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電子図書館の新たな潮流
第 2回 機関リポジトリ
筑木一郎:国立国会図書館関西館図書館協力課
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機関リポジトリとは?
機関リポジトリ( Institutional Repository) 自機関で生産された電子的な知的生産物を捕捉し、保存し、配信するための保存書庫
機関:大学および研究機関 知的生産物:学術雑誌掲載論文・学位論文・紀要論文・プレプリント・ワーキングペーパー・会議録・調査報告書・教材など
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海外では
欧米で急速に発展各国でプロジェクトが展開中
世界中で( 2004.8現在) EPrints.org:登録機関 214 OAIster: 327機関 324万レコード
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システム
データベース+Webサーバ+検索エンジン様々なファイル・タイプに対応 OAI-PMH準拠(推奨)長期的保存に耐えられる設計→オープンソースで組まれることが多いOSI「機関リポジトリ構築ソフトウェアガイド」 ver.1 ,ver.2
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欧米の代表例( 1)
ePrints サウサンプトン大学が開発( 1999~) Linux+Apache+MySQL+Perl 導入が簡単、費用も低い
CODA(カリフォルニア工科大学 ) 主題別 13リポジトリ、コンテンツ =学位論文・テクニカルレポート・会議ペーパー等
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欧米の代表例( 2)
DSpace(荘司雅之「 DSpaceをめぐる動向」 [CA1527]) MITと HPの共同開発( 2000~) Linux+Apache+PostgreSQL+Java フレキシブルでカスタマイズが楽
DSpace@MIT 学部別 10リポジトリ、コミュニティ毎にポリシー管理、コア /有償サービス
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日本の事例
千葉大学学術情報リポジトリ 平成 14年度:図書館にWG、ニーズ調査など
平成 15年度:初期データ整備約 200件( 2004.6)のコンテンツ =紀要、再掲許可済みの論文、 Eプリント・サーバ上の論文など
平成 16年度:本格運用予定
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流れと機能
登録インターフェイス
リポジトリ検索インターフェイス
コンテンツ
検索
図書館
メタデータ
研究者
利用者 メタデータ DB
OAI-PMH
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OAI-PMH
Open Archive Initiative Protocol for Metadata Harvesting (OAI-PMH2.0 日本語訳) 自動的にメタデータ総合目録を作る仕組み 各個別リポジトリの相互運用性・ネットワーク化を担保
(尾城孝一「 OAI-PMHをめぐる動向」 [CA1513])
データプロバイダ
サービスプロバイダ
メタデータ
ハーベスタ
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サービスプロバイダ
学術情報の信頼性あるポータルとして OAI登録17⇔データ・プロバイダ約 130
OAIster(ミシガン大学図書館)
NIIメタデータ・データベース共同構築事業
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ネットワーク
A大学論文・教材
B大学図書・報告書
C研究所会議録
NIIメタデータ DB
他のメタデータ DB 他のリポジトリ
利用者
利用者
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ポイント
機関リポジトリは 自機関の生産物を
長期的に保存するオープンアクセスとする
学術情報をネットワーク化する
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背景と意味
1990年代「雑誌の危機( Serials Crisis)」 学術出版社の寡占化と雑誌価格の高騰 図書館における学術雑誌(含 EJ)の配置不十分に
研究成果へのアクセス障壁に ↓ 研究者や図書館など学術コミュニティによる、研究成果への自由なアクセスを求める運動
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オープンアクセスの流れ
インターネットの普及 プレプリントサーバなどの出現( 1990年代)
SPARC:学術出版市場の適正競争めざして 商業出版に代替する出版モデルの提唱 近年、 OA化の一環として機関リポジトリを支持 “The Case for Institutional Repositories”(2002.8), “Institutional Repository Checklist & Resource Guide
”(2002.11)
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BOAI
Budapest Open Access Initiative (2002.2) OSI, SPARC, PLoS, BioMed Centralなど
学術情報の OA化の戦略として OA雑誌 セルフ・アーカイビング
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OA雑誌
著者(団体)が投稿料( Author Pays)を支払うことで、消費者は無料で研究論文にアクセスできる出版モデル
BioMed Central PLoS(Public Library of Science) DOAJ:ディレクトリ(約 1200誌)
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セルフ・アーカイビング
伝統的に論文の著作権は出版社に譲渡 =出版社の独占的処分
OA型アーカイブの出現・普及 2004年 6月最大手の Elsevierがポストプリントのテキスト版をセルフ・アーカイブすることを許可→他の大手出版社にも波及
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米英議会の勧告
UK Parliament Science and Technology Committee “Scientific Publications: Free for All?” (2004.7)
全ての高等教育機関に機関リポジトリを設置 公的資金の投入された研究成果をリポジトリ登録
ネットワーク化する機関を設置 投稿料方式の出版モデルを推進する基金→科学技術情報のオープンアクセス化を議会が勧告 (E222)
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広がる支持
Bethesda Statement on Open Access Publishing (2003.6) :生物医学分野による OA支持
ベルリン宣言 (2003.10):欧研究機関による OA支援
IFLA「学術研究文献のオープンアクセスに関する声明」( 2003.12)( E185)
世界情報社会サミット( 2003.12) (E159) OECD(2004.1)
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ポイント
学術情報のオープンアクセス化とは 学術コミュニティが研究成果の流通を確保する試み
機関リポジトリはその柱のひとつ 公的資金に対するアカウンタビリティ
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日本の大学図書館と戦略
日本の大学図書館でリポジトリを普及させるには
オープンアクセスの視点 もうひとつの視点
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法人化
法人化→法人として活動・成果を把握・管理する必要が出てくる→大学として学術情報の管理・発信に取り組む必要→どこが?
「部局等において教員の研究業績データを収集整理してデータベースを構築し、自己点検・評価及び外部評価に活用する」「学術情報の全学的収集・提供体制を整備する」「学術情報の公開を通じて、社会に対する説明責任を果たす」『京都大学中期目標・中期計画』(平成 16年6月承認)
=機関リポジトリ
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図書館事業として( 1)
情報発信のポータルに:科学技術・学術審議会の答申(平成 14年 3月)
「大学等から発信される様々な学術情報が簡便に利用できるためには、総合的な情報の発信窓口(ポータル機能)を設置し、統一的な規約によって情報を発信する必要がある。このために、大学図書館が中心となって・・・・・・情報発信のためのシステムの設計・構築を行う必要がある」『学術情報の流通基盤の充実について』
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図書館事業として( 2)
図書館のアドヴァンテージ 学術情報の流通を扱ってきた歴史 付加価値の付与(メタデータ、ネットワーク) 既存のシステム・ノウハウの活用→低コスト
→学術情報流通の HUBに
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事業モデル( 1)
収集のポイント メタデータだけではなくコンテンツそのものを オンライン上だけでなく網羅的に 全学的政策として(クイーンズランド工科大学)
管理とサービスを別に 収集・管理は完全・網羅的に サービスはケースバイケース(公開 /限定公開 /非公開←著作権者の意向)
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事業モデル( 2)
知的財産権との連携 特許等→知財権本部 基礎研究 =公共財→図書館
出版市場との棲み分け 当面、市場流通しなくなったもの、適さないもの(灰色文献、基礎的研究)
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論点と課題
システムの改良:長期保存・標準化品質保証:研究コミュニティ慣習の尊重信頼性の喧伝:引用率( IF)への貢献著作権処理学内体制の整備
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おわりに
機関リポジトリは 学術情報のオープンアクセス化の一環 学術情報の長期的保存の保証 大学が社会的説明責任を果たす窓口 大学図書館が学術情報流通の HUBとして、必要不可欠な存在となれるかの試金石