4
15-1 Web-GIS を用いた都市持続性評価システムの構築 雨軒 1.はじめに 1-1 研究の背景 20世紀後半にサステナブル・ディべロップメント の概念が提唱されてから、その定義について世界各地 で議論が行われている。都市分野においても都市の持 続性を評価する手法を開発することは主要なテーマの 1つとなっている。しかし、近年急激な都市化が進む につれて数多くの都市問題が発生する中で、都市を取 り巻く情報は多様化・複雑化している。そのため、普 遍的な都市評価手法を開発することは非常に困難なこ ととされている。 現在、国際機関や国、地方自治体など様々レベルで 都市持続性を評価する手法が開発されている。但し、 これまでに開発され、頻繁に使用されている都市持続 性評価システムでは、定性的な評価手法を用いている ものが一般的で、定量的な評価手法を取り入れている ものが少ないという問題がある。 一方で、近年の情報技術の発展を背景に、都市計 画分野においても地理情報システム(Geographic Information System:GIS)が活用されるようになっ た。GIS は地図と関連した多様なデータ処理を可能に し、さらにインターネット上などで G I S を共有し利用 できる Web-GIS が脚光を浴びている。 1-2 研究の目的 本研究は定量的評価による利点及び課題の解決を包 括するシステムの構築を目的とする。そして、構築し たシステムを用いて実都市を評価し、都市持続性の評 価結果を Web-GIS 上で視覚的にわかりやすく表示・公 開する。 1-3 研究の方法 まずデータベースを構築するためにデータの収集を 行う。作業に用いられる大量かつ多様なデータを効率 的に管理、処理することが必要とされ、入手したデー タから都市情報データベースを構築し、一元的に管理 する。次に既往の評価ツール・既往研究・法令などを 引用または参考にすることで評価指標項目を選定す る。各評価項目に A H P 法による重み付けを行い、都市 情報評価システムを構築する。最後に福岡市を対象と して当システムを用いて持続性評価を行い、結果を分 析した後適用した結果を ArcGIS を用いて 250 メッシュ でのアウトプットし、ArcGIS Server を用いて WEB で 公開する。本研究の流れを図 1 に示す。 2.Web-GIS による都市情報データベースの構築 2-1 Web-GIS について Web-GIS とは、地理情報データを総合的に管理・加工・ 分析・表示する GIS を Web 技術の応用することで、イン ターネットもしくはイントラネット上で利用できる技術 である。 本研究では、GIS を用いて都市情報データベースの 構築を行っていく。GIS でデータベースを構築するメ リットとして、以下の 3 点があげられる。 1)様々なデータ形式で時空間にわたる大量のデータ を効率的に一元管理することが可能となる。 2)継続的にデータを収集・処理・蓄積することが可 能となる。 3)様々な空間解析手法が利用できるため、データを より高精度に評価することが可能となる。 2-2 都市情報データベースの構築 本研究において構築する都市情報データベースは データベース(DB)サーバと WEB/GIS サーバで構成さ れる。ユーザー数とシステムの規模を想定した結果各 サーバの負荷分散を行う必要性があったため DB サーバ と WEB/GIS サーバに分けて構成をした。サーバを2つ に分けることから、データを格納するためには ArcSDE が必要となった。都市情報データベースの全体構成 評価を行う データの収集 データベースの作成 評価システムの構築 ウェブで公開 評価指標項目を選定 重み付けを行う 図1 研究の流れ

Web-GISを用いた都市持続性評価システムの構築...15-1 Web-GISを用いた都市持続性評価システムの構築 李 雨軒 1.はじめに 1-1 研究の背景 20世紀後半にサステナブル・ディべロップメント

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15-1

Web-GIS を用いた都市持続性評価システムの構築

李 雨軒

1.はじめに

1-1 研究の背景

 20世紀後半にサステナブル・ディべロップメント

の概念が提唱されてから、その定義について世界各地

で議論が行われている。都市分野においても都市の持

続性を評価する手法を開発することは主要なテーマの

1つとなっている。しかし、近年急激な都市化が進む

につれて数多くの都市問題が発生する中で、都市を取

り巻く情報は多様化・複雑化している。そのため、普

遍的な都市評価手法を開発することは非常に困難なこ

ととされている。

 現在、国際機関や国、地方自治体など様々レベルで

都市持続性を評価する手法が開発されている。但し、

これまでに開発され、頻繁に使用されている都市持続

性評価システムでは、定性的な評価手法を用いている

ものが一般的で、定量的な評価手法を取り入れている

ものが少ないという問題がある。

 一方で、近年の情報技術の発展を背景に、都市計

画分野においても地理情報システム(Geographic 

Information System:GIS)が活用されるようになっ

た。GIS は地図と関連した多様なデータ処理を可能に

し、さらにインターネット上などで GIS を共有し利用

できる Web-GIS が脚光を浴びている。

1-2 研究の目的

 本研究は定量的評価による利点及び課題の解決を包

括するシステムの構築を目的とする。そして、構築し

たシステムを用いて実都市を評価し、都市持続性の評

価結果を Web-GIS 上で視覚的にわかりやすく表示・公

開する。

1-3 研究の方法

 まずデータベースを構築するためにデータの収集を

行う。作業に用いられる大量かつ多様なデータを効率

的に管理、処理することが必要とされ、入手したデー

タから都市情報データベースを構築し、一元的に管理

する。次に既往の評価ツール・既往研究・法令などを

引用または参考にすることで評価指標項目を選定す

る。各評価項目に AHP 法による重み付けを行い、都市

情報評価システムを構築する。最後に福岡市を対象と

して当システムを用いて持続性評価を行い、結果を分

析した後適用した結果を ArcGIS を用いて 250 メッシュ

でのアウトプットし、ArcGIS Server を用いて WEB で

公開する。本研究の流れを図 1に示す。

2.Web-GIS による都市情報データベースの構築

2-1 Web-GIS について

 Web-GIS とは、地理情報データを総合的に管理・加工・

分析・表示する GIS を Web 技術の応用することで、イン

ターネットもしくはイントラネット上で利用できる技術

である。

 本研究では、GIS を用いて都市情報データベースの

構築を行っていく。GIS でデータベースを構築するメ

リットとして、以下の 3点があげられる。

1)様々なデータ形式で時空間にわたる大量のデータ

を効率的に一元管理することが可能となる。

2)継続的にデータを収集・処理・蓄積することが可

能となる。

3)様々な空間解析手法が利用できるため、データを

より高精度に評価することが可能となる。

2-2 都市情報データベースの構築

 本研究において構築する都市情報データベースは

データベース(DB)サーバと WEB/GIS サーバで構成さ

れる。ユーザー数とシステムの規模を想定した結果各

サーバの負荷分散を行う必要性があったためDBサーバ

と WEB/GIS サーバに分けて構成をした。サーバを2つ

に分けることから、データを格納するためには ArcSDE

が必要となった。都市情報データベースの全体構成

評価を行う

データの収集

データベースの作成

評価システムの構築

ウェブで公開

評価指標項目を選定

重み付けを行う

図 1 研究の流れ

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15-2

を図 2 に示す。DB サーバ内のデータは同サーバ内の

ArcSDE を通じて WEB/GIS サーバ内の ArcInfo 上で表示

される。尚、DB サーバにおいて GIS データを格納・使

用・管理する際、Microsoft SQL Serve を用いた。

 入手したデータでデータベースを作成する時では、

GIS データが異なる座標系で作られていることが多く、

そのデータの座標系を補正する必要がある。作成した

データベースを GIS 上で表示した結果を図 3に示す。

2-3 Web での公開について

 都市情報データベースの構築後、ArcGIS Server に

よって、GIS サービスを作成、公開及び管理すること

ができる。

 まず、ArcInfo を用いて都市情報データベースか

らシェープファイルを読み込み、マップドキュメン

トを作成する。そのマップドキュメントから ArcGIS

Server Manager を使ってマップサービスを作成した

後、GIS サービスを公開する。インターネットができ

る環境であれば、外部からアクセスが可能である。図

4に公開した GIS サービスの画面を示す。

3. 都市持続性評価システムの構築

3-1 評価システムの構成

 本研究において構築するシステムは「評価指標項目」

と「各項目間の相対的な重要度から算出される重み」

の2つの要素から構成される(図 5)。評価項目に応じ

た指標を得点化した後、各項目に設定された重みを加

味した上で合算した結果都市の総合評価が得られる。

これにより導出された都市の持続性評価結果を分析す

ると都市の改善点や特徴を局所的に把握することが可

能となる。

3-2 評価指標項目について

 持続性評価システムを構築するために、具体的な評

価対象となるの持続性評価指標項目を選定する。都市

の評価はこの指標により具体的な得点を与えられるこ

とで決定する。評価項目及び評価指標の選定は既往の

評価ツール・既往研究・法令などを引用もしくはは参

考とすることで決定する。選定の条件を以下にまとめ

る。

1)中立を保つために、トリプルボトム・ラインに基

づいた選定を行う。

2)対象都市・対象年代に制約されないシステムの適

用を目的とするために、公開頻度が一定であり、入手・

更新が容易である政府機関統計もしくは行政公表資料

を用いる。

3)詳細な評価を可能とするために、選定候補になり

うる指標が複数存在した場合、そのデータが収集され

図 4 Web での GIS サービス公開

図 3 GIS を用いた都市情報データベース

図 2 都市情報データベースの構造

データの収集

データベースの作成

評価システムの構築

評価を行う

ウェブで公開

DB ServerWEB/GIS

Server

ルーター

スイッチングハブ

DBMS: SQL Server 2008 R2 Standard

Arc SDE 10 Enterprise

Arc GIS Server Standerd Enterprise

ArcGIS Desktop:ArcInfo 10

クライアント

PC

ファイヤーウォール

PC:PowerEdge T410 タワーサーバー

OS:Microsoft Windows Server 2008 R2 Standard

ArcInfo

ArcSDE

database

×

×

×

環境

評価指標Ⅰ

評価指標Ⅱ

評価指標Ⅲ

得点Ⅰ

得点Ⅱ

得点Ⅲ

社会

経済

評価指標

評価指標

得点

得点

総合値

値に応じて

総合値の段階

評価を行う。

重みⅠ

重みⅡ

重みⅢ=得点Ⅰ’

得点Ⅲ’得点Ⅱ’

==

得点’

得点’

重み

重み

評価指標項目による得点化 AHP法による重み付け

都市持続性評価システム

評価項目

図 5 評価システム構成図

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15-3

たスケール(町丁目等)が最も小さいものを選定する。

 以上の条件を踏まえて選定した項目は環境・社会・

経済の3つの項目をトリプルボトム・ラインとして大

項目に大別した。さらに大項目内で中項目に分別した。

中項目内には具体的な小項目が存在し、小項目一つあ

たりに一つもしくは複数の指標が与えられる。選定し

た項目及び指標の具体的評価方法について整理し、表

1にまとめる。

 各項目の得点は以下の式(1)~(4)によって導か

れる。

An = an × α n   …(1)

指標の総得点:An     指標の得点:an           

指標の重み値:α n

Bn = Σnk=1 Ak × β n  …(2)

小項目の総得点:Bn  小項目の得点:Σ nk=1 Ak   

小項目の重み値:β n

Cn = Σnk=1 Bk × γ n …(3)

中項目の総得点:Cn  中項目の得点:Σ nk=1 Bk   

中項目の重み値:γ n

Dn = Σnk=1 Ck × δ n  …(4)

大項目の総得点:Dn  大項目の得点:Σ nk=1 Ck   

大項目の重み値:δ n

 具体的評価指標は5段階評価による結果によって1

点から5点までの得点を与えられることとなる。

3-3 重み付けについて

 AHP(Analytic Hierarchy Process) 法はトーマス・

L・サーティによって提唱された意思決定手法であり、

計量心理学や市場調査の分野において発展を遂げてき

た。AHP 法の特徴は人間の主観的側面を客観的に捉え

なおすことを可能としている部分にある。また、マト

リクス化を行い同様の計算を繰り返すために表計算ソ

フトウェアによって実行することが可能であり、操作

性が高い点も特徴である。本研究における重み値の算

出には「Microsoft Excel」を使用した。この手法は既往

の研究や様々な持続性評価ツールにおいて重み付けを行

うことを目的としてよく用いられている。

 AHP法はそれぞれの項目を多階層に分類し、各階層毎に

一対比較法を行うことで階層内での重要度を決定するこ

とを可能とする。それらの重みを掛け合わせた得点を合

算することで総合結果が得られる。

 一対比較による相対評価は全ての項目間において行

う。一対比較は項目数が多いほど項目間の比較が困難

となるために、比較を行う回答者の簡潔な回答を得る

ことを目的として当評価システムにおける一対比較は

主に用いられる 17 段階評価ではなく 7 段階による相

表 1 評価項目の概要

左の項目が絶対的に良い

中間

左の項目が非常に良い

中間

左の項目がよい

中間

左の項目が若干良い

中間

左右同じくらいよい

中間

右の項目が若干良い

中間

右の項目がよい

中間

右の項目が非常に良い

中間

右の項目が絶対的に良い

項目Ⅰ 項目Ⅱ

項目Ⅱ 項目Ⅲ項目Ⅲ 項目Ⅰ

1

1

1

a b

c1/a

1/b 1/c( )

一対比較による相対的な重要度の設定

一対比較表の作成

マトリクス化 /固有値の算出

項目Ⅰ 項目Ⅱ 項目Ⅲ

項目Ⅰ 1 a b項目Ⅱ 1/a 1 c項目Ⅲ 1/b 1/c 1

重み

項目Ⅰ α項目Ⅱ β項目Ⅲ γ

×項目Ⅰ α aα bα項目Ⅱ 1/a ・ β β cβ項目Ⅲ 1/b ・ γ 1/c ・ γ γ

=

項目Ⅰ α(1+a+b)項目Ⅱ β(1/a+1+c)項目Ⅲ γ(1/b+1/c+1)

÷

固有値

=

重み

項目Ⅰ α項目Ⅱ β項目Ⅲ γ

合計

固有値法:2つが同じになるような重み

図 6 固有値法の過程と一対比較の例

大項目

  

環境

     

  社会

   経済

中項目

都市環境

資源

住環境

都市基盤

地方経済

  

具体的評価方法

4 項目(SO₂,NO₂,Ox,SPM)のうち測定時点において環境基準以上を達成した項目すの比率

一人当たり年間生活用水使用量

地下水の水質

自治体面積に占める自然的土地面積の比率

対象におけるダイオキシン類濃度

一人一日当たりゴミ排出量

一般廃棄物のリサイクル率

保全率=保全数 /農地+森林+ため池・湖+河川・水路+用排水路総数

当該自治体の人口自然増減率 -全国の人口自然増減率

(転入者数 -転出者数)/総人口

人口千人当たり刑法犯認知件数

誘導居住面積水準以上の主世帯の割合

一人当たり公園面積

地震による揺れやすさ度合

人口 10 万人中の交通事故による負傷者数

障害者施設定員数/総人口

インターネット世帯別普及率

行政評価システムの導入

公共交通機関利用率

市民・住民への情報公開度

財政力指数

将来負担比率

実質経済成長率

完全失業率

有効求人倍率

一人当たり県民所得増加率

事業所増加率

自然環境

人口動態

評価項目

空気

 

土地

環境保全

人口

安全

住宅

OS都市防災

都市

社会基盤

交通

権利

財政

産業

雇用

収入支出企業

(小項目)

廃棄物

大気汚染物質排出量(SO₂,NO₂,Ox,SPM)

水消費量

水質

自然被覆地

土壌の品質

廃棄物の排出量

資源再利用効率

自然的土地保全率

人口自然増減率

人口社会増減率

防犯

住宅整備水準(量)

オープンスペース整備水準

地盤形状(地震)

歩行者空間の安全性

障害者サービス充実度

情報システム

マネージメントシステム

公共交通利便性

権利の多様性

地方自治体財政力

財政安定度

地場産業

雇用率、失業率

雇用の多様性

所得

企業数

権利

具体的評価指標

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15-4

対評価とする。また項目の階層化については、各階層

別結果の導出を目的として大項目・中項目・小項目・

評価指標の4階層に分類した。

 具体的な重み値の算出は固有値法を用いる。固有値

法は一対比較結果をマトリクス化し固有値と固有ベク

トルを求め、固有ベクトルを重み値とする方法である。

この固有値法の過程と一対比較の例を図 6に示す。

 評価システムを適用する対象都市・年代を考慮し

AHP 法による重み付けを行うことで、各都市・年代に

適した重みを設定することが可能となる。システムを

適用する対象都市の特性を把握したうえでの重み値の

設定ができるためより汎用性の高いシステムの構築が

可能となる。

4. 実都市への適用

4-1 福岡市への適用

 福岡市を対象として当システムを用いて持続性評価

を行った後、適用した結果を ArcGIS を用いて 250 メッ

シュでアウトプットを行い、ArcGIS Server を用いて

WEBで公開した。今回は250メッシュとしたが、500メッ

シュ等他のスケールでも表示することが可能である。

 今回用いた福岡市のデータは主に政府機関統計・福

岡市統計情報・ふくおかデータウェブから収集した。

データは項目中最もスケールが小さい町丁目別で整理

したのちメッシュデータへと変換を行った。尚、町丁

目毎の数値情報が存在しない項目については、町丁目

が属する行政区毎もしくは福岡市の数値情報を与え

た。

 町丁目毎の数値情報を Arc GIS を用いて福岡市町丁

目ポリゴンに結合し、インターセクト機能を用いて

メッシュデータ化を行った。メッシュ内に複数の町丁

目がまたがる場合、ポリゴン内の各町丁目ごとの面積

割合を各数値情報に掛け合わせ、合計することでメッ

シュ内の数値とした。アウトプットは福岡市内におけ

る各項目の標準偏差によって5段階評価を行っている。

4-2 適用結果及び分析

 福岡市における当システムを適用させた都市持続性

評価の各大項目の評価結果と総合結果を図 7 に示す。

総合結果は環境、社会、経済の大項目にそれぞれの重

みを掛け合わせたうえで合算したものである。

 それぞれの重み値は環境が「0.460228」社会が

「0.257662」経済が「0.28211」で設定されており、こ

れはアンケート対象者が福岡市の持続性に関して環境

項目を重視したためである。

 行政区毎に分析を行うと環境項目で高評価を得た早

良区は総合的にも高い評価を得た。その一方で中央区

は社会及び経済で比較的高い評価を得たものの環境評

価が低いために総合結果も低いものとなった。また博

多区では福岡空港周辺において低い評価がなされてい

るが、定住不可能であることや滑走路や緩衝帯といっ

た空港施設化しているために環境項目の評価が低かっ

たことが影響していると考えられる。

5. 総括

(1)当システムは①対象都市に応じて評価指標項目の

重要度が設定できる。②様々なスケールで評価結果を

アウトプットできる。③階層毎に評価結果を見ること

で、改善すべきエリアを局所的に把握できる。この 3

点から汎用性のある都市持続性評価手法を提示できた

と言える。

(2)都市情報データベースを構築することでデータの

一元的な管理が可能となった。また、Web-GIS を用い

たことでデータベース化された情報や持続評価手法の

評価結果を視覚的に表示することができた。

 これからは研究の精度を高めるために、案例分析を

増加し、選定した指標の有効性を証明することが課題

となる。

参考文献

1) 高橋美保子 鵜木千里 出口敦 :「サステナブル・ディベロップ

メントの概念と都市のサステナビリティ評価手法に関する基礎研

究」、九州大学大学院人間環境学研究院紀要 第 11 号 2007 年 1

> 1.50 Std.De

0.50 - 1.50 Std.vDe

-0.50 - 0.50 Std.vDe

-1.50 - -0.50 Std.vDe

< -1.50 Std.De

図 7 各大項目の評価結果と総合評価結果

環境 社会

経済 総合評価