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1 Waters Prep 150 LC システムを用いた イチョウ( Ginkgo Biloba)葉中からのフラボノイド単離 Andrew Aubin, Waters Corporation Waters Corporation, Milford, MA, USA はじめに イチョウ(Ginkgo biloba)葉は、数多くの疾患の治療に医薬用途で何千年も遡って 長く用いられてきました 1 Ginkgo biloba 葉の抽出物には様々な活性成分が含まれ、 特にフラボノイド、主として quercetinkaempferolisorhamnetin を多く含んで います(図 1)。 ウォーターズのソリューション Prep150 LC システム ACQUITY UPLC ® H-Class システム ChromScope ソフトウェア Version 1.4 XBridge ® カラム キーワード 分取 HPLC 、イチョウ(Ginkgo biloba)、 ChromScopePrep 150LCXBridge アプリケーションのメリット 直観的な操作で、使いやすい高性能分取 HPLC システム C hromScope™ ソフトウェアで全てのシステム をトータルコントロール !! 1. quercetin kaempferol isorhamnetin の化学構造 2. Waters Prep 150 LC システム 多くの場合、天然物精製の目的は、生物活性をもつと思われる各成分化合物の 単離です。スタンダードの調製やその他研究(臨床試験、バイオアッセイなど) での使用など、様々な用途にこれら化合物は充分な量が単離されます。化合物の 単離はどれも、できるだけ高純度で、迅速かつ効率的に実施する必要があります。 天然物の抽出、単離、精製のための多くの技術がすでに報告されています 2 分取逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC )はこういった目的で広く使用 される分離技術です。本アプリケーションノートでは、Waters ® Prep 150 LC システム(図 2)を用いた Ginkgo biloba 葉粉末からのフラボノイド単離について 説明します。

Waters Prep 150 LC イチョウ( Ginkgo Biloba · 2014-09-29 · イチョウ(Ginkgo biloba)葉は、数多くの疾患の治療に医薬用途で何千年も遡って 長く用いられてきました1。Ginkgo

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    Waters Prep 150 LCシステムを用いたイチョウ(Ginkgo Biloba)葉中からのフラボノイド単離Andrew Aubin, Waters CorporationWaters Corporation, Milford, MA, USA

    はじめに

    イチョウ(Ginkgo biloba)葉は、数多くの疾患の治療に医薬用途で何千年も遡って

    長く用いられてきました 1。Ginkgo biloba葉の抽出物には様々な活性成分が含まれ、

    特にフラボノイド、主として quercetin、kaempferol、isorhamnetinを多く含んで

    います(図 1)。

    ウォーターズのソリューション

    Prep150 LCシステム

    ACQUITY UPLC® H-Classシステム

    ChromScopeソフトウェア Version 1.4

    XBridge®カラム

    キーワード

    分取 HPLC、イチョウ(Ginkgo biloba)、

    ChromScope、Prep 150LC、XBridge

    アプリケーションのメリット■■ 直観的な操作で、使いやすい高性能分取

    HPLCシステム

    ■■ ChromScope™ソフトウェアで全てのシステム

    をトータルコントロール

    !!

    図 1. quercetin、kaempferol、isorhamnetinの化学構造

    図 2. Waters Prep 150 LCシステム

    多くの場合、天然物精製の目的は、生物活性をもつと思われる各成分化合物の

    単離です。スタンダードの調製やその他研究(臨床試験、バイオアッセイなど)

    での使用など、様々な用途にこれら化合物は充分な量が単離されます。化合物の

    単離はどれも、できるだけ高純度で、迅速かつ効率的に実施する必要があります。

    天然物の抽出、単離、精製のための多くの技術がすでに報告されています 2。

    分取逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)はこういった目的で広く使用

    される分離技術です。本アプリケーションノートでは、Waters® Prep 150 LCシステム(図 2)を用いた Ginkgo biloba葉粉末からのフラボノイド単離について

    説明します。

  • 2ウォーターズ Prep 150 LC システムを用いたイチョウ(Ginkgo Biloba)葉中からのフラボノイド単離

    実験方法

    分離

    分取クロマトグラフィーの分離は下記ウォーター

    ズ構成品からなる Prep 150 LCシステム(図 2)を

    用いて行いました。

    ポンプ: 2545バイナリーグラジエント

    モジュール

    検出器: 2489 UV/Vis 検出器(セミ分取

    TaperSlit™フローセル)

    インジェクター: 分取インジェクター

    (5 mLループ)

    コレクター: フラクションコレクターⅢ

    ソフトウェア: ChromScope Version 1.4

    分析クロマトグラフィーの分離(分析法開発およ

    び最終純度確認のため)は ACQUITY PDA 検出器

    付き ACQUITY UPLC H-Classシステム(Empower®

    3ソフトウェアコントロール)で行いました。2種類の最初の分析スケール分離(純度確認のた

    めのグラジエント法と精製のためのアイソクラ

    ティック法)は下記条件で開発しました。

    分析グラジエント条件(純度確認用)

    システム: ACQUITY UPLC H-Class

    カラム温度: 50 ℃

    流速: 0.50 mL/min

    移動相 A: 0.2%ギ酸水溶液

    移動相 B: アセトニトリル

    グラジエント: 85:15 -30:70 ; 0-13 min、

    30:70 – 5:95 ; 13-15 min

    検出: UV@371 nm

    カラム: ACQUITY UPLC BEH C18カラム

    130Å、1.7 µm、2.1 × 100 mm

    製品番号 186002352

    分析アイソクラティック条件(分取スケールアップ用)

    システム: ACQUITY UPLC H-Class

    カラム温度: 室温

    流速: 1.4 mL/min

    移動相 A: 0.2%ギ酸水溶液

    移動相 B: アセトニトリル

    組成: 73% A、27%B

    検出: UV@371 nm

    カラム: XBridge BEH C18カラム

    130Å、5 µm、4.6 × 100 mm

    製品番号 186003115

    分取分離は分析メソッドから 19 ×100 mm

    XBridge カラムへカラム容積に比例して移管

    分取アイソクラティック条件

    システム: Prep 150 LC

    カラム温度: 室温

    流速: 24.8 mL/min

    移動相 A: 0.2%ギ酸水溶液

    移動相 B: アセトニトリル

    組成: 73% A、27%B

    検出: UV@371 nm

    カラム: XBridge BEH C18 OBD™ 分取カラム

    130Å、5 µm、19 × 100 mm

    製品番号 186002978

  • 3ウォーターズ Prep 150 LC システムを用いたイチョウ(Ginkgo Biloba)葉中からのフラボノイド単離

    抽出

    Ginkgo biloba葉粉末(20 g)はメタノール 100 mLを加えて 60分間超音波処理しました。3N 塩酸を 40 mL添加した後、混合物を沸騰させ 90分間還流させました。この還流操作によりフラボン配糖体を加水分解し、

    各フラボンとしました。室温に冷却後、この抽出物をWhatman #1濾紙でろ過してそのまま分析に供しました。

    結果および考察

    調製した抽出物のグラジエント UPLC® 分析から、quercetin と kaempferol の濃度はそれぞれ 0.088および

    0.104 mg/mLであることが示され(isorhamnetinの定量用スタンダードは入手不可能でした)、UV(371 nm)

    面積百分率による 3化合物のおおよその純度は 11%、14%、5%でした(図 3)。前もって開発された分析

    アイソクラティック HPLC メソッド(図 4)を、C hromScopeソフトウェアに内蔵された分析→分取グラジ

    エントカリキュレーター(弊社 Web上でも利用可能)を用いて計算し、内径 19 mmカラムの分取分離に流速

    をスケールアップしました(図 5)。分析→分取グラジエントカリキュレーターは、流速およびグラジエント

    時間について分析から分取へのスケーリングの計算を行うことができる使いやすいツールです。分析メソッド

    から分取への適切なスケーリングによって、分析スケールでの分析法開発が可能になり、分析法開発時の

    サンプルおよび溶媒消費量を低減できます。スケールアップした分取クロマトグラフィーは分析クロマト

    グラフィーと非常に類似しており、対象とするピークを分画する分取メソッド能力の信頼性を向上できます。

    以前のアプリケーションノート 3にこのスケーリング計算についてより詳細を説明しています。

    0.25 mL注入で、アイソクラティック分取分離メソッドと閾値ベースの分画メソッドにより許容可能な分取

    Que

    rcet

    in -

    4.08

    4

    Kae

    mpf

    erol

    - 5.

    102

    Isor

    ham

    netin

    - 5.

    434

    AU

    0.00

    0.05

    0.10

    0.15

    0.20

    0.25

    0.30

    0.35

    0.40

    0.45

    0.50

    Minutes

    0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 16.00

    図 3. Ginkgo biloba 葉粉末抽出物の UPLC クロマトグラム

  • 4ウォーターズ Prep 150 LC システムを用いたイチョウ(Ginkgo Biloba)葉中からのフラボノイド単離

    Que

    rcet

    in -

    3.4

    69

    Kae

    mpf

    erol

    - 6

    .697

    Isor

    ham

    netin

    - 7.

    221

    AU

    0.00

    0.20

    0.40

    0.60

    0.80

    1.00

    1.20

    1.40

    1.60

    1.80

    Minutes0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00

    図 4. Ginkgo biloba 葉粉末抽出物の分析スケール HPLC クロマトグラム

    図 5. ウォーターズ ChromScope分析→分取グラジエントカリキュレーター

  • 5ウォーターズ Prep 150 LC システムを用いたイチョウ(Ginkgo Biloba)葉中からのフラボノイド単離

    分離を達成しました(図 6)。分画は、ChromScopeソフトウェアの閾値で容易に設定できます(図 7)。この

    例では、2つの分画ウィンドウを規定し(3.0-4.0分および 6.0-7.5分)、ウィンドウ外に溶出するピークは

    どれも分画しません。分画されるには、ウィンドウ内に溶出するピークが閾値(このケースでは最初のウィ

    ンドウでは 25 mAU、2つ目のウィンドウでは 15 mAU)に達する必要があります。分画したフラクションの

    純度分析の結果、3化合物の UV面積 %純度は UPLC 分析の結果(データ記載無し)、それぞれ 87%、96%、

    85%でした。

    図 6. 3つの分画ピークについて示した ChromScope分取 HPLCクロマトグラム

    図 7. ChromScope分画メソッド

  • Waters、ACQUITY UPLC、UPLC、Empower、XBridge および The Science of What’s Possible は Waters Corporation の登録商標です。ChromScope、 TaperSlit および OBD は Waters Corporation の商標です。その他すべての登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

    ©2014 Waters Corporation. Printed in Japan.  2014年9月 720004839JA PDF

    日本ウォーターズ株式会社 www.waters.com東京本社 140-0001 東京都品川区北品川1-3-12 第 5小池ビル TEL 03-3471-7191 FAX 03-3471-7118大阪支社 532-0011 大阪市淀川区西中島5-14-10 サムティ新大阪フロントビル11F TEL 06-6304-8888 FAX 06-6300-1734ショールーム 東京 大阪テクニカルセンター  東京 大阪 名古屋 福岡 札幌

    参考文献

    1. PDR for Herbal Medicines, 4th Ed., 2007, Thompson Healthcare Inc, Montvale NJ, U.S.A.

    2. Natural Products Isolation 2nd edition, edited by S.D. Sarker, Z. Latif, A.I., 2006 Humana Press Inc, Totowa, NJ, U.S.A.

    3. “Analytical HPLC to Preparative HPLC: Scale Up Techniques using a Natural Product Extract.” Andrew Aubin and Ronan Cleary. Waters Application Note 720003120en, 2009

    結論

    ■■ Waters Prep 150 LC分取 HPLCシステムを用いて、Gingko biloba葉

    粉末から抽出した成分を単離・精製。

    ■■ Waters C hromScopeソフトウェア(Version 1.4)によるトータル

    システムソフトウェアコントロールは、全てのメソッドパラ

    メーターを容易に変更できシステムの柔軟性を提供。

    ■■ 分析スケールで開発した分離を分析→分取グラジエントカリ

    キュレーターにより Prep 150 LCシステムを用いた 19 × 100 mm分取カラムにカラム容積に比例してスケールアップ。

    ■■ 容易な分画設定によりターゲット化合物の正確な分画が可能。

    ■■ 初期抽出物は 15%の quercetin と 18%の kaempferol を含有。

    各成分は操作性の高いシステムで純度 87%以上に精製。