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XXX STUDY / SURVEY / WHITE PAPER / FEATURE XXX 1 MARKET STUDY 転換期を迎えたベトナムの 転換期を迎えたベトナムの 転換期を迎えたベトナムの 転換期を迎えたベトナムの ヘルスケア産業と事業機会 ヘルスケア産業と事業機会 ヘルスケア産業と事業機会 ヘルスケア産業と事業機会 April, 2017 No. 11 ASIAN NEWS LETTER

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XXX STUDY / SURVEY / WHITE PAPER / FEATURE XXX

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MARKET STUDY

転換期を迎えたベトナムの転換期を迎えたベトナムの転換期を迎えたベトナムの転換期を迎えたベトナムの ヘルスケア産業と事業機会ヘルスケア産業と事業機会ヘルスケア産業と事業機会ヘルスケア産業と事業機会 April, 2017

No. 11

ASIAN NEWS LETTER

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2 MARKET STUDY

Table of Contents

1. 政府主導がもたらした歪な市場構造 ............................................................................................. 4

1.1 圧倒的な存在感を持つ公的セクター...................................................................................... 4

1.2 極端な都市部への患者集中 .................................................................................................... 4

1.3 「ハコモノ」重視 .................................................................................................................. 5

2. 政府主導から民間開放へ ............................................................................................................... 6

2.1 公立病院の民営化 .................................................................................................................. 7

2.2 病院事業の外資規制撤廃 ........................................................................................................ 8

2.3 外国人医師の就労も容易 ........................................................................................................ 8

3. 転換期ならではの事業機会 ......................................................................................................... 10

3.1 公立病院時代の事業資産の承継と経営合理化: 先行する中国のベストプラクティス ...... 10

3.2 医療機器のアップグレード .................................................................................................. 11

3.3 外国人医療従事者による差別化 ........................................................................................... 12

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3 MARKET STUDY

Table of Figures

図 1. 東南アジア各国の万人当たりの病床数[2006-2012] .................................................................. 5

図 2. 一人当たり医療費と家計に占める医療費の割合 ....................................................................... 6

図 3. ベトナムの公的保険の対象者推移 ............................................................................................. 7

図 4. ベトナムにおける医師のキャリアパス ...................................................................................... 9

図 5. 東南アジア各国の外国人医師の就労条件 .................................................................................. 9

図 6. 中国公立病院の民営化のベストプラクティス ......................................................................... 11

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4 MARKET STUDY

初めてベトナムを訪問された方は、ベトナムの「薬剤師診療」に驚かれるのではないだろうか。

劣悪な環境で長時間待たされ、(リファーラルプロセスを経なければ)医療費の自己負担も強いら

れる病院を受診するかわりに、ベトナム人は、街に散在する薬局に「小さな診療所」の役割を求め

ている。薬局で働く薬剤師は、患者の症状を「診て」、知識と経験をもとに薬を「処方」している。

ここでいう「薬」とは、決して OTCに限らない。医療用医薬品でも、医師の処方なく提供する。患者の支払余力も考慮し、箱単位ではなく、1錠単位で患者に販売しているところも少なくない。

上記で見られるような、薬局が医療用医薬品の提供を含めたプライマリケアを担うこと自体は、

ASEANでは決して珍しいことではない。しかし、上記の点を差し引いたとしても、ベトナムを訪れた誰もが、その医療環境を異質に感じるだろう。本稿は、ASEANの中でも独特な環境にあるベトナムのヘルスケア産業に焦点をあててみたい。というのも、まさに今、ベトナムのヘルスケア産

業は大きな転換期を迎えようとしているからだ。そして、言うまでもないが、大きく変化するタイ

ミングは、大きな事業機会でもあるからだ。 まずは、第 1章で、ベトナムの何が独特なのか、について紹介し、続く第 2章では、ベトナムヘ

ルスケア産業の大きな変化について紹介する。最終章では、こうした流れがもたらす事業機会につ

いて論じてみたい。

1. 政府主導がもたらした政府主導がもたらした政府主導がもたらした政府主導がもたらした歪な市場歪な市場歪な市場歪な市場構造構造構造構造

1.1 圧倒的な存在感を持つ圧倒的な存在感を持つ圧倒的な存在感を持つ圧倒的な存在感を持つ公的セクター公的セクター公的セクター公的セクター

ベトナムは、第二次世界大戦後もいくつの戦争に関わり、西側諸国から長らく敬遠されていた。

しかし、1986 年にベトナム政府は改革開放政策を打ち出し、その後経済は成長局面に入った。今

日のベトナムは、1 億人に迫る人口、GDP1,940 億米ドル、一人当たり GDPが 2,000 米ドル(い

ずれも 2015 年)に達した新興国であり、ASEANでも有望視される市場の 1つと目されている。

一方で、長らく政府が産業政策を主導してきたため、多くの産業において、計画経済の名残が垣間

見られる。ヘルスケア産業においても、それは例外ではない。 一言で言えば、ベトナムのヘルスケア産業は、圧倒的に公的セクターのシェアが高い。例えば、

ベトナムの医療施設は、病院とコミューンヘルスセンターの大きく 2 種類に分けられ、全国に約

13,500 施設が存在する。そのうち病院が 1,246 施設だ。さらにその内訳を見てみると、公立病院

の数は 1,063であり、実に病院全体の 85%を占める。同じような新興国でも、インドネシアでは

公立病院と民間病院の数はほぼ半々だ。圧倒的に民間病院が少ない、というのがベトナムで感じる

最初の違和感である。

1.2 極端な極端な極端な極端な都市部への患者集中都市部への患者集中都市部への患者集中都市部への患者集中

また、都市部への患者集中が極めて進んでいる点も特徴的だ。、国全体ではまだまだ病院が足り

ないにもかかわらず、地方部では病院の稼働率が低いという珍現象が起こっている。

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5 MARKET STUDY

ベトナムの公的セクターは、等級制度とリファーラルシステムが導入されており、患者の分流と

医療の効率化が図られてきた。しかし、新興国ではよく見られることだが、ベトナムにおいても国

民の低級病院(プライマリケア/セカンダリケア)への不信感は強い。大都市の大病院への一方的

な「迷信」が、本来地方の低級病院でも治療可能な患者の大都市への集中、都市部病院の混雑を招

いている。一方で、地方の低級病院はそのあおりを受け、稼働率低下を引き起こしている。加えて、

富裕層を中心に、レファラルシステムを経ずに、自己負担前提で最初から中央医療機関を受診する

患者が増えつつあることも、この傾向に拍車をかけている。

1.3 「「「「ハコモノハコモノハコモノハコモノ」」」」重視重視重視重視

想像に難くなく、一般的な医療指標でみると、ベトナムは ASEAN 諸国でも見劣りする。ただし、

病床数だけは別だ。10,000人あたり病床数は 20床で、これはブルネイの 28床、タイの 21床に次

ぎ、シンガポールと同程度、マレーシアの 19床、ラオスの 15床、インドネシアの 9床を上回って

いる(図1)。

図 1. 東南アジア各国の万人当たりの病床数[2006-2012]

Source: World Health Statistics 2014

政府主導にありがちだが、ベトナム政府も「ハコ」に偏ってインフラ投資を進めてきた。したが

って、1人あたり病床数は ASEANでも上位に属する(ただし、都市部ではベッドが全く足りず、

地方では余っていることは前述のとおり)。一方で、医療機器などへの投資は遅れており、多くの

病院では古い機器を使い続けている。結果的に医療機器の技術改良による医療水準の底上げ効果は、

ベトナムではほとんど享受されていない。例えば、超音波(USG)、CT、MRIなどの画像診断装

置のスペックを比較してみると、ベトナムの医療機器は周辺国に見劣りする。CTでは、ASEAN 近

隣国が主に 256/SLICEのものを導入しているのに対して、ベトナムは 64/SLICEである(一部中古

の 16‐32/SLICEを使っている病院もある)。また、MRIの比較では、他国は 3Tレベルの機器を頻繁に導入しているのに対して、ベトナムは、いまだに 1.5Tレベルの機器が主流である。

先進医療機器の導入は、ある意味わかりやすく医療水準を PRできる。病院が、「最新の医療機

器を導入した」、ということを高らかに院内にポスターを貼ってアピールしている例は、ASEAN

56

79

15

192020

21

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LaosThailand Malaysia Indonesia Canbodia MyanmarSingapore VietnamBrunei Philippines

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6 MARKET STUDY

各国で見られる。実際、こうした取り組みも、富裕層患者の診療先決定に影響を及ぼしている。医

療機器のスペックで見劣りするベトナムは、富裕層の海外流出(メディカルツーリズム)が増えつ

つあることが悩みだ。ベトナム富裕層の近隣国へのメディカルツーリズムは、年間 3-4万人に達

し、その医療費も 1-2 億米ドルに達していると推定されている。

2. 政府主導から民間開放へ政府主導から民間開放へ政府主導から民間開放へ政府主導から民間開放へ 一般的に、国民医療費の増加は、経済成長と正比例の関係にある。2000 年に 20.3 米ドルであっ

たベトナムの一人当たり医療費は、2013 年に 111.2 米ドルに達し、13 年で 5 倍以上に拡大した。

また、家計に占める医療費の割合も、2013 年は 16.4%に達し、2000 年(5.8%)の 3 倍近くに膨

らんだ(図 2)。

図 2. 一人当たり医療費と家計に占める医療費の割合

Note: 家計に占める医療費の割合は、「一人当たり家計消費支出」と「一人当たり医療費支出」から推計

Source: 世界銀行「World Development Indicators」

ここ十数年の急成長を支えたのは、前述の通り、ベトナム政府主導の医療インフラへの投資だ。

ベトナムの GDPに占める医療費支出は 7%で、ASEANでも高水準だ。この支出の多くを政府が支

えてきたという点では、ベトナム政府の医療へのコミットメントは、ASEAN でも群を抜いて高い。

では、今後も、ベトナムのヘルスケア産業は政府主導で進められるのだろうか。答えは Noだ。まさに今、ヘルスケア産業の主役が政府から民間に移りつつあるのである。

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7 MARKET STUDY

2.1 公立病院の民営化公立病院の民営化公立病院の民営化公立病院の民営化

1990 年代初頭、ベトナム政府は、新しい社会保障制度(BHYT)を打ち出した(1992 年開始)。

同案は、まず国営企業の従業員から社会保障の対象に組み入れ、徐々に国民全体に広げていくもの

であった(図 3)。

図 3. ベトナムの公的保険の対象者推移

Source: MoH of Vietnam

改革は順調に進んできたが、最近では停滞が見られる。2020 年までに国民の 84.3%をカバーす

る目標だが、現時点では 78%で足踏みしている。にも関わらず、都市部の公立病院は、殺到する

患者に既にお手上げ状態になっている。10 年間で 5 倍以上を膨らんだヘルスケア市場を今後も政

府主導で支えていくことの限界を感じたベトナム政府は、2014 年に「公立病院から民間病院への

切り換え(民営化)」を認め、同時に「民間病院の新規参入」、「外資病院の新設許可」に至るま

で、一気に規制緩和を進めた。 規制緩和後の 2015 年、Hanoi Transport Hospitalは、株式の 51.5%を T&T GROUPに譲渡

し、ベトナム初の病院の民営化事例となった。Vinh Transportation Hospital、Da Nang Transportation Hospitalなども、現在積極的に民営化を検討している。先行する民営化病院が成

功裏に成長すれば、民営化案件はますます増えていくだろう。 また、民間病院の新規参入が認められたことで、民間病院間の競争も活発化している。2016 年

に JCIに認定されたばかりの FV Hospitalは、富裕層をターゲットとする民間病院である。同グ

ループは、これからの 3 年間で、所得階層に応じたクリニックを全国 30 箇所に新設する計画だ。

プライマリケアから基幹病院までをネットワーク化することで、患者の多様なニーズに応えられる

グループを目指している。

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8 MARKET STUDY

2.2 病院事業の外資規制撤廃病院事業の外資規制撤廃病院事業の外資規制撤廃病院事業の外資規制撤廃

2014 年には、ベトナム初の外資独資病院として、Hoan My Medical Corporationが誕生した。東

南アジアで活発な投資活動を行っている Chandler Capitalは、2011 年から当病院の株式を 20%保有していたが、ベトナム政府の規制緩和を受けて株式を買い増し、ベトナムで外資 100%病院の第一号となった。新会社は、すでに数件の病院を買収し、規模拡大と全国展開を進めている。今も

引き続きベトナム国内の病院の買収を積極的に模索しているようだ。また、Chandler Capital は、フィリピン屈指の富裕層向け病院である Medical Cityにも資本参加していることから、Medical Cityから Hoan Myへの技術供与も進められている。両病院の協業として、がん治療センター、循

環器治療センター等の新設が既に予定されている。 民営化ブームの到来、民間病院への新規参入解禁、外資への市場開放は、民間資本の注目を一気

にベトナムへと振り向けた。政府主導による公共セクター市場であったベトナムのヘルスケア産業

は、いまや外資が参入しやすい国として挙げられるようになった。外資民間資本によるベトナム参

入事例は今後ますます増えていくだろう。

2.3 外国人医師の就労も容易外国人医師の就労も容易外国人医師の就労も容易外国人医師の就労も容易

外国人医療従事者の就労に関しても大きな変化が起こっている。もともと、ベトナムでは、人口

の 3割でしかない都市部の医療機関に、医師の 59%、看護婦の 55%が集中していることもあり、地域格差が大きな問題となっている。また、公的セクターが医療の主役であったベトナムでは、公

的医療機関の給与水準が低いため、公的医療機関で働く医師の 8 割が民間医療機関も兼務している。

公立病院と民間病院を往復する医師は、できるだけ多くの患者を診察することに忙殺される一方、

より高度な医療技術を学ぶ機会が限られている。 医師の数は足りないが、医師を増やすのは容易ではない。ベトナムでは、医師として公立病院に

就職できるのは、医科大学に入学してから少なくとも 8-10 年間が必要とされている(図 4)。

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9 MARKET STUDY

図 4. ベトナムにおける医師のキャリアパス

1)病院は証明書を発行し、それを持ち、MoH へ医師資格を申請

Source: Expert interview

こうした事情から、ベトナムは外国人医師の就労にも寛容だ(図 5)。例えば、フィリピンとマレ

ーシアは、外国人医師の就労に国籍規定があり、、インドネシアに至ってはインドネシア語が話せ

ないといけいない、という極めて高いハードルがある。ベトナムではそのような規定はなく、基本

的には医師資格があれば、あらゆる医療行為が可能で、病院の兼業も問題ない。したがって、民間

病院参入のボトルネックになりやすい医師の採用についても、(コストはかかるものの)外国人医

師を含めて検討できる点は大きなメリットだ。

図 5. 東南アジア各国の外国人医師の就労条件

Source: 各種資料を基に Roland Berger作成

フィリピンフィリピンフィリピンフィリピン1) インドネシアインドネシアインドネシアインドネシア ベトナムベトナムベトナムベトナム マレーシアマレーシアマレーシアマレーシア

1) 教育に関して、具体的な目的、場所、期間等の内容を含めた申請書を3ヶ月前までにBIHC-DOHに提出することを要する ;2) ASEAN Framework Agreement on Services; 3) General Agreement on Trade in Services

申申申申請請請請要件要件要件要件 > 医師資格証明書

> 学術論文

> フィリピンと医師互恵条約を結んでいる国の国籍を

持つ

> 就業許可証

> 医師資格証明書

> インドネシア語が話せる

こと

> 就労計画書(就労の必要性、役割、期間等を明記。被雇用者が準備)

> 関係省庁からの承認(被雇用者が準備)

> 就業許可証、居住許可証

> 医師資格証明書

> 専門医認定証明書

> ライセンス申請書類(申請費用1,000USD)

> 就業許可証(申請費用300USD)

> AFAS2)加入国、または

GATS3)加盟国の医師に

限る

> 医師資格証明書

> 専門医認定証明書

> 就業許可証

就就就就業要件業要件業要件業要件 > あらゆる医療行為が可能 > 以下の行為が可能

– 教育

– トレーニング– 研究– (外国医師による技術移転が必要と認められた)特定の医療行為

> あらゆる医療行為が可能

> 複数病院の兼業不可

> あらゆる医療行為が可能

> ASEAN医師は50床以上の病院で就労可

> GATS加盟国医師は100床以上の病院で就労可

> 複数病院の兼業不可

> 毎年更新が必要 > 教育、トレーニング、研究の場合は1年以内(延長不可。代替医師の派遣可)

> その他、就労計画書に定めた期間に準ずる

> 3年毎に更新が必要 > 毎年更新が必要就就就就業期間業期間業期間業期間

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10 MARKET STUDY

3. 転換期転換期転換期転換期ならではの事業機会ならではの事業機会ならではの事業機会ならではの事業機会

これまで見てきたとおり、ベトナムヘルスケア産業は大きな転換期を迎えている。民間資本から

の注目も高まっており、誰もが事業機会を模索している。第 1章、第 2章で紹介した市場の流れを

踏まえ、ローランド・ベルガーでは、特に公立病院の民営化に注目している。圧倒的な存在感を誇

る公的セクターの民営化案件は、今がまさに旬の事業機会だ。ただし、民営化案件というと、不透

明、複雑、不採算、というイメージもあるのではないだろうか。事実、民営化案件は必ず成功する

バラ色案件というわけではない。玉石混交の公立病院の中から潜在性のある病院を見極め、民間企

業の経営ノウハウを活かした競争力獲得を進めなければならない。最終章では、民営化案件の成功

をどう実現すればよいか、について論じてみたい。

3.1 公立病院時代の公立病院時代の公立病院時代の公立病院時代の事業資産事業資産事業資産事業資産の承継と経営合理化:の承継と経営合理化:の承継と経営合理化:の承継と経営合理化: 先行する先行する先行する先行する中国中国中国中国のベストプラクティスのベストプラクティスのベストプラクティスのベストプラクティス

この点、特に参考になるのが、民営化で先行する中国での成功例/失敗例だ。中国の民営化成功

事例にはいろいろなパターンがあるが、共通している部分もある。 特に、どの成功事例でも必ず挙げられるのは「経営の合理化」、すなわち、コスト低減だ。公立

病院は、民間病院が採用することが難しいような優秀な医師を多く抱えている。病院事業で最も重

要な資産である優秀な医師陣をはじめから揃えられていることは、民営化病院の最大の強みだ。一

方で、公立病院であるがゆえに、経営という観点では非常に脆弱で、高コスト体質であることが多

い。言い方を変えれば、民営化後にまず取り組むべきは、コスト体質の改善・強化だ。中国の大手

ヘルスケアグループである復星グループは、2013 年に佛山禅城病院(Foshan Chancheng Central Hospital)の株式を 6割獲得した後、患者需要の大きいリハビリや耳鼻科などの診療科を増設し、患

者数を急拡大させた。同時に、投資リスクを最小限に抑えるため、プロフィットシェアリングなど

によって外部へリスクを分散している。また、自社による投資抑制が減価償却費抑制にも繋がって

いる。 研究費なども合理化対象になりやすい。中国の公立病院は、収益が低いと補助金が得られるため、

収益を出すくらいなら研究費として使ってしまう、という傾向がある。その結果、研究費の割り当

ては、明確な判断基準もなく、研究成果に結びついたかどうかも評価されない。2003 年に民営化

された宿遷市人民病院(Suqian Hospital)は、この部分にメスを入れて成功した事例の 1つだ。新た

に課題申請・実績審査部門を設け、診療科単位で研究結果を評価し、医師にとって重要なインセン

ティブである研究基金の配賦に細心の注意を払いながら、研究費の合理化に成功、純利益を年率

32%で増加させた。 民営化後に、公立病院時代の患者を引き継げるか、というのも大きなポイントだ。民営化と同時

に患者が離れてしまっては成功は覚束ない。公的保険の償還を引き続き認めてもらえるよう当局と

交渉したり、民間保険患者をうまく取り込むなどして成功したのが岳化病院(Yuehua Hospital)だ。中国人民解放軍用病院として設立された後、1975 年に地方所轄に移行、主に中石化等の国営企業

社員向けの病院として運営されてきた。2012 年に民間グループの天健華夏(Tendcare Medical)による民営化された際には、公的保険償還の継続適用を勝ち取ると同時に、中石化をはじめとする企業

保険の承継にも成功し、患者流出リスクを抑えた上で民営化に踏み切った。結果的に民営化後の患

者数は前年比 8%も上昇した。

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11 MARKET STUDY

図 6. 中国公立病院の民営化のベストプラクティス

Source: Desktop research, Expert Interviewを基に Roland Berger作成

こうした中国での民営化事例は、ベトナムでも活用できる点が多いだろう。まずは「患者や医師

の流出リスクがないか」「経営合理化への道筋は見えているか」について精査すること。その上で、

民間病院ならではの医療水準の向上策/公立病院との差別化戦略が描ければ、成功する確率は高い。

3.2 医療医療医療医療機器機器機器機器のアップグレードのアップグレードのアップグレードのアップグレード

ベトナムならではのバリューアップとしては、やはり医療機器のアップグレードであろう。古い

機器が多いベトナムでは、機器の近代化により医療品質の向上、ひいては患者の信頼獲得が期待で

きる。 例えば、ベトナムでの画像診断装置市場は、2015 年時点で約 750台、2020 年には 1.5 倍の約

1,200台に拡大すると見込まれている。特に CT や MRIは、患者獲得の観点からも装置アップグレ

ードのニーズが高い。一方で、こうした高度医療機器の導入には莫大な投資が必要だ。前述の復星

グループのように、プロフィットシェアなどを活用しながら導入していけば、バリューアップでき

る可能性は高い。現に、ベトナムでも、プロフィットシェアによる高度医療機器の導入事例は増え

つつある。また、プロフィットシェア以外でも、レンタルなどもさかんだ。医療機器メーカーにと

っても、機器導入/アップグレード意欲の高いベトナムの医療機関は、ポテンシャルの高い顧客と

言えるのではないだろうか。

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12 MARKET STUDY

3.3 外国人医療従事者による差別化外国人医療従事者による差別化外国人医療従事者による差別化外国人医療従事者による差別化

外国人医療従事者の派遣も差別化に繋がる可能性が高い。前述したように、ベトナムは外国人

医師の就労が認められやすい国の 1つである。例えば、双日は、2015 年に Tam Tri病院に対する医療サポート業務を開始した。日本の医療従事者の紹介・派遣にはじまり、日本の医療業界の経験

とノウハウの共有、メディカルセンターの共同設立などが進められて入る。「先進国品質の医療の

輸出」というと、多くの国で外国人医師就労規制などがネックとなり展開が難しいが、ベトナムは

こうしたモデルを実現しやすい数少ない国の 1つだ。 最終章では民営化に特に焦点をあてて論じたが、もちろん純粋な民間病院の新設も、まさに開か

れたばかりの事業機会だ。数年もすれば、ベトナムにおいても、タイやマレーシア、インドネシア

に見られるような、大手民間病院グループが生まれるかもしれない。ベトナムの場合、それが外資

系である可能性もあるのだ。2014 年の急激な規制緩和から 3 年、ベトナムのヘルスケア産業はま

さに今が取り組み時なのではないだろうか。

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Lin Lu Senior Consultant +62 855 850 9729 [email protected]

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