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Verification and Validation for Nuclear Systems Analysis Workshop II May 24-28, 2010 | Beach Cove Resort, North Myrtle Beach, SC 報告 シミュレーションの信頼性 WG 第二回会合 平成 22 8 5 株式会社 テプコシステムズ 堀田亮年 資料:No.2-8

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Verification and Validation for Nuclear Systems Analysis

Workshop II

May 24-28, 2010 | Beach Cove Resort, North Myrtle Beach, SC

報告

シミュレーションの信頼性 WG 第二回会合 平成 22 年 8 月 5 日

株式会社 テプコシステムズ

堀田亮年

資料:No.2-8

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I 目的とスコープ

原子力産業において、次世代炉の概念を確立し、設計し、運転し、これらに対して適切な規制判断を下

すためには誤差および不確かさを確立した計算シミュレーションを前提とした方法が必須であるという認

識が益々高まっている。米国では、DOE が計算シミュレーションで一貫した次世代軽水炉概念を設計する

というテーマ(Science-Based Modeling and Simulation Initiative)を推進しており、今回の参加組織の国立研

究所、大学なども、これにエントリーしている。これまでの米国のアプローチからみれば、このような枠

組みの中で、豊富な予算をつぎ込み、先進的なシミュレーション技術、V&V や UQ (Uncertainty

Quantification)の手法やアプローチが提案され、全体としてシミュレーションベースの設計に関する知見、

手法、そしてスコープが拡がっていくことであろう。

米国では、軍事や宇宙開発などの大型開発において、高度なシミュレーション技術に立脚した設計手法

が育ち、現在それらが、V&V や UQ などの技術と合体し、より強力な方法論として展開されようとしてい

る。本 WORKSHOP の序文では Verification とは“複数の参照解と比較すること”、Validation とは“可能な限

り現実と比較すること”と解釈されている。

本 WORKSHOP は 2 年に一回のペースで開催され、2008 年に Idaho Falls において、INL がスポンサーと

なって第一回が実施され、今回はGNFAの燃料工場があるWilmingtonに近いMyrtle Beachでおこなわれた。

スポンサーは Center for Advanced Energy Studies、INL、Idaho State University、そして North Carolina State

University である。議論する範囲は、ウラン採鉱から最終処分まで、すなわち現在の、あるいは次世代の燃

料サイクル全般に係わる V&V および UQ において求められる技術的課題である。

今回の WORKSHOP では、気象解析の講演があるが、注目する対象事象の視点からは、原子力施設のよ

うな人工物から気象のような自然現象に至るまでを扱う。被ばく解析や最終処分などをスコープに入れよ

うとすれば、このような対象を除外するわけにはいかない。V&V+UQ の問題の本質は、むしろこのような

不確かさが大きな分野との比較を通じて明らかにされる。WORKSHOP には原子力エンジニアリングのみ

ならず、V&V や UQ を必要とするであろう航空宇宙、資源探査、軍事など、他分野の研究者の参加も奨励

している。普段であればなかなか知識や経験を交換できない技術者や研究者が、V&V という共通のテーマ

について一堂に会することによって、先に挙げた DOE の Science-Based Modeling and Simulation Initiative を

前進させることを狙っている。

II DOE の R&D ロードマップ

レセプションにおいて、前政権が立ち上げた原子力ルネッサンスは未だに継続しているという認識が確

認された。この会議の直前(5月19日)に、DOE が米下院の Committee on Science and Technology に提出

した2012年の原子力 R&D に関するロードマップについて紹介された。(これは WEB で公開されてい

る)主な4本柱として以下が挙げられる。

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① R&D OBJECTIVE 1:現行炉の信頼性、安全性維持、寿命を延長するための技術、または他の解決法

の開発

② R&D OBJECTIVE2:エネルギセキュリティ、気象変動の問題に対処できるような新たな原子炉概念の

実現性を高める

③ R&D OBJECTIVE3:持続可能な核燃料サイクルの開発(Blue Ribbon Commissionにおける Once-Through、

Modified Open Cycle、Full Recycling の検討)

④ R&D OBJECTIVE4:核拡散とテロリズムのリスクを認識し、これを極力押さえ込む

以上を実現するための R&D 領域としては、

(a) Structural materials

(b) Nuclear fuels

(c) Nuclear system

(d) Instrumentation and controls

(e) Power conversion systems

(f) Process heat transport systems

(g) Dry heat rejection

(h) Separation processes

(i) Waste forms

(j) Risk assessment methods

(k) Computational modeling and simulation

の11項目が挙げられた。

R&D アプローチとしては、A goal-driven science-based approach とされ、具体的には理論、実験、そして

高性能のモデリングとシミュレーション(M&S)による根底物理現象の理解によって、革新的な原子力技

術の実現を図ることとしている。DOE の Office of Nuclear Energy(NE)がリードしている Modeling and

Simulation Hub(モデリングおよびシミュレーション拠点)プロジェクトによって、CFD のような先端 M&S

技術が、並列計算機などの新たなマルチフィジクスシミュレーション環境の中で、プラント高経年化や出

力向上に関連する予測の可能性を拡げている。このようなマルチフィジクスシミュレーション技術をさら

に拡張し、通常時や異常時のプラント性能評価に利用することが期待されている。

NE は、以上の R&D アプローチをサポートするために、DOE が所有する照射炉、PIE、化学処理、処分

などの施設を最上位として、縮小アクティブ、ノンアクティブ施設などを適宜に利用するほか、OECD/NEA

や IAEA などの活動、さらには NE 独自の他国との関係を通じての国際的協力も視野に入れている。この結

論は、DOE が、バッテル研究所および INL におこなわせた高速炉、燃料サイクルのための研究施設調査の

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結果、基礎研究に耐えられる施設がほとんどないという NEAC(原子力諮問委員会)への報告結果と整合

するものである。また、NEAC は、NE とその他の部門(RW:放射性廃棄物管理局)との連携が悪いと批

判しており、ロードマップ報告書の中でも、NE 自身が SC(科学局)、NNSA(核不拡散安全保障局)、その

他とのコミュニケーションを活発化することが約束されている。

III 関連する DOE の動向

今回のWORKSHOPを理解するには、DOEがおこなっているNEAMSプロジェクトなどの関連するアクテ

ィビティについてある程度知っておく必要がある。これについては公開情報が多数あるので、それらを参

照のこと。

IV 参加者

参加者名簿などの配布はなかった。後日報告書と共に公開されることと思われる。ざっとみたところ、

軽く 100 名を超えていることは確かである。主要な参加機関は、米国の政府機関(DOE、NRC)、国立研究

所(INL、LANL、ANL、SANDIA)、大学(NCSU、ミシガン大、PSU、PARDUE 大)、ベンダー(GE/HITACHI、

WESTINGHOUSE、GNFA)、欧州からはフランス、イタリア、ドイツ、スェーデン、ロシア、アジアから

は、韓国、中国、そして日本である。わが国からの参加者は、福井大 竹田先生と小職の2名である。PURDUE

大におられる日引先生も参加された。また、商用 CFD コードベンダーとしては、ADAPCO(STAR-CD)

と ANSYS(CFX)が参加した。

V WORKSHOP の全体的構成

講演は、プレナリが7件、個別セッションとしては表1に示す 16 セッションから合計 75 件であり、そ

の他に、概ね各日の最後に特定のテーマに関して表 2 にまとめる 5 件のパネルディスカッションがある。

セッションを分類すれば、

① V&V+UQ の手法全般に関する事柄(Methodologies)

② 主要な物理プロセスに関する事柄(Major Physics)

③ V&V+UQ とライセンスに関する事柄(Licensing Issues)

④ その他の適用分野(Other Applications)

の4分野となる。

最終日には、壁が取り外し可能な大部屋を利用して、先ず壁で仕切って炉物理、熱流動、材料、マルチ

フィジクス/システムにおいてグループ毎の Findings について総括をおこない、次いで壁を取り払って全体

としての Gap Analysis がおこなわれた。図1には、以上の会議の構成を図示する。

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表1 個別セッション

No. Title 件数 1 Solution Verification (解検証) 4 2 Verification Practice (検証実例) 5 3 Posterior Error Estimation (事後誤差推定) 4 4 Data Assimilation (データに基く調整[較正]法) 4 5 Sensitivity Analysis (感度解析) 4 6 Fuels and Materials (燃料および材料) 3 7 UQ for Fuel Licensing (燃料ライセンスにおける UQ) 3 8 Reactor Physics (炉物理) 8 9 Thermal-hydraulics (熱流動) 8 10 Data and Modeling Errors (データおよびモデリングにおける誤差) 4 11 Multi-physics Modeling and Simulation

(マルチフィジクスモデル化およびシミュレーション) 4

12 Licensing Standards (ライセンスの基準) 4 13 Multi-physics / Systems (マルチフィジクス/システム) 8 14 Advanced Data UQ Algorithm (最新のデータ UQ アルゴリズム) 4 15 PRA 4 16 UQ and Decision Making (UQ および意思決定) 4 合計 75

表2 パネルディスカッション

日 テーマ パネラー

25 PM

Verification Challenges for Advanced Predictive Tools, and Potential Areas of Applications, Algorithmic Needs / Capabilities (最新の予測法のための検証の性能向上、その応用の可能性、アルゴリズム

に求められるもの/能力)

J. Ragusa W. Rider

26 AM

Validation Challenges for Advanced Predictive Tools (最新の予測法のための妥当性確認の性能向上)

R. Nelson J. Stewart

26 PM

Algorithmic Needs for Optimum Design of Experiment and Decision Under Uncertainties (不確かさがある状況下での実験計画の最適化と決定のために必要なアル

ゴリズム)

W. Oberkampf J. Stewart

27 AM

UQ Challenges for Complex Nuclear models (複雑な原子力のモデルに対する UQ の性能向上)

H. Abdel-Khalik M. Anitescu

27 PM

Algorithmic Needs for Addressing UQ Challenges (UQ の性能向上に必要なアルゴリズム)

H. Abdel-Khalik R. Nelson

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Plenary Lectures

1:Solution Verification

2: Verification Practives

3: Posterior Error Estimation

4: Data Assimilation

5: Sensitivity Analysis

Fuel and Materials

1:UQ for Fuel Licensing

Reactor Physics

Thermal Hydraulics

1:Data and Modeling Errors

1:Multi-physics Modeling and

Simulation

2:Licensing Standards

2:Multi-physics /Systems

6: Advanced Data UQ

Algorithm

2:PRA

3:UQ and Decision Making

Major PhysicsMethodologies

Other Applications

Licensing Issues

Separate Group WrapupReactor Physics

Thermal HydraulicsMaterials

Multi-physics/ System Simulation

Gap Analysis

Panel Discussions

図1 V&V WORKSHOP 2010 の全体構成

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VI 各論

VI.1 V&V に関する共通の問題

(a) Verification は概念的には単純なアクティビティであるのに、実際のコード認証などではほとんど議論

されないのはなぜか?

(b) V&V を実施済みと宣言するようなコードはほとんど存在しない。Validation をどのような深さで実施

すべきか?

(c) 第一原理のコードでは numerical error はないのか?否、近似は存在するので V&V が必要である。

(d) PDE の基本的性質(放物型、楕円型、双曲型)をよく理解して戦略を立てるべきである。

(e) 格子収束性テストは、単純な問題については実施可能であるが、実際に設計で取り組むような三次元

の複雑な体系において、3セット以上の格子を作成して観測次数を確認するようなことは現実には無

理である。また、複雑な体系については観測次数が理論次数に収束するという保証はない。したがっ

てアダプティブに格子を調整するということも必ずしも機能しない。

(f) マルチフィジクスでは、それぞれが異なる収束次数を有し、Richardson 補外の理論は適用できない。

TRACE-PARCS における収束次数とはどのように評価すればよいのか?

(g) LES などの乱流モデルを用いれば、格子サイズとサブグリッドのフィルタサイズを同時に変動させる

ことになり、そのたびに異なる収束傾向を示す。

(h) MMS のような解析解は単純な問題についてのみ設定が可能であるが、設計の実用的な問題については

設定が難しい。このような場合に、産業界において標準的なベンチマーク問題や測定誤差を明記した

実験結果をデータベース化し、WEB などで共有することが有効である。

(i) フランス CEA では、V&V ではなく、VVQ(Verification/Validation/Qualification)という枠組みを提案

している。Verification とはオリジナルのコード検証と解検証に近いが、Validation は Numerical Validation

の意味であり、モンテカルロコードのような第一原理コードとの比較によるものを Validation の一部と

みなしている。Qualification とはオリジナルの実験的な Validation の意味に近い。

←モンテカルロといっても、核反応を断面積で扱っており、これには測定不確かさがある。また、全

ての粒子を扱えるわけではないというところでも不確かさがある。モンテカルロコード自体の V&V が

不要ということではなく、これは別途実施すべきである。

VI.2 予測のための V&V

シミュレーションに基づく Prediction をおこなうという視点から、Validation のアクティビティの課題を

論じた。

主な論点は以下の通り。

(a) 前提条件

対象問題の特定と要求の定義

Verification

シナリオの定義

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Figure of Merit の定義

(b) Validation と不確かさ評価のプロセス

如何に不確かさ評価に付随した信頼に足るような Validation を定義できるか?

シミュレーションと実験結果の二つの分布を比較

Validation のための計算処理の方法

不確かさの Prioritizing

(c) Validation をどの時点で成熟したと判定するか?どこまでやれば十分といえるのか?

など、原子力におけるシミュレーションの汎用的な V&V の考え方として、EMDAP や CSAU のような既存

の BEPU 法を念頭においていることが伺える。

これらのアクティビティにおいて、基本的には、コード開発者-解析者-実験者がチーム一体となって

協力することが必要である。

Prof. D’Auria(ピサ大)からユーザー効果について議論しないのかという指摘があったが、V&V の考え

方では、これに係わるスタッフが、物理、モデル、実感を十分理解しており、チームとして有機的に機能

することが前提条件である。すなわち、ユーザー効果といえば、チームのメンバーのいずれかが、その役

割を果たせないということであり、V&V の前提条件そのものの問題である。

VI.3 その他の議論

① 過去の国際ベンチマークにおいて、共通の情報に基づいたブラインド評価により、組織間に相当の差

異が見られることが常である。これが現実であり、ユーザー効果を重視した V&V の仕組みが必要で

ある。

←本来、こうしたベンチマークでやるべきことは、関係する物理プロセスを階層化し、SET、コンポ

ーネントテストを積み上げてモデルの適用範囲を評価することである。その上で IET をおこなって予

測性能を評価する必要がある。そのプロセスを組織間で共有しても、そのように V&V の実用性を否定

するような予測差が現れるとは思えない。そのようなことをおこなわないブラインド評価に意味があ

るのか?

←LOCA テストなどで、数点のデータのみで不確かさを評価しているが、このことが課題である。

(Overkampf 氏)(おそらく階層化をしっかりやるということから、同じ主旨の意見か?)

② この WORKSHOP では、構造、流体、システム解析を分けて議論しているが、産業界が必要としてい

るのは標準的なアプローチである。

③ Westinghouse では、すでに CFD を設計に用いている。一方で、NRC は CFD によるライセンス安全評

価を認めていない。このような状況を解決することがこの WORKSHOP の役割ではないのか?

←CFD のために標準的なデータベースを作ろうという努力を始めている。(OECD のベストプラクティ

スガイドのことを意味しているようである)

④ RELAP7 のような、これから V&V の方針に従って作成されるコードはよいとしても、既存のソフト

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の V&V についてはどのように考えるのか?

←現実にはこれらのコードに V&V をフルに求めることはできない。これらのコードについての V&V

は分けて議論する必要があるだろう。しかし、本 WORKSHOP の参加者も、その立場によって Time

Horizon が異なる。研究者であれば、10 年後のことを考えられるが、設計者であれば数年以内だろう。

CSAU が議論され始めて、実際に商業化されるまでに15年程度は掛かっている。よって、既存コー

ドは当面使い続けられ、これらについての V&V の議論も重要。

⑤ 商用コードのようなソースが提供されない場合の Verification の問題は?

←Verificationが必要な部分を評価できる解析解(MMSのような)のセットを用意することでVerification

ある程度可能。

⑥ 原子力の複雑なコードでは、入力は数千行に及ぶ場合がある。この場合の Validation は、モデルに対

してというよりは、入力に対してウェイトを置いている。

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VII ラップアップ 最終日には、これまで分かれていた議論を、炉物理、熱水力、燃料、マルチフィジクスに分けてまとめ、

さらに4部門合同のパネルセッションでギャップ分析を実施した。部門ごとのまとめは熱水力に出席した。

まず、印象深かった発言は、V&V という言葉は定着したとしても、そのアプローチは依然として分野毎

に異なり、同じ言葉に対する解釈も共有できていないことを否めないというものである。各分野の現状に

関する総括を以下にまとめる。

① 核については、線形仮定、定常を前提としたエレガントな V&V 手法が確立している。随伴系を用いた

感度解析法は実用レベルである。VV+UQ 手法として、感度解析(TSUNAMI、ERANOS)、統計手法

(XSUSA、DAKOTA)が他の分野よりは整備され、成熟しているといえる。数学的な扱いにおいては、

他の分野ほどに脆弱(vulnerable)ではない。

② 熱水力については、離散化、収束、非線形、相関式の振る舞いなどに対処できる、一貫した V&V+UQ

の手法が確立していない。二相流は、プラントモデルの多くで均質化されており、界面相互作用の情

報は失われている。プラントシステム解析に用いる核熱水力結合コードでもそれは同様である。

③ 燃料挙動などの材料挙動のシミュレーションについては、LOS ALAMOS の FRAPCON の開発を念頭に

おいて方向性がまとめられているように見える。この分野における方向性や結晶レベル→分子レベル

→原子レベルへと、正しく第一原理モデル化の追及である。これは、DOE-NE/SC の白書にも明らかに

されている方向性である。この分野では、特に、ライセンスで現在用いられているモデルとの相違が

大きいように感じられる。

上述の燃料挙動のように、V&V を物理理論や数学理論の観点からとことん推し進めるという提案がある

一方で、これに対するいき過ぎを批判する意見もある。感度解析において、随伴系を用いた手法を核だけ

でなく、二相熱水力にまで拡張する考え方が Caccuci などから提案されているが、数学的な振る舞いがよく

ない相関式などを対象に随伴化することが適切なのかという意見が出たのはその典型的なものである。

また、会期中に何度となく指摘されたユーザー効果に関して、経験豊富な INL などの技術者が参考にな

る考え方を述べていた。これを以下に抜粋する。

“CSAU の時代のような経験豊かな人材が、今となっては産業界にも、規制側にも不足しているのだから、

RELAP7 のような新しいコードを作ろうというのであれば、ユーザー効果についての対策を考えるべきで

ある。ノーディング自動化、モデルにおける形状因子乱用禁止という方策がいわれるが、それは本質的な

解決にならない。かつては計算機を流すことはコストが高く、多くの手計算をおこなったうえで計算機を

流すようなことをしていた。これによって、物理やコードの仕組みを理解していった。かつてはこういう

人がシミュレーションをしていたが、今はコードユーザーの経験年数が短縮しており、実物や実現象を十

分に理解しないままシミュレーションをこなす傾向がある。このようなユーザーに対して訓練をすること

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が必要。それは、コード開発の問題というよりは、組織体制の問題のように考えられる。TMI-2 の後に、

プラントオペラータに対しては訓練の必要性が認識されたが、これからは解析者、設計者に対しても必要

ではないか?新しいコードのための有効な(Qualify された)SET、IET を揃えることも重要な課題である。

IAEA/OECD では、このようなライブラリ化の活動を地道におこなってきた。そのような情報を対象に

Validation することでユーザー効果の低減を図れる。”

以上