平成30年7⽉豪⾬の特徴と被災地現地調査報告
⼀般財団法⼈ ⽇本気象協会防災ソリューション事業部 本間基寬
平成30年10⽉30⽇
静岡県危機管理部第1回住⺠避難実効性向上検討委員会
資料1
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1.現地調査結果各地の被災状況
現地調査の概要
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【調査⽬的】 被災地での復旧・復興活動を⽀援するための現地状況の把握 今後の防災情報提供の改善等に向けた知⾒の収集
第1回現地調査(広島県) 実施⽇ 平成30年7⽉10⽇(⽕)及び11⽇(⽔) 参加メンバー 静岡⼤学 ⽜⼭素⾏教授
静岡市(静岡⼤学教育研究⽀援員) 杉村晃⼀⽒⼀般財団法⼈⽇本気象協会職員 5名
実施地域 広島県広島市安佐北区、広島県広島市安芸区、広島県熊野町第2回現地調査(岡⼭県) 実施⽇ 平成30年7⽉12⽇(⽊) 参加メンバー ⼀般財団法⼈⽇本気象協会職員 2名 実施地域 岡⼭県倉敷市第3回現地調査(愛媛県) 実施⽇ 平成30年7⽉26⽇(⽊)及び27⽇(⾦) 参加メンバー ⼀般財団法⼈⽇本気象協会職員 3名 実施地域 愛媛県⼤洲市、愛媛県⻄予市、愛媛県宇和島市
広島県熊野町川⾓5丁⽬付近
4
②
①
③
④
• ⾃然地形の⾕筋に沿って⼟⽯流が発⽣している。
• ⼟砂災害特別警戒区域、警戒区域内で発⽣
国⼟地理院の10m標⾼タイルマップと新版-標準タイルマップをもとにカシミール3Dにて作成
広島県:⼟砂災害ポータルサイト(http://www.sabo.pref.hiroshima.lg.jp/portal/map/keikai.aspx#)
GoogleMapの衛星写真に加筆
広島県熊野町川⾓5丁⽬付近
5
②
撮影⽇:2018/7/11
①
③撮影⽇:2018/7/11
撮影⽇:2018/7/11
④
撮影⽇:2018/7/11
倉敷市真備町の浸⽔推定段彩図
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出典:国⼟地理院ホームページに⼀部加筆http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/H30.taihuu7gou.html
⼩⽥川の⽀流(真⾕川)左岸でも決壊
⾼⾺川決壊地点
倉敷市真備町では死者50名、約4,100棟で建物浸⽔被害(7⽉14⽇20時時点)。
真備町市街地の約4分の1が浸⽔し、最⼤で約5mの浸⽔深になった。
浸⽔範囲は、H28年度作成の浸⽔想定区域と概ね⼀致※想定⾬量
⾼梁川2⽇間248mm(1/150)⼩⽥川2⽇間225mm(1/100)
末政川決壊地点
倉敷市真備町箭⽥の⼩⽥川左岸堤防決壊箇所
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①⼩⽥川左岸6k400の堤防決壊箇所
①
撮影⽇:2018/7/12
撮影⽇:2018/7/12
10㎝近い泥が堆積
①写真の撮影地点の泥堆積状況②堤防決壊箇所約200m下流にある⺠家
②
2階窓部分まで浸⽔深が到達
撮影⽇:2018/7/12
出典:国⼟地理院 浸⽔深段彩図に加筆
倉敷市真備町有井の住宅地
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①②
①真備町有井の住宅地
①⼤量の⽔害ゴミが発⽣多くの家屋で浸⽔深が約4m(2階床上を超過)に達したことから、2階へ上げた家財も被害に遭った可能性。
②真備町有井の住宅地
②路地裏には道路の清掃が⾏き届いていない。
撮影⽇:2018/7/12
撮影⽇:2018/7/12
出典:国⼟地理院 浸⽔深段彩図に加筆
宇和島市吉⽥町⽩浦地区
9地形図は、国⼟地理院の10m標⾼タイルマップと新版-標準タイルマップをもとにカシミール3Dにて作成発災後の写真は、国⼟地理院正射画像、発災前の写真はGooglemap衛星写真
撮影⽇:2018/7/27
発災後
発災前
⼤規模な斜⾯崩壊が発⽣し、住家数棟が流出した。死者あり。
みかん畑と思われる果樹林
⽮印は撮影箇所
被害状況の特徴のまとめ
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(広島県) ひとつひとつの災害は、2014年8⽉に広島市安佐南区・安佐北区で発⽣した⼤規模⼟⽯流
と同規模の⼤きな災害である。 ⼟⽯流は、⾃然地形の⾕筋で発⽣しており、⼟砂災害の警戒区域(または特別警戒区域)
内で発⽣している。 ⼟⽯流が直撃した家屋では建物ごと流失したものもあり、⼟砂災害警戒区域等での垂直避
難では助からないケースもあり得る。早い段階での危険箇所からの⽴ち退き避難が重要である。
(岡⼭県) 真備町市街地では、浸⽔深が最⼤で約4〜5mに達しており、家屋の2階床上窓部分〜2階屋
根下まで浸⽔しているところが多かった。 2階床上を上回る⾼さまで浸⽔したことから、家財の被害が甚⼤にのぼることが予想される。
(「家財保全⾏動」により浸⽔前に2階へ上げた家財も被害に遭った可能性が⾼い) 倉敷市真備町で50名(おそらくほとんどが浸⽔被害)亡くなっているが、2015年の⻤怒川
決壊で浸⽔被害を受けた常総市での犠牲者(2名)に⽐べて、今回は際⽴って多い。今後の詳細な調査が待たれるが、今次災害では浸⽔深が⼤きくなったことが犠牲者増⼤の⼀因と考えられる。(常総市住宅地は最⼤2m程度、倉敷市真備町は最⼤5m程度)
(愛媛県) 宇和島市は法花津湾岸、宇和島湾岸のいたるところで⼟砂崩れが発⽣している。 今回調査した地点で、死傷者が発⽣している地点は、住家が斜⾯の麓に建っている箇所が
多く、崩落した⼟砂がそのまま住家を直撃している(いずれも急傾斜地崩壊危険区域に指定されていた)。
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2.降⾬の特徴及び事前予測の状況
6⽉28⽇以降、北⽇本に停滞していた梅⾬前線は、7⽉5⽇以降⻄⽇本まで南下して停滞。7⽉4⽇、⽇本海を北東へ進む台⾵
7号の影響で九州や四国では⼤⾬に。前線に向かって、太平洋⾼気圧か
ら暖かく湿った空気が流れ込んだため、前線近傍や暖湿気が吹き付けた四国などの南東〜南⻄斜⾯では⼤⾬に。前線は7⽉5⽇から8⽇にかけて、
殆ど動きがなかったため同⼀地域で⼤⾬が続き、⻄⽇本を中⼼に記録的な⼤⾬に。気象庁は7⽉6⽇〜7⽉8⽇に「⼤⾬
特別警報」を11府県に発表した。これだけの広域に⼤⾬特別警報が発表されたのは、2013年8⽉30⽇に特別警報の運⽤を開始以来初めて。
7⽉4~8⽇にかけての降⾬状況
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7⽉5⽇0時〜8⽇0時72時間⾬量
7⽉5⽇0時〜8⽇0時72時間⾬量
降⾬継続時間別⾬量の既往最⼤⽐
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• 広島県、岡⼭県では48時間⾬量で既往最⼤の1.5〜2.0倍の記録的⾬量
• ⼟砂災害が多発した広島市・呉市周辺では3時間⾬量でも既往最⼤クラスの⾬量
→⻑時間降⾬の後の短時間強⾬が⼟⽯流発⽣のトリガーとなった可能性
3時間⾬量既往最⼤⽐
48時間⾬量既往最⼤⽐
050100150200250300350400450500550
05
10152025303540455055
7⽉5⽇
1時7⽉
5⽇5時
7⽉5⽇
9時7⽉
5⽇13時
7⽉5⽇
17時
7⽉5⽇
21時
7⽉6⽇
1時7⽉
6⽇5時
7⽉6⽇
9時7⽉
6⽇13時
7⽉6⽇
17時
7⽉6⽇
21時
7⽉7⽇
1時7⽉
7⽇5時
7⽉7⽇
9時7⽉
7⽇13時
7⽉7⽇
17時
7⽉7⽇
21時
7⽉8⽇
1時7⽉
8⽇5時
7⽉8⽇
9時7⽉
8⽇13時
7⽉8⽇
17時
7⽉8⽇
21時
累積降⽔量(m
m)
時間降⽔量(m
m)
呉 時間降⽔量時間降⽔量(mm)
累積降⽔量(mm)
当時の降⾬状況、危険度指数の状況
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警戒判定結果 内容LEVEL4 実況で⼟砂災害警戒情報の基準を超過LEVEL3 予想で⼟砂災害警戒情報の基準を超過LEVEL2 実況または予想で⼤⾬警報の⼟壌⾬量指数基準を超過LEVEL1 実況または予想で⼤⾬注意報の⼟壌⾬量指数基準を超過
⼟砂災害警戒判定メッシュ情報2018/07/05 12:00
2018/07/06 05:00
2018/07/06 18:00
2018/07/05 12:00
2018/07/06 05:00
2018/07/06 18:00
⼟壌⾬量指数解析⾬量 1時間⾬量 解析⾬量 48時間⾬量2018/07/05 12:00
2018/07/06 05:00
2018/07/06 18:00
⼤⾬注意報発表時頃
⼤⾬警報発表時頃
⼟砂災害警戒情報発表、
災害発⽣時頃
広島県などで過去最⼤の斜⾯危険度指数
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JWA斜⾯危険度指数履歴順位(2018年7⽉6⽇21時時点)
JWA斜⾯危険度指数• タンクモデルにより⼟
壌に含まれる⽔分量の指数を1kmメッシュで算出
• 過去30年の履歴順位をデータベース化し、実況値が過去に⽐べてどの程度の斜⾯危険度になっているかを表現
0
100
200
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500
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7⽉5⽇ 7⽉6⽇ 7⽉7⽇
累積⾬量[m
m]
時間⾬量[m
m/h]
⼟砂災害警戒情報:
洪⽔注意報・警報:
⼤⾬注意報・警報:
避難勧告等:
降⾬と防災情報等発表状況(広島県熊野町の例)
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アメダス呉
⼟砂災害警戒情報 6⽇18:10
6⽇19:55 避難指⽰【緊急】
注意報 6⽇10:06 洪⽔警報 6⽇18:36 7⽇ 22:19
• 気象警報等の発表時刻は、広島地⽅気象台の「平成30年7⽉8⽇12時現在の気象速報」を参考に整理
• 避難勧告等の発令状況は、広島県の「平成30年7⽉降⾬災害による被害等について」の各報をもとに、熊野町公式SNSの配信時刻、オンライン検索等で収集した情報から推定
6⽇17:40 避難準備・⾼齢者等避難開始
6⽇19:01 避難勧告
⼤⾬注意報 5⽇12:30 ⼤⾬警報 ⼟砂;6⽇05:40 浸⽔;6⽇19:01 ⼤⾬特別警報 6⽇19:40 7⽇10:50
• 48時間⾬量が既往最⼤クラスに達しつつある状況で50mm/hrの強⾬となり⼟砂災害発⽣。• 1〜3時間⾬量は必ずしも記録的な多さではないが、⻑⾬が続いた後のため⼟砂災害のトリ
ガーとなった可能性がある。
⼤⾬警報
避難指⽰【緊急】6⽇19:55
出典:https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201807100000192.html (2018/08/01確認)
6⽇ 20:30頃(※)川⾓地区で⼟砂災害発⽣ 48時間⾬量
既往最⼤値
避難準備 避難勧告
降⾬の特徴や事前予測状況のまとめ
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遅くとも7⽉5⽇朝の時点で、5〜7⽇にかけて⻄⽇本を中⼼に300〜800mm以上の⾬量となることが予測できていた。
⻄⽇本、とりわけ広島県・岡⼭県では、48時間以上などの⻑時間の⾬量で既往最⼤を更新する⼤⾬となった。
九州北部、⼭陽地⽅、四国南部、⼤阪湾周辺、近畿北部、岐⾩県など多くの地域で線状降⽔帯が発⽣。広島県では、⼟砂災害の発⽣が頻発する前の6⽇19時から21時において(前2時間累積⾬量を⽤いているため、実際には17時頃から)、線状降⽔帯が継続して存在することが確認された。
1,3,6時間といった⽐較的短い継続時間の⾬量では必ずしも記録的な⼤⾬とはなっていない。しかしながら、⻑時間降⾬の後であったために、⾮常に強い⾬でなくても⼟砂災害発⽣のトリガーとなった可能性がある。
今次豪⾬では、普段の降⽔量が少ない地域(広島県・岡⼭県)において既往最⼤クラスに匹敵または⼤きく超過する降⽔量となったために、⾼知県や岐⾩県など期間降⽔量が1,000mm超となった多⾬地域に⽐べて、被害が⼤きくなったものと思われる。