2012年度数学 IA演習第 13回理 I 1 ~ 10組
1月 28日 清野和彦
問題 1. 次の無限級数の和を求めよ。
(1)∞∑
n=1
1
n(n + 2)(2)
∞∑n=1
1
n2 + 5n + 4(3)
∞∑n=1
1
n(n + 1)(n + 2)
(4)∞∑
n=1
(√n + 1 −
√n)
(5)1
4− 1
3+
4
9− 16
27+
64
81− · · ·
(6)√
2 − 1 +3 − 2
√2
2+
5√
2 − 7
4+
17 − 12√
2
8+ · · ·
問題 2. 絶対収束する無限級数は収束するということ、すなわち∞∑
n=1
|an| が収束する =⇒∞∑
n=1
an も収束する
ということを次の方針で証明せよ。
(1) 二つの数列 {a+n }∞n=1 と {a−
n }∞n=1 を、
a+n =
|an| + an
2a−
n =|an| − an
2
で定義すると、∞∑
n=1
|an| が収束するならば二つの無限級数∞∑
n=1
a+n と
∞∑n=1
a−n はどち
らも収束することを示す。
(2) S+ =∞∑
n=1
a+n および S− =
∞∑n=1
a−n とすると、
∞∑n=1
an は S+ − S− に収束すること
を示す。
問題 3. 次の二つの無限級数がどちらも収束し、極限値が等しいことを証明せよ。(問題 2で証明したことを使う問題です。)
(1)∞∑
n=0
π4n+1
(4n + 1)!(2)
∞∑n=0
π4n+3
(4n + 3)!
問題 4. 次を示せ。
(1) 1 +1
2+
1
3+
1
4+
1
5+
1
6+
1
7+
1
8+
1
9+
1
10+
1
11+
1
12+ · · · = ∞
(2) 1 − 1
2+
1
3− 1
4+
1
5− 1
6+
1
7− 1
8+
1
9− 1
10+
1
11− 1
12+ · · · = log 2
(3) 1 +1
3− 1
2+
1
5+
1
7− 1
4+
1
9+
1
11− 1
6+
1
13+
1
15− 1
8+ · · · =
3
2log 2
問題 5. 次の正項級数が収束するか発散するかを判定せよ。
(1)∞∑
n=3
1(n2− 1)2 (2)
∞∑n=1
n
1 + na(3)
∞∑n=1
(√n2 + 1 − n
)
(4)∞∑
n=1
2n + 1
3n + 1(5)
∞∑n=1
(1 +
1
n
)n2
(6)∞∑
n=1
(2n − 1)(2n − 3) · · · 5 · 3 · 1n!
(7)∞∑
n=1
2n
n!(8)
∞∑n=1
n(n + 1)
2n(9)
∞∑n=1
na
n!(10)
∞∑n=2
1
n log n
問題 6. 以下の冪級数の収束半径を求めよ。ただし a, b は正の定数とする。
(1)∞∑
n=0
1
(n + 1)(n + 2)xn (2)
∞∑n=2
1
log nxn (3)
∞∑n=0
(√n + 1 −
√n)
xn
(4)∞∑
n=0
1
2n + 1
(2n + 1)!!
(2n)!!xn (5)
∞∑n=0
√1
n2 − n + 1xn (6)
∞∑n=0
(n + 1)n
n!xn
(7)∞∑
n=1
n!
(a + 1)(a + 2) · · · (a + n)xn (8)
∞∑n=0
(n∑
k=0
akbn−k
)xn (9)
∞∑n=0
an2
xn
(10)∞∑
n=0
(n!)2
(2n)!x2n (11)
∞∑n=0
xn2
(12)∞∑
n=0
(3 + (−1)n)n xn
2012年度数学 IA演習第 13回解答理 I 1 ~ 10組
1月 28日 清野和彦
計算問題の答
問題 1 (1)34
(2)1336
(3)14
(4) ∞ に発散 (5) 発散(振動) (6)4√
2 − 27
問題 5 (1) 収束 (2) a > 2 で収束、a ≤ 2 で発散 (3) 発散 (4) 収束 (5) 発散 (6) 発散
(7) 収束 (8) 収束 (9) 収束 (10) 発散
問題 6 (1) 1 (2) 1 (3) 1 (4) 1 (5) 1 (6)1e
(7) 1 (8)1
max{a, b}
(9) a < 1 のとき ∞, a = 1 のとき 1, a > 1 のとき 0 (10) 2 (11) 1 (12)14
目 次
1 無限級数 2
1.1 確認 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21.1.1 問題 1の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
1.2 無限級数と実数の連続性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41.3 絶対収束 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
1.3.1 問題 2の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 51.3.2 問題 3の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
2 絶対収束と条件収束 7
2.1 絶対収束する級数の性質 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 72.2 条件収束しかしていない級数の性質 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
2.2.1 問題 4の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 102.3 絶対収束と条件収束の違い . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
3 無限級数の収束判定 14
3.1 ダランベールの判定法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 143.2 コーシーの判定法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15
3.2.1 問題 5の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
4 冪級数の収束 19
4.1 冪級数の収束半径 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 194.1.1 問題 6の解答 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21
第 13 回解答 2
1 無限級数
1.1 確認
まず、無限級数の復習です。普通、数列 {an}∞n=1 があったときに∞∑
n=1an を無限級数と無造作に
言ってしまいますが、細かく言うと、
S1 = a1 S2 = a1 + a2 S3 = a1 + a2 + a3 . . . Sn = Sn−1 + an . . .
によって数列 {Sn}∞n=1 を作り、これの極限を問題にしているわけです。だから、
∞∑n=1
an という表記は、部分和の作る数列 {Sn}∞n=1 そのものとその極限 limn→∞
Sn を同
時に(気ままに)意味する誤解しやすい記号
ですので注意してください。
もう一つ、高校のときから知っている基本的な事実として
無限級数∞∑
n=1an が収束するなら lim
n→∞an = 0 である。
があります。証明は、an = Sn − Sn−1 で極限を取るだけです。無限級数の和(つまり極限)を S
として、
limn→∞
an = limn→∞
(Sn − Sn−1) = limn→∞
Sn − limn→∞
Sn−1 = S − S = 0
というわけです。この条件は必要なだけであって十分条件ではないということに注意して下さい。
1.1.1 問題 1の解答
(1)1
n(n + 2)=
12n
− 12(n + 2)
ですので、
N∑n=1
1n(n + 2)
=N∑
n=1
(12n
− 12(n + 2)
)=(
12− 1
6
)+(
14− 1
8
)+ · · · +
(1
2N− 1
2(N + 2)
)=
12
+14− 1
2(N + 1)− 1
2(N + 2)
となります。よって、
∞∑n=1
1n(n + 2)
= limN→∞
(12
+14− 1
2(N + 1)− 1
2(N + 2)
)=
34
です。 □
(2) n2 + 5n + 4 = (n + 1)(n + 4) と因数分解できますので、
1n2 + 5n + 4
=1
(n + 1)(n + 4)=
13(n + 1)
− 13(n + 4)
第 13 回解答 3
です。よって、N∑
n=1
1n2 + 5n + 4
=N∑
n=1
(1
3(n + 1)− 1
3(n + 4)
)=(
16− 1
15
)+(
19− 1
18
)+(
112
− 121
)+(
115
− 124
)+ · · · +
(1
3(N + 1)− 1
3(N + 4)
)=
16
+19
+112
− 13(N + 2)
− 13(N + 3)
− 13(N + 4)
となり、∞∑
n=1
1n2 + 5n + 4
= limN→∞
16
+19
+112
− 13(N + 2)
− 13(N + 3)
− 13(N + 4)
=1336
です。 □
(3)1
n(n + 1)(n + 2)=
12n
− 1n + 1
+1
2(n + 2)ですので、
N∑n=1
1n(n + 1)(n + 2)
=N∑
n=1
(12n
− 1n + 1
+1
2(n + 2)
)=(
12− 1
2+
16
)+(
14− 1
3+
18
)+(
16− 1
4+
110
)+ · · · +
(1
2N− 1
N + 1+
12(N + 2)
)=
12− 1
2+
14
+1
2(N + 1)− 1
N + 1+
12(N + 2)
=14− 1
2(N + 1)+
12(N + 2)
となります。よって、∞∑
n=1
1n(n + 1)(n + 2)
= limN→∞
(14− 1
2(N + 1)+
12(N + 2)
)=
14
です。 □
(4) 部分和を計算すると、
N∑n=1
(√n + 1 −
√n)
=(√
2 −√
1)
+(√
3 −√
2)
+ · · · +(√
N + 1 −√
N)
= −1 +√
N + 1
となります。よって、∞∑
n=1
(√n + 1 −
√n)
= limN→∞
(−1 +
√N + 1
)= ∞
と発散します。 □
(5) この無限級数は、初項14、公比 −4
3の等比級数です。初項が 0でなく公比が −1 より小さい
ので、この無限級数は収束しません。(いわゆる振動です。) □
(6) この無限級数は、初項√
2 − 1、公比√
2 − 12
の等比級数です。よって、
∞∑n=1
(√2 − 1
)n2n−1
=√
2 − 1
1 −√
2−12
=4√
2 − 27
となります。 □
第 13 回解答 4
1.2 無限級数と実数の連続性
「無限級数の和が存在するとは部分和のなす数列が収束することだ」ということを確認すれば、
第 1回や第 2回で学んだ「連続性(数列バージョン)」や「完備性」の無限級数への言い換えは簡単です。なお、すべての項が 0以上の無限級数を正項級数と言います。
実数の連続性(級数バージョン)� �正項級数
∞∑n=1
an に対し、任意の N についてN∑
n=1an < M を満たす実数 M が存在するならば
無限級数∞∑
n=1an は収束する。� �
証明. すべての an が 0以上なので、部分和のなす数列 {SN}∞N=1 は単調増加です。しかもすべて
の N について SN < M が成り立っているので、{SN}∞N=1 は上に有界な単調増加数列になりま
す。よって実数の連続性より {SN}∞N=1 は収束します。 □
実数の完備性(級数バージョン)� �どんなに小さな正実数 ε が与えられても十分大きな自然数 N で N より大きい任意の二つの
自然数 n, m (n < m) に対して ∣∣∣∣∣m∑
k=n+1
ak
∣∣∣∣∣ < ε
が成り立つならば、無限級数∞∑
n=1an は収束する。� �
数列のときと同様に、「実数の完備性(級数バージョン)」のことをコーシーの条件とも言います。
証明. 部分和のなす数列 {Sn}∞n=1 において、
Sm − Sn =m∑
k=1
ak −n∑
k=1
ak =m∑
k=n+1
ak
となります。よって、条件 ∣∣∣∣∣m∑
k=n+1
ak
∣∣∣∣∣ < ε
は
|Sm − Sn| < ε
を意味します。これは数列 {Sn}∞n=1がコーシー列だということですので、実数の完備性より {Sn}∞n=1
は収束します。 □
1.3 絶対収束
「連続性」の方では「すべての項が 0以上」という条件が、「完備性」の方では |an+1 + an+2 +
· · ·+am|がでてきました。そうすると、無限級数∞∑
n=1an に対して、各項の絶対値をとった無限級数
∞∑n=1
|an| を考えてみたくなるでしょう。これは数列にはなかった視点ですので詳しく調べましょう。
第 13 回解答 5
まず、すぐわかるけれども最も重要な関係です。� �絶対値をとった無限級数
∞∑n=1
|an| が収束するなら、元の無限級数∞∑
n=1an も収束する。� �
∞∑n=1
|an| が収束することを「∞∑
n=1an は絶対収束する」と言います。つまり、「絶対収束するならば
収束する」というわけです。このことを指定の方針で証明せよというのが問題 2でした。解答の前に「普通の証明」を書いておきましょう。講義ではこの方法で証明されたのではないか
と思います。
証明. 絶対値をとった級数∞∑
n=1|an| は収束すると仮定しているので、特に部分和 Mn =
n∑k=1
|ak| の
なす数列はコーシー列です。つまり、任意の正実数 ε に対して
m > n > N =⇒ |Mm − Mn| < ε
の成り立つ N が存在します。一方、いわゆる三角不等式 |a + b| ≤ |a| + |b| を繰り返し使うと、∣∣∣∣∣m∑
k=n+1
ak
∣∣∣∣∣ ≤m∑
k=n+1
|ak|
が得られます。この二つを合わせると、m > n > N ならば∣∣∣∣∣m∑
k=n+1
ak
∣∣∣∣∣ ≤m∑
k=n+1
|ak| = |Mm − Mn| < ε
の成り立つことがわかります。よって、「実数の完備性(級数バージョン)」(すなわちコーシーの
条件を満たすこと)により、無限級数∞∑
n=1an は収束します。 □
つまり、
数列{
N∑n=1
|an|}∞
N=1
がコーシー列 =⇒ 数列{
N∑n=1
an
}∞
N=1
もコーシー列
というわけです。この証明はスッキリしていて見事なのですが、今ひとつしっくり来ない感じがし
ませんか? 理由がわからないというか・・・そこで、もっとはっきり理由がわかるような証明をしてみようというのが問題 2です。
1.3.1 問題 2の解答
(1) a+n は an が正のときそのまま an が負のとき 0としてできる数列、a−
n は an が正のとき 0でan が負のとき −an としてできる数列です。
∞∑n=1
|an| は収束すると仮定しているので、その和を M としましょう。a+n + a−
n = |an| ですから
a±n ≤ |an| です。よって、任意の N に対して
N∑n=1
a±n ≤ M
が成り立ちます。一方、a+n も a−
n もすべて 0以上です。よって、「実数の連続性(級数バージョ
ン)」により、∞∑
n=1a+
n も∞∑
n=1a−
n も収束します。 □
第 13 回解答 6
(2)∞∑
n=1an = S+ − S− を示しましょう。
n∑k=1
ak = Sn、およびn∑
k=1
a±k = S±
n と書くことにしましょう。(復号同順です。) limn→∞
S±k = S±
です。
a±n の定義の仕方から an = a+
n − a−n ですので、任意の n について
Sn = S+n − S−
n
となります。ここで n → ∞ とすれば
limn→∞
Sn = limn→∞
(S+n − S−
n ) = limn→∞
S+n − lim
n→∞S−
n = S+ − S−
となります。({S±n }∞n=1 の極限値が存在するから二番目の等式が成り立つ、という理屈なので、こ
の一連の等式はむしろ右側から読んでいって下さい。) □
問題 2の証明の直接の応用として問題 3を解いてみましょう。
1.3.2 問題 3の解答
まず、どちらの無限級数も収束することを証明しましょう。
(1)の各項はすべて正です。しかも、
π4n+1
(4n + 1)!<
π4n+1
(4n + 1)!+
π4n+2
(4n + 2)!+
π4n+3
(4n + 3)!+
π4n+4
(4n + 4)!
が成り立っているので、
N∑n=0
π4n+1
(4n + 1)!<
N∑n=0
(π4n+1
(4n + 1)!+
π4n+2
(4n + 2)!+
π4n+3
(4n + 3)!+
π4n+4
(4n + 4)!
)
=4N+4∑n=1
πn
n!<
∞∑n=0
πn
n!= eπ
が成り立ちます。よって、「実数の連続性(級数バージョン)」により (1) の無限級数は収束します。上の議論は (2)の無限級数に対しても何の変更もなく完全にそのまま成立しますので、(2)の無限級数も収束します。
次に、(1)の第 n項を第 2n項、(2)の第 n項の符号を変えたものを第 2n + 1項とする無限級数を考えてみます。つまり、
∞∑m=0
(π4m+1
(4m + 1)!− π4m+3
(4m + 3)!
)です。これは
=∞∑
m=0
(π2(2m)+1
(2(2m) + 1)!− π2(2m+1)+1
(2(2m + 1) + 1)!
)=
∞∑n=0
(−1)nπ2n+1
(2n + 1)!= sin π
ですので 0です。よって、問題 2により、(1)と (2)の無限級数の和をそれぞれ S+, S− とすると
S+ − S− = 0
の成り立つことがわかります。すなわち S+ = S− で、(1)と (2)の無限級数の和は一致します。□
第 13 回解答 7
2 絶対収束と条件収束
「連続性(級数バージョン)」や「完備性(級数バージョン)」を言い換えて無限級数が絶対収束
するための必要十分条件が得られます。� �無限級数
∞∑n=1
an が絶対収束するための必要十分条件は、実数 M で任意の自然数 n に対してn∑
k=1
|ak| < M を満たすものが存在することである。
� �� �無限級数
∞∑n=1
an が絶対収束するための必要十分条件は、どんなに小さな正実数 ε に対しても
十分大きな自然数 N を取れば N より大きい任意の n に対して
|aN+1| + |aN+2| + · · · + |an| < ε
の成り立つことである。� �証明(というほどのものではないですが)は省略します。是非各自で確認してみて下さい。
収束はするが絶対収束はしない無限級数のことを条件収束する無限級数といいます。この節では
絶対収束と条件収束の違いについて考えます。
2.1 絶対収束する級数の性質
絶対収束する級数は振る舞いがおとなしくて扱いやすい、ということをこの節で説明しましょう。
絶対収束する無限級数について考えるということは、正項級数について考えることと同じです。
「実数の連続性(級数バージョン)」は正項級数に対する命題でした。だから、「実数の連続性(級
数バージョン)」は正項級数の収束判定に直接役立ちます。しかし、それを少し変えて次のように
しておくとさらに使いやすい収束判定法になります。� �二つの正項級数
∞∑n=1
an と∞∑
n=1bn の間に、任意の n に対して an ≤ bn という関係があると、
∞∑n=1
bn が収束するならば∞∑
n=1an も収束する。� �
結論の対偶を取れば「∞∑
n=1an が発散すれば
∞∑n=1
bn も発散する」となって、発散判定法とも言え
ます。なお、証明は、∞∑
n=1bn = M として実数の連続性(級数バージョン)を使うだけです。自分
で証明を完成させてみて下さい。
収束する正項級数の著しい性質を述べましょう。そのために一つ言葉を用意します。σ : N → Nが自然数を自然数に対応させる 1対 1の上への写像のとき、無限級数
∞∑n=1
aσ(n) のことを∞∑
n=1an の
項を並べ替えた無限級数と言います。(写像 σ なんて書いたのでなんだが恐ろしげですが、ただ単
に a1 + a2 + a3 + a4 + · · · を例えば a2 + a1 + a4 + a3 + · · · に変えるというようなことを式できっちり書き表しただけです。)「著しい性質」とは次の性質です。
第 13 回解答 8
� �収束する正項級数は項をどう並べ替えても同じ値に収束する。� �
証明. S =∞∑
n=1an とし、aσ(n) = bn とします。
任意の n に対して、a1, . . . , am の中に b1, . . . , bn がすべて現れるような m が取れるので、
n∑k=1
bk ≤m∑
k=1
ak < S
となります。よって∞∑
n=1bn は S 以下の値に収束します。その極限値を S′ としましょう。S′ ≤ S
が示されたわけです。∞∑
n=1an と
∞∑n=1
bn の役割を取り替えれば、∞∑
n=1an は
∞∑n=1
bn の項を並べ替えた
級数となるので、∞∑
n=1an = S は S′ 以下の実数に収束します。よって S = S′ です。 □
以上の二つの結果を、一般の級数∞∑
n=1an の絶対値をとった級数
∞∑n=1
|an| に適用すると、次の二
つの重要な結果になります。
一つ目は「絶対収束の判定法」です。� �無限級数
∞∑n=1
an に対し、収束する正項級数∞∑
n=1bn で任意の n に対して |an| ≤ bn を満たすも
のが存在するならば、∞∑
n=1an は絶対収束する。� �
証明.∞∑
n=1|an| は正項級数なので、正項級数の収束判定法により、
∞∑n=1
bn が収束するなら収束する。
よって∞∑
n=1an は絶対収束する。 □
次に項の並べ替えについて。� �絶対収束する無限級数は項を並べ替えても同じ値に収束する。� �
証明. 問題の無限級数を∞∑
n=1an とし、
∞∑n=1
bn を∞∑
n=1an の項を並べ替えたものとします。また、a+
n ,
a−n , b+
n , b−n を問題 2の (1)と同様に定義します。すると、b+n と b−n もそれぞれ a+
n と a−n の項を
並べ替えたものとなります。これらのなす級数は正項級数なので、正項級数の和が項の並べ替えに
よらないことから∞∑
n=1
b+n =
∞∑n=1
a+n
∞∑n=1
b−n =∞∑
n=1
a−n
となります。一方、問題 2の (2)で示したように、
∞∑n=1
an =∞∑
n=1
a+n −
∞∑n=1
a−n
∞∑n=1
bn =∞∑
n=1
b+n −
∞∑n=1
b−n
です。よって、この二つは一致します。 □
第 13 回解答 9
「足し算は順番を変えても結果が変わらないのだから、こうなるのは当たり前だ」と感じます
か? しかし、たとえ数列 {an}∞n=1 に現れる項と数列 {bn}∞n=1 に現れる項が一致していても、順番
が違うなら部分和の数列n∑
k=1
ak とn∑
k=1
bk は全く別のものになってしまうのだから、その極限が一
致するかどうかはわからないでしょう? 次の節を読んでもらえば、「絶対収束する無限級数はおとなしい」といった意味がわかってもらえるはずです。
2.2 条件収束しかしていない級数の性質
前節の「絶対収束する無限級数の振る舞い」は、当たり前っぽい気がして「なにも絶対収束級数
に限らず収束する級数はみんなそうなのではないか?」と感じた人もいるかも知れません。その感覚を否定する例として問題 4を出題しました。解答の前に、条件収束級数を作る一般的な方法について少し説明します。正項級数
∞∑n=1
an に対
して、項 an を (−1)n−1 倍してできる級数
∞∑n=1
(−1)n−1an = a1 − a2 + a3 − a4 + · · ·
を交代級数といいます。交代級数について次が成り立ちます。� �an が単調に減少して 0に収束しているとき、交代級数
∞∑n=1
(−1)n−1an は収束する。� �証明. Sn を部分和とします。
Sn =n∑
k=1
(−1)k−1ak
です。そして、二つの数列 bn, cn を
bn = S2n−1 cn = S2n
とすると、
c1 ≤ c2 ≤ c3 ≤ · · · ≤ b3 ≤ b2 ≤ b1
となります。よって、実数の連続性から bn も cn も収束します。cn − bn = −a2n → 0 なので二つの極限値は一致し、
∑(−1)n−1an もその値に収束します。(最後のところは、第 1回の問題 1の結
果を使っています。) □
さて、単調減少して 0に収束する数列ですべての項が正のものといったら真っ先に思い浮かぶのが
112
13
14
. . .
でしょう。この数列から作る交代級数が問題 4(2)の無限級数であり、条件収束級数の代表例と言えます。これを例に「条件収束しかしていない級数の難しさ」を見てもらうのが問題 4です。
第 13 回解答 10
2.2.1 問題 4の解答
(1) まず、絶対収束しないこと、つまり
1 +12
+13
+14
+15
+ · · ·
が発散することから示します。(なお、この証明は第 6回のプリントにも書きました。)f(x) =
1xの積分と比較しましょう。
1n
>
∫ n+1
n
1x
dx
です。よって、
1 +12
+13
+ · · · + 1n
>
∫ n+1
1
1x
dx = log(n + 1) n→∞−−−−→ +∞
となって示せました。 □
(2) 次に
1 − 12
+13− 1
4+
15− 1
6+ · · · = log 2
を証明しましょう。(この証明も第 6回のプリントに書きました。)log 2 = log(1 + 1) であることと、log(1 + x) の微分が
11 + x
であることを利用します。
まず、
(1 + x)(1 − x + x2 + · · · + (−1)n−1xn−1) = 1 + (−1)n−1xn
から1
1 + x= 1 − x + x2 − · · · + (−1)n−1xn−1 + (−1)n−1 xn
1 + x
を得ます。これを 0から 1まで積分して
log(1 + 1) = 1 − 12
+13− · · · + (−1)n−1 1
n+ (−1)n
∫ 1
0
xn
1 + xdx
となります。0 ≤ x ≤ 1 において0 ≤ xn
1 + x≤ xn
なので、
0 ≤∫ 1
0
xndx =1
1 + n
n→∞−−−−→ 0
となります。よって、
∞∑n=1
(−1)n−1 1n
= limn→∞
(log 2 −
∫ 1
0
xn
1 + xdx
)= log 2 − lim
n→∞
∫ 1
0
xn
1 + xdx = log 2
となって示せました。 □
(3) 最後に、(2)の無限級数の項を並べ替えることにより
1 +13− 1
2+
15
+17− 1
4+
19
+111
− 16
+ · · · =32
log 2
第 13 回解答 11
となることを証明しましょう。これは 1 − 12
+13− · · · = log 2 を利用してパズルのように導くこ
とができます。
まず、
1 − 12
+13− 1
4+
15− 1
6+ · · · = log 2 (1)
のすべての項を 2で割ることにより、
12− 1
4+
16− 1
8+
110
− 112
+ · · · =12
log 2
が得られます。これのすべての項の前にわざと 0を挟み込みます。もちろん和は変わらないので、
0 +12
+ 0 − 14
+ 0 +18
+ 0 − 110
+ · · · =12
log 2
です。これと元の無限級数 (1)を項ごとに足し合わせると
1 + 0 +13− 1
2+
15
+ 0 +17− 1
4+ · · · =
32
log 2
となります。これから 0の項を取り除くと、欲しい結果になります。 □
(3)は (2)の並べ替えの一例に過ぎません。次のように項の並べ替えでいろいろな値に収束させられます。
p と q を自然数とすると、
1 +13
+ · · · + 12p − 1
− 12− 1
4− · · · − 1
2q
+1
2p + 1+
12p + 3
+ · · · + 14p − 1
− 12q + 2
− 12q + 4
− · · ·
= log 2 +12
logp
q
となる。
証明. n 項目までの部分和を Sn とおき、
Tn = 1 − 12
+13− 1
4+ · · · + (−1)n−1 1
n
とおきます。すると、
12
+14
+16
+ · · · + 12kq
=12Tkq 1 +
13
+15
+ · · · + 12kp − 1
= T2kp − 12Tkp
となるので、
Sk(p+q) =12(T2kp − Tkp) +
12(T2kp − Tkq)
です。
さて、n > m なる任意の自然数 n, m に対して、
Tn − Tm =1
m + 1+
1m + 2
+ · · · + 1n
ですので、 ∫ k+1
k
1tdt <
1k
<
∫ k
k−1
1tdt
第 13 回解答 12
から、
logn + 1m + 1
< Tn − Tm < logn
m
がわかります。よって、
12
log(2kp + 1)2
(kp + 1)(kq + 1)< Sk(p+q) <
12
log(2kp)2
(kp)(kq)
となり、k → ∞ として
limk→∞
Sk(p+q) =12
log 22 p
q= log 2 +
12
logp
q
となります。
これで、数列 {Sn}∞n=1 の部分数列 {Sk(p+q)}∞k=1 が目標の値に収束することが示せました。
最後に、Sn 自体が収束級数であることを示さなければなりません。(収束する数列のある部分数
列が a に収束しているなら、もとの数列の極限値も a ですから、あとは {Sn}∞n=1 が全体として収
束することさえ示せれば良いわけです。)n に対して k(p + q) ≤ n < (k + 1)(p + q) となる k をと
ると、Sn の作り方より、
min{Sk(p+q),S(k+1)(p+q)} ≤ Sn ≤ Sk(p+q) +1
2kp + 1+
12kp + 3
+ · · · + 12(k + 1)p − 1
となります。n → ∞ のとき k → ∞ ですので、この不等式の右辺の第 1項と左辺は log 2+12
logp
qに収束します。よって、右辺の残りの項が 0に収束することが示せれば証明が終わります。またもや log x と比較することにより、
12kp + 1
+1
2kp + 3+ · · · + 1
2(k + 1)p − 1<
12kp + 1
+1
2kp + 2+ · · · + 1
2(k + 1)p
<
∫ 2(k+1)p
2kp
1tdt = log
k
k + 1→ 0 (k → ∞)
となって示せました。 □
例えば、p = 1, q = 2 として、
1 − 12− 1
4+
13− 1
6− 1
8+
15− · · · =
12
log 2
p = 1, q = 4 として、
1 − 12− 1
4− 1
6− 1
8+
13− 1
10− · · · = 0
p = 9, q = 4 として、
1 +13
+ · · · + 117
− 12− · · · − 1
8+
119
+ · · · = log 3
など、いくらでもできます。log という関数は、正の実数から実数全体への上への連続写像で、p,
q は任意の自然数なのですから、log 2 +12
logp
qと表される実数は実数全体の中で稠密に分布して
います。しかも、級数の項の並べ替え方はほかにもいくらでもありますので、この形に表せない実
数に収束するような並べ替えもあるかも知れません。
実は、次が成り立ちます。
第 13 回解答 13
� �∞∑
k=1
ak が条件収束級数のとき、項を並べ替えることによって任意の実数に収束させること、お
よび、+∞ にも −∞ にも発散させることができる。� �何が起きているか想像できますか? 実は、「絶対収束するなら収束する」ということをわざわざ問題 2の手順で解いてもらったのは、絶対収束/条件収束/発散している無限級数の違いをわかってもらうためだったのです。それを説明すれば、この「異常な」事実の成り立つ理由や、「コーシー
の条件を使った証明より問題 2の証明法の方が収束する理由がわかりやすい」という気持ちをわかってもらえるものと思います。それでは節を改めて説明しましょう。
2.3 絶対収束と条件収束の違い∞∑
n=1an を収束するかどうかわからない勝手な無限級数とし、a±
n と S± を問題 2と同じように定
義します。ただし、∞∑
n=1a±
n は収束するかどうかわかりません。正の無限大に発散している可能性も
あります。だから S± は実数だけでなく ∞ も許して考えることにします。
さて、絶対収束するというのは、S+ も S− も発散しない場合、つまり、S+ も S− もちゃんと
数になる場合です。この場合、∞∑
n=1an やこれの足す順序を変えたものというのは、0からスタート
して S+ というストックからちょっとずつ足し、S− というストックからちょっとずつ引いていっ
てどちらのストックも使い果たした後の状態ですので、ちょっとずつ足したり引いたりする順序を
どうしようとも、その値は S+ − S− にならざるを得ません。既に述べた証明は以上のイメージを
キチンと数学として書いたものになっているわけです。
同じように考えると、S+ は発散しているが S− は収束している場合には、∞∑
n=1an は足す順序を
どう変えようとも正の無限大に発散してしまうし、S+ は収束しているが S− は発散している場合
には、∞∑
n=1an は足す順序をどう変えようとも負の無限大に発散してしまうことがわかるでしょう。
微妙なのは S+ も S− も発散している場合です。この場合、S+ というストックも S− というストッ
クも無尽蔵なので、S+ から足すものを出し S− から引くものを出して行くと絶妙のバランスで「最
後に」有限の値が残る場合があります。それが条件収束です。標語的にいえば「−∞ < ∞−∞ < ∞」となっている場合なのです。こう考えると、条件収束というのはいかにも危うい収束に見えるの
ではないでしょうか。足す順序を変えてしまうということ、例えば、S− から引く掛の人が居眠り
している間に S+ から足す掛の人ががんばってしまうと、その後引く掛の人ががんばってもどち
らのストックも無尽蔵なので、その後両方の掛が同じようにがんばるならもうその差は埋められ
ない、とか、S+ の掛と S− の掛の人がとても息が合っていて、いつもたがいにほとんど打ち消
し合うように出してくれば、「∞ − ∞ = 0」が実現される、とか何でも起こりそうだという感じがわかってもらえると思います。例えば、π に収束させようと思ったら、まず、π を上まわるまで
a+1 + a+
2 + · · · と足します。∑
a+n が発散しているのだからこれはできます。次に、π を下回るま
で a−n を引きます。これを繰り返すと π に収束するのです。また、+∞ に発散させたければ、ま
ず、1 を上まわるまで a+n を足し、b−1 を引き、次に、2 を上まわるまで a+
n を足し、b−2 を引き、
とすればできます。証明は省略しますので、詳細は自分で補って下さい。
このように、条件収束級数においては、有限和のときからは推し量れない現象が起こるので、一
般的な取り扱いが大変難しくなってしまうのです。
第 13 回解答 14
3 無限級数の収束判定
さて、次に
与えられた無限級数が収束するかどうかを調べる方法
について考えましょう。
収束するかどうかを確実に判定できる無限級数といえば等比級数です。確認しておきますと、
等比級数∞∑
n=1arn は、|r| < 1 のとき
ar
1 − rに収束し、|r| ≥ 1 のとき発散する。
でした。(「発散」という言葉は「収束しない」という意味で使っています。振動してしまう場合も
含みます。)なぜなら、
(1 − r)(1 + r + r2 + · · · + rn−1) = 1 − rn
より、n∑
k=1
ark = ar(1 + r + r2 + · · · + rn−1) =ar(1 − rn)
1 − r
となっているからです。
実は収束・発散の様子がシステマチックにわかる種類の無限級数なんて等比級数以外にはありま
せん。だから、一般の無限級数が収束するかどうかを調べるには、その無限級数を等比級数の収束
と比較してみるくらいしか手だてがないのです。しかも、「比較」の方法は 8ページで述べた「絶対収束の判定法」くらいしかありません。この節では、その方針で一般の無限級数の収束を判定す
る方法を考えてみましょう。
3.1 ダランベールの判定法
まず、等比級数というものを「第 n+1項と第 n項の比が一定」と見て、一般の冪級数の第 n+1項と第 n 項の比を考えることで等比級数と比較してみましょう。比を考える以上、0になる項があってはいけません。そこで、すべての an が 0でないとします。(0の項はあってもなくても収束・発散や和の値に関係がないのでこう仮定してしまっても全く問題ありません。)「第 n + 1 項と第 n 項の比」は
an+1
anです。よって、1より小さく n によらない正実数 r で、ある N 以上の
任意の n について ∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ ≤ r (2)
を満たすものが存在するなら、
|an| =∣∣∣∣ an
an−1
∣∣∣∣ ∣∣∣∣an−1
an−2
∣∣∣∣ · · · ∣∣∣∣aN+1
aN
∣∣∣∣ |aN | ≤ |aN |rn−N
となるので、「絶対収束の判定法」から無限級数∞∑
n=1an は絶対収束します。(詳しく言うと、bn =
|aN |rn−N とおくと n ≥ N を満たすすべての n について
|an| ≤ bn
が収束する上、∞∑
n=N
bn =|aN |1 − r
第 13 回解答 15
と収束しているので、∞∑
n=N
an
は絶対収束することが「絶対収束の判定法」から結論できるというわけです。)
条件 (2)はちょっと使いにくそうなので、極限を使って言い換えておきましょう。� �定理 1 (ダランベールの判定法 (Ratio Test)). 無限級数
∞∑n=1
an は、すべての an が 0でなく
limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = r
が存在するとき、r < 1 ならば絶対収束し、r > 1 ならば発散する。� �証明. lim
n→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ < 1 ならば、十分小さい正実数 ε を取れば、ある自然数 N より大きいすべて
の自然数 n について ∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ ≤ 1 − ε
が成り立ちます。これで条件 (2)が満たされました。
また、 limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ > 1 ならば、十分小さい正実数 ε を取れば、ある自然数 N より大きいすべ
ての自然数 n について ∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ ≥ 1 + ε
となります。すると、
|an| =∣∣∣∣ an
an−1
∣∣∣∣ · · · ∣∣∣∣aN+1
aN
∣∣∣∣ |aN | ≥ |aN |(1 + ε)n−N n→∞−−−−→ ∞
となって、 limn→∞
an ̸= 0 なので、∞∑
n=1an は発散します。 □
注意. この定理は、条件 (2)を生かし切ってはいません。なぜなら、条件 (2)を満たすけれども limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣は存在しないという場合があるからです。★
3.2 コーシーの判定法
次に、初項が 1で公比が正の等比級数を「第 n 項の n 乗根が一定値」と見て、一般の無限級数
の第 n 項の n 乗根を考えることで等比級数と比較してみましょう。絶対収束を結論しようとして
いるので、無限級数の第 n 項は n√|an| です。よって、1より小さく n によらない正実数 r で、あ
る N より大きい任意の n についてn√|an| ≤ r (3)
を満たすものが存在するなら、
|an| ≤ rn
となりますので、「絶対収束の判定法」から無限級数∞∑
n=1an は絶対収束します。ここでもやはり条
件 (3)が少し使いづらいので、極限を使って言い換えてみましょう。ただし、普通の極限を使ってしまうと条件を生かし切れないので、上極限を使います。
第 13 回解答 16
� �定理 2 (コーシーの判定法 (Root Test)). 無限級数
∞∑n=1
an は、
lim supn→∞
n√
|an| = r
とするとき、r < 1 のとき絶対収束し、r > 1 のとき発散する。� �証明. lim sup
n→∞
n√
|an| < 1 ならば、十分小さい正実数 ε を取れば、ある自然数 N より大きいすべ
ての自然数 n についてn√|an| ≤ 1 − ε
となります。これで条件 (3)が満たされました。また、lim sup
n→∞
n√|an| > 1 ならば、十分小さい正実数 ε を取れば、どんなに大きな自然数 N に
対しても n > N を満たす n でn√|an| ≥ 1 + ε
を満たすものが存在します。つまり、この不等式を満たす n が無限個存在するわけです。この不
等式の両辺を n 乗すると
|an| ≥ (1 + ε)n
となります。これを満たす n が無限個存在するので、 limn→∞
an = 0 とはなり得ません。よって、∞∑
n=1an は発散します。 □
注意. 上極限が出てきてイヤな感じですが、極限がある場合には上極限と極限は一致するのですからまずは極限で考えてみるようにすると良いでしょう。★
なお、ダランベールの判定法もコーシーの判定法も極限値が 1の場合について何も言っていませんが、実はその場合には「絶対収束」「条件収束」「発散」のどれも起こり得ます。例えば、問題 4で示したように
1 +12
+13
+14
+15
+ · · ·
は発散し
1 − 12
+13− 1
4+
15− · · ·
は log 2 に(条件)収束しますが、どちらも
limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = limn→∞
n + 1n
= 1
となっています。一方、
1 +122
+132
+142
+152
+ · · ·
は絶対収束しますが、やはり、
limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = limn→∞
(n + 1)2
n2= 1
です。このように、 limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = 1 や limn→∞
n√|an| = 1 となってしまった場合には、その無限級
数に応じて個々に調べるしかありません。が、たいていは難しい問題になってしまいます。
第 13 回解答 17
3.2.1 問題 5の解答
(1) m = n − 2 とおくと、∞∑
n=3
1(n2 − 1
)2 = 4∞∑
m=1
1m2
となります。よって収束です。 □
(2) a > 2 のときは、n
1 + na<
n
na=
1na−1
で、しかも∞∑
n=1
1na−1
が収束するので、優級数の方法により元の無限級数も収束することが分かります。
1 < a ≤ 2 のときは、n
1 + na=
11n + na−1
≥ 12na−1
であり、しかも∞∑
n=1
1na−1
が発散するので、元の無限級数も発散します。
最後に、a ≤ 1 のときはn
1 + na=
11n + na−1
において n → ∞ としても、a − 1 ≤ 0 であることから 0に収束しないので、やはり発散します。まとめると、「a > 2 で収束し a ≤ 2 では発散する」となります。 □
(3) 第 n項の分子分母に√
n2 + 1 + n を掛けることにより√n2 + 1 − n =
1√n2 + 1 + n
>1
2n + 2
が分かります。一方、∞∑
n=1
12n + 2
=12
∞∑m=2
1m
は発散します。よって、元の級数も発散します。 □
(4) ダランベールの判定法を使ってみましょう。∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = 2n+1 + 13n+1 + 1
3n + 12n + 1
=2 + 1
2n
3 + 13n
1 + 13n
1 + 12n
n→∞−−−−→ 23
となって 1より小さい値に収束するので、この無限級数は収束します。 □
(5) コーシーの判定法を使ってみましょう。
n√|an| = n
√(1 +
1n
)n2
=(
1 +1n
)nn→∞−−−−→ e
となって 1より大きい値に収束するので、この無限級数は発散します。 □
第 13 回解答 18
(6) ダランベールの判定法を使ってみましょう。∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = (2n + 1)(2n − 1) · · · 3 · 1(n + 1)!
n!(2n − 1)(2n − 3) · · · 3 · 1
=2n + 1n + 1
=2 + 1
n
1 + 1n
n→∞−−−−→ 2
となって 1より大きい値に収束するので、この無限級数は発散です。 □
(7) ダランベールの判定法を使ってみましょう。∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = 2n+1
(n + 1)!n!2n
=2
n + 1n→∞−−−−→ 0
となって 1より小さい値に収束するので、この無限級数は収束します。(ex のテイラー展開に x = 2 を代入したものが
e2 =∞∑
n=0
2n
n!
なので、この無限級数は e2 − 1 に収束します。ex のテイラー展開が任意の x について ex に収束
することは証明済みなのですから、上のような収束判定をしなくても、これで収束することまで証
明できていると言ってしまってもちろんかまいません。) □
(8) ダランベールの判定法を使ってみましょう。∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = (n + 1)(n + 2)2n+1
2n
n(n + 1)=
n + 22n
=1 + 2
n
2n→∞−−−−→ 1
2
となって 1より小さい値に収束するので、この無限級数は収束します。 □
(9) ダランベールの判定法を使ってみましょう。∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = (n + 1)a
(n + 1)!n!na
=1
(n + 1)
(1 +
1n
)an→∞−−−−→ 0
となって 1より小さい値に収束するので、この無限級数は収束します。 □
(10) 無限級数の収束や発散を示すのに広義積分と比較するのが有効な場合があります。このプリ
ントでも 1 +12
+13
+ · · · が発散することを示すのに既に使いました。この問題はその方法が有効です。 ∫ ∞
2
1x log x
dx =[log(log x)
]∞2
= ∞
です。一方、n ≤ x ≤ n + 1 において
1n log n
>1
x log x
ですので、N∑
n=2
1n log n
>
N∑n=2
∫ n+1
n
1x log x
dx =∫ N+1
2
1x log x
dx
という不等式が成り立ちます。よって、N → ∞ とすることにより、問題の無限級数が発散することが分かります。 □
第 13 回解答 19
4 冪級数の収束
数列 {an}∞n=1 の他に実数 a が一つ決まっているとき、単なる無限級数∞∑
n=1an ではなく、各項に
(x − a)n を掛けた無限級数∞∑
n=1
an(x − a)n
を冪級数(べききゅうすう)といいます。見ておわかりの通り、冪級数はテイラー展開と絡めて
扱って初めて真価を発揮するものですが、残念ながらその時間的余裕はなくなってしまいました。
この節では前節で考えた「無限級数の収束判定」を使って、与えられた冪級数がどの範囲の x に
ついて収束/発散するか、ということについてだけ考えます。
4.1 冪級数の収束半径
等比級数の収束と比較することで、一般の冪級数の絶対収束について考えてみましょう。
「冪級数」という特別な名前が付いていたり、x という変数が出てきたりして難しそうな感じが
するかも知れません。しかし、x を定数だと思って、
an(x − a)n = bn
とおき、無限級数∞∑
n=1bn について考えているのだと思えば良いだけなので大したことはありません。
まず、
limn→∞
∣∣∣∣bn+1
bn
∣∣∣∣ = r
が存在するとしてみましょう。すると、ダランベールの判定法により、r < 1ならば絶対収束、r > 1ならば発散なのでした。bn を an(x − a)n に戻してみると、
bn+1
bn=
an+1(x − a)n+1
an(x − a)n=
an+1
an(x − a)
となるので、
limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ |x − a| = r
です。ということは、この場合
limn→∞
∣∣∣∣an+1
an
∣∣∣∣ = s
も存在して、
s|x − a| < 1 なら絶対収束、s|x − a| > 1 なら発散
すなわち
|x − a| <1sを満たす x については絶対収束、|x − a| >
1sを満たす x については発散
ということが結論できます。(例によって |x − a| =1sを満たす x についてはいろいろ起こり得
ます。)
第 13 回解答 20
「よし、それじゃこの不等式を判定法として憶えてしまおう」などと考えない方がよいと思いま
す。例えば、sin x の x = 0 におけるテイラー展開である
x − 13!
x3 +15!
x5 − 17!
x7 +19!
x9 − · · ·
という冪級数に上の「判定法」を当てはめるとどうなるでしょうか? この級数には偶数冪の項がありませんので、直接当てはめるには偶数冪の項を補って、
0 + x + 0x2 − 13!
x3 + 0x4 +15!
x5 + 0x6 − · · ·
としなければなりません。しかし、こうすると b2m = 0 なので上の「判定法」を適用することができなくなってしまいます。この場合は偶数冪の項を補ったりせず
bn =(−1)n
(2n + 1)!x2n+1
とすればよいのです。そうすると、∣∣∣∣bn+1
bn
∣∣∣∣ = x
(2n + 2)(2n + 3)
ですので、任意の x に対して n → ∞ の極限は 0であり、特に 1より小さくなります。よって、この無限級数は任意の x に対して絶対収束します。
同様にコーシーの判定法も適用してみましょう。同じように bn = an(x − a)n とすると、
lim supn→∞
n√|bn| = r
として、r < 1 ならば絶対収束、r > 1 ならば発散なのでした。bn を an(x− a)n に戻してみると、
n√
|bn| = n√
|an||x − a|n = n√|an||x − a|
となるので、
lim supn→∞
n√|an||x − a| = r
です。ということは、この場合
lim supn→∞
n√|an| = t
とすると、
t|x − a| < 1 なら絶対収束、t|x − a| > 1 なら発散
すなわち
|x − a| <1tを満たす x については絶対収束、|x − a| >
1tを満たす x については発散
ということが結論できます。(やはり、|x− a| =1tを満たす x についてはいろいろ起こり得ます。)
こちらの場合、極限ではなく上極限という必ず存在する値を使っているので、上極限を計算するこ
とができれば、(境界の値でどうなっているかは除いて)必ず収束発散を判定できます。
以上の性質から、この1tのことを収束半径と呼びます。キチンと定義しておきましょう。
第 13 回解答 21
� �定義 1. 冪級数
∞∑n=0
an(x − a)n に対し、
R =1
lim supn→∞
n√
|an|(4)
をこの冪級数の収束半径と呼ぶ。ただし、分母が 0のときは R = ∞、分母が発散するときはR = 0 と定義する。� �
すると、上で説明した性質は次の定理にまとめられます。� �定理 3. 冪級数
∞∑n=0
an(x − a)n の収束半径が R のとき、この冪級数は |x − a| < R を満たす
x については絶対収束し、|x − a| > R を満たす x については発散する。ただし、R = ∞ の
ときは任意の x で絶対収束する。� �また、「ダランベールの方法」での結論を収束半径という言葉を使って言い直すと次のようにな
ります。� �定理 4. 冪級数
∞∑n=0
an(x − a)n に対し、
limn→∞
∣∣∣∣ an
an+1
∣∣∣∣が存在するか ∞ に発散するとき、その値は収束半径に一致する。� �
これをダランベールの公式と言います。それに対し、収束半径の定義式 (4)をコーシー・アダマールの公式と言います。(式 (4)では上極限になっていますが、極限が存在する場合には上極限と極限は一致するのですから、上極限を極限に取り替えて構いません。)これで、係数列 {an}∞n=0 から
冪級数の収束半径を計算する公式が二つあることになります。しかし、いつでもこれらの公式を適
用して収束半径を計算するのがよいとは限りません。具体的には、問題 6の (11)や (12)の解答を見てください。
4.1.1 問題 6の解答
(1) ダランベールの公式を使うと、
limn→∞
∣∣∣∣∣1
(n+1)(n+2)
1(n+2)(n+3)
∣∣∣∣∣ = limn→∞
n + 3n + 1
= 1
となります。よって、収束半径は 1です。 □
(2) これもダランベールの公式を使いましょう。
limn→∞
∣∣∣∣∣1
log n1
log(n+1)
∣∣∣∣∣ = limn→∞
log(n + 1)log n
= limn→∞
log(1 + 1n ) + log n
log n= 1
第 13 回解答 22
ですので、収束半径は 1です。 □
(3) これもダランベールの公式が使えます。
limn→∞
∣∣∣∣ √n + 1 −
√n√
n + 2 −√
n + 1
∣∣∣∣ = limn→∞
( √n + 1 −
√n√
n + 2 −√
n + 1×(√
n + 2 +√
n + 1) (√
n + 1 +√
n)(√
n + 2 +√
n + 1) (√
n + 1 +√
n))
= limn→∞
√n + 2 +
√n + 1√
n + 1 +√
n= lim
n→∞
√1 + 2
n +√
1 + 1n√
1 + 1n + 1
= 1
となりますので、収束半径は 1です。 □
(4) これもダランベールの公式が使えます。
limn→∞
∣∣∣∣∣∣1
2n+1(2n+1)!!(2n)!!
12n+3
(2n+3)!!(2n+2)!!
∣∣∣∣∣∣ = limn→∞
2n + 22n + 1
= 1
ですので、収束半径はやはり 1です。 □
(5) これまたダランベールの公式が適用できます。
limn→∞
∣∣∣∣∣∣√
1n2−n+1√
1(n+1)2−(n+1)+1
∣∣∣∣∣∣ = limn→∞
√n2 + n + 1√n2 − n + 1
= limn→∞
√1 + 1
n + 1n2√
1 − 1n + 1
n2
= 1
となって、収束半径は 1です。 □
(6) これまたダランベールでいけます。
limn→∞
∣∣∣∣∣∣(n+1)n
n!(n+2)n+1
(n+1)!
∣∣∣∣∣∣ = limn→∞
(n + 1)n+1
(n + 2)n+1= lim
n→∞
1(1 + 1
n+1
)n+1 =1e
となります。よって、収束半径は1eです。 □
(7) ダランベールです。
limn→∞
∣∣∣∣∣∣n!
(a+1)(a+2)···(a+n)
(n+1)!(a+1)(a+2)···(a+n)(a+n+1)
∣∣∣∣∣∣ = limn→∞
a + n + 1n + 1
= 1
となりますので、収束半径は 1です。 □
(8) まず、括弧の中の和を計算しましょう。n∑
k=0
akbn−k = bnn∑
k=0
(a
b
)k
と変形できます。これは初項 bn 公比a
bの等比級数です。よって
n∑k=0
akbn−k =
bn+1 − an+1
b − aa ̸= b
(n + 1)an a = b
第 13 回解答 23
となります。
a ̸= b のときにダランベールの公式を適用すると、
limn→∞
∣∣∣∣∣ bn+1−an+1
b−a
bn+2−an+2
b−a
∣∣∣∣∣ = limn→∞
∣∣bn+1 − an+1∣∣
|bn+2 − an+2|
となります。問題の無限級数は a と b に関して対称なので a > b としても一般性を失いません。
その上で分母分子を an+2 で割りましょう。すると、
= limn→∞
1a
∣∣∣( ba
)n+1 − 1∣∣∣∣∣∣( b
a
)n+2 − 1∣∣∣ =
1a
となります。よって、収束半径は1aです。
a = b のときもダランベールの公式を使いましょう。
limn→∞
∣∣∣∣ (n + 1)an
(n + 2)an+1
∣∣∣∣ = limn→∞
n + 1n + 2
1a
=1a
ですので、収束半径は1aです。
以上より、a ≥ b として、問題の無限級数の収束半径は1aとなります。 □
(9) コーシー・アダマールの公式が使えます。an2= (an)n ですので
limn→∞
n
√∣∣an2∣∣ = lim
n→∞an =
0 a < 11 a = 1∞ a > 1
です。よって収束半径は
∞ (a < 1) 1 (a = 1) 0 (a > 1)
となります。 □
(10) これは係数 an が一つおきに 0なので、ダランベールの公式が使えません。コーシー・アダマールの公式なら使えますが、それよりも y = x2 と置いて y の冪級数としてダランベールの公式
を使った方がよいでしょう。
limn→∞
∣∣∣∣∣∣(n!)2
(2n)!
((n+1)!)2
(2(n+1))!
∣∣∣∣∣∣ = limn→∞
2(2n + 1)n + 1
= 4
ですので、y の冪級数としての収束半径は 4です。y = x2 とおいていたことから、x の冪級数と
しての収束半径は√
4 = 2 であることになります。 □
(11) 冪級数ではなく単なる無限級数だと思ってダランベールの判定法を適用してみましょう。
limn→∞
∣∣∣∣∣x(n+1)2
xn2
∣∣∣∣∣ = limn→∞
∣∣∣x(n+1)2−n2∣∣∣ = lim
n→∞|x|2n+1 =
0 |x| < 11 |x| = 1∞ |x| > 1
第 13 回解答 24
となっています。よって、問題の無限級数は |x| < 1 では収束し |x| > 1 では発散します。すなわち、収束半径は 1です。 □
(12) 問題の無限級数は
40x0 + 21x1 + 42x2 + 23x3 + · · · + 42nx2n + 22n+1x2n+1 + · · ·
です。これを、二つの無限級数
∞∑n=0
(4x)2n と∞∑
n=0
(2x)2n+1
に分解して考えてみましょう。
(4x)2n = (16x2)n なので、∑∞
n=0(4x)2n は初項 1、公比 16x2 の等比級数です。よって、16x2 < 1で収束し 16x2 ≥ 1 で発散します。x に関する条件に書きなおすと、
|x| <14で収束し、|x| ≥ 1
4で発散する
となります。
同様に、(2x)2n+1 = 2x(4x2)n ですので、∑∞
n=0(2x)2n+1 は初項 2x、公比 4x2 の等比級数です。
よって、
|x| <12で収束し、|x| ≥ 1
2で発散する
となります。
問題の無限級数はこの二つの無限級数の和ですから、両方とも収束する範囲では収束します。よっ
て、求める収束半径を R とすると、R ≥ 14であることが分かります。
一方、収束する級数と収束しない級数の和は収束しません。(もしそれが収束してしまったら、
収束しない級数が二つの収束する級数の差になってしまうので矛盾です。)よって、問題の無限級
数は14≤ |x| <
12では収束しません。
収束半径が R であるとき、|x| < R を満たす任意の x で収束するのですから、14≤ |x| <
12で
収束しない以上 R ≤ 14でなければなりません。
以上の二つを合わせて、R =14であることが分かります。 □