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Title <原典翻訳>アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン・ アフマド・アル=ビールーニー著『占星術教程の書』(3) Author(s) 山本, 啓二; 矢野, 道雄 Citation イスラーム世界研究 : Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies (2013), 6: 467-539 Issue Date 2013-03 URL https://doi.org/10.14989/173271 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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Page 1: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

Title lt原典翻訳gtアブーライハーンムハンマドイブンアフマドアル=ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

Author(s) 山本 啓二 矢野 道雄

Citation イスラーム世界研究 Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies(2013) 6 467-539

Issue Date 2013-03

URL httpsdoiorg1014989173271

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

アブーライハーンムハンマドイブンアフマドアル=ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

山本 啓二矢野 道雄 訳

第 5部 占星術

第 1章 宮349(347) 宮の性質とはどのようなものか

 ある宮をある行に書きそれに続く宮をその下の行に書くと上の行に来るものが熱の(ḥārr)宮となり下の行が冷の(bārid)宮となる次にそれぞれの宮はその下のものとともに乾(yābis)その次はともに湿(raṭb)またその次はともに乾となりこのように最後まで続く宮の持つ能動的力と受動的力が知られると宮はその両方に応じて宮<の性質>に似た世界の構成要素(ʻanāṣir)と身体の体液(aḫlāṭ)とに関係づけられるすなわち熱と乾の宮は世界の火と身体の黄胆汁に冷と乾の宮は土と黒胆汁に熱と湿の宮は空気と血液にそして冷と湿の宮は水と粘液に結びつけられるこれは次の図のとおりである

熱の宮 おひつじ宮 ふたご宮 しし宮 てんびん宮 いて宮 みずがめ宮乾と湿 乾 湿 乾 湿 乾 湿冷の宮 おうし宮 かに宮 おとめ宮 さそり宮 やぎ宮 うお宮

 インド人は水の宮についてはうお宮やぎ宮の後半そしてみずがめ宮の後半1)を考えているこれはすでに述べたそれらの図像によっている2)すなわちやぎ宮の後半は魚のようでありみずがめ宮の後半3)には注がれる水があるさそり宮については彼らはそれを水の性質とは考えずに空気の性質だと考えているまたかに宮は共通な性質である状態では水の性質またある状態では空気の性質とみなしている4)

350(348) 男性宮と女性宮とは何か

 すべての熱の宮は男性でありすべての冷の宮は女性である惑星は性質や男女という点で似ているもの(宮)にある時その力が強くなるだから惑星の性質はそれ(宮の性質)へと移行しその結果男性の惑星が女性宮にあるために女性の性質を示すようになるまたインド人は男性宮を凶星にまた女性宮を吉星に結びつけている5)

  京都産業大学文化学部教授 京都産業大学文化学部教授1) すべての写本とペルシア語版は誤って「前半」としている2) 159 節で黄道 12 星座の図像が説明されている星座と宮の図像は同じものである3) ここでは G以外の写本とペルシア語版が誤って「前半」としている4) さそり宮とかに宮に関する典拠は不明5) インド人の見解に関する典拠は不明

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)467‒539 頁

Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 6 (March 2013) pp 467ndash539

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

351(349) 昼の宮と夜の宮とは何か

 これについては男性宮すべてが昼<の宮>であり女性宮すべてが夜<の宮>であるという点で一致している昼の惑星は昼の宮において力が強くなり夜の惑星は夜の宮において力が強くなるこの点について人々はルーム人の『選集』(al-Bizīḏaǧ)6)で述べられていることに矛盾している彼らはおひつじ宮かに宮しし宮いて宮が昼でそれらの反対側にあるてんびん宮やぎ宮みずがめ宮ふたご宮が夜であり残りが昼と夜に共通だと言うのである7)さらにこれに関するインド人の見解はおひつじ宮おうし宮ふたご宮かに宮いて宮やぎ宮が夜に強くなり残りの 6つが昼に強くなるというものである8)

352(350) 手足が切り取られた宮とは何か

 これはおひつじ宮おうし宮しし宮うお宮であるすなわちおひつじ宮としし宮は分かれた蹄や爪を持つ足が切り離されていることおうし宮も同様に雄牛の<下>半身が臍から切り取られていることそしてうお宮は四肢がないことからそのように言われる

353(351) 直立宮(muntaṣiba)と非直立宮(ġayr muntaṣiba)とは何か

 直立宮とはおひつじ宮てんびん宮いて宮である書物にはこのように書かれているがその他の宮については何も書かれていないインド人はおひつじ宮おうし宮かに宮いて宮やぎ宮が背を上に直立して昇りしし宮おとめ宮てんびん宮さそり宮みずがめ宮が頭を上に直立して昇りさらにふたご宮とうお宮が側面を上に傾いて昇ると考えている9)しかし私はこのように 2つに分ける意図については自信がないまたほとんどの星座の構図もこれとは一致しないしそのことを証明してはいない

354(352) 人間宮(insīya)と非人間宮とは何か

 人間宮とはふたご宮おとめ宮てんびん宮みずがめ宮そしていて宮の前半分でありこのことはすでに述べた宮の図に見られる人の図像からわかるただしてんびん宮はそうではないたいていの場合そこには完全な人間の姿か人の片手あるいは紐をつかむ鳥10)が描かれている 四足を持つ宮はおひつじ宮おうし宮しし宮そしていて宮の後半分であるまた時にはおうし宮との類推からやぎ宮の前半分も含まれるこれらのうちおひつじ宮とおうし宮は分かれた蹄しし宮は爪そしていて宮は蹄を持っている宮のうちしし宮さそり宮いて宮うお宮のような動物の種類を示すものはすべて獣を指示内容に含んでいるまたふたご宮おとめ宮うお宮やぎ宮の後ろ 2 3 は鳥をかに宮さそり宮いて宮やぎ宮は爬虫類や昆虫をそしてかに宮さそり宮うお宮は水棲動物を指示内容に含んでいるこのことはこれから表の形

6) この著作はウェッテイオスワレンス(2世紀)の『アントロギアイ』(Ἀνθολογίαι)のことでありそのアラビア語名はパフラヴィー語の vižīḏak(選集)に由来するこの書はギリシア語からパフラヴィー語にさらにそれからアラビア語に翻訳されたと考えられるがどちらの翻訳も残っていない

7) これについての記述は実際には『アントロギアイ』には見られないがテーベのヘファイスティオン(4世紀)の Apotelesmatica 第 3巻第 1章2には見られる

8) 2世紀の『ヤヴァナジャータカ』(Yavanajātaka) 181参照9) ヴァラーハミヒラ(6世紀)の『ブリハッジャータカ』(Bṛhajjātaka)110ではふたご宮は頭を上に昇る宮

とされている10)ビールーニーによるてんびん宮のイメージが何に由来するのかは不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

で十分詳しく示されるだろう表は語ることよりも雄弁だからである インド人について言えば彼らは区分を増やし人間宮がふたご宮おとめ宮てんびん宮いて宮の前半分そしてみずがめ宮の後半分であり四足を持つ宮がおひつじ宮しし宮いて宮の後半分そしてやぎ宮の前半分であると言っている彼らによる水と空気の宮についてはすでに述べた(349 節)

355(353) 声を持つ宮(muṣawwita)と持たない宮(ġayr muṣawwita)とは何か

 ふたご宮おとめ宮てんびん宮は声が大きく中でもふたご宮は舌先が滑らか(manṭiqī)であるおひつじ宮おうし宮しし宮11)は半分の声をもちやぎ宮とみずがめ宮は声が弱いまたかに宮さそり宮うお宮には声がないこのことはこれらの宮における声や話し方に関する指示のよしあしを知るために必要なことである

356(354) 多産宮(walūd)不妊宮(ʻaqīm)その他の宮とは何か

 水の宮すなわちかに宮さそり宮うお宮そしてやぎ宮の後半分は多産でありおひつじ宮おうし宮<の後半分>てんびん宮いて宮みずがめ宮は子供が少なくまたおうし宮の前半分しし宮おとめ宮やぎ宮の前半分は不妊である双子を産む宮(al-mutirsquoma)について言えばそれはふたご宮おとめ宮いて宮うお宮であり時にはおひつじ宮てんびん宮やぎ宮の後半分も双子の出産(al-itrsquoām)12)を示すまたやぎ宮の前半分とさそり宮の前半分は両性具有者を示すしかし一方でおひつじ宮とてんびん宮のそれぞれは 2つの色と性質を持つと言われおとめ宮が 3つの姿を持つと言われるようにやぎ宮といて宮もそのように言われる ふたご宮は多くの姿と顔を持つなぜなら双子の出産(多胎分娩)は時には 2人を越えて3人あるいはそれ以上になるからである

357(355) 性行為に関する宮の状態とは何か

 おひつじ宮おうし宮しし宮やぎ宮うお宮は好色であり性行為に対して貪欲であるてんびん宮といて宮にはややその気がある女性について言えばおうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は女性の美徳と貞節を示すおひつじ宮かに宮てんびん宮13)は女性の不貞をまたふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は中庸を示す<その中でも>おとめ宮は最も貞淑である

358(356) 陰鬱で心配性の宮とは何か

 それはしし宮さそり宮やぎ宮でありてんびん宮とおとめ宮のそれぞれにはやや陰鬱さがある14)

359(357) 宮が示す世界の方角とは何か

 おひつじ宮は東の中央しし宮はその左の北寄りいて宮はその右の南寄りおうし宮(やぎ

11)アブーマアシャル『占星術大序説』VI18によればいて宮もここに属する12)ここで itrsquoāmを「双子の出産」と訳したのはその語根が「双子として生まれる」という意味を持つからである

が実際には「多胎分娩」を意味している13)アブーマアシャル『占星術大序説』VI15によればやぎ宮もここに属する14)アブーマアシャル『占星術大序説』VI21 [3]

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

宮)15)は南の中央おとめ宮(おうし宮)はその左の東寄りそしてやぎ宮(おとめ宮)はその右の西寄りを示すまたふたご宮(てんびん宮)は西の中央てんびん宮(みずがめ宮)はその左の南寄りみずがめ宮(ふたご宮)はその右の北寄りかに宮は北の中央さそり宮はその左の西寄りそしてうお宮はその右の東寄りを示すこの図のとおりである

西東

おとめ宮

いて宮

おひつじ宮

しし宮うお宮 か に 宮

さそり宮

みずがめ宮

ふたご宮

てんびん宮

やぎ宮

おうし 宮左

360(358) 宮が示す風とは何か

 すべての風はある宮の方角から吹くなぜなら風は宮と関係があるからである東風(aṣ-ṣabā)はおひつじ宮に西風(ad-dabūr)はふたご宮に南風(al-ǧanūb)はおうし宮にそして北風(aš-šamāl)はかに宮に属するこれと同じようにすべての横風(nakbārsquo)はその風向きに近い宮に関係がある例えば風が東と南の間で吹く時風が東寄りであればそれはいて宮と関係がありまた南寄りであればそれはおとめ宮(おうし宮)と関係がある

361(359) 宮が示す身体部位とは何か

 頭と顔はおひつじ宮に首と喉ぼとけ(ḫarazat al-ḥulqūm)はおうし宮に両肩と両手はふたご宮に胸両脇両乳肺胃はかに宮に心臓はしし宮に腹内臓はおとめ宮に腰尻はてんびん宮に男性器と女性器はさそり宮に両太腿はいて宮に両膝はやぎ宮に両脛はみずがめ宮にそして両足はうお宮に属している また時として書物によってはこのことについて混乱がありおひつじ宮に頭顔内臓があるなどとされているヴァラーハミヒラ(Barāhamihir Varāhamihira)が述べたように天球が人体で人の頭がおひつじ宮だと考える類推が一般的であるかつて人の両足がおひつじ宮に結びつけられていたがインド人は頭がおひつじ宮にそして顔がおうし宮に属すると考えるようになった16) また宮には人体の病気色宝石姿居場所国動物の種類水火に関する指示があるわれわれがそれらを表にしたのはその方が見つけやすいからであるそれは神が望まれたこと

15)( )内はアブーマアシャル『占星術大序説』VI25に見られる正しい記述黄道上で 180 度反対側にある宮が方角でも反対側になる

16)ヴァラーハミヒラの『ブリハッジャータカ』第 1章には人体と宮の関係が述べられているそれによればおひつじ宮が頭おうし宮が顔ふたご宮が胸かに宮が心臓しし宮が腹おとめ宮が腰てんびん宮が下腹さそり宮が生殖器いて宮が太腿やぎ宮が膝みずがめ宮が臀部そしてうお宮が足にそれぞれ対応している

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

362(360) 宮が示す性格(al-aḫlāq)と行動(as-siyar)17)

宮名 性格と行動おひつじ宮 よく笑うおしゃべり威厳がある高慢旅好き怒りっぽい好色勇敢おうし宮 深遠愚鈍嘘つき狡猾好色無知

ふたご宮 高貴清潔人を楽しませる英知と天に関する諸学を愛する寛大勇気があるクルアーンを暗唱する

かに宮 愚鈍無口移り気

しし宮 威厳がある臆病怒りっぽい厳しい頑固粗野狡猾心配症よこしま忘れっぽいうぬぼれが強い勇敢

おとめ宮 寛大気質がよい正直疑い深い抜け目がない賢い思慮深い向こう見ず活発ひょうきん踊る弦楽器を奏でるクルアーンを暗唱する

てんびん宮 思慮深い疑い深い勇敢愚鈍臆病公正正直性格が目立たない詩を書く富を持ち気前がいいクルアーンを暗唱する

さそり宮 気質が悪い心配事と策略がある寛大大胆厚顔陰気怒りっぽい残忍クルアーンを暗唱する無知怠惰うぬぼれが強い勇敢

いて宮威厳がある無口浪費家狡猾狂信者水上旅行者技師測量士天国や来世について思いめぐらす動物好き飲食の場所や衣類が清潔よこしま忘れっぽい自尊心が強い

やぎ宮高慢嘘つき怒りっぽい鋭敏変わり身が早い邪悪について思いめぐらす心配事と苦労が多い粘り強い英知を好む英知で有名偽善者楽しみを持つ暮らし向きがよい人を欺くよこしま忘れっぽい好色勇敢

みずがめ宮気質がよい慎み深い忍耐と男らしさについて貪欲食べ物について清潔食べ物について寛大財産を貯えることに熱心財産に対して強欲安楽の時には立ち向かう苦難の時には臆病穏やか死について頻繁に考える怠惰

うお宮 気質がよい寛大清潔貪欲考えが定まらない誠実さにおいて中庸策略と詐欺を講ずるよこしま忘れっぽい無知勇敢

363(361) 宮が示す外的特徴(ḥilya)と容貌(ṣuwar)18)

宮名 外的特徴と容貌

おひつじ宮 中背でやせぎみ上目がち目が黒または青耳が曲がっていて大きい口が醜い髪が巻き毛で赤みを帯びている

おうし宮 十分に背が高い額が大きい眉が小さい目が黒く白目が少ない伏し目鼻が広い鼻先が膨らんでいる口が広い唇と首が大きい髪が直毛で黒い腹が大きい

ふたご宮 中背体格と見た目がよく首と髭がきれい美しい瞳が鋭い肩幅が広い脚が腕より長い

かに宮 中背肩甲骨が厚く長め髪が薄い鼻が曲がっている歯が不揃い伏し目下半身の方が大きい脚が腕より長い

しし宮十分に背が高い胸と額が広い指が太い太腿が細い上半身が大きく美しい<目が>青か赤黒い鼻が膨らんでいる口が広い歯に隙間がある髪が赤みを帯びている腹が大きい

おとめ宮 中肉<背が>高め髪が直毛顔がきれい胸と腹にあざがある首にほくろがある

てんびん宮 手足が中庸顔と体がきれい肌が白い顔色が悪い18)目が黒い鼻がきれい首と腰にほくろがある足がきれい

さそり宮頭蓋骨が隆起している目がかわいく小さい目が黄色顔が丸い額が狭い髪が刺のよう<髪が>頭頂部に多い<髪が>赤みを帯びている手足が長い腿が細い足が大きい肩幅と胸が広い鼻が平べったい背中にほくろがある腹が大きい

17)362‒375 節の順番は写本によってさまざまでありここでは主に CPMに基づく順番に従うまた以下表形式になっている節においては節番号に続く表題は原文にはなく訳者が便宜的に挿入したものである

18)アラビア語で「顔色が悪い」という場合その色は「蒼白」ではなく「黄色」である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

いて宮体がきゃしゃ体がきれい十分に背が高い顔が美しい後ろからよりも前からの方がきれい目がきれい髭が直毛髪が少ない鼻先が大きい鼻の色が赤みを帯びている腹と脚が大きい腿が長い上腕と足にほくろがある

やぎ宮体が真っすぐでやせている姿がきれい顔つきが山羊に似ている<目が>青い耳が曲がっている頭髪が多い髭が直毛髭が長い瞳が大きく黒い胸毛が少ない腿と脚が細い足どりが軽やかかわいい

みずがめ宮中背背が高からず低からずでやや高め額が小さい目が黒い黒目が白目より大きい唇が厚い上目がち体が太い両脚が不揃いで一方が他方より長い胸が広い顔が美しい

うお宮 体がきれい関節と皮膚が弱い背が中庸で美しい胸が広い肩幅が狭い腹がよじれている頭が小さい額が狭い伏し目瞳の黒が大きいかわいい

364(370) 宮が示す病気と病気の状態(ʻilal wa-amrāḍ)宮名 病気と病気の状態

おひつじ宮宮の前半は強く活力が増大し後半は弱く活力が減少し病気が多い特に頭がカボチャのようになる禿顔が赤い爪のしみハンセン病疥癬耳と足の慢性病<宮の>初めは腋臭終わりは腿の悪臭中間はよい匂いを示す

おうし宮前半は強く活力が増大し後半は痩せて活力が減少する病気の頻度は普通瘰癧(リンパ節結核)やアンギーナ(口腔と咽頭の境界付近の炎症)のように病気の多くが首に生じるそばかす鼻孔の悪臭両足の匂い背中と胸の痣を示す

ふたご宮 手足が丈夫匂いがよい病気の頻度は普通病気の多くは風邪と痛風小さなそばかすがある

かに宮 体が弱くよく病気になる病気の多くは痛風風邪癌禿薄毛難聴発疹性の皮膚病フケハンセン病爪のしみ痔疾左足と指の倦怠

しし宮 <前半は>体が強く活力が増大し後半は体が弱く活力が減少し病気が多い特に腹のあたりで胃弱目の痛み禿前半は口臭を示す

おとめ宮 体が強く細さとやせぐあいは普通手足が丈夫病気の頻度は普通禿を示すてんびん宮 細さは普通体が強く手足は丈夫

さそり宮前半は健康で筋骨たくましく後半は病弱手足は丈夫病気が多い病気の多くは聾唖夜盲症禿薄髭癌フケ発疹性の皮膚病かゆみ壊疽ハンセン病陰嚢水腫結石排尿困難男性器の悪臭

いて宮前半は健康で強く後半は弱く病気がち細さは普通手足は丈夫病気の頻度は普通病気の多くは痛風風邪盲目片目喪失禿疫病転倒獣からの伝染病手足の切断と突起ほくろとあざが多い

やぎ宮体が弱く病気が多い手足は丈夫病気の多くは聾唖目の乾燥淋病かゆみ瘰癧壊疽癌脱毛症風邪痛風髪がまっすぐで柔らかい腫物他の宮より強度の禿を示す

みずがめ宮前半は健康で筋骨たくましく後半は弱く病気がち手足は丈夫その病気は黄疸蒼白風邪痛風黒胆汁片目喪失目の痛み静脈の痛みめまい骨折疫病転倒鼻孔の悪臭

うお宮 体がきゃしゃで細く虚弱病気が特に神経に多い痛風麻痺胆汁過多疥癬発疹性の皮膚病フケ禿ハンセン病風邪薄髭

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

495

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

509

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

511

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

512

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

513

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

514

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

515

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

516

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

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520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

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照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

Page 2: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

アブーライハーンムハンマドイブンアフマドアル=ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

山本 啓二矢野 道雄 訳

第 5部 占星術

第 1章 宮349(347) 宮の性質とはどのようなものか

 ある宮をある行に書きそれに続く宮をその下の行に書くと上の行に来るものが熱の(ḥārr)宮となり下の行が冷の(bārid)宮となる次にそれぞれの宮はその下のものとともに乾(yābis)その次はともに湿(raṭb)またその次はともに乾となりこのように最後まで続く宮の持つ能動的力と受動的力が知られると宮はその両方に応じて宮<の性質>に似た世界の構成要素(ʻanāṣir)と身体の体液(aḫlāṭ)とに関係づけられるすなわち熱と乾の宮は世界の火と身体の黄胆汁に冷と乾の宮は土と黒胆汁に熱と湿の宮は空気と血液にそして冷と湿の宮は水と粘液に結びつけられるこれは次の図のとおりである

熱の宮 おひつじ宮 ふたご宮 しし宮 てんびん宮 いて宮 みずがめ宮乾と湿 乾 湿 乾 湿 乾 湿冷の宮 おうし宮 かに宮 おとめ宮 さそり宮 やぎ宮 うお宮

 インド人は水の宮についてはうお宮やぎ宮の後半そしてみずがめ宮の後半1)を考えているこれはすでに述べたそれらの図像によっている2)すなわちやぎ宮の後半は魚のようでありみずがめ宮の後半3)には注がれる水があるさそり宮については彼らはそれを水の性質とは考えずに空気の性質だと考えているまたかに宮は共通な性質である状態では水の性質またある状態では空気の性質とみなしている4)

350(348) 男性宮と女性宮とは何か

 すべての熱の宮は男性でありすべての冷の宮は女性である惑星は性質や男女という点で似ているもの(宮)にある時その力が強くなるだから惑星の性質はそれ(宮の性質)へと移行しその結果男性の惑星が女性宮にあるために女性の性質を示すようになるまたインド人は男性宮を凶星にまた女性宮を吉星に結びつけている5)

  京都産業大学文化学部教授 京都産業大学文化学部教授1) すべての写本とペルシア語版は誤って「前半」としている2) 159 節で黄道 12 星座の図像が説明されている星座と宮の図像は同じものである3) ここでは G以外の写本とペルシア語版が誤って「前半」としている4) さそり宮とかに宮に関する典拠は不明5) インド人の見解に関する典拠は不明

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)467‒539 頁

Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 6 (March 2013) pp 467ndash539

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

351(349) 昼の宮と夜の宮とは何か

 これについては男性宮すべてが昼<の宮>であり女性宮すべてが夜<の宮>であるという点で一致している昼の惑星は昼の宮において力が強くなり夜の惑星は夜の宮において力が強くなるこの点について人々はルーム人の『選集』(al-Bizīḏaǧ)6)で述べられていることに矛盾している彼らはおひつじ宮かに宮しし宮いて宮が昼でそれらの反対側にあるてんびん宮やぎ宮みずがめ宮ふたご宮が夜であり残りが昼と夜に共通だと言うのである7)さらにこれに関するインド人の見解はおひつじ宮おうし宮ふたご宮かに宮いて宮やぎ宮が夜に強くなり残りの 6つが昼に強くなるというものである8)

352(350) 手足が切り取られた宮とは何か

 これはおひつじ宮おうし宮しし宮うお宮であるすなわちおひつじ宮としし宮は分かれた蹄や爪を持つ足が切り離されていることおうし宮も同様に雄牛の<下>半身が臍から切り取られていることそしてうお宮は四肢がないことからそのように言われる

353(351) 直立宮(muntaṣiba)と非直立宮(ġayr muntaṣiba)とは何か

 直立宮とはおひつじ宮てんびん宮いて宮である書物にはこのように書かれているがその他の宮については何も書かれていないインド人はおひつじ宮おうし宮かに宮いて宮やぎ宮が背を上に直立して昇りしし宮おとめ宮てんびん宮さそり宮みずがめ宮が頭を上に直立して昇りさらにふたご宮とうお宮が側面を上に傾いて昇ると考えている9)しかし私はこのように 2つに分ける意図については自信がないまたほとんどの星座の構図もこれとは一致しないしそのことを証明してはいない

354(352) 人間宮(insīya)と非人間宮とは何か

 人間宮とはふたご宮おとめ宮てんびん宮みずがめ宮そしていて宮の前半分でありこのことはすでに述べた宮の図に見られる人の図像からわかるただしてんびん宮はそうではないたいていの場合そこには完全な人間の姿か人の片手あるいは紐をつかむ鳥10)が描かれている 四足を持つ宮はおひつじ宮おうし宮しし宮そしていて宮の後半分であるまた時にはおうし宮との類推からやぎ宮の前半分も含まれるこれらのうちおひつじ宮とおうし宮は分かれた蹄しし宮は爪そしていて宮は蹄を持っている宮のうちしし宮さそり宮いて宮うお宮のような動物の種類を示すものはすべて獣を指示内容に含んでいるまたふたご宮おとめ宮うお宮やぎ宮の後ろ 2 3 は鳥をかに宮さそり宮いて宮やぎ宮は爬虫類や昆虫をそしてかに宮さそり宮うお宮は水棲動物を指示内容に含んでいるこのことはこれから表の形

6) この著作はウェッテイオスワレンス(2世紀)の『アントロギアイ』(Ἀνθολογίαι)のことでありそのアラビア語名はパフラヴィー語の vižīḏak(選集)に由来するこの書はギリシア語からパフラヴィー語にさらにそれからアラビア語に翻訳されたと考えられるがどちらの翻訳も残っていない

7) これについての記述は実際には『アントロギアイ』には見られないがテーベのヘファイスティオン(4世紀)の Apotelesmatica 第 3巻第 1章2には見られる

8) 2世紀の『ヤヴァナジャータカ』(Yavanajātaka) 181参照9) ヴァラーハミヒラ(6世紀)の『ブリハッジャータカ』(Bṛhajjātaka)110ではふたご宮は頭を上に昇る宮

とされている10)ビールーニーによるてんびん宮のイメージが何に由来するのかは不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

で十分詳しく示されるだろう表は語ることよりも雄弁だからである インド人について言えば彼らは区分を増やし人間宮がふたご宮おとめ宮てんびん宮いて宮の前半分そしてみずがめ宮の後半分であり四足を持つ宮がおひつじ宮しし宮いて宮の後半分そしてやぎ宮の前半分であると言っている彼らによる水と空気の宮についてはすでに述べた(349 節)

355(353) 声を持つ宮(muṣawwita)と持たない宮(ġayr muṣawwita)とは何か

 ふたご宮おとめ宮てんびん宮は声が大きく中でもふたご宮は舌先が滑らか(manṭiqī)であるおひつじ宮おうし宮しし宮11)は半分の声をもちやぎ宮とみずがめ宮は声が弱いまたかに宮さそり宮うお宮には声がないこのことはこれらの宮における声や話し方に関する指示のよしあしを知るために必要なことである

356(354) 多産宮(walūd)不妊宮(ʻaqīm)その他の宮とは何か

 水の宮すなわちかに宮さそり宮うお宮そしてやぎ宮の後半分は多産でありおひつじ宮おうし宮<の後半分>てんびん宮いて宮みずがめ宮は子供が少なくまたおうし宮の前半分しし宮おとめ宮やぎ宮の前半分は不妊である双子を産む宮(al-mutirsquoma)について言えばそれはふたご宮おとめ宮いて宮うお宮であり時にはおひつじ宮てんびん宮やぎ宮の後半分も双子の出産(al-itrsquoām)12)を示すまたやぎ宮の前半分とさそり宮の前半分は両性具有者を示すしかし一方でおひつじ宮とてんびん宮のそれぞれは 2つの色と性質を持つと言われおとめ宮が 3つの姿を持つと言われるようにやぎ宮といて宮もそのように言われる ふたご宮は多くの姿と顔を持つなぜなら双子の出産(多胎分娩)は時には 2人を越えて3人あるいはそれ以上になるからである

357(355) 性行為に関する宮の状態とは何か

 おひつじ宮おうし宮しし宮やぎ宮うお宮は好色であり性行為に対して貪欲であるてんびん宮といて宮にはややその気がある女性について言えばおうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は女性の美徳と貞節を示すおひつじ宮かに宮てんびん宮13)は女性の不貞をまたふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は中庸を示す<その中でも>おとめ宮は最も貞淑である

358(356) 陰鬱で心配性の宮とは何か

 それはしし宮さそり宮やぎ宮でありてんびん宮とおとめ宮のそれぞれにはやや陰鬱さがある14)

359(357) 宮が示す世界の方角とは何か

 おひつじ宮は東の中央しし宮はその左の北寄りいて宮はその右の南寄りおうし宮(やぎ

11)アブーマアシャル『占星術大序説』VI18によればいて宮もここに属する12)ここで itrsquoāmを「双子の出産」と訳したのはその語根が「双子として生まれる」という意味を持つからである

が実際には「多胎分娩」を意味している13)アブーマアシャル『占星術大序説』VI15によればやぎ宮もここに属する14)アブーマアシャル『占星術大序説』VI21 [3]

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

宮)15)は南の中央おとめ宮(おうし宮)はその左の東寄りそしてやぎ宮(おとめ宮)はその右の西寄りを示すまたふたご宮(てんびん宮)は西の中央てんびん宮(みずがめ宮)はその左の南寄りみずがめ宮(ふたご宮)はその右の北寄りかに宮は北の中央さそり宮はその左の西寄りそしてうお宮はその右の東寄りを示すこの図のとおりである

西東

おとめ宮

いて宮

おひつじ宮

しし宮うお宮 か に 宮

さそり宮

みずがめ宮

ふたご宮

てんびん宮

やぎ宮

おうし 宮左

360(358) 宮が示す風とは何か

 すべての風はある宮の方角から吹くなぜなら風は宮と関係があるからである東風(aṣ-ṣabā)はおひつじ宮に西風(ad-dabūr)はふたご宮に南風(al-ǧanūb)はおうし宮にそして北風(aš-šamāl)はかに宮に属するこれと同じようにすべての横風(nakbārsquo)はその風向きに近い宮に関係がある例えば風が東と南の間で吹く時風が東寄りであればそれはいて宮と関係がありまた南寄りであればそれはおとめ宮(おうし宮)と関係がある

361(359) 宮が示す身体部位とは何か

 頭と顔はおひつじ宮に首と喉ぼとけ(ḫarazat al-ḥulqūm)はおうし宮に両肩と両手はふたご宮に胸両脇両乳肺胃はかに宮に心臓はしし宮に腹内臓はおとめ宮に腰尻はてんびん宮に男性器と女性器はさそり宮に両太腿はいて宮に両膝はやぎ宮に両脛はみずがめ宮にそして両足はうお宮に属している また時として書物によってはこのことについて混乱がありおひつじ宮に頭顔内臓があるなどとされているヴァラーハミヒラ(Barāhamihir Varāhamihira)が述べたように天球が人体で人の頭がおひつじ宮だと考える類推が一般的であるかつて人の両足がおひつじ宮に結びつけられていたがインド人は頭がおひつじ宮にそして顔がおうし宮に属すると考えるようになった16) また宮には人体の病気色宝石姿居場所国動物の種類水火に関する指示があるわれわれがそれらを表にしたのはその方が見つけやすいからであるそれは神が望まれたこと

15)( )内はアブーマアシャル『占星術大序説』VI25に見られる正しい記述黄道上で 180 度反対側にある宮が方角でも反対側になる

16)ヴァラーハミヒラの『ブリハッジャータカ』第 1章には人体と宮の関係が述べられているそれによればおひつじ宮が頭おうし宮が顔ふたご宮が胸かに宮が心臓しし宮が腹おとめ宮が腰てんびん宮が下腹さそり宮が生殖器いて宮が太腿やぎ宮が膝みずがめ宮が臀部そしてうお宮が足にそれぞれ対応している

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

362(360) 宮が示す性格(al-aḫlāq)と行動(as-siyar)17)

宮名 性格と行動おひつじ宮 よく笑うおしゃべり威厳がある高慢旅好き怒りっぽい好色勇敢おうし宮 深遠愚鈍嘘つき狡猾好色無知

ふたご宮 高貴清潔人を楽しませる英知と天に関する諸学を愛する寛大勇気があるクルアーンを暗唱する

かに宮 愚鈍無口移り気

しし宮 威厳がある臆病怒りっぽい厳しい頑固粗野狡猾心配症よこしま忘れっぽいうぬぼれが強い勇敢

おとめ宮 寛大気質がよい正直疑い深い抜け目がない賢い思慮深い向こう見ず活発ひょうきん踊る弦楽器を奏でるクルアーンを暗唱する

てんびん宮 思慮深い疑い深い勇敢愚鈍臆病公正正直性格が目立たない詩を書く富を持ち気前がいいクルアーンを暗唱する

さそり宮 気質が悪い心配事と策略がある寛大大胆厚顔陰気怒りっぽい残忍クルアーンを暗唱する無知怠惰うぬぼれが強い勇敢

いて宮威厳がある無口浪費家狡猾狂信者水上旅行者技師測量士天国や来世について思いめぐらす動物好き飲食の場所や衣類が清潔よこしま忘れっぽい自尊心が強い

やぎ宮高慢嘘つき怒りっぽい鋭敏変わり身が早い邪悪について思いめぐらす心配事と苦労が多い粘り強い英知を好む英知で有名偽善者楽しみを持つ暮らし向きがよい人を欺くよこしま忘れっぽい好色勇敢

みずがめ宮気質がよい慎み深い忍耐と男らしさについて貪欲食べ物について清潔食べ物について寛大財産を貯えることに熱心財産に対して強欲安楽の時には立ち向かう苦難の時には臆病穏やか死について頻繁に考える怠惰

うお宮 気質がよい寛大清潔貪欲考えが定まらない誠実さにおいて中庸策略と詐欺を講ずるよこしま忘れっぽい無知勇敢

363(361) 宮が示す外的特徴(ḥilya)と容貌(ṣuwar)18)

宮名 外的特徴と容貌

おひつじ宮 中背でやせぎみ上目がち目が黒または青耳が曲がっていて大きい口が醜い髪が巻き毛で赤みを帯びている

おうし宮 十分に背が高い額が大きい眉が小さい目が黒く白目が少ない伏し目鼻が広い鼻先が膨らんでいる口が広い唇と首が大きい髪が直毛で黒い腹が大きい

ふたご宮 中背体格と見た目がよく首と髭がきれい美しい瞳が鋭い肩幅が広い脚が腕より長い

かに宮 中背肩甲骨が厚く長め髪が薄い鼻が曲がっている歯が不揃い伏し目下半身の方が大きい脚が腕より長い

しし宮十分に背が高い胸と額が広い指が太い太腿が細い上半身が大きく美しい<目が>青か赤黒い鼻が膨らんでいる口が広い歯に隙間がある髪が赤みを帯びている腹が大きい

おとめ宮 中肉<背が>高め髪が直毛顔がきれい胸と腹にあざがある首にほくろがある

てんびん宮 手足が中庸顔と体がきれい肌が白い顔色が悪い18)目が黒い鼻がきれい首と腰にほくろがある足がきれい

さそり宮頭蓋骨が隆起している目がかわいく小さい目が黄色顔が丸い額が狭い髪が刺のよう<髪が>頭頂部に多い<髪が>赤みを帯びている手足が長い腿が細い足が大きい肩幅と胸が広い鼻が平べったい背中にほくろがある腹が大きい

17)362‒375 節の順番は写本によってさまざまでありここでは主に CPMに基づく順番に従うまた以下表形式になっている節においては節番号に続く表題は原文にはなく訳者が便宜的に挿入したものである

18)アラビア語で「顔色が悪い」という場合その色は「蒼白」ではなく「黄色」である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

いて宮体がきゃしゃ体がきれい十分に背が高い顔が美しい後ろからよりも前からの方がきれい目がきれい髭が直毛髪が少ない鼻先が大きい鼻の色が赤みを帯びている腹と脚が大きい腿が長い上腕と足にほくろがある

やぎ宮体が真っすぐでやせている姿がきれい顔つきが山羊に似ている<目が>青い耳が曲がっている頭髪が多い髭が直毛髭が長い瞳が大きく黒い胸毛が少ない腿と脚が細い足どりが軽やかかわいい

みずがめ宮中背背が高からず低からずでやや高め額が小さい目が黒い黒目が白目より大きい唇が厚い上目がち体が太い両脚が不揃いで一方が他方より長い胸が広い顔が美しい

うお宮 体がきれい関節と皮膚が弱い背が中庸で美しい胸が広い肩幅が狭い腹がよじれている頭が小さい額が狭い伏し目瞳の黒が大きいかわいい

364(370) 宮が示す病気と病気の状態(ʻilal wa-amrāḍ)宮名 病気と病気の状態

おひつじ宮宮の前半は強く活力が増大し後半は弱く活力が減少し病気が多い特に頭がカボチャのようになる禿顔が赤い爪のしみハンセン病疥癬耳と足の慢性病<宮の>初めは腋臭終わりは腿の悪臭中間はよい匂いを示す

おうし宮前半は強く活力が増大し後半は痩せて活力が減少する病気の頻度は普通瘰癧(リンパ節結核)やアンギーナ(口腔と咽頭の境界付近の炎症)のように病気の多くが首に生じるそばかす鼻孔の悪臭両足の匂い背中と胸の痣を示す

ふたご宮 手足が丈夫匂いがよい病気の頻度は普通病気の多くは風邪と痛風小さなそばかすがある

かに宮 体が弱くよく病気になる病気の多くは痛風風邪癌禿薄毛難聴発疹性の皮膚病フケハンセン病爪のしみ痔疾左足と指の倦怠

しし宮 <前半は>体が強く活力が増大し後半は体が弱く活力が減少し病気が多い特に腹のあたりで胃弱目の痛み禿前半は口臭を示す

おとめ宮 体が強く細さとやせぐあいは普通手足が丈夫病気の頻度は普通禿を示すてんびん宮 細さは普通体が強く手足は丈夫

さそり宮前半は健康で筋骨たくましく後半は病弱手足は丈夫病気が多い病気の多くは聾唖夜盲症禿薄髭癌フケ発疹性の皮膚病かゆみ壊疽ハンセン病陰嚢水腫結石排尿困難男性器の悪臭

いて宮前半は健康で強く後半は弱く病気がち細さは普通手足は丈夫病気の頻度は普通病気の多くは痛風風邪盲目片目喪失禿疫病転倒獣からの伝染病手足の切断と突起ほくろとあざが多い

やぎ宮体が弱く病気が多い手足は丈夫病気の多くは聾唖目の乾燥淋病かゆみ瘰癧壊疽癌脱毛症風邪痛風髪がまっすぐで柔らかい腫物他の宮より強度の禿を示す

みずがめ宮前半は健康で筋骨たくましく後半は弱く病気がち手足は丈夫その病気は黄疸蒼白風邪痛風黒胆汁片目喪失目の痛み静脈の痛みめまい骨折疫病転倒鼻孔の悪臭

うお宮 体がきゃしゃで細く虚弱病気が特に神経に多い痛風麻痺胆汁過多疥癬発疹性の皮膚病フケ禿ハンセン病風邪薄髭

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

479

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

480

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

491

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

492

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

493

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

494

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

530

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

531

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

351(349) 昼の宮と夜の宮とは何か

 これについては男性宮すべてが昼<の宮>であり女性宮すべてが夜<の宮>であるという点で一致している昼の惑星は昼の宮において力が強くなり夜の惑星は夜の宮において力が強くなるこの点について人々はルーム人の『選集』(al-Bizīḏaǧ)6)で述べられていることに矛盾している彼らはおひつじ宮かに宮しし宮いて宮が昼でそれらの反対側にあるてんびん宮やぎ宮みずがめ宮ふたご宮が夜であり残りが昼と夜に共通だと言うのである7)さらにこれに関するインド人の見解はおひつじ宮おうし宮ふたご宮かに宮いて宮やぎ宮が夜に強くなり残りの 6つが昼に強くなるというものである8)

352(350) 手足が切り取られた宮とは何か

 これはおひつじ宮おうし宮しし宮うお宮であるすなわちおひつじ宮としし宮は分かれた蹄や爪を持つ足が切り離されていることおうし宮も同様に雄牛の<下>半身が臍から切り取られていることそしてうお宮は四肢がないことからそのように言われる

353(351) 直立宮(muntaṣiba)と非直立宮(ġayr muntaṣiba)とは何か

 直立宮とはおひつじ宮てんびん宮いて宮である書物にはこのように書かれているがその他の宮については何も書かれていないインド人はおひつじ宮おうし宮かに宮いて宮やぎ宮が背を上に直立して昇りしし宮おとめ宮てんびん宮さそり宮みずがめ宮が頭を上に直立して昇りさらにふたご宮とうお宮が側面を上に傾いて昇ると考えている9)しかし私はこのように 2つに分ける意図については自信がないまたほとんどの星座の構図もこれとは一致しないしそのことを証明してはいない

354(352) 人間宮(insīya)と非人間宮とは何か

 人間宮とはふたご宮おとめ宮てんびん宮みずがめ宮そしていて宮の前半分でありこのことはすでに述べた宮の図に見られる人の図像からわかるただしてんびん宮はそうではないたいていの場合そこには完全な人間の姿か人の片手あるいは紐をつかむ鳥10)が描かれている 四足を持つ宮はおひつじ宮おうし宮しし宮そしていて宮の後半分であるまた時にはおうし宮との類推からやぎ宮の前半分も含まれるこれらのうちおひつじ宮とおうし宮は分かれた蹄しし宮は爪そしていて宮は蹄を持っている宮のうちしし宮さそり宮いて宮うお宮のような動物の種類を示すものはすべて獣を指示内容に含んでいるまたふたご宮おとめ宮うお宮やぎ宮の後ろ 2 3 は鳥をかに宮さそり宮いて宮やぎ宮は爬虫類や昆虫をそしてかに宮さそり宮うお宮は水棲動物を指示内容に含んでいるこのことはこれから表の形

6) この著作はウェッテイオスワレンス(2世紀)の『アントロギアイ』(Ἀνθολογίαι)のことでありそのアラビア語名はパフラヴィー語の vižīḏak(選集)に由来するこの書はギリシア語からパフラヴィー語にさらにそれからアラビア語に翻訳されたと考えられるがどちらの翻訳も残っていない

7) これについての記述は実際には『アントロギアイ』には見られないがテーベのヘファイスティオン(4世紀)の Apotelesmatica 第 3巻第 1章2には見られる

8) 2世紀の『ヤヴァナジャータカ』(Yavanajātaka) 181参照9) ヴァラーハミヒラ(6世紀)の『ブリハッジャータカ』(Bṛhajjātaka)110ではふたご宮は頭を上に昇る宮

とされている10)ビールーニーによるてんびん宮のイメージが何に由来するのかは不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

で十分詳しく示されるだろう表は語ることよりも雄弁だからである インド人について言えば彼らは区分を増やし人間宮がふたご宮おとめ宮てんびん宮いて宮の前半分そしてみずがめ宮の後半分であり四足を持つ宮がおひつじ宮しし宮いて宮の後半分そしてやぎ宮の前半分であると言っている彼らによる水と空気の宮についてはすでに述べた(349 節)

355(353) 声を持つ宮(muṣawwita)と持たない宮(ġayr muṣawwita)とは何か

 ふたご宮おとめ宮てんびん宮は声が大きく中でもふたご宮は舌先が滑らか(manṭiqī)であるおひつじ宮おうし宮しし宮11)は半分の声をもちやぎ宮とみずがめ宮は声が弱いまたかに宮さそり宮うお宮には声がないこのことはこれらの宮における声や話し方に関する指示のよしあしを知るために必要なことである

356(354) 多産宮(walūd)不妊宮(ʻaqīm)その他の宮とは何か

 水の宮すなわちかに宮さそり宮うお宮そしてやぎ宮の後半分は多産でありおひつじ宮おうし宮<の後半分>てんびん宮いて宮みずがめ宮は子供が少なくまたおうし宮の前半分しし宮おとめ宮やぎ宮の前半分は不妊である双子を産む宮(al-mutirsquoma)について言えばそれはふたご宮おとめ宮いて宮うお宮であり時にはおひつじ宮てんびん宮やぎ宮の後半分も双子の出産(al-itrsquoām)12)を示すまたやぎ宮の前半分とさそり宮の前半分は両性具有者を示すしかし一方でおひつじ宮とてんびん宮のそれぞれは 2つの色と性質を持つと言われおとめ宮が 3つの姿を持つと言われるようにやぎ宮といて宮もそのように言われる ふたご宮は多くの姿と顔を持つなぜなら双子の出産(多胎分娩)は時には 2人を越えて3人あるいはそれ以上になるからである

357(355) 性行為に関する宮の状態とは何か

 おひつじ宮おうし宮しし宮やぎ宮うお宮は好色であり性行為に対して貪欲であるてんびん宮といて宮にはややその気がある女性について言えばおうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は女性の美徳と貞節を示すおひつじ宮かに宮てんびん宮13)は女性の不貞をまたふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は中庸を示す<その中でも>おとめ宮は最も貞淑である

358(356) 陰鬱で心配性の宮とは何か

 それはしし宮さそり宮やぎ宮でありてんびん宮とおとめ宮のそれぞれにはやや陰鬱さがある14)

359(357) 宮が示す世界の方角とは何か

 おひつじ宮は東の中央しし宮はその左の北寄りいて宮はその右の南寄りおうし宮(やぎ

11)アブーマアシャル『占星術大序説』VI18によればいて宮もここに属する12)ここで itrsquoāmを「双子の出産」と訳したのはその語根が「双子として生まれる」という意味を持つからである

が実際には「多胎分娩」を意味している13)アブーマアシャル『占星術大序説』VI15によればやぎ宮もここに属する14)アブーマアシャル『占星術大序説』VI21 [3]

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

宮)15)は南の中央おとめ宮(おうし宮)はその左の東寄りそしてやぎ宮(おとめ宮)はその右の西寄りを示すまたふたご宮(てんびん宮)は西の中央てんびん宮(みずがめ宮)はその左の南寄りみずがめ宮(ふたご宮)はその右の北寄りかに宮は北の中央さそり宮はその左の西寄りそしてうお宮はその右の東寄りを示すこの図のとおりである

西東

おとめ宮

いて宮

おひつじ宮

しし宮うお宮 か に 宮

さそり宮

みずがめ宮

ふたご宮

てんびん宮

やぎ宮

おうし 宮左

360(358) 宮が示す風とは何か

 すべての風はある宮の方角から吹くなぜなら風は宮と関係があるからである東風(aṣ-ṣabā)はおひつじ宮に西風(ad-dabūr)はふたご宮に南風(al-ǧanūb)はおうし宮にそして北風(aš-šamāl)はかに宮に属するこれと同じようにすべての横風(nakbārsquo)はその風向きに近い宮に関係がある例えば風が東と南の間で吹く時風が東寄りであればそれはいて宮と関係がありまた南寄りであればそれはおとめ宮(おうし宮)と関係がある

361(359) 宮が示す身体部位とは何か

 頭と顔はおひつじ宮に首と喉ぼとけ(ḫarazat al-ḥulqūm)はおうし宮に両肩と両手はふたご宮に胸両脇両乳肺胃はかに宮に心臓はしし宮に腹内臓はおとめ宮に腰尻はてんびん宮に男性器と女性器はさそり宮に両太腿はいて宮に両膝はやぎ宮に両脛はみずがめ宮にそして両足はうお宮に属している また時として書物によってはこのことについて混乱がありおひつじ宮に頭顔内臓があるなどとされているヴァラーハミヒラ(Barāhamihir Varāhamihira)が述べたように天球が人体で人の頭がおひつじ宮だと考える類推が一般的であるかつて人の両足がおひつじ宮に結びつけられていたがインド人は頭がおひつじ宮にそして顔がおうし宮に属すると考えるようになった16) また宮には人体の病気色宝石姿居場所国動物の種類水火に関する指示があるわれわれがそれらを表にしたのはその方が見つけやすいからであるそれは神が望まれたこと

15)( )内はアブーマアシャル『占星術大序説』VI25に見られる正しい記述黄道上で 180 度反対側にある宮が方角でも反対側になる

16)ヴァラーハミヒラの『ブリハッジャータカ』第 1章には人体と宮の関係が述べられているそれによればおひつじ宮が頭おうし宮が顔ふたご宮が胸かに宮が心臓しし宮が腹おとめ宮が腰てんびん宮が下腹さそり宮が生殖器いて宮が太腿やぎ宮が膝みずがめ宮が臀部そしてうお宮が足にそれぞれ対応している

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

362(360) 宮が示す性格(al-aḫlāq)と行動(as-siyar)17)

宮名 性格と行動おひつじ宮 よく笑うおしゃべり威厳がある高慢旅好き怒りっぽい好色勇敢おうし宮 深遠愚鈍嘘つき狡猾好色無知

ふたご宮 高貴清潔人を楽しませる英知と天に関する諸学を愛する寛大勇気があるクルアーンを暗唱する

かに宮 愚鈍無口移り気

しし宮 威厳がある臆病怒りっぽい厳しい頑固粗野狡猾心配症よこしま忘れっぽいうぬぼれが強い勇敢

おとめ宮 寛大気質がよい正直疑い深い抜け目がない賢い思慮深い向こう見ず活発ひょうきん踊る弦楽器を奏でるクルアーンを暗唱する

てんびん宮 思慮深い疑い深い勇敢愚鈍臆病公正正直性格が目立たない詩を書く富を持ち気前がいいクルアーンを暗唱する

さそり宮 気質が悪い心配事と策略がある寛大大胆厚顔陰気怒りっぽい残忍クルアーンを暗唱する無知怠惰うぬぼれが強い勇敢

いて宮威厳がある無口浪費家狡猾狂信者水上旅行者技師測量士天国や来世について思いめぐらす動物好き飲食の場所や衣類が清潔よこしま忘れっぽい自尊心が強い

やぎ宮高慢嘘つき怒りっぽい鋭敏変わり身が早い邪悪について思いめぐらす心配事と苦労が多い粘り強い英知を好む英知で有名偽善者楽しみを持つ暮らし向きがよい人を欺くよこしま忘れっぽい好色勇敢

みずがめ宮気質がよい慎み深い忍耐と男らしさについて貪欲食べ物について清潔食べ物について寛大財産を貯えることに熱心財産に対して強欲安楽の時には立ち向かう苦難の時には臆病穏やか死について頻繁に考える怠惰

うお宮 気質がよい寛大清潔貪欲考えが定まらない誠実さにおいて中庸策略と詐欺を講ずるよこしま忘れっぽい無知勇敢

363(361) 宮が示す外的特徴(ḥilya)と容貌(ṣuwar)18)

宮名 外的特徴と容貌

おひつじ宮 中背でやせぎみ上目がち目が黒または青耳が曲がっていて大きい口が醜い髪が巻き毛で赤みを帯びている

おうし宮 十分に背が高い額が大きい眉が小さい目が黒く白目が少ない伏し目鼻が広い鼻先が膨らんでいる口が広い唇と首が大きい髪が直毛で黒い腹が大きい

ふたご宮 中背体格と見た目がよく首と髭がきれい美しい瞳が鋭い肩幅が広い脚が腕より長い

かに宮 中背肩甲骨が厚く長め髪が薄い鼻が曲がっている歯が不揃い伏し目下半身の方が大きい脚が腕より長い

しし宮十分に背が高い胸と額が広い指が太い太腿が細い上半身が大きく美しい<目が>青か赤黒い鼻が膨らんでいる口が広い歯に隙間がある髪が赤みを帯びている腹が大きい

おとめ宮 中肉<背が>高め髪が直毛顔がきれい胸と腹にあざがある首にほくろがある

てんびん宮 手足が中庸顔と体がきれい肌が白い顔色が悪い18)目が黒い鼻がきれい首と腰にほくろがある足がきれい

さそり宮頭蓋骨が隆起している目がかわいく小さい目が黄色顔が丸い額が狭い髪が刺のよう<髪が>頭頂部に多い<髪が>赤みを帯びている手足が長い腿が細い足が大きい肩幅と胸が広い鼻が平べったい背中にほくろがある腹が大きい

17)362‒375 節の順番は写本によってさまざまでありここでは主に CPMに基づく順番に従うまた以下表形式になっている節においては節番号に続く表題は原文にはなく訳者が便宜的に挿入したものである

18)アラビア語で「顔色が悪い」という場合その色は「蒼白」ではなく「黄色」である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

いて宮体がきゃしゃ体がきれい十分に背が高い顔が美しい後ろからよりも前からの方がきれい目がきれい髭が直毛髪が少ない鼻先が大きい鼻の色が赤みを帯びている腹と脚が大きい腿が長い上腕と足にほくろがある

やぎ宮体が真っすぐでやせている姿がきれい顔つきが山羊に似ている<目が>青い耳が曲がっている頭髪が多い髭が直毛髭が長い瞳が大きく黒い胸毛が少ない腿と脚が細い足どりが軽やかかわいい

みずがめ宮中背背が高からず低からずでやや高め額が小さい目が黒い黒目が白目より大きい唇が厚い上目がち体が太い両脚が不揃いで一方が他方より長い胸が広い顔が美しい

うお宮 体がきれい関節と皮膚が弱い背が中庸で美しい胸が広い肩幅が狭い腹がよじれている頭が小さい額が狭い伏し目瞳の黒が大きいかわいい

364(370) 宮が示す病気と病気の状態(ʻilal wa-amrāḍ)宮名 病気と病気の状態

おひつじ宮宮の前半は強く活力が増大し後半は弱く活力が減少し病気が多い特に頭がカボチャのようになる禿顔が赤い爪のしみハンセン病疥癬耳と足の慢性病<宮の>初めは腋臭終わりは腿の悪臭中間はよい匂いを示す

おうし宮前半は強く活力が増大し後半は痩せて活力が減少する病気の頻度は普通瘰癧(リンパ節結核)やアンギーナ(口腔と咽頭の境界付近の炎症)のように病気の多くが首に生じるそばかす鼻孔の悪臭両足の匂い背中と胸の痣を示す

ふたご宮 手足が丈夫匂いがよい病気の頻度は普通病気の多くは風邪と痛風小さなそばかすがある

かに宮 体が弱くよく病気になる病気の多くは痛風風邪癌禿薄毛難聴発疹性の皮膚病フケハンセン病爪のしみ痔疾左足と指の倦怠

しし宮 <前半は>体が強く活力が増大し後半は体が弱く活力が減少し病気が多い特に腹のあたりで胃弱目の痛み禿前半は口臭を示す

おとめ宮 体が強く細さとやせぐあいは普通手足が丈夫病気の頻度は普通禿を示すてんびん宮 細さは普通体が強く手足は丈夫

さそり宮前半は健康で筋骨たくましく後半は病弱手足は丈夫病気が多い病気の多くは聾唖夜盲症禿薄髭癌フケ発疹性の皮膚病かゆみ壊疽ハンセン病陰嚢水腫結石排尿困難男性器の悪臭

いて宮前半は健康で強く後半は弱く病気がち細さは普通手足は丈夫病気の頻度は普通病気の多くは痛風風邪盲目片目喪失禿疫病転倒獣からの伝染病手足の切断と突起ほくろとあざが多い

やぎ宮体が弱く病気が多い手足は丈夫病気の多くは聾唖目の乾燥淋病かゆみ瘰癧壊疽癌脱毛症風邪痛風髪がまっすぐで柔らかい腫物他の宮より強度の禿を示す

みずがめ宮前半は健康で筋骨たくましく後半は弱く病気がち手足は丈夫その病気は黄疸蒼白風邪痛風黒胆汁片目喪失目の痛み静脈の痛みめまい骨折疫病転倒鼻孔の悪臭

うお宮 体がきゃしゃで細く虚弱病気が特に神経に多い痛風麻痺胆汁過多疥癬発疹性の皮膚病フケ禿ハンセン病風邪薄髭

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

493

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

494

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

495

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

498

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

509

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

511

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

512

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

513

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

514

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

520

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

521

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

523

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

524

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

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によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

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520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

539

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

Page 4: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

で十分詳しく示されるだろう表は語ることよりも雄弁だからである インド人について言えば彼らは区分を増やし人間宮がふたご宮おとめ宮てんびん宮いて宮の前半分そしてみずがめ宮の後半分であり四足を持つ宮がおひつじ宮しし宮いて宮の後半分そしてやぎ宮の前半分であると言っている彼らによる水と空気の宮についてはすでに述べた(349 節)

355(353) 声を持つ宮(muṣawwita)と持たない宮(ġayr muṣawwita)とは何か

 ふたご宮おとめ宮てんびん宮は声が大きく中でもふたご宮は舌先が滑らか(manṭiqī)であるおひつじ宮おうし宮しし宮11)は半分の声をもちやぎ宮とみずがめ宮は声が弱いまたかに宮さそり宮うお宮には声がないこのことはこれらの宮における声や話し方に関する指示のよしあしを知るために必要なことである

356(354) 多産宮(walūd)不妊宮(ʻaqīm)その他の宮とは何か

 水の宮すなわちかに宮さそり宮うお宮そしてやぎ宮の後半分は多産でありおひつじ宮おうし宮<の後半分>てんびん宮いて宮みずがめ宮は子供が少なくまたおうし宮の前半分しし宮おとめ宮やぎ宮の前半分は不妊である双子を産む宮(al-mutirsquoma)について言えばそれはふたご宮おとめ宮いて宮うお宮であり時にはおひつじ宮てんびん宮やぎ宮の後半分も双子の出産(al-itrsquoām)12)を示すまたやぎ宮の前半分とさそり宮の前半分は両性具有者を示すしかし一方でおひつじ宮とてんびん宮のそれぞれは 2つの色と性質を持つと言われおとめ宮が 3つの姿を持つと言われるようにやぎ宮といて宮もそのように言われる ふたご宮は多くの姿と顔を持つなぜなら双子の出産(多胎分娩)は時には 2人を越えて3人あるいはそれ以上になるからである

357(355) 性行為に関する宮の状態とは何か

 おひつじ宮おうし宮しし宮やぎ宮うお宮は好色であり性行為に対して貪欲であるてんびん宮といて宮にはややその気がある女性について言えばおうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は女性の美徳と貞節を示すおひつじ宮かに宮てんびん宮13)は女性の不貞をまたふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は中庸を示す<その中でも>おとめ宮は最も貞淑である

358(356) 陰鬱で心配性の宮とは何か

 それはしし宮さそり宮やぎ宮でありてんびん宮とおとめ宮のそれぞれにはやや陰鬱さがある14)

359(357) 宮が示す世界の方角とは何か

 おひつじ宮は東の中央しし宮はその左の北寄りいて宮はその右の南寄りおうし宮(やぎ

11)アブーマアシャル『占星術大序説』VI18によればいて宮もここに属する12)ここで itrsquoāmを「双子の出産」と訳したのはその語根が「双子として生まれる」という意味を持つからである

が実際には「多胎分娩」を意味している13)アブーマアシャル『占星術大序説』VI15によればやぎ宮もここに属する14)アブーマアシャル『占星術大序説』VI21 [3]

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

宮)15)は南の中央おとめ宮(おうし宮)はその左の東寄りそしてやぎ宮(おとめ宮)はその右の西寄りを示すまたふたご宮(てんびん宮)は西の中央てんびん宮(みずがめ宮)はその左の南寄りみずがめ宮(ふたご宮)はその右の北寄りかに宮は北の中央さそり宮はその左の西寄りそしてうお宮はその右の東寄りを示すこの図のとおりである

西東

おとめ宮

いて宮

おひつじ宮

しし宮うお宮 か に 宮

さそり宮

みずがめ宮

ふたご宮

てんびん宮

やぎ宮

おうし 宮左

360(358) 宮が示す風とは何か

 すべての風はある宮の方角から吹くなぜなら風は宮と関係があるからである東風(aṣ-ṣabā)はおひつじ宮に西風(ad-dabūr)はふたご宮に南風(al-ǧanūb)はおうし宮にそして北風(aš-šamāl)はかに宮に属するこれと同じようにすべての横風(nakbārsquo)はその風向きに近い宮に関係がある例えば風が東と南の間で吹く時風が東寄りであればそれはいて宮と関係がありまた南寄りであればそれはおとめ宮(おうし宮)と関係がある

361(359) 宮が示す身体部位とは何か

 頭と顔はおひつじ宮に首と喉ぼとけ(ḫarazat al-ḥulqūm)はおうし宮に両肩と両手はふたご宮に胸両脇両乳肺胃はかに宮に心臓はしし宮に腹内臓はおとめ宮に腰尻はてんびん宮に男性器と女性器はさそり宮に両太腿はいて宮に両膝はやぎ宮に両脛はみずがめ宮にそして両足はうお宮に属している また時として書物によってはこのことについて混乱がありおひつじ宮に頭顔内臓があるなどとされているヴァラーハミヒラ(Barāhamihir Varāhamihira)が述べたように天球が人体で人の頭がおひつじ宮だと考える類推が一般的であるかつて人の両足がおひつじ宮に結びつけられていたがインド人は頭がおひつじ宮にそして顔がおうし宮に属すると考えるようになった16) また宮には人体の病気色宝石姿居場所国動物の種類水火に関する指示があるわれわれがそれらを表にしたのはその方が見つけやすいからであるそれは神が望まれたこと

15)( )内はアブーマアシャル『占星術大序説』VI25に見られる正しい記述黄道上で 180 度反対側にある宮が方角でも反対側になる

16)ヴァラーハミヒラの『ブリハッジャータカ』第 1章には人体と宮の関係が述べられているそれによればおひつじ宮が頭おうし宮が顔ふたご宮が胸かに宮が心臓しし宮が腹おとめ宮が腰てんびん宮が下腹さそり宮が生殖器いて宮が太腿やぎ宮が膝みずがめ宮が臀部そしてうお宮が足にそれぞれ対応している

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

362(360) 宮が示す性格(al-aḫlāq)と行動(as-siyar)17)

宮名 性格と行動おひつじ宮 よく笑うおしゃべり威厳がある高慢旅好き怒りっぽい好色勇敢おうし宮 深遠愚鈍嘘つき狡猾好色無知

ふたご宮 高貴清潔人を楽しませる英知と天に関する諸学を愛する寛大勇気があるクルアーンを暗唱する

かに宮 愚鈍無口移り気

しし宮 威厳がある臆病怒りっぽい厳しい頑固粗野狡猾心配症よこしま忘れっぽいうぬぼれが強い勇敢

おとめ宮 寛大気質がよい正直疑い深い抜け目がない賢い思慮深い向こう見ず活発ひょうきん踊る弦楽器を奏でるクルアーンを暗唱する

てんびん宮 思慮深い疑い深い勇敢愚鈍臆病公正正直性格が目立たない詩を書く富を持ち気前がいいクルアーンを暗唱する

さそり宮 気質が悪い心配事と策略がある寛大大胆厚顔陰気怒りっぽい残忍クルアーンを暗唱する無知怠惰うぬぼれが強い勇敢

いて宮威厳がある無口浪費家狡猾狂信者水上旅行者技師測量士天国や来世について思いめぐらす動物好き飲食の場所や衣類が清潔よこしま忘れっぽい自尊心が強い

やぎ宮高慢嘘つき怒りっぽい鋭敏変わり身が早い邪悪について思いめぐらす心配事と苦労が多い粘り強い英知を好む英知で有名偽善者楽しみを持つ暮らし向きがよい人を欺くよこしま忘れっぽい好色勇敢

みずがめ宮気質がよい慎み深い忍耐と男らしさについて貪欲食べ物について清潔食べ物について寛大財産を貯えることに熱心財産に対して強欲安楽の時には立ち向かう苦難の時には臆病穏やか死について頻繁に考える怠惰

うお宮 気質がよい寛大清潔貪欲考えが定まらない誠実さにおいて中庸策略と詐欺を講ずるよこしま忘れっぽい無知勇敢

363(361) 宮が示す外的特徴(ḥilya)と容貌(ṣuwar)18)

宮名 外的特徴と容貌

おひつじ宮 中背でやせぎみ上目がち目が黒または青耳が曲がっていて大きい口が醜い髪が巻き毛で赤みを帯びている

おうし宮 十分に背が高い額が大きい眉が小さい目が黒く白目が少ない伏し目鼻が広い鼻先が膨らんでいる口が広い唇と首が大きい髪が直毛で黒い腹が大きい

ふたご宮 中背体格と見た目がよく首と髭がきれい美しい瞳が鋭い肩幅が広い脚が腕より長い

かに宮 中背肩甲骨が厚く長め髪が薄い鼻が曲がっている歯が不揃い伏し目下半身の方が大きい脚が腕より長い

しし宮十分に背が高い胸と額が広い指が太い太腿が細い上半身が大きく美しい<目が>青か赤黒い鼻が膨らんでいる口が広い歯に隙間がある髪が赤みを帯びている腹が大きい

おとめ宮 中肉<背が>高め髪が直毛顔がきれい胸と腹にあざがある首にほくろがある

てんびん宮 手足が中庸顔と体がきれい肌が白い顔色が悪い18)目が黒い鼻がきれい首と腰にほくろがある足がきれい

さそり宮頭蓋骨が隆起している目がかわいく小さい目が黄色顔が丸い額が狭い髪が刺のよう<髪が>頭頂部に多い<髪が>赤みを帯びている手足が長い腿が細い足が大きい肩幅と胸が広い鼻が平べったい背中にほくろがある腹が大きい

17)362‒375 節の順番は写本によってさまざまでありここでは主に CPMに基づく順番に従うまた以下表形式になっている節においては節番号に続く表題は原文にはなく訳者が便宜的に挿入したものである

18)アラビア語で「顔色が悪い」という場合その色は「蒼白」ではなく「黄色」である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

いて宮体がきゃしゃ体がきれい十分に背が高い顔が美しい後ろからよりも前からの方がきれい目がきれい髭が直毛髪が少ない鼻先が大きい鼻の色が赤みを帯びている腹と脚が大きい腿が長い上腕と足にほくろがある

やぎ宮体が真っすぐでやせている姿がきれい顔つきが山羊に似ている<目が>青い耳が曲がっている頭髪が多い髭が直毛髭が長い瞳が大きく黒い胸毛が少ない腿と脚が細い足どりが軽やかかわいい

みずがめ宮中背背が高からず低からずでやや高め額が小さい目が黒い黒目が白目より大きい唇が厚い上目がち体が太い両脚が不揃いで一方が他方より長い胸が広い顔が美しい

うお宮 体がきれい関節と皮膚が弱い背が中庸で美しい胸が広い肩幅が狭い腹がよじれている頭が小さい額が狭い伏し目瞳の黒が大きいかわいい

364(370) 宮が示す病気と病気の状態(ʻilal wa-amrāḍ)宮名 病気と病気の状態

おひつじ宮宮の前半は強く活力が増大し後半は弱く活力が減少し病気が多い特に頭がカボチャのようになる禿顔が赤い爪のしみハンセン病疥癬耳と足の慢性病<宮の>初めは腋臭終わりは腿の悪臭中間はよい匂いを示す

おうし宮前半は強く活力が増大し後半は痩せて活力が減少する病気の頻度は普通瘰癧(リンパ節結核)やアンギーナ(口腔と咽頭の境界付近の炎症)のように病気の多くが首に生じるそばかす鼻孔の悪臭両足の匂い背中と胸の痣を示す

ふたご宮 手足が丈夫匂いがよい病気の頻度は普通病気の多くは風邪と痛風小さなそばかすがある

かに宮 体が弱くよく病気になる病気の多くは痛風風邪癌禿薄毛難聴発疹性の皮膚病フケハンセン病爪のしみ痔疾左足と指の倦怠

しし宮 <前半は>体が強く活力が増大し後半は体が弱く活力が減少し病気が多い特に腹のあたりで胃弱目の痛み禿前半は口臭を示す

おとめ宮 体が強く細さとやせぐあいは普通手足が丈夫病気の頻度は普通禿を示すてんびん宮 細さは普通体が強く手足は丈夫

さそり宮前半は健康で筋骨たくましく後半は病弱手足は丈夫病気が多い病気の多くは聾唖夜盲症禿薄髭癌フケ発疹性の皮膚病かゆみ壊疽ハンセン病陰嚢水腫結石排尿困難男性器の悪臭

いて宮前半は健康で強く後半は弱く病気がち細さは普通手足は丈夫病気の頻度は普通病気の多くは痛風風邪盲目片目喪失禿疫病転倒獣からの伝染病手足の切断と突起ほくろとあざが多い

やぎ宮体が弱く病気が多い手足は丈夫病気の多くは聾唖目の乾燥淋病かゆみ瘰癧壊疽癌脱毛症風邪痛風髪がまっすぐで柔らかい腫物他の宮より強度の禿を示す

みずがめ宮前半は健康で筋骨たくましく後半は弱く病気がち手足は丈夫その病気は黄疸蒼白風邪痛風黒胆汁片目喪失目の痛み静脈の痛みめまい骨折疫病転倒鼻孔の悪臭

うお宮 体がきゃしゃで細く虚弱病気が特に神経に多い痛風麻痺胆汁過多疥癬発疹性の皮膚病フケ禿ハンセン病風邪薄髭

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

491

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

492

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

493

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

498

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

530

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

531

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

Page 5: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

宮)15)は南の中央おとめ宮(おうし宮)はその左の東寄りそしてやぎ宮(おとめ宮)はその右の西寄りを示すまたふたご宮(てんびん宮)は西の中央てんびん宮(みずがめ宮)はその左の南寄りみずがめ宮(ふたご宮)はその右の北寄りかに宮は北の中央さそり宮はその左の西寄りそしてうお宮はその右の東寄りを示すこの図のとおりである

西東

おとめ宮

いて宮

おひつじ宮

しし宮うお宮 か に 宮

さそり宮

みずがめ宮

ふたご宮

てんびん宮

やぎ宮

おうし 宮左

360(358) 宮が示す風とは何か

 すべての風はある宮の方角から吹くなぜなら風は宮と関係があるからである東風(aṣ-ṣabā)はおひつじ宮に西風(ad-dabūr)はふたご宮に南風(al-ǧanūb)はおうし宮にそして北風(aš-šamāl)はかに宮に属するこれと同じようにすべての横風(nakbārsquo)はその風向きに近い宮に関係がある例えば風が東と南の間で吹く時風が東寄りであればそれはいて宮と関係がありまた南寄りであればそれはおとめ宮(おうし宮)と関係がある

361(359) 宮が示す身体部位とは何か

 頭と顔はおひつじ宮に首と喉ぼとけ(ḫarazat al-ḥulqūm)はおうし宮に両肩と両手はふたご宮に胸両脇両乳肺胃はかに宮に心臓はしし宮に腹内臓はおとめ宮に腰尻はてんびん宮に男性器と女性器はさそり宮に両太腿はいて宮に両膝はやぎ宮に両脛はみずがめ宮にそして両足はうお宮に属している また時として書物によってはこのことについて混乱がありおひつじ宮に頭顔内臓があるなどとされているヴァラーハミヒラ(Barāhamihir Varāhamihira)が述べたように天球が人体で人の頭がおひつじ宮だと考える類推が一般的であるかつて人の両足がおひつじ宮に結びつけられていたがインド人は頭がおひつじ宮にそして顔がおうし宮に属すると考えるようになった16) また宮には人体の病気色宝石姿居場所国動物の種類水火に関する指示があるわれわれがそれらを表にしたのはその方が見つけやすいからであるそれは神が望まれたこと

15)( )内はアブーマアシャル『占星術大序説』VI25に見られる正しい記述黄道上で 180 度反対側にある宮が方角でも反対側になる

16)ヴァラーハミヒラの『ブリハッジャータカ』第 1章には人体と宮の関係が述べられているそれによればおひつじ宮が頭おうし宮が顔ふたご宮が胸かに宮が心臓しし宮が腹おとめ宮が腰てんびん宮が下腹さそり宮が生殖器いて宮が太腿やぎ宮が膝みずがめ宮が臀部そしてうお宮が足にそれぞれ対応している

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

362(360) 宮が示す性格(al-aḫlāq)と行動(as-siyar)17)

宮名 性格と行動おひつじ宮 よく笑うおしゃべり威厳がある高慢旅好き怒りっぽい好色勇敢おうし宮 深遠愚鈍嘘つき狡猾好色無知

ふたご宮 高貴清潔人を楽しませる英知と天に関する諸学を愛する寛大勇気があるクルアーンを暗唱する

かに宮 愚鈍無口移り気

しし宮 威厳がある臆病怒りっぽい厳しい頑固粗野狡猾心配症よこしま忘れっぽいうぬぼれが強い勇敢

おとめ宮 寛大気質がよい正直疑い深い抜け目がない賢い思慮深い向こう見ず活発ひょうきん踊る弦楽器を奏でるクルアーンを暗唱する

てんびん宮 思慮深い疑い深い勇敢愚鈍臆病公正正直性格が目立たない詩を書く富を持ち気前がいいクルアーンを暗唱する

さそり宮 気質が悪い心配事と策略がある寛大大胆厚顔陰気怒りっぽい残忍クルアーンを暗唱する無知怠惰うぬぼれが強い勇敢

いて宮威厳がある無口浪費家狡猾狂信者水上旅行者技師測量士天国や来世について思いめぐらす動物好き飲食の場所や衣類が清潔よこしま忘れっぽい自尊心が強い

やぎ宮高慢嘘つき怒りっぽい鋭敏変わり身が早い邪悪について思いめぐらす心配事と苦労が多い粘り強い英知を好む英知で有名偽善者楽しみを持つ暮らし向きがよい人を欺くよこしま忘れっぽい好色勇敢

みずがめ宮気質がよい慎み深い忍耐と男らしさについて貪欲食べ物について清潔食べ物について寛大財産を貯えることに熱心財産に対して強欲安楽の時には立ち向かう苦難の時には臆病穏やか死について頻繁に考える怠惰

うお宮 気質がよい寛大清潔貪欲考えが定まらない誠実さにおいて中庸策略と詐欺を講ずるよこしま忘れっぽい無知勇敢

363(361) 宮が示す外的特徴(ḥilya)と容貌(ṣuwar)18)

宮名 外的特徴と容貌

おひつじ宮 中背でやせぎみ上目がち目が黒または青耳が曲がっていて大きい口が醜い髪が巻き毛で赤みを帯びている

おうし宮 十分に背が高い額が大きい眉が小さい目が黒く白目が少ない伏し目鼻が広い鼻先が膨らんでいる口が広い唇と首が大きい髪が直毛で黒い腹が大きい

ふたご宮 中背体格と見た目がよく首と髭がきれい美しい瞳が鋭い肩幅が広い脚が腕より長い

かに宮 中背肩甲骨が厚く長め髪が薄い鼻が曲がっている歯が不揃い伏し目下半身の方が大きい脚が腕より長い

しし宮十分に背が高い胸と額が広い指が太い太腿が細い上半身が大きく美しい<目が>青か赤黒い鼻が膨らんでいる口が広い歯に隙間がある髪が赤みを帯びている腹が大きい

おとめ宮 中肉<背が>高め髪が直毛顔がきれい胸と腹にあざがある首にほくろがある

てんびん宮 手足が中庸顔と体がきれい肌が白い顔色が悪い18)目が黒い鼻がきれい首と腰にほくろがある足がきれい

さそり宮頭蓋骨が隆起している目がかわいく小さい目が黄色顔が丸い額が狭い髪が刺のよう<髪が>頭頂部に多い<髪が>赤みを帯びている手足が長い腿が細い足が大きい肩幅と胸が広い鼻が平べったい背中にほくろがある腹が大きい

17)362‒375 節の順番は写本によってさまざまでありここでは主に CPMに基づく順番に従うまた以下表形式になっている節においては節番号に続く表題は原文にはなく訳者が便宜的に挿入したものである

18)アラビア語で「顔色が悪い」という場合その色は「蒼白」ではなく「黄色」である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

いて宮体がきゃしゃ体がきれい十分に背が高い顔が美しい後ろからよりも前からの方がきれい目がきれい髭が直毛髪が少ない鼻先が大きい鼻の色が赤みを帯びている腹と脚が大きい腿が長い上腕と足にほくろがある

やぎ宮体が真っすぐでやせている姿がきれい顔つきが山羊に似ている<目が>青い耳が曲がっている頭髪が多い髭が直毛髭が長い瞳が大きく黒い胸毛が少ない腿と脚が細い足どりが軽やかかわいい

みずがめ宮中背背が高からず低からずでやや高め額が小さい目が黒い黒目が白目より大きい唇が厚い上目がち体が太い両脚が不揃いで一方が他方より長い胸が広い顔が美しい

うお宮 体がきれい関節と皮膚が弱い背が中庸で美しい胸が広い肩幅が狭い腹がよじれている頭が小さい額が狭い伏し目瞳の黒が大きいかわいい

364(370) 宮が示す病気と病気の状態(ʻilal wa-amrāḍ)宮名 病気と病気の状態

おひつじ宮宮の前半は強く活力が増大し後半は弱く活力が減少し病気が多い特に頭がカボチャのようになる禿顔が赤い爪のしみハンセン病疥癬耳と足の慢性病<宮の>初めは腋臭終わりは腿の悪臭中間はよい匂いを示す

おうし宮前半は強く活力が増大し後半は痩せて活力が減少する病気の頻度は普通瘰癧(リンパ節結核)やアンギーナ(口腔と咽頭の境界付近の炎症)のように病気の多くが首に生じるそばかす鼻孔の悪臭両足の匂い背中と胸の痣を示す

ふたご宮 手足が丈夫匂いがよい病気の頻度は普通病気の多くは風邪と痛風小さなそばかすがある

かに宮 体が弱くよく病気になる病気の多くは痛風風邪癌禿薄毛難聴発疹性の皮膚病フケハンセン病爪のしみ痔疾左足と指の倦怠

しし宮 <前半は>体が強く活力が増大し後半は体が弱く活力が減少し病気が多い特に腹のあたりで胃弱目の痛み禿前半は口臭を示す

おとめ宮 体が強く細さとやせぐあいは普通手足が丈夫病気の頻度は普通禿を示すてんびん宮 細さは普通体が強く手足は丈夫

さそり宮前半は健康で筋骨たくましく後半は病弱手足は丈夫病気が多い病気の多くは聾唖夜盲症禿薄髭癌フケ発疹性の皮膚病かゆみ壊疽ハンセン病陰嚢水腫結石排尿困難男性器の悪臭

いて宮前半は健康で強く後半は弱く病気がち細さは普通手足は丈夫病気の頻度は普通病気の多くは痛風風邪盲目片目喪失禿疫病転倒獣からの伝染病手足の切断と突起ほくろとあざが多い

やぎ宮体が弱く病気が多い手足は丈夫病気の多くは聾唖目の乾燥淋病かゆみ瘰癧壊疽癌脱毛症風邪痛風髪がまっすぐで柔らかい腫物他の宮より強度の禿を示す

みずがめ宮前半は健康で筋骨たくましく後半は弱く病気がち手足は丈夫その病気は黄疸蒼白風邪痛風黒胆汁片目喪失目の痛み静脈の痛みめまい骨折疫病転倒鼻孔の悪臭

うお宮 体がきゃしゃで細く虚弱病気が特に神経に多い痛風麻痺胆汁過多疥癬発疹性の皮膚病フケ禿ハンセン病風邪薄髭

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

488

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

489

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

493

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

495

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

498

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

509

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

512

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

513

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

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520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

Page 6: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

362(360) 宮が示す性格(al-aḫlāq)と行動(as-siyar)17)

宮名 性格と行動おひつじ宮 よく笑うおしゃべり威厳がある高慢旅好き怒りっぽい好色勇敢おうし宮 深遠愚鈍嘘つき狡猾好色無知

ふたご宮 高貴清潔人を楽しませる英知と天に関する諸学を愛する寛大勇気があるクルアーンを暗唱する

かに宮 愚鈍無口移り気

しし宮 威厳がある臆病怒りっぽい厳しい頑固粗野狡猾心配症よこしま忘れっぽいうぬぼれが強い勇敢

おとめ宮 寛大気質がよい正直疑い深い抜け目がない賢い思慮深い向こう見ず活発ひょうきん踊る弦楽器を奏でるクルアーンを暗唱する

てんびん宮 思慮深い疑い深い勇敢愚鈍臆病公正正直性格が目立たない詩を書く富を持ち気前がいいクルアーンを暗唱する

さそり宮 気質が悪い心配事と策略がある寛大大胆厚顔陰気怒りっぽい残忍クルアーンを暗唱する無知怠惰うぬぼれが強い勇敢

いて宮威厳がある無口浪費家狡猾狂信者水上旅行者技師測量士天国や来世について思いめぐらす動物好き飲食の場所や衣類が清潔よこしま忘れっぽい自尊心が強い

やぎ宮高慢嘘つき怒りっぽい鋭敏変わり身が早い邪悪について思いめぐらす心配事と苦労が多い粘り強い英知を好む英知で有名偽善者楽しみを持つ暮らし向きがよい人を欺くよこしま忘れっぽい好色勇敢

みずがめ宮気質がよい慎み深い忍耐と男らしさについて貪欲食べ物について清潔食べ物について寛大財産を貯えることに熱心財産に対して強欲安楽の時には立ち向かう苦難の時には臆病穏やか死について頻繁に考える怠惰

うお宮 気質がよい寛大清潔貪欲考えが定まらない誠実さにおいて中庸策略と詐欺を講ずるよこしま忘れっぽい無知勇敢

363(361) 宮が示す外的特徴(ḥilya)と容貌(ṣuwar)18)

宮名 外的特徴と容貌

おひつじ宮 中背でやせぎみ上目がち目が黒または青耳が曲がっていて大きい口が醜い髪が巻き毛で赤みを帯びている

おうし宮 十分に背が高い額が大きい眉が小さい目が黒く白目が少ない伏し目鼻が広い鼻先が膨らんでいる口が広い唇と首が大きい髪が直毛で黒い腹が大きい

ふたご宮 中背体格と見た目がよく首と髭がきれい美しい瞳が鋭い肩幅が広い脚が腕より長い

かに宮 中背肩甲骨が厚く長め髪が薄い鼻が曲がっている歯が不揃い伏し目下半身の方が大きい脚が腕より長い

しし宮十分に背が高い胸と額が広い指が太い太腿が細い上半身が大きく美しい<目が>青か赤黒い鼻が膨らんでいる口が広い歯に隙間がある髪が赤みを帯びている腹が大きい

おとめ宮 中肉<背が>高め髪が直毛顔がきれい胸と腹にあざがある首にほくろがある

てんびん宮 手足が中庸顔と体がきれい肌が白い顔色が悪い18)目が黒い鼻がきれい首と腰にほくろがある足がきれい

さそり宮頭蓋骨が隆起している目がかわいく小さい目が黄色顔が丸い額が狭い髪が刺のよう<髪が>頭頂部に多い<髪が>赤みを帯びている手足が長い腿が細い足が大きい肩幅と胸が広い鼻が平べったい背中にほくろがある腹が大きい

17)362‒375 節の順番は写本によってさまざまでありここでは主に CPMに基づく順番に従うまた以下表形式になっている節においては節番号に続く表題は原文にはなく訳者が便宜的に挿入したものである

18)アラビア語で「顔色が悪い」という場合その色は「蒼白」ではなく「黄色」である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

いて宮体がきゃしゃ体がきれい十分に背が高い顔が美しい後ろからよりも前からの方がきれい目がきれい髭が直毛髪が少ない鼻先が大きい鼻の色が赤みを帯びている腹と脚が大きい腿が長い上腕と足にほくろがある

やぎ宮体が真っすぐでやせている姿がきれい顔つきが山羊に似ている<目が>青い耳が曲がっている頭髪が多い髭が直毛髭が長い瞳が大きく黒い胸毛が少ない腿と脚が細い足どりが軽やかかわいい

みずがめ宮中背背が高からず低からずでやや高め額が小さい目が黒い黒目が白目より大きい唇が厚い上目がち体が太い両脚が不揃いで一方が他方より長い胸が広い顔が美しい

うお宮 体がきれい関節と皮膚が弱い背が中庸で美しい胸が広い肩幅が狭い腹がよじれている頭が小さい額が狭い伏し目瞳の黒が大きいかわいい

364(370) 宮が示す病気と病気の状態(ʻilal wa-amrāḍ)宮名 病気と病気の状態

おひつじ宮宮の前半は強く活力が増大し後半は弱く活力が減少し病気が多い特に頭がカボチャのようになる禿顔が赤い爪のしみハンセン病疥癬耳と足の慢性病<宮の>初めは腋臭終わりは腿の悪臭中間はよい匂いを示す

おうし宮前半は強く活力が増大し後半は痩せて活力が減少する病気の頻度は普通瘰癧(リンパ節結核)やアンギーナ(口腔と咽頭の境界付近の炎症)のように病気の多くが首に生じるそばかす鼻孔の悪臭両足の匂い背中と胸の痣を示す

ふたご宮 手足が丈夫匂いがよい病気の頻度は普通病気の多くは風邪と痛風小さなそばかすがある

かに宮 体が弱くよく病気になる病気の多くは痛風風邪癌禿薄毛難聴発疹性の皮膚病フケハンセン病爪のしみ痔疾左足と指の倦怠

しし宮 <前半は>体が強く活力が増大し後半は体が弱く活力が減少し病気が多い特に腹のあたりで胃弱目の痛み禿前半は口臭を示す

おとめ宮 体が強く細さとやせぐあいは普通手足が丈夫病気の頻度は普通禿を示すてんびん宮 細さは普通体が強く手足は丈夫

さそり宮前半は健康で筋骨たくましく後半は病弱手足は丈夫病気が多い病気の多くは聾唖夜盲症禿薄髭癌フケ発疹性の皮膚病かゆみ壊疽ハンセン病陰嚢水腫結石排尿困難男性器の悪臭

いて宮前半は健康で強く後半は弱く病気がち細さは普通手足は丈夫病気の頻度は普通病気の多くは痛風風邪盲目片目喪失禿疫病転倒獣からの伝染病手足の切断と突起ほくろとあざが多い

やぎ宮体が弱く病気が多い手足は丈夫病気の多くは聾唖目の乾燥淋病かゆみ瘰癧壊疽癌脱毛症風邪痛風髪がまっすぐで柔らかい腫物他の宮より強度の禿を示す

みずがめ宮前半は健康で筋骨たくましく後半は弱く病気がち手足は丈夫その病気は黄疸蒼白風邪痛風黒胆汁片目喪失目の痛み静脈の痛みめまい骨折疫病転倒鼻孔の悪臭

うお宮 体がきゃしゃで細く虚弱病気が特に神経に多い痛風麻痺胆汁過多疥癬発疹性の皮膚病フケ禿ハンセン病風邪薄髭

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

485

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

493

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

494

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

498

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

509

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

510

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

511

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

512

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

513

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

514

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

535

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

536

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

537

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

539

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

Page 7: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

いて宮体がきゃしゃ体がきれい十分に背が高い顔が美しい後ろからよりも前からの方がきれい目がきれい髭が直毛髪が少ない鼻先が大きい鼻の色が赤みを帯びている腹と脚が大きい腿が長い上腕と足にほくろがある

やぎ宮体が真っすぐでやせている姿がきれい顔つきが山羊に似ている<目が>青い耳が曲がっている頭髪が多い髭が直毛髭が長い瞳が大きく黒い胸毛が少ない腿と脚が細い足どりが軽やかかわいい

みずがめ宮中背背が高からず低からずでやや高め額が小さい目が黒い黒目が白目より大きい唇が厚い上目がち体が太い両脚が不揃いで一方が他方より長い胸が広い顔が美しい

うお宮 体がきれい関節と皮膚が弱い背が中庸で美しい胸が広い肩幅が狭い腹がよじれている頭が小さい額が狭い伏し目瞳の黒が大きいかわいい

364(370) 宮が示す病気と病気の状態(ʻilal wa-amrāḍ)宮名 病気と病気の状態

おひつじ宮宮の前半は強く活力が増大し後半は弱く活力が減少し病気が多い特に頭がカボチャのようになる禿顔が赤い爪のしみハンセン病疥癬耳と足の慢性病<宮の>初めは腋臭終わりは腿の悪臭中間はよい匂いを示す

おうし宮前半は強く活力が増大し後半は痩せて活力が減少する病気の頻度は普通瘰癧(リンパ節結核)やアンギーナ(口腔と咽頭の境界付近の炎症)のように病気の多くが首に生じるそばかす鼻孔の悪臭両足の匂い背中と胸の痣を示す

ふたご宮 手足が丈夫匂いがよい病気の頻度は普通病気の多くは風邪と痛風小さなそばかすがある

かに宮 体が弱くよく病気になる病気の多くは痛風風邪癌禿薄毛難聴発疹性の皮膚病フケハンセン病爪のしみ痔疾左足と指の倦怠

しし宮 <前半は>体が強く活力が増大し後半は体が弱く活力が減少し病気が多い特に腹のあたりで胃弱目の痛み禿前半は口臭を示す

おとめ宮 体が強く細さとやせぐあいは普通手足が丈夫病気の頻度は普通禿を示すてんびん宮 細さは普通体が強く手足は丈夫

さそり宮前半は健康で筋骨たくましく後半は病弱手足は丈夫病気が多い病気の多くは聾唖夜盲症禿薄髭癌フケ発疹性の皮膚病かゆみ壊疽ハンセン病陰嚢水腫結石排尿困難男性器の悪臭

いて宮前半は健康で強く後半は弱く病気がち細さは普通手足は丈夫病気の頻度は普通病気の多くは痛風風邪盲目片目喪失禿疫病転倒獣からの伝染病手足の切断と突起ほくろとあざが多い

やぎ宮体が弱く病気が多い手足は丈夫病気の多くは聾唖目の乾燥淋病かゆみ瘰癧壊疽癌脱毛症風邪痛風髪がまっすぐで柔らかい腫物他の宮より強度の禿を示す

みずがめ宮前半は健康で筋骨たくましく後半は弱く病気がち手足は丈夫その病気は黄疸蒼白風邪痛風黒胆汁片目喪失目の痛み静脈の痛みめまい骨折疫病転倒鼻孔の悪臭

うお宮 体がきゃしゃで細く虚弱病気が特に神経に多い痛風麻痺胆汁過多疥癬発疹性の皮膚病フケ禿ハンセン病風邪薄髭

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

474

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

475

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

493

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

494

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

498

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

509

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

510

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

511

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

512

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

513

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

514

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

535

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

536

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

539

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

Page 8: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

365(360) 宮が示す身体部位19) 366(362) 色 367(363) インド人の見解 20)

宮名 宮が指示する身体部位 色 インド人見解おひつじ宮 頭顔 赤が混ざった白 赤みがかった白おうし宮 首喉ぼとけ 白暗い茶 白ふたご宮 両手 緑が混ざった黄 ピスタチオの緑かに宮 胸両脇両乳肺胃 真っ黒ではないくすんだ黒 少し黒味がかった赤しし宮 心臓 白が混ざった赤 乾いた植物の色おとめ宮 腹内臓 白味がかった黄 多色てんびん宮 腰尻 赤に近い白 黒さそり宮 男性器女性器 緑白 金の色いて宮 両腿 赤みがかった色 ヤシの繊維の色やぎ宮 両膝 赤に緑が混ざった色 黒と白のまだら

みずがめ宮 両脛 空色と混ざった黄さまざまな色を持つ 黄色がかったブロンド

うお宮 両足 白 土色のくすんだ薄茶色

368(364) 宮が示す人の階級(ṭabaqāt)と職業(aṣḥāb aṣ-ṣināʻāt)21)

宮名 人の階級と職業おひつじ宮 支配者両替商貨幣鋳造者鍛冶屋真鍮鋳造者肉屋羊飼い泥棒の親分おうし宮 仕立屋穀物計量者肉屋法律家農夫ふたご宮 支配者計算者教師狩人踊り手芸人画家仕立屋かに宮 船乗り河川の縦穴<を掘る者>21)

しし宮 腕輪製作者貨幣鋳造者捕食性動物を使う狩人おとめ宮 大臣親方書記管理者中流階級踊り手歌手人の連合てんびん宮 階級のある人名士親友芸人哲学者技士文法家隠遁者さそり宮 医者手品師魔術師船乗りいて宮 騎乗動物の商人中流階級手工職人人の世話をやき人のために耐える人やぎ宮 狩人奴隷

みずがめ宮 奴隷女奴隷ワイン商人宝石とガラスの職人教育のない者死者の衣服を剥ぐ者

うお宮 有力者崇拝者後半は両眼の盲目を暗示瞳を取り出される者船乗り

19)「身体部位」はすでに 361 節で扱われておりここで再び言及されているこの項目の表が見られるのはCORPSAMPerである

20)この項目は CRAからは抜けている21)おそらくカナートを掘る者を指していると思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

475

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

476

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

477

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

498

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

506

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

507

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

508

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

509

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

511

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

512

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

513

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

514

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

515

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

516

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

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によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

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520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

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たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

539

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

Page 9: Title アブー・ライハーン・ムハンマド・イブン ......468 イスラーム世界研究 第6巻(2013年3月) 351(349). 昼の宮と夜の宮とは何か

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

369(366) 宮が示す場所(amākin)22)

宮名 場所

おひつじ宮 砂漠羊の牧草地宝石職人や火を扱う者の仕事場泥棒の隠れ家材木で屋根を葺いた家

おうし宮 山の近く庭草地牛や象のいる所食物の家

ふたご宮 山平らな砂地狩人のいる所漁具のある岸遊び人や賭博師や歌手のいる所支配者の城

かに宮 ため池密林海岸種と種蒔きの場所川の崖神を崇拝する場所しし宮 山砦高い建物王宮砂漠砂利塩水の土地おとめ宮 官庁散歩道女性や芸人の家戸口種を蒔くすべての土地

てんびん宮 モスク神を崇拝する場所城建物狩りとタカの場所高台の観測所砂漠庭ヤシの土地種を蒔く山頂

さそり宮 汚い場所腐った水の川床牢獄悲しみと罪の場所蠍の巣穴廃墟葡萄の木と桑の木の場所

いて宮 障害のない砂漠マギ教徒の崇拝場所教会武器庫牛房22)粗い石の水槽時々水が引かれる庭

やぎ宮 城古い水槽船の港いろり泣く場所奴隷の家犬とキツネの場所見知らぬ者の家前半は砂岩車輪水の渦巻きを示す

みずがめ宮 流れる水と淀んだ水の場所風呂のような火を使うものワインの店売春宿運河つるはしで掘るもの鳥の巣水鳥の場所

うお宮 女王崇拝マギ教の祭司の場所泣く場所密林淀んだ水の岸塩の沼地塩水宝庫

370(365) 宮が示す国(al-buldān)と地域(an-nawāḥī)宮名 国と地域

おひつじ宮 バビロンペルシアパレスティナアゼルバイジャンアラーン

おうし宮サワードマーヒーンハマザーン高地のクルド人<の土地>マドヤンキュプロス島アレクサンドリアコンスタンティノープルオマーンライファルガーナヘラートとスィジスターンは<他の宮(てんびん宮)と>共有する

ふたご宮ミスルバルカの諸都市アルメニアジーラーンブルジャーンムーカーンジルジャーンイスファハーンとキルマーンは<他の宮(いて宮おとめ宮)と>共有する

かに宮ムーカーンの向こう側の小アルメニアイフリーキヤの一部ハジャルバフラインダビールマルヴルードホラーサーン東部バルフとアゼルバイジャンは<他の宮(てんびん宮おひつじ宮)と>共有する

しし宮ヤージューズ寄りのトルコそれに続く居住地の果てアスカラーンエルサレムニスィービーンマダーインマラティヤマイサーンマクラーンダイラムアバルシャフルトゥースソグドティルミズ

おとめ宮アンダルスシリアクレタ島ユーフラテス川ジャズィーラジャラーマカアビシニアの王国サンアークーファキルマーンに続くペルシアの諸都市スィンドとの境界寄りのスィジスターン

てんびん宮イフリーキヤ寄りのルームアビシニアとの境界寄りの上エジプトアンティオキアタルスースマッカターリカーンバルフトゥハーリスターンヘラートスィジスターンカーブルカシュミール中国

さそり宮ヒジャーズの地イエメン寄りのアラブ人の砂漠マディーナタンジャクバーズクバーハザルライクーミスアームルサーリヤナハーワンドナフラワーンソグドは<他の宮(しし宮)と>共有する

22)アラビア語で aṣārsquoil al-baqarと読めるも意味不明なのでペルシア語版に従う

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

いて宮ジバールディーナワルイスファハーンバグダードライ23)ダンバーワンドダルバンドジュンディーサーブールブハーラーとジルジャーンは<他の宮(うお宮ふたご宮)と>共有するアルメニアの海岸マグリブ寄りのベルベル人<の土地>

やぎ宮 マクラーンスィンドミフラーンの川(インダス川)インド寄りのオマーンの海の中央中国ルームの東の土地アフワーズイスタフル

みずがめ宮 ジャバル寄りのサワードクーファの地域ヒジャーズの背後コプト人の土地西スィンドペルシアは<他の宮(おひつじ宮)と>共有する

うお宮タバリスターンジルジャーンの北ブハーラーサマルカンドルームは<他の宮(てんびん宮)と>共有するシリア寄りのカーリーカラージャズィーラミスルアレクサンドリアイエメンの海インド人の東の土地

371(369) 宮が示す宝飾品(ǧawāhir)と備品(aṯāṯ)23)

宮名 宝飾品と備品おひつじ宮 銅鉄鉛兜花輪王冠ベルトおうし宮 衣服羊毛毛皮えり首輪甘い果実油ベニバナ亜麻の種

ふたご宮 腕輪上腕の腕輪ディルハム銀貨ディーナール金貨香料太鼓弦楽器吹奏楽器

かに宮 米サトウキビ

しし宮 胸甲甲冑背の高い金属の容器火で作られる物金銀サファイアカンラン石

おとめ宮 水銀食料穀物薬草常用の種子てんびん宮 絹弦楽器太鼓さそり宮 サンゴのような水の宝石薬物アンモニア水の容器火で作られる物いて宮 鉛金射手や槍手の乗り物矢筒武器運河レンガ石灰やぎ宮 保管に費用がかかる物すべて

みずがめ宮 水を見つける道具建物を建てる道具穴を掘る道具植える道具うお宮 真珠真珠貝サンゴのように水に関係ある物サンダル

372(371) 宮が示す動物の種類宮名 動物の種類

おひつじ宮 ヤギ羊山の羊鹿のような野生および家畜の分かれた蹄を持つものおうし宮 牝牛牡牛象ガゼル類人猿ふたご宮 家禽ロバ角を持つ蛇かに宮 爬虫類水棲動物スカラベ蟹大ヤモリのような陸地にいる多くの足を持つものしし宮 荒馬猛獣かぎ爪を持つものすべて黒蛇おとめ宮 カササギワタリガラスナイチンゲールスズメオウム大蛇てんびん宮 鳥ヒョウジンさそり宮 爬虫類水棲動物有害な猛獣蠍スズメバチのような足の多いものいて宮 蹄を持つものすべて特に使役馬ラバロバ鳥類と爬虫類を示す指示があるやぎ宮 子鹿子羊放牧するもの昆虫猿イナゴを示す

みずがめ宮 二足を持つものワシクロワシカワウソトビネズミクロテンリス水鳥特に黒い鳥

うお宮 鳥クジラ魚水棲の猛獣蛇蠍

23)ライは 3箇所(おうしさそりいて)にあるが写本によってはさそり宮だけに見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

373(367) 宮が示す木と植物24)25)26)

宮名 木と植物おひつじ宮 <欠落>24)

おうし宮 水の少ないすべての耕地種を蒔かない植物新芽甘い果実油キビの種ベニバナ 25)

ふたご宮 高い木かに宮 <高さが>適度な木米サトウキビしし宮 高い木おとめ宮 蒔かれたすべての種その土地新芽穀物薬草常用の種子26)

てんびん宮 ヤシ高い木山頂に蒔かれるものさそり宮 高さが適度な木いて宮 <欠落>やぎ宮 耕地草それに似た植物実も種もないもの

みずがめ宮 チークコクタンミロバラン胡椒のような高い木

うお宮 綿砂糖リンゴモモセイヨウナシアンズビャクダン樟脳ワサビノキ美味な果物の種類後半は<高さが>適度な木を示す

374(368) 宮が示す水と風と火宮名 水と風と火

おひつじ宮 常用の火おうし宮 <欠落>ふたご宮 波立つ水気持ちのよい風動物の匂いかに宮 新鮮な水激しい雨空から降るものしし宮 流れが激しく制し難いワディ地面を大きくする隠れた火暗い天気石の中の火おとめ宮 流れるすべての水

てんびん宮 それが吹くことで木につぼみをつけさせ果実を成長させ熟させる風暗い天気を示す

さそり宮 流れる水川用水路水槽洪水泥粘土とアラク酒を浸したものいて宮 川もともと動物の体内にある火やぎ宮 <欠落>

みずがめ宮 流れる水海木を根こそぎにし植物を枯らせる破壊的な嵐寒さの厳しい風うお宮 淀んだ水湖

24)C以外の写本に従っておひつじ宮といて宮を空白とみなすCだけはさそり宮とうお宮を空白にして内容を繰り上げている

25)「甘い果実油キビの種ベニバナ」はベータ系写本のみ26)「穀物薬草常用の種子」はベータ系写本のみ

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

375(372) 宮の年月日時間27)28)

宮名

宮の年と月と日27) 同じく宮に属する日と時間28)

年 月 日 日 時間おひつじ宮 15 15 37 12 3 3

おうし宮 8 8 20 1 16

ふたご宮 20 20 50 4 4

かに宮 25 25 62 12 5 5

しし宮 19 19 47 12 3 23

おとめ宮 20 20 50 4 4

てんびん宮 8 8 20 1 16

さそり宮 15 15 37 12 3 3

いて宮 12 12 30 2 12

やぎ宮 27 27 67 12 5 15

みずがめ宮 30 30 75 6 6

うお宮 12 12 30 2 12

 さてこれから宮の性質が相互に関わることで生じる宮の諸状態について述べようなぜなら複雑なものは単純なものの後に続くからである

376(373) 宮位(naẓar)と落位(suqūṭ)とは何か

 各宮はそれから 3番目と 11 番目のそれぞれの宮を「六分」(tasdīs)と呼ばれる宮位で観ているなぜなら両者の初点の間には 2つの宮すなわち 12 の 16(suds)があるからであるこうして両者の各度数の間では30 度に達するまでそれぞれ 2度3度あるいは 4度の六分と呼ばれる3番目の宮に対する宮位は左の六分であり11 番目は右の六分である29)また各宮は 4番目の宮に対して左の「矩」(tarbīʻ)<という宮位>でまた 10 番目に対しては右の矩<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 3つの宮すなわち天球の 14(rubʻ)だからであるまた各宮は 5番目に対しては左の「三分」(taṯlīṯ)<という宮位>で9番目に対しては右の三分<という宮位>で観ているなぜなら前者と後者 2つとの間は 4つの宮すなわち天球の 13(ṯulṯ)だからである7番目に対しては「衝」(muqābala)という宮位であるある宮と 7番目との間は 6つの宮すなわち天球の半分がある 互いに宮位をなしている宮は「関連している」(murtabiṭa)と呼ばれるこれらが 7 つの視座(manāẓir)である2つの六分における視座の数値は 60 度で2つの矩では 90 度2つの三分では120 度そして衝では 180 度である 落位について言えばある宮はその両側の宮も両側の 7番目も観ていないこれらはその宮と

27)アブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の支配星すなわちそこを「宿」(443 節参照)とする惑星の「小年」(440 節参照)がここで問題となっている年数でありそのまま月数となるまたの小年を nとすると(2n times 2 + n) divide 10という計算によって日数が求められるただしやぎ宮とみずがめ宮はともに土星を支配星とするのにここでやぎ宮が 30 ではなく 27 という「小年」を有していることについてはどこにも説明が見当たらない

28)同じくアブーマアシャル『占星術大序説』VI8によれば各宮の「小年」を nとすると(12n divide 2 minus n) divide 24という計算で求められる商がここで問題となっている日数であり余りが時間となる

29)宮の順番は反時計回り

478

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

は関連しておらずそれを観てもいないしたがって2番目6番目8番目12 番目の宮はその宮<の宮位>から落ちているのである

377(374) 愛する(mutaḥābba)宮嫌う(mutabāġiḍa)宮敵対する(mutaʻādiya)宮とは何か

 「愛する宮」とは三分または六分によって互いに観るものであり「嫌う宮」とは矩によって互いに観るものであるそして「敵対する宮」とは衝によって互いに観るものである おひつじ宮を例にとればふたご宮とみずがめ宮がそれぞれ六分にありしし宮といて宮がそれぞれ三分にあるしたがっておひつじ宮はそれらを愛しそれらもおひつじ宮を愛するまたかに宮とやぎ宮はそれぞれ矩にありおひつじ宮は両者を嫌い両者もそれを嫌うさらにてんびん宮は衝にあり両者は互いに敵対するおひつじ宮に対して落位にあるのはおうし宮おとめ宮さそり宮そしてうお宮である

378(375) 宮位の序列とは何か

 それらの中で最強のものは各宮における合(al-muǧāmaʻa)である次は衝次は右の矩次は左の矩次は右の三分次は左の三分であるまた最弱のものは六分でありその中でも弱いのは左である2つの宮位のうち強い方は弱い方を無力にするかその力を弱める

379(376) それについてインド人は同意しているか

 彼らはその一部すなわち衝矩三分については同意しそれ以外のものについては異なっている彼らは宮がそこから 3番目の宮を観るがその 3番目の宮はその宮(1番目)を観ないと考える同じくそれ(1番目)は 6番目の宮を観ないがその 6番目の宮はそれ(1番目)を観るまたそれ(1番目)は 8番目の宮を観るがその 8番目の宮はそれ(1番目)を観ないと考えるそして合を宮位とは呼ばない彼らはまっすぐに立っている人には自分の身体のどの部分も見えないと考えるのである 序列について言えば彼らは3番目と 10 番目に対しては 14 の宮位5番目と 9番目に対しては 12 の宮位8番目と 4番目に対しては 34 の宮位7番目に対しては 1の宮位であり2番目と 12 番目はそれぞれがそれ(1番目)から落ち同時にそれは両者から落ちると考える

380(377) 宮位以外に宮について同意事項があるか

 2つの宮ごとに等しい日周円で回転しその一方は<黄道の>北にあり他方は南にあるしたがって両者は「力において対応する」(muttafiqān fī al-qūwa)と言われるなぜなら両者の一方の昼の時間は他方の夜の時間に等しくあらゆる場所において両者の上昇時間は等しいからである例えばおひつじ宮とうお宮おうし宮とみずがめ宮のように以下続く両者の<各宮内の>度数における対応について言えばそれは反対になるすなわちおひつじ宮の最初の度数は力においてはうお宮の最後の度数に対応しおひつじ宮の 10 度はうお宮の 20 度に対応する また2つの宮ごとが<黄道の>南北の一方で同じ日周円で回転するしたがって両者は「道において対応する」(muttafiqān fī aṭ-ṭarīqa)と言われる一方の昼の時間は他方の昼の時間に等しく夜の時間も同様であるまた直立球における両者の上昇時間は等しい例えばふたご宮とかに宮おうし宮としし宮である両者における<各宮内の>度数の対応について言えばそれもやはり反対であるすなわちかに宮の最初の度数は道においてふたご宮の最後の度数に対応しか

479

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

に宮の 10 度は道においてふたご宮の 20 度に対応する この 2つの概念については書物の中でさまざまな名称が見られるたとえ概念に対応する名称がそれにふさわしくないとしても気にすることはないアブーマアシャルはひとつの惑星に属する 2つの宮を道において対応すると言ったがそれは最初の 2つのものとは種類が違う30)その名称もまた概念とは対応していないのであるこれがいま述べたものの図である

道において対応

力において対応

やぎ宮み

ずがめ宮うお

おひつじ宮おうし宮ふたご 宮

かに宮

しし

おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

い て 宮

 アブーマアシャルは力において対応するおひつじ宮とうお宮おとめ宮とてんびん宮の状態と道において対応するふたご宮とかに宮いて宮とやぎ宮の状態を「性質における六分」(tasdīs ṭabīʻī)と呼んだがそれぞれの組みでこの対応が起こるのは宮位をなさない宮とであり宮位をなさない宮に最も近い視座が六分だからであるまた彼はおひつじ宮とおとめ宮うお宮とてんびん宮ふたご宮とやぎ宮かに宮といて宮の状態を「性質における衝」(istiqbāl ṭabīʻī)と呼んだのはそれが宮位をなさないもの同士で起こり衝に近いからである31) 矩について言えばそれはある宮の対応と宮位の両方に関係して起る例えばおうし宮とみずがめ宮しし宮とさそり宮は力において矩でありまたおうし宮としし宮さそり宮とみずがめ宮は道において矩であるこのために初めに述べたように指示の力は落位の持つ不一致や不運<の性質>が薄れるように矩の持つ嫌悪と損失<の性質>が薄れることを伴うのである32) 力と道におけるこの 2つの対応の一方(前者)は天球の南北の両半分に起こり他方(後者)は天球の上昇下降33)の両半分に起る

381(378) 天球の上昇半球(nisf al-falak aṣ-ṣāʻid)と下降半球(nisf al-falak al-hābiṭ)とは何か

 この両者は2至点(夏至点と冬至点)が 2つに分けるものである上昇する半分の宮はやぎ宮みずがめ宮うお宮おひつじ宮おうし宮ふたご宮であり下降する半分の宮はそれらの反対側の 6つである インド人はこの 2つの半分のそれぞれをアヤナ(ayan ayana)と呼ぶ上昇<する半分>はウッタラアヤナ(ūtarāyan uttarāyaṇa)すなわち北<の半分>であるなぜなら太陽は南の半分に

30)ひとつの惑星に属する 2つの宮とは「宿」のことである(443 節参照)アブーマアシャル『占星術大序説』VI531)アブーマアシャル『占星術大序説』VI632)「矩」が互いに嫌う宮から形成されることはすでに 377 節で説明されている33)「上昇下降」については次の節を参照

480

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

傾いていても北の終点に向かって上昇しているからである下降<する半分>について言えば彼らはすでに述べたことからそれをダクシナアヤナ(dakšāyan dakṣiṇāyana)すなわち南<の半分>と呼ぶ 上昇する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が短いために「斜めに上昇する宮」(muʻwaǧǧa aṭ-ṭulūʻ)とも言われるまた下降する半分の宮は直立球における宮の上昇時間よりもその土地の上昇時間の方が長いために「直立して上昇する宮」(mustaqīma aṭ-ṭulūʻ)とも言われる道において対応するという考えから斜行する宮は「従う宮」(muṭīʻa)また直立する宮は「命じる宮」(āmira)と呼ばれるなぜなら2つの宮ごとが同一の日周円で回転しそのうち下降する半分にあるものが第 1の運動(西から東への運動)において上昇する半分にあるものに先行すると考えると前者が後者に命令し招き後者が前者の後に続いて従い進むかのようだからである34)

382(379) 三角宮(muṯallaṯāt)とは何か

 同じ 2つの性質を持つ宮は天球では正三角形上にあるこのためにその三角形上の宮(三角宮)はひとつのものだとみなされる概してそれらが支配するのは同じものあるいは似たものである おひつじ宮しし宮いて宮は火の三角宮であり収集と充満を示している火に対する指示について言えばおひつじ宮は火を点ずる時に用いられる火をしし宮は石や木の中に隠れている火をそしていて宮は生来動物の体内にある火を示す おうし宮おとめ宮やぎ宮は土の三角宮であり贈り物と繁栄を示している種子に対する指示について言えばおうし宮は種のない草と牧草地をおとめ宮は穀物や種子を持つものと小さな木をそしてやぎ宮は高く大きくなるものの種子を示す ふたご宮てんびん宮みずがめ宮は空気の三角宮であり散布を示しているふたご宮は適度で生産的な空気をてんびん宮は受粉させ成熟させ成長させる空気をそしてみずがめ宮は混乱させる空気と被害を及ぼす嵐を示す かに宮さそり宮うお宮は水の三角宮であり獲得を示しているかに宮はおいしく甘い水をさそり宮は流れの激しいさまざまな水をそしてうお宮は塩辛く悪臭のする水を示す

383(380) 四角宮(murabbaʻāt)と四季の宮とは何か

 おひつじ宮おうし宮ふたご宮は春の宮であり運動を示すまた歳に関しては幼年期方角は東風は東風昼夜の四分割ではそれぞれの最初を示す かに宮しし宮おとめ宮は夏の宮であり静止を示すまた歳に関しては青年期方角は南風は南風昼夜の四分割ではそれぞれの 2番目を示す てんびん宮さそり宮いて宮は秋の宮であり運動を示すまた歳に関しては壮年期方角は西風は西風昼夜の四分割ではそれぞれの 3番目を示す やぎ宮みずがめ宮うお宮は冬の宮であり静止を示すまた歳に関しては老年期方角は北風は北風昼夜の四分割ではそれぞれの 4番目を示す それぞれの季節の最初の宮は「転換宮」(munqalab)2番目の宮はその季節の本当の性質が定ま

34)プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 15 章で天球を 2分点(春秋分点)で分けて「命令する宮」を黄道の北の宮にまた「従う宮」を南の宮にしている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

る「固定宮」(ṯābit)そして 3番目の宮は「二体宮」(ḏū al-ǧasadayn)と呼ばれるこの 3種類のそれぞれは四角形の上にある おひつじ宮かに宮てんびん宮やぎ宮は転換宮の四角宮であり静寂清潔知性学問とオカルトの原因に対する洞察を示す おうし宮しし宮さそり宮みずがめ宮は固定宮の四角宮であり夢調査正義熟慮議論好きを示すまた時として不運に耐えること仕事と苦痛に対する忍耐を示すふたご宮おとめ宮いて宮うお宮は二体宮の四角宮であり混乱軽薄無頓着遊び好き乏しい活力物事の多様性二色と二枚舌に染まることを示す 一般的に固定宮は指示が最も明瞭で二体宮は最も不明瞭であり転換宮は両者の中間である

第 2章 惑星 今や惑星の個々の状態に到達した惑星の宮に対する関係は魂(al-arwāḥ)の肉体(al-aǧsād)に対する関係と同じであり惑星は宮に到達すると宮の性質によって変化を被るそれは精神(an-nafs)が身体(al-badan)の性情(mizāǧ)に従うかのようである精神は支配的な混合と身体から受ける精神の動揺に応じて怒り喜び悲しみ精神の働きは身体の状態に似るようになるのである

384(381) 惑星の性質はどのようなものか

 惑星にはその下で受け入れるものに対する作用と影響がある土星の影響に見られるものは過度の冷たさと乾きであり木星には適度な熱さと柔らかさ(al-ludūna)35)があり火星には過度の熱さと乾きがある太陽には極端でない程度に火星よりは少ない熱さと乾きがあり太陽の熱さは乾きよりも激しい金星には適度な冷たさと湿りがありその湿りは冷たさに勝っている水星において支配的なのは極端ではない程度の冷たさと乾きであり乾きが優位であるさらにそれに混ざるものに応じて変化しその性質に変わってしまう 月について言えばそれは極端でない程度に冷たく湿っており時には冷たさを不足させまた時には冷たさが過剰になることがあるなぜなら太陽から受ける光の一時的な熱のために月が季節のように新月から四半月ごとに変化するからである四半月の最初は春の性質であり熱く湿っている2番目は夏の性質であり熱く乾いている3番目は満月の後であり冷たく乾いているそして最後は冷たく湿っている人々によれば月の湿りは支配的であり月からなくなることはないすなわち月は常に湿っているが光が増大する最初の半月は湿気と共に熱さの傾向があるその後<ひと月の>後半は湿気とともに冷たさの傾向にあり熱が月から離れるそれは月の輝く部分が減少するからであるつまり一時的に得られた性質が無くなるとその後本来の性質に戻るだけなのである

385(382) 吉(as-saʻāda)と凶(an-nuḥūsa)にある惑星の状態とは何か

 土星と火星は完全に凶星(naḥs)であり土星は大凶で火星は小凶である木星と金星は完全に吉星(saʻd)であり木星は大吉で金星は小吉である木星は土星が呼び込む凶性(manḥasa)

35)本来ここには「湿り」という表現が求められるがアラビア語写本とペルシア語版はともに「柔らかさ」としている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を解消する点で土星の反対であり金星はその点で火星の反対である太陽<のある宮>が<金星のある宮と>宮位にあるか遠くにあれば吉星であるが合にあるか近くにあれば凶星になるこの点について水星の性質はそのままであるが凶の状態では凶星とまた吉の状態では吉星に同調するまたそれが単独の場合は吉の傾向にある月に関して言えばそれは吉星であるがその動きが速いために<他の>惑星からの位置の変化は大きい一般に吉星は優れておりその作用は正義公正安全純粋よい性格喜び休息美そして美徳であるもし吉星同士が強力であれば互いに友好になり友情を結び弱ければ互いに助け合う凶星は一般に反抗的で傲慢で有害でありその作用は不正堕落貪欲不純無礼悲嘆混乱不信懐疑醜悪そしてすべての犯罪であるもし凶星同士が強力であれば互いに反発し敵対し弱ければ落胆し衰退する 人々によれば土星の前半は火星のために凶星であり後半は木星のために吉星であるこれはさまざまな状態における土星と 2惑星との協調関係のためであるまた火星においてはその前半は吉星で後半は凶星である太陽についてはその前半は吉星で後半は凶星であるそれに関する人々の類推について私は確信がないこの件に関する原理はふたつの性質を同時に持つことで影響が過度となる惑星は凶に関り影響が適度な惑星は吉に関りそして 2つの性質の程度が異なる各惑星については無条件に惑星を吉とか凶と呼ぶことができないということである

386(383) そのことについて昇交点と降交点に何か作用があるか

 人々の中には昇交点と降交点にある性質を関係づける者がいる彼は昇交点が熱く吉星で増大を示し降交点が冷たく凶星で減少を示すと考えるこのためにバビロンの人々は昇交点が吉星と共にあれば吉星であり凶星と共にあれば凶星だと考えるなぜなら昇交点は惑星の持つ指示を増大させるからであるそれはかけ離れた類推に基づいているので才能ある者がすべてそれを受け入れているわけではない

387(384) それについてインド人は何か見解を持っているか

 彼らによれば完全な凶星は土星火星太陽昇交点であり降交点は全く考慮されていないまた完全な吉星は木星と金星である水星について言えばそれは吉星と共にあれば吉星凶星と共にあれば凶星である月について言えばある者はその光が増大する時は吉星で減少する時は凶星であると言いまたある者は太陰月の最初の 10 日は吉星でも凶星でもなく中間の 10 日は吉星で最後の 10 日は凶星であると言う

388(385) 男性の惑星と女性の惑星とは何か

 3つの上位惑星は太陽と共に男性でありその中でも土星は去勢者のようであるまた金星と月は女性である水星は男性の惑星と共にあれば男性で女性の惑星と共にあれば女性であるこのために水星は両性具有者のようであるもしそれが単独であればその本質は男性の性質(aḏ-ḏukūra)である火星を女性と考える人々がいたが彼らの主張は受け入れられなかった

389(386) 昼の惑星と夜の惑星とは何か

 土星木星太陽は昼の惑星で昼に力が強くなるまた火星金星月は夜の惑星である水星はそれと交わる惑星や宮に応じて昼の惑星であり同時に夜の惑星である各惑星はそれに似た

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ものを助け昼には昼の惑星がまた夜には夜の惑星がそれに助けを求める 太陽は昼の交替主星(ṣāḥibat an-nawba)36)であり月は夜の交替主星であるなぜならその間にそれぞれの作用が現われるからであるまたその間に地上にない各惑星の作用は現われずに隠れているある人々は昇交点に男性の性質を与え昼の惑星とみなしまた降交点に女性の性質(al-unūṯa)を与え夜の惑星とみなしたがそれは正しい基準ではない

390(387) 惑星の指示はそのまま続くかそれとも変化するか

 それは宮にあること恒星や他の惑星と共にあることそして<他の惑星に対して>視座にあることに応じてまた惑星の諸状態太陽や太陽光線との位置関係そして近いか遠いかに応じて変化するつまり土星は上昇する時乾いていて下降する時湿っている37)さらに同一の惑星が示す同じ状態は幸運としても不運としても起こる例えば土星が土地を求めることを示す場合がそうであるすなわち土星が力のある状態にあれば<人は>農業のために土地を求めそれが気に入りそこから富を得るまたその反対にあれば<人は>苦労して土地を求め種蒔きで苦労する土地に関する土星の不運は続くが長くはない われわれは書物で述べられている惑星の指示をまとめてそれらを表にしよう

391(388) なぜ惑星は同じことを繰り返し指示し惑星によって異なることがないのか

 このことの根本には諸原理の脆弱さとそれらに基づく類推の混乱がある星学者たちは惑星の性質やその吉凶に応じて色匂い味属性作用特性を惑星に配分することで一致しているさらに彼らはそのことや存在するすべての物が生じる時や用いられる時に応じてそれらを惑星に関係づけているある物の指示についてひとつの惑星が単独で関ることはまれでありむしろ 2惑星またはそれ以上の惑星が2<またはそれ以上の>惑星と関係のある明らかな 2つ<またはそれ以上>の性質を共有する例えばタマネギにおいては火星は熱さにおいてそれと関係し金星は湿りにおいてそれと関係するまたアヘンにおいては土星は冷たさにおいてそれと関係し水星は乾きにおいてそれと関係するすなわちある者がアヘンを土星に関係づける時は冷たさにおいてでありまたある者がそれを水星に関係づける時は乾きにおいてなのであるこの件について人々には体験がないので彼らの書物の内容は異なるどころか互いに矛盾している 時には複数の惑星がいくつかの性質や属性に応じてひとつの惑星が指示するものを共有したり他の惑星があるもののさまざまな部分をその惑星と共有することがある例えば金星はそれの香りが良いことのために芳香植物全体を示すまた火星は木の刺赤い色鼻の炎症を招くほど匂いがきついことのためにバラを金星と共有するまた木星はスイセンを土星はギンバイカを太陽はスイレンを水星はメボウキをそして月はスミレを金星と共有する同じく惑星はひとつのものを諸部分に分ける例えば一本の木においてもそうである幹は太陽に根は土星に刺枝または樹皮は火星に花は金星に果実は木星に葉は月にそして種は水星に属する例えばメロンのような木についても前述のように惑星はひとつのものを諸部分に分けるこうして全体は太陽に果肉と果汁は月に皮は土星に匂いと色は金星に味は

36)昼夜日時間の支配星のように交互に交替して支配する星のこと37)上昇と下降の意味は複数ありどの場合を指しているのかは不明例えば惑星が離心天球上の第 1第 2象限

にあれば下降し第 3第 4象限にあれば上昇している

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

木星に種は水星にそして種の皮と外見は火星に属する

392(389) 惑星による方角(ǧihāt)の指示はどのようなものか

 三角宮の方角を扱った『出生の書』(kitāb al-mawālīd)でナイリーズィー38)が述べたこと以外に私はこれに関する基準(qānūn)を入門書の中に見たことがない土星には東火星には西金星には南そして木星には北への指示がある しかしインド人は「ディグバラ」(ǧihatīh digbala)と呼ばれる力を惑星に関係づけている39)つまりそれは上昇点にある水星と木星10 番目<の家>にある太陽と火星7番目<の家>にある土星4番目<の家>にある金星と月にそれぞれ属するしたがってそれによれば東は水星と木星に西は土星に南は太陽と火星に北は金星と月に関係があることになる インド人にはまた頭に関係した八角形がありそれを戦いや賭事のために選択占星術(al-iḫtiyār)で用いる彼らは太陽を東に木星を南に火星をその間に月を南と西の間に土星を西と北の間に水星を北にそして金星を北と東の間に置き西には何も置かない

393(390) 日は惑星の間でどのように分割されるか

 最初の日すなわち日曜日の最初の時間から始められるその時間は昼と夜とそれらの時間に最もふさわしい理由となる惑星すなわち太陽に属するとみなされる次に 2番目の時間は上から下への天球の順番でそれに続く惑星すなわち金星に属する3番目の時間は水星に4番目は月にそして 5番目は土星に属するこの順番で 2日目すなわち月曜日に続く月曜日の最初の時間の順番は月にまた 2番目は土星に属するとみなされるこうして次の日曜日まで続き日曜日の最初の時間の順番は太陽に戻るこのことから時間の支配星が知られ毎日はその日の最初の時間が属する惑星と関係づけられる人々は奇数時間を男性に偶数時間を女性に関係づけ毎日の最初の時間を男性2時間目を女性3時間目を男性とみなし一日の時間が完了するまでこのように続ける

394(391) これについて相違があるか

 この件をインド人は頻繁に用いている彼らは1日の時間が 24 時間でそれがその日の日の出から<次の>日の出まででその日の支配星が朝にあり夜がその日の昼に続くように考えその間にその日の支配星を考えないまた彼らは定時以外を使わないこれは最も類推しやすいものである われわれの土地の星学者について言えば彼らは昼の支配星と夜の支配星とを分け不定時を用いているまた昼に続く夜の支配星は下る数え方では 1日の支配星から 13 番目簡単な数え方では 6番目あるいは遡る数え方では 3番目である40)このためにアストロラーブにはこの種の時間(不定時)が描かれているしかしそれは不自然であるが決まりになっている

395(392) クリマは惑星間でどのように分割されるか

 赤道から最初のクリマは惑星の中で最も高く天球が最初にあって最も大きい土星に属すると

38)アブーアル=アッバースアル=ナイリーズィーは 9世紀の天文学者この著作は残っていない39)『ブリハッジャータカ』219 『ヤヴァナジャータカ』18840)「下る数え方」は 1番目から「簡単な数え方」は 8番目からそして「遡る数え方」は 15 番目から始める方法

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

考えるそれは最初のクリマが最も範囲が広く最も肥沃で住人の<肌の>色と気質が土星に関係があるからである次に木星がそれに続き2番目のクリマがそれに属するとみなすこうして7番目は月に属するアブーマアシャルによればこれはペルシア人の見解でありルーム人によるそれらの支配星は異なっているすなわち最初は土星2番目は太陽3番目は水星4番目は木星5番目は金星6番目は月そして 7番目も月に属する41)

396(393) 都市の上昇点クリマそして都市の時間の支配星とは何か

 ある地域(クリマ)と宮および惑星との関係について言えばそれは特に両者(宮と惑星)による地域(クリマ)に関する指示によるのであり検証によって決定されていることである<都市の>上昇点と時間の支配星について言えば都市を建造する時でなければそれは都市に保存されることはないどこの都市がそれを保存しているだろうかこれ(保存)が各都市の建設者の義務であったとしても長い時がそれを消し去ってしまうだろう基礎が築かれた都市についてわれわれが述べたことと事実が違うことを考えてみなさい川を掘った時とそこに水が流れた時のどちらを基準にして両者(宮と惑星)を世界の大河に関係づけられるだろうかそれが間違っていることはきわめて明らかである

397(394) 惑星の年とは何か

 各惑星には最大年(ʻuẓmā)大年(kubrā)中年(wusṭā)小年(ṣuġrā)の 4つの種類がある最大年は時代の変化に用いられるある人々によれば惑星は昔の人に寿命の長さとして最大年を与えていた他の 3種類は今では現代人の寿命や期間とか限られたものを数えることに用いられるそれらは年にだけ用いられるのではなく数には制限がないだからそれらは年のこともあれば月週日時間のこともある42)

398(395) 惑星のファルダール(fardārāt)とは何か

 これはペルシア人の見解である出生者(al-mawlūd)43)はファルダールの支配星の年の間それの支配下にありその後彼はその後に続く支配下に移る<ファルダールは>昼の誕生であれば太陽から始まり夜の誕生であれば月から始まり天球の上から下への順番で続く また惑星のファルダールの年数は 7惑星の間でも等分されるその最初はファルダール自身の支配星に属し天球の下からの順番で続く44)

41)アブーマアシャル『占星術大序説』VI2にはペルシア人とルーム人の両方の見解が紹介されているがペルシア人による 7番目は月ではなく火星となっている

42)具体的な惑星の年数については440 節に見られる43)これはもっぱら占星術文献に見られる表現であり占いをする対象者(native)を意味する44)ファルダールの具体的な数値については441‒442 節に見られる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

399(396) 惑星が示す性質 400(397) 吉星と凶星 401(398) 男性と女性惑星名 惑星の性質 吉星と凶星 男性と女性の惑星土星 過度の冷たさと乾き 大凶 男性木星 適度の熱さと湿り 大吉 男性

火星 過度の熱さと乾き 小凶 男性しかし女性とも言われる

太陽 熱さと乾き熱さの方が優勢 近ければ凶遠ければ吉 男性

金星 適度の冷たさと湿り湿りの方が優勢 小吉 女性

水星 中庸の冷たさと乾き乾きの方が優勢

本来は吉しかしその他のものに似る

男性しかしそれと交わるものに似る

月 中庸の冷たさと湿り時々変わる

吉他の惑星の凶性を受け入れやすい 女性

402(399) 昼と夜の惑星 403(400) 味と匂い 404(401) 色惑星名 昼の惑星と夜の惑星 惑星による味と匂いの指示 惑星に属する色

土星 昼 不快な味渋さ酸っぱく嫌な味悪臭

濃い黒黒と黄色の混ざった色鉛の色暗い色

木星 昼 甘さ苦さ良い匂いくすんだ薄茶色黄色と茶色が混ざった白明るい色輝く色

火星 夜 苦さ 暗い赤

太陽 昼 刺激的な味芳香明るい色ブロンド黄色時間の支配星の色がその色だと言われる

金星 夜 脂っこい味甘さ 純粋な白茶色肌色明るい色緑とも言われる

水星 昼他の惑星と交わると変わる 混ざった 2つの味 混ざった色灰色と空色の

ような 2色が混ざったもの

月 夜 塩からい味がない少し酸っぱい

青赤黄濁った色または蒼白が混ざった白明るい色

405(402) 惑星の示す一般的特徴 406(403) 状態と形態惑星名 惑星が指示する一般的特徴 惑星に属する状態と形態

土星 物事のうちで最も寒く最も堅固で最も腐敗し最も力強い 短いこと乾燥硬いこと重いこと

木星 物事のうちで最も公正で最も完全で最も美しく最も善良で最も従順 均衡凝結円滑

火星 物事のうちで最も熱く最も粗く最も鋭く最も赤い 長いこと乾燥粗いこと

太陽 物事のうちで最も高貴で最も気高く最も有名で最も寛大

円形光沢希薄状態蒼白何もない空虚

金星物事のうちで最も賢明で最も楽しく最もおいしく最も美しく最も優しく最も湿っている

矩形流動軟らかいこと

水星 これらのうちの 2つの事から成る中庸の混合 2つの単独の状態が混ざったもの

月 物事のうちで最も厚く最も濃く最も湿り最も軽い 厚いこと湿気堅固軽いこと

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

407(404) 惑星の示す日 408(405) クリマ 409(406) 土地の種類惑星名 惑星の日 惑星のクリマ 惑星に属する土地の種類土星 土曜日 第 1 植物が育たない乾燥した山木星 木曜日 第 2 平坦な土地火星 火曜日 第 3 荒れた未開の土地砂利の多い土地太陽 日曜日 第 4 鉱物のある山金星 金曜日 第 5 水の多い湿った土地水星 水曜日 第 6 砂地月 月曜日 第 7 すべての平原平らな土地

410(407) 惑星の示す場所惑星名 惑星に属する場所

土星 巣穴石棺井戸古代の建物破壊された道生ごみ<のある場所>野獣が群れる砂漠牛ロバ馬をつなぐ場所象の家

木星 人の住む所貴族の家モスク説教壇教会シナゴグ学問<の場所>書物<の場所>崇拝の道教師の家鉛製造者の仕事場

火星 火や木の場所近くにある道陶器が作られる所太陽 支配者や統治者の家金星 隆起した場所多くの水のある道崇拝の家水星 市場官庁モスク画家や漂白する人の家近くの庭小川泉月 地下や水中の湿った場所日乾しレンガの場所水の冷たい場所川木のある道

411(408) 惑星の示す居住地惑星名 惑星に属する居住地

土星 スィンドインドザンジュアビシニアコプトスーダンの南西イエメンアラブ人<の土地>ナバテア

木星 バビロンの人々<の土地>ペルシアホラーサーンの人々<の土地>トルコ人<の土地>イフリーキヤ西部のベルベル人<の土地>

火星 シリアビザンティウムスラヴ人<の土地>北西にいる人々<の土地>

太陽 ヒジャーズの人々の<土地>エルサレムレバノン山アルメニアアーラーンダイラム中国寄りのホラーサーン

金星 バビロンの人々<の土地>アラブ人<の土地>ヒジャーズそれに続く場所島または密林の真ん中にある都市

水星 メッカメディナイラークの地ダイラムジーラーンタバリスターン月 モースルアゼルバイジャン敵がいる山道あらゆる場所の普通の人々<がいる所>

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

412(409) 惑星の示す鉱物 413(410) 金属と宝石45)46)

惑星名 惑星に属する鉱物 惑星に属する金属と宝石土星 一酸化鉛鉄くず硫酸塩硬い石 鉛

木星 白鉄鉱亜鉛硫黄赤いヒ素白と黄色のすべての石牛の胆石

錫インド錫白錫上質の真鍮ダイヤモンド男が用いるすべての装飾品

火星 磁石赤鉄鉱辰砂赤い石装飾用貝殻 鉄銅

太陽 ラピスラズリ大理石硫黄黄色いヒ素ファラオのガラス鶏冠石アスファルト

サファイアとルビーの種類すべての高価な石純金装飾したベルト

金星 マグネシアアンチモン真珠カンラン石シマメノウ宝石で飾られた装飾品金銀鉛銅または鉄の家庭の容器

水星 石灰ヒ素コハク黄色か緑色のすべての動く石水銀

トルコ石質の悪い真鍮ディルハム銀貨ディーナール金貨ファルス銅貨のうちクベブや木で鋳造されたものすべて真珠サンゴ

月ナバテアのガラス細長い石すべての白い石エメラルド月(al-qamar)という言葉の付く石45)

真珠水晶装飾用の貝銀金46)ディルハム銀貨腕輪印章付きの指輪杯

414(411) 惑星の示す穀物と果物 415(412) 木惑星名 惑星に属する穀物と果物 惑星に属する木

土星胡椒栗オリーブセイヨウカリン酸っぱいザクロレンズマメ亜麻麻の種

木のコブミロバランオリーブ胡椒エジプトヤナギヤナギテレビンノキトウゴマ内部が変化しない木味が不快な木悪臭がする木あるいはクルミやアーモンドのように皮の固い果実を持つ木

木星 甘いザクロリンゴ小麦大麦米モロコシヒヨコマメごま

イチジクモモアンズナシハスの実のような甘く脂肪が少ないかあるいは皮の薄い果実を持つすべての木果実に関しては金星と共通

火星 苦いアーモンド緑の穀物

酸っぱいザクロ苦いセイヨウナシクコのように苦く辛くトゲがあってその果実に芯皮赤色または渋みがあるか強い酸味のあるすべての木

太陽 シトロンインド米背が高く果実に脂肪が多いすべての木果実が乾いた状態で用いられるものナツメヤシクワの木ブドウの木が含まれる

金星イチジクブドウナツメヤシ穀物野生のタイムコロハ(フェヌグリーフ)

イトスギチークリンゴマルメロのような感触が軟らかく香りが良く見た目の良いすべての木

水星 インドマメエジプトマメキャラウェイコリアンダー 匂いが強く悪臭のするすべての木

月 小麦大麦キュウリスイカメロン

幹の小さい枝のあるすべての木甘いザクロとブドウの木が含まれる

45)例えば「透明石膏」は「月の石」と呼ばれる46)ここにある単語にはさまざまなヴァリアントがありALMŠLYATとも ALMŠLBANとも読めるが意味は不明

489

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

416(413) 惑星の示す植物と種47)

惑星名 惑星に属する植物と種土星 ゴマ

木星 花バラ香りが甘いか背の高いすべての植物風が吹いて飛ぶ雑多な毛が巻きつく軽いすべての植物

火星 カラシニラネギタマネギニンニクヘンルーダクレソンアフリカヘンルーダハツカダイコンナス

太陽 ネナシカズラサトウキビ甘露マンナ

金星 穀物油フラーワー(ḥulāwā ある種の植物名)甘い香りの複数の色を持つすべての植物春の花で綿と関係がある

水星 芳香植物薬草アシ水中のすべての植物

月 草アフリカハネガヤパピルス綿47)アマブドウキュウリやメロンのように幹にならないもの

417(414) 惑星の示すあらゆる事における滋養と薬48)

惑星名 惑星に属するあらゆる事における滋養と薬土星 第 4段階48)の冷たさと乾きにある滋養と薬特に麻痺と死をもたらすもの木星 熱さと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で好まれるもの火星 第 4段階の熱さの有害な毒物太陽 熱さが第 4段階には達しないものすなわち有益でどこででも用いられるもの金星 冷たさと湿りが中庸で均衡がとれているものすなわち有益で味の良いもの

水星 乾きが冷たさに勝り極端ではないものすなわち好まれるが時々しか役に立たないもの

月 冷たさと湿りが同等のものすなわち時々役に立ち時々害を及ぼし常に用いられるわけではないもの

418(415) 惑星の示す生活の糧 419(416) 状態 420(417) 力惑星名 生活の糧 状態 惑星に属する力土星 薬 眠ること 抑制する力木星 果物 着ること(al-libās 衣類) 精神力成長力増大力肺の中の息火星 薬 働くこと 怒りから生じる力太陽 食べ物 食べること 動物的な力金星 芳香植物 性交すること 感覚的な力水星 穀物 話すこと 観念的な力月 飲み物 飲むこと 自然の力

47) アラビア語は ALMKAṬN「綿」に関係があると思われるが同定不能48)性質を 4段階(最弱弱強最強)で表わす方法はガレノスに遡る

490

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

421 (418) 惑星の示す四肢を持つもの(ḏawāt al-arbaʻ)惑星名 惑星が指示する四肢を持つもの

土星黒い動物地下の穴に隠れているものこれにはウシヤギ(al-maʻz)黒い騎乗動物ダチョウリスクロテンイタチネコネズミトビネズミ黒い大蛇サソリ毒を持つものすべてノミスカラベが属する

木星ヒト家畜ヒツジ(aḍ-ḍarsquon)雄ウシ雄ジカのような分かれた蹄や足の裏を持つもの白黒の斑点のあるものすべて色が良いか肉がうまいすべての獣食べられるもの話すものライオンヒョウオオヤマネコのうち飼い慣らされたもの

火星 ライオンヒョウジャッカル(aḏ-ḏirsquoāb)イノシシイヌ有害か狂犬病に罹ったすべての猛獣ヘビクサリヘビ

太陽 これにはヒツジ(al-ġanam)ヤギ(al-arāwīy)雄ジカアラブウマライオンワニそして夜行性の野獣が属する

金星 これには野獣のうち白か黄色の蹄を持つものすべてガゼル野生のロバヤギ(al-awʻāl)が属するまたこれには魚が属する

水星 ロバラバ訓練されたイヌキツネウサギジャッカル(ibn āwā)エゾイタチ暗闇にいるすべての動物土または水の中のすべての小動物

月 ラクダ雄ウシヒツジ(aš-šārsquo)ゾウキリン人に飼い慣らされた従順なすべての動物

422(419) 惑星の示す飛ぶもの惑星名 惑星が指示する飛ぶもの土星 水鳥夜の鳥カラス黒いアマツバメハエ

木星 くちばしが真っすぐで穀物を食べる黒くないすべての鳥ハトシャコクジャクオンドリメンドリヤツガシラヒバリ

火星 その肉が食用でくちばしが曲がった鳥これにはコウモリ水鳥(aṭ-ṭayṭawā)赤いすべての鳥スズメバチが属する

太陽 ワシタカオンドリキジバト

金星 ジュズカケバトモリバト野生のハトスズメナイチンゲール(al-balābil)ナイチンゲール(al-ʻandalīb)イナゴシラミ食用でない鳥

水星 ハトキツツキハヤブサタカ水鳥ムクドリ

月 アヒルツルハゲタカサギ大型のすべての鳥これにはメンドリスズメが属する

423(420) 惑星の示す基本要素と四体液 424(421) 身体の一部425(422) 人の内臓

惑星名 惑星に属する基本要素と四体液 惑星に属する身体の一部 惑星に属する人の内臓

土星 土黒胆汁時として異臭の粘液を示す

髪爪皮膚羽羊毛骨大脳角 脾臓

木星 空気血液 動脈大脳精液 肺を太陽と共有火星 火の上部分黄胆汁 静脈身体の後ろ部分 肝臓を金星と共有太陽 火の下部分 脳神経膨らんだ部分 胃金星 <欠落> 肉脂肪精液 腎臓水星 黒胆汁 動脈 胆のう月 粘液 皮膚身体の左側部分 肺

491

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

426(423) 惑星の示す頭部 427(424) 感覚 428(425) 身体部分49)

惑星名 惑星に属する頭部 惑星に属する感覚 惑星に属する身体部分

土星 右耳 聴覚 臀部後部内臓泌尿器口蓋垂背中膝

木星 左耳 聴覚触覚 太腿腸子宮喉火星 右の鼻孔 嗅覚 脚胆のう腎臓太陽 右目 視覚 頭胸横腹口歯

金星 左の鼻孔 嗅覚吸引器官 子宮陰茎女性と寝るための器官49)手指

水星 舌を月と共有 味覚 舌発話器官月 左目 視覚味覚 首乳房肺胃脾臓

429(426) 惑星の示す歳 430(427) 人間関係惑星名 惑星の指示する歳 惑星に属する人間関係土星 老年(šayḫūḫa) 父親祖父年上の兄弟奴隷木星 熟年(kuhūla) 子供孫火星 壮年(šabāb) 兄弟の真ん中太陽 盛年(ruǧūlīya)人生の中間 父親兄弟の真ん中マワーリー

金星 青年(ḥadāṯa)成年 妻母親年下の姉妹子供の母親両性具有者の子供

水星 少年(ṣabīy) 年下の兄弟

生まれた時は幼年(ṭufūla)その後変わり月始めには青年中旬には壮年下旬には老年(kibar)を示すまた養育の状態を示す

母親母方のおば年上の姉妹乳母女主人

431(428) 惑星の示す外的特徴と容貌惑星名 惑星の指示する外的特徴と容貌

土星

外見が醜い<背が>高い細身しかめつら頭が大きい<眉が>つながっている目が小さい口が大きい唇が厚い伏し目髪が多く黒い<肌の>色が赤と黒に変わる首が短い掌が大きい指が短い脚が曲がっている足が大きい歩幅が広い

木星 身体が美しい顔が丸い鼻先が大きい頬が膨らんでいる目が大きく色は濃い黒顎髭が薄く幅が広い髪が乏しく赤みを帯びている

火星 背が高い頭が大きい目と耳と額が小さい目つきが鋭い<目の色が>青い鼻と唇が美しい肉と髪が少ない髪が直毛で赤みを帯びている指が長い歩幅が広い

太陽 頭が大きい太っている<肌が>白く黄色が染まっている直毛白目に黄色がある声がかすれている腹が大きく脂肪のたるみがある

金星顔が美しく丸い<肌が>白く赤が染まっている太っている腹に脂肪のたるみがある頬肉が多い目がよい黒目が白目より大きい歯が小さい首が美しい中背指が短い脚が大きい

水星体格がよい肌が緑に近い額が美しく狭い耳が大きく眉が美しく繋がっている鼻が美しい口が大きい歯が小さい顎髭が薄い髪が半分縮れていてる目つきがよい足が長い

月色が白く美しく澄んでいる身体が健康顔が丸い顎髭が生えそろっている眉が繋がっている頭に裂け目がある歯が先端で隙間が空き曲がっている髪の房がある髪が美しい

49)前述の「陰茎」を言い換えたものだと思われる

492

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

432(429) 惑星の示す性格惑星名 惑星に属する性格

土星

臆病腰抜け思慮深い小心貪欲悪意がある狡猾心配性暴君的妄想に取りつかれている発言と友情において信頼できる慎重さ経験がある何を考えているか分からないほど深遠で無口奪い取らないような人を愛さない怒ると自分を制御できない自分の行為を主張する湿気と乾燥のように相反するものを示すために<惑星は>知性を指示するが無知を誰も指摘しないほどその人は愚かである

木星

性格がよい知性に鼓舞される穏やか志が高い信心深い公正信頼される機転がきく心が寛大で自由友情が信頼できる誇りが高い大都市での指揮を好む不動産豪邸に対して貪欲忠誠心が強く信用できる悪事を嫌う神を畏れる減食に耐えられる

火星

考えの混乱堅実さ恐れ無知悪意軽率向こう見ず大胆論争好き愚かさ卑猥な言葉移り気に欠ける思慮厳格さ図々しさに欠ける羞恥心信仰心忠誠心に乏しいむら気欺き機敏さ冗談聡明さ活力が目立つ友情善良な喜び忠誠心への無関心を表に現わす

太陽知性知識理解力壮麗さ誇り傲慢荘厳清潔名声に対する貪欲権力闘争賛辞への愛人との交際人への服従怒りっぽいが怒りが冷めやすいことが含まれる

金星

よい性格壮麗善良情熱貪欲歌娯楽遊びの愛好寛大自由兄弟仲のよさ清潔虚栄高慢自惚れ喜び上品な振る舞い正義神として崇めること宗教に身を捧げること肉体の強さ精神の弱さ子供群衆への愛誰に対しても心が穏やかなことが含まれる

水星

知性賢明優しさ穏やかさ威厳同情哀れみ自制優雅深遠移り気保護あらゆる事における傑出楽しみに対する貪欲秘密の隠匿秘密に対する探究心統率評判功績に対する貪欲寛大兄弟の権利を護ること悪事を避けること信仰が正しいこと神への不誠実な服従裏切り華麗悪意臆病恐怖思考の混乱が含まれる

精神の健全さ王たちとともにあれば王に奴隷たちとともにあれば奴隷になるほど人々の性質に染まること親切忘れっぽい雄弁臆病秘密を守らない美と賞賛に貪欲人々に喜びを感じることが多い人々に尊敬される陽気女性に対する野心が非常に多い愛情を表に現わす思慮と独り言が多い知力がない

433(430) 惑星の示す行動性質状態惑星名 惑星に属する行動性質状態

土星遠方への長い追放極度の貧困自分や他人に対する貪欲によって得た富困難辛苦不運心配混乱孤独の好み不正や古くからのことによる隷属詐欺行為策略泣くこと悲しみ孤児になること嘆き

木星

人助け人間関係の修復人々に施し物を広めること近づくすべての人に対する喜びを表わすこと宗教への献身公正な命令嫌悪感を起こすものを禁じること正夢性行為が多い笑い冗談雄弁財産や収入を求める激しい欲望自己欺瞞慎重さに欠け向こうみず

火星

追放旅口論戦い逃亡悪事善良さに欠けること健全な物を蝕むこと嘘中傷偽りの誓い不実で自由な結婚への激しい欲望姦通殺戮強奪に対する欲望暴動逃亡すべての突発事の扇動孤独を好むこと隣人の悪意即答による計略復讐の追求

太陽

支配や指導に貪欲金や財産を集めることへの欲望話し好き来世への不安不正を行うこと危害を与え利用し蜂起させるために反逆者を制圧すること近くにいる者を極度の誤りによって不当に扱い不幸にし遠くの者を幸せにする太陽が高揚にある時は王を指示し失墜にある時は王が見放す人々を指示する

金星

勇敢笑い嘲笑踊りぶどう酒と蜂蜜の愛好チェスや双六で遊ぶこと誓いと嘘が多いあらゆる事を楽しむことそれに対する欲望放蕩男女に対する反感背後からとか擦りつけるというようなさまざまな仕方での性行為が多い話し方が優雅装飾品香水金銀の装飾品衣服への愛好

493

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

水星

教養神学啓示論理学を教えることが上手い甘い言葉雄弁聡明情報の暗唱者激しい暴力財産の損失敵による被害敵からの恐怖が多い奉仕が乏しい仕事が速い男女の使用人を多く欲しがるすべてのことにおける善意悪口泥棒嘘偽装を指示する

月 虚中傷身体の治療に対する配慮生計を得る幸運扶養する力性行為が少ない結婚が多い物事すべてに対して適応するための機敏陽気

434(431) 惑星の示す病気50)

惑星名 惑星と関係のある病気と病気の状態土星 衰弱疫病貧困死見えない箇所の病気手足の痛風木星 なし50)

火星 痩せていること慢性病熱陣痛と中絶した胎児による妊婦の傷害子宮の切開太陽 熱金星 なし水星 なし月 病気が多い

435(432) 惑星の示す階層惑星名 惑星の指示する階層

土星地主君主の執事敬虔な信者苦行者働き過ぎの奴隷下層民迫害された者宦官泥棒死<にかけている>者マズダク信者(al-mazdakŝūn)魔術師悪魔悪鬼中傷する者

木星 王宰相貴族名士裁判官学者礼拝者法律家商人金持ち賞賛する者誉める者

火星 指揮官射手兵士戦士集団から離脱する者太陽 王名士指導者指揮官総支配人裁判官賢者群衆金星 貴族金持ち君主の妻姦婦姦夫それらの子供水星 商人書記官庁と地租の長官闘士奴隷月 君主貴族高貴な自由民妊婦男の金持ち

436(433) 惑星の示す信仰51)

惑星名 惑星の指示する信仰土星 ユダヤ教服装を黒くする木星 キリスト教服装を白くする火星 偶像崇拝酒を飲み服装を赤くする(神のすべての属性を否定する観念)51)

太陽 戴冠(ゾロアスター教)金星 イスラーム

水星 あらゆる信仰における法学者の対立(無神論二元説信仰の探究見解の相違精神錯乱)

月 どの勝利者も受け入れる信仰(マンダ教ハッラーン人の信仰)

50)「なし」という表現がなくただ空欄になっている写本もある51)以下( )内は写本 PMにのみ見られる内容

494

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

437(434) 惑星の示す図像惑星名 惑星の図像

土星右手に人の頭左手に人の手を持ちジャッカルに乗る長老棒で死者を追い立てている別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に顔を覆う盾右手に剣を持っている

木星 右手に抜いた剣左手に旅に持参する弓と真珠を持つ若者使役馬に乗っている別の図では粗末な椅子に座り色とりどりの服を着て左手に真珠を持つ男

火星2頭のライオンに乗り右手に抜いた剣左手に戦闘用の斧を持った若者別の図では頭に兜をかぶって灰色の馬に乗り左手に赤いぼろ布の付いた槍右手に人の頭を持って赤い服を着ている

太陽右手に盾の形のような支えるための棒を持ち四頭の牡牛が引く荷車に乗り手には真珠を持つ男別の図では座っていて顔は円のように丸く 4頭の馬の手綱を持つ男

金星ラクダに乗り手の間につまびく弦楽器を持つ女別の図では座っていて髪を垂らし左手に髪の房右手にそれを見るための鏡を持ち服は緑色と黄色で首飾り鈴腕輪足首飾りを付けている女

水星 クジャクに乗り右手に蛇左手に読むための黒板を持つ若者別の図では椅子に座り手には読むための本を持ち頭には王冠をかぶり緑色と黄色の服を着ている男

月 右手に槍左手に 300 本もあるかのような 30 本の槍を持ち頭には王冠のようなものがあり4頭の馬が引く荷車に乗る人

438(435) 惑星の示す職業惑星名 惑星が指示する職業

土星建築物出費農業土地と水の活用とそれらの分配皮を湿らせなめす仕事物品や遺産の算定墓掘り粗悪な鉄鉛骨髪から作ったものと黒人奴隷の販売悪事につながる知識悪事制圧怒り束縛足かせさらし台を伴う事

木星 清潔な仕事良い統治崇拝善行夢解釈金細工断片的な銀と金白い衣服果物ブドウサトウキビの販売

火星

守衛の管理武器の販売と製造鉄工乗る動物羊の管理と屠殺と皮はぎ獣医外科学の研究少年の割礼犬との遊びヤマネコブタ大鎌ビールグラス大型カバン小箱の販売泥棒傲慢発掘追剥ぎタブーの侵害墓荒らし死人からの略奪牢獄拷問殺人

太陽 奪取贈り物犠牲の動物の販売

金星清潔で立派な仕事市場とそこでの商売を好む重さ広さ分量絵色染色業仕立て業香水製造真珠金銀の装飾品糸白い服ブドウ酒王冠や飾り帯の数珠つなぎの真珠の販売歌の伴奏作曲打楽器弦楽器の演奏賭博遊び仲間

水星

商業商取引協力忠誠の宣誓測量簿記天体予言知識が向上するもの天体の観測土地の測量哲学論争教育詩雄弁知識技術の熟練手の繊細さすべてのことに完全を求めること奴隷革本の販売ディーナール金貨ディルハム銀貨ファルス銅貨に刻まれたものすべて放血櫛の仕事

月情報と手紙の伝達代理経理宗教の研究すべてのことに関する能力医学の探究測量天の学問水と土地の鑑定剃髪食物銀の指輪おとめの奴隷の販売逃亡者と魔術師を示す

495

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

439(436) 惑星の前後の光の度数 440(437) 年52)53)

惑星名 前後の光惑星の年52)

最大 大 中 小土星 9 265 57 43 12 30

木星 9 427 79 45 12 12

火星 8 284 66 40 12 15

太陽 15 1461 120 39 12 19

金星 7 1151 82 45 8

水星 7 461 53) 76 48 20

月 12 520 108 39 12 25

441(438) 昼夜のファルダール 442(439) ファルダールの分担期間 54)

惑星のファルダール昼 夜 分担期間

太陽 10 月 9太陽のファルダール 1 5 4 7

月のファルダール 1 3 12 21

金星 8 土星 11金星のファルダール 1 1 21 10

土星のファルダール 1 6 25 17

水星 13 木星 12水星のファルダール 1 10 8 14

木星のファルダール 1 8 17 3

月 9 火星 7月のファルダール 1 3 12 21

火星のファルダール 1 0 0 0

土星 11 太陽 10土星のファルダール 1 6 25 17

太陽のファルダール 1 5 4 7

木星 12 金星 8木星のファルダール 1 8 17 3

金星のファルダール 1 1 21 10

火星 7 水星 13火星のファルダール 1 0 0 0

水星のファルダール 1 10 8 14

昇交点 3 昇交点 3 昇交点も降交点も惑星とはファルダールを分担しない降交点 2 降交点 2

 これから宮における惑星の協調関係(al-mušārakāt)と役(al-ḥuẓūẓ)について述べよう

52)惑星ごとに年数が割り当てられる伝統はギリシア以来であるがそれがどのような根拠に基づいているかについては説明がなされていないしかしいくつか説明のつくものもある土星と木星の小年はそれぞれの公転周期に一致しているまた太陽の小年はメトン周期(19 太陽年= 235 朔望月)を同じく太陽の最大年はソティス周期(1460 恒星年= 1461 エジプト年)を連想させる中年は大年と小年の和を半分にしたものであるなおギリシアの伝統では中年の端数は切り捨てられ土星木星火星はそれぞれ 434540 年とされ太陽は 69年月は 66 年とされている太陽と月の中年がなぜアラビアで変更されたかは不明である

53)アブーマアシャル『占星術大序説』VII8では 480 年としている54)ファルダールについてはすでに 398 節で説明されている人生を 75 年と考え例えば昼に誕生した者であれば

最初の 10 年は太陽が支配しさらにその期間を 7惑星が順番に 1年 5カ月 4日 7 時間ずつ支配することになるこの 7惑星によって下位区分されたファルダールは「ファルダーリーヤ」とも呼ばる523 節参照

496

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

443(440) 惑星の宿(buyūt)とは何か

 天球は半球に分けられる一方はしし宮の初めからやぎ宮の終わりまでで太陽に属するとみなされる太陽の宿はその最初すなわちしし宮である他方の半分は月に属しみずがめ宮の初めからかに宮の終わりまでである月の宿はその最後すなわちかに宮であるその他の惑星には逆行と順行の運動があるので両者(太陽と月)の宿の両側にある太陽の半分にある宿と月の半分にある宿が各惑星に属しているとみなされる太陽から遠く離れていない惑星すなわち水星から始めおとめ宮とふたご宮がその宿だとみなされるそれは太陽と月の宿に隣接している次に天球の下から上の順番に各惑星とともに<宿が>後に続く以下の図のようにてんびん宮とおうし宮が金星の宿さそり宮とおひつじ宮が火星の宿いて宮とうお宮が木星の宿そしてやぎ宮とみずがめ宮が土星の宿となる

土星の宿

木 星 の 宿

火 星 の 宿

金 星 の 宿

水 星 の 宿

太陽 月しし宮

おとめ宮てんびん宮さそり宮いて宮や ぎ 宮

みずがめ宮

うお

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

か に 宮

444(441) 2 つの宿にある惑星の状態は等しいか

 惑星の 2つの宿の一方がその惑星により適しているその結果性質や男女の性が一致するために惑星はその宿で「歓喜する」と言われる太陽と月には性質が一致する宿はひとつしかないその他の惑星について言えばおとめ宮(冷乾女)はふたご宮(熱湿男)よりも水星(冷乾男女)におうし宮(冷乾女)は金星(冷湿女)におひつじ宮(熱乾男)は火星(熱乾男)にいて宮(熱乾男)は木星(熱湿男)にそしてみずがめ宮(熱湿男)は土星(冷乾男)により適している55) この件に関してインド人はある点ではそれに近く別の点では違っているすなわちおひつじ宮は火星におうし宮は月にしし宮は太陽におとめ宮は水星にてんびん宮は金星にいて宮は木星にそしてみずがめ宮は土星にそれぞれ他の宮よりも適している彼らはそれをムーラトリコーナ(mūlatrikūn mūlatrikoṇa)と呼ぶ 惑星がそこにあることがその宿に付け加わえられるシャハーダ(šahāda)である56)

445(442) 害(wabāl)とは何か

 各宮は惑星の宿に対面しておりそれがその宮の害であり弱点(ḍuʻf)であるインド人は宿は知っているが害を知らない宿のために図を描いたように害についても同じく図に描こう

55)宿と惑星との相性については性の一致を最優先していることがわかる56)「シャハーダ」とは占星術上の影響力の序列を決定する際に考慮される「役」のことである499 節参照

497

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

容易に思い描き記憶できるように

土星の害

木 星 の 害

火 星 の 害

金 星 の 害

水 星 の 害

太陽 月みずがめ宮

うお

宮おひつじ宮

おうし宮ふたご宮か に 宮

しし宮

おとめ

てんびん宮

さそり宮

いて宮

や ぎ 宮

446(443) 惑星の昂揚(ašrāf)と失墜(hubūṭ)とは何か

 これらは宮の惑星に対する関係が権力の場所に対する君主の関係と同じであるような宮のことである惑星はそこで顕著になり昂揚する昂揚はその宮の一定の度数と関係がある 惑星の昂揚がその度数だけにあると考える星学者もいれば昂揚の度数の前にある一定の度数が昂揚に属すると考える者もいるまた宮の初点から昂揚の度数までを昂揚と考える者もいれば宮全体が昂揚でありその度数が昂揚の極限だと考える者もいる以下がペルシア人とギリシア人による昂揚の宮と度数である

惑星 土星 木星 火星昂揚 てんびん宮 21deg かに宮 15deg やぎ宮 28deg

惑星 太陽 金星 水星昂揚 おひつじ宮 19deg うお宮 27deg おとめ宮 15deg

惑星 月 昇交点 降交点昂揚 おうし宮 3deg ふたご宮 3deg いて宮 3deg

 惑星の失墜は昂揚に向かい合う宮のすでに述べた度数と同じ所にある惑星はそこでは威厳を失いその状態は悪くなる

447(444) 昂揚に違いはあるか

 宮については違いはないしかし度数についてはインド人は太陽の昂揚がおひつじ宮の 10 度木星の昂揚がかに宮の 5度土星の昂揚がてんびん宮の 20 度にあることで一致しておりその他の宮については共通しているまた彼らは昂揚にある昇交点と降交点には言及していないがそれはもっともなことである57)

448(445) 三角宮の支配星(arbāb)とは何か

 火の三角宮の支配星は昼は太陽で夜は木星であり両惑星の協力星(šarīk)は昼夜ともに土星である土の三角宮の支配星は昼は金星で夜は月でありその協力星は昼夜ともに火星である空気の三角宮の支配星は昼は土星で夜は水星でありその協力星は木星である水の三角宮の支

57)『ヤヴァナジャータカ』158ndash60 『ブリハッジャータカ』113

498

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

配星は昼は金星で夜は火星でありその協力星は月である 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)は 3惑星が同時に三角宮の支配星になると考え<夜は>昼の順番を変えるだけであるすなわち火の三角宮の支配星は昼は太陽木星土星で夜は木星太陽土星であるその他についてはこれに準ずるしかしかつて彼らの書物はそれについての規則や推論で満ちていたのに今は理解する際に<それらを>考慮していない

449(446) 宮における惑星の視座とはどのようなものか

 2惑星が互いに見つめ合う(mutanāẓirān)2つの宮にある時それらもまた同じく見つめ合うもし両惑星が同じ宮にあれば両者は「集合」(muǧtamiʻān)と呼ばれまた同じ宮の同じ度数にあれば「会合」(muqtarinān)と呼ばれる一方が他方から 3番目<の宮>にあれば両者は六分で見つめ合い一方は右<の六分>であり他方は左<の六分>である一方が他方から 4番目<の宮>にあれば両者は矩で見つめ合っている一方が他方から 5番目<の宮>にあれば両者は三分で見つめ合っているそして一方が他方から 7番目<の宮>にあれば両者は衝で見つめ合っている 両者の度数が等しければ「その視座において結合する」(muttaṣilān fī ḏālika l-manẓar)と言われるなぜならその時の天球は両者の間隔によって正六角形正方形正三角形あるいは半分に分割されるからである

450(447) 惑星の好意(ṣadāqa)と敵意(ʻadāwa)とは何か

 われわれがここに述べることは惑星が宿やその支配星と結合すること(ittiṣāl)に関係があるこれについて星学者たちはいくつかの見解を持っているある者は土星と木星のように根本と影響において正反対にある 2惑星の間に敵意を考える一方は暗く悪く過度であり他方は明るく良く穏健であるまたある者は同時に 2つの性質における対立を考え火のものを水のものの敵空気のものを土のものの敵とみなしているさらにある者は惑星の宿と昂揚の位置からそれを考えている惑星が宮位において互いに敵対する時(377 節参照)<宿と昂揚の>支配星も敵対しある惑星の宿から 12 番目の<宮に宿か昂揚を持つ>支配星をその敵と考えるのである 好意については敵意の理由についてわれわれが述べたこととは反対である哲学者のアブーアル=カースィム(Abū al-Qāsim al-Falsafī)58)が用いているものはそれと似たものでありこの表の中にある

惑星名 敵対する 害する 援助する 援助を求める土星 太陽と月に 木星を 火星を 金星に木星 火星と水星に 水星を 金星を 月に火星 木星と金星に 月を 太陽を 土星に太陽 土星に 金星を 水星を 火星に金星 火星と水星に 火星を 土星を 木星に

水星 木星と金星に 金星を 水星の策略ずるさ悪意を利用するので援助もしないし援助を求めることもしない

月 土星に 火星を 木星を 金星に

58)この人物について詳細は不明

499

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 われわれの仲間が惑星における好意と敵意を用いることはめったにないしかしインド人にとってそれは重要なことでありそれらの効力は非常に大きいものである彼らは宿や昂揚に匹敵するものとしてそれらを用いるのであるしたがってそれらに関する彼らの見解を述べる必要があるそれには彼らの諸原理に応じた一般的な規則があり彼らの主張はこの表にある59)

惑星名 惑星の味方 惑星の敵 中庸にある惑星土星 木星火星月 土星金星 水星木星 太陽水星 月に敵意を示す惑星はない 土星木星火星金星火星 木星太陽月 水星 土星金星太陽 太陽金星 月 土星木星火星金星 火星太陽月 金星水星 土星水星 土星水星 太陽月 木星火星月 金星水星 火星太陽月 木星

 これは基本的な敵意と好意であり時には変化する各惑星はある惑星<がある家>から 10番目11 番目12 番目2 番目3番目または 4番目<の家>にあると<それに対して>誠実であり最も純粋な友情を示すもしその惑星が中庸にある惑星であれば味方になり敵<の惑星>であれば中庸になる惑星がその他の家にあるとそれは敵対し敵意は激しくなるもしそれが中庸にある惑星であれば敵対し味方であれば中庸になる

 さて宮のさまざまな部分と惑星と宮の協調関係についてこれから述べよう

第 3章 宮の細分割451(448) ニームバフル(an-nīmbahr)とは何か

 これは宮の半分でありインド人はそれをホーラー(hūr horā)すなわち時間と呼ぶ各男性宮の前半は太陽に属し後半は月に属する女性宮においてはその反対で女性宮の前半は月に属し後半は太陽に属するこの種のことに関してわれわれの仲間はいまだそれ以外のものを発見しそれと異なるものを導き出そうとしているしかし両者の違いが光と闇ほどの違いになるまではそれらを教える必要はない すでに述べたこととこれから述べることについては彼ら以外の人々の教えを無視してそれを用いる人々にとっては一致したことである

452(449) 顔(al-wuǧūh)とは何か

 これは宮を 3等分したものである60)その支配星はペルシア人とルーム人においては一致していておひつじ宮の最初の 13 の支配星は火星2番目は太陽そして 3番目は金星である天球が下る順に最後の宮まで続く

59)『ブリハッジャータカ』21660)ギリシア語でデカノス(δεκανός)ラテン語でファキエースまたはデカヌス(facies decanus)と呼ばれるもの

プトレマイオスは『テトラビブロス』第 1巻第 23 章で「顔」(πρόσωπον)に言及しているがそれはデカノスのことではない

500

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

453(450) 図像(ṣuwar)とは何か

 これはまさに「顔」であるそれが「図像」と呼ばれるのはルーム人インド人バビロン人がそれぞれ顔と共に昇る図像を考えたからであるルーム人について言えば彼らは恒星の中に想定した 48 星座を考えた残りの 2つの民族について言えば彼らは功績野心目的に基づいてそれらの地域の特徴を示し判断を見いだす場合に必要となるような図像を考えた話が長くなりまたわれわれの手元にある星学書(al-kutub an-nuǧūmīya)はそれを使うための方法に触れていないのでそれについて述べることはしない

454(451) ダリージャーン(darīǧān)とは何か

 これはインド人における宮の 3分の 1である彼らはそれを「ドレーカーナ」(darīkān drekāṇa)と呼ぶ彼らによるそれらの支配星は<前述の顔のそれとは>異なっている各宮の最初のダリージャーン61)はその宮の支配星62)に2 番目はその宮から 5番目<の宮>の支配星にそして 3番目はその宮から 9番目<の宮>の支配星に属している63)以下の表に顔とダリージャーンの支配星がある

宮名 顔の支配星 ダリージャーンの支配星おひつじ宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 太陽 20deg 木星 30degおうし宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 金星 10deg 水星 20deg 土星 30degふたご宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 水星 10deg 金星 20deg 土星 30degかに宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg  月  10deg 火星 20deg 木星 30degしし宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 太陽 10deg 木星 20deg 火星 30degおとめ宮 太陽 10deg 金星 20deg 水星 30deg 水星 10deg 土星 20deg 金星 30degてんびん宮  月  10deg 土星 20deg 木星 30deg 金星 10deg 土星 20deg 水星 30degさそり宮 火星 10deg 太陽 20deg 金星 30deg 火星 10deg 木星 20deg  月  30degいて宮 水星 10deg  月  20deg 土星 30deg 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30degやぎ宮 木星 10deg 火星 20deg 太陽 30deg 土星 10deg 金星 20deg 水星 30deg

みずがめ宮 金星 10deg 水星 20deg  月  30deg 土星 10deg 水星 20deg 金星 30degうお宮 土星 10deg 木星 20deg 火星 30deg 木星 10deg  月  20deg 火星 30deg

455(452) プトレマイオスは宮の 3分の 1を用いたか

 彼に見られるのは空気の変化について宮に関る経験と事例に基づいた宮全体経度上の宮の各 3分の 1そして緯度の南北両側に属する指示である空気やそれがもたらすものの性質を示す惑星の指示が知られ気象現象が見られる朔と望の時の惑星の位置が経度と緯度でわかれば惑星と恒星の混合からもたらされる指示が十分に知られる以下の表にプトレマイオスが顔について述べたことが見られる64)

61)この用語はペルシア語の darēgān さらにはパフラヴィー語の dahīgに由来するギリシア語のデカーノスの翻訳借用であるサンスクリットの drekāṇaも同じギリシア語から派生している

62)宮の支配星とはその宮を宿とする惑星のこと63)『ブリハッジャータカ』11164)プトレマイオスの『恒星の諸相』(Φάσεις ἀπλανῶν ἀστέρον)という著作には気象現象についての記述があるが

それがここで言及されている文献かどうかは不明なおこの著作のギリシア語版は第 1巻が失われ第 2巻のみが存在しておりアラビア語版は断片しか残っていない

501

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 宮全体の指示 北 南

おひつじ宮 雷あられを伴う雨を生む 熱い湿っている腐敗している 氷を生む冷たい

おうし宮 同時に 2 つの性質を示す熱さの傾向がある 性質が温和 秩序のない混乱を生む

ふたご宮 温和な性質を起こす 風と地震を生む 火のように燃えているかに宮 よい状態を起こす熱い 火のように燃えている 火のように燃えている

しし宮 熱さと熱く淀んだ空気を生む 火のように燃えている 湿っている

おとめ宮 湿っている雷を生む 風を生む 性質が温和てんびん宮 変わりやすい変化する 風を生む 湿っている伝染病を生むさそり宮 雷を生む火のよう 燃えている 湿っている

いて宮 風を生む 風を生む 非常に湿っている変化しやすい

やぎ宮 非常に湿っている 非常に湿っている腐敗している

非常に湿っている腐敗している

みずがめ宮 冷たく水のよう 燃えている 吹雪を生むうお宮 冷たい風を生む 風を生む 水のよう

宮 宮の最初 宮の中央 宮の最後

おひつじ宮 雨と風を生む震える 性質が温和 燃えている伝染病とはしかを生む

おうし宮 地震風霧を生む 湿って冷たい 火のよう稲妻と落雷を生む

ふたご宮 多く湿らせる腐敗している 性質が温和 性質が混合される混乱している

かに宮 熱く淀んだ空気地震暗闇を起こす 性質が温和 風を生む

しし宮 熱く淀んだ空気と伝染病を生む 性質が温和 湿って腐敗を起こす

おとめ宮 暑さが激しい腐敗している 性質が温和 水のようてんびん宮 良い性質 性質が温和 水のようさそり宮 吹雪を生む 性質が温和 地震を起こすいて宮 湿っている 性質が温和 火のようやぎ宮 腐敗を生む 性質が温和 雨を降らす

みずがめ宮 非常に湿っている 性質が温和 風を生むうお宮 性質が温和 非常に湿っている 燃えている

456(453) 区界(al-ḥudūd)とは何か

 これは宮における不等区分でありそれぞれが惑星に関係づけられているこれはペルシア語では「マルズ」(marz 領域)と呼ばれ人々によってさまざまであるそれらにはカルデア人すなわち古代バビロン人アスタラートゥー(Asṭarāṭū)65)そしてインド人のジュナフ(Ǧunah)66)

65)アブーマアシャル『占星術大序説』第 5部第 12 章にアスタラートゥーの区界が述べられているこの人物は『テトラビブロス』では言及されていないのでビールーニーはアブーマアシャルのこの著作を典拠にしたと思われる

66)ビールーニーの『過去の痕跡』によればホスロー 2世(590‒628 年)の時代の星学者

502

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

にそれぞれ関係づけられたものがあるこれらすべてが占星術で用いられるわけではなく占星術に携わる人々がそれらに熱心なわけでもないしかし彼らはエジプト人の区界については一致していてそれ以外のものを認めていないプトレマイオスの著作を解説する者はプトレマイオスがある古書の中に見つけ『テトラビブロス』(al-Arbaʻ maqālāt)として知られる彼の著作に書いたと述べている区界を用いた67)われわれはエジプト人の区界とプトレマイオスの区界をそれぞれ紹介しようそれ以外のものを長々と論じても得るものがないからである

宮 エジプト人による区界の支配星 プトレマイオスによる区界の支配星

おひつじ宮 木星6

金星12

水星20

火星25

土星30

木星6

金星14

水星21

火星26

土星30

おうし宮 金星8

水星14

木星22

土星27

火星30

金星8

水星15

木星22

土星26

火星30

ふたご宮 水星6

木星12

金星17

火星24

土星30

水星7

木星13

金星20

火星26

土星30

かに宮 火星7

金星13

水星19

木星26

土星30

火星6

木星13

水星20

金星27

土星30

しし宮 木星6

金星11

土星18

水星24

火星30

土星6

水星13

金星19

木星25

火星30

おとめ宮 水星7

金星17

木星21

火星28

土星30

水星7

金星13

木星18

土星24

火星30

てんびん宮 土星6

水星14

木星21

金星28

火星30

土星6

金星11

木星19

水星24

火星30

さそり宮 火星7

金星11

水星19

木星24

土星30

火星6

木星13

金星21

水星27

土星30

いて宮 木星12

金星17

水星21

土星26

火星30

木星8

金星14

水星19

土星25

火星30

やぎ宮 水星7

木星14

金星22

土星26

火星30

金星6

水星12

木星19

火星25

土星30

みずがめ宮 水星7

金星13

木星20

火星25

土星30

土星6

水星12

金星20

木星25

火星30

うお宮 金星12

木星16

水星19

火星28

土星30

金星8

木星14

水星20

火星26

土星30

457(454) インド人はどのような区界を用いるか

 彼らは男性宮すべてに対してはひとつの一致した数値を用いまた女性宮すべてに対しては数値と支配星の順番を反対にしている彼らはそれを「トリンシャアンシャ」(turī šānš

triṃśāṃśa)すなわち 30 分の 1 と呼ぶそれは等分割ではないので宮の度数を数える必要がある彼らについて述べたことが以下の表にある

男性宮 5 5 8 7 5 女性宮の範囲 火星 土星 木星 水星 金星 の範囲

67)『テトラビブロス』第 1巻第 21 章には「helliphellip最近大部分が損なわれている古写本がたまたま手に入ったこれは説明が自然であり区界の順番と量について一貫していてhelliphellip」とある

503

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

458(455) ヌフバフル(an-nuhbahr)とは何か

 これは宮の 9分の 1でありインド人はそれを「ナヴァアンシャカ」(nawānušak navāṃśaka)と呼ぶ彼らによればその力は非常に大きくその結果その場所における惑星の力が宿の力に匹敵する時「ヴァルゴーッタマ」(barkūttam vargottama)すなわち最大の役と呼ばれるわれわれは表の中に宮ごとに宮の 9分の 1を記したヌフバフルの支配星はその宮の支配星でありヴァルゴーッタマである最初の 9分の 1は転換宮に5番目<の 9分の 1>は固定宮にそして9番目<の 9分の 1>は二体宮に属しているこれはインド人の一致した見解であるがわれわれの仲間は支配星の順番を変え天球の順番にした達人自身が会得するまでそれを<用いることを>避けるのが適切だろう

ヌフバフル おひつじ宮 しし宮 おうし宮 おとめ宮 ふたご宮 てんびん宮 かに宮 さそり宮

度 分 いて宮 やぎ宮 みずがめ宮 うお宮

3 20 おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

かに宮月

6 40 おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

しし宮太陽

10 0 ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

おとめ宮水星

13 20 かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

てんびん宮金星

16 40 しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

さそり宮火星

20 0 おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

いて宮木星

23 20 てんびん宮金星

かに宮月

おひつじ宮火星

やぎ宮土星

26 40 さそり宮火星

しし宮太陽

おうし宮金星

みずがめ宮土星

30 0 いて宮木星

おとめ宮水星

ふたご宮水星

うお宮木星

459(456) 12 分の 1(iṯnā ʻašrīyāt)とは何か

 これは宮の 12 等分の 1であり各区分に支配星がある各宮において12 分の 1の最初はその宮の支配星68)から始まりそれが最初の 12 分の 1 の支配星となるその後2番目<の 12 分の1 >は<最初の宮から> 2番目<の宮>の支配星にそして 3番目<の 12 分の 1 >は 3番目<の宮>の支配星に属しこのようにして最後の宮まで続く掛けることは割ることよりも易しくまた時として惑星ごとに 2度 12 ずつ引くことは困難である特に12 の端数を扱う場合はそうである人々によればこの作業を容易にするために宮の初めから求めるべき度までの度数に12 を掛け求めるべき度数のある宮から宮の順番に各宮につき 30 度をその合計から引くそして 30 度に満たない宮の支配星がその度数にある 12 分の 1 の支配星である69)これはルーム人とインド人が一致していることである

68)ここでの宮の支配星とは宮を宿とする惑星のことである69)例えばしし宮 18 度における「12 分の 1 の支配星」を求めるとすれば18 times 12 = 216216 度はしし宮 30

度+おとめ宮 30 度+てんびん宮 30 度+さそり宮 30 度+いて宮 30 度+やぎ宮 30 度+みずがめ宮 30 度+うお宮6度30 度に満たないうお宮の支配星は木星なのでしし宮 18 度の 12 分の 1の支配星は木星ということになる

504

イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 驚くべきことにわれわれの仲間は<その体系を>変えることなく天球の順番などから<支配星を>決定した彼らはそのことについて救われたとしても別の不名誉なことからは逃れられなかったここはそれについて述べる場所ではないこの表に宮の 12 分の 1の支配星がある

おひつじ宮

おうし宮

ふたご宮

かに宮 しし宮 おとめ宮

てんびん宮

さそり宮

いて宮 やぎ宮 みずがめ宮

うお宮 12 分の 1の支配星

1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 火星2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 金星3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 水星4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 月5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 6 太陽6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 7 水星7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 8 金星8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 9 火星9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 10 木星10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 11 土星11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 12 土星12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 木星

460(457) 男性の度数と女性の度数とは何か

 これについては多くの相違が見られ人それぞれの方法はその権威者(ṣāḥib)から大いにかけ離れているすべては証明何らかの類推または満足のいく体系に欠けていてそれを修正するにも由来と全体像について明らかになっていないそれを考えた者はなんと哀れであったことかしかし人々は宮から男女を判断するように度数によって<男女を>判断している 中でもそれらに何らかの体系を与えた者は度数そのものに宮の性をあてはめたすなわち各男性宮の<最初の>度数を男性< 2番目の>度数を女性として最後まで続けるまた各女性宮の最初の度数を女性2番目<の度数>を男性として最後まで続けるまたある者は度数を 1度ずつ分けるのではなく各宮の男女<の数>が天球全体の宮にある男女の数(男女 6つずつ)になるように男女を 12 分の 1の区分にあてはめたすなわち各男性宮の 2と 12 度を男性次の 2と 12 度を女性とし最後までこのように考えまた各女性宮の 2と 12 度を女性次にそれと同じだけを男性とし最後までこのように考えたのである古代人の中には各男性宮の 12 と12 度を男性次にそれと同じだけを女性次に 2と 12 度を男性そしてそれと同じだけを女性と考えた者がいた彼は女性宮ではそれとは反対に考えたすなわち各女性宮では 12 と 12度を女性次に同じだけを男性そして 2と 12 度を女性残りを男性としたのである 体系がないものについては表にする必要があるそれがこれである

505

ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

宮 男性の度数は黒で女性の度数は赤で書いたもの70)

おひつじ宮 7 2 6 7 8

おうし宮 7 8 15

ふたご宮 6 11 6 4 3

かに宮 2 5 3 2 11 4 3

しし宮 5 2 6 10 7

おとめ宮 7 5 8 10

てんびん宮 5 5 11 7 2

さそり宮 4 6 4 5 8 3

いて宮 2 3 7 12 6

やぎ宮 11 8 11

みずがめ宮 5 7 6 7 5

うお宮 10 10 3 5 2

461(458) 明るい(mudīrsquoa)度数と暗い(muẓlima)度数とは何か70)

 これもまた規則的ではなく表にする必要があるこれは色の知識美しさと醜さ強さと弱さそして喜び安らぎと困難苦悩に関して用いられるこれはさまざまな写本に見られるがそれを校訂する手立てがない時として「光明」(mudīrsquoa)は「光輝」(nayyira)それ以外のものは「暗闇」(qutma)「薄暗」(mutadaḫḫina)「陰影」(ḏawāt ẓill)そして「虚」(fāriġa)は「空」(ḫāliya)と呼ばれる

宮 明暗のある度おひつじ宮 暗闇 3 暗黒 5 暗闇 8 光輝 4 暗黒 4 光輝 5 暗黒 1

おうし宮 暗闇 3 光明 7 空 2 光輝 8 空 5 光輝 3 暗闇 2

ふたご宮 空 5 光輝 2 暗闇 3 光輝 5 空 2 光輝 6 暗闇 7

かに宮 暗闇 7 光輝 5 暗闇 2 光明 4 暗黒 2 光輝 8 暗黒 2

しし宮 光輝 9 暗闇 5 暗黒 6 空 3 光輝 7

おとめ宮 暗闇 5 光明 4 空 2 光輝 6 暗黒 4 光輝 7 空 2

てんびん宮 光輝 5 暗闇 5 光輝 8 暗闇 3 光輝 7 空 2

さそり宮 暗闇 3 光明 5 虚 6 光明 6 暗黒 2 光明 5 暗闇 3

いて宮 光輝 9 暗闇 3 光輝 7 暗黒 4 暗闇 7

やぎ宮 暗闇 7 光輝 3 暗黒 5 光輝 4 暗闇 2 無 4 光輝 5

みずがめ宮 暗黒 4 光輝 5 暗闇 4 光輝 8 空 4 光明 5

うお宮 暗闇 6 光輝 4 空 8 光明 8 暗闇 4

462(459) 幸運が増大する度数と井戸(ābār)とは何か

 幸運が増大する度数について言えば光輝星(an-nayyirān 太陽と月)のうち交替主星(389 節参照)上昇点の度数または幸運箭(sahm as-saʻāda)71)がそこにおいて一致する時がそのような(幸運が増大する)時である

70)写本における赤字はゴシック体で表記する71)478 節参照

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 井戸(birsquor 複数形 ābār)について言えば惑星はその度数にあると活動が弱まる吉星は幸運にすることができなくなりまた凶星は不運にすることができなくなりそのためによい状態を示すことになるその 2つの種類はこの表にある72)

宮 幸運な度数は黒井戸は赤で書かれている72)

おひつじ宮 幸運な度数井戸

196 11 17 23 29

おうし宮 幸運な度数井戸

85 13 18 24 25 26

ふたご宮 幸運な度数井戸

112 13 17 26 30

かに宮 幸運な度数井戸

112

217

323

1426

1530

しし宮 幸運な度数井戸

56

713

1715 22 23 28

おとめ宮 幸運な度数井戸

28

1213

2016 21 25

てんびん宮 幸運な度数井戸

31

57

2220 30

さそり宮 幸運な度数井戸

129

2010 17 22 23 27

いて宮 幸運な度数井戸

137

2012

2315 24 27 30

やぎ宮 幸運な度数井戸

122

137

1417

2022 24 28

みずがめ宮 幸運な度数井戸

71

1612

1717

2023 29

うお宮 幸運な度数井戸

124

209 24 27 28

463(460) 目の障害を示す場所とは何か

 この指示の気配がてんびん宮とさそり宮にあると言われていたがこれは宮そのものではなく雲状の星(kawākib saḥābīya)と例の動物を表し害をもたらす星座の一部である 実際に雲状の星は 4つありその最初はペルセウス座(ḥāmil rarsquos al-ġūl)の手にあるもの(869

884 Per)であるこれは緯度が大きく惑星の軌道から離れているために<目の障害を示す>この仲間には含まれない2 番目はかに座の胸にある2 匹のロバのかいば桶(2632 Cnc)であり73)この仲間に含まれる3番目はさそり座の外側にある針の後に続くもの(6441 Sco)であるこれは「アンワーの書」(166 節参照)では「さそりの毒針」(ḥumat al-ʻaqrab)と呼ばれることもありこの仲間に含まれる4番目はいて座の目にあるもの(ν1 ν2 Sag)でこの仲間に含まれる 恒星のうち小さな星が集まるとそれらはオリオン座の頭にあるハクア(164 節参照)のように雲に似たものになるハクアはプトレマイオスが全体でひとつの雲状の星と呼んだ 3つの星でありその緯度が大きいためにこの仲間には含まれないスライヤー(164 節参照)もハクアと同じであるがその緯度が小さいためにこの仲間に含まれる緯度が小さいものについては月がそこ

72)多くの写本(BHDTS以外)が黒字部分と赤字部分を 2段に分けて表記しておりここではそれらに従う73)「2匹のロバのかいば桶」はギリシア神話に基づく表現である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

を通過し太陽がそれに近づくその両者は両目とそれに関する働きを示すものでなのある 動物の星座にある害の場所について言えばそれは針(aš-šawla)のようなさそり座の大針(mirsquobar)いて座の矢のようなものそしてその尾が魚の尾に似ていることのためにやぎ座の刺であるまたしし座の後部さそり座の両目の間そしてみずがめ座の水口がこの仲間に含まれていた しし座の後部について言えばしし座の尾とおおぐま座の間にあるお下げ髪(aḍ-ḍafīra 7 15 23

Com)74)以外にそこに雲状のものを私は知らないそれはツタの葉の形になる雲状のもののように集まった暗い小さな星であり「フルバ」(al-hulba 髪)と呼ばれるしかしその北緯はハクアの南緯の 2倍ある75)ししの攻撃はその後部ではなく犬歯や爪で行われるのだからしし座の後部にある星が図像の上ではなく性質上そのことを示すのでなければ私はそれがこの仲間に含まれるとは思わない さそり座の両目の間にあるものについて言えばその星座の王冠(β δ π Sco 164 節参照)から心臓(α Sco)までの星が散りばめられた輝く星である 水口について言えばそれは密集した小さな 4つの星(γ π ζ η Aqr)で流れ始めた後の最初の水の曲がりにある人々はそれを「みずがめの瓶」(ǧarrat ad-dalw)と呼ぶが瓶には星はないしかしペルセウス座の剣に星がなくても他方の手にある切り取られた首を切るための手が必要なのだからペルセウス座の剣のように瓶は注がれる水に必要な物なのである 古代人が彼らの時代にこれらの星の位置を記録してから600 年以上が経過したそこでわれわれは今の時代すなわちアレクサンドロス暦 1340 年(西暦 1029 年)におけるそれらの位置を以下の表にしたもしこの時以後の位置を知りたければ66 年につき 1度そして 1年につき約 1分をこの表にあるものに加えよ

特に目に害を及ぼす星始まり 終わり

宮 度 分 宮 度 分スライヤー おうし宮 15 50 おうし宮 17 20

かいば桶 かに宮 24 0 かに宮 24 0

しし座の後部 おとめ宮 6 0 おとめ宮 7 0

さそり座の両目の間 さそり宮 15 0 さそり宮 19 0

さそり座の大針 いて宮 10 40 いて宮 11 10

さそり座の毒針 いて宮 14 50 いて宮 14 50

いて座の矢 いて宮 18 10 いて宮 18 10

やぎ座の刺 みずがめ宮 10 0 みずがめ宮 12 0

みずがめ座の水口 うお宮 3 0 うお宮 4 0

第 4章 家 地平線に応じて宮に起る諸状態をこれから述べようそのうち家の<分割>方法についてはすでに述べた(343 節)宮や惑星の諸状態を見つけ理解しやすくするためにそれらの状態を種類別

74)「お下げ髪」は現在のかみのけ座にあたるかみのけ座はいわゆるギリシア星座には含まれていないが「ベレニケのかみのけ」として古くから言及されている

75)『アルマゲスト』によれば「ツタの葉の形」を成す星群は北緯 25 度から 30 度にあり「オリオンの頭」にある星は南緯 13 度 30 分にある

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の表にしたと同じようにすることが最も適切であろう崇高なる神がお望みになれば

464(461) 出生者を特徴づける家の指示家 出生者を特徴づける家の指示I 精神生活寿命教育誕生地II 保育養育凶星があれば視力の障害生計財産収入源助手子供の仕事

III 兄弟姉妹親戚女婿養母乳母友人移住近くへの旅夢知性宗教に対する理解

IV 父親祖父子孫不動産地所家水出自家系死後の事死者が残すものV 子供友人衣服幸福喜び少ない所得父親の貯え生まれ代わり

VI 病気欠点凶星があれば足の慢性病財産の浪費身体の内部奴隷女奴隷乗るための動物

VII 女性妾嫁に出すこと結婚敵対者死と戦う者協力従者戦い口論

VIII 死死因殺人毒薬による身体の不調遺産女性の財産出費貧困赤貧見せかけの死

IX 旅不在宗教崇拝魔術師判決占星術による予知予言哲学すること測量洞察の正しさ誓い幻と夢の解釈

X 仕事権力指導力高い評判名声命令禁止令物事の誇張母親継母成長弱さ商売技術子供賞賛される者

XI 希望幸福敵の敵来世の事柄賞賛賛辞女性の愛熱情衣服香料装飾品商売建物友人

XII 敵不幸悲しみ牢獄負債賠償金保釈金精神錯乱災難病気出産の前に母親が経験すること乗るための動物家畜奴隷召使兵士流刑飢餓策略

465(462) 質問占星術(al-masārsquoil)やその他につながる家の指示家 質問占星術その他につながる家の指示I 質問者始まり知覚できる物高い地位地位の向上魔術呪文

II 質問者の評価取ることと与えること友人を信じること不在者の帰還友人の敵支配者の書物風がいつ吹くか

III 秘密知らせ崇拝の家高貴な女性

IV 古くて隠された物財宝盗みの場所若者が学ぶ場所城塞幽閉束縛孤立腫れた器官切開焼灼義父

V 知らせ伝達者贈り物賄賂遺産遠い場所所有地の穀物過去の財産の管理宣教食物飲み物

VIずっと探し続けている物逃亡者求められることのない失したつまらない物女性問題宦官貪欲羨望中傷不正不道徳嫉妬欺瞞恐怖牢獄敵移住貧者中途半端な治療

VII 不在者泥棒旅人の目的財宝腐る物同輩の死移住迅速な殺人否認反抗軽蔑廉価高価

VIII 求められる支持者その人の財産埋め隠された物消滅したかはぐれたか古いすべての物堆肥の山ごみ友人の病気正義なき戦い愚かさ口論軽率市場の不振余暇

IX 消失過ぎ去った物書物知らせ伝達者驚異的な事義兄弟タリーカ

X 君主名士裁判官特別なことや一般的なことにおける著名人支配者その人の行い新たに公認された事飲み物継母

XI スルタンの宝庫その人の支持者仕事で得る物解任の後に来る支配者不在者奴隷の子供健全で美しく有益な物再開する事大物の友情賄賂敵意

XII 逃亡者下層民敬虔な行いを諦める者孤独な人囚人質問に先立つ事暴君の財産泥棒乞食財産を奪う者不名誉卑劣軽視悪意狡猾

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

466(463) 家の示す歳 467(464) 家に関するインド人の考え 468(465) 身体 469(466) 身

体に関するインドの考え 470(467) 序列

家 家が指示する歳 家に関するインド人の考え 家が指示する身体 身体に関する

インドの考え家の力の序列

I 青年少年 精神 頭 頭 12II 少年の残り 財産 首 顔 3III 兄弟 両肩と両手 両上腕 5

IV 老年死の時 父親母親よい家友人 胸肋骨両脇 心臓 7

V 子供知性 心臓 腹 8VI 敵乗る動物 腹 横腹 1

VII 歯が生え揃う<時> 妻 腰尻 へその下 9

VIII 死 性器 性器 4

IX 壮年の初め 旅信仰における報酬 両太腿 両太腿 6

X 壮年の中間 仕事 両膝 両膝 11XI 壮年の最後 収入 両脚 両脚 10XII 支出 両足 両足 2

471(468) 家の示す色 472(469) 惑星の歓喜 473(470) 惑星の力の出現 474(471) インド

の方法 475(472) 男女

家 家の色 家における惑星の歓喜

家における惑星の力の出現

家が指示するインドの方法 男女

I 少し灰色 水星 共通 水星または木星 男性II 緑 歓喜がない 木星 Iに続く 女性III 黄 月 火星 IVに続く 男性IV 赤 歓喜がない 月 金星または月 女性V 白 金星 共通 IVに続く 男性VI 黒 火星 共通 VIIに続く 女性VII 薄暗い日没の色 歓喜がない 金星 土星 男性VIII 黒 歓喜がない 土星 VIIに続く 女性IX 白 太陽 水星 Xに続く 男性X 赤 歓喜がない 太陽 太陽または火星 女性XI 黄 木星 共通 Xに続く 男性XII 緑 土星 共通 Iに続く 女性

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

476(473)家 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII

右と左 左 右 左 右

肉体と精神

肉体と精神光の中に現れるまで暗い場所にあるので精神のない肉体とも言われる

精神のない肉体光と暗闇の間にあるので肉体と精神とも言われる

死と旅の間なので精神も肉体もない

肉体のない精神それは昇る速さのためである

色 赤 黒 緑 白遅速 中庸 遅い 中庸 遅い幸運と不運 不運 幸運 不運 不運方角 北 西 南 東男と女 女 男 女 男性質 寒乾 寒湿 熱湿 熱乾インド人による<半円の名称>

すなわち弧(al-qaws)

ダハナ(dahan dahana 火)すなわち弧

ダハナ

半円の名称 前進の半円 下降の半円後退の半円 上昇の半円インド人による<別の半円の名称>

チャットラ(ǧatar chattra)  すなわち傘

ナウ(nāwah nau)すなわち舟

<別の>半円の名称 地上惑星の昼左と長さに関係がある

地下惑星の夜右と短さに関係がある

477(474) 2 つの宮が共有する家の状態はどのようなものか

 もし両者の度数が近ければ両者の間で混合する必要があるもし両者が宮位をなしていれば両者の支配星がともに採用される一方が落位にあれば宮位をなす方<の支配星>がまた両者がともに落位にあれば役と証言において多い方<の支配星>が採用されるまた優位にある宮(al-ġalaba)はその家における宮の度数がより多い方だとみなされる

第 5章 箭478(475) 幸運箭(sahm as-saʻāda)とは何か

 これは太陽から月までの宮の順方向の距離に等しい距離だけ上昇点から宮の順方向に離れた天球上の位置であるこれを知るにはまず第 1の場所に太陽の補正値(muqawwam 補正後の真位置)を第 2の場所に月の補正値をそして第 3の場所に上昇点の値を書く次に第 1の場所にあるものを第 2の場所から引くまず宮から始め<一方の>宮から<他方の>宮を引くもし第 1の場所の宮の方が大きければ第 2の場所の宮に 12 を加える次に第 1の宮をそれから引いて第 1の度を第 2の度から引くもしそれができなければ第 2の宮から 1宮を引きその度に 30 を加える次に第 1の度をそれから引くさらに第 1の分を第 2の分から引くもしそれができなければ第 2の度から 1度を引きその分に 60 を加えるそれから第 1の分をそれから引くそれを終えたら第 1の場所を消すそれはもう必要なくなったからである第 2の場所に生じたものは太陽から月までの距離である第 3の場所の宮と度と分にその宮と度と分を加えるそして第 2の場所を消す次にもし分が 59 より大きければそれから 60 を引きその代わり 1を度に加えるもし度が 29 より大きければそれから 30 を引きその代わりに 1を宮に加えるもし宮が 11 より大きければそれから 12 を引く第 3の場所に残ったものが幸運箭である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

 上昇点がおとめ宮の 8度 20 分太陽がかに宮の 27 度 44 分月がおうし宮の 15 度 25 分を例にして前述のようにそれらをここに記した

第 1の場所の太陽 第 2の場所の月 第 3の場所の上昇点3 1 5

27 15 8

44 25 20

 月の宮から太陽の宮を引きたくても引くものが引かれるものより大きい時はそれができないそこで 13 になるように月の宮に 12 を加えそれから 3を引くまた月の度から太陽の度を引きたくてもこの例ではそれができないそこでその上にある月の宮から 1宮を取りその度に 30 を加えるするとそれは 45 になる次にそれから 27 を引くこの例では月の分から太陽の分を引くことができないそこでその度から 1度を取りその分に 60 を加えるその結果それは 85 になる次にそれから 44 を引く最初の場所を消すと残りの 2つの場所は次のようになる

2番目 3番目9 5

17 8

41 20

 2番目の場所にあるものを 3番目の場所に加えたいのでまず宮に宮を加えると 14 になり度に度を加えると 25 になりそして分に分を加えると 61 になるそこで 2番目の場所を消す分が59 より大きいのでそれから 60 を引き度に 1度を加える度は 29 を越えていないのでそのままにしておくそして宮から一回転すなわち 12 を引くそして 3番目の場所にあるものはこのようになるこれが幸運箭の場所であるそれはふたご宮の 26 度 1 分にある

3番目すなわち幸運箭の場所2

26

1

 これこそがこの方法に基づいてプトレマイオスが常に変ることなく用いた箭であるそれ以外のものについて言えば昼はそのようにするが夜はそれを反対にし月を第 1の場所に太陽を第 2の場所にそして上昇点を第 3の場所に置くしかしそれには矛盾が伴う

479(476) 幸運箭以外にも箭があるか

 プトレマイオスについて言えばそれ以外を認めていない彼以外は出生占星術(al-mawālīd)においてそれを乱用したわれわれはアブーマアシャルが述べているものを表にしよう76)各箭の観点は 3つある始点(mabdarsquo)すなわち第 1の場所にある項目終点(muntahan)すな

76)アブーマアシャル『占星術大序説』VIII3ndash5

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

わち第 2の場所にある項目そして起点(mulqan min-hu)すなわち第 3の場所にある項目である引くもの(manqūṣ)引かれるもの(manqūṣ min-hu)加えられるもの(muzād ʻalay-hi)と言うこともできるさらに別の条件がそれに加わるすなわち昼と夜で設定を同じにするかあるいは場所を反対にして夜は違ったものにするかである彼らが質問占星術や<物の>価格に関して書き留めている箭には数に際限がないなぜならそれらはたえず増えていて愚かな者はそれらを増やすことにしかならないからであるそして習得が不十分なために<それらは>削除されたり採用されたりしながら残存している神は助けを求められる者

7 惑星の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 月の箭すなわち幸運箭月の上昇点と呼ばれる 太陽 月 異なる 上昇点

2 太陽の箭すなわち不在と信仰の箭 月 太陽 異なる 上昇点3 金星に属する友情と愛情の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点4 水星に属する貧困と少ない手段の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点

5 土星に属する束縛牢獄それを逃れるか否かの箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点

6 木星に属する繁栄援助勝利の箭 不在箭 木星 異なる 上昇点7 火星に属する勇気と大胆さの箭 火星 幸運箭 異なる 上昇点

12 家の箭

最初の家(aṭ-ṭāliʻ)に属する 3つの箭8 生活の箭 土星 土星 異なる 上昇点

9 上昇点の支柱の箭すなわち不変継続出生者の状態の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点

10 雄弁と理性の箭 水星 火星 異なる 上昇点

2 番目の家に属する 3つの箭

11 財産の箭 財産の家の支配星

財産の家の度 異なる 上昇点

12 負債の箭 土星 水星 異なる 上昇点13 機会をとらえることの箭 水星 金星 異なる 上昇点

3 番目の家に属する 3つの箭14 兄弟の箭 土星 木星 同じ 上昇点15 兄弟の数の箭 水星 土星 同じ 上昇点

16 兄弟姉妹の死の箭 太陽 10 番目の家の度 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

4 番目の家に属する 8つの箭17 父親の箭 太陽 土星 異なる 上昇点18 父親の死の箭 土星 木星 異なる 上昇点

19 祖父の箭 太陽の家の支配星 土星 異なる 上昇点

20 性質の箭すなわち起源と家系の箭 土星 火星 異なる 上昇点21 ヘルメスによる不動産と地所の箭 土星 月 異なる 上昇点22 あるペルシア人による不動産の箭 水星 木星 異なる 上昇点23 農業と耕作の箭 金星 土星 同じ 上昇点

24 物事の結果の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

5 番目の家に属する 5つの箭25 子供の箭 木星 土星 異なる 上昇点26 誕生時子供の数子供の男女の箭 火星 木星 同じ 上昇点27 男児の状態の箭 火星 木星 同じ 上昇点28 女児の状態の箭 月 金星 同じ 上昇点

29 胎児出生者問われる者それぞれ男女の箭 月の家の支配星 月 異なる 上昇点

6 番目の家に属する 4つの箭30 ヘルメスによる病気虚弱慢性病の箭 土星 火星 異なる 上昇点31 ある古代人による病気の箭 水星 火星 同じ 上昇点32 奴隷の箭 水星 火星 同じ 上昇点

33 囚人と束縛の箭 交替主星の家の支配星 交替主星 同じ 上昇点

7 番目の家に属する 16 の箭34 ヘルメスによる男の結婚の箭 土星 金星 同じ 上昇点35 ワーリースによる男の結婚の箭 太陽 金星 同じ 上昇点36 女に対する男の狡猾さと詐欺の箭 太陽 金星 同じ 上昇点37 女との男の性行為の箭 太陽 金星 同じ 上昇点38 男の不徳と不貞の箭 太陽 金星 同じ 上昇点39 ヘルメスによる女の結婚の箭 金星 土星 同じ 上昇点40 ワーリースによる女の結婚の箭 月 火星 同じ 上昇点41 男に対する女の狡猾さと詐欺の箭 月 火星 同じ 上昇点42 男との女の性行為の箭 月 火星 同じ 上昇点43 女の不徳と非道の箭 月 火星 同じ 上昇点44 女の貞節の箭 月 金星 同じ 上昇点

45 ヘルメスによる男と女の結婚の箭 金星 7番目の家の度 同じ 上昇点

46 ヘルメスによる結婚時期の箭 太陽 月 同じ 上昇点47 結婚における手配と促進の箭 太陽 月 同じ 上昇点48 義理の息子の箭 土星 金星 同じ 上昇点49 口論と論敵の箭 火星 木星 異なる 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

8 番目の家に属する 5つの箭

50 死の箭 月 8番目の家の度 同じ 上昇点

51 命にかかわる惑星の箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

52 死と干ばつが出生者を脅かす年の箭 土星 朔か望の家の支配星 同じ 上昇点

53 重苦しい場所と病気の場所の箭 土星 火星 異なる 水星の度

54 困難と不幸の箭 土星 水星 異なる 上昇点

9 番目の家に属する 7つの箭

55 旅の箭 9番目の家の支配星

9番目の家の度 同じ 上昇点

56 水上の旅の箭 土星 かに宮の半分 異なる 上昇点

57 敬虔の箭 月 水星 異なる 上昇点58 理性と深遠さの箭 土星 月 異なる 上昇点59 知識と理解の箭 土星 太陽 異なる 上昇点60 伝承人々の噂迷信の箭 太陽 木星 異なる 上昇点61 噂が真実か嘘かということに関する箭 水星 月 同じ 上昇点

10 番目の家に属する 12 の箭

62 出生者の高位および彼が父親の子かどうかを疑う者の箭 時の支配星 その昂揚の

度 異なる 上昇点

63 支配権と権威の箭 火星 月 異なる 上昇点64 指導者宰相権力者の箭 水星 火星 異なる 上昇点65 権威援助勝利の箭 太陽 土星 異なる 上昇点66 突然昇進する人々の箭 土星 幸運箭 異なる 上昇点67 聖人名士名誉ある人々の箭 土星 太陽 異なる 上昇点68 兵士と護衛の箭 火星 土星 異なる 上昇点

69 権威者および出生者がどのような仕事をするかの箭 土星 月 異なる 上昇点

70 手仕事の職人と商売の箭 水星 金星 異なる 上昇点71 あるペルシア人による商売購入販売の箭 不在箭 幸運箭 異なる 上昇点72 果たされるべき仕事と指令の箭 太陽 木星 異なる 上昇点73 母親の箭 金星 月 異なる 上昇点

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

11 番目の家に属する 11 の箭74 名誉の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点75 愛される人と憎まれる人の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点76 名誉があって必要物を支援する有名人の箭 幸運箭 太陽 異なる 上昇点77 成功の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点78 この世での貪欲と強欲の箭 幸運箭 不在箭 異なる 上昇点79 希望の箭 土星 金星 異なる 上昇点80 友人の箭 月 水星 同じ 上昇点81 必需品の箭 不在箭 水星 同じ 上昇点82 肥沃および家での多くの利益の箭 月 水星 同じ 上昇点83 精神の自由の箭 水星 太陽 異なる 上昇点84 賞賛され称えられる者の箭 木星 金星 異なる 上昇点

12 番目の家に属する 3つの箭85 ある古代人による敵の箭 土星 火星 同じ 上昇点

86 ヘルメスによる敵の箭 敵の家の支配星 敵の家の度 同じ 上昇点

87 不幸の箭 不在箭 幸運箭 同じ 上昇点

 以上 87 の箭のうち惑星に属するものは 7つで80 が家の箭として残る

 惑星または家と関係のない箭は 10 ある

88 ハイラージュの箭 朔か望の度 月 同じ 上昇点89 身体が病弱な者の箭 幸運箭 火星 異なる 上昇点90 騎士道と勇気の箭 土星 月 異なる 上昇点

91 大胆さ激しさ戦いの箭 上昇点の支配星 月 異なる 上昇点

92 詐欺狡猾さ策略の箭 水星 不在箭 異なる 上昇点93 必要物の場所と欲望の箭 土星 火星 同じ 上昇点

94 エジプト人による急務と必要物の遅れの箭 火星 3番目の家の箭 同じ 上昇点

95 ペルシア人による急務と必要物の遅れの箭 不在箭 水星 同じ 上昇点96 ジズヤの箭 火星 太陽 異なる 上昇点97 正しい行いの箭 水星 火星 異なる 上昇点

 これが 97 の箭でありそのうち惑星や家に関係のないものが 10 ある

480(477) これらの箭の手順は異なるかまた 2つが一致することがあるか

 これらの中には状態の違いによって異なるものすなわち父親の箭がある土星が<太陽の>光線の下にある時昼は太陽から木星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられる必要があるまた祖父の箭は太陽がしし宮にある時昼はしし宮の初点から土星までを夜はその反対

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

を取り上昇点から加えられるもし太陽が土星の家にあれば昼は太陽から土星までを夜はその反対を取り上昇点から加えられるただしその場合土星が<太陽の>光線の下にあるかそれともそこから出ているかは関係ない 同じ場所に 2つの箭がある場合について言えばそれは何と頻繁に起ることであろうかそのことは表から明らかであるあるものは昼と夜で同じままでありあるものは昼は同じであるが夜は異なるその反対もあるだから長々とそれを数え挙げても得るものはない

481(478) これら以外の箭があるか

 これは長くほとんど際限のない話題であるあるものは一族の状態や支配者の即位に関する世界年回帰(taḥwīl sanat al-ʻālam)に使われるあるものは天候や物価を知るために朔と望<を用いる占い>に使われるそしてあるものは質問占星術に用いられるさらに各人が各分野について何らかの見解を持っているわれわれは彼らの書物に見られるこの分野を表にして述べよう

482(479) 世界年回帰と合(qirānāt)に使われる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 権威の箭 太陽の天の中央

回帰時の天の中央 同じ 木星

2 別の方法 合の上昇点の度 合の度 同じ 上昇点

3 繁栄の箭 太陽の度 下降点の度 同じ 上昇点

4 戦いの箭 火星 月 同じ 繁栄の箭の度

5 ウマルイブンアル=ファッルハーンによる別の方法 火星 月 同じ 上昇点

6 第 3の方法 土星 月 同じ 上昇点7 軍隊における和平の箭 月の度 水星の度 同じ 上昇点8 主権の箭 太陽 火星 同じ 上昇点9 勝利の箭 幸運箭 木星 異なる 上昇点

10 合の最初の箭 合の年の上昇点 合の度 同じ 上昇点

11 合の 2番目の箭 合の上昇点 合の度 同じ 上昇点

483(479) 年季節朔望が関わる箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 土の箭 土星 木星 同じ 上昇点2 水の箭 月 金星 同じ 上昇点

3 空気と風の箭 水星の度水星のある家の

支配星の度同じ 上昇点

4 火の箭 太陽 火星 同じ 上昇点5 雲の箭 火星 土星 異なる 上昇点6 雨の箭 月 金星 異なる 太陽7 あられの箭 水星 土星 異なる 上昇点8 日々の箭 太陽の度 土星の度 上昇時 月

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

484(479) 同じく関係のある価格の箭番号 箭の名前 始点 終点 昼と夜 起点

1 小麦の箭 太陽 木星 異なる 木星2 大麦と肉の箭 月 木星 異なる 上昇点3 米とキビの箭 木星 金星 異なる 上昇点4 米とモロコシの箭 木星 土星 異なる 上昇点5 エンドウ豆の箭 金星 水星 異なる 上昇点6 レンズ豆と鉄の箭 火星 土星 異なる 上昇点7 エジプト豆とタマネギの箭 土星 火星 異なる 上昇点8 ヒヨコ豆の箭 金星 太陽 異なる 上昇点9 ゴマとブドウの箭 土星 金星 異なる 上昇点10 砂糖の箭 金星 水星 異なる 上昇点11 蜜の箭 月 太陽 異なる 上昇点12 油の箭 火星 月 異なる 上昇点13 クルミと亜麻の箭 火星 金星 異なる 上昇点14 オリーブの箭 水星 月 異なる 上昇点15 アンズの箭 土星 火星 異なる 上昇点16 メロンの箭 木星 水星 異なる 上昇点17 木綿と絹の箭 水星 金星 異なる 上昇点18 塩の箭 月 火星 異なる 上昇点19 砂糖菓子の箭 太陽 金星 異なる 上昇点20 渋いものの箭 水星 土星 異なる 上昇点21 香辛料のきいた食物の箭 火星 土星 異なる 上昇点22 甘い下剤の箭 水星 土星 異なる 上昇点23 苦い下剤の箭 土星 火星 異なる 上昇点24 酸っぱい下剤の箭 土星 木星 異なる 上昇点

485(479) 質問占星術に使われる箭番号 これらは質問占星術に使われる箭 始点 終点 昼と夜 起点

1 本心の箭 上昇点の支配星

10 番目の<家の>度 同じ 上昇点

2 必要物があることの箭 時間の支配星

上昇点の支配星 同じ 10 番目の

<家の>度

3 必要物がある時の箭 時間の支配星

10 番目の<家の>支配星

異なる 上昇点

4 噂の真偽の箭 水星 月 異なる 上昇点

5 必要物を入手する者の箭 上昇点の支配星 幸運箭 同じ 上昇点

6 自由人と奴隷の箭 木星 土星 同じ 水星7 アラブとマワーリーの箭 木星 土星 同じ 月

8 結婚の箭 7番目の<家の>度

7番目の<家の>支配星の度

同じ 上昇点

9 ワーリースによる妊娠時の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

10 ワーリースによる仕事の期間の箭 太陽 土星 同じ 上昇点11 辞職の時の箭 太陽 木星 同じ 土星

12 ワーリースによる時の箭必需品の<箭の>支配星

幸運箭 同じ 10 番目<の家>

13 不在者の生死の箭 月 火星 同じ 上昇点14 はぐれた動物の箭 太陽 火星 同じ 上昇点15 口論の箭 火星 水星 同じ 上昇点16 仕事達成の箭 太陽 木星 同じ 上昇点

17 首打ちの箭 月 火星 同じ 8番目の<家の>度

18 刑罰の箭 月 土星 同じ 6番目の<家の>度

486(480) 2 つの箭(as-sahmān)と 2匹の獣(al-bahīmatān)とは何か

 ヘルメスには『85 章』と呼ばれる論文がありその中で彼は兆候(ar-rumūz)のようなものについて述べている77) 2匹の獣について言えばマーシャーアッラーフによれば黒い獣は土星で黄色い獣は太陽である78) 2つの箭について言えばそれらについてそれぞれの見解を持つ 2つの集団が存在するだけであるマーシャーアッラーフらが支配者の寿命についてそれらに依拠したためにその 2つが必要とされるようになったのである 星学者の中にはそれらについて際限もなく精密でない多くのさまざまな方法で長々と計算する傾向がある者がいるまた王が即位し王朝の支配者が現れる年の回帰時に2つの箭の最初のものを太陽からしし宮の半分まで<の距離>でそして 2番目の箭を月からかに宮の半分まで<の距離に>で取る者もいるともに昼夜で異なることはなく上昇点に加えられるまた最も高度な者は最初の箭が土星自身で2番目の箭が木星だと考えている彼らの考えをすべて述べると一冊の本になるほど長くなる

第 6章 太陽と惑星の関係 これから太陽との関係における惑星の諸状態について述べようというのは太陽はそれを示す周期性に関して最も有力であり自然の諸状態の成り行きに最も似ているからである

487(481) 内奥(taṣmīm)東見(tašrīq)西伏(taġrīb)とは何か

 惑星が太陽とともにあって太陽との合まで残り 16 分以下にある時または太陽との合の後同じだけ通過した時その惑星は「内奥にある」(ṣamīm)と呼ばれる3つの上位惑星について言えば順行の中間にある時だけそのことが起る2つの下位惑星では順行の中間と逆行の中間のそ

77)この著作は一般に『根拠の書すなわち星学の 85 章の書と呼ばれるもの』(Kitāb al-asās wa-huwa allaḏī yusammā fī kutub an-nuǧūm al-ḫamsa wa-ṯ-ṯamānūn bāban)と呼ばれるこの論文の内容はまだ確認できていない

78)マーシャーアッラーフにも「85 章からなる警句の書」という論文があるがその内容はまだ確認できていない

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

れぞれでそのことが起る「東見」79)という点から言えば下位惑星における逆行の中間は上位惑星における順行の中間に相当する 上位惑星が内奥の分を越えてからまた逆行の中間にある 2つの下位惑星がその分を越えてから惑星から太陽までの距離が 6度になるまですべての惑星は「燃焼している」(muḥtaraq)と呼ばれる 惑星から燃焼(al-iḥtirāq)の性質がなくなると惑星は「光線の下にある」(taḥta aš-šuʻāʻ)と呼ばれる太陽と金星水星のそれぞれとの間が 12 度土星木星との間が 15 度そして火星との間が 18 度になるまであたかも惑星が現れて目に見える準備をしているかのようであるその度数が惑星の東見の始まりであるそれはクリマや都市によって異なるので視界に現れることを意味しているのではないそれはむしろクリマや都市ごとに限定された範囲である その後は「東進している」(mušarriq)と呼ばれペルシア人はその時の惑星をケナーレローズ(kinār rūzī 昼の境)と呼ぶその後は上位惑星と下位惑星とで違いが生じる 上位惑星は距離が 30 度になるまでは「東進している」と呼ばれ距離が 90 度になるまでは「東見が弱い」(ḍaʻīf at-tašrīq)と呼ばれるその名称(東見)は惑星からは決してなくならないなぜなら惑星は太陽が昇る時には東の方向にあるからである距離が 90 度を越えた時は前述の理由から惑星から東見という名称が失われるその後惑星は逆行に向かうために留まり留の後逆行し逆行が終わると順行に向かうために留まる逆行の中間で太陽は惑星と衝になり逆行の前半は「第 1の逆行」後半は「第 2の逆行」と呼ばれる順行になった後太陽と惑星の距離が90 度になるまで惑星は日没時に東の方向にあるまたそれが 90 度以下になれば日没時の惑星は西の方向に傾くこの距離が 30 度になるとそれは西伏の始まりである西伏の距離は火星では 18 度土星と木星は 15 度までであるその後惑星と太陽の距離が 6度になるまで惑星は光線の下になりそれから燃えるそして惑星は内奥に戻る『アルマゲスト』では夜の境(aṭrāf

al-layl ἀκρόνυχος)と呼ばれる状態が時として「太陽に対する上位惑星の衝」と呼ばれるこれは日没時における出が上位惑星に固有なことに由来するペルシア人はそれを彼らの言葉でケナーレシャブ(kinār šabī 夜の境)と呼ぶしかし彼らは上位惑星と下位惑星に共通な別の状態すなわち夜の始まりにあたる西伏もそのように呼ぶので後者と前者を区別するために後者には「西」という言葉を添えるのである

488(482) 東見後の 2つの下位惑星の状態とは何か

 2惑星の東見は逆行の状態にあり両者とも太陽から遠くに達することはない東見に続くのは留そして順行であるすなわち太陽からの最大距離に達してから太陽への接近を始めるその間ずっと 12 度の距離になるまで東見という言葉で呼ばれるそれ(12 度の距離になる時)は朝東に両惑星が見えなくなる始まりであるその後距離が 7度よりも少なくなるまでは光線の下になりそれから燃える太陽との合の時には2惑星は順行の中間で内奥となるその後の西における 2惑星の状態は燃焼光線の下そして西見80)のために夕方現れるという点で前述の範囲で東にある上位惑星の状態に対応するその後太陽からの距離が最大となり留逆行と続き前述の距離に達すると前の状態に戻るまた逆行における内奥は<前述の内奥とは>

79)「東見」とは惑星が日の出前に東の空に現れること152 節参照80)アラビア語では「西伏」と同じ用語が使われている

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

別のものである81)

489(483) このことについて金星は水星と異なるか

 東見と西伏の距離について言えばすでに述べたように星学者たちが土星と木星の間には違いを考えてはいないが火星には認めているように両者(金星と水星)の間には区別が必要であるそれら(土星木星と火星)の違いはすでに述べた金星と水星の間の違いについて言えば金星は非常に緯度が大きく<なる時があり>時として北緯が最大の時には内奥と燃焼の区別がなくなるだから金星は燃焼と光線の下について前述の範囲内(それぞれ 6度と 12 度以内)にある時でも目に見えこの 2つの表現は使われない同様に内奥の場合金星の北緯が 7度以上である時は「燃えている」とも「内奥にある」とも呼ばれず「太陽との合にある」と言われる

490(484) 太陽に対する月の状態とは何か

 月と太陽の距離が東西に 7度以下の時に月は内奥と燃焼の範囲において惑星と同じ状況にあるその距離が 12 度すなわちだいたい新月となる境にまで増えると月は光線の下になるしたがってファースィーサについてすでに述べた距離は望から両側に新月に向かう 2つの距離において月全体の 141234そして月全体で輝く部分である82)

491(485) 太陽の右(tayāmun)と左(tayāsur)とは何か

 星学者が依拠しているのは3つの上位惑星が燃焼の時から太陽と衝になるまでまた 2つの下位惑星が逆行の中間における燃焼から順行の中間における燃焼に至るまでそして月が望から朔になるまでがそれぞれ太陽の右になるということである左について言えばそれは上位惑星が太陽との衝の時から合になるまで下位惑星が順行の中間における燃焼から逆行の中間における燃焼に至るまでそして月が朔から望になるまでである

492(486) 惑星の影響は惑星の状態の変化によって変るか

 もし惑星の諸状態に変化がないのであればそれを学んでも得るものはないすでに述べた惑星と太陽の関係について言えば内奥が強さの最大限にありそこにある惑星が幸運を示すというこ

81)下位惑星の状態を太陽中心説で説明すると以下のようになる

太陽

地球

順  

逆 

光線の下

太陽の視半径=16分 の内側内奥内奥

光線の下

東larr 日の出

に先行して出

 rarr西

東larr  日没に

遅れて没  

西

東larr  日没に

遅れて没  rarr

西

12度 6度12度 6度

燃焼

燃焼

東伏

太陽の右

  

(西)

東見

燃焼

西伏

太陽の左

 

(東)

西見

82)ファースィーサについては 255 節参照輝く部分が月全体の 141234全体となる時の離角はそれぞれ45 度と315 度90 度と270 度135 度と225 度そして 180 度となる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

とで彼ら(星学者)は一致しているまた燃焼についてはそれが弱さの最大限にありその結果不運の域を越えて破滅に至ることで一致しているもし彼らが熱さの過剰や湿気の減少のような性質の類似や対立によって区別するとすれば惑星によってはそれによって燃焼による悪影響が少ないことも多いこともあるのであるしかし燃焼の後の光線の下にある惑星は病気から回復と活力へと向かう者のようである東見はそこにおいて恩恵を与えることができるそれら(回復と活力)の完了の時であるペルシア人はそれを「ダストゥーリーヤ」(dastūrīya)と呼びその名称を太陽の右すべてにも用いている太陽から 30 度の距離まではそのままで続き幸運の指示が中庸になるそして太陽から 45 度まではその指示が弱くなり60 度までで状況が変わり「小凶」(aš-šaqārsquo al-aṣġar)と呼ばれる75 度までは「中凶」(aš-šaqārsquo al-awsaṭ)で燃焼までは「大凶」(aš-šaqārsquo al-akbar)である第 1の留にある惑星は抑圧された者や絶望した者のようであり第 1の逆行にある惑星は顔を殴られて当惑した者のようである第 2の逆行では援助を期待する者のようであり第 2の留ではその期待が救出にまで高まる順行はその名のとおりで幸運や活力の徴候である 同様に惑星の性質は離心天球において上昇する時に変化し乾きとなるまた下降する時は影響の仕方が変わることはなく湿気となるまた周転天球において上昇する時と下降する時にも変化がある<上位惑星は>東見から第 1の留までは湿気また逆行の中間までは熱さ第 2の留までは乾きそして次の東見までは寒さであるが影響の仕方に変化があるなぜなら周転天球での出来事は太陽に依存しているからである また惑星は太陽に近づく時は乾き離れる時は湿ると言われるその場合惑星は燃焼などのために性質が変化するこのことが<周転天球の>上昇と下降に加わると離心天球の状態とは反対になるその上さらに<惑星が>宮や区界の中の湿の場所にあることが変化させている男女間に変化が生じることもあり東見では男性西伏では女性となる 宮においても同様で精神が身体の性情に従うように<惑星が>各宮の指示に従うその結果女性宮にある男性の惑星が女らしさを示しあるいは男女の度数に応じた宮の一部分に従う時として指示の混合によって宦官両性具有者男性の女らしさ女性の男らしさを示すこともある 惑星はまた地平線に基づく天球の四分円においても男女や四性質に関して変化するまた杭などに関しても変化し特に指示が最も強い場合と最も弱い場合がある杭では吉星の幸運が強くなるが特に固定宮においてそうであるまた固定宮にある凶星の害が強くなるが特に杭から落ちる時(248 節参照)がそうである転換宮にあればその事態は和らぐが特に杭を過ぎていない時がそうである ある人々によれば西は下位惑星に東は上位惑星により適している彼らは方向として男女に似ていると考え問題を一般化したかのようであるしかしそれは限定されていて太陽からの距離が基準になっている 上位惑星の東見は燃焼の後の順行中に起り上位惑星にとって好ましいものであることが知られているなぜならそれは惑星が困難から抜け出した段階にあるからである順行中の下位惑星が夕方西に現われることがこれに対応しているなぜならそれもこのような特徴にあるからである 上位惑星の西伏について言えばこれは順行中に燃焼に向かっている時に起る順行中の下位惑星が朝方東に見えなくなることがこれに対応しているなぜならそれもこのような状態にあるからである

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 下位惑星の東見について言えばそれは燃焼の後に起るために上位惑星の東見の状態に近くまた順行にも近いもし 2つの下位惑星がそこで順行していれば全惑星が等しく東見の状態にあることになる 運行が遅くなる下位惑星の西伏について言えばそれは上位惑星の西伏よりも害と弱さにおいて著しいそれは2つの下位惑星が逆行と同時に燃焼に向かっているからであるしたがって西伏にある上位惑星はその後見えなくなる西伏にある下位惑星よりも安全な状態にある

第 7章 惑星の強弱 両者(上位惑星と下位惑星)の違いは対照的ではないが東見の強さと西伏の弱さに関する指示の違いについて初心者が知るべきことをヤアクーブイブンイスハークアル=キンディーの言葉83)に基づいて次の表にして引用しよう崇高なる神がお望みになれば

493(487) 惑星が東にある時の指示惑星 惑星が東にある時の指示

土星 老年の始まり耕作における幸運水利技術装置による水の分配装置に関する思慮深さと名声都市の防備迅速鋭敏良くない行いによる富

木星 中年の始まりよい方向性美しさ荘厳憐れみ高官を勤めること判決人々に対する公正豊富な財産よい評判子供に関する喜び

火星 戦いの手腕軍団の指揮援助による名声征服に対する貪欲勝利物事の速さ鉱山の採掘

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない金星 東見における惑星の影響は西伏よりも少ない

水星 知性論理思慮遠さ知恵の発見詩雄弁税金の契約測量計算を含むものすべて知恵医学星学論理学

月 月の半ばから 22 日までは中年を示し朔までは老年を示す

494(488) 惑星が西にある時の指示惑星 惑星が西にある時の指示

土星 かなりの老年生計の不運行いの卑しさ地位の低さ奉仕遅れること水分や井戸の仕事卑しい食べ物詐欺罪

木星 中年の後半中位程度の技術管理訴訟の代理スンナの書物のための製紙のような宗教に関する仕事禁欲生活外科医学十分な財産

火星 軍団における卑しい仕事窃盗反抗火と鉄の仕事肉屋調理人鍛冶屋蹄鉄工外科の実践のような卑しい仕事

太陽 東見と西伏は太陽に対して起ることなので両者とも太陽は関係ない

金星 美しさ愛情喜び楽しみ歓喜結婚贈り物そのための努力技術のうち娯楽の仕事染色装飾絹の錦織や刺繍の仕事

水星 前に述べたことは東見においては完遂され西伏においては弱まるただし水星と金星における西伏はより害が少ない

月朔から 7日までは幼年望までは青年を示す月とそれ以外のものが「光線の下」にあれば秘儀と秘密を示す特にこの段階の月の光に似ていることからすべての悪い存在を示す

83)キンディーの引用文献が何であるかは不詳

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

495(489) 相遇(ittiṣāl)と相離(inṣirāf)とは何か

 この 2つは宮位(376 節参照)と関係がある惑星の視座は宮と結びついており<惑星が位置する宮同士が>宮位の関係にある惑星は前述の合六合矩三合衝という名のもとで見つめ合っている互いに見つめ合っていない場合は<宮位から>落ちて隠れた状態であるひとつの宮か 2つの宮にあって互いに見つめ合う 2惑星のそれぞれの度数が等しい時両者は完全に相遇の状態にあるより速いためにより低い天球にあるものがより重いためにより高い天球にあるものに相遇するのである したがって月はすべての惑星に相遇するが後者が月に相遇することはない水星は月を除くすべての惑星に相遇し金星は水星と月を除く惑星に相遇する金星がその両者よりも高いからである太陽は下位惑星ではなく上位惑星に相遇し火星はその上にある木星と土星に相遇するがそれより下にあるものには相遇しない木星は土星にだけ相遇し土星はいかなる惑星にも相遇しないすべての惑星がその下にあるからである見つめ合う 2惑星のうち低い方が高い方より度数が少なければ低い方が高い方とその近くのある場所で相遇しようとしているもし低い方の度数が多ければそれは高い方と相遇した後にそれから相離しているのであるそして低い方は「操縦を強要する惑星」(dāfiʻ tadbīr)また高い方は「操縦を強要される惑星」(madfūʻ ilay-hi)と呼ばれる以上が経度上の相遇である

496(490) 相遇の始まりに範囲があるか

 相遇が出会いにそして相離が通過に似ているので低い方の惑星が宮位の宮にあって相遇に向かう動きを始めた時その状態は完成に向かっているただし(1)それ以外の惑星が先行して高い方の惑星との相遇を妨害するか(2)相遇が完了する前に高い方の惑星が宮から移動するかあるいは(3)低い方の惑星が逆行によって相遇を中止する場合は別であるそしてその範囲には違いがある ある人々によれば両者の間の度数を 5度から始め死の度数(次節参照)の 5度の分だけ多くとる他の人々によればそれを 6度で始めるなぜならそれは惑星の区界の平均値である宮の15 だからであるまた別の人々によればそれは月食の距離に基づく 12 度であるさらに別の人々によれば太陽本体の前後にあって影響力として知られる太陽光<の範囲>に基づく 15 度であるまたある実践家は相遇の始まりを両者の間が両者本体の影響力の総和の半分になった時だと考えたまた相遇を合の時にのみ認め別の視座ではそれを認めず用いない者もいる 相離について言えば低い方の惑星の度数が高い方惑星の度数より大きいこと以外に範囲はないその結果たとえ<範囲が> 1分でも彼らはそのように言うなぜなら相遇の状態が失われているからである影響が残る範囲については相離が完了するまでは相遇に関する前述の数値が用いられる

497(491) 死の度数(daraǧāt mayyita)とは何か

 これは上昇点の度数の前の 5度であり宮の順方向とは反対にあるプトレマイオスはそれを12 番目の家とも上昇点を越えた度数とも考えずそこに惑星がある時はそれが上昇点にあるものとみなした84)

84)『テトラビブロス』III11 3参照

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498(492) 経度上以外にも相遇の種類があるか

 相遇には緯度上と性質上の 2種類がある緯度上について言えばそれは<黄道の>南北のうち同一領域にある 2 惑星の緯度が等しい場合である両者の緯度が異なり緯度の大きい方が<どちらかの>領域で下降し緯度の小さい方が同じ領域で上昇する場合は一方が他方との相遇に向かっているもし緯度の大きい方がある領域で上昇し緯度の小さい方がその領域で下降する場合は一方が他方との相遇を過ぎたのであるもし両者が同じ領域でともに上昇すれば相遇は緯度が小さい方の力によって起るつまりそれが相遇に向かっているのであるこの力というのは惑星の最大緯度がその時の緯度がより大きい惑星の最大緯度よりも小さくないということを意味しているなぜならもし小さければその力は発揮されず相遇したとは言えないからであるもし両者がともに下降し緯度の大きい方がより速く下降すればそれは相遇に向かっているしかし<相遇が>完了することもあれば緯度の小さい方が別の領域に移動することで完了しないこともある緯度上のこの種類が経度上のものに対して優位であるのは後者は 7つの視座(2つの六合2つの矩2つの三合衝)以外ではあり得ないが前者にはある優位点があるからである例えばある惑星が上位の惑星85)に経度上で相遇しながらその上位の惑星から落位にある別の惑星に緯度上で相遇する場合その経度上の相遇は一瞬も起らないことになるのである 性質上について言えばそれは2惑星が「力において対応する」(380 節参照)2つの宮にある場合である2惑星が「力において対応する」2つの度数に達すれば両者は相遇する例えば木星がおひつじ宮 20 度そして月がうお宮 5度にあって月が木星に相遇する場合である月がうお宮 10 度に達する時にそれが完了するもし両者の宮が互いに見つめ合うかあるいは両者が「道において対応する」宮にあればこのことはより確実である両者が「道において対応する」度数に達する時相遇が完了する例えば木星が前述の場所にあり月がおとめ宮5度にある時おとめ宮 10 度で相遇が完了するここでもまた互いに見つめ合うことで確実なものとなる

499(493) シャハーダ(šahāda)とムザーアマ(muzāʻama)とは何か

 両者は同じ意味を持つ同意語でありともに 2種類あるうちのひとつの方法で惑星に起る最初の種類は惑星が位置する場所においてであるもし惑星に例えばその惑星が支配星となる「宿」とかその惑星が昂揚する「昂揚」とかあるいは惑星が所有し関係するその他のもののようなある一定の分担(naṣīb)や役(ḥaẓẓ)があればその惑星はそこにおいてひとつのシャハーダか複数のシャハーダを持つことになるもし惑星にその場所において支配権を有するものが何もなければその惑星はそこにおいて不在状態(ġarīb)となるもしその場所が「害」や「失墜」(445‒446 節参照)のような役の力に対して反対の力となるものであればそれは不在に加えて災難<の状態>となる 2番目の種類は惑星の場所以外で起り次の 3種類に分けられるまずある惑星が前述の役のひとつを別の惑星の場所に認めその結果その惑星が別の惑星のシャハーダに関わる場合である別の惑星は「その惑星の宿の主人」とか「その惑星の昂揚の主人」と呼ばれる次に戦いや口論における火星のシャハーダ財産や名誉における木星のシャハーダそして娯楽や結婚にお

85)「上位の惑星」とはより上位にある惑星という意味であり太陽より上のいわゆる「上位惑星」とは異なる「下位の惑星」も同様である

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

ける金星のシャハーダのように物事における起源や性質に関するものである86)そして最後に昼における太陽夜における月そして日や時間などの支配星のような交替<主星>そのものに関するものである87)

500(494) シャハーダに序列があるか

 ムザーアマのうちの先頭に立つのは宿の支配星であり次に昂揚の支配星区界の支配星三角宮の支配星そして顔の支配星であるこれに応じて彼らは例えば 2惑星の役の数をそれぞれ合計し両者を対比するために宿の点数を 5昂揚の点数を 4区界を 3三角宮を 2そして顔を 1と考えたその結果<一方の役が他方に対して>多いことや少ないことが知られる 聖俗両世界にわたる権威を典拠にして上昇点の支配星は 30昂揚の支配星は 20顔の支配星は 10区界の支配星は 5三角宮の支配星は 3と 12時間の支配星は 4と 12そして 2光輝星のうちの交替主星は上昇点の支配星と同じものがそれぞれ割り当てられると言われるそして惑星の加算される点数を比較するこれは顔の支配星を<区界と三角宮の支配星に>先行させるという点でバビロンの古代人やペルシア人の見解に似ている 星学者の中の改革者たちは三角宮を区界と顔に先行させるまたある者は顔をまったく考慮せずこの序列は状況によって異なっているすなわち権力指揮権威厳に関する事柄については昂揚の支配星が宿の支配星に先行するのであるまたこれらのシャハーダが宮位または宮位に代わるものに基づいていることを知る必要があるなぜなら2惑星のそれぞれに 2つのシャハーダが集まる時または両者の役の点数が等しい時両者のうち宮位をなすものに優先権がありひとつのシャハーダ<を持つもの>が 2つのシャハーダを持つものに優先することはない

501(495) ムブタッズ(mubtazz)とは何か

 ムブタッズとは征服するものでありそれには絶対的なものと限定的なものとがある絶対的なものは惑星のうちその時に最も力のある惑星であり天球地平線<他の>惑星との位置関係においてシャハーダが最も多いものである 限定的なものは状態において最も強くて良いものであり12 の家に割り当てられ関係づけられた状態においてシャハーダが最も多いものである

502(496) ハイイズ(ḥayyiz)とハルブ(ḥalb)とは何か

 両者は意味が似ていて<同じ状態を>共有している昼の惑星は昼には地上にあり夜には地下にあるその反対に夜の惑星は夜には地上にあり昼には地下にあるこれがハルブである また男性の惑星が男性宮にあり女性の惑星が女性宮にあることがそれに加わるとハイイズとなるこれはハルブよりも一般的でありアブーマアシャルは男女の度数の要件もそれ(ハイイズ)に加えている88)ハイイズにおいては火星は他の惑星とは異なり男性であり同時に夜の惑星でもある(388389 節参照)したがって火星が夜に地上にあって昼に地下にありさらに男性宮にあればそれはハイイズにあるのである

86)例えば火星はどの位置にあっても戦いや口論に関わることにおいて影響力を行使する87)例えば太陽は昼であればどの位置にあってもその影響力を行使する88)アブーマアシャル『占星術大序説』VII6

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503(497) ムナーカラ(munākara)とは何か

 これはハイイズの反対に近いすなわち昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあり89)その夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にあることまたは夜の惑星が昼の惑星が支配する宮にありその昼の惑星が夜の惑星が支配する宮にあることである

504(498) 惑星の歓喜(faraḥ)とは何か

 惑星は力や幸運によって歓喜し役にあることでそれ自身が喜ぶだから惑星は前述の 2つの宿のひとつにおいて歓喜しハルブかハイイズにあることで歓喜するまた上位惑星は東にある時や順行中の下位惑星が西にある時のように太陽に近づく距離で歓喜する惑星はそれらが支配する東西南北の方向で歓喜し表によって家について前述したように家のひとつで歓喜し地平線による四分円で歓喜するそして上位惑星は増加する四分円でまた下位惑星は減少する四分円で歓喜する90)

505(499) 前進(iqbāl)と退却(idbār)とは何か

 前進とは<惑星が>杭にあることであるなぜなら杭が存在を示すものであり性質において適度な位置だからであるまた退却とは<惑星が>「杭を過ぎたもの」にあることであるなぜなら「杭を過ぎたもの」が腐敗と適度からの逸脱とを示すからである「杭に続くもの」にあることについて言えばそれは 2つの状態の中間の境を前進へと越えているなぜなら退却から前進への通路の場所にあるからである気高さ美徳に関して杭と「杭に続くもの」が優越し脱力感と悪徳に関して「杭を過ぎたもの」が優越することによって前進と退却の 2つの状態が優位にある3番目<の家>と 9番目<の家>は杭を過ぎており<地平線下に>沈んでいる 6番目<の家>と 12 番目<の家>は上昇点から落ちているのである91)

506(500) 閉鎖(ḥiṣār)とは何か

 これが 2つの宮で起る場合は一方が 2番目にあり他方が 12 番目にある 2惑星の間である惑星が閉鎖される(maḥṣūr)ことである またひとつの宮の中で惑星本体に起る場合は惑星が宮の中で 2惑星の間にありその 2惑星の一方がその惑星より度数が少なく他方がその惑星より多い時である さらに光線に起る場合は惑星がある宮にありその前に別の惑星の光線がありその後にさらに別の惑星の光線があることである2つの凶星の間の閉鎖は極端に悪くまた 2つの吉星の間では極端に良い

507(501) 疑念(tuhma)とは何か

 各惑星に不吉な出来事と燃焼逆行害失墜没(zawāl)92)落位凶星との友好関係凶星からの憎悪を伴う宮位によって悪い状態とが重なるとその惑星の指示は疑わしく(muttaham)それは約束を破ることになる

89)「夜の惑星が支配する宮」とは夜の惑星が宿とする宮という意味90)「増加する四分円」と「減少する四分円」については 204 節参照91)厳密に言えば6番目の家は下降点から落ちている92)地平線から沈み見えなくなることだと考えられる

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

508(502) 好意(inʻām)と返礼(mukāfarsquoa)とは何か

 惑星が失墜井戸あるいは特にその惑星が役を持たない宮にある時その惑星は窮屈な場所(al-muṭābiq)や貯蔵穴の中に閉じ込められたような状態である友好関係またはムザーアマ関係にある惑星がその惑星に相遇する時前者は後者の手を取って困難に巻き込まれた状態から後者を助ける前者は後者に対して「好意を示すもの」(munʻim)と呼ばれその結果この好意を示すものに後者に起ったことと同じことが起ると<今度は>後者が前者に対して好意を示し前者の好意に対して後者が返礼をする(kāfarsquoa)ことになる

509(503) 2 つの右手を持つもの(ḏū al-yamīnayn)とは何か

 2つの右手を持つものとは天の中央の杭にある惑星でありその惑星の六合と矩の 2つの光線がともに地上にあり勝利がその惑星に関係してくる2つの右手を持つものと呼ぶ理由についてはその惑星の指示がそのようなものだと言われている 2つの左手を持つもの(ḏū al-yasārayn)について言えばそれは天の中央にある惑星でありその惑星の六合と矩はともに地下にある

510(504) 進行の無効(ḫalārsquo as-sayr)とは何か

 これは他の惑星の視座から落ちてはいない惑星がその宮にある間は他の惑星に相遇しないことである惑星がその宮での相遇を放棄しようとしまいとその惑星の進行は無効となり「相遇に対する進行の無効」(ḫālī al-sayr ʻan al-ittiṣāl)と言われる

511(505) 進行の無制御(waḥšīya as-sayr)とは何か

 これは惑星がある宮に入り始めた時からそれを出るまであるいはある知られた時からその宮を出るまですべての惑星の視座から落ちている状態であるこれは上位惑星と太陽においては全く不可能なことであるしかし下位惑星のうち月の場合には必然的に頻繁に起るたとえ速い月でないとしても金星と水星の一方が遅く他方が速い場合に両者は進行が無制御だということがあり得るある人々は進行が無制御である月が惑星の区界にあることを月が惑星と相遇することの代わりに用いているこれは取るに足りない意見であり根拠が薄弱である

512(506) 相遇の状態は何によって完了するか

 前述の相遇の形態において操縦する下位の惑星と操縦される上位の惑星の間に返却(radd)と回避(fawt)反抗(iʻtirāḍ)阻止(intikāṯ)<光の>遮断(qaṭʻ)禁止(manʻ)のそれぞれがないこととによって<完了する> 「返却」とは上位の惑星が逆行にあるか光線の下にあって力が弱くそれに差し出されたものを確保できずに<下位の惑星に>戻すことであるもし両惑星の間に「歓迎」(513 節参照)があるか下位の惑星が杭にあるか両者ともに杭か杭に続くものにあればこの返却の弱さは結果として吉となるもし上述の弱さが下位の惑星にあり上位の惑星が杭か杭に続くものにあればたとえ始めは期待されていても結果は凶となるまたもし両者がともにそのような状態であればすべての事態に凶が及ぶ 「回避」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向っている時相遇が完了する前に上位の惑星がその宮から移動しさらに下位の惑星がその宮にある時かその宮から移動してから最初

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

の惑星と相遇する前に別の惑星と相遇することであるこうして最初(上位)の惑星は<下位の惑星との>相遇を回避したのである 「反抗」とは下位の惑星が上位の惑星との相遇に向う時に宮の終わり付近に中間惑星すなわち下位の惑星より高く上位の惑星より低い惑星がありその相遇が完了する前に中間惑星が上位の惑星の方向に逆行し反抗者(muʻtariḍ)のようにそこを通過することである下位の惑星は中間惑星とは相遇するが上位の惑星とはしない もし中間惑星が上位の惑星のある宮から 2番目の宮にあって逆行の状態でそこに入ればそれは 2つある「光の遮断」のひとつである93)もうひとつは下位の惑星が中間惑星と相遇しそれが完了する前に中間惑星が上位の惑星を通過することである下位の惑星は上位の惑星とは相遇するが中間惑星とはしない 「阻止」とは下位の惑星と上位の惑星との相遇が完了する前に前者の逆行によって前者が後者に対して向きを変えることである 「禁止」とは中間惑星が下位の惑星と上位の惑星の間にあって下位の惑星と上位の惑星の相遇を禁止することであるさらに合<となる惑星同士>の相遇と宮位<となる惑星同士>の相遇が同時に起り合と宮位の度数が同じ時には合となる惑星の相遇が宮位のそれを禁止するもし宮位をなす惑星の度数が<合となる惑星のそれよりも>相遇に近ければ前者の方が相遇にふさわしいまたもし宮位をなす両惑星の度数が等しくともに第 3の惑星に相遇すればその相遇は「歓迎」あるいはその優位性を得ることになる宮位には<強さの>違いがあり合<の相遇>が宮位<の相遇>を禁止したようにより強い宮位がより弱い宮位を禁止すると考える必要があるただし星学者たちはこの意味については何も語っていない

513(507) 歓迎(qabūl)とは何か

 これは下位の惑星が上位の惑星の役のひとつにあることである「私はあなたの息子です」「私はあなたの召使です」あるいは「私はあなたの隣人です」と言う人のように前者は後者との関係を後者に知らせるもし上位の惑星もまた下位の惑星の役にあれば歓迎は完全なものとなり役の数が倍増する特に惑星が好ましい視座(三分または六分)にある時がそうであるまた歓迎の反対は「拒絶」(inkār)である

514(508) 強要(dafʻ)とは何か

 強要する惑星(ad-dāfiʻ)が相遇<に関るもの>であり操縦(at-tadbīr)とともに用いられることはすでに述べた(495 節)強要する惑星は強要される惑星の状態に関係なくそれ自身の役のひとつにあればその相遇は「力の強要」(dafʻ al-qūwa)と呼ばれるあるいはそれが強要される惑星の役のひとつにあれば「性質の強要」(dafʻ aṭ-ṭabīʻa)と呼ばれるこれは歓迎について述べたことと全く同じであるあるいは強要する惑星の宮に 2つの惑星があればそれぞれの惑星にムザーアマがあることになる2つのうち強要する惑星がそれ自身の性質と同時に(同じ宮にある)他方の惑星の性質もそれ(強要される惑星)に強要するかのように「2つの性質の強要」と呼ばれるハイイズにある惑星と同じハイイズにある他の惑星との相遇もまたその名で呼ばれるなぜならハイイズは 2つの状態によって初めて完成するからであるしたがってハイイズにある昼の惑星がハイイズにある別の昼の惑星に相遇すればそれは「2つの性質の強要」と呼ばれる

93)この場合中間惑星が下位の惑星の光を遮断する

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

515(509) ムラーダファ(murādafa)とは何か

 これは逆行における相遇すなわち逆行の状態にある下位の惑星が逆行の状態にある上位の惑星と相遇することである両者の状態が同じなので両者間に返却はないもしそこに歓迎があればそれは悪い事態の改善を示すしかしこの相遇は順行の状態における相遇と同じではなくそれとは異なるものである

516(510) 相遇と宮位に代るものが何かあるか

 下位と中間の 2惑星が上位の惑星に相遇する時上位の惑星は他の 2惑星の光を集めるもし相遇する 2惑星が互いに見つめ合っていれば両者はその状態でも相遇していることになるもし両者の一方が他方の視座から落ちていれば<上位の惑星が>両者の光を集めることで宮位のない相遇の代わりになるこれが「収集」(al-ǧamʻ)である もし下位の惑星が上位の惑星との視座から落ちた中間惑星から離れその後上位の惑星と相遇すると中間惑星の光を上位の惑星に運ぶことになるこれが「移転」(an-naql)である互いに見つめ合う 2惑星の間でも両者が相遇した後にこのことが起るそしてこの移転は相遇の代わりになる移転には別の方法があるすなわち下位の惑星が中間惑星と相遇しこの中間惑星が上位の惑星と相遇する場合であり94)それが下位の惑星が上位の惑星に相遇することの代わりになるこれは一方が他方と落位にある時に起ることであるなぜなら宮位をなす時の下位の惑星はすばやく上位の惑星と結びつくからであるある書物では火星が太陽と土星の間で移転すると「最大移転」と呼ばれ月がその両者の間で移転すると「最小移転」と呼ばれる 時として2つの惑星は第 3の惑星あるいは天球上の一定の場所<の宮位>から落ちその後その両者はそれらと宮位をなす惑星に相遇しその第 3の惑星または一定の場所と宮位をなすそれは惑星の光を鏡のように家から家へと反射する95)<人々は>これを「反射」(radd)と呼んだがこれには前述の「返却」(radd)(512 節)との間に名称の曖昧さが残る彼らはそれ(反射)を別の種類だと考えているすなわちそれこそが本来の「移転」であり彼らが相離を言及せずにそれを説明することはない彼らによればそれ(移転)が 2惑星の間で起る時下位の惑星が上位の惑星から離れ別の惑星に相遇すると2つのうちの一方の光が他方に反射する最初のもの(返却)が相遇の代わりとなるようにこれ(反射)が相離の効力を免れることはないはずである「サルフ」(aṣ-ṣarf 転換)とか「アクス」(al-ʻaks 反対)のような言葉をここで「ラッド」の代わりに用いれば曖昧さはなくなる

517(511) 開門(fatḥ al-bāb)とは何か

 2つずつの惑星が互いに対立していてその一方が他方に相遇することを「開門」と呼ぶ月または太陽が土星に相遇することは「静かな雨こぬか雨雪の開門」金星が火星に相遇することは「にわか雨あられ稲妻雷の開門」そして水星が木星に相遇することは「風の開門」と呼ばれる

518(512) 惑星の強弱とはどのようなものか

 すでに太陽惑星天球黄道環家のそれぞれに対する惑星の諸状態について述べたそれ

94)この場合中間惑星が下位の惑星の光を上位の惑星に運ぶ95)この場合2つの惑星がそれらの光を第 3の惑星または一定の場所へと反射する

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

によってわかるのはそれらの状態における各惑星の良い点と悪い点であるひとつの惑星における良い特性すべてあるいはその大部分がその惑星の持つ最大の強さを形成するその特性が減少するに応じて<惑星の>強さが減少し強さの違いが生じる一般にそれらの反対が惑星が持つ最大の弱さである弱さの特性が減少するに応じて<惑星の>弱さも減少する 列挙すると(1)96)惑星が順行にあって運行が速く増大する時(2)光線に隠れることから逃れ上位惑星であれば東に下位惑星であれば西にあること(3)吉の状態にある光輝星と視座をなし賞賛され好ましくあること(4)吉星が伴うか吉星と宮位をなすこと(5)凶星が落位にあること(6)性質が似ている恒星が近くにあること(7)前述の惑星の通過が凶星の上か吉星の下になるように天球内で上がること(8)北の方向に昇ること(9)吉星の宿役そして性質において似ている場所にあること(10)宿のうちその惑星に最も適したところにあること(11)杭やそれに続くものにある状態で惑星のハイイズにあること(12)歓喜にあること(13)性質が惑星に似た増大する四分円にあって凶星を支配し征服することこれらが最大の強さである (1)惑星が遅くなるか逆行にあるか光線の下で西に消える時(2)下位惑星であれば西伏とともに遅くなって逆行に向うこと(3)光輝星に対して落位にあるか宮位において敵対し好ましくないこと(45)凶星が惑星に対して敵意をもった宮位にあるか凶星が伴うこと(6)惑星に反する<性質の>恒星が近くにあること(7)惑星が吉星の下を通過する時に凶星が惑星の上に上がるように惑星が天球内で下がること(8)南に沈むこと(9)凶星の宿や役にあって幸運から遠ざかっていること(10)害か失墜にあること(11)ハイイズの反対にあること(13)惑星に反する<性質の>減少する四分円にあって杭やそれに続くものから落ちていること(12)歓喜の反対側にあること(13)凶星が惑星に影響することこれらが最大の弱さである これは簡潔に述べた強さと弱さの状態であるさらにそれらが混ざることでさまざまな状態になるそこに達するには探究によって経験を完全なものにする必要がある

519(513) この点について光輝星(太陽と月)は惑星と異なるか

 これは必要なことである光輝星が互いに見つめ合い吉星と共にあるか吉星と宮位をなし光輝星がその役か吉星の役にある時両者はともに強い状態にあるもし両者がそれらに好ましくない場所にあり凶星がそれらに敵意を示しそれらを占有し吉星がそれらに対して落位にあり両者が食の状態にあるかジャウザハルの交点特に降交点から 12 度以内に近づけば両者は弱い状態にある次に月に特有なことは欠けること望になること光の減少交替<主星>の時に地下にあることそして燃焼の道にあることであるこれらの悪い兆候は弱さを増大させるある人々は月の悪い兆候として月が宮の終わりにあること2つの凶星の 12 分の 1にあること沈む時に南にあること上昇点から 9番目<の家>にあることを列挙しているこのすべてがもっぱら月に特有なのではない宮の終わりはすべて凶星の区界であり97)それらと 12 分の 1は月と惑星すべてに共通なことである上昇点から 9番目<の家>について言えばそれは月の歓喜の反対側であり98)月に固有のことである

96)この番号は惑星の強弱の条件を対照させるために訳者が付したものである97)456 節にあるように各宮の最後の区界の支配星は火星か土星である98)472 節によれば月は 3番目の家で歓喜する

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

520(514) 燃焼の道(ṭarīqa muḥtariqa)とは何か

 これはてんびん宮の終わりとさそり宮の始めであるこの 2つの宮はともに両宮の暗さ(iẓlām)と逆境(idbār)のために99)そして両宮が光輝星の失墜(446 節参照)にあることのために光輝星にとって好ましいものではない2つの凶星の一方(火星)は宿において他方(土星)は昂揚においてその 2つの宮を支配している前述の場所は一方(てんびん宮)では土星の昂揚と太陽の失墜の近くにまた他方(さそり宮)では月の失墜のあたりにあるために燃焼の道のように言われる凶星すなわち火星の 2つの区界が出会うのは2つの宮のその間である100)

第 8章 占星術の種類521(515) 占星術(aḥkām an-nuǧūm)は何種類に分けられるか

 天球の内部にあるものは単独にせよ合成によって別のものが生じるにせよ4元素であるそしてこの 2種類とも惑星と運動によって影響を受ける 単独のものは全般的に変化を受けないが互いに接する境界は強制的に変質を招く対立のために変化を被るこれは地面上におけることである <他方で>それらの混合は大地に注がれる光線の影響によって完成する4つの性質はそれ(混合)によって完全なものとなる地表は惑星のさまざまな配置に応じて出来事が起る場所であり希薄化にしたがって地中や水中に向う光線が通過する所であるその後光線は反射し蒸発した水と煙状の土が光線の反射が弱まる所まで昇るこの運動は世界における生成消滅の原因となるものであるこのように生じたものはある程度持続するか速やかに消えて無くなる空気中で循環するものは熱と冷と中庸の性質であり湿と乾とともにそこで起ることは空気の動きでありそれに伴って動く雲雨雪あられ湿ったさまざまなものであるまたそこで聞こえるものは雷轟き叫びでありそこで見えるものは稲妻雷電虹かさ流星隕石彗星そして「天候の出来事」と呼ばれるその他のことである地中に起ることは地震と陥没水中で起ることは潮位の上昇洪水水害であるこれは以上の種類のものを含む<占星術の>種類(自然占星術)でありそれほど長くは持続しない持続時間の最も長いものの例は雨雪彗星地震であるそれらはたとえ継続しなくても時としてある場所に力を集めその場所を壊滅させることもある 次に構成要素から成るものすなわち植物と動物が続くここで起ることはその両者に関することであるそれには 2つの方法があり全体的なものは属(al-ǧins)と種(an-nawʻ)に共通し部分的なものはさらに下の区分に生じるその中には長く持続するものや速く消滅するものがある全体的なものについて言えば例えば作物の被害による飢饉や作物の減少はひとつまたは複数の国に広がるまた例えばひどい疫病はひとつまたは複数の都市に及ぶ部分的なものについて言えばそこにおいて起ることは場所としては狭くあまり個人的なことではないこれには戦争王朝間の争いや交替反対派や君主の離反宗派や宗教の出現による精神的な混乱が結びついているこれらのことは継続時間も長く影響力も大きいこれが第 2の種類(全般占星術)である それに続くのは各個人またはその時代その場所その人の一生の間に現われる諸状態な

99)この文脈での「暗さ」と「逆境」の意味は不明100)てんびん宮の最後の区界とさそり宮の最初の区界の支配星はともに火星である

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

どに特有なことあるいはその人の死後の影響や子孫であるこれが第 3の種類(出生占星術)である その後に続くものは人々の行うことや人々に対して行なわれたことの諸状態であるこれが第 4の種類(選択占星術)であるこれはすべてたとえ知られていなくともある原理に基づいている それに続くものはそれらの状態を知るための第 5の種類(質問占星術)であるしかしその原理は知られていないこれによって占星術はその限界を越えたものに近づきできないことを負わされているなぜなら占星術では全体的な重要なことから個別的な細かいことに<至る>順序だからであるそのために占星術は一方ではすでに述べた種類に対応し他方では予言(al-kihāna)の仕方に似ているもしその境を越えればたとえ星が言及されていたとしても占星術ではない前兆(az-zaǧr)の領域に入るのである

522(516) 第 1 の種類の原理とは何か

 これと第 2の種類はその原理において共通しているすなわちそれは大合中合小合そしてそれらの後の年の合の場所合の<の時の>上昇点<ペルシア語の>ハザーラートで知られる千年期百年期十年期ファルダールという周期(an-nawba)が到達する場所であるある者はそれら(合)に先行する朔または望を採用し後者を前者(合)の代わりにするまたある者はそれら(合)の前後近くで起る食を採用するその目的のために使われるのはもっぱら日食であり特に食の程度が大きい場合である

523(517) 第 1 の種類の詳細と説明はどのようなものか

 合の度合の上昇点そして合の年の上昇点101)は1 太陽年に 1宮という動きで宮の順方向に交替地点を動かしそれが到達する場所は「到達点」(muntahan)と呼ばれるしたがってそれは翌年には最初の宮と同じ度の次の宮に到達する例えばある年の初めの到達がかに宮 10 度であれば翌年の初めにはしし宮 10 度に達する千年期やそれに続くものもそれに似ていて時間の長さによってのみ区別されるだからそれらは度と宮において異なるのであるまたそれらはペルシア人によるものでありそのためにそれらの名前はペルシア語で知られている すでに述べたようにアブーマアシャルによれば世界年が 360000 年でありその中間で大洪水(aṭ-ṭūfān)があった彼にはそれに関する『千年期』(al-ulūf)と呼ばれる著書があるそこにおいてはまず最初に千年期と天球の度の間で各度が 1000 年に対応するつまり 1年では 3と 35 秒となり彼はこれを「大分割」(al-qisma al-ʻuẓmā)と呼んだ2番目に千年期と宮の間で各宮が 1000 年に対応する彼はこれを「千年期の到達」(intihārsquo al-ulūf)と呼んだ3番目に一年期と宮の間で各宮が 1年に対応するすでに述べたように年の到達はそこから導かれる4番目に一年期と度の間で各度が 1年に対応するこれが「小分割」(al-qisma aṣ-ṣuġrā)である一年期と千年期の間にはまだ 2つの段階があるすなわち一方には各宮が 100 年に対応し他方には各宮が 10 年に対応する到達がある彼は十年期と百年期の度数については前述のようには何も述べていない ファルダールの期間と出生占星術で用いられるその序列についてはすでに述べた(398 441

101)「合の上昇点」とは合が起った時点の上昇点であり「合の年の上昇点」とは合が起った年の春分の日の上昇点のこと

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‒442 節)この節(全般占星術)においてはその序列は変わり昂揚のある宮の順番になる例えばファルダーリーヤ(al-fardārīya)102)はおひつじ宮における昂揚の支配星である太陽おうし宮における昂揚の支配星である月ふたご宮における昂揚の支配星である昇交点かに宮における昂揚の支配星である木星以下水星土星降交点火星金星と続き太陽に戻る分担惑星の割り当てもこれと同じである103) <出生占星術における>分担では昂揚の支配星104)に優先するものとしてファルダーリーヤ105)があり順番によってその分割はバラバラであるさらに分担惑星は昇交点と降交点を除いて交替でそれ(ファルダール)を分担する昇交点と降交点は分担することはなくファルダーリーヤにおいて異なっているだからいかなる惑星も両者と分担することはない以上が世界年とその四半分の回帰そして各朔望特に<世界年>回帰とその四半分に先行する朔望について知る必要のある全般的な原理である

524(518) 合の説明で述べたダウル(adwār)とその四半分とは何か

 ダウルについて言えば各ダウルは 360 太陽年であり四半分はその 4分の 1である106)ある者によれば四半分は等しくそれぞれが 90 年であるなぜならダウルを黄道帯の代わりに用いるからである またある者によればダウルと黄道帯とは異なり最初の四半分は 90 年2番目は 85 年と 3カ月3番目は 90 年4番目は 94 年と 9カ月であるなぜならダウルを年とみなしその四半分を 1年の季節の代わりに用いるからである

525(519) 第 2 の種類に特有な第 1の種類とは異なる原理とは何か

 それは類推によって第 1の種類の原理につけ加えられた年の回帰であるさらに年の四半分の回帰朔望それらの間の矩ファースィーサ(255 節)各土地の人々の経験に基づいて一年の日々について述べたアンワー(166 節)さらにその年に起る食燃焼相遇逆行があるある星学者は太陽と月のそれぞれが宮を移動する時の上昇点を取り出し両者を 5惑星に結びつ

102)ここでの「ファルダーリーヤ」は 442 節の訳注で述べたものとは異なり「全般占星術で用いられるファルダールの支配星」を意味している

103)すなわち太陽 10 年月 9年昇交点 3年木星 12 年水星 13 年土星 11 年降交点 2年火星 7年そして金星 8年で合計 75 年となる

104)ここでは「ファルダールの支配星」のこと105)出生占星術で用いられるファルダールの下位区分442 節訳注参照アブーマアシャル『誕生年回帰の書』

IV1ndash7

106)アブーマアシャルによればダウルの周期と歴史上の出来事は次のように対応している年代 支配する惑星と宮 主な出来事

1 minus3380 ~ minus3020 土星かに宮 大洪水2 minus3020~ minus2660 木星しし宮 ジャームシード(古代の英雄)の誕生3 minus2660~ minus2300 火星おとめ宮 ダッハーク王ニムルード王の誕生4 minus2300~ minus1940 太陽てんびん宮5 minus1940~ minus1580 金星さそり宮 ヒムヤル族サーム(セム)以後のアラブ人の繁栄6 minus1580~ minus1220 水星いて宮7 minus1220~ minus860 月やぎ宮8 minus860~ minus500 土星みずがめ宮 ゾロアスター教徒とムーサーの出現9 minus500~ minus140 木星うお宮 アレクサンドロスの出現

10 minus140~ 220 火星おひつじ宮 アレクサンドロスの後継者の出現11 220~ 580 太陽おうし宮 ペルシア人の支配12 580~ 940 金星ふたご宮 ムハンマドの誕生アッバース朝の支配

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けているこれはでたらめであり実際に制限がない

526(520) サールフザー(as-sālḫuḏāh)とは何か

 これは世界年回帰において上昇点か杭のひとつにあってシャハーダを持つ惑星のことである107)もしそこになければ杭に続くものにあればよいもしそこにもなければ上昇点とその支配星に対して落位にないものである インド人によればそれは日々の支配星の順番で交替して支配する惑星であり各惑星につき1年であるそれについての彼らの用法を述べると長くなってしまう

527(521) 第 3 の種類の原理とは何か

 存在するすべてのものには初めて存在する時があるそれはその時の上昇点とさまざまな状態にある惑星の配置から求められるが植物や作物そして人間以外の動物に関わることではないそれには 2つの原理がありひとつは種を落とす時であり受精(masqaṭ an-nuṭfa)として知られているもうひとつは姿を現わす時すなわち誕生である惑星とそれらの配置から知られるのはハイラージュ(指示星al-haylāǧ)カズフザーフ(ハイラージュのある場所の支配星al-kaḏuḫuḏāh)ムブタッズ(支配惑星al-mubtazzāt)贈与(al-ʻaṭāyā)寿命の増大(az-ziyādāt)寿命の減少(an-nuqṣānāt)奪命点(al-qawāṭiʻ)であるまた誕生年回帰からはインティハー(到達al-intihārsquoāt)タスイール(動点at-tasyīrāt)ダウルの支配星ジャーンバフタール(与命星al-ǧānbaḫtār)すなわちカースィム(到達区界の支配星al-qāsim)ムダッビル(管理星al-mudabbir)週の支配宮そしてファルダールが知られる

528(522) 第 3 の種類の詳細と説明とは何か

 出生者は生まれた時は力が弱くどんなに小さなことにも影響を受けるしたがって彼<の命>について保証はないこれは満 4歳になるまででありそれは「養育年」(sanū at-tarbiya)と呼ばれる星学者たちはまずこの年に関して出生者が養育期にその年を完了するかあるい養育が完了する前に死ぬかを見る彼が生育したことが確かめられるとその時にハイラージュがあるかどうかを見る ハイラージュは 5つの場所から知られる最初は 2光輝星のうちの交替主星2番目はもう一方の光輝星3番目は上昇点の度数4番目は幸運箭そして 5番目は誕生に先行する朔か望の度数である出生者のハイラージュの諸条件に問題がなければハイラージュはそれらのうちのひとつであるさらにそれと宮位をなすもののうちムザーアマが最も強いものが「カズフザーフ」108)

であるカズフザーフが杭にあれば数は最大に杭に続くものにあれば中庸にそして<杭を>過ぎたものにあれば最小となるこれらの数というのは惑星の年についてすでに述べたことを意味しているその数はカズフザーフの強弱の状態に応じて年月日時間となり時として凶兆や弱さによって減ることがある以上がカズフザーフの「贈与」であるカズフザーフに対して愛情と歓迎を持って宮位をなす吉星はそれの強弱に応じて最小の数を増やす109)ま

107)サールフザーは「年の支配星」を意味するペルシア語のサールホダー(sālḫodāh)に由来するアブーマアシャル『誕生年回帰の書』II1ndash22

108)「家長」を意味するペルシア語のカドホダー(kadḫodā)に由来する109)ここで前節で言及された「寿命の増大」が説明されている

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

たそれに対して嫌悪を持って宮位をなす凶星は同じように最小の数を減らす110)もし奪命点が妨げることがなければその結果が出生者の寿命の最大限である時として誕生時にハイラージュがないことがあるがその時は<人は>そこによい影響を及ぼす吉星の数に応じた期間を生きることになる 「奪命点」111)について言えばそれらは凶星の本体凶星の好ましくない光線そして奪命(al-qaṭʻ)として知られる恒星の本体112)であるタスイールがそれらに到達する時贈与は奪命点の半分と 14 に基づき巡り合わせは悪くなりそこでは幸運でなくなるか吉星が凶星に等しいものとなる星学者たちは贈与について 14 ではなく 13 を用いる奪命点の数は多く上昇点と月のそれぞれ度数もそれに含まれる両者の一方が他方とともに奪命するのである4番目7番目8番目<の家>の度数もそれに含まれるそれらについて私が別に述べた本がある113)次に誕生時に太陽が位置した分

ふん

に太陽が到達する時から毎年の上昇点をそして誕生時と<毎年の>回帰時に太陽が位置した宮の度と分に太陽が到達した時から毎月の上昇点を導き出す 「ダウルの支配星」114)について言えばこれは最初の年を上昇点の支配星にし2年目をその惑星より下位にある惑星にすることであり時間の支配星の決めかたと同じであるこうしてあなたの(現在の)年のダウルの支配星に到達するバビロニア人は最初の年を誕生時間の支配星にし2年目をそれより下位にある惑星だと考えるこれがダウルの支配星である 「年のインティハー」115)について言えばそれは各宮につき 1年とみなされるので2年目の到達宮は上昇点から 2番目の宮の同じ度数にあり3年目は 3番目の宮の同じ所にあるもしその年の到達宮と度数がわかればそこから「月のインティハー」が 28 日と 1時間 51 分ごとに 1宮として導き出される116)インティハーの宮は誕生時の度数と同じ度数のまま宮を移動する「日のインティハー」は 2日と 3時間 50 分ごとに 1宮として見つけられ月のインティハーの度数がそのままで移動する117) 「週の支配宮」について言えば出生者の誕生から経過した日数から週(7日)<ずつ>を引き引いた回数を覚えておき<その回数を>誕生時の上昇点から数えると到達した宮が週の支配宮となる次に7以下の余り分だけ上昇点の支配星から進み誕生時の場所から宮の逆方向に進んだ所にある宮がその宮の<支配する>週の「日の支配宮」であるまた余り分だけ宮の順方向に惑星を進める者もいる

529(523) 以上のことと共に考慮される他のこととは何か

 すでに述べたインティハーにおけるタスイール千年期ダウルの意味はここの簡単な説明に

110)ここで同じく「寿命の減少」が説明されている111)これは必ずしも惑星に限らず場所を指すこともあるので「奪命点」と訳す112)アブーマアシャルは『誕生年回帰の書』IX8で奪命星として 14 の恒星星雲星団を挙げている『アル

マゲスト』の星表番号で表記するとおうし座の 14しし座の 8さそり座の 8ペガスス座の 3ペルセウス座の 29しし座の 3と 4ペルセウス座の 1オリオン座の 1かに座の 1さそり座の 22いて座の 5と 8そしてはくちょう座の 17 である

113)ビールーニーのこの著作は同定できない114)アブーマアシャル『誕生年回帰の書』VI1115)インティハーとは宮の順方向に規則的に移動するハイラージュの到達を意味する116)月のインティハーは 1太陽年で 390deg = 30 times 13を移動するしたがって年のインティハーの 13 倍の速さで動く

ことになる117)日のインティハーは 1太陽年で 5070deg = 390 times 13を移動するしたがって月のインティハーの 13 倍の速さで動

くことになる

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

よってわかる出生占星術におけるタスイールは補正(天の赤道)の度数ではなく上昇時間(黄道)の度数によ<って計算され>る118) 上昇点の度数とそこにある惑星について言えばタスイールはその都市の上昇時間で1度につき 1年で進行する下降点の度数とそこにある惑星について言えばその都市の下降時間ですなわち上昇点とそれに続く宮の< 180 度>反対側にある上昇時間で<進行する>なぜならその都市の各宮の下降時間はその反対側の上昇時間に等しいからである天の中央と大地の杭の各度数とその両者にある惑星について言えばすべての居住地において直立球の上昇時間で進行する もし進行する惑星がこれら 4つの度数になくて杭の間にあればそのタスイールは長い作業と難しい計算によって2つの杭の上昇時間を基に導かれる上昇時間で<進行する>ハイラージュが進行するのはそれが寿命を示すものだからであり<人々は>特別な場合にのみそれ以外のものを進行させるカズフザーフは寿命の長さを示すものであり上昇点の度数がハイラージュであるかないかに関わらずそれはあらゆる場合に進行する 回帰の時あるいは任意の時にハイラージュのタスイールが到達する場所を知りたければその場所の区界の支配星が「ジャーンバフタール」119)と呼ばれる「カースィム」である120)なぜなら寿命がハイラージュの場所から奪命点の場所までの場合その両者の間は区界によって分割されその区界の支配星が「キスマの支配星」になるからであるその区界にありそこに光線を投げかける各惑星はキスマの管理(tadbīr)という形でそれに関っている121) 「ムブタッズ」について言えば惑星のそれぞれの宿にはシャハーダが多いものがあり「強奪」(al-ibtizāzīya)がそれに関係している誕生ホロスコープ図(al-mawlid)に対して絶対的な支配力を持つムブタッズとは誕生時かその回帰時における上昇点その支配星そして 5つのハイラージュにおいてシャハーダが多い惑星のことである 「ファルダール」について言えば世界年と誕生年のそれぞれのところですでに述べた

530(524) 誕生時(mawālīd)をどのように求め扱うか122)

 胎児が母親の腹から出る時昼であれば太陽の高度を求めそれに基づいて上昇点の度数を導き出すこれがその出生者(al-mawlūd)の上昇点であるもし夜であればアストロラーブに記された有名な恒星のひとつの高度を取りそこから上昇点を出す作業が困難になるので惑星は用いられないまた月による作業でも正しい結果が得られないので必要な場合を除いて月は用いられないもし雲などによる障害物や暗闇によって高度が求められない場合には昼夜の経過時間を知りそこから前述のように上昇点を求めるしかない 経過時間を知るには2つの方法があるあらかじめ誕生の兆候がある場合それを観察しその動きによって時間を計ることのできる水<時計>か器具のひとつに時間の茶碗(binkān)を設

118)243 節参照タスイールとは黄道上の特定の地点の動向これらの地点の運行はハイラージュによって指示されると考えるそれはまず赤道上の度数で測られ次に黄道上の度数に変換されるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1 9

119)もとは「命運」を意味するペルシア語120)ハイラージュのタスイールが或る惑星の区界に達するとその到達地点が「キスマ」そしてその惑星が「カー

スィム」と呼ばれるアブーマアシャル『誕生年回帰の書』III1ndash9121)このような惑星が527 節に挙がっている「ムダッビル」である122)近代にいたるまで出生占星術を実践する上で最も重要なことは誕生時における上昇点を求めることであっ

たここで扱われるテーマはまさにそれである例えば誕生時の上昇点が「かに宮」にある人がいわゆる「かに宮生れ」ということになる現在行われている誕生時の太陽の位置に基づく方法は20 世紀になって考案されたものである

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

置するそれをするのは日の出日没またはそれに類することから時がわかる場合であるこうして誕生の時に器具によって経過時間を知るのである別の方法は兆候がない場合である誕生時に器具を設置し太陽か惑星の高度を求めることでその時が確かめられる時までそれを見守る次に器具によって知り得た時間分だけそこから戻るそうすると誕生の時間と瞬間に達するもし器具がなければどんな素材のものでもその時に間に合う容器を使いその一番下に好きな大きさの穴をあける 出生者が生まれた後については2つの方法があるひとつは容器に水を入れるものでもうひとつは容器から水を取り出すものである<水を>入れる場合は澄んだ水の表面に容器を置くこれが 1度目であるそして容器が満ちて水中に沈むたびに水から空の容器を出してすばやくそれを置く太陽か星が見えるまで容器が沈んだ回数を数えてそれを覚えておくそしてその時までの経過時間を求めるさらに容器が沈んだ回数と沈みの端数を<再び水を入れることで>確認するもし端数があれば水が到達した場所に印をつけ昼夜のいずれでもその経過時間を知りその間容器を水の上に置く準備をするそして最初の沈みの回数と同じになって水が端数の印まで達するまで容器を観察するそれからその時の太陽高度を求めるその時(1度目)と 2度目に容器を置いた時の間の経過時間を知るその時間が分かれば太陽か星が見えた時からそれと同じだけ戻るすると誕生の瞬間に達する <水を>取り出す場合は三脚のようなものの上に容器を置き水差しを用いてそれに水を満たすそして容器から水がしたたるかあふれるまで水を入れる水が少なくなり終わりかける時その水を容器に注ぐそのことを続け太陽や星が見えるまでに注いだ回数を数えるもし容器の中に水が残っていれば容器の水の位置に印をつけすでに述べた方法ですみやかに作業を行う

531(525) もし誕生時を計測できなければどうするか

 実際にはそのような時<を求めること>は到達する手段のない神秘的知識に属する星学者は見積もりに基づく上昇宮について矛盾が生じることはめったにないということを理由にそれについて苦慮し度数を必要とする時はある度数へと導く「ナムーダール」(an-namūdārāt)123)

として知られる方法を用いる彼らはそれ(ナムーダール)が上昇点の度数であるにもかかわらずそれを採用したのだが用いられたものの大部分はプトレマイオスのナムーダールである124)彼らによればそれは上昇点の度数と同じではなくそこで求められた度数は証明において上昇点の度数の次に重要な度数である このナムーダールの方法とは以下のものである報告者が報告する時を正確にすることに努め上昇点とそれに基づく杭そして 7惑星の位置を決定し次に誕生が月の前半であれば誕生に先行する朔の度数をまた誕生が月の後半であれば誕生に先行する望の度数を求めそこにおけるムザーアマやシャハーダが最も多い惑星を探しそれに続くものを次々と求めそれらを書き留める2惑星の役が等しい時には宮位を両惑星のうち優先すべき一方の惑星の最も優位にあるシャハーダとみなす次にムザーアマを持つ惑星(muzāʻimūn)のうち優先する方の度数がどの杭に最も近いかまたどの杭がその度数に最も適しているかを見るそしてその度数をその杭の度数と等しいとみなしそこから上昇点を導き出す

123)パフラヴィー語の「指示するもの」に由来する124)このテーマは『テトラビブロス』III3で扱われているが「ナムーダール」に対応する表現は見られない

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イスラーム世界研究 第 6巻(2013 年 3 月)

 もしその度数がすべての杭の度数からかなり離れていればその惑星をあきらめムザーアマにおいてそれに次ぐ惑星を採用する最も適したものが見つかるまで前述のことを考慮するある星学者はこの問題については場所の近さを取りムザーアマを持つ惑星(al-muzāʻim)に最も近い杭の度数をその惑星の度数と一致する場所だとはみなしていないその結果はすでに述べたとおりである

532(526) 受精(masqaṭ an-nuṭfa)はどのように知られるか

 これは人の始まりであり人の気質体格外的特徴諸状態がそこから知られる源すなわち胎児である権威者たちはそれを用いることを教えているしかし受精について父親と母親が知っていればそれはどちらかの言葉から<わかる>彼ら(権威者たち)は妊娠の段階の始まりを土星に対応させたその次は木星であり以下ひと月ごとまたは 1週間ごとに天球の下がる順番となる 星学者たちが用いるものについて言えばそれは互いに関連する 2つの原理に基づいていて両者が正しい場合にはその手順は正しいものとなるそのひとつは誕生時の上昇点の度数が受精時の月の位置だということでありもうひとつはその反対で受精時の上昇点が誕生時の月の位置だということである もし彼らが用いる方法を望むならばまず母親から胎児が妊娠してから 78910 カ月のどれであるかを知るもし概算で描いた<誕生>ホロスコープ図(aṭ-ṭāliʻ)の月が上昇点の度数にあれば上昇点の度数を月の度数とみなす月が完全な回転を経た後に出生者が生まれたとすると<その期間が> 7カ月であれば 191 日 6 時間で8カ月であれば 218 日 13 時間で――ここでは 8カ月の胎児が生存しないということを気にしなくてもよい――9カ月であれば 245 日 21 時間でそして 10 カ月であれば 273 日 5 時間となるもし月が上昇点の度になければそれは地上か地下にある地上にある場合は月から上昇点までの度数を採り13 度 11 分ごとに 1日とみなすさらに 1度につき 1と 56 時間また度数の 1分につき時間の 1と 56 分を採る日数と時間の合計を出しそれを彼らが伝える月数に対応する上述の日数から引くもし月が地下にあれば上昇点から月までの度数を採り前述のようにする日数と時間を合計しそれを彼らが伝えている月数に対応する上述の日数に加える加減の後の結果が出生者が<子宮にいた>期間(makṯ)である受精時に達するまで誕生時からさかのぼり月の位置を確かめるそして誕生時の上昇点の度数がこの月の度数と同じだと考えるわれわれが述べた彼らの原理に基づく限りそれは彼らにとって正しいのである

533(527) 第 4 の種類とその原理とは何か

 これは出生占星術の場合のように起ってから知られようとその時が選ばれてから考慮されようと関係なく開始<時>(al-ibtidārsquoāt)のホロスコープ図<が対象>であるその目的は北側の座席暗い影湿った亜麻布埋められた氷を選ぶことで夏の太陽の影響を軽減するように幸運を増大させ不運を減少させることであるこの件についてわれわれが敬意を表する選択<占星術>を無批判な学者(al-ḥašwīya)が台無しにしようとするような無意味なたわごとは無視しよう ここで問題となるテーマは杭を確立すること杭を凶星やその光から解放すること吉星特にその時の上昇点上昇点の支配星月月のある家の支配星そして始める物事の指示星で杭を

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ビールーニー著『占星術教程の書』(3)

照らすこと月上昇点の支配星<始める>物事の指示星の互いのつながりに注目することそしてそれらを上昇点に対して宮位をなす位置に置くことであるただし悪い事や破滅のための選択は別であるこれは今それについて追求することができないほど広大な分野である

534(528) 第 5 の種類とその原理とは何か

 さまざまな不測の事態によって質問者の誕生時がわからない多くの場合星学者たちは質問者が質問を発することを誕生とは違う始まりのように考える彼らはその時のホロスコープ図を描き上昇点その支配星月そして月に対して相離する惑星を調べるこれらが質問者を示す惑星である 質問内容を示するものについて言えばそれはほとんどの場合7番目<の家>とその支配星であるがとりわけ質問に関係する家とその支配星そして月が相遇する惑星である<それは>12 の家以外にはあり得ずどの家にあるかを知るにはわずかな考察と類推によって可能となるこれが質問<占星術>と呼ばれる種類である

535(529) 役に立たない質問(masrsquoala bīkārīya)125)とは何か

 これはその名で呼ばれるが「一般的な質問」(masrsquoala kullīya)とも呼ばれる最初に質問時の上昇点を求めるという点で他の質問と同じようにすることが大多数の星学者の決まりごとになっている次に彼らは誕生ホロスコープ図において見られるものすなわち余命とそれに関する諸状態を見るまた誕生ホロスコープ図を加味してそこから質問占星術用にそれまで重ねてきた年齢を取り出そうとする星学者もいる 無批判な星学者(ḥašwīyat al-munaǧǧimīn)について言えば彼らは質問者を遠ざけ3<晩>の間彼の心の奥のこと(ḍamīr)を保持し3日間そのイメージを失わないよう命じるその後ようやく彼は質問をするしたがって愚かさを強調することに加えて私ができるのは彼らの判断の弱点が明らかになり質問者に命じられたものが何であれ彼を破滅させるような過失を彼に転嫁することになるということを覚悟することだけである

536(530) 隠されたこと(ḫabirsquo)と心の奥のこととは何か

 これは掌の中に隠しているか隠されている質問であるそれについて性急な星学者たちの何と不名誉なことかしかしまた占い師たち(az-zāǧirūn)126)が聞く質問時の言葉や明らかに目に見える家具や行為について彼らが何と頻繁に的中することか占星術からこの領域に達すれば<初心者にとって>十分でありそれを越える場合は彼自身とその技芸を今や軽蔑と嘲笑にさらすことになるそれの門外漢は言うまでもなくそれに関わる者たちもそれには無知なのである

125)bīkārīyaはペルシア語の bīkāre(役に立たない)に由来する126)本来は鳥の飛び方から前兆を導く占い師のことでここでは学問に基づく星学者(占星術師)とは異なる

占い師を指している

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