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Page 1: 000 h1 vol45 - TAKII2018 タキイ最前線 春種特集号 41 アスターはお盆の花としてよく使われ、小菊が不作の年な どは代替え品として仏花にも入れられる夏には欠かせない品

2018 タキイ最前線 春種特集号 41

 アスターはお盆の花としてよく使われ、小菊が不作の年などは代替え品として仏花にも入れられる夏には欠かせない品目の一つです。そんな中、近年はアレンジ系のアスターの使用用途が広がり、仏花や墓花だけではなくアレンジメントの花材としても年間を通じて使われるようになってきました。 今回紹介するアレンジアスターの「ナナ パープル」は半八重咲きの「ナナ」シリーズの新色です。今までになかったパープル色が加わることで、さらに需要が広がっていくと予想される品種です。

◆ボリュームが出やすいので株間は少し広めに 「ナナ パープル」はフザリウムに強い特性ですが、土壌消毒をしてから定植を行い、特性上ハウスの中に定植することをおすすめします。 播種は3月上旬に行い、播種後は十分に光の当たる所で管理して乾かさないように注意します。本葉3~4枚程度が定植適期で、ボリュームがほしいときは定植する圃

場に元肥を十分に入れておきましょう。その後はアスターの葉色を見て液肥などを使って追肥をします。 定植は15㎝間隔の4条植えにします。「ナナ パープル」はボリュームが出やすいので株間を少し広めにとることをおすすめします。しかし、栽培される農家さんがどの価格帯の商品を考えておられるかによって株間も変わってくるので、出荷している市場とよく話し合い、栽培される商品と市場ニーズをすり合わせて栽培していきましょう。 定植が終わってしばらくは小まめに潅水し、確実に活着させます。アスターは比較的根が浅い植物なので、小まめな水分管理ができるように潅水チューブなどを入れて管理することをおすすめします。植物体が20㎝くらいになったらフラワーネットをかけていきます。生育後半になるとボリュームが出てくるのでアスターが倒れないように支柱などを使ってしっかり固定しましょう。最終的にフラワーネットは一段で十分に対応できます。

◆薬剤散布で病害虫を防ぐ 梅雨時期から高温時期までの栽培期間中は、気候の変化に注意が必要です。雨が多いとハウスの中でもさび病や灰色かび病などが発生します。どちらも一度発生させてしまうと薬剤散布で抑えることが難しくなります。薬剤散布の水分で病気の症状を悪化させてしまうことがあるので、晴れた日や湿度の低い日を選んで行いましょう。 シンクイムシやヨトウムシ、ハモグリバエなどの害虫も発生するので害虫対策も大切です。殺虫剤と殺菌剤を混ぜて散布し薬剤散布の回数を軽減させましょう。各薬剤も2~3種類をローテーションして使うと効果的です。 順調に生育すると7月下旬くらいから収穫ができますが、「ナナ パープル」は花もちがよい品種なのでしっかり全体が咲いてから収穫しましょう。

◆フラワーショップの用途に合わせた出荷調製 先にも話しましたが、どの価格帯を目標にして市場へ出荷していくのかをよく考えて出荷調製を行います。近年は単価の頭打ちがよく見られるので、ターゲット層をしっかり絞りこみます。 例えば、アスターの長さを少し短く切って下枝をさいて2手に分けて出荷する場合、フラワーショップで使いやすいサイズに調製してあるので多くの本数を出荷することができ、大きい単価はねらえませんが、手ごろな価格で幅広く購入してもらうことが可能です。 一方、アスターを株元で採花して1本で出荷する方法の場合、調製を比較的簡単に終わらせることができるので作業効率がよく、市場のセリ場などでも見ばえがよくなり高単価で購入してもらいやすくなります。 一番大事なことはフラワーショップのニーズを把握することと、栽培したお花をどのような用途でどういうフラワーショップに使ってもらいたいかをよく考えて出荷の選別をすることです。

市場への流儀

栽培の流儀

タキイ切り花品種・黒川流この連載では、主にタキイ品種を中心に、営利切り花出荷用栽培のポイント、流通する切り花の市場で好まれる形質、出荷・販売の工夫などを現役の花卉生産者ならではの視点で解説していただきます。(編集部)

【第13回】アスター「ナナ パープル」

黒川花卉園芸  黒

くろ

川かわ

 恒つね

和かず

奈良県立大を卒業後、実家の農業を継ぎ、野菜と米の生産に取り組む。24歳の時に米からハナショウブの生産に切り替え花卉栽培を始める。その後花卉生産を増やす中、タキイ品種を多く手掛ける。「いかなる出荷でも使ってもらう人のことを考え無駄を少なく」がモットー。

(京都府久御山町)

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