第1週 (9/25) 生態学と生物(1章&2章) 第2週 (10/2) 進化生態学の基礎(3章[〜3.3]) 第3週 (10/9) 分子進化と生態学(3章[3.4〜]&付録2 ) 第4週 (10/16) 生活史の適応(4章[〜4.2] ) 第5週 (10/23) 性の意義(4章[4.3〜]: 第1回小テスト) 第6週 (10/30) 生理生態特性の適応(5章) 第7週 (11/6) 行動の適応(6章) 第8週 (11/13) 社会の適応(6章) 第9週 (11/20) 種内競争と個体群(7章 第10週(11/27) 種間競争と個体群(7章: 第2回小テスト) 第11週(12/4) 捕食・寄生と個体群(7章) 第12週(12/11) 種間相互作用と生物群集(8章) 第13週(12/18) 生態系機能(9章) 第14週 (12/25) 応用生態学(10章) 第15週 (1/15) 第3回小テスト
0・0x)講義スケジュール
02
生物学者の2つの問い
How(どのように)?
・・・至近要因:生理、行動、生化学的な視点
Why(なぜ)?
・・・究極要因:進化学的な視点
ティンバーゲン(進化行動学者)の4つの問い
メカニズム: 行動の仕組み
生存価: 適応度への影響
発生: 発達過程でどのように
獲得されるか
系統: 進化の歴史において
どのように広まったか
→p31
→p29
3・1a)進化生態学の視点
3・2a)進化とは
進化 evolution
遺伝子プールの構造(対立遺伝子や遺伝子型の頻度)が
世代を超えて変化すること
サンショウウオのネオテニー
(幼形成熟)
ホライモリ(洞穴生物)の
眼の退化
3・2a)進化とは:退化も進化
バイカル湖の沖帯に進出した
ネオテニー(幼形成熟) カジカ
犬はオオカミのネオテニー?
3・2b)進化とは:大進化と小進化
進化 evolution
遺伝子プールの構造(対立遺伝子や遺伝子型の頻度)が
世代を超えて変化すること
大進化 macro-evolution
種分化以上の大きな時間スケールで生じる現象
(例:種分化、適応放散、大量絶滅)
小進化 micro-evolution
種分化に至る前の小さな時間スケールで生じる集団内の
遺伝子構成の変化
(例:適応、隔離)
分類単位「種(species)」とは?
生物学的種:自然条件下で交配可能な集合体
◆一義的だが非現実的?
◆同所的集団の中立マーカーの乖離(別々の遺伝的浮動)は有力な手がかり
cf.)亜種:形質は異なるが、地理的隔離以外に生殖隔離のない集団
形態的種:形態の似た集団
リンネ種:不連続性を重視 ・・・慣習的で素朴だが一義的でない
系統学的種:単系統性を重視
進化学的種:生殖隔離にニッチ、形態を加味
付録)多様な生物を遺伝情報で分類する
3・2)小進化の要因
進化をもたらす要因は?(ハーディー・ワインベルグ平衡を乱すもの)
突然変異 mutation 転記ミスなどで生じる染色体やDNAの一部に生じる変化
新しい対立遺伝子、個体間の遺伝的な変異を生み出す
偶然生じるので(10-9〜10-10/塩基)、方向性はない
自然選択 natural selection 生存や繁殖に不利な対立遺伝子が、次世代を残せないことにより
取り除かれること
ダーウィンの3条件 ・ある形質に個体間変異がある
・その変異が遺伝
・その変異が個体の繁殖や生存に影響
遺伝的浮動 genetic drift 偶然によって生じる、世代間の遺伝子頻度や遺伝子型頻度の変化
→p34c
→p35d
→p42g
3・2e-f)自然選択の色々
安定化選択 一定環境に適応した集団で、生じるほとんどの突然変異は有害
→有害な変異遺伝子が発現する変異個体は生存や繁殖に不利
→変異個体は子孫を残しにくく、有害な変異遺伝子が取り除かれる
方向性選択 新しい環境に遭遇した集団では、
その環境に適した表現型の個体が世代を経て増加していく
分断化選択
頻度依存選択
例1:工業暗化
地衣類 地衣類死滅、煤 → 産業革命
例2:キリンの首
キリン首は長いほど
高い位置の樹木の葉を
食べるのに有利
有利な
保護色の
変化
3・2e-f)自然選択の色々
?
キリンの祖先は馬のような草食哺乳類
↓
首が長い個体は樹木の葉も食べられた
↓
より首が長い個体は高い位置の
樹木の葉を食べられた
中途半端な形質
には利点がない
↓
大進化は
説明できない
方向性選択は種の進化において本当に重要か?
新しい種が生じる程の選択圧を持ちうるのか?
?
3・2e-f)自然選択の色々
?
先を見越した自然選択は起こりえない 将来有利になる形質も、その瞬間に有利でない限り
(その時点では)自然選択の恩恵を受けない
前適応/受身適応 preadaptation
以前は特に重要でなかった形質が環境の
変化によって適応的な重要性を現す現象
大進化は
説明できない
関連する古生物学用語
現在見られるメリットに
縛られる必要はない
「オスとオスの競争で有利だった」
→p39コラム
3・2e-f)自然選択の色々
稀な例1:中間的形態の
ヒラメの化石を発見(2008)
目が移動途中の種が存在した
3・2e-f)自然選択の色々
Nature 456:497
肋骨(甲羅)と肩胛骨が
逆転途上の種が存在した
稀な例2:中間的形態の
カメの化石を発見(2008)
3・2e-f)自然選択の色々
安定化選択 一定環境に適応した集団で、生じるほとんどの突然変異は有害
→有害な変異遺伝子が発現する変異個体は生存や繁殖に不利
→変異個体は子孫を残しにくく、有害な変異遺伝子が取り除かれる
方向性選択 新しい環境に遭遇した集団では、
その環境に適した表現型の個体が世代を経て増加していく
分断化選択 中間的な形質を示す表現型が、両極端な表現型よりも、
生存や繁殖において不利な場合に消失し、2極化する
頻度依存選択 ある表現型の個体数が多いことが有利(正)または不利(負)な場合
不利な方の遺伝子は消失していく
参照:ミバエと同所的種分化
3・2e-f)自然選択の色々
鱗を食べるシクリッドの
右利きと左利き
多数派は摂食において不利
3・2e-f)自然選択の色々
巻き貝の右巻きvs左巻き
ミスジマイマイ(左)・ヒダリマキマイマイ(右)
少数派は配偶者獲得において不利
小さな隔離集団では瓶首効果で逆転
→種分化?
瓶首効果 bottle neck effect
繁殖個体数の減少が
遺伝的浮動の効果を
強めること
3・2e-f)自然選択の色々
ミスジマイマイ(左)・ヒダリマキマイマイ(右)
実例:遺伝的浮動と頻度依存選択と方向性選択
小さな隔離集団では瓶首効果が大きく
遺伝的浮動により巻貝の巻き向きが変化
↓
正の頻度依存選択が働き、
島ごとに巻貝の巻き向きが固定
↓
捕食者ヘビに方向性選択が働き
右/左利きが固定
第2回:内容とキーワード
1)大進化:生物多様性の創出
2)小進化:遺伝形質が世代を経て変化する
3)自然選択の定量
3・3a)自然選択の定量
選択差 ある形質における、自然選択がかかる前の集団と、
自然選択がかかった後で生き延びた集団の平均値の差
選択反応 選択圧を受けているある形質における、
1世代後の平均値の変化
ポイント:選択反応は選択差より小さい!
遺伝率 選択差に対する選択反応の比(選択反応/選択差)
→p45図3・8
→p46図3・9
実測例:フィンチの体サイズや嘴の選択差を乾季前後の集団から算出
エルニーニョ前後で選択圧の方向が変化した
3・3b~3・4)分子進化
来週の話題
例1:ガラパゴス諸島のダーウィン・フィンチ
3・5)大進化:適応放散
→p27図3・1
適応放散 adaptive radiation
一系統の生物が環境に適合して生理的、形態的に分化し、
時間とともに他系統に進化すること
●各島に固有の種
●それぞれの島の環境に適合した形態
3・5)大進化:種分化(異所的種分化)
地理的隔離 geographical isolation
広く分布していた生物種の集団が違いに隔離される
↓
生殖隔離 reproductive isolation
集団の間に遺伝的な交流がなくなる
交配前隔離 集団間で形態・行動・生活史に決定的な違いが生じる
→別集団の個体が交配することがなくなる
→集団の間に遺伝的な交流がなくなる
交配後隔離 生存に重要な遺伝子に決定的な違いが生じる
→別集団の個体が交配しても、健全な子孫を残せない
→集団の間に遺伝的な交流がなくなる
ミバエ(サンザシ系統・リンゴ系統・サクランボ系統) Filchak KE et al. Natural selection and sympatric divergence in the apple maggot
Rhagoletis pomonella. Nature. 2000 Oct 12;407(6805):739-42.
太平洋に浮かぶ島のヤシ
ニカラグアのアポヨ湖のシクリッド・・・小さな湖での例
Vincent Savolainen et al. Sympatric speciation in palms on an oceanic island
Nature online 8 February 2006
Sorenson MD et al. Speciation by host switch in brood parasitic indigobirds.
Nature. 2003 Aug 21;424(6951):928-31.
托卵する鳥
3・5)大進化:種分化(同所的種分化)
同所的種分化 sympatric speciation
地理・物理的に接触可能な条件で種が分化すること
分子マーカーに残る状況証拠
繁殖の異時性がポイント?
視覚の発達が種分化を促す?
3・5)大進化:適応放散と種分化(同所的種分化)
第2回:内容とキーワード
1)大進化:生物多様性の創出
生態的同位種、適応放散
同所/異所的種分化、生殖隔離、交配前/後隔離
2)小進化:遺伝形質が世代を経て変化する
突然変異、大/小進化、自然選択、遺伝的浮動
安定化/方向性/分断化/頻度依存選択
3)自然選択の定量
選択圧、選択差、選択反応、遺伝率