速の調査が求められている。しかし、対馬の魚についての地域誌がなく、漁業、教

育、観光などでも不便な状態にあった。 発表者らは「対馬の魚類図鑑」を 2017 年度か

ら制作委員会をつくり、2018 年電子版を公表した。

http://www.city.tsushima.nagasaki.jp/kaiyohogoku/post-2.html 図鑑は標本写真

を中心に編集したが、魚類相については、文献調査、定置網や刺網などの漁獲物、2016

年夏季からは環境 DNA メタバーコーディングにより行ってきた。136 種を確認し、上位

30 種を公表した。今後、個別の地区の水産有用種や希少種の詳細な公表は地域と調整し

順次公開していく。本法の検出力の強さを活かした調査には、地域の継続的な協力が不可

欠である。またモニタリングの継続の支援を得るには、成果共有の速報性が重要である。

今後、環境 DNA 学会などで、社会との共有の様々な仕組みやルールを作っていく必要が

ある。

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P52

分析作業時におけるコンタミネーション-異なる機関における分析から判明したこと-

高橋唯、斉藤弥生、近藤貴志(中外テクノス(株)) 木持謙、渡邊圭司、田中仁志(埼玉県

環科国セ) 小出水規行(農研機構)

環境 DNA 解析は高感度な分析手法であり、コンタミネーション(以下、コンタミ)防止の

成否が分析結果の精確性に直結する。本研究では、2機関において同一の試料を分析し、分

析結果の再現性および各機関におけるコンタミ状況について確認した。作業工程(ろ過、

DNA 抽出、1st PCR)別に分析機関を異にすることで、コンタミ発生しやすい工程を検証

した。河川水、水槽水、地下水について分析を行った結果、魚類が生息している環境 DNA

濃度が比較的高濃度で含まれる試料については、機関・工程によらず結果は概ね一致した。

一方、環境 DNA が極めて少ないと判断される地下水試料は、2 機関で異なるコンタミが確

認され、コンタミは高濃度の DNA を取り扱う PCR 作業だけでなく、その前段階から発生

することが示された。試料によっては環境 DNA そのものの量が少なく、容易にコンタミネ

ーションが起こるため、一層の注意が必要である。

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P53

環境 DNA を活用した九頭竜川におけるアラレガコ(アユカケ)生息実態把握の可能性

川口究・中村匡聡・白子智康(いであ株式会社)田原大輔(福井県立大学)

九頭竜川流域ではアラレガコの伝統漁法や食文化から成る「アラレガコ伝統文化」が存在

し、九頭竜川中流域は「アラレガコ生息地」として国の天然記念物に指定されている。しか

し、近年、産卵・生息場所の減少に伴いアラレガコの生息個体数が減少している。アラレガ

コの保全・再生策を検討するには、その分布や生息に関する実態を把握する必要があるが、

本種は夜行性で、昼間は浮石の下に潜りこんでいることなどから、従来の目視や採捕では調

査精度の確保が難しい。そこで、本研究では、環境 DNA によるアラレガコ生息実態把握へ

の適用性を検証するため、種特異的プライマーによる定量 PCR 法を用いて九頭竜川におけ

るアラレガコの分布状況を調査した。その結果、主要な生息範囲である中流域においてアラ

レガコが検出され、鳴鹿大堰上下流で環境 DNA 濃度に明瞭な差がみられるなど、アラレガ

コの生息実態を反映しているとみられる結果が得られた。

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環境 DNA による日本海に分布するダイオウイカの検出

和田年史(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所/兵庫県立人と自然の博物館)・海田竜太郎(兵

庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)・東垣大祐(愛媛大学大学院理工学研究科)・

土居秀幸(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)・永野真理子(兵庫県立大学大

学院シミュレーション学研究科)

ダイオウイカは、これまで生体で捕獲されることがほとんどなく、その分布や生態について

は不明な点が多い。本研究では、環境 DNA による調査手法を用いてダイオウイカの DNA

検出を試みたので報告する。ダイオウイカを環境 DNA で調査するにあたり、ミトコンドリ

ア COI 領域に種特異的なプライマー・プローブを設計した。採水は日本海西部の隠岐海脚

上の比較的浅い海域において経度線に沿って南北5地点で実施した。表層や100m 水深

から得られた海水サンプル7リットルをろ過し,そこから環境 DNA を抽出した。種特異的

プライマープローブセットを用いてリアルタイム PCR によりダイオウイカ DNA を検出し

た。 PCR で増幅した DNA サンプルの配列をダイレクトシークエンスし、BLAST を用いて

相同配列の検索を行った。その結果、表層水を含めて、ダイオウイカ DNA が検出され、ダ

イレクトシークエンスの結果からもそれが確かにダイオウイカ DNA であったことを確認

した。

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P55

九州北部の農業用水路におけるマツカサガイの生息密度と環境 DNA 濃度との関係性

乾 隆帝(福工大社環)・赤松良久・河野誉仁・中尾遼平(山口大院創成)・栗田喜久(九大

院農)

マツカサガイは陸水域に生息するイシガイ目の二枚貝である.本種は,環境省 RL・RDB に

よって準絶滅危惧種に指定されているだけでなく,ミヤコタナゴやヤリタナゴ,ヒガイ類と

いった魚類の産卵母貝としても利用されている生態系の保全上重要な種である.本研究で

は,福岡県の遠賀川水系の農業用水路において,本種の定量調査と,種特異的なプライマー

を用いた定量 PCR を同時に行うことにより,生息密度と環境 DNA の関係性を検討した.

定量 PCR の結果,検出地点における環境 DNA の平均濃度は,11 月は 1.6copies/mL だっ

たのに対して,7 月は 97.2copies/mLであり,11 月のみ偽陰性となる地点が含まれてい

た.また,11 月は環境 DNA 濃度と生息密度の明確な関係性がみられなかったのに対し,7

月は明確な正の関係性がみられた.これらの結果から,環境 DNA を用いたマツカサガイの

モニタリングは,高水温期が適切であることが示唆された.

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P56

環境 RNA 分析による生息魚類の生態情報取得の試み

太田宗宏((株)建設環境研究所)・吉崎吾朗(東京海洋大院・海洋生命資源科学)

現在の環境 DNA 分析は、生物の有無、または DNA 量による生物量を評価することを目的

として実施される。しかし、得られた情報からは、そこに生息している生物が成熟している

個体なのか、卵稚仔なのか等の生態情報を得ることはできない。採水により成熟個体の有無

や卵稚仔の有無の確認が可能となれば、採水箇所周辺で再生産がおこなわれているか等の

情報を採捕なしで確認できることとなる。また RNA を指標とすることで、DNA を用いた

時の調査と比較して得られた結果を反映している範囲を絞れる可能性が考えられる。本研

究では、採水により得られた RNA を分析して生息魚類の生態情報を取得する試みとして、

ゼブラフィッシュ(Danio rerio)をモデル生物とし、ゼブラフィッシュの飼育水槽から採水

した試料を用いて成熟雌及び卵稚仔の検出を行った。

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P57

希少野生生物生息地の保全に向けた環境 DNA 分析と GIS の活用

牧野健一・横田雅弘・中野浩行・飯塚徹谷・世良篤弘・阿部由克・金山明理・金谷智・日野

淳郎((公財)ひょうご環境創造協会)、齊藤博之・岡部規恵・岸本祥(神戸市環境局)

ヒダサンショウウオは環境省レッドリスト NT、神戸版レッドデータ A ランクに区分される

希少野生生物である。生息数が減少しており、確認が難しい種であるため、生体確認に至ら

ないケースが多い。そこで環境 DNA 分析と GIS による生息に適した環境条件の抽出を取

り入れることで新たな生息環境を発見できた。手順は以下のとおりである。①既知情報から

生息に適した地形等条件を GIS により抽出し調査候補地を設定。②設定した調査候補地で

採水を実施し環境 DNA を分析。③GIS と環境 DNA の結果を総合的に判断し、目視による

生息確認調査地を決定、調査を実施。17~18 年度の調査により当該種の新たな生息地を発

見することができた。希少野生生物を保全するには、そこにしか生息できない希少な環境を

守ることが極めて重要となる。GIS を使った生息適地の絞り込み、及び環境 DNA 手法を使

ったスクリーニングは、希少野生生物の生息環境を保全する上で極めて重要な手法といえ

る。

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P58

環境 DNA 濃度・フラックスによる多摩川流域におけるアユの動態の把握

内藤太輔(公財リバフロ)・赤松良久(山口大院・創成)・乾隆帝(福岡工大・社会環境)・

中尾遼平(山口大院・創成)・今村史子(日本工営)

近年の研究成果によって、アユを対象とした環境 DNA 分析は、生物量の大小を相対的に評

価できる段階にまで至っている。本研究では、この環境 DNA 分析を用いて、フラックスを

算出することで、多摩川とその支川を含む広域において、2017 年の河川定着期から降下期、

産卵期、および 2018 年の遡上期から河川定着期におけるアユの動態を定量的に把握した。

本川では、降下期における環境 DNA フラックスのピークの下流側への移動、上流側での減

少、産卵期における大きな出水後のピークの出現、遡上期の開始と同期した増加、上流側へ

のピークの移動、河川定着期における縦断的な分散など、一般的なアユの行動様式と整合す

る結果が得られた。一方で、一部の小支川では大規模出水後に突出した濃度ピークが見られ

たこと、本川の堰直下の支川で高濃度が維持されたことから、本川環境の変化や遡上(移動)

阻害に対する忌避行動を反映したと考えられる結果が得られた。

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H01#

環境 DNA 定量解析を用いた生物分布モニタリングの確立~⾧良川・揖斐川におけるアユと

冷水病菌の季節的相互関係を探る~

常川光樹,政井菜々美,廣瀬雅惠,天満陽奈子,藤吉里帆,高井一(岐阜高校自然科学部生

物班)

現在、外来性細菌の冷水病によるアユの被害が社会問題となっている。岐阜県のアユ漁獲量

は減少しており、持続的な水産資源管理が必要である。本研究は環境DNA定量解析により、

年間を通した⾧良川と揖斐川における河川水中のアユと冷水病の相互関係を解明し、冷水

病の対策の一助となることを目指した。 環境 DNA 定量解析の結果、冷水病菌の環境 DNA

濃度と水温には強い負の相関がみられ、河川中の冷水病菌の増減は、アユより水温に強く依

存していることが示唆された。この結果をもとにアユの保菌調査を行ったところ、冷水病を

発症していない遡上期の多数の稚アユが冷水病菌を保菌しており、冷水病の流行期以前か

ら感染している可能性が示された。加えて、環境 DNA 調査によるアユの行動モニタリング

の結果、産卵のピークと遡上のピークを検出した。

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H02#

青葉メダカプロジェクト-環境 DNA 調査からわかること-

鈴木莉玖・前田里美(久留里中学校)、小川博久(北子安小学校)

房総丘陵に位置する久留里地区では、自噴する井戸が多くあり、環境省より平成の名水10

0選に選ばれている。周辺の河川には、メダカやホトケドジョウなどが生息しており豊かな

自然が残っている。そこで、豊かな自然環境の保全をめざし千葉県立中央博物館の指導・協

力を受けて環境 DNA 技術を活用した魚類相の調査を行った。平成30年~令和元年に行っ

た調査結果から、周辺河川における魚類相の特色などについて報告する。

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H03#

環境 DNA 分析法を利用した「ハッチョウトンボの生息分布マップ」作り

静間 友唯(浜田高校自然科学部)、坂本 智樹(浜田高校自然科学部)、品川 洸太(浜田

高校自然科学部)

島根県浜田市の湿地にはハッチョウトンボという日本最小のトンボが生息しており、この

トンボは絶危惧Ⅱ類に指定されている。私達は、このトンボの生態を調査するため個体の捕

獲・標識を行ってきた。しかし、年々減少する希少なトンボの調査には、個体を傷つける事

がなく年間通じて調査可能な環境 DNA を用いることが有効であると考え、ハッチョウトン

ボ DNA を特異的に増幅させるプライマーを神戸大学および島根大学の先生方のご協力の

もと完成させることが出来た。現在、この手法を用いたトンボ生息湿地の eDNA 調査、お

よび目視による観察と個体数の計数調査により、個体数変動の把握を目指している。また、

湿地の植物相は水量や栄養状態を反映していることから、植生調査も同時に行い、植物の種

構成をトンボ生息環境の指標とし、ハッチョウトンボの保全活動に役立てたいと考えてい

る。

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The eDNA Society