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77 日経パソコン 2012.4.9 Word の新規文書は、A4 サイズに 設定されている。用紙は縦置き、文 字は横書きになっているので、たい ていの文書はそのまま書き始められ る。文字を入力したら、タイトルや 見出しを目立たせるなど、読みやす くレイアウトしていけばよい。 図 1は、その手順で作成した社内 向けの報告書。見やすいレイアウト になっているものの、残念ながら文 章が 2 ページ目にあふれてしまった。 この「あふれ現象」は、Wordの文書 作成でよく起こる問題だ。 報告書の例では、文章が 2 ページ 目の半分近くまではみ出している。 こうなると、つい修正を諦めがちに なるが、文書を 2 枚に印刷するのは 絶対に避けたい。大きな空白を残し た 2 ページ目は野暮だし、何より紙 の無駄。さらに、報告書をA4一枚 にまとめられない無能ぶりを、社内 にさらすことにもなる。 よく起こる問題には、必ず適切な 解決方法がある。それが言うなれば、 Wordの定石テクニックだ。実際2 ページ目にはみ出した文章は、この 定石(2つの設定変更)で1ページに 収めることができた(図 2)。両者を 比べると、明らかにA4 一枚の方が スマート。ぜひ、このテクニックを 身に付けていただきたい。 1ページの文字量を増やす 「あふれ現象」の主たる原因は、 Word のページ設定にある。初期設 定で、用紙の余白と行間が広めに取 られているため、1 ページに入力で きる文字量が少ないのだ。 新規文書を確認すると、上の余白 が 35mm、下と左右の余白が 30mm に設定されている(図 3)。これは実 に A4 用紙の 44% を占める面積。つ 簡単な設定で文書はA4一枚に収められる 図 2 ページの余白を狭め、さらに行間を詰 めることで、文書は難なく一枚に収まった 図 1 Word の初期設定では、余白 や行間が広めに取られている。その ままレイアウトすると、文章が 2 ペ ージになってしまうことも多い 第 1 回 ページ設定で A4 用紙を有効に使う 伊佐 恵子 テクニカルライター ※本連載はWord 2007/2010 の操作を解説します(画面はWord 2010です) ビジネス文書は A4 用紙一枚にスッキリとまとめ るのが理想。とはいえ、Word では文章が 1ペー ジに収まらず、苦労することも多い。文章は削り たくないし、レイアウトも崩したくない。今回は そんな悩みを解決する、定石のテクニックを紹 介しよう。 Word の定石 A4 一枚文書

Wordの定石 A4 一枚文書pcclub.nikkeibp.co.jp/sales/pdf/0622.pdf78 日経パソコン 2012.4.9 まり文字を入力できる領域は、56% しかないことになる。 さらに初期設定では、1ページの

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 Wordの新規文書は、A4サイズに設定されている。用紙は縦置き、文字は横書きになっているので、たいていの文書はそのまま書き始められる。文字を入力したら、タイトルや見出しを目立たせるなど、読みやすくレイアウトしていけばよい。 図1は、その手順で作成した社内向けの報告書。見やすいレイアウトになっているものの、残念ながら文章が2ページ目にあふれてしまった。この「あふれ現象」は、Wordの文書作成でよく起こる問題だ。 報告書の例では、文章が2ページ

目の半分近くまではみ出している。こうなると、つい修正を諦めがちになるが、文書を2枚に印刷するのは絶対に避けたい。大きな空白を残した2ページ目は野暮だし、何より紙の無駄。さらに、報告書をA4一枚にまとめられない無能ぶりを、社内にさらすことにもなる。 よく起こる問題には、必ず適切な解決方法がある。それが言うなれば、Wordの定石テクニックだ。実際2ページ目にはみ出した文章は、この定石(2つの設定変更)で1ページに収めることができた(図2)。両者を

比べると、明らかにA4一枚の方がスマート。ぜひ、このテクニックを身に付けていただきたい。

1ページの文字量を増やす 「あふれ現象」の主たる原因は、Wordのページ設定にある。初期設定で、用紙の余白と行間が広めに取られているため、1ページに入力できる文字量が少ないのだ。 新規文書を確認すると、上の余白が35mm、下と左右の余白が30mmに設定されている(図3)。これは実にA4用紙の44%を占める面積。つ

●簡単な設定で文書はA4一枚に収められる

図2 ページの余白を狭め、さらに行間を詰めることで、文書は難なく一枚に収まった

図1 Wordの初期設定では、余白や行間が広めに取られている。そのままレイアウトすると、文章が2ページになってしまうことも多い

第1回 ページ設定でA4用紙を有効に使う 伊佐 恵子 テクニカルライター

※本連載はWord 2007/2010 の操作を解説します(画面はWord 2010です)

ビジネス文書はA4用紙一枚にスッキリとまとめるのが理想。とはいえ、Wordでは文章が1ページに収まらず、苦労することも多い。文章は削りたくないし、レイアウトも崩したくない。今回はそんな悩みを解決する、定石のテクニックを紹介しよう。

Wordの定石A4 一枚文書

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まり文字を入力できる領域は、56%しかないことになる。 さらに初期設定では、1ページの行数が36行、行送りは18ポイントと決められている。「行送り」は1行の高さを示す数値で、Wordでは「行間」とも呼ぶ。標準の文字サイズは10.5ポイント、1行の高さは18ポイ

ントなので、文字は比較的ゆったりした間隔で配置される(図4)。 もうお分かりのように、文章を1ページに収める定石とは、「余白」と「行間」の2つを調節して、ページの文字量を増やすこと。A4用紙を有効に使うテクニックだ。ただし、そのために文章が読みにくくなったり、

レイアウトが崩れたりしては元も子もない。設定のコツを紹介しよう。

まず「余白」を狭くする 2ページ目に文章があふれたときは、初めに余白を調節する。これだけで、文章が1ページに収まってくれる可能性もあるからだ。ポイントは、上下左右の余白をバランス良く減らすこと。さらに、余白を狭くしすぎないこと。用紙の端近くまで文字が表示されると圧迫感があるし、文章も読みにくくなる。ビジネス文書の場合、15mm以下にしない方が無難だ。もちろんこれは原則なので、状況に応じて調節する。 余白の設定は、「ページレイアウト」タブの「余白」で行う。「余白」をクリックすると、メニューにいくつかの設定パターンが表示されるので、この中から取りあえず「やや狭い」を選んでみてもよい。 余白を数値で指定する場合は、メニューから「ユーザー設定の余白」を選択する(図5)。「ページ設定」ダイアログボックスが表示されたら、上下左右の余白をそれぞれ設定しよう。この例では、上と左右の余白を20mm、下の余白を15mmに変更した(図6)。 これで余白が減り、文字の入力領域は71%に広がる。一度「OK」ボタンをクリックして編集画面に戻り、文章が1ページに収まったか確認してみよう。まだ2ページ目に文章があふれている場合は、さらなる調整が必要だ。実はこの例では、下余白を一度 20mmに設定し、さらに15mmに変更した。 余白をこれ以上狭めたくない場合

中級

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●本文の領域を一気に広げる図5 ページ全体の設定は「ページレイアウト」タブで行う。余白を数値で設定する場合は、「ページレイアウト」タブの「余白」から「ユーザー設定の余白」を選択する

図6 上下左右の余白をそれぞれ設定する。余白を狭めると、本文の領域が広がる

●文書の初期設定スタイルはこうなっている図3 新規文書のページ設定。余白との境界はグレーの線で確認できる。なお、行数は標準の文字サイズ

(10.5ポイント)で入力した場合

30mm30mm

35mm

30mm

36行

図4 標準の文字サイズは10.5ポイント、行送り(行間)は18ポイントに設定されている

10.5ポイント

18ポイント

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は、次の一手。行間を狭めて、1ページの文字量を増やそう。

「行送り」か「行数」を調節 行間の設定も余白と同じく「ページ設定」ダイアログボックスで行う。ダイアログボックスは、「ページレイアウト」タブの「ページ設定」という表示の右にある、小さな矢印ボタンをクリックして開くことができる(図9の赤丸で囲んだボタン)。 ダイアログボックスが表示されたら「文字数と行数」タブを開き、現在の設定を確認しよう。報告書では上下の余白を狭めたため、1ページの「行数」が初期設定の「36」行から自動的に「41」行に増えている。ただし「行送り」は初期設定の「18pt」のままだ(図7)。 ここでは行間を狭めるため、「行送り」を「16pt」に変更した(図8)。「行数」と「行送り」は連動しているので、どちらか一方を手動で変更すると、もう一方の数値が自動的に変わる。この例でも「行数」が「46」行

に増えた。これで報告書の文章は、無事1ページに収まった(図9)。 「文字数と行数」タブでは「行送り」と「行数」のどちらを調節しても構わない。例えば「あと2行増やしたい」なら、「行数」を増やした方が簡単だ。その場合「行送り」は自動変更される。ちなみに「行送り」の下限は「14.3pt」。用紙全体の行間をここまで狭めると、窮屈な印象になる。編集画面で部分的に行間を調整した方がよい。そのテクニックは、次回

に紹介しよう。 なお、あと数mmで文章が収まる、という状況なら、余白をドラッグで微調整する手もある(図10)。

テンプレートで設定を省略 文書を作るたびに余白や行間を変更するのが面倒、という場合は、好みのページ設定を「テンプレート」として保存するのがお薦め。 まず、白紙の文書で余白や行間をよく使う設定にする。次に「ファイ

●行間を狭めて文字量を増やす

図9 本文の領域が広がり、行間が狭まった。これで2ページにまたがっていた文章は1ページに収まった。余白や行間は、文章量に応じてそのつど調節しよう

図7 「文字数と行数」タブを開く。上下の余白調整により、「行数」は初期設定の「36」行から「41」行に増えている

図8 「行送り」を初期設定の「18pt」から「16pt」に変更する。「行数」は自動的に「46」行に増える

●余白はドラッグで微調整できる図10 余白はルーラー上でも変更できる。境界部分にマウスポインターを合わせ、両矢印に変わったところでドラッグすればよい。微調整したいときに便利

Wordの定石 A4 一枚文書

Page 4: Wordの定石 A4 一枚文書pcclub.nikkeibp.co.jp/sales/pdf/0622.pdf78 日経パソコン 2012.4.9 まり文字を入力できる領域は、56% しかないことになる。 さらに初期設定では、1ページの

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中級

ル」タブの「名前を付けて保存」を選択。ダイアログボックスで「ファイルの種類」に「Wordテンプレート」を選ぶ。後はファイル名と保存先を指定すればよい(図11)。 テンプレートを利用するときは、保存したファイルをダブルクリックする(図12)。これでテンプレートは新規文書として開く。余白や行間などは設定済みなので、そのまま文書を作っていける。なお、テンプレートをWordの「開く」や「最近使用したファイル」から開くと、テンプレートファイルそのものが開く。新規文書にはならないので注意しよう。 Wordから新規文書として開きたい場合は、テンプレートファイルを「Templates」フォルダーに保存する(図11)。開くときは「新規作成」で「マイテンプレート」をクリックし、ダイアログボックスでテンプレートを選べばよい(図13)。

余白を効果的に使う 見てきたように、A4一枚の文書では余白を狭めるのが定石のテクニック。でも、逆に余白を広く取って利用することもできる。 例えば上下の余白には、本文から独立した領域「ヘッダー/フッター」を挿入できる(図14)。文書番号などの補足事項を表示するのに、ちょうどよいスペースだ。ヘッダーとフッターの使い方についても、回を改めて詳しく紹介する。 図15はセミナーで配布する資料。文字量が少なかったため、A4用紙を横置きにして右余白を極端に広く取った。空いたスペースは、受講者が書き込めるメモに利用している。

図13 テンプレートファイルを「Templates」フォルダーに保存すると、「ファイル」タブの「新規作成」から開ける。

「マイテンプレート」をクリックし、ダイアログボックスでテンプレートを選択。「OK」ボタンをクリックすれば、新しい文書として開く

図14 余白にはヘッダーやフッターを挿入できる。本文とは別の領域なので、文書番号など補足事項を表示するのによい

●余白をただのスペースにしない活用法

●繰り返し使うならテンプレートとして保存図 11 白紙の文書でページ設定を行い、「ファイル」タブの「名前を付けて保存」を選択。ダイアログボックスで「ファイルの種類」に「Wordテンプレート」を選ぶ。ファイル名と保存先を指定して「保存」ボタンをクリック

図 12 テンプレートファイルが作成された。利用するときはダブルクリックで開く

図15 余白はメモスペースにも利用できる。セミナーの資料では、参加者が書き込めるように右余白を広く取った。「Memo」の文字はテキストボックスで配置している

右余白

1

2

3

「Templates」フォルダーに保存した場合