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1 高所空間のデザインと馴化速度 -没入型 Virtual Reality System を用いたストレス計測- Analysis at time of mental stress that used EDA Physiology psychology research on architectural design

高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

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2009年度,卒業論文,斉藤純平

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高所空間のデザインと馴化速度-没入型Virtual Reality System を用いたストレス計測-

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

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2Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

はじめに

通い慣れたカフェ、通い慣れた道、通い慣れた公園…通いなれた研究室

慣れるって…なんだ

ふとこんな風に思ったのが、この研究のきっかけだった。誰もが皆、居心地よくて、落ち着ける空間を大切にしているんだろう。

慣れた空間。ストレスを感じない空間。そんな空間のためになればと思い、この研究に打ち込んだ。

はじめに

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3Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

はじめに目次

第一部 論文編

第1章 序論1.1 研究目的1.2 語句の定義1.3 研究フロー

第2章 研究背景2.1 多様化する空間とストレス2.2 超高層建築と高所恐怖症2.3 既往研究との位置づけ2.4 ストレスと慣れ2.5 「慣れ」を用いた心理療法2.6 基礎研究  2.6.1生物学的馴化

 2.6.2 定位反応と慣れ

 2.6.3 ザリガニの逃避行動の馴化

 2.6.4 精神性発汗

 2.6.5 皮膚電位計

 2.6.6 クレッセント製VRシステム

第3章 予備実験3.1 予備実験概要3.2 映像コンテンツの作成3.3 実験器具3.4 実験方法3.5 実験結果3.6 分析・考察

第4章 本実験3.1 本実験概要3.2 バーチャルリアリティ(VR)コンテンツの作成3.3 実験器具3.4 実験方法

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目次

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第5章 実験結果5.1 データの処理方法5.2 各値の求め方5.3 実験結果

第6章 分析・考察6.1 生理反応の分析 6.1.1 近似曲線による分析

 6.1.2 個人の反応

 6.1.3 全体の反応

6.2 アンケートの分析

第7章 展望7.1 展望

参考文献謝辞

第二部 資料編 

目次

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第1部論文編

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

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第 1章序論

研究目的 1.1語句の定義 1.2

    空間馴化  1. 空間刺激・馴化速度 2. 

高所ストレス 3. 

研究フロー 1.3

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第1章 序論

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1.1 研究目的

 高所ストレスに対する生理反応の変化を計測することで、 空間デザインに伴って変化する人の馴化速度を明らかにする。

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第1章 序論

8Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

1.2 語句の定義

1.空間馴化 生物学的に、ある刺激に対して順応することを馴化という。空間から受けるストレスに対しても、同様な馴化の反応が見られるのではないかと考えた。そこで本研究では、「空間から受けるストレスに慣れること」を空間馴化と定義する。 一般に、ストレスを感じると身体には生理反応として現れることが明らかであるが、本研究ではストレスへの馴化を生理反応の低下と捉える。また、生理反応として精神性発汗によるを指標とし、その反応量の減少を馴化とする。

2.空間刺激・馴化速度 本研究では「空間がその空間に居る人に与えるストレス」を空間刺激、「空間馴化の速度」を馴化速度と定義する。生物学的馴化には「刺激が大きいほど早く馴化する」という定説があり、空間の場合、空間刺激が大きいほど、その空間への馴化速度は速くなると考えられる。

3.高所ストレス 本研究では、「高所から見下ろしたときに感じる負の情動」を高所ストレスと定義する。高所ストレスに対する皮膚電位反応の低下を、高所ストレスに対する馴化と考える。

図1.2.1 空間馴化と生理反応

空間馴化

→→→

空間刺激

反応量

生理反応

→→→

<馴化前 > <馴化後 >

反応量低下

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第1章 序論

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1.3 研究フロー

 本研究のフローチャートを示す。

図1.3.1 研究フロー

コンテンツ作成HMDを用いた簡易的な2D映像の作成

クレッセント社製 VRシステムを用いた、より没入感のある VR環境での実験を実現

コンテンツ強化

空間のデザインにより馴化反応に変化が見られることを確認

本実験

予備実験皮膚電位計を用いて馴化の傾向が計測できることを確認

生理的評価

皮膚電位計測によって精神性発汗の反応量の低下を見て、馴化を定量的に明らかにする。

心理的評価

アンケートにより、主観的に馴化を自覚しているかどうかを明らかにする。生理的評価の補足的なもの。

基礎研究生物学的な「馴化」に関する調査心理的な「慣れ」に関する考察

ストレスと生理反応計測の関係性の調査実験方法や評価方法の考察

結果分析反応量・反応比を求めグラフを作成

→→

→→

→ →

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第2章研究背景

多様化する空間とストレス 2.1超高層建築と高所恐怖症 2.2既往研究との位置づけ 2.3

ストレスと慣れ 2.4「慣れ」を用いた心理療法 2.5

基礎研究 2.6生物学的馴化 2.6.1

定位反応と慣れ 2.6.2ザリガニの逃避行動の馴化 2.6.3

逃避行動馴化の成立過程 1.   

馴化成立の神経機構 2.   

精神性発汗 2.6.4皮膚電位計 2.6.5

クレッセント製VRシステム 2.6.6

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第2章 研究背景

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2.1 多様化する空間とストレス

 現在、技術の発達や社会のうつろいにより様々な形で空間は多様化しつつある。空間の多様化のなかでストレスを感じる場面は多くあるだろう。人間が感じるストレスは、デザイン,機能面、状況や他者との関係などがあるが、一番プリミティブな環境との関わりでいえば、空間・環境を見るだけでも引き起こされている。 生物としての人間には、自然環境にで生き残るために、状況や環境に対応しようとする様々な身体反応が起こるように出来ている。それが果たしてこの現代の、人工環境の中ではどのように反応を示すのであろうか。 空間の多様化について考えると、都市にみられる多様化として、ビルの高層化や地下鉄・地下街の複雑化が挙げられる。高層ビルのオフィスで働く労働者は、高所を意識することでストレスを感じてしまうだろう。ストレスによる作業効率の低下などが懸念される。また、地下鉄・地下街の経路が複雑化に関して、亀井らの研究によると、地下街の経路探索では実際に歩行にかかった時間よりも長く歩いたと感じる傾向があることが明らかにされている。長く歩いたと感じるということは、それだけストレスを感じていると考えられる。 このような都市的な空間の多様化の一方で、建築家はより魅力的な空間を模索してきた。そのなかには、建築家本意の設計もみられ、利用者のニーズに応えていないものも見られる。小泉らの研究によると、デザイナーズマンションの居住者は少なからず不満を抱えていることが明らかにされている。スタイリッシュな空間を追求し、利便性を排した空間は居住者にストレスを与えているのだ。 このように、空間の多様化により、人々がストレスを感じているという現状がある。利用者のストレスなどの情動については、アンケートや印象評価による心理的な手法を用いた研究が多くされてきた。そこで本研究では利用者の情動について、科学的な手法を用いた分析ができないかと考えた。

図2. 1. 1 超高層ビル『台北 101』 図2. 1. 2 複雑化する地下街『東京駅八重洲地下街』

『地下街における空間認知に関

する研究 - 現場実験による被験

者の迷い意識の検討』(2002 年、

日本建築学会東海支部研究報告

集、亀井翠里)

『デザイナーズマンション居住

者に対する住意識調査 - 「ブルー

タス不動産」掲載の東京近郊の

賃貸物件を対象として』(2004

年、日本建築学会研究報告集、

小泉隆・寺田憲弘ら)

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第2章 研究背景

12Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.2 超高層建築と高所恐怖

 上記のような、現代の人工的な環境のなかで、環境から直接受けるストレスの代表例として、高所恐怖が挙げられる。もともと、自然環境の中で身体落下の危険から身を守るために、高所から見下ろすような視覚的、身体的体験によって、身体には即座にストレス反応があらわれる事が知られている。この反応は、生後6ヶ月から現れる事が知られており、生物的・遺伝的側面が強いと考えられる。  そこで、本研究ではストレス反応が顕著に見ることができる、高所恐怖による分析を行う。そのため、超高層化の現状と高所恐怖について把握する。 現在、世界各国で建築の超高層化が進んでいる。日本における高さ 100m以上の超高層ビル数は、1960 年代は霞ヶ関ビルディング(1968 年竣工、高さ 147m)と神戸商工センタービル(1969 年竣工、高さ 109m)の 2棟のみであったが、1970 年代末には 30棟を超えており、この頃に都市部は超高層化時代に突入したといえる。世界で最も高いビルは台北国際金融センター(台北 101、台湾・台北)、101 階建、508mである。 恐怖は、回避行動や逃避行動を引き起こし、危険な脅威から身を守るために不可欠な情動である。しかし恐怖をもつには不合理な対象であったり、恐怖が不合理なほどに強すぎたりすれば、生活に支障を生じる。 「特定の恐怖症 (specific phibia)」は①ある特定の対象や状況、出来事に対して、不合理な強い恐怖が喚起され、長期間にわたって持続する②恐怖がふだん、対象や状況などの回避や逃避につながる、あるいは恐怖に耐えることで苦しい苦痛を感じる③その結果、生活に支障を生じるなどの症状を示す恐怖症である (DSM-IV-TR:American Phychaiatric Association, 2000)。高所恐怖症も、特定の恐怖症の一つである。

Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/

畑山俊輝:感情心理学パースペ

クティブ - 感情豊かな世界 -

( 北大路書房、2005.2)

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第2章 研究背景

13Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

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図2.2.1 世界一超高層ビルの変遷

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第2章 研究背景

14Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.3 高所恐怖に関する既往研究

 高所のデザインとストレスの研究には、先行研究がある。内田らはこの高所恐怖を取り上げて実験を行い、デザインとストレス反応に関連がみられることを明らかにし、デザインによるストレスマネジメントの可能性が示された。それによれば、視覚的デザインの違いで、最初のストレス反応の大きさに違いがあることがわかっている。

 清水らの研究では、高所におけるデザインが高所における不安を助長していると考え、高所での精神的ストレスを緩和させることは、そこで活動する人の精神衛生を保つための手段だとしている。高所ストレスの要素から視覚情報のみに限定し、不安反応は視界の遮蔽割合及び遮蔽位置が関係することを示した。高所空間を VRで再現し、それをヘッドマウントディスプレイを用いて見たときの精神性発汗量を計測した。実験結果として遮蔽割合と反応比には強い負の相関があり、遮蔽割合が高いほど反応比は低くなり、高所ストレスが緩和されることがわかった。 また、内田らの研究では、特定の恐怖による不安反応を身体反応から捉えそれを解決することで、精神的に配慮がなされたヒトに優しい建築空間計画が実現可能であると考えた。高所における視界の遮蔽、高さの違いによるストレス反応差を計測し、高所におけるストレスの予測モデルを作成した。遮蔽割合とストレス反応、高さ変化とストレス反応には高い相関関係が見られ、外部を遮蔽する部分が大きいほど高所ストレスが低くなる、高さが上がるにつれて反応は強く出るという結果が得られた。また、現実と CG間でストレス反応値の差の検定を行い、5%の水準で有意な差がみられた。両者の反応値の平均を比較したところ、CGにおけるストレス反応値は現実のストレス反応値の 62%程度であった。

「高所ストレスを緩和する建築

に関する研究ー視界の遮蔽によ

るストレス反応の計測に関する

分析ー」(清水勝太、早稲田大

学理工学部建築学科渡辺仁史研

究室 2005 年度卒業論文)

「CGを用いた高所映像による高

層建築での視界遮蔽デザインの

検討ー高所ストレスを緩和する

建築に関する研究ー」(内田貴

之、2005 年度日本建築学会 関

東支部研究報告集)

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第2章 研究背景

15Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.4 ストレスと慣れ

 しかし、建築空間は日常的に使うものであるから、人はそのストレスにも「慣れる・馴れる」ということが起こる。 馴れるということは、生物としての特性で、また人間には非常に馴れやすいという長所がある。だからこそ、多様な空間に順応し、多くの世界に進出できたといえる。 前述のように既往研究で、ストレスと環境の関係について一定の成果が得られているが、環境に馴れて行く過程を明にする必要があるのではないだろうか。 ストレスと馴れと時間については、下記の二つの事柄に留意する必要がある

(1)一般に、「恐怖ストレス」は馴れにくいと言われている。つまり何度か経験を繰り返しても、やはり同様の「ストレス反応」が出るということが想像される。(2)一方で、ある短期間の身体のストレス反応自体は数分で「収束」を迎える事が知られている。

 このように、ストレスは時間経過についての特性があり、これを考える事が重要なのではないか。 既往研究のように、初見のデザインに対するストレス反応について、一定の知見が得られていることをふまえ、日常的な空間でのストレスを考える場合には、その反応の時間的側面を明らかにすることが、重要であると考えられる。

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第2章 研究背景

16Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.5 「慣れ」を用いた心理療法

 「ストレスと馴れ」については、医療分野で心理療法として用いられているエクスポージャー(曝露療法)が参考になる。これは、神経症や恐怖症などの治療のための心理療法の一つであり、患者をそのストレスの対象に一定時間曝露させるというものである。 例えば、駅の人ごみが苦手で恐怖なら、荒療治ではあるが、人ごみへ行かせるなどといった具合である。 前述の(2)の、恐怖によるストレス反応が、短期間的には収束する事を利用して、一定時間それに耐えていると、 身体の反応がおさまるので、「そのおさまることを実感させること」を目的にしている。それを体験・実感することで(1)の馴れにくい恐怖、それが恐怖だと言う観念を、自然に直して行くというものである。 社会生活を送るうえで、(1)を支障のないレベルまで下げることが目的となっているので、(1)(2)を根本的に直すものではない。 エクスポージャーの手法として、近年 VRを用いたエクスポージャーの研究が盛んで、一定の成果を上げているという報告がある。空間に対する恐怖症などでは、特に有効であると言われている。 VRエクスポージャーでは、治療者が必要な刺激を自由に作成してエクスポージャーを実施することができる。例えば、これまで飛行恐怖の治療では , 実際に飛行場に行ったり飛行機に乗るなどの in vivo エクスポージャーを行う必要がある場合でも、時間的・コスト的な問題から実施が困難であった。しかしながら、VRを利用して刺激を呈示すれば、治療室の中でバーチャルフライトを体験させるエクスポージャーを実施す ることが可能となる。 また、VRエクスポージャーは、恐怖刺激をイメージすることが困難なためにイメージエクスポージャーを適用できない患者に対するエクスポー ジャーとしても有効である。したがって、VRはエクスポージャー療法における新たな刺激呈示法として期待されている。これまでの研究で、VRエクスポージャーは、高所恐怖や飛行恐怖等の特定の恐怖症、パニック障害、PTSD 等の不安障害の治療に有効であることが示されている。VRエクスポージャーの特徴として、以下の6点があげられる。(1) エクスポージャーを診療室内で行えること(2) 恐怖の強い患者に対し、エクスポージャーの安全性を強調できること(3) 恐怖を惹起するさまざまな環境を同時に提供できること(4)in vivo エクスポージャーの前段階の治療として位置づけられること(5)in vivo エクスポージャーで脱落した患者を対象に治療できること(6) 経済的・時間的節約となること

図2.5.1 簡易型VRエクスポージャーの実施イメージ

『Specific Phobia の改善に向け

た簡易型 VR エクスポージャー

の開発』2004 年、早稲田大学

大学院人間科学研究科、宮野秀

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第2章 研究背景

17Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.6 基礎研究

2.6.1 生物学的馴化

 生物学的な馴化には、様々な定説が存在する。1.感覚ニューロンから上位性介在ニューロンへの化学シナプスの神経伝達物質放出量の減少。2.経験を繰り返すうちにパターン化され、海馬に届かなくなること。そして、ドーパミンを放出する「テグメンタ」の活性化。3.感覚ニューロンから運動ニューロンへの神経情報伝達効率の減少。

 目や耳といった感覚器レベルで起こる反応の低下を順応(adaptation)と呼ぶ。一方、脳・中枢のレベルで起こる応答の低下のことを馴化(じゅんか)habituation と呼ぶ。 馴化の代表的な例は動物たちの逃避行動である。多くの動物は危害が及びそうな強い刺激に対して、瞬時にその場から離れる逃避行動を行うが、繰り返し同じ刺激が与えられると、やがて刺激を無視して逃げなくなる。 また、馴化は動物の日常生活において意味のない反応を排除しようとする生物の環境への適応の好例であり、繰り返された刺激への応答という経験を積んだことで行動に変化が生じる、つまり最も単純な学習(learning)の一形態ということができる。また、一度馴化が成立すると刺激停止後も比較的長期に渡って保持されている場合が多く、記憶(memory)の一側面といった面も合わせ持っている。

宮田洋:新生理心理学 2巻 

生理心理学の応用分野 北大路

書房、1977.9

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第2章 研究背景

18Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.6.2 定位反応と慣れ

1.定位反応の概念 注意や知覚などの認知の基本的過程や原始的な学習形態のひとつとして、生活体がある刺激に対してとる反応を定位反応(orienting response:OR)という。ORは、①感覚刺激の種類を問わず(非特異性)、②環境条件(新奇性)の変化によって生起し、③中程度以下の強度の刺激に対して感覚器官の感受性を高める機能をもち、④体性神経系反応(耳・目などの身体の運動)、自律神経系反応(唾液などの分泌反応、皮膚電気活動や心臓血管系活動)、中枢神経系反応(脳波変化など)の複合反応として出現する。 もうひとつの大きな特徴は、刺激の反復呈示などの環境条件が固定化すると減衰したり消失することであり、これを慣れ(habituation)とよぶ。しかし、環境条件に変化や生活体の状態になんらかの変化があれば、それに対してORが回したり新たに生起する(脱慣れ)。

宮田洋:新生理心理学 2巻 

生理心理学の応用分野 北大路

書房、1977.9

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第2章 研究背景

19Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.ソロコフの神経モデル理論 ORの特徴は、ある刺激に対する慣れが生じたあとでも、それまでに与えられなかった他の刺激が呈示されると再び回復するという、刺激選択性にある。ソロコフ(1963)は、このことを中枢神経系が関与した刺激の比較・弁別機構によるものととらえ、大脳皮質にくり返し与えられる刺激の特性についての全情報(種類、強度、質、順序など)を登録する細胞系(神経モデル:neuronal model)が形成されると考えた(図)。外部から刺激が与えられると、反射的な刺激比較過程(stimulus comparator process)において、すでに形成されている神経モデルと比較照合される。不一致が検出されればORが生起する(経路6と7)。一方、刺激の反復によって不一致がなくなると、脳幹網様体に入る経路を阻止する負のフィードバックが皮膚から送られる(経路3)とともに、脳幹網様体から皮質にも効果を及ぼす。その結果、慣れが生じ、覚醒水準も低下する。

3.バリーの理論 バリー(1982)は、同様な実験事態での反応の生起や慣れがさまざまな自律神経系指標間で必ずしも一致しないことに注目し、ORはソロコフが主張したような、単純に統一された過程では説明できないと考えた。彼は、ORを構成する機構として、3種類の検知器と1種類の反応系を仮定して(図)、各検知器によって出現する反応の特異性を指摘した。この機構は、a. 刺激検知器(stimulus register)、b. 新奇性検知器(novelty register)、c. 刺激強度検知器(intensity register)、d. 反応系(OR system)からなる。それぞれで発現する反応は、刺激検知器では心拍減少と脳血流増加、新奇性検知器では呼吸変化やα波ブロッキング、刺激強度検知器では末梢血流量の減少、反応系では皮膚電気反応が想定されている。反応系は新奇性検知器と刺激強度検知器によって活性化されるため、皮膚伝導度反応(skin conductance response:SCR)のような皮膚電気反応は刺激検知器以外のどれによっても出現する。

図2.6.2.1 ソコロフの神経モデル(Sokolov,1963) 図2.6.2.2 バリーのモデル(Barry,1982)

宮田洋:新生理心理学 2巻 

生理心理学の応用分野 北大路

書房、1977.9

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第2章 研究背景

20Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.6.3 ザリガニの逃避行動の馴化1.逃避行動馴化の成立過程

 ザリガニは危害が及びそうな強くて早い刺激に対して、テイル・フリップと呼ばれる腹部を屈曲させるやり方で、すばやくその場から飛び退く。 これら逃避行動は、ザリガニの腹髄内を縦走するそれぞれ一対の巨大ニューロン、LG (Lateral Giant)・MG (Medial Giant) の活動によって生じている。ザリガニの尾部を筆で強くつつくと LG由来の逃避行動が起こりますが、繰り返し刺激を与えて続けるとザリガニはしまいには全く応答しなくなる。この LG馴化成立までの過程は、機械感覚情報を中枢へ伝えている感覚ニューロン束に実験的に電気パルスを与え、その時の LGの応答を細胞内記録することで生理学的に定量解析することができる。最初の感覚刺激に対する LGのスパイク応答から LGが発火しなくなるまでの過程の一例を示したのが、図2である。LGは一回目の感覚刺激(刺激を与えると矢印で示したようなアーチファクトが記録される)に対し、*で示したようなスパイク応答をする。2回目、3回目の刺激に対しても LGはスパイク発火するが、スパイク閾値を越えるのにより時間がかかるようになる。そしてこのザリガニ標本の場合、LGは4回目からの感覚刺激に対して、スパイクを発生せず、閾値下のシナプス応答しかしなくなる。一連のテイル・フリップ動作は LGが発火(=スパイクを出すこと)することから始まるので、4回目からの刺激からは逃避行動は起こらない。つまり馴化が成立したということになる。 さまざまな刺激間隔で感覚刺激を与え、その時の LGのスパイク発火率をプロットしたのが図3のグラフです。グラフから、刺激感覚が短い方が試行回数が少ないうち、スパイク発火率が低下することがわかる。このことから、1)馴化が起こるのに必要な刺激回数はその繰り返し刺激のインターバルに依存する、2)刺激間隔が短ければ短いほど、LGは早く馴化することがわかる。

図2.6.3.1 ザリガニのテイル・フリッ

図2.6.3.2 繰り返し感覚刺激に対する        LG 応答の変化

図2.6.3.3 ザリガニ逃避行動の馴化曲線

「逃避行動の馴化:その神経行

動学的アプローチ」 生物科学

専攻(生物学) 行動知能学講

座(長山 俊樹)http://www.sci.

hokudai.ac.jp/science/science/

H17_05/seibutsu/topics.html

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第2章 研究背景

21Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.馴化成立の神経機構

 接触情報を伝える感覚ニューロンのうちの一部が直接 LG に化学的シナプスを形成していることが最近明らかになった。(Araki and Nagayama, 2003 J. Comp. Physiol. A 189: 731-739) この感覚ニューロンから供給される化学的シナプスを介した入力が LG発火の必要条件で、逃避行動が解発される。繰り返し刺激が起こると、感覚ニューロンからの伝達物質放出量が減少し、シナプス効率の低下が起こります。その結果、LGのスパイク発火が起こらなくなり、LGの活動性が抑圧されるようになる。つまり、化学シナプスこそが馴化を引き起こす上で重要な役割を果たしている。

図2.6.3.4 LGへの感覚入力伝達経路

「逃避行動の馴化:その神経行

動学的アプローチ」 生物科学

専攻(生物学) 行動知能学講

座(長山 俊樹)http://www.sci.

hokudai.ac.jp/science/science/

H17_05/seibutsu/topics.html

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第2章 研究背景

22Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.6.4 精神性発汗

 精神的に興奮すると掌や足底に汗がにじみ出る。試験答案を書いているさなかに、手指の汗でペンが滑り非常に焦ったという報告も聞く。他方、夏場に止めどなく出る不快な発汗もある。このように発汗には精神性発汗と温熱性発汗の2種類が知られている。精神性の発汗部位は掌と足底であり、温熱性の発汗部位は掌・足底の部位を除いた全身の皮膚がそれに相当する。精神性発汗は生体が緊急時に際して対処する行動ー戦うか、逃げるかーと密接に関連した発汗といわれている。闘争時の掌発汗は、武具を手から離れないようにしっかり握るという目的にかなうものであり、闘争時の足底発汗には地面を蹴る際の摩擦を大きくするという目的にかなうものである。また掌が適度の汗で湿れば、手先の操作は容易になり、触覚の弁別力も優れたものになる。これら精神性発汗はいずれも太鼓の祖先の名残りー環境に対する進化の行動的適応ーだとされている (Edelberg、1972)。一方、全身の温熱性発汗は体温の過上昇を防ぎ、体温の恒常性を維持する生理的な反応であり、この温熱性の発汗無しに、生命活動を維持することは不可能である。

宮田洋:新生理学 1 生理心理学

の基礎

北大路書房、1998.5

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第2章 研究背景

23Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.6.5 皮膚電位計

1.EDA とはなにか

 精神性の発汗を電気的に捉えたものが皮膚電気活動 (Electrodermal activity:EDA) である。皮膚電気活動の測定法には、掌や手指に装着した一対の電極間に微弱な電流を流し、皮膚の見かけ上の抵抗変化を調べる通電法 (Exosomatic method) と、微弱な電流を流すことなく、一対の電極間の電位差を直接測定する電位法 (Endosomatic method) とがある。いずれも交感神経支配下の汗腺活動を電気的に測定して、被験者の情動状態、認知活動、情報処理過程を評価する方法である。<名称 > 通電法及び電位法のいずれを使用しても、記録上は一過性の反応 (Response) と緩徐な変動 (Level) が観察される。通電法で測定される一過性の反応には、皮膚抵抗反応 (Skin resistance response:SRR) と皮膚コンダクタンス反応 (Skin conductance response:SCR) がある。また通電法で測定される緩徐な変動には、皮膚抵抗水準 (Skin resistance level:SRL)と皮膚コンダクタンス水準 (Skin conductance level:SCR) がある。抵抗反応 ( 水準 ) とコンダクタンス反応 ( 水準 ) の相違点は測定単位系のみにあり、いずれも通電法であるという点では同じである。通電法で測定される SRR、SRL を合わせて皮膚抵抗変化 (Skin resistance change:SRC) とよび、SCR、SCL を合わせて皮膚コンダクタンス変化 (Skin conductance change:SCC) とよぶ。電位法で測定される一過性の反応には、皮膚電位反応 (Skin potential response:SPR) であり、同じく電位法で測定される緩徐な変動は、皮膚電位水準 (Skin potential level:SPL) である。SPR と SPL を合わせて皮膚電位活動 (Skin potential activity:SPA) とよぶ。さらに SRC、SCC と SPA を合わせて皮

宮田洋:新生理学 1 生理心理学

の基礎

北大路書房、1998.5

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第2章 研究背景

24Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.EDA の測定法①準備 EDAを測定するには電極、電極糊、増幅装置、記録器が最低限必要である。加えて、音・光の刺激提示装置や磁気記録装置などあれば申し分のない測定が出来る。被験者は外部の物音、実験者や検査者動きに敏感であり、その影響は EDA に直接反映する。したがって測定時には被験者を防音室に隔離すると良い。脳波の測定室を利用するのも一つの方法である。被験者を隔離する防音シールド室内の温度は、気温による温熱性発汗を抑制するために、22± 1℃の範囲内に保つことが望ましい。上記のような測定室条件を確保できない場合には、出来るだけ静かな部屋を利用すれば良い。<電極の装着 > EDR は精神性発汗部位である掌、手指、足指から測定できる。SPA の測定では、一側掌の小指球部または第2指か第3指の腹側部 ( 中節掌面 ) に探査電極を配し、同側の前腕屈側部に基準電極を配して、それぞれテープで固定する。電極の装着部位は前もって酒精綿で清拭し乾燥させておく。乾燥が不十分なことは、表皮が湿潤していることを意味する。表皮の湿潤は汗孔閉鎖を引き起こし、汗腺機能を妨害するので,EDA測定には具合が悪い。

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の基礎

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図2.6.5.1 SPA 測定の標準電極配置

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第2章 研究背景

25Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

②分析法 一般に EDR の測度には反応振幅、反応の時間変数、出現頻度がある。測度は研究目的によって選択する。(1)SPR の振幅 SPR には極性を異にする単相性の反応や多相性の反応が出現するので、反応の計測は若干煩わしい。一般的に刺激に対して出現した陰性波と陽性波の振幅は、反応の立ち上がり、立ち下がり時点を基線として、各反応の頂点時までを、また陰陽二相性波は刺激時点を基線として、陰性波の頂点時までと陽性波の頂点時までをそれぞれ求める。単位はミリボルト (millivolt:mV) である。反応の極性を無視した変化幅を反応量として (magnitude) として計測する方法もある.この場合は陰性波成分と陽性波成分の振幅の絶対和が反応量となる。EDRは刺激呈示後 3秒以内に出現した反応を計測の対象とする。(2)SPR の時間変数 陰性単相波と陽性単相波の場合には、刺激呈示から SPR が出現するまでの時間を反応潜時 (latent time)、反応出現時点から反応の頂点時までの時間を頂点時間 (peak time) という。陰陽二相性波の場合は、反応出現時点から陰性波成分の頂点時までの時間を、また反応出現時点から陽性波成分の頂点時までの時間を頂点時間 (peak time) という。③標準値 生化学的な測定や検査による正常値や異常値という概念は、情動指標としての EDR に少なくとも現時点では適用できない。ただし、被験者の状態像を把握する観点からいえば、無刺激時に EDR が散発的に出現しているかぎりでは取り立てて問題視する必要はない。これに対してなんら外的刺激が存在しないにもかかわらず、EDR が持続的に多発している場合には、その背景に不安などの情動因子の存在を十分推測できる。刺激に対する反応に慣れが生じにくい場合も事態は同様である。

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の基礎

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第2章 研究背景

26Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

反応量

頂点時間

頂点時間陰性波

頂点時間陽性波

潜時陰性波

陽性波

陰陽二相性波

頂点時間潜時

潜時

振幅陽性波

振幅

振幅

振幅 陰性波

刺激

刺激

刺激

図2.6.5.2 SSPA の測度

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第2章 研究背景

27Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.6.6 クレッセント製 VRシステム

 本研究は株式会社クレッセントの協力を得て行った。ここでクレッセント製 VRシステムを簡単に紹介をする。各機材の詳しい説明は第 3章研究方法にて行う。 クレッセント社の VR 視覚化ソリューションは、3次元ヘッドマウントディスプレイとモーションキャプチャカメラ「ViconMX」、3D アプリケーション開発ツール「3DVIA VirTools」などを組み合わせたもの。中でも、モーションキャプチャカメラは有効画素数400 万画素、3次元誤差が 0.7mmという高精度なものである。両手や腰に付けられた反射板を複数のモーションキャプチャカメラで読み取り、その位置情報をリアルタイムにパソコンに送信する。パソコンでは、複数のカメラにより取得されたオブジェクト(体験者)の位置や姿勢などの情報をリアルタイムに解析し、3DVIA VirTools で作成した 3次元仮想空間との合成を行う。 こうして瞬時に作成された映像がそのままヘッドマウントディスプレイに表示される。つまり、体験者が動けば、ディスプレイには体験者の位置や向き、姿勢に合わせて 3次元仮想空間が表示されるという仕組みである。「重み」などものの触感は体験できないが、ディスプレイに表示されているドアを開閉する、ものを持ち上げるといった動作を擬似的に体験できる。

株式会社クレッセントホーム

ページ

http://www.crescentvideo.

co.jp/

図2.6.6.1 クレッセント製VRシステム

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第 3章予備実験

予備実験概要 3.1映像コンテンツの作成 3.2

実験器具 3.3実験方法 3.4実験結果 3.5分析・考察 3.6

28

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

Page 29: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第3章 予備実験

29Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

3.1 予備実験概要

 先行研究として、前述の通り、内田らによる高所ストレスについての実験がある。これによれば、空間(高所)ストレスについて VRを使用した被験者の皮膚電位計測により得られることがわかっている。この手法を利用して、予備実験では高所ストレスに対する馴化が起こるかどうかを確認した。

Page 30: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第3章 予備実験

30Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

3.2 映像コンテンツの作成

 上記研究でのコンテンツを参考にし、映像コンテンツの作成を行った。55号館 9階ラウンジの大窓からキャンパスの中庭を見下ろす映像、大窓へ近づいていく映像をそれぞれ撮影した。 動画編集ソフトにて編集を行い、「窓に近づいて行き、見下ろす」という一連の行動の映像を作成した。

→→

図3.2.1 見下ろし映像

Page 31: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第3章 予備実験

31Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

3.3 実験器具

・皮膚電位計スキノス社の SK-SPA を使用した。

・ディスポーザル電極西澤電機計器製作所製レクトロードNPを使用した。

・ADコンバータータートル社の TUSB-1612ADSM-S を使用した。

・計測解析ソフト松山アドバンス社製の LabDAQ-PRO TL を使用した。

・パソコンDELL 製のノートパソコンを使用した。

Page 32: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第3章 予備実験

32Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

・ヘッドマウントディスプレイ(HMD)I-CINE 製 GVD510-3D を使用した。

Page 33: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第3章 予備実験

33Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

3.4 実験方法

<実験日時>9月 29日(火)<実験時間>10分/人<実験場所>早稲田大学理工学部 55号館 N棟 8階 渡辺仁史研究室<被験者>20代男性 5 人(建築学科学生)<実験目的>HMDを用い , 高所から見下ろす映像を見たときの反応を皮膚電位計により計測し、馴化反応を確認する。<実験内容>1.HMD・皮膚電位計・耳栓 ( 音刺激に対する反応が出るのを防ぐ ) を装着する。歩行による反応が出るのを防ぐために、電極を付けた手を固定する。2.映像を見る。映像は、窓までの歩行と窓からの見下しで構成される。窓までの歩行の間、被験者は足踏みをし、見下ろしの時には映像と同期するように首を傾ける。これを 1トライとする。( 約 14 秒 ) 3.16 秒の間隔をあけ、1人につき 5トライ行う。各トライの反応を見て、馴化反応を確認する。

図3.4.2 予備実験風景

5 14 16 16161614 14 14 14

start

time(s)

end

total 129s

movie

stress

movie

stress

movie

stress

movie

stress

movie

stresscalm calm calm calm

図3.4.1 予備実験の流れ

Page 34: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第3章 予備実験

34Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

3.5 実験結果

 皮膚電位計より得られた波形を、各被験者ごとに試行回数順に並べて掲載する。以下のは比較的馴化の傾向が見られた被験者の反応の波形である。縦軸が電位 (mV)、横軸が時間 (s) であり、破線は見下ろし行動の開始時間を示している。見下ろし開始から1~3秒後に反応が見られるのが理想の波形である。

被験者 A

被験者 B

被験者 C

1st 5th4th3rd2nd

1st 5th4th3rd2nd

1st 5th4th3rd2nd

電圧(mV)

時間 (s)

電圧(mV)

時間 (s)

電圧(mV)

時間 (s)

図3.5.1 各被験者の波形

Page 35: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第3章 予備実験

35Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

3.6 分析・考察

波形の落ち着き具合から、馴化の傾向が確認できた。しかしながら、反応が不安定で、徐々に反応が低下する理想的な馴化反応ではなかった。実験後の被験者の意見から、映像コンテンツが簡素で没入感が得られなかったことが原因と考えられ、映像コンテンツの強化の必要性が明らかとなった。

Page 36: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第4章本実験

実験概要 4.1バーチャルリアリティ 4.2

(VR)コンテンツの作成    実験器具 4.3 実験方法 4.4

36

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

Page 37: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第4章 本実験

37Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

4.1 実験概要

クレッセント製 VR システムを用い、より没入感のある VR 上で、 窓からの見下げ行動における高所ストレスへの馴化反応を皮膚電 位計により計測する。

Page 38: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第4章 本実験

38Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

4.2 バーチャルリアリティ(VR)コンテンツの作成

3DVIA Virtools にインポートできる形式でコンテンツの作成を行った。窓外の景観はクレッセント社が用意したコンテンツを使用した。手順を示す。<詳細>① ArchiCAD にて作成した部屋空間データをDWGファイル形式で書き出す。②書き出したDWGファイルを 3dsMAX 2010 に読み込む。③読み込んだデータにはテクスチャがないので、各オブジェクトにマテリアルをマッピングする。④適宜レンダリングを行いながら、ライティングを調整する。⑤ライティングの調整後、テクスチャレンダリングを行いマテリアルと影をオブジェクトにベイクする。⑥ 3DVIA Virtools にインポート可能な COLLADA 形式にて書き出す。

→ →

ArchiCAD 3dsMAX 2010 3DVIA Virtools

図4.2.1 VRコンテンツ作成方法の概要

Page 39: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第4章 本実験

39Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

4.3 実験器具

・皮膚電位計スキノス社の SK-SPA を使用した。

・ディスポーザル電極西澤電機計器製作所製レクトロードNPを使用した。

・ADコンバータータートル社の TUSB-1612ADSM-S を使用した。

・計測解析ソフト松山アドバンス社製の LabDAQ-PRO TL を使用した。

・パソコンSONY製 VAIO P を使用した。

<クレッセント社製VRシステム>・HEWDD-768(High End Wearable Display Device) HEWDD-768 は、初の国産産業用途ウェアラブルディスプレィである。 究極の光学設計とエレクトロニクスの融合により、高画質、高視野角、高解像度を実現した。圧迫感の無い 2軸のフィッティング機能により、高臨場感と高没入感を眼精疲労を感じることなく長時間体感することが可能である。ー特徴ー高解像度:1280x768(XGA+) × 2入出力 (L/R)高視野角:140FOV(V=90° H=140°)高画質 :590 万画素 (RGB × L/R)

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第4章 本実験

40Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

・Vicon MXカメラシステム Vicon MX カメラシステムは、Vicon カメラとHUBデバイスであるMX Giganet からなるフルデジタルモーションキャプチャシステムである。解析能力は、三次元動作解析装置を超え、三次元動作計測装置の精度を誇る。高分解能カメラによる微細な挙動の数値化と、光学マーカーの超小型化、及び、広範囲なキャプチャーボリュームを確保できる。

・マーカー付きバンド、袋

・マーカー付き缶箱

・手すり

Page 41: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第4章 本実験

41Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

4.4 実験方法

<実験日時>10月 22日(木)~ 10月 23日(金)<実験時間>30分×二日/人<実験場所>株式会社クレッセント内スタジオ<被験者>20代男女 9名(男 8名、女 1名)<実験手順>1、VR上の部屋空間の椅子に着座した状態から開始する。2、VR空間に慣れるための規定行動を行う。3、見下ろし行動を計5回行う。以下、実験計画の詳細を掲載する。

図4.4.1 スタジオ風景

motion capture

VRstress

motion feedbackSPA measurment

『Virtools』CGを描写

HEWDDに投影

トラッキングしたマーカーの位置を統合

VICONマーカーをトラッキング

皮膚電位計測

図4.4.2 実験システム

Page 42: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第4章 本実験

42Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

ソファ

机 (B)

箱 (b)

椅子 (A)

×ポイント (C)

窓際 (D)×

×ソファ

手すり (E)

植栽群

歩行可能ゾーン

9,000

3,000

図4.4.3 VR上室内レイアウト

1. 実験の全体が映るような固定ビデオカメラを設置する。2. 椅子 (A) をセッティングし、被験者を誘導する。3. 被験者に実験内容の説明をする。4. 角質除去クリームを塗り、ティッシュで軽くこすり、拭き取る。5. アルコールをティッシュで軽く浸し、同じ位置に同様にして塗り、拭き取る。6. 拭き取った位置に、電極用ディスポシールを貼る。7. 皮膚電位計、心拍計を装着する。8. クレセント製 VR装置を装着し、起動する。9. 皮膚電位計を起動する。10. パソコンを起動する。11.AD データ解析ソフト「LaBDAQ」を立ち上げ設定する。12. 同期用ライトを付けると同時に、皮膚電位計測を開始する。13. 首を上下左右に自由に動かす。(身体感覚を確認する)14. 手を上下左右に自由に動かす。15. 椅子から立ち上がる。16. 居室の VR空間を椅子 (A) から机 (B)(3mの区間)へ歩く。17.1 分間の間、机 (B) 上のオブジェクト (b) を操作する。18.90°左回転し、ポイント (C) に移動する。19. ポイント (C) へ移動後、90°左回転し窓を正面にして静止する20. ポイント (C) から窓際 (D) へ移動する。(このとき見下げをしないように注意する。停   止地点がスタジオ床上のラインになるように指示する。)21. 窓際 (D) へ移動後、正面を見たまま 5秒間静止する(波形を落ち着かせる)22. 窓際 (D) にて 3秒かけて足下まで見下ろす。23. 見下ろし終了後、5秒で VRを終了する。24. ゆっくりと見上げて正面を見なおす。25.180°右回転し、ポイント (C) へ移動後、左回転し窓を正面にして静止する。26. その後、21~26 を 3セット、21~25 を 1セット行う。(見下ろしは計5回)27.90°左回転し、窓際 (D) から椅子 (A) へ移動する。28. 同期用ライトを消すと同時に、皮膚電位計測を停止する。29. 椅子に座り、皮膚電位計を取り外す。30. クレセント製 VR装置を取り外す。

<手すり有りの場合>21. 窓際 (D) へ移動後、手すり (E) をつかみ正面を見たまま 5秒間静止する。

Page 43: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第4章 本実験

43Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

→→

→→

→ →

図4.4.4 VR画像

Page 44: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章実験結果

データの処理方法 5. 1各値の求め方 5. 2

実験結果 5. 3

44

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

Page 45: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

45Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

4.1 データ処理

 LabDAQ にて処理されたデータを .csv 形式のテキストデータとして書き出す。その後、Excel にて電位 (mv)‒ 時間 (s) グラフを作成する。 電位 (mv) は、各被験者の見下ろしの際の反応の最大を許容するものをグラフの電位差とし、その電位差の範囲で作成する。時間 (s) は、見下ろし開始の時間を撮影映像から読み取り、見下ろし開始の5秒前から10秒後の範囲(計15秒間)で作成する。 各被験者ごとに同作業を行い、データを整理を行った。

Page 46: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

46Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

0

0.51

1.52

2.53

05

101520253035404550556065707580859095

100105110115120125130135140145150155160165170175180185190195200205210215220225230235240245250255260265270275280285290295300305310315320325330335340345350355360365370375380385390395400405410415420425430435440445450455

0.5

0.6

0.7

0.8

0.91

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

1.92

2.1

244

249

254

259

0.91

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

1.92

2.1

2.2

2.3

2.4

2.5

165

170

175

180

1st

2nd

3rd

4th

5th

図5.1.1 データ処理方法

Page 47: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

47Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

4.2 各値の求め方

 見下ろし開始から 1~ 3秒後までにみられる典型的な波形の極小のものの値をその反応の極小値、極大のものの値を極大値とする。 また、極大値と極小値の差を反応量とする。(極大値-極小値=反応量) 1回目の試行の反応量に対するその後の試行の反応量の割合を反応比とする。(X回目の反応量/1回目の反応量=反応比)しかし、1回目の試行で反応がみられなかった場合は2回目の試行の反応を分母にする。<反応比 ‒試行回数>グラフを作成する。 その際、反応比が1を超えるものについては、はずれ値として扱う。これは高所ストレス以外の要因(体調、酔い、環境音による影響など)が関与していると考えられるためである。 また、指数近似での分析を考慮して、反応が見られなかったものは、皮膚電位計が計測できる最小の 0.01mVを反応量とし、!軸は(試行回数-1)とする。 

極大値 (mV)

極小値 (mV)

反応量 (mV)

極大

極小

図4.2.1 各値の取り方

Page 48: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

48Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

4.3実験結果

 各被験者ごとに全5回の見下ろし行動の各波形を手すり無し・手すり有りの場合に分けて掲載する。また、各被験者の見下ろし動作の写真、備考として被験者の様子や波形の傾向も記載する。

各日の実験終了後に取ったアンケートの結果も掲載する。

Page 49: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

49Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

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第5章 実験結果

50Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 51: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

51Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 52: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

52Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 53: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

53Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 54: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

54Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 55: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

55Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 56: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

56Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 57: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

57Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

Page 58: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

58Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

非常に良く感じた

どちらかといえば感じた

どちらともいえない

どちらかといえば感じなかった

まったく感じなかった

手すり無し 手すり有り

非常に良く感じた

どちらかといえば感じた

どちらともいえない

どちらかといえば感じなかった

まったく感じなかった

手すり無し 手すり有り

非常に良く感じた

どちらかといえば感じた

どちらともいえない

どちらかといえば感じなかった

まったく感じなかった

手すり無し 手すり有り

( )であなたは高所空間にいるように感じましたか?

実験中、 があなたの「現実」となってしまい、 の外の現実世界を

(頭部の装置)の重さに違和感を感じましたか?

忘れてしまうことはありましたか?

人数(人)

人数(人)

人数(人)

Page 59: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

59Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

非常に良く感じた

どちらかといえば感じた

どちらともいえない

どちらかといえば感じなかった

まったく感じなかった

手すり無し 手すり有り

非常に良く感じた

どちらかといえば感じた

どちらともいえない

どちらかといえば感じなかった

まったく感じなかった

手すり無し 手すり有り

非常に良く感じた

どちらかといえば感じた

どちらともいえない

どちらかといえば感じなかった

まったく感じなかった

手すり無し 手すり有り

歩行時に歩きにくいなどの違和感を感じましたか?

で缶の箱を触った時、違和感を感じましたか?

一回目、窓から見下ろした時、恐怖を感じましたか?

人数(人)

人数(人)

人数(人)

Page 60: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第5章 実験結果

60Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目慣れたと感じなかった

手すり無し 手すり有り

非常に良く感じた

どちらかといえば感じた

どちらともいえない

どちらかといえば感じなかった

まったく感じなかった

手すり有り

で手すりを掴んだ時、安心感を感じましたか?

何回目の見下ろしで、高所恐怖に慣れたと感じましたか?

人数(人)

人数(人)

Page 61: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章分析・考察

生理反応による考察 6. 1近似曲線による分析 6. 1. 1

個人の反応 6. 1. 2全体の反応 6. 1. 3

    反応比の平均 1. 手すりの有無による反応量の違い 2.  VRへの慣れよる反応量の違い 3. 

 アンケートによる考察 6. 2

61

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

Page 62: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

62Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

6.1 生理反応の分析

6.1.1 近似曲線による分析

 <反応比ー試行回数>グラフにおいて、各値から近似曲線を求めた。生物学的な馴化曲線を参考にし、1.xが増加するにしたがい、0に近似する。2.x=0 の時、反応比 y= 1となる。以上二点より切片 =1 の指数関数が適切だと考えた。ゆえに、Excel の指数関数を用いた指数近似を行う。 その際、はずれ値を除外して馴化曲線を求めた。求められる指数関数の式は、

!"#$%&$'()('%*

であらわされる。

!

"

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'

( )&*'+

図 5.1.1 生物学的馴化曲線と指数近似曲線

「EXCEL で学ぶ多変量解析入門」

(オーム社、菅 民郎 著)

Page 63: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

63Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

6.1.2 個人の反応

 指数近似による分析の結果、ほとんどの曲線が右肩下がりの曲線となった。つまり、はずれ値を除けば明らかな馴化の傾向がみられたということになる。 また、「手すり無し」と「手すり有り」の場合の違いが見られたが、どちらの場合が馴化が速く起こるかは被験者によって異なる。これは皮膚電位反応には個人差があることと、高所ストレス以外の要因(体調、酔い、環境音による影響など)が関与しているものと考えられる。そこで、各被験者ごとに考察を行う。

・「手すり無し」「手すり有り」ともに良好な馴化反応が見られた。・「手すり無し」では2回目の試行以降ほぼ反応が出なくなり、完全に馴化が進んだと言 える。・「手すり有り」では3回目の反応が大きく出てしまったが、それ以外は非常に良好な馴 化反応が見られる。・指数関数の %の係数を比較すると、「手すり無し」<「手すり有り」となり、「手すり無し」 の方が馴化速度が速い。

反応比

y = e-1.11x

R! = -0.21

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

(試行回数-1)

反応比

はずれ値

反応比

反応比

y = e-0.38x

R! = 0.559

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

(試行回数-1)

反応比

はずれ値

反応比

手すり無し 手すり有り

・被験者 A

Page 64: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

64Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

・「手すり無し」「手すり有り」ともあまり良好な馴化反応が見られなかった。・「手すり無し」では5回目の試行で大きな反応が出たが、これは高所ストレスによるも のではなく、周囲の環境音や、その他の精神的不安が現れたものだと考えられる。・「手すり有り」では2、3、4回目と反応が増加してしまった。

・「手すり有り」では良好な馴化反応が見られた。・「手すり無し」では3回目の試行ではずれ値が生じた。・「手すり有り」では毎回の試行で反応値が徐々に下がって行くような、典型的な馴化反応が見られた。・指数関数の xの係数を比較すると、「手すり有り」<「手すり無し」となり、「手すり有り」 の方が馴化速度が速い。

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.23x

R! = -0.25

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.25x

R! = 0.767

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者 C

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.14x

R! = -0.040.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 1 2 3

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.26x

R! = 0.118

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者 B

Page 65: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

65Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

・「手すり無し」「手すり有り」ともに5回目の試行を除き、良好な馴化反応が見られた。・「手すり有り」では5回目の反応が特に大きく出てしまったが、それ以外は非常に良好な馴 化反応が見られる。・指数関数の xの係数を比較すると、「手すり無し」<「手すり有り」となり、「手すり無し」 の方が馴化速度が速い。

・「手すり無し」「手すり有り」ともに反応が安定せず馴化反応が見られなかった。・「手すり無し」「手すり有り」ともに1回目の反応が出なかった、稀なケースである。

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

y = 3.429e-1.23x

R! = 0.239

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1 2 3 4 5

反応比

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.87x

R! = -0.39

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者 E

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.65x

R! = -0.05

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.70x

R! = 0.565

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者D

Page 66: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

66Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

・「手すり無し」「手すり有り」ともに1回目の試行以降馴ほとんど反応が見られなかった。・「手すり無し」「手すり有り」では3回目の反応が大きく出てしまったが、それ以外は非 常に良好な馴化反応が見られる。

・「手すり無し」「手すり有り」ともに良好な馴化反応が見られた。・「手すり無し」では非常に良い馴化反応が見られた。・「手すり有り」では5回目の反応が大きく出てしまったが、それ以外は非常に良好な馴 化反応である。・指数関数の xの係数を比較すると、「手すり無し」<「手すり有り」となり、「手すり無し」 の方が馴化速度が速い。

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

反応比

y = e-1.69x

R! = 0.688

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-1.47x

R! = 0.787

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者 G

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

反応比

y = e

-

1.45x

R! = 0.405

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-1.31x

R! = 0.282

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者 F

Page 67: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

67Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

・「手すり無し」「手すり有り」ともに2回目の試行以降ほぼ反応が出なくなり、急速に  馴化が進んだと言える。・被験者は非常に安定した精神状態であったと思われる。

・「手すり無し」「手すり有り」ともにはずれ値が2つ出た、馴化反応が見られなかった。・この被験者は非常に VRの高所空間に恐怖を感じていたので、反応が安定しなかったと 考えられる。

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.13x

R! = -0.38

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-0.45x

R! = -0.00

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者 I

手すり無し 手すり有り

(試行回数-1)

反応比

y = e-1.58x

R! = 0.1970.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

(試行回数-1)

反応比

y = e-1.57x

R! = 0.166

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0 1 2 3 4

反応比

はずれ値

・被験者H

Page 68: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

68Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

6.1.3 全体の反応

1.反応比の平均 全被験者の反応比を「手すり無し」と「手すり有り」に分け、それらを平均し、<反応比 ‒試行回数>グラフを作成した。さらに指数近似により各グラフの近似曲線を求めた。 その結果、「手すり有り」よりも「手すり無し」の方が速く馴化が起こっていることが分かった。これは「手すり無しの」高所ストレスの方がストレスとして強く、「強い刺激に対しての方が、より速く馴化が起こる」という生物学的馴化の定説に当てはまっている。つまり、空間馴化と生物学的馴化の共通点を示唆している。

(

(

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0

0.0

1 2 3 4

)

)

反応比

( 試行回数 -1)

y = e-0.56x

y = e-0.43x

y = e-0.43x

1.2

(

(0.4

0.6

0.8

1.0

)

)

反応比

!"""# !"""# $%&'()

図 5.1.2 平均反応比 - 試行回数

Page 69: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

69Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

2.手すりの有無による反応量の違い  下図のグラフは各被験者の1回目の見下ろしの際の反応量を、縦軸を「手すり無しの場合」の反応量 !、横軸を「手すり有りの場合」の反応量 %とし、プロットした散布図である。(1回目の見下ろしで反応が出なかった場合、2回目の見下ろしの反応量を用いた。) その結果、下図のように !"%の直線より上に偏った図になった。これは、「手すり有りの場合」の反応量より、「手すり無しの場合」の反応量の方が大きい傾向にあることを示す。 つまり、手すりが有ることによって、高所ストレスが軽減することが明らかになった。手すりの有無と高所ストレスには大きな関係があり、高所空間のデザインの指標とすることができると考えられる。

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

!"#

手すり有り

手すり無し

(mV)

(mV)

Page 70: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

70Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

3.VRへの慣れによる反応量の違い  下図のグラフは各被験者の1回目の見下ろしの際の反応量を、縦軸を 23日(実験二日目)の反応量 !、横軸を 22日(実験一日目)の反応量 %とし、プロットした散布図である。(1回目の見下ろしで反応が出なかった場合、2回目の見下ろしの反応量を用いた。) その結果、下図のように !"%の直線からは分散するものが多くみられた。前ページの散布図と照らし合わせると、ほぼ同様散布である。 つまり、本実験が連日の実験となったことで VR空間自体に慣れてしまうことを懸念していたが、実験結果には影響しなかったと考えられる。

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

!"#

(mV)

(mV)

22 日

23日

Page 71: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第6章 分析・考察

71Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

6.2 アンケートの分析

 VR に対する没入感を問う質問では、「非常に感じた」「どちらかといえば感じた」と答えた被験者が多く、十分な没入感が得られていたということが分かった。しかし、HEWDD-768(頭部の装置)や歩きにくさという点で違和感を感じていて、装置上の問題も考えられる。 また、一回目に窓から見下ろす際の高所恐怖を問う質問では、答えが分散した。これは実験中、VRの像にズレが生じていたことや、今回の VRコンテンツでは高所を感じるまでには至らなかったことなどが理由として考えられる。 高所恐怖に慣れたと感じた試行回数を問う質問では、2~4回目に偏りがあった。これは主観的にも高所恐怖に馴化したと感じたことになる。慣れたと感じなかったという答えもあり、そう答えた被験者にとっては VR上の高所空間は非常にストレスを与える空間であったと言える。

Page 72: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第 7章展望

展望 7. 1

72

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

Page 73: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

第7章 展望

73Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA

7.1 展望

 本研究では高所ストレスに対する馴化反応を生理計測よって明らかにした。その結果、空間に対して馴化が起こること、馴化反応の様子や馴化速度が個人によって異なることが定量的に計測できた。さらには生物学的馴化との共通点も示唆することができた。 今後、空間と馴化の関係をより明確にしていくことで、馴化の特性を活かし、利用者の情動を考慮した空間計画が可能となるだろう。

Page 74: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 74

参考文献

『地下街における空間認知に関する研究 - 現場実験による被験者の迷い意識の検討』(2002年、日本建築学会東海支部研究報告集、亀井翠里)

『デザイナーズマンション居住者に対する住意識調査 - 「ブルータス不動産」掲載の東京近郊の賃貸物件を対象として』(2004 年、日本建築学会研究報告集、小泉隆・寺田憲弘ら)

宮田洋:新生理学 1 生理心理学の基礎(北大路書房、1998.5)

Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/

畑山俊輝:感情心理学パースペクティブ - 感情豊かな世界 -( 北大路書房、2005.2)

「高所ストレスを緩和する建築に関する研究ー視界の遮蔽によるストレス反応の計測に関する分析ー」(清水勝太、早稲田大学理工学部建築学科渡辺仁史研究室 2005 年度卒業論文)

「CGを用いた高所映像による高層建築での視界遮蔽デザインの検討ー高所ストレスを緩和する建築に関する研究ー」(内田貴之、2005 年度日本建築学会 関東支部研究報告集)

『Specific Phobia の改善に向けた簡易型 VRエクスポージャーの開発』(2004 年、早稲田大学大学院人間科学研究科、宮野秀市)

宮田洋:新生理心理学 1  生理心理学の基礎(北大路書房、1998.5)

宮田洋:新生理心理学2 生理心理学の応用分野 (北大路書房、1977.9)

「逃避行動の馴化:その神経行動学的アプローチ」 生物科学専攻(生物学) 行動知能学講座(長山 俊樹)http://www.sci.hokudai.ac.jp/science/science/H17_05/seibutsu/topics.html

株式会社クレッセントホームページhttp://www.crescentvideo.co.jp/

「EXCEL で学ぶ多変量解析入門」(オーム社、菅 民郎 著)

Page 75: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 75

謝辞

この卒業論文を書き終えた今、たくさんの人に支えられた自分は幸せだったと思います。 渡辺先生、こんな私を研究室に迎え入れてくれて感謝しております。この研究室に入り、素晴らしい人達と出会えました。 林田さん、遠田さん、未熟で進度の遅い私たちを引っ張って来ていただき本当にありがとうございました。これからもご指導よろしくお願い致します。 長澤さん、半年前、私を健康ゼミの一員として加えていただけたことを心より感謝しています。時に厳しく、時に優しく、ご指導していただき本当にありがとうごさいました。長澤さん率いる健康ゼミは、充実していて、とても楽しく、これからの研究室生活も日々勉強させていただきたいと思います。これからもご指導よろしくお願い致します。ならびに、小松さん、CG作成時にはお忙しい中、会議に参加していただき、さらには研究室までご足労いただき誠にありがとうございました。おかげで無事、実験を終えることができました。心より感謝致します。

 ここで、私のこれまでの人生を支えてくれた両親、兄、祖父母に感謝します。おかげで、この生活を健康に過ごすことができました。これからもよろしくお願いします。

 健康ゼミの皆さん、この半年間、僕を支えていただきありがとうございました。夏子さん、研究内容から実験まで、相談に乗っていただいたり、同行していただいたりと、本当にお世話になりました!これからもお世話にならせて下さい!浅野さん、実験日には手伝っていたおかげでスムーズに実験をこなすことができました!和やかなオーラすばらしいです!木原さん、今度「魔法の使い方」教えてください。ついでに麻雀も教えてください!オバケトリオ長男こと松島さん、実験手伝ってもらったり、相談に乗っていただきありがとうございました!とにかく優しくてビックリしました!今後のブラック松島を期待してます。坂田さん、その天才的な「ひらめき」羨ましいです!僕に下さい!田名網さん、いつも面白くて、おかげで卒論生活を乗り切れました!オバケトリオ次男こと馬淵さん、僕を支えていただきありがとうございました!二人の共同実験ということもあり、精神的に助かりました!これで僕もパライソの中…立派な教徒になれました!小西、お疲れ!小西は本当に頑張ってたよ!輝いてた!…これからも励まし合おう。よりより、お疲れ!研究室生活楽しかったね!早くタコパしよう!おっちー、お疲れ!常におっちーが話題に上がって、楽しく徹夜を越せました。ありがとう!

行動ゼミ、ならびに情報ゼミ修士の方々、心より感謝してます!皆さんが研究室に来てくれるだけで、殺伐としたM0だけの研究室の空気が、一瞬で和みました。皆さんのようなマスターになることを目標として頑張ります。これからもよろしくお願いします!

さぁ、M0の皆。お疲れさま!皆と一緒に卒論に取り組めて、いい思い出がたくさんできました。散らかし放題な木戸、十分な睡眠をとるゆかりちゃん、大人な江藤さん、ジャンボなジャンボ、孤高の喫煙者かわD、お調子者な小西、べしゃりなよりより、せわしいオッチー、アプリ開発者はっしー、謎なながたつ、鬱オシャレなたいすけ、笑いの神<すぎたつ>。皆イイ感じでした                                  以上

Page 76: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

76

第2部資料編

Analysis at time of mental stress that used EDAPhysiology psychology research on architectural design

Page 77: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

資料編

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 77

『慣れ』に関して『音楽刺激による生体反応に関する生理・心理学的研究』

 音楽刺激に対して、単に聴覚の伝導路で反応が生じるだけでなく、二次的、間接的な反応として、循環器系、内分泌系、呼吸器系、消化器系などで生体にさまざまな生理的変化が見られる。1.心拍   興奮を誘う刺激的な音楽ー心拍増加   静かで鎮静的な音楽ー心拍減少   音楽によって与えられる興奮や満足感が呼吸に変化を与える。2.血圧   高血圧群ー末梢循環抵抗が低下   低血圧群ー血液の一回排出量と心係数が上昇   血行状態の変動が生体が本来有していた恒常性(ホメオスタ   シス)が音楽により賦活される。3.皮膚電気反射GRS   情動、不安、覚醒の指標   テンポの速い曲ーGRS変化急激   遅い曲、鎮静的な曲ーGRS変化ゆっくり4.脳波 EEG   意識状態の水準をよく反映するとされる。   深い睡眠や朦朧状態ー緩やかな波になり除波化   注目や知的作業ーα波消失、β波(速い波)が増加   カタルシスが生じると、α波の巨大ピーク   精神が安定している状態のα波は1/f 型ゆらぎを示す。・実験方法   聴覚刺激としてパッフェルベルのカノンより、演奏や収録法   の違う3種類のカノンを用いた。測定値の平均を比較。

    ・結果  有意差ありー脳波θ波、α波、β波、呼吸  有意差なしー皮膚電気反射、心拍、重心動揺 

『定位反応と慣れ』(『新生理心理学』宮田洋)

・定位反応(orienting response:OR)  ①感覚刺激の種類を問わない(非特異性)  ②環境条件の変化によって生起(新奇性)  ③中程度以下の強度の刺激に対して感覚器官の感受性を高める  ④体性神経系反応、自律神経系反応、中枢神経系反応の複合反応   として出現  ⑤刺激の反復呈示などの環境条件が固定化すると減衰または消失   =慣れ(habituation)  ⑥環境条件に変化があれば、回復または新たに生起=脱慣れ

・自律神経系の指標 1.脈波   波高と血流量を測度とする。   ・波高はどの刺激強度でも振幅減少   ・血流量は弱い刺激には基線の上昇、強い刺激には基線の下降   心拍との同時記録を推奨。 2.心拍   音圧と心拍変化の詳細な研究。   ・刺激強度が強いと心拍増加、弱いと心拍減少 3.皮膚電気活動   非特異性反応の代表例   ・皮膚電位反応は波形が複雑に変化するため、慣れ過程の検討    には不向き。   ・皮膚伝導度反応は単相性で、OR生起に関連した要因に鋭敏    に反応し、慣れもすみやかに起こる。 4.その他    瞳孔反応(散大)や呼吸反応(速度・振幅・頻度)

・中枢神経系の指標 1.脳波   覚醒時にみられるα波は音や光などの呈示によって減衰。   しかし、単純な感覚反応と区別できない。 2.事象関連電位   潜時 300ms以降の後期陽性成分と潜時 200~500msの陰性   成分の二つの内因性成分がORの指標となる。

・短期的慣れと長期的慣れ   1秒間隔で 10試行連続呈示することを1ブロックとし、60   秒ずつの休止をおいて 10ブロック繰り返す。ブロック内ごとの  反応量の減少を短期的慣れ、ブロックごとの平均反応量の減少を  長期的慣れという。

・その他のキーワード  慣れの過剰、新奇性、複雑性、あいまい性、情報価、不確実性  認知的構え、注意と信号価、意味性と刺激欠落効果  

 

<馴化の理論>・感覚ニューロンから上位性介在ニューロンへの化学シナプスの神経 伝達物質放出量が減少。・経験を繰り返すうちにパターン化され、海馬に届かなくなる。そし て、ドーパミンを放出する「テグメンタ」を活性化する。・アメフラシの場合 感覚ニューロンから運動ニューロンへの神経情報伝達効率の減少。・パブロフの犬の場合 強い刺激に馴化すると、それ以下の刺激に反応しなくなる。ま

Page 78: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

資料編

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 78

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Page 79: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

資料編

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 79

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Page 80: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

資料編

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 80

ソファ

机 (B)

箱 (b)

椅子 (A)

椅子 (A)

×ポイント (C)

窓際 (D)×

×ソファ

手すり (E)

植栽群

歩行可能ゾーン

レイアウト図

22•23日

23日

③④

③④

×5回

EV

地点ア地点イウォークスルー映像

地点ア 地点イ④①

Page 81: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

資料編

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 81

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Page 82: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

資料編

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Page 83: 高所空間のデザインと馴化速度 没入型Visual Realityを用いたストレス計測 

資料編

Physiology psychology research on architectural designAnalysis at time of mental stress that used EDA 83

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資料編

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