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による高圧CVケーブルの絶縁劣化診断 · PDF file復刻版P--電気管理技術2004年8月号No287 による高圧CVケーブルの絶縁劣化診断 舂曰克之

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復刻版P--電気管理技術2004年8月号No287

による高圧CVケーブルの絶縁劣化診断

舂曰克之

分または浸水状態の長期使用により内・外部半

導電層を通して絶縁体内に発生し進展すると見

られる水トリー現象が発見された。以下、この

水トリー劣化の概要と現場での高圧直流漏電流

試験による絶縁劣化診断法及び更新推奨時期に

ついて述べる。

はじめに

日本の電力ケーブルは、現在の架橋ポリエチ

レンを主絶縁体とする(cross-linkedpolyeth-

ylenecable)CVケーブルが開発される以前は、

「主絶縁材料として、ブチルゴム、ポリエチレン、プロピレン等を使用したBNケーブル(ブチル

ゴム絶縁クロロプレンシースケーブル)、EVケ

ーブル(ポリエチレン、絶縁クロロプレンシース

ケーブル)等が使用きれていた。その後、電気

特』性には優れていたが、熱に弱いという欠点を

架橋という物性改良を米国のGE社が発表し、

各電線メーカーが開発に取り組み、昭和35年

にCVケーブルの製造が開始きれた。しかし、

使用後約10年を経て、絶縁性能低下による絶

縁破壊事故が3.3~6.6kV地中配線ケーブルで

多発した。この原因として、絶縁体内の微量水

1.Wケーブルと水トリ-

1.1水トリー劣化と事故率

CVケーブルの劣化要因は、表1のように分

類ざれ多種多様であるが、主たる劣化要因は電

気的な要因と考えられる。

電力会社資料によれば6.6kV地中配線ケーブ

ルの事故原因の30%以上を水トリーが占めてお

り、少なくとも33kV以下のCVケーブルにお

ける主たる劣化要因は水トリー劣化といわれて

表1CVケーブルの劣化要因と劣化形態

「■■■

Pu,Pq

電気管理技術2006年7月号 99

分類 劣化要因 劣化形態 特徴

電気的劣化

運転電圧、過電圧

サージ電圧

直流電圧

・部分放電劣化

・電気トリー劣化

・水トリー劣化

● 絶縁体に発生し絶縁破壊に直

接移行する

・設計製造技術で改良する

熱的劣化

異常温度上昇

熱伸縮など

・熱劣化

・機械的損傷、変形

● 許容温度以上で絶縁体を熱的

に劣化させる

.伸び出し、屈曲の作用でケー

ブルに損傷を与える

.金属被覆の場合は金属疲労を起こす

化学的劣化

柚、化学薬品など ・シースの膨潤

・腐食● 化学トリー劣化

・敷設場所を事前検討する

・直接絶縁体に害のあるケース

は少ない

機械的劣化 外傷、衝撃、側圧異常

など

・機械的損傷、変形など ● ケーブル布設などによる外傷

生物的劣化動植物による食害、孔

食など

・蟻害、鼠害など ・敷設方法などを検討して害を防止する

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いる。また、高圧CVケーブルを原因とする波

及事故件数は(社)東京電気管理技術社協会・技

術安全委員会の資料(平成13年度)によると波

及事故(平成4~13年)612件中、高圧CVケー

ブルの割合が、236件と約39%を占め、実に

1/3以上が高圧ケーブルに起因する波及事故と

いうことができる。その中で、自然劣化による

事故数は、133件で21.7%を占めている。

1.2水トリー劣化

水トリー劣化は、CVケーブル等においてケ

ーブル絶縁体周辺に水が存在し、局部的な電解

集中が原因で、絶縁体内に樹枝状(treeトリー

状)に進展する絶縁劣化現象をいう。水トリー

は、電気学会技術報告(I部第111号、昭和49

年8月)によると、次のように説明されている。

「水トリーとは、ポリエチレンのような絶縁材

料が長期間に亘って水が存在し共存する状態で

電界にざらきれた時に発生するもので、その形

態は、水で充填きれる余地のある種々の樹枝状

の微細な通路、或いは空隙である。実際に水分

が充填されているときには白色に見えるが、乾

燥により見えなくなる。」しかし、その詳細な構

造については、未だ不明な点が多い。

これらの水トリーは、その発生起点により、

以下の3種類に分類きれる。

①内導トリー:内部半導電層(導体上半導電

層)を起点として発生し、外部半導電層へ

進展する。内部半導電層がテープ式の場合

に布テープの端部やケバ等の不整部を起点

として多く発生する。

②外導トリー:外部半導電層(絶縁体上導電

層)を起点として発生し、内部半導電層へ

進展する。

③ポウタイ状トリー:絶縁体中のポイド及び

異物を起点として発生し、内部及び外部半

導電層へ進展する蝶ネクタイ状のトリー。

ここで、外部半導電層より発生した水トリー

を図1に示す。

既に述べたように、水トリーの発生要因は、

局部高電界とそこに供給される水である。局部

高電界は、微小ポイド、異物、突起等に電界が

加わることにより発生する。この水トリーが絶

縁体内を進展し、絶縁体を貫通(橋絡)したと

きに絶縁耐力が低下し、絶縁破壊へと至る。

、図1外導水トリー

図2水トリーの進展フロー

電気管理技術2006年7月号100

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図3に示す。6~66kV級CVケーブルの仕様変

遷の概要を表2に示す。

この図3に示す内・外部半導電層の製法及び

架橋方式が、水トリーの種類と進展に大きな影

響を与えている。この年代別製造方法の相違と

水トリーの進展フローを図2(前頁)に示す。

1.3CVケーブルの構造と仕様の変遷

CVケーブルの絶縁層は、内部半導電層、絶

縁体及び外部半導電層から構成されている。CV

ケーブルの内部半導電層による構造の相違を

図3各タイプの概略断面図

表26~66kV級CVケーブルの仕様変遷の概要

*フリーストッピング:外部の半導電層を施工の際,はぎ取りやすい構造

電気管理技術2006年7月号 101

電圧 項目 -----竺当塾幽一一一'401142114411461148115011521154115611581160116211元

6kV

内部半導電層

絶縁厚

架橋方式

外部半導電層

遮水層

ビニルシース

|フ プ  ̄

T= :4.qmr

水蒸気架橋

フF- ‐ブ

ナシ

普通シ_ ス

押出し

 ̄ ̄

乾式架橋

押出し

22kV

内部半導電層

絶縁厚

架橋方式

外部半導電層

遮水層

ビニルシース

r= 10] nm

||水一

押出し

且〆蒸気架

ラr-

普)

、ン肴一

||橋一ワ|、ン一・一/

T二

=8] nnl

 ̄ゲ

|一一け一一

乾式架

押出しリ+ス ト】

 ̄ ̄

,ピ ンク

 ̄ラミ

防災シ

縁)*

不一 -卜

-jK

66kV

絶縁厚

架橋方式

遮へい層

遮水層

ビニルシース

T: =lE

水蒸気

1,1 、

架橋

フーー プ 0.1

7

普通

忽二、’〒津

'=11

×2

-ス

、’二枚

T二

 ̄一

単心●

21nm)

二11 nlr] 1

/乾式架橋

銅十一<2枚

津`4,C

1.2nNm7

/T =9 ~1( )ml 、

|w、 ヤー|シールド

11

#>{(40本

ワイヤ

×40本

-ン レド

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0「「、.

-フ -ト遮水層

 ̄~liit7災|シー -ス

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表3CVケーブルの年代別製造方法と劣化の特徴

T-TE-T

製造'去内外部半導電層テープ巻き内部半導電層押出し内外部半導電層押出しfz

mjWlIj:i1j寡Fil鱗菫蹴鯛二つppmであり、ポイド数は乾式架橋は湿式架橋の

約1/100である。このことから、水蒸気架橋で

製造きれた昭和60年(1985年)頃までの高圧

CV及びCV-Tケーブルは、水トリー劣化の生

じ易いケーブルということができる。

1.4水トリーと直流漏れ電流

架橋ポリエチレン本来の商用周波電界におけ

る絶縁破壊強度は300~400kV/mmである。実

際の6kVCVケーブルの雷インパルス耐電圧値

は95kV/3回、商用周波長時間耐電圧値は,

35kV/1時間の絶縁耐力を有している。

ゆえに、たとえ直流10,000Vの電圧を印加し

麓査胴薑鵜瓦菫鶚雛昊灌つとしては現れない。

図4(次頁)は6kVCVケーブルに発生した貫

通及び非貫通水トリ-1個の直流漏れ電流を測

定した結果である。この図より水トリーが1個

絶縁層を貫通すれば、0.111A以上の漏れ電流が

流れることがわかる。漏れ電流は非貫通水トリ

ーでは、0.00111A(1,A)未満であり、絶縁層

を貫通することにより、100倍以上の漏れ電流

値となり、現場での測定が可能となる。

水トリー劣化の特徴を表3に示し、その概要に

ついて述べる。

いわゆる古年度ケーブルといわれ電力会社が

更新を推奨しているCVケーブルは、昭和51年

(1976年)以前に製造されたケーブルで内.外

部半導電層がテープ式の図3に示す(a)T-Tタ

イプのケーブルである。内部半導電層がテープ

式のため、その毛羽突起(テープ表面に出てい

る繊維)により電界不整が生じやすいので、水

トリー劣化が発生し易く事故が多発している。

水トリーの発生要因である水の供給について

は、表Zを参照すると、6kVCVケーブルにお

いては、ポリエチレンを架橋する方法に昭和60

年(1985年)頃まで、架橋時の加熱加圧媒体と

して、従来16~20kg/cm2の水蒸気を使用し、

加熱冷却媒体として水を使用する水蒸気架橋が

広く実施きれていた。この水蒸気架橋において

は、溶融状態の架橋ポリエチレン絶縁体に高圧

力の水蒸気が溶融拡散し、これが冷却後、数11m

から数十11mの大きざの微小水滴となって絶縁

体内に残存し電気,性能に影響を与えている。

この架橋行程中の水分の拡散・残存を防ぐた

め、乾式架橋が開発きれた。乾式架橋と湿式

(水蒸気)架橋ケーブルの品質の大きな相違は、

絶縁体内の初期含水量とポイドの数である。

電気管理技術2006年7月号102

製造法T-T

内外部半導電層テープ巻き

E-T

内部半導電層押出し

E-E

内外部半導電層押出し

年代 1960年ごろまで 1975年前後~ 1985年ごろ~ 1985年ごろ~

架橋方法 (水蒸気架橋) (水蒸気架橋) (乾式架橋) (乾式架橋)

現象

内導.または外導から

伸展するトリー

外導から伸展するトリー

外導トリーもほとんどなくなる

ポウタイトリー

(水トリー)

民生用ではほとんど

使われていない

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実線:測定値

点線:1kVを起点のオームの法則

642

■U

111

'二コ

086

100

1“

漏れ電流仏Ⅲ

jllll奇illj 蕊Ⅱ0.4

0.2

づ×

123456

電圧〔kV〕直流漏れ電流〔似A〕

「図4頁通水トリー及び非貫通水トリ-1個の漏れ電流 図5頁通水トリーの電圧電流特性

表4CVケーブル絶縁劣化測定試験の概要

ル単体で絶縁抵抗測定等を実施することは、困

難なことが多い。このような場合、図6(次頁)

に示すガード接地方式(G方式)と呼ばれる測

定方法で3,000V以上の高電圧を印加すること

により、VCT等の高圧機器の漏れ電流をガー

ドを使用せずに、キャンセルでき、ケーブル単

2.2G方式(ガード接地方式)による高電圧絶縁

測定

表4に各測定方法を示したが、定期点検時に

おいて、実際に現場で実施する試験としては、

絶縁抵抗測定及び直流漏れ電流試験が最も実績

がある。しかし、時間的な制約もあり、ケープ

電気管理技術2006年7月号 103

、11

測定法 長所 短所

メガー法による

絶縁抵抗試験

1)取扱い簡単、熟練要せず

2)絶対値で劣化判定可能

1)局部的劣化の検出不能

2)微少な劣化は検出不能

直流漏れ電流法

1),取扱い簡単

2)高圧印加できるので局部的劣化も

ある程度検出可能

1)熟練を要す

2)回路条件の検討要

誘電正接試験

(tan6)

1)取扱い簡単

2)絶対値で劣化判定可能

3)全長的な吸水・熱劣化検出には良い

1)装置が若干大がかり

2)局部的劣化は検出不可能で平均的

な劣化の検出となる

3)外来ノイズなどの除去が必要

4)回路条件の検討要

部分放電試験

(コロナ測定)

1)外傷のようなポイドなどの局部的

欠陥の検出に良い

1)取扱い複雑・熟練要す

2)現場試験不向

3)吸水・熱劣化などの全体的な劣化

検出には不向き

直流重量法

1)送電中のケーブルの絶縁監視が常

時及び定期的にできる

1)直流重量による他機器への影響を

考慮する

(系統への適用には注意が必要)

直流成分法1)送電中のケーブルの絶縁測定がで

きる

1)迷走電流などの除去が必要

」 「

一貫通うkトリ-- ‘

P■

.‘「

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 ̄ ̄

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町田唖町の砧珈

句~-〆

図6G方式による高電圧絶縁測定回路

体で測定した場合に近い結果を得ることができ

る。但し、測定誤差を小さくするためには、ケ

ーブルシースの絶縁抵抗値は、1MQ以上必要

となる。使用開始後10年以上の地中埋設部分

のある高圧CVケーブルは、定期検査時に5,000V

以上の電圧でG方式による高電圧絶縁測定を

実施して、そのケーブルの絶縁状態を把握し、

データとして蓄積することは大変重要である。

図7(1)G方式による等価回路G方式による測定回路の等価回路を図7(1)

に、また理解し易くした等価回路を図7(2)に

示す。図7(2)により絶縁抵抗計に流れる電流

IOMは、次式で求められ、ケーブル絶縁体に流

れる電流と等しくなる。

1.蝿~R砦Rsxl,Rs>RMの場合、

Rs×IC=RM/Rs+1×'0=IoIoM=RM+Rsゆえに、ケーブルシース絶縁抵抗が小言い場

合は、絶縁抵抗計を流れる電流IOMが小きくな

り、測定結果は絶縁抵抗値が良くなる、即ち、

マイナス側の誤差となってしまう。

IMf:絶縁抵抗計を流れる電流

図7(2)G方式による等価回路

2.2.1判定基準

G方式による高電圧絶縁測定を実施した場合

電気管理技術2006年7月号104

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の判定基準を表5に示す。要注意判定の場合は、

直流漏れ電流試験等の精密診断を実施して、最

終的な判断をすることになる。5,000V以上の

電圧をG方式により印加して、要注意判定値の

絶縁抵抗値の場合は、何らかの異常がケーブル

にあると考えるべきである。

また、その抵抗値が前年度の値より大きく減

少した場合は、劣化が進んだと考えられる。ケー

ブルシース絶縁抵抗が1MQ未満の場合は、ケー

ブルシースに何らかの外傷及び屋外終端部の不

良等が考えられる。

r2.3直流漏れ電流試験直流漏れ電流試験は、ケーブル絶縁体に直流

電圧を印加して検出される漏れ電流値及び漏れ

電流の時間的な変化を測定・記録し、絶縁体の

劣化状況を調べる試験であり、現場で行う絶縁

診断としては、最も実績のある診断法である。

測定回路は先の図6と同様であるが、'しLAの微

小漏れ電流の時間的変化を記録できる記録計が

必要となる。

印加電圧の考え方としては、試験電圧を印加

してケーブル絶縁を損傷したり、寿命を短くし

たりしてはならない。使用電圧に対して過大な

電圧を印加することは電圧ストレスにより、逆

に絶縁に悪影響を与えるおそれがあり、一度損

傷を与えると自然復旧はありえないので、試験

電圧の選択は重要である。特に1976年(昭和

51年)以前に製造きれたCVケーブルでは製造

上水トリーの発生の確率が高く高電圧による水

トリーの促進が考えられ、できれば低電圧で印

加したほうがよい。

貫通水トリーの存在が明らかでない場合には、

8kVまでの印加であれば、それによって破壊す

る可能性は小さい。

一般的な印加電圧と測定時間を表6に示すが、

表5のG方式での絶縁測定で要注意判定のケー

ブルの場合は、第1ステップ電圧を3kV、最終

ステップ電圧を対地電圧の波高値に近い6kVを

印加すれば、ケーブルは絶縁破壊をおこすこと

はないと考えられる。尚、G方式での絶縁測定

で表5に示す要注意の判定でなければ、6kV

次に8kVでの漏れ電流特性に異常がないことを

確認の上、最終ステップ電圧は10kVとして診

断精度を高める。

2.3.1判定基準

直流漏れ電流試験による判定基準例を表7(次頁)

に、漏れ電流の時間的な変化による判定例を図8

(次頁)に示す。水トリーはその内部に水分が充

填されているため、その水分量によって、直流

漏れ電流の大きさが変化することが報告されて

表5G方式による高電圧絶縁測定判定基準例

表6印加電圧と測定時間

lステノフ2ステノフ

3kV6kV

6kV10kV

電気管理技術2006年7月号 105

試験項目 測定器 要注意判定値

シース絶縁抵抗測定 1,000v絶縁抵抗計 1MQ未満

G方式による絶縁抵抗測定 5,0oOv以上の絶縁抵抗計 10,000MQ未満

定格電圧印加電圧

第1ステップ 第2ステップ備考 測定時間

6.6kV3kV

6kV

6kV

10kV

表5の判定基準例で要注意判定の場合

表5の判定基準例で要注意判定でない場合5~7分

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表7直流漏れ電流試験判定基準値の例

れ電流値01M未満

成極比15以上

弱10以下

第1ステップ電圧の絶縁抵抗値③弱点比=

最終ステップ電圧の絶縁抵抗値

*絶縁抵抗の電圧依存,性を示す。

④不平衡率

各相漏れ電流の最大値一最小値×100(%)

三相漏れ電流の平均値

*三相漏れ電流値のバラツキの度合いを示す

値である。ケーブルは三相共、同一条件で

使用きれているはずであり、各相に大きな

差があれば絶縁異常等、何らかの異常が発

生していると考えることができる。

図8漏れ電流の時間特性例

3.直流漏れ電流試験実施例

3.1品111区某ビル高圧引込ケーブル

6kVCV38mm2-3C1978年製

ケーブル布設状況は、電力会社借室より地中

埋設配管を経て屋上キューピクルへ至る。ハン

ドホール内は、雨水が常時、貯まっている状態

であった。

[1]定期検査時にG方式による高電圧絶縁測定

及びシース絶縁抵抗測定を実施した結果を以

下に示す。

3,000V印加…6,OOOMQ

6,000V印加…700MQ

シース絶縁抵抗値…150MQ

この結果、要注意と判定し精密診断として、

直流漏れ電流試験を実施した。その測定結果を

表8(次頁)、記録計のチャートの一部を図9(次

頁)に示す。

いる。即ち、水分が充分に存在する貫通水トリ

ーは大きな漏れ電流値となるが乾燥し、水トリ

ー内の水分量が減少すれば漏れ電流値は小ざな

値となる。

また、試験は運転中のケーブルを停電きせ実

施するため、負荷電流による熱の影響がなくな

りケーブル絶縁体の温度が低下すると、漏れ電

流は減少することになるので判定の際は、注意

しなければならない。

ここで、直流漏れ電流試験により得られる指

標①~④を以下に示す。

①漏れ電流値(M):電圧印加時間の最終漏

れ電流値

電圧印加1分後の電流値

②成極比=電圧印加後規定時間の漏れ電流値*健全なケーブルは、1.0以上である。

電気管理技術2006年7月号106

判定項目 良好 要注意

漏れ電流値 0.1UA未満 O1UA以上~1.OUA未満 1.OUA以上

成極比 1.5以上 1.0超過~1.5未満 1.0以下

弱点比 1.0以下 1.0超過~2.0以下 2.0超過

不平衡率 200%未満 200%以上

キックの有無 なし あり

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表BG方式による直流漏れ電流試験結果

霊3456.71

図9直流研§れ電流試騨

■一塞堅幸一一轟一屋一一雪畳墨室竃塵亟遍麺遷一竃忘璽竃一・

一襲塞一醗露塞一率一霊一雲》露一議竈塞一菫率函一一

霊鑓亜一露墨霞霊露塞霧露歸率一一露》|鰯一

一鱸圭一霧一露露一語一雲塞鑓露繋霧顛露壁露一】

翻壼|観鰯墨一一麹需顕鰯露露鶏塑騒璽麺一

難塞醒露鎧一麹一睾露竃霞露鑓塑露鑓鯛}

聾壷■塞三■言孟二一一一冨壷・一|霊一二垂

。一一函三

P 4

654321

●●●●●●

000000

絆菫 璽州

123 2345123

験記録チャート(品川区某ビルの例)

[2]診断結果

1)漏れ電流値はS相において、印加電圧3,000V

で0.26脾Aと0.111Aを超え要注意である。

2)弱点比は、絶縁抵抗(漏れ電流)の電圧依

存性を示す値である。

R相:3.52S相:3.14値と要注意である。

3)不平衡率は、三相の漏れ電流値のバラツキ

の度合いを示す値であるが、213.7~

222.6%と200%を超えその判定は要注意

である。

以上、1)~3)より判断して、この高圧ケー

ブルは何らかの絶縁異常があると診断した。

[3]この高圧ケーブルを更新した際に、撤去ケ

ーブルを解体調査した結果、ケーブルのジュ

ート内及び外部半導電層の下まで、水分が浸

図10撤去ケーブルの遮蔽層表面

透し、遮蔽銅テープは腐食変色していた。その

写真を図’oに示す。また、ケーブル絶縁体

に水トリーの白い斑点模様を確認した。シー

ス絶縁抵抗値が150MQと良好でも、実際に

は水分がケーブルシースを透過.浸透してい

電気管理技術2006年7月号 107

印加電圧上段漏れ電流値(11A)・下段絶縁抵抗値(MQ)

R(赤)相 s(白)相 T(青)相漏れ電流平均値(l」A) 不平衡率(%)

3,000V0.08

37,500

0.26

11,538

0.01

300,0000.117 213.7

4,000V0.25

16,000

0.81

4,938

0.013

307,600

0.358 222.6

5,000V0.47

10,658

1.36

3,676

0.02

250,0000.617 217.2

弱点比 3.52 3.14 1.2 -------------

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るということになる。

32新宿区某ビル高圧弓I込ケーブル

6kVCV-T38mm21984年製

ケーブル布設状況は高圧キャビネットより地

中埋設配管を経て屋上キュービクルヘ至る。

[1]定期検査時にG方式による高電圧絶縁測定

及びケーブルシース絶縁抵抗測定を実施した

結果を以下に示す。

3,000V印加…4,OOOMQ

4,000V印加…3,700MQ

5,000V印加…3,500MQ

シース絶縁抵抗値…2,000M。

この結果、要注意と判定し精密診断として、直

流漏れ電流試験を実施した。その測定結果を

表9、記録計のチャートを図11(次頁)に示す。

[2]診断結果

1)漏れ電流値は4,000Vまでは、各相共ほと

んど流れず、チャートの最小値付近である。

しかし、5,000Vを印加するとR相のみ漏

れ電流が急激に増加している。先に述べた

ように漏れ電流と印加電圧は線形的な関係

ではないことを示している。6,000Vを印

加すると各相共、漏れ電流値が0.111Aを超

え水トリーの存在が充分考えられる。

2)不平衡率は、5,000Vを印加時に、281.8%

と200%を超え、要注意判定である。

3)弱点比は、各相共2.0を超過し要注意判定

である。

4)漏れ電流の時間的な変化はチャートを参照

すると、S及びT相で時間経過に対して減

少せずに、増加している部分があり安定し

ていない。6,000V印加時の成極比は下記

に示すように、各相共、要注意判定である。

R相…1.26要注意

S相…0.24要注意

T相…0.16要注意

以上、1)~4)よりこの高圧引込ケーブルは、

何らかの絶縁異常があるものと考えられる。3

4.更新推奨時期

図12(次々頁)は内部半導電層と絶縁体を同

時に押出す2層押出構造の6,600VCVケーブル

のいろいろな布設環境下で長期間使用されてい

た撤去ケーブルでの使用年数と耐電圧特性の関

係を調査した結果である。この結果より、(社)日

本電線工業会「高圧CVケーブル保守・点検指

針」ではケーブルの更新推奨時期を以下のよう

に推奨している。

水の影響がある場合…15年

水の影響がない場合…20年

、表gG方式による直流漏れ電流試験結果

電気管理技術2006年7月号108

印加電圧上段漏れ電流値(uA)・下段絶縁抵抗値(MQ)

R相 s相 T相漏れ電流平均値 不平衡率(%)

3,000V0.02

150,000

0.02

150,000

0.02

150,0000.O2UA 0

4,000V0.02

200,000

0.02

200,000

0.02

200,0000.0ZUA 0

5,000V0.95

5,263

0.02

250,000

0.02

250,0000.33UA 281.8%

6,000V0.875

6,857

0.395

15,190

0.186

32,2580.485UA 142.1%

弱点比 21.9 9.87 4.65 -----一一一一一一一一

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図11直流漏れ電流試験記録チャート(新宿区某ビルの例)

電気管理技術2006年7月号 109

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この更新推奨時期は個々のケーブルの使

用環境や使用状況が異なるため、一つの目

安であり、メーカーの保証値ではない。既

に述べたように、昭和60年(1980年)頃ま

でに製造された高圧CVケーブルは架橋方

式が水蒸気架橋であるため、絶縁体内の水

分及びポイド等が乾式架橋方式に比較して

多い。そのため、水トリーが発生し易いケ

ーブルということができる。(社)東京電気管

理技術者協会平成15年度版「安全キャンペ

ーンテキスト」によれば、平成14年度の高

一瞬Ⅲ弧一{曰(Ⅱ》礎騨交淑鰄畷電慶己Ⅱ馴刀一軒へ一(『;~榛;蕊1コき」:一一i藍1づうfLtYjr 一一

1517.5-20~~し2527

使i用}年数〔年〕、~

10二5

図12残存交流破壊電圧一使用年数特性

、、-=。

圧CVケーブルの自然劣化による波及事故は6

件であり、昭和51年以前の古年度ケーブルの

事故は1件で、その他は昭和53~60年(1978

~1985年)のCV及びCVTケーブルであった。

高圧ケーブルの布設環境を考慮して、使用開始

後10年を経過したケーブルは、定期検査時に

G方式(ガード接地方式)による5,000V以上の

高電圧絶縁測定を実施して、そのデータを蓄積

する。

その結果、異常が発見された場合は、次のス

テップである直流漏れ電流試験を行い、絶縁異

常と判定された場合は、早急にケーブルを更新

することを奨める。ケーブルの絶縁状態を的確

に把握することが、高圧ケーブルに起因する波

及事故を減少きせることになる。

診断の参考となれば幸いである。

尚、本稿は平成14年度技術研究発表会資料

「高圧CVケーブル」を基に、一部を要約、追加

して作成したものであるが、この発表会資料の

作成に尽力した技術安全委員の皆様にあらため

て、ここに感謝の意を表し、終わりにしたい。

(東京北支部、電気管理技術者)

参考文献

[1]新版「電力ケーブル技術ハンドブック」

飯塚喜八郎監修

[2]「CVケーブル」速水敏幸箸

[3]「高圧CVケーブルの保守.点検指針」

<社)日本電線工業会

[4]電気学会技術報告

「絶縁劣化診断試験法」Ⅱ部第182号

「地中配電ケーブルの信頼性向上技術」

Ⅱ部第404号

「高分子材料におけるトリーイング劣化の

基礎過程」第674号

「絶縁材料の劣化と機器・ケーブルの絶縁

劣化判定の実態」第752号

[5](社)東京電気管理技術者協会

「平成14年度技術研究発表会資料」

「安全キャンペーンテキスト」

[6]「電気と工事」2004.4~5月号㈱オーム社

おわりに

高圧CVケーブルの主な劣化要因は、水トリ

ーである。水トリーがケーブル絶縁体を貫通す

れば、G方式(ガード接地方式)による3,000~

5,000Vの絶縁抵抗測定で充分にその絶縁状態

を把握することが可能である。使用開始後10年

を経過した高圧CVケーブルは、定期検査時に

積極的にG方式による高電圧絶縁抵抗測定を取

り入れることを奨める。

本稿が高圧CVケーブルの現場における絶縁

電気管理技術2006年7月号110