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TWIns 五周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学 ジョイントシンポジウム 2013 4 20 日(土)10:00~17:00 会場:東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設 3Fセミナールーム TWInsを拠点とした 健康・医療・理工学融合の 今後の展望 Tokyo Women’s Medical University 東京女子医科大学 東京女子医科大学・早稲田大学連携 先端生命医科学研究教育施設 WASEDA University 早稲田大学

TWInsを拠点とした 健康・医療・理工学融合の 今後の展望TWIns 五周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学 ジョイントシンポジウム 2013年4月20日(土)10:00~17:00

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Page 1: TWInsを拠点とした 健康・医療・理工学融合の 今後の展望TWIns 五周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学 ジョイントシンポジウム 2013年4月20日(土)10:00~17:00

TWIns 五周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学ジョイントシンポジウム

2013年4月20日(土)10:00~17:00会場:東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設 3Fセミナールーム

TWInsを拠点とした健康・医療・理工学融合の

今後の展望

Tokyo Women’s Medical University

東京女子医科大学 東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設 WASEDA University

早稲田大学

Page 2: TWInsを拠点とした 健康・医療・理工学融合の 今後の展望TWIns 五周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学 ジョイントシンポジウム 2013年4月20日(土)10:00~17:00

TWIns 五周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学ジョイントシンポジウム

プログラム

TWInsを拠点とした健康・医療・理工学融合の今後の展望

日時:2013年4月20日(土) 10:00~17:00会場:東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設 3Fセミナールーム

10:00~ 「開会にあたって」 東京女子医科大学 先端生命医科学センター長 岡野 光夫 教授

早稲田大学 鎌田 薫 総長 挨拶 東京女子医科大学 宮﨑 俊一 学長 挨拶 早稲田大学 白井 克彦 前総長 挨拶 東京女子医科大学 高倉 公朋 前学長 挨拶

10:30~ 招待講演 科学技術振興機構 顧問 相澤 益男 氏

11:00~ 来賓者 講演 文部科学省より 研究振興局 ライフサイエンス課長 板倉 康洋 氏 厚生労働省より 医政局 研究開発進行課長 佐原 康之 氏 経済産業省より 製造産業局 生物化学産業化長 江崎 祥英 氏 農林水産省より 食料産業局 食品小売サービス課 外食産業室長 山口 靖 氏

12:00~13:00 ランチブレイク

13:00~14:00 ポスターセッション(於 TWIns3階ラウンジ)

14:00~17:00 口頭発表 早稲田大学 先進理工学部 電気・情報生命工学科 胡桃坂 仁志 教授 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 田村 学 特任助教 早稲田大学 先進理工学部 生命医科学科 武岡 真司 教授 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 秋山 義勝 講師   早稲田大学 教育学部 理学科 生物学専修 中村 正久 教授   東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 金井 信雄 特任助教   早稲田大学 創造理工学部 総合機械工学科 高西 淳夫 教授   東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 清水 達也 教授   早稲田大学 先端科学・健康医療科学融合研究機構 神原 秀記 招聘研究教授

17:00~ 「閉会にあたって」 早稲田大学 先端生命医科学センター長 梅津 光生 教授

17:30~ 懇親会

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1.はじめに

2.医理工融合を牽引し、未来つくりに挑むTWIns ・なぜ、医理工融合なのか? ・医理工融合を牽引するTWInsに期待する

3.激しく展開される科学技術イノベーション競争 ・世界の活力分布が劇的に変化 ・イノベーション強国の躍進に学ぶ

4.競うべきはGlobal Excellence ・なぜ、Global Excellenceが重要なのか? ・Global Excellenceの持続的な創出に挑む

5.世界を惹きつける科学技術イノベーションの推進 ・未来社会つくりに挑む科学技術イノベーション ・グリーンイノベーション、ライフイノベーションが要 ・グローバル時代に活躍する人材の育成が鍵

6.結び

医理工融合で未来社会つくりに挑む

招待公演

科学技術振興機構顧問、元総合科学技術会議議員相澤 益男

1966年 横浜国立大学工学部卒業

1971年 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了

1971年 東京工業大学資源化学研究所助手

1974~1975年 リーハイ大学博士研究員

1980年 筑波大学物質工学系助教授

1986年 東京工業大学教授

1994~1996、

1998~2000年 東京工業大学生命理工学部長

2000~2001年 東京工業大学副学長

2001~2004年 東京工業大学学長

2004~2007年 国立大学法人東京工業大学長 

2007~2012年 内閣府総合科学技術会議議員(常勤)

2007~現在 東京工業大学名誉教授

2013~現在 科学技術振興機構顧問

■ご略歴

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今、我が国においては、科学技術イノベーションによる成長産業の創出が強く求められています。イノベーションは新しい価値の創出であり、そのためには、組織、学問領域の壁を越えた分野融合の研究開発を行うことが必要です。日本の大学等はこのような取組を苦手としていますが、TWIns は、医学、理学、工学等の学問領域を超えた拠点として再生医療をはじめ多くの分野で成果を上げており、今後のイノベーションの旗手として大いに期待したいと思います。

東京女子医科大学と早稲田大学が叡知を結集したTWIns は、従来の「医学」の枠にとらわれず、理工学、生化学、細胞工学をはじめとする様々な学問分野の知見・技術を駆使し医療の高度化を目指すユニークな研究教育機関である。生命科学を基盤としつつ活動内容は基礎研究にとどまらず、産学官の連携により開発された技術の臨床応用を目指している点でも希有な存在である。我が国は、これまでに経験のない高齢化社会を迎えることが予想されており、健康な生活を営むことがこれまで以上に大きな価値を持つことになる。「健康」をキーワードにTWInsと農林水産省が連携することで新しい価値を創出できるものと期待している。

TWIns は、医学の枠を超えて工学や理学、薬学等の学問を融合させ、新しい技術を開発するための研究拠点として、大きなポテンシャルを持っている。また、東京女子医大病院という臨床医療で実力のある病院と隣接し、新しい医療技術を実用化していく際に不可欠な臨床研究の場にも恵まれている。既存の枠にとらわれない学際的な研究や、基礎研究から臨床研究まで一貫して実施できる研究体制を上手に活用し、再生医療や革新的医療機器等の分野で、その実用化に向けた研究開発を迅速に進め、日本発のイノベーションを世界に発信してほしい。TWIns及び東京女子医大の今後の活躍に期待したい。

再生医療は、従来治療困難とされてきた疾患の根本治療に途を開くとともに、慢性疾患や高齢化に伴う疾患等の治療により、拡大の一途をたどる社会保障の抑制にも貢献する可能性がある。また、再生医療は、医療技術に理工学的な知識・技術を融合させた新たな治療方法であることから、高度かつ洗練された幅広い技術力を有する我が国に比較優位があり、国際的にも日本に対する期待は高い。TWIns は、医療と理工学を融合する理想の場として、再生医療の実用化に向けた各種課題を解決する先駆者としての役割が期待される。

文部科学省におけるライフサイエンスの推進について

食を通じた健康社会の実現に向けて

TWInsへの期待

再生医療の実用化・産業化に向けて

文部科学省 研究振興局ライフサイエンス課 課長

農林水産省 食料産業局 食品小売サービス課外食産業室 室長

厚生労働省 医政局研究開発振興課 課長

経済産業省 製造産業局生物化学産業課 課長

板倉 康洋

山口 靖

佐原 康之

江崎 禎英

来賓公演

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真核生物の巨大なゲノムDNAは、クロマチンと呼ばれる高次の階層構造に折りたたまれて、染色体として機能的に細胞核内に収納されている。クロマチンの基本構造はヌクレオソームである。ヌクレオソームは、4種類のヒストンH2A、H2B、H3、H4それぞれ2分子からなるヒストン8量体に、DNAが左巻きに1.65回巻き付いた円盤状の構造体である。近年、クロマチンによるDNAの折りたたみが、ゲノムDNAの発現、複製、修復、組換えを調節する重要な機構であることが分かってきた。このクロマチン構造によるDNA調節機構は、細胞分裂や世代間にも継承されることから、エピジェネティクスの本体として注目されている。染色体セントロメア領域は、細胞分裂時におけるキネトコア形成領域として機能しており、その特徴的な高次クロマチン構造はエピジェネティックに次世代へ継承される。このセントロメア特異的なクロマチン構造は、ヒストンH3バリアントの1つである、CENP-Aによって担われている。しかし、CENP-Aによって形成されるクロマチン構造の詳細は、世界中で多くの研究がなされているにも関わらず不明であった。今回、我々の研究室が世界で唯一解析に成功した、セントロメア特異的 CENP-Aヌクレオソームの原子分解能での立

体構造と、そのクロマチン形成における役割について紹介する。

近年の神経画像の機器発達と機能向上はめざましく、我々脳神経外科医の手術に与える影響は非常に大きい。脳腫瘍手術を例にとるとMRI、fMRI、DTI、PET、MRS画像を駆使して術前に脳腫瘍の性質予想が可能となった。さらに、それぞれの画像解析の工夫や向上により詳細な術前手術計画が可能となった。上記の術前計画が正しいのかどうか、手術中に的確な評価を常に行えるよう環境を整えてきた。術中MRI+Update

navigationを軸として、術中神経モニタリング、術中迅速病理、覚醒下手術を円滑に行うツール(IEMAS)など術者へのフィードバックが滞ることなく行われるシステムである。上記システムを基盤として1100 例を超える脳腫瘍手術を手がけてきた東京女子医大の取り組みは、特にこのTWIns

開設 5年間に格段に進歩しnext stageを見据えている。脳腫瘍を90%摘出で10年生存率〇%程度、あと10%摘出率を上げる手術により、術後運動麻痺と言語障害が△%程度起こり、社会復帰に障害となる高次脳機能障害が□%程度おこるなどと未来予測する手術、この実現を100%にしたいと考えている。並行して、術後再発を極力おさえて生命予後を延ばす術中先進治療、さらに術後社会復帰を円滑に進めるための高次脳機能回復維持プログラム、日常生活ADLを更に向上させるための運動言語機能回復維持プログラムを立案したい。

1995年3月:埼玉大学大学院理工学研究科博士後期課程 修了 博士(学術)。1995年6月:米国National Institutes of Health, Visiting Fellow。1997年6月:理化学研究所、研究員。2003年4月:早稲田大学理工学部、電気・情報生命工学科、助教授。2008年4月:早稲田大学理工学術院、先進理工学部・研究科、教授(現職)。

1995年:和歌山県立医科大学医学部卒業。2000年:向陽病院脳神経外科ガンマナイフセンター。2003~2006年:フランスTimone病院脳神経外科・機能外科留学。2007年:和歌山県立医科大学脳神経外科。2010年:東京女子医科大学先端生命医科学研究所先端工学外科。

染色体分配に重要なセントロメア領域のクロマチン構造

未来予測手術

早稲田大学理工学術院 先進理工学部 電気・情報生命工学科 教授

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学分野 特任助教

胡桃坂 仁志

田村 学

■ご略歴

■ご略歴

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医用高分子を基板上にスピンコーティング法や各種印刷法にて基板上に薄く塗布して、それを基板から剥離したナノシートは、生体表面に粘着剤・接着剤なしにそのまま貼付できることを見出した。この技術を“ナノ絆創膏”として確立し、現在様々な機能を付与したナノ絆創膏としての医療用途の開拓を進めている。ナノシートは、生分解性高分子であるポリ乳酸をナノレベルで膜厚を制御する方法、キトサンとアルギン酸塩を交互に積層する方法などで構築され、密着性、柔軟性、透明性、分子透過性において優れた特性を有している。また、厚さ数十ナノメートルの薄膜でありながら表面と裏面に異なる分子修飾を施すことができる。例えば、組織が柔らかいために縫合が困難な臓器の外科手術などにナノ絆創膏を貼付することで、縫合無しに癒着を生起せずに自己細胞にて組織を修復することが可能となる。癒着防止機能のほか、薬物担持徐放材料、止血材料、多孔質材料などユニークな機能が見出されている。TWIns 内も、細胞・組織との親和性、ナノシートの物理特性、造影剤担持ナノシートの可視化技術などの共同研究が進んでおり、大量合成でき高性能・高機能な高分子薄膜をイノベーティブな医用材料として TWInsから発信し続けたいと考えている。

細胞シート工学を基盤とした再生医療はヒト臨床応用まで展開され角膜、心臓、食道、歯周組織などの再生、治療に成功している。一方、細胞シート工学を応用することで、従来の組織工学的手法では困難であった、厚い組織、肝臓などの複雑な機能、構造を有する組織、さらには血管網を有する組織の作製にも成功しており、幅広い組織、臓器の治療、再生に期待が寄せられている。これらの技術は、温度応答性細胞培養表面によって作製された細胞シートから成り立っている。つまり、温度応答性細胞培養表面が細胞シート工学を支えていると言っても過言ではない。温度応答性細胞培養表面は温度応答性高分子であるポリ(N- イソプロプルアクリルアミド)を電子線照射重合法によ

りナノオーダーの厚みで固定化することで、はじめて温度変化による細胞の接着および脱着性能を発現する。本発表では、温度応答性細胞培養表面における高分子の厚み特性を紹介するとともに、次世代型の温度応答性細胞培養表面として、細胞シート剥離の加速化や細胞増殖の加速化を可能する温度応答性細胞培養表面や、微細加工技術を取り入れて作製した温度応答性細胞培養表面の特徴を中心に、TWIns 設立から現在に至るまでの温度応答性細胞培養表面に関する成果を紹介する。

1990年:日本学術振興会特別研究員。1991年:工学博士(早稲田大学)。1991年:早稲田大学 理工学研究科 助手、1996年:同 助教授。1999年:米国ペンシルバニア大学客員研究員。2005年:早稲田大学理工学部応用化学科 教授。2007年:早稲田大学先進理工学部 生命医科学科 教授。2008年:東京女子医科大学-早稲田大学共同大学院 共同先端生命医科学専攻 教授、早稲田大学研究推進部副部長、早稲田大学シンガポールバイオサイエンス研究所(WABIOS)副所長。2011年:大隈記念学術褒賞(奨励賞)。

1996年:東京理科大学 理工学研究科応用生物科学専攻 修士を修了。1996年:ファルマシアバイオテク株式会社に入社(研究開発室に配属)(1997年~2001年:化学技術戦略推進機構に研究員として出向)。2001年:東京理科大学 理工学研究科にて博士(工学)を取得。2002年:東京女子医科大学 先端生命医科学研究所に助手として入所。2008年:同講師。

医用高分子からなるナノシートを用いた“機能性ナノ絆創膏”としての研究展開

細胞シート工学を支える温度応答性細胞培養表面の特徴と次世代型タイプの開発について

早稲田大学理工学術院 教授

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 講師

武岡 真司

秋山 義勝

■ご略歴

■ご略歴

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一般的に脊椎動物の「性」は受精時の性染色体の組み合せで決まると考えられている。1990 年にヒトで雄決定遺伝子SRYが見つかった時はこれで動物の性決定のしくみが解明されたと多くの研究者は思った。しかし以後、たったひとつの遺伝子ではそのしくみが説明できないことが分かってきた。哺乳類では SRYが欠損しても雄になる。また、雄決定遺伝子(DMY)をもつメダカ雄胚に雌化ホルモンを投与すると性転換して雌になる。爬虫類のカメやワニでは卵の孵化温度で性が決まる。これらの事実は、動物の性決定において雄決定遺伝子が絶対的支配力をもつわけではなく、そのしくみは多様であることを示している。とは言え、動物の性決定に深く関わる遺伝子はそれぞれの種に存在すると思われる。それでは、性決定に深く関わる遺伝子はどのようにして誕生したのであろうか?ヒトではX 染色体の遺伝子が重複してY染色体に移り、魚類のメダカでは常染色体の遺伝子が重複してY染色体に移った後、それぞれ SRYとDMYと呼ばれる性決定遺伝子に進化したと考えられている。我々は両生類(ツチガエル)の性決定に深く関わる遺伝子を探し求めて研究を続けてきた。最近、ツチガエルでは性染色体の逆位によって発現に雌雄差が生じた遺伝子が雄決定に深く関わることを見いだしたのでそれについて述べる。

細胞シートを用いた食道領域における再生治療の First in Humanは世界に先駆けて東京女子医大で行われた(2008~2010)。表在食道がんに対する内視鏡的切除術(Endoscopic Resection:ER)後の治癒促進と狭窄防止を狙い、自家の口腔粘膜細胞シートを内視鏡的に患部に移植を10 症例施行し、効果が見られたので、先進医療 Bの申請準備中である。さらに海外展開として2010 年にスウェーデンのカロリンスカ研究所と提携し、上皮細胞シートの作製、移植などの技術移転を行い、2012年12月より細胞シートを用いたバレット食道に対する食道再生治療の欧州ヒト臨床研究が開始されている。現在、本邦ではスーパー特区制度を利用して、普及を目的とした新たなヒト臨床研究を計画している。当研究所と長崎

大学の共同研究で、長崎の患者の口腔粘膜組織と血清を1000㎞離れた東京へ輸送し、当研究所のCPCで培養口腔粘膜細胞シートを作製し、作成された細胞シートを再び長崎へ輸送して内視鏡的に患部に移植し再生治療を行う計画で、将来的に、東京を拠点に本邦のどこであれ細胞シートを遠隔地へ提供して、再生治療を行うことが可能となることを目標としている。将来的には、食道、胃、小腸や大腸など各臓器をシートの技術により全層で作製することを目標としているが、現状

の自家や他家の上皮細胞シートによる再生治療のテクノロジーにおいても、未来のこの領域の標準治療となっていくと期待している。

1975年3月:早稲田大学・理工学研究科・物理及応用物理学専攻・博士課程修了(理学博士取得)。1975年4月:米国留学・博士研究員(カリフォルニア大学アーバイン校・医学部)。1979年8月:帝京大学・助手(医学部産婦人科)。1985年4月:同大学・講師。1991年4月:帝京短期大学・助教授。1993年4月:広島大学・助教授(理学部附属両生類研究施設)。1995年1月:広島大学・教授(理学部附属両生類研究施設)。2000年4月:早稲田大学・教育学部・教授。理工学研究科・生命理工学専攻・教授(兼任)。2003年4月:早稲田大学・教育・総合科学学術院・教授(現在に至る)、先進理工学研究科・生命理工学専攻・教授(兼任、現在に至る)。

1997年:徳島大学医学部卒業。1997年:東京女子医科大学 消化器外科。2002年:都立府中病院 外科。2004年:東京女子医科大学 消化器外科 助教。2008年:東京女子医科大学先端生命医科学系大学院(再生医工学 博士課程専攻)。2012年:東京女子医大先端生命医科学系 特任助教。

両生類のツチガエルでは性染色体の逆位で性決定遺伝子が誕生した

上皮細胞シートを用いた食道再生治療、普及と展望

教育・総合科学学術院 教授

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所(消化器外科兼任) 特任助教

中村 正久

金井 信雄

■ご略歴

■ご略歴

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演者は2つの視点から研究を行っている。ひとつは、人間の形態と機能を模したロボット(ヒューマノイド)を設計・製作し、これを用いて心身両面における人間の行為・行動や機能を再現することで、構成論的に人間の工学モデルを構築するという視点である。もうひとつは、そうして得られた人間の工学モデルを従来の基盤工学における各種モデル群と統合、これと並行して、例えば医療・福祉ロボット、あるいは医療従事者の各手技評価・訓練を行うロボットやシステムなど、人間のための様々な機器・装置類の開発を通じて、人間に関わるロボットやシステムに関する演繹的設計論の構築を目指す視点である。本講演では、演者らが現在行っている、ロボットを用いた人間のモデリングとその応用研究、ならびにパーソナル・ロボットとして人間型ロボットの開発研究について、2足ヒューマノイド、人間搬送2足ロボット、咀嚼ヒューマノイド、オーラル・リハビリテーション・ロボット、歯科治療訓練用患者ヒューマノイド、情動表出ヒューマノイド、吹鳴楽器演奏ヒューマノイド、ラット形ロボット、発話ヒューマノイド、頸部血流計測ロボット、縫合手技訓練用シミュレータなどを紹介しつつ、それらの医療・福祉への応用について展望を試みる。

我々は“細胞シート”を単層あるいは積層化して組織を作製し移植する独自の技術を用いた再生治療を展開してきた。現在さらなる挑戦として幹細胞の大量培養・分化誘導、組織内血管網付与、バイオリアクターによる灌流培養、組織代謝モニタリング、組織再構築の自動化など医理工産学融合による立体組織・臓器創生に向けた研究開発を行っている。特に近年、TWIns ならではの医理工融合による研究成果として生体外における機能的血管網付与技術を世界に先駆け

て確立した。具体的にはマイクロ流路付きのコラーゲンゲルを血管床としてバイオリアクターで灌流、その上に血管内皮細胞を共培養した心筋細胞シートを血管内皮細胞がコラーゲンゲル内に遊走しさらには流路に到達、生体同様の管腔構造を有した機能的毛細血管網が新生された。さらに段階的に細胞シートを積層化することで再生組織のスケールアップも実現した。これらの結果は生体外でより厚い組織・臓器の再生の可能性を示しており、今後のさらなる発展が期待できる。また、安全かつ大量に細胞シートを製造し積層化するため、細胞シートならびに再生組織の無菌的自動生産システム

を開発することが必須であり現在産学融合体制で TWIns 内で「組織ファクトリー」を製作中であり、再生医療の本格的な普及を目指している。

1985年早稲田大学理工学部助手、同専任講師、助教授を経て、1997年同教授。現在に至る。日本ロボット学会副会長、ロボット産業振興会議副会長、日本ロボット学会フェロー、日本機械学会フェローなど。ロボット系・先端医療系の論文誌・会議にて多数受賞。人間型ロボット、医療用ロボット、医療トレーニング用ロボットなどの研究・開発に従事。

1992年:東京大学医学部医学科卒業。1999年:東京大学大学院医学系研究科博士課程卒業。同年東京女子医科大学先端生命医科学研究所助手、組織工学的手法「細胞シート工学」による心筋組織再構築の研究を開始。2011年4月:同研究所の教授就任、現在に至る。

ヒューマノイド・ロボット研究とその医療・福祉への応用

~心臓を創る~臓器創生に向けた医理工産学融合

早稲田大学理工学術院 教授

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授

高西 淳夫

清水 達也

■ご略歴

■ご略歴

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民間企業で40 年間分析関連技術開発とその実用化に携わってきた。質量分析関連の新しいイオン化技術(APIMS、FD/MS、matrix assisted SIMS、LC/MS、etc)、蛍光式DNAシーケンサ (平板ゲル、キャピラリーアレーDNAシーケンサなど )及び種々DNA検出技術、さらに最近は1細胞中の遺伝子発現を調べる技術開発を行っている。いずれも黎明期の技術開発で技術を開発しただけでは製品にならず、関連技術が世の中(多くの場合外国)で認知され、ユーザーが増えて初めて製品が出ていくことが多かった。このため製品化では海外に先行されることが多かったが、キャピラリーDNAシーケンサでは米国企業 ABIと提携することで世界中に普及させることができた。技術開発も事業も競争であり、如何にして技術開発および製品化で先行するがが重要な課題である。7年ほど前から1細胞解析関連技術を開発している。米国NHI が 1細胞解析のプロジェクトを1.5 年前にスタートし、昨年は全米 3か所に1細胞解析センターを作るなどしており、1細胞関連分野は発展期にかかってきた。講演ではDNAシーケンサの開発から1細胞解析技術開発までの流れをお話しするとともに、新たな技術と実用化のために大学に期待することなどについてお話したい。

1945年:東京都生まれ。1967年:東京大学教養学部基礎科学科卒業。1972年:東京大学理学系研究科博士課程修了。1972年:株式会社日立製作所中央研究所入社、現在、同社フェロー。東京農工大学 客員教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科 客員教授、早稲田大学 招聘研究教授、南京大学 客員教授兼任。

細胞分析技術開発と実用化のはざま

早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構 招聘研究教授( ㈱日立製作所 中央研究所 フェロー)

神原 秀記

■ご略歴

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研究者名 研究課題名

T-1 青木 信奈子 血管網を導入したES細胞由来心筋細胞シートの作製T-2 秋元 淳 がん細胞シート同所移植による肝臓がんモデル動物作製の検討T-3 荒内 歩 がん細胞シートを用いた癌を取り巻く微小環境の追究W-1 有村 泰宏 DNA転写に関わる特殊なヌクレオソームの構造生物学的・生化学的解析W-2 井澤 由衣奈、竹山 春子、金城 雄樹 肺炎球菌感染に対する新規の混合型ワクチンの増強効果

W-3 Hiroyuki ISHII, Ammar Safwan Study on robotic system for automatic abdominal scanning using ultrasound diagnosis device.

W-4 石橋 友也 「金魚解放運動」の生命美学T-4 糸賀 和義 マスクレス露光装置による微細加工技術の開発T-5 岩瀬 由布子 がん細胞シートによる三次元がん組織の構築W-5 産賀 崇由 生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(GnIH)は雄ウズラの攻撃行動を抑制するT-6 梅本 晃正 再生医療実現化に向けた組織幹細胞の基礎研究T-7 大木 岳志 経内視鏡的口腔粘膜上皮細胞シート移植による食道狭窄治療T-8 大脇 敏之 細胞シート再生医療の普及を可能とする細胞シート供給システムの確立T-9 岡本 淳 術中眼球運動モニタリングシステムの開発W-6 小川 敬子 シアノバクテリアにおける光合成と呼吸の相互作用W-7 亀石 統子 角膜上皮幹細胞除去後の上皮組織再構築過程の解析T-10 神崎 正人 続発性気胸に対する細胞シート治療

T-11 金 京淑 Fabrication of 3-Dimensional (3-D) Functional Hepatic Structures using Cell Sheet Stratification Technique

W-8 キョウ ヨウ Arctic amyloid ß affects CHRNA7's function

W-9 熊澤 歩 Requirement of Cdk5 for proper dendritic development of Purkinje cells in the cerebellum

T-12 熊代 善一 親水性パターンを導入した温度応答性表面における細胞接着・脱着制御W-10 栗城 大輔 交感神経系による末梢体内時計同調機構W-11 小泉 雄也 酸素・グルコース欠乏障害に対するPKCの保護効果T-13 小林 純 次世代型再生治療のための温度応答性培養基材の開発W-12 小林 航 クロマチン構造上におけるDMC1の機能的解析

W-13 小原 洋太郎、若王子 智史、モリ テツシ、竹山 春子

カイメン共在バクテリアメタゲノムからスクリーニングされたカドミウム濃縮関連遺伝子の解析

W-14 齋藤 晃広 Evaluation of Therapeutic Efficiency of Antibiotic-Loaded Nanosheet in a Murine Burn-Wound Infection Model.

W-15 Makoto Saito, Yukiko Kato, Kentaro Semba

Expression screening of 17q12-21 amplicon reveals GRB7 as an ERBB2-dependent oncogene

T-14 崎山 亮一 腹膜透析における生体外腹膜傷害評価法の確立T-15 笹川 忠 細胞シート積層化共培養法を用いた血管内皮細胞ネットワーク形成に関する研究T-16 佐々木 大輔 細胞シート工学による機能的心筋組織の作製及びその収縮能評価系の開発

W-16

Daisuke Shimura, Gaku Nakai, Qibin Jiao, Kota Osanai, Kasumi Kashikura, Keiko Endo, Tomoyoshi Soga, Nobuhito Goda, Susumu Minamisawa

Comprehensive analysis reveals the cardiac chamber-specific metabolism in the mouse heart.

W-17 下岡 保俊 メチル化に伴うDNAの高次構造変化T-17 白土 佳子 Thyroid hormone の幹細胞に及ぼす影響T-18 鈴木 孝司 手術情報マネジメントと工程解析への応用W-18 鈴木 庸平 冷温帯カラマツ林における炭素動態T-19 関根 秀一 血管網付与による生体外での三次元組織の再生T-20 関谷 佐智子  組織工学による腎組織再構築の検討W-19 宋 尚夏 穿刺支援ロボットと内視鏡手術支援ロボット

ポスターセッションプログラム

Page 11: TWInsを拠点とした 健康・医療・理工学融合の 今後の展望TWIns 五周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学 ジョイントシンポジウム 2013年4月20日(土)10:00~17:00

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研究者名 研究課題名

W-20 園池 公毅 ソラマメの豆の光合成T-21 高木 惣一 細胞シート工学を利用した子宮組織の再生T-22 高橋 宏信 細胞シートの積層化技術を用いた三次元組織の配向制御T-23 田中 信行 食道粘膜切除部を対象とした経内視鏡的細胞シート移植デバイスW-21 棚瀬 潤一 核内イオン環境の変化によるマウスES細胞の分化W-22 谷崎 祐太 造血前駆細胞の造血因子応答性の比較解析W-23 田辺 花奈 食物アレルギーの体内時計による制御

W-24 中鉢 洪太、中山 恒、合田 亘人 Proteomic analysis of the nuclear proteins induced during chronic hypoxic condition.

W-25 坪倉 彩 電子線リソグラフ加工した高分子表面の微細構造によるヒト間葉系幹細胞の分化誘導T-24 唐 中嵐 温度応答性培養表面からの細胞脱着に関する定量的な評価 W-26 戸部 泰貴 血流シミュレーションをベースとした脳動脈瘤の病理工学的解析

W-27 長井 淳 The role of Collapsin mediator response protein 4 in axonal degeneration and regeneration

W-28 長谷 勝徳 シュワン細胞に対する一酸化チッソ(NO)毒性の解析W-29 中嶋 由紀子 両生類 FSHbeta の転写調節領域の解析T-25 長瀬 健一 温度応答性ナノバイオインターフェイスの創成とバイオセパレーションへの応用W-30 中村 智菜 変異型セレブロン発現細胞におけるミトコンドリア動態の解析W-31 中村 秀樹 一次繊毛中のタンパク質動態W-32 中村 雄城 Rhoファミリー Gタンパク質活性化による シナプス可塑性への影響T-26 中山 正道 温度応答性高分子コーティング法を利用した細胞シート作製技術W-33 新倉 良季 両生類の性転換に関わる遺伝子の解析T-27 長谷川 明之 多分岐微小流路式マイクロ流体チップによるサイズ別細胞選別法W-34 原 桜子 鉄架橋アルギン酸膜上で培養した線維芽細胞の機能評価W-35 原口 省吾 Pineal allopregnanolone saves cerebellar Purkinje cells from apoptosisT-28 原口 裕次 ヒト iPS 細胞の心筋細胞への効率的分化誘導および心筋シートの作製T-29 福守 一浩 細胞シート工学を利用した肝細胞アレイチップの開発

W-36 古谷 俊樹、武部 明、和田 達典、久保 葉子、岡野 恵子、岡野 俊行 ゼブラフィッシュの地磁気に対する応答行動

W-37 町田 郁子 種々の金属イオンを用いて架橋させたアルギン酸膜の細胞培養基質としての特性解析

W-38 Zecca Massimiliano Use of an ultra-miniaturized IMU-based motion capture system for objective evaluation and assessment of walking skills

W-39 松下 華代 冷温帯落葉広葉樹林における炭素収支W-40 松橋 祐輝 拍動循環回路による塞栓コイルの塞栓性能評価法の検討

W-41三井 広大、渡隆 爾、辻 悠佑、前田 俊徳、久保 葉子、岡野 恵子、岡野 俊行

ニワトリ網膜の新しい青色光受容体の発現と分子解析

W-42 峯口 竜 弦状コラーゲンマイクロファイバー培養足場を用いた三次元再生骨格筋組織構築W-43 宮川 聡史 細菌バイオフィルム中の休止細菌の解析W-44 籾内 研吾 淡水環境に生息する難培養性硝化細菌の新規分離培養 T-30 山田 理恵 異所性肝臓の作製W-45 山本 宏輝 多細胞性シアノバクテリアの集団パターン形成ダイナミクス

W-46 MIzuki Yamamoto, Jun-ichiro Inoue, Kentaro SembaParacrine role of transcription factor NF-kB in maintenance of breast cancer tumor initiating cells

W-47 李 天舒 Preparation and biological evaluation of maleimide-modified liposomes for advanced drug delivery.

W-48 呂 筱薇 乳がんの良悪性診断ロボットとラジオ波焼灼療法を支援する生体材料の力学モデルT-31 鷲尾 薫 自己歯根膜細胞シートの臨床応用に向けた検討T-32 渡辺 夏巳 細胞シート工学を用いた血友病に対する遺伝子細胞治療法の開発

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Tokyo Women’s Medical University

東京女子医科大学 東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設 WASEDA University

早稲田大学