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先週の内容熱力学第二法則熱力学の第二法則さまざまな表現
カルノーサイクルと可逆機関の効率クラウジウスの関係
熱力学的温度目盛 クラウジウスの不等式
エントロピー
物質の状態を表す状態量 p,V,T
があったが、式の上ではpとVは関係がありそうだ。 → pVが仕事。
Tは、そのままでいいのだろうか?そういえば、 が残っていた!
つまり、 なる量があっても良いだろう。
!d W = pdV
!d Q
!d Q = dT
エントロピー(Entropy) そこで、系が1つの状態 P1 から、ある経路 K を通って、P2 に至ったとする。また、経路 K’’を通ってふたたび P1 に戻るとする。この変化が可逆的なら、
また、 P2 へ行くのに別の経路 K’ を通るとすれば、
!d Q
TP1KP
2
" +!d Q
TP2
!!K P1
" = 0
!d Q
TP1
!K P2
" +!d Q
TP2
!!K P1
" = 0
P1
P2
K
K’
K’’
第2項目が同じだから、
でなければならない。これは、この表式が、 P1 からP2 へ至る経路によらないことを示している。 今、基準の状態を P0 として、先の積分を書き直すと、
これを、P1 のエントロピーと呼び、Sと表す。つまり、
!d Q
TP1KP
2
" =!d Q
TP1
!K P2
"
P1
P2
K
K’
K’’
!d Q
TP0"P
1
#
S =
!d Q
TP0"P
1
#
エントロピーの微分形 は、(状態 P1 と P2 が近接)
と表す。 これで、懸案の温度に対応する状態変数が見つかった。
さて、エントロピーはどんなものかを調べていこう。
エントロピー
dS =
!d Q
T
dS
まず、エントロピーを求める場合に、可逆的な過程を調べたが、可逆的でない場合はどうだろうか?
p
V
A
BC
C0
AからBへ変化するCは、一般の過程で、BからAは、不可逆過程で戻すとする。 クラウジウスの不等式より、
2項目は、エントロピーで書けて
また微小変化の場合は
と書いても良い。
エントロピー
dS !
"d Q
Te
p
V
A
BC
C0
!d Q
TeC" +
!d Q
TC0
" # 0
S
A!S
B"
#d Q
TeC$
右辺は熱源から出て行くエントロピーだが、系のエントロピーの増分は、それよりも大きい。つまり、エントロピーが増加している。
ここで得られた表式を使って、 熱力学の第1法則は、
と書き換えられる。
再び断熱変化 一般の変化の場合、
だったが、断熱変化であれば、 だったから、
となる。 つまり、断熱変化ならエントロピーは減らない。そこに不可逆変化が含まれていれば、増える。
エントロピー
dU = TdS ! pdV
dS !
"d Q
Te
!d Q = 0
dS ! 0
例1.理想気体の自由膨張
断熱容器 左のみ理想気体右半分は真空 仕切り板あり
途中経過は?しかし、最初と最後は熱平衡→エントロピーは決まる 温度は不変。(ジュールの実験)
準静的な過程として、等温膨張を考えてみよう。
理想気体は等温過程で
不可逆過程によるエントロピー増
dU = TdS ! pdV
dU = 0
p,V,T
p/2,2V,T
したがって、
積分する事により、
と求まる。
これで分かるように、断熱変化で外部から熱の流入がないのに、エントロピーは増えている。 →エントロピーは内部で作られている?
不可逆過程によるエントロピー増:理想気体の自由膨張
dS =
p
TdV =
nR
VdV
p,V,T
p/2,2V,T
!S = dS
i
f
" =nR
VdV
V
2V
" = nR log 2
エントロピーの増大=気体の拡散が不可逆
例2.熱伝導
外部から熱が入らないようにしておき、 左:高温( TH ) 右:低温( TL )中央に断熱壁を入れておく。温度変化に伴う体積は変化しないとしておく。
断熱壁を取り除き、温度は、T’に変化した。
不可逆過程によるエントロピー増
TH , SH
断熱壁
TL , SL
T’ , SHT’ , SL
この場合のエントロピー変化を計算する。
計算のためには、準静的な過程が必要である。
高温の物体に、(無限小に)温度の低い熱源を接触させる。
↑体積が変化しないから
不可逆過程によるエントロピー増:熱伝導
TH , SH
断熱壁
TL , SL
T’ , S’HT’ , S’L
dU = !d Q
dU = CdT
!SH"S
H=
!d Q
Ti
f
# =dU
Ti
f
#
!!!!!!!!!!!=CdT
TTH
!T
# = C log!T
TH
左は最初高温だったから、 よって、
高温側は、エントロピーが減少した。
T
H> !T
!SH< S
H
同様に右側についても
低温側は、エントロピーは増えている。
正味の増分は、
全体での増減を調べるには、この正負を調べる必要がある。
不可逆過程によるエントロピー増:熱伝導
TH , SH
断熱壁
TL , SL
T’ , S’HT’ , S’L
!SL"S
L= C log
!T
TL
!S = "SL#S
L+ "S
H#S
H
!!!!!= C log"T2
THT
L
全体が断熱されているから、低温と高温の熱源の間で移動した熱量は、絶対値が同じで符号が逆。
不可逆過程によるエントロピー増:熱伝導
TH , SH
断熱壁
TL , SL
T’ , S’HT’ , S’L
C(TH! "T ) = C( "T ! T
L)
# "T =T
H+ T
L
2
!T2 " T
HT
L=
TH+ T
L
2
#
$%
&
'(
2
" THT
L
=T
H" T
L
2
#
$%
&
'(
2
> 0 全体としては、エントロピーは増えている。
よって、
であり、熱伝導は不可逆過程である。
しかし、断熱材で外部からの熱の出入りはない。
=外部からのエントロピーは入ってきていない。
不可逆過程によるエントロピー増:熱伝導
TH , SH
断熱壁
TL , SL
T’ , SHT’ , SL
!S > 0
!d Q = 0
⇒ 熱の移動によって、内部エネルギーの均一化が起こり、(内部で)エントロピーが発生した。
例3.混合のエントロピー 2種類の気体の混合 今までの例と同様 気体の混合 =不可逆 エントロピーの増加
まず、「混合気体のエントロピーは、各気体成分がその体積を占めた時のエントロピーの和に等しい」ことを先に示す。
不可逆過程によるエントロピー増:混合のエントロピーV1 , S1
壁
V2 , S2
Sa
Sb
V
「混合気体のエントロピーは、各気体成分がその体積を占めた時のエントロピーの和に等しい」事を示す。
下図:混合状態から、下のような仕組みで、気体分子を分離する。(特定の分子だけを通す半透膜)
不可逆過程によるエントロピー増:混合のエントロピー
Sb
Sc
Sd
+
この時、準静的に右の箱を引っ張る。これは断熱的に行なえる。 →エントロピーは変わらない。(分子をよこにずらしただけ)よって、Sc と Sd の和が、混合のエントロピーとなる。
あとは、 Sc と Sd を求めれば良いが
不可逆過程によるエントロピー増:混合のエントロピー
!S = Sb"S
a
Sb= S
c+S
d
Sa= S
1+S
2
!"S = (S
c#S
1) + (S
d#S
2)
第1項は、丸い分子が自由膨張した、第2項は、四角い分子が自由膨張した、ことと等しい。
よって、
ただし、丸い分子の分子数を n1 等とした。 また、 より、ΔS>0であることも解る。 つまり、気体分子の混合も不可逆過程である。 これを混合のエントロピーという。 混合のエントロピーは、圧力や温度に依存しない。
不可逆過程によるエントロピー増:混合のエントロピー
!"S = (S
c#S
1) + (S
d#S
2)
!"S = n1R log
V
V1
+n2R log
V
V2
!V >V
1!,!!V >V
2!
例で見たように、 エントロピーは状態量で、示量性を有し、 物質の変化の不可逆的変化の向きを示すのに適している。 特に、
分子が空間中に一様に分布する異なる分子が混じる温度が均一になる
など、物質(や温度)が乱雑に混じり合い、均一になる
ようにに変わるとエントロピーは増大する。
反対に言えば、エントロピーは、一様さ、あるいは乱雑さを表わす指標である。
エントロピーの性質
一方、準静的な断熱変化では
つまり、エントロピーは変わらない。
等温変化(準静的)では
だけ、エントロピーは変化する。
カルノーサイクルで出てきたクラウジウスの関係
とは、エントロピーの収支を合わしている関係だと言える。(熱の出入りは、等温過程だけで見られる)
エントロピー
dS =
!d Q
T
dS = 0
Q2
T2
+Q
1
T1
= 0
つまりT1の高温熱源からQ1の熱を得たときに、
だけのエントロピーが一緒に理想気体に入る。 カルノーサイクルはサイクルだから 系がもとに戻らないといけない。 ⇒エントロピーももとに戻る必要あり同じ大きさのエントロピー
を低温熱源へ放出しなければならない。 T2は低温なので、Q2はQ1より小さくて済む。
その様子をあらわしたのがクラウジウスの関係と言える
エントロピー
Q1
T1
Q2
T2
T1
T2
Q1
T1
Q2
T2
状態量が、p , V , S, T の4つがこれで使えるようになった。エンタルピーのところでも行ったように、状況に応じて便利な関数を考えてみよう。
まず、それに先立って変数を変えるという作業を考えてみる。
ルジャンドル変換 独立変数を と書き、それを使った関数
があって、全微分が
のように書けるとする。これは、たとえば である。
ルジャンドル変換
! = !(x,y,z,L) x,y,z,L
d! = Xdx +Ydy + Zdz +L
!"
!x= X
ここで、
のような新しい関数を考えると、その全微分が
となる。⇒ x と X が取り替えられている。
これをルジャンドル変換という。
ルジャンドル変換
! = "(x,y,z,L) # xX
d! = d "(x,y,z,L) # xX{ }= (Xdx +Ydy + Zdz +L) # xdX # Xdx
= #xdX +Ydy + Zdz +L
熱力学の第1法則
このとき、内部エネルギーは、 ( S ,V )を独立変数としている、という。これを、 ( S ,p ) としたのが、エンタルピーであった。つまり U の代わりに、
を新しく定義すると、
たしかに、 ( S ,p ) を独立変数としていることが確かめられた。これがエンタルピー であった。
熱力学関数
dU = TdS ! pdV
H =U + pV
dH = Tds ! pdV + pdV +Vdp
= Tds +Vdp
H = H (S, p)
同様にして、次の関数Fを定義する。
これをヘルムホルツの自由エネルギーという。微分形は、
また、
これをギブスの自由エネルギーという。微分形は、
となる。
熱力学関数
F (T ,V ) !U " TS
G(T , p) =U ! TS + pV
dF = dU ! TdS !SdT
= !SdT ! pdV
dG = dU ! TdS !SdT +Vdp + pdV
= !SdT +Vdp
U , H , F, G は状態量であるが、特に熱力学関数という。
一般に、 x , y を独立変数とする熱力学関数Φを用いると、 x , y が一定である条件では、Φ=0が熱平衡の状態として得られる。(熱平衡→熱力学関数の極値)
断熱変化(孤立系)
だから、⇒孤立系に起こる変化においては、エントロピーは減少する事はない。 孤立系では、Sが一旦最大になると、それ以上の変化はしない。(熱平衡)=孤立系においては、エントロピー最大が熱平衡状態を表す。
熱力学関数
!d Q = 0
!d Q " TedS
dS ! 0
等温変化 ヘルムホルツの自由エネルギーを考えると、
等温変化は、系の温度 T が、熱源の温度 Te と等しくなるから、
となる。したがって、
これは、pdV (系が外にする仕事)が、- dF (系のヘルムホルツの自由エネルギーの減り分)よりも小さい事と等しい。=等温変化で外部に取り出せる仕事は、ヘルムホルツの自由エネルギーの変化分を超えない。
熱力学関数
Te= T !,!dV = 0
dF ! T edS " pdV " TdS "SdT
= (T e" T )dS "SdT " pdV
dF ! "pdV!!#!!"dF $ pdV
F をヘルムホルツの自由エネルギーと呼ぶのは、等温の状態で、取り出せる仕事(自由な形で利用できるエネルギー)のことを指すためである。
F が極小になってしまうと、等温変化によってはそれ以上仕事を外部に取り出せない。
等温等積変化 さらに、 が付け加わる。 そうすると、
これは、ヘルムホルツの自由エネルギーが極小になったところで、平衡に達して、変化が止まることを示している。
熱力学関数
dV = 0
dF ! 0