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IAEA International Atomic Energy Agency 生物学的線量測定の放射線生物学的基礎 ヒューマンヘルス部 応用放射線生物学・放射線治療科 放射線生物学者 オレグ・ベルヤコフ

The IAEA in Biological Dosimetry - Human Health … Cytogenetic Dosimetry, IAEA 1986 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 10 June 2013 3 IAEA IAEA の刊行物(1986): “Biological Dosimetry:

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IAEA International Atomic Energy Agency

生物学的線量測定の放射線生物学的基礎

ヒューマンヘルス部 応用放射線生物学・放射線治療科

放射線生物学者 オレグ・ベルヤコフ

IAEA

目次

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 2

• IAEAの細胞遺伝学的生物線量測定についての刊行物の紹介 • 生物学的線量測定における量の概念の応用 • 染色体損傷の生物物理的な背景 • ヒトリンパ球 • 染色体の構造 • 放射線による染色体変異 • 血液サンプルの作り方 • in-vitro線量ー反応曲線の作り方 • 二動原体染色体分析 • 転座分析 • 未成熟染色体凝縮(PCC) 分析 • 細胞質分裂阻害小核(CBMN) アッセイ • 染色体分析の自動化 • 結論と謝辞

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Cytogenetic Dosimetry, IAEA 1986

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 3

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IAEA の刊行物(1986): “Biological Dosimetry: Chromosomal Aberration Analysis for Dose Assessment”, 技術報告書 No 260.

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Cytogenetic Dosimetry, IAEA 2001

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 4

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2001年にIAEAから 第二版“Cytogenetic Analysis for Radiation Dose Assessment”が出版された。 技術報告書No 405.

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Cytogenetic Dosimetry, IAEA 2011

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IAEA WHO • 2011:過去数十年の細胞遺伝学的生物線

量測定における発展をうけて、第三版が大規模に改定された。全米保健機構,世界保健機構との共同出資である。

• 会議終了後に参加者全員に配布されるUSBにPDF版が入っている。

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生物学的線量測定における量の概念の応用

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• リンパ球における染色体異常(ChA)は、吸収線量を推定するために使われる。

• ChAの数は線量ー反応検量曲線にあてはめると、吸収線量に関係すると考えられている。

• 検量曲線はin vitroでさまざまな範囲の、対応する

線量の放射線に血液を被ばくさせることで作られる。

• これらの線量は物理的線量測定法で計測され、一次基準、または二次基準までさかのぼれるようにするべきである。

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染色体損傷の生物物理的な背景

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• 電離放射線は、イオン化やエネルギー蓄積による励起などの初期事象を誘発する。

• 線エネルギー付与 (LET)は、トラックで付与されたエネルギーの総量を反映する。

• 生物学的効果比(RBE)は、異なるタイプの放射線照射のエンドポイントの効果を反映する。

• RBEは、基準放射線(X線)量と、問題にしてい

る放射線量(基準放射線と同じ生物学的効果をもつ)との比に等しい。

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高・低LET放射線に対する二動原体染色体 線量ー反応曲線(線形又は二次曲線)

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 8

Cytogenetic Analysis for Radiation Dose Assessment. A Manual, Technical Reports Series No. 405, IAEA, Vienna (2001)

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RBEとLETの一般的な関係

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 9

Cytogenetic Analysis for Radiation Dose Assessment. A Manual, Technical Reports Series No. 405, IAEA, Vienna (2001)

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直線ー二次曲線モデル

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 10

低LETによる二動原体染色体の線量ー反応曲線は、線量に比例する部分(αD)と、線量の二乗に比例する部分(βD2)とを合計したものである。

Y = C +αD + βD2

Y:二動原体染色体の量, D:線量, C:コントロール(背景頻度), α,β:係数

αDとβD2の二動原体形成への寄与が等しいときの総量をα/β比という。

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ヒト末梢血リンパ球

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 11

Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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染色体の構造とクロマチン凝縮

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 12

Courtesy REAC/TS, USA. Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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ヒトの核型と染色体中のDNA

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 13

男性 女性

A banded chromosome/karyotype preparation from a normal male, 46, XY (left) and a normal female 46, XX (right, courtesy Mayo Clinic, USA. Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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細胞周期

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 14

Courtesy REAC/TS, USA. Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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放射線が誘発する染色体変異

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 15

• 電離放射線は、やがて空間においてスパー、ブロブ、トラック などのエネルギー離散イベントを蓄積させる。

• 主に水の放射線分解により生じた反応種が、DNAを直接的・間接的に傷害する。

• 低LET放射線は、単独の電子トラック内で電離の限局クラスターを作る。 高LET放射線は互いに近い、多数の電離をもたらす。

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放射線によるDNA傷害

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• 傷害の種類として、塩基損傷(BD)、1本鎖切断(SSB) 、塩基の喪失(AS)、DNA-蛋白質架橋 (DPC)、二本鎖切断(DSB)がある。

• 低LETと高LET放射線による電離・DNA傷害のパターンは異なる。

Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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染色体型の変異(G0/G1期)

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 17

• 不安定型変異 • 二動原体染色体 • 環状染色体 • 無動原体染色体 • 変異細胞

• 安定型変異 • 相互転座 • 非相互転座 • 間質性転座 (挿入)

Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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染色分体型の変異(G2/S期)

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 18

• 末端・間質性欠失 • 非染色性損傷 • 同位染色分体欠失 • 不均衡型相互転座 • 均衡型相互転座 • 三放射状染色体

Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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未成熟染色体凝縮 (PCC)

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 19

• PCC技術は放射線照射直後の反応や、染色体切断

の修復、また変異につながる修復過誤の動態を精査するのにとても有用な研究手段である。

• Fusion-PCCアッセイは、ヒト染色体の未成熟凝縮

を誘発するためにリンパ球と有糸分裂細胞を融合させる手法である。

• 迅速間期染色体アッセイ(RICA) とFISHプローブに

より、放射線に誘発された損傷を可視化することができる。

• Dic-PCC・Ring-PCC検査がある。

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小核

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• 小核(MN)は、無動原体染

色体断片、又は娘細胞の核に含まれていない分裂後期染色体全体から形成される。

• サイトカラシンB添加に

よる細胞質分裂阻害技術は、検査の感度を向上させた。

John R K Savage Micronuclei : Pitfalls and Problems, July 2000, Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and

Haematology, http://atlasgeneticsoncology.org/Deep/MicronucleiID20016.html

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血液サンプルとタイミング

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• 静脈血(10mLが望ましい)は、全身被ばく後数時間以内に採取することができる。

• 部分被ばくや不均一被ばくの場合、リンパ球の循環プールと辺縁・貯蓄プールは24時間後まで平衡に達しない。

• 重度の過剰被ばくの場合、リンパ球が減少するまでに数時間又は数日程度ではあるが、ウィンドウタイムが存在する。

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抗凝固剤・容器・輸送

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 22

• リンパ球培養には保存料不使用のリチウムへパリンが最もよく使われるが、ナトリウム又はアンモニウムへパリンを用いることもできる。

• リチウムへパリンが適量入った使い捨てコップやプラスティックサンプルチューブがいくつかの業者から入手可能である。

• 血液サンプルは輸送中、18-24℃に保たれるのが理想である。

• 非感染性のサンプルにはUN 3373. BIOLOGICAL SUBSTANCE, CATEGORY B.というラベルをする。

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in vitro線量ー反応曲線作成の一般論

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 23

• 検量線は研究室により異なるので相互比較トレーニングが有用である。

• 事故による過剰被ばくのほとんどがγ線によるものだが、X線による事故も相当数ある。

• in vivoに可能な限り近い環境にしたin vitroでリンパ球への照射をするべきである。.

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物理学的考察

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 24

• 線量ー反応曲線の作成は、信頼できる正確な物理的線量測定に裏打ちされなければならない。

• 照射の際、散乱放射線が混じるのを避けることが重要である。

• 被ばく装置は、物理的測定により調整するべきである。

• 線量決定は、測定された空気カーマを吸収線量に変換し、必要な距離と吸収量を修正する方法が一般的である。

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統計学的考察

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 25

• 染色体変異や小核の量(Y)は、線量(D)と二次関数の関係にある。: Y = C + αD + βD2(低LET放射線の場合)

• 高LET放射線の場合、一次関数で近似される。: Y = C + αD.

• 曲線近似法はポアソン統計に基づく。検量線を作成するためには、各線量について、二動原体細胞の分布をポアソン分布にしたがって検定するべきである。(U検定)

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培養

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 26

• 二動原体アッセイは二日、CBMNでは三日の培養を要する。

• Fusion-PCNでは培養は必要ないが、化学誘導法では一般的には必要である。

• 二動原体アッセイや、その他のアッセイは細胞分裂中期に行う為、コルセミドによる核分裂停止を必要とする。

• CBMNアッセイでは、サイトカラシンBによる細胞質分裂阻害が必要である。

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固定操作

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 27

• リンパ球培養は典型的には48-52時間行う。 • 培養液を遠心分離し、上清を取り除いてから低張液に移す。

• 15分間37℃で培養し、もう一度遠心分離してから低張液を取り除き、 新しく準備した固定液(メタノール:酢酸=3:1)中で細胞分画を再縣濁させる。

• 縣濁液2,3滴をとり、スライドに乗せて広げ、風乾させる。

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染色

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 28

• 蛍光ギムザ(FPG) 染色は、in vitroで分裂を中期(M1)で停止することができる為推奨されている。

• 通常のギムザ(2%)染色が一般的である。 • 動原体を特異的に染色したい場合、汎動原体プローブを用いるFISH法や、ギムザ染色のCバンド法を代わりに用いることも可能である。

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スライドの分析

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• 典型的な顕微鏡法ではまず低倍率(~x100-x200)から観察を始めるべきである。

• 次に、高倍率(~x1000-x2000)で異常な中期染色体を観察する。

• コンピュータを用いた顕微鏡法も用いることができる。このシステムは、デジタル化された画像で異常染色体の局在を半自動的に分析するが、完全に自動化されたシステムはまだない。

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データの記録

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 30

• サンプル、スライド、関連する文書業務に、固有の識別コードやラベリングシステムを適用することが求められる。

• 実験のためであっても、過剰被ばくの調査のためでも、サンプルの受領書と処理手続きを研究室記録に残すべきである。

• データの蓄積、操作のための電子機器を使うこともできる。

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情報・スライドの蓄積

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 31

• 研究データは将来参照できるように詳述・蓄積するべきである。

• ほとんどの研究所は室温で乾燥した環境に、箱に入れて、顕微鏡スライドを保存している。

• 色あせたスライドはカバーガラスを慎重に浸し、再染することでまた観察可能になる。

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線量評価

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 32

• 検量曲線による近似が用いられる。 • 合理的・正確に線量を推計する為には、500の細胞、または100の二動原体染色体を評価すべきとされている。

• 線量推計の不確実性も考慮に入れるべきである。 • 臨界事故や低線量被ばく、部分被ばく、血液採取の遅延、長時間・分割被ばく、放射性同位体の体内取り込みなどの場合、特別な操作が必要である。

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転座の分析

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 33

• 知られている二動原体染色体やCBMNアッセイの欠点として、損

傷が不安定なために細胞の入替がおこる速度で末梢血リンパ球プールから消滅するということがある。

• 蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法の導入で転座を検出できるようになった。

Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

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細胞培養と固定操作

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 34

• 血液採取・リンパ球培養・細胞固定の手順は前述した二動原体染色体アッセイと同様である。

• 一般的に生物学的線量測定ではゲノムの一部しかペイントされないため、二動原体染色体アッセイより多くの分裂中期細胞を評価する必要がある。

• したがって、評価に耐えうる質の分裂中期細胞が多数含まれるスライドを作るとコスト効率が良い。

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染色体ペインティング

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 35

• 全染色体ペインティング • 汎動原体プローブの使用 • multicolour FISH (mFISH)として知られる方法で染色体を着色する。

• 挟動原体逆位のような染色体内転座は、染色体のp腕とq腕を選択的にそれぞれ別の色で染め分けることで検出できる。

• 単独腕内での転座は、染色体内を様々な色にバンディングするmBAND法で検出することができる。

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評価基準

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 36

• 現在FISH法の技術の解像度は11-15Mbpである。

したがって、評価可能な細胞を選ぶには一定の評価基準が必要である。

• 学名と記録データ • 分裂中期染色体の中で着色されたそれぞれの変異を完全に説明するためにPAINTが

開発された。 • SavageとSimpson (S&S)は、それ全体でそれぞれの転座を表す、数字や文字を含む

用語を提案した。

• 現在最も一般的に使われている用語法は改訂版PAINTである。

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データの取り扱い

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 37

1992年にルーカスらによってゲノム等価性を計算する等式が導かれ、これは2000年にルーカスとデングにより更に概略されている。

FG :全ゲノム変異頻度 Fp :FISH法で検出された転座頻度

fp 被験者の性別を考慮した、ハイブリダイゼーションされたゲノムの割合

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転座の管理レベル

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 38

転座の管理レベルは二動原体染色体より上である。これには変異の型がより安定しているという面も影響する。 (Sigurdson et al.2008).

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転座の持続性

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 39

• 二動原体法の最大の欠点は、被ばく後時間の経過に伴い変異量が減るということにある。

• 安定ChAのバックグラウンドレベルは不安定型ChAより高く、時間経過とともに増える傾向にある。

• したがって転座アッセイの感度は一般的に二動原体より低い。

• 良い管理とフォローアップが必要である。

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検量曲線

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 40

• 各研究室がFISH転座法を用いて線量推計のための独自の検量曲線を作成する必要がある。

• FISH線量推計は、少量の被ばくを複数回繰り返す

ことで高線量被ばくした症例や、被ばく後長時間経過した低線量被ばく症例に行われる。

• 直線ー二次曲線モデルが使える急性被ばく線量に比べ、ここではα線についての線量ー反応曲線が非常に重要である。

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後ろ向き生物学的線量測定におけるFISH法使用の具体例

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 41

• 生物学的線量調査を行ったことがない集団 • 物理学的線量調査を行ったことがある集団 • 被ばく直後に従来の二動原体染色体分析により生物学的線量調査をしたことのある集団 (例:ゴイア

ニア、ドイツ、エストニア、イスタンブール、ジョージアの事故におけるトリチウム)

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未成熟染色体凝縮(PCC)分析

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 42

• 生物学的線量法では一般的に最初の細胞分裂時の二動原体染色体または染色体転座を分析する。

• これらのアッセイにはいくつかの問題がある。つまり、高線量被ばく後に分裂遅延や細胞死がおき、かなりの線量過小評価が起こりうることなどである。

• 初回の分裂前に行われるPCCは前述の問題を改善または解決する。

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PCC

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 43

• CHO細胞を用いたPCC導入 • 正常染色体はペイントされない • Cバンド法を用いた二動原体染色体分析 • 染色体ペイントアッセイを用いた転座・二動原体分析

• 化学誘導によるPCC • 迅速間期染色体アッセイ (RICA) • PCCリングアッセイ

IAEA

間期リンパ球内のFISH法でペイントしたヒト染色体のRICA

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 44

Courtesy Pathak and Prasanna, AFRRI, USA Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA,

Vienna (2011)

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細胞質分裂阻害小核(CBMN) アッセイ

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 45

• 無動原体染色体断片や染色体全体が小さな核を形成することから小核と呼ばれる。

• 1990年代、染色体を可視化するために、汎染色体プローブを用いてCBMNつまり染色体アッセイが開発された。

• 最近、改訂版CBMN (細胞質分裂阻害小核 Cytome、別名CBMN Cyt)アッセイが開発・検証されている。

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CBMNアッセイ評価基準

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 46

• 細胞は二核性(BN)でなければならない。 • 核は完全な膜を持ち、同一細胞内になければならない。 • 核は大きさ、染色パターン・強度が等しくなければなら

ない。 • 核は微小な各細胞間架橋でつながっていても良い。 • 核は接していても良いが、重なっていないことが望まし

い。 • 核が重なっていても、境界が識別可能であれば評価可能

である。 • 細胞質の境界は完全で、ほかの細胞と識別可能でなけれ

ばならない。

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小核の評価基準

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 47

• 小核(MN)の直径は主核の直径の1/16-1/3でなければならない。

• MNが非屈折性であること。 • MNが主核と連絡・結合していないこと。 • MNは主核と接触していても良いが、重なっていな

いことが望ましい。主核との境界が識別可能でなければならない。

• MNは通常主核と同じ染色強度だが、主核より強染することもある。

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生物学的線量測定へのCBMNアッセイの応用

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 48

CBMNアッセイは感度がよく、内部・外部低線量全

身被ばく後の循環リンパ球のゲノム損傷を検出できる。

• 患者研究 (例:放射性ヨウ素のケース・スタディ) • 生物的モニタリング研究 • チェルノブイリやイスタンブール事故、セミパラチンスク核実験場、50kV接触型X線治療装置の事故

• 何百人もの人が被ばくし、トリアージが必要なほど大規模な放射線事故

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染色体アッセイの自動化

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 49

細胞遺伝学の研究室の自動化: • サンプル準備の自動化 • 分析の自動化 • サンプル追跡やデータ取り扱いのための研究室情報マネジメント

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自動サンプル処理

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 50

細胞遺伝学研究室における自動サンプル処理には以下の装置の一部あるいは全部が必要である:

• 血液取り扱いロボット • メタフェーズ・ハーベスター • メタフェーズ標本作製用装置 • スライド染色機

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自動画像分析

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 51

• 顕微鏡画像の自動分析は生物学的線量測定の分野ではまだ一般的には使われていない。

• 中期細胞探査と画像収集システム • 二動原体染色体アッセイの自動化 • 小核の自動評価 • PCCアッセイ自動化法は二動原体染色体分析自動化法に同様である

• 自動FISH転座アッセイはまだ開発中である

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研究室情報マネジメントシステム (LIMS)

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 52

サンプル識別 サンプル輸送 検査構成 スケジューリング

安全管理・監査 記録 報告 機器の統合

Courtesy Ramakumaand Prasanna, AFRRI, USA in Cytogenetic Dosimetry: Applications in Preparedness for and Response to Radiation Emergencies, EPR-Biodosimetry, IAEA, Vienna (2011)

IAEA

結論

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 53

• 染色体による後ろ向き生物学的線量測定は物理的測定と再現線量の検証に重要な手段となった。

• 様々な手法が開発され、現在検証中の手法も多数ある。

• 従来の刺激血中リンパ球の‘二動原体染色体分析’は未だに生物学的線量測定のゴールデンスタンダードである。

• FISH法に基づく転座分析、PCC、CBMNアッセイ

もよく研究されて精度が増したため、線量推計に用いることができる。

IAEA

謝辞

10 June 2013 OvB BIODOSE-21, Hiroshima, Japan 54

Contributors to drafting and review Ainsbury, E. Health Protection Agency, United Kingdom Barquinero, J.F. Universidad Autónoma de Barcelona, Spain Beinke, C. Bundeswehr Institute of Radiobiology, Germany Blakely, W.F. Armed Forces Radiobiology Research Institute, United States of America Braselmann, H. Helmholz Zentrum, Germany Buglova, E. International Atomic Energy Agency (IAEA) Carr, Z. World Health Organization (WHO) Di Giorgio, M. Autoridad Regulatoria Nuclear, Argentina Fenech, M. Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation (CSIRO), Australia Garcia Lima, O. Center for Hygiene and Radiation Protection, Cuba Kodama, Y. Radiation Effects Research Foundation, Japan Lindholm, C. Radiation and Nuclear Safety Authority (STUK), Finland Livingston, G. Oak Ridge Associated Universities (ORAU), United States of America Lloyd, D.C. Consultant, United Kingdom Maznyk, N.A. Institute for Medical Radiology of ANSU, Ukraine Prasanna, P.G.S. National Institutes of Health, United States of America Previsani, N. World Health Organization (WHO) Romm, H. Bundesamt für Strahlenschutz (BfS), Germany Roy, L. Institut de Radioprotection et de Sûreté Nucléaire (IRSN), France Voisin, P.J. Institut de Radioprotection et de Sûreté Nucléaire (IRSN), France Vral, A. Ghent University, Belgium Wilkins, R.C. Health Canada, Canada Yoshida, M. Hirosaki University, Japan

Comments received Azizova, T. Southern Urals Biophysics Institute, Russian Federation Barrios, L. Autonomous University of Barcelona, Spain Bognár, G. National Research Institute for Radiobilogy and Radiohygiene, Hungary Darroudi, F. Leiden University Medical Centre, Netherlands Devantier, Y, Chalk River Laboratories, Canada Espinoza Zevallos, M. Instituto Peruano de Energía Nuclear, Peru Guerrero Carbajal, Y.C. Instituto Nacional de Investigaciones Nucleares, Mexico Güçlü, I. Çekmece Nuclear Research and Training Centre (ÇNAEM), Turkey Hayata, I. Consultant, Japan Martínez-López , W. Instituto de Investigaciones Biológicas Clemente Estable, Uruguay Natarajan, A.T. University of Tuscia, Italy Oliveira, M. Instituto de Radioproteção e Dosimetria, Brasil Palitti, F. University of Tuscia, Italy Pantelias, G. Institute of Radioisotopes and Radiodiagnostics, National Centre for Scientific Research “Demokritos”, Greece Sasaki, M.S. Kyoto University, Japan Sotnik, N. Southern Urals Biophysics Institute, Russian Federation Turai, I. National Research Institute for Radiobiology and Radiohygiene, Hungary Valdivia Pottstock, P. Chilean Nuclear Energy Commission, Chile Vozilova, A. Urals Research Centre for Radiation Medicine (URCRM), Russian Federation Wilkinson, D. Defence and Research Development Canada, Canada