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Page 1: 天体物理学 I : 授業の内容

天体物理学 I : 授業の内容天文学は天体からの光を研究する学問です。

そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。

授業計画は、

A.水素原子  B.エネルギー準位  C.熱平衡  D.線吸収  E.連続吸収  

F.光のインテンシティ G.黒体輻射 H.等級  I.色等級図  

J.光の伝達式 I  K.光の伝達式 II L.星のスペクトル

という順で進めます。

最後まで行くと、星のスペクトルがどんな仕組みで決まっているかが判る、

というのが目標です。

AからEまでは光の吸収に関係する物理の話です。Fでは光の強さをきちん

と定義します。GからIは光の強さを天文学でどう使うかを示します。JからLは

光がガス中を伝わる様子を式に表わし、その式を解いて星のスペクトルを導き

ます。それでは、始めましょう。

Page 2: 天体物理学 I : 授業の内容

L 星のスペクトル今回の内容(L.1) 恒星大気の復習: エディントン大気  ソースファンクション S( τ )が S( τ ) = aτ+b  の時の大気を調べます。(L.2) 黒体輻射スペクトルからのずれ  吸収係数が波長によって変化することの影響を調べます。   (L.3) 恒星スペクトルのモデル  以前に求めた吸収係数を使い、星のスペクトルを計算します。  (L.4) 線形大気での吸収線形成  吸収線が形成されるメカニズムを調べます。(L.5) 等値巾 W ( Equivalent Width )  吸収線の強度を表現する量をどう作るかを調べます。(L.6) 成長曲線 (Curve of Growth)    スペクトル解析で重要な手法の基礎です。(L.7) スペクトル分類   標準的なスペクトル分類の解説です。(L.8) 連続吸収とバルマージャンプ    バルマージャンプの大きさとスペクトル型の関係です。(L.9) 連続吸収とバルマージャンプ    バルマージャンプの大きさとスペクトル型の関係です。

2

Page 3: 天体物理学 I : 授業の内容

J ( x,λ )= (1/4π)∫I (μ, x, λ) dΩ

  = (1/2)∫I (μ, x, λ) dμ

      =平均輻射強度

Ω

θX

星の大気の表面からの深さを x とし、真上方向からの角度を θ とします。

輻射強度  I(x,θ, λ ) が軸対称の時、 μ = cosθ とおいて3つの量 J,H,K を次のように定義します。

H ( x,λ )= (1/4π)∫cosθI(θ,x,λ) dΩ

= (1/2)∫μI(μ, x,λ) dμ

=∫ cosθ I (θ,x,λ) dΩ = 4πH ( x, λ)       

フラックス F ( n, x ,λ)

L.1. 恒星大気の復習: エディントン大気

K( x,λ ) =(1/4π)∫ (cosθ)2 I ( cosθ, x,λ) dΩ

  = (1/2)∫μ2 I (μ, x,λ) dμ

Page 4: 天体物理学 I : 授業の内容

× ∫μdΩ/4π  : 

,,

Hd

dK

という仮定を導入します。これをエディントン近似と呼びます。この近似は等方的な輻射 I(x、 θ )=I(x)の時には厳密に成立します。ですから、大気の深い所での(星の内部では輻射はほぼ等方的ですから)性質を浅い所でも成り立つと考えていることになります。   

上の式は未知数が J,  H, K の3つあるのに式の数が2つなのでもう一つ式がないと解けません。そのため

),(3

1),( JK

恒星大気中を角度 θ で進む光線に対する輻射の方程式は、   

,,,,,

cos SId

dI

と書かれます。

,,,

SJd

dH× ∫μdΩ/4π  :

この方程式に以下のような立体角の重み付き平均操作を施すと前ページで定義した J(x,λ) , H(x,λ) , K(x,λ) に対する式が二つ出来ます。  

Page 5: 天体物理学 I : 授業の内容

kR ( x,λ ) = Rosseland mean opacity

,,,

SJd

dH

,,

Hd

dK

),(3

1),( JK

こうして下の3つの式まで来ましたが、まだ波長 λ が邪魔です。

そのためには、上式を下のように波長積分した J(x), H(x), K(x) に対する式に変える必要があります。  

   J(x)=∫J(x、 λ )d λ 、H(x)=∫H(x、 λ )d λ 、 K(x)=∫K(x、 λ )d λ

ただ、一つ注意する点があります。それは上の積分は同じxの点で行われていることです。 τλ =一定で積分してはいけないのです。そのため、くどいのですが一度 τ からxに戻ります。

(1)(2)(3)

Page 6: 天体物理学 I : 授業の内容

x に戻ると、

,,

,xxJk

dx

xdH

,

,xHk

dx

xdK

(4)(5)

),(3

1),( xJxK (

6)

次に(5)をそのまま波長で積分すると、右辺が∫ kλH(x, λ) dλ となるのですが、この先の変形の展望がありません。そこで、(5)式を

(4)を波長で積分すると、

dxxJkdx

dxHd ,,

,

)(),( xAdxA

dx

xdH

),(),(),( xxJkxA は λ での光の吸収と放射の差、A(x)は点xでの光全体の吸収と放射の差です。

(7)

Page 7: 天体物理学 I : 授業の内容

,,1

xHdx

xdK

k (

8)として、積分するのですが、ここで幾つかの仮定を導入します。

仮定 (A)    K(x, λ) = (1/3) ・ J(x, λ) エディントン近似

    (B)   J(x, λ) = B [T(x), λ]   LTE(局所熱平衡 )

すると、(8)式の左辺は次のように変形されていきます。  

dx

dT

dT

TdB

kdx

xTdB

kdx

xdK

k

,

3

1),(

3

1,1

ここまで下処理をしてから(8)式を λ で積分します。左辺は

(9)

ddT

TdB

kdx

dTd

dx

xdK

k ,1

3

1,1

ロスランド平均吸収係数  kR  は次の式で定義されます。

ddTTdB

ddTTdB

k

kR

,

,1

1  (10)

Page 8: 天体物理学 I : 授業の内容

(14)

)(3

1)( xJxK

こうして得られた(7)、(13)、(14)が波長で積分した J(x), H(x), K(x) に対する式です。ここでもう一度まとめて書くと、

)(3

1)( xJxK )(

)(xH

d

xdK

R

)(xA

dx

xdH

(11)

RRR

R

d

xKd

dx

dxTBd

kd

dT

TdB

dx

dT

k

dxHddT

TdB

dx

dT

k

)(,1

3

1,1

3

1

,,1

3

1

(12)

すると(8)式は

ここでロスランド平均光学的深さ  τ R は d τ R= k Rdx で定義されます。    

左辺を変形し

これで(4)、(5)式は片付きました。最後の(6)式は λ で積分すると、

)()(

xHd

xdK

R

(13)

結局

(15)

Page 9: 天体物理学 I : 授業の内容

(16)

ロスランド平均線形大気前ページの最後にまとめた3式を星の大気に応用しましょう。

核融合反応は起きていないので、ネットの吸収は起きません。従ってA(x)=0です。 したがって、(7)式から、

HoxH

xAdx

xdH

)(

0)(

CHoK

HoHd

dK

RR

RR

R

)(

)()(

(13)式は、

(17)Cは積分定数で大気表面 τ R=0での条件から値を決めます。

CHoKBJS RRRRR 33)(3)()()(

この式は良く見ると、源泉関数S( τ R)が τ Rの一次関数の形をしています。ですから、以前にやった線形大気の結果が使えます。もう忘れているでしょうから簡単にその結果をまとめておきましょう。

(18)ここで、前にも使ったLTE(局所熱平衡)の仮定に再登場してもらうと、

Page 10: 天体物理学 I : 授業の内容

I(τ=0 , μ>0) = (1/μ)∫∞0 S(t) exp( - t/μ) dt = a+ bμ = S (τ=μ)   

  

I(τ=0 , μ<0) = 0

線形大気  S(τ)= a + bτ の表面輻射強度 I( τ=0 , θ )とフラックスF( τ=0)

θ

τ =1

τ = μ =cos θ

τ =0

 F=∫ μI (μ,τ=0) dΩ = 2π∫ 10μ ・ ( a+ bμ) dμ= 2

π(a/2 + b/3)

もう少し変形して、 F= π[a + b・ (2/3) ] =π・ S

(τ=2/3 )  

有効温度Teは  σ ・Te4=F で定義されます。

B(T)=( σ/π )T4 を使うと、B(Te)=F /π =S( τ=2/3 ) です。

I

(μ,τ=0)

Page 11: 天体物理学 I : 授業の内容

2頁前に戻り、定数 C を決定しましょう。ここまでで判ったのは、

     H=Ho 

     S( τ R)=3Ho τ R+3C 

の二つです。この二つはCが何でも、(15)の3式を満たす事は明らかです。Cを決めるには星の表面、 τ =0 を見る必要があります。

ところが、星の表面近くでは上の層つまり宇宙空間からの輻射はゼロなので、表面近くの輻射強度そのもの、勾配でなく、が表面フラックスを決めるのです。したがって、Cが大き過ぎると、S( τ R)が与えるFが大きくなりすぎるし、Cが小さ過ぎるとFより小さくなってしまいます。ちょうどFになるCを決める必要があるのです。

星の表面からは、内部から運ばれてきたフラックス F = 4 πHo が外に放射されなければなりません。星の内部ではそれは大気の温度勾配を表わす

     3Ho・ τ R

で保証されていました。これは、内部では内側の層が上を照らす輻射と、外側の層が下を照らす輻射の差し引き、つまり黒体輻射強度の勾配がフラックスをきめているからです。

Page 12: 天体物理学 I : 授業の内容

Δτ R=1

上の と下の

との差が

を産む。F

F 星の内部では

τ R=0F

星の表面では

表面の が を産む。

Page 13: 天体物理学 I : 授業の内容

では、S( τ R)=3Ho τ R+3C から決まる F が Hoから決まる F=4 πHoになるように、定数 C を決定しましょう。

 F= π・S( τ R= 2/3 ) = π ・ [ 3・Ho・(2 / 3)+3・C ] でしたから、

π ・ [ 3・Ho・(2 / 3)+3・C ]  =  4 πHo

 C=(2 /3)・Ho

 です。これが、 Fを正しく与える C なのです。この C を元の(17)式に代入すると、

         B( τ R)=S( τ R)= 3Ho・ τ R+2Ho

大気内の温度T

星の有効温度Teは F= σ T e 4 で定義されます。Teと τ Rを使って大気内部の温度 T を表わしてみましょう。 

 まず上の関係から、 ( σ/π )Te4 =4Ho です。  

 Tは、 B( τ R)=S( τ R)=( σ/π )T( τ R) 4  = 3Ho・ τ

R+2Hoから決まります。 両式から、 ( σ/π )T( τ R) 4  = 4Ho・ [ (3 /4)・ τ R+(1 / 2) ]

              T( τ R) 4  = Te4 ・[ (3 / 4)・ τ R+(1 / 2) ]

Page 14: 天体物理学 I : 授業の内容

こうして、エディントン大気内部の温度変化を有効温度Teとロスランド平均光学的深さ τ Rの関数として表わす事ができました。

下のグラフは  (T/Te) を τR の関数として表わしたものです。大気の表面温度はTeではないことに注意して下さい。

0 1/3 2/3 1 2 3

τR

To1

1 .5

表面

T/Te

Page 15: 天体物理学 I : 授業の内容

L.2 . 黒体輻射スペクトルからのずれ

エディントン大気からの総フラックスFは、F= σTe4 でした。ここに Te は、ロスランド平均光学的深さ τ R= 2/3 のところでの大気温度です。

もし、全波長で κλ = κ0 = 一定(グレイ)であったら、全波長で τλ= τ Rです。したがって τλ = 2/3 になる深さは τ Rと共通で、温度はTe です。

このようなグレイ大気からのフラックスは

       F λ = π B (Te 、 λ)   つまり温度 Te の黒体輻射スペクトルです。通常は波長毎に κλ が異なるので、 τλ = κλ ・L λ = 2/3 とな

る深さL λ が、したがって波長毎に覗き込む温度T(L λ )が異なります。このために波長毎に異なる温度の黒体フラックスが出ます。これが、星からのスペクトルが黒体輻射スペクトルと異なる原因です。

グレイ大気

ノングレイな大気

Page 16: 天体物理学 I : 授業の内容

λ

κ

τλ =0

τλ = 2/3

λ

τR = 2/3

τλ = 2/3 λ

τλ =0T1

T0

T2

λ

F λ

π B λ (Te)

λ

F λ

κλ が一定

λ

κκλ が波長で変化

Page 17: 天体物理学 I : 授業の内容

(1) 上の式を見ると、T( τλ=2/3 ) を求める必要のあることが判ります。

   エディントン大気で、温度分布は τ Rで以下のように与えられます。

       T( τ R) 4  = Te4 ・ [ (3 / 4)・ τ R+(1 / 2) ]

    kλ と kR が判っている時に、 τλ=2/3  となる深さは τ Rではいくつでしょう?

波長 λ での星表面からのフラックス F λ は、その波長での光学的深さ τλ が 2 /3の

温度 T( τλ=2/3 ) に相当する黒体輻射 のフラックスです。ですから、

F λ = π ・B λ[ T( τλ=2/3 ) ]  

です。回りくどい式ですからよく眺めて意味を理解して下さい。

Page 18: 天体物理学 I : 授業の内容

(2) T( τλ=2/3 ) を  kλ 、 kR 、Te, を使って表わして下さい。

(3) F λ  を  kλ 、 kR 、Te,  B λ (T) 、を使って表わして下さい。

Page 19: 天体物理学 I : 授業の内容

結局、F λ = π B λ ( T )  

      ただし、

λ

k λ

kR

λ

Fλ

B λ (Te)

41

12

1

k

kTT Re

上の式を見ると、

k λ =kR の時に、 T=Te となります。

k λ>kR の時は、 T < Te

k λ<kR の時は、 T > Te

になる理由は何度も書いたように、吸収が強いと表面に近く低温の部分までしか見えず、吸収が弱いと深い所まで見えて温度の高い輻射を受けるからです。

その様子は右の図を見て下さい。

Page 20: 天体物理学 I : 授業の内容

L.3.恒星スペクトルのモデルこうして、恒星のスペクトルを求める準備が整いました。

星の大気表面でのフラックスは  TBF ,

4

1

3

2

1

4m

4388.1

15

m

810191.1,

kRk

kRk

RT

T

TB

12

1TeT

m/2W/m

exp

で表されます。ここに、

第5回目の講義 E=C ont.  で k λ  の計算をしました。その時にはまだロスランド平均吸収係数 k R の話はなかったのですが、その計算を行い上式で求めたスペクトルを次に示します。

Page 21: 天体物理学 I : 授業の内容

下のグラフは、Te=10,000KのA型星の吸収係数 kλ です。 点線はロスランド平均吸収係数  kR  = 1.89 10-8 cm-1 を示しています。

次ページにはB λ (T=10,000K)のグラフがスケール不定で描かれています。

kλ = になる波長に注意して、A型星のスペクトルを描いて下さい。

Page 22: 天体物理学 I : 授業の内容
Page 23: 天体物理学 I : 授業の内容

H-の b-f と f-f 吸収のへこみこのへこみは近赤外Hバンド帯でのスペクトルのコブを産み出します。 

H- b-f 吸収のピークでは k λ が kRの2倍になるので、その付近でF λ が落ちるのです。

バルマー吸収

H-b-f  

H-f-f  

kR

Page 24: 天体物理学 I : 授業の内容

バルマー不連続(バルマージャンプ)が現れてきました。

Page 25: 天体物理学 I : 授業の内容

太陽はTe=5780Kなので、このスペクトルに近いのです。

H α線

太陽大気の吸収は主にH-が担って、Hのb-f吸収がそれを次いでいます。H-の吸収は変化が穏やかなため、生じるスペクトルは黒体輻射に近いのです。

Page 26: 天体物理学 I : 授業の内容

F型星の吸収はH-とHのb-f吸収が拮抗しています。とHのb-f吸収は変化が激しく、黒体輻射からのズレが目立ってきます。

Page 27: 天体物理学 I : 授業の内容

A型星の吸収はHのb-f 吸収が支配的で、変化が激しく、黒体輻射からのズレが大変大きいのです。

これが測光標準星として良く出てきたベガのスペクトルです。問題に出た星でもあります。合いましたか?

Page 28: 天体物理学 I : 授業の内容

高温の星ではバルマー不連続は見えません。

Page 29: 天体物理学 I : 授業の内容

L.4. 線形大気での吸収線形成吸収線形成を簡単なモデルで考えるために、次のような沢山の仮定をします。

(1) 局所平衡(LTE)

    S λ ( τ R)=B λ[T( τ R) ]           ( τ R=ロスランド光学深さ)

(2) エディントンモデル

    T( τ R)4=(3 / 4)Te4 ( τ R+2 / 3)   

(3) 線形大気

    S λ ( τ R)= Aλ+ B λ・ τλ  

生憎、(1)と(3)は厳密には両立しません。そこで、(1)を τ R=0 のまわりで一次式で展開して、近似的に(3)と考えます。

R

ToTR

ToT

RToT

RRToT

RR

Td

dBToB

Td

dBToB

To

Te

dT

dBToB

d

dT

dT

dBTBTB

R

ln8

3

ln8

3

16

3

0

3

4

0

Page 30: 天体物理学 I : 授業の内容

したがって、(3)において、

RToTTd

dBBToBA

ln8

3,

と見なせば、(3)を(1)と両立させ得るわけです。

線形大気S( τ )=A+B τ の大気表面からのフラックスは

F= π[A+B・(2 / 3) ] = π S( τ =2 / 3)です。したがって、

RRTBTBF

3

2

3

2

または、

3

2

ln8

3

3

2

R

ToTTd

dBToBbaF

この式から分かるように、F λ = α+( β/τλ )の形をしていて、 τλ が大きい所では

F λ が小さくなる。これが、吸収係数が大きい波長で吸収線が現れる原因である。

Page 31: 天体物理学 I : 授業の内容

τ R = 0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

τλ=2/3

κλ

大気表面

λ

λ L

もう少し物理的に考えると。

吸収係数が次の図のように、 λ = λ Lで盛り上がっているとします。  λ Lでは吸収が強いので、浅いところで τ L=2 / 3に達します。浅いためにそこの温度は低いのです。

浅いので温度が低く、フラックスが小さい。

深いので温度が高く、フラックスが大きい。

Page 32: 天体物理学 I : 授業の内容

吸収係数と吸収スペクトルの関係をもう少し調べてみましょう。

λ = λ Lの付近で、 κ = κ C+ κ Lとします。

1ln4

1

1ln4

1

ln4

1

ln4

1

C

L

L

R

ToT

C

L

C

L

C

R

ToTC

R

ToT

R

ToT

Td

dBToB

Td

dB

Td

dBToBF

Td

dBToBF

λ Lλ

κ( λ )

κ C

1

11

1

1

C

L

L

R

C

L

C

L

C

RR

C

LC

R

LC

RR

に注意して、前々頁のFの式を書き直すと、

Page 33: 天体物理学 I : 授業の内容

前頁の式を検討すると、まず、下から2行目に出てくる

C

R

ToTTd

dBToBFc

ln4

1

は λ L付近での連続スペクトルとなっていることがわかります。

連続スペクトルの強さは、 κ Cと κ Rの強さの比で決まります。

    κ R< κ C  Fo<Fe= π B(Te)

    κ R> κ C  Fo>Fe= π B(Te)

次に下から2行目の最後の項

は、吸収線を表しています。吸収が弱い( κ L< κ C)場合、吸収の深さが κ L

に比例することがわかります。

最後の行の

C

L

C

R

ToTA Td

dBF

ln4

L

R

ToTL

R

ToT Td

dBFo

Td

dBToBF

ln4ln4

1

Page 34: 天体物理学 I : 授業の内容

は吸収が強い場合には、大気の表面(T=To)しか見通せないことを示しています。

図示すると以下のようです。弱いライン

3

2R

C

RR

3

2

C

L

C

RR

1

3

2

0R 大気表面T=To

ライン波長で見通せる深さ

連続光波長で見通せる深さ

有効温度T=Teの深さ

Page 35: 天体物理学 I : 授業の内容

強いライン

3

2R

C

RR

3

2

L

RR

3

2

0R 大気表面(T=To)

≒ ライン波長で見通せる深さ

連続光波長で見通せる深さ

有効温度T=Teの深さ

ピュアな吸収の場合、強い吸収の極限はT=Toの大気表面からの輻射がスペクトルの底になるわけです。

Page 36: 天体物理学 I : 授業の内容

λ

Fc( λ )

F( λ

Fo( λ )

κ Lと共に深くなる

κ Lが非常に強いと吸収線の底が飽和する

吸収線の強度につれての形の変化

))

Page 37: 天体物理学 I : 授業の内容

L.5.等値巾 W ( Equivalent Width )

吸収線の近くのみを考え、連続吸収の強度 κ C=一定、吸収線では

κλ = κ C+ κ Lとします。 F λ = π B λ[T( τλ = 2/3)] ですが、

τλ =(2 / 3)の深さは連続光では τ C=( 2/3)(κC/κλ) < 2/3 に対応します。

3

2

3

2CTBTBF

展開して、

C

L

CC

Cd

dBTBF

3

2

3

2

3/2

C

L

LCC

13

2

3

2

3

2 CC

弱い吸収では κL<<κC  なので、

Page 38: 天体物理学 I : 授業の内容

線輪郭( line profile )

F λ

CC

L

C

L

CC

C

d

Bd

d

dB

BF

FFR

ln

3

2

3

21

λ

R λ

等値巾  Wλ=∫Rλdλ

λ

R λ

1

0

F λ

FC

Page 39: 天体物理学 I : 授業の内容

弱いライン:

d

d

Bdd

d

BddRW L

CCCC

L ln1

3

2ln

3

2

= 光球( τ C= 2/3 )までの原子数

f222

mc

q

cnd

cndnd LLLLLL

LLCC

L NnLn

3

2

3

2

fln 22

mc

q

cd

BdNW

CL

1

ln

3

2 00

CC

L

d

BdR

ドップラーコア:

10 Rマクスウェル速度分布: dN= (N / Vo π1/ 2 )・ exp[- (V/Vo)2]・dV

              ここに、 Vo = (2kT /μmH) 1/2  

 V ーー>  λ = λo (1+ V/c) = λo +D

ドップラーシフト分布: dN= (N /λ D π1/ 2 )・exp [- (λ- λo)2/ λ D

2 ]・dD                ここに、 λ D

= λo・ Vo /c  

Page 40: 天体物理学 I : 授業の内容

F λ /FC1

0λλo λ1

Bλ(τC= 0 ) ――――― Bλ(τC=2/3)

R (λ1) =Dとなる λ1 より内側ではR=Dで飽和します。

2

020

2

exp1

fDD

L ccm

q

Dccm

q

d

BdN

Dccm

q

d

BdN

ccm

q

d

BdND

DCLD

DCL

D

DDCL

20

2

01

20

22

01

2

0120

2

1lnfln

1f

lnexp

exp1

fln

Dccm

q

d

BdNDW

DCLD

20

2 1lnfln2

この時期はドプラーコアの吸収のみ

で、吸収量Wの増加は小さいのです。

Page 41: 天体物理学 I : 授業の内容

 ローレンツウィング (Ro>>1)

F λ /FC

1

Bλ(τC= 0 ) ――――― Bλ(τC=2/3)

λ1λo

非常に強いラインでは、ドップラーコアは完全につぶれてしまい、ウイング

部分が飽和するようになります。ウィングの形はローレンツ型。

1

fc

1

11f

c

20

2

02

0

20

2

cm

q

cm

qLL

Dccm

q

d

BdN

Dccm

q

d

BdN

ccm

q

d

BdND

CL

CL

CL

1f

1ln

1f

ln

1f

ln

2

001

20

22

01

201

20

2

Dccm

q

d

BdNDW

CL

1

f1ln

22

0

Page 42: 天体物理学 I : 授業の内容

弱いライン

L.6.成長曲線 (Curve of Growth)

D

LC

LL

CLL

DCL

D

CL

mc

q

cd

BdNX

D

X

Dd

BdN

Dmc

q

cd

BdN

D

W

mc

q

cd

BdNW

1f

ln

ln

1f

ln

fln

22

000

0

0

22

22

Page 43: 天体物理学 I : 授業の内容

ドップラーコア

ローレンツウィング

D

X

D

W

D

XD

Dccm

q

d

BdNDW

DD

DCLD

00

20

2

ln2ln2

1lnfln2

1f

22

11f

ln2

1f

ln2

220

0

00

220

20

2

cm

q

c

D

X

D

W

D

XD

Dcm

q

cd

BdND

Dccm

q

d

BdNDW

L

DDDD

CL

CL

Page 44: 天体物理学 I : 授業の内容

log ( X 0 / D ) log(π1/2 X 0 / D ) log{ 2 [ ln ( X 0 /D)] 1 /

2 }

log{ 2 (Λ/λ D ) ( X 0 /D )1/2 }

 -2 .0   -1.75

 -1 .0   -0.75 δ/λ D

 -0 .5   -1.25 0.1 0.01

  0 .0     0.25 -0.70

  0 .5 0.75 0.33 -0.45

  1 .0 1.25 0.48  -0.20

  1 .5 0.57   0.05

  2 .0 0.63   0.30

  3 .0 0.72   0.80

-0.20

  3 .5 0.75    1.05

  0.05

  4 .0     0.78     1.30

  0.30 

  5 .0    0.83    1.80

  0.80

弱ライン、ドップラーコア飽和、ウィング飽和に対するlog(W /Dλ D )の近似値

   ( δ/λ D =0.1 、 0.01  )

Page 45: 天体物理学 I : 授業の内容

-2 -1 0 1 2 3 4 5

log X0/D

0

-1

-2

1

2

Log(W/Dλ

D)

成長曲線( Λ/λ D =0.1  )

Page 46: 天体物理学 I : 授業の内容

L.7.スペクトル分類

Harvard System Pickering/Cannon

分類法 1901 Annals Harvard Obs.28,10

1912 Annals Harvard Obs.56,225

     HD(Henry Draper) カタログ 1918 Annals Harvard Obs.91

低分散対物プリズム写真乾板の眼視分類

    1)ライン強度比

    2)ラインの有無

    3)ライン強度    

   O(a-e)-B(1,2,3,5,8,9)-A(0,2,3,5)-F(0,2,5,8)-G(0,5)

-K(0,2,5)-M(a,b,c,d)

Page 47: 天体物理学 I : 授業の内容

Yerkes System Morgan/Keenan

スリット分光   λλ 3930-4860  A   115 A/mm

        スペクトルの大部分は同じタイプを示すが、あるライン

        の比が異なる。絶対等級に依存。

         d: 矮星 (dwarfs) g: 巨星 (giants) c:特に明るい星

    Harvard System  

      + 光度クラス  I ( a,ab,b)  ← c Supergiant

II Bright Giant

                 III ( a,ab,b) ←  g Giant

IV Subgiant

V ← d Dwarf

Page 48: 天体物理学 I : 授業の内容

Yerkes System でのスペクトル分類

O        4ー9、 9.5

B    0, 0.5, 1-3, 5, 7,8, 9.5

A 0, 2,3, 5, 7

F 0, 2,3, 5, 7, 8,9

G 0, 2, 5, 8

K 0, 2,3,4,5

M 0, 1, 2, 3, 3, 4, 7, 8

Page 49: 天体物理学 I : 授業の内容

O 型星特徴

中性及び電離ヘリウム線。電離ヘリウム線がなければB 型である。早期程電離ヘリウム線が強くなる。

MK 分類は

He II 4541/He I 4471 を細分類に使用。

晩期 O 型では Si IV (4089)

と CIII(4068, 4647, 4651)

4541 HeII4471 HeI

4101Hδ

4340Hγ

4686 HeII

4861Hβ

Page 50: 天体物理学 I : 授業の内容

B 型星特徴

中性ヘリウム線有り。 B2型で最強。

電離ヘリウム線無し。

水素線は晩期程強い。

4340Hγ

4861Hβ

4471 HeI4367 HeI

3970Hε

4101Hδ

Page 51: 天体物理学 I : 授業の内容

A 型星特徴

水素バルマー線が強く、 A2 で最強。

Ca II のH(3968) 、 K(3933) 線はA0 型で現れ、晩期に向かい強まる。

多数の金属線( FeI, FeII, CrI, CrII, TiI, TiII) が有り。

4861Hβ

4340Hγ

4101Hδ

3970Hε+

3968CaII H

3933 CaII K

Page 52: 天体物理学 I : 授業の内容

F 型星特徴

Ca II の KH 線が強い。

バルマー線は弱くなる。

CH の G バンドが F3 以降強くなる。

4861Hβ

4340Hγ

4101Hδ

3933 CaII K

3970Hε+3968CaII H

4300CH G

Page 53: 天体物理学 I : 授業の内容

G 型星特徴

バルマー線は金属線と同じくらいまで弱くなる。

CH ( G バンド)とCN ( 42163883) は強い。

4861Hβ

3933 CaII K 3970Hε+3968CaII H

4383FeI d

4300CH G

4340Hγ

4326 FeI

4226 CaI g

4101Hδ

Page 54: 天体物理学 I : 授業の内容

K 型星特徴

弱いバルマー線

強くて多数の金属線

非常に強い HK 線

分子バンド( G バンド)強い

TiO は K7 で見え始める

3968CaII H3933 CaII K

4300CH G4226 CaI g

4761 TiO

Page 55: 天体物理学 I : 授業の内容

M 型星特徴

λ< 4000A多数金属線

TiO 吸収帯

4422, 4584, 4626,

4761, 4954, 5167,

5448, 5497, 5759,

5810, 5847, 5862,

6158, 7054, 7589,

7672, 8433,

3933 CaII K 3968CaII H

4226 CaI TiO

4584 4761 4954

Page 56: 天体物理学 I : 授業の内容

HγHδ

CaII K

4471 He I

4686 He II

バルマージャンプ

3970Hε+

3968CaII H

NaI D

Page 57: 天体物理学 I : 授業の内容

HβHγ

Hδ3970Hε+

3968CaII H

CaII K

NaI D

Mg b

FeI E

Page 58: 天体物理学 I : 授業の内容

以下の 5 種の大気について、連続吸収の大きさを計算してみましょう。

以下の表とグラフに示すように、 T=25,000K から  10,000K では、バルマー端 λ =0.3648 μ で起きるkの変化が大きくなっていく。これは、温度が下がるため( n 2 /n 3 ) が大きくなったからです。さらに温度が下がると、 ( n 2 /n 3 ) がより大きくなりますが、低温になるとグラフに示される通りH-のb-f吸収が効いてくるので、バルマー端でのkのジャンプは目立たなくなってきます。

L . 8.連続吸収とバルマージャンプ

スペクトル型   T      Pg( erg/cm3 )    Pe( erg/cm3 )

K7  4 ,000     100,000 0.18

  G0 6 ,000 62,000        14.0

 A9        7 , 500 17,000 130  

  A0 10 ,000   1,300 420

B0.5     25000 1,900 904.7

吸収係数 k(cm-1)=k(Hb-f)+k(H -b-f)+k(H -

f-f)

   = n1σ1+ n 2 σ 2 + n 3 σ 3 +n 4 σ 4 +N - σ bfー

+NeN - α -ff

Page 59: 天体物理学 I : 授業の内容

可視域では A0 型星のカラーを0とし、他の星のカラーはそれを基準にして決めています。先に求めた Te=10000K のスペクトルを A0 型と考えて、 U-B,B-V という2つのカラーを求めてみましょう。有効波長は U,B,V で λ =0.36, 0.44, 0.55 μmとします。

      T    Fλ ( U )    Fλ ( B )    Fλ ( V ) U-B B-V

K7 4000    2.69E+06 4.82E+06 7.30E+06 -0.05 1.22

G0 6000 7.02E+07 9.69E+07 8.51E+07 -0.33 0.63

F 0 7500   1.50E+08 3.14E +08 2.17E+08 0.12 0.37

A0 10000 6.10E+08 1.14E+09 5.61E+08 0.0 0.0

B 1 25000 1.21E+10 8.52E+09 3.65E+09 -1.06 -0.15

68.0log5.2

4.11

10.6log5.2log5.2

log5.2log5.2

BF

UF

BF

UF

BF

UF

BF

UFBU

A

A

77.0log5.2log5.2log5.2

VF

BF

VF

BF

VF

BFVB

A

A

Page 60: 天体物理学 I : 授業の内容

0

-0.5

-1.0

0

B1

F0A0

K7

G0

0.5 1.0B-V

U-B

モデルスペクトルの2色図

Page 61: 天体物理学 I : 授業の内容

(1) 上の式を見ると、T( τλ=2/3 ) を求める必要のあることが判ります。

   エディントン大気で、温度分布は τ Rで以下のように与えられます。

       T( τ R) 4  = Te4 ・ [ (3 / 4)・ τ R+(1 / 2) ]

    kλ と kR が判っている時に、 τλ=2/3  となる深さは τ Rではいくつでしょう?表面から幾何学的な深さ(100mとか10kmという意味です) L までの、

       τλ = kλ ・L

       τ R= k R ・L

なので、

       τ R= ( k R / kλ )・ τλ

τλ =2 /3 を代入して、

        τ R= ( k R / kλ )・(2 /3)

Page 62: 天体物理学 I : 授業の内容

(2) T( τλ=2/3 ) を  kλ 、 kR 、Te, を使って表わして下さい。  T( τ R) 4  = Te4 ・ [ (3 / 4)・ τ R+(1 / 2) ]  に  τ R

= ( k R / kλ )・(2 /3) を

代入して、 T( τλ=2/3 ) 4 = Te4 ・ [ (3 / 4)・( k R / k

λ )・(2 /3) +(1 / 2) ]

           =  (1 / 2)Te4 ・ [ ( k R / kλ ) + 1 ]

(3) F λ  を  kλ 、 kR 、Te,  B λ (T) 、を使って表わして下さい。

      F λ = π ・B λ[ T( τλ=2/3 ) ] に上のTの表式を代入して 

        

4

1

12

13/2

k

kTT Re

41

12

1

k

kTeBF R


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