松岡修造と学ぶ『誰のためのデザイン? 増補・改訂版』
『誰のためのデザイン? 増補・改訂版』
主旨!・書籍内に用いられている図の紹介が中心です・各章についてもちょろっとまとめます(申し訳程度・自分が理解する用に作ったので読みやすさには個人差があります・修造成分あまり関係ありません( モチベーションの維持)
第 1 章毎日使う道具の精神病理学
アフォーダンスとシグニファイア
アフォーダンスは、主体(人間、動物、機械)が何かとどうインタラクションできるかについての、実世界の中での
可能性を示す。
アフォーダンスのうちのあるものは知覚可能であり、あるものは見えない。
シグニファイアはシグナルである。シグニファイアは、たとえばドアに書かれた「押す」「引く」「出口」などのように、
実世界に置かれたサイン、ラベル、絵などであったり、何をすべきか、あるいはどの方向に動けばよいのかの矢印や
線図、その他の指示表示であったりする。
シグニファイアのあるものは、ドアの取っ手やスイッチの物理的構造のように、単に知覚されたアフォーダンスであ
る。
1-1
知覚される
1. 真のアフォーダンスのいくつかは知覚される
2. すべての知覚されたアフォーダンスはシグニファイアである
3. シグニファイアのいくつかは知覚されたアフォーダンスである
4. シグニファイアのいくつかは真のアフォーダンスである
5. 真のアフォーダンスのいくつかは知覚されないものがある
シグニファイア
知覚されたアフォーダンス
真のアフォーダンス
知覚されない
概念モデル
デザイナーの持つ概念モデルは製品に対するデザイナーの概念であり、三角形の一つの頂点を占めている。製品その
ものは、たとえばユーザーの台所のテーブルなどに置かれていて、もはやデザイナーからは離れているので、分離さ
れて二つ目の頂点にある。
システムイメージは、構築された物理的構造(文書、説明書、シグニファイア、ウェブサイトやヘルプにある情報な
どを含む)から知覚されうるものである。
ユーザーの持つ概念モデルは、製品とインタラクションしたり、オンライン情報を検索したり、読んだりするなどを
通して得られるシステムイメージから、そして提供されたマニュアルからもたらされる。
デザイナーはユーザーの持つモデルはデザイナーの持つモデルと同一であると期待しているのだが、ユーザーとは直
接コミュニケーションできないので、そのコミュニケーションは全面的にシステムイメージに負うことになるのであ
る。
1-2
A
A'
B
デザイン インタラクション
デザイナーの持つ概念モデル ユーザーの持つメンタルモデル
システムイメージ
デザイナーの持つ概念モデル
デザイナーが持つ、製品の見かけ、感じ、操作についての概念
システムイメージ
構築された物理的な構造(文書を含む)から知覚されうるもの
ユーザーの持つメンタルモデル
製品やシステムイメージとのインタラクションによって形作られる
デザイナーはユーザーの持つモデルが自分たちの持つモデルと同一であって欲しいと思っているが、デザイナーはユーザーと直接話をすることはできないので、コミュニケーションの責任はシステムイメージにかかっている。
第 2 章日常場面における行為の心理学
ものごとがうまくいっていないことを
人はどう知るのか。それに対して何を
すべきかは、どうしたら分かるのか
実行と評価におけるへだたり
人は道具や製品に出会うと、二つのへだたりに直面する。どのように動かせばよいのかを理解しようとする実行にお
けるへだたりと、どのような状態になっているのか、自分の行為でゴールが達成できるのかを理解しようとする評価
におけるへだたりである。
2-1
ゴール
外界
評価におけるへだたり
何が起こったのか?
これは私が望んでいたことか?
実行におけるへだたり
それをどうやって動かすのか?
何ができるか?
ちょっとわかりづらい
評価
実行
実行におけるへだたり
どうすればゴールに到達できるのか?
評価におけるへだたり
実行に対してのフィードバックが不明瞭
実行におけるへだたりにはシグニファイア、制約、対応づけ、概念モデルを利用することで小さくできる。
評価におけるへだたりにはフィードバックと概念モデルを利用することで小さくできる。
ゴール 外界
行為の七段階理論
特定の行動が、我々が実行したいこと(我々のゴール)と、それらのゴールを達成するためのすべての実行可能な物
理的な行為との間に橋渡しをする。どの行為を行うかを詳細化した後、我々は実際にそれを行う必要がある。
つまり、実行の段階である。ゴールに続いて実行には三つの段階がある。プラン、詳細化、実行である。
何が起こったのかを評価するのにも三段階ある。最初に、外界で何が起こったのかを知覚し、次に、その意味を理解
しようとし(解釈し)、最後に、起こったことと、こうあって欲しかったこととを比較する。
2-2
プラン
比較
詳細化
解釈
実行
知覚
ゴール
たいていの活動は一つの行為で完成するようなものでもない。全部を完了するには何時間、何日もかかるかもしれない。
多くの複数のフィードバックループが存在していて、ある活動の結果がそれに引き続く活動を呼び起こし、ゴールは副次
的なゴールを、プランは副次的なプランを生み出していく。
評価
実行
外界外界
三つの処理レベル ―― 本能レベル、行動レベル、内省レベル
本能レベル:すばやく、完全に潜在意識的なもの。現在の状態に対してのみ反応する。音や見た目、手触りや香りな
どの外観が本能的な反応を動かす。製品が使いやすく、効果的で、理解しやすいかどうかとは何の関係もない。
行動レベル:行動的な状態は学習されるものである。結果についてよく分かっていたり知っていたりするときは、行
動的な状態が制御感を高める。計画した通りにならないときには欲求不満や怒りが怒る(これに対してフィードバッ
クは安心感を与える)。
内省レベル:内省は認知的で、深く、ゆっくりしている。たいていものごとが起こった後に行われ、それらに対しる
熟考や振り返りであり、状況と行為と結果を評価し、そして非難や責任も考える。
2-3
プラン
比較
詳細化
解釈
実行
本能的行動的内省的
知覚
ゴール 外界
本能的な反応は最も低次にある。単純な筋肉の制御や外界や身体の知覚などである。行動レベルは期待に関わり、行為系
列に対する期待やフィードバックの解釈によく反応する。内省レベルはゴールやプランの設定活動の一部であり、期待と
実際に起こったことの比較結果に左右される。
評価
実行
デザインを支援する行為の七段階理論
1 何を達成したいか?
2 代替となる行為系列は何か?
3 今どの行為ができるか?
4 それをどうやってやるのか?
5 何が起こったのか?
6 それは何を意味するのか?
7 それで良いか?私はゴールを達成したのか?
製品を利用する人が、いつでも七つの質問への答えを出せるようになっていなければならない。デザイナーは、質問
に答えるための情報をその製品が各段階で確実に提供するようにする責任を負っているのである。
2-4
何が起こったのか?
それをどうやってやるのか?
それは何を意味するのか?
何ができるか?
それで良いか?
代替となる行為は何か?
何を達成したいか?
フィードバックとフィードフォワードはどちらも、システムを利用している人が容易に解釈できるかたちで提示する必要
がある。その提示の仕方は、達成しようとしているゴールと期待について、その人がどう見ているのかに合ったものでな
ければならない。情報は人間のニーズに一致していなければならない。
フィードバック
フィードフォワード
外界
行為の七段階理論から得られる洞察によって、デザインの七つの基礎的な原理が導かれる
1 発見可能性:どのような行為が行えるのか、機器の今の状態はどうなっているのかが判断できる。
2 フィードバック:行為の結果と製品やサービスの現在の状態についての完全かつ継続的な情報がある。
行為が実行された後、新しい状態がどうなったかが分かりやすい。
3 概念モデル:デザインは理解と制御感につながるように、システムの良い概念モデルを作るのに必要なすべての
情報を伝える。概念モデルは、発見可能性と評価の両方を向上させる。
4 アフォーダンス:望ましい行為を可能にするために適切なアフォーダンスがある。
5 シグニファイア:効果的にシグニファイアを利用することによって、発見可能性を確かなものにし、
フィードバックが理解可能なかたちで伝えられる。
6 対応づけ:制御部と行為の間の関係は良い対応づけの原理に従う。それは、可能な限り空間的なレイアウトや
時間的な接近によって支えられる。
7 制約:物理的、論理的、意味的、文化的な制約を与える。これによって行為を導き、解釈のしやすさを助ける。
2-5
第 3 章頭の中の知識と外界にある知識
なぜ私たちは知識が不正確なのに
正確な行動ができるのか?
知識が不正確であっても正確な行動ができるのは、次の四つの理由からであると考えられる
1 知識は頭の中と外界にある:厳密には知識とは頭の中にだけある。だが外界の構造が解釈され理解されると知識
と見なされる。人が何か為すための知識の多くは、外界の情報から導き出される。行動は頭の中の知識と外界にある
知識との組合せから決定される。
2 高い正確性は必要ではない:知識の正確さ、精度、完全さはほとんど必要がない。頭の中と外界との一体となっ
た知識が、適切なものとそれ以外のすべてのものを区別するに充分であれば、行動は完璧となる。
3 外界に存在する自然な制約がある:外界には可能な行動を制限する多くの自然で物理的な制約がある。それぞれ
のモノが持つ物理的な特徴が他の事物との関係や、それに対しての操作などを制限している。
4 文化的な制約や慣習的な規則についての知識は頭の中にある:文化的な制約や慣習的な規則は学習された、行動
に関する人工的な制約である。たくさんの行為の候補を一つ、二つにまで減らしてくれる。
3-1
外界にある知識
情報は知覚される限り、容易に利用できる
解釈することが学習の代わりとなる。外界にある知識を
どのくらい容易に解釈できるかは、デザイナーのスキル
に依存する
知識を見つけたり、解釈する必要があったりすると
遅くなる
最初に出会ったときの使いやすさは高い
多くの知識を維持する必要がある場合、見た目が悪く、
優雅でなくなる可能性がある。これは混乱につながるこ
とがある。グラフィックデザイナーやインダストリアル
デザイナーのスキルが主要な役割を果たす
作業記憶にある項目は容易に利用できる。
そうでないときには、かなりの検索と努力が必要となる
学習が必要で、相当の努力を要することもある。対象に
意味や構造があれば、あるいは、良い概念モデルがあれ
ば、学習はかなり容易になる
とくに、非常に良く学んで自動化された場合は、
かなり効率的になりうる
最初に出会ったときの使いやすさは低い
目に見えなくてもよいので、デザイナーの自由度がより
高い。これは、より整然としてより楽しめる外観につな
がる。ただし、最初に出会ったときの使いやすさが損な
われ、また学習や記憶が必要だという犠牲を払う
頭の中にある知識
第 4 章何をするかを知る
我々はこれまで見たことがないものの
扱い方をどうやって判断するのだろうか
制約を考えてデザインに利用すれば、初めて使う場面でも適切な行為へと誘導できる
1 物理的な制約:例)雑にタップしても押せる大きさのボタン / 凹みや持ち手
2 文化的な制約:例)危険・否定を赤い色で表す / 日本における初心者マークの使い方
3 意味的な制約:例)人間の目の向きに合わせた情報の配置
4 論理的な制約:例)エレベーターのボタンの並び
4-1
第 5 章ヒューマンエラー?いや、デザインが悪い
なぜエラーが起こるのか?
デザイナーは物理的な限界については理解しているが、心理的な限界については大きく誤解している。
我々はすべての不具合を同じように扱わなくてはならない。すなわち、根本的な原因を見つけて、問題を
再び起こさないようにシステムをデザインし直さなければならない。
人に何時間もずっと注意を怠らず、油断しないように要求したり、我々がほとんど使わない、
ときには人生で一度きりしか使わないような古めかしく分かりにくい手順も覚えなければならないように
機器をデザインしている。
何時間も退屈な環境に置き続けたあげくに、突如として迅速に正確に応答しなければならないようにしている。
あるいは、同時にいくつものタスクをしながら絶えず割込みが入る。複雑で高負荷の環境に置いている。
そうしておいて、なぜ失敗したんだと驚くのである。
エラーの分類
エラーには二つの主な形態がある。
スリップは、ゴールは正しいが実行が間違っているときに起こる。
ミステークはゴールかプランが間違っているときに起こる。
スリップとミステークはそれぞれの背後にある、より基本的な原因にもとづいてさらに分割できる。
記憶ラプス(物忘れ)からスリップやミステークが引き起こされるが、それは記憶の間違いが認知の最も高次のレベ
ルで起こるか(ミステーク)、低次のレベルで起こるか(スリップ)による。
5-1
スリップ
ミステーク
行為ベース
ルールベース
記憶ラプス
知識ベース
記憶ラプス
エラー
プラン
記憶ラプス 記憶ラプス
記憶ラプス
記憶ラプス記憶ラプス
記憶ラプス
比較
詳細化
解釈
実行
スリップミステーク
知覚
ゴール 外界
初心者はスリップよりもミステークを犯しやすく、熟練者はスリップを犯しやすい。ミステークは、システムの現在の状
態についての曖昧または不明な情報、良い概念モデルの欠如、不適切な手順などから生じることが多い。
評価
実行
スリップの分類
日常起こる大抵のエラーはスリップであり、特性としては初心者よりも熟練者に多く起こる。また記憶ラプスの原因
は割込みであり、ステップ数の減少やリマインダーなどによって少しは対処することが可能である。
行為ベースのスリップ・iPhone を改札に押し当てる
・チャットで改行しようとして投稿する
・純正のマップアプリでダブルタップ + ドラッグをする
記憶ラプスのスリップ・郵便局に行く途中にコンビニに寄り、そのまま戻ってきてしまう
・打ち合わせが終わった後、書類は持ってきたが Mac を会議室に忘れる
・Google を開いたが検索窓に入れるキーワードが思い出せない
ミステークの分類
ミステークとは、良くない選択をしてしまったり、現在の状況を間違って捉えてしまったり、関連する要因をみんな
考慮に入れることができなかったような場合である。
ルールベースのミステーク・間違った薬を患者に投与してしまう
・本番サーバのデータを消してしまう
知識ベースのミステーク・慣れていない機械の使用中に操作ミスを起こす
記憶ラプスのミステーク・メールを間違えて送信しそうなことに気付いたが、直後に同僚に話しかけられ、
席に戻った瞬間にメールを送信してしまう
リーズンによる事故のスイスチーズモデル
エラーに備えたデザインを考える
エラーの原因を理解し、その原因が最も小さくなるようにデザインする意味的妥当性チェックを行う。その行為は「常識」テストをパスするか?行為を元に戻すことができるようにする生じたエラーを発見しやすくする。また、それを訂正しやすくしておくどのような行為もエラーとして扱わない。むしろ、人が正しく行為を完了できるように助ける行おうとする行為に対してフィードフォワードを提供する行われた行為に対してフィードバックを提供する確認メッセージを出す制約を加える
5-2
第 6 章デザイン思考
まとめるの力尽きた
ここから先は6 章のいい言葉です
コンサルティングするときの私のルールの一つは単純だ。解決するように求められている問題を決して解決しないことだ。なぜ、このように直観に反するルールなのか。それは、解決を求められる問題は常に、実際の問題でも基本的問題でも根源的問題でもないからだ。それは通常、症状なのだ。
技術者とビジネスの人々は問題を解決するよう訓練を受けている。デザイナーは本当の問題を発見するよう訓練を受けている。間違った問題への見事な解決は、まったく解決がないよりもたちが悪いものになりかねない。正しい問題を解こう。
良いデザイナーは、与えられた課題を解こうとすることからは始めない。本当の課題は何かを理解しようとすることがから始める。結果的に解決に集中するのではなく、発散し、人々について学び、成し遂げようとするものを調べ、アイデアを次から次へと生み出す。
デザインの最も難しい部分は、要求を正しいものにすることである。すなわち、解こうとする問題が正しいこと、そして解決策が適切であることを確実にする、という意味だ。理屈で作られた要求は常に間違っているし、必要な物を人に聞いて作った要求も常に間違っている。要求は人が自然な環境にいるところを観察することで作られていくのである。
この全く異なる、異質の人々すべてに適用できるようにするには、どうすればよいのか。答えは、個別の人に対してではなく、活動に集中することだ。私はこれを活動中心デザインと呼ぶ。製品とその構造を活動で定義しよう。製品の概念モデルを、活動の概念モデルを中心として構築しよう。
製品開発のプロセスが開始される日にしてすでに、スケジュールは遅れ、予算は超過している。
デザインは複雑な活動である。この複雑なプロセスをまとめる唯一の方法は、すべての関係者がチームとして一緒に働くことである。それは、エンジニアリングに対抗するデザインでも、マーケティングに対抗するデザインでも、製造に抵抗するデザインでもない。それは他の役割のすべての人と共に働くデザインである。デザインは、販売とマーケティング、サービスとヘルプデスク、エンジニアリングと製造、コストとスケジュールを考慮しなければならない。だからこそ、挑戦のしがいがあるのだ。だからこそ、成功する製品を生み出そうと一体となったとき、大変楽しく、報われるのである。